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平成27(ワ)24047不当利得返還請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成27年12月17日
事件種別 民事
当事者 被告NECトーキン株式会社酒匂禎裕
原告
対象物 テレホンカード
法令 実用新案権
実用新案法11条1項1回
キーワード 実用新案権8回
実施7回
分割6回
侵害1回
主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,考案の名称を「テレホンカード」とする実用新案権(以下「本件実 用新案権」という。)の登録を受けた原告が,その登録前にテレホンカードの 製造販売をした被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記考案の実施料 相当額の一部である100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平 成27年9月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金 の支払を求める事案である。

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判決文

平成27年12月17日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成27年(ワ)第24047号 不当利得返還請求事件
口頭弁論終結日 平成27年11月17日
判 決
原 告 A
被 告 NECトーキン株式会社
同訴訟代理人弁護士 新 保 克 芳
酒 匂 禎 裕
西 村 龍 一
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成27年9月8日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,考案の名称を「テレホンカード」とする実用新案権(以下「本件実
用新案権」という。)の登録を受けた原告が,その登録前にテレホンカードの
製造販売をした被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記考案の実施料
相当額の一部である100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平
成27年9月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び後掲の証拠により容易に認められ
る事実)
⑴ 原告は,平成11年12月20日,他の2名と共同して,昭和59年9月
5日出願の実用新案登録出願(実願昭59-134611号)からの分割出
願(実願平6-5675号)を原出願として,本件実用新案権に係る考案
(以下「本件考案」という。)を分割する出願(実願平11-9646号。
以下「本件出願」という。)をした。
本件出願については,平成12年6月30日に出願公開がされ,平成22
年4月2日に原告及び上記2名を権利者とする本件実用新案権の設定登録が
された(実用新案登録第2607899号)が,同月21日,平成11年9
月5日存続期間満了を原因として本件実用新案権の抹消登録がされた。
(甲1,2,5)
⑵ 被告は,平成12年6月30日から平成19年3月まで,日本電信電話株
式会社からの委託により,同社の仕様に基づくテレホンカードを業として製
造販売した。
2 争点
不当利得返還請求権の有無
3 争点についての当事者の主張
(原告の主張)
本件請求は,本件実用新案権ないし補償金請求権の侵害を理由として不当利
得の返還を求めるものではない。本件考案を内容とする本件実用新案権は存続
期間が満了しており,本件考案を自由に実施することができるが,実用新案法
上,存続期間が満了して自由に実施できる考案についても分割出願が認められ
ている。そして,考案の保護及び利用を図ることにより産業の発達に寄与する
という同法の目的(1条)並びに憲法が財産権を保障していること(憲法29
条)に照らすと,新たな登録に値する有益な考案について,所定の手数料を支
払って分割出願をし,出願公開がされた場合は,財産権の一種として法的保護
に値する。本件考案については,平成11年12月20日に分割出願をし,平
成12年6月30日に出願公開されたから,同日以降は,法的保護を受ける権
利を有する。
そうしたところ,被告は,同日から平成22年6月30日までの10年間,
原告による本件出願に基づき公開された本件考案を実施してテレホンカードを
製造販売し,60億円の実施料相当の利益を受け,そのために,原告に,持分
(3分の1)に相当する20億円の損失が及んだから,うち100万円を返還
すべきである。
(被告の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実⑴によれば,本件出願は,実用新案法11条1項が準用する特
許法44条2項本文により,実願平6-5675号の出願日とみなされる昭和
59年9月5日に出願されたものとみなされるから,これについて実用新案権
の設定登録がされたとしても,同日の15年後である平成11年9月5日をも
って存続期間が満了し(平成5年法律第26号による改正前の実用新案法15
条1項ただし書),その後は,本件考案を誰もが自由に実施することが可能に
なったものである。
したがって,被告が製造販売したテレホンカードが本件考案の技術的範囲に
属するか否かにかかわらず,平成12年6月30日以降の上記テレホンカード
の製造販売による利益の取得が原告との関係で法律上の原因を欠くということ
はできず,また,これにより原告に損失が生じたということもできない。
2 これに対し,原告は,実用新案法の目的や憲法が財産権を保障していること
に照らし,実施することが自由な考案についても,分割出願をして出願公開が
された場合は,財産権の一種として法的保護に値する旨主張する。しかし,考
案に対する法的保護は実用新案法その他の法律の規定する範囲で認められると
ころ,原告の主張の根拠となる規定は見当たらない。したがって,上記主張を
採用することはできない。
3 以上によれば,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長 谷 川 浩 二
裁判官 藤 原 典 子
裁判官 萩 原 孝 基

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