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平成11(行ケ)133行政訴訟 特許権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成12年3月30日
事件種別 民事
対象物 吸水性拭き布の製造方法
法令 特許権
特許法36条4項1回
キーワード 実施11回
特許権2回
主文
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 原告は、発明の名称を「吸水性拭き布の製造方法」とする特許第2630164 号(平成4年4月6日特許出願、平成9年4月18日設定登録。以下「本件特許」 といい、その発明を「本件特許発明」という。)の特許権者である。

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判決文

平成11年(行ケ)第133号 特許取消決定取消請求事件
         判    決
  原      告      王子製紙株式会社
  代表者代表取締役      【A】
  訴訟代理人弁理士      【B】
  被      告    特許庁長官 【C】
  指定代理人         【D】
  同             【E】
  同             【F】
  同             【G】
主    文
特許庁が平成10年異議第70083号事件について平成11年3月5日にした
決定を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
事    実
第1 請求
 主文と同旨の判決
第2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯
原告は、発明の名称を「吸水性拭き布の製造方法」とする特許第2630164
号(平成4年4月6日特許出願、平成9年4月18日設定登録。以下「本件特許」
といい、その発明を「本件特許発明」という。)の特許権者である。
 【H】は、平成10年1月8日、本件特許につき特許異議の申立てをした。
 特許庁は、この申立てを平成10年異議第70083号事件として審理した結
果、平成11年3月5日、本件特許を取り消す旨の決定をし、その謄本は、同年4
月14日原告に送達された。
 2 本件特許発明の特許請求の範囲の記載
 多数の疎水性長繊維が集積されてなる長繊維不織布と、実質的にパルプ繊維で構
成され該パルプ繊維相互間が結合されてなる紙シートとを積層した積層体に、紙シ
ート側から長繊維不織布側に貫通するように、且つ下記式で定義される付加エネル
ギーEが0.1~0.8kwhになるように、高圧水柱流を施すことにより、該疎
水性長繊維と該パルプ繊維とを相互に絡合させると共に、該パルプ繊維を該長繊維
不織布の非当接面に、該長繊維不織布の表面積に対して2面積%以上露出せしめる
ことを特徴とする吸水性拭き布の製造方法。
          記           
      E=(QρV2)/2      
〔式中、Eは高圧水柱流の付加エネルギーを表わし、Qは積層体1kgの処理に必
要な水の重量を表わし、ρは使用する水の比重を表わし、Vは高圧水柱流の流速を
表わす。〕
 3 決定の理由
決定の理由は、別紙決定書の理由写し(以下「決定書」という。)に記載のとお
りであり、決定は、本件特許発明は、発明の詳細な説明に当業者が容易にその実施
をすることができる程度にその発明の構成が記載されているものとは認めることが
できず、特許法36条4項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消さ
れるべきである旨判断した。
第3 決定の取消事由
1 決定の認否
  (1) 決定の理由(Ⅰ)(手続きの経緯)、同(Ⅱ)(本件特許発明)、及び同
(Ⅲ)(特許異議の申立ての理由の概要)は認める。
  (2) 同(Ⅳ)(特許異議の申立てについての判断)のうち、取消理由通知の概
要(決定書8頁3行ないし9行)及び特許権者の意見の概要(同8頁10行ないし
13頁11行)は認め、その余は争う。
  (3) 同(Ⅴ)(むすび)は争う。
 2 取消事由
決定は、本件明細書の発明の詳細な説明に当業者が容易に実施をすることができ
る程度にその発明の構成が記載されているものとは認められないと誤って判断した
ものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。
 (1) 本件明細書の発明の詳細な説明中の記載に基づいて、数回の実験を繰り返
すことにより、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された付加エネルギーの数値
を実現する諸条件を決定することができる。
   ア 例えば、本件明細書(甲第2号証)の実施例1で使用した具体的数値を
用いて説明すると、まず、高圧水柱流噴出装置を準備する。この装置は、化繊ノズ
ル製作所等に注文すれば所望のものを入手することができる(甲第3号証)。
   イ 実施例1で用いられた高圧水柱流噴出装置は、ノズル孔の径が0.12
mmであり、このノズル孔が16個/cmの割合で1列に並んだものである(甲第
2号証8欄38行ないし40行)。
 また、高圧水柱流噴出装置の有効巾は52cmとし、積層体の処理巾は50cm
として、積層体に確実に高圧水柱流が付与されるようにすると、ノズル孔は有効巾
全体にわたって設けられているから、ノズル孔の総数は、16×52=832個と
なる。
   ウ この高圧水柱流噴出装置を用いて、50kg/cm2の水圧で高圧水柱
流を噴出させた(甲第2号証8欄40行、41行)。そして、1分間に噴出した水
量(体積)の実測(例えば、噴出した水をたらい等の容器で受けて実測した)(5
6リットル)から、1秒間に噴出した水量(体積)を算出し(9.33×10-4m
3/s)、この噴出した水量(体積)とノズル孔の総数とから1個のノズル孔から
噴出した水量(体積)が算出される(9.33×10-4m3/s÷832=1.1
2×10-6m3/s)。
 1個のノズル孔から噴出した水量(体積)をノズル孔の径から算出されたノズル
孔の断面積(0.0113mm2=1.13×10-8m2)で割ると、噴出した高
圧水柱流の流速が求められ(9.91×10m/s)、これが本件特許請求の範囲
に記載されたVの値である。
   エ このような高圧水柱流を積層体に付与する。積層体は、坪量10g/m
2の長繊維不織布と坪量40g/m2の紙シートとが積層されたもの(甲第2号証8
欄28行ないし34行)であるから、坪量50g/m2となっている。積層体の処
理巾(50cm)と1.52×10-1m/sに設定した積層体の移送速度とから、
1秒間に処理される積層体の面積(7.60×10-2m2/s)、さらには、この
面積と積層体の坪量とから、1秒間に処理される積層体の重量が算出される(3.
