知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成30(行ケ)10129 審決取消請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成30(行ケ)10129審決取消請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成31年2月19日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社コンフィアンス
原告ディプティックエス.アー.エス.
法令 商標権
商標法4条1項10号8回
商標法4条1項15号7回
商標法4条1項11号6回
キーワード 審決26回
無効4回
商標権2回
無効審判1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,以下の商標(登録第5498434号。以下「本件商標」という。) の商標権者である(甲1の1,3)。 商 標 別紙1のとおり 登録出願日 平成22年9月27日 登録査定日 平成24年4月20日 設定登録日 平成24年6月1日 指 定 商 品 第3類「化粧品,せっけん類」 (2) 原告は,平成29年6月1日,本件商標について商標登録無効審判を請求 した。

▶ 商標権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成31年2月19日判決言渡

平成30年(行ケ)第10129号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成30年12月12日

判 決

原 告 ディプティック エス.アー.エス.

訴訟代理人弁護士 加 藤 一 真

訴訟代理人弁理士 津 国 肇

同 山 村 大 介

被 告 株式会社コンフィアンス

訴訟代理人弁護士 岩 波 修

訴訟代理人弁理士 秋 元 輝 雄

同 吉 澤 大 輔

同 秋 元 正 哉

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30

日と定める。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が無効2017-890034号事件について平成30年5月1日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

(1) 被告は,以下の商標(登録第5498434号。 「本件商標」以下 という。)の商標権者である(甲1の1,3)。商 標 別紙1のとおり登録出願日 平成22年9月27日登録査定日 平成24年4月20日設定登録日 平成24年6月1日指 定 商 品 第3類「化粧品,せっけん類」

(2) 原告は,平成29年6月1日,本件商標について商標登録無効審判を請求した。特許庁は,上記請求を無効2017-890034号事件として審理を行い,平成30年5月1日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月11日,原告に送達された。

(3) 原告は,平成30年9月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。その要旨は,本件商標は,以下のとおり,商標法4条1項10号,11号及び15号のいずれにも該当しないから,本件商標の登録はこれらの規定に違反してされたものとはいえず,同法46条1項1号の規定により無効とすることはできないというものである。

⑴ 商標法4条1項10号該当性についてア 別紙2記載の1の商標(以下「引用商標1」という。)は,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円を配置し,両楕円の間に存する空間の上方に「diptyque」の文字,下方に「paris5e」の文字を配置するとともに,当該空間の右方及び左方にそれぞれ「34 boulevardsaint germain」の文字を配置してなるものである。

①原告が原告の業務に係る商品「香水,アロマキャンドル,化粧品,せっけん類」(以下「原告商品」という場合がある。)について使用する甲号各証記載の商標(以下「原告使用商標」という場合がある。)は,引用商標1と同一といえる標章の内側に,例えば,別紙2記載の3ないし6の各登録商標(以下,同3記載の国際登録第953461号商標を「引用商標3」,同4記載の国際登録第990558号商標を「引用商標4」,同5記載の国際登録第990559号商標を「引用商標5」,同6記載の国際登録第990560号商標を「引用商標6」という。)のように,商品ごとに異なる文字や図形等を配した様々なものであり,我が国においては,2006年(平成18年)ころから使用されていた,②原告使用商標の構成において,引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分は,いずれもそれのみが特に強調された体裁で表されていないので,視覚的に強い印象をもって看取,把握されるとはいい難いし,また,引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分が原告商品に単独で使用されているといった状況は見いだせないから,原告使用商標の使用により,引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分のみが,独立して自他商品の識別標識として機能し,取引に資されるとは認め難く,引用商標1は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。イ 別紙1記載の本件商標と引用商標1は,複数の線により描いた大きな縦長の楕円の内側に,複数の線で描いた縦長の同心の楕円を配置するという点においては近似するものの,それぞれの構成態様に照らせば,当該楕円部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能し,取引に資されるとは認め難い上,本件商標は,その構成中の「Dr.Linn」及び「Sakurai」の文字部分が要部であり,当該文字部分から「ドクターリンサクライ」の称呼及び「Linn Sakuraiという名前の医師」の観念を生じるのに対し,引用商標1は,その構成中の「diptyque」の文字部分が要部であり,当該文字部分から「ディプティック」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。してみれば,本件商標と引用商標1とは,その構成全体における比較はもとより,その構成中の要部たる文字部分の比較においても,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。ウ 前記ア及びイによれば,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標とはいえないから,商標法4条1項10号に該当しない。

⑵ 商標法4条1項11号該当性についてア 別紙2記載の2の登録第4598993号商標(以下「引用商標2」という。)の構成態様は,実質的に引用商標1の構成中のフランスのパリの住所を表したものと看取,理解され得る「paris5e」の文字及び「34 boulevard saint germain」の文字を除いたものといえるから,その構成中,要部たり得るのは,引用商標1と同様に,その構成中の「diptyque」の文字部分である。したがって,本件商標と引用商標2とは,本件商標と引用商標1との比較の結果と同様に,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。イ 引用商標3ないし6は,別紙2記載の3ないし6に示すとおり,その構成中の内側に配置された楕円内に,引用商標3は「L’EAU de NEROLI」の文字及び植物等の図形を,引用商標4は「H」の文字及び植物等の図形を,引用商標5は「C」の文字及び植物等の図形を,引用商標6は「L’EAU de TAROCCO」の文字及び植物等の図形を,それぞれ配置してなるものである。引用商標3ないし6の構成態様に照らせば,その構成中の楕円部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能し,取引に資されるとは認め難い上,引用商標3ないし6は,いずれも「diptyque」の文字部分が,自他商品の識別標識として看者に強く支配的な印象を与えるから,要部であり,これを要部として本件商標と比較するときは,本件商標と引用商標1との比較の結果と同様,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。ウ 前記ア及びイのとおり,本件商標と引用商標2ないし6とは,いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標であるから,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない。

