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平成30(ワ)27253著作権侵害差止等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成31年3月13日
事件種別 民事
法令 著作権
著作権法114条3項3回
著作権法21条2回
著作権法112条1項2回
著作権法20条1項2回
著作権法19条1項2回
キーワード 侵害47回
差止7回
許諾5回
損害賠償1回
主文 1 被告らは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラストを譲渡してはならない。
2 被告スマイル―リンクは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラストを複製してはならない。10
3 被告らは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラストが記載された別紙3被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。
4 被告らは,原告に対し,連帯して,42万3260円及び別紙4遅延損害金目録の「元本額」欄記載の各金員に対する同「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。15
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告の負担とし,補助参加によって生じた費用は,これを5分し,その1を補助参加人の負担とし,その余を原告の負担とする。
7 この判決は,第1項,第2項及び第4項に限り,仮に執行するこ20とができる。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は,原告が,被告らにおいて製造し,又は販売する別紙3被告商品目録記載 の商品(以下「被告商品」という。)に記載された別紙2被告イラスト目録記載1 及び2の各イラスト(以下,番号順に「被告イラスト1」などといい,これらを一 括して「被告イラスト」という。)は,原告の著作した別紙7原告イラスト目録記10 載のイラスト(以下「本件イラスト」という。)を複製したものであり,被告らに よる被告商品の製造又は販売は,本件イラストについての原告の著作権(複製権, 譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を共同して侵害する不法 行為であり,被告らには被告イラストの複製及び頒布のおそれがある旨を主張して, 被告らに対し,①著作権法112条1項に基づき,被告イラストの複製及び頒布の15 差止め,②同条2項に基づき,被告イラストが記載された被告商品の廃棄,③民法 709条及び719条1項前段に基づき,平成29年9月1日から平成31年2月 1日までの著作権等侵害の不法行為による損害賠償金470万円及びこれに対する 平成30年9月6日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払,④著作権法115条に基づき,著作者であることを確20

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判決文

平成31年3月13日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成31年2月1日
判 決
5 当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり
主 文
1 被告らは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラストを
譲渡してはならない。
2 被告スマイル―リンクは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2
10 の各イラストを複製してはならない。
3 被告らは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラストが
記載された別紙3被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。
4 被告らは,原告に対し,連帯して,42万3260円及び別紙4
遅延損害金目録の「元本額」欄記載の各金員に対する同「起算日」
15 欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告らの負担とし,その余
を原告の負担とし,補助参加によって生じた費用は,これを5分
し,その1を補助参加人の負担とし,その余を原告の負担とする。
20 7 この判決は,第1項,第2項及び第4項に限り,仮に執行するこ
とができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告らは,別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラストを複製し,頒
25 布してはならない。
2 主文第3項と同旨。
