平成28(ワ)11067著作権侵害差止請求事件
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裁判所 |
請求棄却 大阪地方裁判所
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裁判年月日 |
令和1年5月21日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告株式会社ネクストシステム・
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対象物 |
セルフオーダーによる注文処理方法 |
法令 |
著作権法112条1項2回 著作権法2条1項10号1回 著作権法15条2項1回
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キーワード |
侵害4回 差止4回 許諾2回
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主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。15 |
事件の概要 |
本件は,被告が飲食店等に対して頒布している「でんちゅ~」という名称の「コ
ンピュータ及びタブレット上で動作する注文管理及び商品管理のために利用される
ソフトウェア」(以下「でんちゅ~」という。)に係るプログラム(以下「被告プ25
ログラム」という。)は,以前,原告が開発したプログラム(以下「原告プログラ
ム」という。)を複製又は翻案した物であるから,「でんちゅ~」を制作し,被告
プログラムを複製,販売,頒布する被告の行為は,原告の,原告プログラムについ
ての著作権(複製権,翻案権ないし譲渡権)を侵害する旨を主張し,著作権法11
2条1項に基づき,被告プログラムの複製,販売,頒布の各差止めを,同条2項に
基づき,同プログラムの廃棄を求める事案である。5 |
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判決文
令和元年5月21日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
平成28年(ワ)第11067号 著作権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日 平成31年3月19日
判 決
5 原 告 P1
同訴訟代理人弁護士 城 間 博
被 告 株式会社ネクストシステム・
コンサルティング
同訴訟代理人弁護士 島 袋 勝 也
10 同 鈴 間 淳 一
同 小 林 健 一
同 補 佐 人 弁 理 士 大 久 保 秀 人
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
15 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,「でんちゅ~」という名称の「コンピュータ及びタブレット上で動
作する注文管理及び商品管理のために利用されるソフトウェア」のプログラムを,
20 複製,販売,頒布してはならない。
2 被告は,前項のプログラムを廃棄せよ。
第2 事案の概要
本件は,被告が飲食店等に対して頒布している「でんちゅ~」という名称の「コ
ンピュータ及びタブレット上で動作する注文管理及び商品管理のために利用される
25 ソフトウェア」(以下「でんちゅ~」という。)に係るプログラム(以下「被告プ
ログラム」という。)は,以前,原告が開発したプログラム(以下「原告プログラ
ム」という。)を複製又は翻案した物であるから,「でんちゅ~」を制作し,被告
プログラムを複製,販売,頒布する被告の行為は,原告の,原告プログラムについ
ての著作権(複製権,翻案権ないし譲渡権)を侵害する旨を主張し,著作権法11
2条1項に基づき,被告プログラムの複製,販売,頒布の各差止めを,同条2項に
5 基づき,同プログラムの廃棄を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)
⑴ 当事者等(甲18,乙19)
原告は,システムエンジニアとして自営する者である。
10 被告代表者は,平成23年3月まで,公益財団法人沖縄県産業振興公社(以下「産
業振興公社」という。)において,専門コーディネータとして勤務し,起業相談な
どに対応していた者であるが,同年5月10日に,情報システム開発に関するサー
ビスの提供,総合経営コンサルタント等を目的とする株式会社である被告を設立し ,
被告は,飲食店等に「でんちゅ~」を頒布している。
15 ⑵ 原告プログラム及び被告プログラムの概要(甲1,18,20,被告代表者)
「でんちゅ~」は,複数のパソコン用アプリケーションプログラム及び複数のタ
ブレット用アプリケーションプログラムからなる飲食店用システムに係るプログラ
ムであり,飲食店において,顧客や従業員が,顧客の携帯電話や従業員が保有する
端末を使用して,インターネットを介して商品を注文することができ,かつ,その
20 情報がサーバーのデータベースに格納され,キッチン(厨房)において伝票を出力
したり,顧客の退店時にレジにおいて清算処理を行うこと等を特徴とするものであ
る。
「でんちゅ~」は,大きく分けて,店舗側のアプリケーションである①レジ(清
算処理を行う。),②キッチンモニター(厨房において未印刷の注文データを印刷
