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平成28(ワ)26282不正競争行為差止等請求

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成30年8月31日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社エルピオ
法令 不正競争
キーワード 実施8回
差止7回
損害賠償4回
侵害2回
主文 1 被告株式会社ジェステックは,第三者に対して,別紙告知内容目録115記載の事実の告知をし,又は流布してはならない。
2 被告株式会社ジェステックは,原告に対し,165万円及びこれに対する平成28年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社エルピオは,第三者に対して,別紙告知内容目録2記載20の事実の告知をし,又は流布してはならない。
4 被告株式会社エルピオは,原告に対し,220万円及びこれに対する平成28年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。25
6 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の2と被告株式会社ジェステックに生じた費用の合計の3分の2を原告の,その余を被告株式会社ジェステックの各負担とし,原告に生じた費用の5分の3と被告株式会社エルピオに生じた費用の合計の4分の3を原告の,その余を被告株式会社エルピオの各負担とする。
7 この判決は,第2項及び第4項に限り,仮に執行することができる。5
事件の概要 1 本件は,LPガス販売業者である原告が,競業者である被告株式会社ジェステ ック(以下「被告ジェステック」という。)及び被告株式会社エルピオ(以下「被 告エルピオ」という。)に対し,被告らがそれぞれ自社から原告への契約切替え を希望する顧客に対し,これを阻止するための資料(いわゆる防戦資料)として, 原告の営業上の信用を害する虚偽の事実が記載された資料を交付して同事実を25 告知した行為が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項15号の規 定する不正競争行為に該当すると主張し,各被告に対し,同法3条1項に基づく 虚偽事実の告知・流布の差止め,同法4条に基づく損害賠償(被告ジェステック につき,550万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日) である平成28年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による 遅延損害金,被告エルピオにつき,880万円及びこれに対する上記と同様の遅5 延損害金の各支払)並びに同法14条に基づく謝罪広告の掲載を求める事案であ る。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨 により認定することができる事実(枝番のある証拠は,特記なき限り,その全て

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判決文

平成30年8月31日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 井上昌一朗

平成28年(ワ)第26282号 不正競争行為差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成30年6月29日

判 決

原 告 日 本 瓦 斯 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 久 保 利 英 明

西 本 強

井 上 拓

田 口 洋 介

被 告 株式会社ジェステック

同訴訟代理人弁護士 清 水 保 彦

被 告 株 式 会 社 エ ル ピ オ

同訴訟代理人弁護士 関 雄 作

主 文

1 被告株式会社ジェステックは,第三者に対して,別紙告知内容目録1

記載の事実の告知をし,又は流布してはならない。

2 被告株式会社ジェステックは,原告に対し,165万円及びこれに対

する平成28年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員

を支払え。

3 被告株式会社エルピオは,第三者に対して,別紙告知内容目録2記載

の事実の告知をし,又は流布してはならない。

4 被告株式会社エルピオは,原告に対し,220万円及びこれに対する

平成28年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支

払え。

5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

6 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の2と被告株式会社ジェステッ

クに生じた費用の合計の3分の2を原告の,その余を被告株式会社ジェ

ステックの各負担とし,原告に生じた費用の5分の3と被告株式会社エ

ルピオに生じた費用の合計の4分の3を原告の,その余を被告株式会社

エルピオの各負担とする。

5 7 この判決は,第2項及び第4項に限り,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 主文第1項と同旨2 被告株式会社ジェステックは,原告に対し,550万円及びこれに対する平成28年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3 被告株式会社ジェステックは,別紙謝罪広告1記載の謝罪広告を,別紙謝罪広告掲載条件1記載の掲載条件で記載せよ。4 主文第3項と同旨5 被告株式会社エルピオは,原告に対し,880万円及びこれに対する平成28年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。6 被告株式会社エルピオは,別紙謝罪広告2記載の謝罪広告を,別紙謝罪広告掲載条件2記載の掲載条件で記載せよ。7 訴訟費用は被告らの負担とする。8 第2項及び第5項につき仮執行宣言

第2 事案の概要

1 本件は,LPガス販売業者である原告が,競業者である被告株式会社ジェステック(以下「被告ジェステック」という。)及び被告株式会社エルピオ(以下「被告エルピオ」という。)に対し,被告らがそれぞれ自社から原告への契約切替えを希望する顧客に対し,これを阻止するための資料(いわゆる防戦資料)として,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実が記載された資料を交付して同事実を告知した行為が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項15号の規定する不正競争行為に該当すると主張し,各被告に対し,同法3条1項に基づく虚偽事実の告知・流布の差止め,同法4条に基づく損害賠償(被告ジェステックにつき,550万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成28年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による

5 遅延損害金,被告エルピオにつき,880万円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の各支払)並びに同法14条に基づく謝罪広告の掲載を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実(枝番のある証拠は,特記なき限り,その全てを含む。以下も同じ。))

(1) 当事者等原告及び被告らは,いずれもLPガスの一般消費者向け販売業務を行うLPガス販売業者であり,競争関係にある。

(2) 被告ジェステックによる資料の交付ア 資料1の交付(ア) 被告ジェステックの横浜支店の支店長であるA(以下「A」という。)は,平成26年12月19日,LPガス供給業者を被告ジェステックから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたB(以下「B」という。)宅を訪問し,同人に対し,資料一式(甲1,49。以下,一括して「本件資料1」という。なお,以下,同資料に関する証拠番号の摘示は甲1のみとする。)を交付した(なお,Aが同資料一式をBに交付した事実については当事者間に争いがない。)。(イ) 本件資料1は,①「B様」から始まる被告ジェステック横浜支店長A作成名義の書面(甲1の1),②YAHOO!JAPAN知恵袋(以下「ヤフー知恵袋」という。)のウェブページを印刷したもの(甲1の2),③原告宛ての「ガス供給申込書兼切替業務委任状(お客様へのお知らせ)」(甲1の3),④「on the planet|企業概要」から始まる書面(甲1の4),⑤「LPガス購入契約取り消し申し入れ書」(甲1の5),⑥Aの名刺(甲1の6)から構成されている。イ 資料2の交付

5 (ア) Aは,平成28年4月20日,LPガス供給業者を被告ジェステックから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたC(以下「C」という。)宅を訪問し,同人に対し,資料一式(甲2,50。以下,一括して「本件資料2」という。なお,以下,同資料に関する証拠番号の摘示は甲2のみとする。)を交付した。(甲46,48。なお,Aが同資料一式をCに交付した事実については当事者間に争いがない。)(イ) 本件資料2は,①「C様」から始まる被告ジェステック横浜支店長A作成名義の書面(甲2の1) ②, 「ガス料金改定のお願い」と題するはがき,「ガスご使用量等のお知らせ」等の写し(甲2の2),③「こんな事実が待ち受けています。それでも替えますか・・・?」から始まる書面(甲2の3),④原告宛ての「ガス供給申込書兼切替業務委任状(お客様へのお知らせ)」(甲2の4),⑤ヤフー知恵袋のウェブページを印刷したもの(甲2の5),⑥宛先空欄の「LPガス供給申込及び切替に関する委任状の取消通知書」(甲2の6),⑦Aの名刺(甲2の7)から構成されている。

(3) 別紙告知内容目録1記載の各告知に係る記載別紙告知内容目録1記載の各告知に関し,本件資料1及び2には以下の記載がある。ア 同目録記載1に関する記載(以下「本件記載1」という。)(ア) 「日本瓦斯株式会社(通称:ニチガス)さんは,あまり良い評判は聞かずブローカーが営業行為を行う会社さんですので手数料が発生しており値上げが頻繁に行われ消費者との訴訟も頻繁に行われております。」(甲1の1)(イ) 「日本瓦斯株式会社(通称:ニチガス)さんは,あまり良い評判は聞かず協力会社(別法人)が営業行為を行う会社さんですので,顧客獲得による手数料の支払いが発生しておりますので,定期的な値上げが行われ消費

5 者との訴訟も頻繁に行われております。」(甲2の1)イ 同目録記載2に関する記載(以下「本件記載2」という。)(ア) 「飛び込みで来た営業さんがブローカー(商権転売屋)かどうかは申込書の申込受付者(取次業者)をご覧下さい。申込受付者に別法人名が記載してあったらブローカーです。申し込みを取ってきた手数料が払われておりますので値上げは必須です。」(甲1の1)(イ) 「飛び込みで来た営業さんが日本瓦斯株式会社の社員かどうかは申込書の申込受付者(取次業者)をご確認下さい。申込受付者に別法人名が記載してあったら協力会社・協力スタッフです。ガス会社ではないので,ガスの使用量で利益を作っている訳ではなく顧客獲得による手数料で利益を上げている会社です。その方に歩合が払われておりますので値上げは必須です。」(甲2の1)ウ 同目録記載3に関する記載(以下「本件記載3」という。)「こんな事実が待ち受けています。それでも替えますか・・・?」「値上げ推移の例」(以下「本件料金推移表」という。)契約時単価 230円 値上げ2011年1月 280円 50円2012年4月 350円 70円2012年10月 370円 20円2013年4月 400円 30円2013年9月 440円 40円2014年1月 490円 50円2014年8月 520円 30円(甲2の3)エ 同目録記載4に関する記載(以下「本件記載4」という。)「既存のお客様は・・・」「安売りした分の元を早く取るために,切替後は輸入価格に関係なく値上げを繰返し,凄まじい勢いで前のガス会社より大

5 幅に高くなる!!」(甲2の3)オ 同目録記載5に関する記載(以下「本件記載5」という。)「こんなケースも・・・・」「10月の従量料金値上げ,さらには11月に基本料金の値上げも!!」(甲2の3)

(4) 被告エルピオによる資料の交付ア 資料3の交付(ア) 被告エルピオの取締役及び営業本部部長であるD(以下「D」という。)及び同社東関東支店開発課の参与であるE(以下「E」といい,Dと併せて「Dら」という。)は,平成28年4月,LPガス供給業者を被告エルピオから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたF(以下「F」という。)宅を訪問し,資料を同人宅のポストに投函して同人に交付した。なお,原告は,甲6の1~9の資料一式(甲51,85も同一資料の全部又はその一部。以下,一括して「本件資料3」という。なお,以下,同資料に関する証拠番号の摘示は甲6のみとする。)をFに交付したと主張するが,被告エルピオは,甲6の3~7の交付を争っている。(イ) 本件資料3は,①「いつもお世話になりありがとうございます!」から始まる被告エルピオ担当Dら名義の書面(甲6の1),②「大切なお知らせ」と題する被告エルピオ名義の書面(甲6の2),③ヤフー知恵袋のウェブページを印刷したもの(甲6の3) ④, 「ガス契約で虚偽説明容疑 2人逮捕 特商法適用,全国初」との見出しの付された新聞記事の写し(甲6の4),⑤上記③とは異なるヤフー知恵袋のウェブページを印刷したもの(甲6の5),⑥原告宛ての「ガス供給申込書兼切替業務委任状(お客様へのお知らせ)」(甲6の6),⑦「こんな事実が待ち受けています。