⑶ 商標法4条1項15号該当性について引用商標1は,前記⑴のとおり,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。また,引用商標2ないし6については,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標2が,原告商品について単独で使用され,商品の出所識別標識として需要者の間に広く認識されていたという状況は見いだせず,引用商標3ないし6が,原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足りない。さらに,前記⑴及び⑵のとおり,本件商標と引用商標1ないし6とは,いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標である。そうすると,本件商標をその指定商品に使用しても,取引者,需要者が,原告又は引用商標を連想,想起することはなく,その商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当しない。

第3 当事者の主張

取消事由1(商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について

⑴

(原告の主張)

ア 引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分の識別力の判断の誤り(ア) 楕円状リングの図形部分及び「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字からなる引用商標1は,楕円状リングの図形部分の内側の商品ごとに異なる文字や図形等とともにではあるが,1963年以降(日本においては遅くとも平成14年以降)長年にわたり,原告の本国であるフランス及び日本を含む諸外国において,原告商品に使用された結果,引用商標1の構成中の楕円状リングの図形部分は,原告の出所であることを表示・発信し,需要者をして原告商品であることを認識させるに至っている。すなわち,引用商標3ないし6その他の原告使用商標において,その構成中の楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等は商品ごとに異なる一方で,楕円状リングの図形部分は,ほとんどの原告商品の本体や容器に使用されてきたこと,原告商品の需要者は,原告商品を初めて知り,それらに接する初期の段階では,原告使用商標の構成中の楕円状リングの図形部分及び「diptyque 34 boulevardsaint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字部分(引用商標1の構成に相当する部分)を見て原告商品と認識するかもしれない。しかし,原告の店舗内(甲4,45)の商品陳列形態及び原告の商品カタログ(甲46)を見ると,原告使用商標の構成中の「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字は小さく,かつ,楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等は商品ごとにそれぞれ異なることから,上記商品陳列形態において至る所に配置され,否が応でも目に入る楕円状リングの図形部分のみが共通印象として需要者の記憶に残り,やがて「diptyque 34boulevard saint germain paris5e

34 boulevard saint germain」の文字又は

楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等をいちいち見なくとも,楕円状リングの図形部分を一瞥することにより,原告商品であると認識するものといえる。この点に関し被告は,乙1ないし19を挙げて,引用商標1の構成中の楕円状リングの図形部分はありふれた形状である旨主張するが,化粧品,香水等の分野において適切なものは乙15のみであり,当該一例をもって,楕円状リングの図形部分が化粧品,香水等の分野におけるありふれた形状又はデザインの趨勢であるとはいえない。(イ) 引用商標1は,日本を含む世界各国において,原告商品の90%超に使用されている(甲49の1,2)。例えば,平成20年度の日本における原告商品の売上高2億6590万円のうち,2億3931万円超(合計販売数量2万1962個。甲50),平成22年度の日本における原告商品の売上高2億3245万円のうち,2億0921万円超に引用商標1が使用されている。このように,引用商標1の構成中の楕円状リングの図形部分は,「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字又は楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等とともにではあるが,原告の店舗やウェブサイト,あるいは多数の小売業者の店舗(甲6)において,長年かつ大量に使用された結果,楕円状リングの図形部分のみで識別力(商品の出所識別機能。以下同じ。)を獲得したものといえる。また,原告が2008年(平成20年)5月に挙行した原告商品の新商品発売パーティーに,女性向け雑誌である「25ans(ヴァンサンカン)」,「an an(アンアン)」,「美的(ビテキ)」,「CanCam(キャンキャン)」やファッション雑誌である「FIGARO(フィガロ)」,「VOGUE(ヴォーグ)」の編集長や編集者など149名が参加し,これらの雑誌に原告商品が掲載されており(甲51),このことは,平成20年当時既に原告商品及び引用商標1が周知であったことを裏付けるものである。(ウ) 以上によれば,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていた。したがって,引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分のみが,独立して自他商品の識別標識として機能し,取引に資されるとは認め難いとして,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分の識別力及び周知性を否定した本件審決の判断は誤りである。イ 本件商標と引用商標1の類否判断の誤り(ア) 前記ア(ウ)のとおり,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたことに照らすと,引用商標1の要部及び本件商標の要部は,それぞれの構成中の楕円状リングの図形部分である。したがって,本件商標の要部は「Dr.Linn」及び「Sakurai」の文字部分,引用商標1の要部は「diptyque」の文字部分であるとした本件審決の認定は誤りである。(イ) 前記ア(ア)及び(イ)のとおり,楕円状リングの図形部分が,「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字又は楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等とともに,原告の店舗やウェブサイト,あるいは多数の小売業者の店舗において,長年かつ大量に使用された結果,楕円状リングの図形部分のみにおいても識別力を獲得したこと,「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34boulevard saint germain」の文字は小さく,かつ,楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等は商品ごとにそれぞれ異なることから,楕円状リングの図形部分のみが共通印象として需要者の記憶に残り,認識されることなどの取引の実情を考慮すれば,本件商標と引用商標1が本件商標の指定商品に使用された場合,需要者において,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから,本件商標と引用商標1は類似する。したがって,本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるとした本件審決の判断は誤りである。ウ 小括以上によれば,本件商標は,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標1に類似する商標であって,原告商品と同一又は類似する指定商品に使用をするものであるから,商標法4条1項10号に該当する。したがって,本件商標は同号に該当しないとした本件審決の判断は誤りである。

⑵

(被告の主張)