80×10-3kg/s)。
 他方、先に算出した1秒間に噴出した水量(体積)(9.33×10-4m3/
s)は、高圧水柱流噴出装置の有効巾にわたるものであるから、これを積層体の処
理巾当たりとして1秒間に積層体を処理する水量(体積)が算出される(8.97
×10-4m3/s)。そして、1秒間に処理される積層体の重量と1秒間に処理す
る水量(体積)とから、積層体の1kgに対しての水量(体積)が算出され(8.
97×10-4/3.80×10-3=2.36×10-1m3)、水の密度は1g/
cm3とすることができるから、処理に要した水の重量は2.36×102kgと
なり、これが本件特許請求の範囲に記載されたQの値である。
   オ 以上の結果、Q及びVの値が求められるから、これを本件特許請求の範
囲に記載されたE=(QρV2)/2なる付加エネルギー式に代入する。なお、水
の比重ρは1とすることができる。
E=(2.36×102kg)×(9.91×10m/s)2÷2=1.16×1
06kg・m2/s2
 そして、単位をkwhで表示すると(1kg・m2/s2=1J(ジュール)=
2.78×10-7kwh)、E=0.32kwhとなる(甲第2号証8欄42行な
いし44行)。
   カ したがって、本件特許発明の場合、ノズル孔径、ノズル数、積層体の処
理巾、積層体の移送速度、高圧水柱流を噴出させるときの圧力の諸条件を、本件特
許発明の実施例等に基づいて、取りあえず一定に定め、Q及びVを実測すれば、容
易に付加エネルギーEを算出することができ、上記諸条件を任意に変更することに
よって、自由に付加エネルギーを本件特許発明の範囲にすることができる。特に、
高圧水柱流噴出装置が準備されると、ノズル孔径、ノズル数及び積層体の処理巾
は、ある程度決まってしまうので、一般に、積層体の移送速度を遅くして付加エネ
ルギーを大きくしたり、又は積層体の移送速度を速くして付加エネルギーを小さく
することができる。
 よって、当業者は高圧水柱流噴出装置さえ準備すれば、容易に本件特許発明の付
加エネルギーの数値を実現し、容易に本件特許発明を実施することができるもので
ある。
  (2)ア 被告は、被処理物である積層体が受け取る付加エネルギーEを実際に測
定して求めることは非常に困難である旨主張するが、被告のこの点の主張は、上記
のとおり理由がない。
   イ 被告は、ノズルの配列が1列の場合と2列又は3列の場合とでは、積層
体の受ける付加エネルギーが変わってくる旨主張するが、ノズルの配列が何列であ
ろうとも、水の重量や水の流速を実測するのに何の困難もなく、付加エネルギーが
変わることはない。
   ウ 被告は、高圧水柱流噴出装置とコンベアの位置に高低差があれば、位置
エネルギーが加わり、エネルギー量が変わってくる旨主張するが、ノズル孔と積層
体との高低差は概ね5ないし50cm程度であり、それによる位置エネルギーは無
視し得る程度のものである。したがって、本件特許発明においては、位置エネルギ
ーは無視して、水の重量と水の流速によって付加エネルギー量を規定しているもの
である。
   エ 被告は、付加エネルギーの次元はジュール「J」であって、「kwh」
とはならないと主張するが、「1kwh=3600000J」(甲第4号証)なの
であり、両者共に換算可能なエネルギー値の次元である。
第4 決定の取消事由に対する認否及び反論
1 認否
   原告主張の決定の取消事由は争う。
 2 反論
  (1) 本件特許発明で使用する高圧水柱流噴出装置には、エネルギー計(kw
h)があって、水圧を調整すれば、その結果がエネルギー計(kwh)に表示され
るものであると仮定しても、それは、高圧水柱流噴出装置からの出力エネルギーで
あって、積層体は移送コンベアに載って移動しているので、コンベアの移送速度に
よって積層体の受ける付加エネルギーEは変わってくるものである。そして、被処
理物が受け取る付加エネルギーEを実際に測定して求めることは非常に困難であ
る。
  (2) 原告は、当業者は水の重量Qと水の速度Vとを調整して、容易に本件特許
発明の付加エネルギーにすることができる旨主張する。
 しかしながら、本件特許発明の製造方法においては、高圧水柱流を噴出するノズ
ルを有する装置と積層体を移送するコンベアという互いに独立に出力エネルギーを
有する2つの装置が必要であるが、このような2つのエネルギー出力装置を必要と
する方法においては、これら装置間の関係において、種々の条件が加わり、単に水
の重量Qと水の速度Vだけでは一義的に積層体の受ける付加エネルギーEは定まら
ないから、当業者といえども、水の重量Qと水の速度Vとを調整して容易にその付