5 それでも続けますか・・・?」から始まる書面(甲6の7)から構成されている。イ 資料4の交付(ア) Dらは,平成28年4月,LPガス供給業者を被告エルピオから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたG(以下「G」という。 宅を訪問し,) 資料を同人宅のポストに投函して同人に交付した。なお,原告は,甲7の1~6の資料一式(甲52,86も同一資料の全部又はその一部。以下,一括して「本件資料4」という。なお,以下,同資料に関する証拠番号の摘示は甲7のみとする。)をGに交付したと主張するが,被告エルピオは,甲7の3~6の交付を争っている。(イ) 本件資料4は,①「G様へ」から始まる被告会社エルピオのDら名義の書面(甲7の1),②「ご注意!甘い言葉でLPガス切り替えを誘う勧誘員…」から始まる1都10県LPガス協会共同発行の書面(甲7の2),

③ 原告宛ての「ガス供給申込書兼切替業務委任状(お客様へのお知らせ)」(甲7の3),④「お客様各位 その勧誘ちょっと待った!!」から始まる書面(甲7の4),⑤「大切なお客様へ」から始まる書面(甲7の5),

⑥ヤフー知恵袋のウェブページを印刷したもの(甲7の6)から構成されている。ウ 資料5の交付(ア) 被告エルピオの市川・八千代営業所の統括マネージャーであったH(以下「H」という。)は,平成28年3月頃,LPガス供給業者を被告エルピオから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたI(以下「I」という。)宅を訪問し,資料を同人宅のポストに投函して同人に交付した。なお,原告は,甲8の1~7の資料一式(甲87も同一資料の全部又はその一部。以下,一括して「本件資料5」という。なお,以下,同資料に

5 関する証拠番号の摘示は甲8のみとする。 をIに交付したと主張するが,)被告エルピオは,甲8の3~6の交付を争っている。(イ) 本件資料5は,①甲7の1の上半分から手書き部分を除いたもの(甲8の1),②甲7の2~6と同一の書面(甲8の2~6),③Hの名刺(甲8の7)から構成されている。

(5) 別紙告知内容目録2記載の各告知に係る記載同目録2記載の各告知に関し,本件資料3~5には以下の記載がある。ア 同目録記載1~3の告知内容は別紙告知目録1記載3~5と同一であるところ,資料3(甲6の7)には,別紙告知目録1記載3~5に対応する本件記載3~5(甲2の3)とほぼ同一の記載がある。イ 本件資料4(甲7の5)及び資料5(甲8の5)には,以下の記載(以下「本件記載6」という。)がある。「※切り替え工事から約1年半・・・18ヶ月間で!!」「『お客様営業時格安料金』→『基本料金1000円~1500円 従量単価230円~250円』→『基本料金1500円 従量単価280円~350円』→『基本料金1500円 従量単価350円~450円』→『基本料金1500円 従量単価450円~480円』 『さらに値上げ ・ !!』→ ・・ 」「?騙されてませんか??よく考え直して下さい!」3 争点

(1) 被告エルピオによる本件資料3~5各一式の交付の有無

(2) 営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無

(3) 差止めの必要性の有無

(4) 被告らの故意・過失の有無

(5) 原告の損害額

(6) 信用回復措置の要否

第3 争点に関する当事者の主張

5 1 争点(1)(被告エルピオによる本件資料3~5各一式の交付の有無)について

(原告の主張)

(1) Dらは,平成28年4月12日頃,Fに対し,本件資料3(甲6の1~9)

を交付し,同月16日頃,Gに対し,本件資料4(甲7の1~6)を交付した。また,Hは,平成28年3月19日頃,Iに対し,本件資料5(甲8の1~7)を交付した。

(2) これに対し,被告エルピオは,本件資料3~5の一部について交付したこと

を否認するが,同各資料は,いずれもホチキス留めされて一体のものとして原告顧客のポストに投函され,原告担当者は,そのままの状態で顧客から受領し,その数日後,同各資料のPDFファイルを作成し,原告東関東支店の社内掲示板(甲80。以下「支店掲示板」という。)及び原告法務部がアクセス可能な社内掲示板(甲55)にアップロードしている。アップロードされたPDFファイル(甲65~67,81の2,83の2,84の2)は,その内容が本件資料3~5と同一であり,ホチキス留めした跡(甲81の2の1枚目,甲83の2,甲84の2)等が明確に残っている。また,Dの陳述書には,顧客に交付する資料は名刺も含めていつもホチキスで留めていたと記載されていること(丙43の5頁)からも,本件資料3~5が一体のものとしてホチキス留めされて顧客に交付されたことは明らかである。以上によれば,Dらは本件資料3~5の一部ではなく,全部を原告顧客に交付したものということができる。(被告エルピオの主張)

(1) Dらが甲6の3~7及び甲7の3~6の各資料を交付したこと並びにHが

甲8の3~6の資料を交付したとの事実は,いずれも否認する。

(2) 原告がDらにより交付されたと主張する資料には,被告ジェステックの従業

員が逮捕された旨の新聞記事や,原告の顧客が通常所持していると考えられる

5 資料(甲6の6,7の3,8の3)などが含まれている。これらの資料は原告

への契約切替えを中止する動機とはなり得ないので,Dらがこうした資料を交付するとは考え難い。また,本件資料3~5には,被告ジェステックの従業員が交付した資料と同様の内容の書面が含まれていることからすると,同各資料には原告が競合他社から入手した資料が混入されている可能性がある。ホチキス留めの跡についても,他社の資料をまとめてホチキス留めした後にスキャンすれば表示されるのであるから,被告エルピオが本件資料3~5各一式を顧客に交付したことの根拠とはならない。原告社内において原告に対する誹謗中傷を掲示板等に書き込むように指示がされたのは平成27年11月であるにもかかわらず,本件資料3~5がアップロードされたのは平成28年4月であるが,約半年間も同各資料のやり取りがされていないのは不自然である。したがって,被告エルピオが本件資料3~5の全てを顧客に交付したとの原告主張は根拠がない。

2 争点(2)(営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)について

(1) 本件記載1(被告ジェステック関係)

(原告の主張)

本件記載1に摘示された事実は虚偽であり,原告の営業上の信用を害するものである。ア 本件記載1が摘示する事実本件記載1は,(ⅰ)原告が,仲介業者に手数料を支払う必要があるから,ガス料金を頻繁又は定期的に値上げを行っているとの事実(以下「本件摘示事実1(ⅰ)」という。),(ⅱ)これを理由とした消費者との訴訟が頻繁に提起されているとの事実(以下「本件摘示事実1(ⅱ)という。)を摘示するものである。

5 イ 本件摘示事実1(ⅰ)が虚偽かどうかについて

(ア) 原告のガス料金は,ガスの輸入価格等の社会的・経済的事情を勘案して合理的な料金設定となっており,全国及び関東のガス業者の平均ガス料金と概ね連動した料金設定となっているので,本件摘示事実1(ⅰ)のうち,原告が頻繁又は定期的にガス料金を値上げしているという摘示は虚偽である。原告のガス料金の改定は,①輸入価格の上昇/下落,②エネルギー企画部によるガス料金改定(値上げ又は値下げ)の検討・決定,③料金改定の対象となる顧客の決定,④関係部署への業務連絡(甲19~24),⑤顧客への通知というプロセスで実施される。その上で,ガス供給契約の締結時期などの個別の事情を加味して,料金改定の対象顧客が決められる。平成23年4月から平成29年10月までの間のプロパンのCIF価格(輸入価格)の推移(甲31,76,77)と,同時期の原告のガス料金の推移(甲15,78,79)とを比較すると,原告のガス料金が輸入価格と概ね同じ動きで値上げ/値下げを繰り返しており,このことは原告のガス料金と輸入価格とが連動していることを示している。具体的には,ガスの輸入価格は,平成22年から平成26年8月まで,一時的な下落はあったものの,全体的に値上げ傾向にあった。被告ジェステックが指摘する乙4の顧客についても,その従量料金の推移(甲16)をみると輸入価格に連動していることがわかる。他方,本件各資料が交付された時期は,輸入価格が急激に下落していた時期であった。ただし,原告は,ガス料金の値上げを行う場合であっても,全顧客に対して同時に同額の値上げを行うものではなく,顧客によっては,契約の締結時期や最後の値上げ実施の時期等を考慮して,値上げを据え置き,必要に応じて一定期間経過後に実施することもある。このため,輸入価格の高騰の影響がガス料金の値上げに反映される程度や時期は,顧客の契約の締

5 結時期等によっても異なるから,各顧客のガス料金の値上げの時期と輸入

価格の変動の時期とは完全には一致するものではないが,これと無関係ということはできない。(イ) 上記のとおり,原告は,ガスの輸入価格等を勘案して顧客のガス料金の値上げ又は値下げを行っており,仲介業者に手数料を支払う必要から値上げを行っていることはない。そもそも,原告が仲介業者を介在させるのは,営業を全て自社社員が行うよりも一部を業者に委託する方が顧客獲得費用を抑えられるという経済的合理性があるからであり,仲介業者に手数料を支払う必要から顧客のガス料金の値上げをせざるを得ないという関係にはない。原告が,顧客獲得の営業行為を外部の協力会社に委託している場合も,その手数料は当初からガス料金の総販売原価に含まれているので,ガス料金の値上げの理由にはなり得ない。ウ 本件摘示事実1(ⅱ)が虚偽かどうかについてガス料金の値上げに関する原告と消費者との間の訴訟は,平成21年に消費者が横浜地裁横須賀支部に提起した訴訟(以下「横須賀訴訟」という。)のみであり,それ以降は同様の訴訟はない。また,同訴訟においては,同一の請求原因に基づく訴えが2つに分かれて提起されているが,実質的には1件の訴訟であるから,本件摘示事実1(ⅱ)は虚偽である。エ 営業上の信用を害するものであるかどうかについて本件摘示事実1は,原告が,ガス料金を頻繁又は定期的に値上げを行い,消費者と訴訟を頻繁に行っている悪質な業者であるとの印象を強く与えるものであるから,原告の営業上の信用を害するものである。(被告ジェステックの主張)ア 本件摘示事実1(ⅰ)が虚偽かどうかについて(ア) 原告は,顧客に対するガス料金を頻繁又は定期的に値上げしている。

