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平成29(ワ)21145損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成30年8月17日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ベネッセコーポレー
法令 不正競争
民法709条1回
キーワード 侵害8回
損害賠償2回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,原告が,主位的には,被告の製造販売する教育用教材に関するソフト ウェアは原告の製造販売するソフトウェアの形態を模倣した商品に当たり,その 販売は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項3号の不正競争に当 たると主張し,予備的には上記行為が民法上の不法行為に該当すると主張して, 不競法4条又は民法709条に基づく損害賠償として,逸失利益1600万円及25 びこれに対する不正競争行為又は不法行為の日である平成28年4月1日から 支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案で ある。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨 により認定することができる事実) (1) 当事者5 ア 原告は,教育現場においてパソコンやタブレット等で使用されるアプリケ ーションの開発,作成等の事業を営む株式会社である。

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判決文

平成30年8月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 井上昌一朗

平成29年(ワ)第21145号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成30年7月11日

判 決

原 告 株 式 会 社 L o i L o

同訴訟代理人弁護士 渡 邉 太 郎

被 告 株式会社ベネッセコーポレー

ション

同訴訟代理人弁護士 鈴 木 修

西 川 喜 裕

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は,原告に対し,1600万円及びこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 訴訟費用は被告の負担とする。3 仮執行宣言

第2 事案の概要

1 本件は,原告が,主位的には,被告の製造販売する教育用教材に関するソフトウェアは原告の製造販売するソフトウェアの形態を模倣した商品に当たり,その販売は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項3号の不正競争に当たると主張し,予備的には上記行為が民法上の不法行為に該当すると主張して,不競法4条又は民法709条に基づく損害賠償として,逸失利益1600万円及びこれに対する不正競争行為又は不法行為の日である平成28年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実)

5 (1) 当事者ア 原告は,教育現場においてパソコンやタブレット等で使用されるアプリケーションの開発,作成等の事業を営む株式会社である。イ 被告は,教育関連事業を営む株式会社である。

(2) 原告のソフトウェア原告は,ロイロノートスクールという名称のアプリケーションソフトウェア(以下「原告ソフトウェア」という。 を開発し,) 平成26年4月頃から製造,販売を開始した。原告ソフトウェアは,学校において従前は黒板やホワイトボードで板書されていたことやマグネットを用いてカードで表現されていたことをタブレットパソコン上で行えるようにしたアプリケーションであり,カメラ撮影機能(写真及び動画),テキスト入力,描画,ウェブサイト検索,地図表示,画像表示の各機能を搭載している。

(3) 被告のソフトウェア被告は,平成27年頃にオクリンクという名称のアプリケーションソフトウェア(以下「被告ソフトウェア」という。)を開発し,平成28年4月1日からその販売を開始した。被告ソフトウェアは,原告ソフトウェアと同様に,タブレットパソコンにおいて動作し,教師と生徒間における板書等のやり取りの代替機能を有するもので,カメラ撮影機能(写真及び動画),テキスト入力,描画,ウェブサイト検索機能などを有する。

(4) 原告は,平成28年2月頃,東京都立川市の教育委員会に対し,原告ソフトウェアの導入を提案し,営業活動をしていたが,同市は,その納入時期を平成28年4月1日以降として,被告ソフトウェアを導入した。3 争点

(1) 被告が被告ソフトウェアを販売する行為が不競法2条1項3号の不正競争に当たるか否か

(2) 被告が被告ソフトウェアを販売する行為が原告に対する不法行為を構成す

5 るか否か

(3) 原告の損害

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点(1)(被告が被告ソフトウェアを販売する行為が不競法2条1項3号の不

正競争に当たるか否か)について

(原告の主張)

(1) 「他人の商品の形態」について

無体物であっても独立して取引の対象になるものは,不競法における「商品」に該当する。原告ソフトウェアは,タブレットとは別個に経済的価値を有し,独立して取引の対象となるものであるから,同法2条1項3号の商品形態模倣行為における「他人の商品」に当たる。そして,ソフトウェアは,起動されることによりタブレットの液晶パネルに画面が表示され,その後,各機能を使用することにより複数の別画面が表示され,これらが連続的かつ不可分なものとして遷移するのであるから,ソフトウェア起動時に表示される画面及び各機能を使用した際に表示される画面は,いずれも「商品の形態」に該当する。

(2) 原告ソフトウェアと被告ソフトウェアの実質的同一性について

ア 一致点及び相違点別紙「原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアの特徴」は,原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアの特徴を対比し,別紙「画面対照表」(以下,「別紙」という場合は別紙「画面対照表」を指すものとする。)は,その画面を対比したものであるところ,両者の一致点は下記(ア)の,相違点は下記(イ)のとおりである。(ア) 一致点(以下の①~⑧を番号に応じて「一致点①」などという。)

① フィールド領域に作成されたカード及び連結したカードが表示され

る(別紙(3),乙5の3頁「メイン画面」欄)。

5 ② フィールド領域にランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニュ

ーボタン,カード送受信領域が表示される(別紙(3),乙5の3頁「メイン画面」欄)。

③ 原告ソフトウェアの「カメラ」機能及び被告ソフトウェアの「カメラ・

マイク」機能では,画面全体に被写体が表示され,撮影に必要な機能がボタンで表示される(別紙(4),乙5の8頁「カメラ・マイク作成」欄

②)。

④ 原告ソフトウェアの「テキスト」機能及び被告ソフトウェアの「文字」

機能では,文字入力画面が表示される(別紙(5)-①及び②,乙5の11頁「文字作成」欄②)。

⑤ 原告ソフトウェアの「お絵かき」機能及び被告ソフトウェアの「ペイ

ント」機能では,描画領域及び各種描画ツールが表示される(別紙(6)-

①②,乙5の5頁「ペイント作成」欄①②)。

⑥ 原告ソフトウェアの「Web」機能及び被告ソフトウェアの「インタ

ーネット」機能では,インターネットの検索画面が表示される(別紙(7)-

①②,乙5の14頁「インターネット作成」欄②)。

⑦ 原告ソフトウェアの「写真」機能及び被告ソフトウェアの「ファイル」

機能では,カード化するデータが一覧化されて表示される(別紙(9)-①,乙5の19頁「ファイル作成」欄②)。

⑧ 提出データ画面では,いずれも最小化された各生徒のカード及び生徒

の氏名が一覧化されて表示される。なお,特定のデータを抽出して,比較する形で表示される(別紙(11),乙5の29頁「教師へ提出されたカードを表示」欄③)。(イ) 相違点(以下の①~⑦を番号に応じて「相違点①」などという。)

① メイン画面において,原告ソフトウェアではランチャーメニュー表示

ボタンが画面右側にタブの形で表示され,被告ソフトウェアでは画面左

5 上にボタンの形で表示される(別紙(3),乙5の3頁「ランチャーメニュ

ー」欄)。

② メイン画面におけるカード作成メニューボタンは,原告ソフトウェア

においては画面左上部に表示され,被告ソフトウェアにおいてはフィールド領域をタップすることで表示される。カード作成メニューボタンは,原告ソフトウェアでは縦一列で表示され,被告ソフトウェアではリング状で表示される。(別紙(3),乙5の4頁「カード作成メニュー」欄)

③ メイン画面におけるランチャーメニューは,原告ソフトウェアにおい

ては,画面右に表示されるタブをタップすることにより画面右側に縦一列で表示され,被告ソフトウェアにおいては,画面左上のボタンをタップすることで画面左側に縦一列で表示される(別紙(3),乙5の3頁「ランチャーメニュー」欄②)。

④ メイン画面で連結されたカードは,原告ソフトウェアにおいては,フ

ィールド領域各所に配置されたカードが曲線又は直線の矢印で連結され,被告ソフトウェアにおいては,フィールド領域に平行かつ一直線の形で,各カードが直線で連結される。被告ソフトウェアにおいては,連結された冒頭のカードの前に「Start」のボタンが表示される(別紙(3),乙5の21頁「カード結合」欄②)。

⑤ 各カード作成機能について,原告ソフトウェアにおいては,機能をア

イコン化したボタンが表示され(別紙(5)-①,(6)-①②,(7)-①,(9)-

②),被告ソフトウェアにおいては,アイコン及び文字のボタンが表示

される(乙5の11頁「文字作成」欄②,5頁「ペイント作成」欄①②,14頁「インターネット作成」欄②,19頁「ファイル作成」欄②)。

⑥ ファイル作成画面では,原告ソフトウェアにおいては,画面左側にデ

ータが一覧化され(別紙(9)-①),被告ソフトウェアにおいては,画面全体にデータが一覧化される(乙5の19頁「ファイル作成」欄②)。

5 ⑦ 提出データ画面では,原告ソフトウェアにおいては,一覧化されたデ

ータの上部に各種機能のボタンが表示され,被告ソフトウェアにおいては,一覧化されたデータの右側に各種機能のボタンが表示される(別紙

(11),乙5の29頁「教師へ提出されたカードを表示」欄③)。

イ 実質的同一性(ア) 本質的部分の所在原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアのメイン画面には,いずれもフィールド領域が設けられ,そこに作成されたカードが表示され,単体又は連結したカードが表示される。これらの表示が原告ソフトウェアの本質的な部分であって,両ソフトウェアは,本質部分を共通にする。(イ) 相違点の評価両ソフトウェアの各相違点は,いずれも非本質的な部分に関するものであり,その機能は同一である上,表現上の差異も表現方法を若干変えて表示したにすぎず,実質的同一性を否定することにならない。ウ したがって,原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアの形態は実質的に同一である。

(3) 以上のとおり,被告ソフトウェアは原告ソフトウェアの形態を模倣した商品

であるから,被告がこれを販売する行為は,不競法2条1項3号の不正競争に当たる。

(被告の主張)

(1) 「他人の商品の形態」について

不競法2条1項3号の「商品」は,有体物に限られ,無体物は含まれない。また,刻一刻変化する画面上の表示が不競法2条4項の定める「商品の外部及び内部の形状」や「その形状に結合した模様や色彩」に該当しないことは明らかであるから,ソフトウェアの画面上の表示は「商品の形態」に該当せず,被告ソフトウェアは,原告ソフトウェアの形態を模倣した商品に当たらない。

5 (2) 原告ソフトウェアと被告ソフトウェアの実質的同一性について

ア 原告が本質的部分であると主張する「フィールド領域に作成されたカード及び連結したカードが表示される」点は,抽象化されたアイデアにすぎず,具体的な画面表示に関する主張ですらない。また,フィールド領域にカードを作成し,これを線で連結する表現方法は,原告ソフトウェアの発売前からごく一般に用いられてきたもので,同種のソフトウェアが通常有するありふれた表現である(乙6~9)。結合されたカードに関する画面表示を比較しても,相違点④のほかに,①原告ソフトウェアには,カード右上に円で囲まれた黄色の矢印が表示されるが,被告ソフトウェアにはそのような表示はない,②原告ソフトウェアは,黄色の細い曲線等によりカードを結び,各カードを結んでいる線はそれぞれ独立していて同一の線ではないのに対し,被告ソフトウェアは黒色の太い一つの直線でカード間を結んでいる,③原告ソフトウェアはカードの位置を変更せずに自由に線でつなぐことができ,連結されたカードを2行で表示することもできるのに対し,被告ソフトウェアでは,連結するカードそのものを移動させる必要があり,複数のカードを複数行で表示することはできない,

④原告ソフトウェアではプレゼンテーション時に最初に表示されるカード

の左横に黄色の丸で囲まれた「-」の表示があるのに対し,被告ソフトウェアでは黒色の○に白抜きで「start」と表示されている,⑤原告ソフトウェアではプレゼンテーションにおいて最後に表示されるカードの右上に黄色の丸で囲まれた矢印が表示されているのに対し,被告ソフトウェアでは黒色の丸に白抜きで「-」の表示がされているなどの点で相違している。イ

(原告の主張)

する一致点②~⑧は,機能面での共通性であって不競法2条1項3号により保護されるものではなく,これらは被告ソフトウェアにとって不可欠な機能である。また,原告ソフトウェアの画面表示はありふれたものである上,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアの各画面表示は全く似てい

5 ない。

ウ したがって,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアが実質的に同一であるということはできない。

(3) 以上のとおり,被告ソフトウェアは原告ソフトウェアの形態を模倣した商品

ではないので,被告がこれを販売する行為が不競法2条1項3号の不正競争に該当することはない。

2 争点(2)(被告が被告ソフトウェアを販売する行為が原告に対する不法行為を

構成するか否か)について

(原告の主張)

原告ソフトウェアは,平成26年に日本e-Learningアワードにおいて総務大臣賞を受賞するなど,独自性を有するものであるところ,被告は,原告ソフトウェアと実質的に同一の被告ソフトウェアを開発し,原告ソフトウェアの唯一の競合品として販売することにより,原告のシェアを奪ったのであって,著しく不公正な手段を用いて原告の営業活動上の利益を侵害したのであるから,その行為は不法行為を構成する。

(被告の主張)

不正競争行為に該当しない行為については,当該行為がことさら相手方に侵害を与えることを目的として行われたなど,不競法が保護しようとした利益と異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情が存在しない限り,民法上の不法行為を構成することはない。本件において,原告が侵害されたと主張する利益は不競法が保護しようとした利益と異なるものではなく,被告の行為は原告に侵害を与えることを目的として行われたものでもないので,被告の原告に対する不法行為は成立しない。

3 争点(3)(原告の損害)について

(原告の主張)

原告は,平成28年2月,立川市の教育委員会に原告ソフトウェアの購入を打

5 診してから交渉を続け,最終的な提案として20校分5年契約で合計1600万

円の条件を提示した。ところが,立川市は,原告ソフトウェアの購入を見送り,被告ソフトウェアの導入を決め,納入時期は平成28年4月1日以降とされた。被告が被告ソフトウェアの制作をしなければ,立川市が原告ソフトウェアを導入したであろうことは明らかで,原告は,被告の行為によって取引機会を失った。したがって,原告は1600万円の損害を被った。

(被告の主張)

被告ソフトウェアは,被告のソフトウェアであるミライシードの一部をなすもので,立川市は,ミライシードに搭載された他の機能やサポート体制等の全てを考慮した結果,ミライシードを採用したのである。その際,ソフトウェア選定会が開催され,ミライシード以外にも原告ソフトウェアと共通する機能を有する他社のソフトウェアが指定されているから,被告が上記選定会に参加しなかった場合に原告ソフトウェアが当然に選定されたとはいえない。このように,立川市は原告ソフトウェアと被告ソフトウェアだけを比較して導入の決定をしたのではないから,被告が被告ソフトウェアを制作しなければ,立川市が原告ソフトウェアを導入したということはできない。

第4 当裁判所の判断

1 争点(1)(被告が被告ソフトウェアを販売する行為が不競法2条1項3号の不正競争に当たるか否か)について

(1) 不競法2条1項3号の「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」をいうところ(同条4項),原告ソフトウェアは,タブレットとは別個に経済的価値を有し,独立して取引の対象となるものであることから「商品」ということができ,また,これを起動する際にタブレットに表示される画面や各機能を使用する際に表示される画面の形状,模様,色彩等は「形態」に該当し得るというべきである。

5 (2) 実質的同一性の有無についてそこで,以下,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアの形態が実質的に同一であるかどうかについて検討する。ア 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,フィールド領域に作成されたカード及び連結したカードが表示される点で一致し(一致点①),この一致点は原告ソフトウェアの本質的部分に関するものであると主張する。しかし,学校において黒板等に貼り付けられていたカードをタブレット上で表現し,複数のカードをプレゼンテーションの順序等に応じて連結することは,抽象的な特徴又はアイデアにすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアにおけるカード及び連結されたカードの具体的な画面表示を比較すると(別紙(3),乙5の21頁「カード結合」欄②),①原告ソフトウェアには,カード右上に円で囲まれた黄色の矢印が表示されるのに対し,被告ソフトウェアにはそのような表示はない,

②連結されたカードは,原告ソフトウェアにおいては,フィールド領域各所に配置されたカードが曲線又は直線の矢印で連結されるのに対し,被告ソフトウェアにおいては,フィールド領域に平行かつ一直線の形で各カードが直線で連結される(相違点④),③原告ソフトウェアは,黄色の細い曲線等によりカードを結び,各カードを結んでいる線はそれぞれ独立し同一の線ではないのに対し,被告ソフトウェアは黒色の太い一つの直線でカード間を結んでいる,④原告ソフトウェアは連結されたカードを2行で表示することもできるのに対し,被告ソフトウェアでは,複数のカードを複数行で表示することはできない,⑤原告ソフトウェアではプレゼンテーション時に最初に表示されるカードの左横に黄色の丸で囲まれた「-」の表示があるのに対し,被告ソフトウェアでは黒色の○に白抜きで「start」と表示されている,⑥原告ソフトウェアではプレゼンテーションにおいて最後に表示されるカード

5 の右上に黄色の丸で囲まれた矢印が表示されているのに対し,被告ソフトウェアでは黒色の丸に白抜きで「-」の表示がされているなどの点で相違し,全体的な印象も類似していないということができる。以上によれば,原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアでは,カード及び連結されたカードの画面表示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。イ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,フィールド領域にランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域が表示される点で一致する(一致点②)と主張する。しかし,フィールド領域にランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域を設けることは,アイデア,抽象的な特徴又は機能面の一致にすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。そして,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアのランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の具体的な画面表示を対比すると(別紙(3),乙5の3頁,4頁),①ランチャーメニューは,原告ソフトウェアにおいては,画面右に表示されるタブをタップすることにより画面右側に縦一列で表示されるのに対し,被告ソフトウェアにおいては,画面左上のボタンをタップすることで画面左側に縦一列で表示される(相違点③),②カード作成メニューボタンは,原告ソフトウェアでは画面左上部に縦一列で表示されるのに対し,被告ソフトウェアではフィールド領域をタップすることにより,リング状の表示がされる(相違点②),③カード送受信領域については,原告ソフトウェアにおいては,メイン画面の左下に「資料箱」,「提出」,「送る」などの個別の提出先のアイコンが設けられているのに対し,被告ソフトウェアにおいては,提出先としてメイン画面の中央下に矢印を付した四角いアイコンが設けられているなどの点で相違してい

5 る。以上によれば,原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアでは,ランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の画面表示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。ウ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,「カメラ」等の機能を使用すると画面全体に被写体が表示され,撮影に必要な機能がボタンで表示される点で一致する(一致点③)と主張する。しかし,カメラ撮影のための機能を使用すれば,画面全体に被写体が表示されるのはその性質上当然であり,カメラ撮影のためにはシャッターボタンなど撮影に必要な機能を使用するための表示が不可欠であるから,一致点③は機能を使用するために必要な表示における一致にすぎない。エ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,原告ソフトウェアの「テキスト」機能及び被告ソフトウェアの「文字」機能において,文字入力画面が表示される点で一致する(一致点④)と主張する。しかし,一致点④は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアがいずれもカードにテキストを入力する機能を有するという機能面での一致をいうにすぎず,また,原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアのテキスト作成画面の表示(別紙(5))もありふれたものにすぎない。オ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,描画領域及び各種描画ツールが表示される点で一致する(一致点⑤)と主張する。しかし,一致点⑤は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアがいずれもカードに描画する機能を有するという機能面での一致をいうにすぎず,また,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアの描画作成画面の表示(別紙(6))もありふれたものにすぎない。カ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,原告ソフトウェアの「W

5 eb」機能及び被告ソフトウェアの「インターネット」機能では,インターネットの検索画面が表示される点で一致する(一致点⑥)と主張する。しかし,一致点⑥は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアがいずれもカードにインターネット画面を取り込むことを可能にする機能を有するという機能面での一致にすぎず,また,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアのインターネット検索画面に移動するためのアイコンの表示(別紙(7))もありふれたものにすぎない。キ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,原告ソフトウェアの「写真」機能及び被告ソフトウェアの「ファイル」機能では,カード化するデータが一覧化されて表示される点で一致する(一致点⑦)と主張する。しかし,ファイル機能を使用した場合にデータが一覧化されて表示されるのは,当該機能の性質上当然のことである。また,原告ソフトウェアのファイル作成画面においては,画面左側にデータが一覧化されるのに対し,被告ソフトウェアにおいては,画面全体にデータが一覧化される(別紙(9))などの相違点(相違点⑥)も存在する。ク 原告は,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは,提出データ画面において,いずれも最小化された各生徒のカード及び生徒の氏名が一覧化されて表示される点で一致する(一致点⑦)と主張する。しかし,各生徒が提出されたカード及びその氏名をタイル状に表示することは,多数の生徒の氏名と提出されたカードを画面上で一覧するという機能を果たすために採り得る限られた表示方法の一つにすぎないということができる。また,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアには,原告ソフトウェアでは一覧化されたデータの上部に各種機能のボタンが表示され,被告ソフトウェアでは一覧化されたデータの右側に各種機能のボタンが表示されるとの相違点(相違点⑦)も存在する。

5 ケ 以上のとおり,原告が主張する一致点は,いずれもアイデア,抽象的な特徴又は機能面での一致にすぎず,具体的な画面表示においても,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアは異なるか又はありふれた表現において一致するにすぎないということができる。したがって,原告ソフトウェアと被告ソフトウェアの形態が実質的に同一であるということはできず,被告が被告ソフトウェアを販売する行為が不競法2条1項3号の不正競争に当たるとの原告主張は理由がない。

2 争点(2)(被告が被告ソフトウェアを販売する行為が原告に対する不法行為を構成するか否か)について原告は,被告が原告ソフトウェアと実質的に同一の被告ソフトウェアを開発し,原告ソフトウェアの唯一の競合品として販売することにより,原告のシェアを奪い,著しく不公正な手段を用いて原告の営業活動の利益を侵害したのであり,かかる被告の行為は民法上の不法行為を構成すると主張する。しかし,不競法2条1項各号の規定は,特定の行為を不正競争として限定列挙するものであるから,同条各号所定の不正競争に該当しない行為は,同法が規律の対象とする社会全体の公正な競争秩序の維持等の利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(最高裁平成21年(受)第602号,同第603号同23年12月8日第一小法廷判決・民集65巻9号3275頁参照)。原告が主張する被告の行為が不競法2条1項3号の不正競争行為に当たると認められないのは前記のとおりであるところ,被告が,同法が規律の対象とする社会全体の公正な競争秩序の維持等の利益とは異なる法的に保護された利益を侵害したなどの特段の事情は認められない。したがって,被告が被告ソフトウェアを販売することが民法上の不法行為を構成すると認めることはできない。

3 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,

5 これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐 藤 達 文

裁判官

三 井 大 有

裁判官

遠 山 敦 士

別 紙

原告ソフトウェア及び被告ソフトウェアの特徴(以下で「別紙」とは別紙「画面対照表」を指す。)原告ソフトウェア 被告ソフトウェアロ グ イ ン ①ユーザは,それぞれ,学校, ①ユーザは,それぞれ,ID及びパス画面 ID及びパスワードを入力する ワードを入力する。

(別紙(1)-①)。 ②入力後の表示される画面におい

※簡易ログイン画面では,名前 て,学年及びクラスを選択する。のみでログインが可能(別紙(1)-②及び③)。起動画面 ①画面左側に表示される授業 ①表示されたランチャーをクリッ一覧から授業を選択する(別紙 クすると各アプリケーションのア(2)-①)。 イコンが表示される(乙21,24)。②ノートの一覧から,新規作成 ②オクリンクをタップすると,時又は過去に作成したノートを 間割画面が表示される(乙5のP.2タップする(別紙(2)-②)。 スタート画面①)。③新規作成をタップした場合, ③単元を選択すると教材が起動すノート名入力画面が表示され る(乙5のP.2スタート画面②,るため,ノート名を入力してOK ③)。ボタンをタップする(別紙(2)-③)。メ イ ン 画 ①メイン画面は,作成したカー ①メイン画面は,フィールド領域,面 ドが表示されるフィールド領 ランチャーメニュー表示ボタン,域,ランチャーメニュー表示ボ 画面切り替えボタン(教師専用),タン,スタート画面に戻るボタ 画面共有ボタン,カード送受信領ン,カード作成メニューボタ 域で構成される(乙5のP.3メインン,カード送受信領域で構成さ 画面)。れる(別紙(3))。 ※左記同様,それぞれの位置は乙※それぞれの位置は乙5のP.3 5のP.3メイン画面のとおり。メイン画面の説明のとおりであり,各機能の名称は被告の表記に揃えた。②作成されたカードはフィー ②作成されたカードはフィールドルド領域に表示される。連結し 領域に表示される。連結したカーたカードは,直線又は曲線の矢 ドは,画面横方向に平行して一直印でつながり,最後のカードの 線で表示され,最初のカードの冒末尾には○が表示される。― 頭には「START」の文字が,最後のカードの末尾には○ が表示される―(乙5のP.21カード結合①)。③フィールド領域をタップすると,リング状のカード作成機能が表示される(乙5のP.5カード作成メニュー)。④画面左上のボタンをタップすると,縦一列のランチャーが表示される(乙5のP.3②)。写 真 撮 影 ①カード作成メニューボタン ① カ ー ド 作 成 メ ニ ュ ー ボ タ ン の画面(カメ の「カメラ」をタップすると, 「カメラ・マイク」をタップするラ機能) 撮影画面が表示される(別紙 と,撮影画面が表示される(乙5の(4))。 P.8②)。テ キ ス ト ①カード作成メニューボタン ① カ ー ド 作 成 メ ニ ュ ー ボ タ ン の作成画面 の「テキスト」をタップすると, 「文字」をタップすると,文字作成( テ キ ス フィールド領域に選択した色 画 面 が 表 示 さ れ る ( 乙 5 の P.11ト機能) のカードが表示される。 ②)。②カードをタップすると編集画面が表示され,「ここから文字を入力」をタップすることで文字入力機能を使用出来る(別紙(5)-①及び②)。描 画 作 成 ①カード作成メニューボタン ①カード作成メニューの「ペイン画面(フリ の「お絵かき」をタップすると, ト」をタップすると,ペイント作成ー ハ ン ド フィールド領域にお絵かき用 画面が表示される(乙5のP.5ペイ機能) のカードが表示される。 ント作成①,②)。②カードをタップすると編集画面が表示され,「ここからお絵かき」をタップすることで描画機能を使用出来る(別紙(6)-①及び②)。Webサイト ①カード作成メニューボタン ① カ ー ド 作 成 メ ニ ュ ー ボ タ ン の表示画面 の「Web」をタップすると,フィ 「インターネット」をタップするールド領域にカードが表示さ と,ウェブサイトを検索及び編集れる。 する画面が表示される(乙5のP.14②)。②カードをタップすると編集画面が表示され,「ここからWeb検索」をタップすることでウェブサイトを検索して,画面をキャプチャする機能が使用出来る(別紙(7)-①及び②)。地 図 表 示 ①カード作成メニューボタン 当該機能なし画面 の「地図」をタップすると,フィールド領域にカードが表示される。②カードをタップすると編集画面が表示され,「ここから地名」をタップすることで地図作成機能を使用することが出来る(別紙(8)-①及び②)。フ ァ イ ル ①カード作成メニューボタン ① カ ー ド 作 成 メ ニ ュ ー ボ タ ン の画面 の「写真」をタップすると,画 「ファイル」をタップすると,画面面左側にファイル作成画面が 全体にファイル作成画面が表示さ表示される。 れる(乙5のP.19②)。②表示される写真を選択する ②使用するファイルをタップすることでフィールド領域にカー ことで,フィールド領域にカードドが作成される(別紙(9)-①及 が作成される。び②)。提出・送信 ①メイン画面のカード送受信 ①フィールド領域下部のカード送領域をタップすると,送信先が 受信領域にカードをドラッグ&ド「全員」であるか「個人」であ ロップする(乙5のP.26作成したるかを選択するダイアログが カード単体及び連結カードを送信表示される(別紙(10)-①)。 する①)。②送信先の詳細を選択してカ ② 表 示 さ れ る 送 り 先 選 択 画 面 かー ド を 送 信 す る ( 別 紙 (10)- ら,送信先を選択する(乙5のP.26②)。 作成したカード単体及び連結カードを送信する②)。提 出 デ ー ①生徒から提出されたデータ ①生徒から提出されたデータは,タ画面 は,最小化された各生徒のカー 最小化された各生徒のカードが6ドが7列×6段等で整列した形で 列×6列等で整列した形で表示され表示される(別紙(11))。 る(乙5のP.29教師へ提出されたカードを表示③)。比較画面 ①提出箱に送られたデータの ①回答一覧画面から特定の生徒の中から特定のデータを選択し, みを表示することが出来る。比較することが出来る(別紙(12))。

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