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平成11(ネ)2870実用新案権侵害行為差止及び損害賠償請求控訴事件

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成11年12月7日
事件種別 民事
法令 実用新案権
キーワード 実用新案権20回
実施19回
許諾9回
損害賠償7回
侵害4回
差止3回
主文
事件の概要

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判決文

平成一一年(ネ)第二八七〇号 実用新案権侵害行為差止及び損害賠償請求控訴事件
(平成一〇年一一月二日口頭弁論終結。原審・新潟地方裁判所高田支部平成八年
(ワ)第一一八号)
         判    決
          控  訴  人     【A】
          被 控 訴 人     株式会社 ニコー
          代表者代表取締役    【B】
          訴訟代理人弁護士    神   山   博   之
          訴訟復代理人弁護士   兼   田   俊   男
         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事実及び理由
第一 控訴人の求めた裁判
「 1 原判決を取り消す。
  2 被控訴人は、別紙イ号物件目録記載の建物のうち同目録図7中の1ないし
5及びこれに対応する1′ないし5′の各室(階段を含む。)、並びに別紙ロ号物
件目録記載の建物のうち同目録図7中の1ないし14及びこれに対応する1′ないし
14′の各室(階段を含む。)を使用してはならない。
  3 (主位的に)被控訴人は控訴人に対し、二二〇〇万円及びこれに対する平
成八年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
  4 (予備的に)被控訴人は控訴人に対し、一五六一万八〇〇〇円及びこれに
対する平成八年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払
え。」
 との判決並びに仮執行宣言。
第二 事案の概要
 一 争いのない前提事実
  1 控訴人は、名称をいずれも「多連棟式のガレージ付建物」とする登録第一
九四六一〇九号実用新案(第一実用新案)及び第一九四六一一一号実用新案(第二
実用新案)の実用新案権者である。いずれの実用新案とも、登録日は平成四年一二
月二四日である。
  2 被控訴人は別紙不動産物件目録記載の建物(本件建物)を所有しており、
そのうち別紙イ号物件目録記載のA棟は第一実用新案権の技術的範囲に属し、別紙
ロ号物件目録記載のB棟は第二実用新案権の技術的範囲に属する。
 二 控訴人主張の請求原因
  1 右のとおり、本件建物は第一又は第二実用新案権を侵害している。
  2 被控訴人が本件建物で営業しているラブホテルには一九室あり(A棟五
室、B棟一四室)、一室一日当たり、少なくとも一万五〇〇〇円の売上げがあっ
て、被控訴人は三〇〇〇円の利益を得ている。そして、第一及び第二実用新案権の
実施料は売上げの五パーセントが相当である。
  3 (主位的主張)実用新案法二九条一項により、控訴人は、被控訴人が得た
利益と同額の損害を被ったと推定され、被控訴人に対し、本件建物の三年分(本訴
提起前三年間)の利益である六二四七万二〇〇〇円のうち二〇〇〇万円及び弁護士
費用二〇〇万円の合計二二〇〇万円の損害賠償請求権を有する。
  4 (予備的主張)本件建物に関する三年分(本訴提起前三年間)の第一及び
第二実用新案権の実施料は一五六一万八〇〇〇円であり、控訴人は同額の損害を被
り、被控訴人に対し同額の損害賠償請求権を有する(実用新案法二九条二項)。ま
た、控訴人と被控訴人は、各実用新案権が登録された場合にはその実施料を支払う
旨合意していたので、被控訴人は控訴人に対し、右額の実施料を支払う義務があ
る。
  5 よって、控訴人は被控訴人に対し、前記第一に記載のとおりの差止め及び
損害賠償を求める(遅延損害金の始期は訴状送達日の翌日)。
 三 被控訴人主張の抗弁
 本件建物は、被控訴人が石田建設株式会社(昭和六二年当時の商号は株式会社石
田建設工業。以下「石田建設」という。)にその建築を発注し、同社が建築したも
のであるが、同社は建築の際の昭和六二年一二月一八日ころ、控訴人から第一及び
第二実用新案権の実施許諾を得、その対価として三〇〇万円を控訴人に支払った。
第三 当裁判所の判断
 一 被控訴人主張の抗弁に対し、控訴人は、控訴人が石田建設から受け取った三
〇〇万円は、本件建物建築の計画から保健所の許可を得て営業開始に至るまでに要
