平成28(ネ)10084不正競争行為差止等請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
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裁判年月日 |
平成28年12月22日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
控訴人株式会社グライド・エンタープライズ 被控訴人クラシエホームプロダクツ株式会社
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法令 |
不正競争
不正競争防止法2条1項1号6回 不正競争防止法2条4項1回
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キーワード |
差止2回 損害賠償1回
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主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事件の概要 |
1 控訴人は,化粧品,日用雑貨等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,
平成26年9月1日から,別紙控訴人商品目録記載の商品(以下「控訴人商品」と
いう。)の販売を開始した。控訴人商品は,全国のドラッグストア,スーパーマーケ
ットなどの小売店等において販売されている。他方,被控訴人は,医薬品,化粧品
等の製造,売買等を目的とする株式会社であり,平成27年10月5日から,別紙
被控訴人商品目録記載の商品(以下「被控訴人商品」という。)の販売を開始した。 |
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判決文
平成28年12月22日判決言渡
平成28年(ネ)第10084号 不正競争行為差止等請求控訴事件
原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第33398号
口頭弁論終結日 平成28年11月24日
判 決
控 訴 人 株式会社グライド・エンタープライズ
同訴訟代理人弁護士 勝 部 環 震
同 本 荘 振 一 郎
被 控 訴 人 クラシエホームプロダクツ株式会社
同訴訟代理人弁護士 三 好 豊
同 桑 原 秀 明
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,別紙被控訴人商品目録記載の商品を製造し,販売し又は販売の
ために展示してはならない。
3 被控訴人は,被控訴人所有に係る前項記載の商品を廃棄せよ。
4 被控訴人は,控訴人に対し,1329万5000円及びこれに対する平成2
7年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は,第1審,第2審とも被控訴人の負担とする。
6 仮執行の宣言
第2 事案の概要
1 控訴人は,化粧品,日用雑貨等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,
平成26年9月1日から,別紙控訴人商品目録記載の商品(以下「控訴人商品」と
いう。)の販売を開始した。控訴人商品は,全国のドラッグストア,スーパーマーケ
ットなどの小売店等において販売されている。他方,被控訴人は,医薬品,化粧品
等の製造,売買等を目的とする株式会社であり,平成27年10月5日から,別紙
被控訴人商品目録記載の商品(以下「被控訴人商品」という。)の販売を開始した。
被控訴人商品は,小売店,インターネット上の通販サイト等において販売されてい
る。
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,①控訴人商品の形態が不正競争防止法2条
1項1号にいう「商品等表示」に該当し,被控訴人商品の形態が控訴人商品の形態
と類似するため,被控訴人商品の販売等が同号にいう不正競争に該当すると主張す
るとともに,②被控訴人商品は,控訴人商品の形態を模倣したものであり,被控訴
人商品の販売等が同項3号にいう不正競争に該当すると主張して,同法3条1項及
び2項に基づき,被控訴人商品の製造,販売及び販売のための展示の各差止め並び
に被控訴人商品の廃棄を求めるとともに,同法4条に基づき,損害賠償金1329
万5000円及びこれに対する平成27年12月4日(訴状送達の日の翌日)から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は,控訴人商品は,他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているという
ことはできず,不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当せず,ま
た,被控訴人商品は控訴人商品を模倣したものともいえず,被控訴人商品の製造販
売行為等が不正競争防止法2条1項1号又は3号にいう不正競争に該当するものと
は認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。これに対し,控訴人は
原判決を不服として控訴した。
2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,後記第3の2において当
審における控訴人の主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事
案の概要」の「前提事実」「争点」及び「争点に関する当事者の主張」に記載のと
,
おりであるから,これを引用する。以下,原判決を引用する場合は,
「原告」を「控
訴人」と,「被告」を「被控訴人」と,それぞれ読み替える。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人商品は不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」
に該当せず,また,被控訴人商品は控訴人商品を模倣したものともいえず,被控訴
人商品の製造販売行為等が不正競争防止法2条1項1号又は3号にいう不正競争に
