平成26(ネ)10019等損害賠償請求控訴事件,損害賠償請求附帯控訴事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
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裁判年月日 |
平成28年6月22日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
控訴人兼被
X1X3 被控訴人兼附帯
兼控訴人株式会社毎日オークション
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法令 |
著作権
著作権法47条の216回 著作権法47条9回 著作権法114条3項6回 著作権法32条1項5回 著作権法114条5回 著作権法117条4回 民法1873条の14回 民法256条1項1回 民法1873条の51回 著作権法21条1回 民法704条1回 著作権法114条の51回 民法1873条の61回 民法423条1回 著作権法25条1回 著作権法112条1回 民法709条1回
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キーワード |
分割85回 侵害72回 損害賠償62回 許諾50回 実施4回 無効3回 抵触2回 差止1回
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主文 |
1 原告X1の控訴及び原告協会の附帯控訴並びに当審における原告らによる訴えの追加的変更に基づき,原判決を次のとおり変更する。(1) 被告は,原告協会に対し,7862万4614円及びこれに対する平成22年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(2) 被告は,原告X1に対し,893万8485円及びこれに対する平成22年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(3) 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
2 被告の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は,1,2審を通じてこれを5分し,その3を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,1項(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。 |
事件の概要 |
1 事案の概要
本件は,①フランス共和国法人である原告協会が,その会員(美術作品の著作者
又は著作権承継者)から美術作品(以下「会員作品」という。)の著作権の移転を受
け,著作権者として著作権を管理し,②原告X1が,亡パブロ・ピカソ(以下「ピ
カソ」という。)の美術作品(以下「ピカソ作品」という。)の著作権について,フ
ランス民法1873条の6に基づく不分割共同財産の管理者であって,訴訟当事者
として裁判上において,同財産を代表する権限を有すると主張した上で,原告らが,
被告に対し,被告は,被告主催の「毎日オークション」という名称のオークション
(以下「本件オークション」という。)のために作成したカタログ(以下「本件カタ
ログ」という。)に,原告らの利用許諾を得ることなく,会員作品及びピカソ作品の
写真を掲載しているから,原告らの著作権(複製権)を侵害しているなどと主張し
て,不法行為に基づく損害賠償請求ないし悪意の場合の不当利返還請求として,○ア 原
告協会につき1億5564万1860円の一部請求として8650万円及びこれに
対する最終不法行為の日の後である平成22年12月4日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,○イ 原告X1につき1696万156 |
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判決文
平成28年6月22日判決言渡
平成26年(ネ)第10019号 損害賠償請求控訴事件
平成26年(ネ)第10023号 損害賠償請求附帯控訴事件
(原審 東京地方裁判所平成24年(ワ)第268号)
口頭弁論終結日 平成28年2月29日
判 決
控 訴 人 兼 被 控 訴 人 X1
X2
X3
X4
X5
上 記 5 名 代 表 者 X 1
(以下「原告X1」という。)
附帯控訴人兼被控訴人 グラフィックアート及び造形芸術作家協会
(以下「原告協会」という。)
2名訴訟代理人弁護士 市 村 直 也
被控訴人兼附帯被控訴人兼控訴人 株式会社毎日オークション
(以下「被告」という。)
訴 訟 代 理 人 弁 護 士 井 奈 波 朋 子
主 文
1 原告X 1 の控訴及び原告協会の附帯控訴並びに当審における原告らによる
訴えの追加的変更に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1) 被告は,原告協会に対し,7862万4614円及びこれに対する平成
22年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被告は,原告X 1に対し,893万8485円及びこれに対する平成2
2年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
2 被告の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は, 2審を通じてこれを5分し,
1, その3を原告らの負担とし,
その余を被告の負担とする。
4 この判決は,1項(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨等
1 原告X1の控訴の趣旨及び当審における追加請求(850万円及びこれに関
する附帯請求の支払請求を超える分は,当審において追加的変更のあった請求部分
である。)
原判決を次のとおり変更する。
(1) (主位的請求)
被告は,原告X1に対し,2209万0832円及びこれに対する平成2
2年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)
被告は,原告X1に対し,982万4499円及びこれに対する平成22
年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は1,2審とも被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
2 原告協会の附帯控訴の趣旨及び当審における追加請求(8650万円及びこ
れに関する附帯請求の支払請求を超える分は,当審において追加的変更のあった請
求部分である。)
原判決を次のとおり変更する。
(1) (主位的請求)
被告は,原告協会に対し,1億8125万4733円及びこれに対する平
成22年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)
被告は,原告協会に対し,8156万0616円及びこれに対する平成2
2年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は1,2審とも被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
3 被告の控訴の趣旨
(1) 原判決中被告の敗訴部分を取り消す。
(2) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は1,2審とも原告らの負担とする。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,①フランス共和国法人である原告協会が,その会員(美術作品の著作者
又は著作権承継者)から美術作品(以下「会員作品」という。)の著作権の移転を受
け,著作権者として著作権を管理し,②原告X1が,亡パブロ・ピカソ(以下「ピ
カソ」という。)の美術作品(以下「ピカソ作品」という。)の著作権について,フ
ランス民法1873条の6に基づく不分割共同財産の管理者であって,訴訟当事者
として裁判上において,同財産を代表する権限を有すると主張した上で,原告らが,
被告に対し,被告は,被告主催の「毎日オークション」という名称のオークション
(以下「本件オークション」という。)のために作成したカタログ(以下「本件カタ
ログ」という。)に,原告らの利用許諾を得ることなく,会員作品及びピカソ作品の
写真を掲載しているから,原告らの著作権(複製権)を侵害しているなどと主張し
て,不法行為に基づく損害賠償請求ないし悪意の場合の不当利返還請求として, 原
○
ア
告協会につき1億5564万1860円の一部請求として8650万円及びこれに
対する最終不法行為の日の後である平成22年12月4日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,○原告X1につき1696万156
イ
0円の一部請求として850万円及びこれに対する最終不法行為の日の後である同
年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,
それぞれ求めた事案である(請求額は原審段階のものである。。
)
原審は,平成25年12月20日,原告らの請求のうち,原告協会については,
4094万4350円の支払請求及びこれに対する附帯請求部分を,原告X1につ
いては,441万7000円の支払請求及びこれに対する附帯請求部分を認容する
旨の判決を言い渡したところ,原告X1及び被告は,敗訴部分につき全部控訴し,
原告協会は,敗訴部分につき全部附帯控訴した。
その後,当審において,原告らは請求を拡張し,最終的な被告に対する請求内容
は,原告協会については,1億8125万4733円及びこれに対する平成22年
12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金であり,原
告X1については,2209万0832円及びこれに対する同年6月11日から支
払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金である。
被告は,全ての請求について棄却を求めるとともに,原告X1の原告適格を争い,
原告X1の訴えについては本案前の答弁として却下を求める。
2 前提事実
(1) 原告ら
ア 原告協会
原告協会は,フランス共和国において,1986年11月7日,
「1985年7月
3日付けフランス共和国著作権並びに実演家,レコード製作者及び放送事業者の権
利に関する法律」38条の規定(当該規定は「知的所有権法典に関する1992年
7月1日の法律」321の1条1項に引き継がれている。)に基づき,グラフィック
アート及び造形芸術の作家の著作権使用料に関する使用料徴収分配を目的として設
立された法人である。
原告協会は,その定款に賛同して加入した会員(美術作品の著作者又は著作権承
継者)から会員作品の著作権管理の委託を受け,その著作権管理(利用許諾,使用
料徴収,訴訟提起等)を行っている。
(甲1の1,1の2,2,4)
イ 原告X1
原告X1は,1973年4月8日に死亡したピカソの相続人の1人である。
原告X1は,パリ大審裁判所の1989年3月24日付け急速審理命令(以下「本
件急速審理命令」という。)により,不分割共同財産であるピカソの著作権の管理者
(代表者)に指名された。
(甲5,6,弁論の全趣旨)
ウ 原告らの日本国内における著作権管理
原告協会は,日本国内における著作権管理に関し,著作権等管理事業法に基づく
著作権等管理事業者として登録された一般社団法人美術著作権協会(以下「SPD
A」という。)に対し,著作権管理(利用許諾及び使用料徴収)を委託していた。ま
た,原告X1も,SPDAに対し,ピカソ作品の著作権管理を委託していた。
その後,日本国内における美術の著作物の著作権管理を一本化する目的で,一般
社団法人日本美術著作権協会(以下「JASPAR」という。)が平成24年1月に
設立された。JASPARは,同年2月1日,著作権等管理事業法に基づく著作権
等管理事業者として登録され,同年3月23日,その使用料規程を文化庁長官に届
け出,同年4月23日より著作権管理業務を開始した。現在,原告協会は,JAS
PARに対し,著作権管理を委託している。
(甲301~304,弁論の全趣旨)
(2) 被告
被告は,平成13年10月1日,株式会社毎日コミュニケーションズからの会社
分割により設立されたオークション,展覧会の企画,立案,実施等を目的とする株
式会社である。
(甲8の1)
(3) 本件オークション
本件オークションでは,①絵画・版画・彫刻,②西洋装飾美術,③ジュエリー&
ウォッチ,④日本陶芸・茶道具・古美術の4つのジャンルが設定され,そのジャン
ルごとに公開入札方式でオークションが開催された(オークション開催日の2~3
日前に下見会が開催された。。被告は,平成14年1月から平成22年12月まで
)
の9年間に,少なくとも95回(105冊のオークションカタログを発行)の絵画・
版画・彫刻ジャンルのオークションを開催した(別紙1毎日オークションカタログ
一覧表参照)。
(甲8の2,弁論の全趣旨)
(4) 本件カタログ
本件カタログ(A4版型)は,オークションの開催期日ごとに作成され,被告の
会員に配布された(本件カタログにはオークションの回数が号番号として付され
る。。被告は,本件カタログの作成に際し,掲載する作品の写真撮影,掲載する内
)
容,掲載方法等を決定し,本件カタログには,作品の写真,題号,作者,内容の説
明,予想落札価格等が掲載された。
(甲8の2,弁論の全趣旨)
(5) 原告協会と被告との和解
原告協会と被告とは,平成22年9月21日,東京地方裁判所平成21年(ワ)
第232号事件において,①被告は,原告協会に対し,マリー・ローランサン,マ
ルク・シャガール及びジャン・ピエール・カシニョールの美術作品を平成21年1
2月31日までの間本件カタログに無断複製した著作権侵害につき,SPDAの使
用料規程に基づき算定した使用料相当損害金として3306万4000円を支払う,
②原告協会と被告は,上記①以外の会員作品を本件カタログに無断複製した著作権
侵害につき,SPDAの使用料規程に基づき算定した使用料相当損害金を基礎とし
て清算処理の協議を行うことを合意する,③被告は,原告協会に対し,上記②の清
算処理が完了するまでは,会員作品を50平方センチメートルを超える表示の大き
さで本件カタログに複製しないことを確約する,などを内容とする和解を成立させ
た(以下「前件和解」という。。しかし,原告協会と被告との間で,清算処理の協
)
議は完了していない。
(甲10,弁論の全趣旨)
なお,本件における原告協会の請求は,前件和解契約の債務不履行責任を追及す
るものではない。
(6) SPDAの使用料規程
SPDAの使用料規程のうち,本件に関連するものは,以下のとおりである。
「3,出版等
印刷,写真・複写,その他の方法により著作物を可視的に複製する場合の使用料
は,一著作物に対し下記料率を適用する。但し委託者の同意がある場合は,利用許
諾契約において,下記使用料を下廻る金額を定めることができる。
(1) 書籍(モノグラフィーを除く)(源泉税10%を含む)
イ,単行本(教科書を含む)/(単位:円)
5,000部以下
複製サイズ
白黒 カラー
表1及びカバー 34,500 59,500
表4 14,000 27,500
1ページ大 10,500 20,500
3/4ページ大以下 8,500 16,500
1/2ページ大以下 7,500 15,000
1/4ページ大以下 6,000 12,000
1/8ページ大以下 5,000 9,500
(5001部以上は略)」
(甲9)
(7) JASPARの使用料規程
JASPARの使用料規程のうち,本件に関連するものは,以下のとおりである。
「第1 総則
1 一般社団法人日本美術著作権協会(以下「本協会」という。)が実施する著作
権等管理事業において適用する著作物使用料は,下記の区分に応じて,第2の(1)
ないし(4)に定める額とする。
使用料の区分
国際標準図書番号(ISBNコード)が
付され書籍の形式で刊行する印刷物又
はこれに準ずる印刷物への複製及びそ
の譲渡。ただし,書籍の表紙(表1・表
4)若しくはカバーに複製する場合,モ
1 書籍への複製及び譲渡
ノグラフィー若しくはその大部分が特
定の作家の作品により構成される書籍
に複製する場合,又は解題付き類別目録
(カタログ・レゾネ)を作成する場合を
除く。
(以下略)」
「第2 著作物使用料
1 書籍
(1) 単行本{(2)に含まれるものを除く}
ア 基準料金
1 頁以下 3/4 頁以下 1/2 頁以下
白黒 カラー 白黒 カラー 白黒 カラー
部数
~3000 \26,000 \46,000 \22,000 \37,000 \19,000 \34,000
1/4 頁以下 1/8 頁以下
白黒 カラー 白黒 カラー
\15,000 \27,000 \12,000 \21,000
(3001部以上は略)
イ 事前に利用許諾手続きを完了する場合の優遇料金(以下「優遇料金」
という。)
1 頁以下 3/4 頁以下 1/2 頁以下
白黒 カラー 白黒 カラー 白黒 カラー
部数
~3000 \13,000 \23,000 \11,000 \18,500 \9,500 \17,000
1/4 頁以下 1/8 頁以下
白黒 カラー 白黒 カラー
\7,500 \13,500 \6,000 \10,500
(3001部以上は略)
(2) 文庫版,新書版又はそれに準じる版型のもの。
基準料金・優遇料金ともに,上記(1)の料金の80%とする。」
(甲304)
第3 争点及びこれに関する当事者の主張
1 争点
(1) 原告X1の当事者適格の有無(争点1)
(2) 著作権移転の有無(争点2)
(3) 被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額(争点3)
(4) 利用許諾の有無(争点4)
(5) 本件カタログが展示に伴う小冊子(著作権法47条)に当たるか(争点5)
(6) 本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用(著作権法32
条1項)に当たるか(争点6)
(7) 原告らの請求が権利濫用に当たるか(争点7)
2 争点に関する当事者の主張
(1) 原告X1の当事者適格の有無(争点1)
(原告X1の主張)
ア パブロ・ピカソは1881年にスペインのマラガで生まれたスペイン人
であるが,1904年にパリに移住した後,1973年にムージャンで死亡するま
での間,フランスに居住して創作活動を行っていた。したがって,ピカソ作品に係
る著作権の相続には,被相続人たるパブロ・ピカソの死亡当時の住所地法であるフ
ランス法が適用される。そして,ピカソの著作権は,フランス民法の規定に基づき,
原告X1,X2,X3,X4及びX5の5名に承継され,これらの相続人によって不分
割財産に留め置かれた。
原告X1は,パリ大審裁判所の本件急速審理命令により,フランス民法上の不分
割共同財産であるピカソの著作権につき同法1873条の5から1873条の9ま
でに規定された諸権能を有する不分割財産の代表者に指名された。同法1873条
の6第1項は,
「管理者は,あるいは民事生活上の行為について,あるいは原告又は
被告として裁判上で,その権限の範囲内で不分割権利者を代表する」と規定してお
り,原告X1は,この権限に基づき,本訴を提起した。したがって,本訴において,
原告X1につき,第三者の訴訟担当のうち法定訴訟担当(担当者のための法定訴訟
担当)としての当事者適格が問題となる。
イ 渉外的要素を含む法定訴訟担当の当事者適格に関し,理論的な説明方法
の違いはともかく,訴訟担当権限が被担当者と担当者間の実体的な法律関係から派
「
生するものとは認められない場合には,その訴訟担当は純粋の訴訟上の制度である
から『手続は法廷地法による』の原則の適用がある(法廷地法が準拠法となる)」が
「訴訟担当権限が被担当者と担当者の実体的な法律関係から派生する場合には,被
担当者と担当者の実体的法律関係に適用される準拠法により訴訟担当権限の有無が
判断される」という結論には,学説上,ほぼ異論がない。
上記アのとおり,本訴における原告X1の訴訟担当権限は,
「被担当者と担当者の
実体的な法律関係から派生する場合」に当たるから,本訴における当事者適格は,
被担当者と担当者の実体的法律関係に適用される準拠法,すなわちフランス民法の
定めにより判断されることになる。
ウ 本訴における被担当者と担当者の実体的法律関係は,フランス民法の規
定に基づく不分割共同財産制度に関するものであり,その不分割共同財産に係る共
同権利者及び代表者は,原告X1らフランス人である。原告X1は,フランスの裁判
所の命令により,フランス民法に基づく不分割共同財産の代表者に指名され,フラ
ンス民法が定める不分割共同財産に関して,訴訟上及び訴訟外の実体的な代表権が
認められている。そして,同命令により,他の共同権利者らにおいてはピカソの著
作権に関する何らかの管理行為や措置をとることが禁止された。このような事情の
下で,訴訟担当者である原告X1と被担当者である他の共同権利者との間の実体的
法律関係に適用される準拠法が,フランス法になるのは,当然のことである。
これを,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)の規定に即して検討
すると,不分割共同財産制度がそもそも当事者間の合意を基礎とする制度である点
に着目し,法律行為の成立及び効力の問題とみて,当該法律行為の当時において当
該法律行為に最も密接な関係がある地の法(通則法8条1項)たるフランス法が準
拠法であると解することもできるし,また,原告X1と他の共同権利者らがいずれ
も親族である点に着目して,親族関係及びこれによって生ずる権利義務(通則法3
3条)の問題であるとみて,当事者の本国法たるフランス法が準拠法になると解す
ることもできる。さらに,通則法には不分割共同財産制度に関する直接の定めがな
いから,抵触規定の欠缺とみて,条理により最密接関連地法たるフランス法になる
と解することも可能である。いずれにしても,本訴において,被担当者と担当者の
実体的法律関係を定める準拠法がフランス法(フランス民法)となることは,疑い
がない。
エ なお,外国裁判の承認に関する民事訴訟法(以下「民訴法」という。)1
18条に関し,非訟事件の裁判の承認については,同条が定める要件の全てを満た
す必要はなく,間接管轄(1号)及び公序(3号)の2要件を満たせば足りると解
されている。本件急速審理命令は,非訟事件の裁判に当たるから,間接管轄がパリ
大審裁判所に認められ,その内容及び手続が我が国における公の秩序又は善良の風
俗に反するものでない以上,同命令は我が国において有効である。仮に,非訟事件
の裁判においても相互保証(4号)の要件を満たす必要があるという見解に立った
としても,形式審査主義を採用している現行法においては,相互保証ありと解すべ
きである。
(被告の主張)
ア 当事者適格の準拠法については,概ね,手続法の問題として法廷地法に
よるとの考え方と,実体準拠法の問題であるとする考え方に分かれる。これらいず
れの考えによるべきかを判断する基準として,訴訟担当権限が,被担当者と担当者
間の実体的な法律関係から派生するものとは認められない場合には,手続は法廷地
法によるとの原則に従い,逆に,訴訟担当権限が,被担当者間の実体的な法律関係
から派生する場合には,被担当者と担当者の実体的法律関係に適用される準拠法に
より訴訟担当権限の有無が判断されるとの考え方が提唱されている。
イ 当事者適格を手続法の問題として捉え,法廷地法を準拠法にするのであ
れば,日本法が適用され,我が国の民訴法及び著作権法いずれにも,共同著作権者
のうちの1人に訴訟上,損害賠償請求権を行使させる訴訟担当制度はなく,原告X
1 が,他の共同著作権者の持分に相当する損害賠償請求権を行使するにつき,当事
者適格は認められない。
実体準拠法の問題であるとすると,我が国の著作権法が適用されることになり,
著作権法117条により,原告X1には,他の共同著作権者の持分に相当する損害
賠償請求権を行使するにつき,当事者適格は認められない。
ウ 本訴においては,共有著作物に対する損害賠償請求権を行使する者の資
格を定める準拠法が問題となるが,これは,著作権の直接的利用から派生する権利
を誰が行使できるかという著作権の効力に関する問題であり,通則法13条が物権
の得喪について所在地法の適用を定めていることと同様の理由により,保護国法が
適用される。
したがって,原告X1は,我が国の著作権法により,自己の持分に関する損害賠
償請求権を超える他の共有者の損害賠償請求権を行使する資格はない。
エ ピカソの移住,死亡地,居住地については知らないし,ピカソの相続人
らが不分割財産合意をした証拠はないが,その点をおくとしても,我が国の著作権
法及び民法には,フランス民法が定める不分割財産という制度も存在せず,保護国
法である我が国の著作権法及び民法によれば,著作権は相続人の間で共有され,相
続によって著作権を承継した者は,持分の範囲内でしか権利行使はできない。
オ 急速審理命令は,本案受理判事ではない判事が即時に必要な処分を命ず
る権限を法律が与えている場合に,当事者の一方的な要求で,他方当事者の出席又
は呼出の下に行われる仮の裁判であり,暫定的な処分にすぎない。原告X1が本件
急速審理命令によって管理人に有効に任命されたとしても,我が国の裁判所にその
効力は及ばない。不分割財産の管理人の指名は争訟性のある非訟事件であるから,
民訴法118条の要件を全て充足する必要がある。本件急速審理命令は,相手方で
あるAが出頭せず,弁護士も選任されぬまま,下されたものであり,我が国の公序
に反する。
(2) 著作権移転の有無(争点2)
(原告協会の主張)
ア 原告協会は,その定款に賛同して加入をした美術の著作物の著作権者(著
作者又はその著作権承継者)である会員から会員作品の著作権の移転を受け,著作
権者としてフランス国内及び外国においてその著作権の管理を行っており,法律上,
管理する著作権の擁護のために裁判所に出廷する資格を有するものとされている
(
「知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律」321の1条2項)。
イ(ア) 著作権の移転について適用されるべき準拠法を決定するに当たって
は,移転の原因関係である契約等の債権行為と,目的である著作権の物権類似の支
配関係の変動とを区別し,それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべき
である(東京高判平成13年5月30日判時1797号111頁)。
著作権移転の原因行為である移転契約の成立及び効力について適用されるべき準
拠法に関し,通則法7条は,
「法律行為の成立及び効力は,当事者が当該法律行為の
当時に選択した地の法律による。として第一次的には当事者自治の原則が適用され
」
ることを明らかにした上で,同法8条1項において「前条の規定による選択がない
ときは,法律行為の成立及び効力は,当該法律行為の当時において当該法律行為に
最も密接な関係がある地の法による。 と規定し,
」 契約中に準拠法に関する合意がな
い場合は最密接関連地法を適用するものとしている。本件において,委託者から原
告に対する著作権の移転の合意に係る原告の一般規約及び個々の入会申込書には,
いずれも準拠法の定めは存在しないから,通則法8条1項により最密接関連地法が
準拠法となる。
本件の著作権移転に係る契約は,フランス法人である原告協会と,フランス人を
中心とする美術の著作物の著作者又はその著作権承継者との間で,フランスのパリ
において,フランスを含む全世界の著作権を原告に移転する旨が合意されたもので
ある。そして,著作権移転の反対給付である使用料の支払地もフランスであるから,
著作権移転の原因関係である債権契約の最密接関連地法はフランス法と解される。
そして,フランス民法は,①義務を負う当事者の同意,②その者の契約を締結す
る能力,③約務の内容を形成する確定した目的,④債務における適法な原因により,
当事者の合意は有効である旨を規定した上(1108条) 適法に形成された合意は
,
それを行った者に対しては法律に代わる(1134条)と規定している。本件にお
いては,行為能力を有する原告及び委託者らが,著作権の管理という確定した目的
のために,原告の一般規則等に同意した上で全世界における著作権を原告に移転す
る旨が明記された入会申込書に署名するという方法で著作権の原告への移転を合意
しているのであるから,著作権移転の原因行為である債権行為が有効に成立してい
ることは明らかである。
なお,通則法7条及び8条の解釈において,当事者に明示の合意がない場合に,
まず当事者の黙示の意思を探求すべきであるという立場をとったとしても,上記の
各事情に照らすならば,本件の著作権移転における当事者の黙示の意思は,フラン
ス法を準拠法とするものと解すべきである。
(イ) 次に,著作権の物権類似の支配関係の準拠法につき検討すると,一般
に,物権の内容,効力,得喪の要件等は,目的物の所在地の法令を準拠法とすべき
ものとされている。そして,通則法13条1項は,
「動産又は不動産に関する物権及
びその他の登記すべき権利は,その目的物の所有地法による。」と規定した上で,同
条2項において「前項の規定にかかわらず,同項に規定する権利の得喪は,その原