25 する。),③マスタメンテナンス(商品の名称や価格等の基本データを登録・変更
する。),及び④スタッフオーダー(スタッフが持つ端末から注文を入力する。),
並びにサーバ側のアプリケーションである⑤サーバ側プログラム(店舗側から受け
付けたデータをデータベースに登録したり,データベースからデータを取り出し店
舗側に送信する。),及び⑥データベース(正規化されたデータを格納する。)に
より構成されており,上記①~⑥のプログラム相互の関係の概略は,別紙「システ
5 ム概要図」のとおりである(従前は,顧客の携帯電話から注文を入力する⑦モバイ
ルオーダーの機能が存したが,現在は使用されていない。)。
⑶ 原告プログラムの開発の経緯等(甲18,19,乙1,2)
被告代表者は,平成22年5月,利用者が携帯電話を利用して飲食店で注文する
ことのできるモバイルオーダ事業の提案をしていたところ,原告は,平成23年3
10 月17日,外国為替取引を扱う会社を退職して,自らが開発したレジアプリケーシ
ョンにより起業しようと考え,起業の相談のため,被告代表者が勤務していた産業
振興公社を訪れた。
原告は,被告代表者より,モバイルオーダ事業についての説明を受け,以後,被
告代表者とメール等でやり取りしながら,モバイルオーダ事業に使うプログラムの
15 開発を行った。
被告代表者は,同年5月10日,被告を設立し,同年6月16日,発明の名称を
「セルフオーダーによる注文処理方法」とする特許を出願し(特開2013-38
12。以下「本件特許」という。),被告は,同月以降,「でんちゅ~」の,飲食
店への試験導入を開始し,平成24年以降,「でんちゅう~」を頒布して利用料金
20 を取得するようになった。
原告は,同年5月22日時点の「でんちゅ~」のプログラムを,原告プログラム
と特定している。
⑷ 原告と被告との関係(乙3)
平成23年3月以降,原告が被告代表者とやり取りをしながら,プログラムを開
25 発した際の法的関係については,後述のとおり争いがあるが,平成24年12月5
日に原告が被告から給与として24万3600円の支給を受けた後は雇用関係とな
り,原告は,平成27年7月に被告を退職するまでの間,被告の被用者として,「で
んちゅ~」の開発に従事した。
⑸ 被告プログラムの頒布(甲2)
被告は,原告が被告を退職した後も,飲食店向けオーダーシステム「でんちゅ~」
5 を,ウェブサイト上で広告し,飲食店向けに導入を勧誘し,飲食店からの申込みに
応じて頒布し,売上に連動した利用料金を徴収している。
原告は,現在被告が頒布する「でんちゅ~」を,被告プログラムとして特定して
いる。
第3 争点
10 1 原告プログラムの著作物性
2 原告プログラムが職務著作に当たるか。
3 被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案した物か。
4 差止め・廃棄請求の必要性
第4 争点に関する当事者の主張
15 1 争点⑴(原告プログラムの著作物性)について
【原告の主張】
⑴ 原告プログラム開発の経緯
原告は,平成22年5月から平成23年2月にかけて,当時の勤務先(株式会社
外為どっとコム。以下「外為どっとコム」という。)に在籍しながら,将来起業す
20 るために,以前,POS(販売時点情報管理)システム及びインターネットを介し
た外国為替取引システムを開発した経験を生かして,独自に原告プログラムの原型
となるレジアプリケーションの開発を行い,平成22年中に,概ね適切に動作する
程度に完成させた。
原告は,平成23年3月までに,上記レジアプリケーションのシステムのうち,
25 ①レジ,③マスタメンテナンス,⑤サーバー側プログラム及び⑥データベース部分
のプログラム(○内の番号は,前記第2の1⑵における説明及び別紙システム概要
図に沿う。以下同じ。)を完成させた。同システムは,当時から,店舗側のプログ
ラムがサーバー側プログラムとデータを送受信する機能を備えたクラウド型のシス
テムとなっており,店舗側で売上データ等を保持せず,インターネットを介してデ
ータをサーバー側に保持するという点に特徴があった。なお,被告は,原告のメー
5 ル中にある,「Webじゃないので,持ち運ぶ為にどっかに移植させないといけな
い」との記述から,当時のプログラムがクラウドでは使用できないものであったと
主張するが,「Webじゃない」というのは,プログラムを端末にセットアップし
なければ使用できないという意味であって,⑤サーバー側プログラムとデータを送
受信する機能を持たないという意味ではない。
10 原告は,同月ころ,かつて同じ職場で勤務したことのある被告代表者にメールで
連絡を取り,起業について相談するために産業振興公社を訪れた。被告代表者は,
原告に対し,上記レジアプリケーションのプログラムに,モバイルオーダーの機能,
すなわち,顧客の携帯電話端末を注文用端末として利用するという機能を追加する
ことを提案し,これを受けて原告は,同プログラムの改良作業に加えて,モバイル
15 オーダーの機能を追加する作業を開始した。このとき,原告は,被告代表者からプ
ログラムの開発を行うための仕様書等を一切受け取っていない。
原告は,同年6月ころ,スタッフオーダー,モバイルオーダー機能及び注文後の
清算機能を追加したレジアプリケーションを一通り完成させた。被告は,これを「で
んちゅ~」として,試験的に1店舗に導入し,同年11月ころ,モバイルオーダー
20 機能の付いていない仕様のレジアプリケーションを,別の店舗に導入した。なお,
モバイルオーダー機能は,あくまで顧客の携帯電話端末を追加のスタッフオーダー