該当するものとは認められないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判
断する。その理由は,次のとおり原判決を補正して,後記2において当審における
控訴人の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」 「第3
の 当
裁判所の判断」の1から3までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決23頁14行目冒頭から同頁20行目末尾までを次のとおり改める。
「そして,不正競争防止法にいう「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従
った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並
びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいうところ(不正競争防止法
2条4項),前記1の認定事実によれば,控訴人商品の外面包装は,光沢のあるロー
ズピンクであって,伏し目のまつ毛のデザイン及び「LuLuLun」という大き
な文字等が付されていることが認められることからすると,外面包装全体が立方体
であるなどという控訴人主張に係る形態よりも,かえって,外装包装に結合した模
様,色彩,光沢及び質感が,需要者に対し強い印象を与えるものとして出所識別機
能を有するというべきであって(ただし,控訴人は,
「LuLuLun」等の記載を
控訴人商品の形態の特徴として主張するものではない(原審第1回口頭弁論調書参
照),もとよりこれらが不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当
)
するとしても,被控訴人商品が控訴人商品と類似するものではないことは明らかで
ある。」
(2) 同25頁15行目冒頭から同26頁14行目末尾までを次のとおり改める。
「(2) 不正競争防止法にいう「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った
使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びに
その形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感(以下,模様,色彩,光沢及び質感
を併せて「模様等」という。)をいうものである(不正競争防止法2条4項)。
これを本件についてみると,前記1の認定事実によれば,控訴人商品と被控訴人
商品の各外面包装の形状(控訴人態様AないしC,被控訴人態様aないしc)につ
いては,立方体を採用するなどいずれも同種の商品が採用するありふれた形態にす
ぎないものと認められるのに対し,当該各外面包装に結合した模様等(控訴人態様
Dと被控訴人態様d)については,控訴人商品にあっては,ローズピンクという色
彩の上に緑色で描かれた伏し目のまつげとリボン及び緑色の「LuLuLun」と
いう文字が付されているのに対し,被控訴人商品にあっては,ストライプ状のパス
テルピンクの色彩の上に青色で描かれたハートマーク及び円並びに赤色の「ALL
in 1」という文字が大きく付されていることが認められる。そうすると,控訴
人商品と被控訴人商品において,需要者に対し強い印象を与える部分は,商品の外
部及び内部の形状よりも,むしろこれに結合した模様等であると認めるのが相当で
ある。したがって,上記のとおり,控訴人商品と被控訴人商品の模様等は明らかに
異なるものであるから,被控訴人商品の形態が控訴人商品の形態を模倣したものと
認めることはできない。」
2 当審における控訴人の主張について
控訴人は,控訴人商品の外面包装の上面及び下面,フラップラベル,その下の切
込み部分は概ね正方形であって,控訴人商品のような外面包装全体が立方体である
というシンプルなデザインを採用した商品は他に存在しなかったのであり,控訴人
商品の形態は,他の商品とは異なる顕著な特徴を有するものであり,不正競争防止
法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当し,これと実質的に同一の形態の被控
訴人商品は同項3号にいう控訴人商品の「模倣」に該当する旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,商品の形態は,顕著な特徴を有しない限り,そも
そも本来商品の出所を表示するものではなく,控訴人商品の外面包装全体が立方体
であるなどという形態は,極めてシンプルなものであって,上記にいう顕著な特徴
であると認めることはできない。かえって,前記認定事実によれば,控訴人商品と
被控訴人商品は,外面包装に結合した模様,色彩,光沢及び質感が需要者に対し明
らかに異なる印象を与えているのであるから,上記立方体等の形態が商品等表示で
あると認めることはできず,控訴人商品と被控訴人商品が類似するということもで
きない。そのほかに控訴人の当審における主張を改めて十分検討しても,その実質
は,同種の主張を縷々繰り返すものであって,結局のところ,不正競争防止法2条
1項1号又は3号の規定の意義を正解しないものに帰するというほかない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
第4 結論
以上によれば,控訴人の請求は,その余の争点について判断するまでもなく,い
ずれも理由がなく,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を
棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 設 樂 一
裁判官 中 島 基 至
裁判官 岡 田 真 吾
(別紙)
控訴人商品目録
1 商品名
フェイスマスク ルルルン4S
2 内容量
42枚(エッセンス480mL)
3 発売元
株式会社グライド・エンタープライズ
4 包装及び内容器の構造等
以上
(別紙)
被控訴人商品目録
1 販売名
肌美精 オールインワンマスク
2 内容量
42枚(462mL)
3 発売元
クラシエホームプロダクツ株式会社
4 包装及び内容器の構造等
以上
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