因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による。」と規定する。
著作権は,その権利の内容及び効力がこれを保護する国の法令によって定められ,
また,著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから,物権の得喪
について所在地法が適用されるのと同様の理由により,著作権という物権類似の支
配関係の変動については保護国の法令が準拠法となるものと解するのが相当である。
したがって,本件における著作権の物権類似の支配関係の変動については,保護
国である我が国の法令が準拠法となる。しかるところ,著作権の移転の効力が原因
となる移転契約の成立により直ちに生ずるとされている我が国の著作権法において
は,本件の著作権移転に関する合意が有効に成立したことにより,著作権は各委託
者から原告協会に移転したものというべきである。
(ウ) 原告協会の一般規約は,原告協会の著作権管理に関する基本的事項を
定めた約款である。原告協会に著作権管理を委託しようとする者は,原告協会の定
款及び一般規約に同意した上で原告協会の会員となる。
しかるところ,原告協会の一般規約14条は,
「作品は,その著作者,その作品の
権利承継者,相続人,受遺者又は譲受人が当協会に加入した事実のみをもって,当
協会の管理著作物として承認される。当協会への加入により,この一般規約第1条
に規定された作品及び当該著作者の他のすべての作品(それがいかなる性質のもの
であるかを問わない)の諸権利は当協会に移転(apport)する。ただし,外国地域
に限り,当協会を外国で代表する使用料徴収協会の規約の定めに従うものとする。」
と規定する。そして,この規定に対応して,原告協会への入会申込書には,
「私が入
会することを条件として,定款及び一般規約に同意し,独占的に,そして私が入会
するという事実それ自体により,以下に定義する諸権利をADAGP協会に移転
(apport)します。,
」「この移転は全ての国を対象とし,貴協会の存続する全期間に
わたるものであり,定款にあらかじめ規定された条件に基づいて撤回される場合を
除き,期間延長の可能性も含まれます。 と記載されている。
」 会員が有する著作権(補
償金請求権等を含む。)は,これらの規定に基づき,原告協会への入会の事実により
当然に原告協会に移転し,原告協会は著作権者となるのである。
(エ) 以上のとおり,会員の著作権は,入会の事実によってその管理のため
に原告協会に移転する。そして,原告協会は,会員個々の権利及び会員一般の権利
の擁護を目的として,著作権者の立場で,自らの判断及び責任において訴訟を提起
することができる。
(オ) 被告は,原告協会の一般規約その他では「譲渡」とは記載されず,
「apport」の語が用いられているなどと主張する。
「apport」の語は,古くは「action apporter」(持っていく行為)一般を意味する
動詞派生名詞(déverbal)であったが,現在では「出資」や「著作権の管理」など一
定の目的をもって財産権を移転する行為を意味する法律用語として主に用いられて
いる。1851年に創立されたフランスの音楽著作権に係る使用料徴収分配協会で
あり,著作権管理団体の国際組織CISACの主要な理事団体でもあるSACEM
(Société des Auteurs, Compositeurs et Editeurs de musique)の定款においても,会員
からその管理のために著作権の移転を受ける行為につき「apport」の語が用いられ
ている。
原告協会を初めとするフランス知的財産法典の規定に基づく使用料徴収分配協会
への入会は,その資本への出資と,管理委託する知的財産権の譲渡という二元性を
有する行為であり,このような行為を指して,定款や入会届は「apport」の語を用
いている。
(カ) 被告の後記イ(イ)の主張は,原審における弁論準備手続の終結が予定さ
れた期日にされたものであり,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきも
のである。
念のため反論すると,フランス破毀院第1民事部2013年5月16日の判決(乙
40,以下「フランス破毀院判決」という。)は,実演家の権利団体であるSPED
IDAMという特定の団体のフランス国内における権利行使に関するものにすぎな
いから,美術の著作物の著作権の管理団体である原告協会の,しかも,我が国にお
ける権利行使に同判決の射程が及ぶのかどうかは全く明らかでない。仮に何らかの
射程が及ぶとしても,美術家本人が死亡した後,権利承継者が入会していない美術
家の作品に係る請求に限られる(これに該当するのは,42番のコワニャールに限
定される。。
)
少なくとも,我が国における著作権侵害訴訟においては,原告が著作権を有して
いること及び被告がその著作権の範囲に属する行為を行っていることにより著作権
侵害は肯定され,損害賠償請求が認容されるものとされているから,原告協会が会
員から著作権を移転(apport)された著作権者である以上,本件損害賠償請求が否
定される理由は全くない。
ウ 被告は,①原告協会会員になっている者以外にも作家の法定相続人とし
て権利承継者となり得る立場の者がいるにもかかわらず,それらの者が原告協会の
会員になっていないから,原告協会が全請求権を行使しうる地位にあるのか疑義が
ある,②作家が既に死亡しているにもかかわらず,その権利承継者の入会届が提出
されていない,③作家の法定相続人でない,ないし,法定相続人でないかもしれな
い者が権利承継者として原告協会の会員になっていると主張する。
上記①については,原告協会は,著作権管理を引き受ける作品(作家)の全ての
権利者が会員となることを原則としており,権利承継者が入会を希望するときは,
その者が単独の権利承継者か,それとも他の者と共同の権利承継者なのか等を公知
証書等により確認し,共同承継者である場合には,他の共同承継者の入会も促すこ
ととしているから,157番のモーリス・ユトリロのような特殊な例外を除き,原
則として原告協会は管理著作物に関する100%の権利者である(本件において,
原告協会が著作権の共有持分に基づき損害賠償を請求しているのは,ユトリロ作品
の利用以外にはない。。しかしながら,この点をひとまずおいて,本件で原告協会
)
が損害賠償の請求対象としている作品につき,原告協会のほかにも権利者が存在す
ると仮定して考えてみた場合でも,被告の主張には理由がない。原告協会が本件に
おいて使用料相当損害金の算定根拠としているSPDAの使用料規程は,SPDA
に管理委託されている権利を許諾する対価を定めたものであり,当該作品に権利を
有する著作権者全員に対して利用者が支払う使用料の合計額を定めるようなもので
はないからである。
上記②については,原告協会は,会員から著作権の移転を受け,自らが著作権者
として著作権の管理を行っている。そして,会員が死亡したからといって著作権が
突然消滅してしまうわけではない。原告協会としては,著作権の承継者(正確には
委託者たる地位の承継者)から管理委託を終了する旨の申し出がなされるなどの特
段の事情がない限り,会員の死亡後も,移転を受けた著作権を行使して,権利承継
者のためにその管理を継続する。相続人等から改めて入会申込書を徴求するという
取扱いは,法的にみれば,権利承継者を確定し,その者に対して使用料の分配を開
始するための手続ということになる。
上記③については,原告協会は相続人や受遺者から入会の申込みを受けるときは,
公知証書等によりその者が正当な権利承継者であることを確認した上で,その者の
入会を認めることとしている。
エ 42番のジェームズ・コワニャールについて,現在,原告協会に複製権
がないことに関する事情は,次のとおりである。
ジェームズ・コワニャールは,1992年10月1日原告協会に入会し,コワニ
ャール作品の複製権を原告協会に移転してその管理を原告協会に委託した。コワニ
ャールは2008年3月7日に死亡したが,原告協会はその後も権利承継者のため
にコワニャール作品の著作権管理を継続していたところ,コワニャールの遺族は,
2009年12月15日,「レザミ・ド・ジェームズ・コワニャール」(Les Amis de
James Coignard)という新団体を設立し,コワニャール作品の複製権等を同団体が直
接に管理することとした。これに伴い,同日以後,原告協会は,コワニャール作品
につき,複写補償金請求権,貸与補償金請求権,私的複製補償金請求権等の「droits
collectifs」
(団体権:文化担当大臣の認可を受けた団体によってのみ行使し得る権利)
及び追及権だけの管理委託を受けることになり,複製権は管理委託の範囲から除外
された。2011年11月13日付けADAGP会員リストに記載されているコワ
ニャール作品の管理委託範囲が「RG」(複写補償金) 「RL」
, (貸与補償金)「B
,
T」
(私的複製補償金)及び「RR」
(追及権)となっているのは,このためである。
オ その他,被告が,相続人と思われる人物からの入会届の提出がない等と
して,原告協会に対する権利移転を問題にする著作者に関する事情は,例えば,次
のとおりである。このように,原告協会への入会手続は,いずれも適正になされた。
(ア) アルマン(9番)
アルマンの2番目の妻との結婚から生まれた子であるBとCが原告協会に入会し
ていないのは,その母親であるDがアルマンの著作権を承継し,B及びCは著作権
を承継しなかったからである。原告協会へ入会届を提出したEは,アルマンとFの
間の子であるGが死亡したことにより,同人が承継していた著作権を更に相続した
アルマンの孫である。
(イ) バルチュス(11番)
バルチュスの前妻との間の息子から入会届が提出されていないのは,バルチュス
は,遺言公正証書により,全ての権利をその娘であるHに遺贈したので,前妻との
間の息子はバルチュスの著作権を承継していないからである。
(ウ) ボンボワ(22番)
ボンボワの著作権(複製権及び展示権)は,同人の死亡により,当初,その姉妹
であるIが相続したが,その後,同人がJに上記権利を贈与したため,Jは著作権
者として原告協会に入会した。
(エ) コクトー(41番)
コクトーの著作権は,当初,コクトーの養子であるKに相続された。Kに相続さ
れたコクトーの著作権は,1995年5月15日,同人の死亡により,妻L,子で
あるM及びNの3名に相続された。1997年10月9日,Lは死去し,その持分
はM及びNに相続された。そして,2001年10月2日にはMも死亡し,その持
分がNに相続されたため,現在はNがコクトー著作権に関する唯一の著作権者であ
る。
(オ) クティ(47番)
クティの息子のOから入会届が提出されていないのは,クティの著作権を含む全
財産は同人の妻であるPが承継し,息子のOはクティの著作権承継者ではないから
である。
(カ) ドラン(51番)
ドランの著作権の承継の経緯は,次のとおりである。
ドランの著作権は,当初,妻のQとドランの養子であるRに相続された。そして,
Qが死去したことにより,Rはドランの全ての権利を相続した。
Rは,1991年8月14日に死去し,同人が有していたドランの著作権は,同
人の実母であるS及び同人の従姉妹であるT(Qの姉妹の娘)に均等に承継された。
Sは2001年1月29日に死亡し,同人の有する著作権持分は同人の遺言に基
づきTに承継された。これによりTはドランの著作権に関する唯一の著作権者とな
った。
なお,Tは2013年2月24日に死去したため,原告協会は,現在,Tからド
ランの著作権を相続した彼女の2人の子供,U及びVのためにドランの著作権を管
理している。
(キ) ジャン・デュフィ(58番)
ジャン・デュフィの著作権は,W,Y及びZの3名に承継されたものであり,他
の兄弟はジャン・デュフィの著作権の承継者ではない。
(ク) エルンスト(60番)
エルンストの著作権の承継の経緯は,次のとおりである。
エルンストが1976年4月1日に死亡したことにより,同人の複製権は妻AA
及び息子ABに50%ずつ相続された。
ABは1984年2月6日に死亡し,同人が有していたエルンストの複製権の持
分は,同人の妻AC並びに2人の子供AD及びAEに相続された。また,ACは2
011年6月2日に死亡し,同人の複製権持分もAD及びAEが相続した。
AAは,2012年1月31日死亡し,同人が有していた複製権持分は,同人の
姪であり,相続遺言執行者であるAFに承継された。
(ケ) イレール・カミーユ(83番)
イレールの子のうち,AGの入会届が提出されていないのは,AGは2006年
4月25日に死亡し,その著作権持分は他の4人の兄弟姉妹に相続されたためであ
る。
(コ) イカール(86番)
イカールの著作権の承継の経緯は,次のとおりである。
イカールは1950年12月30日に死亡し,妻のAH及び娘AIが相続人とな
ったが,その後AHも1970年に死亡したことにより,AIが唯一の著作権承継
者となった。その後,AIが死亡したことにより,イカール著作権は,AIの包括
受遺者であるAJに承継された。
AJは,2009年11月9日に死亡し,イカール著作権は,AJの夫AK及び
母親のALに相続された。
ALは,2010年2月12日に死亡し,同人が有していたイカール著作権の持
分は,息子であるAMに承継された。
AKは2011年4月17日に死亡し,AKが有していたイカール著作権の持分
は,同人の娘であるANに相続された。
(サ) イノサン(87番)
イノサンの著作権の承継の経緯は,次のとおりである。
イノサンは1983年4月13日に死亡し,同人の著作権は同人の未亡人並びに
2人の子供AO及びAPが相続した。
APは1988年に死亡し,その著作権持分は同人の未亡人AQ及び3人の子供
(AR,AS及びAT)が相続した。
イノサンの未亡人は1990年に死亡し,その著作権持分は,娘AO並びに孫で
あるAR,AS及びATの3人に相続された。
AOは2004年に死亡し,同人の著作権持分は,その包括受遺者であるAUに
承継された。
なお,AVは,イノサンの遺言によりイノサン作品の著作者人格権を行使する権
利の遺贈を受けた者であり(フランス知的所有権法典121条5項) イノサン著作
,
権の承継者ではない。
(シ) キスリング(95番)
入会届を提出したAW及びAYは,いずれも2007年6月26日に死亡したA
Zの息子(キスリングの孫)であり,AZからキスリング著作権の持分を相続した
著作権者である。
(ス) マッソン(120番)
マッソンの息子であるBAの入会届がないのは,BAの妻であり,彼の唯一の相
続人であるBBが提出したことによる。
(セ) マッタ(121番)
マッタの息子のうち,BCとBDの入会届は提出されていないのは,BCは19
78年に,BDは1976年に死亡し,いずれもマッタが2002年11月23日
に死亡する前であるため,マッタの相続人にはならないからである。
なお,BEはマッタの妻であり,BFはマッタとBEの間の子である。また,B
G,BH及びBIは先妻との間に生まれたマッタの子供たちである。
(ソ) ミロ(123番)
ミロの娘のBJの入会届がないのは,ミロの娘であるBJが2004年12月に
死亡し,BJが有していたミロ著作権は,その息子であるBK及びBLに相続され
たためである。その後,BKは,2012年8月29日に死亡し,その有していた
ミロ著作権の持分は,娘であるBMに相続された。したがって,現在の著作権者は,
BL及びBMの2名である。
(被告の主張)
ア 原告協会は,物権の変動については保護国法が準拠法であると考えつつ,
原因行為である債権行為により著作権は当然に原告協会に移転しているとし,著作
権移転の原因関係である債権契約については最密接関連地法であるフランス法が適
用されると主張する。
債権的側面については最密接関連地法による場合があるとしても(通則法8条),
本件では,原告協会と美術家ないし承継人との間における契約の成立や契約の効力
が問題ではなく,著作権の得喪ないし変動が問題となっているのであるから,原告
協会の著作権の取得については,保護国法である我が国の法が適用される。
イ(ア) 原告協会による,一般規約14条の説明によれば,「当協会への加入
により,・・・諸権利は当協会に移転する」
(L'adhésion à la Société entraîne l'apport des
droits attachés …)とある。しかしながら,
「l'apport」との用語は,一般に,団体と
その会員との間における「出資」を意味するものである。したがって,正確にいえ
ば,「移転」ではなく「出資」であり,「出資」の内容は「管理の委託」であるとも
理解できる。著作権の譲渡という場合,一般には,
「céder」や「faire cession」
(譲渡
する) 「cession」
, (譲渡)の後が用いられるが,原告協会の一般規約その他では,
全て団体とその会員間の関係を示す場合に,
「cession」ではなく「apport」の語が用
いられている。しかしながら,何が「出資」の対象であるのかは明らかでなく,管
理権が出資の対象であると理解される。加えて,各美術家が提出しているのは,入
会届であって,譲渡証書ではない。
したがって,原告協会と会員との間における出資として,著作権の譲渡がされて
いるか否かは,明確ではない。
(イ) フランス破毀院判決(乙40)は,フランスの著作権集中管理団体で
あるSPEDIDAMが,死亡した実演家の権利が侵害されたことに対し,実演家
がその権利を加盟時に出資したことにより訴訟追行権があると主張し,実演を複製
した者に対し,訴えを提起した事案についてのものであるが,死亡した実演家に関
する損害賠償請求について,SPEDIDAMの訴えを不受理とした。上記判決は,
SPEDIDAMに関するものであるが,この理は,原告協会にも該当する。すな
わち,美術家が集中管理団体に対する出資(apport)によって原告協会に加盟し著
作権の管理を委託したとしても,その死後において,原告協会は当然に死亡した著
作権者の相続財産となった損害賠償請求権を行使できるものではない。美術家が死
亡した場合,フランス法が適用され(通則法36条),損害賠償請求権は包括承継人
が行使すべき相続財産となる。したがって,集中管理団体がその損害賠償請求権を
行使するには,包括承継人による委任が必要である。すなわち,フランスにおいて,
集中管理団体は,加盟している著作者が死亡して相続が発生した場合,包括承継人
による明確な委任がない限り,包括承継人によってしか,損害賠償請求権は行使で
きない。仮に日本法が適用されるとしても,入会後に著作者が死亡した場合は,不
法行為に基づく損害賠償請求の成否の前提として,共有著作権全部の損害賠償請求
権を行使できることを,主張・立証しなければならない。
ウ(ア) 別紙2-3被告主張一覧表記載のとおり,原告協会が美術家の権利を
全部行使できることについて,主張・立証が不十分な美術家が存在する。特に,美
術家の権利移転について疑義がある理由は,下記(イ)以下のとおりである。
なお,著作権の移転については,原告協会が主張・立証責任を負う。美術家が相
続した場合には,相続の事実と相続人の特定,相続人全員からの持分権移転を主張,
立証する必要がある。原告協会の代表者の宣誓供述書(甲305)は,一般的な手
続しか記載されておらず,権利の公示に代えられるような客観的なものとはいえな
い。また,本件訴訟における原告協会の訴訟追行態度,すなわち,入会届に関する
証拠が五月雨式にしか出ないこと,原告協会の管理下にない人物の作品や保護期間
経過後,著作権管理契約終了後の作品について原告協会が損害賠償請求を提起して
いたこと,2分の1しか請求できないはずのモーリス・ユトリロ分について全額損
害賠償請求していること等からすると,権利承継手続が適正になされたか,疑問を
生じさせる。また,相続が発生し,複数の相続人が著作権を相続した場合は,他の
著作者の同意がなければ,自己の持分に応じた損害賠償請求しかできない。
(イ) ARMAN (Armand FERNANDEZ, dit)(9番)
ARMAN
(アルマン) 最初の結婚でFと結婚し,
は, BNとBOという2人の娘と,
Gという1人の息子をもうけ,その後,Dと結婚し,BとCをもうけ,さらに,B
Pとの間に6人目の子供で最後の息子であるBQをもうけた。
原告協会に対する入会届は,最初の結婚から生まれた2人の娘(BOとBN),2
番目の妻(D)及び息子(BRと称する者のいずれか)と考えられる人物から提出
された。
しかしながら,2番目の妻との結婚から生まれた子であるBとC,もう1人のB
Rについては,入会届が提出されていない。また,Eが,いかなる関係にある人物
か,不明である。
なお,2005年12月13日付け公知証書(資料1)に,アルマンの相続人と
して,①BO,②BN,③BQ,④E,⑤Dが記載されていることは,認める。ま
た,①,②はアルマンの子であること,③はアルマンの6番目の子であること,④
はアルマンの孫娘であり唯一の子としてGを代襲相続したこと,⑤はアルマンの2
番目の妻であり生存配偶者と記載されていることは,認める。資料1には,D夫人
が「上記配偶者(アルマン)との間で定めた贈与に関する規定及びその他の規定の
受益者であり,フランス法の規定の名において法律上適法な受益者である」との記
載があることを認める。BとCが相続人として扱われないことに関しては,資料1
には何ら記載がない。
(ウ) BALTHUS (Balthus KLOSSOWSKI DE ROLA, dit)(11番)
入 会届を提出しているのは,後妻との結婚で生まれた子と考えられる が ,
BALTHUS(バルテュス)は前妻との間に息子が存在する。息子も相続人となるはず
であるが,息子から原告協会への入会届は提出されていない。
(エ) BELLONI Serge(18番)
BELLONI(ベローニ)は,2005年10月28日に死亡しているが,相続人又
は権利承継者からの入会届は提出されていない。原告協会は,相続が発生した美術
家について,相続人から入会届を提出させている。したがって,原告協会は,当然
に,死亡した美術家の権利を承継する者とはいえず,原告協会の原告適格は消滅し
ている。
(オ) BOMBOIS Camille(22番)
Jは,BOMBOIS(ボンボア)の相続人とされている。しかしながらがら,同人の
入会届に,BOMBOIS Camille との記載はなく,どの美術家の著作権に関するものか
も不明である。なお,Jは,ボンボアをはじめ,各種作家を取り扱うギャラリー共
同経営者にすぎず,真実,ボンボアの著作権を承継しているか疑義がある。
(カ) BRAQUE Georges(27番)
BSは,BTの相続人とされているが,入会届に BRAQUE(ブラック)の相続人
であるとの記載はない。したがって,当該美術家に対する入会届であるかどうか,
不明である。ブラックの権利承継者に争いがあると記載された乙41文献は,追及
権に関するものではあるが,BU未亡人への財産権移転が争われたとすれば,追及
権以外の著作権がBSに包括遺贈されたことを,原告協会は立証しなければならな
い。
(キ) COCTEAU Jean(41番)
BVは,コクトー作品の共同相続人と記載されているので,他の共同相続人が存
在するはずであるが,BV1名の入会届しか提出されていない。
なお,ジャン・コクトーの死亡後に作成された1964年1月16日付け公知証
書(資料2の1)には,
「ジャン・コクトー氏が,メッツ(モーゼル県)において作
成した1962年9月22日付け自筆証書遺言でその包括受遺者を指定したことは
明白である」との記載があり,その包括受遺者としてBWの氏名が記載されている
ことは認める。BWの死亡後に作成された1995年7月18日付け公知証書(資
料2の2)に,同人の死亡により,同人の財産が,妻であるL夫人,M,Nの3名
に承継されたとの記載があることは認める。MとNがBWとL夫人の子であること
も認める。Lの死亡後に作成された1998年1月23日付け公知証書(資料2の
3)に,L夫人の死後,その財産がMとNに承継されたとの記載があることについ
ては認める。Mの死亡後に作成された2001年10月8日付け公知証書(資料2
の4)に,Mの死亡により,その兄弟であるNに承継されたとの記載があることは
認めるが,
「最終的にN氏が唯一の権利承継者となった旨が記載されている」という
記載は存在しない。
(ク) COIGNARD James(42番)
COIGNARD(コワニャール)は,2008年に死亡しているが,相続人からの入
会届は提出されていない。
(ケ) COTTAVOZ André(44番)
COTTAVOZ(コタボ)は,2012年に死亡しているが,相続人からの入会届は
提出されていない。
(コ) COUTY Jean(47番)
COUTY(クティ)の相続人としては,妻のPの他,息子のOが存在するはずであ
るが,同人から入会届は提出されていない。
なお,1991年10月28日付け公知証書(資料3)に,クティの遺産に関し,
配偶者へ全て贈与される旨が記載され,妻であるP夫人がその遺贈を受けたことは
認めるが,息子のOが著作権承継者ではないことについては不知。
(サ) DERAIN André(51番)
入会届を提出しているTは,DERAIN(ドラン)とは,姪の関係にあるものであ
る。しかしながら,ドランに妻子など他の相続人が存在しないのか不明である。ま
た,ドランの鑑定委員会に所属する者が相続人ないし受遺者でないのかも不明であ
る。
なお,ドランの死亡後に作成された1969年6月6日付け公知証書(資料4の
1)については,公証人が発した書簡であり公知証書との記載がない。資料4の1
に,ドランは,その生存配偶者であるQ及びRを遺産の受領者として死亡したとの
記載があることは認める。Q夫人の死亡後に作成された1978年10月3日付け
財産目録(資料4の2)に,Q夫人の死亡により,唯一の相続人のRが権利を承継
したとの記載があることは認める。Rの死亡後に作成された1992年1月21日
付け公知証書(資料4の3)に,同人が死亡し,S夫人とTが,相続人であるとの
記載があることは認める。S夫人とT夫人との間の契約書(資料4の4)に,S夫
人の有する著作権持分2分の1は,T夫人に譲渡され,S夫人の死亡により,権利
はT夫人又はその相続人若しくは権利承継人に帰属するとの記載があること,S夫
人が2001年1月29日に死亡したことは,認める。
(シ) DUFY Jean(番号58)と DUFY Raoul(番号59)
DUFY Jean(ジャン・デュフィ)と DUFY Raoul(ラウル・デュフィ)は,兄弟で
ある。ジャン・デュフィについては,姪,兄弟のBYの相続人により入会届が提出
されている。しかしながら,ジャン・デュフィは11人兄弟であり,他の兄弟ない
しその相続人も権利者ではないかという疑義がある。
(ス) ERNST Max(60番)
ERNST(エルンスト)は,4人の女性(BZ,CA,CB,AA)と結婚した経
歴があり,最初の妻であるBZとの間にABと称する息子をもうけている。少なく
とも息子であるABは,マックス・エルンストの相続人となると考えられるが,入
会届を提出している者とのつながりは不明である。
(セ) HILAIRE Camille(83番)
HILAIRE(カミーユ)には,CC,AG,CD,CE,CFの5人の子が存在す
る。しかしながら,入会届は,CC,CE,CD,CFの4名分しか提出されてお
らず,AGの入会届が提出されていない。
(ソ) ICART Louis(86番)
ICART(イカール)はAHと結婚し,その間にはCGという女の子供がいる。本
来,これら妻子が相続人になると考えられるが,入会届を提出しているAM及びA
Nとの関係性は不明である。
(タ) INNOCENT Franck(87番)
INNOCENT(イノセント)については,相続人ないし受遺者からの入会届が提出
されている。他方,イノセントの公式ホームページには,弟子であるAVが権利を
防御している旨の記載がある。しかしながら,同人と相続人ないし受遺者との関係
性は明らかでない。
(チ) JENKINS Paul(90番)
JENKINS(ジェンキンス)は,2012年6月に死亡しているが,相続人からの
入会届は提出されていない。
(ツ) KISLING(95番)
KISLING(キスリング)には,CHとAZの2人の息子が存在するが,入会届は,
CH,AW,AYから提出されており,後二者とキスリングとの関係は明らかでな
い。
なお,キスリングの死亡後に作成された1954年6月21日付け公知証書(資
料5の1)は,公証人が発した書簡であり公知証書であることの記載がない。資料
5の1に,キスリングの遺産がCHとAZに相続されたとの記載があることは認め
るが,CI夫人については,相続財産の用益権の受贈者と記載されている。キスリ
ングの配偶者であるCI夫人の死亡後に作成された1961年5月30日付け公知
証書(資料5の2)に,上記CI夫人の死亡により,遺産が子であるCH及びAZ
に承継されたとの記載があることは認める。AZの死亡後に作成された2007年
10月8日付け公知証書(資料5の3)に,AZ死亡により,その遺産が,AYと
AWに承継されたとの記載があることは認める。
(テ) MASSON André(120番)
MASSON(マッソン)には,少なくとも,CJ,BAという息子と娘のCKが存
在する。しかしながら,入会届が提出されているのは,CJ,CK及びBBであり,
BAの入会届は提出されていない。
なお,マッソンの死亡後に作成された1987年12月18日付け公知証書(資
料6の1)に,マッソンの相続人として,同人の最初の妻との子であるCL夫人,
2番目の妻との間の子であるCJとBAの3名が均等の割合で相続したとの記載が
あることは認める。BAの死亡後に作成された2006年1月31日付け公知証書