加エネルギーEを求めることはできないものである。
 例えば、高圧水柱流噴出装置のノズルの配列がコンベアの進行方向に横1列の場
合と2列又は3列の場合とでは、水の重量Qと水の速度Vが同じであっても、積層
体の受ける付加エネルギーEは2倍、3倍と変わってくるものである。
 また、高圧水柱流噴出装置のノズルの位置とコンベアの位置に高低差があれば、
積層体には、高圧水柱流噴出装置からの出力エネルギーのほかに、その高低差分に
応じた位置エネルギーが付加されるから、この場合も、水の重量Qと水の速度Vが
同じであっても、積層体の受ける付加エネルギーEは変わってくるものである。
 さらに、Qρとして水の重量(kg)が求められたとしても、この式はMKS系
のエネルギー単位であるから、その付加エネルギーEの次元はジュールであって、
kwhにはならないものである。
         理    由
1(1) 甲第2号証によれば、本件明細書には、「実施例1
 ・・・この長繊維不織布を構成するポリプロピレン長繊維の繊度は、2.5デニ
ールであり、長繊維不織布の坪量は、10g/m2であった。この長繊維不織布の
表面に、パルプ繊維以外の繊維を含有していない紙シートを積層した。この紙シー
トは、JISP 8124に示された方法で測定した坪量が40g/m2であっ
た。・・・そして、紙シートが上に位置し、長繊維不織布が下に位置するようにし
て積層し、移送コンベア上に載置した。次いで、この移送コンベアで積層体を移送
させながら、孔径0.12㎜のノズル孔が、16個/㎝の間隔で並んでいる高圧水
柱流噴出装置を用いて、50kg/㎝2の水圧で高圧水柱流を噴出させ、紙シート
の表面から長繊維不織布の背面に貫通するようにして、高圧水柱流を施した。な
お、この高圧水柱流の積層体1kgに対する付加エネルギーは、0.32kwhで
あった。」(8欄25行ないし44行)と記載されていることが認められる。
 また、甲第2号証によれば、本件明細書には、実施例2ないし実施例5として、
いずれも上記実施例1と同様の具体的な記載がされていることが認められる。
 これらの記載によれば、高圧水柱流噴出装置のノズル孔の並び方は、直線的であ
って、ノズル孔が所定の長さにわたって配されていること、また、その高圧水柱流
噴出装置によって積層体に高圧水柱流を施す態様は、所定巾の積層体を移送方向が
その巾方向とほぼ直角の方向に移送し、上記ノズル孔の配列が積層体の巾方向とほ
ぼ一致するよう高圧水柱流噴出装置を配置していること、さらに、処理されるもの
の品質の均質性等を考慮することが一般的であることからして、積層体の移送速度
や高圧水柱流の水圧等の処理条件を一定にして積層体に高圧水柱流を施しているこ
とが認められ、このことは、本件明細書に接する当業者にとって自明のことと認め
られる。
 そして、弁論の全趣旨によれば、そのような高圧水柱流噴出装置においては、
「処理される積層体巾」や「積層体の移送速度」を適宜設定することができるもの
であり、そのことも、本件明細書に接する当業者にとって自明のことであると認め
られる。
 (2) 次に、この態様において、本件特許発明の付加エネルギーEが求められるか
を検討する。
  ア まず、高圧水柱流噴出装置から高圧水柱流を噴出させ、一定時間内(例え
ば1分間)に噴出した水をたらい等の容器で受けるなどしてこれを実測して「単位
時間当たりの噴出総水量(体積)」を求め、この「単位時間(例えば1秒間)当た
りの噴出水量(体積)」と「高圧水柱流噴出装置に設けられたノズル孔の総数」か
ら、「単位時間当たりの1個のノズル孔からの噴出水量(体積)」が算出されるこ
と、この「単位時間当たりの1個のノズル孔からの噴出水量(体積)」と「ノズル
孔の断面積」とから、噴出した高圧水柱流の流速、すなわち、本件特許発明のVの
値を求めることができることは、明らかである。
  イ 他方、「積層体の坪量」は、実測するなどして得られ、「積層体の坪
量」、積層体の巾のうち「処理される積層体巾」(「ノズル孔の配列長さ」より積
層体の巾を短く設定すれば、積層体の巾と一致する。)及び「積層体の移送速度」
とから、「単位時間当たりに処理される積層体の重量」が算出されることも、明ら
かである。
  ウ 次に、上記のように実測した「単位時間当たりの噴出総水量(体積)」、
「ノズル孔の配列長さ」に対する「処理される積層体巾」の割合とから、「単位時
間当たりに積層体を処理する水量(体積)」が算出され、この「単位時間当たりに
積層体を処理する水量(体積)」、「単位時間当たりに処理される積層体の重
