ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成29(ワ)29099 損害賠償等請求事件
| 裁判所 | 一部認容 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成30年4月26日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告群馬県立桐生高等学校応援団山紫会 |
| 法令 |
著作権 著作権法114条3項3回 著作権法112条1項2回 著作権法27条1回 著作権法21条1回 |
| キーワード | 損害賠償12回 侵害11回 許諾2回 差止2回 |
| 主文 | 1 被告は,別紙写真目録記載の写真を掲載した別紙書籍目録記載の各書籍を印刷し,又は頒布してはならない。15 2 被告は,別紙書籍目録記載の各書籍のうち別紙写真目録記載の写真を掲載した部分(別紙書籍目録記載の使用頁)を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,40万円及びこれに対する平成21年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。20 5 訴訟費用はこれを10分し,その7を原告の,その余を被告の各負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 | 本件は,法人格なき社団である原告が,被告に対し,被告が別紙写真目録記載 の写真(以下「本件写真」という。)を別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件書 籍」と総称する。)に使用し,本件書籍を販売したことが本件写真に係る著作権5 (複製権,翻案権,譲渡権又は著作権法28条に基づく二次的著作物の利用に関 する原著作者の権利)侵害に該当し,原告は本件写真の著作権者から本件写真の 著作権及び被告に対する上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(譲 受日までに発生していた請求権)を譲り受けたと主張して,著作権法112条1 項及び2項に基づく本件書籍の印刷,頒布の差止め及び本件書籍のうち本件写真10 を掲載した部分の廃棄並びに民法709条及び著作権法114条3項に基づき, 一部請求として,損害賠償金220万円及びこれに対する不法行為日(本件書籍 の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払を求める事案である。 |
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平成30年4月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成29年(ワ)第29099号 損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 平成30年3月1日
判 決
原 告 群馬県立桐生高等学校応援団山紫会
同訴訟代理人弁護士 城 野 雄 博
被 告 株 式 会 社 太 陽
同訴訟代理人弁護士 田 中 宏 至
主 文
1 被告は,別紙写真目録記載の写真を掲載した別紙書籍目録記載の各書籍を印刷
し,又は頒布してはならない。
2 被告は,別紙書籍目録記載の各書籍のうち別紙写真目録記載の写真を掲載した
部分(別紙書籍目録記載の使用頁)を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,40万円及びこれに対する平成21年8月20日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用はこれを10分し,その7を原告の,その余を被告の各負担とする。
6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主文第1項及び第2項と同旨2 被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成21年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,法人格なき社団である原告が,被告に対し,被告が別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件書