端末として利用するものであるため,このような導入の方法も可能であった。
平成24年ころには,モバイルオーダー機能を使用しない上記レジアプリケーシ
ョンは,複数店舗において採用される程度に完成度を高め,同年5月22日には,
25 原告プログラムが完成していた。
被告代表者は,プログラムに関する技術的スキルがなく,顧客との仕様調整等も
原告が行っていた。
⑵ 原告プログラムの創作性
あるプログラムがプログラム著作物の著作権を侵害するものと判断し得るために
は,プログラム著作物の指令の組合わせに創作性を認め得る部分があり,かつ,後
5 に作成されたプログラムの指令の組合わせがプログラム著作物の創作性を認め得る
部分に類似している事が必要であるとされる(東京高裁平成元年(ラ)第327号
同年6月20日判決・判例時報1322号138頁参照)。
原告プログラムは,スタッフオーダー端末等により入力された情報をサーバー側
プログラムを経由して飲食店用に最適化されたデータベースにおいて情報を一括管
10 理し,その情報をレジやキッチンモニターに出力する機能を持たせるという部分が
一体となって創作性が認められるべきプログラムであって,原告が,遅くとも平成
24年5月22日までに完成させたものである。
被告は,個々のプログラムの命令文がウェブ上に公開されていたり,変数や条件
等の文字列の場所が決まっていたりするため,独創的な表現形式を採る余地がない
15 と主張するようであるが,そもそも,システムエンジニアは,プログラム言語内の
多数の命令を体系的に組合せて一つのシステムを作り上げるのであるから,プログ
ラムに一般的な命令文が含まれていることは著作物性を否定する根拠とはならない。
【被告の主張】
⑴ 原告プログラム開発の経緯
20 ア 「でんちゅ~」の着想・開発・完成の経緯
被告代表者は,遅くとも平成22年5月までに,顧客の携帯電話端末を注文用端
末として利用するモバイルセルフオーダー方式による注文システムの事業(乙1)
を企画し,システムの設計等の検討を重ね,継続的に訴外株式会社あきない総合研
究所(以下「訴外あきない総合研究所」という。)の代表取締役である訴外P2に
25 相談するなどしていた。
被告代表者は,当時,産業振興社において専門コーディネーターとして勤務して
いたが,平成23年3月17日,原告から,起業や転職についての相談を受けた際,
原告に対し,上記システムを実行するためのプログラムとして「でんちゅ~」の企
画とそのシステムの概要を話し,手伝ってくれないかと持ちかけた。原告は,これ
に応じ,同月18日に仕様確認を行い,同月23日に被告代表者が考案した仕様を
5 基にクラウドで利用することを前提としたサンプルプログラムを作成し,同月25
日にキッチンに伝票を出す仕組みを作成し,同年4月12日に被告代表者の仕様指
示に従ってレシートの画像を作成し,同月13日に被告代表者の送付したオーダー
シートの画像を基にキッチンに出力する伝票を作成するなど,被告代表者から細か
い指示を受けながら,その指揮管理の下で原告プログラムのコーディングを行った。
10 なお,「でんちゅ~」という名称は,「電話で注文」を省略したもので,被告代
表者が考案したものである。
被告代表者は,同年3月,産業振興公社を退職し,同年5月10日に被告を設立
した上で,同年6月16日までに,モバイルセルフオーダー方式の飲食店向けアプ
リケーションとして「でんちゅ~」を完成させ,同日,本件特許を出願した。また,
15 被告は,訴外あきない総合研究所より,起業家支援を目的としてベンチャー企業に
出資する「スタートアップ支援ファンド katana-1 号」に認定され,事業資金の出資
を受け,同年7月7日,「でんちゅ~」についてプレスリリースを出した。
イ 原告の主張について
原告は,被告代表者から,原告の作成していたレジアプリケーションプログラム
20 に,モバイルオーダーの機能を追加することを提案されたと主張するが,否認する。
原告は,被告代表者との面談前にはレジアプリケーションのプログラムを完成させ
ておらず,原告が作成していたものは,クラウドでは使用できない(店舗側ではな
くサーバー側にデータを持たせるシステムではない),従来のスタンドアロン型の
自作のPOSシステムのみであった。このことは,原告が,平成23年3月24日,
25 被告代表者に対して送ったメール(乙16の2)の中に,「今度自分のPOSの方
も見てもらいたいです。Webじゃないので,持ち運ぶ為にどっかに移植させない
といけないのですが,何とか頑張ってみます。 ※現在の品質は自己満レベルです)
( 」
と記載したことからもうかがえる。この後,原告は,被告の指示に従って,クラウ
ド式のPOSを作成し始め,キッチンの伝票を出す仕組みを作成し,その後,順次,
被告の指示により原告プログラムを完成させていった。
5 なお,モバイルセルフオーダー方式は,顧客の携帯電話端末を注文用端末として
利用するものであって,従業員が操作するアンドロイドタブレット端末を注文用端
末として利用するスタッフオーダー方式のソースコードとは,使用言語や詳細な機
能が異なるのであって,顧客の選択によって適宜追加されるオプションのような機
能ではない。
10 ⑵ 原告プログラムに創作性がないこと
ア プログラム著作物の著作物性について
原告プログラムについて,著作物性が認められるためには,「指令の表現自体,
その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があ
