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平成30(行ケ)10071審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成31年2月26日
事件種別 民事
当事者 被告日亜化学工業株式会社
原告
対象物 導電性材料の製造方法,その方法により得られた導電性材料,その導電性材料を含む電子機器,発光装置,発光装置製造方法
法令 特許権
特許法134条の22回
キーワード 審決94回
実施23回
無効19回
進歩性16回
抵触5回
刊行物2回
特許権1回
優先権1回
無効審判1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,平成21年1月9日,発明の名称を「導電性材料の製造方法,そ の方法により得られた導電性材料,その導電性材料を含む電子機器,発光装 置,発光装置製造方法」とする発明について,国際出願(優先日平成20年 1月17日・優先権主張国日本国。以下「本件出願」という。)をし,平成 25年3月8日,特許権の設定登録(特許第5212364号。請求項の数 22。以下,この特許を「本件特許」という。甲45)を受けた。 (2)ア 原告は,平成27年3月24日,本件特許の請求項1ないし20,22 に係る発明についての特許を無効にすることを求める特許無効審判(無効 2015-800073号事件)を請求した。

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判決文

平成31年2月26日判決言渡
平成30年(行ケ)第10071号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成30年12月12日
判 決

原 告 X

被 告 日亜化学工業株式会社

訴訟代理人弁護士 牧 野 知 彦
訴訟代理人弁理士 田 村 啓
同 山 尾 憲 人
同 言 上 惠 一
同 玄 番 佐 奈 恵
同 重 松 文 子
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2015-800073号事件について平成30年4月9日
にした審決のうち,特許第5212364号の請求項9ないし11に係る部分
を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,平成21年1月9日,発明の名称を「導電性材料の製造方法,そ

の方法により得られた導電性材料,その導電性材料を含む電子機器,発光装
置,発光装置製造方法」とする発明について,国際出願(優先日平成20年
1月17日・優先権主張国日本国。以下「本件出願」という。)をし,平成
25年3月8日,特許権の設定登録(特許第5212364号。請求項の数
22。以下,この特許を「本件特許」という。甲45)を受けた。
(2)ア 原告は,平成27年3月24日,本件特許の請求項1ないし20,22
に係る発明についての特許を無効にすることを求める特許無効審判(無効
2015-800073号事件)を請求した。
被告は,平成28年4月1日付けで,本件特許の請求項1ないし5,9
ないし11を訂正し,請求項6ないし8,12ないし22を削除する旨の
訂正請求をした(以下,この訂正請求を「本件訂正」という。甲51)。
特許庁は,同年12月14日,本件訂正のうち,請求項1ないし3,9
ないし11に係る訂正は認めず,請求項4ないし8,12ないし22に係
る訂正を認めた上で,「本件特許の請求項1ないし3,9ないし11に記
載された発明についての特許を無効とする。本件特許の請求項4,5に記
載された発明についての審判の請求は成り立たない。本件特許の請求項6
ないし8,12ないし20,22に記載された発明についての本件審判の
請求を却下する。」との審決(以下「前件審決」という。甲55)をした。
前件審決の理由のうち,請求項9ないし11に係る部分の要旨は,①本
件訂正のうち,請求項9に係る訂正(訂正事項9-2)は,特許法134
条の2第1項の規定に適合せず,請求項10に係る訂正(訂正事項10-
1)は,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合しな
い,②本件訂正前の請求項9に係る発明(以下「本件発明9」という。)
は,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲5(特表2005-
509293号公報)に記載された発明(以下「引用発明5」という場合
がある。)と周知技術,又は本件出願の優先日前に頒布された刊行物であ

る甲4(特表2007-527102号公報)に記載された発明(以下「引
用発明4」という場合がある。)と周知技術に基づいて,当業者が容易に
発明をすることができたものであるから,同法29条2項の規定により特
許を受けることはできない,③本件訂正前の請求項10に係る発明(以下
「本件発明10」という。)は,甲5に記載された発明(引用発明5)と
周知技術,又は甲4に記載された発明(引用発明4)と周知技術に基づい
て,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同項の規定
により特許を受けることはできない,④本件訂正前の請求項11に係る発
明は,甲5に記載された発明(引用発明5)と周知技術に基づいて,当業
者が容易に発明をすることができたものであるから,同項の規定により特
許を受けることはできないというものである。
イ 被告は,平成29年1月25日,前件審決のうち,本件特許の請求項9
ないし11に係る部分の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判
所平成29年(行ケ)第10032号。以下「前訴」という。)を提起した。
(3) 知的財産高等裁判所は,平成29年11月7日,前件審決が本件訂正のう
ち,請求項9及び10に係る訂正を認めなかった判断に誤りがあるとした上
で,更に本件訂正後の請求項9ないし11に係る発明の容易想到性について
審理し,これらの容易想到性を認めることはできない旨の判断をし,前件審
決のうち,本件特許の請求項9ないし11に係る部分を取り消すとの判決(以
下「前訴判決」という。甲54)をした。その後,前訴判決は,確定した。
前訴判決の理由の要旨は,①本件訂正のうち,請求項9に係る訂正(訂正
事項9-2)は,特許請求の範囲の減縮に該当するから,特許法134条の
2第1項の規定に適合し,また,請求項10に係る訂正(訂正事項10-1)
は,新規事項の追加に当たらず,本件発明10が達成しようとする目的及び
効果を変更するものではないから,同条9項で準用する同法126条5項及
び6項の規定に適合する,②前訴判決が認定した本件訂正後の請求項9に係

る発明(以下「本件訂正発明9」という。)と甲5に記載された発明との相
違点のうち,「相違点9-A」に係る本件訂正発明9の構成について,当業
者が,甲5に記載された発明に基づいて想到することができないから,その
余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明9は,甲5に記載された
発明に基づき容易に想到することができたものとはいえない,③前訴判決が
認定した本件訂正発明9と甲4に記載された発明との相違点のうち,「相違
点9-4」(本件発明9と甲4に記載された発明の相違点9-4と同じ)に
係る本件訂正発明9の構成について,当業者が,甲4に記載された発明に基
づいて,又は甲4に記載された発明と甲8(特表2003-525974号
公報)に記載された技術事項に基づいて想到することができないから,本件
訂正発明9は,甲4に記載された発明を主引用例として容易に想到すること
ができたものとはいえない,④前訴判決が認定した本件訂正後の請求項10
に係る発明(以下「本件訂正発明10」という。)と甲5に記載された発明
との相違点のうち,「相違点10-A」に係る本件訂正発明10の構成につ
いて,当業者が,甲5に記載された発明において,上記構成のうちの「銀の
粒子の一部を局部的に酸化させる」構成とする動機付けがなく,また,前訴
判決が認定した本件訂正発明10と甲4に記載された発明との相違点のうち,
「相違点9-4」(本件発明9と甲4に記載された発明の相違点9-4と同
じ)に係る本件訂正発明10の構成について,上記③と同様の理由により,
当業者が容易に想到することができたものともいえないから,本件訂正発明
10は,甲5に記載された発明又は甲4に記載された発明に基づき容易に想
到することができたものとはいえない,⑤本件訂正後の請求項11に係る発
明(以下「本件訂正発明11」という。)は,本件訂正後の請求項10の発
明特定事項を全て含むものであるから,当業者が,上記③及び④と同様の理
由により,当業者が容易に想到することができたものとはいえないというも
のである。

(4) 特許庁は,前訴判決の確定を受けて,無効2015-800073号事件
の審理を再開し,平成30年4月9日,本件訂正のうち,請求項1ないし3,
9ないし11に係る訂正を認めた上で,「本件特許の請求項1ないし3,9
ないし11に係る発明についての審判の請求は,成り立たない。」との審決
(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月21日,原告に送達
された。
(5) 原告は,平成30年5月21日,本件審決のうち,本件特許の請求項9な
いし11に係る部分の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 本件訂正前
本件訂正前(設定登録時)の特許請求の範囲の請求項9ないし11の記載
は,以下のとおりである(甲45)。
【請求項9】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,0.
1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2
導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃
の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着
し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。
【請求項10】
前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を
更に含む請求項9に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノおよ
びハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコー

ルを含む請求項10に記載の導電性材料の製造方法。
(2) 本件訂正後
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項9ないし11の記載は,以下のとお
りである(下線部は本件訂正による訂正箇所である。甲51)。
【請求項9】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.
0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2
導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃
の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着
し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それに
より発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。
【請求項10】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.
0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2
導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃
の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることに
より,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生
する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を
更に含む導電性材料の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノおよ

びハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコー
ルを含む請求項10に記載の導電性材料の製造方法。
3 本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。
その要旨は,下記のとおり,甲5に記載された発明(引用発明5),甲4に
記載された発明(引用発明4),本件訂正発明9,10と引用発明5との一致
点及び相違点,本件訂正発明9,10と引用発明4との一致点及び相違点を認
定した上で,①甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性欠如の無効理由
について,当業者が,引用発明5に基づいて,相違点9-3(前訴判決認定の
相違点9-Aと同じ)に係る本件訂正発明9の構成を想到することができない
から,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明9は,引用発明
5に基づき容易に想到することができたものとはいえない,②甲4を主引用例
とする本件訂正発明9の進歩性欠如の無効理由について,当業者が,引用発明
4に甲8に記載された技術を適用して,相違点9-4(前訴判決認定の相違点
9-Cと同じ)及び相違点9-5(前件審決認定の本件発明9と引用発明4の
相違点9-4と同じ)に係る本件訂正発明9の構成を想到することができない
から,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明9は,引用発明
4に基づき容易に想到することができたものとはいえない,③甲5を主引用例
とする本件訂正発明10の進歩性欠如の無効理由について,当業者が,引用発
明5において,相違点10-2(前訴判決認定の相違点10-Aと同じ)に係
る本件訂正発明10の「銀の粒子の一部を局部的に酸化させる」構成とする動
機付けがないから,本件訂正発明10は,引用発明5に基づき容易に想到する
ことができたものとはいえない,④甲4を主引用例とする本件訂正発明10の
進歩性欠如の無効理由について,相違点10-5(前訴判決認定の相違点9-
4と同じ)に係る本件訂正発明10の構成について,上記②と同様の理由によ
り,当業者が容易に想到することができたものといえないから,本件訂正発明

