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平成11(ネ)5876民事訴訟 商標権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成12年9月28日
事件種別 民事
法令 商標権
キーワード 商標権9回
侵害5回
差止5回
損害賠償3回
主文
事件の概要

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判決文

平成一一年(ネ)第五八七六号、平成一二年(ネ)第三一〇八号 商標権使用差止等請
求控訴、同附帯控訴事件(平成一二年六月二九日口頭弁論終結。原審・東京地方裁
判所平成一一年(ワ)第四三八号)
         判    決
          控訴人(附帯被控訴人、被告) 株式会社 プロパスト
          代表者代表取締役     A
          訴訟代理人弁護士     羽 野 島   裕   

          補佐人弁理士       B
                       C
                       D
                       E
             弁護士、弁理士   F
             弁理士       G
                       H
                       I
                       J
          被控訴人(附帯控訴人、原告) 住友不動産株式会社
          代表者代表取締役     K
          訴訟代理人弁護士     牧   野   利   

                       鈴   木       

                       矢   部   耕   

          補佐人弁理士       L
         主    文
 本件控訴及び附帯控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人(被告)の負担とし、附帯控訴費用は附帯控訴人(原告)の負
担とする。
         事実及び理由
第一 申立て
 一 控訴の趣旨
 「 原判決中主文第三項(金銭支払命令)を取り消す。
   右の部分に係る被控訴人(原告)の請求を棄却する。」
 との判決を求める。
 二 附帯控訴の趣旨
 「 原判決主文第三項、第四項を次のとおり変更する。
   附帯被控訴人(被告)は附帯控訴人(原告)に対し、一〇〇〇万円及びこれ
に対する平成一一年一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払
え。」
 との判決を求める。
第二 事案の概要
 一 訴訟の経緯
 原告は、「土地の売買、建物の売買」を指定役務とする本件登録商標(「本件登
録商標一」(ヴィラージュ)と「本件登録商標二」(楕円の中に「Village」の語を
配したもの)の総称。原判決四頁の一1の項)の商標権者であるが、本件登録商標
と類似する被告標章(「ヴィラージュ白山」及び「VILLAGE」の各標章。原判決四頁
から五頁の一2の項)をその名称に使用して本件マンション(原判決四頁から五頁
の一2の項)を分譲販売した被告に対し、①被告標章は本件登録商標の指定役務で
ある「建物の売買」に使用したか、又は、②右指定役務に類似する建物という商品
である本件マンションに被告標章を付したと主張して、商標権侵害による差止め及
び損害賠償を請求したのに対し、原判決は、①の主張による商標権侵害は認められ
ないが、②の主張による商標権侵害が認められるとして、被告の行為の差止め並び
に五〇〇万円及び遅延損害金の支払を命じた。
 被告は、被告敗訴部分の取消し及び原告の請求棄却を求めて控訴し、その後差止
命令部分の取消しを求める部分については控訴を取り下げた。これに対して、原告
は、原判決が支払を命じた額を超え合わせて一〇〇〇万円の額の損害賠償を求めて
附帯控訴をした。
 争いのない事実、争点及び当事者の主張は、原判決四頁四行目から一四頁三行目
までに示されているとおりである。
 二 当審における主たる争点
 被告は、右②の原告の主張を認めた原判決の判断を争い、商標法上の商品性が肯
定されるためには、「反覆して取引の対象となり得る運搬可能な有体動産であっ
て、大量生産されるもの」であることが必要であるとして、分譲マンションの各住
居は、運搬性がなく、有体動産でもないし、大量生産にもなじまず、代替性がない
から、商標法上の商品とはいえないと主張する。
