平成10(行ケ)340行政訴訟 特許権
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裁判所 |
請求棄却 東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成12年6月13日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項2回 民事訴訟法61条1回
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キーワード |
審決23回 実施1回 優先権1回
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主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事件の概要 |
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判決文
平成10年(行ケ)第340号審決取消請求事件
平成12年5月30日口頭弁論終結
判 決
原 告 コーネ・オイ
代表者 【A】
同 【B】
訴訟代理人弁護士 八 掛 俊 彦
同弁理士 【C】
同 【D】
被 告 特許庁長官 【E】
指定代理人 【F】
同 【G】
同 【H】
同 【I】
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日
と定める。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成4年審判第24204号事件について平成10年6月4日にし
た審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
オー・ウント・カー・オーレンシュタイン・ウント・コッペル・アクチェン
ゲゼルシャフトは、1985年(昭和60年)7月24日にドイツ連邦共和国にお
いてした特許出願に基づく優先権を主張して、昭和61年7月23日、発明の名称
を「エスカレータまたは動く歩道用の平行駆動装置」とする発明(以下、審決におい
て判断の対象となっている請求項1に係る発明を「本願発明」という。)について特
許出願したが、平成4年9月4日に拒絶査定を受けたので、同年12月28日、拒
絶査定に対する不服の審判を請求した。特許庁は、同請求を同年審判第24204
号として審理した。上記出願人は、上記審理係属中である1997年(平成9年)
1月14日、特許を受ける権利を原告に譲渡し、原告は、平成9年8月26日、こ
れに伴う特許出願人の名義変更の届出をした。特許庁は、上記審理の結果、平成1
0年6月4日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年7月6
日、原告にその謄本を送達した。なお、出訴期間として90日が付加された。
2 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)
「エスカレータまたは動く歩道用の駆動装置であって、
この駆動装置が循環する踏段帯状体またはパレット帯状体の方向変換範囲内
において、踏段帯状体またはパレット帯状体の内側に設けられ、
駆動装置が歯車装置部分を有する電動機を備え、この電動機が踏段駆動軸ま
たはパレット駆動軸に対して軸線が並行になるように設けられ、かつ他の歯車装置
部分を介して踏段駆動軸またはパレット駆動軸を駆動する駆動装置において、
互いに同軸の電動機と遊星歯車装置とからなる駆動ユニットが、踏段駆動軸
またはパレット駆動軸と手摺駆動軸に対して軸線が平行になるように設けられてい
ることを特徴とする駆動装置。」(別紙図面(1)参照)
3 審決の理由
審決の理由は、別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに、本願発
明は、実公昭42-9716号公報(以下「引用例イ」という。)に記載された発
明(以下「引用発明イ」という。)に、実願昭55-73138号(実開昭57-
570号公報)のマイクロフィルム(以下「引用例ロ」という。)に記載された発
明(以下「引用発明ロ」という。)を適用することにより、当業者が容易に想到す
ることができたものであるから、特許法29条2項に該当し、特許を受けることが
できない、としたものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、2頁2行~3頁18行、4頁13行~末行、5頁8行~19
行は認め、その余は争う。
審決は、引用発明イの認定を誤り(取消事由1)、本願発明と引用発明イと
の対比を誤り(取消事由2)、相違点についての判断を誤り(取消事由3)、本願
発明の顕著な作用効果を看過し(取消事由4)、その結果、本願発明は特許法29
条2項に該当し特許を受けることができないとの誤った結論に至ったものであっ
て、違法であるから、取り消されるべきである。
1 取消事由1(引用発明イの認定の誤り)
