ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成29(行ケ)10228 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成30年6月13日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告ケントジャパン株式会社 原告スペリー・トップ‐サイダー・リミテ |
| 法令 |
商標権 商標法2条3項1号4回 商標法2条3項2号3回 商標法50条1回 商標法50条1項1回 |
| キーワード | 審決17回 許諾2回 商標権2回 特許権1回 意匠権1回 実施1回 実用新案権1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,以下の商標(登録第5487411号。以下「本件商標」という。) の商標権者である(甲2,6)。 商 標 別紙商標目録記載のとおり 登録出願日 平成23年11月16日 設定登録日 平成24年4月20日 指 定 商 品 第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」 (2) 原告は,平成28年5月18日,本件商標について,商標法50条1項所 定の商標登録取消審判(以下「本件審判」という。)を請求し,同月30日, その登録がされた(甲6)。 特許庁は,本件審判の請求を取消2016-300335号事件として審 理し,平成29年8月3日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審 決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月11日,原告に送 達された。 (3) 原告は,平成29年12月8日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提 |
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平成30年6月13日判決言渡
平成29年(行ケ)第10228号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成30年5月14日
判 決
原 告 スペリー・トップ‐サイダー・リミテ
ッド・ライアビリティ・カンパニー
訴訟代理人弁理士 長 谷 玲 子
被 告 ケントジャパン株式会社
訴訟代理人弁理士 藤 沢 則 昭
同 藤 沢 昭 太 郎
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が取消2016-300335号事件について平成29年8月3日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,以下の商標(登録第5487411号。 「本件商標」以下 という。)の商標権者である(甲2,6)。商 標 別紙商標目録記載のとおり登録出願日 平成23年11月16日設定登録日 平成24年4月20日指 定 商 品 第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」
(2) 原告は,平成28年5月18日,本件商標について,商標法50条1項所定の商標登録取消審判(以下「本件審判」という。)を請求し,同月30日,その登録がされた(甲6)。特許庁は,本件審判の請求を取消2016-300335号事件として審理し,平成29年8月3日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月11日,原告に送達された。
(3) 原告は,平成29年12月8日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。その要旨は,本件商標の通常使用権者である株式会社フィールドハウス(以下「フィールドハウス」という。)が,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に,日本国内において,筆記体で書された「Top-Sider」の欧文字(以下「本件使用商標」という。)が留め具付近の革部材に素押しされ,本件使用商標が表示された下げ札を付した「ベルト」を販売,納品した行為は,商標法2条3項1号,2号の使用に該当し,本件審判の請求に係る指定商品中の「ベルト」について,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したものといえるから,本件商標の登録は,同法50条の規定により取り消すことはできない,というものである。なお,フィールドハウスが本件商標の通常使用権者であることは当事者間に争いがない。取消事由本件商標の使用の事実の判断の誤り
第3 当事者の主張
(原告の主張)
⑴ フィールドハウスが本件使用商標をベルトに付した事実の不存在
本件審決は,フィールドハウスが株式会社トーア(以下「トーア」という。)に対し本件使用商標を素押ししたベルトの製造を発注し,これを受注したトーアが有限会社熊沢(以下「熊沢」という。)に対し,本件使用商標を素押しするよう指示をした後,熊沢からトーアに留め具付近の革部材に本件使用商標を素押ししたベルトが納品され,トーアがフィールドハウスに上記ベルトを納品したものと推認することができるから,フィールドハウスは,本件使用商標をベルトに付したものと認められ,これは商標法2条3項1号の使用に該当する旨判断した。しかし,トーア作成の熊沢に対する指示書(甲22)には,ベルトに素押しする文字は「Top-Sider」であると手書きで記載されているだけであり,素押しする文字が本件使用商標と同一の構成文字から成る「Top-Sider」であることを確認することはできない。また,トーアの受注者側である熊沢が作成した納品書等の取引書類は提出されていないから,トーアと熊沢との間で取引があったものと認めることはできない。したがって,トーアが留め具付近の革部材に本件使用商標を素押ししたベルトを製造し,これをフィールドハウスに納品したものと推認することができない以上,トーアがフィールドハウスに上記ベルトを納品したものと認められないから,本件審決の上記判断は誤りである。
⑵ フィールドハウスによる本件商標が付されたベルトの販売の事実の不存在
本件審決は,フィールドハウスが,株式会社ヴァンヂャケット(以下「ヴァンヂャケット」という。)に対し,留め具付近の革部材に本件使用商標が素押しされているベルトを販売,納品したことを推認することができるから,フィールドハウスは,本件使用商標を付したベルトを譲渡したことが認められ,これは商標法2条3項2号の使用に該当する旨判断した。しかし,被告は,フィールドハウスの傍系会社であって,かつ,ヴァンヂャケットの株主であること,被告の代表取締役のAは,フィールドハウス及びヴァンヂャケットの筆頭株主であること,被告の取締役のBは,ヴァンヂャケットの社長であること,フィールドハウスの代表者のCは,ヴァンヂャケットの取締役であること,フィールドハウスとヴァンヂャケットの本店所在地はいずれも(略)であることからすると,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,関連会社であるといえる。そうすると,本件審決がいうフィールドハウスのヴァンヂャケットに対する上記ベルトの譲渡行為は,関連会社間の単なる商品の移動であって,本件商標の登録の不使用取消しを免れる目的で,名目的に本件使用商標を使用する外観を呈する行為にすぎないから,商標法2条3項2号の使用に該当しない。したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
⑶ 小括
以上のとおり,被告は,要証期間内において,本件商標の通常使用権者であるフィールドハウスが本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを証明したとはいえないから,本件商標の登録は商標法50条の規定により取り消されるべきである。
(被告の主張)
(1)
(原告の主張)
(1)に対し
トーア作成の熊沢に対する指示書(甲22)には,ベルトに素押しする文字が本件使用商標と同一の構成文字であることを確認することができる。そして,上記指示書のほか,フィールドハウス作成のトーアに対する発注書(甲8),トーア作成の受注明細(甲9),トーアの従業員作成の証明書(甲10,27)等の記載事項を総合すれば,トーアが熊沢に対しベルトに本件使用商標を素押しするように指示したこと,トーアがフィールドハウスに対し本件使用商標が素押しされたベルトを納品したことが認められるから,フィールドハウスが本件使用商標をベルトに付した旨の本件審決の判断に誤りはない。
(2)
(原告の主張)
(2)に対し
本件審決が認定するとおり,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットが関連会社であるとしても,財務や業務,仕入先,販売先等が異なる別法人であって,関連会社間の取引自体は通常あり得るものである。そして,ヴァンヂャケットは,フィールドハウスに対し,本件使用商標が素押しされたベルトの商品について,受入伝票(甲16)を発行し,フィールドハウスは,ヴァンヂャケットに対し,販売代金を請求していること(甲17)からすると,フィールドハウスがヴァンヂャケットに対し上記ベルトを販売,納品したものであるから,フィールドハウスが本件使用商標を付したベルトを譲渡した旨の本件審決の判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
認定事実
⑴ 証拠(甲3ないし5,8ないし18,20ないし22,24,25,27ないし32)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ア 被告は,平成10年3月に設立された,衣料用繊維製品及び皮革製品の製造,販売,輸出入,特許権,実用新案権,意匠権,商標権及び技術的知識の実施許諾等を業とする株式会社である。フィールドハウスは,平成13年8月に設立された,ネクタイ,ベルト,帽子等の製造を業とする株式会社である。ヴァンヂャケットは,昭和55年12月に設立された,男子服の販売等を業とする株式会社である。イ 被告は,平成27年9月1日,フィールドハウスに対し,以下のとおり,本件商標の通常使用権を許諾した。期 間 平成27年9月1日~平成28年8月31日指定商品 第25類「ベルト」販売地域 日本国ウ(ア) フィールドハウスは,2015年(平成27年)12月3日付け各発注書(甲8)をもって,トーアに対し,「トップサイダー」のブランドを付してヴァンヂャケットに販売する目的で,品番を「FTS-14100」ないし「FTS-14104」とするベルト(以下「本件ベルト」という。)合計430本を,納期を平成28年2月1日として発注し,トーアは,平成27年12月4日付け「受注明細」(甲9)をもって,これを受注した。その際,フィールドハウスは,トーアに対し,本件使用商標のロゴを交付し,本件ベルトの留め具付近の革部材に本件使用商標を素押しするよう指示した。