り,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創
15 作性が表れていることを要する」(知財高裁平成21年(ネ)第10024号同2
4年1月25日判決・判例時報2163号88頁)のであり,これらの点について
は,原告に主張立証責任がある。
しかし,原告は,単に多数の命令を体系的に組合せた程度の主張しか行っておら
ず,原告プログラムの著作物性を基礎づける具体的な事実について主張立証しない。
20 イ 汎用性のあるソースコードが使用されていること等について
①レジ,②キッチンモニター及び③マスタメンテナンスは,どの飲食店向けオー
ダーシステムにおいても構成要素となるものであるところ,原告プログラム及び被
告プログラムでは,これらのプログラムが,書籍やインターネット上において公開
されているPOS端末の表示画面を参考に,汎用されているソースコードをそのま
25 まもしくは多少変更するだけで作成されている。したがって,原告プログラム及び
被告プログラムのうち,少なくとも①レジ,②キッチンモニター及び③マスタメン
テナンスには創作性がない。
また,原告プログラムの他の部分についても,単に多数の命令を体系的に組合せ
たにすぎず,何ら創作性を認め得るような内容ではない。
ウ まとめ
5 したがって,原告プログラムに著作物性は認められない。
2 争点⑵(原告プログラムが職務著作に当たるか。)について
【被告の主張】
⑴ 原告の勤務形態
原告は,平成23年3月17日,被告代表者に対し起業についての相談をしたこ
10 とをきっかけとして,同年4月ころから原告プログラムの作成に携わるようになり,
被告代表者から細かい指示を受けながら,その指揮管理の下でコーディングを行っ
ていた。
被告及び原告は,原告が勤務を始めるに当たり,原告の勤務時間として午前10
時から午後7時までと口頭で約束した。
15 原告は,原告プログラムの開発作業を,専ら那覇市内に所在する被告の事務所に
おいて,被告代表者所有のパソコン及びレジスター機等の機器を使用して行ってい
たが,使い慣れた自己所有のパソコンを持ち込んで作業をすることもあり,原告プ
ログラムのデータを自己所有のパソコンにも保存していた。なお,原告が,平成2
4年5月22日当時の原告プログラムのソースコードを保有しているのは,このよ
20 うな事情によるものであり,原告が原告プログラムを作成したからではない。
⑵ 原告に対する給与の支払等
被告代表者は,平成23年4月から,原告を被告の社員として雇用するつもりで
あったが,被告設立当初の資金繰りが苦しかったこと,原告が,休職中の職場(外
為どっとコム)から傷病手当金を受給しており給与の支払は不要であると申し出た
25 ことから,平成24年5月までの期間は給与を支払わなかった。その後,原告が,
被告代表者に対し,同社を退職したこと,当面は失業保険を受給する予定であるが,
受給額が低額であるため給与を支払ってほしい旨を述べたため,被告は,原告に対
し,給与として,同月以降は毎月5万円を,同年11月以降は毎月約25万円を支
払った。
また,原告は,遅くとも平成23年7月ころから,被告の名称が印刷された名刺
5 (乙10)を使用していた。
⑶ 「でんちゅ~」に関する権利を被告に帰属させる旨の明示又は黙示の合意
原告は,平成23年7月7日,被告が「でんちゅ~」を被告の商品としてプレス
リリースを行い,その後も被告の商品として販売頒布をするに当たり,何らの異議
を述べず,権利も主張しなかった。
10 被告及び被告代表者は,原告から,「でんちゅ~」のプログラムの使用について
許可を受けたり,使用の対価について提案を受けたりしたことは一度もない(そも
そも,原告プログラムの権利者は被告であり,原告から使用許可を受ける必要はな
い)。
すなわち,「でんちゅ~」に関する権利はすべて被告に帰属することが当然の前
15 提とされていた。
⑷ まとめ
以上より,原告は,平成23年3月から被告を退職するまでの間,被告又は被告
代表者との間において,雇用関係又はこれに類似する関係にあったといえるのであ
り,被告及び被告代表者の指揮監督のもとに,「法人等の業務に従事する者」とし
20 て,職務上,原告プログラムの作成に携わっていたのであるから,原告プログラム
の著作者は,被告である(著作権法15条2項)。
【原告の主張】
⑴ 被告からの指揮管理及び給与の支払を受けていなかったこと
原告は,原告プログラム開発を自宅において行っており,機能ごとのプログラム
25 がいったん出来上がると,被告代表者に連絡し,ユーザー目線での動作確認を頼ん
でいた。プログラム開発につき,被告代表者から指揮管理を受けたことはない。
被告は,平成24年5月以降,原告に対し給与として5万円を支払ったと主張す
るが,否認する。原告は,被告代表者に対し,かねてより,同年12月以降は金銭
的に困窮することを伝えていたところ,同月からは給与を受け取ることになったが,
それ以前は給与を受け取っていなかった。
5 なお,被告の名刺は,被告から依頼があったため使用していたにすぎない。
⑵ 被告が原告プログラムを使用することの許諾について
原告は,平成23年5月に被告代表者が被告を設立した際,原告と被告代表者と
の関係が良好な間は,被告及び被告代表者が,原告の作成するレジアプリケーショ
ンのプログラム(後の原告プログラム)を使用することについて許可したが,永続
10 的に利用する許可を与えたことはない。このとき,原告は,被告から原告プログラ
ム開発の対価を全く受け取っておらず,このような状況で原告が永続的な許可を与
