平成11(行ケ)299審決取消請求事件
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成12年2月1日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
商標権
商標法4条1項15号3回 民事訴訟法61条1回
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キーワード |
審決12回
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主文 |
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事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯
原告は、「POLOTEAM」との欧文字を横書きしてなり、第22類「はき物
(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」を指定商
品とする商標(以下「本願商標」という。)について、平成2年5月10日、商標
登録出願(平成2年商標登録願第51576号)をしたが、平成6年8月3日(平
成7年1月27日発送)に拒絶査定を受けたので、平成7年2月22日、拒絶査定
不服の審判請求をした。特許庁は、これを平成7年審判第3593号事件として審
理した結果、平成11年7月23日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との
審決をし、同年8月18日、その謄本を原告に送達した。 |
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判決文
平成11年(行ケ)第299号審決取消請求事件
平成11年12月2日口頭弁論終結
判 決
原 告 株式会社ハスキー
代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
被 告 特 許 庁 長 官 【C】
指定代理人 【D】
同 【E】
同 【F】
補助参加人(被告)ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナー
シップ
代表者 【G】
訴訟代理人弁理士 【H】
同 【I】
同 【J】
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成7年審判第3593号事件について平成11年7月23日にした審
決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、「POLOTEAM」との欧文字を横書きしてなり、第22類「はき物
(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」を指定商
品とする商標(以下「本願商標」という。)について、平成2年5月10日、商標
登録出願(平成2年商標登録願第51576号)をしたが、平成6年8月3日(平
成7年1月27日発送)に拒絶査定を受けたので、平成7年2月22日、拒絶査定
不服の審判請求をした。特許庁は、これを平成7年審判第3593号事件として審
理した結果、平成11年7月23日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との
審決をし、同年8月18日、その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由
審決の理由は、別添審決書の理由の写しのとおりである。要するに、本願商標
が、【K】のデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する周知の商標、すなわ
ち、横長四角形中に記載された「Polo」の文字からなる商標、「by RAL
PH LAUREN」の文字からなる商標、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図
形からなる商標(以下、これらを「ポロ商標」と総称する。)と紛らわしく、指定
商品も関連性を有するので、このような事情の下において、本願商標をその指定商
品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、周知のポロ商標を連想、
想起し、該商品が【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業
務に係る商品との間で、出所の混同を生ずるおそれがあるから、本願商標は商標法
4条1項15号に該当するというものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
本願商標は、ポロ商標の「Polo」と称呼、外観及び観念を異にし、ポロ商標
と紛らわしいものではないので、本願商標をその指定商品に使用しても、【K】や
同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と、その出所に
おいて混同を生ずるおそれはないから、本願商標は商標法4条1項15号には該当
しない。審決は、この点についての認定判断を誤ったものであって、この誤りは結
論に影響を及ぼすものであるから、違法として取り消されるべきである。
すなわち、本願商標である「POLOTEAM」の語は、一連不可分に「ポロチ
ーム」との称呼を生じ、また、この語句を構成する「POLO」と「TEAM」の
語を組み合わせたものとは異別の一体不可分の1個の英語として、ポロ競技の一方
の対戦相手である球技者集団との観念を生じするものである。一方、ポロ商標の
「Polo」の語は、「ポロ」の称呼を生じ、ポロ競技という一般的な観念を生じ
るものである。したがって、本願商標である「POLOTEAM」の語とポロ商標
の「Polo」の語とは、称呼、観念が相違するものである。外観が相違すること
は、当然である。
このように、本願商標は、ポロ商標の「Polo」と称呼、外観及び観念を異に
しているので、本願商標から「ポロ」を想起し、ポロ商標を連想することはなく、
したがって、本願商標をその指定商品に使用しても、【K】又は同人と組織的・経
済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品との間で、出所の混同を生ずるおそ
れはない。
第4 被告の反論の要点
審決の認定判断は、正当であり、取り消されるべき理由はない。
我が国では、ポロ競技は、馴染みが薄く、本願商標の指定商品に係る需要者にお
いては、「ポロ競技」がチーム構成で行われることまで知られているとは認め難い
から、「POLOTEAM」の語句が一連に称呼されるなどとは考えられない。ま
た、「POLOTEAM」と一連で表現されることがあるとしても、「ポロ競技」
の意味を有する「POLO」の語と、「TEAM」の語とを結合した言葉と認識さ
れるとみるのが自然であって、これら2語の有する意味を離れて別の意味合いを看
取させるものではないというべきである。
ポロ商標は、【K】のデザインに係る被服類及び眼鏡類について使用する商標と
して、遅くとも本願商標の登録出願時には既に取引者・需要者間に広く認識されて
いたものであること、本願商標の指定商品である「はき物(運動用特殊ぐつを除
く。) かさ つえ これらの部品および附属品」と、ポロ商標が使用されている
被服類及び眼鏡類とは、共にファッションに関連する商品であり、統一ブランドの
下に綜合的にファションをまとめようとする昨今にあっては、少なからぬ関連性を
有するものであることからすれば、本願商標の「POLOTEAM」については、
これに接する取引者・需要者は、ポロ商標を構成する「Polo」の文字部分に強
く印象付けられ、周知となっているポロ商標を連想、想起するとみるのが自然であ