5 籍」と総称する。)に使用し,本件書籍を販売したことが本件写真に係る著作権(複製権,翻案権,譲渡権又は著作権法28条に基づく二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)侵害に該当し,原告は本件写真の著作権者から本件写真の著作権及び被告に対する上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生していた請求権)を譲り受けたと主張して,著作権法112条1項及び2項に基づく本件書籍の印刷,頒布の差止め及び本件書籍のうち本件写真を掲載した部分の廃棄並びに民法709条及び著作権法114条3項に基づき,一部請求として,損害賠償金220万円及びこれに対する不法行為日(本件書籍の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者等原告は,群馬県立桐生高等学校応援団の卒業生で組織する法人格なき社団である。被告は,書籍雑誌の発行,印刷及び販売等を業とする株式会社である。本件写真本件写真は,別紙写真目録記載のとおりのカラー写真であり,高等学校の野球の試合における,応援団による応援風景の写真である。本件写真は,平成17年5月16日,Aが撮影したものである。(甲1,4)被告の行為被告は,平成21年8月20日,本件書籍を発行した(本件書籍の販売期間及びその方法については争いがある。。)本件書籍は,北海道内の高等学校の校訓や校歌,応援歌の歌詞等を紹介する全8集の書籍である。本件書籍の別紙書籍目録の使用頁欄記載の頁の下方の部分(合計99箇所)には,それぞれ応援団による応援風景のグレー一色モノク
5 ロ画像(いずれの頁の画像も同じ画像。以下「本件画像」という。)が掲載されている。なお,本件書籍は全8集で合計1160頁(1集145頁)であり,見開き2頁で上記校訓,校歌の歌詞等を紹介しており,本件画像を使用していない校訓,校歌の歌詞等の紹介頁には,本件画像とは異なるグレー一色モノクロ画像が掲載されている。(乙5)本件画像は,本件書籍のデザイン等を担当した者が,インターネット上にアップロードされていた本件写真のデジタルデータを加工して作成したものである。2 争点本件写真の著作物性本件写真に係る著作権の侵害の有無本件書籍の販売期間及び方法本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属損害の発生の有無及び損害額3 争点に関する当事者の主張争点 (本件写真の著作物性)について(原告の主張)本件写真は,Aが,平成17年5月16日,埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景を,被写体,シャッターチャンス,撮影方向(アングル),撮影角度を変え,全体の構図を考えながら,デジタルカメラで何枚も撮影したうちの1枚であり,野球場のグラウンド部分と三塁側スタンド部分で画面を斜め(右斜め下方向)に分け,中央に女子生徒のリーダーを配し,同女が応援団を統率する光景を,スタンド上方斜め右(本塁寄り)のアングルから俯瞰する角度で,リーダーが両手を高く広げる瞬間(構図)を狙って撮影した作品である。本件写真は,被写体の選択や配置,シャッターチャンスの捕捉,アングル,
5 構図の選択等に独自性が現れており,撮影者の思想,感情が創作的に表現された創作性を有する著作物である。(被告の主張)本件写真は,野外の野球場における応援団の女子生徒のリーダー1名と応援者数名が映っている写真である。その被写体の姿勢等には撮影者の工夫や演出は加わっておらず,光量や焦点距離等の撮影条件についても特段の配慮をせずにあるがままの光景をそのまま撮影した写真であること,被写体は応援団が応援をしているというありふれた場面であることなどからすれば,本件写真は撮影者の思想,感情が創作的に表現されたものであるとはいえず,本件写真は創作性を有する著作物ではない。争点 (本件写真に係る著作権の侵害の有無)について(原告の主張)ア 本件画像は,本件写真の表現上の本質的特徴である,野球場のグラウンド部分と三塁側スタンド部分で画面を斜め(右斜め下方向)に分け,中央に両手を上方に広げる女子生徒のリーダーを配し,スタンド上方斜め右(本塁寄り)のアングルから俯瞰する角度で撮影したという構図が維持されている。本件写真がカラーであるのに対して本件画像はモノクロであり,本件画像からは本件写真の一部が削除されているが,本件画像は本件写真の上記の表現上の本質的な特徴を直接感得するのに十分な大きさ,状態で,その表現が再現されており,本件写真には存在しない表現上の思想,感情が創作的に表現されたものとはいえない。したがって,本件画像は,本件写真に依拠し,これを複製したものであり,被告が本件画像を作成し,本件書籍に掲載して販売した行為は,本件写真に係る複製権(著作権法21条)及び譲渡権(同法26条の2第1項)の侵害に該当する。イ 仮に,本件画像において新たな表現上の思想,感情が創作的に表現されて