3 被告らは,原告に対し,連帯して,470万円及びこれに対する平成30年
9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告らは,原告に対し,別紙5ウェブページ目録記載1及び2の各ウェブペ
ージ上に,別紙6謝罪広告目録記載の体裁及び内容の謝罪広告を6か月間掲載せよ。
5 第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は,原告が,被告らにおいて製造し,又は販売する別紙3被告商品目録記載
の商品(以下「被告商品」という。)に記載された別紙2被告イラスト目録記載1
及び2の各イラスト(以下,番号順に「被告イラスト1」などといい,これらを一
10 括して「被告イラスト」という。)は,原告の著作した別紙7原告イラスト目録記
載のイラスト(以下「本件イラスト」という。)を複製したものであり,被告らに
よる被告商品の製造又は販売は,本件イラストについての原告の著作権(複製権,
譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を共同して侵害する不法
行為であり,被告らには被告イラストの複製及び頒布のおそれがある旨を主張して,
15 被告らに対し,①著作権法112条1項に基づき,被告イラストの複製及び頒布の
差止め,②同条2項に基づき,被告イラストが記載された被告商品の廃棄,③民法
709条及び719条1項前段に基づき,平成29年9月1日から平成31年2月
1日までの著作権等侵害の不法行為による損害賠償金470万円及びこれに対する
平成30年9月6日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割
20 合による遅延損害金の支払,④著作権法115条に基づき,著作者であることを確
保し,名誉,声望を回復するための適当な措置として,別紙6謝罪広告目録記載の
謝罪広告の掲載を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は
枝番の記載を省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
25 ⑴ 当事者
ア 原告は,「Aⅰ」又は「Aⅱ」というペンネームを用い,イラストレーター
として活動している者である(甲2ないし13)。
イ 被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり,
代表取締役等の役員が共通する関連会社である(甲14,乙1)。
ウ 補助参加人は,カラーパッケージ等の企画,デザイン,製造,販売等を業と
5 する株式会社である。
⑵ 本件イラスト
原告は,平成25年4月頃,本件イラストを制作し,同年5月,本件イラストを
表示した手ぬぐいの写真をブログに掲載しており,本件イラストの著作権及び著作
者人格権を有する(甲3,26ないし29)。
10 ⑶ 被告らの行為
被告スマイル―リンクは,平成29年11月頃から平成30年9月頃まで,被告
商品を製造し,小売店や被告イルドリシェスに販売しており,被告イルドリシェス
は,被告スマイル―リンクから被告商品を仕入れて小売店などに販売していた(以
下,被告らのこれらの行為を「被告行為」と総称する。乙1ないし4)。
15 ⑷ 被告商品における被告イラストの表示の状況等
ア 被告商品には,別紙3被告商品目録添付の各写真のとおり,パッケージ表面
及び右側面に被告イラスト1が表示され,内包の菓子に被告イラスト2が表示され
ているが,原告の氏名又はペンネームは表示されていない。
イ 被告イラストは,被告商品の製造委託先から包装箱の企画,制作等の委託を
20 受けた補助参加人が提案し,採用されたものである(乙1)。
3 争点
⑴ 被告らは,被告行為により原告の著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格
権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したか,又は著作権(複製権,譲渡権)を
侵害するおそれがあるか(争点1)
25 ⑵ 被告らに著作権(複製権,譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権,同
一性保持権)侵害について故意,過失が認められるか(争点2)
⑶ 損害の発生の有無及びその額(争点3)
⑷ 謝罪広告等の必要性(争点4)
第3 争点に対する当事者の主張
1 争点1(被告らは,被告行為により原告の著作権(複製権,譲渡権)及び著
5 作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したか,又は著作権(複製権,譲
渡権)を侵害するおそれがあるか)について
【原告の主張】
⑴ 著作権侵害及びそのおそれ
被告イラストは,本件イラストに依拠して有形的に再製されたものであるから,
10 被告らが被告商品を製造,販売して本件イラストを複製し,譲渡する行為は,原告
の複製権(著作権法21条),譲渡権(同法26条の2)を侵害する。
被告らは,今後も本件イラストを複製し,頒布するおそれがある。
⑵ 著作者人格権侵害
ア 被告らは,原告のペンネームを表示せずに被告商品を販売しており,原告の
