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平成11(行ケ)166審決取消請求事件

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成11年12月15日
事件種別 民事
法令 商標権
商標法4条1項11号1回
民事訴訟法61条1回
キーワード 審決46回
無効2回
商標権1回
主文
事件の概要

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判決文

平成11年(行ケ)第166号審決取消請求事件(平成11年11月8日口頭弁論
終結)
          判    決
原      告   リーバイ ストラウス アンド カンパニー
代表者    A
訴訟代理人弁護士   関根秀太
同          後藤康淑
同          石村善哉
同          岩本昌子
同          伊藤 毅
被      告   株式会社ビッグジョン
代表者代表取締役   B
訴訟代理人弁護士   大野聖二
同    弁理士   C
          主    文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告
特許庁が、平成9年審判第20434号事件について、平成11年1月19日にし
た審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文1、2項と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 被告は、別添審決書写し別紙「1本件商標」のとおりの構成よりなり、第17類
「被服、布製身回品、寝具類」(平成3年政令第299号による改正前の商標法施
行令の区分による。以下同じ。)を指定商品とする登録第2716443号商標
(昭和63年2月25日登録出願、平成8年9月30日設定登録、以下「本件商
標」という。)の商標権者である。
 原告は、平成9年12月2日、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効
の審判の請求をした。
 特許庁は、同請求を平成9年審判第20434号事件として審理した上、平成1
1年1月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本
は、同年2月10日、原告に送達された。
2 審決の理由
 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件商標が、同写し別紙「2引用商標」
のとおりの構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品
(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とする登録第
1592525号商標(昭和46年2月24日登録出願、昭和58年5月26日設
定登録、以下「引用商標1」という。)及び同別紙「3引用商標」のとおりの構成
よりなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属す
るものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品とする登録第2006244
号商標(前同日登録出願、昭和62年12月18日設定登録、以下「引用商標2」
といい、引用商標1及び2をまとめて「引用商標」という。)と、外観、称呼及び
観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標
をその指定商品に使用しても、その出所について混同を生じるおそれはないから、
商標法4条1項11号及び15号のいずれの規定にも違反して登録されたものとい
うことはできず、その登録を無効とすべきではないとした。
第3 原告主張の取消事由の要点
 審決の理由中、本件商標が、別添審決書写し別紙「1本件商標」のとおりの構成
よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とすること、引用商
標1が、同別紙「2引用商標」のとおりの構成よりなり、引用商標2が、同別紙
「3引用商標」のとおりの構成よりなり、両商標が、第17類「被服(運動用特殊
被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除
く)」を指定商品とすること、両当事者の主張の認定、本件商標と引用商標との類
否判断の一部(審決書13頁9~12行、14頁14~22行(ただし、評価に関
する部分を除く。)、15頁5~6行、15頁15~17行)は認める。
 審決は、本件商標と引用商標との、外観上の類否判断を誤る(取消事由1)とと
もに、本件商標が、商品の出所について混同を生ずるおそれがないと誤って判断し
ている(取消事由2)から、違法として取り消されるべきである。
1 外観上の類否判断の誤り(取消事由1)
1 審決が、「本件商標と引用商標は、・・・いずれも実線とその内側に実線に沿
って二重の破線を配した左右相対の五角形の外形とその外形を上下に二分するよう