5 いるとしても,本件写真の上記の表現上の本質的特徴は維持されているから,本件画像は本件写真の翻案による二次的著作物である。したがって,被告が本件画像を作成し,本件書籍に掲載して販売した行為は,本件写真に係る翻案権(同法27条),二次的著作物の利用(複製及び譲渡)に関する原著作者の権利(同法28条,21条,26条の2第1項)の侵害に該当する。(被告の主張)本件写真は,多色カラートーンであり,鮮明に映された女子リーダーの表情や姿勢等から,女子リーダーの高い統率能力が印象づけられる点に本質的特徴がある。このことは,本件写真が撮影された当時,応援団のリーダーが女性であることは珍しかったことや,撮影者であるAが,本件写真の被写体である女子リーダーの指揮ぶりに迫力があり,格好いいと思ったことから,本件写真を撮影したと自負していることからも明らかである。これに対し,本件画像は,グレー一色のモノクロ画像であり,被写体の人物の表情等は不鮮明であり,一般の応援風景(応援団リーダーと同人に統率される応援者多数からなる人物配置)が描写内容となっており,本件写真の表現上の本質的特徴を感得することはできない。被告担当者は,一般的な高等学校の応援団による応援風景を歌詞の背景画として挿入することを考え,本件画像を作成したにすぎない。そのため,本件画像では,リーダーが女性であることやその姿勢や表情は不鮮明なものに加工されており,その結果,女子リーダーの高い統率能力という本件写真の本質的特徴は排除されている。したがって,本件画像は本件写真の複製又は翻案には該当せず,被告が本件画像を作成し,本件書籍に掲載して販売した行為は,本件写真に係る複製権等の著作権侵害には該当しない。争点 (本件書籍の販売期間及び方法)について(原告の主張)
5 被告は,平成21年8月20日に本件書籍を発行し,その後,現在に至るまで本件書籍の在庫品を保管し,販売を継続している。(被告の主張)被告は,平成21年8月20日,本件書籍の第1版合計1万6000部(1集につき2000部)を発行し,北海道内の書店において販売したが,発行日から約1年後には書店での販売を取り止めた。その後,一部在庫品を保管していて,注文があれば販売している。争点 (本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属)について(原告の主張)本件写真は,平成17年5月16日,Aが,埼玉県営大宮公園野球場において開催された関東地区春季高等学校野球大会において撮影した写真であり,Aが著作者としてその著作権を有していた。原告は,平成29年4月19日,Aから本件写真の著作権(著作権法27条及び28条の権利を含む。)及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けた。(被告の主張)いずれも不知。争点 (損害の発生の有無及び損害額)について(原告の主張)ア 著作権法114条3項に基づく損害上記 の原告の主張のとおり,被告は,平成21年8月20日に本件書籍を発行し,その後,現在に至るまで在庫品を保管し,販売を継続している。写真の標準的な使用料規程(甲5,6の1~8)には,使用目的や媒体ごとに一定期間を一単位とする使用期間の定めがある。使用目的や媒体の通常の発行期間又は回数を料金設定の最低単位とすることで,著作権者の許諾事務の煩雑やユーザーの経済的な負担(使用期間中の増刷であれば,新たな許
5 諾は不要となり,追加料金も発生しない。)が軽減されるその使用料規程を踏まえると,写真を書籍の中面で使用する場合,最低単位となる使用期間は5年間,1点当たりの使用料相当額は2万円,同一利用者が同一書籍内で同一写真を複数回使用する場合の2回目以降の使用料相当額は1万4000円(1回目の使用料の70%)である。本件は,写真を一般的な単行本で使用した事例であり,上記使用料規程(甲5,6の1・5)のとおり,使用期間5年を単位として料金設定すべきであり,本件画像は合計99箇所掲載されているから,本件写真の使用料は,5年間当たりで139万円[2万円×1+(1万4000円×98)=139万2000円]を下らない。被告は,平成21年8月20日から現在まで本件書籍の販売を継続しているから,使用料相当額は278万円[139万2000円×2=278万4000円]を下らない。イ 弁護士費用相当額の損害額弁護士費用相当額は20万円が相当である。ウ よって,原告は,被告に対し,民法709条及び著作権法114条3項に基づき,上記アの損害賠償金278万円の一部請求として200万円及び弁護士費用相当額20万円並びにこれらに対する不法行為日(本件書籍の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(被告の主張)否認ないし争う。ア 上記 の被告の主張のとおり,本件画像からは本件写真の表現上の本質的特徴を感得することはできないこと,本件画像は校歌等の歌詞の背景画として使用されているにすぎないことなどからすれば,被告が本件画像を本件書籍に掲載したことで本件写真の著作権者が不利益を被ることはなく,著作権
