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平成11(行ケ)289審決取消請求事件

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成11年12月21日
事件種別 民事
法令 商標権
民事訴訟法61条1回
商標法4条1項15号1回
キーワード 審決15回
ライセンス3回
許諾1回
主文
事件の概要

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判決文

平成11年(行ケ)第289号 審決取消請求事件
平成11年11月9日口頭弁論終結
         判      決
    原      告    株式会社ヘブンコーポレーション
    代表者代表取締役    【A】
    訴訟代理人弁理士    【B】
    被      告    特許庁長官 【C】
    指定代理人     【D】
    同           【E】
   同           【F】
   同           【G】
     主      文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
    事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が平成4年審判第11166号事件について平成11年7月26日にした
審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実 
1 特許庁における手続の経緯
  原告は、商品区分(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の区
分による。以下同じ。)第17類の「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品と
し、「ROYAL POLO SPORTS CLUB」のローマ字を横書きして
なる商標(以下「本願商標」という。)について、平成元年7月6日に商標登録出
願(平成1年商標登録願第75863号)をしたが、平成4年5月15日を発送日
とする拒絶査定を受けたので、同年6月8日に拒絶査定不服の審判を請求した。特
許庁は、同請求を平成4年審判第11166号事件として審理した結果、平成11
年7月26日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は
同年8月18日原告に送達された。
2 審決の理由
  別紙審決書写しのとおり、本願商標の指定商品に係わる取引者・需要者が本願
商標に接した場合には、「ザ ポロ/ローレン カンパニー」ないし「ザ ポロ/
ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」(以下、これらをまとめ
て「ポロ社」という。)の事業と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務
に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか
ら、本願商標は商標法4条1項15号に該当すると認定判断した。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
  審決の理由1、2は認める。同3は、6頁6行ないし7行、6頁14行ないし
7頁8行及び7頁22行ないし8頁5行を争い、その余は認める。同4は争う。
  取引の実情を勘案すれば、本願商標は、ラルフ・ローレンが使用する「POL
O」、「Polo」の文字からなる商標に係る商品であるかのように商品の出所に
ついて混同を生じさせるおそれはないから、これがあるとした審決の認定判断は誤
りであって、その誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかである。審決は、違法で
あり、取り消されなければならない。
1 「POLO」の語の自他商品識別力の欠如
   本願商標を構成する「POLO」は、ポロ競技を意味する英語である。ポロ
競技は、我が国においてもその存在は広く知られている。
  ポロ競技に際してプレーヤーが着用する衿付き半袖シャツは、古くから「PO
LO SHIRT/ポロシャツ」と称され、現在では遊び着的な衿付きシャツを指
す普通名称になっており、この 「POLO SHIRT/ポロシャツ」は、「PO
LO/ポロ」と略称されているから、「POLO/ポロ」の語は、商品「被服」に
ついて自他商品の識別機能を有しない普通名称である。
  我が国において、「POLO」の語を含む結合商標「POLO CLUB」、
「WORLD POLO CHAMPIONSHIPS」、「BEVERLY H
ILLS POLO CLUB」が、それぞれ第三者によって商品「被服等」に使
用されており、取引者・需要者から高い認知を得ているだけではなく、ラルフ・ロ
ーレンの「Polo」とは明確に区別されて取り引きされている。
  以上のとおり、「POLO」の語には強い自他商品識別力はなく、本願商標の
指定商品についても、「POLO」の語を含む結合商標のすべてについて、直ちに
ラルフ・ローレンを想起するという関係は成立しない。
2 本願商標について
  上記事情を勘案すれば、本願商標の文字部分がラルフ・ロ―レンに係る「Po
lo」と商品の出所の混同を生ずるか否かを判断するに当たっては、本願商標中の
「POLO」の文字部分が、取引の実情において、独立して自他商品の識別機能を
発揮する部分として認識される外観上、観念上あるいは称呼上の要素(分離抽出要
素)があるか否かによって判断されなければならない。
(1) 外観上の要素について
 本願商標の文字部分は、「ROYAL」「POLO」「SPORTS」「CLU
B」の各語を同一の書体で表し、等間隔に左から右へ横書きに配した構成のもので
ある。そして、本願商標を構成する各語は、いずれも日本人にとってもなじみの深