ア 引用商標1又はその構成中の楕円状リングの図形部分の識別力の判断の誤りの主張に対し(ア) 楕円状リングの図形は,昔から容器に付するラベルの形状として広く使用されている,ありふれた形状である。楕円状リングの図形の外径等に沿うように文字が配置されたり,その図形の内部に他の図形や文字が施された原告使用商標のような構成は,古くから商標として用いられている(乙1~14)。化粧品,香水等の分野においても,楕円状リング及びこれに類する図形を構成に含む商標が多数使用されている(乙15~19)。そして,引用商標1を構成する楕円状リングの図形部分は,形状がありふれている上に,それのみが特に強調された体裁で表されておらず,看者に対し視覚的に強い印象を与えるものとはいえない。(イ) 原告が原告商品に使用する原告使用商標は,引用商標1自体ではなく,引用商標3ないし6のように,引用商標1と同一といえる標章の内側に商品ごとに異なる文字や図形等を配した様々な商標であり,いずれも「diptyque」の文字が構成として含まれており,楕円状リングの図形部分のみを単独で原告商品の商標として使用した実績はない。また,原告使用商標が原告商品に長年かつ大量に使用された実績はなく,使用による識別力を獲得したものとはいえないし,原告使用商標が付された原告商品が雑誌等に掲載され始めたのは,平成20年以降であり(甲18~22),雑誌等に掲載されている原告商品中の相当数が,本件商標の指定商品と非類似の商品である「アロマキャンドル」により占められており,原告使用商標中の楕円状リングの図形部分自体に注目・言及しているものはない。(ウ) したがって,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分の識別力及び周知性を否定した本件審決の判断に誤りはない。イ 本件商標と引用商標1の類否判断の誤りの主張に対し(ア) 「diptyque」の文字は,特定の意味合いを想起させることのない造語であり,その文字自体が標章としての強い識別力を有する上に,原告商品の需要者は,商品の外観,香り,成分等を観察・確認するために,陳列棚に配置された商品に近寄り,手にとって,間近で観察するのが通常であるという取引の実情を考慮すると,需要者は,原告商品の購入選択の際に,原告商品に付された原告使用商標を構成する楕円状リングの図形部分の上部中央に表示された「diptyque」の文字部分が目に入る。これに対し楕円状リングの図形部分は,前記アのとおり,顕著な特徴を有しないありふれた図形であり,使用による識別力を獲得したものとはいえない。このような「diptyque」の文字部分及び楕円状リングの図形部分の表示ないし使用態様に鑑みれば,引用商標1においては,「diptyque」の文字部分のみが,強い識別力を有する標章として看者に強く支配的な印象を与えるものといえるから,要部に当たる。したがって,本件審決における引用商標1の要部認定に誤りはなく,また,本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるとした判断にも誤りはない。(イ) 仮に原告が主張するように引用商標1の要部及び本件商標の要部は,それぞれの構成中の楕円状リングの図形部分であるとしても,①引用商標1の楕円状リングの図形部分は,4本の線から構成され,内側2本の線を太線としているのに対し,本件商標の楕円状リングの図形部分は,5本の線から構成され,最外側から2番目の線のみを太線としていること,②引用商標1の楕円状リングの図形部分を構成する線同士の間隔の広さは,太線間の間隔が最も広く,続いて,最外側の細線と隣の太線との間隔,最内側の細線とその隣の太線との間隔の順になっており,いずれも一定間隔(幅)ではなく,楕円状リングの図形部分を構成する各線が全体的に中心に偏倚したような印象を需要者に与えるのに対し,本件商標の楕円状リングの図形部分を構成する線同士の間隔は,「1970・YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE」の文字配置部分以外は,いずれも一定間隔(幅)であり,特段需要者の目を引くような特徴を備えるような構成及び配置にはなっていないことから,両者には外観上の顕著な相違が存在する。したがって,本件商標と引用商標1とは非類似の商標である。ウ 小括前記ア及びイによれば,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標とはいえないから,商標法4条1項10号に該当しない。したがって,本件商標が同号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。取消事由2(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について

⑴

(原告の主張)

本件審決は,引用商標2ないし6は,いずれも「diptyque」の文字部分が自他商品の識別標識として看者に強く支配的な印象を与えるものであり,要部に当たる旨認定した。しかし,引用商標2ないし6は,全 体 と し て ,楕円状リングの図形及びその内側の文字や図形等の模様・デザインからなる図形商標又はデザイン商標であって,「diptyque」の文字部分のみが特に強調された体裁で表されたものとはいえず,視覚的に強い印象をもって看取,把握されるとは言い難いから,本件審決の上記認定は誤りである。そして,本件商標と引用商標2ないし6のそれぞれが本件商標の指定商品に使用された場合,本件商標と引用商標2ないし6における構成要素として共通かつ類似する楕円状リングの図形部分によって,相応数の需要者において,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから,本件商標と引用商標2ないし6は類似する。したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。

⑵

(被告の主張)

前記1(2)で述べたのと同様の理由により,引用商標2ないし6における「diptyque」の文字部分及び楕円状リングの図形部分の表示ないし使用態様に鑑みれば,引用商標2ないし6においては,「diptyque」の文字部分のみが,強い識別力を有する標章として看者に強く支配的な印象を与えるものといえるから,要部に当たる。したがって,本件審決における引用商標2ないし6の要部認定に誤りはなく,本件商標と引用商標2ないし6とは非類似の商標であるとした判断にも誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。取消事由3(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について

⑴

(原告の主張)

ア(ア) 前記1(1)のとおり,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものであり,引用商標2ないし6及びその構成中の楕円状リングの図形部分も,これと同様である。そして,本件商標がその指定商品に使用された場合,本件商標と引用商標1ないし6における構成要素として共通かつ類似する楕円状リングの図形部分によって,取引者,需要者をして,原告を連想,想起させ,その商品が原告又は原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項15号に該当する。(イ) この点に関し被告は,原告商品と被告商品は,その用途,種類,価格帯等を異にする商品であり,同種商品として並んで販売されることは考えにくい旨主張する。しかし,化粧品,香水等あるいはアロマキャンドルといった商品の専らの需要者である,店舗やウェブサイトで原告商品及び原告使用商標の楕円状リングの図形部分に慣れ親しんだ女性購買層が,他の店舗やウェブサイトで被告の商品に付された本件商標の楕円状リングの図形部分に接したときは,物理的に両者を並べて比較できないがゆえに,その記憶・印象によって,原告を連想,想起させるおそれがあり,かつ,その商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。イ したがって,本件商標は商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断は誤りである。