(資料6の2)に,BAの死亡により,配偶者であるCN夫人が相続財産の用益権
を選択した旨の記載があることは認める。CKがCLの通名であることは知らない。
(ト) MATTA(121番)
MATTA(マッタ)には,BC,BD,BHの息子が存在するが,BCとBDの入
会届は提出されていない。
なお,マッタの死亡後に作成された2007年4月26日付け公知証書(資料7)
に,マッタの相続人として,CM夫人,BI,CO,CP,CQが記載されている
が,
「BDは1976年7月14日に,BCは1978年8月27日に,それぞれマ
ッタの死亡前に死亡していること」の記載はない。
(ナ) MIRÓ Joan(123番)
MIRÓ(ミロ)には,BJという娘がいるが,入会届は提出されていない。また,
入会届が提出されている者らが当該美術家とどのような関係に立つのか,明らかで
はない。
(ニ) FRIEDLAENDER Johnny(70番)
入会届に記載されたCRは,著作者人格者の受遺者であり,複製権はない。
(3) 被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額(争点3)
(原告らの主張)
ア 被告の複製権侵害
(ア) 被告は,平成14年1月から平成23年12月までの10年間に,絵
画・版画・彫刻ジャンルのオークションについて,105冊の本件カタログを発行
した。これらのうち,原告らが入手した99冊のカタログ(別紙1毎日オークショ
ンカタログ一覧表の「カタログ有無」欄に「有」の記載のあるもの)には,別紙2
-1原告協会主張一覧表及び別紙3-1原告X1主張一覧表記載のサイズ,色,枚
数の写真が掲載されていた。
被告は,原告らの利用許諾を得ていないので,上記の掲載は原告らの複製権を侵
害する行為に該当する。
(イ) 被告は,単色刷りの版画はカラー(c)でなく,白黒(bw)と評価さ
れる旨主張する。これは,カタログに複製されている原作品が1種類の絵の具やイ
ンクを用いて刷り上げられた版画である場合には,それが何色の作品であって,カ
タログに何色をもって複製されていても,損害額の算定において「白黒」と評価さ
れるべきという趣旨と解される。
しかしながら,上記の主張は,
「白黒」か「カラー」かによって使用料額を定める
こととしているSPDAの使用料規程(甲9)の定めに明白に反するものである上,
SPDAの実務における使用料規程の適用の実際とも全く異なるものである。SP
DAの使用料規程は,書籍に著作物が複製される場合の使用料につき,その複製サ
イズ,複製部数とともに「白黒」
「カラー」の別をその算定要素としている。これは,
絵画作品が白黒印刷等の方法で複製される場合には,同じ作品がカラー印刷の方法
で複製される場合に比してその著作物利用の経済的効果が劣ると認められることか
ら,その複製(印刷)が「白黒」で行われる場合には,カラー(白黒以外の色を用
いる方法)で複製される場合よりも低額の使用料が適用されるようにしたものであ
る。したがって,カラー「c」と白黒「bw」を区別する基準となるのは,その複製
(印刷)が白色及び黒色だけで行われているのか,それとも白色又は黒色以外の色
をも用いた複製(カラー印刷)がされているのかであって,複製対象である作品が
単色刷りか否かによって区別されるわけではない。そして,被告が白黒「bw」に当
たると主張しているのは,全て白色又は黒色以外の色を用いて複製されているもの
であって,白色及び黒色だけで複製(印刷)されているものは1つもない。これら
は全て使用料規程の適用上,カラー「c」に分類される。
被告は,株式会社DNPアートコミュニケーションズ(以下「DNPアート」と
いう。)がホームページ上に掲載している料金表(乙15)を根拠にして,SPDA
の使用料規程における「白黒」は「モノクロ」
(単色)を意味するものと解釈される
などと主張する。
しかしながら,SPDAが著作権等管理事業法に基づき文化庁長官に届け出た使
用料規程が甲9号証のとおりであることは,文化庁のホームページに公示されてい
るから,乙15号証は単に記載を誤っているにすぎない。DNPアートは,その業
務に付随して,画像の借受人に対して著作権手続の説明や,SPDAに対する利用
許諾申請手続の代行をしており,その関係でSPDAの使用料規程をホームページ
に掲載していたが,その記載の一部に誤りがあったものである(SPDAが,DN
Pアートに対して修正を依頼したところ,DNPアートは既にホームページからこ
れを削除している。。
)
(ウ) 被告は,写真の余白や額縁部分は除外して判断すべきであるから,作
品自体のサイズは原告の認定とは異なる旨主張するが,現にSPDAの長年にわた
る著作権管理業務において,通常の利用者に対して著作物の複製を利用許諾すると
きは,全て著作物が複製された写真の大きさ及びその掲載場所を基準に使用料額を
算出して徴収している。著作権法114条3項は,著作権者が著作物の利用を許諾
する場合に受ける通常の使用料額を著作権侵害の被害者が受ける最低限の損害賠償
額としたものである。そうである以上,同項に基づく損害賠償額の算定においては,
利用許諾を得て適法に著作物を利用する一般の利用者が著作権者に対して実際にど
のような額の使用料を支払っているのかが基準になる。したがって,本件の損害賠
償額の算定においてもこれと同様の取扱いがされるのは当然である。
(エ) 被告は,127荻須高徳の本件カタログ318号の絵画は,50cm2
以下のものであり,著作権法47条の2により適法である旨主張する。
しかしながら,被告の主張に従って絵画部分のみの複製サイズをもって計算する
としても,上記作品の複製サイズは6.05cm×8.3cm=50.215cm2であ
り,著作権法施行規則の定める50cm2を超えるから,上記複製は違法なものであ
る。
イ 原告らの損害額(JASPAR基準)(主位的主張)
(ア) JASPARの使用料規程では,本件カタログへの写真掲載は第1の
「1 書籍への複製及び譲渡」に含まれる。そして,第2の「1 書籍への複製及
び譲渡」の規定は,
「(1)単行本」及び「(2)文庫版,新書版又はそれに準じる版型の
もの」に分かれており,それぞれ「ア 基準料金」及び「イ 事前に利用許諾手続
を完了する場合の優遇料金」の2種類の使用料が定められている。本件カタログの
ような大型版書籍への管理著作物の複製に関し,事後的にJASPARに対して利
用許諾申請があった場合には,「(1)単行本」の「ア 基準料金」に定められた使用
料が適用される。
本件のように,過去に長期間にわたって反復継続的に行われた不法行為について,
被害者が損害算定の資料の入手が困難な場合,被害者が把握した一部の侵害実態を
基礎として損害の全体を推認するという方法が用いられるのは,一般的である。そ
して,損害の発生が認められる以上,仮に損害額の具体的な算定に関する証拠がな
くても,著作権法114条の5を適用することで,損害額は算定することができる。
(イ) 平成14年1月から平成23年12月までの10年間に被告が発行
した「絵画・版画・彫刻」のジャンルの本件カタログ105冊のうち,原告らが入
手した99冊のカタログへの作品の複製に関し,JASPARの使用料規程を適用
して使用料相当額を算定すると,1億5536万1200円となる(別紙2-1原
告協会主張一覧表記載のとおりである。。
)
したがって,被告が上記10年間に発行した105冊の本件カタログに無断複製
された会員作品に係る使用料相当損害金の額は,少なくとも1億6477万703
0円(≒1億5536万1200円×105冊/99冊)を下らない。
(ウ) 平成14年1月から平成23年12月までの10年間に被告が発行
した「絵画・版画・彫刻」のジャンルの本件カタログ105冊のうち,原告らが入
手した99冊のカタログへのピカソ作品の複製に関し,JASPARの使用料規程
を適用して使用料相当額を算定すると,合計1893万5000円となる(別紙3
-1原告X1主張一覧表記載のとおりである。。
)
したがって,被告が上記10年間に発行した105冊の本件カタログに無断複製
されたピカソ作品に係る使用料相当損害金の額は,少なくとも2008万2575
円(≒1893万5000円×105冊/99冊)を下らない。
(エ) 原告らは,著作権侵害を理由とする本件訴訟の提起・追行を弁護士に
依頼することを余儀なくされた。その弁護士費用は,少なくとも被告に対して請求
する損害額の10%を下らないから,原告協会に関しては1億6477万7030
円の10%である1647万7703円,原告X1に関しては2008万2575
円の10%である200万8257円を下らない。
(オ) よって,原告らは,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求又は
不当利得(悪意)に基づく利得金返還請求として,原告協会につき1億8125万
4733円及びこれに対する最終の侵害行為の日の後である平成22年12月4日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,原告X1につき22
09万0832円及びこれに対する最終の侵害行為の日の後である同年6月11日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(カ) 被告は,侵害との間に因果関係のある損害とは,当然に,侵害時の基
準により算定される逸失利益であるなどと主張する。これは,著作権侵害につき認
められる使用料相当損害金とは,当該行為に対して利用許諾が行われた場合に適用
されていた使用料規程に基づき算出される使用料額に限定されるという趣旨の主張
と解される。
しかしながら,使用料規程は,著作権等管理事業者がその管理著作物の利用許諾
に伴い請求する使用料の上限額を定めるものにすぎず(著作権等管理事業法13条
4項)著作権者が著作権侵害者に対して請求する損害金額の上限を画するようなも
,
のではない。そして,仮に,著作権侵害による使用料相当損害金が,当該行為に対
して利用許諾が行われた場合に適用された使用料規程に基づく使用料額に限られる
とするならば,著作権法114条3項は無意味な規定となる。
著作権法114条3項は,著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する
「
額」を著作権侵害の被害者の最低限の賠償額として保障する規定である。そして,
ここで問題になる「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」とは,
将来の著作物利用につき許諾を求める誠実な利用者に対して請求する使用料額では
なく,現に行われた過去の著作権侵害行為に対して適用される「受けるべき金銭の
額」である。
しかるところ,現在,我が国における原告協会の会員等の著作権管理はSPDA
からJASPARに移転し,JASPARの使用料規程が我が国における美術の著
作物の使用料額を定める事実上のスタンダードになっている。過去に無断で著作物
の複製等を行った者であっても,現時点においてその利用行為を適法化するには,
JASPARを経由して原告協会の事後的な利用許諾を得るほかない。そして,そ
の場合に適用される使用料規程は,当然のことながら,JASPARの使用料規程
となる。
本件で,SPDAの使用料規程に定める額の損害金しか認められないことになれ
ば,被告が,本来支払わなければならないJASPARの使用料規程以下の金額だ
けしか支払わなくてもよくなり,侵害した者が利得するのを容認することになる。
ウ 原告らの損害額(SPDA基準)(予備的主張)
(ア) 原告らは,いずれも日本国内における著作権の管理(利用許諾及び使
用料徴収)をSPDAに委託していた。SPDAは,その使用料を使用料規程(甲
9)に定め,文化庁長官に届け出ており,本件カタログへの複製利用に対しては,
使用料規程の3(1)イに規定されている「単行本」の使用料が適用される。同規程に
は複製されたサイズ,発行部数,白黒・カラーの別に応じて,適用される使用料の
額が一覧表にして定められている。
(イ) 平成14年1月から平成23年12月までの10年間に被告が発行
した「絵画・版画・彫刻」のジャンルの本件オークションカタログ105冊のうち
原告らが現物を入手することができた99冊のカタログへの原告ADAGP会員作
品の複製に関し,SPDAの使用料規程を適用して使用料相当額を算定すると,別
紙2-1原告協会主張一覧表の「使用料相当額SPDA」の合計欄に記載のとおり
合計6990万9100円となる。
したがって,被告が上記10年間に発行した105冊のオークションカタログに
無断複製した原告ADAGP会員の作品に係る使用料相当損害金の額は,少なくと
も7414万6015円(≒6990万9100円×105冊/99冊)を下らな
い。
(ウ) 平成14年1月から平成23年12月までの10年間に被告が発行
した「絵画・版画・彫刻」のジャンルの本件オークションカタログ105冊のうち
原告らが現物を入手することができた99冊のカタログへのピカソ作品の複製に関
し,SPDAの使用料規程を適用して使用料相当額を算定すると,別紙3-1原告
X1主張一覧表の「使用料相当額SPDA」の合計欄に記載のとおり合計842万
1000円となる。
したがって,被告が上記10年間に発行した105冊のオークションカタログに
無断複製した原告ADAGP会員の作品に係る使用料相当損害金の額は,少なくと
も893万1363円(≒842万1000円×105冊/99冊)を下らない。
(エ) 原告らは,著作権侵害を理由とする本件訴訟の提起・追行を弁護士に
依頼することを余儀なくされた。その弁護士費用は,少なくとも被告に対して請求
する損害額の10%を下らないから,原告協会に関しては7414万6015円の
10%である741万4601円,原告X 1 に関しては893万1363円の1
0%である89万3136円を下らない。
(オ) よって,原告らは,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求又は
不当利得(悪意)に基づく利得金返還請求として,原告協会につき8156万06
16円及びこれに対する最終の侵害行為の日の後である平成22年12月4日から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,原告X1 つき982万4
499円及びこれに対する最終の侵害行為の日の後である同年6月11日から支払
済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(カ) 被告は,原告協会との相互管理契約に基づくSPDAの管理手数料及
び利益が加算されている使用料相当額という名目のもとに,原告らが被る損害を超
える金額を請求することは,損害賠償請求の趣旨を逸脱するなどと主張する。
しかしながら,管理手数料は,原告らの委託に基づき管理著作物の著作権管理業
務を行ったSPDAに対し,原告らが支払う著作権管理委託の対価であり,
「著作権
…の行使につき受けるべき金銭の額」とは無関係のものである。したがって,被告
に対する損害賠償請求額からこれを控除する理由はない。
エ モーリス・ユトリロ(157番)
モーリス・ユトリロの著作権については,CSと50%ずつの共有であるが(本
件において,著作権の共有持分に基づく請求は,ユトリロ作品以外には存在しない。,
)
著作権等管理事業法13条4項は,
「著作権等管理事業者は,第1項の規定による届
出をした使用料規程に定める額を超える額を,取り扱っている著作物の使用料とし
て請求してはならない。」と規定し,使用料規程は,それを定めた著作権等管理事業
者において自己が委託者から管理委託を受けた権利に基づき著作物の利用許諾をす
る際に利用者に請求できる使用料の上限額を定めるものであって,当該作品につき
著作権を有する他の権利者が存在するか否かは無関係であるから,その損害額は使
用料規程全額と算定されるべきである。
著作権等管理事業法は,かつての仲介業務法とは異なり,使用料規程の作成につ
き各著作権等管理事業者の裁量及び責任に委ねているから,使用料規程上に,自己
の有する著作権が共有持分である場合には使用料を減じる旨の定めを自ら置いてい
るような特別な場合には,それに従うことになるが,JASPARの使用料規程に
も,SPDAの使用料規程にも,そのような特別な取扱いを窺わせる規定はどこに
も存しないから,ユトリロ作品を利用許諾する場合に原告協会が請求すべき使用料
が減じられる根拠はどこにもない。
(被告の主張)
ア 被告の複製権侵害について
(ア) 被告の認否及び反論は,別紙2-2原告協会主張に対する認否表のと
おりである。
(イ) DNPアートが適用するSPDAの使用料規程は,
「モノクロ」
(単色)
か「カラー」かによる峻別を行い,
「白黒」かどうかを基準にしているわけではない。
同規程に「モノクロ」とある以上,字義どおり,
「白黒」でなく「モノクロ」
(単色)
かどうかにより区別すべきである。したがって,SPDAの使用料規程における「白
黒」は,「モノクロ」(単色)を意味するものと解釈される。絵画の黄ばみがあるも
のについては,黄ばみは著作物の美的要素の再製ではないから,単色として扱われ
るべきである。また,インクの濃淡や青みがかったものについても,単色として扱
われるべきである。
(ウ) SPDAの使用料規程によれば,サイズを算定要素としているが,著
作物でなく「著作物を複製した写真の大きさ」を基準とするかは明確ではないし,
SPDAの日常的な著作権管理業務において,一般的に「著作物を複製した写真の
大きさ」を基準にしているかどうかも明確ではない。
使用料規程は,著作物の使用に対する料金であるから,著作物とは無関係な写真
の余白部分や額縁を含めたサイズではなく,あくまで著作物(絵画・版面・オブジ
ェ)を基準としたサイズとすべきである。
(エ) 127番の荻須高徳の本件カタログ318号の絵画は,額縁を含めて
撮影された絵画であるが,額縁は著作物でないから,50cm2以下の複製か否かを
判断するに当たって,額縁部分は除外して判断すべきである。著作権施行規則4条
の2第1項1号は,図画として法第47条の2に規定する複製を行う場合において,
「
当該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが50平方センチメ
ートル以下であること」と定められ,
「著作物」そのものの表示の大きさを基準とし
ている。
上記絵画の複製サイズは,6cm×8.3cm=49.8cm2であり,50cm2の範
囲に収まる。
(オ) 別紙3-1原告X1主張一覧表のうち,否認するものは,別紙3-2
原告X1主張に対する認否表のとおりである。その理由は,概ね,白のセラミック
が写っているもの,カタログにモノクロと記載されているもの,書籍等の撮影で美
的要素の再製がないものに分類される。
(カ) 別紙2-1原告協会主張一覧表のうち,否認するものは,別紙2-2
原告協会主張に対する認否表のとおりである。その理由は,概ね,カタログにモノ
クロと記載されているもの,書籍等の撮影で美的要素の再製がないもの,カラーコ
ピーの色彩の加減で黄色がかって見えるにすぎないものに分類される。
イ 原告らの損害額について
(ア) 原告らの損害立証について
著作権法114条は,損害額立証の困難性を救済するための規定であるが,それ
は損害の発生の主張 立証を前提として損害額立証の負担を軽減するものであって,
・
損害の発生をも推定するものではない。
原告らは,一部の本件カタログを提出せず,被告がいかなる侵害行為を行い,そ
の結果どのような損害が発生したかを具体的に主張・立証しない。しかしながら,
原告らは,提出しない本件カタログについても,提出している本件カタログにおけ
る作品掲載数から侵害ないし損害を推測する方法によって,損害が発生したことを
推定し,損害額を算定している。このような主張は,著作権法114条及び同条が
前提とする不法行為論にも反し,認められない。
(イ) JASPAR基準について
著作権法114条の法的性質について,通説は,民法709条の適用を前提とし
て,損害額立証の困難を救済するための規定であると解釈する。著作権法114条
が,民法709条の適用を前提としているのであれば,損害の発生と侵害との間に
おいて,因果関係の存在が必要となる。侵害との間に因果関係のある損害とは,当
然に,侵害時の基準により算定される逸失利益である。侵害後に新たに設けられか
つ高額化した基準により算定される逸失利益の主張は,侵害との間に因果関係が認
められない金額を主張するものであるか,侵害時の逸失利益を逸脱する金額を主張
するものである。したがって,このような基準により使用料相当額を算定すること
は,民法709条の枠組みを逸脱する。
原告らは,本件カタログ掲載時(直近で平成22年12月)には存在していない
JASPAR(設立は平成24年1月)が設立後に一方的に定めた使用料規程に基
づき,使用料相当額を請求する。しかしながら,このような請求は,明らかに侵害
との間の因果関係ないし逸失利益を逸脱する金額を主張するものである。
(ウ) SPDA基準について
SPDAの使用料規程は,著作権法114条3項の「著作権者が,著作権または
著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額」ではなく,著作権者との相互管理契
約に基づく著作権の管理者が,著作権の行使について受ける金銭の額である。
SPDAの使用料規程で計算した金額には,当然,原告協会との相互管理契約に
基づくSPDAの管理手数料及び利益が加算されているのであって,著作権者であ
ると主張する原告協会に支払われる額ではない。もとより,損害賠償請求は,損害
を回復するために行われるものであるから,請求額は発生したとされる損害と同等
の額を金銭に換算したものである必要があり,使用料相当額という名目のもとに,
原告らが被る損害を超える金額を請求することは,損害賠償請求の趣旨を逸脱する
といわざるを得ない。
(4) 利用許諾の有無(争点4)
(被告の主張)
被告は,4番のポール・アイズピリの作品の著作権管理を行う株式会社ギャルリ
ーためなが(以下「ギャルリーためなが」という。)から許諾を受け,アイズピリ作
品を本件カタログに複製していた。
アイズピリは,ギャルリーためながとの間において委託契約を締結し,ギャルリ
ーためながは,これに基づき,
「真作と認められない作品図版の掲載や,作家の意図
としない出版物への使用を管理」している。
ギャルリーためながは,15年程前から,本件オークションへの出品又は落札を
通じて被告と取引関係にあり,被告の会員でもある。被告は,本件カタログを,毎
回,ギャルリーためながに送付しており,アイズピリ作品に関する本件カタログへ
の複製について,ギャルリーためながから許諾されていた。
(原告らの主張)
被告が,ギャルリーためながに対し,アイズピリ作品の利用許諾申請をしたこと
は一度もないし,アイズピリが,ギャルリーためながを通じて,アイズピリ作品の
複製を被告に許諾したことはない。
ギャルリーためながは,アイズピリから日本国内における著作権管理の委託を受
けたことがある。しかしながら,それは平成22年1月以降のアイズピリ作品の利
用についてである。したがって,ギャルリーためながは,本件訴訟において損害賠
償の対象としている平成14年1月から平成21年12月までのアイズピリ作品の
利用につき,そもそも利用許諾をする権限を有していない。
この点につき,ギャルリーためながの代表取締役は,原告ら代理人からの照会に
対して,①ギャルリーためながは,アイズピリから著作権管理の委託を受けたのは
平成22年1月からであり,それ以前の時期におけるアイズピリ作品の利用を許諾
する立場にないこと,②平成21年12月以前の時期に日本におけるアイズピリ作
品の著作権管理を行っていたのは,原告協会(及びその日本における代理人である
SPDA)であること,③ギャルリーためながは,被告からアイズピリ作品のオー
クションカタログへの複製につき利用許諾申請を受けたことはなく,本件カタログ
への複製につき利用許諾をしたこともないことを回答している。
なお,アイズピリからギャルリーためながに対する著作権管理の委託は終了し,
現在,アイズピリ作品の著作権管理は再び原告協会に戻っている。
(5) 本件カタログが展示に伴う小冊子(著作権法47条)に当たるか(争点5)
(被告の主張)
ア 鑑賞用の展示だけでなく,作品の所有者の同意を得て,購買を目的とし
た原作品の展示に伴い著作物を複製することも,著作権法47条の適用対象となる。
イ 東京地裁平成10年2月20日判決(バーンズコレクション事件)によ
れば,小冊子に該当するか否かは,展示された原作品と解説又は紹介との対応関係
を明らかにする程度のものかどうか,鑑賞用の書籍として市場において取引される
価値を有するものとみられるかどうかを基準として判断される。
本件カタログにおいては,取引対象となる絵画を示しているが,それとともに,
絵画の情報として,①作者名,②題号,③レゾネ番号,④サイズ,⑤サイン,⑥エ
ディションナンバー(版画の限定刷り部数),⑦特記事項,画廊シール,鑑定書の有
無など,その作品に関する特記事項,⑧作品の状態,⑨額の有無,⑩予想落札価格
を示している。つまり,本件カタログ掲載の情報は,オークションの対象となる作
品及び当該作品の落札価格に影響を与える情報のみであり,本件カタログは,オー
クションに出品された原作品と出品作品の基本的情報との対応関係を明らかにする
商品目録にほかならない。
本件カタログは,市場において取引される価値はなく,被告の会員及びオークシ
ョンへの来場者限定で頒布されるものであり,一般には流通しない。
オークションで取引される絵画の点数により,カタログ自体は書籍のような体裁
をとらざるを得ないが,装丁は,鑑賞用図書のように表紙にカバーが掛けられてい
ることも,ハードカバーを用いられることもなく,一般のパンフレットが厚くなっ
た状態にすぎない。絵画自体も,出品作品との同一性と落札希望者が落札するかど
うか,いくらで落札するかを決定するために必要な最低限のサイズである。また,
絵画には,ロット番号が付され,これに従って掲載されているが,ロット番号は,
オークションの出品順を示すものであり,鑑賞用の芸術書にみられるような絵画の
ジャンルや作家名による分類など,系統だった編集はされていない。さらに,紙面
も,系統だった構成ではない。したがって,オークション終了後にカタログを保存
する価値も市場で取引される価値もなく,実際に一般書籍として販売されることも
ない。
以上のとおり,本件カタログは,オークションにおける展示に伴い取引の対象と
なる作品と買主の判断材料となる最低限の情報を示した,商品目録としての「小冊
子」にすぎない。
ウ 著作権法25条に規定する展示権を害することなく展示することができ
る場合の1つとして,同法45条1項の規定によって作品の所有者の同意を得た場
合がある。オークションでは,作品の所有者がオークションのために原作品を公に
展示することを同意している。
エ 以上により,被告は,オークションにおける公の展示において,観覧者
のために著作物の紹介をすることを目的として,
「小冊子」である本件カタログに著
作物を掲載したのであり,著作権47条により,その複製は適法である。
オ 著作権法47条は,原作品による展示をする者に対し,展示だけではな
く,展示作品の紹介や購入意欲の増進のためのカタログの複製を認め,複製の利益
と所有者の展示の利益の調整を図った規定であるとされている。したがって,鑑賞
目的か売買目的かで,掲載が認められる「小冊子」の範囲は,異なって然るべきで
ある。著作権法47条は鑑賞目的の展示を想定したものであるが,立法趣旨からす
れば,売買目的の場合においても同条の適用は可能である。
(原告らの主張)
ア 著作権法47条は,…観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介を
「
することを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。と規定し
」
ている。「観覧者のため」という要件は,「解説又は紹介をすることを目的とする小
冊子」に掛かるものであって,「展示」に掛かるものでも,「複製」に掛かるもので
もない。上記の要件は,同条により著作権の制限を受ける小冊子は,それが実際に
作品を観覧する者のために作成されたものでなければならないことを明らかにする
ものであり,オークションやその下見会に参加して展示された著作物を観覧する者
であるか否かにかかわらず,広く全会員に配布されている本件カタログのような複
製物には,同条の権利制限が適用されないことを定めたものである。
イ 上記バーンズコレクション事件判決は,(著作権法47条の小冊子は)
「
掲載される作品の複製の質が複製自体の鑑賞を目的とするものではなく,展示され
た原作品と解説又は紹介との対応関係を明らかにする程度のものであることを前提
としている」と判示する。同判決が「展示された原作品と解説又は紹介との対応関
係を明らかにする程度のもの」であることを要求しているのは,
「掲載される作品の
複製の質」についてであって,そこに記載された作品の情報についてではない。
被告は,本件カタログに記載している情報が作者名,題号,レゾネ番号等にすぎ
ないことなどを述べて,それが「小冊子」該当性を肯定する事情であるかのように
主張するが,バーンズコレクション事件判決の誤読に基づく誤った主張である。
それどころか,バーンズコレクション事件判決は,観覧者のための「小冊子」に
該当するには,作品をより深く鑑賞するために有用な詳しい解説や紹介がされてい
ることを,当然の前提としている。ところが,本件カタログには,作者名,題号,