に横断する二重破線を配した図形からなるものである。」(審決書13頁9~12
行)と認定したことは認めるが、「この種業界においては、前記五角形の外形その
ものは、ありふれたものであり、自他商品識別力がないか又は極めて弱いものであ
って、その内部に表された形状が自他商品識別の際の重要な要素になるものといわ
なければならない。」(同14頁9~13行)と判断したことは誤りである。
 確かに、本件商標及び引用商標における「実線とその内側に実線に沿って二重の
破線を配した左右相対の五角形」の部分は、ジーンズのヒップポケットの形状を素
材とするデザインであるが、ジーンズのヒップポケットの形状には、五角形の下側
部分が円弧状であるもの、五角形の縦と横のバランスが異なるもの、ポケットの外
周の内側に二重破線をデザインとして利用していないものなどがあり、本件商標及
び引用商標における五角形の部分が、直ちに「ありふれたもの」、あるいは「識別
力の弱いもの」とはいえないのである。
 そして、外周の二重破線部分とその「内部に表された形状」とは、同じ色と太さ
の波線、かつ、二重の波線間の間隔もほぼ同じものからなり、それら両者の配列
が、一体としたデザインとして認識される。このように一体として観察された際
に、両商標が類似のものとして認識される以上、あえて「内部に表された形状」が
要部であり「実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角
形」が付加的な部分として分離する必要性・合理性はない。
 しかも、ヒップポケットの図案の商品識別力ひいては商標の類似性を考える場
合、五角形の「内部に表された形状」のみの類似性を考えるのではなく、五角形の
「内部に表された形状」の位置、その「内部に表された形状」が五角形全体の中で
占める割合を重視した、全体のイメージが非常に重要となるのである。
 従前の特許庁における登録異議の申立てについての決定(甲第16~第19号
証)においても、五角形の形状を含む全体としての構成に同一性があることが理由
とされており、このことからしても、ヒップポケットの図案の類似性判断におい
て、五角形の形状を含む全体の構成が重要視されるべきことが明らかである。
2 審決が、「本件商標と引用商標は、いずれも前記五角形の形状を基調とするも
のであるが、・・・その五角形の外形を上下二分するように横断する二重破線を配
した形状において、本件商標は大部分が直線であり、中央で湾曲している部分もそ
の曲がり度合いがわずかで、しかも交差することなく下方部分が離れているのに対
し、引用商標は全体が曲線になっており、中央部において左右両方向からの曲線の
末端が交差し、その交差部分に小さな三角形を配置した如き形状をしているという
差異を有し」(審決書14頁14~22行)と認定したことは認めるが、「これら
の差異が全体に与える影響が決して少なくなく、両者は全体として看者に別異の印
象を与えるものである。」(同14頁22行~15頁2行)と判断したことは、両
商標の細部の相違点を強調する一方で、全体の類似点を前記のとおりあまりに軽視
しており、妥当な判断手法とはいえない。
 すなわち、両商標において、横断二重破線は、五角形の中段部を横断する形で位
置しているのであり、五角形の上下の空間部分と比べて、この横断二重破線が五角
形の内側で占める割合は、それほど大きくない。そして、引用商標において、横断
二重破線は、五角形の両端から交わることなく中心部に向かい並行な関係を保ちな
がら下方に湾曲している。他方、本件商標の横断二重破線も、五角形の両端から中
心部までの約3分の2の部分は並行な直線であるが、残りの3分の1の部分は、並
行な関係を保ちながら下方に湾曲している。そして、両商標において、横断二重破
線が中心部で交差するときの交差角度は、いずれも鈍角である。
 このような五角形の内部の横断二重破線を五角形全体の配列の中でみるとき、本
件商標において看者の印象に残るのは、二重の破線が並行しながら、五角形の両端
中段部から中心部に向かって下方になだらかな曲線を描いているというイメージで
あり、引用商標との相違点である、破線の交差点において下方部分が離れている点
や、破線の両端3分の2が直線であるという点は、全体の印象の中で非常に小さな
ものにすぎないのである。
2 商品の出所についての混同のおそれ(取消事由2)
 ジーンズは一般の消費者向けの衣料品であり、その主要な消費者は、十代を中心
とした若年層又はこれらを子供に持つ主婦層等のごく一般の人々であり、商品に対
する専門的な知識を有する者ではないといえる。このような一般の消費者が本件商
標を見た場合、その外観より原告の商品であると識別し、商品を購入するものと考
えられ、両商標の差異を認識するのは、特別な商品知識を持った業者や収集家に限
ったものといえる。
 そうすると、本件商標と引用商標とは、前示のとおり、図形の細部において若干
の差異はあるものの、その構成が同一であり、両商標を隔離的に全体としてみた場
合にこれらの差異は微差にすぎないから、両商標は、外観において相紛れるおそれ
の高い類似の商標であり、本件商標をその指定商品に使用すると、取引者・需要者