⑵

(被告の主張)

前記1⑵のとおり,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得したといえないし,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものともいえない。引用商標2ないし6及びその構成中の楕円状リングの図形部分も,これと同様である。また,原告商品と被告商品は,その用途,種類,価格帯等を異にする商品であり,同種商品として並んで販売されることは考えにくい。そして,本件商標中に,楕円状リングの図形部分の内側に,「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分が大きく表示され,かつ,本件商標中に,原告が楕円状リングの図形と常に併せて使用する「diptyque」の文字部分と同一又は類似の文字部分が存在しないことを併せ考えれば,仮に楕円状リングの図形部分を,原告商品と被告商品に付される各商標の構成として使用したとしても,原告商品と被告商品の各需要者が両商品を誤認混同するおそれはない。したがって,本件商標は,原告の業務に係る原告商品と混同を生ずるおそれがある商標(商標法4条1項15号)に該当しないから,原告主張の取消事由3は理由がない。

第3類「せっけん類,部屋用芳香剤その他の香料類,オーデコロンその他の

化粧水,その他の化粧品」

第4類「芳香性を有するろうそく,その他のろうそく」

国際登録第953461号国際登録日 平成20年2月5日設定登録日 平成21年5月22日指定商品Class 3 Bleaching preparations and other substances for laundry use;「cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics,lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」(訳文・第3類「洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤,洗浄剤(煙突用化学洗浄剤を除く。),つや出し剤,擦り磨き剤及び研磨剤,医療用でない化粧品,皮膚・身体・顔・目・毛髪・頭皮・歯及びつめのコンディショニング用・ケア用及び外観を整えるための化粧品,せっけん,身体用洗浄剤,シャワー用ゲル状洗浄剤,浴用ジェル及び浴用化粧品,香料類及び香水類,オードパルファム,オーデコロン及び化粧水,身体用防臭剤,制汗用化粧品,化粧品,毛髪用着色剤,目用化粧品,つめ用化粧品,唇用化粧品,化粧落とし,ティッシュに浸み込ませた化粧剤,シャンプー,ヘアーコンディショナー,毛髪用剤(医療用でないもの),ヘアーローション,歯磨き,日焼け用化粧品,日焼け止め用化粧品,ひげそり用剤,アフターシェーブ用及びプレシェーブ用のローション及び油,脱毛剤,精油,化粧用油,ポマード,ポプリ,引き出し用におい袋,室内用芳香剤,香,化粧品用香料として使用するための植物エキス」)国際登録第990558号国際登録日 平成20年12月16日設定登録日 平成22年5月28日指定商品Class 3 Bleaching preparations and other substances for laundry use;「cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics,lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」(訳文・第3類「洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤,洗浄剤(煙突用化学洗浄剤を除く。),つや出し剤,擦り磨き剤及び研磨剤,医療用でない化粧品,皮膚・身体・顔・目・毛髪・頭皮・歯及びつめのコンディショニング用・ケア用及び外観を整えるための化粧品,せっけん,身体用洗浄剤,シャワー用ゲル状洗浄剤,浴用ゲル状洗浄剤・化粧品及び浴用化粧品,香料類及び香水類,オードパルファム,オーデコロン及び化粧水,身体用防臭剤,制汗用化粧品,化粧品,毛髪用着色剤,目用化粧品,つめ用化粧品,唇用化粧品,化粧落とし,ティッシュに浸み込ませた化粧剤,シャンプー,ヘアーコンディショナー,毛髪用剤(医療用でないもの),ヘアーローション,歯磨き,日焼け用化粧品,日焼け止め用化粧品,ひげそり用剤,アフターシェーブ用及びプレシェーブ用のローション及び油,脱毛剤,精油,化粧用油,ポマード,ポプリ,引き出し用におい袋,室内用芳香剤,香,化粧品用香料として使用するための植物エキス」)国際登録第990559号国際登録日 平成20年12月16日設定登録日 平成22年5月28日指定商品Class 3 Bleaching preparations and other substances for laundry use;「cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics,lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」(訳文・第3類「洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤,洗浄剤(煙突用化学洗浄剤を除く。),つや出し剤,擦り磨き剤及び研磨剤,医療用でない化粧品,皮膚・身体・顔・目・毛髪・頭皮・歯及びつめのコンディショニング用・ケア用及び外観を整えるための化粧品,せっけん,身体用洗浄剤,シャワー用ゲル状洗浄剤,浴用ジェル及び浴用化粧品,香料類及び香水類,オードパルファム,オーデコロン及び化粧水,身体用防臭剤,制汗用化粧品,化粧品,毛髪用着色剤,目用化粧品,つめ用化粧品,唇用化粧品,化粧落とし,ティッシュに浸み込ませた化粧剤,シャンプー,ヘアーコンディショナー,毛髪用剤(医療用でないもの),ヘアーローション,歯磨き,日焼け用化粧品,日焼け止め用化粧品,ひげそり用剤,アフターシェーブ用及びプレシェーブ用のローション及び油,脱毛剤,精油,化粧用油,ポマード,ポプリ,引き出し用におい袋,室内用芳香剤,香,化粧品用香料として使用するための植物エキス」)国際登録第990560号国際登録日 平成20年12月16日設定登録日 平成22年5月28日指定商品Class 3 Bleaching preparations and other substances for laundry use;「cleaning, polishing, scouring and abrasive preparations; non-medicated toilet preparations; preparations and substances for the conditioning, care and appearance of the skin, body, face, eyes, hair, scalp, teeth and nails; soaps, personal cleansing preparations, shower gels, bath gels and bath cosmetic preparations; perfumery, eau de parfum, colognes and toilet waters; deodorant preparations for personal use, anti-perspirants, cosmetics, hair colourants, eye cosmetics, nail cosmetics,lip cosmetics, make up removers, tissues impregnated with cosmetic preparations; shampoos, hair conditioners, preparations for the hair, hair lotions; dentifrices; sun tanning preparations, sun-screening preparations; shaving preparations, after shave and pre shave lotions and oils, depilatory preparations; essential oils, oils for toilet purposes; pomanders, potpourris, fragranced sachets for drawers, room fragrance, incense, plant extracts for use as aromatics in cosmetics.」(訳文・第3類「洗濯用漂白剤その他の洗濯用剤,洗浄剤(煙突用化学洗浄剤を除く。),つや出し剤,擦り磨き剤及び研磨剤,医療用でない化粧品,皮膚・身体・顔・目・毛髪・頭皮・歯及びつめのコンディショニング用・ケア用及び外観を整えるための化粧品,せっけん,身体用洗浄剤,シャワー用ゲル状洗浄剤,浴用ジェル及び浴用化粧品,香料類及び香水類,オードパルファム,オーデコロン及び化粧水,身体用防臭剤,制汗用化粧品,化粧品,毛髪用着色剤,目用化粧品,つめ用化粧品,唇用化粧品,化粧落とし,ティッシュに浸み込ませた化粧剤,シャンプー,ヘアーコンディショナー,毛髪用剤(医療用でないもの),ヘアーローション,歯磨き,日焼け用化粧品,日焼け止め用化粧品,ひげそり用剤,アフターシェーブ用及びプレシェーブ用のローション及び油,脱毛剤,精油,化粧用油,ポマード,ポプリ,引き出し用におい袋,室内用芳香剤,香,化粧品用香料として使用するための植物エキス」)