5 者に損害は発生していない。イ 被告が本件写真を加工して本件画像を作成するに際し,本件写真の撮影者に対して謝礼的範囲の金額の金銭以上の金銭を支払うべき義務はない。したがって,本件写真の使用料相当額の損害額は謝礼的範囲の金額の金銭にとどまる。本件書籍は初版第1刷のみ合計1万6000部(1集につき2000部)が発行された。現時点までに販売できたのは多く見積もってもその半数にすぎないが,仮に全部販売できたと想定しても,売上額は761万6000円(1冊476円×1万6000部)であり,各諸経費を差し引いた利益額は,その1割の76万1600円より少ないと考えられ,当該利益額を踏まえると,被告が本件写真の撮影者に対して支払うべき謝礼的範囲の金銭の額は7万円ないし8万円程度である。
第3 当裁判所の判断
1 争点 (本件写真の著作物性)について
本件写真は,画像の上半分に野球場のフェンス,その土台及びフェンス越しのグラウンド,下半分にスタンドが写っていて,フェンス側及びスタンド側で画面が斜め(右斜め下方向)に分けられているカラー写真である。スタンドとフェンスの間には,スタンドに向いて起立し,背中を大きくそらし,両手を上方に広げ,口を大きく開けて応援団を統率している学生服姿の女子生徒が写っており,その女子生徒の左側にスタンドの観客席で起立してメガホンを持つなどする学生服姿やユニホーム姿の数名の男子生徒が写っていて,また,女子生徒の右側下部分には試合を観戦する観客数名の後頭部が写っている(甲1)。本件写真は,撮影者であるAが,平成17年5月16日,埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景を,被写体,シャッターチャンス,撮影方向(アングル),撮影角度を変え,全体の構図を考えながら,デジタルカメラで何枚も撮影したう
5 ちの1枚であり,野球場のグラウンド部分と三塁側スタンド部分で画面を斜め
(右斜め下方向)に分け,中央に女子生徒を配し,同女が応援団を統率する光景を,スタンド上方斜め右(本塁寄り)から俯瞰する角度で,女子生徒が両手を上方に高く広げる構図を狙って撮影したものである(甲4)。このように,本件写真の撮影者であるAは,本件写真の撮影に当たり,被写体の選択や配置,シャッターチャンスの捕捉,アングル,構図等に工夫を加えて撮影しており,撮影者の思想・感情が創作的に表現されているから,本件写真は写真の著作物として著作物性が認められる。これに対し,被告は,本件写真には著作物性が認められないと主張する。しかしながら,上記のとおり,本件写真は被写体の選択や配置,シャッターチャンスの捕捉,アングル,構図等において,撮影者の思想・感情が創作的に表現されているものであり,
(被告の主張)
を採用することはできない。
2 争点 (本件写真に係る著作権の侵害の有無)について
本件画像(乙5) 別紙書籍目録の使用頁欄記載の各頁の下部分において,は,歌詞等の背景として,1頁の3分の1程度の大きさで掲載された,やや不鮮明なモノクロ画像であり,右斜め下方向にフェンスとその土台が伸びているのが写り,上記フェンスの前に,起立し,背中を大きくそらして,両手を上方に広げ,口を大きく開けて応援団を統率している学生服姿の女子生徒が写っており,女子生徒の左側には学生服姿やユニホーム姿の男子生徒が3名写っていて,これらの女子生徒や男子生徒を斜め上方から俯瞰する角度で捉えた画像である。本件画像は,被告担当者が本件写真を加工して制作したものである(前提事実 )。上記1のとおりの本件写真と本件画像を対比すると,本件画像は,本件写真のうち,応援団を統率する女子生徒と起立して応援する生徒等が写っている左部分及び中央部分を使用し(本件写真の約半分程度),グラウンドや観客数名の後頭部等が写っている部分を除いて,モノクロ画像にするなどの加工を経た
5 ものであると認められる(甲1,乙5)。