が、該商品を原告又は原告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の製造販売に
係る商品と誤認し、商品の出所の混同を生じるおそれも高いといえる。
 したがって、審決が、「本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取
引者、需要者が請求人(注、本訴原告)又は同人と経済的・組織的に何らかの関係
を有する者の業務に係る商品であるかの如くにその出所について混同するおそれは
ない」(審決書15頁19~22行)と判断したことは誤りである。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定判断は正当であり、原告の主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1について
1 この種商標において、五角形の外形の部分は、自他商品識別機能を有しておら
ず、この機能を有するのは、五角形を除いた部分である。したがって、審決が五角
形の部分を除いて要部観察を行ったことに誤りはない。
 また、本件商標及び引用商標は、原告が主張するような、特殊な五角形をしてお
らず、しかも、デザインの一体性と要部観察は、次元を異にする問題であり、デザ
インが一体的に捉えられたとしても、要部観察が否定されるものではない。
 原告が主張する登録異議の申立てについての決定と、本件は事案を異にしてお
り、本件の要部観察の手法が誤りであるとの理由にはならない。
 したがって、この点に関する審決の認定(審決書13頁13行~14頁13行)
に誤りはない。
2 審決が認定するように「本件商標は大部分が直線であり、中央で湾曲している
部分もその曲がり度合いがわずかで、しかも交差することなく下方部分が離れてい
る」から、本件商標について、看者の印象に残るのは、二重の波線が並行しなが
ら、直線的に横断しているイメージであり、引用商標とは大きく異なるものであ
る。
 したがって、両商標の相違点は決して小さなものではなく、この点に関する審決
の認定(審決書14頁14行~15頁4行)にも誤りはない。
2 取消事由2について
 審決が認定するように「自他商品の識別において、前記五角形の外形よりもむし
ろその内部に表された形状が重要な要素を占めるというこの種業界の実情」(審決
書15頁16~19行)に鑑みれば、一般の消費者といえども、本件商標と引用商
標の五角形内部の形状の大きな相違については、容易に看取できるといえるから、
混同を生じるおそれは全くない。
 したがって、この点に関する審決の認定(審決書15頁15行~16頁1行)に
も誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 審決の理由中、本件商標が、別添審決書写し別紙「1本件商標」のとおりの構
成よりなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」とすること、引用商標1が、
同別紙「2引用商標」のとおりの構成よりなり、引用商標2が、同別紙「3引用商
標」のとおりの構成よりなり、両商標が、第17類「被服(運動用特殊被服を除
く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定
商品とすること、本件商標と引用商標とが「既成の称呼及び観念を生ずるものとも
いえない」(審決書15頁5~6行)ことは、いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由1(外観上の類否判断の誤り)について
1 本件商標と引用商標とが、「いずれも実線とその内側に実線に沿って二重の破
線を配した左右相対の五角形の外形とその外形を上下に二分するように横断する二
重破線を配した図形からなるものである」(審決書13頁9~12行)ことは、当
事者間に争いがない。
  ところで、商品広告雑誌である「ホットドッグ・プレス」の昭和57年4月1
0日付け抜粋(審決甲第9号証、本訴甲第11号証)によれば、細綾織りの綿布製
のズボン、すなわち、ジーンズについては、原告・被告を含むジーンズメーカー1
0社がいずれも、ジーンズの背面後部に位置するヒップポケットを、上部が水平で
あり、左右両辺が下方に垂直かやや窄まりながら垂下し、その下端が内側に折曲又
は湾曲して下部を形成し、その下部の中心に頂点を有する左右対象な五角形又はこ
れに極めて近似した形状としており、その内側周囲を二重のステッチによって縫い
付けているものと認められ、この共通する五角形又はこれに極めて近似した形状の
内側に設けられたステッチのデザインが、各ジーンズメーカーにより、それぞれ異
なっているものと認められる。
 そうすると、審決が、「ジーンズを取り扱う業界においては、ジーンズのヒップ
ポケットが実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形の
外形をしており、その内側のステッチデザインがメーカーによって異なることが認
識されているものといえるし、前記五角形の図形に接する取引者、需要者は、それ
がジーンズ以外の商品について使用されたとしても、それをヒップポケットの形状
を表した図形と認識し理解するというのが相当である。」(審決書13頁19行~