第4 当裁判所の判断

1 取消事由1(商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について

⑴ 認定事実証拠(甲2~9,13,14,16~27,45~47,49~51(枝番号のあるものは,枝番号を含む。特に断りのない限り,以下同じ。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ア(ア) 原告は,1961年(昭和36年)に設立された,アロマキャンドル,香水,化粧品,せっけん類等の製造及び販売等を業とするフランス法人である。原告は,1963年(昭和38年)にフランスで「diptyque」のブランド名でアロマキャンドルの販売を開始して以来,「diptyque」は,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドルのブランドとして,フランスの国内及び国外で知られるようになった。(イ) 原告は,引用商標2ないし6の商標権者である。イ 原告は,平成14年ころから,日本において,原告の製造に係るアロマキャンドル,香水,化粧品,せっけん類等の商品(原告商品)の販売を輸入販売代理店を通じて開始した。原告は,2009年(平成21年)2月に,日本現地法人の「Diptyque Japan株式会社」を設立後,2013年(平成25年)12月に東京都内に直営店をオープンし(甲5の1~4),現在では,直営店3店舗を含む,百貨店,アパレルショップ等の全国76店舗(甲6)で原告商品を取り扱っている。日本における原告商品の年間売上高は,平成20年が約2億7000万円,平成21年が約1億8000万円,平成22年が約2億3000万円,平成23年が約3億2000万円,平成24年が約4億5000万円である。ウ 原告が販売する原告商品の容器には,引用商標1(別紙2記載の1)と同一の楕円状リングの図形部分とその内側の楕円内に商品ごとに異なる文字,図形等を配した原告使用商標(例えば,引用商標3ないし6(別紙2記載の3ないし6))が付されていた。エ 2008年(平成20年)以降,原告使用商標を付した原告商品の写真等を掲載した記事が,全国規模の雑誌やウェブサイトに多数回掲載された。

⑵ 引用商標1の周知性について原告は,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,楕円状リングの図形部分の内側の商品ごとに異なる文字や図形等とともにではあるが,長年にわたり,原告商品に使用された結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたから,引用商標及びその構成中の楕円状リングの図形部分の識別力及び周知性を否定した本件審決の判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。ア 引用商標1は,別紙2記載の1のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円(以下「外側の楕円部分」という場合がある。)の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円(以下「内側の楕円部分」という場合がある。)を配置した図形部分(楕円状リングの図形部分)と,両楕円の間に存する空間の上方に配置された「diptyque」の文字部分と,下方に配置された「paris5e」の文字部分と,右方及び左方にそれぞれ配置された「34 boulevard saint germain」の文字部分とから構成された結合商標である。引用商標1においては,「diptyque」の文字部分から「ディプティック」,「paris5e」の文字部分から「パリ ゴ イー」,「3

