ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成30(行ケ)10124 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成31年2月6日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告コミテアンテルプロフェッシャンパーニュ 原告株式会社ミマス |
| 法令 |
商標権 商標法4条1項7号13回 商標法4条1項17号1回 |
| キーワード | 審決29回 無効15回 無効審判2回 商標権1回 |
| 主文 | 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 本件商標 原告は,別紙「本件商標」記載の商標について,第9類「眼鏡,電子出版物,ア プリケーションソフトウェア」を指定商品とする商標(登録第5942675号。 平成28年9月6日商標登録出願,平成29年2月24日登録査定,同年4月28 日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。 |
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平成31年2月6日判決言渡
平成30年(行ケ)第10124号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成30年12月13日
判 決
原 告 株 式 会 社 ミ マ ス
同訴訟代理人弁理士 小 谷 武
同 伊 東 美 穂
同 池 田 恭 子
同 守 田 裕 介
同 香 島 友 希
被 告 コミテ アンテルプロフェッ
ショネル デ ヴァン ドゥ
シャンパーニュ
同訴訟代理人弁護士 田 中 克 郎
同 中 村 勝 彦
同 弁理士 佐 藤 俊 司
同 阪 田 至 彦
同 池 田 万 美
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2017-890086号について平成30年7月26日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件商標原告は,別紙「本件商標」記載の商標について,第9類「眼鏡,電子出版物,アプリケーションソフトウェア」を指定商品とする商標(登録第5942675号。平成28年9月6日商標登録出願,平成29年2月24日登録査定,同年4月28日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。2 特許庁における手続の経緯
⑴ 被告は,平成29年12月25日,特許庁に対し,本件商標につき,その商標登録が商標法4条1項7号に違反することを理由として,無効審判を請求した。
⑵ 特許庁は,この審判請求につき無効2017-890086号事件として審理した上,平成30年7月26日,「登録第5942675号の登録を無効とする。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年8月3日,原告に送達された。
⑶ 原告は,同月31日,本件審決を不服として,本件訴えを提起した。3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件商標登録は,商標法4条1項7号の規定に違反してされたものであるから,同法46条1項1号の規定により無効とすべきものである,というものである。4 取消事由商標法4条1項7号に係る判断の誤り
第3 当事者の主張
〔
(原告の主張)
〕
1 商標法4条1項7号該当性
⑴ 原告は,本件商標につき,その指定商品中の「眼鏡」の下位概念に相当する
「コンタクトレンズ」に使用している。すなわち,本件商標中の「envie」は,原告の子会社(以下「訴外会社」という。)が販売するコンタクトレンズブランドの名称であり,当該ブランドにおいて,「CHAMPAGNE GRAY」は,「グレーがかったシャンパン色」というカラーコンタクトレンズの色を意味している。そして,この「envie CHAMPAGNE GRAY」は,当該ブランドの「シャンパングレイ色」のカラーコンタクトレンズとして,広くドラッグストアやインターネットを通じて日本全国で販売されている。
⑵ 「envie」は,「羨望」を意味するフランス語であるが,日本では,一般の
取引者及び需要者は必ずしもフランス語に堪能ではないため,上記意味合いを持つフランス語として明確に認識することはない。他方,「envie」に対応する片仮名文字「アンヴィ」は「envie」をフランス語読みしたものであるが,これを普通にアルファベット読みすると,「エンヴィエ」又は英語「ENVY」の過去・過去分詞形「ENVIED」から「エンヴィー」と称呼される可能性が高く,「envie」から「アンヴィ」との称呼が普通に生じるとは考えられない。また,原告は,日本におけるフランスの知的でおしゃれなイメージや,柔らかい発音から生まれる優しいニュアンスと,「envie」の本来の意味である「羨望」すなわち「強いあこがれ」という意味合いから生じるイメージから,「envie」を原告のコンタクトレンズ事業のメインブランド名として採用したものであり,その意味においても,日本ではなじみの薄いことばである「envie(アンヴィ)」は取引者や需要者の記憶に残る印象的なフレーズである。さらに,カラーコンタクトレンズは,つけまつげやウィッグと共に若い世代のおしゃれには欠かせないアイテムのつとなっているところ,色彩におしゃれ感を出すために,カラーコンタクトレンズ会社各社でカラーコンタクトレンズの色彩について独自のネーミングをし,それを商標登録している。本件商標中の「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」は,黄色みがかった灰色のカラーコンタクトレンズを意味している。そして,原告のカラーコンタクトブランド「envie」は,広く知られている。
⑶ 「CHAMPAGNE(シャンパン)」は,フランスのシャンパーニュ地方で作