本件画像は,本件写真に写っていたグラウンドや一部の観客の後頭部等が写っていないほか,加工を経たことによって,モノクロ画像となり,また,本件写真と比べると,女子生徒や応援する男子生徒らの表情等がやや不鮮明なものとなっている。しかし,上記 とその土台で画面を右斜め下方向に分け,フェンスの前に応援団を統率している学生服姿の女子生徒を配し,女子生徒の左側に学生服姿やユニホーム姿の男子生徒を配して,女子生徒が起立して背中を大きくそらし,両手を上方に広げ,口を大きく開けた瞬間を斜め上方から俯瞰する角度で捉えた画像であるところ,これらは,上記1に照らし,本件写真における創作的な部分であり,本質的特徴といえる部分で,本件画像は本件写真におけるこの創作的な部分を本件書籍に掲載(再製)したといえる。したがって,本件画像は,本件写真に依拠し,本件写真の創作的な部分を本件書籍に掲載(再製)したものであって,本件写真を複製したものであると認められる。これに対し,被告は,本件写真は,多色カラートーンであり,鮮明に映された女子生徒の表情や姿勢等から,その高い統率能力が印象づけられる点に本質的特徴があるのに対し,本件画像では,本件写真の本質的特徴は排除されていると主張する。しかしながら,上記のとおり,本件画像において本件写真の創作的な部分が本件書籍に掲載(再製)されているといえるから,
(被告の主張)
を採用することはできない。
3 争点 (本件書籍の販売期間及び方法)について
証拠(乙2,甲7~10)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成21年8月20日,本件書籍の第1版合計1万6000部(1集につき2000部。1集の本体価格476円(税抜価格) を発行し,) 北海道内の書店等において販売したこと,発行日から約1年後には書店での販売を取り止めたこと,現在でも本件書
5 籍の在庫を保管し,注文があれば販売していることが認められる。
4 争点 (本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属)について
上記1のとおり,本件写真の撮影者はAであるから,Aが本件写真の著作者であり,著作権者であったと認められる。そして,証拠(甲3の1,甲4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成29年4月19日,Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けたと認められる。
5 争点 (損害の発生の有無及び損害額)について
以上のとおり,被告は,本件画像を本件書籍に掲載し,本件書籍を販売したことによって本件写真に係る複製権及び譲渡権を侵害した。また, (乙1)証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件写真は他者が撮影したものであることを認識しながら,漫然とこれを使用しているから,被告には少なくとも過失があると認められる。したがって,Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生した請求権)を譲り受けた原告は,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件書籍の印刷又は頒布の差止め,同条2項に基づき,侵害行為を組成した本件書籍のうち本件画像を掲載した部分(別紙書籍目録記載の使用頁)の廃棄を請求することができるとともに,民法709条及び著作権法114条3項に基づき,本件写真の使用料相当額等の損害賠償金の支払を求めることができるというべきである。これに対し,被告は,本件画像は校歌等の歌詞の背景画として使用されているにすぎないことなどからすれば,被告が本件画像を本件書籍に掲載したことで,本件写真の著作権者に対して不利益を与えるものではなく,損害は発生していないと主張するが,本件においては,著作権者に少なくとも本件写真の使用料相当額等の損害が生じたというべきであり,
(被告の主張)
は採用することができない。
5 著作権侵害(著作権法114条3項に基づく損害)について
ア 原告は,写真を使用する場合の標準的な使用料規程によれば,写真を書籍の中面で使用する場合,最低単位となる使用期間は5年間であり,被告は平成21年8月20日から現在まで本件書籍の販売を継続しているから,本件における使用料相当額は使用期間10年(最低使用期間5年×2)を基準として,278万円になると主張する。株式会社アフロが定める使用料規程においては,B7サイズの写真を書籍の中面で使用する場合の使用料相当額は,使用期間5年間で1点当たり2万円であり,同一利用者が同一書籍内で同一写真を複数回使用する場合の2回目以降は1万4000円(1回目の使用料の70%)である(甲5)。株式会社アマナイメージズが定める使用料規程においては,B7サイズの写真を単行本の中面で使用する場合の使用料相当額は使用期間5年間で1点当たり2万1060円であり,同一利用者が同一書籍内で同一写真を複数回使用する場合の2回目以降は1万4742円(1回目の使用料の70%)であり,「使用期間を超過しての増刷は別途料金が発生」すると定められている(甲6の1・5)。しかしながら,株式会社アマナイメージズが定める使用料規程においては,「使用期間を超過しての増刷は別途料金が発生」すると定められており(株式会社アフロが定める使用料規程には当該規定はないが,株式会社アマナイメージズが定める使用料規程と同様の仕組みであると考えられる。,上記各)使用料規程における「使用期間」は,書籍の販売期間を指すものとは認められない。そして,本件書籍は第1版が発行された後,現在に至るまで増刷されていないから,