15 氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害する。
イ 被告イラストは,本件イラストの親パンダの耳及び目の形を変え,親パンダ
と子パンダの手足の交わる部分に白線を加筆し,パンダの白目を黒く塗り潰すなど
して作成されたものであり,本件イラストについて原告の意に反する変更がされた
から,被告行為は,原告の同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害する。
20 【被告ら及び補助参加人の主張】
争う。
2 争点2(被告らに著作権(複製権,譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏名表
示権,同一性保持権)侵害について故意,過失が認められるか)について
【原告の主張】
25 被告らは,本件イラストの著作権及び著作者人格権が他人に帰属していることを
認識しながら,これを複製した被告商品を製造し,又は販売しており,著作権侵害
及び著作者人格権侵害について故意又は過失が認められる。被告らが被告商品の製
造を他社に委託していたとしても,被告イラストを被告商品に使用することを決定
したのは被告らであるから,被告らには過失が認められる。
【被告ら及び補助参加人の主張】
5 争う。被告商品のパッケージ等は外注業者である補助参加人が制作したものであ
り,外注業者の制作に係るデザインについて,被告らが全てを管理することは事実
上困難である。
3 争点3(損害の発生の有無及びその額)について
【原告の主張】
10 ⑴ 著作権(複製権,譲渡権)侵害による損害(著作権法114条3項)
被告商品の販売額は1個550円程度であり,平成29年9月以降,少なくとも
2万個が製造,販売されている。また,①イラストの使用料は,販売額に5%前後
を乗じて算出され,それとは別に商品化許諾料を支払うことが多いこと,②本件イ
ラストは,原告の許諾なく商品化されたケースが過去にもあり(甲25),市場で
15 人気のあるイラストであること,③被告イラストは本件イラストをデッドコピーし
たものであることなどに照らせば,使用料相当額は,被告商品の販売額の20%を
下らない。
したがって,被告らによる著作権侵害により原告が被った損害(著作権法114
条3項)は,220万円(550円×2万個×20%)を下らない。
20 ⑵ 著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害による慰謝料
被告らによる氏名表示権侵害及び同一性保持権侵害により原告が被った精神的苦
痛に対する慰謝料は,それぞれ100万円を下らない。
⑶ 弁護士費用
被告行為と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害は50万円である。
25 【被告ら及び補助参加人の主張】
争う。本件イラストの使用料相当額を算定するに当たっては,業界におけるイラ
ストの使用料の相場が3ないし5%であること,被告商品には被告イラストとは別
のイラストも使用されており,本件イラストの使用割合は概ね2分の1であること
を考慮すべきである。
4 争点4(謝罪広告等の必要性)について
5 【原告の主張】
原告が本件イラストの著作者であることを確保し,原告の名誉若しくは声望を回
復するためには,被告らが別紙6謝罪広告目録記載の内容で謝罪広告を掲載する必
要がある。
【被告ら及び補助参加人の主張】
10 争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(被告らは,被告行為により原告の著作権(複製権,譲渡権)及び著
作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したか,又は著作権(複製権,譲
渡権)を侵害するおそれがあるか)について
15 ⑴ 著作権侵害及びそのおそれの有無
ア 本件イラストと被告イラストは,いずれも,互いの額を接して向き合う大小
2頭のパンダを描いたものであり,2頭のパンダの姿勢,表情,大きさの比などを
含めた構成が類似しており,表現上の本質的な特徴が同一である。そして,その同
一性の程度は非常に高いものであるから,被告イラストは,本件イラストに依拠し
20 て有形的に再製されたものであると推認することができる。
したがって,被告商品を製造して本件イラストを複製する被告スマイル―リンク
の行為は,原告の複製権(著作権法21条)を侵害し,被告商品を販売して本件イ
ラストを譲渡する被告行為は,原告の譲渡権(同法26条の2)を侵害するもので
ある。
25 イ 原告は,被告イルドリシェスも原告の複製権を侵害している旨を主張するが,
本件全証拠によっても,これを認めることはできない。
ウ 被告行為が平成29年11月頃から平成30年9月頃まで継続していたこと
を考慮すれば,被告イルドリシェスには,被告商品の販売により原告の本件イラス
トについての譲渡権を侵害するおそれがあり,被告スマイル―リンクには,被告商
品の製造及び販売により原告の本件イラストについての複製権及び譲渡権を侵害す
5 るおそれがあると認められる。
原告は,被告らに対し,被告イラストの頒布の差止めを求めるが,被告製品の貸