えることはあり得ない。
また,原告は,前記⑴のとおり,平成24年12月から被告から給与を受け取る
ことになり,原告が被告に雇用されている間は,被告が原告プログラムを利用する
15 ことについて同意した。原告は,平成27年7月に被告を退社したので,この時点
で,被告が原告プログラムを利用する権限は失われた。原告は,同年9月,被告に
対し,原告プログラムの使用中止を求める文書を送付した。
3 争点⑶(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案した物か。)に
ついて
20 【原告の主張】
被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案した物である。
⑴ プログラム言語について
原告プログラムのうち,①レジ,②キッチンモニター,③マスタメンテナンスは,
「Microsoft Visual C#」というプログラム言語を使用して作成され,④スタッフオ
25 ーダー,⑤サーバー側プログラム,⑦モバイルオーダーは,「Java」というプログ
ラム言語を使用して作成された。
被告プログラムのうち,④スタッフオーダーのプログラム(乙17)は,原告が,
原告プログラムにおいて④スタッフオーダーのプログラム(甲7。書証は枝番号を
含む。以下同じ。)を一部改良して作成した⑦モバイルオーダーのプログラム(甲
8)と同一の機能を有するものであって,その処理内容も同一である。
5 また,被告は,被告プログラムが Java ではなく「HTML」というプログラム言語に
より作成されたものであると主張するが,同プログラムのソースコードの記述には,
「<%」と「%>」で文字列をくくるという Java の記載方法が見られるから,同プログ
ラムは,結局,Java で作動するプログラムであって,HTML 形式のデータを出力する
機能を有するに過ぎない。そして,このような機能を有するプログラムは,原告が
10 先に⑦モバイルオーダーに係るプログラムとして完成させていたものである。
なお,HTML はデータベースから任意のデータを抽出し,データを加工する機能は
有していないため,HTML のみできちんと動作するアプリケーションプログラムを作
成することはそもそも不可能である。
また,被告プログラムの⑤サーバー側プログラムは,Java のプログラムが動作し
15 ており,⑥データベースへの登録内容(データベースへの送信情報の内容)も同じ
である。
したがって,被告プログラムは,原告プログラムの一部改良の意味しか持たない。
⑵ 被告の主張について
被告は,被告プラグラムには,原告プログラムにはないテーブルセルフオーダー
20 端末のプログラムがあると主張するが,被告プログラム及び原告プログラムの核心
は,スタッフオーダー等により入力された情報をサーバー側プログラムを経由して
飲食店用に最適化されたデータベースにおいて情報を一括管理し,その情報をレジ
やキッチンモニターに出力する機能を持たせる部分であるところ,テーブルセルフ
オーダー端末は,スタッフオーダー端末と同じ機能を有するにすぎないから,両プ
25 ログラムの同一性を否定する根拠とならない。
【被告の主張】
⑴ 被告プログラムは,「でんちゅ~」を導入した飲食店の各店舗に合わせて利
便性を高めるために修正を重ねて現在に至ったものであるから,原告プログラムの
単なる複製又は翻案ではない。
⑵ 原告プログラムと被告プログラムは,以下のとおり,システム構成及びソー
5 スコードに違いがある。
ア システム構成
原告プログラムに係るシステムにおいて,②キッチンモニターは,①レジ及び③
マスタメンテナンスの機能を持つ1台の端末から独立した機器とされており,それ
ぞれに,レジプリンタと厨房プリンタが接続されている。また,④スタッフオーダ
10 ー端末は備えているが,テーブルセルフオーダー端末は備えていない。
一方,被告プログラムに係るシステムにおいては,②キッチンモニターは,①レ
ジ及び③マスタメンテナンスの機能を持つ1台の端末内に構成され,この端末にレ
ジプリンタ及び厨房プリンタが接続されている。また,④スタッフオーダー端末に
加え,テーブルセルフオーダー端末を備えている。
15 イ ④スタッフオーダーのプログラムの使用言語
被告プログラムと原告プログラムとは,部分的に共通する記述がみられるとして
も,目的や構成のほか,記述されている言語が異なる。
原告プログラムにおいて,④スタッフオーダー及び⑦モバイルオーダーのプログ
ラムにおける使用言語は Java であるのに対し,被告プログラムの④スタッフオー
20 ダーのプログラムは,Android 端末以外にも,iOS や Windows パソコン等,複数の OS
において利用できるようにするため,HTML で作成されている。なお,「<%」と「%>」
で文字列をくくる記述が使用されているのは,この間に Java のスクリプトを埋め
込むためであり,その前後は HTML で記述されている。
したがって,被告プログラムの④スタッフオーダーのプログラムは,原告プログ
25 ラムのソースコードを複製したものでも翻案等したものでもない。
4 争点⑷(差止め・廃棄請求の必要性)について
【原告の主張】
被告は,原告の許諾を得ず,被告プログラムを複製,販売,頒布している。これ
は,原告の著作権(複製権,翻案権ないし譲渡権)を侵害するものである。
したがって,原告は,被告に対し,著作権法112条1項及び2項に基づき,被
