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平成12(ネ)54民事訴訟 意匠権

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裁判所 大阪高等裁判所
裁判年月日 平成12年7月5日
事件種別 民事
法令 意匠権
キーワード 侵害20回
商標権10回
特許権3回
意匠権3回
差止3回
間接侵害3回
実施2回
主文
事件の概要

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判決文

平成一二年(ネ)第五四号意匠権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平
成七年(ワ)第四二八五号) 
           判    決
   控訴人(被告)        株式会社宝精密
右代表者代表取締役      【A】
右訴訟代理人弁護士      井 岡 三 郎
同              本 渡 諒 一
同              木 島 喜 一
同              伊 藤 孝 江
   被控訴人(原告)       新興機械工業株式会社
右代表者代表取締役      【B】
右訴訟代理人弁護士      中 務 嗣治郎
同              加 藤 幸 江
同              中 務 尚 子
           主    文
     一 本件控訴を棄却する。
     二 控訴費用は控訴人の負担とする。
           事実及び理由
第一 控訴の趣旨
 一 原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消す。
 二 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
第二 事案の概要
 事案の概要は、次のとおり付加、訂正する他は、原判決「事実及び理由」の
「第二 事案の概要」記載のとおりであるからこれを引用する。
一 原判決の訂正
1 原判決八頁二、三行目「「ハ号意匠」という。」の次に「)を製造販売し
ている。」を加える。
2 原判決一三頁九行目「三」を「二」に、原判決一五頁三行目の「四」を
「三」に、それぞれ改める。
二 当審において追加ないし補足された主張
1 意匠権侵害について(自由技術の抗弁)
【控訴人の主張】
 甲23や検乙5ないし12に見られるとおり、線ガイドを使用してばねを製造
する業者において、本件意匠の出願以前に、線ガイドとその他のツールの摺り合わ
せ加工をし線ガイドを加工していたものであるから、本件意匠にかかる意匠の物品
を製造することは、自由な技術ということができ、許される。
【被控訴人の主張】
 本件各意匠が従前の線ガイドと根本的に異なることは明らかであり、控訴
人が主張するような自由技術に属することなどない。
2 商標権侵害について(訴えの利益)
  【控訴人の主張】
 控訴人は、本件商標権侵害の訴えが提起された後は、「FWG」の標章は
使用していないし、控訴人代表者も、今後の使用の必要性はなく、使用しないこと
を誓っている。したがって、将来にわたる商標使用の差止請求の利益はない。
  【被控訴人の主張】
 控訴人が自らの発行する価格表、納品書等に、その製造、販売する先端線
ガイドの製品名としてFWGの標章を使用していることは、証拠上明らかであり、
控訴人が被控訴人の本件商標権を侵害していることは明白である。したがって、控
訴人主張のような控訴人代表者の言のみで商標権侵害のおそれが覆るはずもない。
 しかも、控訴人は、被控訴人が本件訴訟を提起した後である平成七年四月
四日付け納品書にも右標章の使用を行っており、今後とも控訴人が本件商標権を侵
害するおそれは大である。
3 特許権侵害について(補足主張)
  【控訴人の主張】
(一) 本件発明の出願に当たり、出願人は、「半割り筒状のホルダー
24、24」を本件特許請求の範囲から除外したものであるから、同部材は、「ばね半
製品挟持具20」の一部をなすと解釈されないし、また、仮に右のように解釈される
としても、出願人が意識的に限定したものであるから、「半割り筒状のホルダー
24、24」は、本件特許発明の技術的範囲に属する部材ではない。
(二) 間接侵害に一見該当する行為であっても、それが特許発明の技術的範
囲に属する部分のうち重要な部分でないとき、その行為は特許品の再生(生産)と
みるべきでない場合がある。すなわち、簡単な修理、本質的構成部分でない消耗品
の製造と取替え、あるいは取替えが予定されている部品の製造などの再生行為は、
間接侵害を成立せしめる行為ではないというべきである。