与のおそれがあることを認めるに足る証拠はないから,譲渡を超えて頒布の差止め
を認めることはできない。
⑵ 著作者人格権侵害の有無
10 ア 前記第2の2⑷ア認定のとおり,被告商品には,原告の氏名又はペンネーム
が表示されていないから,被告行為は,原告の氏名表示権(著作権法19条1項)
を侵害するものである。
イ また,被告イラストは,パンダの黒く示されている足及び耳について灰色の
線で縁取られている部分があり,パンダの目の部分が黒一色で表され,白い部分が
15 ないほか,大きい方のパンダの耳の形が半円に近い形であり,2頭の鼻と口を示す
線がより太く表されており,本件イラストと相違している部分があるところ,これ
らは原告に無断で変更されており,原告の意に反して変更されたと認められるから,
被告行為は,原告の同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害するものである。
2 争点2(被告らに著作権(複製権,譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏名表
20 示権,同一性保持権)侵害について故意,過失が認められるか)について
ア 前記第2の2⑴イのとおり,被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等
を業とする株式会社であり,業として,被告商品を販売していたのであるから,そ
の製造を第三者に委託していたとしても,補助参加人等に対して被告イラストの作
成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義
25 務を負っていたと認めるのが相当である。
また,前記認定のとおり,本件イラストと被告イラストの同一性の程度が非常に
高いものであったことからしても,被告らが上記のような確認をしていれば,著作
権及び著作者人格権の侵害を回避することは十分に可能であったと考えられる。に
もかかわらず,被告らは,上記のような確認を怠ったものであるから,上記の注意
義務違反が認められる。
5 イ したがって,被告らに著作権(複製権,譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏
名表示権,同一性保持権)侵害について過失が認められる。
3 争点3(損害の発生の有無及びその額)について
⑴ 著作権(複製権,譲渡権)侵害による損害(著作権法114条3項)
ア 証拠(乙1ないし4)によれば,被告らは,経営を共通にする関連会社とし
10 て,平成29年11月10日から平成30年9月27日までの期間,被告商品を1
個550円で共同して合計6664個販売したと認められ,その販売額は合計36
6万5200円であったと認められる。そして,上記期間以外の被告らによる被告
商品の製造又は販売を認めるに足る証拠はない。
イ(ア) また,本件イラストの使用料について,原告は,販売額の5%前後である
15 と主張し,被告ら及び補助参加人は,3%ないし5%であると主張しているところ,
別紙3被告商品目録添付の写真のとおり,被告イラスト1は被告商品のパッケージ
の表面に大きく表示されており,消費者に強い印象を与えていると認められること
などに照らし,使用料相当額は販売額の5%であると認めるのが相当である。
(イ) この点,原告は,使用料相当額は被告商品の販売額の20%を下らないとし,
20 その理由として,①販売額に5%前後を乗じて算出されるイラストの使用料とは別
に商品化許諾料を支払うことが多いこと,②本件イラストは,原告の許諾なく商品
化されたケースが過去にもあり(甲25),市場で人気のあるイラストであること
などを主張するが,上記①については,使用料とは別に商品化許諾料を支払うこと
が多いことを示す証拠はなく,上記②についても,本件イラストが原告に無断で使
25 用された例があったというだけで,使用料相当額の料率を高くすべきであるとはい
えないから,原告の主張は前提を欠いており,採用することができない。
他方で,被告ら及び補助参加人は,被告商品には被告イラストとは別のイラスト
も使用されており,本件イラストの使用割合は概ね2分の1であると主張するが,
前記認定の被告イラストの使用態様等に照らし,別のイラストが使用されているこ
とを大きく考慮することはできない。
5 ウ 原告は,被告らによる著作権侵害の損害として,被告商品の販売数量を基礎
とした使用料相当額のみを主張しており,これについては,前記ア及びイを踏まえ
れば,被告商品の販売額366万5200円に5%を乗じて算定される18万32
60円であると認められるところ,被告らは,前記アのとおり,共同して被告商品
を販売していたから,上記損害の賠償について共同不法行為責任を負うというべき
10 である。
⑵ 著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害による慰謝料
前記⑴ア認定の被告商品の販売数,販売期間,被告イラストの使用態様等を総合
すると,被告らによる氏名表示権侵害及び同一性保持権侵害により原告が被った精
神的苦痛に対する慰謝料は,いずれも10万円と認めるのが相当である。
15 ⑶ 弁護士費用
本件事案の内容,認容額等を総合すると,被告らによる著作権侵害及び著作者人