10は,引用発明4に基づき容易に想到することができたものとはいえない,
⑤本件訂正発明11は,本件訂正後の請求項10の発明特定事項を全て含むも
のであるから,当業者が,上記③及び④と同様の理由により,当業者が引用発
明5又は引用発明4に基づき容易に想到することができたものとは認められな
いというものである。
(1) 引用発明5(前件審決認定の引用発明5と同じ)
a)有機溶媒,および,端部を有する約0.1μm~約2μmの厚さ,お
よび約3μm~約100μmの直径を有す導電性金属フレークを含む導電性
ペーストを形成すること,および
b)前記導電性ペーストを前記金属フレークの融点以下の温度に加熱し,
それによって前記溶媒を蒸発し,前記金属フレークをその端部でのみ焼結し,
このようにして開放孔が少なくとも隣接する前記金属フレーク間に画定され
るように隣接する前記金属フレークの端部を融合し,それによって前記金属
フレークのネットワークを形成することを含む,多孔質の,可撓性の,弾性
のある熱伝導性材料を形成する方法であって,
前記金属フレークが銀フレークであり,
前記銀フレークに対する溶媒の比率が,フレーク50gmに溶媒4mlで
あり,
前記金属フレークの融点以下の温度が,280℃であり,
前記加熱による焼結が,オーブン中での硬化によるものであり,
前記硬化プロファイルが,2時間で40℃から280℃に上昇,280℃
で1時間保持,1時間で280℃から40℃に降下するものであり,
前記熱伝導性材料の体積抵抗率が,0.000010オーム・cmである
多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する方法。
(2) 引用発明4(前件審決認定の引用発明4と同じ)
デバイスおよび基板上の接点に位置決めされ,かつこれらの間に挟まれた

500nm以下のサイズを有する金属粒子を焼結するステップであって,前
記金属粒子から,デバイスおよび基板との電気的な相互接続を実施する金属
層を形成する前記焼結ステップ
を含む相互接続の形成方法において,
前記金属粒子は,銀であって,前記銀は,金に比べて低いコストである点,
および通常の雰囲気中で焼成され易い点を併せ持っており,はんだリフロー
の場合に匹敵する温度で処理するが,はんだでは不可能な,後続のより高い
温度への曝露に耐えることができるものであり,さらに,適切なナノスケー
ル範囲の金属粒子であるナノ銀粉末(例えば,粒径が500nm未満)は,
およそ1ドル/gのコストで,様々なサイズで様々な供給元から市販されて
いるものであり,
前記金属粒子は,前記焼結ステップの前に,前記金属粒子の凝集を減少さ
せまたは防止するのに十分な量で存在する金属粒子に結合した分散剤と,前
記金属粒子の焼結温度よりも低い揮発温度を有する結合剤とを含むペースト
の形で存在するものであり,
稠密化した金属相互接続を,比較的低い温度での焼結によりかつ低い圧力
しか必要とせずにまたは圧力を全く必要とせずに確立する,
相互接続の形成方法。
(3) 本件訂正発明9,10と引用発明5との一致点及び相違点
ア 本件訂正発明9と引用発明5との一致点及び相違点
(ア) 一致点(前件審決認定の本件発明9と引用発明5との一致点と同じ)
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,
所定の粒径を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,所定
の雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒

子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有
する導電性材料を得ることを含む方法。」である点。
(イ) 相違点9-1(前訴判決認定の相違点9-B)
本件訂正発明9では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0μ
m~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているの
に対して,引用発明5では,「約0.1μm~約2μmの厚さ,および
約3μm~約100μmの直径」と特定されている点。
(ウ) 相違点9-2(前件審決認定の本件発明9と引用発明5との相違点
9-2と同じ)
本件訂正発明9では,「所定の雰囲気」が,「酸素,オゾン又は大気
雰囲気下」と特定されているのに対して,引用発明5では,「オーブン
中」と記載されているだけであって,当該オーブンにおける雰囲気が明
記されていない点。
(エ) 相違点9-3(前訴判決認定の相違点9-A)
本件訂正発明9では,第2導電性材料用組成物の焼成により,銀の粒
子が互いに隣接する部分において融着するが,銀フレークがその端部で
のみ融着している場合を除くものであると特定されているのに対し,引
用発明5では,金属フレークをその端部でのみ焼結して,隣接する金属
フレークの端部を融合すると特定されている点。
イ 本件訂正発明10と引用発明5との相違点
(ア) 相違点10-1(前件審決認定の本件発明10と引用発明5との相
違点と同じ)
本件訂正発明10では,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下」で焼成す
ると特定されているのに対して,引用発明5では,「オーブン中」と記
載されているだけであって,当該オーブンにおける雰囲気が明記されて
いない点。

(イ) 相違点10-2(前訴判決認定の相違点10-A)
本件訂正発明10では,「銀の粒子の一部を局部的に酸化させること
により,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着」することが
特定されているのに対し,引用発明5では,そのような特定がなされて
いない点。
(ウ) 相違点10-3(前訴判決認定の相違点10-B)
本件訂正発明10では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0
μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されている
のに対して,引用発明5では,「約0.1μm~約2μmの厚さ,およ
び約3μm~約100μmの直径」と特定されている点。
(エ) 相違点10-4(前件審決認定の本件発明10と引用発明5との相
違点10と同じ)
本件訂正発明10では,「前記第2導電性材料用組成物が,沸点30
0℃以下の有機溶剤または水を更に含む」のに対して,引用発明5では,
特定されていない点。
(4) 本件訂正発明9,10と引用発明4との一致点及び相違点
ア 本件訂正発明9と引用発明4との一致点及び相違点
(ア) 一致点(前件審決認定の本件発明9と引用発明4との一致点と同じ)
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,
所定の粒径を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,焼成
して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより
発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」である点。
(イ) 相違点9-4(前訴判決認定の相違点9-C)
本件訂正発明9では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0μ

m~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているの
に対して,引用発明4では,「500nm以下のサイズを有する」と特
定されている点。
(ウ) 相違点9-5(前訴判決認定の相違点9-4。前件審決認定の本件
発明9と引用発明4との相違点9-4と同じ)
本件訂正発明9では,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~
320℃の範囲の温度」で焼成しているのに対して,引用発明4では,
特定されていない点。
イ 本件訂正発明10と引用発明4との相違点
(相違点10-5)(前訴判決認定の相違点9-4)
本件訂正発明10では,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~
320℃の範囲の温度で焼成して」いるのに対して,引用発明4では,特
定されていない点。
第3 当事者の主張
1 本案前の抗弁について
(1) 被告の主張
本件審決は,確定した前訴判決(取消判決)の拘束力に従って,前訴判決
の判断をほぼそのまま踏襲し,本件特許の請求項9ないし11に係る発明に
ついての審判の請求は,成り立たないとの判断をしたのであるから,本件審
決の判断は正当である。
本件訴訟は,このような本件審決の判断を意味もなく争うものに過ぎず,
前訴判決による紛争の解決を専ら遅延させる目的で提起されたものであるか
ら,本件訴えの提起は,訴権の濫用として評価されるべきものである。
したがって,本件訴えは,不適法であるから,却下されるべきである。
(2) 原告の主張
本件審決の取消事由は,前訴判決において審究・説示されていない証拠

及び事実関係に基づくものであるから,前訴判決の拘束力に抵触するもの
ではない。
したがって,被告の主張は,理由がない。
2 取消事由1-1(甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性の判断の誤
り)について
(1) 原告の主張
ア 相違点9-3の認定及び判断の誤り
(ア) 引用発明5の認定の誤り
本件審決は,相違点9-3の検討において,引用発明5の「端部」と
は,フレークの「へり」を意味し,引用発明5は,かかる端部を有する
銀フレークを用い,「その端部(へり)でのみ焼結するように加熱」し
て「隣接するフレークの端部(へり)で融合」して,熱伝導性材料を形
成する方法であると認定した上で,引用発明5では,「金属フレークを
その端部でのみ焼結して,隣接する金属フレークの端部を融合する」と
特定されている点において,「銀の粒子が互いに隣接する部分において
融着するが,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く」も
のであるとする本件訂正発明9と相違する旨認定し,さらに,引用発明
5に基づいて,当業者が相違点9-3に係る本件訂正発明9の構成を想
到することができない旨判断した。
しかしながら,甲5の図3の記載から,複数層の層が積層した状態が
読み取れ,このような状態では「へり」の部分でのみ融着し,「面」の
部分で融着しないことはあり得ないこと,甲40(特開平7-1187
01号公報)の【0033】ないし【0035】及び図5には,フレー
クは隙間なく密着した状態で融着することが示されていることに照ら
すと,甲5においても,フレークは隙間なく密着した状態で融着してお
り,銀粒子が「へり」の部分でのみ融着することはあり得ないから,甲

5記載の銀粒子融着構造は,本件訂正発明9の銀粒子融着構造と一致す
る。
したがって,本件審決は,引用発明5の認定を誤った結果,相違点9
-3の認定及び判断を誤ったものである。
(イ) 前訴判決の拘束力を認めるべきでないこと
本件審決は,相違点9-3について,前訴判決の拘束力に従って,前
訴判決の認定判断を踏襲したものである。
しかるところ,前訴判決は,本来,専門的知識経験を有する審判官の
審判手続により審理判断をすべき本件訂正発明9の無効理由について,審
判官の審判手続による審決を経ずに,技術常識を無視した認定判断をした
ものである。このような前訴判決の認定判断は,審決等取消訴訟では,「専
ら当該審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効
原因に関するもののみが審理の対象とされるべき」であるとした最高裁昭
和51年3月10日大法廷判決(民集30巻2号79頁参照)の趣旨に反
するものであるから,拘束力を認めるべきではない。
したがって,前訴判決の拘束力に従った本件審決の相違点9-3の認
定及び判断は誤りである。
イ 小括
以上のとおり,本件審決における相違点9-3の認定及び判断に誤りが
あり,また,その他の相違点(相違点9-1及び9-2)についても当業
者が容易に想到することができたものであるから,本件訂正発明9は,当
業者が甲5に記載された発明に基づいて容易に想到することができたも
のである。
したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 相違点9-3の認定及び判断の誤りの主張に対し

原告は,前訴において,甲5には,銀フレークがその端部でのみ融着し
ていることの記載がないことを主張しており,前訴判決は,このような原
告の主張を踏まえた上で,甲5に記載された発明に基づいて,「相違点9
-A」(相違点9-3と同じ)に係る本件訂正発明9の構成を想到するこ
とはできないと判断したものである。また,仮に原告が本訴で追加した甲
5の図3及び甲40に基づく主張を参酌しても,前訴の上記判断が影響を
受けるものではない。
そして,本件審決は,前訴判決の拘束力に従って,相違点9-3の認定
及び判断をしたものであるから,本件審決の上記認定及び判断に誤りはな
い。
イ 小括
以上のとおり,本件審決における相違点9-3の認定及び判断に誤りは
ないから,原告主張の取消事由1-1は理由がない。
3 取消事由1-2(甲4を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性の判断の誤
り)について
(1) 原告の主張
ア 相違点9-4の容易想到性の判断の誤り
本件出願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて,「本件明細書」
という。甲45)には,本件訂正発明9の「銀の粒子」の平均粒径(メジ
アン径)の下限値「2.0μm」及び上限値「15μm」のいずれの値に
ついても臨界的な意義が存在することを示す記載はない。また,本件明細
書の実施例及び比較例の記載を参酌しても,銀の粒子の平均粒径(メジア
ン径)が,「2.0μm」及び「15μm」のそれぞれの値の前後におい
て,何らかの特性が顕著に変化したことを読み取ることはできない。
そうすると,引用発明4において,銀の粒子の粒径を「2.0μm~1
5μmの平均粒径(メジアン径)」の数値範囲に含まれる構成とすること