い簡潔な英単語である。特に、「POLO」の語はポロ競技を意味する既成の英単
語として広く知られており、また、ポロシャツの略称(普通名称)としても広く一
般的に用いられているものであるから、本願商標の外観上、取引の実情において、
「POLO」の文字部分が独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として分離
抽出される要素は全く存在しない。
(2) 観念上の要素について
 ポロ競技は、欧米の富裕層が楽しむスポーツ競技であることから高級イメージが
あり、本願商標は、「ポロ競技」を意味する「POLO」という語のもつ高級イメ
ージを利用すべく採用された用語であり、「王室の」を意味する「ROYAL」、
「ポロ競技」を意味する「POLO」、「スポ-ツクラブ」を意味する「SPOR
TS CLUB」を結合して構成したものである。また、欧米にはポロ競技のクラ
ブが多数存在しており、ポロ競技が貴族趣味のスポ-ツであることから、これらの
各語は観念的に密接な関連性を有している。
 しかも、本願商標を構成する「ROYAL」「POLO」「SPORTS」「C
LUB」の各語は、いずれも日本人にとってもなじみの深い簡潔な英単語であり、
「POLO」の語は、ポロシャツの略称(普通名称)としても広く一般的に用いら
れているものであるから、本願商標の観念上、「POLO」の文字部分が独立して
自他商品の識別機能を発揮すると認識される要素は全く存在しない。
(3) 称呼上の要素について
以上の事情に、「ROYAL」「POLO」「SPORTS」「CLUB」が一
体となったからといって、全体の称呼が冗長になるものではないと認められること
をも加えて考察すると、本願商標からは、「ロイヤルポロスポーツクラブ」の一連
の称呼のみが生ずるとみるべきであるから、本願商標の称呼には、「POLO」の
部分が独立して自他商品の識別機能を発揮すると認識される要素は全く存在しない
というべきである。
3 以上のとおりであるから、審決の認定判断したような商品の出所の混同のおそ
れはないのである。
第4 被告の反論の要点
1 ラルフ・ロ―レンのデザインに係る被服等に使用される標章は、「Polo」
と「by Ralph Lauren」の文字によって構成される標章及び馬に乗
ったポロ競技のプレーヤーの図形によって構成される標章などであって、我が国に
おいては、これらの標章を総称して単に「Polo(ポロ)」と略称しており、上
記各標章は、遅くとも本願商標の商標登録出願時までには、我が国の取引者・需要
者の間に広く認識され、その認識は現在においても継続しているものである。これ
に対して、ポロ競技は、我が国では知名度は低く、愛好者も極めて少ない、なじみ
の薄いスポーツである。また、我が国では、「POLO」「Polo」「ポロ」を
始め、「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」の文字及
び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」などの各標章をまねた偽物を、「ラ
ルフ・ローレンのデザインに係る商品」などと触れ込んで販売している事実があ
る。これらの事実を合わせ考えると、被服、眼鏡等のファッション関連の商品に
「POLO」の文字を使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、スポー
ツ競技の名称を表したと理解するというより、ラルフ・ロ―レンのデザインに係る
商品であると認識するというべきである。
ラルフ・ローレンの「Polo(ポロ)」の標章の著名性が確立される昭和55
年ころより前に発行された辞典、事典には、「ポロ」(Polo)の語が「ポロシ
ャツ」の略称であることについての記載は見当たらず、原告が商品「ポロシャツ」
が取引の実情において「POLO/ポロ」と略称されている根拠とする証拠のう
ち、発行年月日が確認できる証拠は、平成7年から平成11年にかけて発行された
ものであるから、ラルフ・ローレンの「Polo(ポロ)」の標章の著名性に引き
ずられたものともみられなくもない。また、仮に「ポロ」(Polo)の語が「ポ
ロシャツ」の略称ということができるとしても、ポロシャツ以外の本願商標の指定
商品については妥当しない。
2 本願商標は、米国ポロ協会メンバークラブのリストによっても特定の団体を表
したものとは認められない。そして、本願商標は19文字のローマ字という極めて
多い文字を一様な大きさで書してなるものであり、これより生ずる「ロイヤルポロ
スポーツクラブ」の称呼は13音より構成されているから、外観及び称呼上冗長と
いえるものである。
  そうすると、本願商標に接する取引者・需要者は、その構成中の、著名商標と
同一の綴りよりなる「POLO」の文字部分に強く印象づけられ、ラルフ・ロ―レ
ンの著名標章である「Polo(ポロ)」を連想、想起するというのが自然であ
る。
3 以上のとおりであるから、本願商標をその指定商品について使用した場合に
は、取引者・需要者をしてラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品を取り扱うポロ
社の事業と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に商品であるかのよう
に、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
第5 当裁判所の判断
1 本願商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて
(1) 乙第1ないし第10号証、第12号証の1によれば、次の事実が認められる。
  ラルフ・ローレンは、1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等の
デザイナーである。同人は、1970年、73年の2回にわたりアメリカのファッ
ション界では最も権威があるとされるコティ賞を受賞し、1974年には映画「華
麗なるギャツビー」の男性衣装を担当するなどして、世界的に知られるようになっ
