平成12(行ケ)38行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成12年12月25日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
民事訴訟法61条1回 特許法29条1項3号1回
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キーワード |
審決6回 優先権3回 訂正審判1回 刊行物1回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成12年(行ケ)第38号 特許取消決定取消請求事件(平成12年12月13
日口頭弁論終結)
判 決
原 告 セルテック セラピューティックス リミテッド
(旧商号) セルテック リミテッド
代表者 A
訴訟代理人弁理士 浅 村 皓
同 浅 村 肇
同 小 池 恒 明
同 長 沼 暉 夫
同 岩 井 秀 生
同 池 田 幸 弘
被 告 特許庁長官 B
指定代理人 C
同 D
同 E
同 F
主 文
特許庁が平成9年異議第74488号事件について平成11年9月10
日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
(1) 原告は、名称を「マルチチェインポリペプチドまたは蛋白質およびそれら
の製造方法」とする特許第2594900号発明(以下「本件発明」という。)の
特許権者である。
上記特許は、1983年(昭和58年)3月25日にイギリス国において
した特許出願(8308235号)に基づく優先権を主張して、1984年(昭和
59年)3月23日にした国際出願(以下「本件出願」という。)に係り、昭和5
9年11月24日に所定の翻訳文が提出され(特願昭59-501609号)、平
成8年12月19日に設定登録されたものである。
G、H及びプロテイン デザイン ラブズ,インコーポレイテッドは、い
ずれも平成9年9月26日にそれぞれ上記特許につき特許異議の申立てをし、同各
申立ては、平成9年異議第74488号事件として特許庁に係属したところ、原告
は、平成10年12月21日、明細書の特許請求の範囲を訂正する旨の訂正請求を
した。
特許庁は、同特許異議の申立てにつき審理した上、平成11年9月10日
に「訂正を認める。特許第2594900号の特許を取り消す。」との決定(以下
「本件決定」という。)をし、その謄本は、同月29日、原告に送達された。
(2) 原告は、平成12年1月26日、本件決定の取消しを求める本件訴えを提
起した後、同年9月14日、本件明細書の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をし
たところ、特許庁は、同請求を訂正2000-39106号事件として審理した
上、同年12月7日、上記訂正を認める旨の審決(以下「訂正審決」といい、訂正
審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、その謄本は、同月11日、原告に
送達された。
2 本件訂正前(ただし、上記1の(1)の本件決定によって認められた訂正請求に
係る訂正後)の特許請求の範囲(以下単に「本件訂正前の特許請求の範囲」とい
う。)の請求項1の記載
単一宿主細胞における、少なくともIgH鎖およびL鎖の可変ドメインからなる
免疫学的機能を有するIgフラグメントまたはIg分子の製造方法であって、
(ⅰ) 単一宿主細胞を、少なくともIgH鎖の可変ドメインをコードする第一の
DNA配列、および少なくともIgL鎖の可変ドメインをコードする第二のDNA配列で形質
転換し、そして
(ⅱ) 前記第一および第二のDNA配列を独立に発現させ、前記H鎖およびL鎖を前
記形質転換単一宿主細胞中で別々の分子として製造することからなる方法。
3 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載
単一宿主酵母細胞における、少なくともIgH鎖およびL鎖の可変ドメインから
なる免疫学的機能を有するIgフラグメントまたはIg分子の製造方法であって、
(ⅰ) 単一宿主酵母細胞を、少なくともIgH鎖の可変ドメインをコードする第一
のDNA配列、および少なくともIgL鎖の可変ドメインをコードする第二のDNA配列で形
質転換し、そして
(ⅱ) 前記第一および第二のDNA配列を独立に発現させ、前記H鎖およびL鎖を前
記形質転換単一宿主酵母細胞中で別々の分子として製造することからなる方法。
(注、下線部が訂正部分である。)
4 本件決定の理由の要旨
本件決定は、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1のと
おり認定した上、優先権主張の基礎となるイギリス国出願8308235号の明細
書に、本件発明における形質転換に用いる単一宿主細胞が、①「細菌宿主細胞」の
場合、②「酵母宿主細胞」の場合及び③「哺乳動物宿主細胞」の場合のいずれにつ
いても、完成した発明として開示されておらず、本件出願に係る本件発明が同明細
書中に開示されていなかったから、本件出願は優先権の利益を享受することができ
ず、その基準日は、現実の本件出願の日である昭和59年3月23日であるとこ
ろ、本件発明は、1983年(昭和58年)10月に米国で頒布された刊行物であ
る「Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.80.」6351~6355頁に記載された発明で
あって、特許法29条1項3号の規定に該当し、本件特許は、拒絶の査定をしなけ
ればならない特許出願についてされたものであるので、特許法等の一部を改正する
法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく特許法等の一部を改正
する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4
条1項、2項の規定により、取り消されるべきものであるとした。
第3 当事者の主張
1 原告
本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1のと
おり認定した点は、訂正審決の確定により特許請求の範囲の請求項1が前示のとお
り訂正されたため、誤りに帰したことになるので否認する。
本件決定が本件発明の要旨の認定を誤った瑕疵は、その結論に影響を及ぼす
ものであるから、本件決定は、違法として取り消されるべきである。
2 被告
訂正審決の確定により特許請求の範囲の請求項1が前示のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
訂正審決の確定により、特許請求の範囲の請求項1が前示のとおり訂正され
たことは当事者間に争いがなく、この訂正によって、新たな構成要件が付加された
ことにより、同請求項に係る特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。
そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の
請求項1記載のとおりである旨認定したことは、結果的に誤りであったことに帰
し、この要旨認定を前提として、本件発明が「Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.80.」
6351~6355頁に記載された発明であると判断したことも、誤りであったも
のといわざるを得ない。そして、この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは
明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして、取消しを免れない。
よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事
件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 篠 原 勝 美
裁判官 石 原 直 樹
裁判官 宮 坂 昌 利
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