5 告プログラムの複製,販売,頒布を差し止め,同プログラムを廃棄するよう求める
ことができる。
【被告の主張】
争う。被告は,「でんちゅ~」を導入した飲食店に対し,同システムを実行する
プログラム(被告プログラム)を無償で提供しているのであって,被告プログラム
10 自体をパッケージソフトとして提供することはしていない。
第5 当裁判所の判断
1 認定事実(前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実)
⑴ 「でんちゅ~」開発・実用化の経緯等
ア 原告は,平成5年に入社した株式会社沖縄富士通システムエンジニアリング
15 (以下「沖縄富士通」という。)において,POSシステムの設計,検証,納品,
稼働,保守等の業務及びプログラミング開発を行った後,平成18年に,外国為替
取引を扱う「外為どっとコム」へ転職したが,数年後に同社の業績が低下したこと
から,自分で作って売ることのできるシステムを開発しようと考え,平成22年4
月ころから,インターネットを介してデータ連携ができるPOSシステムの開発を
20 始め,平成23年初めころ,同システムに係るプログラムであるレジアプリケーシ
ョンが概ね完成したため,「外為どっとコム」からの退職を決意した(甲18,原
告本人)。
イ 被告代表者は,沖縄富士通でスーパーマーケットのPOSシステムの開発を
した後,大学院で経営学を学び,産業振興公社に入り,専門コーディネータとして
25 地元企業に経営のアドバイス等を行っていたところ,遅くとも平成22年5月まで
に,顧客の携帯電話端末を注文用端末として利用するモバイルセルフオーダー方式
による注文システムの事業を企画し,便益と収益のスキーム,携帯電話端末の表示
画面のイメージ例や,導入・運用費用の試算を含む,「モバイルオーダ(仮称)事
業のご提案」というプレゼンテーション資料(乙1)を作成し,同月以降,ベンチ
ャー企業や起業家の支援を行う訴外あきない総合研究所の代表者である訴外P2に
5 対し,同システムを利用した事業の将来性について相談するなどした(乙18,被
告代表者)。
ウ 原告は,平成23年3月,以前,同じ沖縄富士通で働いたことのある被告代
表者に対し,起業について相談するために連絡を取り,同月17日,被告代表者が
勤務する産業振興公社へ赴いた。
10 原告と被告代表者は,同日,原告が構想していた,売上等のデータを店舗側のプ
ログラムではなくインターネットを介してつながるサーバー側プログラムのデータ
ベースに格納するという特徴を備えたPOSのレジアプリケーションシステムと,
被告が構想していた,顧客の携帯電話端末を注文用端末として利用する(モバイル
オーダー機能)という特徴を備えたシステムについて話し合った。当時,飲食店が
15 使用するPOSシステムの中には,データをクライアント側ではなくサーバー側に
保存するものはほとんどなく,顧客の携帯電話端末を注文用端末として使用するも
のもないという状況であり,原告は,原告において開発中のレジアプリケーション
システムにモバイルオーダー機能を追加する等の改良を行うことを提案し,被告代
表者はこれを了承した。この際,原告と被告代表者は,完成したシステムの著作権
20 の帰属先や,開発作業を行う際の契約関係等については詳細に定めなかった(甲1
8,乙18,原告本人,被告代表者)。
エ 原告と被告代表者は,前記面談後の同月18日午前1時ころ,モバイルオー
ダーで注文を受けた後の厨房への指示のために必要となる機器についてチャットで
協議し,同月23日,原告は被告代表者の案に基づき注文画面の案を作成した。こ
25 れに対し,被告代表者は,同月24日,「見せてもらいました,基本的にはこれで
OKですね。(略)お互いの今の仕事より良い条件で共同で起業する形にもってい
ければと思っています。」等と返信し,さらに,原告は,同日,自作のPOSシス
テムを被告代表者に見てもらいたい旨(「今度,自作POSの方も見てもらいたい
です。Webじゃないので,持ち運ぶ為にどっかに移植させないといけないのです
が,何とか頑張ってみます。」)を述べた。また,原告は,同月25日,厨房用の
5 アプリを,同年4月12日,レシート及びバーコードをそれぞれ作成し,被告代表
者に確認を促した(甲13~19,乙15,16)。
被告代表者は,原告に対し,同年5月2日,「本日の打ち合わせメモ」という件
名のメール(乙9の1)を送り,「だんだんと,いいものに仕上がってきました。
引き続きよろしくです。」とした上で,細かい仕様についての変更点や,PR用の
10 サイトや提案資料の作成等を準備事項として挙げ,同月11日,「【でんちゅ~】
5/11メモ」という件名のメール(乙9の2)を送り,細かい修正事項を挙げる
などした。
オ この間,被告代表者は,同年3月末に産業振興公社を退職し,同年5月10
日に被告を設立した。
15 被告は,同年6月,試験的に「でんちゅ~」を1店舗に導入し,被告代表者は,
同月16日,発明の名称を「セルフオーダーによる注文処理方法」とし,請求項1
を「セルフオーダーシステムにおいて,顧客の入店時に,注文シート発行装置へ顧
客グループの精算単位となる識別番号を入力することにより,精算単位毎に重複が
ない乱数を発生させ精算番号とし,前記精算番号をセルフオーダー総合管理サーバ
20 ーへ格納する手段を備え,前記セルフオーダー総合管理サーバーは,前記精算番号
を,注文情報入力装置で読み取り可能な手段に変換し,変換されたデータを注文シ
ート発行装置へ送信し注文シートとして印刷する手段を備え,前記注文情報入力装