た。ポロ社はラルフ・ロ―レンのデザインに係る商品を取り扱っており、ラルフ・
ローレンのデザインに係る商品には、「Polo」と「by Ralph Lau
ren」の文字によって構成される標章、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形
によって構成される標章、及びこれらが一体となった標章(以下、これらをまとめ
て「ラルフ標章」という。)が用いられている。我が国においては、日本でのラル
フ・ロ―レンのデザインに係る商品の輸入・製造・販売のライセンス(許諾)を得
ていた西武百貨店(ただし、眼鏡、ネクタイのライセンスは、別の会社が有してい
た。)の昭和62年におけるポロ・ラルフローレンブランドの小売販売高は約33
0億円であり、昭和63年から平成元年初めにかけて第三者がラルフ標章を付した
偽ブランド商品を大量に販売して摘発されるという事件が発生するほど、ラルフ標
章は顧客吸引力を有していた。本願商標の商標登録出願前から、各種雑誌等におい
て、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡を始めとする商品が
一流ブランドないし流行ブランドとして、「ポロ」、「POLO」、「Polo」
等のブランド名のもとに紹介され、平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊(乙第1
2号証の1)にも、「『ポロ』の偽を大量販売 警視庁 通信販売会社を摘
発・・・『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレンブランド」との記
事が掲載されているように、ラルフ標章は「Polo/ポロ」の商標の名で知ら
れ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれていた。
 以上の事実によれば、本願商標の商標登録出願時までには、ラルフ標章は「Po
lo/ポロ」の商標などと呼ばれ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれ
て、いずれも紳士服、婦人服、眼鏡等についてラルフ・ローレンのデザインに係る
商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことが認められる。
(2) ラルフ標章が付される商品として著名であった上記紳士服、婦人服、眼鏡は、
ファッション関連の商品である。一方、本願商標の指定商品は、「被服、布製身回
品、寝具類」であるから、紳士服、婦人服を含み、また、ファッションと関連性の
高い商品である。
(3) 本願商標の文字部分は、19文字からなるものであり、これより生ずる「ロイ
ヤルポロスポーツクラブ」の称呼は長音を含む12音より構成されているから、そ
の外観、称呼とも、一つの名称のものとしては、冗長というべきである。
  また、「ROYAL POLO SPORTS CLUB」との文字が、全体
として特定の熟語や団体名称を表すものとして一般の取引者・需要者によく知られ
ているものとは認められない。そして、「ROYAL」は、「王様の」というよう
な意味合いであって、その後に続く「POLO」以下の語を修飾する形容詞であ
り、「SPORTS CLUB」は、「(ポロという)スポーツの目的で集まった
人の団体」というような意味合いであるから、本願商標において「POLO」の文
字は重要な意味を持つ言葉と認識される。
(4) そうすると、本願商標がその指定商品に使用された場合には、本願商標に接し
た取引者・需要者は、そこに含まれる「POLO」の部分に着目して、「Polo
/ポロ」の商標などと呼ばれるラルフ標章と「Polo/ポロ」とも呼ばれるブラ
ンド名を連想、想起し、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を取り扱うポロ社
又は同社と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのよ
うに、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(5) 原告は、①「POLO/ポロ」の語は、「ポロ競技」を意味する既存の英単語
である、②ポロ競技においてプレーヤが着用する「ポロシャツ」は、現在では遊び
着的な襟付きシャツを指す普通名称となっており、「ポロ」と略称される、③「P
OLO」の語を含む結合商標が他にも存在し、ラルフ・ローレンによって使用され
る「Polo」とは明確に区別されている、との事実を根拠として、「POLO/
ポロ」の語は、本願商標の指定商品についても、強い自他商品識別力はないと主張
する。
  しかし、本願商標の商標登録出願時において、ラルフ標章が「Polo/ポ
ロ」の商標などと、そのブランドが「POLO/ポロ」などと呼ばれて著名であっ
たこと、しかも、引用商標の付される商品と本願商標の指定商品とが同一ないし関
連性が高いものであることは前認定のとおりであり、そうである以上、本願商標の
指定商品について、「POLO/ポロ」の語の自他商品の識別力は強いものという
べきである。
  原告の挙げる上記①ないし③は、いずれも、上記判断の妨げとはなり得ない。
①については、乙第13ないし16号証によれば、ポロ競技は、我が国において
は、ほとんど競技者もおらず、なじみのないスポーツであることが認められるか
ら、我が国において、「POLO/ポロ」の語の付された商標が、直ちに、「Po
lo/ポロ」の商標などと呼ばれて著名であるラルフ標章に関係はなく、ポロ競技
に関係のあるものであると理解されるということはできず、②については、本願商
標に係る指定商品のうちポロシャツ以外のものについては、本願商標の「POL
O」がポロシャツの普通名称と理解されるとは考えられず、③については、「PO
LO」の語を含む結合商標が他にも存在することは当裁判所に顕著ではあるもの
の、それらがラルフ・ロ―レンによって使用される「POLO」と明確に区別され
ていることは、本件全証拠によっても認めることができないからである。