る。
したがって、「POLOTEAM」からポロ商標を連想することはないとする原
告の主張は失当である。
第5 当裁判所の判断
1 まず、ポロ商標の周知性について検討する。
(1) 弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(イ) アメリカの服飾等のデザイナーであった【K】は、1968年(昭和43
年)、ポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立して、ネクタ
イ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインを手がけ、1970年
と1973年の2回にわたり「コティ賞」を受賞するなど数々のデザインに関する
賞を受賞し、1974年(昭和49年)には、映画「華麗なるギャッツビー」の主
演男性俳優の衣装のデザインを担当して、アメリカを代表するデザイナーとしての
地位を確立した。
(ロ) ポロ社は、【K】のデザインに係る一群の商品についてポロ商標を使用し、
これが【K】のデザインを示す商標として世界的に周知となった。
(ハ) 我が国の服飾業界では、昭和49年ころから【K】の名前が知られるように
なった。西武百貨店は、昭和52年ころから【K】のデザインに係る紳士服、紳士
靴、サングラス等、同53年から【K】のデザインに係る婦人服を、それぞれ輸
入、製造、販売するようになり、本願商標の登録出願前、既に、各種雑誌等におい
て、【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、婦人服、サングラス等の商品が、一
流ブランド品として、ポロ商標が付されて紹介されていた。
(ニ) ポロ商標は、我が国でも、従前から「ポロ」とも称され、上記のとおり、
【K】のデザインに係る紳士服、紳士靴、婦人服、サングラス等に使用されて、現
在に至っている。
(2) 以上の事実によれば、本願商標の商標登録出願時までには、ポロ商標は、その
略称である「ポロ」とともに、いずれも紳士服、婦人服、眼鏡等について【K】の
デザインに係る商品に付される商標として周知となっていたということができる。
2 上記認定の事実を基礎として、本願商標をその指定商品に使用した場合に、他
人の業務に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあったかどうかについて
検討する。
(1) 本願商標が、英語の「POLO」と「TEAM」の2語を組み合せて「POL
OTEAM」とした語句であることは、それ自体で明らかである。
乙第1号証(1998年(平成10年)株式会社研究社発行の「研究社新英和大
辞典」)、乙第2号証(昭和60年1月10日株式会社小学館発行の「小学館ラン
ダムハウス英和大辞典」)、乙第3号証(1984年(昭和59年)株式会社研究
社発行の「リーダーズ英和辞典」)及び弁論の全趣旨によれば、「TEAM」の語
は、「行動を共にする人間の集り、仲間、組、団、(特に競技・ゲームの)チー
ム」などといった意味合いの、我が国で極めてよく知られている英語であるのに対
して、「POLO」の語は、ポロ競技等を意味する英語であることが認められる。
そうすると、「POLOTEAM」の語句は、「POLO」の「TEAM」、換
言すれば、「ポロ競技のチーム」といった意味合いの観念を生ずるものと認められ
る。
甲第3号証(1988年(昭和63年)9月10日成美堂出版発行の「スポーツ
用語辞典」(改訂新版))及び乙第7号証(1998年(平成10年)1月17日
付け読売新聞)によれば、ポロ競技は、大正時代に、英国大使館員によってはじめ
て我が国に伝えられたものの、全く普及せず、1998年になっても、競技人口が
30人程度という状態であったことが認められ、日本人一般にとって極めて馴染み
の薄いスポーツであることが明らかである。
(2) ポロ商標が付される商品は、上記認定のとおり、紳士服、紳士靴、婦人服、サ
ングラス等ファッション(装身に関する流行)に関係するものである。一方、本願
商標の指定商品は、「はき物(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの
部品および附属品」であるから、ファッションに関係するものであり、かつ、少な
くとも紳士靴についてポロ商標が使用されている商品と共通しているものである。
(3) そうすると、本願商標の登録出願時において、本願商標がその指定商品である
「はき物(運動用特殊ぐつを除く。) かさ つえ これらの部品および附属品」
に使用された場合には、本願商標に接した需要者は、これが上記のとおり「POL
O」という語を含む語句であることから、「ポロ」の観念を想起し、これを通じ
て、本願商標が付される商品について、【K】又は同人と組織的・経済的に何らか
の関係がある者の業務に係る商品であるかのように誤解し、その出所について混同
を生ずるおそれがあるものというべきである。
そして、本願商標の登録出願後、審決時までに、事情の変更があったと認めるに
足りる証拠はないから、審決時においても、商品の出所の混同のおそれは、なお継
続していたものというべきである。
(4) 原告は、本願商標である「POLOTEAM」の語は、一連不可分に「ポロチ
ーム」との称呼を生じ、また、この語句を構成する「POLO」と「TEAM」の
語を組み合わせたものとは異別の一体不可分の1個の英語として、ポロ競技の一方
の対戦相手である球技者集団との観念を生ずるとの前提で、ポロ商標の「Pol
o」と比べて、称呼、外観及び観念を異にしているので、本願商標から「ポロ」を
想起し、ポロ商標を連想することはない旨主張する。
しかし、仮に原告主張のとおり、1個の英語として、ポロ競技の一方の対戦相手
である球技者集団との観念を生ずることがあるとしても、前記のとおり、ポロ競技
は、日本人一般にとって極めて馴染みの薄いスポーツであったものであること、ポ
ロ商標が周知であったことを考慮すると、本願商標の構成中の「POLO」の語に
注目し、「ポロ」の観念を想起し、ポロ商標を連想することになることに変わりが
ないというべきである。
なお、本件で問題としているのは、本願商標が商標法4条1項15号に該当する
かどうかであって、同法4条1項10号に該当するかどうかではない以上、本願商
標がポロ商標の「Polo」に類似するかどうかは、本願商標がその指定商品に使
用された場合に、【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務
に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあるかどうかを認定するために考
慮される事実の一つにすぎないのであるから、前記認定のとおり、本願商標をその
指定商品に使用した場合に、【K】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係があ
る者の業務に係る商品であるかのように誤解され、その出所について混同を生ずる
おそれがあると認められる以上、さらに、本願商標がポロ商標の「Polo」に類
似するかどうかを検討する必要がないことは明らかである。
3 以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、その他審決には
これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
第6 よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟
法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 山 田 知 司
裁判官 宍 戸 充
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