トーアは,上記ロゴを用いて本件使用商標の版下を作成した後,平成27年12月4日,熊沢に対し,本件ベルトに上記版下を素押しするよう指示(甲22)して,本件ベルト合計430本を発注した。(イ) フィールドハウスと東京吉岡株式会社(以下「東京吉岡」という。)は,平成27年12月11日及び同月15日,本件ベルト用の本件使用商標を表示した下げ札のデザイン案(甲28,29)の打合せをした。フィールドハウスは,同月21日,東京吉岡に対し,本件使用商標が表示された下げ札(以下「本件下げ札」という。)合計475枚(甲30)を発注し,東京吉岡は,平成28年1月20日,本件下げ札をフィールドハウスに納品(甲31,32)した。(ウ) 熊沢は,トーアから前記(ア)の発注を受けて,留め具付近の革部材に本件使用商標を素押しした本件ベルト合計430本を製造し,トーアは,平成28年2月1日,これをフィールドハウスに納品(甲11,12)した。フィールドハウスは,同日,ヴァンヂャケットに対し,本件下げ札を付した本件ベルト合計430本を販売し,納品(甲14ないし16)した。エ ヴァンヂャケットは,平成28年2月から3月までの間に,その店舗において,留め具付近の革部材に本件使用商標が素押しされ,本件下げ札が付された本件ベルト合計20本(甲20,21)を販売した。
(2) これに対し原告は,トーア作成の熊沢に対する指示書(甲22)には,ベルトに素押しする文字は「Top-Sider」であると手書きで記載されているだけであり,素押しする文字が本件使用商標と同一の構成文字から成る「Top-Sider」であることを確認することはできないし,また,トーアの受注者側である熊沢が作成した納品書等の取引書類は提出されていないから,トーアと熊沢との間で取引があったものと認めることはできない旨主張する。しかしながら,甲22の指示書(甲22)には,上段に「Top-Sider」,中段に「25」,下段に「素押し」の文字が記載された三段からなる部分や「Top-Sider」の文字に「25㎜ 素押し」の説明が付記された部分があることからすると,上記指示書から,ベルトに素押しする文字が「Top-Sider」の欧文字であることを確認することができる。また,前掲⑴の各証拠によれば,トーアが平成27年12月4日に熊沢に対し本件ベルトに本件使用商標の版下を素押しするよう指示して,本件ベルト合計430本を発注したこと(前記(1)ウ(ア))が認められる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。本件商標の使用の事実の有無について(1) 前記1(1)の認定事実によれば,本件商標の通常使用権者であるフィールドハウスは,平成28年2月1日,トーアに指示をして留め具付近の革部材に本件使用商標を素押しさせた本件ベルトに,本件使用商標が表示された下げ札(本件下げ札)を付した上で,ヴァンヂャケットに対し,本件ベルト合計430本を販売,納品したことが認められる。そして,フィールドハウスの上記行為は,商標法2条3項1号の商品に標章を付す行為及び同項2号の商品に標章を付したものの譲渡行為に該当するというべきである。また,筆記体で書された「Top-Sider」の欧文字を横書きして成る本件使用商標と活字体で書された「TOP-SIDER」の欧文字を横書きして成る本件商標とは,書体が異なり,一部の文字につき大文字と小文字の相違があるものの,構成文字は同一であり,「トップサイダー」という同一の称呼を生ずるものであるから,社会通念上同一の商標であるものと認められる。そうすると,本件商標の通常使用権者であるフィールドハウスは,要証期間内である平成28年2月1日に,本件審判の請求に係る指定商品中の「ベルト」について,本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を使用(商標法2条3項1号,2号)したことが認められる。(2) この点に関し原告は,フィールドハウスのヴァンヂャケットに対する本件ベルトの譲渡行為は,関連会社間の単なる商品の移動であって,本件商標の登録の不使用取消しを免れる目的で,名目的に本件使用商標を使用する外観を呈する行為にすぎないから,商標法2条3項2号の使用に該当しない旨主張する。そこで検討するに,原告が主張するように,被告の代表取締役のAは,フィールドハウス及びヴァンヂャケットの筆頭株主であること,被告の取締役のBは,ヴァンヂャケットの社長であること,フィールドハウスの代表者のCは,ヴァンヂャケットの取締役であることが認められ(甲3ないし5,弁論の全趣旨),被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,役員の一部が共通し,相互に資本関係のある関連会社であるといえる。しかしながら,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,別個の法人であって,前記1⑴認定のとおり,フィールドハウスのヴァンヂャケットに対する本件使用商標を付した本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実体を伴うものであり,関連会社間の単なる商品の移動ということはできない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。結論以上によれば,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 大 鷹 一 郎
裁判官 山 門 優
裁判官 筈 井 卓 矢
(別紙) 商標目録
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