量」、及び使用状態においてほぼ「1」である水の密度から、単位重量(1kg)
当たりの積層体の処理に使用した水の重量、すなわち、本件特許発明のQの値が求
められることは、明らかである。
  エ そうすると、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づい
て、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された「付加エネルギーEが0.1~
0.8kwhになるように」、「E=(QρV2)/2」との条件を満たすように
高圧水柱流噴出装置の仕様を決め、積層体の巾や移送速度を適宜に設定することが
できるものと認められる。
 (3)ア 被告は、被処理物である積層体が受け取る付加エネルギーEを実際に測定
して求めることは非常に困難である旨主張するが、上記(2)に説示のとおり、その測
定に技術上の困難性があると認めることはできないから、この点の被告の主張は採
用することができない。
  イ 被告は、高圧水柱流噴出装置のノズル孔の配列がコンベアの進行方向に横
1列の場合と2列又は3列の場合とでは、「水の重量Qと水の速度V」とが同じで
あっても、積層体の受ける付加エネルギーEは2倍、3倍と変わってくる旨主張す
る。
 しかしながら、本件特許発明における付加エネルギーEは、(QρV2)/2と
定義されているものであるから、ρがほぼ定数であることを考慮すると、ノズルの
配列数が変わっても、Q及びVが同じ値であれば、これらによって定義された付加
エネルギーEの値が変わることはないものであり(例えば、コンベアの進行速度が
同じであれば、ノズル孔の配列を1列、水の重量をQ′、水の速度をV′とした場
合と、ノズル孔の配列を2列、各列のノズル孔から噴出される水の重量をQ′/
2、水の速度をV′とした場合とでは、付加エネルギーEの値は変わらない。)、
被告の上記主張は理由がない。
  ウ 被告は、高圧水柱流噴出装置のノズルの位置とコンベアとの位置に高低差
があれば、積層体にはその高低差分に応じた位置エネルギーが付加されるから、水
の重量Qと水の速度Vが同じであっても、積層体の受ける付加エネルギーEは変わ
ってくる旨主張する。
 しかしながら、弁論の全趣旨によれば、通常の高圧水柱流噴出装置においては、
ノズル孔と積層体との高低差は概ね5ないし50cm程度であって、これを超える
高低差は当業者の技術常識上想定し難いことが認められ、前記程度の高低差の場合
の位置エネルギーは、付加エネルギーEの最低値0.1kwhの場合についても、
ほとんど無視し得る程度のものと認められるから、被告の上記主張は採用すること
ができない。
  エ 被告は、Qρとして水の重量(kg)が求められたとしても、この式はM
KS系のエネルギー単位であるから、その付加エネルギーEの次元は、ジュールで
あって、kwhにはならない旨主張する。
 しかしながら、甲第4号証(化学大辞典4)によれば、「ジュール」とは、「仕
事および熱量(エネルギー)の単位.記号J.大きさ1N(ニュートン*)の力が
その方向に物体を1m動かすときにする仕事を1ジュールという.1J=1000
0000エルグ.1kW・hr=3600000J」(729頁右欄)であること
が認められ、ジュールとkwhとは同じ仕事量の単位であって、換算可能なものと
認められる。したがって、(QρV2)/2と定義されたものの単位をkwhに変
換して記載することは、何ら不自然なことではなく、被告の上記主張は理由がな
い。
 (4) したがって、「本件特許請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明には、当
業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の構成が記載されてい
るものとは認めることができない」(決定書15頁14行ないし17行)とした決
定の判断は、誤りであり、原告主張の取消事由は理由がある。
2 結論
 以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、主文の
とおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成12年3月23日)
東京高等裁判所第18民事部
     裁判長裁判官   永  井  紀  昭
      裁判官   塩  月  秀  平
     裁判官  市  川  正  巳

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