置は,注文シートを読み取ることにより,自動的にセルフオーダー総合管理サーバ
ーへ送信が行われ,前記注文番号との一致確認を行い精算番号を含む情報を注文用
25 URL として生成し,注文用 URL 通知データとして,顧客の注文情報入力装置へ送信
する手段を備えたことを特徴とするセルフオーダーによる注文処理方法。」とする
本件特許を出願した(甲18,乙2)。
カ 被告は,同年7月7日,「でんちゅ~」についてプレスリリースを行い,ビ
ジネスモデル,運用イメージ等の説明に加え,オーダーシート発行場面,オーダー
シート見本,携帯による注文イメージ,レシート見本等の写真を掲載した資料(乙
5 7)を交付したところ,同月12日,株式会社沖縄タイムス社は,被告が「セルフ
オーダーシステム でんちゅ~」を開発したこと等を紹介する記事を,新聞に掲載
した(乙8)。
キ 被告は,同年8月31日,訴外あきない総合研究所がベンチャー企業に対し
て小口分散投資を行う「katana ファンド」から出資を受けた(乙4)。
10 被告は,同年11月に,モバイルオーダー機能の付いていない「でんちゅ~」を
1店舗に導入し,平成24年中には,同様のシステムをさらに5店舗に導入した。
ク 上記認定の補足説明
被告は,平成23年3月17日の原告との面談時点において,原告は作成中
のレジアプリケーションを持っていなかったと主張し,被告代表者はこれに沿う供
15 述をするが,面談前に原告が被告代表者に対して送ったメール(甲13,15)に
は,「自分で起業することも選択肢に入れてみたい」,「前向きな話が出来ると思
います。」等の記載があり,原告は,ある程度具体的に起業の見込みを持っていた
ことがうかがわれる。また,前記エのとおり,原告は,上記面談当日の深夜に,被
告代表者との間においてモバイルオーダーを使うシステムについて具体的なやり取
20 りをしたり,その後約1週間の間に,注文画面や厨房用のアプリ,レシート,バー
コード等の案を作成したりした一方で,当時,被告代表者は,システムについての
企画案はあったものの具体的なプログラミングには至っていなかった(被告代表者)。
なお,原告が,同月24日,被告代表者に対して送信した,「今度,自作POSの
方も見てもらいたいです。Webじゃないので,持ち運ぶ為にどっかに移植させな
25 いといけないのですが,何とか頑張ってみます。」とのメールは,原告の作成した
システムがクラウド型でないことを示すものと認めることはできない。
よって,原告は,上記面談時に,レジアプリケーションとしてある程度完成した
プログラムを準備していたと認めるのが相当であり,上記被告の主張を採用するこ
とはできない。
被告は,被告代表者が原告に対し,メール等により作成すべきプログラムに
5 ついて細かく指示を出し,原告はその通りにプログラミングした,と主張し,被告
代表者もこれに沿う供述をする。しかし,被告代表者は,本人尋問において,「で
んちゅ~」の構想を開始した当初から,モバイルオーダー部分のプログラミングは
自分以外の者を雇うか任せようと思っていたと述べる上,原告と被告代表者の前記
エのメールのやり取りからは,被告代表者が原告に対し,具体的にプログラムの内
10 容について指示したものとは認められず,これを裏付ける他の客観的な証拠もない。
したがって,「でんちゅ~」のプログラミングは主に原告が行い,その中で,被
告代表者と協議しつつ仕様を決定していったものであり,原告プログラムは,店舗
導入可能な程度に完成した,「でんちゅ~」のバージョンの1つであると認めるの
が相当である。
15 ⑵ 原告と被告との雇用関係
ア 原告は,上記⑴のとおり,平成23年3月17日の被告代表者との面談の直
後から,モバイルオーダー機能付きのレジアプリケーションの開発に取り組んだが,
原告と被告代表者は,雇用契約や請負契約等を結ぶことをせず,被告代表者は原告
に対して給与を支払わなかった。
20 原告は,同年4月に「外為どっとコム」を退職し,同年5月10日に被告が設立
されたが,その後も,被告と原告が雇用契約を締結したり,被告が原告に対して給
与を支払ったりすることはなく,原告の勤務時間も定まっておらず,原告は,主に
自宅のパソコンでプログラム開発を行っていた。
イ 平成24年12月から,被告は原告に対し,毎月約24万3000円の給与
25 を支払うようになり,原告は,このころから勤務時間中は被告の事務所に出勤する
ようにした。
ウ 原告は,平成27年7月,被告の他の従業員との感情的あつれき等を理由に,
被告を退職し,同年8月10日付けで,被告に対し,平成24年12月1日から平
成27年7月31日までの未払いの残業代につき支払を請求し,被告はこれを支払
った。原告は,被告を退職する直前の時期に,「でんちゅ~」は自分が作成したも
5 のである旨を主張するなどしたが,原告が被告を退職するにあたり,被告又は被告
代表者との間で,「でんちゅ~」の権利の所在について,確認したり,協議したり
するということはなかった。(甲19,乙3,13,14,原告本人,被告代表者)。
エ なお,被告は,平成24年5月から,被告代表者が原告に対し月5万円を支
給していたと主張し,被告代表者はこれに沿う供述をするが,これを裏付ける客観
10 的証拠はなく,上記被告の主張を採用することはできない。
⑶ 原告プログラムの概要
ア 原告プログラムは,①レジ,②キッチンモニター,③マスタメンテナンス,
④スタッフオーダー,⑤サーバー側プログラム,⑦モバイルオーダーの各プログラ