レゾネ番号などの落札価格等に影響する情報が記載されているだけで,作品を鑑賞
するための解説・紹介はどこにもない。被告が主張する事情は,本件カタログに著
作権法47条が適用される余地のないことを,明らかにするものである。
ウ バーンズコレクション事件判決が判示するとおり,
「小冊子」というため
には,
「紙質,判型,作品の複製態様等を総合して,複製された作品の鑑賞用の図書
として販売されているものと同様の価値を有するもの」であってはならない。すな
わち,
「小冊子」
(小型で薄い本〔大辞林〕)という以上,大型判や大部のものであっ
てはならないし,その複製の態様はまさに解説・紹介との対応関係を視覚的に明ら
かにする程度のものでなければならない。つまり,写真の大きさ・鮮明さや,書籍
としての態様が,市販の図録に準ずるようなものであってはならないのである。
ところが,本件カタログは,縦297mm,横210mm という大型版の書籍であ
り,全頁に上質紙が用いられている。総頁数は各号により異なるが,概ね100頁
から300頁に及ぶ大部のものであり,その大部分の頁に美術作品の極めて鮮明か
つ大きなカラー写真が掲載されている。
本件カタログは,「小冊子」の域をはるかに超えるものである。
(6) 本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用(著作権法32
条1項)に当たるか(争点6)
(被告の主張)
ア 著作権法32条1項は,
「報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な
範囲内」での引用を認めている。したがって,正当な範囲内と認められる引用の目
的は,報道,批評,研究に限られるものではない。
絵画の所有者は,売買によってその処分権を行使することができるが,そのため
に,オークションを利用することも1つの処分方法として認められる。オークショ
ンに出品するためには,取引の目的物である絵画を特定することが不可欠である。
オークションカタログにおける絵画の掲載は,オークションにおいて取引の対象と
なる絵画を特定するためである。著作者名及び絵画の題号等の文字情報だけでは,
取引の目的物の特定は困難であり,作品によっては,極めて類似した複数の作品も
存在するから,売買を円滑に進める上で,作品そのものをできるだけ忠実に表示す
ることが,必要不可欠である。
また,オークションでは,単に取引の目的物を特定するというだけでなく,取引
者が取引の目的物となる絵画の真贋を見極め,落札価格としてふさわしい値段を付
ける必要がある。売買を円滑に進めるためには,文字情報だけでは不十分であり,
取引対象となる作品を表示することが必要である。
このように,オークションカタログへの掲載は,オークションによって贋作が取
引されることを防止し,絵画を適正な値段によって取引し,ひいては,取引の対象
となる絵画の著作物の価値を高めるのみならず,当該著作者の一連の作品の価値を
高めることにもなり,著作者の地位の向上,美術品取引市場の活性化による美術文
化の発展にも資する。
したがって,本件カタログにオークションの対象となる絵画を表示することは,
著作権法の定める引用の目的として,正当と認められる。
イ 本件カタログは,月1回程度の頻度で行われる本件オークションの出品
作品のみを掲載したカタログであり,A4判に絵画1枚から数枚が作者,題号等の
取引に必要な情報とともに掲載されている。また,本件カタログは,オークション
カタログであるから,被告の会員及び当日オークションに臨場する者に限定して配
布され,オークションの参加者及び参加見込者以外に配布されることはなく,それ
自体として流通させる価値も流通の予定もない。
したがって,本件カタログに絵画を表示することは,その方法ないし態様におい
ても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまる。
ウ 美術の著作物に関して,著作者は,美術作品の所有権を手放してしまえ
ば,その後,有体物である絵画の取引からは何の利益も得られない。本件でも,著
作者は,絵画の所有権を手放しており,有体物である絵画の取引から得られる利益
はなく,売買に付随して,売買の目的物を特定するために絵画が複製されたからと
いって,著作権者が経済的利益を得る機会損失になることはない。
他方,オークションは,絵画所有者の所有権の処分として行われるもので,オー
クションカタログへの複製は所有権処分のために不可避である。美術品の所有者に
所有権の自由な処分が認められているにもかかわらず,オークションカタログへの
複製を著作者の許諾にかからしめることによって,著作権者がオークションを妨げ
ることができるとすれば,絵画所有者は,絵画に投下した資本を回収することがで
きず,著作者ないし著作権者の意向によって絵画取引を萎縮させることになり,文
化の発展に寄与するどころか,後退させることになる。
したがって,オークションカタログへの複製は,著作権者の利益となることはあ
っても,経済的損失をもたらすものではなく,所有権の譲渡のための取引に求めら
れる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,
正当な範囲内のものであるということができる。
エ 引用の要件の1つと主張される主従関係についていえば,オークション
カタログにおける主たる部分は,取引対象となる絵画の著作者,題号,サイズなど
の基本的な情報及び落札価格に影響を与えるサインや傷などの状態,予想落札価格
等に関する情報である。これらの情報を視覚的に示して取引の目的物を特定し,絵
画の価値を判断させるため,オークションカタログに絵画を掲載しているが,絵画
は文字による情報を補充するにとどまり,文字による情報を実際に確認できるよう
な文字に取って代わるサイズではない。また,絵画と被告の記載部分とは明瞭に区
別することができる。
したがって,主従関係と明瞭区別性という要件に照らしても,本件カタログへの
複製は引用として認められる。
(原告らの主張)
ア 最高裁昭和55年3月28日第三小法廷判決(民集34巻3号244頁)
は,
「引用とは,紹介,参照,論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の
原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから,右引用にあた
るというためには,引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物
と,引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ,か
つ,右両著作物の間に前者が主,後者が従の関係があると認められる場合でなけれ
ばならない」と判示する。
本件カタログの作品紹介部分には,作品名,題号,レゾネ番号,サイズ,サイン,
エディションナンバー,予想落札価格等が記載されているが,これらの記載は作品
の資料的事項にすぎないから,著作物ではない。また,このような本件カタログの
体裁からすれば,これらのカタログは,出品作品の絵柄がどのようなものであるか
を画像で見る者に伝えるためのものであり,作品の画像のほかに記載されている文
字的部分は作品の資料的な事項にすぎず,その表現も単に事実のみを順に記載した
ものであるといえ,主たる部分が作品の画像であることは明らかである。したがっ
て,上記最高裁判決に照らし,本件カタログへの作品の複製が,適法引用に当たる
ものでないことは,明らかである。
イ 被告が主張するように,
「公正な慣行に合致」,
「引用の目的上正当な範囲
内」といった著作権法32条1項の文言だけを基準にして検討してみても,本件カ
タログについての諸事情(①引用する側が単なる資料的文言にすぎず,著作物では
ないこと,②客観的な体裁からして作品の複製部分が明らかに主であり,資料的文
言は従たる存在にすぎないこと,③美術品の図録に比肩するような上質紙による大
型版の書籍に,極めて鮮明な美術品の写真を掲載していること,④公開入札方式の
オークションにおいて,このような詳細かつ鮮明な作品の写真が必須のものでない
こと,⑤本件カタログが,オークションに参加するか否かにかかわらず大量に頒布
されるものであること,⑥本件カタログへの美術品の複製が著作権者には何らの利
益をもたらすものでないこと,⑦公開入札方式によるオークションを行う他のオー
クション業者においては,現に原告らの利用許諾を得て適法に管理著作物をカタロ
グに利用していること等)に鑑みれば,本件カタログへの美術作品の複製が「公正
な慣行に合致」するものでも,
「引用の目的上正当な範囲内」のものでもないことは
明らかである。
(7) 原告らの請求が権利濫用に当たるか(争点7)
(被告の主張)
平成22年1月施行の改正著作権法により,著作権法47条の2が新設され,美
術の著作物の所有者その他譲渡の権限を有する者が,原作品を譲渡する場合,その
委託を受けた者は,著作物を複製できることとなった。
著作権法改正前,譲渡の申し出に伴う複製は,
「複製権や公衆送信権の侵害に当た
る可能性がある」と指摘されていただけで,明確に侵害であるとは捉えられていな
い。むしろ,侵害に該当するとはいえないからこそ,それを確認する趣旨で,著作
権法47条の2が新設されたのである。同条が新設された後に適法であることが明
確化された行為について,行為態様が同じでありながら,新設前は違法であるとは
考え難い。つまり,取引対象となる商品情報の提供として行われる画像の複製は,
著作権法47条の2新設前においても,実質的に違法な複製とはいえない。
また,絵画等の譲渡等が著作権侵害でないにもかかわらず,画像掲載に関する著
作権の問題を理由に,事実上,譲渡等が困難となるのは適当ではない。したがって,
著作権法47条の2新設前においても,画像掲載に対して著作権侵害であると主張
して,事実上,絵画等の譲渡を困難ならしめることは,絵画の処分権を有する者に
対する,適法な権利行使の名を借りた著作権の濫用である。
以上のとおり,本件における原告の著作権の行使は,著作権法改正前にオークシ
ョンのために行われた複製について,法律が明確でなかったことを幸いとして,譲
渡に伴う美術の著作物の複製が法律上合法であると確認された今に至って,損害賠
償を請求するものであり,著作権法47条の2が新設された趣旨からすると,著作
権の濫用に該当する。著作権法47条の2が適法と認めるための要件として定めた
「一定の措置」について,立法前に被告が同措置を講じられるはずがなく,これが
取られていないことは,規定前の時点における違法性の有無を判断するに当たって,
絶対的な基準とはなり得ない。
(原告らの主張)
著作権法は,その支分権(著作権法21条~28条)として定める行為に対して
著作権者の権利が及ぶことを原則とした上で,様々な理由で著作権が制限される場
合を著作権法30条以下に限定列挙する方法で規定している。したがって,列挙さ
れた権利制限規定に該当しない支分権該当行為に対する著作権の権利行使が権利の
濫用になることは,原則としてない。また,行為時点において違法な著作権侵害に
より発生済みの損害賠償請求権の行使が,その後に立法された著作権制限規定によ
って消滅することもない。しかも,被告と同様の美術品オークションを行う他のオ
ークション業者においては,従前から原告らの利用許諾を得て,適法に管理著作物
をそのオークションカタログに複製しているのであり,原告等による権利行使は,
全く正当なものであり,本件請求が権利の濫用に当たるような事情は見当たらない。
第4 当裁判所の判断
1 原告X1の当事者適格の有無(争点1)
(1) 関連条文(後記各書証に若干の修正を加えた。)
ア フランス民法 第3款 卑属に与えられる相続財産 及び 第7款 生
存配偶者の権利(ピカソ死亡時である1973年4月8日当時のもの。以下同じ。
甲311)
① 745条(卑属の相続権)
1項:子又はその卑属は,性別も,長子であることの区別もなく,また,それら
の者が異なる婚姻から生れたのであっても,父母,祖父,祖母又はその他の尊属を
相続する。
2項:それらの者は,全て第一順位において,かつ,本人として(相続に)招致
されるときは,均分で,かつ,頭(分け)によって相続する。それらの者は,その
全部又は一部が代襲によって(相続に)臨むときは,株(分け)によって相続する。
② 765条(所有権の相続)
死亡者が相続することができる親等の血族を遺さない場合,又は兄弟姉妹若しく
はそれらの者の卑属以外の傍系(血族)のみを遺す場合には,その相続財産は,離
婚していず,かつ,その者に対して既判力を生じている別居判決が存在しない生存
配偶者に,完全な所有権として属する。
イ フランス民法 第3編 第1章 第7節 不分割の法律上の規律(甲3
47)
① 815条
いかなる者にも,不分割にとどまることを強制することができない。分割は,常
に提起することができる。ただし,判決又は合意によって延期された場合には,そ
の限りではない。
② 815条の1
不分割権利者は,第1873条の1ないし第1873条の18に従って,不分割
権利の行使に関する合意を締結することができる。
③ 815条の2
1項:不分割権利者は,全て,(それが緊急的な性質を有していなくても,)不分
割財産の保存に必要な措置をとることができる。
④ 815条の3
1項:不分割権利の少なくとも3分の2を有する1又は複数の不分割権利者は,
この多数により(次の行為を行うことが)できる。
1.不分割財産の管理行為を行うこと
2.1若しくは複数の不分割権利者又は第三者に管理の一般的委任を与えるこ
と
3.不分割の債務及び負担を支払うために不分割財産を売却すること
3項:ただし,不分割財産の通常の利用に属さないあらゆる行為,及び第1項第
3号が規定するもの以外の処分行為を行うためには,全不分割権利者の同意が必要
である。
⑤ 815条の6
1項:大審裁判所長は,共通の利益が要求する全ての緊急の措置を命じ,又は許
可することができる。
⑥ 815条の9
1項:それぞれの不分割権利者は,他の不分割権利者の権利,及び不分割の間に
適式に行われる行為の効果と両立する範囲において,不分割財産をその用途に従っ
て使用し,収益することができる。利害関係人の間に一致がない場合には,この権
利の行使は,仮に,裁判所長によって定められる。
ウ フランス民法 第3編 第9章の2 不分割の権利の行使に関する合意
(甲6,347)
① 1873条の1:所有者,共有権者又は用益権者として不分割財産に
対して行使する権利を有する者は,その権利の行使に関する合意を締結することが
できる。
② 1873条の2
1項:共同不分割権利者は,その全ての者が同意する場合には,不分割にとどま
る旨を合意することができる。
2項:この合意は,不分割制度の指定及びそれぞれの不分割権利者に属する(不
分割)持分の表示を伴う書面によって作成しなければならない。これに反する場合
には,無効とする。不分割財産が債権を含む場合には,第1690条の方式が必要
である。不分割財産が不動産を含む場合には,土地公示の方式が必要である。
③ 1873条の3
1項:この合意は,特定の期間を予定して締結することができる。この期間は,
5年を上回ることができない。合意は,当事者の明示の決定によって更新すること
ができる。分割は,それについて正当な理由がある場合でなければ,合意された期
限前に提起することができない。
④ 1873条の5
1項:共同不分割権利者は,それらの者又はそれらの者以外から選ぶ1人又は数
人の管理者を選任することができる。管理者の指名及び解任の態様は,不分割権利
者の全員一致の決定によって定めることができる。
⑤ 1873条の6
1項:管理者は,民事生活上の行為について,あるいは原告又は被告として裁判
上で,その権限の範囲内で不分割権利者を代表する。管理者は,訴訟手続の最初の
行為において,単純な挙示として,全ての不分割権利者の氏名を表示する義務を負
う。
2項:管理者は,不分割財産を管理し,そのために(夫婦の各人に付与される)
共通財産に関する権限を行使する。ただし,管理者は,不分割財産の通常の経営の
必要のために行う場合,又は保存が困難な物若しくは損耗しやすい物に関する場合
でなければ,有体財産を処分することができない。管理者の権限を拡張する条項は
全て,書かれなかったものとみなされる。
⑥ 1873条の8
1項:管理者の権限を越える決定は,
(不分割権利者の)全員一致で行われる。た
だし,管理者が自ら不分割権利者である場合には,第815条の4,第815条の
5及び第815条の6に定める訴えを行うことを妨げない。
エ フランス民事訴訟法 第1巻 全ての裁判所に共通の規定 第15編
判決の執行 第2章 国境を越えた承認(甲346)
第509条 外国の裁判所によってなされた判決及び外国の官吏によって承認さ
れた証書は,法律によって定められている方法で,かつ,法律によって定められて
いる場合に,共和国の領土で執行することができる。
(2) 前提事実
甲5,6,312の2,327及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
ア 原告X1は,ピカソの相続人の1人である。
ピカソは,1881年にスペインのマラガで生まれたスペイン人であるが,19
04年にフランスのパリに移住した後,1973年にニース近郊のムージャンで死
亡するまでの間,フランスに居住して美術的な創作活動を行った。ピカソが197
3年4月8日に死亡したことにより,その子である原告X1,X2,X3及びCTの
4名が,ピカソ作品の著作権を相続した。そして,CTが1975年6月5日死亡
したことにより,その子であるX4及びX5がCTの有していたピカソ作品の著作権
持分を相続した。
イ 原告X1,X2,X3,X4及びX5は,ピカソ作品の著作権をフランス民
法1873条の1以下に規定する不分割共同財産にとどめる旨を合意した。
ウ 原告X1は,パリ大審裁判所の1989年3月24日付け本件急速審理
命令により,不分割共同財産であるピカソの著作権の管理者(代表者)に指名され
た。なお,当該事件の原告は,原告X1及びX4であり,被告は,X2,X3及びSP
ADEM協会であり,それ以外にX5が訴訟参加人となっており,上記ピカソの相
続人全員が関与している。同事件は,X5が,ピカソの意向に反して,自らの持分
権を行使しようとしたことから,不分割財産に重大な損害が生じるおそれがあると
して,申し立てられたものであり,原告X1 を不分割財産の代表者として指名する
と同時に,X5が不分割財産の分割以前に管理行為を行うことの禁止も命じられた。
この点,被告は,ピカソの相続人間における不分割合意の有無及び有効性並びに
本件急速審理命令の有効性に疑義を述べるが,パリ大審裁判所において本件急速審
理命令が出されていることからすると,ピカソの相続人間の不分割合意は,ピカソ
の死亡時の本国法であるフランス法に基づいて適正,適式になされた契約で,有効
に成立したものと推認されるし,また,本件急速審理命令において,X5が訴訟参
加人となっていることも併せ考えると,ピカソの相続人全員が関与して発せられた
急速審理命令ということができ,訴訟法上有効になされたものと認められる。
(3) 検討
原告X1は,ピカソの相続人の訴訟担当者として,本件訴訟を提起するところ,
原告X1は,我が国の国籍を有しない訴訟担当者であるから,渉外事案における当
事者適格が問題となる。
当事者適格の有無は,訴訟手続において,誰に当事者としての訴訟追行権限を認
め,法的紛争の解決を有効かつ適切に行わせるのが相当かという視点から判断され
るべき事項であるから,手続法上の問題として,法廷地における訴訟法,すなわち,
我が国の民訴法を準拠法とすべきである。そして,我が国の民訴法は,本来の権利
者又は法律関係の当事者以外の者が,訴訟担当として訴訟において当事者適格を持
つ場合を規定しているが(民訴法30条,民法423条参照),他方,他人の権利や
法律関係を訴訟で主張することを無制限に認めているわけではない(民訴法54条
参照)。さらに,訴訟担当の中でも,訴訟法(民訴法に限らない。)自体が担当者の
定めを規定している場合ではなく,担当者が実体法上の法律関係に基づいて,訴訟
物の管理処分権等が認められる場合においては,法廷地法の視点から,当該者に管
理処分権及び訴訟追行権限を認めてよいか否かという点を検討する上で,訴訟担当
者と被担当者との関係を規律する当該実体法の内容を考慮すべきものであり,本件
のように,訴訟担当者の訴訟追行権限が一定の実体法上の法律関係の存在を前提に
している場合には,当該法律関係の準拠実体法を参照することが求められるという
べきである。
この点,原告X1の訴訟追行権限は,フランス民法1873条の1に基づく権利
不分割の合意を前提にした上で,管理者の選任について,フランス民法1873条
の5第1項に規定する共同不分割権利者の合意が成立しなかったため,パリ大審裁
判所の本件急速審理命令により,原告X1がピカソの相続人中の管理者として選任
されたことに基づくものである。そして,フランス民法1873条の1において権
利不分割合意の対象とされている「権利の行使」には,著作権侵害に基づく不法行
為責任の追及が含まれると解するのが合理的である。したがって,原告X1の本件
訴訟の追行権限は,フランス民法1873条の1に基づく権利不分割合意という実
体法上の契約を基本としたものといえるが,不分割財産の管理者としての地位自体
は,共同不分割権利者による合意により定められたわけではない。もっとも,パリ
大審裁判所による本件急速審理命令は,フランス民法1873条の5に定める共同
不分割権利者の合意に代わるものであるから,原告X1の本件訴訟追行権限の法的
根拠は,共同不分割権利者による合意に準じたもの,あるいは,フランス民法の規
定に由来するものと解することもできる。
そこで,我が国の民訴法の枠組みから,上記のような管理者に対して当事者適格
を付与することができるか否かを検討する(なお,外国裁判所の確定判決の効力と
いう観点も,後記において検討する。。我が国の民訴法は,前記のとおり,権利者
)
等以外の者による訴訟担当を認めているが,無制限に認めているわけではなく,弁
護士代理の原則等に反しないことはもちろんのこと,他人による訴訟担当を認める
に足る合理的な必要性が要求される(最高裁昭和45年11月11日大法廷判決・
民集24巻12号1854頁参照)。したがって,上記の原告X1の実体法上の地位
が,我が国において,訴訟担当を基礎付けるに足りるものか否かを検討するに,原
告X1は,フランス民法に基づき,実体法上,権利不分割合意の対象となった不分
割財産の管理権限を有し,それに伴って裁判上も共同不分割権利者を代表する権限
を有するほか,全共同不分割権利者の同意を得て,通常の利用に属しないあらゆる
処分行為を行うことができる。このような地位を我が国の制度に照らしてみると,
まず,民訴法30条の規定する選定当事者制度は,共同利益を有する多数の者の中
から全員のために訴訟当事者となるべき1人を選任することを容認しており,共同
相続人はこれら多数の者に該当すると解されること(大審院昭和15年4月9日判
決・民集19巻9号695号),また,各共有者は,共有物について,保存行為は単
独で行うことが可能であるが(民法252条) 基本的には持分に応じた使用が許さ
,
れており(民法249条) 共有物に対する不法行為による損害賠償請求権もこれに
,
該当すると解されること(最高裁昭和41年3月3日判決・裁民82号639頁,
最高裁昭和51年9月7日判決・裁民118号423頁参照),他方,各共有者によ
る共有物についての不分割の合意が規定されていること(民法256条1項ただし
書) 債権についても当事者の合意による不可分が認められていること
, (民法428
条),相続財産は相続人の共有とされていること(民法898条),相続財産の保存
に必要な処分について,裁判所による相続財産管理人の選任ができること(民法9
18条)などの条文及び法解釈があり,これらの条文及び法解釈は,フランス民法
に基づく権利不分割合意とその不分割財産の管理者に関する規定と同様の趣旨と解
される。
以上によれば,相続人間で不分割とすることを合意した財産のうち,準物権的な
知的財産権について,裁判所により管理者に選任された相続人が,単独で訴訟を提
起することは,我が国の法規とも合致するところであり,原告X1 の訴訟追行権限
を許容すべき合理的な必要性は,我が国における訴訟法の観点からも是認すること
ができる。
なお,原告X1を管理人に選任したパリ大審裁判所の本件急速審理命令について
は,外国裁判所の確定判決に関する効力の有無(民訴法118条)という側面も有
するから,民訴法118条の各要件について検討するところ,本件急速審理命令は,
権利不分割合意の対象である不分割財産の管理人を暫定的に定めるものであって
(乙365) 争訟性のある事件に関する判決には該当しないから,
, 被告に対する送
達(2号)及び相互保証(4号)の要件は求められないというべきである(仮に,
上記各要件が必要であるとしても,ピカソの相続人は,全員が当事者又は訴訟参加
人として権利不分割合意に関する手続に関与しているから,送達(2号)の要件を
満たす。また,フランスでは,少なくとも,判例法上,外国裁判の承認に関し,外
国裁判所の裁判管轄,訴訟手続の規則適合性,フランスの抵触規定に従った準拠法
の適用,国際公序への合致及び法律詐欺の不存在等が必要とされているが,人の身
分と能力に関する事項のみならず,金銭及び財産に関する事項についても,実質再
審査主義が廃止された状況にあると認められる(甲349)から,我が国と重要な
点において異なるところはなく(最高裁昭和58年6月7日第三小法廷判決・民集
37巻5号611頁参照),相互保証(4号)の要件を満たすといえる。。そして,
)
外国裁判所の裁判権が認められること(1号)及び日本の公序に反しないこと(3
号)の各要件を充足することは明らかである。
そうすると,原告X1 のフランス法上の不分割財産の管理者としての地位は,我
が国の訴訟法において,単独で訴訟追行することが許される地位と解すべきもので
あり,本訴においては,当事者適格を認めるべきものといえる。
(4) 被告の主張に対する判断
被告は,当事者適格の問題は法廷地法である我が国の訴訟法の問題であるという
前提をとりつつ,我が国の著作権法117条は不分割共同財産という概念を認めて
いないから,著作権についての合意部分は無効であり,原告適格は認められないと
主張する。
当裁判所は,この点に関し,原判決と同様に,著作権侵害を理由とする損害賠償
請求の法律関係の性質は不法行為であり,準拠法としては,通則法17条により,
加害行為の結果が発生した地である我が国の法律を適用すべきであると解する。そ
して,著作権法117条は,原告の当事者適格の有無に影響を及ぼす規定と解する
ことはできない。なぜなら,同条は,共同著作物の各著作権者等が,当該共同著作
物に関して,差止請求又は損害賠償請求等を独立してできると規定し,当該著作権
等の各共有者が行使できる権利やその行使に際しての条件を定めるものであるとこ
ろ,その内容は,著作権法112条で定められた著作権又は著作者人格権等の物権
類似の効力を前提として,民法で認められた共有関係や不法行為に関する条文及び
解釈を反映したものであり,各共有者間において,実体的な権利関係や権利行使に
関し,著作権法117条の内容とは異なる合意を一切許さないような効力を有する
強行規定と解することはできないからである。
したがって,著作権法117条は,各共有者間において,法律の定めた権利内容
や条件とは異なる内容の合意や,それに基づく新たな法律関係の形成を一律に排除
するものではなく,共有者間で成立した権利不分割の合意を無効とする法的根拠と
はなり得ないというべきである。しかも,本件において,原告X1 以外の他の相続
人が,原告X1による本件訴訟追行に異議を唱えていることをうかがわせるような
事情はなく(X5が,自己の持分権のみを行使したいという意向を有していたこと
と,本件訴訟の提起は必ずしも矛盾するものではない。,ピカソの他の相続人から
)
原告X1に対する個別の授権を要すると解すべき理由もない。
以上によれば,被告の主張は,採用できない。
2 著作権移転の有無(争点2)
(1) 準拠法について
ア 原告協会は,フランスの法人であるところ,同協会に本訴で問題となる
会員作品の著作権を移転した会員は,種々の国の人間からなるので,権利移転関係
の準拠法を検討する必要がある。
イ 著作権の移転について適用されるべき準拠法を決定するに当たっては,
移転の原因関係である契約等の債権行為と,目的である著作権の物権類似の支配関
係の変動とを区別し,それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきであ
る。
まず,著作権の移転の原因である債権行為に適用されるべき準拠法について判断
するに,通則法7条により,第一次的には当事者の選択に従ってその準拠法が定め
られるべきである(同法施行(平成19年1月1日)前は法例7条1項により「当
事者ノ意思」を準拠法とするが,実質的に変わりはない。 。そして,フランス法人
)
である原告協会と会員(大部分がフランス人)との間の著作権移転に関する契約に
ついては,フランス法を選択する意思であったと解される。仮に,会員の中に,原
告協会との契約において,フランス法を選択する明確な意思がなかった場合には,
通則法8条により,最密接関連地法を適用することになるが,フランスの「198
5年7月3日付けフランス共和国著作権並びに実演家,レコード製作者及び放送事
業者の権利に関する法律」に基づいて設立されたフランス法人との契約であり,原
告協会がフランス及び外国における著作権管理を行っていることからすると,最密