4 boulevard saint germain」の文字部分から「サンジュウシ ブールバール サンジェルマン」との称呼が生じるものと認められる。「diptyque」の語は,「二連板(蝶番でつないだ2枚折りの書板,装飾された2枚折りの作品)」,「(文学などの対照的,相互補完的)2部作」などを意味するフランス語であるが(小学館「ロベール仏和大辞典」1988年(昭和63年)12月初版発行),この語が,我が国において一般的に知られた語であるとまでは認められない。「paris5e」の文字部分及び「34 boulevard saint germain」の文字部分からは,全体としてフランスのパリの住所を表したものと理解することができる。イ 原告が販売する原告商品には,その容器に,引用商標1と同一の楕円状リングの図形部分の内側の楕円部分内に,商品ごとに異なる文字,図形等を配した原告使用商標(例えば,引用商標3ないし6)が付されていたことは,前記(1)ウ認定のとおりである。しかし,本件商標の登録出願前(登録出願日平成22年9月27日)に,原告商品(その容器を含む。以下同じ。)に引用商標1のみが単独で付されていた事実を認めるに足りる証拠はない。そこで,原告による原告使用商標を付した原告商品の販売が引用商標1の使用に当たるかどうかについて検討する。(ア) 原告使用商標(例えば,引用商標3(別紙2記載の3))は,引用商標1と同一の楕円状リングの図形部分と,そのうちの外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間の上方に配置された「diptyque」の文字部分と,下方に配置された「paris5e」の文字部分と,右方及び左方にそれぞれ配置された「34 boulevard saint germain」の文字部分と,内側の楕円部分内に配置された文字部分及び図形部分(例えば,引用商標3では,「L’EAU deNEROLI」の文字部分及び樹木等の図形部分)とから構成された結合商標である。この内側の楕円部分は,原告使用商標の中央部に位置し,原告使用商標の半分程度の面積を占めており,内側の楕円部分内全体にわたり上記文字部分及び図形部分が表されている。原告使用商標においては,楕円状リングの図形部分によって,外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間に配置された文字部分と,内側の楕円部分内に配置された文字部分及び図形部分とがまとまりよく配置されている。(イ) しかるところ,複数の線により描いた大きな縦長の楕円の内側に,複数の線で描いた縦長の同心の楕円を配置し,その両楕円の間の空間に文字を配置する構成自体は,本件商標の登録出願前から,容器等に付するラベルの形状として使用されてきたものであって(乙1,2, 6,5,13),ありふれたものと認められる。そして,原告使用商標のうちの楕円状リングの図形部分(細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円を配置した図形部分)の構成態様自体に独創性は認められないから,楕円状リングの図形部分は,原告使用商標の構成の中で特に目につくものとはいえない。したがって,原告使用商標のうちの楕円状リングの図形部分の識別力は微弱である。(ウ) 次に,原告使用商標のうちの「diptyque」の文字部分についてみると,楕円状リングの図形部分を構成する外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間の上方の看者の目につきやすい位置に配置されている。「diptyque」の語は,我が国において一般的に知られた語であるとはいえないものの,前記(1)認定のとおり,「diptyque」は,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドルのブランドとして,フランスの国内及び国外で知られるようになっていたこと,原告は,平成14年ころから,日本において,原告使用商標を付した原告商品の販売を開始し,原告商品の売上高は平成20年が約2億7000万円,平成21年が約1億8000万円,平成22年が約2億3000万円であったこと,原告使用商標を付した原告商品の写真等を掲載した記事が,平成20年以降,全国規模の雑誌やウェブサイトに多数回掲載されていたことに照らすと,相当数の需要者において,原告使用商標のうちの「diptyque」の語から,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドル,香水,化粧品等のブランドを連想,想起するものと認められる。また,楕円状リングの図形部分を構成する外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間に「diptyque」の文字部分を頂点として時計回りに「diptyque 34 boulevard saintgermain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字がまとまりよく配置されていることに照らすと,上記需要者においては,原告使用商標のうちの「paris5e」の文字部分及び「34 boulevard saint germain」の文字部分は,「diptyque」がフランスのパリのブランドであることを連想,想起するものと認められる。(エ) 原告使用商標のうちの楕円状リングの図形部分の内側の楕円部分内に配置された文字部分及び図形部分(例えば,引用商標3では,「L’EAU de NEROLI」の文字部分及び樹木等の図形部分)は,原告使用商標の中央部に位置している。そして,上記文字部分及び図形部分の近接した位置に上記文字部分及び図形部分を取り囲むように「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字(「diptyque」の文字部分,「paris5e」の文字部分及び「34 boulevard saint germain」の文字部分)が配置されていることから,これらの文字部分及び図形部分はひとまとまりのものとして看取されるものと認められる。(オ) 以上のとおり,原告使用商標においては,楕円状リングの図形部分によって,外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間に配置された文字部分と,内側の楕円部分内に配置された文字部分及び図形部分とがまとまりよく配置されており,これらの文字部分及び図形部分はひとまとまりのものとして看取されることに照らすと,原告使用商標に接した需要者においては,原告使用商標は,ひとまとまりの文字部分及び図形部分からなる結合商標として認識されるものであって,原告使用商標のうちの引用商標1の構成に相当する部分(楕円状リングの図形部分,「diptyque」の文字部分,「paris5e」の文字部分及び「3

4 boulevard saint germain」の各文字部分)が,独立の商標として認識されるものと認めることはできない。したがって,原告による原告使用商標を付した原告商品の販売が引用商標1の使用に当たるものと認めることはできない。ウ 以上によれば,原告が原告商品に引用商標1を独立の商標として使用した事実は認められないから,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。エ(ア) これに対し原告は,原告が2008年(平成20年)5月に挙行した原告商品の新商品発売パーティーに,女性向け雑誌又はファッション雑誌の編集長や編集者など149名が参加し,これらの雑誌に原告商品が掲載されたことは,平成20年当時既に原告商品及び引用商標1が周知であったことを裏付けるものである旨主張する。しかしながら,上記新商品発売パーティーに女性向け雑誌又はファッション雑誌の編集長や編集者が参加した事実から直ちに引用商標1が周知であったことを裏付けることはできないし,また,原告商品の雑誌への掲載についても,引用商標1が単独で付された原告商品が掲載されたというものではないから,引用商標1が周知であったことを裏付けることはできない。したがって,原告の上記主張は理由がない。(イ) また,原告は,原告商品の需要者は,原告商品を初めて知り,それらに接する初期の段階では,原告商品に付された原告使用商標の構成中の楕円状リングの図形部分及び「diptyque 34 boulevard saint germain paris5e 34 boulevard saint germain」の文字部分(引用商標1の構成に相当する部分)を見て原告商品と認識するかもしれないが,原告使用商標の構成中の上記文字部分の文字は小さく,かつ,楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等は商品ごとにそれぞれ異なることから,やがて上記文字部分又は楕円状リングの図形部分の内側の文字や図形等をいちいち見なくとも,楕円状リングの図形部分を一瞥することにより,原告商品であると認識するといえるから,引用商標1の構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得した旨主張する。しかしながら,原告使用商標のうちの楕円状リングの図形部分の識別力は微弱である上(前記イ(イ)),原告が原告商品に引用商標1を独立の商標として使用した事実は認められないから(前記ウ),ましてや引用商標1の構成要素である楕円状リングの図形部分のみを独立の商標として使用された事実も認められない。したがって,原告の上記主張は,理由がない。