 スプリングチャックは、本件特許発明の基本的構成要素ではなく、取替
品、消耗品で、被控訴人ではなくユーザーにおいて摺合わせ加工と焼入れ加工を要
する物であり、本件発明の実施品の基本的構成部分の寿命を伸ばす効果のある物で
はなく、フック起こし装置と比べて微少な価格の物であり、被控訴人がフック起こ
し装置を販売する際に半割ホルダーの購入義務を課したものでなく、ユーザーが自
身で半割ホルダーを作ってもいる物である。このようなスプリングチャックは、間
接侵害の法理に照らし解釈したとき、本件発明の実施品に「のみ」使用するもので
はない。仮にそうでなくても被控訴人が控訴人に対して本件特許権を主張すること
は権利の濫用として許されない。
  【被控訴人の主張】
 控訴人の主張(一)、(二)は争う。
 スプリングチャックに該当する「半割り筒状のホルダー24、24」は、「ば
ね半製品挟持具20」に含まれるものであり、持替えを要さずにばね半製品をフック
起こし機に移動させることができるという、本件特許発明の作用効果を生じさせる
中核を担う部品である。
第三 当裁判所の判断
 当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する本件請求は、原判決主文掲記の限度
で理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判
決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを
引用する。
一 原判決の訂正等
1 原判決五八頁一〇行目「前記」の次に「1、」を加える。
2 原判決六七頁五行目「(被告の先使用権の有無)」の次に「について」を
加える。
二 当審において追加ないし補足された主張について
1 意匠権侵害(自由技術の抗弁)について
 控訴人は、前記第二の二1のとおり主張するが、前記引用にかかる原判決
「事実及び理由」の第三の一1、2で認定、判断したとおり、本件各意匠は、段落
とし部の位置、形状にその創作的な特徴があるものであって、ユーザーであるばね
製造業者が、成形するばねの形状に合わせて独自に切削した線ガイドの形状(検乙
5ないし12はその例示である。)のいずれとも相違するものである。そして、甲
23に写されている先端線ガイドも本件各意匠を看取できるものとは認めるに足り
ず、その他、本件各意匠と同一形状に切削した先端線ガイドを本件各意匠出願前に
ユーザーが使用していたことを認めるに足る証拠もない。
 したがって、本件各意匠が出願前に公知であったということはできないか
ら、自由技術に属する旨の控訴人の主張は失当という他ない。
2 商標権侵害(訴えの利益)について
 前記引用にかかる原判決「事実及び理由」の第三の二1ないし3において
認定、判断したとおり、控訴人は、「FWG」の標章を商標として使用し、被控訴
人の本件商標権を侵害していたものである。
 また、証拠(甲11、控訴人代表者)及び弁論の全趣旨によると、控訴人
は、平成六年八月二六日、被控訴人から文書で、右標章使用が被控訴人の商標権侵
害となるおそれがある旨警告を受けたが、それ以後も平成七年四月四日頃を含めて
二度にわたり右標章を使用していること、被控訴人が原審及び当審を通じて一貫し
て右被控訴人の商標権侵害について争う姿勢を示していることが認められ、これら
の事実を考慮すると、控訴人において、本件商標権侵害の差止めを命じられない限
り、右標章を使用して将来侵害行為を行うおそれなしとはいい難い。
 したがって、前記第二の二2の控訴人の主張は採用することができない。
3 特許権侵害について
 控訴人は、争点3(一)(侵害の有無)についての原審の認定判断を種々批
判し、前記第二の二3(一)、(二)のとおり主張する。
 しかし、本件発明において、スプリングチャックに該当する「半割り筒状
のホルダー24、24」が「ばね半製品挟持具20」に含まれること、そして、同部材が
本件特許発明の作用効果を生じさせる中核を担う部品であることは、前記引用にか
かる原判決「事実及び理由」の第三の三1で認定、判断したとおりであり、控訴人
の右主張は独自の見解を展開するものであるから、これを採用することはできな
い。
第四 結論
 以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却
することとし、主文のとおり判決する。
(平成一二年四月一二日口頭弁論終結)
     大阪高等裁判所第八民事部
      裁判長裁判官  鳥 越 健 治
               
             裁判官  若 林  諒
             裁判官   西 井 和 徒

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