接関連地もまたフランス法といえ,適用法に変わりはない(同法施行前は法例7条
2項により「行為地」を準拠法とするが,本件ではフランスを行為地といえるので,
実質的に変わりはない。。
)
次に,著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法につい
て検討するに,一般に,物権の内容,効力,得喪の要件等は,目的物の所在地の法
令を準拠法とすべきものとされ,通則法13条は,その趣旨に基づくものである。
著作権は,その権利の内容及び効力がこれを保護する国の法令によって定められ,
また,著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから,物権の得喪
について所在地法が適用されるのと同様に,著作権という物権類似の支配関係の変
動については,保護国の法令が準拠法となるものと解するのが相当である。
このように,著作権の物権類似の支配関係の変動については,保護国である我が
国の法令が準拠法となるが,著作権の移転の効力が原因となる譲渡契約の締結によ
り直ちに生ずるとされている我が国の法令の下においては,原告協会と会員との間
の著作権移転に関する契約が締結されたことにより,著作権は会員から原告協会に
移転することになる。
(2) 「apport」の解釈について
そこで,原告協会と会員との著作権移転に関する契約について検討するに,原告
協会の一般規約14条は,「作品は,その著作者,その作品の権利承継者,相続人,
受遺者又は譲受人が当協会に加入した事実のみをもって,当協会の管理著作物とし
て承認される。当協会への加入により,この一般規約第1条に規定された作品及び
当該著作者の他の全ての作品(それがいかなる性質のものであるかを問わない)の
諸権利は当協会に「apport」する。」と規定するから,「apport」の意義を検討する。
ア 関連条文(フランス法)
① 1985年7月3日の著作権並びに実演家,レコード製作者及び放送
事業者の権利に関する法律(甲1の1)
38条
1項:著作権使用料並びに実演家,レコード製作者及びビデオグラム製作者の権
利使用料の徴収分配協会を民法法人として設立する。
2項:この協会の会員は,著作者,実演家,レコード製作者若しくはビデオグラ
ム製作者,出版者又はこれらの者の承継人でなければならない。正規に設立された
これらの民法法人は,約款に従って責任を負う権利の擁護のために出廷する資格を
有する。
② 知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律(法律第92-5
97号)(甲1の2)
321の1条
1項:著作権使用料並びに実演家,レコード製作者及びビデオグラム製作者の権
利使用料の徴収分配協会が,民事組合として設立される。
2項:これらの協会の会員は,著作者,実演家,レコード製作者,ビデオグラム
製作者,出版者又はこれらの者の権利承継人でなければならない。正規に設立され
たそれらの民事組合は,定款上責任を負う権利の擁護のために裁判所に出廷する資
格を有する。
③ 一般規約(甲3)
1条:当協会の会員となるためには,静的であるか動的であるか,又は二次元で
あるか三次元であるかを問わず,視覚的作品(視聴覚的制作物の一部である場合を
含む)の全部又は一部の著作者であること,これらの著作者から作品の権利を相続
した者であること,又はこれらの著作者若しくは相続人が作品について有する財産
権の全部又は一部を譲り受けた者であることが必要である。
14条:作品は,その著作者,その作品の権利承継者,相続人,受遺者又は譲受
人が当協会に加入した事実のみをもって,当協会の管理著作物として承認される。
当協会への加入により,この一般規約第1条に規定された作品及び当該著作者の他
の全ての作品(それがいかなる性質のものであるかを問わない)の諸権利は当協会
に「apport」する。ただし,外国地域に限り,当協会を外国で代表する使用料徴収
協会の規約の定めに従うものとする。
④ 原告協会定款(甲350,356)
2条:この定款により入会が許可された全ての者は,作家の作品に関する財産権
の全部又は一部の保持者である。
彼らは,その入会の事実によって,全ての国において,及び協会の存続期間中,
第6条及び48条の規定の条件下で,下記の権利を協会に「apport」する。
a)とりわけ展示会の方法により,作品を展示し又は公衆に伝達することを許諾
し又は禁止する権利
b)作品の複製を許諾し又は禁止する権利
c)映画フィルム,ビデオグラム,有線テレビ放送,衛星放送,マルチメディア
のあらゆる媒体における利用(オフライン)及びネットワークによる放映(オンラ
イン)等の手法(これらの方法に限定されない)により,上述の作品を表示又は公
衆送信するために作品の複製が必要な場合に,その作品の複製を許諾し又は禁止す
る権利
d)入会前の販売分を含む追及権の管理
e)私的複製補償金の管理
f)あらゆる複写補償金を受領する権利の管理
g)作品の貸与又は賃貸借に係る補償金を受領する権利の管理
h)義務的団体管理における全ての著作権及び法定許諾の枠内で支払われるべき
全ての報酬の管理
j)広告に使用された注文作品の利用権の管理
これらの全ての権利「apport」は,協会の資本金を構成するものではない。資本
金は15,24ユーロの現金移転による支払で構成される。
3条
前条の規定にもかかわらず,本定款に賛同し加入を認められた者は,協会の存立
期間中,あらゆる国において,又はフランスについて及びいくつかの地域について,
ただし後述の規定を留保条件として,第2条に定める権利の一部のみを協会に
「apport」することができる。
ただし,提示が複製を伴うところの第2条a)及び第2条c)に定める場合には,
複製権の「apport」は,提示権の「apport」と切り離すことができない。
4条
1項:第2条に定める移転の対象になっている諸権利は社員の加入期日前に製作
されている作品に係るものである。
ただし,財産権が独占的に「apport」されている作品の利用法については,その
譲渡期間中,これらの権利移転は適用されない。
上記の権利は,作家が協会に所属している間に製作する作品にも,その製作に伴
って適用される。
2項:協会は,フランスや外国において,他の著作権料徴収分配協会,並びに当
該協会の代理可能な他のあらゆる個人に,当該協会に移転された諸権利の行使と管
理を委託することができる。
9条
協会は下記の事項を目的とする。
1)全ての国において,作品の利用に関し,とりわけ知的所有権法典によって著
作者に付与される財産権を含む全ての権利の行使及び管理,同様に使用料又は上記
権利の行使に由来する一切の補償金,及びより一般的に上記作品の第三者による合
法又は違法な利用の事実によって生じる全ての種類の全ての使用料等の徴収及び分
配
4)全ての第三者に対して会員の権利を擁護すること
6)そして,一般的な方法による,会員及びさらに一般的に国内外の著作者の物
質的及び人格的利益の擁護
協会は会員個人の権利及び会員一般の利益及び権利の擁護を保障するために裁判
所に出廷する資格を有する。
同様に協会は著作者及び権利承継者の保護及び擁護に特に関係する一般的利益に
関するあらゆる法的手続を推進する資格を有する。
33条
協会の各会員は,定款に従って入会した事実をもって,各会員が協会に「apport」
した権利の擁護を保障するために,協会が会員に代わって裁判所に出廷することを
承認する。
54条
一般規約は定款を補完する。
⑤ 入会届(甲306の1参照)
管理される権利
私は,ADAGPの定款及び一般規約に同意して,それに従うことを誓約し,定
款第2条に従って,定款に規定された諸条件に基づく撤回がなされた場合を除き,
全ての国において貴協会の存続期間中,生じ得る期間延長を含めて,定款第4条及
び一般規約第14条の対象となる作品にかかる下記の諸権利の実施及び管理を確実
に行うために,「apport」し,ADAGPに委託します。
団体権
1)有線又は衛星による複製及び公の放送を許諾し又は禁止する権利の管理
2)私的複製補償金の管理
3)複写補償金の管理
4)図書館における貸与補償金の管理
5)その他知的財産権法典によって基礎付けられた義務的団体管理又は法定許諾
の一環としての報酬にかかる全ての著作権の管理
⑥ フランス民法 第3編:所有権を得る様々な方法 第9章:会社 第
1節:一般規定(乙367)
1843条の2第1項
資本金における各社員の権利は,会社設立の際又は会社存続中,それらの出資
(apports)に比例する。
イ 検討
フランス法辞典(乙47)では,
「apport」の用語について,出資という意味が掲
載されており,フランス民法典(乙367)にも,会社関係で出資の意味で使用さ
れる例がある。一方,フランス知的財産法典(乙48の2)では,譲渡を意味する
用語として,「apport」ではなく「cèdent」が使われている。他方,フランス法辞典
(乙47)には「apport」の意味として,組合・会社の出資のほかに,夫婦の持ち
寄り財産の例が記載されているところ,これは,婚姻生活のためになされる夫婦の
持ち寄り財産の場合は,夫婦間における内部的な問題と第三者との関係である対外
的な問題という二場面が想定されていると考えることができる。以上のことを考慮
すると,本件における「apport」については,団体への出資という形態をとってお
り,対外的には団体へ財産が移転するが,団体と加入者の間では内部的に条件や留
保が付されている前提の文言として使用されていると解するのが相当である。
また,著作権管理団体SACEMでも同様に「apport」の用語が使用されている
ところ(甲299),これに関し,フレデリック・ポロー・ジュリアン著の私法大全
(甲315)には,
「著作者,著作隣接権者及びその権利承継者は,定款の定める条
件に従って使用料徴収分配協会に加入することにより協会の社員となる。この入会
は,処分行為ではなく,管理行為とみなされる。それは次の2つの異なった行為の
組合せであり,そのひとつは,資本の持ち分(又は入会の権利)を出資すること,
もうひとつは管理委託する知的財産権を譲渡(cession)することである(委任(mandat)
の場合は例外である)。まず,入会者は資本の持ち分を出資する。この資本は,協会
ごとに固定額でも可変額でもよい(例えば,SACEM及びSACDは可変資本で
ある。。
) 資本への出資は,その額をみれば,実際にはほとんど名目的なものである。
他方,留意すべきは,それが入会者に割り当てられる資本の持ち分に影響を与える
ものではないため民法典1843条の2が定める「出資」と同一視できないにもか
かわらず,あいにく「移転(apport)」と名付けられた行為によって,彼らは,その
知的財産権の管理を協会に委託することになる。」と記載される。この記載は,
「apport」の解釈として,対外的には団体への権利移転を認める趣旨と解すること
ができるところ,原告協会は,SACEMの定款1条と同様の定めを,定款2条に
置き(甲324),同様の形態で業務を行っているから,同様の意義と解するのが相
当である。
以上のとおり,
「apport」により,原告協会へ著作権が「移転」するというべきで
ある。
ウ フランス破毀院判決について
(ア) 被告は,フランス破毀院判決(乙40,368)を引用して,美術家
が集中管理団体に対する出資(apport)によって原告協会に加盟し著作権の管理を
委託したとしても,その死後において,原告協会は,当然に死亡した著作権者の相
続財産となった損害賠償請求権を行使できるものではない旨主張する。
同判決は,実演家の権利管理団体が,原告として,フランス国内において,団体
の加入者である実演家(歌手)の出演したテレビ番組等を無許可で抜粋して作成し
たビデオグラムに関し,そのビデオグラムの共同製作者とその承継人に対し,損害
賠償を求めた事案において,同権利管理団体が,加入者である実演家死亡後に承継
人に著作料を支払い続ける旨を定めた定款及び一般規約の定めを理由として,死亡
した5名の実演家の権利に基づき,実演家名義でその承継人からの依頼なしに,当
該実演家の実演を無許諾で利用した者に対して提起した損害賠償請求について,当
該団体に訴訟追行権がないと判断したものである。この判断は,同権利管理団体が,
実演家による権利管理団体との契約は,実演家死後も相続人である承継人らを拘束
するから,実演家の死亡後も,当該団体に損害賠償請求に関する訴訟追行権がある
と主張したことに対して,説示されたものである。
したがって,この判断は,フランス国内における損害賠償請求に関する訴訟追行
権限の有無という訴訟法上の資格を問題としたものと解され,美術家が死亡した場
合における当該美術家の作品の著作権侵害に基づく損害賠償請求を行使する前提と
なる著作権の権利移転に関して,何らかの一般的な規範を提示したものとはいえな
い。
そうすると,原告協会は,1985年7月3日の著作権並びに実演家,レコード
製作者及び放送事業者の権利に関する法律38条2項ないし知的所有権法典に関す
る1992年7月1日の法律321の1条に定めた出廷資格者として訴訟を提起し
ているわけではないから,少なくとも,上記破毀院判決とは事案を異にし,同判決
を根拠に,著作者の死亡後に,著作権の管理団体である原告協会が,著作権者の相
続財産である損害賠償請求権を行使することが妨げられるものではない。
(イ) なお,原告協会は,上記フランス破毀院判決を根拠とする美術家死亡
の場合に権利承継を否定する被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下
されるべきと主張するが,控訴審の続審という位置付け,及び,控訴審で原告らの
当事者適格及び準拠法について何回も弁論準備手続期日で審理が行われ,その過程
で原告協会自身が請求を拡張したというような事情に照らせば,控訴審の初期の段
階で主張された被告による当該主張は,時機に後れたものとは認められない。
(3) 権利移転の立証について
ア 代表者の宣誓供述書の信用性
原告協会が著作権を各美術家から譲り受けた事実は,原告協会の不法行為に基づ
く損害賠償請求を基礎付ける被侵害利益に関する事実であるから,原告協会が主張
立証責任を負うべきものである。この点に関して,原告協会は,代表者の宣誓供述
書(甲305)や法務責任者のCUの「取扱作家権利帰属証明書」
(甲314)を証
拠として提出するところ,当該証拠では,入会手続が適正になされていたことが供
述されるが,具体的な裏付けが不十分で,直ちに信用性を肯定できるものではない。
なお,フランス知的財産法典331条の2は,上記証明書に一定の法定証明力を認
めているが(甲316,318),我が国においては,他の書証と並ぶ書証の1つと
して通常の証明力を有するものと解される。
そこで,被告が,相続関係等について具体的に疑義を主張する美術家のうち,原
告協会が相続関係について具体的に反論する一部の美術家について,その主張及び
証拠関係を検討すると,下記イのとおり,その相続関係及び入会手続に問題はない
と認められ,原告協会に著作権(少なくとも複製権)が移転されるに足りる適正な
手続が取られたといえる。そうすると,代表者の前記宣誓供述書等は,一定の具体
的な裏付けを有するものとして信用性が認められ,原告協会が具体的な入会届や相
続関係について証拠を提出していない美術家についても,同様のことが推認できる。
したがって,原告協会が権利侵害を主張している会員作品については,同協会に権
利移転が認められるものというべきである。
イ 個別の会員について
(ア) 被告が,個別に権利移転について理由を挙げて反論する美術家につい
て,検討する。
(イ) BRAQUE Georges(27番)
被告は,ジョルジュ・ブラックの著作権の原告協会への移転に疑義を生じさせる
証拠として,追及権に関する争いがあったと記載された乙41号証を提出する。
当該書証は,ジョルジュ・ブラックの作品についての追及権(ベルヌ条約14条
の3に規定する,美術の著作物の原作品等について著作者が転売ごとに売買の利益
の配分を受けることができる権利)に関する文献であるところ,同文献の記載によ
れば,ブラックの作品に関して追及権に争いが起きたのは,追及権の帰属する主体
に関して法改正があったことを理由とするものであり,相続人が他に存在すること
を理由とするものではないから,同書証の記載内容は,原告協会における具体的な
入会手続に疑義を生じさせるものではない。
原告協会が会員の権利関係をまとめた甲12号証を見ても,元々,原告協会は追
及権を譲り受けていないことを自認するところである。
(ウ) ARMAN (Armand FERNANDEZ, dit)(9番)
被告は,原告協会への入会手続に対する疑義として,アルマンの2番目の妻との
結婚から生まれた子であるBとC,もう1人のBRについては,入会届が提出され
ておらず,入会届が提出されたEが,いかなる関係にある人物か,不明であると主
張する。
これに対し,原告協会は,アルマンの2番目の妻との結婚から生まれた子である
BとC,BRについて入会届が提出されていないのは,母親のD(甲28の1)が
承継したためであると説明する。そして,Eは,アルマンとFの子であるGの子で
あると説明する(甲313)。
そして,アルマンの入会手続の関係で,原告協会が保有する2005年12月1
3日付け公知証書(資料1)において,アルマンの相続人として,①BO,②BN,
③BQ,④E,⑤Dが記載されていることは,当事者間に争いがない。また,①,
②はアルマンの子であること,③はアルマンの6番目の子であること,④はアルマ
ンの孫娘であり唯一の子としてGを代襲相続したこと,⑤はアルマンの2番目の妻
であり生存配偶者と記載されていることについても争いがない。さらに,D夫人が
「上記配偶者(アルマン)との間で定めた贈与に関する規定及びその他の規定の受
益者であり,フランス法の規定の名において法律上適法な受益者である」との記載
があることについても,当事者間に争いがない。
したがって,アルマン作品の権利承継者は,D,E,BO,BN及びGの5名で
あるという原告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認められ
る。
(エ) COCTEAU Jean(41番)
被告は,コクトーにつき,
「BVは,コクトー作品の共同相続人と記載されている
ので,他の共同相続人が存在するはずである」と主張する。
これに対し,原告協会は,コクトーの著作権は,当初,コクトーの養子であるK
に相続され,Kに相続されたコクトーの著作権は,1995年5月15日,同人の
死亡により,妻L,子であるM及びNの3名に相続されたが,1997年10月9
日,Lは死去し,その持分はM及びN(甲17の8)に相続され,2001年10
月2日にはMも死亡し,その持分がNに相続されたため,現在はNがコクトー著作
権に関する唯一の著作権者であると説明する(甲313)。
そして,コクトーの入会手続の関係で,原告協会が保有する公知証書に関し,①
ジャン・コクトーの死亡後に作成された1964年1月16日付け公知証書(資料
2の1)に,
「ジャン・コクトー氏が,メッツ(モーゼル県)において作成した19
62年9月22日付け自筆証書遺言でその包括受遺者を指定したことは明白である」
との記載があり,その包括受遺者としてBWの名が記載されていること,②BWの
死亡後に作成された1995年7月18日付け公知証書(資料2の2)に,BWの
死亡により,同人の財産は,妻であるL夫人,M,Nの3名に承継されたとの記載
があること,また,MとNがBWとL夫人の子であること,③Lの死亡後に作成さ
れた1998年1月23日付け公知証書(資料2の3)に,L夫人の死後,その財
産がMとNに承継されたとの記載があること,④Mの死亡後に作成された2001
年10月8日付け公知証書(資料2の4)に,Mの死亡により,その兄弟であるN
に承継されたとの記載があることは,当事者間に争いがない。
したがって,現在はNがコクトー著作権に関する唯一の著作権者であるという原
告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認められる。
(オ) COUTY Jean(47番)
被告は,クティにつき,
「クティの相続人としては,妻のPの他,息子のOが存在
するはずであるが,同人から入会届が提出されていない」と主張する。
これに対し,原告協会は,クティの著作権を含む全財産は同人の妻であるPが承
継し,息子のOはクティの著作権承継者ではないと説明する(甲313)。
そして,クティの入会手続の関係で,原告協会が保有する1991年10月28
日付け公知証書に,クティの遺産に関し,配偶者へ全て贈与される旨が記載され,
妻であるP夫人がその遺贈を受けたことは,当事者間に争いがない。
したがって,原告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認め
られる。
(カ) DERAIN André(51番)
被告は,ドランにつき,入会届を提出したT(甲17の2)はドランの姪である
が,ドランに妻子など他の相続人が存在しないのか不明であるし,ドランの鑑定委
員会に所属する者が相続人ないし受遺者でないのかも不明であると主張する。
これに対し,原告協会は,①ドランの著作権は,当初,妻のQとドランの養子で
あるRに相続され,Qが死去したことにより,Rはドランの全ての権利を相続した,
②Rは,1991年8月14日に死去し,同人が有していたドランの著作権は,同
人の実母であるS及び同人の従姉妹であるT(Qの姉妹の娘)に均等に承継された,
③Sは2001年1月29日に死亡し,同人の有する著作権持分は同人の遺言に基
づきTに承継された。これによりTはドランの著作権に関する唯一の著作権者とな
った,④Tは2013年2月24日に死去したため,原告協会は,現在,Tからド
ランの著作権を相続した彼女の2人の子供,U及びVのためにドランの著作権を管
理していると説明する(甲313)。
そして,ドランの入会手続の関係で原告が保有する資料に関し,①ドランの死亡
後に作成された1969年6月6日付け公知証書(資料4の1。公知証書との記載
がないとしても公証人が発した書簡であることは争いなく,公知証書と認められる。)
に,ドランは,その生存配偶者であるQ及びRを遺産の受領者として死亡したとの
記載があること,②Q夫人の死亡後に作成された1978年10月3日付け財産目
録(資料4の2)に,Q夫人の死亡により,唯一の相続人のRが権利を承継したと
の記載があること,③Rの死亡後に作成された1992年1月21日付け公知証書
(資料4の3)に,Rが死亡し,S夫人とTが,相続人であるとの記載があること,
④S夫人とT夫人との間の契約書(資料4の4)に,S夫人の有する著作権持分2
分の1は,T夫人に譲渡され,S夫人の死亡により,権利はT夫人又はその相続人
若しくは権利承継人に帰属するとの記載があること,S夫人が2001年1月29
日に死亡したことは,当事者間に争いがない。
したがって,原告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認め
られる。
(キ) KISLING(95番)
被告は,キスリングには,CHとAZの2人の息子が存在するが,入会届は,C
H,AW,AYの 3 名から提出されていると主張する。
これに対し,原告協会は,AW(甲18の8)及びAY(甲18の9)は,いず
れも2007年6月26日に死亡したAZの息子(キスリングの孫)であり,AZ
からキスリング著作権の持分を相続した著作権者であると説明する(甲313)。
そして,キスリングの入会手続の関係で原告協会が保有する資料に関し,①キス
リングの死亡後に作成された1954年6月21日付け公知証書(資料5の1。公
知証書との記載がないとしても公証人が発した書簡であることは争いなく,公知証
書と認められる。 に,
) キスリングの遺産がCHとAZに相続されたとの記載がある
こと,②資料5の1で相続財産の用益権の受遺者として記載されているCI夫人の
死亡後に作成された1961年5月30日付け公知証書(資料5の2)に,上記C
I夫人の死亡により,遺産が子であるCH及びAZに承継されたとの記載があるこ
と,③AZの死亡後に作成された2007年10月8日付け公知証書(資料5の3)
に,AZ死亡により,その遺産が,AYとAWに承継されたとの記載があることは,
当事者間に争いがない。
したがって,原告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認め
られる。
(ク) MASSON André(120番)
被告は,マッソンには,少なくとも,CJ,BAという息子と娘のCKが存在す
るが,入会届が提出されているのは,CJ,CK及びBBであり,BAの入会届は
提出されていないと主張する。
これに対し,原告協会は,BBはBAの妻であり,彼の唯一の相続人であると説
明する(甲313)。
そして,マッソンの入会手続の関係で原告協会が保有するマッソンの死亡後に作
成された1987年12月18日付け公知証書(資料6の1)に,マッソンの相続
人として,同人の最初の妻との子であるCL夫人,2番目の妻との間の子であるC
JとBAの3名が均等の割合で相続したとの記載があること,BAの死亡後に作成
された2006年1月31日付け公知証書(資料6の2)に,BAの死亡により,
配偶者であるCM夫人が相続財産の用益権を選択した旨の記載があることは,当事
者間に争いがない。また,CKがCLの通名であることについても,認めることが
できる。さらに,CM夫人(旧姓BBである。)の入会届が2005年12月12日
に提出されたことからすると(甲18の7),それ以前からCM夫人の被相続人(B
A)の入会届が提出されていたと推認されるのであって,CJとCKに関する入会
届しか提出されていない(甲17の4,17の5)ことにより,手続に疑義を生じ
させるものではない。
したがって,原告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認め
られる。
(ケ) MATTA(121番)
被告は,マッタには,BC,BD,BHという息子が存在するが,BCとBDの
入会届は提出されていないと主張する。
これに対し,原告協会は,BCは1978年に,BDは1976年に,いずれも
マッタが2002年11月23日に死亡する前に死亡しているため,マッタの相続
人にはならないと説明する(甲313)。
そして,マッタの入会手続の関係で原告協会が保有するマッタの死亡後に作成さ
れた2007年4月26日付け公知証書(資料7)に,マッタの相続人として,C
N夫人,BI,CO,CP,CQが記載されていることは,当事者間に争いがない。
したがって,原告協会の説明は合理的なものであり,一定の裏付けがあると認め
られる。
(コ) FRIEDLAENDER Johnny(70番)
被告は,入会届(甲68)に記載されたCRは,著作者人格者の受遺者であり,
複製権はないと主張する。
しかしながら,CRは,その入会届の資格(Qualité)欄に記載されているとおり,
FRIEDLAENDER の遺産の包括受遺者(Legataire Universel)であり,FRIEDLAENDER
作品の複製権を承継している。氏名欄の追加的記載は「Legataire avec droit moral de
Johnny FRIEDLAENDER」
(Johnny FRIEDLAENDER の人格権の遺贈をも受けた受遺者)
というものであって,同人が作家から財産権の包括遺贈を受けるだけでなく,人格
権の遺贈(フランス知的所有権法典121条の1第5項)も受けた者である旨が記
載されているにすぎない。
(サ) 小括
以上によれば,原告協会の入会手続において,被告が相続関係で具体的な根拠を
示して疑義を主張した会員のうち7名については,裏付けをもってその入会手続が
正当に行われていたことが明らかにされており,他の疑義を主張する会員に関する
説明についても,合理的なものと推認することができる。また,これらの会員から
原告協会に移転した権利内容についても,原告協会の説明は,合理的なものと認め
られる。
被告は,別紙2-3の被告主張一覧表のとおり,本件訴訟において,本件カタロ
グの配布時期より後れた日付けの加入日の入会届しか提出されていない会員がいる
等を指摘する。しかしながら,相続人,受遺者や権利承継者により入会届が提出さ
れたことが,美術家本人が死亡又は権利移転する以前に原告協会に入会していたこ
とを否定するものではない。本件カタログの配布時期以前から,多数の相続人が入
会届を提出しており(例えば,上記一覧表17番のハンス・ベルメールに関しては,
相続人であるCVの入会届が提出されている〔甲15の2〕 ,120番のマッソン
)
のように,相続人が死亡したために,更にその相続人から二段階で入会届が出てい
るものもある〔甲17の4,17の5,18の7〕 これらの事情から,
。 原告協会は,
相続が発生する都度,入会届の提出を求めていたことがうかがわれる。しかも,本
件訴訟で書証として提出された入会届が,それぞれの会員に関する全ての書類であ
ると原告協会が主張するわけではないから,他に原告協会に提出された書類が存在
することも想定される。
ウ まとめ
以上のことからすると,原告代表者の宣誓供述書(甲305)や法務責任者のC
Uの「取扱作家権利帰属証明書」
(甲314)は,裏付けを伴うものとして,一定の
信用性があるものと認められる。そして,これらの書証によれば,原告協会が著作
権の侵害を主張する会員について,適正に入会手続が行われたと認めることができ
る。
ただし,上記のとおり,原告協会における入会手続が適正に処理されているとし
ても,同一美術家から,権利移転や相続等の特別な事情もなく,入会届が二回提出