14頁4行)と判断したことに誤りはないといわなければならない。
 また、前記第17類を指定商品とする登録第1673824号商標(審決及び本
訴乙第1号証)、登録第2316134号商標(同第2号証)、登録第24532
40号商標(同第3号証)、登録第2687273号商標(同第4号証)、登録第
2687281号商標(同第5号証)、登録第2687282号商標(同第6号
証)、登録第2694387号商標(同第7号証)、登録第2694989号商標
(同第8号証)及び登録第2719186号商標(同第9号証)並びに平成3年政
令第299号による改正後の商標法施行令の区分による第25類を指定商品とする
登録第3171115号商標(同第10号証)、登録第3186518号商標(同
第11号証)、商公平8-53909号公報(同第12号証)、商公平8-737
70号公報(同第13号証)、商公平8-53910号公報(同第14号証)及び
商公平8-73774号公報(同第15号証)によれば、前記の各ジーンズメーカ
ーに共通する五角形又はこれに極めて近似した形状を実線により形成し、その実線
の内側に沿って二重の破線を配した図形において、その内部に二重破線等により工
夫を凝らした様々な模様を形成したものが、本件商標の属する指定商品を取り扱う
多くのメーカーによって、商標登録され、あるいは商標登録出願されているものと
認められる。
 そうすると、審決が、「この種業界においては、前記五角形の外形そのものは、
ありふれたものであり、自他商品識別力がないか又は極めて弱いものであって、そ
の内部に表された形状が自他商品識別の際の重要な要素になるものといわなければ
ならない。」(審決書14頁9~13行)と判断したことにも誤りはないものとい
わなければならない。
 原告は、ジーンズのヒップポケットの形状には、五角形の下側部分が円弧状であ
るもの、五角形の縦と横のバランスが異なるもの、ポケットの外周の内側に二重破
線をデザインとして利用していないものなどがあり、本件商標及び引用商標におけ
る五角形の部分が、直ちに「ありふれたもの」、あるいは「識別力の弱いもの」と
はいえないと主張する。
 確かに、ジーンズのヒップポケットの形状を、特に些細な点にまで注意して観察
すれば、原告主張のような形状のものも認められるが、その基本的な構成態様はい
ずれも、前示のとおり、上部が水平であり、左右両辺が下方に垂下し、その下端が
内側に折曲又は湾曲して、その下部の中心に頂点を有する左右対象な五角形又はこ
れに極めて近似した形状を有するものであり、多数のジーンズメーカーにおいてそ
の内側周囲を二重のステッチによって縫い付けているものと認められる以上、その
ような構成を採用する本件商標及び引用商標のようなヒップポケットの形状におい
て、前記五角形の部分が、看者に強い印象を与えるものでないことは明らかであ
り、この部分の有する自他商品識別力が弱いものであることも当然といえるから、
原告の主張を採用する余地はない。
 また、原告は、外周の二重破線部分とその「内部に表された形状」とは、同じ色
と太さの波線、かつ、二重の波線間の間隔もほぼ同じものからなり、それら両者の
配列が、一体としたデザインとして認識される以上、「内部に表された形状」が要
部であり「実線とその内側に実線に沿って二重の破線を配した左右相対の五角形」
が付加的な部分として分離する必要性・合理性はないと主張する。
 しかし、図形を主とする商標の類否判断において、当該商標の属する指定商品の
分野における多数の商標登録又は商標登録出願により既にありふれた形状となって
いる部分と、工夫を凝らした様々な模様を形成した部分とが認められ、図形上、両
者を分離して認識することが可能である場合、後者の部分を看者の注意を惹く要部
として把握し、この点を重視してその類否判断を行うことは当然であり、これを非
難する原告の主張に理由がないことは明らかである。
 以上の認定事実等に照らして、原告の、前記五角形の「内部に表された形状」の
位置及びこれが五角形全体の中で占める割合を重視した全体のイメージが非常に重
要であるとの主張、従前の特許庁における登録異議の申立てについての決定におい
て、五角形の形状も含む全体としての構成に同一性があることが理由とされていた
との主張が、いずれも採用できないことは明らかといわなければならない。
2 本件商標と引用商標とが、「いずれも前記五角形の形状を基調とするものであ
るが、・・・その五角形の外形を上下二分するように横断する二重破線を配した形
状において、本件商標は大部分が直線であり、中央で湾曲している部分もその曲が
り度合いがわずかで、しかも交差することなく下方部分が離れているのに対し、引
用商標全体が曲線になっており、中央部において左右両方向からの曲線の末端が交
差し、その交差部分に小さな三角形を配置した如き形状をしているという差異」
(審決書14頁14~22行)を有していることは、当事者間に争いがない。
 そして、前記のとおり、本件商標及び引用商標の属する指定商品の分野におい
て、前記五角形の外形がありふれた形状であるのに対し、その内側の部分が、工夫
を凝らして形成された要部と認められる以上、その部分における上記の差異は、商