審決は、引用発明イが、「駆動ユニットが、踏段駆動軸と手摺駆動軸に対し
て軸線が平行になるように設けられている」との構成を有する旨認定するが、誤っ
ている。
引用例イの第2図(別紙図面(2)第2図参照)に記載された駆動ユニットは、
エスカレ-タにおけるものではあるものの、踏段駆動軸のみに対するものであっ
て、同図には、手摺駆動軸もその駆動手段も、さらには、それらの駆動関係につい
ても、全く記載されておらず、また、同図を離れて同引用例の全体をみても、手摺
駆動軸とその駆動手段及びそれらの駆動関係は全く記載されていないから、引用発
明イのエスカレ-タにおいて、「踏段駆動軸と手摺駆動軸」が互いに平行となると
も、駆動ユニットが「手摺駆動軸に対して軸線が平行になる」とも、いうことはで
きない。
2 取消事由2(本願発明と引用発明イとの対比の誤り)
引用発明イは、上記のとおり、「駆動ユニットが、踏段駆動軸と手摺駆動軸
に対して軸線が平行になるように設けられている」という構成を有していないか
ら、本願発明と引用発明イとが、上記の点で一致するとした審決の認定が誤ってい
ることは、明らかである。
また、審決は、(イ)具体的課題において、引用発明イが、「スペ-スの節約
を図る」というだけのものであるにすぎないのに対して、本願発明は、「必要なス
ペ-スが少なく済むだけでなく、同時に電気的出力を高めることができるコンパク
トなエスカレータ駆動構造体を提供する」ものである、(ロ)本願発明は、「モ-タ
と遊星歯車装置とから成る駆動ユニット」、「その駆動ユニットを踏段帯状体下の
空間内に収納できる」との構成を有するのに対して、引用発明イには、このような
構成がない、という重要な相違点を看過している。
3 取消事由3(相違点についての判断の誤り)
実願昭55-73138号(実開明57-570号公報)のマイクロフィル
ム(以下「引用例ロ」という。)の第6図に、引用発明イと同一の技術分野に属す
るものと認められるエスカレータの駆動装置において、電動機16の出力を遊星歯
車装置20により減速する点が記載され、さらに、遊星歯車装置を採用すれば、比
較的小型化が図れ、モータと同軸とすることができる点も開示されていることは、
事実である。
しかし、引用発明イと同ロとは、具体的課題及び具体的構成が明らかに相違
しているので、引用発明イ及び同ロを組み合わせる動機付けが見当たらない。ま
た、当業者といえども、引用発明イ及び同ロから本願発明の「モ-タと遊星歯車装
置とから成る駆動ユニットを踏段帯状体下の空間内に収納できる」構成及び本願発
明の「踏段駆動軸と手摺駆動軸を同じモ-タで駆動する」構成を想起することはで
きない。
4 取消事由4(顕著な作用効果の看過)
本願発明は、遊星歯車装置の寸法、特に軸方向における寸法が非常に短いの
で、電動機と組み合わせた駆動ユニットの全体の寸法が小さく、そのため、踏段帯
状体又はパレット帯状体の間隔が狭いにもかかわらず、踏段帯状体又はパレット帯
状体の方向変換範囲内において踏段帯状体又はパレット帯状体の内側に駆動ユニッ
トを配置することができ、したがって、エスカレータ又は動く歩道の全長を短縮す
ることができ、さらに、遊星歯車装置によって大きな減速が得られるので、電動機
の出力を高めることができ、エスカレータ又は動く歩道の電動機として実際に使用
可能である、という顕著な効果を奏するものである。
第4 被告の反論の要点
審決の認定判断に誤りはなく、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(引用発明イの認定の誤り)について
引用例イにおいて、その第1図(別紙図面(2)第1図参照)の符号20で示さ
れたものは、明らかに手摺であり、また、踏段と手摺を有するエスカレータにおい
て、踏段駆動軸と手摺駆動軸の軸線を互いに平行となるようにして、踏段と手摺
を、同期して同じ方向に駆動することは、例えば乙第1号証の図面(特に第1、
2、4図)と発明の詳細な説明中の関係する箇所の記載、乙第2号証の図面(特に
第2図)と詳細な説明中の関係する箇所の記載に示されているように、本願発明の
出願前周知の技術であった。そして、引用発明イのエスカレータにおいて、踏段駆
動軸と手摺駆動軸の各軸線を平行でないものとすべき特段の事情があるものとは認
められないことから、引用発明イにおいても、踏段駆動軸と手摺駆動軸の各軸線は
平行であることが、実質的に開示されているということができる。
2 取消事由2(本願発明と引用発明イとの対比の誤り)について
(1) 本願発明と引用発明イとが「駆動ユニットが、踏段駆動軸と手摺駆動軸に
対して軸線が平行になるように設けられている」点で一致するとした審決の認定に
誤りはない。
(2) 本願発明は「必要なスペースが少なく済むだけでなく、同時に電気的出力
を高めることができるコンパクトなエスカレータ駆動構造体を提供する」という点
については、課題又は効果についての主張にすぎず、失当である。
また、引用例イに、「表側の踏段1と帰路側の踏段1との間に生じる空間