5 たとえば,横浜市戸塚区の顧客につき,平成24年4月から従前の料金

300円/㎥を370円/㎥,6か月後の同年10月からは410円/㎥に,さらに6か月後の平成25年4月から440円/㎥に,その5か月後の同年9月からは480円/㎥へと値上げしている(乙3の1~4)。また,別の顧客につき,平成25年4月から従前の料金300円/㎥を330円/㎥に,5か月後の同年9月に370円/㎥に,さらに4か月後の翌年1月からはこれを420円/㎥へとそれぞれ増額する値上げを行っている(乙4の1~6)。原告は,その後も平成26年8月分以降のガス料金を,従前の料金にかかわりなく一律に1㎥当たり30円増額するという値上げを行っている(乙5の1,2)。以上のとおり,原告は,頻繁又は定期的にガス料金の値上げを行っているのであるから,本件摘示事実1(ⅰ)が虚偽であるということはできない。(イ) 原告は,LPガスの顧客の紹介を受けることを目的として他者と業務委託契約を締結し,業務委託先に対し手数料を支払っているのであるから,本件記載のうち,原告が「ブローカーが営業行為を行う会社」である旨の記載は虚偽ではない。そして,上記手数料の額は,例えば一戸建住宅については1棟当たり6万1714円であるところ(乙1の第6条),原告のLPガスの販売価格は当初は1㎥当たり300円(乙3の1,乙4の1)であるから,販売原価に占める支払手数料額の構成比は決して小さくない。また,手数料の額が他の仲介業者においても固定されているのかは不明であり,同一の仲介業者であっても契約の時期等により手数料額が異なることがあり得るので,原告の営業政策によって変動する変動費ということができる。そうすると,原告の場合,ガスの輸入価格等が騰貴した場合,手数料分をLPガ

5 スの売上げから回収しつつ従前と同様の利益を確保するためには,販売料

金を値上げせざるを得ないと考えられる。したがって,手数料の支払が原告のガス料金値上げの要因の一つであると推認することができるから,「仲介業者に手数料を支払う必要から顧客のガス料金を値上げせざるを得ない」との摘示事実は虚偽ではない。イ 本件摘示事実1(ⅱ)が虚偽かどうかについて横須賀訴訟のように,40名を超える多数の顧客から2回にわたり料金値上げを理由とする訴訟を提起されるという例は同業他社にはなく,都市ガスや電力などの類似商品の販売業界においても他に例がないので,これを「消費者との訴訟も頻繁に行われております」と表現したからといって,虚偽の事実を告知したということはできない。ウ 営業上の信用を害するものであるかどうかについて本件摘示事実1(ⅰ)(ⅱ)が原告の営業上の信用を害するものであるとの主張は争う。

(2) 本件記載2(被告ジェステック関係)

(原告の主張)

本件記載2は,原告は,仲介業者に対して手数料を支払う必要があるからガス料金を必ず上げるとの事実(以下「本件摘示事実2」という。)を摘示するものであるが,前記(1)

(原告の主張)

イ(イ)のとおり,仲介業者に手数料を支払う必要から値上げを行っているということはないから,本件摘示事実2は虚偽である。(被告ジェステックの主張)前記(1)(被告ジェステックの主張)ア(イ)と同様の理由から,本件摘示事実2は虚偽ではない。

(3) 本件記載3(被告ら関係)

(原告の主張)

5 本件記載3に摘示された事実は虚偽であり,原告の営業上の信用を害するも

のである。ア 本件記載3が摘示する事実本件記載3は,本件料金推移表に記載されたとおりのガス料金の値上げをされた顧客が現に存在し,原告に切り替えると,同表に記載されたような短期間のうちに激しく値上げが繰り返されるとの事実(以下「本件摘示事実3」という。)を摘示するものである。イ 本件記載3が事実の告知に当たるかどうかについて被告エルピオは,本件記載3はそこに記載された値上げが行われる可能性を指摘するものにすぎないと主張するが,同記載の「こんな事実が待ち受けている」との記載は,その顧客に対して本件記載3に記載された値上げが行われると断定しているものであって,可能性の指摘にとどまるものではない。ウ 本件摘示事実3が虚偽であるかどうかについて(ア) 原告の顧客のうち,本件料金推移表に記載された値上げ推移と同一の経過をたどった顧客は一人もいないから,本件摘示事実3は虚偽である。被告ジェステックが提出した証拠(乙3~5)は,それぞれ「お客様番号」に記載された番号が異なることから明らかなとおり,別個の顧客を対象にしたものである。同被告は,複数の世帯の異なる顧客の値上げの時期及び値上げ幅を都合良く組み合わせて,本件料金推移表に記載された値上げが実際に行われたかのようにみせているにすぎない。また,数人の顧客に対する値上げの時期と額が符合したことをもって,原告の顧客全体に対する値上げが同時かつ同額で行われたと推認することもできない。前記のとおり,本件資料2~5の交付された時期は,ガスの輸入価格及びそれに概ね連動した原告のガス料金の小売価格は低下傾向にあった。原告は,その時期に輸入価格の下落に応じて値下げを実施していたのである

5 から(甲21,22,24,28~30,34),原告の顧客全員が「値

上げ推移の例」に記載されたような値上げをされるかのような印象を与える本件記載3の記載は虚偽である。(イ) 甲7の5及び甲8の5に例示された原告の顧客(お客様番号(省略))のガス料金は,平成20年3月から平成25年4月までの5年1か月間で190円の値上げが行われているが,1年当たりの平均は約37円である。これに対し,本件料金推移表は,3年7か月間に290円の値上げがあったことを摘示しているが,これは1年当たり約81円で,上記顧客とは2倍以上の開きがある。(ウ) 被告エルピオは,従量料金が600円に設定された顧客(丙5,16,22)がいると指摘するが,これはガスの輸入価格等に応じて契約時から徐々に値上げがされた結果にすぎない。(エ) 被告エルピオが指摘する平成29年5月の値上げ(丙25)は,原告の狭山営業所の担当者が,LPガス供給先のマンションのオーナーとのトラブルから,独断で,当該マンションの居住者に対して値上げの通知をしてしまったもので,原告は,当該居住者らに対し,返金等の対応をしているのであって(甲38~45),手続上のミスによるものにすぎない。エ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて被告ジェステックは,本件記載3が掲載された資料がその交付時にインターネットに掲載されていたことから原告の信用を害することはないと主張するが,本件資料の一部の文書がインターネット上閲覧可能であるかどうかにかかわらず,虚偽の事実が記載された印刷物をことさらに顧客に対して交付している以上,原告の営業上の信用を害するものである。(被告ジェステックの主張)ア 本件摘示事実3が虚偽かどうかについて本件料金推移表の記載のうち,少なくとも平成24年4月から平成26年

5 8月までの部分については,その値上げの時期及び値上げ幅の記載内容は,

真実と合致する(乙3~5)。イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて本件記載3が掲載された資料(甲2の3)は,被告ジェステックが作成したものではなく,「かえるけんちく相談所」と題するインターネット上のウェブサイトに掲載された記事において引用掲載されている文書(乙7の3枚目)であるから,本件資料の配付時に不特定多数のLPガス消費者等に既に広く流布されていた。また,原告のLPガスの販売料金の値上げに関する不満・不信が記載された記事は,ヤフー知恵袋にも多数掲載されている。このように,本件資料2を交付した時点では,同資料に記載された内容の文書や記事等が広くインターネット上で流布されていたのであるから,その内容を告知したとしても原告の営業上の信用を低下させるものではない。(被告エルピオの主張)ア 本件指摘事実3が事実の告知に当たるかどうかについて本件記載3は,原告に契約を切り替えると頻繁に値上げが繰り返されるとの事実を断定的に記載したものではなく,せいぜいそのような値上げが行われる可能性を指摘する趣旨にすぎないから,事実の告知に該当しない。イ 本件摘示事実3が虚偽かどうかについて原告のガス料金の値上げの事実を示す証拠(甲7の5,乙3~5,8,丙2~24。なお,被告エルピオ準備書面3の別表参照)によると,原告は,例外的事情がある場合を除き,全顧客に対し,その従量料金を,①平成24年4月に70円,②同年10月に40円,③平成25年4月に30円,④同年9月に40円,⑤平成26年1月に50円,⑥同年8月に30円値上げしており,平成24年4月から平成26年1月までの値上げ幅は230円である。また,横須賀訴訟の当事者に関するガス料金値上げの経緯(被告エルピオ準備書面4別表参照)に照らしても,このような値上げの推移は,本件料

5 金推移表の記載内容とほぼ一致する。

また,原告は,横須賀訴訟の当事者の一人であるJにつき,平成16年11月から平成20年7月までの3年8か月の間に,基本料金500円,従量料金336円の値上げを行っているが,これは,本件料金推移表に記載された値上げ(3年7か月間に合計290円)よりも急激な値上げである。さらに,原告は,本件資料4(甲7の5)及び資料5(甲8の5)に例示された顧客(お客様番号(省略))の従量単価を平成20年3月の1㎥当たり290円から平成25年4月には480円に200円近く値上げしている。ウ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて本件記載4は既にインターネット上で公知とされていた以上,かかる記載に虚偽の事実が含まれているとしても,原告の営業上の利益を新たに害するものではない。また,原告によるガス料金の値上げ状況からすれば,本件摘示事実3は真実との乖離の程度が小さく,原告の営業上の信用を害するものということはできない。

(4) 本件記載4(被告ら関係)

(原告の主張)

本件記載4に摘示された事実は虚偽であり,原告の営業上の信用を害するものである。ア 本件記載4が摘示する事実本件記載4は,原告が,低価格のガス料金で消費者を誘引してガスの供給契約を締結した後に,安売りした分の元を早く取るために輸入価格とは無関係に凄まじい勢いで顧客のガス料金の値上げをし,契約切替え前の他社よりも大幅に高いガス料金を設定するとの事実(以下「本件摘示事実4」という。)を摘示している。イ 本件摘示事実4が虚偽であるかどうかについて

5 前記のとおり,原告の価格設定は,全国及び関東のガス業者の平均ガス料

金と概ね連動した料金設定となっており,原告のガスの小売価格は,全国及び関東の一般小売価格と比較して20%以上低価格であるから(甲5,15,35),凄まじい勢いで顧客のガス料金の値上げをし,他社よりも大幅に高いガス料金を設定する旨の本件摘示事実4は虚偽である。また,原告のガス料金は,前記のとおり,基本的に輸入価格に連動しており,その値上げは輸入価格の上昇に対応するためであり,輸入価格の下落に応じた値下げもしばしば行っているのであるから,輸入価格とは無関係にガス料金の値上げをしている旨の摘示事実も虚偽である。さらに,原告は,契約切替え後6か月間は,CIF価格が上昇しても値上げをしない方針を採用しているから,「安売りした分の元を早く取るために」値上げを繰り返したとの摘示事実は,客観的真実に反している。以上のとおり,本件摘示事実4は虚偽である。ウ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて上記記載は,原告があたかも違法行為である不当廉売又はそれに類似した行為を行って顧客を獲得したうえで,速やかに,それにより発生した損失を埋めるためにガスの輸入価格に関係なく不合理な値上げを行っているとの印象や疑念を強く与えるものであり,原告の営業上の信用を害する。(被告ジェステックの主張)ア 本件摘示事実4が虚偽かどうかについて前記のとおり,原告がガス料金を4か月ないし6か月に1回の頻度で繰り返し,その結果,原告のガス料金が当初の販売価格に比較して大幅に高くなった顧客が存在することは事実である。これを「凄まじい勢い」,「前のガス会社より大幅に高くなる」と表現することは決して誇張ではなく,この表現をもって虚偽と評価することはできない。イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて

5 上記(3)(被告ジェステックの主張)イと同様の理由から,本件記載4が原

告の営業上の信用を害するものであることを否認する。(被告エルピオの主張)ア 本件摘示事実4が虚偽かどうかについて(ア) 原告の顧客の中には,従量単価600円など高額なLPガス料金が設定されていた顧客が存在していたのであるから,他社よりも大幅に高いガス料金を設定していたということができる。(イ) 原告は,前記のとおり,平成25年4月,平成26年8月,平成26年10月及び平成28年2月にそれぞれ値上げを実施しているが,これらの時期にプロパン及びブタンの卸売価格の平均値が上昇した事情は存在せず(丙1),特に,平成28年2月に乙8の顧客に対して行われた値上げ(基本料金を1000円,従量料金を50円値上げ)は,プロパン及びブタンの卸売価格の平均値からは説明することができず,当初の格安価格を修正する狙いがあったとしか考えられない。また,原告は平成29年5月,基本料金を1500円から2000円に増額すると同時に,従量料金を280円から500円に変更するという著しい値上げを行い(丙25),他方で,原告は,同月,別の顧客のガス料金も30円又は40円値上げしている(丙26,34,35,41の1及び2)。基本料金についても,平成28年2月に行われた値上げの幅は顧客により異なる(甲2の2,甲7の5,乙8,丙23,24,36,40)。このように,同時期に値上げ額が異なる例があるという事実は,原告の値上げが輸入価格とは無関係に行われていることを示している。さらに,ガスの輸入価格は,平成26年2月頃をピークにして平成27年12月頃まで下降し続けているが,乙4の顧客のガス料金は,平成26年2月頃をピークとして平成27年10月頃までの間,高い価格で据置きになっている。

5 加えて,原告は,原告のガス料金の平均値と輸入価格を比較しているが,

原告の全顧客のうち,一部でも輸入価格と連動しない値上げが行われているのであれば,それは輸入価格に関係ない値上げというべきであり,顧客の個別的事情も考慮して値上げしている点も輸入価格に関係ない値上げと評価すべきである。(ウ) 原告が前記のとおり頻繁にLPガス料金の値上げを行っていることは真実であり,原告の値上げの状況を「凄まじい勢い」と評価することは誇張ではない。イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて上記(3)(被告エルピオの主張)ウと同様の理由から,原告の営業上の信用を害するものということはできない。

(5) 本件記載5(被告ら関係)

(原告の主張)

本件記載5は,原告が,平成26年10月に顧客の従量料金の値上げをし,更に同一の顧客の翌月の基本料金の値上げもしたことがあるとの事実(以下「本件摘示事実5」という。)を摘示するものであるところ,原告が平成26年10月に従量料金の値上げをし,更に同一の顧客に対して11月の基本料金の値上げを行った事実はないから,本件摘示事実5は虚偽であり,原告の営業上の信用を害するものである。(被告ジェステックの主張)ガス料金の値上げを行うことがあることは原告も自認している以上,その値上げに当たって従量料金を値上げするか基本料金を値上げするか,その双方を同時又は近接した時期に行うかという点は,その営業上の信用にかかわるものとはいえない。また,原告は,平成28年2月検針分より従前基本料金1000円としていた顧客の基本料金を2倍の2000円とし,同時に従前300円/㎥としてい

5 た基本料金を350円に値上げする(乙8)など,顧客の基本料金と従量料金

の双方を同時に値上げすることも行っているのであるから,原告が従量料金の値上げを行った翌月に基本料金の値上げを行ったとの事実を摘示することをもって原告の営業上の信用を害するということはできない。(被告エルピオの主張)原告が,頻繁に,卸売価格と無関係な値上げを行っていることなどによれば,時期はともかく,原告において,顧客の従量料金を値上げした翌月に同一顧客の基本料金の値上げが行われていることが推認されるので,本件摘示事実5が虚偽であると評価することはできない。また,仮に本件記載5の事実を虚偽と評価するとしても,原告が同事実よりも激しい値上げを行っていることからすれば,同事実を告知することは,原告の営業上の信用を害するものではない。

(6) 本件記載6(被告エルピオ関係)

(原告の主張)

本件記載6に摘示された事実は虚偽であり,原告の営業上の信用を害するものである。ア 本件記載6が摘示する事実本件記載6は,①本件記載6に記載されたとおりのガス料金の値上げをされた顧客が現に存在するという事実(以下「本件摘示事実6(ⅰ) という。 ,」 )

②原告が,顧客に値上げすることを秘して格安料金を提示し,顧客が原告に

切り替えた後,短期間で大幅な値上げをし,顧客を欺罔しているという事実(以下「本件摘示事実6(ⅱ)」という。),③原告が,顧客が切替工事をしてから約1年半で少なくとも200円の値上げをした上で「さらに値上げ」をするとの事実(以下「本件摘示事実6(ⅲ)」という。)を摘示するものである。イ 本件摘示事実6が虚偽かどうかについて

5 (ア) 本件摘示事実6(ⅰ)に関し,被告エルピオが本件資料4及び5の本件

記載6の下に例として挙げている顧客(お客様番号:(省略))の実際の従量料金の推移は,上記記載の従量料金の推移と全く異なっており(甲10),原告が切替工事から約1年半で従量料金を200円以上値上げした例は1件もない。(イ) 本件摘示事実6(ⅱ)に関し,原告は,顧客に対して,ガス供給契約締結の際に,書面(甲11)をもって,ガス料金は社会的,経済的事情等により値上げを含む料金改定を実施することがある旨を告知しており,原告が料金改定に関して顧客を欺いた事実は存在しない。(ウ) 本件摘示事実(ⅲ)に関し,本件資料4及び5の交付時に,LPガスの供給業者を原告に切り替えた顧客のうち,切替工事から約1年半以内に200円以上の従量料金の値上げが行われ,そこから更なる値上げをされたケースは存在しないので,同事実は虚偽である。ウ 原告の営業上の信用を害するものかどうかについて本件記載6は,原告の業務の根幹をなすガス料金の価格に関する事実であり,原告が値上げを含む従量料金の改定をする可能性を告知せずに顧客を欺いているかのような印象を与えるから,原告の営業上の信用を害する。(被告エルピオの主張)ア 本件摘示事実6が虚偽かどうかについて(ア) 本件記載6は,切替工事から約1年半で「基本料金1000円~1500円 従量単価230円~250円」から「基本料金1500円 従量単価450円~480円」まで値上げされることを示す文言ではなく,「基本料金1500円 従量単価280円~350円」から「基本料金1500円 従量単価350円~450円」への値上げが約1年半で行われたことを示す文言である。仮にそうでないとしても,上記記載は「お客様営業時格安料金」から「基本料金1500円 従量単価350円~450円」

5 までの値上げが約1年半で行われることを示しているにすぎない。

また,原告は,前記のとおり,平成24年4月から平成26年1月までの約1年半で230円の値上げをしたものと考えられる。かかる値上げの推移は,本件記載6に記載されたガス料金の推移とほぼ一致しており,「約1年半で少なくとも200円の値上げ」という趣旨の事実が告知されたとしても,虚偽ということはできない。(イ) 本件摘示事実6(ⅱ)に関し,本件記載6の「?騙されてませんか?」との文言は,顧客に対し,値上げの可能性があることについて十分な説明を受けているか否かを確認する趣旨の文言であり,原告が普段から顧客を欺罔しているとの事実を摘示するものではない。また,原告に対しLPガス料金の値上げを理由とした訴訟が提起されているほか,インターネット上で原告の値上げに対する不満を表明する記事が多数掲載されていることからすれば,少なくとも,原告から欺罔されたとの認識を持つ顧客が多数存在することが優に推認されるから,本件摘示事実6(ⅱ)が直ちに虚偽であると評価することはできない。(ウ) 本件摘示事実6(ⅲ)に関し,本件記載6には,資料の交付を受けた顧客に対して値上げが必ず行われることを断定する文言が記載されているわけではなく,単に値上げが行われる可能性が告知されているにすぎないので,事実の告知に該当しない。また,原告によるガス料金の値上げの頻度に照らすと,本件資料4及び5の交付時期以降に原告の顧客となった者に対しても,同様の値上げが行われるであろうことは優に推認されるので,本件摘示事実6(ⅲ)が虚偽であると評価することはできない。イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて原告が,頻繁かつ卸売価格と無関係な値上げを行っていること,乙8の顧客に対する急激な値上げを行っていること,原告が一般消費者から値上げを

5 理由とする訴訟を提起されていること,原告の値上げに対する不満を表明す

る記事がインターネット上に多数掲載されていることなどに鑑みれば,本件記載6が摘示する事実は真実との乖離の程度が小さいから,本件摘示事実6が原告の営業上の信用を害するということはできない。

3 争点(3)(差止めの必要性の有無)について

(原告の主張)

被告らが本件各資料を原告の顧客に交付したことにより,原告は,現に営業上の利益を侵害された。特に被告エルピオは,類似の資料を平成27年5月2日(甲12)及び同年11月10日頃(甲13)にも交付している。そして,原告が被告ら競合他社の交付資料まで入手できる例はむしろ少ないことからすれば,被告らが,原告に顧客を奪われた場合,これを取り戻すための手段として,今後も長期にわたり,反復継続して,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実が記載された資料を顧客に交付するおそれがある。したがって,第三者に対し,被告ジェステックが別紙告知内容目録1記載の事実を告知・流布すること,被告エルピオが同目録2記載の事実を告知・流布することをいずれも差し止める必要がある。(被告ジェステックの主張)争う。(被告エルピオの主張)仮に本件資料3~5の交付があったとしてもその期間は極めて限定的であり,他の交付の事実も認められないこと,原告から訴訟提起をされ紛争化している状況にあることからすれば,もはや不正競争行為が行われるおそれはない。

4 争点(4)(被告らの故意・過失の有無)について

(原告の主張)

被告らは,顧客に交付した資料に原告の営業上の信用を害する事実が記載されていることを認識しつつ,その記載内容が虚偽の事実であるか否かを調査するこ

5 となくこれらの資料を原告の顧客に交付しているのであるから,被告らは,原告

の信用を毀損することを知りながら,又は,少なくとも過失によりこれを知らないで,本件の告知行為を行ったといえる。(被告ジェステックの主張)争う。(被告エルピオの主張)争う。

5 争点(5)(原告の損害額)について

(原告の主張)

原告が安定的なLPガスの供給を低価格で実現できることを競争戦略の中核としている中,原告の営業の根幹をなすガス料金に関する虚偽の事実を顧客に告知する行為は,原告の営業上の信用が大きく損なうものである。また,本件資料1及び2は,顧客に対して,原告が消費者との間で訴訟に発展するようなトラブルを頻繁に起こす悪徳業者であるかのように強く印象づけて,原告の営業上の信用を著しく低下させている。原告の社内調査によると,被告らが虚偽の事実を記載した資料を原告の顧客らに交付したことにより不安を感じた顧客や,原告との間のガス供給契約を解約した顧客がいたことが確認されている(甲18)。こうした被告らの不正競争行為によって原告に生じた無形の損害は,甚大であり,それを金額に換算すると,被告ジェステックについては500万円,被告エルピオについては800万円を下回らない。(被告ジェステックの主張)原告は,顧客に低価格でガスを提供できることが原告の営業上の信用であると主張するが,現実に原告が顧客に対して行っている営業方法は,競業他社の信用を貶める事実を告知するという方法によっており(乙9),原告のガス料金の高低が原告の営業上の信用の根幹であるかのような