は,当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえる。
したがって,当業者は,引用発明4に基づいて,相違点9-4に係る本
件訂正発明9の構成を容易に想到することができたものである。これと異
なる本件審決の判断は誤りである。
イ 相違点9-5の容易想到性の判断の誤り
(ア) 相違点9-5の容易想到性
本件審決は,甲4には,「通常の雰囲気中で焼成され易い点を併せ持
っている」との記載があるものの(【0012】),「通常の雰囲気」
が何であるかは示されておらず,「通常の雰囲気」が大気雰囲気である
ことが技術常識であるとも認められないから,引用発明4から相違点9
-5に係る本件訂正発明9の「酸素,オゾン又は大気雰囲気」との構成
を想到することはできない旨判断した。
しかしながら,大気は,最も入手容易な雰囲気である上,銀は空気中
で加熱しても酸化しないことは技術常識(甲46の1ないし3)である
から,銀粒子の集合体を空気中で加熱し,所要の融着温度に到達すると,
銀粒子は酸化されることなく,そのまま融着(焼結)する。
このように銀粒子の焼結を大気雰囲気中で行い得ることは,本件出願
の優先日当時の周知技術(甲3の3,8,20の7,20の10,47
の1,2,48)である。
そして,銀粒子を大気雰囲気中で「低温で」焼結することに格別の技
術的意義はないから(甲8,20の10,48),相違点9-5に係る
本件訂正発明9の「150℃~320℃の範囲の温度」で焼成している
との構成は,当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
そうすると,当業者は,引用発明4に上記周知技術を適用して,「酸
素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度」で焼
成しているとの構成(相違点9-5に係る本件訂正発明9の構成)を容

易に想到することができたものである。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
(イ) 前訴判決の拘束力に抵触しないこと
本件審決は,相違点9-5について,前訴判決の拘束力に従って,前
訴判決の認定判断を踏襲したものである。
しかるところ,相違点9-5についての原告の主張は,銀粒子の焼結
を大気雰囲気中で行い得ることが周知技術であることの証拠として,前
訴判決において審究・説示されていない前掲(ア)の甲号各証を提出し,
これらの証拠に基づいて,本件審決における相違点9-5の容易想到性
の判断の誤りを主張するものであるから,前訴判決の拘束力に抵触しな
い。
ウ 小括
以上のとおり,相違点9-4及び9-5に係る本件訂正発明9の構成は,
当業者が容易に想到することができたものであるから,本件訂正発明9は,
当業者が甲4に記載された発明(引用発明4)に基づいて容易に想到する
ことができたものである。
したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 相違点9-4の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
甲4の記載事項(【0003】,【0005】,【0006】,【00
08】,【0027】)によれば,引用発明4において,銀の粒子のサイ
ズの上限である「500nm」は,300℃を超えない温度で,銀を焼結
させることにより相互接続を形成することのできる限界であることが理解
される。
このような引用発明4において,150℃~320℃の焼成温度を適用
しつつ,平均粒径(メジアン径)が「2.0μm~15μm」という,5

00nmよりも有意に大きい銀の粒子を適用する動機付けはないばかりか,
むしろ,引用発明4はマイクロメートルサイズの銀の粒子の使用を排斥す
るものであるから,阻害要因があるというべきである。本件訂正発明9が
規定する粒径の数値範囲に臨界的意義があるか否かは,相違点9-4の容
易想到性とは無関係である。
したがって,当業者が,引用発明4に基づいて,銀の粒子の粒径を「2.
0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)」の数値範囲に含まれる構成
(相違点9-4に係る本件訂正発明9の構成)を容易に想到することがで
きたものとはいえない。
これに反する原告の主張は,理由がない。
イ 相違点9-5の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
酸化と融着とは全く異なる現象であるから,ある金属を空気中で加熱し
ても酸化しないことが,当該金属を空気中で加熱したときに融着が生じる
ということに帰着するものではない。
また,原告が挙げる甲号各証のうち,銀粒子と有機材料を含むペースト
の焼結を大気雰囲気下で低温(150℃~320℃程度)で行うこと(相
違点9-5に係る本件訂正発明9の構成)を記載した文献は,甲8と甲2
0の10のみにすぎず,これらの2つの文献だけでは,銀粒子と有機材料
を含むペーストの焼結が大気雰囲気下中で低温(150℃~320℃程度)
で行われることが本件出願の優先日当時周知であったことが立証されてい
るとはいえない。
したがって,相違点9-5に係る本件訂正発明9の構成が容易に想到す
ることができた旨の原告の主張は,その前提において理由がない。
ウ 小括
以上によれば,本件審決における相違点9-4及び9-5の容易想到性
の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1-2は理由がない。

4 取消事由2-1(甲5を主引用例とする本件訂正発明10の進歩性の判断の
誤り)について
(1) 原告の主張
ア 相違点10-2の容易想到性の判断の誤り
(ア) 相違点10-2の容易想到性
本件審決は,①引用発明5の製造方法は,銀フレークを酸化させ得な
い雰囲気であるCDAなしの雰囲気中でも,銀フレークの焼結を可能と
するものであると認められるから,引用発明5は,銀の粒子の一部の局
部的な酸化によって,銀の粒子間を融着させるものではない,②甲5に
は,銀フレークの一部を局部的に酸化させることによって,銀フレーク
を端部でのみ焼結できることは記載も示唆もされておらず,引用発明5
の焼成プロセスを変えることによって何らかの課題が解決されることも
示唆されていないから,引用発明5において銀の粒子の一部を局部的に
酸化させる動機付けはないとして,本件訂正発明10は,当業者が,引
用発明5に基づいて容易に想到できたものとはいえない旨判断した。
しかしながら,前記3(1)イ(ア)のとおり,銀粒子の焼結を大気雰囲気
中で行うことは,本件出願の優先日当時の周知技術であり,銀粒子の低
温焼結には,酸化性雰囲気(空気中)が避けられず,引用発明5のオー
ブン中の加熱雰囲気は酸化性雰囲気(空気中)でしかあり得ないから,
引用発明5の製造方法は,銀フレークを酸化させ得ない雰囲気である旨
の上記①の認定は誤りである。
また,本件訂正発明10は,銀の粒子を含む組成物を,所定雰囲気下
で,所定温度で焼成して,「前記銀の粒子が互いに隣接する部分におい
て融着」する構成のものであり,銀粒子を大気雰囲気中で加熱すること
で銀粒子が融着するものであって,銀粒子の一部を局部的に酸化させる
ことにより,銀粒子が融着するものではないから,銀粒子の一部を局部

的に酸化させることは,何らかの課題を解決するものではなく,技術的
意義はない(甲3の3,8,20の7,20の10,48等)。
このように,銀粒子の一部を局部的に酸化させることは,銀粒子が融
着する上で,必須の構成ではなく,技術的意義はないから,設計的事項
であるといえる。
そうすると,引用発明5において銀の粒子の一部を局部的に酸化させ
る動機付けが存在するから,上記②の判断は誤りである。
したがって,本件審決の上記判断は,その前提において誤りがあるか
ら,理由がない。
(イ) 前訴判決の拘束力に抵触しないこと
本件審決は,相違点10-2について,前訴判決の拘束力に従って,
前訴判決の認定判断を踏襲したものである。
しかるところ,相違点10-2についての原告の主張は,前訴判決に
おいて審究・説示されていない証拠(前掲(ア)の甲号各証)に基づいて,
引用発明5において銀の粒子の一部を局部的に酸化させる動機付けが存
在することを主張するものであるから,前訴判決の拘束力に抵触しない。
イ 小括
以上のとおり,本件審決における相違点10-2の容易想到性の判断に
誤りがあり,また,その他の相違点(相違点10-1,10-3及び10
-4)についても当業者が容易に想到することができたものであるから,
本件訂正発明10は,当業者が甲5に記載された発明に基づいて容易に想
到することができたものである。
したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(2) 被告の主張
ア 相違点10-2の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
原告は,銀粒子の焼結を大気雰囲気中で行うことは本件出願の優先日当

時の周知技術であり,引用発明5においてオーブン中での加熱雰囲気は酸
化性雰囲気(空気中)でしかあり得ない旨主張するが,前記3(2)イのと
おり,原告の上記主張は,その前提において理由がない。また,引用発明
5において,オーブン中での加熱雰囲気が酸化性雰囲気(空気中)に限ら
れないことは,甲5の表4において,乾燥空気(CDA)なしに硬化され
たサンプルが存在することから明らかである。
そして,本件訂正発明10は,所定雰囲気下で銀の粒子を加熱すること
によって,銀の粒子の一部が局部的に酸化し,もって銀粒子の融着が実現
されることを明確にしたものであり,「銀の粒子の一部を局部的に酸化さ
せる」という特定事項は,銀粒子の融着にとって技術的な意義を有するか
ら,これに反する原告の主張は理由がない。
したがって,相違点10-2に係る本件訂正発明10の構成が容易に想
到することができた旨の原告の主張は,理由がない。
イ 小括
以上によれば,本件審決における相違点10-2の容易想到性の判断に
誤りはないから,原告主張の取消事由2-1は理由がない。
5 取消事由2-2(甲4を主引用例とする本件訂正発明10の進歩性の判断の
誤り)について
(1) 原告の主張
本件審決は,相違点10-5は,本件訂正発明9と引用発明4との相違
点9-5と同じであるから,当業者が相違点10-5に係る本件訂正発明
10の構成を容易に想到できたものでないことは,相違点9-5の判断の
とおりである旨判断した。
しかしながら,前記3(1)イのとおり,本件審決における相違点9-5の
容易想到性の判断には誤りがあり,本件訂正発明10は,当業者が甲4に
記載された発明に基づき容易に想到することができたものである。

したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
(2) 被告の主張
本件審決における相違点9-5の容易想到性の判断に誤りがないことは,
前記3(2)イのとおりである。
したがって,原告の主張は理由がない。
6 取消事由3(本件訂正発明11の進歩性の判断の誤り)について
(1) 原告の主張
本件訂正発明11は,本件訂正発明10の発明特定事項を全て備え,さ
らに「前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミ
ノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級
アルコールを含む」点を追加した構成の発明である。
したがって,前記4(1)及び5(1)のとおり,本件訂正発明10が甲5又
は甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた
ものである以上,本件訂正発明11は,甲5又は甲4に記載された発明に
基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
これと異なる本件審決の判断は,誤りである。
(2) 被告の主張
本件訂正発明10が甲5又は甲4に記載された発明に基づいて当業者が
容易に発明することができたものではないとした本件審決の判断に誤りは
ないから(前記4(2)及び5(2)),原告の主張は,その前提を欠くもので
あり,理由がない。
第4 当裁判所の判断
1 本案前の抗弁について
被告は,確定した前訴判決(取消判決)の拘束力に従って認定判断した本件
審決の取消しを求める本件訴訟は,前訴判決による紛争の解決を専ら遅延させ
る目的で提起されたものであり,本件訴えの提起は,訴権の濫用として評価され

るべきものであるから,本件訴えは,不適法であり,却下されるべきである旨主
張する。
そこで検討するに,原告主張の本件審決の取消事由中には,前訴判決が判断し
なかった相違点についての本件審決の判断に誤りがあることを理由とするもの
(前記第3の3(1)ア)が含まれていることに照らすと,本件訴えの提起が,前訴
の蒸し返しであるものと直ちにいうことはできず,訴権の濫用に当たるものと認
めることはできない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
2 取消事由1-1(甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性の判断の誤
り)について
(1) 前訴判決の拘束力等について
確定した前訴判決は,請求項9に係る本件訂正を認めなかった前件審決の
判断に誤りがあるとした上で,①前訴被告(本件訴訟の原告)は,本件訂正
による請求項9に係る訂正が認められる場合でも,本件訂正発明9は「引用
発明1」(本件審決の引用発明5)に基づき容易に想到できる旨主張し,前
訴原告(本件訴訟の被告)の反論も尽くされているので,進んで,本件訂正
発明9の容易想到性について判断する,②本件訂正発明9と「引用発明1」
は,前件審決が認定した本件発明9と「引用発明1」との相違点9-2に加
えて,少なくとも相違点9-A及び相違点9-Bの点でさらに相違すること
が認められる,③相違点9-Aに関し,「引用発明1」の製造方法は,本件
訂正発明9の「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,
銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それにより発生す
る空隙を有する導電性材料を得る方法」とは異なることが明らかであり,甲
5は,銀フレークを端部でのみ焼結させて,端部を融合させる方法を開示す
るにとどまり,焼成の際の雰囲気やその他の条件を選択することによって,
銀の粒子の融着する部位がその端部以外の部分であり,端部でのみ融着する

場合は除外された導電性材料が得られることを当業者に示唆するものではな
いから,「引用発明1」に基づいて,相違点9-Aに係る構成を想到するこ
とはできない,④よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂
正発明9は,当業者が,「引用発明1」に基づき容易に想到できるというこ
とはできない旨判断し,前件審決のうち,本件発明9は甲5に記載された発
明と周知技術に基づいて容易に発明をすることができたことを理由に,本件
特許の請求項9に係る発明についての特許を無効とした部分を取り消した。
前訴において,原告は,平成29年5月29日付け準備書面(1)(甲5
6)に基づいて,甲5には,「銀フレークがその端部(銀フレークの周縁部
分)でのみ融着している場合」の記載がないから,甲5に記載された発明は,
銀フレークがその端部(銀フレークの周縁部分)でのみ融着している構成の
ものとはいえず,相違点9-Aは,本件訂正発明9と甲5に記載された発明
の相違点ではない旨主張した。これに対し被告は,同年6月29日付け準備
書面(原告その2)(甲53)に基づいて,甲5には,端部(周縁部分)を
有する銀フレークを用い,該銀フレークの端部(周縁部分)のみで,銀フレ
ーク同士を融着させる製造法であり,銀フレークの周縁部分のみ融着した導
電性材料を得られるものであることについて十分にサポートされている旨主
張し,原告の上記主張を争った。
前訴判決の上記認定判断及び審理経過によれば,前訴判決が前件審決のう
ち,本件特許の請求項9に係る発明についての特許を無効とした部分を取り
消すとの結論を導いた理由は,本件訂正を認めなかった前件審決の判断に誤
りがあること,本件訂正後の請求項9に係る発明(本件訂正発明9)は,当
業者が甲5に記載された発明に基づいて相違点9-Aに係る本件訂正発明9
の構成を容易に想到することができないから,甲5に記載された発明に基づ
き容易に発明をすることができたとはいえないとしたことの両者にあるもの
と認められ,かかる前訴判決の理由中の判断には取消判決の拘束力(行政事

件訴訟法33条1項)が及ぶものと解するのが相当である。
そして,前訴判決確定後にされた本件審決は,前訴判決と同様の説示をし,
本件訂正発明9は,当業者が甲5に記載された発明(引用発明5)に基づい
て相違点9-3(相違点9-Aと同じ)に係る本件訂正発明9の構成を容易
に想到することができないから,その余の点について判断するまでもなく,
引用発明5に基づき容易に発明をすることができたとはいえないと判断した
ものである。
そうすると,本件審決の上記判断は,確定した前訴判決(取消判決)の拘
束力に従ってされたものと認められるから,誤りはないというべきである。
(2) 原告の主張について
原告は,①前訴判決は,本来,専門的知識経験を有する審判官の審判手続に
より審理判断をすべき本件訂正発明9の無効理由について,審判官の審判手続に
よる審決を経ずに,技術常識を無視した認定判断をしたものであり,最高裁昭和
51年3月10日大法廷判決の趣旨に反するものであるから,前訴判決の上記
認定判断に拘束力を認めるべきではなく,前訴判決の拘束力に従った本件審決
の相違点9-3の認定及び判断は誤りである,②甲5の図3,甲40の【0
033】ないし【0035】及び図5の記載事項に照らすと,甲5記載の銀
粒子融着構造は,本件訂正発明9の銀粒子融着構造と一致するから,本件審
決における引用発明5の認定に誤りがあり,その結果,本件審決は,相違点
9-3の認定及び判断を誤ったものである旨で主張する。
しかしながら,上記最高裁大法廷判決は,特許無効の抗告審判で審理判断さ
れなかった公知事実との対比における特許無効原因を審決取消訴訟において
新たに主張することは許されない旨を判断したものであるところ,前訴判決
は,前件審決で審理判断された甲5を主引用例として,甲5に記載された発
明と本件訂正発明9とを対比し,本件訂正発明9の進歩性について判断した
ものであり,上記最高裁大法廷判決は,前訴判決と事案を異にするから,本件

に適切ではない。
次に,前訴判決が,前記(1)のとおり,前訴被告(本件訴訟の原告)は,本
件訂正による請求項9に係る訂正が認められる場合でも,本件訂正発明9は
「引用発明1」に基づき容易に想到できる旨主張し,前訴原告(本件訴訟の
被告)の反論も尽くされているので,進んで,本件訂正発明9の容易想到性
について判断するとした上で,甲5を主引用例とする本件訂正発明9の進歩
性について判断したことは,裁判所に委ねられている訴訟指揮権の範囲内に
属する事柄であるといえるから,相当である。
さらに,原告は,本件審決における相違点9-3の認定及び判断に誤りが
あることの根拠として,前訴判決と同一の引用例である甲5とともに,甲4
0を挙げるが,甲40は,甲5の記載事項の認定に関する原告の主張を補強
する趣旨で提出されたものであって,新たな公知事実(引用例)を追加する
ものではないから,前訴判決の拘束力を揺るがすものとはいえない。
したがって,本件審決における相違点9-3の認定及び判断に誤りがある
との原告の上記主張は,理由がない。
(3) 小括
以上のとおり,本件訂正発明9は,当業者が引用発明5に基づいて容易に
発明をすることができたとはいえないとした本件審決の判断に誤りはないか
ら,原告主張の取消事由1-1は,理由がない。
3 取消事由1-2(甲4を主引用例とする本件訂正発明9の進歩性の判断の誤
り)について
(1) 本件明細書の記載事項等について
ア 本件明細書(甲45)の発明の詳細な説明には,本件訂正発明9に関し,
次のような記載がある。
(ア) 【技術分野】
【0001】

本発明は,導電性材料の製造方法,その方法により得られた導電性材
料,その導電性材料を含む電子機器,発光装置,発光装置製造方法に関
する。
【背景技術】
【0002】
従来,銅箔を基板に張り合わせ,エッチングにより銅配線を製造する
方法が主流である。しかしながら,この方法ではエッチングをするため,
廃液,廃棄物等が大量に生じるという問題があった。
【0003】
そこで,エッチングを用いない配線基板としては,粒径がミクロンオ
ーダーの金属(例えば,銀,銅など)粒子と,接着剤(例えば,エポキ
シ系,アクリル系,シリコーン系など)とを含むペースト状導電性組成
物を基板の上に塗布し,150℃~180℃で加熱して製造する方法が
知られている(例えば,非特許文献1参照)。この製造方法によれば,
加熱して接着剤が固化する際,導電性ペースト内の金属粒子の間隔が狭
まり,その結果金属粒子が密集して電流が流れ,配線が製造される。た
だし,この方法では,実用的には得られる電気抵抗値が5×10-5Ωc
m程度と高めであり,さらに低い電気抵抗値が望まれていた。
【0004】
また,酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元性有機溶剤へ分散したペー
スト状導電性組成物を基板上に塗布し200℃付近で加熱し配線を製造
する方法も知られている(例えば,特許文献1参照)。この製造方法に
よれば,前記組成物を200℃付近で加熱するとペースト中の酸化銀等
の銀化合物の微粒子が銀に変化し,その結果,銀粒子が接続されて電流
が流れ,配線が製造される。ただし,この製造方法では,酸化銀等の銀
化合物の微粒子の定量的還元反応をともなうため還元性有機溶剤と激し

く反応し,還元性有機溶剤の分解ガスや銀化合物の還元によって発生す
る酸素ガス等の大量発生により導電性組成物中に不規則なボイドが形成
され応力集中点となり容易に導電性組成物が破壊されやすく,また取り
扱い上の危険性があるという問題点があった。これらを解決するためミ
クロンオーダーの銀粒子を前記組成物へ混在させる方法も知られている
が,酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元することにより金属接続するこ
とを原理とするため程度の差はあれ僅かな改善としかならない。
【0005】
また,酸化銀微粒子とこれを還元する還元剤とを含む導電性組成物が
知られている(例えば,特許文献2参照)。この導電性組成物も上記と
同様に高い反応熱が発生するためガスが発生するという問題点がある。
【0006】
炭素原子1~8の有機化合物が粒子表面に付着されてなる粒子状銀化
合物が知られている(例えば,特許文献3参照)。この銀化合物を加熱
すると,表面の有機化合物が還元剤として作用し,その結果,粒子状銀
化合物を銀に還元することができる。しかしながら,この粒子状銀化合
物にも上記と同様に高い反応熱が発生するためガスが発生するという問
題点がある。
【0007】
銀と,酸化銀と,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物とから構
成されている導電性ペーストが知られている(例えば,特許文献4参照)。
この導電性ペーストも上記と同様に高い反応熱が発生するためガスが発
生するという問題点がある。
【0008】
酸化銀(I)Ag2Oより成る組成物を加熱処理することにより酸化
銀を銀に変換することにより得た,空隙率20~60%の多孔質であり,