した開業許可手続に関し、控訴人が行政書士として経験とノウハウを持っていたこ
とによる指導依頼を受けた対価であったと主張し、抗弁を争うので、この関係の事
実関係をみることとする。
  1 本件実用新案権の関係で右対価の支払の先後をみると、確かに、石田建設
から控訴人に対し三〇〇万円が支払われたのは昭和六二年一二月一八日ころであっ
て、第一及び第二実用新案登録(平成四年)より前のことである。そして、右三〇
〇万円に関する石田建設の帳簿の支払名目としては、「【A】(控訴人)、支払手
数料」と記載されているし(乙二の一)、同社の代理人弁護士が、平成八年七月二
日に控訴人の代理人弁理士にあてて出した回答書にも、本件建物建築の際控訴人か
ら実用新案権についての話が持ち掛けられたことはなかった旨の記載があることが
認められ(乙一)、原審証人【C】(同社の代表者)も同旨の証言をしているとこ
ろである。
  2 しかしながら、甲一ないし四によれば、第一実用新案の登録出願は昭和六
二年九月一四日に、第二実用新案の登録出願は昭和六二年九月二八日にそれぞれ控
訴人によってされていることが認められ、さらに、控訴人本人の原審供述によれ
ば、本件建物の建築プランについて控訴人が石田建設から相談を受けた時、第一及
び第二実用新案のアイデアは既にそこに盛り込まれていたことが認められる。した
がって、本件建物を建築する際、その相談を持ち掛けられていた控訴人から、既に
登録出願していた第一及び第二実用新案権が登録された場合の対応についての持掛
けが、少なくとも黙示的に石田建設に対してあったとみるのが自然であり、控訴人
は、各実用新案の実施許諾をする意図の下に、本件建物の建築に要する諸手続や設
計図作成上の指導をしていたものと推認せざるを得ない。原審証人【C】も、控訴
人が各実用新案の登録出願をしていたとすれば、登録後の実用新案権の実施につい
ては、三〇〇万円の支払で当然清算が済んでいたはずであると証言しており、当時
の控訴人と石田建設との間の合理的な意思解釈としては、控訴人が既に登録出願を
していた実用新案については、控訴人においてその実施を許諾する趣旨で双方合意
していたものと認めるのが相当である。
  3 したがって、本件建物は、このような合意に基づき、第一及び第二実用新
案権の実施の許諾を得て建築されたものであり、本件建物建築注文者である被控訴
人に対しても、控訴人から各実用新案の実施許諾があったものと認められる。控訴
人本人の原審供述中には、本件建物の建築途中において、被控訴人の代表者に対し
て将来第一又は第二実用新案が登録された際には、実施許諾料の支払を求める旨伝
えていたとの部分があるが、乙一及び【C】の原審証言に照らしてにわかに採用す
ることができない。
 二 以上判示したところからすると、控訴人は被控訴人に対し、各実用新案権に
ついて通常実施権を許諾したものというべきである。したがって、実用新案権の侵
害を理由とする本件建物の使用差止請求及び損害賠償請求は理由がない。
 控訴人は、予備的に各実用新案権の実施料相当の損害賠償を請求するが、この請
求も、被控訴人の実用新案権の侵害に伴う損害賠償請求であり、被控訴人が控訴人
から実施許諾を得ている以上、理由がない。
 三 控訴人は、各実用新案権の実施許諾を被控訴人に与えた場合の実施料相当額
の支払が合意されたとして、予備的請求に係る額の支払も求めているが、前記三〇
〇万円の授受を超えて、控訴人と石田建設ないし被控訴人との間で各実用新案権の
実施料支払の合意があったことを認めるに足りる客観的な証拠はない。この合意が
あったとする控訴人の原審供述によれば、一五〇〇万円を超える額の予備的請求に
係る額についてのものが取り決められたことになり、同供述は、そのような額に上
ることについての書面が取り交わされないままに控訴人主張に係る合意に至ったと
いうものであって、到底採用することができない。
 他に控訴人主張の実施料支払の合意のあったことを認めるべき証拠はなく、控訴
人主張の実施料の額が取り決められたものとは認められないので、右の予備的請求
も理由がない。
第四 結論
 以上のとおりであって控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却した
原判決は相当である。よって、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第一八民事部

         裁判長裁判官    永   井   紀   昭
            裁判官    塩   月   秀   平
            裁判官    市   川   正   巳

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