(原告の主張)

は,その営業実態に

5 反する。

したがって,仮に被告らによって原告のガス料金の高低に関して何らかの虚偽事実が告知されたとしても,それは原告の営業上の信用を左右しない。(被告エルピオの主張)被告らが摘示した事実は,既にインターネット上で公知とされていたものであり,真実との乖離の程度は小さい。また,本件に関する原告顧客のうち,最終的に被告エルピオとの契約を維持したのはFとKのみであり,Fが思い留まったのは原告に対する信用の低下によるものではなく,被告エルピオが示した料金プランやインセンティブによるものである。したがって,仮に被告エルピオに不正競争行為が認められたとしても,無形損害との因果関係は存在しない。

6 争点(6)(信用回復措置の要否)について

(原告の主張)

被告らによる不正競争行為は,原告の顧客に対し,ガス会社を選択する際の最も重要な基準の一つであるガス料金に関して誤った認識を与えたものであり,原告の顧客は現在でも誤った認識を有し続けているから,原告の信用毀損の度合いは大きい。そして,原告のガス料金に関する誤解に基づいた口コミやインターネット上の書込み等により,原告の他の顧客又は潜在的な顧客に誤った情報が容易に伝達されることで原告が被る損害も甚大である。このような損害は金銭賠償によって填補することはできず,謝罪記事の掲載により原告の営業上の信用を回復する必要がある。(被告ジェステックの主張)争う。(被告エルピオの主張)

(原告の主張)

は理由がないので信用回復の措置が認められる余地はないが,仮に本件資料3~5の交付があったとしても,既に存在する評価を伝達しただけで,

5 原告の信用に対する新たな侵害はないから,信用回復措置は要しない。

第4 当裁判所の判断

1 争点(1)(被告エルピオによる本件資料3~5各一式の交付の有無)について

(1) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。ア 原告の法務課長は,平成27年11月13日,支店長,部長及び管理監督者に対し,原告を誹謗中傷する資料等を入手した場合には,これを添付して社内掲示板に書込みをする旨の指示をし,これを受けて,原告の東関東支店長は,平成28年4月18日,同支店の責任者に対し,上記の場合には,入手した資料を添付して同支店掲示板に書き込むように指示をした。(甲55)イ(ア) Dらは,平成28年4月13日頃,LPガス供給業者を被告エルピオから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたF宅を訪問し,同人宅のポストに本件資料3(甲6の1~9)を投函して同人に交付した。(L証人,甲36,59)(イ) 原告従業員のL(以下「L」という。)は,その後,Fから原告への申込みを撤回する旨の連絡を受けたことから,F宅を往訪し,同人が被告エルピオから本件資料3を受領した事実を知るとともに,同人の了解を得て,ホチキス留めされた状態の本件資料3を受け取った。(L証人,甲36,59)(ウ) Lは,同月18日,本件資料3をホチキス留めされた状態でスキャンし,PDF形式のファイルとして保存するとともに,エルピオの防戦資料であるとして同ファイルを支店掲示板にアップロードし,同月22日,同資料が同月13日にF宅に投函されたものである旨などを原告所定のエクセルファイルに入力した。(甲56,59,60,65,68,71,80)(エ) Fは,原告への契約申込みを撤回した。ウ(ア) Dらは,平成28年4月16日頃,LPガス供給業者を被告エルピオから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたG宅

5 を訪問し,本件資料4(甲7の1~6)を同人宅のポストに投函して同人に交付した。(甲47,63)(イ) 原告従業員のM(以下「M」という。)は,その後,Gから連絡を受けたことから,G宅を往訪し,同人が被告エルピオから本件資料4を受領した事実を知るとともに,同人の了解を得て,ホチキス留めされた状態の本件資料4を受け取った。(甲47,63)(ウ) Mは,同月18日,本件資料4のホチキスを外した上でこれをスキャンし,PDF形式のファイルとして保存するとともに,エルピオの防戦資料であるとして同ファイルを支店掲示板にアップロードし,同月23日,同資料が同月16日頃にG宅に投函されたものである旨などを原告所定のエクセルファイルに入力した。(甲57,63,64,66,69,72,80)エ(ア) Hは,平成28年3月19日頃,LPガス供給業者を被告エルピオから原告に切り替えるために原告にLPガス供給契約の申込みをしたI宅を訪問し,本件資料5(甲8の1~7)を同人宅のポストに投函して同人に交付した。(N証人,甲33,61)(イ) 原告従業員のN(以下「N」という。)は,その後,I宅を訪問した際に,同人が被告エルピオから本件資料5を受領した事実を知るとともに,同人の了解を得て,ホチキス留めされた状態の本件資料5を受け取った。(N証人,甲33,61)(ウ) Nは,同月19日,本件資料5のホチキスを外した上でこれをスキャンし,PDF形式のファイルとして保存するとともに,エルピオの防戦資料であるとして同ファイルを支店掲示板にアップロードし,同月23日,同資料が同月19日頃にI宅に投函されたものである旨などを原告所定のエクセルファイルに入力した。(甲58,61,62,67,70,73,80)

5 オ 原告の東関東支店長は,平成28年4月22日,本件資料3~5のPDFファイルを法務部門もアクセスできる社内掲示板にアップロードして報告した。(甲55)

(2) 前記(1)のとおり,当裁判所は,被告エルピオが本件資料3~5各一式を原

告顧客に交付したとの事実が認められると判断するが,この点について,被告

エルピオは,同各資料の一部(甲6の3~7,甲7の3~6,甲8の3~6)

を交付したことを否認する。

しかし,資料3のPDFファイルを印刷した書面(甲65)には,ホチキス

留めされた跡(甲65の1)及びホチキス留めしたまま資料をスキャンした際

に同資料の折り目についた跡(甲65の2~9)を看取することができ,また,

資料4及び5のPDFファイルを印刷した書面(甲66,67)には,ホチキ

ス留めされた跡を看取することができる。これに加えて,Dの陳述書(丙43

の5頁)にも,顧客に交付する資料は名刺も含めていつもホチキスで留めてい

たと記載されていることにも照らすと,資料3~5は,原告従業員がFらから

ホチキス留めされた状態で受け取ったものと認めるのが相当である。

また,資料4及び5の1枚目には「下記資料を拝見して下さい!!」と記載

され,これによれば,同各資料には他の資料が添付されていたことが推認され

る上,資料3~5を構成する各書面は,いずれも原告への契約切替えを防止す

るための防戦資料としての性質を有するものであり,一連一体のものとして交

付されたと考えるのが自然である。

以上によれば,被告エルピオは本件資料3~5各一式を原告顧客に交付した

と認めるのが相当であり,これと異なる証人D及び証人Hの証言は採用し得な

い。

(3)ア これに対し,被告エルピオは,本件資料3~5には,被告ジェステックの

従業員が逮捕された旨の新聞記事(甲6の4)や,原告の顧客が通常所持し

ていると考えられる資料(甲6の6,7の3,8の3)など,原告への契約

切替えを中止する動機とはなり得ない資料が存在するので,Dらがこうした

資料を交付するとは考え難いと主張する。

しかし, 上記新聞記事にはLPガス会社が顧客に虚偽の説明をした旨の

記載があり,原告に対する不満を表明しているヤフー知恵袋上の書込みなど

他の資料とあいまって,原告が虚偽の説明をしている可能性があることや,

原告に契約を切り替えるとトラブルに巻き込まれることを示唆するものと

考えられる。

また,原告の顧客が通常所持しているとされるガス供給申込書兼切替業務

委任状(甲6の6,7の3,8の3)には,取次業者の名称や「本販売価格

は,お申し込み時のものです。 という記載などが強調されるなどしており,

」

これらの書面を交付したのは,原告のガス料金が高く又は値上げの可能性が

あることを示唆するためであると考えられる。

したがって,上記新聞記事や上記委任状が原告への契約切替えを中止する

動機とはなり得ないとの被告エルピオの主張は採用し得ない。

イ 被告エルピオは,本件資料3~5には原告が競合他社から入手した資料が

混入され,他社の資料をまとめた後にホチキス留めされた可能性があると主

張する。

しかし,原告担当者が被告エルピオの資料に競合他社の資料を混入すべき

理由があるとは考えられず,また,競合他社の資料が誤って混入されたこと

をうかがわせる事情も存在しない。同被告は,本件資料3~5に被告ジェス

テックから交付を受けた資料と同様の資料が存在すると指摘するが,ウェブ

サイトに掲載された原告に関する資料については同様の資料を競合他社が

収集していても不自然ではなく,また,本件資料3~5に被告ジェステック

の内部資料など競合他社が入手するのが困難と考えられる資料は存在しな

い。

したがって,被告エルピオの上記主張も理由がない。

ウ 被告エルピオは,原告社内において原告に対する誹謗中傷を掲示板等に書

き込むように指示がされたにもかかわらず,その後,約半年間もやり取りが

されていないのは不自然であると主張する。

しかし,Lらが本件資料3~5の入手後速やかに支店掲示板に同各資料を

掲載したと認められることは前記のとおりであり,法務部門のアクセス可能

な社内掲示板に防戦資料の掲載が半年以上されなかったことは,上記認定を

左右するものではない。

エ 以上のとおり,被告エルピオは本件資料3~5各一式を原告顧客に交付し

たと認められる。

争点(2)(営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)について

(1) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,原告のガス料金等に関し,次の

事実を認めることができる。

ア 原告は,仲介業者との間で,仲介業者の紹介した顧客が原告とLPガス供

給契約を締結した場合には紹介料を支払う旨の業務委託契約を締結してい

る。原告がある仲介業者との間で締結した業務委託契約における紹介料は,

顧客の住居の区分等に応じて1件3万0857円~6万1714円(税込)

程度の定額制となっている。(乙1)

イ 原告におけるLPガスの小口一般のガス料金は,基本料金に使用量に応じ

た従量料金を加算して算出されるが,その改定は,原告のエネルギー企画部

(旧企画業務部) ガス料金の改定

が, (値上げ又は値下げ)の要否を検討し,

料金を改定する場合には,改定の対象となる顧客の範囲を定めた上,関係部

署に業務連絡を発して社内に周知し,その後,顧客に検針伝票等によって改

定内容が通知されるという方法で行われる。値上げの対象範囲の決定に際し

ては,従前設定されている各顧客の価格や支払料金額の状況等も考慮される

が,契約締結後6か月未満の顧客は値上げ対象から除外される。

原告の従量料金の平成17年12月検針分,平成19年8月検針分,平成

21年2月検針分,平成24年7月検針分,平成26年8月検針分,平成2

年4月検針分及び平成29年5月検針分,同年10月検針分,同年11月

検針分からの料金改定に関する業務連絡においては,LPガスの輸入価格

(原料価格)の変動や継続的な高騰が価格変動の理由として記載され,料金

を値上げする場合には契約から6か月以内の新規顧客は対象から除外され

るとともに,その他の除外該当者についての指示も記載されている。(甲1

~24,37,74,75)