かつ質量に対する有機物の含量が20%以下である導電性材料に,さら
にめっき処理を施す,導電性材料の作製方法が知られている(例えば,
特許文献5参照)。
【0009】
また,粒径がミクロンオーダーの低結晶化銀フィラーと銀ナノ粒子と
を含むペースト状導電性組成物を基板の上に塗布し,200℃付近で加
熱して配線を製造する方法も知られている(例えば,特許文献6参照)。
この製造方法によれば,前記組成物を200℃付近で加熱すると銀ナノ
粒子が溶融または焼結し,互いに融着して電流が流れ,配線が製造され
る。ただしこの製造方法では,銀ナノ粒子の値段が高いという問題点が
あった。
【0010】
これら前記の製造方法は,電気抵抗値を下げることが困難となる接着
剤を使用するか,還元反応性に富む不安定な酸化銀等の銀化合物の微粒
子を主な原料として使用するか,または高価格な銀ナノ粒子を含む導電
性組成物を用いる必要があった。
【0011】
また,電子部品にこれら従来技術を部品電極,ダイアタッチ接合材,
微細バンプ等の接合材料として適用した場合,例えば発光装置ではリー
ドフレーム又はプリント配線基板などの基板に発光素子をマウントする
のに使用される。近年の発光素子は,高電流を投入するため接着剤が熱
で変色したり,熱および光による樹脂他の有機成分の劣化による電気抵
抗値の経時変化が発生したりする問題があった。とりわけ接合を接着剤
の接着力に完全に頼る方法では,電子部品のはんだ実装時に接合材料が
はんだ溶融温度下に接着力を失い剥離し,不灯に至る致命的問題の懸念
があった。

(イ) 【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,低い電気抵抗値を生じる導電性材料であって,接着剤を含
まない安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料
を製造する方法を提供することを目的とする。
(ウ) 【課題を解決するための手段】
【0013】
銀ナノ粒子が低温で融着することは従来,よく知られていたが,ミク
ロンオーダーの銀粒子が低温で融着することは知られていなかった。本
発明者らは,酸化物または酸素等の酸化条件下で低温加熱すると,ミク
ロンオーダーの銀粒子が融着することを見出し,この知見に基づき本発
明を完成した。
【0014】
本発明は,導電性材料の製造方法であって,前記方法が,0.1μm
~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と,金属酸化物と
を含む第1導電性材料用組成物を焼成して,導電性材料を得ることを含
むことを特徴とする。以下,本明細書中,この製造方法を導電性材料の
第1の製造方法と呼ぶ。
【0015】
また,本発明は,導電性材料の製造方法であって,前記方法が,0.
1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子を含む第2
導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~3
20℃の範囲の温度で焼成して,導電性材料を得ることを含むことを特
徴とする。以下,本明細書中,この製造方法を導電性材料の第2の製造
方法と呼ぶ。
(エ) 【発明の効果】

【0016】
本発明の製造方法は,低い電気抵抗値を生じる導電性材料を製造する
ことができるという利点がある。また,本発明の製造方法は,接着剤を
含まない安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材
料を製造することができるという利点がある。
(オ) 【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは,酸化剤である金属酸化物または酸素,オゾンもしくは
大気雰囲気下で,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含
む組成物を焼成すると,例えば150℃付近の温度であっても銀粒子が
融着して,導電性材料を得ることができることを見出した。一方,窒素
雰囲気下では,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含む
組成物を焼成しても,150℃付近の低温では導電性材料は得られなか
った。このような知見に基づき,本発明者らは,本発明,すなわち,酸
化剤である金属酸化物または酸素,オゾンもしくは大気雰囲気下で,0.
1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含む組成物を焼成する工
程を含む,導電性材料を製造する方法を完成した。
【0020】
本発明の導電性材料を製造する方法において,導電性材料が形成され
るメカニズムは明確ではないが,以下のように推測できる。酸化剤であ
る酸素,オゾンもしくは大気雰囲気下で,0.1μm~15μmの平均
粒径を有する銀粒子を含む組成物を焼成すると,銀粒子と銀粒子の一部
が局部的に酸化され,その酸化により形成した酸化銀が,銀粒子と接触
する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返
す工程を経て,導電性材料が形成されると推測できる。酸化剤である金
属酸化物存在下で,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を

含む組成物を焼成する場合には,既に含まれている金属酸化物が,銀粒
子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応
を繰り返す工程を経て,導電性材料が形成されると推測できる。このよ
うな推測メカニズムにより,導電性材料が製造されるため,本発明の導
電性材料を製造する方法によれば,接着剤を含む導電性材料用組成物を
用いる必要がなく,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて,低い
電気抵抗値を生じる導電性材料を得ることができるのである。
【0022】
また,前記のように,本発明は,導電性材料の第2の製造方法であっ
て,前記方法は,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有
する銀粒子を含む第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰
囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,導電性材料を得
ることを含むことを特徴とする。この第2の製造方法によれば,抵抗率
の低い導電性材料を提供することができる。また,この第2の製造方法
によれば,特に加工を必要としないミクロンオーダー銀粒子をそのまま
融着させることができるため,簡易に導電性材料を製造することができ
る。また,この第2の製造方法によれば,発熱量を抑制して,導電性材
料を得ることができる。また,この第2の製造方法によれば,入手容易
でかつ安価な銀粒子を用いて,導電性材料を製造することができる。ま
た,この第2の製造方法によれば,接着剤,不安定な銀化合物の微粒子
等を原料として用いる必要が無いという利点がある。また,この第2の
製造方法によれば,焼成により前記銀粒子が互いに隣接する部分のみが
融着するため,空隙が発生し,柔軟性に富んだ膜状の導電性材料を形成
することが可能であるという利点がある。
(カ) 【0030】
本発明の導電性材料は,銀含有量が70重量%以上であるのが好まし

い。また,本発明の導電性材料は,電気抵抗値が5.0×10-5Ω・c
m以下であるのが好ましい。
【0042】
本発明における銀粒子は,平均粒径(メジアン径)が1種類のもので
あっても,2種類以上のものを混合して用いてもよい。前記銀粒子が1
種類の場合,平均粒径(メジアン径)が0.1μm~15μmであり,
好ましくは0.1μm~10μmであり,より好ましくは0.3μm~
5μmである。前記銀粒子を2種類以上混合する場合には,平均粒径(メ
ジアン径)が,例えば0.1μm~15μmのものと,0.1μm~1
5μmのものとの組み合わせ,好ましくは0.1μm~15μmのもの
と,0.1μm~10μmのものとの組み合わせ,より好ましくは0.
1μm~15μmのものと,0.3μm~5μmのものとの組み合わせ
である。前記銀粒子を2種類以上混合する場合には,平均粒径(メジア
ン径)が,0.1μm~15μmのものの含有率は,例えば70重量%
以上,好ましくは80重量%以上,よりこのましくは90重量%以上で
ある。これにより電気抵抗値を小さくすることができる。
【0044】
また,本発明における銀粒子は,比表面積が0.5m2/g~3m2/
gであり,好ましくは0.6m2/g~2.5m2/gであり,より好ま
しくは0.6m2/g~2m2/gである。これにより隣接する銀粒子の
接合面積を大きくすることができる。本発明の導電性材料用組成物の主
原料である銀粒子の比表面積は,BETの方法により測定することがで
きる。
【0045】
本発明における銀粒子の形態は限定されないが,例えば,球状,扁平
な形状,多面体等が挙げられる。前記銀粒子の形態は,平均粒径(メジ

アン径)が所定の範囲内の銀粒子に関して,均等であるのが好ましい。
本発明における銀粒子は,平均粒径(メジアン径)が2種類以上のもの
を混合する場合,それぞれの平均粒径(メジアン径)の銀粒子の形態は,
同一であっても異なっていてもよい。例えば,平均粒径(メジアン径)
が3μmである銀粒子と平均粒径(メジアン径)が0.3μmである銀
粒子の2種類を混合する場合,平均粒径(メジアン径)が0.3μmで
ある銀粒子は球状であり,平均粒径(メジアン径)が3μmである銀粒
子は扁平な形状であってもよい。
(キ) 【0085】
[実施例1]
実施例1~5および比較例1~5において,混合粒子の示差走査熱量計
(DSC)にて発熱挙動を確認した。
具体的には,混合粒子各5mgとり示差走査熱量計(DSC)にて発
熱挙動を確認した。DSC測定は,室温から250℃までの範囲を10℃
/分で昇温した。250℃において,前記混合粒子を,アルマイト処理
を施したアルミ容器へ入れ,その後に嵌合した。測定に用いた雰囲気は,
大気中と窒素雰囲気である。…表1中,「銀」は,平均粒径2.0μm
~3.2μmの銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製,製品名「AgC
-239」)を,「酸化銀(I)」は,平均粒径18.5μmの酸化銀
(I)(Ag2O)粒子(和光純薬製,製品名「酸化銀(I)」)を,
「酸化銀(II)」は,平均粒径10.6μmの酸化銀(II)(Ag
O)粒子(和光純薬製,製品名「酸化銀(II)」)を意味する。
【0088】
前記表1に示すように,実施例1および比較例1の結果から,0.1
μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子を含む第2導
電性材料組成物を,大気雰囲気下で加熱すると,融着が生じることを確

認できた。…
【0089】
前記表1に示すように,比較例2~5の結果から,酸化銀(I)粒子
のみか酸化銀(II)粒子のみの粒子を窒素雰囲気または大気雰囲気の
いずれで加熱しても,融着が生じないことを確認できた。
【0090】
前記表1に示すように,実施例2~5の結果から,銀粒子と酸化銀(I)
粒子とを含む混合粒子,および,銀粒子と酸化銀(II)粒子との混合
粒子の場合は,発熱量が比較的大きいことが確認できた。この発熱量は,
各酸化銀粒子単独を加熱した際に発生する発熱量よりも,重量換算で数
十倍以上の大きな発熱であった。このことより,銀粒子と酸化銀粒子と
が,接触部で反応していることが確認できた。また酸素が存在しない窒
素雰囲気下でも銀粒子と酸化銀粒子とを含む混合粒子を加熱することに
より,融着が発生していることが確認できた。すなわち,酸化銀粒子が
銀粒子と反応し,酸素供給源となっていることが推測できる。
イ 前記アの記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件
訂正発明9に関し,次のような開示があることが認められる。
(ア) 従来の導電性材料の製造方法には,電気抵抗値を下げることが困難
となる接着剤を使用するか,還元反応性に富む不安定な酸化銀等の銀化
合物の微粒子を主な原料として使用するか,又は,高価格な銀ナノ粒子
を含む導電性組成物を用いる必要があるなどの問題点があった(【00
09】,【0010】)。
(イ) 「本発明」は,低い電気抵抗値を生じる導電性材料であって,接着
剤を含まない安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導
電性材料を製造する方法を提供することを目的とするものである(【0
012】)。従来,銀ナノ粒子が低温で融着することはよく知られてい