  原告の主張は、採用することができない。
  また、原告は、本願商標の指定商品について、「POLO/ポロ」の語に強い
自他商品識別力がないことを前提として、本願商標中の「POLO」の部分に、取
引の実情において独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として認識される外
観上、観念上あるいは称呼上の要素(分離抽出要素)がないことを挙げて、商品の
出所の混同が発生しないと主張する。しかし、本願商標の指定商品について、「P
OLO/ポロ」の語に強い自他商品識別力がないとの原告の主張が採用できないこ
とは前示のとおりであるから、原告の主張は、その前提を欠いており、ラルフ標章
が「Polo/ポロ」の商標などと呼ばれ、そのブランドは「Polo/ポロ」と
も呼ばれて著名であったことを無視して商品の出所の混同のおそれを論じるもので
あるから、採用することができない。
2 本願商標の審決時における商品の出所の混同のおそれについて
  乙第11号証の1、2、第12号証の3、4によれば、本願商標の商標登録出
願後審決時にかけても、朝日新聞、読売新聞に、「ポロ・・・などの輸入ブランド
に人気がある」、「ポロの靴下 ブランド世代が高感度消費者に」、「偽『ポロ』
眼鏡枠を摘発・・・ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド『P
OLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠」、「偽ブランドの販売で元社長に有
罪判決・・・米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物のセーターやポロシ
ャツ」と記載されているように、ラルフ標章は「Polo/ポロ」のマークなどと
呼ばれ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれて、著名性が継続していた
ものと認められる。
  もっとも、甲第13号証によれば、「’98ブランド&キャラクター調査」
(ボイス情報株式会社平成10年4月30日発行)には、平成10年における消費
者調査の結果として、「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」以外にも、「ポロ・クラ
ブ」、「ビバリーヒルズ・ポロ・クラブ」、「ワールド・ポロ・チャンピオンシッ
プス」がライセンスブランドとして挙げられ、それぞれ小学生から主婦まで総合し
た「ブランド知名率」が16.1%ないし69.8%などと記載されていることが
認められる。
  しかし、同証には、調査の対象となった消費者が、そのブランドを知るか否か
の認識は記載されているものの、それぞれのブランド相互の関係についての認識は
記載されていないから、上記記載は、商品の出所の混同のおそれについての上記認
定を左右するものではない。すなわち、前認定のとおり、ラルフ標章が、「Pol
o/ポロ」のマークなどと呼ばれ、そのブランドは「Polo/ポロ」とも呼ばれ
て、著名性が継続している事実に照らせば、調査の対象となった消費者が、上記各
ブランドについて、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものであって、
著名な「Polo/ポロ」ブランドないしその兄弟ブランドであるなどと誤解して
いる可能性も十分にあるからである。
  のみならず、前認定のとおり、ラルフ標章が「Polo/ポロ」のマークなど
と呼ばれ、そのブランドが「Polo/ポロ」とも呼ばれて、著名性が継続してい
る以上、「POLO」の文字を含む商標であってこれと区別して認識されているも
のが、仮にあるとしても、そのことは、本願商標による商品の出所の混同のおそれ
の認定を左右するものではない。なぜなら、仮に、他のブランドが、著名な「Po
lo/ポロ」のマークないし「Polo/ポロ」のブランドなどと呼ばれるものと
区別され、出所を異にするものとして理解されているとすると、そのことは、それ
が、「POLO/ポロ」とそれ以外の他の特定の文字とが結合した文字からなるも
のとしてよく知られ、かつ、何らかの事情によりそれがラルフ・ローレンとは関係
のないものとしてよく知られるに至っているか、又は、「POLO/ポロ」以外の
文字の特異性などにより当然にそれが認識される等の特段の事情があることを意味
するのであって、そうであるからこそ、区別されているといい得るものである。と
ころが、本件全証拠によっても、本願商標が「POLO/ポロ」以外の他の文字と
結合した文字からなるものとしてよく知られ、かつ、ラルフ・ローレンとは関係の
ないものとしてよく知られるに至っているとか、「POLO/ポロ」以外の文字の
特異性などによって当然にそれが認識されるとかというような特段の事情も窺えな
い。したがって、前記各ブランドの存在によって、本願商標についての前記商品の
出所の混同のおそれが減少するものということはできないのである。
  そして、他に本願商標の商標登録出願後、審決時までに、事情の変更があった
と認めるに足りる証拠はないから、審決時においても、前記商品の出所の混同のお
それは、なお継続していたものというべきである。
3 以上のとおりであるから、 原告主張の取消事由は理由がなく、その他審決には
これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
第6 よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟
法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第6民事部
       裁判長裁判官   山  下  和  明
        
          裁判官   山  田  知  司
 
          裁判官  宍  戸  充

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