 原告は、当審においても、前記①の主張を維持し、被告標章の使用は、本件登録
商標の指定役務である「建物の売買」に使用したものであると主張し、②の主張に
関しては、被告の右主張を争っている。
第三 当審の判断
 一 基本的な前提事実は、原判決一四頁六行目から一六頁一行目までに認定され
ているとおりであるが、まず、当審における主たる争点である原告の①の主張、す
なわち、被告が、本件登録商標の指定役務である「建物の売買」(本件で具体的に
問題となっているのは、建物の販売である。)に被告標章を使用したということが
できるか否かについて検討する。
 二 被告は、本件マンションを分譲販売したものであり、その名称として本件登
録標章に類似する被告標章を使用したものであるが、一般に、マンションの住居の
分譲販売に当たって、分譲販売業者は、売買という契約成立ないしその履行に至る
までの間に、販売の勧誘や売買交渉過程において、購入希望者等に対し、マンショ
ンの特徴、住居部分の間取り、内装設備、周辺地域の状況、販売価格の合理性、管
理形態、さらには住宅ローンの内容など様々な説明を行い、モデルルームの展示を
するほか、当然のことながら工事中のマンションあるいは完成後のマンションの内
外部を案内するのが実態であり、また、購入予定者に対する住宅ローンの斡旋など
を行うこともあり、行政規制としては、宅地建物取引業法三五条の重要事項の説明
が必要となっていることは、当裁判所に顕著な事実である。これらの分譲販売業者
の行為は、マンションの分譲販売に際して行われるものとして、建物の売買という
役務に属する行為であるというべきである。
 この間に、マンションの建物の名称が使用される機会が多く、マンションの建物
自体や、モデルルーム、定価表、取引書類その他の売買関係書類、あるいは、看
板、のぼり、チラシ、パンフレット、新聞広告などの広告にも建物の名称も使用さ
れるものであろうことは、おのずと推認されるところである。
 本件においても、被告が本件登録商標に類似する被告標章を本件マンションの名
称として使用し、分譲販売した際に、本件マンションの階段入り口部分の表示板に
被告標章を付したり、被告標章を付した立て看板、垂れ幕などが掲示され、被告標
章を付したチラシ、パンフレットの配付がされたことは、前記引用の原判決一四頁
の1(一)の項に認定のとおりである。これら被告標章を付した行為は、マンショ
ンの分譲販売に際して行われる役務提供の際になされたものであり、被告標章は、
建物の販売の役務の提供に当たり、販売の役務の提供を受ける者、すなわちマンシ
ョン購入希望者が購入予定物件の内容の案内を受けるなどの際に使用されたもので
あって、これが、本件登録商標の指定役務である「建物の売買」についての使用に
該当することは明らかである。
 そうすると、原判決四頁から五頁にかけての「一 争いのない事実」の2の項に
摘示された被告の行為、具体的には一四頁の1(一)の項に認定の被告の行為は、
商標法二条三項三号、四号、五号又は七号に該当し、同法三七条一号により、本件
商標権を侵害するものとみなされる。
 三 被告は、被告標章の使用差止めを命じた原判決部分に対する控訴を取り下
げ、これに対する原判決の判断部分は当審の審理の範囲外となったので、被告の本
件商標権の侵害により原告が被った損害額について判断するに、その内容は、原判
決二五頁八行目から二七頁九行目までに示されているとおりであり、本件マンショ
ン販売価格の合計額の約〇・五パーセントに当たる五〇〇万円を使用料相当額と認
め、これを損害額とした原判決の認定、判断は相当であると是認することができ
る。原告は、商標権の使用料が宅地建物取引業者の手数料(報酬の額)に比して著
しく低額であるとするのは妥当でないと主張するが、商標権の使用料額が宅地建物
取引業者の手数料を上回る事例の存在を認めるべき証拠はなく、原告の右主張は採
用することができない。
 四 よって、五〇〇万円の損害賠償及びこれに対する不法行為の後である平成一
一年一月二六日(訴状送達の日)から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金
の支払を被告に命じた原判決部分は相当であり、本件控訴、附帯控訴とも理由がな
い。
第四 結論
 よって、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第一八民事部
         裁判長裁判官    永   井   紀   昭
            裁判官    塩   月   秀   平
            裁判官    橋   本   英   史

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