ムによって構成され,情報はすべて⑥データベースに格納される。原告プログラム
15 のソースコード全体の記述は,甲3のとおりである。原告は,上記構成のうち,⑥
データベースを除いた各アプリケーションのソースコードの一部をそれぞれ印刷し
て証拠(甲4~8)として提出し,その内容について説明するところ,これらの証
拠並びに原告の陳述書(甲18)及び本人尋問の結果によれば,各アプリケーショ
ンの主な動作は以下のとおりである。
20 イ ①レジ及び④スタッフオーダー
①レジは,店舗側のアプリケーションであり,WindowsXP 及び同7の OS 上で起動
し,起動時に,⑥データベースより使用する店舗番号に応じて必要なデータを取得
し,店舗にあるパソコン内部にテキストデータとして保存し,店舗からの受信依頼
に応じて,⑤サーバー側プログラムが⑥データベースから「商品ボタン情報」デー
25 タを受信して送る。店舗の従業員が,パソコン画面上の商品ボタンを押すと,売上
明細エリアに対象商品の名称や価格が表示され,会計の際,顧客の支払金額を入力
して登録及び会計ボタンを押すと,⑤サーバー側プログラムに会計データが送信さ
れ,⑥データベースに登録される。
従業員による④スタッフオーダー(Android 端末)を利用した注文においては,
従業員が,保有するタブレット端末上の④スタッフオーダーアプリケーションにお
5 いて,特定のテーブル番号の顧客の注文を入力し,注文送信ボタンを押すと,⑤サ
ーバー側プログラムに注文データが送信され,⑥データベースに登録される。①レ
ジの方では,従業員がパソコンの画面上で「テーブル番号」を入力し,登録ボタン
を押すと,入力されたテーブル番号が⑤サーバー側プログラムに送信され,⑤サー
バー側プログラムは,⑥データベースより該当のテーブル番号の注文情報を取得し,
10 ①レジに返信すると,上記注文が店舗のパソコン画面上において当該テーブル番号
の売上明細に反映される。
ウ ②キッチンモニター
②キッチンモニターは,店舗側のアプリケーションであり,WindowsXP 及び同7
の OS 上で起動し,⑥データベースに格納された顧客からの注文情報のうち未印刷
15 のもの(後記オーダーシートナンバーが付与されていないもの)を,⑤サーバー側
プログラムを介して取得し,その情報を画面上に表示し,レシートプリンタで印刷
する。印刷終了後は,当該注文情報に対してオーダーシートナンバーが付与され,
画面上にも当該オーダーシートナンバーが表示される。
エ ③マスタメンテナンス
20 ③マスタメンテナンスは,店舗側のアプリケーションであり,WindowsXP 及び同
7の OS 上で起動し,商品の新規登録や,更新を行うプログラムである。③マスタメ
ンテナンスの画面上の「商品マスタ」のメニュー画面から,「新規登録」ボタンを
押すと出現する商品マスタ新規登録画面において,商品の情報(商品名,部門,印
字名称等)を入力し,登録ボタンを押すと,⑤サーバー側プログラムを介し,⑥デ
25 ータベースに入力された商品データが登録される。また,上記メニュー画面から,
「参照・変更」ボタンを押し,商品マスタ参照画面において検索条件を指定して検
索すると,⑤サーバー側プログラムが該当する商品情報を⑥データベースから抽出
して商品マスタ参照画面に返却するので,更新対象のデータを選択して「詳細表示」
ボタンを押し,表示される商品マスタ更新画面において商品の情報を更新し,更新
ボタンを押すと,⑤サーバー側プログラムを介し,⑥データベースに,更新された
5 商品データが登録される。なお,このとき,⑤サーバー側プログラムは,新規登録
と更新を1本のプログラムで行う。
オ ⑦モバイルオーダー
⑦モバイルオーダーは,顧客の携帯電話端末上のアプリケーションであり,顧客
が,携帯電話の画面に表示された注文画面上において,メニューの中から対象商品
10 の数量を入力して「注文送信へ」ボタンを押すと,注文データ(顧客の座席番号,
商品番号等)が,⑤サーバー側プログラムに送信され,仮登録される。さらに,顧
客が,携帯電話の画面に表示された注文送信画面上において,「送信」ボタンを押
すと,⑤サーバー側プログラムに注文確定の指示が送信され,⑤サーバー側プログ
ラムは,⑥データベースに,上記仮登録された注文データの確定処理を行う。
15 ⑷ 被告プログラムの概要
ア 被告プログラムの構成等
被告プログラムは,原告プログラムに変更を加えたものであり,①レジ,②キッ
チンモニター,③マスタメンテナンス,④スタッフオーダー,⑤サーバー側プログ
ラム,⑥データベース,という構成は原告と同じであるが,⑦モバイルオーダーの
20 機能は使用されていない。①レジ及び③マスタメンテナンスについては,一般的な
POSシステムに使用されているソースコードとほぼ同一のソースコードを使用し
ている(乙20,被告代表者)。
被告は,被告プログラムの中から,⑤サーバー側プログラムのうち④スタッフオ
ーダーによる注文処理機能に関する一部のソースコードを原告に対して開示し(甲
25 11,12),証拠として提出するが(乙17),その他の部分については任意に
開示しないところ,原告は,被告プログラムについて文書提出命令等の申し立てを
行わない。
上記開示部分は,スタッフの保有する端末からの注文をインターネットを介して
⑤サーバー側プログラムに送信し,その注文を⑤サーバー側プログラムが⑥データ
ベースに登録する,という処理についてのソースコードの一部分である(甲20)。
5 上記開示部分によれば,被告プログラムは,一部は HTML 言語で記述されているも
のの,