されることは一般的ではないと考えられるから,美術家本人から入会届が提出され
る以前は,原告協会に権利移転は行われていないものと認められる。そうすると,
原告協会に対し入会届が提出されている前に発行された本件カタログに関しては,
損害賠償請求を認めるのは相当ではない。したがって,3番のアイズピリの入会届
提出日である2003年6月19日(甲23)より前の,13番のギーの入会届提
出日である2004年4月28日(甲31)より前の,84番のユルバンの入会届
提出日である2005年12月21日(甲78)より前のカタログに係る請求,す
なわち,3番のアイズピリの2002年発行の本件カタログ122号及び本件カタ
ログ130号に係る請求部分,13番のギーの2003年発行の本件カタログ14
8号に係る請求部分,及び,84番のユルバンの2004年発行の本件カタログ1
58号に係る請求部分は理由がない。
(4) 移転した権利の内容について
ア 157番のモーリス・ユトリロについては,原告協会は著作権の共有持
分(50%)の移転を受けている(甲297,乙9)。
イ また,42番のジェームス・コワニャールについて,甲306号証の1
ないし4によれば,2009年12月15日,原告協会が管理委託を受けていた著
作権から複製権が除外されたため,2011年11月13日付けADAGP会員リ
スト(甲12)に記載されているコワニャール作品の管理委託範囲は,「RG」(複
写補償金),
「RL」
(貸与補償金),
「BT」
(私的複製補償金)及び「RR」
(追及権)
のみとされている。したがって,2009年12月までの間の損害賠償請求につい
て,原告協会に請求権が認められる(本件では,2005年までに発行された本件
カタログについて,複製権侵害の損害賠償請求がされている。。
)
3 被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額(争点3)
本件は,著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求であるから,被
侵害利益に関連した著作権の移転に関する準拠法とは別に,不法行為の成否につい
て準拠法が問題となる。この点,不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は,
通則法17条により準拠法が定められるところ,
「加害行為の結果が発生した地」は
我が国であるから,我が国の法令(民法,著作権法)が適用されるというべきであ
る(通則法施行(平成19年1月1日)前は法例11条1項により「其原因タル事
実ノ発生シタル地」の法が準拠法とされるところ,その地が我が国であることに変
わりはない。。これを前提として,検討を進める。
)
(1) 被告の複製権侵害の態様
被告が,本件カタログにおいて,会員作品及びピカソ作品を複製して掲載した事
実自体に,争いはない。また,美術作品のオークションを行う被告において,複製
権侵害についての故意又は過失は明らかである。したがって,被告による本件カタ
ログへの上記掲載は,不法行為と認められる。
被告が,複製の態様として,原告の主張する大きさや色との違いを主張する部分
は,複製権侵害の程度,ひいては損害額に影響を与えるものであるが,違法性の有
無自体には影響しない。
そして,著作権者が,著作権行使について受け取るべき使用料を算定にするに当
たっては,著作権の利用状況,すなわち,利用の形態が複製であるか,複製した美
術作品の大きさや色はどのようなものかによって,適正対価を決するのが,一般的
な手法と解されるところ,本件において,前記不法行為発生時に通常の使用料の算
定に用いられていたのはSPDAの使用料規程であり,同規程は合理的なものと認
められるから,これを損害額算定の基準とするのが相当である。
この点,原告らは,平成24年1月に設立されたJASPARの使用料規程を基
準とすべきであり,従前の低額なSPDAの使用料規程により損害を算定すること
は侵害得を認めるものであるから,相当ではないと主張する。
しかしながら,後記(6)アのとおり,JASPARの使用料規程に基づいて使用料
相当損害金を算定することは不適当であり,原告らの主張は採用できない。そして,
SPDAの使用料規程は,色やサイズによって異なる使用料を定めているから,損
害額の算定の前提となる複製の態様についても,同規程に定められた基準に基づい
て認定するのが相当である。
(2) 色
SPDAが平成15年1月6日に作成した使用料規程(甲9)では,使用態様が
白黒かカラーかによって使用料が区別されているから,損害金算定の前提となる複
製の色についても,白黒かカラーかによって区別すべきと解される。
この点,被告は,損害額算定の前提となる複製の色について,
「モノクロ」
(単色)
かカラーかによって区別すべきであると主張し,その根拠として,DNPアートが
適用するSPDAの使用料規程は,モノクロ(単色)かカラーかによって区別して
いること(乙15)を挙げる。しかしながら,モノクロの字義的な意味としては,
「単色」と「白黒」の両方があるところ,DNPアートは,著作権使用料はSPD
Aと同じであるとしており,同社の基準はSPDAの基準を転載したものとされ,
当初定めたSPDAの基準を変更したことをうかがわせる事情もないから,SPD
Aの使用料規程に示された「モノクロ」は,
「白黒」の意味と解すべきである。よっ
て,被告の主張は採用できない。
そうすると,単色であってもカラーで再製されている写真は,
「カラー」と認定す
る。また,SPDAの使用料規程は,作品が白黒印刷の方法で複製される場合と,
同じ作品がカラー印刷の方法で複製される場合とを区別して,前者の使用料を低額
に定めているものと認められるから,本訴においても,原作品が白黒のみで構成さ
れている(カンバス又は台紙に色が付されているものを含む。)としても,カラー写
真として撮影されて再製されていることが明かものは,「カラー」と認定する。
なお,被告が別紙2-2原告協会主張に対する認否表及び別紙3-2原告X1主
張に対する認否表において,bw(白黒)写真であるとの主張については,その趣旨
が,カラーの単色写真であるが白黒写真として取り扱われるべきとするもの,及び,
本来的に白黒写真であるとするものの両方を含むと解されるが,以下では,両者を
まとめて bw(白黒)写真との主張として掲記して,検討する。
(3) サイズ
美術の著作物を書籍に複製する場合,通常は作品を撮影した写真を使用する。そ
の場合,背景や額縁の大きさ等は,写真の撮影態様によって様々であるし,また,
額縁の種類によっては,作品の周辺をわずかながら隠す態様となることも想定され
るから,使用料算定の基準として著作物のサイズ自体の大きさを問題とすることに
なれば,その確認作業は非常に手間がかかるものとなる。したがって,SPDAの
使用料規程では,容易に確認できる画一的な基準として,写真の大きさが基準とさ
れていると解するのが相当である。すなわち,著作物自体のサイズではなく,写真
の余白部分や撮影された背景,額縁を含めた写真のサイズとして判断するのが相当
であり,本訴でも同様の基準でサイズを認定する。
この点,被告は,SPDAの使用料規程は,著作物ではなく「著作物を複製した
写真の大きさ」を基準とするか否かは明確でないとし,使用料は著作物の使用に対
する料金であるから,著作物とは無関係な写真の余白部分や額縁を含めたサイズで
はなく,あくまで著作物を基準としたサイズとすべきであると主張するが,上記判
示に照らして採用できない。
なお,後記(4)ウのとおり,127番の荻須高徳の本件カタログ318号の作品に
ついての著作権侵害の有無を判断するに当たっては,著作権法施行規則4条の2第
1項1号の「著作物の表示の大きさ」の解釈として著作物自体の大きさを検討する
のが相当であるが,この著作権侵害の有無の問題と,SPDAの使用料規程に基づ
く使用料相当損害金の算定の基礎となる写真のサイズの問題とは,法的観点を異に
するから,各別の判断基準により判断されるべきものである。
(4) 会員作品について
ア 被告が,モノクロである,あるいは,美的再製がない等と主張している
ものについて,裁判所の認定は,以下のとおりである。
ロット番号 被告の主張 証拠 裁判所の認定
4 AIZPIRI Paul
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
808 モノクロ 乙 133 白黒
9 ARMAN (Armand FERNANDEZ, dit)
2002 136 Oct 26 2002 Osaka
12 モノクロ 乙 134 カラー
11 AVATI Mario
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
412 モノクロ(カタログにモノクロ 乙 135 白黒
と記載)
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
697 モノクロ 乙 136 白黒
698 モノクロ 乙 136 白黒
2004 174 Dec 11 2004 Tokyo
16 モノクロ 乙 137 白黒
2005 178 Feb 2005 Tokyo
695 モノクロ 乙 138 白黒
2005 179 Mar 2005 Tokyo
18 モノクロ 乙 139 白黒
2005 185 Jul 2 2005 Tokyo
27 モノクロ 乙 140 白黒
28 モノクロ 乙 140 白黒
2006 194 Jan 14 2006 Tokyo
870 モノクロ 乙 141 白黒
2006 204 Jul 21&22 2006
631 モノクロ 乙 142 白黒
12 BALTHUS (Balthus KLOSSOWSKI DE ROLA, dit)
271, April 18, 2009 Tokyo
257 モノクロ 甲 151 カラー
257 モノクロ 甲 151 カラー
17 BELLMER Hans
2002 136 Oct 2002 Osaka
15 モノクロ 乙 143 白黒
2003 141 Feb 1 2003 Tokyo
13 モノクロ 乙 144 白黒
2005 185 Jul 2 2005 Tokyo
31 モノクロ 乙 145 白黒
2006 204 Jul 21&22 2006
384 モノクロ 乙 146 カラー
164, May 22, 2004 Tokyo
18 モノクロ 甲 152 カラー
246, May 9 & 10, 2008 Tokyo
993 モノクロ 甲 153 カラー
258, October 31 & November 1, 2008 Tokyo
1045 モノクロ 甲 154 白黒
261, December 12 & 13, 2008 Tokyo
1209 モノクロ 甲 155 の 1 白黒
1210 モノクロ 甲 155 の 1 カラー
1213 モノクロ 甲 155 の 1 カラー
1214 モノクロ 甲 155 の 2 白黒
273, May 9, 2009 Tokyo
1015 モノクロ 甲 156 カラー
1017 モノクロ 甲 156 カラー
275, June 6, 2009 Tokyo
1086 モノクロ 甲 157 カラー
281, September 4 & 5, 2009 Tokyo
1318 モノクロ 甲 158 カラー
1319 モノクロ 甲 158 カラー
289, December 2 & 3, 2009 Tokyo
962 モノクロ 甲 159 カラー
963 モノクロ 甲 159 カラー
24 BONNARD Pierre
2006 194 Jan 14 2006 Tokyo
931 モノクロ 乙 147 カラー
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2364 モノクロ 乙 148 白黒
26 BOURRIÉ André
217, Mar. 17, 2007 Tokyo
952 2点のうち1点は別の作家 甲 160,乙 370 1 点のみ。
27 BRAQUE Georges
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
417 モノクロ 乙 149 白黒
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
28 モノクロ 乙 150 白黒
2005 178 Feb 26 2005 Tokyo
720 モノクロ 乙 151 白黒
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
558 モノクロ 乙 152 白黒
2006 194 Jan 14 2005 Tokyo
937 モノクロ 乙 153 白黒
2006 204 Jul 21&22 2006
524 モノクロ 乙 154 白黒
28 BRASILIER André
183, May 28, 2005 Tokyo
44 10 点はカラー。 点はモノクロ 甲 162
1 11 点ともカラー
215, Feb. 9 & 10, 2007 Tokyo
876 10 点はカラー。 点はモノクロ 甲 165
1 11 点ともカラー
30 BROWN James
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2827 モノクロ 乙 155 カラー
33 CARZOU Jean
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
815 モノクロ 乙 156 白黒
40 CLAVÉ Antoni
2003 153 Oct 4 2003 Tokyo
632 モノクロ 乙 157 白黒
258, October 31 & November 1, 2008 Tokyo
1041 モノクロ 甲 166 カラー
1042 モノクロ 甲 166 カラー
273, May 9, 2009 Tokyo
1045 モノクロ 甲 167 カラー
41 COCTEAU Jean
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
111 モノクロ 乙 158 白黒
114 モノクロ 乙 158 白黒
298 挿画本を撮影。再製なし 乙 159,甲 335 再製あり
2003 147 May 31 2003 Tokyo
496 モノクロ 乙 160 白黒
672 挿画本を撮影。コクトー作品に 乙 161,甲 336 再製あり
ついて再製なし
2003 157 Dec 6 2003 Tokyo
732 モノクロ 乙 162 白黒
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
777 モノクロ 乙 163 白黒
2004 171 Oct 23 2004 Tokyo
723 モノクロ 乙 164 カラー
51 DERAIN André
2002 132 Jul 27 2002 Osaka
554 モノクロ 乙 165 白黒
2003 150 Jul 26 2003 Tokyo
654 モノクロ 乙 166 白黒
56 DUBUFFET Jean
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
515 モノクロ 乙 167 白黒
2003 140 Jan 18 2003 Tokyo
586 モノクロ 乙 168 白黒
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
132 モノクロ 乙 169 白黒
2003 150 Jul 26 2003 Tokyo
657 モノクロ 乙 170 白黒
658 モノクロ 乙 170 白黒
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
801 モノクロ 乙 171 白黒
2004 167 Jul 31 2004 Tokyo
131 モノクロ 乙 172 白黒
2004 174 Dec 11 2004 Tokyo
130 モノクロ 乙 173 カラー
2005 178 Feb 26 2005 Tokyo
820 モノクロ 乙 174 白黒
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
437 モノクロ 乙 175 白黒
57 DUCHAMP Marcel
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
931 モノクロ 乙 176 白黒
59 DUFY Raoul
2002 132 Jul 27 2002 Tokyo
560 モノクロ 乙 177 白黒
2002 134 Sep 14 2002 Tokyo
129 モノクロ 乙 178 白黒
2002 139 Dec 7 2002 Tokyo
113 モノクロ 乙 179 白黒
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
809 モノクロ 乙 180 白黒
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
48 モノクロ 乙 181 白黒
891 モノクロ 乙 182 白黒
263 Jan 10, 2008 Tokyo
814 モノクロ 甲 168 カラー
60 ERNST Max
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
873 挿画本を撮影。再製なし 乙 183,甲 337 再製あり
点数は挿画本以外のモノクロ カラー,白黒
1点 各1点
65 FAUTRIER Jean
2003 141 Feb 1 2003 Tokyo
57 モノクロ 乙 184 白黒
58 モノクロ 乙 184 白黒
186 Aug 6, 2005 Tokyo
229 モノクロ 甲 169 カラー
66 FINI Leonor
2002 132 Jul 27 2002 Tokyo
566 モノクロ 乙 185 カラー
2003 148 Jun 21 2003 Tokyo
531 モノクロ1点・カラー1点 乙 186 白黒,カラー
各 1 点。
231 I Oct 12, 2007 Tokyo
77 モノクロ 甲 170 カラー
248 June 13 & 14 2008 Tokyo
1029 モノクロ 甲 171 カラー
69 FOUJITA
2002 127 Apr 20 2002 Tokyo
22 モノクロ 乙 187 白黒
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
29 挿画本を撮影。再製なし 乙 188,甲 338 再製あり
30 モノクロ 乙 188,甲 338 白黒
33 モノクロ 乙 188,甲 338 白黒
2002 134 Sep 14 2002 Tokyo
13 絵画ではなく文章。著作物性の 乙 189,甲 339 再製あり
再製なし
14 挿画本を撮影。再製なし 乙 189,甲 339 再製あり
50 モノクロ 乙 190 白黒
2002 136 Oct 2002 Osaka
241 モノクロ 乙 191 白黒
243 モノクロ 乙 191 カラー
244 モノクロ 乙 191 白黒
245 モノクロ 乙 192 白黒
2002 139 Dec 7 2002 Tokyo
201 モノクロ 乙 193 白黒
202 モノクロ 乙 193 カラー
2003 140 Jan 18 2003 Tokyo
34 モノクロ 乙 194 白黒
35 モノクロ 乙 195 カラー
37 モノクロ 乙 195 カラー
38 モノクロ 乙 195 カラー
39 モノクロ 乙 195 カラー
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
357 モノクロ 乙 196 白黒
358 モノクロ 乙 196 白黒
359 モノクロ 乙 196 白黒
360 モノクロ 乙 196 白黒
2003 147 May 31 2003 Tokyo
30 モノクロ 乙 197 カラー
33 モノクロ 乙 197 カラー
35 モノクロ 乙 198 カラー
36 モノクロ 乙 198 白黒
2003 148 Jun 21 2003 Tokyo
30 モノクロ 乙 199 カラー
32 モノクロ 乙 199 カラー
33 モノクロ 乙 199 カラー
34 モノクロ 乙 199 カラー
2003 150 Jul 26 2003 Tokyo
31 モノクロ 乙 200 白黒
32 モノクロ 乙 200 白黒
35 モノクロ 乙 201 カラー
42 モノクロ 乙 202 白黒
2003 152 Sep 13 2003 Tokyo
16 モノクロ 乙 203 カラー
18 モノクロ 乙 203 白黒
2003 153 Oct 4 2003 Tokyo
34 モノクロ 乙 204 カラー
35 モノクロ 乙 205 カラー
37 モノクロ 乙 205 カラー
40 モノクロ 乙 205 カラー
42 モノクロ 乙 206 カラー
45 モノクロ 乙 206 カラー
2003 157 Dec 6 2003 Tokyo
36 モノクロ 乙 207 白黒
38 モノクロ 乙 207 白黒
2004 158 Jan 17 2004 Tokyo
426 モノクロ 乙 208 白黒
427 モノクロ 乙 208 白黒
430 モノクロ 乙 209 カラー
431 モノクロ 乙 209 白黒
433 モノクロ 乙 209 白黒
434 モノクロ 乙 210 カラー
437 モノクロ 乙 210 白黒
438 モノクロ 乙 210 カラー
439 モノクロ 乙 211 カラー
2004 161 Mar 6 2004 Tokyo
329 モノクロ 乙 212 白黒
331 モノクロ 乙 213 白黒
2004 162 Apr 10 2004 Tokyo
25 モノクロ 乙 214 白黒
30 モノクロ 乙 215 カラー
33 モノクロ 乙 215 カラー
34 モノクロ 乙 215 白黒
35 モノクロ 乙 216 白黒
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
30 モノクロ 乙 217 白黒
32 モノクロ 乙 217 白黒
33 モノクロ 乙 217 白黒
35 モノクロ 乙 218,甲 340 白黒
36 左側の絵画カラー1点。右側の 乙 218,甲 340 再製あり
挿画本撮影は,再製なし カラー2点
39 モノクロ 乙 218,甲 340 カラー
40 モノクロ 乙 219 白黒
2004 167 Jul 31 2004 Tokyo
390 モノクロ 乙 220 白黒
391 モノクロ 乙 221 白黒
393 モノクロ 乙 221 白黒
398 モノクロ 乙 222 白黒
400 モノクロ 乙 222 カラー
402 モノクロ(カタログにモノクロ 乙 222 白黒
版と記載)
403 モノクロ 乙 223 白黒
404 モノクロ 乙 223 白黒
405 モノクロ 乙 223 カラー
2004 170 Sep 18 2004 Tokyo
51 モノクロ 乙 224 カラー
104 モノクロ 乙 225 カラー
2004 171 Oct 23 2004 Tokyo
29 モノクロ 乙 226 白黒
39 モノクロ 乙 227 カラー
2004 174 Dec 11 2004 Tokyo
389 モノクロ1点,カラー1点 乙 228 白黒,カラー
各1点
393 モノクロ(白黒) 乙 229 白黒
394 モノクロ(白黒) 乙 229 白黒
395 モノクロ(白黒) 乙 229 白黒
2005 175 Jan 2005 Tokyo
25 左側の絵画カラー1点。右側の 乙 230,甲 341 再製あり
挿画部分は,再製なし カラー2点
28 モノクロ 乙 230,甲 341 白黒
30 モノクロ 乙 231 白黒
34 モノクロ 乙 232 白黒
2005 178 Feb 26 2005 Tokyo
41 モノクロ 乙 233 白黒
42 モノクロ 乙 233 白黒
44 モノクロ 乙 234 カラー
45 モノクロ1点,カラー3点 乙 234 白黒1点
カラー3点
2005 179 Mar 26 2005 Tokyo
383 モノクロ 乙 235 白黒
2005 181 Apr 2005 Tokyo
294 モノクロ 乙 236 白黒
295 モノクロ 乙 236 白黒
297 モノクロ 乙 236 カラー
183 May 28 2005 Tokyo
387 モノクロ 甲 173 カラー
2005 185 Jul 2 2005 Tokyo
424 モノクロ 乙 237 白黒
426 モノクロ 乙 238 カラー
427 モノクロ 乙 238 カラー
428 モノクロ 乙 238 カラー
429 モノクロ 乙 239 カラー
430 モノクロ 乙 239 カラー
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
63 モノクロ 乙 240 白黒
807 モノクロ 乙 241 白黒
808 モノクロ 乙 241 カラー
809 モノクロ 乙 241 カラー
812 モノクロ 乙 242 白黒
813 モノクロ 乙 242 カラー
814 モノクロ 乙 242 カラー
815 モノクロ 乙 242 白黒
2006 194 Jan 14 2005 Tokyo
593 モノクロ 乙 243 白黒2点
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
130 モノクロ 乙 244 白黒
319 モノクロ 乙 245 白黒
2006 200 Apr 29 2006 Tokyo
16 モノクロ 乙 246 カラー
17 モノクロ 乙 247 カラー
55 モノクロ2点 甲 308,24 頁 カラー2点
57 モノクロ 甲 308,24 頁 カラー
372 モノクロ 甲 308,61 頁 白黒
373 モノクロ 甲 308,61 頁 白黒
374 モノクロ 甲 308,61 頁 白黒
375 モノクロ 甲 308,61 頁 白黒
376 モノクロ 甲 308,61 頁 白黒
2006 204 Jul 21&22 2006
44 モノクロ 乙 248 白黒
238 モノクロ 乙 249 白黒
871 モノクロ 乙 250 白黒
206 Sept 10 2006 Tokyo
43 1/8 はカラー21 点 甲 174 の 2 カラー25 点
2006 208 Ⅰ&ⅡOct 14 2006
443 表紙は再製ではない。カラー1 甲 309,104 頁 再製あり
点 カラー2点
447 モノクロ(コピーの加減で黄色 甲 309,105 頁 カラー
がかっている)
449 106 頁掲載(サイズ 1/8)につ 甲 309, 106 頁は
いて,カラー20 点,モノクロ 1 106 頁~107 頁 カラー20 点,
点 白黒 1 点。
107 頁掲載(サイズ 1/2,サイ 107 頁は再製あり
ズ 1/8)のものは書籍撮影で,
再製なし
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2005 モノクロ 乙 251 白黒
2006 モノクロ 乙 251 白黒
2007 モノクロ 乙 251 白黒
220 Apr 21 2007 Tokyo
19 モノクロ 甲 176 カラー
229 Sept 15 2007 Tokyo
31 モノクロ 甲 177 カラー
242 Mar 15 2008 Tokyo
369 モノクロ 甲 178 カラー
370 モノクロ 甲 178 カラー
246 May 9 & 10 2008 Tokyo
201 モノクロ 甲 179 の 1 カラー
202 モノクロ 甲 179 の 1 カラー
698 モノクロ 甲 179 の 2 カラー
261 Dec 12 & 13 2008 Tokyo
837 モノクロ 甲 180 カラー
263 Jan 10 2009 Tokyo
422 モノクロ 甲 181 の 1 白黒
265 Feb 7 2009 Tokyo
99 モノクロ 甲 182 カラー
271 Apr 18 2009 Tokyo
69 モノクロ 甲 183 カラー
278 July 25 2009 Tokyo
18 モノクロ 甲 184 の 1 カラー
222 モノクロ 乙 364 白黒
222 額入りの作品で,額はカラー。 乙 364 白黒
原告らは訴状でモノクロと主
張
281 Sept 4 & 5 2009 Tokyo
405 モノクロ 甲 185 の 1 カラー
407 モノクロ 甲 185 の 2 カラー
283 Oct 2 & 3 2009 Tokyo
635 モノクロ 甲 186 の 2 カラー
162 1/4 はモノクロ 甲 187 カラー
162 1/8 はカラー3点,モノクロ4 甲 187 カラー7点
点
292, January 9, 2010 Tokyo
250 モノクロ 甲 188 カラー
297 Mar 6 2010 Tokyo
557 モノクロ 甲 189 カラー
558 モノクロ 甲 189 カラー
300 Apr 10 2010 Tokyo
17 モノクロ 甲 191 カラー
70 FRIEDLAENDER Johnny
2002 139 Dec 7 2002 Tokyo
126 モノクロ 乙 252 カラー
2004 167 Jul 31 2004 Tokyo
151 モノクロ1点,カラー2点 乙 253 白黒 1 点
カラー2 点
73 GANTNER Bernard