たが,ミクロンオーダーの銀粒子が低温で融着することは知られていな
かったところ,酸化物または酸素等の酸化条件下で低温加熱すると,ミ
クロンオーダーの銀粒子が融着することを見出し,この知見に基づき,
「本発明」を完成した(【0013】)。
「本発明」は,導電性材料の製造方法であって,前記方法が,0.1
μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子を含む第2導
電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~32
0℃の範囲の温度で焼成して,導電性材料を得ることを含むことを特徴
とする(【0015】)。
「本発明」の製造方法によれば,接着剤を含む導電性材料用組成物を
用いる必要がなく,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて,低い
電気抵抗値を生じる導電性材料を得ることができるという利点がある
(【0016】,【0020】)。
(2) 甲4の記載事項について
ア 甲4には,次のような記載がある。
(ア) 【技術分野】
【0001】
本発明は,全体として,電子デバイス,特に使用中に高温を発生する
デバイスまたは高温適用例で使用されるデバイスを相互接続するのに
使用される材料に関する。さらに本発明は,全体として,ダイ接着など
の相互接続の製作中,高圧をかける必要性を低下させまたは除去する製
作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全ての半導体チップは,電子製品内で機能するように,基板に固定ま
たは取着しなければならない。これらのチップを相互接続する最先端技

術では,典型的な場合,鉛または鉛フリーのはんだ合金,あるいはエポ
キシなどの導電性ポリマー接着剤が使用される。しかし,これらの材料
は熱的性質に乏しく,チップから発生した熱を放散しない。また,電気
的性質にも乏しく,電力の損失を効果的に減少させることができず,機
械的強度および信頼性に対する堅牢さにも乏しい。さらに,はんだ合金
の低融解温度およびエポキシの低分解温度のため,これらの材料は一般
に,SiCまたはGaNチップなどのいくつかのチップを高温で機能さ
せるのに適していない。
【0003】
マイクロスケールの金属粉末ペーストの焼結は,電気回路パターンの
生成のため,ハイブリッド電子パッケージで一般に使用される。しかし,
高処理温度(>600℃)であることが,電子部品を基板と接合する際
のその使用を妨げている。現在は,実施の際,デバイスが耐えられるよ
う十分低い温度でリフローするはんだを使用している。低融解温度であ
ることの利点は,高温適用例での高温動作または使用の要件を満たすこ
とができないので,はんだ合金の欠点になる。さらに,はんだ材料は,
銅および銀などのその他の材料に比べて,電気的および熱的性質に比較
的乏しく,かつ耐疲労性に乏しく,そのため電子システム全体の性能に
悪影響を及ぼす。
(イ) 【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品を取着するために商用の銀金属ペーストを使用する圧力支援
焼結が論じられた(…)。商用の銀金属ペースト中の金属粉末は,典型
的な場合,マイクロメートル範囲の粒径を有する。粒径が大きいので,
通常の焼成条件下で,高い焼結温度が必要である(600℃以上)。低
い焼成温度では,焼結プロセスを支援するために,アセンブリに高圧を

かける。しかし,圧力をかけることは,製造の難しさが増すと共に,そ
れに対応して生産コストも増加するので,望ましくないとすることがで
きる。圧力をかけると,処理中のデバイスに損傷を与える可能性も高く
なる。
(ウ) 【課題を解決するための手段】
【0006】
500nm程度またはそれ未満,最も好ましくは100nm程度また
はそれ未満(例えば1~100nm)の非常に微細な導電性金属および
金属合金粒子を使用することによって,稠密化した金属相互接続を,比
較的低い温度での焼結によりかつ低い圧力しか必要とせずにまたは圧力
を全く必要とせずに確立できることが発見された。本発明の材料は,は
んだペーストまたはエポキシと同様に,付着させ処理することができる
(例えば,定量吐出(dispensing) ステンシル/スクリーン印刷など)
, 。
しかし,微細な粉末およびその組成物で形成された接合の熱的,電機的,
および機械的性質は,伝統的な鉛または鉛フリーのはんだ,エポキシ材
料,さらにミクロンサイズの粉末(低温で焼結した)よりもはるかに優
れている。
【0007】
ナノスケール範囲の金属粒子を使用することによって,結合温度(す
なわち,本発明の文脈においては焼結温度)を低下させ,かつ高印加圧
力の必要性を除去しまたは低下させることが可能である。高印加圧力の
必要性がないので,既存のハイブリッドマイクロエレクトロニクス処理
技法および製作装置を利用することが可能であり,したがって,そのよ
うな部品の大量生産が可能になる。本発明のナノ粉末は,既知の技法を
使用して調製することができ,またはミクロンサイズの粉末の場合に匹
敵する価格で直接購入することができる。分散剤は,ペーストの混合中

に,望ましくない/低い銀粒子の投入をもたらす可能性のある粒子の凝
集を減少させるのに使用することが好ましい。本発明のナノ粉末は,好
ましくは分散剤と一緒に,好ましくは所望の焼結温度よりも低い揮発温
度を有するポリマー結合剤と組み合わせることができる。好ましくは金
属または金属合金粉末の焼結温度に近付くまで揮発することのない結合
剤を使用すると,焼結は,組成物全体にわたってより均一に生ずるので,
より稠密な相互接続の実現が支援される(すなわち結合剤は,好ましく
は,粒子の大部分が融合を開始するまで,熱源により近い縁部の金属ま
たは金属合金粉末が,隣接する粒子と融合し始めないように選ばれ,か
つ組成物に配合される)。結合剤中の,金属または金属合金粉末の分散
は,超音波または機械的方法,あるいはこれらの組合せによって促進す
ることができる。
【0008】
本発明の組成物には,広範な適用例がある。例えばこの組成物は,コ
ンピュータ内のシリコン集積回路チップ,または電源内のシリコンパワ
ーチップ,または電気通信モジュール内の光電子チップを結合するのに
使用することができる。また,金属が700℃または800℃よりも高
い温度で融解するような銀粉末および銀合金の場合,本発明は,例えば
SiCまたはGaNパワーチップなど,高温で動作することのできる半
導体チップを取着するのに適している。すなわち比較的低い温度(例え
ば300℃程度)で,ナノ粉末(サイズが500nm未満であるもの,
最も好ましくはサイズが100nmより小さいもの)の形をとる銀また
は銀合金を焼結することにより,商用の鉛および鉛フリーのはんだなら
びに導電性エポキシの場合のように,相互接続が融解する危険を冒すこ
となく,高温で動作することのできる稠密な導電性金属相互接続が実現
される。これらのチップを高温で動作させることができるので,その冷

却要件が削減され,製品の製造および動作における材料およびエネルギ
ーの節約へとつながる。
(エ) 【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ナノスケール金属ペーストの焼結は,マイクロメートルサイズの金属
粉末で必要とされた高処理温度および高処理圧力という要件が回避され
るので,電気相互接続を形成するための実行可能な解決策であることが
発見された。ナノスケール金属ペースト中の金属粉末は,500nm未
満の粒径を有することが好ましく,粒径は,100nm未満であること
が最も好ましい(例えば,1~100nmまたは1~60nmなど)。
【0012】
本発明の粒子内の,好ましい金属または金属合金は,銀または銀合金
である。これは,金に比べて低いコストである点,および通常の雰囲気
中で焼成され易い点を併せ持っているからである。はんだリフローの場
合に匹敵する温度で処理するが,はんだでは不可能な,後続のより高い
温度への曝露に耐えることができる。
【0013】
適切なナノ銀粉末(例えば,粒径が500または100nm未満)は,
およそ1ドル/gのコストで,様々なサイズで様々な供給元から市販さ
れている。例示的な商業上の供給元には,…が含まれる。ナノ銀粉末は,
様々な適用例で使用されている。…電子的適用例では,銀ナノ粉末が,
導電性トレース,抵抗,電極,光学フィルタ,およびEMI遮蔽で使用
するために販売されている(高温適用例で使用される,低温での焼結に
よる相互接続の生成のための適用は,これまで,本発明が本明細書に記
述されるまで認められていない)。…
【0018】

好ましい結合剤14は,最高300℃で妨害されることなく粉末を稠
密化することが可能なテルピネオール(沸点220℃)などの低沸点有
機物でよい。その他の適切な結合剤14の例には,例えば,ポリビニル
アルコール(PVA),ポリビニルブチラール(PVB),およびワッ
クスが含まれる。結合剤14の性質(例えば揮発温度)は,ナノ粉末の
焼結動態に一致する必要があり(すなわち結合剤は,焼結温度よりも低
い温度で沸騰し,揮発し,またはその他の方法で分解しなければならな
い),かつ取着されるデバイスによって課せられた温度限界に一致する
必要がある。以下により詳細に論じられるように(例えば,比較例1お
よび実施例1参照),結合剤14の適切な選択または配合を用いること
によって,粒子のより均一な焼結を確実にすることができる。ステンシ
ル処理およびその他の操作の実施を可能にするのに必要とされる,ペー
ストの粘度を低下させるには,Heraus,Inc.製のRV912
などのシンナー16を,添加することができる。結合剤14の選択に応
じて,テルピネオールをシンナー16として使用することができる。シ
ンナーの選択は広範囲に及び,製作元のニーズ,材料の選択,およびそ
の他の要因に依存する。適切なシンナーには,Heraeus HVS
100,テキサノール,テルピネオール,Heraeus RV-37
2,Heraeus RV-507などが含まれ得る。結合剤14のよ
うに,シンナー16の揮発温度は,金属粒子10の焼結動態に一致すべ
きである。結合剤14およびシンナー16の全ての添加は,適用例に応
じて変わり,例えば,最大で20重量%またはそれ以上を構成すること
ができる(ある実施形態では,好ましい重量%が5~20%の間である)。
【0021】
図3は,本発明の実施における,電子部品と基板との取着の例示的な
プロセスを示す。最初に,ナノスケール銀粉末32をポリマー34と合