標全体の印象に大きな影響を及ぼすものといわなければならず、その結果、両商標
は、看者にとって外観上別異のものと認識されることが明らかである。
 原告は、本件商標において看者の印象に残るのが、二重の破線が並行しながら、
五角形の両端中段部から中心部に向かって下方になだらかな曲線を描いているとい
うイメージであり、引用商標との相違点である、破線の交差点において下方部分が
離れている点や、破線の両端3分の2が直線であるという点は、全体の印象の中で
非常に小さなものにすぎないと主張する。
 しかし、前示争いのない事実のとおり、五角形の外形を上下二分する横断二重破
線が、本件商標では、大部分が直線であって、中央の湾曲部分もその曲がり度合い
がわずかであり、全体として直線状のものと強く印象づけられるのに対し、引用商
標では、その二重破線の全体が曲線で形成され、左右に2つの湾曲状態であること
が明瞭に認識できるから、両商標が別異のものと看取されることが明らかであり、
この点に反する上記原告の主張は、これを採用することができない。
 したがって、審決が、「これらの差異が全体に与える影響が決して少なくなく、
両者は全体として看者に別異の印象を与えるものである。」(審決書14頁22行
~15頁2行)と判断したことに誤りはなく、その結果、「両商標は外観において
彼此紛れることなく、区別し得るものというのが相当である。」(同15頁3~4
行)と判断したことにも誤りはない。
3 取消事由2(商品の出所についての混同のおそれ)について
 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない別異のものであ
り、また、ジーンズを取り扱うこの種業界において、前記五角形の外形よりむしろ
その内部に表された形状が、自他商品の識別上、重要な要素を占めるものと認めら
れる。
 そうすると、審決が、「本件商標をその指定商品について使用しても、これに接
する取引者、需要者が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者
の業務に係る商品であるかの如くにその出所について混同するおそれはない」(審
決書15頁19~22行)と判断したことに誤りはないものといわなければならな
い。
 原告は、本件商標と引用商標における図形の細部に若干の差異はあるものの、そ
の構成が同一であり、両商標を隔離的に全体としてみた場合にこれらの差異は微差
にすぎないから、両商標は、外観において相紛れるおそれの高い類似の商標であ
り、本件商標をその指定商品に使用すると、取引者・需要者が、該商品を原告又は
原告と経済的・組織的に何らかの関係がある者の製造販売に係る商品と誤認し、商
品の出所の混同を生じるおそれが高いと主張する。
 しかし、両商標の構成が同一であり、両商標を隔離的に全体としてみた場合これ
らの差異は微差にすぎないとする主張自体が誤りであることは、前示のとおりであ
るから、原告の上記主張は、その余の点について検討するまでもなく、到底これを
採用することができない。
 また、原告は、ジーンズの主要な消費者が、十代を中心とした若年層又はこれら
を子供に持つ主婦層等のごく一般の人々であり、商品に対する専門的な知識を有す
る者ではないから、このような一般消費者が本件商標を見た場合、その外観より原
告の商品であると識別し、商品を購入するものと考えられ、両商標の差異を認識す
るのは、特別な商品知識を持った業者や収集家に限られると主張する。
 しかし、前示のとおり、本件商標及び引用商標における前記五角形の外形が、ジ
ーンズのヒップポケットにおけるありふれた形状であり、その内部に表された形状
が自他商品の識別力を有するものと認められる以上、原告の主張する一般の消費者
においても、商品を識別するためには、当然、この内部の形状の相違に着目してお
り、引用商標が付された原告商品に対しても、前記五角形の内部に表された形状が
他の商標と異なることを認識し、この認識に基づいて原告の商品であることを識別
しているものと推認されるから、本件商標と引用商標の差異を認識するのが特別な
商品知識を持った業者や収集家に限定されるものでないことは明らかであり、原告
の主張を採用する余地はない。
4 以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、審決が、「本件商
標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも該当しない」(審
決書16頁2~3行)と判断したことは正当であり、他に審決を取り消すべき瑕疵
はない。
 よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用
の負担並びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間の指定につき、行政事件
訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第13民事部
    裁判長裁判官  田中 康久
       裁判官  石原 直樹
       裁判官  清水  節

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