平成11(行ケ)268審決取消請求事件
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成11年12月21日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
商標権
民事訴訟法61条1回 商標法4条1項15号1回
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キーワード |
審決17回 ライセンス3回 許諾1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成11年(行ケ)第268号 審決取消請求事件
平成11年11月9日口頭弁論終結
判 決
原 告 株式会社ヘブンコーポレーション
代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
被 告 特許庁長官 【C】
指定代理人 【D】
同 【E】
同 【F】
同 【G】
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成5年審判第18026号事件について平成11年6月29日にした
審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、商品区分(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の区
分による。以下同じ。)第25類の「紙類 文房具類」を指定商品とし、別紙審決
書写しの別紙本願商標欄記載のとおりの商標(以下「本願商標」という。)につい
て、平成元年11月30日に商標登録出願(平成1年商標登録願第136193
号)をしたが、平成5年8月27日を発送日とする拒絶査定を受けたので、同年9
月13日に拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は、同請求を平成5年審判第1
8026号事件として審理した結果、平成11年6月29日に「本件審判の請求
は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年7月26日原告に送達され
た。
2 審決の理由
別紙審決書写しのとおり、本願商標をその指定商品に使用する場合には、これ
に接する取引者・需要者は、ラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品を表示するも
のとして著名である、「Polo」と「by Ralph Lauren」の文字
によって構成される商標及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形によって構成
される商標(以下、これらのうちのそれぞれも、これらが一体となったものも、い
ずれも「引用商標」という。別紙審決書写しの別紙引用商標欄記載の商標は、引用
商標の一例である。)を連想し、ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何
らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を
生ずるおそれがあるから、本願商標は商標法4条1項15号に該当すると認定判断
した。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由1ないし3は認める。同4は、(1)の5頁13行ないし17行及
び(2)ないし(4)を争い、その余は認める。
本願商標をその指定商品について使用しても、引用商標に係る商品であるかの
ように商品の出所について混同を生じさせるおそれはないから、これがあるとした
審決の認定判断は誤りであって、その誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであ
る。審決は、違法であり、取り消されなければならない。
1 「POLO」の語の自他商品識別力の欠如
本願商標を構成する「POLO」は、ポロ競技を意味する英語である。ポロ競
技は、我が国においてもその存在は広く知られている。
ポロ競技に際してプレーヤーが着用する衿付き半袖シャツは、古くから「PO
LO SHIRT/ポロシャツ」と称され、現在では遊び着的な衿付きシャツを指
す普通名称になっており、この 「POLO SHIRT/ポロシャツ」は、「PO
LO/ポロ」と略称されているから、「POLO/ポロ」の語は、商品「被服」に
ついて自他商品の識別機能を有しない普通名称である。
我が国において、「POLO」の語を含む結合商標「POLO CLUB」、
「WORLD POLO CHAMPIONSHIPS」、「BEVERLY H
ILLS POLO CLUB」が、それぞれ第三者によって商品「被服等」に使
用されており、取引者・需要者から高い認知を得ているだけではなく、ラルフ・ロ
ーレンの「Polo」とは明確に区別されて取り引きされている。
以上のとおり、「POLO」の語には強い自他商品識別力はなく、本願商標の