わせて,ナノスケール銀ペースト36を形成する。図1および2と併せ
て論じられるように,結合剤中への銀粉末の分散は,超音波法によって
増強しまたは増大させることができる。ナノスケール銀粉末32は,低
沸点の有機溶媒(例えば,テルピネオール)およびシンナー(例えば,
Heraeus製RV 912)を添加することによって,ペースト3
6形態に変換することができる。シリコンまたはワイドバンドギャップ
デバイスなどの電子デバイス38を,ナノ粉末ペースト36を焼結する
ことによって基板40に接合することができ,それによって,このデバ
イス38と取付け基板40との間に中実な結合層が形成される。図3に
示すプロセスは,銀粒子,銀合金,ならびにその他の金属および金属合
金と共に用いることができる。
【0023】
本発明の実施に際して低温が好ましく使用されることを除き,電気デ
バイス38と基板40との接合方法は,ハイブリッド電子パッケージで
実施されるような従来の金属ペースト焼成技法に類似している。焼成温
度は,金属粒子のサイズ(マイクロメートルサイズのものと対照的に,
ナノスケール(好ましくは直径が100nm未満))に起因して,はん
だリフローと同等であることが好ましく,必要に応じて,焼結金属粉末
層との緊密な接触が維持されるように適度に加えられた力だけが必要に
なる可能性がある。図3に示すように,ナノスケール金属ペーストは,
典型的な場合,厚膜(例えば,20から100マイクロメートルの厚さ)
パターンの形で基板上にスクリーンまたはステンシル印刷され,その上
に,デバイスが取り付けられる。デバイスを配置した後,ダイを適度な
力で押し下げ,焼結を行いながら所定位置に保持することができる。膜
の厚さ,粒子のサイズ,および粒子の材料(例えば,銀または銀合金)
に応じて,焼結時間および温度が変わる。多くの適用例では,焼結温度

が少なくとも250℃であり,所要時間は一般に2分以上である。焼結
は,従来のベルトオーブン内で半連続操作により,あるいは,ボックス
オーブン/炉内でバッチ式操作により実施することができる。図3は,
低温焼結操作の後,トレースまたはその他の接点と電気接触している基
板40に機械的に添着した電気デバイス38を示す。以下により詳細に
論じるように,このプロセスによって形成された相互接続は,焼結で使
用されるよりも非常に高い温度(例えば,およそ600℃,700℃,
もしくは900℃,またはそれ以上)で動作することのできる稠密な導
電性金属である。
(オ) 【0026】
ミクロンサイズの銀の代わりに,本発明の実施に際して使用されるナ
ノスケール銀は,主に,焼結温度をほどんどのはんだの処理範囲にまで
低下させる。そのため,これら相互接続材料の代替例として使用するこ
とが可能になる。焼結温度は,粒子のサイズおよび形態に影響を受け易
い。非常に速い拡散速度を有する銀は,その粒径を十分小さくした場合,
その融解温度(962℃)よりも十分低い温度で焼結することができる
ので,特に魅力的である。現行の銀ペースト材料は,妥当な強度および
密度が得られるよう,600℃を超える温度で焼成しなければならない。
定められた焼成スケジュールは,通常,ペーストを900℃程度に持っ
ていき,それを稠密化することである。しかし,銀粒子のサイズが10
0nm未満である本発明のナノスケール銀ペーストの場合,100℃程
度に低い温度で稠密化を開始することができる(しかし,これは望まし
い温度範囲ではない)。
【0027】
適正なタイプの分散剤,結合剤,および溶媒を添加することにより,
非常に速い稠密化速度が可能になりかつ高密度だけではなくデバイスお

よび基板に対する良好な接着も実現されるよう,好ましい焼成温度に到
達するまで(約280から300℃)焼結の開始を遅くすることができ
る。したがって,粒径の減少の他,ペーストの使用可能性に関する重要
な要素とは,焼結温度のすぐ下の温度で揮発し燃焼することができる分
散剤および結合剤系を,選択することである。結合剤系がペーストから
非常に早く離れる場合,銀ナノ粒子は,より低い温度で焼結を開始する
ことになり,その結果,動態の低下と共に,非稠密化メカニズム,例え
ば表面拡散の活性化が生じ,より高い目標焼結温度であっても稠密化す
ることが難しいミクロ構造が得られる。結合剤系成分が,所望の焼成温
度よりも高い温度で燃焼する場合,ポリマー成分が粒子間の広範な接触
を妨げるので,銀粒子は適正に焼結しない。500nmというトップサ
イズ(伝統的に「ナノスケール」と見なされるサイズ範囲にはないサイ
ズ)は,焼結温度が上昇しそれに伴って所望の範囲を超える可能性があ
るので,また当然ながら,もはやはんだの代替例として適当でないので,
この技法の実施限界である。今日まで実施され,また本明細書で報告さ
れた実験研究のほとんどは,商用のAgペースト以外,100nm以下
の粉末に関して行われている。
【0034】
3)本発明による,ナノ銀ペーストによる取着/相互接続は,融解に
よってではなく拡散プロセスを通して銀ナノ粒子が圧密を受ける焼結プ
ロセスを通して実現される。そのようにすることによって,高処理温度
が回避される。一方,バルク状の銀の融点はナノ銀粒子の焼結温度より
も非常に高いので,相互接続は,処理温度よりも高い温度で動作するこ
とができる。要するに,本発明のナノ粉末焼結技法は,高温適用例のた
めの低温結合溶液である。焼結温度は,粉末の粒径をより小さくするこ
とによって著しく低下させることができる。上記にて示すように,かつ

比較例3で論ずるように,銀の焼結温度は,マイクロメートルサイズの
粒子の代わりにナノスケール粒子を用いることによって,劇的に低下さ
せることができる。したがって焼結温度を,多くのはんだ合金のリフロ
ー温度にまで低下させることが可能である。
(カ) 【0035】
(比較例3)
マイクロメートルサイズの銀を含有する銀ペーストの使用に関する従来
技術
現在市販されている銀/銀合金ペーストは,マイクロメートルサイズ
の銀(サイズが500nmよりも大きく,典型的な場合にはサイズが1
0~100μm程度の銀粒子)を含有する。典型的な場合,これらのペ
ーストは,高密度が実現されるように,合金の融点に近い高温で焼成し
なければならない。例えば,銀ペーストの推奨される焼成プロフィール
は,900℃程度に加熱することである(しかし,より低い温度,例え
ば700℃で,機械的強度に対して適度に高い密度を得ることが可能で
ある)。これらは,様々な電子適用例に向けた導電性トレース/パター
ン(パッケージ基板)および電極(キャパシタ)を形成するために,最
も頻繁に使用される。これらは典型的な場合,本発明で提示されるよう
に,デバイスと基板との間の相互接続を形成するのに使用されない。こ
れらの製品に関し,DuPont,Heraeus,およびFerro
など,非常に数多くの供給元がある。銀ペーストは,ダイ取着および相
互接続材料とも見なされている。これを利用するために,アセンブリに
外圧をかけて(約40MPa),焼結温度を300℃以下に低下させる
が(例えば,特許文献1,非特許文献6および7参照),これは基本的
に,半導体デバイスを破壊することなく曝露することができる最大温度
である。しかし,加えられた高い圧力は,パッケージ産業において標準

的なものではなく,深刻な問題が取着/相互接続プロセスに課される可
能性があり,そのためより多くの障害(例えば,亀裂が入ったダイ),
およびより高い製造コストにつながる可能性がある。既存の生産ライン
には,大きな修正が必要である可能性があり,したがって,はんだの代
替例と見なすことはできない。より高いコストだけでも,この産業での
採用が阻まれる可能性がある。
(キ) 【実施例1】
【0038】
結合剤系組成物による,銀の稠密化の調節方法
本発明のペースト中にある金属粒子の稠密化温度/速度の調節は,結
合剤系に進入する成分のタイプを調節することによって実現することが
できる。特に,銀の任意の所与の粒径(あるいはその他の金属または金
属合金)に対し,焼成温度を上昇または低下させることが可能である。
例えば,上記にて論じたようなナノ銀ペーストなどの稠密化の効果的な
開始の増加が望まれる場合,この開始は,結合剤系成分の代わりに,所
望のまたは目標とするピーク処理温度に厳密に一致するように,より高
い温度で燃焼する代替例を用いることによって,実現することができる
(例えば結合剤系は,金属または金属合金粒子の焼結温度と同じかまた
はわずかに低い温度(例えば50℃,または30℃,または10℃以内)
で揮発しまたはその他の方法で分解するように選ばれる)。これには,
その温度に達したときに素早く稠密化するナノスケール銀が維持され,
したがって処理時間が短く保たれるという追加の利点がある。
イ 前記アの記載事項によれば,甲4には,次のような開示があることが認
められる。
(ア) 電気部品の取着・相互接続のための現在市販されている銀/銀合金
ペーストは,粒径がマイクロメートルサイズの銀を含有し,典型的な場

合(サイズが10~100μm程度の銀粒子),粒径が大きいので,通
常の焼成条件下で,高い焼結温度が必要であり(600℃以上),焼結
プロセスを支援するために,アセンブリに高圧をかけて,焼結温度を3
00℃以下に低下させるが,圧力をかけることは,製造の難しさが増す
とともに,生産コストも増加し,処理中のデバイスに損傷を与える可能
性も高くなるという問題があった(【0005】,【0035】)。
上記課題を解決するための手段として,500nm程度またはそれ未
満,最も好ましくは100nm程度またはそれ未満(例えば1~100
nm)のナノスケールの非常に微細な導電性金属および金属合金粒子を
使用することによって,稠密化した金属相互接続を,比較的低い温度で
の焼結によりかつ低い圧力しか必要とせずにまたは圧力を全く必要とせ
ずに確立できることが発見された(【0006】,【0007】,【0
011】)。
(イ) 金属が700℃または800℃よりも高い温度で融解するような銀
粉末および銀合金の場合,「本発明」は,高温で動作することのできる
半導体チップを取着するのに適しており,はんだならびに導電性エポキ
シの場合のように,相互接続が融解する危険を冒すことなく,高温で動
作することのできる稠密な導電性金属相互接続が実現される(【000
8】)。
(ウ) ミクロンサイズの銀の代わりに,本発明の実施に際して使用される
ナノスケール銀は,主に,焼結温度をほとんどのはんだの処理範囲にま
で低下させる(【0026】)。500nmというトップサイズ(伝統
的に「ナノスケール」と見なされるサイズ範囲にはないサイズ)は,焼
結温度が上昇しそれに伴って所望の範囲を超える可能性があるので,も
はやはんだの代替例として適当でなく,この技法の実施限界であり,商
用のAgペースト以外,100nm以下の粉末に関して行われている