(3) 小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標(商標法4条1項10号)に該当するものとは認められない。したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。取消事由2(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について(1) 本件商標についてア 本件商標は,別紙1記載のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に,三重の細線で描いた縦長の同心の楕円を配置した図形部分と,両楕円の間に存する空間に,「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・1970・YOUR SKINCAN BE YOUR FORTUNE・1970・」の文字を時計回りに配置した文字部分と,三重の細線の楕円の内側に,円状に配置した「YOUR SKIN CAN BE YOUR FORTUNE・YOURSKIN CAN BE YOUR FORTUNE・」の文字部分で囲んだ,「1970」の文字部分及び花のシルエット様の図形部分と,「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分とから構成された結合商標である。そして,本件商標中の構成中の「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分は,中央の目立つ位置に太字の大きな文字で表示されており,上記文字部分から,「ドクターリンサクライ」の称呼が自然に生じるとともに,全体として,「Linn Sakurai」という医師の名前を表したものと理解されることからすると,本件商標がその指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,本件商標の上記文字部分は,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。以上によれば,本件商標から「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分を要部として抽出し,これと引用商標2ないし6とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。イ これに対し原告は,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたことに照らすと,本件商標の要部は,楕円状リングの図形部分(細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円の内側に,三重の細線で描いた縦長の同心の楕円を配置した図形部分)である旨主張する。しかしながら,前記1⑵ウのとおり,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る使用商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから,原告の上記主張は採用することができない。(2) 本件商標と引用商標2との類否についてア 引用商標2は,別紙2記載の2のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円(外側の楕円部分)の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円(内側の楕円部分)を配置した図形部分(楕円状リングの図形部分) 両楕円の間に存する空間の上方に配置されたと, 「diptyque」の文字部分とから構成された結合商標である。引用商標2のうちの「diptyque」の文字部分から,「ディプティック」の称呼が生じるとともに,相当数の需要者において,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドル,香水,化粧品等のブランドを連想,想起するものと認められる。加えて,引用商標2のうちの楕円状リングの図形部分の識別力は微弱であること(前記1⑵イ(イ))を考慮すると,引用商標2が本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,引用商標2のうちの「diptyque」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって,引用商標2のうちの「diptyque」の文字部分は,引用商標2の要部に当たるものと認められる。イ 本件商標の要部である「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分と引用商標2の要部である「diptyque」の文字部分とを対比すると,外観,称呼及び観念のいずれにおいても明らかに相違するから,本件商標及び引用商標2が本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合,取引者,需要者において,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。したがって,本件商標は,全体として引用商標2と非類似の商標である。ウ これに対し原告は,本件商標と引用商標2が本件商標の指定商品に使用された場合,本件商標と引用商標2における構成要素として共通かつ類似する楕円状リングの図形部分によって,相応数の需要者において,商品の出所につき誤認混同を生じさせるおそれがあるから,本件商標と引用商標2は類似する旨主張する。しかしながら,前記(1)イと同様の理由により,引用商標2の構成中の楕円状リングの図形部分は要部に当たるものと認められないから,原告の上記主張は理由がない。(3) 本件商標と引用商標3との類否についてア 引用商標3は,別紙2記載の3のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円(外側の楕円部分)の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円(内側の楕円部分)を配置した図形部分(楕円状リングの図形部分) 両楕円の間に存する空間の上方に配置されたと, 「diptyque」の文字部分と,下方に配置された「paris5e」の文字部分と,右方及び左方にそれぞれ配置された「34 boulevard saint germain」の文字部分と,内側の楕円部分内に配置された「L’EAU de NEROLI」の文字部分及びハンモックの上に裸で横たわり背を向けている女性が,前方の樹木や建造物などの風景を眺めている図形部分とから構成された結合商標である。引用商標3のうちの「diptyque」の文字部分は,楕円状リングの図形部分を構成する外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間の上方の看者の目につきやすい位置に配置されており,当該文字部分から,「ディプティック」の称呼が生じるとともに,相当数の需要者において,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドル,香水,化粧品等のブランドを連想,想起するものと認められる。加えて,「L’EAU de NEROLI」の語は,フランス語であるところ,我が国において一般的に知られた語であるとはいえないから,「L’EAU de NEROLI」の文字部分からは特段の観念が生じないこと,内側の楕円部分内の図形部分は上記文字部分の背景の図柄と認識されることを考慮すると,引用商標3が本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,引用商標3のうちの「diptyque」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって,引用商標3のうちの「diptyque」の文字部分は,引用商標3の要部に当たるものと認められる。イ 本件商標の要部である「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分と引用商標3の要部である「diptyque」の文字部分とを対比すると,外観,称呼及び観念のいずれにおいても明らかに相違するから,前記(2)イと同様の理由により,本件商標は,全体として引用商標3と非類似の商標である。これに反する原告の主張が理由がないことは,前記(2)ウのとおりである。

(4) 本件商標と引用商標4との類否についてア 引用商標4は,別紙2記載の4のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円(外側の楕円部分)の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円(内側の楕円部分)を配置した図形部分(楕円状リングの図形部分) 両楕円の間に存する空間の上方に配置されたと, 「diptyque」の文字部分と,下方に配置された「paris5e」の文字部分と,右方及び左方にそれぞれ配置された「34 boulevard saint germain」の文字部分と,内側の楕円部分内に配置されたデザイン化した「H」の文字部分とアイリスの花の図形部分とから構成された結合商標である。引用商標4のうちの「diptyque」の文字部分は,楕円状リングの図形部分を構成する外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間の上方の看者の目につきやすい位置に配置されており,当該文字部分から,「ディプティック」の称呼が生じるとともに,相当数の需要者において,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドル,香水,化粧品等のブランドを連想,想起するものと認められる。加えて,「H」の文字部分から,商品の記号又は符号を連想,想起させるが,特段の観念は生じないこと,内側の楕円部分内の図形部分は上記文字部分の背景の図柄と認識されることを考慮すると,引用商標4が本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,引用商標4のうちの「diptyque」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって,引用商標4のうちの「diptyque」の文字部分は,引用商標4の要部に当たるものと認められる。イ 本件商標の要部である「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分と引用商標4の要部である「diptyque」の文字部分とを対比すると,外観,称呼及び観念のいずれにおいても明らかに相違するから,前記(2)イと同様の理由により,本件商標は,全体として引用商標4と非類似の商標である。これに反する原告の主張が理由がないことは,前記(2)ウのとおりである。