指定商品についても、「POLO」の語を含む結合商標のすべてについて、直ちに
ラルフ・ローレンを想起するという関係は成立しない。
2 商標の文字部分について
上記事情を勘案すれば、本願商標の文字部分がラルフ・ロ―レンに係る「Po
lo」と商品の出所の混同を生ずるか否かを判断するに当たっては、本願商標中の
「POLO」の文字部分に、取引の実情において、独立して自他商品の識別機能を
発揮する部分として認識される外観上、観念上あるいは称呼上の要素(分離抽出要
素)があるか否かが、基準とされなければならない。
(1) 外観上の要素について
本願商標の文字部分は、「ROYAL」「POLO」「SPORTS」「CLU
B」の各語を同一の書体で表し、等間隔に左から右へ横書きに配した構成のもので
ある。そして、本願商標を構成する各語は、いずれも日本人にとってもなじみの深
い簡潔な英単語である。特に、「POLO」の語はポロ競技を意味する既成の英単
語として広く知られており、また、ポロシャツの略称(普通名称)としても広く一
般的に用いられているものであるから、本願商標の外観上、取引の実情において、
「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として分離
抽出される要素は全く存在しない。
(2) 観念上の要素について
ポロ競技は、欧米の富裕層が楽しむスポーツ競技であることから高級イメージが
あり、本願商標の文字部分は、「ポロ競技」を意味する「POLO」という語のも
つ高級イメージを利用すべく採用された用語であり、「王室の」を意味する「RO
YAL」、「ポロ競技」を意味する「POLO」、「スポ-ツクラブ」を意味する
「SPORTS CLUB」を結合して構成したものである。また、欧米にはポロ
競技のクラブが多数存在しており、ポロ競技が貴族趣味のスポ-ツであることか
ら、これらの各語は観念的に密接な関連性を有している。
しかも、本願商標を構成する「ROYAL」「POLO」「SPORTS」「C
LUB」の各語は、いずれも日本人にとってもなじみの深い簡潔な英単語であり、
「POLO」の語は、ポロシャツの略称(普通名称)としても広く一般的に用いら
れているものであるから、本願商標の観念上、「POLO」の文字部分が独立して
自他商品の識別機能を発揮すると認識される要素は全く存在しない。
(3) 称呼上の要素について
以上の事情に、「ROYAL」「POLO」「SPORTS」「CLUB」が一
体となったからといって、全体の称呼が冗長になるものではないと認められること
をも加えて考察すると、本願商標の文字部分からは、「ロイヤルポロスポーツクラ
ブ」の一連の称呼のみが生ずるとみるべきであるから、本願商標の称呼には、「P
OLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮すると認識される要素は
全く存在しないというべきである。
3 商標の図形部分について
本願商標の図形部分は、併走する2騎のポロプレイヤーを正面から描いた図形
であって、全体としてまとまりよく一体的に表されており、また、今にも飛び出し
て来るかのような躍動的な印象を看者に与えるものである。これに対し、引用商標
の図形部分は、1騎のポロプレイヤ―を斜め前方から描いた図形であって、全体と
して威厳のあるゆったりとした静的な印象を看者に与えるものである。
このように、本願商標と引用商標の各図形部分は、図形全体から受ける視覚的
印象を全く異にするから、外観において類似せず、また、本願商標の図形部分から
特定の称呼、観念を生ずるものでもない以上、本願商標と引用商標の各図形部分
を、全体として類似するものとすることはできない。
4 以上のとおりであるから、審決の認定判断したような商品の出所の混同のおそ
れはないのである。
第4 被告の反論の要点
1 我が国では、ラルフ・ロ―レンのデザインに係る被服等に使用される引用商標
を総称して単に「Polo」、「ポロ」と略称しており、この「Polo/ポロ」
の商標は、遅くとも昭和55年ころまでには、我が国において取引者・需要者の間
に広く認識され、その認識は現在においても継続しているものである。これに対し
て、ポロ競技は、我が国では知名度は低く、愛好者も極めて少ない、なじみの薄い
スポーツである。したがって、被服、眼鏡等のファッション関連商品分野において
は、「Polo」(ポロ)といえば、ラルフ・ロ―レンのデザインに係る被服、眼
鏡等について使用される商標を直ちに想起させるものであり、我が国においては、
「Polo」を始めラルフ・ロ―レンの使用する商標を真似た偽物が多数出回って
いる事実からみても分かるとおり、「Polo」商標は、極めて強い識別力、顧客
吸引力を有しているものである。
商品「ポロシャツ」が取引の実情において「POLO/ポロ」と略称されてい
る事実があるとしても、本願商標の指定商品とは関係がない。また、仮に、我が国
において「POLO」の文字を含む商標が第三者により商品「被服」等について使
用されている事実があるとしても、それはむしろ、ラルフ・ロ―レンの商標の著名
度が増すに従い、その著名性に便乗すべく使用されたものと容易に考えられ、むし
ろ、「POLO」商標が極めて強い識別力、顧客吸引力を有することを裏付けるも
のというべきである。
そして、被服や眼鏡などのファッション関連の商品はもとより、紙類、文房具
類についても、「Polo」、「POLO」、「ポロ」などの文字を使用した場合
には、これに接する取引者・需要者は、スポーツ競技の名称を表したと理解するの
ではなく、ラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品であると認識することになるの
である。
2 本願商標の文字部分は、全体として親しまれた熟語的意味合い、又は団体名称
を表すものとして我が国の一般世人によく知られているものとは認め難い。しか
も、本願商標の文字部分は19文字という極めて多い文字を一様な大きさで書して
なるものであり、これより生ずる「ロイヤルポロスポーツクラブ」の称呼は13音
より構成されているから、外観上及び称呼上冗長といえるものである。
そうすると、本願商標の文字部分に接する取引者・需要者は、その構成中の、
著名商標と同一の綴りよりなる「POLO」の文字部分に強く印象づけられ、ラル
フ・ロ―レンの著名商標である「Polo」を連想すると考えるのが自然である。
3 本願商標と引用商標の図形部分は、子細にみれば差異はあるものの、両者は、
「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」を表したものと直ちに理解し把握することが
できるくらい似通った構図のものである。
引用商標の「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形部分からも直ちに「ポ
ロ」の略称が生ずるまでに至っているものといえるから、本願商標、引用商標とも
に、図形部分からも「ポロ」の称呼、観念が生ずる。
4 したがって、本願商標をその指定商品について使用した場合には、ラルフ・ロ
―レン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に商品であるかの
ように、商品の出所について混同を生じさせるものである。
第5 当裁判所の判断
1 本願商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて
(1) 乙第1ないし第10号証、第12号証の1によれば、次の事実が認められる。
ラルフ・ローレンは、1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等の
デザイナーである。同人は、1970年、73年の2回にわたりアメリカのファッ
ション界では最も権威があるとされるコティ賞を受賞し、1974年には映画「華
麗なるギャツビー」の男性衣装を担当するなどして、世界的に知られるようになっ
た。引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品に使用されている。我が
国においては、日本でのラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品の輸入・製造・販
売のライセンス(許諾)を得ていた西武百貨店(ただし、眼鏡、ネクタイのライセ
ンスは、別の会社が有していた。)の昭和62年におけるポロ・ラルフローレンブ
ランドの小売販売高は約330億円であり、昭和63年から平成元年初めにかけて
第三者が引用商標を付した偽ブランド商品を大量に販売して摘発されるという事件
が発生するほど、引用商標は顧客吸引力を有していた。本願商標の商標登録出願前
から、各種雑誌等において、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服、
眼鏡を始めとする商品が一流ブランドないし流行ブランドとして、「ポロ」、「P
OLO」、「Polo」等のブランド名のもとに紹介され、平成元年5月19日付
け朝日新聞夕刊(乙第12号証の1)にも、「『ポロ』の偽を大量販売 警視庁、
通信販売会社を摘発・・・『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレン
ブランド」との記事が掲載されているように、引用商標は「Polo/ポロ」の商
標の名で知られ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれていた。
以上の事実によれば、本願商標の商標登録出願時までには、引用商標は、「Po
lo/ポロ」の商標などと呼ばれ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれ
て、いずれも紳士服、婦人服、眼鏡等についてラルフ・ローレンのデザインに係る
商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことが認められる。
(2) ラルフ・ロ―レンは服飾等のデザイナーであり、ラルフ・ローレンのデザイン
に係る商品に付される商標ないしそのブランドが著名であった紳士服、婦人服、眼
鏡等は、デザインが重要な要素とされるものである。
一方、本願商標の指定商品である「紙類、文房具類」のうち、文房具類は、便せ
ん、封筒、アルバム、ペーパーウエイト(文鎮)を始めとして、デザインが重要な
要素であるものが多く、また、紙類でも、例えば包装紙、壁紙のようにデザインが
重要な要素とされるものが存在することは、当裁判所に顕著である。
(3) 本願商標の図形部分は、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーを表したものと理解
されるものである。
そして、本願商標の文字部分は、19文字からなり、これより生ずる「ロイヤ
ルポロスポーツクラブ」の称呼は長音を含む12音より構成されているから、その
外観、称呼とも、一つの名称のものとしては、冗長というべきである。
また、「ROYAL POLO SPORTS CLUB」との文字が、全体
として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者・需要者によく知られ
ているものとは認められない。そして、「ROYAL」は、「王様の」というよう
な意味合いであって、その後に続く「POLO」以下の語を修飾する形容詞であ
り、「SPORTS CLUB」は、「(ポロという)スポーツの目的で集まった
人の団体」というような意味合いであるから、本願商標において「POLO」の文
字は重要な意味を持つ言葉と認識される。
(4) そうすると、本願商標がその指定商品のうち、デザインが重要な要素とされる
ものに使用された場合には、本願商標に接した取引者・需要者は、その「POL
O」の文字部分に着目し、さらに、本願商標の図形部分が馬に乗ったポロ競技のプ
レーヤーであることに着目して、「Polo/ポロ」の商標などと呼ばれ、「Po
lo」の文字と馬に乗ったポロ競技のプレーヤーなどからなる引用商標と「Pol
o/ポロ」とも呼ばれるブランド名を連想して、ラルフ・ローレンが本願商標の指
定商品のデザインにも進出した等と誤解して、ラルフ・ローレン又は同人と組織
的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所
について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(5) 原告は、①「POLO/ポロ」の語は、「ポロ競技」を意味する既存の英単語
である、②ポロ競技においてプレーヤが着用する「ポロシャツ」は、現在では遊び
着的な襟付きシャツを指す普通名称となっており、「ポロ」と略称される、③「P
OLO」の語を含む結合商標が他にも存在し、ラルフ・ローレンによって使用され
る「Polo」とは明確に区別されている、との事実を根拠として、「POLO/
ポロ」の語は、本願商標の指定商品についても、強い自他商品識別力はないと主張
する。
しかし、本願商標の商標登録出願時において、引用商標が「Polo/ポロ」
の商標などと、また、そのブランドが「POLO/ポロ」などと呼ばれて著名であ
ったこと、しかも、引用商標の付される商品と本願商標の指定商品との間に関連が
あることは前認定のとおりであり、そうである以上、本願商標の指定商品につい
て、「POLO/ポロ」の語の自他商品の識別力は強いものというべきである。
原告の挙げる上記①ないし③は、いずれも、上記判断の妨げとはなり得ない。
①については、乙第13ないし16号証によれば、ポロ競技は、我が国において
は、ほとんど競技者もおらず、なじみの薄いスポーツであることが認められるか
ら、我が国において、「POLO/ポロ」の語の付された商標が、直ちに、「Po
lo/ポロ」の商標などと呼ばれて著名である引用商標に関係はなく、ポロ競技に
関係のあるものであると理解されるということはできず、②については、本願商標
に係る指定商品がポロシャツを含まない以上、本願商標の「POLO」がポロシャ
ツの普通名称と理解されるとは考えられず、③については、「POLO」の語を含
む結合商標が他にも存在することは当裁判所に顕著ではあるが、それらがラルフ・
ロ―レンによって使用される「POLO」と明確に区別されていることは、本件全
証拠によっても認めることができないからである。
原告の主張は、採用することができない。
また、原告は、本願商標の指定商品について、「POLO/ポロ」の語に強い
自他商品識別力がないことを前提として、(1)本願商標中の「POLO」の文字部分
が、取引の実情において独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として認識さ
れる外観上、観念上あるいは称呼上の要素(分離抽出要素)がないこと、(2)本願商
標の図形部分と引用商標の図形部分は類似しないことを挙げて、商品の出所の混同
が発生しないと主張する。しかし、本願商標の指定商品について、「POLO/ポ
ロ」の語に強い自他商品識別力がないとの原告の主張が採用できないことは前示の
とおりであるから、原告の主張は、その前提を欠いており、引用商標が「Polo
/ポロ」の商標などと呼ばれ、そのブランドが「Polo/ポロ」とも呼ばれて著
名であったことを無視して商品の出所の混同のおそれを論じるものであるから、採
用することができない。
2 本願商標の審決時における商品の出所の混同のおそれについて
乙第11号証の1、2、第12号証の3、4によれば、本願商標の商標登録出
願後審決時にかけても、朝日新聞、読売新聞に、「ポロ・・・などの輸入ブランド
に人気がある」、「ポロの靴下 ブランド世代が高感度消費者に」、「偽『ポロ』
眼鏡枠を摘発・・・ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド『P
OLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠」、「偽ブランドの販売で元社長に有
罪判決・・・米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物のセーターやポロシ
ャツ」と記載されているように、引用商標は「Polo/ポロ」のマークなどと呼
ばれ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれて、著名性が継続していたも
のと認められる。
もっとも、甲第13号証によれば、「’98ブランド&キャラクター調査」
(ボイス情報株式会社平成10年4月30日発行)には、平成10年における消費
者調査の結果として、「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」以外にも、「ポロ・クラ
ブ」、「ビバリーヒルズ・ポロ・クラブ」、「ワールド・ポロ・チャンピオンシッ
プス」がライセンスブランドとして挙げられ、それぞれ小学生から主婦まで総合し
た「ブランド知名率」が16.1%ないし69.8%などと記載されていることが
認められる。
しかし、同証には、調査の対象となった消費者が、そのブランドを知るか否か
の認識は記載されているものの、それぞれのブランド相互の関係についての認識は
記載されていないから、上記記載は、商品の出所の混同のおそれについての上記認
定を左右するものではない。すなわち、前認定のとおり、引用商標が「Polo/
ポロ」のマークなどと呼ばれ、そのブランドが「Polo/ポロ」とも呼ばれて、
著名性が継続している事実に照らせば、調査の対象となった消費者が、上記各ブラ
ンドについて、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものであって、著名
な「Polo/ポロ」ブランドないしその兄弟ブランドであるなどと誤解している
可能性も十分にあるからである。
のみならず、前認定のとおり、引用商標が「Polo/ポロ」のマークなどと
呼ばれ、そのブランドが「Polo/ポロ」とも呼ばれて、著名性が継続している
以上、「POLO」の文字を含む商標であってこれと区別して認識されているもの
が、仮にあるとしても、そのことは、本願商標による商品の出所の混同のおそれの
認定を左右するものではない。なぜなら、仮に、他のブランドが、著名な「Pol
o/ポロ」のマークないし「Polo/ポロ」のブランドとなどと呼ばれるものと
区別され、出所を異にするものとして理解されているとすると、そのことは、それ
が、「POLO/ポロ」とそれ以外の他の特定の文字とが結合した文字からなるも
のとしてよく知られ、かつ、何らかの事情によりそれがラルフ・ローレンとは関係
のないものとしてよく知られるに至っているか、又は、「POLO/ポロ」以外の
文字の特異性などにより当然にそれが認識される等の特段の事情があることを意味
するのであって、そうであるからこそ、区別されているといい得るものである。と
ころが、本件全証拠によっても、本願商標が「POLO/ポロ」以外の他の文字と
結合した文字からなるものとしてよく知られ、かつ、ラルフ・ローレンとは関係の
ないものとしてよく知られるに至っているとか、「POLO/ポロ」以外の文字の
特異性などによって当然にそれが認識されるとかというような特段の事情も窺えな
い。したがって、前記各ブランドの存在によって、本願商標についての前記商品の
出所の混同のおそれが減少するものということはできないのである。
そして、他にも、本願商標の商標登録出願後、審決時までに、事情の変更があ
ったと認めるに足りる証拠はないから、審決時においても、前記商品の出所の混同
のおそれは、なお継続していたものというべきである。
3 以上のとおりであるから、 原告主張の取消事由は理由がなく、その他審決には
これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
第6 よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟
法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 山 田 知 司
裁判官 宍 戸 充
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