格権侵害と相当因果関係のある弁護士費用は,4万円と認めるのが相当である。
⑷ 合計
以上によれば,原告の損害額は合計42万3260円であると認められる。
20 なお,原告は,訴状送達日の翌日である平成30年9月6日を起算日として遅延
損害金の支払を求めているが,証拠(乙2,3)によれば,被告商品の同日までの
販売額は361万2400円であり,同月14日,同月15日,同月18日及び同
月27日にもそれぞれ1万3200円の販売があったと認められ,同月6日までに
生じた原告の損害額は41万7162円(361万2400円/366万5200
25 円×42万3260円)であり,同月14日,同月15日,同月18日及び同月2
7日にそれぞれ1524円又は1525円(1万3200円/366万5200円
×42万3260円)の損害が生じたと認められるから,遅延損害金に係る請求に
ついては,別紙4遅延損害金目録の「元本額」欄記載の各金員に対する同「起算日」
欄記載の各日から支払済みまでの支払を求める限度で理由がある。
4 争点4(謝罪広告等の必要性)について
5 原告は,原告が本件イラストの著作者であることを確保し,原告の名誉若しくは
声望を回復するためには,被告らにより別紙6謝罪広告目録記載の内容で謝罪広告
を掲載する必要があると主張する。
しかしながら,被告イラストの使用態様等に照らし,被告商品の販売により原告
の名誉,声望が毀損されたとは認められず,また,被告らが本件の訴訟提起後に被
10 告商品の回収に向けて動いていること(乙1,4)などにも照らせば,原告が著作
者であることを確保するため,差止めや金銭賠償等に加えて,謝罪広告を掲載する
必要があるとは認められない。
5 小括
以上によれば,原告の請求は,著作権法112条1項に基づき,被告らに対し,
15 被告イラストの譲渡の差止め,被告スマイル―リンクに対し,被告イラストの複製
の差止め,同条2項に基づき,被告らに対し,被告イラストが記載された被告商品
の廃棄,民法709条及び719条1前段に基づき,被告らに対し,連帯して,4
2万3260円及び別紙4遅延損害金目録の「元本額」欄記載の各金員に対する同
「起算日」欄記載の各日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
20 金の支払を求める限度で理由がある。
第5 結論
よって,原告の請求は,主文第1項ないし第4項の限度で理由があるからこれを
認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
5 山 田 真 紀
裁判官
10 棚 橋 知 子
裁判官
15 西 山 芳 樹
(別紙一覧)
別紙1 当事者目録
別紙2 被告イラスト目録
5 別紙3 被告商品目録
別紙4 遅延損害金目録
別紙5 ウェブページ目録
別紙6 謝罪広告目録
別紙7 原告イラスト目録
(別紙1)
当事者目録
原 告 Aⅲ
5 同訴訟代理人弁護士 大 熊 裕 司
被 告 株式会社イルドリシェス
(以下「被告イルドリシェス」という。)
被 告 株式会社スマイル―リンク
(以下「被告スマイル―リンク」といい,
10 被告両名を一括して「被告ら」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 櫻 林 正 己
被 告 ら 補 助 参 加 人 株式会社キング印刷紙工
(以下「補助参加人」という。)
同訴訟代理人弁護士 宮 道 佳 男
15 同 稲 垣 智 彦
同 服 部 綾 子
同 永 尾 光 史 朗
同 西 口 誠
同 高 村 樹 世 土
(別紙2)
被告イラスト目録
1 パッケージ
5 (表面)

(右側面)
2 内包の菓子
(別紙3)
被告商品目録
商品名 「上野のアイドル 上野あかちゃんパンダ」
5 大きさ 縦:約16.2センチメートル
横:約18センチメートル
奥行:約8センチメートル
外観
(表面)
(裏面)
(右側面)
(左側面)
(上面)
(底面)
(内包の菓子)
(別紙4)
遅延損害金目録
元本額 起算日
41万7162円 平成30年9月6日
1524円 平成30年9月14日
1525円 平成30年9月15日
1524円 平成30年9月18日
1525円 平成30年9月27日
(別紙5)
ウェブページ目録
1 ウェブページ(謝罪広告掲載位置:トップページの本文冒頭部分)
5 タイトル:イルドリシェス
ドメイン名:http://以下省略
2 ウェブページ(謝罪広告掲載位置:トップページの本文冒頭部分)
タイトル:スマイル-リンク
ドメイン名:http://以下省略
(別紙6)
謝罪広告目録
【体裁】
5 使用活字:12ポイントのゴシック(黒色)
【内容】
当社らは,貴殿の著作物を無断で複製し,「上野のアイドル 上野あかちゃんパ
ンダ」の商品として菓子を販売し,貴殿の著作権,著作者人格権を侵害し,貴殿に
多大なご迷惑をお掛けしたことを,ここに謝罪し,あわせて今後再びこのような行
10 為を行わないことを誓います。
平成 年 月 日
株式会社イルドリシェス
株式会社スマイル-リンク
イラストレーター Aⅱ 殿
(別紙7)
原告イラスト目録

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