ウ 原告の横須賀市周辺の顧客21名は,平成21年1月21日頃,横浜地方

裁判所横須賀支部に対し,原告を相手方として,原告が顧客に対して十分な

説明をせず,その承諾なくLPガス料金の値上げをしたなどと主張して,不

当利得の返還又は不法行為に基づく損害賠償を求める訴訟を提起し,また,

原告の横須賀市周辺の別の顧客は,同年9月14日頃,同支部に対し,原告

を相手方とする同様の理由に基づく訴訟を提起した。同支部は,いずれの訴

えについても請求を全て棄却する判決をした。

(甲7の4,甲8の4,乙6)

エ 平成24年以降のLPガスの輸入価格(CIF価格)は,同年1月から4

月にかけて上昇した後に,同年7月にかけて下降し,その後,上昇傾向に転

じて,平成25年12月から平成26年1月頃に価格のピークを迎えると,

その後は平成28年9月頃まで下降し,同月より上昇に転じている。(甲3

,76,77,丙1)

オ 原告のガス料金平均額は,いずれの時期においても全国平均額より200

円程度,関東平均額より1500円程度低額となっている。

(甲5,15,

)

(2) 本件記載1(被告ジェステック関係)について

ア 本件摘示事実1(ⅰ)が虚偽かどうかについて

(ア) 本件記載1は,原告が,仲介業者に手数料を支払う必要があるから,ガ

ス料金を頻繁又は定期的に値上げを行っているとの事実(本件摘示事実1

(ⅰ))を摘示するものであるところ,前記認定のとおり,原告が仲介業

者との間において業務委託契約を締結し,契約の締結について一定の手数

料を支払っているとの事実はこれを認めることができる。

しかし,顧客獲得のための営業についてその一部を仲介業者に業務委託

をするか又は全て自社社員が行うかは,営業成果の向上を図りつつその費

用を最小限に抑えるという観点から,各事業者が経済的合理性に基づいて

判断・選択していると考えられ,仲介業者に委託していることとガス料金

の値上げの間に相関関係が存在するとは認められない。かえって,前記判

示のとおり,業務委託を実施している原告のガス料金の平均額は全国平均

額等と比較して低いと認められるのであり,原告において仲介業者に委託

していることがガス料金の値上げの原因となっていることを具体的に示

す証拠も存在しない。後記のとおり,原告におけるガス料金値上げの原因

は,主として,LPガスの輸入価格の上昇にあると認めるのが相当である。

以上によれば,原告が仲介業者に手数料を支払う必要があることから,

ガス料金を頻繁又は定期的に値上げを行っている旨の本件摘示事実1(ⅰ)

は虚偽であるというべきである。

(イ) 次に,本件摘示事実1(ⅰ)のうち,原告がガス料金を頻繁又は定期的

に値上げを行っているという点については,原告ガス料金の平均額の推移

(甲5,15,78)をみても,原告が定期的かつ頻繁に値上げを行って

いるとの傾向をうかがうことはできず,原告がガス料金を値上げした例

(甲2の2,7の5,16,19,20,23,28~30,34,乙3

~5,8,丙2~26,30,31,34~36,40,41)を総合し

ても,その値上げの時期が「定期的」ということはできず,また,その値

上げの頻度が「頻繁」であると評価することはできない。

(ウ) したがって,本件摘示事実1(ⅰ)は虚偽の事実ということができる。

イ 本件摘示事実1(ⅱ)が虚偽かどうかについて

本件記載1は,原告によるガス料金の値上げを理由に消費者との訴訟が頻

繁に提起されている旨の本件摘示事実(ⅱ)を摘示するものであるところ,

前記認定のとおり,ガス料金の値上げに関する原告と消費者との間の訴訟は,

横須賀訴訟のみであり,それ以前及び以降は同様の訴訟が提起されたと認め

るに足りる証拠はない。

したがって,本件摘示事実1(ⅱ)も虚偽の事実ということができる。

ウ 原告の営業上の利益を害するかどうかについて

本件摘示事実1は,原告が,ガス料金を他社と比較して頻繁又は定期的に

値上げを行い,消費者と訴訟を頻繁に行っている悪質な業者であるとの印象

を与えるものであるから,原告の営業上の信用を害するものということがで

きる。

(3) 本件記載2(被告ジェステック関係)について

本件記載2は,原告は,仲介業者に対して手数料を支払う必要があるからガ

ス料金を必ず上げる旨の本件摘示事実2を摘示するものであるが,前記(2)ア

(ア)のとおり,仲介業者に手数料を支払う必要から値上げを行っているという

ことはできないので,本件摘示事実2は虚偽であり,原告の営業上の信用を害

するものであると認められる。

(4) 本件記載3(被告ら関係)について

ア 本件摘示事実3が虚偽かどうかについて

(ア) 本件記載3は,本件料金推移表に記載されたとおりのガス料金の値上げ

をされた顧客が現に存在し,原告に切り替えると,同表に記載されたよう

な短期間のうちに激しく値上げが繰り返されるとの事実(本件摘示事実3)

を摘示するものと認められる。

(イ) 被告エルピオは,本件記載3はそこに記載された値上げが行われる可能

性を指摘するものにすぎないので,事実の告知ではないと主張するが,同

記載の「こんな事実が待ち受けている」との記載は,その顧客に対して本

件記載3に記載された値上げが確実に行われるとの印象を与えるもので

あり,単なる可能性の指摘にとどまるということはできない。

(ウ) 本件料金推移表に関し,原告がガス料金を値上げした上記の各例を参照

しても,同表に記載されたとおりの値上げの推移をたどった顧客は存在せ

ず,他に同表に記載された値上げの推移をたどった顧客が存在すると認め

るに足りる証拠はない。

そうすると,原告の主張するとおり,本件料金推移表に記載されたとお

りのガス料金の値上げをされた顧客は存在しないというべきであり,本件

料金推移表に記載された顧客が存在することを前提とし,原告と契約する

と同様の値上げをされることを摘示する本件摘示事実3は虚偽というべ

きである。

(エ) これに対して,被告らは,原告がガス料金を値上げした顧客の例などに

基づき,例外的事情がある場合を除き,全顧客に対し,本件料金推移表に

記載されたとおりの値上げがされたと推認し得ると主張する。

しかし,例えば,丙5~10によれば,平成25年4月に30円の値上

げがされた顧客が一定数存在し,丙11~14によれば同年9月に40円

の値上げをされた顧客が一定数存在したことなどの事実は認められるが,

本件料金推移表のとおりの値上げの推移をたどった顧客が存在すると認

めるに足りる証拠がないことは前記判示のとおりである。同表は,一人の

顧客に関する値上げの実例を示すものであり,かつ,「こんな事実が待ち

受けています」との記載は,同様の値上げが高い蓋然性で行われることを

示しているものであるところ,仮に複数の顧客に生じた値上げを組み合わ

せると本件料金推移表記載の値上げのような推移となるとしても,それに

より同表に記載されたとおりの値上げが行われた顧客が存在するとの事

実を推認することはできない。

また,被告エルピオは,横須賀訴訟の当事者の一人であるJにつき,平

成16年11月から平成20年7月までの3年8か月の間に,基本料金5

円,従量料金336円の値上げを行っている旨を指摘するが,同被告

の主張する値上げの期間は,本件料金推移表の期間(平成23年1月~平

成26年8月)と異なる上,証拠(甲34)によれば,同人の従量料金は,

平成25年11月の440円から翌月には270円へと値下げもされて

いるのであり,同人に関するガス料金の推移をもって,本件摘示事実3が

真実に合致するということはできない。

イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて

LPガス供給業者である原告にとって,LPガスの料金が適正に設定され

ているかどうかは営業上の信用に関わる重要な事実であるところ,本件摘示

事実3は,原告が合理的な根拠なく短期間のうちに激しく値上げが繰り返す

業者であるとの印象を与えるものであり,同事実は原告の営業上の信用を害

するものというべきである。

これに対し,被告らは,本件記載4は既にインターネット上で公知とされ

ていた以上,かかる記載に虚偽の事実が含まれているとしても,原告の営業

上の利益を新たに害するものではないと主張するが,本件資料の一部の文書

がインターネット上閲覧可能であるとしても,虚偽の事実が記載された資料

を別途印刷した上で個別の顧客に交付する行為は,原告の営業上の信用を害

するものであるということができる。

また,原告によるガス料金の値上げ状況からすれば,本件摘示事実3は真

実との乖離の程度が小さいと主張するが,前記判示のとおり,本件料金推移

表の摘示する実例が存在したと認めるに足りる証拠がないのであるから,本

件摘示事実が真実との乖離の程度が小さいということはできない。

(5) 本件記載4(被告ら関係)について

ア 本件摘示事実4が虚偽かどうかについて

(ア) 本件記載4は,原告が,低価格のガス料金で消費者を誘引してガスの供

給契約を締結した後に,安売りした分の元を早く取るために輸入価格とは

無関係に凄まじい勢いで顧客のガス料金の値上げをし,契約切替え前の他

社よりも大幅に高いガス料金を設定するとの事実(本件摘示事実4)を摘

示するものと認められる。

(イ) 本件摘示事実4のうち,「原告が,低価格のガス料金で消費者を誘引し

てガスの供給契約を締結した後に,凄まじい勢いで顧客のガス料金の値上

げをし,切替え前の他社よりも大幅に高いガス料金を設定する」との点に

ついては,①原告が低価格のガス料金で消費者を誘引していることを具体

的に示す証拠が存在せず,②前記認定のとおり,契約締結後6か月未満の

顧客は,値上げ対象から除外するなどの配慮がされており,③原告のガス

料金の平均額は全国平均額等と比較して低く,契約切替え前の他社よりも

大幅に高いガス料金が設定されているとは認められないことに照らすと,

虚偽であるということができる。

(ウ) 本件摘示事実4のうち,「輸入価格とは無関係に顧客のガス料金の値上

げをしている」という点に関し,我が国で販売されるLPガスはその多く

を輸入に頼っていることから,国内のガス料金は輸入ガスの価格変動に大

きな影響を受けるであろうことは容易に推察されるところ,前記認定の輸

入ガスの価格の推移と原告のガス料金の推移を比較すると,平成24年4

月ころに高騰し,一旦は下降したものの,再度上昇に転じて平成26年1

月に最高値となり,その後,徐々に下降するという傾向が共通して認めら

れる。

また,ガス料金の値上げがされた原告顧客の実例をみると,その値上げ

の時期(平成24年4月,同年10月,平成25年4月,同年10月,平

成26年1月,同年8月)は,概ね,輸入ガスの価格が上昇している時期

又は同価格が高騰し若しくはその後高止まりしている時期に当たり,ガス

料金の値下げがされている場合(甲21,22,24,28~30,34),

その時期は,概ね,輸入ガスの価格が下降している時期に当たるものとい

うことができる。

以上によれば,原告のガス料金の変動は輸入ガスの価格変動と連動して

いるということができるので,輸入ガスの価格と無関係にガス料金の値上

げをしている旨の事実摘示は虚偽である。

(エ)a これに対し,被告エルピオは,平成25年4月,平成26年8月,平

成26年10月及び平成28年2月の値上げは輸入ガスの価格と連動

していないと主張する。

しかし,平成25年4月,平成26年8月及び平成26年10月は,

輸入価格が高騰した後に高止まりしている時期であり,また,平成28

年2月は輸入価格が高騰した直後の時期であるということができる。こ

れに,価格変動の意思決定には一定の時間を要することや,事業者とし

ては輸入価格の値上げ後しばらくの間は輸入価格の上昇分を現行価格

で吸収すべく努力するのが通常であると考えられることなどに照らす

と,上記各時期の値上げの事実から,原告のガス料金が輸入ガスの価格

と無関係に値上げされているとの事実を推認することはできない。

b また,被告エルピオは,丙25の顧客の値上げ幅と他の顧客の値上げ

幅が異なることや,顧客の中には輸入ガスの価格の下降局面において値

下げされていない者がいることなどを指摘し,原告のガス料金の値上げ

は輸入ガスの価格と無関係であると主張する。

しかし,丙25の顧客については,原告が返金等の対応をしているこ

と(甲38~45)に照らすと,原告本社の指示に基づくことなく値上

げをした可能性が高いというべきであり,また,顧客の中には輸入ガス

の価格の下降局面において値下げされていない者がいたとしても,その

ことから直ちに原告のガス料金の値上げは輸入ガスの価格と無関係で

あるということはできない。

c さらに,被告エルピオは,原告の全顧客のうち,一部でも輸入価格と

連動しない値上げが行われているのであれば,それは輸入価格に関係な

い値上げというべきであり,顧客の個別的事情も考慮して値上げしてい

る点も輸入価格に関係ない値上げと評価すべきであると主張する。

しかし,原告におけるガス料金は本社エネルギー企画部において決定

されていることなどに照らすと,原告のガス料金の値上げが輸入ガスの

価格に連動しているかどうかは,値上げの実例として示された証拠を総

合して判断すべきであり,一部の顧客について輸入ガスの価格と連動し

ないことから,輸入ガスの価格と無関係の値上げが行われているという

ことはできない。

また,ガス料金の値上げを行う際に顧客の個別的事情をも考慮するこ

とは当然であり,かかる考慮をしていることをもって,輸入価格に関係

ない値上げと評価することもできない。

(オ) したがって,本件摘示事実4は虚偽であるということができる。

イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて

本件摘示事実4は,原告が,安売りした分の元を早く取るために輸入価格

とは無関係にガス料金の大幅な値上げをし,結果的に競合他社よりも大幅に

高いガス料金を設定する業者であるとの印象を与えるものであり,同事実は

原告の営業上の信用を害するものというべきである。

(6) 本件記載5(被告ら関係)について

本件記載5は,原告が,平成26年10月に顧客の従量料金の値上げをし,

当該顧客の基本料金を翌11月に値上げした事実(本件摘示事実5)を摘示す

るものであるが,原告は,そのような値上げをした顧客は存在しないと主張す

るところ,本件資料を作成した被告らからは上記事実の存在を直接的に示す証

拠の提出はなく,他に原告が平成26年10月に従量料金の値上げをし,更に

同一の顧客に対して11月の基本料金の値上げを行ったことを示す証拠もな

いことに照らすと,本件摘示事実5が摘示するような顧客は存在しないと認め

るのが相当である。そうすると,本件摘示事実5は虚偽であり,原告の営業上

の信用を害するものであるということができる。

これに対し,被告エルピオは,原告が,頻繁に,卸売価格と無関係な値上げ

を行っていることなどによれば,原告において,顧客の従量料金を値上げした

翌月に同一顧客の基本料金の値上げが行われていることが推認されると主張

する。しかし,原告がガスの輸入価格と無関係な値上げを頻繁に行っていると

いうことができないことは前記判示のとおりであり,同被告の主張はその前提

を欠くものというべきである。

また,被告ジェステックは,顧客の基本料金と従量料金の双方を同時に値上

げすることも行っているのであるから,原告が従量料金の値上げを行った翌月

に基本料金の値上げを行ったとの事実を摘示することをもって原告の営業上

の信用を害するということはできないと主張する。しかし,本件摘示事実5は,

原告が基本料金と従量料金のいずれについても頻繁に値上げをする業者であ

るとの印象を与える虚偽の事実であり,告知された事実が虚偽である以上,か

かる事実の告知が原告の営業上の信用を害するものであることは否定し得な

いというべきである。

(7) 本件記載6(被告エルピオ関係)について

ア 本件記載6が虚偽かどうかについて

(ア) 本件記載6は,①本件記載6に記載されたとおりのガス料金の値上げを

された顧客が現に存在するという事実(本件摘示事実6(ⅰ)),②原告

が,顧客に値上げすることを秘して格安料金を提示し,顧客が原告に切り

替えた後,短期間で大幅な値上げをし,顧客を欺罔しているという事実(本

件摘示事実6(ⅱ)),③原告が,顧客が切替工事をしてから約1年半で

少なくとも200円の値上げをした上で「さらに値上げ」をするとの事実

(本件摘示事実6(ⅲ)を摘示するものであると認められる。

(イ) 本件記載6は,契約の切替工事から約1年半の間に,「お客様営業時格

安価格」から「基本料金1000円~1500円 従量単価230円~2

円」へと値上げされ,更に数度の値上げを経て,「基本料金1500

円 従量単価450円~480円」となり,更に値上げがされることをそ

の内容とするものであると認められる。

これに対し,被告エルピオは,本件記載6は,

「基本料金1500円 従

量単価280円~350円」から「基本料金1500円 従量単価350

円~450円」への値上げが約1年半で行われたことを示す文言であり,

仮にそうでないとしても,上記記載は「お客様営業時格安料金」から「基

本料金1500円 従量単価350円~450円」までの値上げが約1年

半で行われることを示していると主張する。

しかしながら,本件記載6の各料金は「お客様営業時格安価格」 「基

から

本料金1500円 従量単価450円~480円」までが順次矢印でつな

がれているので,

「お客様営業時格安価格」 「基本料金1500円

から 従

量単価450円~480円」までの値上げが1年半で行われることを意味

することは明らかである。

(ウ) 本件記載6は,その下に原告顧客(お客様番号(省略))のガス使用量

の通知書の写しが配されていることを考慮すると,本件記載6に記載され

たとおりのガス料金の値上げをされた顧客が現に存在するという事実(本

件摘示事実6(ⅰ))を示唆するものということができる。

しかし,本件記載6の直下に挙げている顧客(お客様番号:(省略))

の実際の従量料金の推移は,本件記載6の値上げ推移とは異なっており

(甲10),その他の顧客についても,原告が切替工事から約1年半で従

量料金を200円以上値上げした例があると認めるに足りる証拠はない。

そうすると,本件摘示事実6(ⅰ)は虚偽であるということができる。

(エ) 本件記載6には,「?騙されてませんか??よく考え直して下さい!」

との記載があり,これは,原告が,顧客に値上げすることを秘して格安料

金を提示し,顧客が原告に切り替えた後,短期間で大幅な値上げをし,顧

客を欺罔しているという事実(本件摘示事実6(ⅱ))を示唆するものと

いうことができる。

しかし,原告は,その顧客に「お客様へのお知らせ」と題する書面(甲

)を交付し,ガス料金は社会的,経済的事情等により値上げを含む料

金改定を実施することがあり,その場合は検針票等で通知する旨を告知し

ているものと認められ,他に原告が料金改定に関して顧客を欺いたことを

うかがわせる証拠は存在しない。

そうすると,本件摘示事実6(ⅱ)は虚偽であるということができる。

(オ) 本件摘示事実(ⅲ)は,LPガスの供給業者を原告に切り替えた顧客の

うち,切替工事から約1年半以内に200円以上の従量料金の値上げが行

われ,そこから更なる値上げをされることを示唆する記載であるところ,

原告の顧客で上記のような値上げがされた例は存在しないと認められる

ので,同摘示事実は虚偽であるということができる。

(カ)a これに対し,被告エルピオは,本件摘示事実6(ⅰ)に関し,本件料

金推移表と同様の値上げの推移があったことを前提として,かかる値上

げの推移は,本件記載6に記載されたガス料金の推移とほぼ一致してい

ると主張するが,同表に記載された値上げの推移をたどった原告顧客が

存在しないことは前記判示のとおりであり,同被告の主張はその前提を

欠くものである。

b 被告エルピオは,本件摘示事実6(ⅱ)に対し,原告に対しLPガス

料金の値上げを理由とした訴訟が提起されているほか,インターネット

上で原告の値上げに対する不満を表明する記事が多数掲載されている

ことからすれば,少なくとも,原告から欺罔されたとの認識を持つ顧客

が多数存在すると主張する。

しかし,ガス料金の値上げを理由とする原告に対する訴訟が横須賀訴

訟以外に存在しないことは前記判示のとおりであり,また,原告の値上

げに対する不満を表明する記事が掲載されているとの事実から,原告が

消費者を欺罔する行為を行っているとの事実を推認することはできな

い。

c 被告エルピオは,本件摘示事実6(ⅲ)に関し,本件記載6は,単に

値上げがおこなわれる可能性があることを告知しているにすぎないと

主張しているが,本件記載6の「さらに値上げ・・・!!」との記載は,

そのような追加的な値上げが行われることを告知するものであり,単な

る可能性の告知にとどまるということはできない。

また,被告エルピオは,原告によるガス料金の値上げの頻度に照らす

と,本件記載6に記載された追加的な値上げが行われることが推認され

ると主張するが,前記判示のとおり,原告のガス料金はガスの輸入価格

に連動して値下げされることもあるのであるから,ガス料金の追加的な

値上げが行われる旨を告知する本件記載6は虚偽というべきである。

(キ) したがって,本件摘示事実6(ⅰ)~(ⅲ)はいずれも虚偽であるとい

うことができる。

イ 原告の営業上の信用を害するかどうかについて

本件摘示事実6は,原告が,短期間で大幅な値上げをし,顧客を欺罔して

いるという事実を摘示するものであるから,原告の営業上の信用を害するも

のであるということができる。

これに対し,被告エルピオは,原告が頻繁かつ輸入価格と無関係な値上げ

を行っていること,原告が一般消費者から値上げを理由とする訴訟を提起さ

れていること,原告の値上げに対する不満を表明する記事がインターネット

上に多数掲載されていることなどを指摘し,本件記載6が摘示する事実は真

実との乖離の程度が小さいから,本件摘示事実6が原告の営業上の信用を害

するということはできないと主張する。

しかし,原告が頻繁かつ輸入価格と無関係な値上げを行っているとはいえ

ないこと,ガス料金の値上げを理由とする原告と消費者間の訴訟は横須賀訴

訟のみであること,原告の値上げに対する不満を表明する記事は原告が欺罔

的な行為を行っていることを推認させるものではないことは前記判示のと

おりであり,本件摘示事実6(ⅰ)~(ⅲ)と真実との乖離の程度が小さい

ということはできない。

争点(3)(差止めの必要性の有無)について

前記2によれば,被告ジェステックは,別紙告知内容目録記載1の各事実の告

知を,被告エルピオは,同目録2記載の各事実の告知を行い,これらの事実は,

原告の営業上の信用を害するものであるということができる。

LPガス業界においては,契約の切替えは顧客の喪失につながることから,顧

客が競合他社に契約を切り替える際に,切替先の企業に関する否定的な評価・評

判やその料金値上げの状況などが記載された資料(いわゆる防戦資料)を顧客に

交付し,他社への切替えを思いとどまるように説得するという営業手法が採られ

ることがうかがわれるが(甲1,2,6~8,12,13,乙9,丙57),契

約切替えを希望する顧客を翻意させるために,自社との契約を維持するメリット

を説明し又は当該顧客に新たな提案を行うなどの営業を行うにとどまらず,競合

他社に関する情報を提供する場合には,具体的な根拠に基づき客観的真実に合致

した正確な情報を提供すべきであり,本件のように虚偽の事実が記載された資料

を交付するなどして虚偽の事実を告知した場合には,不競法1条2項15号の不

正競争行為に該当するというべきである。

上記のとおりのLPガス業界の営業実態に加え,本件においては,被告らから

複数回にわたり虚偽の事実を記載した資料が顧客に交付されていること,契約を

競合他社に切り替えることは日常的に発生することなどに照らすと,被告らが,

今後も,原告顧客に対して虚偽の事実が記載された防戦資料を交付するおそれが

あることは否定し得ないというべきである。

したがって,第三者に対し,被告ジェステックが別紙告知内容目録1記載の事

実を告知・流布すること及び被告エルピオが同目録2記載の事実を告知・流布す

ることをいずれも差し止める必要がある。

争点(4)(被告らの故意・過失の有無)について

本件資料1~5に記載された虚偽の事実が原告の営業上の信用を害すること

は,前記判示のとおりであり,被告らは同各資料を原告の顧客に対して交付して

いるのであるから,被告らには故意又は少なくとも過失があると認められる。

争点(5)(原告の損害額)について

(1) 被告ジェステックによる不正競争行為は,原告が顧客から営業上の信用を得

る上で特に重要なガス料金に関し,合理的な理由なく値上げを繰り返し,その

料金が他社より高いことや,その原因が取次業者に対する支払にあるなどの虚

偽の事実が記載された本件資料1及び2を顧客に交付したというものであり,

その行為態様は悪質で自由競争として許される範囲を逸脱しており,原告の営

業上の信用を害する程度も大きいというべきである。

他方で,原告顧客に虚偽の事実が記載された資料が交付されたと確定し得る

のは2件にとどまっており,その不正競争行為は原告の顧客に対して広く虚偽

の事実を流布するのではなく顧客に対する告知にとどまり,資料1及び2を受

領した顧客は,結局は原告に契約を切り替えているなどの事情も認められる。

その他,本件における全ての事情を総合考慮すると,被告ジェステックの不

正競争行為により原告が受けた無形的損害の賠償額としては,150万円が相

当であると認められる。

(2) 被告エルピオによる不正競争行為は,原告が顧客から営業上の信用を得る上

で特に重要なガス料金に関し,合理的な理由なく値上げを繰り返し,その料金

が他社より高いことや,原告が顧客を欺罔するような営業行為を行っているこ

となどの虚偽の事実が記載された本件資料3~5を顧客に交付したというも

のであり,その行為態様は悪質で自由競争として許される範囲を逸脱しており,

原告の営業上の信用を害する程度も大きい上,本件資料3を交付されたFは実

際に原告への切替えを取り止めたとの事実も認められる。

他方,原告顧客に虚偽の事実が記載された資料が交付されたと確定し得るの

は3件にとどまっており,その不正競争行為は原告の顧客に対して広く虚偽の

事実を流布するのではなく顧客に対する告知にとどまり,資料4及び5を受領

した顧客は,結局は原告に契約を切り替えているなどの事情も認められる。

その他,本件における全ての事情を総合考慮すると,被告エルピオの不正競

争行為により原告が受けた無形的損害の賠償額としては,200万円が相当で

あると認められる。

(3) そして,本件事案の難易,請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,

被告ジェステックの不正競争行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害

金は15万円,被告エルピオの不正競争行為と相当因果関係に立つ弁護士費用

相当損害金は20万円であると認めるのが相当である。

争点(6)(信用回復措置の要否)について

原告が求める信用回復措置(謝罪広告)については,被告らの不正競争行為は

顧客への告知にとどまり,広く原告の顧客に対して虚偽の事実が伝播したとは認

められないことや,本件において認容される損害賠償額などに照らすと,その必

要性があると認めることはできない。

よって,被告ジェステックに対する原告の請求は,不競法3条1項に基づき別

紙告知内容目録1記載の事実の告知・流布の差止めを求め,同法4条に基づく損

害賠償として165万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌

日)である平成28年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ

る遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がなく,被告エ

ルピオに対する原告の請求は,不競法3条1項に基づき別紙告知内容目録2記載

の事実の告知・流布の差止めを求め,同法4条に基づく損害賠償として220万

円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由がある

が,その余は理由がないから,原告の請求を上記の限度で認容し,その余は棄却

することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐 藤 達 文

裁判官

三 井 大 有

裁判官

遠 山 敦 士

(別紙)

告知内容目録1

1 日本瓦斯株式会社が,仲介業者に手数料を支払う必要があるから,ガス料金を5 頻繁に又は定期的に値上げを行っているとの事実,及び,それを理由とした消費者との訴訟が頻繁に提起されているとの事実

2 日本瓦斯株式会社は,仲介業者に対して手数料を支払う必要があるから,ガス料金を必ず上げるとの事実

3 下記表に記載されたとおりのガス料金の値上げをされた顧客が現に存在するという事実,及び,日本瓦斯株式会社に切り替えると,当該顧客も頻繁に値上げが繰り返されるとの事実契約時単価 230円 値上げ2011年1月 280円 50円2012年4月 350円 70円2012年10月 370円 20円2013年4月 400円 30円2013年9月 440円 40円2014年1月 490円 50円2014年8月 520円 30円

4 日本瓦斯株式会社は,低価格のガス料金で消費者を誘引してガスの供給契約を締結した後に,自社の利益を確保するために輸入価格とは無関係に凄まじい勢いで顧客のガス料金の値上げをし,他社よりも大幅に高いガス料金を設定するとの事実

5 日本瓦斯株式会社が,2014年10月に顧客の従量料金の値上げをし,更に同一の顧客の翌月の基本料金の値上げもしたことがあるとの事実

(別紙)

謝罪広告1平成27年から平成28年にかけて,当社が日本瓦斯株式会社の顧客に交付した5 ビラ等において,日本瓦斯株式会社のガス料金に関して,別紙記載の各事実について記載し,日本瓦斯株式会社の信用を毀損しましたが,いずれも事実無根の虚偽でした。ここに,日本瓦斯株式会社に対して深くお詫び申し上げるとともに,今後二度と,同じ過ちを繰り返さないことを,誓約致します。平成○年○月○日株式会社ジェステック代表取締役 Q

(別紙)

謝罪広告掲載条件11 別紙謝罪広告1記載の謝罪広告の別紙は,別紙告知内容目録1の内容を記載し5 たものとする。2 「平成○年○月○日」の部分には掲載日を記載すること。3 本判決が確定してから速やかに,別紙謝罪広告1記載の謝罪広告(別紙を含む)を日本経済新聞に1回掲載すること。4 前記3に加えて,本判決が確定した日から3日以内に,被告ジェステックのホームページのトップページ上の閲覧者が容易に閲覧できる場所に,別紙謝罪広告1記載の謝罪広告(別紙を含む)を掲載し,少なくとも1年間削除しないこと。5 前記4の掲載は,文字の大きさは12ポイント以上とし,字体はゴシック体とし,目立つ色を使用するものとすること。

(別紙)

告知内容目録21 下記表に記載されたとおりのガス料金の値上げをされた顧客が現に存在すると5 いう事実,及び,日本瓦斯株式会社に切り替えると,当該顧客も頻繁に値上げが繰り返されるとの事実契約時単価 230円 値上げ2011年1月 280円 50円2012年4月 350円 70円2012年10月 370円 20円2013年4月 400円 30円2013年9月 440円 40円2014年1月 490円 50円2014年8月 520円 30円2 日本瓦斯株式会社は,低価格のガス料金で消費者を誘引してガスの供給契約を締結した後に,自社の利益を確保するために輸入価格とは無関係に凄まじい勢いで顧客のガス料金の値上げをし,他社よりも大幅に高いガス料金を設定するとの事実3 日本瓦斯株式会社が,2014年10月に顧客の従量料金の値上げをし,更に同一の顧客の翌月の基本料金の値上げもしたことがあるとの事実4 下記表に記載されたとおりのガス料金の値上げをされた日本瓦斯株式会社の顧客が現に存在するという事実,及び,日本瓦斯株式会社が,顧客に値上げすることを秘して格安料金を提示し,顧客が原告に切り替えたところで,短期間で大幅な値上げをして顧客を欺罔しているという事実,並びに,日本瓦斯株式会社が,顧客が切替工事をしてから約1年半で少なくとも200円の値上げをしたうえで,そこからさらに値上げをするとの事実基本料金 従量単価切替工事時 1000円~1500円 230円~250円↓ 1500円 280円~350円↓ 1500円 350円~450円切替工事から約1 1500円 450円~480円年半後その後 さらに値上げ さらに値上げ

(別紙)

謝罪広告2平成28年に,当社が日本瓦斯株式会社の顧客に交付したビラ等において,日本5 瓦斯株式会社のガス料金に関して,別紙記載の各事実について記載し,日本瓦斯株式会社の信用を毀損しましたが,いずれも事実無根の虚偽でした。ここに,日本瓦斯株式会社に対して深くお詫び申し上げるとともに,今後二度と,同じ過ちを繰り返さないことを,誓約致します。平成○年○月○日株式会社エルピオ代表取締役 P

(別紙)

謝罪広告掲載条件21 別紙謝罪広告2記載の謝罪広告の別紙は,別紙告知内容目録2の内容を記載し5 たものとする。2 「平成○年○月○日」の部分には掲載日を記載すること。3 本判決が確定してから速やかに,別紙謝罪広告2記載の謝罪広告(別紙を含む)を日本経済新聞に1回掲載すること。4 前記3に加えて,本判決が確定した日から3日以内に,被告エルピオのホームページのトップページ上の閲覧者が容易に閲覧できる場所に,別紙謝罪広告2記載の謝罪広告(別紙を含む)を掲載し,少なくとも1年間削除しないこと。5 前記4の掲載は,文字の大きさは12ポイント以上とし,字体はゴシック体とし,目立つ色を使用するものとすること。

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