(原告の主張)
を直ちに採用することはできない。イ 本件において,本件画像は,本件写真の一部(約半分程度)を切り出し,モノクロ画像に加工したものであり,その画像もやや不鮮明なものである。本件書籍において,本件画像は,北海道内の高等学校の校訓及び校歌や応援
5 歌等の歌詞等を紹介する本件書籍において,校歌等の歌詞の背景として,1
頁の下部3分の1程度の大きさで,モノクロでやや不鮮明な画像として掲載されたにすぎず,本件写真自体が独立の鑑賞の対象となる作品として使用されたものではない。また,本件書籍は1集につき各2000部(8集合計1万6000部)発行され,本件画像の掲載枚数も相当数ではあるが,本件画像を使用していない校訓,校歌の歌詞等の紹介頁には,本件画像とは異なるグレー一色モノクロ画像が掲載されている。なお,本件書籍の1集の本体価格は476円(税抜価格)であり,実際の販売量は明らかではないが,仮に全部販売されたとしても,その売上額は761万6000円(1冊476円×1万6000部)である。以上の事情に照らすと,本件における使用料相当額を上記使用料規程(甲5,6の1 5)・ に基づいて算定することは適切ではないというべきである。そこで,本件における本件画像の内容,本件書籍における使用方法,本件書籍の内容や発行数等その他本件に現れた諸事情に照らし,本件における使用料相当額は30万円とするのが相当である。弁護士費用相当額の損害額本件に現れた諸事情に照らし,本件における弁護士費用相当額の損害額は10万円とするのが相当である。小活したがって,原告は,被告に対し,損害賠償金合計40万円及びこれに対する不法行為日(本件書籍の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
6 結論
よって,原告の請求は主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれらを認容し,原告のその余の請求は理由がないから棄却することとし,また,主文
第1項及び第2項については,仮執行宣言を付すことは相当でないから,これを
5 付さないこととし,主文第3項には仮執行宣言を付すこととして,主文のとおり
判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 柴 田 義 明裁判官 大 下 良 仁裁判官林雅子は,差支えのため署名押印できない。裁判長裁判官 柴 田 義 明(別紙)写 真 目 録平成17年5月16日,埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における,群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景を撮影した次の写真(写真省略)以 上(別紙)書 籍 目 録
1 北海道高等学校校歌全集 全8集の1
5 (使用頁)15,19,23,27,41,49,55,61,77,81,9
3,121及び131頁
2 北海道高等学校校歌全集 全8集の2
(使用頁)11,17,21,27,41,53,61,69,77,83,89,101,113,123及び131頁
3 北海道高等学校校歌全集 全8集の3
(使用頁)11,17,45,49,61,77,81,95,99,109及び127頁
4 北海道高等学校校歌全集 全8集の4
(使用頁)13,19,33,39,43,47,85,101,117,123及び131頁
5 北海道高等学校校歌全集 全8集の5
(使用頁)27,43,49,69,75,83,87,97,107,111,119及び127頁
6 北海道高等学校校歌全集 全8集の6
(使用頁)13,17,27,37,59,67,73,79,103,109,123及び131頁
7 北海道高等学校校歌全集 全8集の7
(使用頁)11,15,39,47,67,75,81,85,93,109及び131頁
8 北海道高等学校校歌全集 全8集の8
(使用頁)11,33,43,49,63,67,71,77,85,95,1,111,115,119及び129頁以 上
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MyTokkyo.Aiで何ができる? MyTokkyo.Ai導入検討者向け説明会|研究開発・知財のための基本機能と活用事例
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