231 I Oct 12 2007 Tokyo
299 モノクロ 甲 192 カラー
300 モノクロ 甲 192 カラー
78 GIACOMETTI Alberto
2003 150 Jul 26 2003 Tokyo
844 GIACOMETTI 作品は中央のモ 乙 254 白黒 1 点
ノクロ1点のみ
2004 162 Apr 10 2004 Tokyo
686 モノクロ 乙 255 白黒
2004 167 Jul 31 2004 Tokyo
149 モノクロ 乙 256 白黒
150 モノクロ 乙 256 白黒
2004 174 Dec 11 2004 Tokyo
153 モノクロ 乙 257 白黒
154 モノクロ 乙 257 白黒
155 モノクロ 乙 258 白黒
2005 175 Jan 15 2005 Tokyo
693 モノクロ 乙 259 白黒
2005 189 Sep 17 2005 Tokyo
36 モノクロ 乙 260 カラー
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
675 モノクロ 乙 261 白黒
2006 200 Apr 29 2006
227 モノクロ 乙 262 白黒
217 Mar 17 2007 Tokyo
820 1/2 はモノクロ 甲 194 カラー
820 1/8 はモノクロ 甲 194 カラー
251 II June 26 2008 Tokyo
401 モノクロ 甲 195 カラー
265 Feb 7 2009 Tokyo
758 モノクロ 甲 196 カラー
86 ICART Louis
221, May 11 & 12, 2007 Tokyo
463 モノクロ 甲 198 カラー
92 KANDINSKY Vassily
2002 139 Dec 7 2002 Tokyo
403 モノクロ 乙 263 白黒
2005 175 Jan 2005 Tokyo
734 モノクロ 乙 264 白黒
95 KISLING
2004 162 Apr 10 2004 Tokyo
726 モノクロ 乙 265 白黒
96 KLEIN Yves
278, July 25, 2009 Tokyo
284 1/8 甲 207 1/4
103 LASCAUX Elie
273, May 9, 2009 Tokyo
1193 モノクロ 甲 208 カラー
113 MAILLOL Aristide
2002 136 Oct 2002 Osaka
163 モノクロ 乙 266 カラー
2003 140 Jan 18 2003 Tokyo
653 モノクロ 乙 267 カラー
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
200 モノクロ 乙 268 カラー
2004 158 Jan 17 2004 Tokyo
273 モノクロ 乙 269 白黒
2005 179 Mar 26 2005 Tokyo
236 モノクロ 乙 270 白黒
115 MAN RAY
2006 202 Jun 10 2006 Tokyo
2118 モノクロ2点 乙 271 白黒 2 点
118 MARQUET Albert
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
584 モノクロ 乙 272 白黒
585 モノクロ 乙 273 白黒
231 I, October 12, 2007 Tokyo
97 モノクロ 甲 209 カラー
120 MASSON André
239, February 9, 2008 Tokyo
700 モノクロ 甲 210 カラー
123 MIRÓ Joan
2004 161 Mar 6 2004 Tokyo
237 モノクロ 乙 274 白黒
2004 171Oct 23 2004 Tokyo
899 モノクロ 乙 275 白黒
2005 185 Jul 2 2005 Tokyo
260 モノクロ1点,カラー1点 乙 276 白黒,カラー
各1点
2005 189 Sep 17 2005 Tokyo
260 モノクロ4点,カラー9点 乙 277 カラー13 点
2006 200 Apr 29 2006 Tokyo
246 モノクロ 乙 278 白黒
2006 202 June 17 2006 Tokyo
2107 モノクロ 乙 279 白黒
2404 モノクロ 乙 280 白黒
217, Mar. 17, 2007 Tokyo
846 モノクロ 甲 211 カラー
239, February 9, 2008 Tokyo
708 1/4 甲 212 1/2
258, October 31 & November 1, 2008 Tokyo
1063 モノクロ 甲 213 カラー
268, March 7, 2009 Tokyo
468 モノクロ 甲 214 の 1 カラー
469 モノクロ 甲 214 の 1 カラー
470 モノクロ 甲 214 の 2 カラー
124 MOLINIER Pierre
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
918 モノクロ 乙 281 白黒
2004 174 Dec 11 2004 Tokyo
252 モノクロ 乙 282 白黒
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2825 モノクロ 乙 283 白黒
127 OGUISS Takanori
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
208 モノクロ 乙 284 白黒
2003 148 Jun 21 2003 Tokyo
242 モノクロ 乙 285 カラー
2003 153 Oct 4 2003 Tokyo
317 モノクロ 乙 286 カラー
318 モノクロ 乙 286 白黒
2005 185 Jul 2 2005 Tokyo
902 モノクロ 乙 287 白黒
2006 202 Jun 10 2006
473 モノクロ(コピーの加減で黄色 甲 308,80 頁 カラー
がかっている)
2006 208 Ⅰ&ⅡOct 14 2006
517 書籍撮影で,再製ではない。 甲 309,123 頁 再製あり
Lot447 と同じ作品であり,コピ カラー
ーの加減で着色したように見
える
318, November 6, 2010 Tokyo
111 著作権法 47 条の 2 適用 甲 216 下記ウのとおり,
著作権法 47 条の 2
適用
142 ROUAULT Georges
2002 129 Jun 1 2002 Tokyo
633 モノクロ 乙 288 白黒
634 モノクロ 乙 288 白黒
636 モノクロ 乙 288 白黒
640 モノクロ 乙 289 白黒
2002 132 Jul 27 2002 Tokyo
700 モノクロ 乙 290 白黒
701 モノクロ 乙 290 白黒
702 モノクロ 乙 290 白黒
2002 134 Sep 14 2002 Tokyo
147 モノクロ 乙 291 白黒
148 モノクロ 乙 291 白黒
149 モノクロ 乙 291 白黒
2002 139 Dec 7 2002 Tokyo
495 モノクロ 乙 292 白黒
2003 140 Jan 18 2003 Tokyo
720 モノクロ 乙 293 白黒
721 モノクロ 乙 293 白黒
722 モノクロ 乙 294 白黒
724 モノクロ 乙 294 白黒
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
238 モノクロ 乙 295 白黒
239 モノクロ 乙 295 白黒
2003 147 May 31 2003 Osaka
632 モノクロ 乙 296 白黒
633 モノクロ 乙 297 白黒
2003 150 Jul 26 2003 Tokyo
784 モノクロ 乙 298 白黒
785 モノクロ 乙 298 白黒
787 モノクロ 乙 299 白黒
2003 152 Sep 13 2003 Tokyo
365 モノクロ 乙 300 白黒
367 モノクロ 乙 300 白黒
2003 153 Oct 4 2003 Tokyo
793 モノクロ 乙 301 カラー
2004 158 Jan 17 2004 Tokyo
313 モノクロ 乙 302 白黒
2004 161 Mar 6 2004 Tokyo
260 モノクロ 乙 303 白黒
261 モノクロ 乙 303 白黒
2004 162 Apr 10 2004 Tokyo
795 モノクロ 乙 304 白黒2点
796 モノクロ 乙 304 白黒2点
797 モノクロ 乙 304 白黒
798 モノクロ 乙 304 白黒2点
799 モノクロ 乙 304 白黒 2点
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
938 モノクロ 乙 305 白黒
2004 167 Jul 31 2004 Tokyo
258 モノクロ 乙 306 白黒
260 モノクロ 乙 306 白黒
2004 171 Oct 23 2004 Tokyo
928 モノクロ 乙 307 カラー
2005 175 Jan 15 2005 Tokyo
825 モノクロ 乙 308 白黒
826 モノクロ 乙 308 白黒
827 モノクロ 乙 308 白黒
828 モノクロ 乙 308 白黒
829 モノクロ 乙 308 白黒
830 モノクロ 乙 308 白黒
831 モノクロ 乙 309 白黒
2005 178 Feb 26 2005 Tokyo
941 モノクロ 乙 310 白黒
2005 179 Mar 26 2005 Tokyo
286 モノクロ 乙 311 白黒
288 モノクロ 乙 311 白黒
2005 181 Apr 23 2005 Tokyo
221 モノクロ 乙 312 白黒
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
740 モノクロ 乙 313 白黒
741 モノクロ 乙 313 白黒
742 モノクロ 乙 313 カラー
743 モノクロ 乙 313 白黒
2006 194 Jan 14 2005 Tokyo
993 モノクロ4点。挿画本を撮影し 乙 314,甲 342 再製あり
たものは美的要素の再製でな 白黒 5 点
い
994 モノクロ 乙 314,甲 342 白黒
996 モノクロ 乙 315 白黒
997 モノクロ 乙 315 白黒
998 モノクロ 乙 315 白黒
999 モノクロ 乙 315 白黒
1000 モノクロ 乙 315 白黒
1001 モノクロ 乙 315 白黒
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
14 挿画本撮影は美的要素の再製 乙 316,甲 343 再製あり
なし カラー
54 モノクロ 乙 317 白黒
906 モノクロ 乙 318,甲 344 白黒2点
907 モノクロ 乙 318 白黒
908 モノクロ 乙 318 白黒
909 モノクロ1点。左側は書籍の表 乙 318 再製あり
紙画撮影で,美的要素の再製な 白黒2点
し
910 モノクロ 乙 319 カラー
2006 202 Jun 17 2006
2396 モノクロ 乙 320 白黒
2398 モノクロ 乙 320 カラー
2006 204 Jul 21&22 2006
683 モノクロ 乙 321 白黒
684 モノクロ 乙 322 白黒
685 モノクロ 乙 322 白黒
686 モノクロ 乙 322 白黒
687 モノクロ 乙 322 カラー
688 モノクロ 乙 322 白黒
689 モノクロ 乙 322 白黒
691 モノクロ 乙 323 白黒
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2492 モノクロ 乙 324 カラー
2799 モノクロ 乙 325 白黒
2800 モノクロ 乙 325 白黒,カラー
各1点
2801 モノクロ 乙 325 白黒
2802 モノクロ 乙 325 白黒2点
2803 モノクロ 乙 325 カラー
2804 モノクロ 乙 325 カラー
2807 モノクロ 乙 326 白黒2点
2808 モノクロ 乙 326 白黒
217, Mar. 17, 2007 Tokyo
812 モノクロ 甲 217 カラー
813 モノクロ 甲 217 カラー
814 モノクロ 甲 217 カラー
221, May 11 & 12, 2007 Tokyo
595 モノクロ 甲 218 の 1 カラー
596 モノクロ 甲 218 の 2 カラー
597 モノクロ 甲 218 の 2 カラー
599 モノクロ 甲 218 の 2 カラー
223, June 16, 2007 Tokyo
324 モノクロ 甲 219 カラー
235 II&III, December 8, 2007 Tokyo
931 モノクロ 甲 220 カラー
932 モノクロ 甲 220 カラー
933 モノクロ 甲 220 カラー
934 モノクロ 甲 220 白黒
935 モノクロ 甲 220 白黒
242, March 15, 2008 Tokyo
952 モノクロ 甲 222 白黒
258, October 31 & November 1, 2008 Tokyo
1118 1/2 甲 223 3/4
1231 モノクロ 甲 224 カラー
261, December 12 & 13, 2008 Tokyo
1134 モノクロ 甲 225 の 1 白黒
1135 モノクロ 甲 225 の 1 白黒
1136 モノクロ 甲 225 の 1 カラー
1137 モノクロ 甲 225 の 1 カラー
1138 モノクロ 甲 225 の 1 白黒
1139 モノクロ 甲 225 の 2 カラー
1140 モノクロ 甲 225 の 2 白黒
263, January 10, 2009 Tokyo
834 モノクロ 甲 226 の 1 カラー
835 モノクロ 甲 226 の 1 白黒
897 1/2 甲 226 の 2 3/4
265, February 7, 2009 Tokyo
743 モノクロ 甲 227 白黒
744 モノクロ 甲 227 カラー
745 モノクロ 甲 227 白黒
269, March 20, 2009 Tokyo
950 モノクロ 甲 228 白黒
951 モノクロ 甲 228 カラー
275, June 6, 2009 Tokyo
1077 モノクロ 甲 229 カラー
278, July 25, 2009 Tokyo
322 モノクロ 2 点 甲 230 カラー2 点
281, September 4 & 5, 2009 Tokyo
1330 モノクロ 甲 231 の 1 カラー
1331 モノクロ 甲 231 の 1 カラー
1332 モノクロ 甲 231 の 1 カラー
1496 モノクロ 甲 231 の 2 白黒
283, October 2 & 3, 2009 Tokyo
1041 モノクロ 甲 232 の 1 カラー
1042 モノクロ 甲 232 の 1 カラー
1044 モノクロ 甲 232 の 2 カラー
1045 モノクロ 甲 232 の 2 白黒
1048 モノクロ 甲 232 の 2 白黒
289, December 2 & 3, 2009 Tokyo
1045 モノクロ 甲 233 カラー
1046 モノクロ 甲 233 カラー
307, July 3, 2010 Tokyo
274 モノクロ 甲 234 カラー
157 UTRILLO Maurice
2004 161 Mar 6 2004 Tokyo
279 モノクロ 乙 327 白黒
2004 162 Apr 10 2004 Tokyo
830 モノクロ 乙 328 白黒
831 モノクロ 乙 328 白黒
2005 185 Jul 2 2005 Tokyo
352 モノクロ 乙 329 白黒
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
763 モノクロ 乙 330 白黒
160 VAN DONGEN Kees
2005 179 Mar 26 2005 Tokyo
162 カラー1点。左側は書籍の表紙 乙 331,甲 345 再製あり
画撮影で美的要素の再製なし カラー2点
161 VASARELY Victor
2004 174 Dec 11 2004 Tokyo
331 カラー1点。カタログ記載のと 乙 332 カラー1点
おり,上下のうち下2点は別の
美術家の作品
164 VLAMINCK Maurice, de
2003 140 Jan 18 2003 Tokyo
737 モノクロ 乙 333 白黒
738 モノクロ 乙 333 白黒
739 モノクロ 乙 333 白黒
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
275 モノクロ 乙 334 白黒
2003 147 May 31 2003 Osaka
670 モノクロ 乙 335 白黒
2003 150 Jul 26 2003 Tokyo
830 モノクロ 乙 336 カラー
2003 153 Oct 4 2003 Tokyo
829 モノクロ 乙 337 カラー
2004 162 Apr 10 2004 Tokyo
834 モノクロ 乙 338 カラー
2005 179 Mar 26 2005 Tokyo
333 モノクロ 乙 339 白黒
2005 181 Apr 23 2005 Tokyo
240 モノクロ 乙 340 白黒
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
768 モノクロ 乙 341 白黒
2006 202 Jun 17 2006
2139 モノクロ 乙 342 白黒
2141 モノクロ 乙 342 白黒
2006 204 Jul 21&22 2006
674 モノクロ 乙 343 白黒
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2810 モノクロ 乙 344 白黒
226 I, July 21, 2007 Tokyo
484 モノクロ 甲 235 カラー
485 モノクロ 甲 235 カラー
273, May 9, 2009 Tokyo
991 モノクロ 甲 236 カラー
168 WEISBUCH Claude
2002 132 Jul 27 2002 Tokyo
744 モノクロ 乙 345 カラー
745 モノクロ 乙 345 カラー
2003 143 Mar 8 2003 Tokyo
279 モノクロ 乙 346 白黒
2003 148 Jun 21 2003 Tokyo
679 モノクロ 乙 347 カラー
680 モノクロ 乙 347 カラー
2003 153 Oct 4 2003 Tokyo
831 モノクロ 乙 348 カラー
2003 157 Dec 6 2003 Tokyo
930 モノクロ 乙 349 白黒
2004 161 Mar 6 2004 Tokyo
287 モノクロ 乙 350 白黒
2004 166 Jun 26 2004 Tokyo
981 モノクロ 乙 351 白黒
2005 190 Oct 14&15 2005 Tokyo
769 モノクロ 乙 352 カラー
2006 194 Jan 14 2005 Tokyo
930 モノクロ 乙 353 白黒
2006 202 Jun 17 2006
2145 モノクロ 乙 354 白黒
2006 208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2815 モノクロ 乙 355 白黒
2817 モノクロ 乙 355 白黒
215, Feb. 9 & 10, 2007 Tokyo
966 モノクロ 甲 238 カラー
221, May 11 & 12, 2007 Tokyo
622 カラー1 点,モノクロ 1 点 甲 239 カラー2 点
265, February 7, 2009 Tokyo
908 モノクロ 甲 244 カラー
275, June 6, 2009 Tokyo
1292 モノクロ 甲 245 カラー
281, September 4 & 5, 2009 Tokyo
1405 モノクロ 甲 246 カラー
169 WOLS (Alfred Wolfgang Otto SCHULZE, dit)
2006 196 Feb 18 2006 Tokyo
99 モノクロ 乙 356 白黒
283, October 2 & 3, 2009 Tokyo
1012 モノクロ 甲 248 カラー
170 ZADKINE Ossip
2003 141 Feb 1 2003 Tokyo
146 モノクロ 乙 357 カラー
300, April 10, 2010 Tokyo
335 1/4 でモノクロ 甲 250 3/4 でカラー
171 ZAO WOU KI
268, March 7, 2009 Tokyo
461 1/4 甲 251 1/2
イ 以上のとおり,会員作品(127番の荻須高徳については本件カタログ
318号以外の作品)については,いずれも複製権侵害が認められ,上記で認定し
たもの以外については,別紙2-1原告協会主張一覧表記載のとおりである。
ウ 127番の荻須高徳(OGUISS Takanori)の本件カタログ318号の作品
について
被告は,本件カタログ318号に係る複製について,著作権法47条の2の適用
がある旨主張する。
そこで検討するに,被告は,本件オークションを主催する者であるから,著作権
法47条の2の施行日である平成22年1月1日以降,同条所定の複製を行うこと
ができたものと認められる。また,同法施行令7条の2第1項第1号及び同法施行
規則4条の2第1項第1号により,著作権法47条の2が適用されるためには,当
該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが50cm2以下である
ことが必要である。
弁論の全趣旨によれば,本件カタログ318号は平成22年後半に発行されたも
のであると認められるから,同号に係る複製は著作権法47条の2の適用の対象と
なる。そして,証拠(甲216,乙19)によれば,同号に係る複製は,額縁部分
を除く作品部分について,縦約6cm×横8.3cm の写真を印刷したものであるこ
とが認められるから,その表示の大きさは約49.8cm2である。
以上によれば,本件カタログ318号に係る複製は,著作権法47条の2の適用
があると認められるから,複製権の侵害には当たらない。
(5) ピカソ作品について
ア 被告が,モノクロである,あるいは,美的再製がない等と主張している
ものについて,裁判所の認定は,以下のとおりである。
ロ ッ ト 被告の主張 証拠 裁判所の認定
番号
122 Jan 19 2002 Tokyo
527 モノクロ 甲 252 白黒
127 Apr 20 2002 Tokyo
625 モノクロ(白のセラミック) 乙 49 カラー
626 モノクロ(カタログにモノクロと記載) 乙 49 白黒
627 モノクロ(カタログにモノクロと記載) 乙 49 白黒
628 モノクロ(カタログにモノクロと記載) 乙 50 , 甲 白黒
629 モノクロ(カタログにモノクロと記載) 乙 50 , 甲 白黒
630 モノクロ(カタログにモノクロと記載) 乙 50 , 甲 白黒
631 書籍を撮影したものであり,美的要素 乙 50 , 甲 複製に該当。
( 上 段 の再製はないので,点数はゼロ。複製 328 全体としてカ
5 冊) であるとしても,ピカソの絵画部分は ラー
モノクロ。なお,下段5冊は,他の美
術家の作品である
129 Jun 1 2002 Tokyo
614 モノクロ 乙 51 白黒
615 モノクロ 乙 52 白黒
619 モノクロ 乙 52 白黒
620 モノクロ 乙 52 白黒
621 モノクロ 乙 53 白黒
622 モノクロ 乙 53 白黒
624 モノクロ(白のセラミック) 乙 53 カラー
132 Jul 27 2002 Tokyo
684 モノクロ 乙 54 白黒
688 モノクロ 乙 55 白黒
689 モノクロ 乙 55 白黒
690 モノクロ 乙 55 白黒
134 Sep 14 2002 Tokyo
145 モノクロ(白のセラミック) 乙 56 カラー
297 モノクロ 乙 57 カラー
139 Dec 7 2002 Tokyo
480 モノクロ 乙 58 白黒
140 Jan 18 2003 Tokyo
706 モノクロ 乙 59 白黒
707 モノクロ 乙 59 白黒
141 Feb 1 2003 Tokyo
105 モノクロ 乙 60 白黒
143 Mar 8 2003 Tokyo
228 モノクロ 乙 61 カラー
229 モノクロ 乙 62 カラー
147 May 31 2003 Osaka
618 モノクロ 乙 63 カラー
620 モノクロ 乙 63 白黒
148 Jun 21 2003 Tokyo
634 図版集を撮影したものであり,美的要 乙 64 , 甲 複製に該当。
素の再製はないので点数はゼロ。複製 329 カラー
であるとしてもモノクロ
635 モノクロ 乙 64 , 甲 カラー
150 Jul 26 2003 Tokyo
768 モノクロ 乙 65 白黒
152 Sep 13 2003 Tokyo
348 モノクロ 乙 66 白黒
352 モノクロ 乙 67 白黒
354 モノクロ 乙 68 白黒
355 モノクロ 乙 69 白黒
356 モノクロ 乙 70 白黒
153 Oct 4 2003 Tokyo
779 モノクロ 乙 71 白黒
780 モノクロ 乙 71 白黒
157 Dec 6 2003 Tokyo
865 モノクロ 乙 72 白黒
866 モノクロ 乙 73 白黒
867 モノクロ 乙 73 白黒
868 モノクロ 乙 73 白黒
870 モノクロ 乙 73 白黒
871 モノクロ 乙 74 白黒
872 モノクロ 乙 74 白黒
873 モノクロ 乙 74 白黒
874 モノクロ 乙 74 白黒
158 Jan 17 2004 Tokyo
301 モノクロ 乙 75 白黒
302 モノクロ 乙 75 白黒
303 モノクロ 乙 75 白黒
161 Mar 6 2004 Tokyo
254 モノクロ 乙 76 カラー
256 モノクロ 乙 77 白黒
162 Apr 10 2004 Tokyo
785 モノクロ 乙 78 白黒
786 モノクロ 乙 78 白黒
164 May 22 2004 Tokyo
303 1/8 甲 253 1/4
166 Jun 26 2004 Tokyo
927 モノクロ 乙 79 カラー
929 モノクロ 乙 80 白黒
930 モノクロ 乙 80 白黒
167 Jul 31 2004 Tokyo
241 モノクロ 乙 81 カラー
242 モノクロ 乙 81 白黒
243 モノクロ 乙 81 白黒
244 モノクロ 乙 82 カラー
245 モノクロ 乙 82 カラー
246 モノクロ 乙 83 白黒
170 Sep 18 2004 Tokyo
20 モノクロ 乙 84 白黒
171 Oct 23 2004 Tokyo
909 モノクロ 乙 85 白黒
910 モノクロ 乙 85 白黒
911 モノクロ 乙 86 白黒
912 モノクロ 乙 86 カラー
174 Dec 11 2004 Tokyo
268 モノクロ 乙 87 カラー
269 モノクロ 乙 87 白黒
270 モノクロ 乙 87 白黒
175 Jan 15 2005 Tokyo
801 モノクロ 乙 88 白黒
802 モノクロ 乙 88 白黒
803 モノクロ 乙 88 白黒
178 Feb 26 2005 Tokyo
925 モノクロ 乙 89 白黒
926 モノクロ 乙 89 白黒
181 Apr 23 2005 Tokyo
215 挿画本の複製であり,美的要素の再製 乙 90 , 甲 複製に該当
はないので,点数はゼロ 330
216 モノクロ 乙 90 , 甲 白黒
217 モノクロ 乙 90 , 甲 白黒
185 Jul 2 2005 Tokyo
285 モノクロ 乙 91 白黒
286 作品部分はモノクロ 乙 91 カラー
189 Sep 17 2005 Tokyo
59 モノクロ 乙 92 カラー
60 モノクロ 乙 93 白黒
61 モノクロ 乙 93 カラー
62 モノクロ 乙 94 カラー
63 モノクロで,挿画部分は美的要素の再 乙 95 , 甲 挿 画 部 分 も 複
製はなく,点数は未製本のシート1点 331 製。13点。カ
ラー
64 モノクロで,文字と共に掲載されてい 乙 96 , 甲 線画も複製。3
る線画については,美的要素の再製は 332 8点。
なく,点数は33点 カラー
65 モノクロ 乙 97 白黒
190 Oct 14&15 2005 Tokyo
731 モノクロ 乙 98 白黒
732 モノクロ 乙 98 白黒
733 モノクロ 乙 99 白黒
735 モノクロ 乙 99 白黒
194 Jan 14 2006 Tokyo
94 モノクロ 乙 100 カラー
987 モノクロ 乙 101 白黒
989 モノクロで,書籍を撮影したものは美 乙 102,甲 書 籍 撮 影 も 複
的要素の再製はなく,点数は3点 333 製。4点。
カラー
990 モノクロ 乙 102,甲 白黒
991 モノクロ 乙 103 白黒
196 Feb 18 2006 Tokyo
90 モノクロ 乙 104 白黒
872 モノクロ(ピカソ作品は中央のみ) 乙 105 白黒
900 モノクロ 乙 106 白黒
901 モノクロ 乙 106 白黒
904 モノクロ 乙 107 白黒
200 Apr 29 2006 Tokyo
250 モノクロ 乙 108 白黒
251 モノクロ 乙 108 カラー
252 モノクロ 乙 109 白黒
253 モノクロで,1/8 が6点,1/4 のものは 乙 110,甲 1/8 は6点。1/4
挿画本を撮影したもので美的要素の再 334 も複製。
製はなく,点数はゼロ 1/4 はカラー
254 モノクロ 乙 111 白黒
255 モノクロ 乙 112 白黒
256 モノクロ 乙 113 白黒
257 モノクロ 乙 114 白黒
258 モノクロ 乙 115 白黒
259 モノクロ 乙 116 白黒
202 June 17 2006
2116 モノクロ 乙 117 白黒
2452 モノクロ 乙 118 白黒
2453 モノクロ 乙 118 白黒
2454 モノクロ 乙 118 白黒
2455 モノクロ 乙 119 白黒
2456 モノクロ 乙 119 白黒
2458 モノクロ 乙 120 白黒
204 Jul 21&22 2006
459 モノクロ 乙 121 白黒
461 モノクロ 乙 121 カラー
462 モノクロ 乙 121 白黒
634 モノクロ 乙 122 白黒
636 モノクロ 乙 122 カラー
637 モノクロ 乙 123 白黒
638 モノクロ 乙 123 白黒
639 モノクロ 乙 124 白黒
640 モノクロ 乙 125 白黒
641 モノクロ 乙 125 カラー
642 モノクロ 乙 126 白黒
643 モノクロ 乙 126 白黒
644 モノクロ 乙 127 カラー
206 Sep 10 2006 Tokyo
230 モノクロ 甲 254 カラー
208 Ⅲ&Ⅳ Oct 21 2006
2468 モノクロ 乙 128 白黒
2470 モノクロ 乙 128 カラー
2473 モノクロ 乙 128 白黒
2768 モノクロ 乙 129 白黒
2769 モノクロ 乙 129 カラー
2770 モノクロ 乙 129 白黒
2772 モノクロ 乙 130 白黒
2773 モノクロ 乙 130 白黒
2774 モノクロ 乙 130 白黒
2775 モノクロ 乙 131 白黒
2776 モノクロ 乙 131 白黒
2777 モノクロ 乙 131 白黒
2778 モノクロ 乙 132 白黒
2779 モノクロ 乙 132 白黒
2780 モノクロ 乙 132 白黒
213 Jan 13, 2007 Tokyo
636 モノクロ 甲 255 の 1 カラー
639 モノクロ,1/4 甲 255 の 2 カラ-,1/2
215 Feb. 9 & 10, 2007 Tokyo
1007 モノクロ 甲 256 の 1 カラー
1012 1/8 甲 256 の 2 1/4
1013 1/4 甲 256 の 3 1/2
1151 モノクロ 甲 256 の 4 カラー
217 Mar. 17, 2007 Tokyo
858 1/4 甲 257 1/2
220 April 21, 2007 Tokyo
257 モノクロ 甲 258 の 1 カラー
258 モノクロ 甲 258 の 2 カラー
259 モノクロ 甲 258 の 3 カラー
260 モノクロ 甲 258 の 4 カラー
221 May 11 & 12, 2007 Tokyo
617 モノクロ 甲 259 の 1 カラー
620 モノクロ4点 甲 259 の 2 カラー4 点
226 II&III July 21, 2007 Tokyo
1378 1/8 甲 260 1/4
229 Sep. 15, 2007 Tokyo
276 モノクロ 甲 261 の 1 カラー
277 モノクロ 甲 261 の 2 カラー
279 モノクロ 甲 261 の 3 カラー
280 モノクロ 甲 261 の 4 カラー
281 モノクロ 甲 261 の 5 カラー
231 I October 12, 2007 Tokyo
285 モノクロ 甲 262 の 1 カラー
286 モノクロ 甲 262 の 1 カラー
287 モノクロ 甲 262 の 1 カラー
289 モノクロ 甲 262 の 2 カラー
235 II&III December 8, 2007 Tokyo
995 1/8 甲 263 の 1 1/4
996 1/8 甲 263 の 2 1/4
997 1/8 甲 263 の 2 1/4
239 February 9, 2008 Tokyo
750 1/4 甲 264 1/2
242 March 15, 2008 Tokyo
1001 1/8 甲 265 の1 1/4
1002 1/8 甲 265 の 2 1/4
1003 1/8 甲 265 の 2 1/4
246 May 9 & 10, 2008 Tokyo
1096 モノクロ 甲 266 の 1 カラー
1097 モノクロ 甲 266 の 2 カラー
251 II June 26, 2008 Tokyo
379 1/8 甲 267 の 1 1/4
380 1/8 甲 267 の1 1/4
381 モノクロ4点 甲 267 の 2 カラー4点
386 モノクロ 甲 267 の 3 カラー
387 モノクロ 甲 267 の 4 カラー
388 モノクロ 甲 267 の 5 カラー
258 October 31 & November 1, 2008 Tokyo
1028 モノクロ 甲 268 カラー
265 February 7, 2009 Tokyo
771 1/8 甲 269 1/4
269 March 20, 2009 Tokyo
979 モノクロ 甲 270 カラー
980 モノクロ 甲 270 カラー
278 July 25, 2009 Tokyo
326 モノクロ 甲 271 の 1 カラー
331 モノクロ 甲 271 の 2 カラー
334 1/8 甲 271 の 3,4 1/4
335 1/8 甲 271 の 3,4 1/4
281 September 4 & 5, 2009 Tokyo
1340 1/8 甲 272 1/4
283 October 2 & 3, 2009 Tokyo
1027 モノクロ 甲 273 の 1 カラー
1030 1/8 甲 273 の 2 1/4
1233 モノクロ 甲 273 の 3 カラー
286 November 7, 2009 Tokyo
318 モノクロ 甲 274 の 1 カラー
319 1/8 甲 274 の 1 1/4
320 モノクロ 甲 274 の 2 カラー
321 モノクロ 甲 274 の 3 カラー
322 モノクロ 甲 274 の 4 カラー
289 December 2 & 3, 2009 Tokyo
1082 モノクロ 甲 275 の 1 カラー
1084 モノクロ 甲 275 の 1 カラー
1085 モノクロ 甲 275 の 1 カラー
1087 モノクロ 甲 275 の 2 カラー
1089 1/8 甲 275 の 3 1/4
297 March 6, 2010 Tokyo
770 1/8 のモノクロ 甲 277 1/4 のカラー
298 March 13, 2010 Osaka
648 1/8 甲 278 1/4
300 April 10, 2010 Tokyo
300 モノクロ 甲 279 の 1 カラー
301 モノクロ 甲 279 の 2 カラー
303 モノクロ 甲 279 の 3 カラー
306 モノクロ 甲 279 の 4 カラー
イ 以上のとおり,ピカソ作品については,いずれも複製権侵害が認められ,
上記で認定したもの以外については,別紙3-1原告X1主張一覧表記載のとおり
である。
(6) 原告らの損害について
ア 総論
原告らは,著作権法114条3項による使用料相当損害金は,主位的に,JAS
PARの使用料規程に基づいて算定すべきである旨主張する。しかしながら,JA
SPARの使用料規程は,本件の不法行為である各複製権侵害行為が行われた後の
平成24年に定められたから,複製権侵害時において,原告らが同規程に基づく使
用料を得ることは困難であり,同金額が複製権侵害という不法行為と相当因果関係
のある損害の額とは認められない。原告らの主張は,理由がない。
そして,原告らは,著作権法114条3項に基づいて損害賠償を請求するもので
あり,被告の複製権侵害について受けるべき金銭の額としては,侵害行為発生時に
原告らがSPDAに対して著作権管理(利用許諾及び使用料徴収)を委託していた
ことに照らすと,その算定においては,SPDAの使用料規程に従うのが相当であ
る。また,弁論の全趣旨によれば,本件カタログは,SPDAの使用料規程3(1)
イの単行本(5000部以下)に当たるものと認められるから,当該規程に基づい
て,原告らの使用料相当損害額を算定するのが相当である。
他方,被告は,SPDAの使用料規程で計算した金額には,原告協会との相互管
理契約に基づくSPDAの管理手数料及び利益が加算されているのであって,著作
権者であると主張する原告協会に支払われる額ではないと主張する。
しかしながら,本件で問題とすべきは,著作権の適法な利用に係る通常の使用料
ではなく,著作権侵害に係る使用料相当の損害賠償の額であるところ,原告協会と
SPDAの内部関係における著作権の管理手数料の支払や原告協会の利益は,原告
協会の収支全体から支払われるべき性質のものであることに照らすと,被告が支払
うべき使用料相当の損害金として,上記管理手数料等を減額すべき合理的な理由は
ない。
したがって,被告の主張は理由がない。
イ 原告協会のカタログ存在部分についての損害
(ア) 原告協会の受けた損害は,同協会が有する著作権についての使用料相
当額である。
(イ) これに対し,原告協会の著作権が共有となっているものについては,
他の共有者の損害賠償請求と併せて使用料相当額となるのが相当である。すなわち,
上記のとおり,157番のモーリス・ユトリロについては,原告協会は著作権の共
有持分(50%)の移転しか受けていないから,損害額の算定は,全著作権につい
て認められている使用料に,共有持分の割合を乗じた額とすべきである。
この点,原告協会は,著作権等管理事業法13条4項において,使用料規程は,
他の権利者の有無にかかわらず,利用者に請求できる使用料の上限額であるとして,
著作権の持分割合にかかわらず,減額される理由はないと主張する。しかしながら,
本件は,著作権等管理事業法に基づいて利用者である被告に対して使用料を請求し
た事案ではなく,あくまでも不法行為に基づく損害賠償請求であり,当該著作権全
体が侵害されたことによる損害の算定において,SPDAの使用料規程を基準とし
て算定しているにすぎないから,同法の規定は直接影響しない。本件において,他
の著作者とユトリロとの間で,著作権全体に対する侵害額につき,差異を設ける別
段の事情はないし,著作権が全部の場合と共有持分しか有しない場合とで同額の損
害額を算定するのは公平ではないから,損害額を算定するに当たって,持分割合を
反映させるべきものである。原告協会の主張は,採用できない。
(ウ) なお,証拠(甲10)によれば,前件和解において,「被告が前項の
確約に違反して,第3項又は第4項の清算処理の完了前に原告が著作権を管理する
美術家の美術作品を50平方センチメートルを超える表示の大きさで本件カタログ
に複製したときは,被告は,原告に対し,当該複製利用につき,SPDAの使用料
規程に定める使用料相当額に同額の違約金を加算した損害金を直ちに支払う。(6
」
項)と定められているから,前件和解が成立した平成22年9月21日以降,本件
カタログに会員作品を50cm2を超える表示の大きさで複製したときは,被告は,
原告協会に対し,SPDAの使用料規程に定める使用料相当額に同額の違約金を加
算した損害金を支払う義務がある(加算の対象は,本件カタログ315号〔16ア
ンドレ・ボーシャン,37ベルナール・シャロワ〕,318号〔51アンドレ・ドラ
ン,142ジョルジュ・ルオー〕,321号〔123ジョアン・ミロ〕に係る複製で
ある。。本件は,原告協会が,上記和解契約の履行を求めるものではないが,前記
)
和解における合意で定められた違約金相当額については,被告の不法行為によって
原告が受け取ることができなかった使用料相当損害額に含まれると解されるから,
被告の不法行為と相当因果関係の範囲にある損害と認めるべきものである。
(エ) また,上記2(3)イ(サ)のとおり,原告協会に対する入会届提出前に刊行
されたカタログに係る損害賠償請求部分,すなわち,3番アイズピリの本件カタロ
グ122号の LOT 番号443,444に係る1万9000円,本件カタログ130
号の LOT 番号540,541,542に係る2万8500円,13番ギーの本件カ
タログ148号の LOT 番号434に係る9500円,84番ユルバンの本件カタロ
グ158号の LOT 番号205に係る9500円は,いずれも損害として認められな
い。これらの合計は,6万6500円である。
(オ) 以上を前提に会員作品関係の損害額を算定すると,別紙2-1原告協
会主張一覧表のうち,当事者間に争いのない部分については,同表のSPDA基準
による使用料相当額欄のとおりである。そして,当事者間に争いがある部分につい
ての損害額は,別紙4-1原告協会損害に関する裁判所の認定一覧表のとおりと認
められ,原告協会の主張が一部否定されるところ,同協会の主張額との差額は,2
45万2250円となる。
(カ) したがって,原告協会において,カタログが存在する部分についての
損害は,6990万9100円-245万2250円-6万6500円=6739
万0350円となる。
ウ 原告X1のカタログ存在部分についての損害
ピカソ作品関係の損害を算定すると,別紙3-1原告X1主張一覧表のうち,当
事者間に争いのない部分については,同表のSPDA基準による使用料相当額欄の
とおりである。そして,当事者間に争いがある部分についての損害額は,別紙4-
2原告X1損害に関する裁判所の認定一覧表のとおりと認められ,原告X1の主張が
一部否定されるところ,同原告の主張額との差額は,75万7000円となる。し
たがって,原告X1において,カタログが存在する部分についての損害は,842
万1000円-75万7000円=766万4000円である。
エ カタログが存在しない部分について
本件訴訟において,原告らは,本件カタログ全てに関して具体的な著作権侵害行
為を特定して主張し,かつ,これらに係る証拠を全て提出しているわけではない。
これに対し,被告は,約10年間にわたって開催されたオークションで配布された
本件カタログ105冊のうち,本訴で提出された99冊の全て(全冊数の約94%
に及ぶ。 において,
) 会員作品やピカソ作品に関して複製権侵害の違法行為を繰り返
していたと認められる一方,本来,本件カタログを発行し,所持していて不自然で
ないにもかかわらず,本訴で提出されていないカタログ6冊について現在の所持を
否定し,何ら具体的な反証を行わない。したがって,本訴で提出されていないカタ
ログ6冊についても,少なくとも,同様の違法行為が同程度繰り返されていたと推
認するのが合理的であり,かつ,公平というべきである(これは,認定できる間接
事実からの推認であり,著作権法114条に基づく推定ではない。 。
)
したがって,損害額もその割合に応じて増額されるべきであり,原告協会に関し
ては,6739万0350円×105/99=7147万4614円(以下,1円
未満四捨五入),原告X1に関しては,766万4000円×105/99=812
万8485円となる。
オ 原告らの弁護士費用に関する相当因果関係の範囲と認められる損害額
原告協会に関して,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としての損
害額は,上記損害額の約10%である715万円が相当である。
原告X1に関して,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としての損
害額は,上記損害額の約10%である81万円が相当である。
カ まとめ
したがって,原告協会に関する損害額は7147万4614円+715万円=7
862万4614円,原告X1に関する損害額は,812万8485円+81万円
=893万8485円となる。
4 利用許諾の有無(争点4)
被告は,アイズピリ作品の著作権管理を行うギャルリーためながから許諾を受け,
アイズピリ作品を本件カタログに複製していた旨主張する。
そこで検討するに,証拠(甲17の7,289の1及び2,290の1及び2,
291,乙13)及び弁論の全趣旨によれば,原告協会は,平成21年12月まで,
アイズピリ作品の著作権管理を行っていたこと,ギャルリーためながは,平成22
年1月,アイズピリから我が国における著作権管理の委託を受けたこと,被告は,
ギャルリーためながに対し,本件カタログに係るアイズピリ作品の利用について許
諾を求めたことはなく,ギャルリーためながは,被告に対し,本件カタログに係る
アイズピリ作品の利用を許諾したことがないこと,現在,原告協会は,再びアイズ
ピリ作品の著作権管理を行っていることが認められる。
この点,被告の管理部長であるCWは,アイズピリ作品の出品の際に真贋の判定
をギャルリーためながに依頼し,カタログを送付したが苦情等がなかったことを理
由に許諾があったと供述する(乙14)。しかしながら,同供述には,どの時点で許
諾を受けたのか具体的な記述がなく,当該判定の依頼時にギャルリーためなががア
イズピリ作品の著作権管理の委託を受けていたのか否かが不明である上,単にカタ
ログを送付して苦情がなかったことを理由にギャルリーためながから許諾を受けて
いたとは到底認められない。
以上に照らすと,被告が本件カタログに係るアイズピリ作品の利用について許諾
を受けたとは認められないし,その他これを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告の主張は理由がない。
5 本件カタログが展示に伴う小冊子(著作権法47条)に当たるか(争点5)
被告は,オークションにおける公の展示において,観覧者のために著作物の紹介
をすることを目的として,小冊子である本件カタログに著作物を掲載したのであり,
著作権47条により,その複製は適法である旨主張する。
しかしながら,著作権法47条は,
「美術の著作物又は写真の著作物の原作品によ
り,第二十五条に規定する権利を害することなく,これらの著作物を公に展示する
者は,観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊
子にこれらの著作物を掲載することができる。」と規定しており,同条における「小
冊子」は,あくまでも「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすること
を目的とする」ものであることを前提としているから,オークションや下見会に参
加して実際に作品を観覧する者以外に配布されるものや,著作物の解説又は紹介以
外を主目的とするものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。
本件カタログは,本件オークションや下見会への参加の有無にかかわらず,被告
の会員に配布されるものであるし(第2の2「前提事実」の(3)及び(4)),その主た
る目的は,本件オークションにおける売買の対象作品を特定するとともに,作家名
やロット番号以外からは直ちに認識できない作品の真贋,内容を通知し,配布を受
けた者の入札への参加意思や入札額の決定に役立つようにする点にあり,観覧者の
ための著作物の解説又は紹介を主たる目的とするものでもないことが明らかである
から,著作権法47条にいう「小冊子」には当たるとは認められない。
したがって,被告の主張は理由がない。
6 本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用(著作権法32条
1項)に当たるか(争点6)
被告は,本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用(著作権法3
2条1項)に当たる旨主張するが,その趣旨は,本件カタログにおける美術作品の
作者,題号等の取引に必要な情報の記載が引用表現であり,美術作品の写真(複製
物)が被引用著作物であると主張するものと解される。
そこで検討するに,著作権法32条1項は,
「公表された著作物は,引用して利用
することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するもので
あり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるも
のでなければならない。 と規定するから,
」 他人の著作物を引用した利用が許される
ためには,その方法や態様が,報道,批評,研究等の引用目的との関係で,社会通
念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な
慣行に合致することが必要である。
本件カタログにおいて美術作品を複製する目的が,本件オークションにおける売
買の対象作品を特定するとともに,作家名やロット番号以外からは直ちに認識でき
ない作品の真贋,内容を通知し,入札への参加意思や入札額の決定に役立つように
する点にあるのは,明らかである。本件カタログには,美術作品の写真に合わせて,
ロット番号,作家名,作品名,予想落札価格,作品の情報等が掲載されるが(乙1
7) 実際の本件カタログをみる限り,
, 各頁に記載された写真の大きさが上記情報等
の記載の大きさを上回るものが多く,掲載された写真は,独立して鑑賞の対象とな
り得る程度の大きさといえ,上記の情報等の掲載に主眼が置かれているとは解し難
い。しかも,本件オークションでは,本件カタログの配布とは別に,出品された美
術作品を確認できる下見会が行われていることなどに照らすと,上記の情報等と合
わせて,美術作品の写真を本件カタログに記載された程度の大きさで掲載する合理
的な必然性は見出せない。
そうすると,本件カタログにおいて美術作品を複製するという利用の方法や態様
が,本件オークションにおける売買という目的との関係で,社会通念に照らして合
理的な範囲内のものであるとは認められない。また,公正な慣行に合致することを
肯定できる事情も認められない。
したがって,被告の主張は理由がない。
7 原告らの請求が権利濫用に当たるか(争点7)
(1) 著作権法の改正
著作権法は,平成21年法律第53号により改正され,47条の2が新設された
(平成22年1月1日施行)。同条及び本件に関連する規定は以下のとおりである。
ア 著作権法47条の2
「美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの
譲渡又は貸与の権原を有する者が,第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規
定する権利を害することなく,その原作品又は複製物を譲渡し,又は貸与しようと
する場合には,当該権原を有する者又はその委託を受けた者は,その申出の用に供
するため,これらの著作物について,複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあ
つては,送信可能化を含む。(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれ
)
らの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し,
又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置とし
て政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。」
イ 著作権法施行令7条の2第1項1号
「法第四十七条の二の政令で定める措置は,次の各号に掲げる区分に応じ,当該
各号に定める措置とする。
一 法第四十七条の二に規定する複製 当該複製により作成される複製物に係る
著作物の表示の大きさ又は精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなる
ようにすること。」
ウ 著作権法施行規則4条の2第1項1号
「令第七条の二第一項第一号の文部科学省令で定める基準は,次に掲げるものの
いずれかとする。
一 図画として法第四十七条の二に規定する複製を行う場合において,当該複製
により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが五十平方センチメートル以
下であること。」
(2) 以上を前提に判断する。
被告は,本件訴訟における原告らの著作権の行使は,著作権法改正前にオークシ
ョンのために行われた複製について,法律が明確でなかったことを幸いとして,譲
渡に伴う美術の著作物の複製が法律上合法であると確認された今に至って損害賠償
を請求するもので,47条の2が新設された趣旨からすると,著作権の濫用に該当
するなどと主張する。
しかしながら,著作権法47条の2は,美術の著作物又は写真の著作物の原作品
等の適法な取引行為と著作権とを調整する趣旨において,原作品等を譲渡又は貸与
しようとする場合には,当該権原を有する者又はその委託を受けた者は,その申出
の用に供するため,一定の措置を講じることを条件に,当該著作物の複製又は公衆
送信を行うことを認めるものである。このように,著作権法47条の2は,一定の
措置を講じることを条件に,複製権又は公衆送信権の行使を認めたものであるから,
そのような措置が講じられなければ,著作権者の複製権又は公衆送信権の侵害であ
ることに変わりはないし,同規定が遡及適用されるものでもない(平成21年法律
第53号附則1条)。
そうすると,著作権法47条の2の新設により,同規定の施行前にオークション
のために行われた複製について損害賠償請求等の権利行使をすることや,同規定の
施行後において一定の措置が講じられた範囲外の複製について権利行使をすること
が,権利濫用であるとはいい難いし,その他権利濫用であることを肯定できる事情
は認められない。
したがって,被告の主張は理由がない。
8 不当利得返還請求について
原告らは,不法行為に基づく損害賠償請求と不当利得返還請求とを選択的に併合
しているから,上記のとおり,不法行為に基づく損害賠償が認められなかった部分
について,不当利得返還請求の可否が問題となる。
通則法14条によれば,不当利得返還請求権の成立及び効力は,
「原因となる事実
が発生した地の法による」とされているところ,本件では,被告の本件カタログに
おける会員作品及びピカソ作品の写真掲載が,「原因となる事実」に該当するから,
その発生地は我が国であり,我が国の法令が適用される(通則法施行前は法例11
条1項により「其原因タル事実ノ発生シタル地」を準拠法とするが,その地が我が
国であることに変わりはない。。同法15条は,同法14条の規定にかかわらず,
)
より密接な関係地がある場合には,当該地の法を準拠法とすることを許容している
が,本件ではそのような例外が適当といえるような事情は認められない(同法施行
前には同旨の規定はない。 。そして,民法704条によれば,悪意の受益者は,法
)
律上の原因なくして,他人の損失をもって利益を受けた場合,受益額を返還する必
要があるところ,被告の本件カタログにおける会員作品及びピカソ作品の写真掲載
が許される法的根拠は存在せず,被告は当時のSPDAの使用料規程に従った掲載
料の利得を得る一方で,原告らは同額の損失を受け,それらに因果関係があり,ま
た,被告がオークションの実施等をその営業目的とする以上,写真の掲載について
悪意と認められるから,SPDAの使用料規程に基づいて算定された使用料相当額
について,不当利得返還請求及びその附帯請求が認められることになる。
もっとも,この場合,上記で認められた使用料相当額は,不法行為に基づく損害
賠償請求権の額を超えることはない(不当利得返還請求の認容額自体は,不法行為
に基づく損害賠償の認容額と同額となる。また,不当利得返還請求の附帯請求につ
いては,原告らが法定利息を請求しておらず,遅延損害金は催告後から発生し,不
法行為に基づく損害賠償の遅延損害金請求の始期(不法行為時)に遅れるから,こ
の金額を超えることはない。 から,
) 上記不法行為に基づく使用料相当損害金とは別
に不当利得返還請求を認める余地はない。
9 結語
以上によれば,原審の判断には,本件カタログの不存在部分につき,損害を認定
しなかった点において誤りがあるというべきであり,これを改めると,原告X1の
請求は,893万8485円及びこれに対する平成22年6月11日から支払済み
まで年5分の割合による金員の支払を,原告協会の請求は,7862万4614円
及びこれに対する平成22年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員
の支払を求める限度で,それぞれ理由がある。
第5 結論
以上の次第であって,原告X1の控訴,原告協会の附帯控訴及び原告らによる当
審において拡張された請求は,主文掲記の限度で理由があるから,これと結論を異
にする原判決を変更することとし,他方,被告の控訴は理由がないから,被告の控
訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 節
裁判官
片 岡 早 苗
裁判官 新谷貴昭は,転官のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官
清 水 節
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