(【0027】)。
(3) 相違点9-4の容易想到性の判断の誤りの有無について
ア 甲4には,甲4記載の500nm以下のサイズを有する金属粒子である
銀を焼結するステップを含む相互接続の形成方法(引用発明4)において,
銀の粒子の粒径を2.0μm以上の平均粒径(メジアン径)とする構成と
することについての記載も示唆もない。加えて,甲4には,甲4記載の相
互接続の形成方法は,ミクロンサイズの銀の代わりに,ナノスケールの銀
を使用することによって,稠密化した金属相互接続を,比較的低い焼結温
度(300℃以下)で,かつ,低圧力又は無圧力で確立できることに技術
的意義があり,500nmというトップサイズは,焼結温度が上昇しそれ
に伴って所望の範囲を超える可能性があるので,はんだの代替例として適
当でなく,この技法の実施限界であることの開示があること(前記(2)イ)
に照らすと,甲4に接した当業者において,引用発明4の銀の粒子の粒径
500nm以下(すなわち,0.5μm以下)を,「2.0μm~15μ
mの平均粒径(メジアン径)」の数値範囲に含まれる構成(相違点9-4
に係る本件訂正発明9の構成)に置換する動機付けは存在しないものと認
められる。
そうすると,当業者は,甲4に基づいて,相違点9-4に係る本件訂正
発明9の構成に容易に想到することができたものと認めることはできない。
したがって,本件審決における相違点9-4の容易想到性に関する判断
は,結論において誤りはない。
イ これに対し原告は,本件訂正発明9の「銀の粒子」の平均粒径(メジア
ン径)の下限値「2.0μm」及び上限値「15μm」のいずれの値につ
いても臨界的な意義がないことからすると,引用発明4において,銀の粒
子の粒径を「2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)」の数値範
囲に含まれる構成とすることは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であ

るといえるから,当業者は,引用発明4に基づいて,相違点9-4に係る
本件訂正発明9の構成を容易に想到することができた旨主張する。
しかしながら,相違点9-4に係る本件訂正発明9の構成が容易想到か
どうかは,引用発明4を出発点として判断すべきものであるところ,前記
アのとおり,甲4に接した当業者においては,引用発明4の銀の粒子の粒
径の構成を「2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)」の数値範
囲に含まれる構成(相違点9-4に係る本件訂正発明9の構成)に置換す
る動機付けは存在せず,また,上記構成とすることが設計的事項であると
はいえないから,原告の上記主張は,理由がない。
(4) 小括
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明9
は,甲4に基づいて,当業者が容易に発明することができたものと認められ
ない。
したがって,原告主張の取消事由1-2は,理由がない。
4 取消事由2-1(甲5を主引用例とする本件訂正発明10の進歩性の判断の
誤り)について
(1) 前訴判決の拘束力等について
確定した前訴判決は,請求項10に係る本件訂正を認めなかった前件審決
の判断に誤りがあるとした上で,①前訴被告(本件訴訟の原告)は,本件訂
正による請求項10に係る訂正が認められる場合でも,本件訂正発明10は
「引用発明1」(本件審決の引用発明5)に基づき容易に想到できる旨主張
し,前訴原告(本件訴訟の被告)の反論も尽くされているので,進んで,本
件訂正発明10の容易想到性について判断する,②本件訂正発明9と「引用
発明1」は,前件審決が認定した本件発明10と「引用発明1」との相違点
9-2及び相違点10に加えて,少なくとも相違点10-A及び相違点10
-Bの点でさらに相違することが認められる,③相違点10-Aに関し,
「引

用発明1」の製造方法は,銀フレークを酸化させ得ない雰囲気であるCDA
なしの雰囲気中でも,銀フレークの焼結を可能とするものであって,銀の粒
子の一部の局部的な酸化によって,銀の粒子間を融着させるものではない上,
「引用例1」(甲5)には,銀フレークの一部を局部的に酸化させることに
よって,銀フレークを端部でのみ焼結できるということは記載も示唆もされ
ておらず,「引用発明1」の焼成プロセスを変えることによって何らかの課
題が解決されることも示唆されていないから,「引用発明1」において銀の
粒子の一部を局部的に酸化させる動機付けはない,④よって,本件訂正発明
10は,当業者が,「引用発明1」を主引用例として容易に想到できるとい
うことはできない旨判断し,前件審決のうち,本件発明10は,甲4に記載
された発明と周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとして,本
件特許の請求項10に係る発明についての特許を無効とした部分を取り消し
た。
前訴において,原告は,平成29年5月29日付け準備書面(1)(甲5
6)に基づいて,「引用発明1」のオーブン中での加熱雰囲気は大気雰囲気
であるから,甲5に記載された発明と本件訂正発明10は,大気雰囲気で加
熱して互いに隣接する銀の粒子が融着する点で一致し,仮に本件訂正発明1
0において銀の粒子の一部が局部的に酸化される事象が生じるのであれば,
甲5に記載された発明においても,銀の粒子の一部が局部的に酸化されるは
ずであるなどとして,相違点10-Aは,本件訂正発明10と甲5に記載さ
れた発明の相違点ではない旨主張した。これに対し被告は,同年6月29日
付け準備書面(原告その2)(甲53)に基づいて,甲5に記載された発明
の加熱雰囲気は「大気雰囲気中」であるとはいえないから,甲5に記載され
た発明と本件訂正発明10は,大気雰囲気で加熱して互いに隣接する銀の粒
子が融着する点で一致するものではない旨主張し,原告の上記主張を争った。
前訴判決の上記認定判断及び審理経過によれば,前訴判決が前件審決のう

ち,本件特許の請求項10に係る発明についての特許を無効とした部分を取
り消すとの結論を導いた理由は,本件訂正を認めなかった前件審決の判断に
誤りがあること,本件訂正後の請求項10に係る発明(本件訂正発明10)
は,当業者が甲5に記載された発明に基づいて相違点10-Aに係る本件訂
正発明10の構成を容易に想到することができないから,甲5に記載された
発明を主引用例として容易に発明をすることができたとはいえないとしたこ
との両者にあるものと認められ,かかる前訴判決の理由中の判断には取消判
決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)が及ぶものと解するのが相当であ
る。
そして,前訴判決確定後にされた本件審決は,前訴判決と同様の説示をし,
本件訂正発明10は,甲5に記載された発明(引用発明5)に基づいて当業
者が相違点10-2(相違点10-Aと同じ)に係る本件訂正発明10の構
成を容易に想到することができないから,引用発明5に基づき容易に発明を
することができたとはいえないと判断したものである。
そうすると,本件審決の上記判断は,確定した前訴判決(取消判決)の拘
束力に従ってされたものと認められるから,誤りはないというべきである。
(2) 原告の主張について
原告は,①銀粒子の焼結を大気雰囲気中で行うことは,本件出願の優先日
当時の周知技術であり,銀粒子の低温焼結には,酸化性雰囲気(空気中)が
避けられないから,引用発明5のオーブン中の加熱雰囲気は酸化性雰囲気(空
気中)でしかあり得ない,②本件訂正発明10は,銀粒子を大気雰囲気中で
加熱することで銀粒子が融着するものであり,銀粒子の一部を局部的に酸化
させることにより,銀粒子が融着するものではなく,銀粒子の一部を局部的
に酸化させることは,技術的意義のない,設計的事項であるから,引用発明
5において銀の粒子の一部を局部的に酸化させる動機付けはあるから,本件
審決における相違点10-2の容易想到性の判断に誤りがある旨主張する。

しかしながら,上記①及び②の主張は,前訴判決における主張と同様の主
張に銀粒子の焼結を大気雰囲気中で行い得ることが本件出願の優先日当時の
周知技術であることの証拠(甲3の3,8,20の7,20の10,47の
1,2,48)を追加したものであるが,仮に銀粒子の焼結を大気雰囲気中
で行い得ることが周知技術であったとしても,そのことと引用発明5におい
て「銀の粒子の一部を局部的に酸化させる」構成とすることは別個の問題で
あり,また,新たな公知事実(引用例)を追加するものとはいえないから,
前訴判決の拘束力を揺るがすものとはいえない。
したがって,本件審決における相違点10-2の容易想到性の判断に誤り
があるとの原告の上記主張は,理由がない。
(3) 小括
以上のとおり,本件訂正発明10は,当業者が引用発明5に基づいて容易
に発明をすることができたとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない
から,原告主張の取消事由2-1は,理由がない。
5 取消事由2-2(甲4を主引用例とする本件訂正発明10の進歩性の判断の
誤り)について
(1) 本件訂正発明10の特許請求の範囲(請求項10)の記載は,「導電性材
料の製造方法であって,前記方法が,銀の粒子を含む第2導電性材料用組成
物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン
径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又
は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒
子の一部を局部的に酸化させることにより,前記銀の粒子が互いに隣接する
部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得るこ
とを含み,前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤ま
たは水を更に含む導電性材料の製造方法。」というものであり,「2.0μ
m~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子」の構成を含むも

のである。
そうすると,本件訂正発明10と引用発明4とは,本件訂正発明10では,
「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0μm~15μmの平均粒径(メ
ジアン径)を有する」と特定されているのに対して,引用発明4では,「5
00nm以下のサイズを有する」と特定されている点で相違するものと認め
られる。
しかるところ,上記相違点は,本件訂正発明9と引用発明4との相違点9
-4と同じ相違点であり,しかも,当業者が,甲4に基づいて,相違点9-
4に係る本件訂正発明9の構成を容易に想到することができたものと認める
ことはできないことは,前記3(3)のとおりである。
したがって,前記3(3)と同様の理由により,当業者が,甲4に基づいて,
上記相違点に係る本件訂正発明10の構成を容易に想到することができたも
のと認めることはできないから,その余の点について判断するまでもなく,
本件訂正発明10は,甲4に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで
きたものと認められない。
なお,本件訂正発明10と引用発明4との上記相違点について明示的な主
張はされていないが,相違点9-4の容易想到性に関する当事者の議論は尽
くされていること(前記第3の3(1)ア及び(2)ア)に鑑みると,本件訂正発
明10と引用発明4との上記相違点について判断することは,当事者にとっ
て不意打ちとなるものではなく,紛争の一回的解決の要請に資するものであ
るから,許されるというべきである。
(2) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明1
0は,当業者が甲4に基づいて容易に発明することができたものと認められ
ないとした本件審決の判断は,結論において誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由2-2は,理由がない。
6 取消事由3(本件訂正発明11の進歩性の判断の誤り)について

原告は,本件訂正発明11は,本件訂正発明10の発明特定事項を全て備え,
さらに「前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノ
およびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコ
ールを含む」点を追加した構成の発明であるところ,本件訂正発明10が甲5
又は甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたも
のである以上,本件訂正発明11は,甲5又は甲4に記載された発明に基づい
て,当業者が容易に発明することができたものであるから,これと異なる本件
審決の判断は,誤りである旨主張する。
しかしながら,本件訂正発明10が甲5又は甲4に記載された発明に基づい
て当業者が容易に発明することができたものではないとした本件審決の判断に
誤りがないことは,前記4及び5のとおりであるから,原告の主張は,その前
提を欠くものであり,理由がない。
7 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれ
を取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 大 鷹 一 郎


裁判官 古 河 謙 一


裁判官 関 根 澄 子

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