(5) 本件商標と引用商標5との類否についてア 引用商標5は,別紙2記載の5のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円(外側の楕円部分)の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円(内側の楕円部分)を配置した図形部分(楕円状リングの図形部分) 両楕円の間に存する空間の上方に配置されたと, 「diptyque」の文字部分と,下方に配置された「paris5e」の文字部分と,右方及び左方にそれぞれ配置された「34 boulevard saint germain」の文字部分と,内側の楕円部分内に配置されたデザイン化した「C」の文字部分とバラの花の図形部分とから構成された結合商標である。引用商標5のうちの「diptyque」の文字部分は,楕円状リングの図形部分を構成する外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間の上方の看者の目につきやすい位置に配置されており,当該文字部分から,「ディプティック」の称呼が生じるとともに,相当数の需要者において,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドル,香水,化粧品等のブランドを連想,想起するものと認められる。加えて,「C」の文字部分から,商品の記号又は符号を連想,想起させるが,特段の観念は生じないこと,内側の楕円部分内の図形部分は上記文字部分の背景の図柄と認識されることを考慮すると,引用商標5が本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,引用商標5のうちの「diptyque」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって,引用商標5のうちの「diptyque」の文字部分は,引用商標5の要部に当たるものと認められる。イ 本件商標の要部である「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分と引用商標5の要部である「diptyque」の文字部分とを対比すると,外観,称呼及び観念のいずれにおいても明らかに相違するから,前記(2)イと同様の理由により,本件商標は,全体として引用商標5と非類似の商標である。これに反する原告の主張が理由がないことは,前記(2)ウのとおりである。

(6) 本件商標と引用商標6との類否についてア 引用商標6は,別紙2記載の6のとおり,細線と太線からなる二重線で描いた大きな縦長の楕円(外側の楕円部分)の内側に,二重の太線と細線で描いた縦長の同心の楕円(内側の楕円部分)を配置した図形部分(楕円状リングの図形部分) 両楕円の間に存する空間の上方に配置されたと, 「diptyque」の文字部分と,下方に配置された「paris5e」の文字部分と,右方及び左方にそれぞれ配置された「34 boulevard saint germain」の文字部分と,内側の楕円部分内に配置された「L’EAU de TAROCCO」の文字部分と樹木の奥に見える山脈の麓をラクダに乗って進む隊商を表した図形部分から構成された結合商標である。引用商標6のうちの「diptyque」の文字部分は,楕円状リングの図形部分を構成する外側の楕円部分と内側の楕円部分の間の空間の上方の看者の目につきやすい位置に配置されており,当該文字部分から,「ディプティック」の称呼が生じるとともに,相当数の需要者において,アロマキャンドルないしフレグランスキャンドル,香水,化粧品等のブランドを連想,想起するものと認められる。加えて,「L’EAU de TAROCCO」の語は,フランス語であるところ,我が国において一般的に知られた語であるとはいえないから,「L’EAU de TAROCCO」の文字部分からは特段の観念が生じないこと,内側の楕円部分内の図形部分は上記文字部分の背景の図柄と認識されることを考慮すると,引用商標6が本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,引用商標6のうちの「diptyque」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって,引用商標6のうちの「diptyque」の文字部分は,引用商標6の要部に当たるものと認められる。イ 本件商標の要部である「Dr.Linn」及び「Sakurai」の二段書きの文字部分と引用商標6の要部である「diptyque」の文字部分とを対比すると,外観,称呼及び観念のいずれにおいても明らかに相違するから,前記(2)イと同様の理由により,本件商標は,全体として引用商標6と非類似の商標である。これに反する原告の主張が理由がないことは,前記(2)ウのとおりである。

(7) 小括以上によれば,本件商標は,引用商標2ないし6に類似する商標(商標法4条1項11号)に該当するものとは認められない。したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。取消事由3(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について原告は,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものであること,引用商標2ないし6及びその構成中の楕円状リングの図形部分も,これと同様であることからすると,本件商標がその指定商品に使用された場合には,本件商標と引用商標1ないし6における構成要素として共通かつ類似する楕円状リングの図形部分によって,取引者,需要者をして,原告を連想,想起させ,その商品が原告又は原告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものであり,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。しかしながら,前記1(2)ウで説示したとおり,引用商標1及びその構成中の楕円状リングの図形部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,使用による識別力を獲得し,原告の業務に係る原告商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。したがって,本件商標は同号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は理由がない。結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 大 鷹 一 郎

裁判官 古 河 謙 一

裁判官 山 門 優

(別紙1) 本件商標目録

(別紙2) 引用商標目録

登録第4598993号登録出願日 平成13年9月20日設定登録日 平成14年8月23日指定商品

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

来週の知財セミナー (11月9日~11月15日)

11月11日(水) - 大阪 大阪市

実務におけるノウハウ管理基礎

11月12日(木) - 大阪 大阪

特許侵害予防調査の基礎

11月12日(木) - オンライン

営業秘密管理セミナー

11月13日(金) - オンライン

米国での特許権利化(機械)

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

アクトエース国際特許商標事務所

愛知県小牧市小牧4丁目225番地2 澤屋清七ビル3 206 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

いわさき特許・商標事務所 埼玉県戸田市

埼玉県戸田市上戸田3-13-13 ガレージプラザ戸田公園A-2 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

西川国際特許事務所

〒170-0013 東京都豊島区東池袋3丁目9-10 池袋FNビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング