知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成29(ワ)5388 発信者情報開示請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成29(ワ)5388発信者情報開示請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成29年6月26日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社MAXING
法令 著作権
著作権法14条2回
著作権法17条1項1回
キーワード 損害賠償5回
侵害4回
商標権2回
主文 1 被告は,原告に対し,別紙1発信者情報目録記載の20情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,別紙2著作物目録記載の映画の著作物(以下「本件著作物」という。) の著作権者であると主張する原告が,氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ ブサイト「FC2動画」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした別紙 3動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)は本件著作物の複製物である5 から,本件投稿者による上記アップロード行為により原告の有する本件著作物の著 作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり,本件投稿者に対する損害賠 償請求権の行使のために本件動画に係る別紙1発信者情報目録記載の情報(以下 「本件発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張して,特定電気通 信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単10 に「法」という。)4条1項に基づき,被告に対し,本件発信者情報の開示を求め る事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 著作権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成29年6月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成29年(ワ)第5388号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 平成29年6月12日
判 決
原 告 株 式 会 社 M A X I N G
同訴訟代理人弁護士 提 箸 欣 也
同 渡 邉 俊 太 郎
同 野 口 耕 治
10 同 藤 沢 浩 一
同 成 豪 哲
同 小 椋 優
同 鶴 谷 秀 哲
15 被 告 ビ ッ グ ロ ー ブ 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 平 出 晋 一
同 髙 橋 利 昌
同 太 田 絢 子
主 文
20 1 被告は,原告に対し,別紙1発信者情報目録記載の
情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
25 主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 本件は,別紙2著作物目録記載の映画の著作物(以下「本件著作物」という。)
の著作権者であると主張する原告が,氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)
が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ
ブサイト「FC2動画」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした別紙
5 3動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)は本件著作物の複製物である
から,本件投稿者による上記アップロード行為により原告の有する本件著作物の著
作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり,本件投稿者に対する損害賠
償請求権の行使のために本件動画に係る別紙1発信者情報目録記載の情報(以下
「本件発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張して,特定電気通
10 信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単
に「法」という。)4条1項に基づき,被告に対し,本件発信者情報の開示を求め
る事案である。
2 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠〔特記しない限り,枝番
号の記載は省略する。以下この判決において同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易
15 に認められる事実等)
(1) 当事者
原告は,各種ビデオ・DVD・映画・レコード・CD・コマーシャルフィルムの
企画・原盤制作・販売及びそれらの著作権の取得並びに管理業務等を業とする株式
会社である(弁論の全趣旨)。
20 被告は,インターネットサービス等の電気通信事業を営む株式会社である。
(2) 本件動画のアップロード
本件投稿者は,別紙3動画目録の「投稿日時」欄に記載の日時頃,被告の提供す
るインターネット接続サービスを経由して,同目録の「投稿先URL」欄に記載の
とおり,本件動画を本件サイトにアップロードし,公衆の求めに応じて自動的に公
25 衆送信が行われる状態においた。
本件投稿者が本件動画を本件サイトにアップロードした時点で使用していたIP
アドレスは,別紙3動画目録の「IPアドレス」欄に記載のとおりである。
(以上につき,甲3,8ないし10)
3 争点
(1) 原告は,本件著作物の著作権者であるか(争点1)
5 (2) 本件動画は,本件著作物の複製物であるか(争点2)
(3) 被告は,「開示関係役務提供者」(法4条1項)に当たるか(争点3)
(4) 本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか(争点4)
4 争点に対する当事者の主張
(1) 争点1(原告は,本件著作物の著作権者であるか)について
10 【原告の主張】
原告は,本件著作物を原告のウェブサイトで販売しているほか(甲5,15),
本件著作物を収録したDVDを製作し,販売しているところ,同DVDのパッケー
ジには,原告が商標権を有する登録商標や,原告の商号である「MAXING」と
の文字が表示されており(甲6,13,14),本件著作物の著作者を示す通常の
15 方法により,原告の名称が表示されているといえる。
したがって,原告は,著作権法14条により,本件著作物の著作者と推定される。
【被告の主張】
DVDのパッケージに「MAXING」との表示があることは認めるが,これが
著作者を示す通常の方法であるとの点は争う。
20 (2) 争点2(本件動画は,本件著作物の複製物であるか)について
【原告の主張】
本件動画は,再生時間21分17秒の動画であって,再生時間約140分の本件
著作物の一部と完全に一致する(甲3,4,12)。
したがって,本件動画は,本件著作物の一部を複製したものであり,本件動画を
25 本件サイトにアップロードする行為は,原告が有する本件著作物の公衆送信権を侵
害する行為であることが明らかである。
【被告の主張】
争う。
(3) 争点3(被告は,「開示関係役務提供者」〔法4条1項〕に当たるか)につ
いて
5 【原告の主張】
原告は,本件サイトを運営するFC2,Inc.から本件動画をアップロードし
た際の本件投稿者のIPアドレス及びタイムスタンプの開示を受けたところ,同I
Pアドレスは被告が保有しており,被告は,本件訴訟に先立ち,本件発信者情報を
保有していること,本件投稿者に意見聴取したことなどを認めていたから,法4条
10 1項にいう「開示関係役務提供者」に当たることが明らかである。
【被告の主張】
被告が上記IPアドレス及び本件発信者情報を保有していること,本件投稿者に
意見聴取したことは認め,被告が「開示関係役務提供者」に当たるとの法的評価は
争う。
15 (4) 争点4(本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか)について
【原告の主張】
原告は,本件投稿者に対し,本件著作物の著作権侵害を原因とする損害賠償を請
求する予定であるが,そのためには,本件発信者情報の開示を受ける必要がある。
【被告の主張】
20 争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(原告は,本件著作物の著作権者であるか)について
証拠(甲5ないし7,13ないし15)によれば,本件著作物を収録したDVD
は,インターネット上のウェブサイト「MAXING」及び「DMM.R18通販」
25 にて通信販売されていること,同DVDのパッケージには,「制作・受審・販売」
との文字に続けて,原告が有する商標権に係る次の登録商標(以下「本件商標」と
いう。)に類似した標章が付されていること,上記ウェブサイト「MAXING」
のトップバナーには本件商標が表示されていること,上記ウェブサイト「DMM.
R18」の本件著作物の販売ページには,「メーカー」として「マキシング」と記
載されていることがそれぞれ認められる。
上記事実によれば,本件著作物が公衆に提供されるに際して,原告の名称が,本
件著作物の著作者名として通常の方法により表示されているということができるか
ら,原告は,本件著作物の著作者と推定され(著作権法14条),同推定を覆すに
足りる事情はうかがわれない。
10 したがって,原告は本件著作物の著作者と認められ,その後著作権が移転した等
の事情もうかがわれないから,原告は,本件著作物の著作権者であると認められる
(著作権法17条1項)。
2 争点2(本件動画は,本件著作物の複製物であるか)について
証拠(甲3ないし7,12)によれば,本件著作物は収録時間約140分の動画
15 であること,本件動画の総再生時間は21分17秒であること,本件サイトにアッ
プロードされていた本件動画の再生前サムネイル画像と本件著作物の再生時間72
分23秒付近のスクリーンショットとが一致すること,本件動画の再生中のスクリ
ーンショットと本件著作物の再生時間63分23秒付近のスクリーンショットとが
一致すること,本件動画は,本件著作物の再生時間61分頃から83分頃までと一
20 致することがそれぞれ認められる。
以上の事情及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件動画は,本件著作物に依拠し,
その内容及び形式を覚知させるに足りるものとして再製されたもの,すなわち,本
件著作物の複製物であると認められる。
3 争点3(被告は,「開示関係役務提供者」に当たるか)について
最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体
に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介す
る経由プロバイダは,法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に当たると解
するのが相当であるところ(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8
5 日第一小法廷判決・民集64巻3号676頁),前記前提事実(第2,2(2))のと
おり,本件投稿者は,被告が提供するインターネット接続サービスを経由して,本
件著作物の複製物である本件動画を本件サイトにアップロードし,公衆の求めに応
じて自動的に公衆送信が行われる状態においたものであるから,これにより原告が
有する本件著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかである。
10 したがって,被告は,法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に当たり,
また,同4条1項にいう「開示関係役務提供者」に当たるものと認められる。
4 争点4(本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか)について
弁論の全趣旨によれば,原告は,原告が有する本件著作物の著作権(公衆送信権)
が侵害されたことを原因として,本件投稿者に対して不法行為による損害賠償請求
15 権を行使するため,本件発信者情報の開示を求めているものと認められるところ,
損害賠償請求権を行使するためには,本件投稿者を特定する必要があるから,原告
には,同特定のために本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。
5 結論
以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のと
20 おり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
25 裁判長裁判官
嶋 末 和 秀
裁判官
天 野 研 司
裁判官
西 山 芳 樹
(別紙1)
発 信 者 情 報 目 録
別紙3動画目録記載の投稿日時に,同目録記載のIPアドレスを使用していた者
の下記情報
5 記
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
以 上
(別紙2)
著 作 物 目 録
「セル解禁×ムチムチッ!巨乳だけでイイ! 佐山愛」
5 以 上
(別紙3)
動 画 目 録
動画
5 投稿先URL http://以下省略
投稿日時 2016/05/20 05:17:06
IPアドレス 122.131.166.52
以 上

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (2月24日~3月2日)

2月26日(水) - 東京 港区

実務に則した欧州特許の取得方法

来週の知財セミナー (3月3日~3月9日)

3月4日(火) -

特許とAI

3月6日(木) - 東京 港区

研究開発と特許

3月7日(金) - 東京 港区

知りたかったインド特許の実務

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

溝上法律特許事務所

大阪府大阪市西区靱本町1丁目10番4号 本町井出ビル2F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

特許業務法人 浅村特許事務所 (東京都品川区)

〒140-0002 東京都品川区東品川2丁目2番24号 天王洲セントラルタワー21F・22F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

矢野特許事務所

京都市伏見区深草大亀谷万帖敷町446-2 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング