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平成31(ネ)10031特許権侵害差止等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
裁判年月日 令和1年10月10日
事件種別 民事
当事者 控訴人兼被 株式会社湯山製作所 兼被 株式会社ネクスト 兼被 株式会社ヨシヤ
対象物 薬剤分包用ロールペーパ
法令 特許権
特許法102条2項9回
商標法26条1項6号8回
商標法36条1項2回
特許法2条3項1号2回
商標法38条2項1回
特許法2条3項1回
特許法123条1項1号1回
キーワード 侵害49回
商標権49回
特許権40回
実施36回
損害賠償16回
差止15回
分割14回
無効11回
無効審判6回
審決4回
ライセンス4回
新規性3回
進歩性2回
優先権1回
訂正審判1回
主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,一審原告に生じた費用は一審原告の,一審被告ネクスト及び一審被告ヨシヤに生じた費用は同人らの負担とする。
事件の概要 1 本件は,原判決別紙商標権目録I及びII記載の各商標権(本件各商標権) を有するとともに,発明の名称を「薬剤分包用ロールペーパ」とする発明につい ての特許権(特許第4194737号。本件特許権)を有していた一審原告が, 一審告らに対し,一審被告らの製造・販売する製品が本件特許権及び本件各商標 権を侵害したと主張して,①商標法36条1項,2項に基づく販売等の差止め及 び製造設備等の廃棄を求めるとともに,②民法709条及び719条2項並び に特許法102条2項又は商標法38条2項に基づく損害賠償として,主位的 に,(i)一審被告ネクストに対して,一審被告ネクストが販売した被告ネクスト 製品に関し,損害金5676万円の一部である5000万円及びこれに対する 訴状送達の日(平成28年9月5日)の翌日から支払済みまで年5分の割合によ る遅延損害金の支払,(ii)一審被告らに対して,一審被告ヨシヤが販売した被告 ヨシヤ製品に関し,損害金1億1352万円の一部である5000万円及びこ れに対する訴状送達の日(一審被告ネクストにつき平成28年9月5日,一審被 告ヨシヤにつき同月2日)の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に よる遅延損害金の支払(重なり合う部分について連帯支払)を求め,③上記各損

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判決文

令和元年10月10日判決言渡
平成31年(ネ)第10031号 特許権侵害差止等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成28年(ワ)第7536号)
口頭弁論終結日 令和元年7月4日
判 決

控訴人兼被控訴人 株式会社湯山製作所
(以下「一審原告」という。)

同訴訟代理人弁護士 飯 島 歩
藤 田 知 美
町 野 静
松 下 外
平 野 潤
真 鍋 怜 子
村 上 友 紀
溝 上 武 尊
三 品 明 生
上 田 亮 祐
同訴訟代理人弁理士 横 井 知 理
吉 田 昌 司

控訴人兼被控訴人 株式会社ネクスト
(以下「一審被告ネクスト」という。)

控訴人兼被控訴人 株 式 会 社 ヨ シ ヤ
(以下「一審被告ヨシヤ」という。)

上記両名訴訟代理人弁護士 栁 下 彰 彦
高 瀬 亜 富
主 文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,一審原告に生じた費用は一審原告の,一審被告ネク
スト及び一審被告ヨシヤに生じた費用は同人らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
以下,用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほかは,原判決に
従い,原判決に「原告」とあるのを「一審原告」と,「被告ネクスト」とあるの
を「一審被告ネクスト」と,「被告ヨシヤ」とあるのを「一審被告ヨシヤ」と,
「被告ら」とあるのを「一審被告ら」と適宜読み替える。また,原判決の引用部
分の「別紙」をすべて「原判決別紙」と改める。
第1 控訴の趣旨
1 一審原告
(1) 原判決のうち商標権に基づく差止請求に関する部分を取り消す。
(2) 一審被告ネクストは,原判決別紙被告ネクスト製品目録記載の物件に原
判決別紙標章目録記載の標章を付し,又は同標章を付した原判決別紙被告ネク
スト製品目録記載の物件を販売し,若しくは販売のために展示してはならない。
(3) 一審被告ヨシヤは,原判決別紙被告ヨシヤ製品目録記載の物件に原判決
別紙標章目録記載の標章を付し,又は同標章を付した原判決別紙被告ヨシヤ製
品目録記載の物件を販売し,若しくは販売のために展示してはならない。
2 一審被告ら
(1) 原判決のうち一審被告ら敗訴部分を取り消す。
(2) 上記部分につき,一審原告の請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
1 本件は,原判決別紙商標権目録I及びII記載の各商標権(本件各商標権)
を有するとともに,発明の名称を「薬剤分包用ロールペーパ」とする発明につい
ての特許権(特許第4194737号。本件特許権)を有していた一審原告が,
一審告らに対し,一審被告らの製造・販売する製品が本件特許権及び本件各商標
権を侵害したと主張して,①商標法36条1項,2項に基づく販売等の差止め及
び製造設備等の廃棄を求めるとともに,②民法709条及び719条2項並び
に特許法102条2項又は商標法38条2項に基づく損害賠償として,主位的
に,(i)一審被告ネクストに対して,一審被告ネクストが販売した被告ネクスト
製品に関し,損害金5676万円の一部である5000万円及びこれに対する
訴状送達の日(平成28年9月5日)の翌日から支払済みまで年5分の割合によ
る遅延損害金の支払,(ii)一審被告らに対して,一審被告ヨシヤが販売した被告
ヨシヤ製品に関し,損害金1億1352万円の一部である5000万円及びこ
れに対する訴状送達の日(一審被告ネクストにつき平成28年9月5日,一審被
告ヨシヤにつき同月2日)の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に
よる遅延損害金の支払(重なり合う部分について連帯支払)を求め,③上記各損
害賠償請求の予備的請求として,民法703条及び704条に基づく不当利得
返還請求として,一審被告ネクストについては不当利得金1179万3600
円,一審被告ヨシヤについては不当利得金335万6640円の返還及びこれ
らに対するそれぞれ平成30年8月28日付け訴えの変更申立書送達の日(同
年10月5日)の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による 遅延損
害金の支払を求める事案である。
2 原判決は,一審被告らによる本件特許権及び本件各商標権の侵害を認め,
一審原告の請求について,一審被告ネクストに対する損害賠償金415万66
44円及びこれに対する遅延損害金の支払,一審被告ヨシヤ及び一審被告ネク
ストに対する損害賠償金71万6378円及びこれに対する遅延損害金の連帯
支払,一審被告ネクストに対する不当利得金82万7818円及びこれに対す
る遅延損害金の支払,一審被告ヨシヤに対する不当利得金47万4242円及
びこれに対する遅延利息の支払をそれぞれ求める限度で認容し,その余の主位
的請求及び予備的請求をいずれも棄却した。
一審原告は,原判決のうち,商標法36条1項,2項に基づく販売等の差止め
を棄却した部分を不服として控訴を提起し,他方,一審被告らは,一審被告らの
敗訴部分を不服として控訴を提起した。
原判決のうち,被告製品やその半製品,製造設備に対する廃棄請求を棄却した
部分は,当審における審理の対象とはなっていない。
3 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣
旨により認められる事実)は,以下のとおり補正するほかは,原判決4頁11行
目から7頁24行目に記載のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決4頁20行目「薬剤分包用シート」の後に「(以下,中空芯管に
巻き付けられて薬剤の分包に用いられる加工紙を「薬剤分包用シート」,「シー
ト」,「薬剤分包紙」,「分包紙」などという。)」を加える。
(2) 原判決4頁22行目から6頁14行目までを以下のとおり改める。
「 (2) 一審原告の有していた特許権
ア 本件特許の出願経過等
(ア) 一審原告は,平成9年9月22日に出願した特許出願(特願平
9-257175号。優先日:平成8年9月20日及び平成9年9月19日。優
先権主張国:日本。以下「原出願」という。また,以下,原出願の出願当初の明
細書及び図面を併せて「原出願明細書」といい,その内容は本判決添付の特許公
報[別紙1]のとおりである。)の一部を分割して出願した特許出願(特願平1
0-340008号。出願日平成10年11月30日)の一部を更に分割して出
願した特許出願(特願2000-33185号。出願日平成12年2月10日)
の一部を更に分割して,平成12年6月2日,本件特許の特許出願(特願200
0-166273号。以下「本件出願」という。)をした(甲2,54,乙6,
11~13)。
一審原告は,本件出願について平成19年7月26日付けの拒絶理由通知
(乙7)を受けたため,同年10月1日,特許請求の範囲について手続補正(以
下「本件補正」という。乙8)をし,平成20年10月3日,本件特許の設定
登録(請求項の数2。甲1,2)を受けた。本件特許に係る明細書及び図面(本
件明細書)の記載は,原判決添付の特許公報のとおりである。
(イ) 一審原告は,平成22年9月7日,本件特許の特許請求の範囲
の請求項2について訂正することを求める訂正審判を請求し(訂正2010-
390095号事件),同年11月9日,上記請求を認容する旨の審決がされ,
同審決は,同月18日確定した(甲3)。
(ウ) 日進医療器株式会社は,平成29年7月10日,本件特許につ
いて特許無効審判を請求し(無効2017-800089号事件。以下「別件
無効審判」という。甲55),一審原告は,同年10月6日付けで本件特許の
特許請求の範囲の請求項1及び2について訂正することを求める訂正請求(以
下「本件訂正」という。甲25,26)をした。
別件無効審判について,特許庁は,平成30年6月26日,本件訂正を認めた
上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その後,同審決は,
確定した(甲55)。
(エ) 本件特許権の存続期間は,平成29年9月21日をもって終
了した(甲1)。
イ 本件出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の記載
本件出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載は,次の
とおりである(乙6)。
【請求項1】 非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け,中
空軸にはモータブレーキを係合させ,中空軸に着脱自在に装着されるロールペ
ーパのシートを送りローラで送り出す給紙部と,シートを2つ折りしその間に
ホッパから薬剤を投入し,薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側
縁部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え,ロール
ペーパの回転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け,分包部へのシ
ート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け,ロールペーパ
を上記中空軸に接合回転可能に接合する手段をロールペーパと中空軸が接する
端に設け,両センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調
整しながら薬剤を分包するようにした薬剤分包装置に用いられ,中空芯管とそ
の上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り,ロール
ペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために,支持軸
に設けた角度センサでシートの巻量が検出可能な位置に磁石を配置し,その磁
石をロールペーパと共に回転するように配設して成る薬剤分包用ロールペーパ。
ウ 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(下線部
は本件補正による補正箇所である。乙8)。
【請求項1】
非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け,中空軸にはモ
ータブレーキを係合させ,中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシー
トを送りローラで送り出す給紙部と,2つ折りされたシートの間にホッパから
薬剤を投入し,薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯
状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え,ロールペーパの回
転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け,上記中空軸と上記支持軸
の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサを設け, 分包部
へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け,ロール
ペーパを上記中空軸に接合回転可能に接合する手段をロールペーパと中空軸が
接する端に設け,角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロ
ールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにし,さらに角度セン
サの信号とずれ検出センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装
着されたロールペーパと上記中空軸とのずれを検出するようにし た薬剤分包装
置に用いられ,中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロー
ルペーパとから成り,ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空
軸に付与するために,支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と
測長センサの検出信号から算出されるシートの巻量が検出可能な位置に磁石を
配置し,その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る薬剤分包
用ロールペーパ。
エ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(下線部
は本件訂正による訂正箇所である。以下,本件訂正後の請求項1に係る発明を
「本件訂正発明」という。甲25,26)。
【請求項1】
非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け,中空軸にはモ
ータブレーキを係合させ,中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパのシー
トを送りローラで送り出す給紙部と,2つ折りされたシートの間にホッパから
薬剤を投入し,薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部とを帯
状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え,ロールペーパの回
転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け,上記中空軸と上記
支持軸の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサを設け,
分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け,
ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回
転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け,角度センサ及び測長
センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬
剤を分包するようにし,さらに角度センサの信号とずれ検出センサの信号との
不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸と
のずれを検出するようにした薬剤分包装置に用いられ,中空芯管とその上に薬
剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパとから成り,ロールペーパの
シートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するために,支持軸に設けた
角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検出信号とからシートの
巻量が算出可能であって,その角度センサによる検出が可能な位 置に複数の磁
石を配置し,その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る薬剤
分包用ロールペーパ。
(3) 本件訂正発明の構成要件の分説
本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A 非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け,中空軸に
はモータブレーキを係合させ,中空軸に着脱自在に装着されるロールペーパの
シートを送りローラで送り出す給紙部と,2つ折りされたシートの間にホッパ
から薬剤を投入し,薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁部と
を帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え,ロールペーパ
の回転角度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け,上記中空軸と
上記支持軸の固定支持板間で上記中空軸のずれを検出するずれ検出センサを設
け,分包部へのシート送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設
け,ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体
に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設け,角度センサ及び
測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に応じて調整しなが
ら薬剤を分包するようにし,さらに角度センサの信号とずれ検出センサの信号
との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空
軸とのずれを検出するようにした薬剤分包装置に用いられ,
B 中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロールペーパ
とから成り,
C ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中空軸に付与するた
めに,支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号と測長センサの検
出信号とからシートの巻量が算出可能であって,その角度センサによる検出が
可能な位置に複数の磁石を配置し,
D その磁石をロールペーパと共に回転するように配設して成る
E 薬剤分包用ロールペーパ。」
(3) 原判決6頁16行目「目録Ⅰ」及び「同Ⅱ」の後にそれぞれ「記載」を
加える。
(4) 原判決6頁20行目「(甲9,10,15,乙22,40)」を「(甲
9,10,15,乙22,23,乙24の1・2,乙40,50~52,79,
80,乙88の1・2,乙89,113)」と改める。
(5) 原判決6頁24行目,7頁2行目の「通じて」をそれぞれ「通じるなど
して」と改める。
(6) 原判決7頁3行目から6行目までを以下のとおり改める。
「ウ 一審被告ネクストは,被告ネクスト製品及び被告ヨシヤ製品(以下,両
者を併せて「被告製品」という。)の生産を,当初は訴外株式会社ベスト(以下
「ベスト」という。)に,その後は白馬三洋や株式会社セイエー(以下「セイエ
ー」という。)に委託し,白馬三洋は,シングルタイプの薬剤分包用シートを中
空芯管に巻き付ける工程を自社で行い,ダブルタイプの薬剤分包用シートを中
空芯管に巻き付ける工程を工藤紙工に委託した。」
(7) 原判決7頁7行目から21行目までを以下のとおり改める。
「(6) 被告ネクスト製品及び被告ヨシヤ製品(甲19,乙15,16,20,
弁論の全趣旨)
被告ネクスト製品及び被告ヨシヤ製品の構成は,それぞれ原判決別紙被告ネ
クスト製品説明書及び原判決別紙被告ヨシヤ製品説明書のとおりであり,これ
を,本件訂正発明の構成要件の記載に沿って整理すると,以下のとおりとなる。
a 被告製品は,中空芯管(原告製の使用済み芯管)とその上に薬剤分包用シ
ートをロール状に巻いたロールペーパとから成り(被告ネクスト製品説明書図
1,被告ヨシヤ製品説明書図1),
b 上記中空芯管(被告ネクスト製品説明書図2,被告ヨシヤ製品説明書図
2)においては,原告製の薬剤分包装置に設けられた上記中空軸への挿入方向と
は逆の端部プラスチック内部に,円周上に3個の磁石が配設される(被告ネクス
ト製品説明書図3符号9,被告ヨシヤ製品説明書図3符号9)とともに,上記中
空軸への挿入方向にある端部に厚さ1.5mmの強磁性体の鋼製リングが嵌合
されていて(被告ネクスト製品説明書図3符号7,被告ヨシヤ製品説明書図3符
号7),
c 上記磁石は,中空芯管を構成するプラスチックの内部に配設されており
(被告ネクスト製品説明書図3符号9,被告ヨシヤ製品説明書図3符号9),巻
き回されたロールペーパと共に回転する。
d 薬剤分包用ロールペーパである。」
(8) 原判決7頁22行目から24行目までを以下のとおり改める。
「イ 被告製品は,一審原告によって本件商標1又は本件商標1及び本件商標
2が付された一審原告製の使用済み芯管をそのまま使用して生産されたもので
あったため,本件商標1については遅くとも平成20年10月3日以降,本件商
標2についてはその登録日である平成24年4月27日以降,被告製品の中空
芯管の外端面にある プラスチック製のリングに,型押しにより刻印されてい
た。」
4 争点
(1) 被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点(1))。
(2) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点(2))。
ア 補正の際の新規事項の追加に当たるか(争点(2)ア)。
イ サポート要件違反に当たるか(争点(2)イ)。
ウ 明確性を欠くか(争点(2)ウ)。
エ 分割要件違反に当たるか(争点(2)エ)。
(3) 本件特許権の行使が権利濫用に該当するか(争点(3))。
(4) 本件各商標権の侵害が成立するか(争点(4))。
ア 視認可能性があるか(争点(4)ア)。
イ 指定商品の同一性(争点(4)イ)
ウ 商標法26条1項6号該当性(争点(4)ウ)
エ 実質的違法性(争点(4)エ)
(5) 本件各商標権の行使が権利濫用に該当するか(争点(5))
(6) 本件各商標権に基づく差止めの必要性(争点(6))
(7) 一審原告の損害(争点(7))
ア 特許法102条2項又は商標法38条2項による損害額の推定(争
点(7)ア)
イ 消滅時効の成否(争点(7)イ)
ウ 推定の覆滅(争点(7)ウ)
(8) 一審被告らの共同不法行為の成否(争点(8))
(9) 不当利得の存否及びその額(争点(9))
第3 争点に関する当事者の主張
次のとおり補正し,後記2のとおり当審における当事者の主張を付加するほ
かは,原判決の「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用す
る。
1 原判決の補正
(1) 原判決8頁22行目,9頁11行目,14行目,16行目,20行目,
23行目,10頁2行目,11頁14行目,13頁6行目,7行目,22行目,
26行目,14頁5行目,22行目,15頁1行目,17頁2行目,3行目,2
0頁4行目,33頁17行目,19行目の各「本件発明」をそれぞれ「本件訂正
発明」と改める。
(2) 原判決9頁26行目から10頁1行目「以下「本件補正」という。」を
削除する。
(3) 原判決10頁18行目「本件発明にかかる」を「本件訂正発明に係る」
と改める。
(4) 原判決11頁12行目の「本件発明」を「本件特許」と改め,13頁1
9行目の「本件発明が」を削除する。
(5) 原判決11頁24行目,12頁3行目,29頁20行目の各「被告」を
それぞれ「一審被告ら」と改める。
(6) 原判決13頁12行目「主張・立証をする」を「主張立証する」と改め
る。
(7) 原判決14頁19行目「また,」から21行目までを以下のとおり改め
る。
「そうすると,本件補正前の「シートを2つ折りし」という文言と本件補正後
の「2つ折りされたシート」という文言は,いずれもシングルタイプのロールペ
ーパを分包装置において2つ折りにすることを指すものといえる。したがって,
ダブルタイプのロールペーパを使用する薬剤分包装置は本件訂正発明の構成要
件Aのうち「2つ折りされた」との要件を充足しない。」