られる発泡性ぶどう酒を示す原産地統制名称であるとともに,日本においては,「シャンパン色(緑黄又は黄褐色)」という色彩を表す語及び色彩を表す語の一部として使用されるものとしても普通に認識されている。現に,インターネット検索により「シャンパングレイ」を検索したところ,約4万5000件のヒットがあり,そのほとんどが原告のカラーコンタクトに関する記載であるところ,そこでは,誰も原産地統制名称としての「CHAMPAGNE(シャンパン)」と結び付けて認識していない。また,色彩を表す「CHAMPAGNE(シャンパン)」と「GRAY(グレイ)」からなる「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」の一体不可分な構成から,色彩以外の意味合いを想像するとは思えない。しかるに,「CHAMPAGNE(シャンパン)」が,酒類,特に「フランスのシャンパーニュ地方の発泡酒ワイン」として周知著名であることをもって,色彩表示である「CHAMPAGNE(シャンパン)」色の使用についてまで規制することは,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」(商標法4条1項7号)を拡大解釈することによって,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになる上,商標の選択の機会を著しく狭めることになりかねない。そのような被告の行為は,産業の発展に寄与するという商標法の法目的に反し,ひいては被告の既得権益を悪用する権利の濫用にも該当するというべきである。
⑷ 「シャンパン」の語が「ゴールド」の語と相まって全体として色の表示であ
ることは,商標「シーラボ UVシャンパンゴールド」に係る特許庁の異議申立事件においても認められているところ,本件商標も「ブランド名」+「色彩」という構成の点ではこれと同様である。また,本件商標以外にも,「シャンパングレイ」の文字が含まれる登録商標が存在し,その権利者は,実際に「シャンパングレイ」をアルミサッシの色を示すものとして使用している。さらに,米国においては「フランスのシャンパーニュ地方の発泡酒ワイン」に関連するもの以外であれば商標登録されており,それに対して被告が何ら申立てをしている気配は見られない。
⑸ 以上の事情から,本件商標に接する取引者及び需要者は,本件商標をもって,
カ ラ ー コ ン タ クト レ ン ズ の ブ ラ ン ドで あ る 「envie ( ア ン ヴ ィ ) 」 が 販 売 す る「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」色のカラーコンタクトレンズを示すものと認識するのみである。ここで,本件商標中の「CHAMPAGNE」は,カラーコンタクトレンズの色彩の表示の一部として使用されているところ,このような使用は,「特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合」には該当しない。したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しない。
2 まとめ
以上のとおり,本件審決は本件商標の商標法4条1項7号該当性に関する判断を誤った違法なものである。〔
(被告の主張)
〕
1 商標法4条1項7号該当性
⑴ 商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」
には,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合が含まれると解されるところ,その判断にあたっては,当該商標の文字・図形等の構成,指定商品又は役務の内容,当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性,我が国とその国の関係,当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響,当該商標登録を認めることについての我が国の公益,国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。
⑵ 被告は,「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」を意味する名称の
もとに,フランス国シャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとして設立されたフランス法人である。
⑶ フランスにおいては,原産地統制名称又は原産地表示が厳格に統制されてお
り,その中核をなすのが,1935年(昭和10年)に制定された原産地統制名称法(Appelation d‘Origine Contrôlée)である。この法律において原産地統制名称ぶどう酒(A.O.C.)は,原産地,品質,最低アルコール含有度,最大収穫量,醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず,また,その名称を使用するためには,厳格な品質維持が要求されている。原産地統制名称は,産地の名称を法律に基づいて管理し,生産者を保護することを第一の目標とし,また,名称の使用に対する厳しい規制は,消費者に対して品質を保証するものとなっている。そして,「シャンパン」(CHAMPAGNE)(以下「『シャンパン』表示」という。)は,原産地統制名称法による原産地統制名称であり,シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒にのみ使用を許される名称である。この表示を付した商品(シャンパン)は,わが国においても高品質で稀少価値を有する商品として広く販売されており,産地を表示する標章の代表的なものの一つとして極めて著名となっている。被告は,フランス国や INAO 等と共に,「シャンパン」表示が有するこのような著名性及びそれに伴う顧客吸引力の維持のために努力を永年重ねてきた。すなわち,国内外の需要者・取引者が想起する「シャンパン」表示の信頼性や評判を損なわぬよう,シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう製造業者を厳格に管理・統制し,厳格な品質管理・品質統制をし,また,これらの者と関係のない他人が「シャンパン」表示を無断で使用又は登録することにより,こうした努力により蓄積・維持されてきた「シャンパン」表示のイメージが毀損されることを防止するための活動を積極的に行ってきた。その結果,「シャンパン」表示は,現在まで長期にわたり著名性を保ち続け,高い名声,信用,評判が形成され,ぶどう酒の商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで,多大な顧客吸引力が化体するに至っている。
⑷ 原産地名称は,商品が産出された土地の地理的名称であるが,商品の出所表
示機能,品質保証機能及び広告機能を有する点において,商標と共通している。そうすると,原産地名称のうち著名な標章については,著名商標の有するこれらの機能が商標法によって保護されるのと同様に保護されることが望ましい。したがって,著名な原産地名称を含む表示からなる商標を,商標法4条1項17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合において,当該表示へのただ乗り(フリーライド)又はその稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」(同項7号)に含まれると解すべきである。すなわち,著名な原産地名称をその原産地と離れた特定個人又は企業が自己の商標として登録し使用することは,同項7号に該当するものとして排斥されるべきである。
⑸ 本件商標は,著名な原産地統制名称に相当する「CHAMPAGNE(シャンパ
ン)」の文字をそのまま含む。また,本件商標は,その構成上,「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字部分が中心的に表されていることから,視覚上,「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の部分に注目して認識される外観的要素がある。さらに,上記のとおり,「CHAMPAGNE」は著名な原産地統制名称であり,誰もが発泡性ぶどう酒又はその著名な原産地統制名称と理解し認識するものであるのに対し,「envie(アンヴィ)」はフランス語で「羨望」を意味するとしても日本人にはなじみが少なく,他方,「GRAY(グレイ)」は「灰色」といった程度の一般的な意味合いにしか認識されない語である。このため,本件商標において取引者・需要者の注意を引くのは,中心的に表された「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字部分である。そうすると,本件商標に接した取引者・需要者が有する通常の注意力によれば,「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字部分が強く印象付けられ,ここから発泡性ぶどう酒又はその著名な原産地統制名称を想起連想して,著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」を含む商標という印象をもって取引にあたると考えられる。
⑹ 以上より,日本では,本件商標の登録査定時(平成29年2月24日)にお
いて,「シャンパン(CHAMPAGNE)」が著名な原産地統制名称として一般需要者の間に広く知られていたのであるから,「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は,極めて高度な商品の出所表示機能,品質保証機能及び広告機能を有する著名商標と同様に,商標法によって保護されるべきものである。他方,本件商標は,上記のとおり,高度な著名性を有する原産地統制名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字部分が強く印象に残るものであり,本件商標を使用した商品に接した取引者・需要者の通常の注意力によれば,本件商標は,容易かつ直感的に,該原産地統制名称である「シャンパン」を想起させるものといえる。このような本件商標の登録は,「CHAMPAGNE(シャンパン)」の文字を含む商標の独占排他的使用を原告に認めるものであるところ,そのような判断は,「シャンパン」表示に対するただ乗り(フリーライド)やその希釈化(ダイリューション)を招来するばかりでなく,シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより,国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがある。そして,そのような判断をしたのが日本国の専門官庁(特許庁)であるとしたら,「シャンパン」表示に対してフランス国民が抱いている誇りや名誉といった国民感情をないがしろにするものといわざるを得ない。このため,本件商標の登録を認めることは,日本国とフランス国の良好な友好関係にも支障をきたすものとなりかねないのであるから,本件商標は,公正な取引秩序を乱し,国際信義に反するものであるとして,公の秩序を害するおそれがあるものといえる。
⑺ 以上より,本件商標は商標法4条1項7号に違反して登録されたとの本件審
決の判断に誤りはない。2
(原告の主張)
について
⑴ 原告は,本件商標の使用状況等についてるる主張する。
しかし,本件商標を使用したコンタクトレンズの販売実績,販売期間及び販売地域,広告宣伝の方法,期間,地域及び規模,コンタクトレンズ市場における市場占有率等は全く不明である。また,本件商標が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られた「CHAMPAGNE(シャンパン)」の文字を構成中に含んでいる以上,ここから原産地統制名称としての観念が生じることに変わりはなく,「envie(アンヴィ)」の原告又は訴外会社のコンタクトレンズブランドとしての認知度は,本件では全く無関係である。
⑵ 原告は,本件商標の構成中の「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」
の文字につき,商品(コンタクトレンズ)の色彩を表示する部分であって,本件商標にあっては,自他商品等識別標識としての機能を果し得ないものであるから,公序良俗に反しない旨を主張するものと理解される。しかし,本件では,本件商標の識別力の有無は争点ではない。識別力を欠く商標であっても,公序良俗に反すると判断される商標は当然にあり得る。また,原告指摘に係る語学学習等に用いる英和辞典や仏和辞典での説明内容は,日本でも同様に認識されていることを示すものではない。現に,日本の代表的な一般的辞書である広辞苑(第7版)では,「シャンパン(champagne)」につき,色彩としての意味合いを有することは一切説明されていない。さらに,「シャンパン色」なる色彩は,具体的に統一された色彩として一般に認識されているわけでなく,「CHAMPAGNE(シャンパン)」は,せいぜい,色彩を表す場合の比喩として用いられることがあるというにすぎない。そして,その比喩は,「CHAMPAGNE(シャンパン)」がゴージャスで高級感のあるイメージをもって一般に認識されていることによるものであって,「CHAMPAGNE(シャンパン)」から想起される色彩が具体的に定まっているわけではない以上,「CHAMPAGNE(シャンパン)」が色彩を表す語又はそのような語の一部として使用されるものとして認識されるという
(原告の主張)
は,前提において誤りである。原告が,「CHAMPAGNE GRAY/シャンパングレイ」を「グレーがかった淡い琥珀色」という色彩を示す標章にすぎないと認識していたのであれば,メインブランドの「envie(アンヴィ)」のみを出願すればよかったはずである。にもかかわらず,「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」の文字を本件商標に含ませることで,「CHAMPAGNE(シャンパン)」が有する著名性やそのゴージャスで高級感のあるものと一般に認識されているイメージに便乗しようとするばかりか,
第三者をして「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」の標章の使用を控え
させようとする不正の目的までもがうかがわれる。インターネット検索の結果についても,検索ロジックが不明であり,また,検索ヒット件数のうち原告商品と本件商標を関連付けて説明しているごく一部のもののみを提出しているにすぎない。
⑶ 原告の指摘する特許異議申立事件に係る判断は,「シャンパンゴールド」に
関するものであり,「シャンパンゴールド」に関する取引の実情に基づいて下されたものであるから,「CHAMPAGNE GRAY(シャンパングレイ)」にまで当然に及ぶものではない。また,上記異議申立て以降の商標登録無効審判事件において,「PROMATIZ」,「CHAMPAGNEGOLD」,「プロマティス」,「シャンパンゴールド」の文字を四段に表示した構成よりなる商標につき,「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の著名性に鑑みれば当該商標の登録は国際信義に反し,公の秩序を害するおそれがあるなどとして,その登録を無効とした審決がある。他方,原告指摘に係る登録商標「シャンパングレイ」については,その登録処分がいまだ争われていないというにすぎない。しかも,これとは別の登録商標「シャンパングレイ」は,異議決定によりその登録が取り消されている。さらに,アメリカにおいて「CHAMPAGNE(シャンパン)」を含む商標が登録されているのは,TRIPs 協定において,当該協定締結の日前に一般名称となっている地理的表示については他の地域での使用を認めることとされている(24条6項)ことによるものにすぎない。
第4 当裁判所の判断
1 認定事実
⑴ 当事者ア 原告は,装身具その他日用品雑貨の輸出入及び売買等をその目的とする株式会社であり,子会社である訴外会社を介して,「envie」のブランド名でカラーコンタクトレンズの販売を行っている。(甲7,16,40,弁論の全趣旨)イ 被告(シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会)は,フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとして設立された法人であり,フランス国内及び国外において,「CHAMPAGNE(シャンパン)」の原産地統制名称を保護する等の活動をしている。(争いがない)
⑵ 本件商標は,別紙「本件商標」のとおり,「envie CHAMPAGNE GRAY」の欧文字と「アンヴィ シャンパングレイ」の片仮名を上下二段に書してなるものである。また,その指定商品は,第9類「眼鏡,電子出版物,アプリケーションソフトウェア」である。
⑶ 「CHAMPAGNE(シャンパン)」について以下の事実については,当事者間に争いがない。ア フランスにおいて「CHAMPAGNE(シャンパン)」の名称につき行われている法的保護の内容に関しては,以下の記載がある。(ア) 「CHAMPAGNE」に関するフランス共和国条例(1936年6月29日)
第1条:「シャンパーニュ」の原産地統制名称は…1927年7月22日の法律
の第5条によって限定された地域で生産されたぶどう酒に限って使用する権利を有する。政府機関…の委員会…によって認定された,ヴィトリ-ル-フランソワ県の生産地で収穫されたぶどうで 作られたぶどう酒についてのみ,原産地統制名称『CHAMPAGNE』を使用する権利がある。(イ) 原産地統制名称法(1935年7月30日付けデクレ)原産地統制名称の認定
第20条:ワイン,オー・ド・ヴィ原産地名称国立委員会が設立され,これに法
人格が与えられる。[国立委員会は,1947年7月16日付デクレの規定に従い,ワイン,オー・ド・ヴィ原産地名称国立研究所とする。]
第21条:原産地名称国立研究所は名称の権利を与える生産区域を限定し,各原
産地統制名称のワイン及びオー・ド・ヴィが満たすべき諸生産条件を決定する。これらの諸条件とは,特にワインの生産区域,ブドウ品種,生産高,最低天然アルコール純度,栽培方法,醸造方法,蒸留方法に関するものである。(ウ) フランス共和国農事法典第3章 原産地名称国立研究所/L641-5条原産地名称国立研究所は,法人格を有する公立行政機関である。(エ) European Intellectual Property Review 1994年第4号
INAO(裁判所注:原産地名称国立研究所)の任務は,フランス国内及び海外に
おいて原産地統制名称を促進かつ保護することであり,一方 CIVC(裁判所注:被
告を示す。)はシャンパーニュ地方ワイン製品の専門的利益を防禦する。
(オ) 「新版 世界の酒事典」(1982年5月20日発行)の「シャンパン
(Champagne)」の項
フランスのシャンパーニュ地方で作られているスパークリング・ワイン。正式の
名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で,
各種のスパークリング・ワインが作られているが,このうちシャンパンと呼ばれる
ものは,フランスのシャンパーニュ地方,特にプルミュール・ゾーン(ランス山と
マルヌ谷との一等地),ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落
群)産のスパークリング・ワインに限ると1911年の法律で定められている。
(カ) 「明治屋酒類辞典 改訂版」(昭和63年8月1日発行)
a 「Champagne(仏)(英)シャンパン」の項
フランスの古い州の名「シャンパーニュ」をとってワインの名に用いたものであ
る。現在「統制された名称」であって,何ら形容詞を付けないで単に「シャンパー
ニュ」と称する資格を有するのは,マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし,その
地域内で,「シャンパン法」でつくった「白」スパークリング・ワインである。最
高生産量にも制限があって,それを超えた部分には形容詞がつく。
b 「統制名称」の項
シャンパンは,詳しくは「ヴァン・ド・シャンパーニュ」であるが,「シャンパ
ーニュ」という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法
律ができて,「シャンパーニュ」という名称が「法律上指定された」名称となった。
…要するにシャンパンの条件は1)シャンパン地区の生産であること。2)シャン
パン法(ビン内で後発酵を行い,発生したガスをビン内に封じ込める)で製造した
ものであること。3)白ワインであること。…4)その年度の最高の生産高に制限
があること,の4条件を備えなければならない。…戦前,我が国でもシャンパンの
名称を乱用した歴史があるが,敗戦の結果,サンフランシスコ講和条約の効果とし
て,マドリッド協定に加入を余儀なくされ,以来フランスの国内法を尊重している。
(キ) 「はじめてのシャンパン&シェリー」(1999年発行)の「シャンパン
の定義」の項
シャンパンというと,発泡性ワインの代名詞のようなイメージがありますが,正
確には,フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な醸造法を用いて造られた発泡性
ワインのみを指します。シャンパンの規定は,フランスのワイン法(AOC)で細
かく定められています。シャンパーニュ地方で栽培されたブドウを用いること,伝
統的なシャンパーニュ方式で製造すること,製造の全工程を指定地域内で行うこと
など,さまざまな条件を満たすことが義務付けられています。ほかの国や地域で,
シャンパンと同様の製法を用いた発泡性ワインが造られたとしても,それをシャン
パンと呼ぶことはできないのです。
イ 日本における「CHAPAGNE」及び「シャンパン」の表示の著名性に関連す
る記載
(ア) 辞書,事典等
a 「コンサイスカタカナ語辞典」(1996年10月1日発行)の「シャンパ
ン[champagne]」の項
発泡ワインの1種,フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒。
b 「広辞苑 第6版」(2008年1月11日発行)の「シャンパン」
(champagne)の項
発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。
c 「洋酒小事典」(昭和56年6月15日発行)の「シャンペン
Champagne」の項
フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。
d その他
「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(平成8年9月30日発
行),「最新版 The ワイン&コニャック アルマニャック」(昭和62年10月
日発行),「The WORLD ATLAS OF WINE」(平成3年5月27日発行),
「World Wine Catalogue 1999 by Suntory」(平成10年12月1日発行)にも,
シャンパンがフランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリング・ワインで
あることが記載されている。
(イ) 雑誌等
a 「ワイン紀行」(1991年9月25日発行)の「シャンパーニュの村」の
項に,シャンパンの歴史及び製造過程等についての記載がある。
b 「フランスのワインとスピリッツ」(1987年発行)の「シャンパーニュ
(CHAMPAGNE)」の項に,シャンパーニュ地方,シャンパンの歴史及び製造過
程等についての記載がある。
c 「料理王国1月号別冊(季刊ワイン王国NO.5)」(2000年1月20
日発行)の「シャンパン味わいの多様性チャート」の項
シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめている全ての醸造
元の数は5200にものぼる。委員会は,シャンパン消費量上位10カ国に外国事
務所をおいて,「シャンパンと呼べるのは,シャンパーニュ地方産スパークリング
だけ」ということを訴えてきたが,‘93年頃から「5200の醸造元があれば5
様のシャンパンがある」ということもアピールするようになった。
d 「The 一流品 決定版」(1986年~1989年発行)には,「スパー
クリングワイン,発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。一番有名なのが
シャンパン。フランスではマルヌ,オーブ,エーヌ,セーヌ・エ・マルヌ四県のぶ
どう畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明してい
る。」などの記載がある。
e その他
(a) 「世界の名酒事典」(’80改訂版,’82-’83年度版,’84-’
年度版,’87-’88年版,’90年版,’91年版,’92年版,’93
年版,’94年版,’95年版,’96年版,’97年版,’98年版,’99年
版,2000年版,2001年版,2002年版,2003年版,2004年版,
年版,2006年版,2008-09年版,2010-11年版,201
年版,2013年版,2014年版,2015年版,2016年版。いずれも昭
和55年5月30日から本件商標の登録査定時までの間に発行されたものであ
る。),「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」
(昭和57年11月1日発行),「家庭画報編女性版 世界の特選品’84」(昭
和58年11月1日発行)においても,シャンパンがフランスのシャンパーニュ地
方で作られるスパークリング・ワインであること,その歴史や製造過程等について
詳しく記載されている。
⒝ 「男の一流品大図鑑」(’86年版,’87年版,’88年版。いずれも昭
和60年12月1日から本件商標の登録査定時までの間に発行されたものである。)
にも,シャンパンについて掲載されている。
⒞ 「はじめてのシャンパン&シェリー」(1999年発行)の「一目でわかる
シャンパンのデータ」の項には,フランスからの総出荷量は,1993年が2億2
万本(1本当たりの容量は750ml。以下同じ。),1998年が2億9
万本であり,この間緩やかに上昇を続けていること,1998年におけるフ
ランスからの国別出荷量において,上位10か国のうち,我が国への出荷量は,イ
ギリス,ドイツ,アメリカ,ベルギー,スイス,イタリアに次いで298万本であ
ることなどの記載がある。
(ウ) 新聞
a 平成元年1月5日付け日本経済新聞
「シャンパン(産地)」の見出しの下,「シャンパンはフランス・シャンパーニ
ュ地方で作られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。」との記載がある。
b 平成元年6月13日付け日本経済新聞
「シャンパン人気急上昇-発泡性ワイン,輸入量5割増(アーバンNOW)」の
見出しの下,「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により,『シ
ャンパン』と名のれるのはその“生誕地”シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみ
と規定されている。」との記載がある。
c 平成2年11月16日付け朝日新聞
「商品の外国地名使用ご用心(素顔のウルグアイ・ラウンド)」の見出しの下,
「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても,厳密には『シャンパ
ン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。…前者はフランスのシ
ャンパーニュ地方産,後者はそれ以外の国や地域で醸造されたものをさす。」との
記載がある。
d 平成3年4月27日付け朝日新聞
「スパークリングワイン 手ごろな値段で楽しめる(カタログ)」の見出しの下,
「シャンパンはシャンパーニュ地方で,瓶内発酵法によって作るなど,法律で基準
が細かく決まっており,この地方以外で作られるスパークリングワインをシャンパ
ンと呼ぶのは禁止されている。」との記載がある。
e その他の新聞においても,シャンパンがフランスのシャンパーニュ地方で作
られるスパークリング・ワインであること,その歴史や製造過程等についての記載
がある。
⑷ 「CHAMPAGNE(シャンパン)」に係る商標登録出願について
証拠(後記別紙の「証拠番号」欄記載のもの)及び弁論の全趣旨によれば,別紙
「『CHAMPAGNE(シャンパン)』の文字を含む商標に関する審決等」記載の各
商標について,商標法4条1項7号に当たるとの判断がされたことが認められる。
本件商標の商標法4条1項7号該当性について
⑴ 本件商標は,指定商品を「眼鏡,電子出版物,アプリケーションソフトウェ
ア」として,別紙「本件商標」記載のとおり,「envie CHAMPAGNE GLAY」の
欧文字と「アンヴィ シャンパングレイ」の片仮名を上下二段に書してなるもので
あ る と こ ろ , こ の 欧 文 字 と 片 仮 名 と は , 「 envie 」 と 「 ア ン ヴ ィ 」 ,
「CHAMPAGNE」と「シャンパン」,「GLAY」と「グレイ」が,それぞれ対応
する関係にあることは,取引者及び需要者にとって容易に理解できる。
そして,前記認定に係る辞書,事典,雑誌,新聞等の記載内容及び掲載媒体等に
鑑みれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の表示は,「フ
ランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味する語であって,
生産地域,製法,生産量など所定の条件を備えたぶどう酒にだけ使用できるフラン
スの原産地統制名称であって,本件商標の登録査定時以前から,日本において,シ
ャンパーニュ地方産スパークリング・ワインの名称としてにとどまらず,発泡性ぶ
どう酒の代名詞のようなイメージを持たれるほどに取引者のみならず消費者に広く
認識され,多大な顧客吸引力を有する極めて著名な表示であったことが認められる。
しかも,商標法4条1項7号に当たるとされたとはいえ,「CHAMPAGNE(シャ
ンパン)」の文字をその構成に含む商標や,これを模した商標が様々な指定商品又
は指定役務につき出願されたことに鑑みると,日本において,上記表示は,ぶどう
酒という商品分野に限られることなく,取引者及び需要者に対して高い顧客吸引力
を有するものであることがうかがわれる。
他方,本件商標を構成する他の要素のうち「envie」,「アンヴィ」は,フラン
ス語で「羨望」を意味するとしても,一般の取引者及び需要者になじみのある語と
はいい難い。また,他の要素である「GLAY」,「グレイ」は,「灰色」を意味す
る英語ないし外来語として広く認識されているということができるものの,これと
「 CHAMPAGNE 」 , 「 シ ャ ン パ ン 」 と を 一 体 的 に 結 合 し た 「 CHAMPAGNE
GRAY」,「シャンパングレイ」については,原告ないし訴外会社の商品及び他社
の商品において色彩を示す表示として使用された例は認められるものの,色彩を表
示する語としても,その他の意味を示す語としても,広く一般的に認識されている
語と認めるに足りる証拠はない。まして,これと「envie」,「アンヴィ」を一体
的に結合した「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」
の語が広く一般的に認識されていると認めるに足りる証拠はない。
これらの事情を踏まえると,本件商標からは,「アンヴィ シャンパングレイ」
の称呼及び観念を生じるのみでなく,「シャンパン」の称呼及び「フランスのシャ
ンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」との観念をも生じるということができ
る。
⑵ 前記各認定事実によれば,本件商標のうち「CHAMPAGNE」,「シャンパ
ン」の部分は,フランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリング・ワイン
(発泡性ぶどう酒)を意味する語であるところ,フランスにおいて,1908年
(明治41年)には法律により「CHAMPAGNE」という名称が法律上指定され,
その後,原産地統制名称法(1935年7月30日付けデクレ)その他の法令によ
り原産地統制名称として保護されていることが認められる。具体的には,公立行政
機関である原産地名称国立研究所(INAO)が定める生産区域,ぶどうの品種,生
産高,最低天然アルコール純度,栽培方法,醸造方法,蒸留方法に関する諸生産条
件を満たすぶどう酒のみがその名称として「CHAMPAGNE」(シャンパン)を使
用する権利を有することとして,シャンパーニュ地方産ワイン製品の品質につき厳
格な管理・統制が行われる一方でその生産者が保護されており,被告は,その製品
の専門的利益を防禦することをその任務とし,フランス国内及び国外において,
「CHAMPAGNE(シャンパン)」の原産地統制名称を保護する等の活動をしてい
る。こうした被告をはじめとするシャンパーニュ地方のワイン生産者等の努力の結
果,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の表示及びその対象であるシャンパーニ
ュ地方産のスパークリング・ワインは,周知著名性を獲得,維持し,高い名声,信
用ないし評判が形成されている。
これらの事情に鑑みると,「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示及びその対
象であるシャンパーニュ地方産のスパークリング・ワインは,フランス及びフラン
ス国民の文化的所産というべきものとなっており,重要性が極めて高いものである
ことが認められる。
また,日本においても,遅くとも第二次世界大戦後,「CHAMPAGNE」(シャ
ンパン)の表示につき,フランス国内法が尊重されている。
⑶ 以上のような本件商標の文字の構成,指定商品の内容,本件商標のうちの
「CHAMPAGNE」,「シャンパン」の文字がフランスにおいて有する意義や重要
性,日本における周知著名性等を総合的に考慮すると,本件商標をその指定商品に
使用することは,フランスのシャンパーニュ地方におけるぶどう酒製造業者の利益
を代表する被告のみならず,法令により「CHAMPAGNE(シャンパン)」の名声,
信用ないし評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し,日本とフランスと
の友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反し,
両国の公益を損なうおそれが高いといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである。
⑷ 原告の主張について
ア 原告は,「envie CHAMPAGNE GLAY」は原告ないし訴外会社が販売する
コンタクトレンズブランド「envie」において「シャンパングレイ色」のカラーコ
ンタクトレンズを示すものであり,「CHAMPAGNE」,「シャンパン」は色彩を
表示するものであり,これと色彩を示す「GLAY」,「グレイ」とが一体不可分で
あることから,色彩以外の意味合いを想起することはないなどと主張する。
イ しかし,前記のとおり,「CHAMPAGNE GLAY」,「シャンパングレイ」
や「envie CHAMPAGNE GLAY」,「アンヴィ シャンパングレイ」が一体不可
分のものと認識されているとはいえない。
また,「シャンパン」の語が色彩を意味する例があるといっても,「シャンパン
色(緑黄又は黄褐色)」(甲17),「シャンパン色,淡黄[緑黄]色」・「シャ
ンパン(色)の」(甲18),「シャンパン色(緑黄色又は琥珀(こはく)色)」
(甲19),「シャンパン色(緑黄又は黄褐色)」(甲20),「シャンパン色の
(淡い黄色)」(甲21)とされ,色彩としての「シャンパン」に相当する色彩の
表現が「緑黄色」,「黄褐色」,「琥珀色」などと必ずしも一致していないことか
らもうかがわれるとおり,いずれもスパークリング・ワインとしてのシャンパンを
想起させることによって,いわば比喩的に「シャンパン」の語を用いて色彩を表現
しているものである。このことは,前記のとおり,本件商標が「シャンパン」の称
呼及び「シャンパーニュ地方産のスパークリング・ワイン」の観念を生じることを
むしろ裏付けるものといえる。
その他,原告は他の商標との関係や米国での商標登録の実情などをるる指摘する
けれども,いずれも本件と直接関係するものではない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
⑸ 小括
以上のとおり,本件商標につき商標法4条1項7号に該当するとした本件審決の
判断に誤りはなく,原告主張に係る取消事由は理由がない。
結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判
決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 高 部 眞 規 子
裁判官 杉 浦 正 樹
裁判官 片 瀬 亮
(別紙)
本件商標
(別紙)
「CHAMPAGNE(シャンパン)」の文字を含む商標に関する審決等⑴ 特許庁の審決(異議決定)指定商品事件番号 商標 審決(決定)日 証拠番号又は指定役務無効 第 25 類 被服 他 平成 16 年 9 月 15 乙 75-35160 日無効 第 14 類 貴金属 他 平成 16 年 9 月 15 乙 76-35301 日異議 第 14 類 貴金属,身 平成 16 年 12 月 6 乙 77-90706 飾品 他 日異議 第 14 類 貴金属,身 平成 16 年 12 月 6 乙 78-90707 飾品 他 日異議 第 14 類 貴金属,身 平成 16 年 12 月 6 乙 79-90708 飾品 他 日異議 第 14 類 貴金属,身 平成 16 年 12 月 6 乙 80-90709 飾品 他 日異議 第 14 類 貴金属,身 平成 16 年 12 月 6 乙 81-90710 飾品 他 日異議 第 14 類 金,金製の 平成 16 年 12 月 6 乙 82-90815 イヤリング 他 日異議 第 14 類 銀,銀製の 平成 16 年 12 月 6 乙 83-90829 イヤリング 他 日異議 第 14 類 ガーネット 平成 16 年 12 月 6 乙 84指定商品事件番号 商標 審決(決定)日 証拠番号又は指定役務-90830 製のイヤリング 他 日異議 第 14 類 パ ラ ジ ウ 平成 16 年 12 月 6 乙 85-90831 ム,パラジウム合金 日製のメダル 他異議 第 14 類 白金,白金 平成 16 年 12 月 6 乙 86-90832 製のイヤリング 他 日異議 第 14 類 貴金属,身 平成 16 年 12 月 6 乙 87-90649 飾品 他 日異議 第 16 類 紙類,文房 平成 17 年 5 月 18 乙 88-90843 具類,雑誌,新聞 日他異議 シャンパンアイボリ 第 25 類 被服,履物 平成 18 年 3 月 13 乙 89-90015 (標準文字) 他 日異議 第 35 類 インターネ 平成 18 年 7 月 5 乙 90-90437 ットによる商品の通 日信販売の取次ぎ異議 Champagner 第 3 類 化粧品 平成 19 年 1 月 19 乙 91-90123 (標準文字) 日異議 第 30 類 フランス国 平成 19 年 3 月 27 乙 92-90670 シャンパーニュ地方 日産の発泡性ぶどう酒を使用した菓子・パン指定商品事件番号 商標 審決(決定)日 証拠番号又は指定役務異議 第 18 類 かばん金具 平成 20 年 4 月 21 乙 93
2007- 他 日異議 シャンパン烏龍 第 30 類 ウーロン茶 平成 20 年 9 月 9 乙 942007- (標準文字) 日異議 第 3 類 せっけん類, 平成 21 年 9 月 29 乙 952009- 香料類,化粧品 他 日異議 ゴールドシャンパン 第 5 類 薬剤 平成 22 年 1 月 12 乙 96
2008- の香り(標準文字) 日異議 第 33 類 日本酒 平成 23 年 3 月 31 乙 972010- 日異議 シャンパングレイ 第 19 類 合成建築専 平成 23 年 4 月 14 乙 98
2009- (標準文字) 用材料 他 日異議 第 32 類 シャンパン 平成 24 年 3 月 1 乙 99-900207 酵母を用いて醸造し 日たビール指定商品事件番号 商標 審決(決定)日 証拠番号又は指定役務無効 第 3 類 せっけん類, 平成 24 年 6 月 22 乙 100-890113 香料類,化粧品 日無効 第 30 類 シャンパ 平成 26 年 6 月 23 乙 1012013- ーニュ地方で作られ 日890084 た発泡性ロゼワイン入りの菓子及びパン無効 PINK 第 30 類 シャンパ 平成 26 年 6 月 4 乙 1022013- CHAMPAGNE ベ ーニュ地方で作られ 日890085 シュレジャパン株式 た発泡性ロゼワイン会社 入りの菓子及びパン(標準文字)無効 シャンパントリュフ 第 30 類 シャンパ 平成 26 年 6 月 4 乙 1032013- ロゼ ベシュレジャ ーニュ地方で作られ 日890086 パン株式会社 た発泡性ロゼワイン(標準文字) 入りの菓子及びパン異議 シャンパンフローラ 第 3類 口臭用消臭 平成 28 年 4 月 20 乙 1042015- ルの香り 剤,動物用防臭剤, 日900152 (標準文字) せっけん類,歯磨き,化粧品他無効 シャンパンマンゴー 第 31 類 マンゴー 平成 28 年 10 月 18 乙 1052016- (標準文字) 日指定商品事件番号 商標 審決(決定)日 証拠番号又は指定役務無効 シャンパークリング 第 33 類 日本酒, 平成 28 年 11 月 14 乙 106- (標準文字) 洋酒,果実酒,酎ハ 日イ,中国酒,薬味酒⑵ 特許庁の商標出願出願(審 指定商品商標 査定(審決)日 証拠番号判)番号 又は指定役務商願 シャンパンバーチ 第 20 類 家具 平成 17 年 3 月 22 乙 107- (標準文字) 日商願 第 1 類 化粧品製造 平成 18 年 1 月 20 乙 108- 用化学品 日商願 第 1 類 化粧品製造 平成 18 年 6 月 5 乙 109- 用化学品 日第 3 類 せっけん類,化粧品 他商願 シャンパンチェア 第 20 類 ソファ 他 平成 19 年 2 月 16 乙 110- (標準文字) 日商願 第 3 類 せっけん類, 平成 19 年 4 月 12 乙 111- 化粧品 他 日出願(審 指定商品商標 査定(審決)日 証拠番号判)番号 又は指定役務商願 第 30 類 いちご入り 平成 22 年 2 月 2 乙 112- 大福餅 日商願 ストロベリー&シャ 第 3 類 せっけん 平成 22 年 8 月 25 乙 113- ンパンの香り 類,香料類 他 日(標準文字)不服 シャンパンハニージ 第 3 類 フランス国 平成 22 年 9 月 17 乙 114- ュレ シャンパーニュ地方 日(審決日)(標準文字) で造られる発泡性ぶどう酒を配合した化粧品 他不服 シャンパンハニージ 第 1 類 フランス国 平成 22 年 9 月 17 乙 115- ュレ シャンパーニュ地方 日(審決日)(標準文字) で造られる発泡性ぶどう酒を配合した化粧品製造用化学品他商願 第 14 類 身飾品 平成 22 年 12 月 10 乙 116- 第 18 類 か ば ん 類 日他第 24 類 布製ラベル第 25 類 被服 他第 26 類 衣服用き章出願(審 指定商品商標 査定(審決)日 証拠番号判)番号 又は指定役務他商願 第 31 類 プリザード 平成 22 年 12 月 28 乙 117- フラワー 他 日商願 第 3 類 せっけん 平成 23 年 3 月 4 乙 118- 類,化粧品 他 日商願 第 30 類 菓子及びパ 平成 23 年 5 月 27 乙 119- ン 日商願 第 3 類 せっけん 平成 23 年 6 月 17 乙 120- 類,化粧品,他 日商願 CHAMPAGNE 第 3 類 せっけん 平成 23 年 7 月 1 乙 121- PEACH 類,化粧品 他 日(標準文字)商願 第 43 類 飲食物の提 平成 25 年 5 月 20 乙 122- 供 日商願 第35類 織物及び寝 平成 25 年 3 月 25 乙 123- 具類の小売又は卸売 日(拒絶理由通知の業務において行わ 書起案)れる顧客に対する便出願(審 指定商品商標 査定(審決)日 証拠番号判)番号 又は指定役務益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,他商願 シャンパン色のドレ 第 25 類 被服 平成 25 年 11 月 15 乙 124- スを着たコニー(標 日準文字)商願 Salon de 第 43 類 シャンパ 平成 26 年 7 月 25 乙 125- Champagne ーニュ産果実酒およ 日(標準文字) び料理を主とする飲食物の提供商願 第 29 類 加工野菜 平成 26 年 7 月 4 乙 126- 及び加工果実 日商願 シャンパンブラック 第 9 類 金銭登録 平成 26 年 9 月 26 乙 127- (標準文字) 機,電気通信機械器 日具,電子計算機,他出願(審 指定商品商標 査定(審決)日 証拠番号判)番号 又は指定役務商願 第 33 類 酒類(日 平成 26 年 10 月 17 乙 1282014- 本酒を除く),他 日000516 第35類 酒類(日本酒を除く)及びワイングラスの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,他商願 第 30 類 角砂糖, 平成 26 年 10 月 10 乙 1292014- 他 日019471 第 31 類 野菜(「茶の葉」を除く。,他)不服 第 33 類シャンパー 平成 28 年 1 月 18 乙 130-011193 ニュ地方で作られた 日発泡性ワイン入りのいちごを使用した大福商願 シャンパンフローラ 第3類 家庭用帯電 平成 27 年 12 月 8 乙 1312015- ル 防止剤,他 日036481 (標準文字)商願 きらめく恋に飛び出 第3類 口臭用消臭 平成 28 年 4 月 8 乙 1322015- すシャンパンピンク 剤,化粧品,他 日049154 の香り出願(審 指定商品商標 査定(審決)日 証拠番号判)番号 又は指定役務(標準文字)商願 シャンパンジャグジ 第 11 類 浴室ユニ 平成 28 年 8 月 5 乙 1332015- ー ット,他 日(標準文字)商願 クリスタルシャンパ 第 11 類 ボイラー 平成 28 年 6 月 28 乙 1342015- ン (動力機械部品・機 日(標準文字) 関 用 の も の を 除く。,他)商願 ディープシャンパン 第7類 化学機械器 平成 28 年 8 月 2 乙 1352015- (標準文字) 具,他 日商願 第 18 類 フランス 平成 28 年 9 月 27 乙 1362015- 製のかばん類,フラ 日ンス製の袋物,他国際登録 第 3類 Cosmetics. 平成 29 年 11 月 2 乙 137 の(化粧品) 日 1,乙 137の2
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