S(第4図参照)を有効に利用するエスカレータの原動機取付装置の構造にかかわ
るものである。」(甲第5号証の1頁左欄29行~32行、別紙図面(2)第4図参
照)と明確に記載されていることからすると、駆動ユニットを踏段帯状体下の空間
内に収納できる点が引用例イに記載されていないとする原告の主張は、誤りである
ことが明らかである。
3 取消事由3(相違点についての判断の誤り)について
本願発明と引用発明イとの課題は共通しており、構成も、駆動ユニットの歯
車装置が、本願発明においては遊星歯車装置を用いているのに対し、引用発明イに
おいては、ギヤードモータなどを利用した電動機付原動機10の歯車装置部分がど
のような歯車装置からなるものかが不明である点以外に相違はない。そして、引用
例ロの「駆動装置全体の配置は大変小さくなる」「しかも遊星歯車減速機で
は・・・小型に設計できる」「遊星歯車減速機そのものが小型であるため・・・エ
スカレータの機械室に十分収まる幅となる」(5頁2行~6頁11行)等の記載か
らみて、産業上の利用分野(エスカレータ)も、解決すべき課題(コンパクト化)
も、引用発明イと同じものであるエスカレータにおいて、互いに同軸の電動機と遊
星歯車装置を用いたものが記載されている。したがって、引用発明イの電動機付原
動機10の減速装置部分に、引用発明ロの遊星歯車装置を適用することが困難とす
る理由はない。原告の主張は、失当である。
4 取消事由4(顕著な作用効果の看過)について
本願発明と引用発明イの課題を比較すると、必要なスペースが少なく済む点
で一致することは明らかである。
また、本願発明が電気的出力を高めることができる点は、「第3図に示すよ
うに、手摺駆動軸4の傍らに、他の電動機1aと他の遊星歯車駆動装置2aとから
なる他の駆動ユニットを設けると、電動機1と遊星歯車装置2とからなる駆動装置
を一つだけ備えた前述の両図(1図と2図)の構造はその駆動出力を・・・飛躍的
に増大することができる。その際、頂部長さを大幅に変更する必要がない。」(甲
第2号証10頁11行~18行)との記載からみて、駆動ユニットを複数個設けた
場合にはじめて得られるものであり、本願発明から直ちにもたらされるものではな
い。
さらに、原告が主張する遊星歯車装置を適用した場合の効果は、遊星歯車装
置が本来持っている効果である。
小型である点、モータと同軸にできる点、ウオームギアなどに較べ伝達効率
が良い点等は、当業者において自明であり、引用例ロにも記載されている効果にす
ぎない。
第5 当裁判所の判断
1 本願発明の概要
甲第2号証及び甲第4号証によれば、本願明細書には次の記載があることが
認められる。
(1) 産業上の利用分野
「本発明は、方向変換範囲内および回転する踏段帯状体またはパレット帯状
体の中に設けられ、電動機、歯車装置、踏段駆動手段またはパレット駆動手段、お
よび手摺駆動手段を備えた、エスカレータまたは動く歩道のための平行駆動装置に
関する。」(甲第2号証4頁11行~16行)
(2) 発明の課題
「本発明の課題は、エスカレータまたは動く歩道のための一層コンパクトな
駆動装置を提供することである。この駆動装置は更に、公知のすべての実施形と比
べてエスカレータまたは動く歩道の必要スペースを狭くすると共に、電気的出力を
高めるように構成すべきである。」(甲第4号証1頁22行~25行)
(3) 発明の構成
本願発明は、上記課題を解決するために、特許請求の範囲記載の構成を採
用した。(甲第4号証1頁27行~2頁6行)
(4) 発明の効果
「本発明は上記構成を採用したことにより、次のような効果を奏する。遊星
歯車装置の特に軸方向における寸法が非常に短いので、電動機と組み合わせた駆動
ユニットの全体の寸法が小さい。そのため、踏段帯状体またはパレット帯状体の間
隔が狭いにもかかわらず、踏段帯状体またはパレット帯状体の方向変換範囲内にお
いて踏段帯状体またはパレット帯状体の内側に駆動ユニットを配置することができ
る。従って、エスカレータまたは動く歩道の全長を短縮することができる。更に、
遊星歯車装置によって大きな減速が得られるので、電動機の出力を高めることがで
き、エスカレータまたは動く歩道の原動機として実際に使用可能である。」(甲第
4号証2頁8行~末行)、「歯車装置ユニットの効率改善、特に中間歯車の省略
は、人員輸送帯状体の運転時のエネルギー節約につながる。必要な場合には、手摺
駆動軸を歯車装置の平歯車を介して直接的にでなく、チェーンを介してパレット駆
動軸または踏段駆動軸によって駆動することができる。」(甲第2号証8頁9行~
14行)
2 取消事由1(引用発明イの認定の誤り)について
甲第5号証によれば、引用例イに、「エスカレ-タの駆動装置であって、こ
の駆動装置が循環する踏段帯状体の方向変換範囲内において、踏段帯状体の内側に
設けられ、駆動装置が歯車装置部分を有する電動機(ギヤーモータなどを利用した
電動機付原動機10)を備え、この電動機が踏段駆動軸(主軸13)に対して軸線
が平行になるように設けられ、かつ他の歯車装置部分(歯車12、14)を介して
踏段駆動軸を駆動する駆動装置において、互いに同軸の電動機と歯車装置とからな
る駆動ユニットが、踏段駆動軸と手摺駆動軸に対して軸線が平行になるように設け
られている駆動装置。」(審決書4頁1行~12行)との技術(引用発明イ)が記
載されているものと優に認めることができ、そのように認定した審決に誤りはな
い。
原告は、審決の上記認定中の「駆動ユニットが、踏段駆動軸と手摺駆動軸に
対して軸線が平行になるように設けられている」との部分につき、エスカレータに
おいて踏段駆動軸と手摺駆動軸が互いに平行となること、及び、駆動ユニットは手
摺駆動軸に対しても軸線が平行であることは、引用例イの記載から何ら導き出され
るものでない旨主張するが、採用できない。
甲第5号証によれば、引用例イの第1図には、符号20で示された手摺部材
の記載があることが認められる。エスカレータにおける踏段と手摺とが、同一方向
へ、同一速度で駆動されることによって、これに乗っている人々を安全に搬送する
ものであることは、当裁判所に顕著であり、このことからすれば、引用発明イの上
記手摺部材を駆動する手摺駆動軸の軸線が、特別の事情でもない限り、踏段を駆動
する踏段駆動軸のそれと平行となっていることは、明らかというべきである。ま
た、踏段駆動軸と手摺駆動軸との軸線が平行となっている場合に、これらを駆動す
る駆動ユニットの軸を、上記両軸と平行とするのが最も自然かつ合理的であること
もまた、論ずるまでもないところである。
原告の主張は、失当というほかない。
3 取消事由2(本願発明と引用発明イとの対比の誤り)について
(1) 上記認定によれば、審決が、本願発明と引用発明イとを対比し、「駆動ユ
ニットが、踏段駆動軸と手摺駆動軸に対して軸線が平行になるように設けられてい
る」点で一致するとしたことに誤りのないことは明らかである。
(2) 原告は、具体的課題において、引用発明イが、「スペ-スの節約を図る」
だけのものであるにすぎないのに対して、本願発明は、「必要なスペ-スが少なく
済むだけでなく、同時に電気的出力を高めることができるコンパクトなエレベ-タ
駆動構造体を提供する」ものである点で相違している旨主張する。しかし、原告主
張の具体的課題は、あくまで課題であって、本願発明の構成とはなっていないこと
は、特許請求の範囲の記載や本願明細書の記載から自明である。
また、原告は、審決は、本願発明が「その駆動ユニットを踏段帯状体下の
空間内に収納できる」との構成を有するのに対して、引用発明イはこのような構成
を有していない点で相違していることを看過している旨主張する。しかし、本願発
明が、上記構成を有するものではないことは、本願発明の特許請求の範囲の記載か
ら明らかである。
原告の主張は、失当である。
4 取消事由3(相違点についての判断の誤り)について
(1) 本願発明の特許請求の範囲の記載と前記2(1)認定の引用発明イを対比す
れば、本願発明と引用発明イとは、駆動ユニットの歯車装置が、本願発明において
は遊星歯車装置を用いているのに対し、引用発明イにおいては、ギヤードモータな
どを利用した電動機付原動機10の歯車装置からなる点で相違し、その余の点では
一致していることが明らかである。
そして、引用例ロには、同一の技術分野に属するものと認められるエスカ
レータの駆動装置において、電動機16の出力を遊星歯車装置20により減速する
点が記載されていること、「遊星歯車装置を採用すれば、比較的小型化が図れ、モ
ータと同軸とすることができる点」(審決書5頁17行~18行参照)も開示され
ていることは、原告も認めるところである。
そうすると、引用発明イにおける電動機付原動機10の減速装置部分に代
えて、引用発明ロの遊星歯車装置を採用することは、当業者が、ごく容易になし得
たことというべきである。
(2) 原告は、引用発明イ及び同ロは、その具体的課題及び具体的構成が明らか
に相違しているので、引用発明イ及び同ロには両者を組み合わせる動機付けが見当
たらないなどと主張するが、いずれも失当であることは、上述したところから、明
らかというべきである。
5 取消事由4(顕著な作用効果の看過)について
原告が特許性の根拠として主張する作用効果は、いずれも、引用発明イに引
用発明ロの遊星歯車装置を適用して本願発明の構成をとった場合の、自明の効果に
すぎない。
6 以上によれば、原告主張の審決取消事由は、いずれも理由がなく、その他、
審決の認定判断にはこれを取り消すべき瑕疵が見当たらない。よって、原告の請求
を棄却することとし、訴訟費用の負担、上告及び上告受理の申立てのための付加期
間について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項を各適用して、主
文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 宍 戸 充
裁判官 阿 部 正 幸
別紙図面(1) 別紙図面(2)
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