(8) 原判決15頁2行目から3行目「原出願の際の明細書(乙12。 「原
以下
出願明細書」という。)」を「原出願明細書(乙12)」と改める。
(9) 原判決17頁20行目「本件特許の明細書」 「本件明細書」
を と改める。
(10) 原判決17頁25行目「(以下「本件原出願」という。)」を削除す
る。
(11) 原判決17頁25行目「特願10」を「特願平10」と改める。
(12) 原判決18頁4行目,7行目,19頁7行目,14行目,21頁4行
目,5行目,22頁4行目の各「段落」をいずれも削除する。
(13) 原判決18頁6行目から 7 行目 (以下
「 「第1の実施形態」という。 」

を「(以下「第1実施形態」という。)」と改める。
(14) 原判決18頁9行目から10行目「(以下「第2の実施形態」)」を
「(以下「第2実施形態」という。)」と改める。
(15) 原判決18頁11行目,19頁2行目の各「第2の実施形態」をそれ
ぞれ「第2実施形態」と改める。
(16) 原判決19頁1行目「第1の実施形態」 「第1実施形態」
を と改める。
(17) 原判決19頁21行目「本件原出願」を「原出願」と改める。
(18) 原判決19頁26行目「また,」から20頁1行目「いうから,」ま
でを以下のとおり改める。
「また,「三角板4で2つ折りにされた際」という構成は,薬剤投入が可能な
ように薬剤分包用シートをV字状に折り曲げた状態をいうから,」
(19) 原判決20頁1行目,2行目,3行目,17行目,22行目,22頁
14行目の各「薬剤分包シート」をそれぞれ「薬剤分包用シート」と改める。
(20) 原判決20頁12行目「本件発明の」を削除する。
(21) 原判決20頁17行目「1」を「(1)」と改める。
(22) 原判決20頁17行目「薬剤分包シートを」の後に「薬剤投入時に薬
剤が投入可能なように」を挿入する。
(23) 原判決20頁21行目「また,」から22行目「いうところ,」まで
を以下のとおり改める。
「また,前記(1)のとおり,「2つ折り」とは,薬剤投入時に薬剤が投入可能
なように薬剤分包用シートをV字状に折り曲げた状態をいうところ,」
(24) 原判決22頁4行目「原出願の明細書」 「原出願明細書」
を と改める。
(25) 原判決22頁7行目の「(3)」を「(4)」と改める。
(26) 原判決22頁9行目「視認可能性について(争点(3)ア)」を「争点(4)
ア(視認可能性があるか。)について」と改める。
(27) 原判決22頁13行目「指定商品について(争点(3)イ)」を「争点(4)
イ(指定商品の同一性)について」と改める。
(28) 原判決22頁24行目「商標法26条1項6号の抗弁について(争点
(3)ウ)」を「争点(4)ウ(商標法26条1項6号該当性)について」と改める。
(29) 原判決23頁6行目から10行目までを以下のとおり改める。
「 また,商標的使用態様でないことを根拠に商標権侵害を否定するために
は,商標法26条1項6号に該当する事実を一審被告らの側で立証する必要が
あるところ,薬局従業員1名の供述で,全需要者について混同のおそれがなかっ
たとはいえない。
以上に加えて,後記(4)の事情や顧客が被告製品を購入した後で,薬局内部に
おいて購入担当者とは異なる調剤担当者や転売先の需要者が被告製品に触れる
場合に被告製品が非純正品であることが把握されない可能性が高か ったことか
らすると,需要者が被告製品を一審原告の製品であると混同するおそれがあっ
たといえる。」
(30) 原判決23頁11行目「実質的違法性について(争点(3)エ)」を「争
点(4)エ(実質的違法性)について」と改める。
(31) 原判決23頁24行目「本件各商標は視認可能な状態で使用されてい
ないこと(争点(3)ア)」を「争点(4)ア(視認可能性があるか。)について」と
改める。
(32) 原判決24頁4行目「本件各商標は指定商品に使用されていないこと
(争点⑶イ)」を「争点(4)イ(指定商品の同一性)について」と改める。
(33) 原判決24頁14行目「商標法26条1項6号の抗弁(争点(3)ウ)」
を「争点(4)ウ(商標法26条1項6号該当性)について」と改める。
(34) 原判決25頁1行目「被告らの行為には実質的違法性がないこと(争
点(3)エ)」を「争点(4)エ(実質的違法性)について」と改める。
(35) 原判決25頁5行目から6行目 (乙25) を (乙25の1・2)
「 」 「 」
と改める。
(36) 原判決25頁15行目「(4)」を「(6)」と改める。
(37) 原判決25頁19行目から20行目 及び製品,
「, 製造設備等の廃棄」
を削除する。
(38) 原判決25頁20行目「(請求の趣旨1項ないし6項の関係)」を削
除する。
(39) 原判決25頁25行目「原告の損害について」を「争点(7)(一審原告
の損害)について」と改める。
(40) 原判決25頁26行目の「特許法102条2項,商標法38条2項に
よる損害額の推定(争点(5)ア)」を「争点(7)ア(特許法102条2項又は商標
法38条2項による損害額の推定)について」と改める。
(41) 原判決26頁19行目「原告は,」の後に「民法709条及び特許法
102条2項又は商標法38条2項に基づき,」を加える。
(42) 原判決26頁20行目「(請求の趣旨7項の関係)」を削除する。
(43) 原判決28頁1行目「消滅時効の成否について(争点(5)イ)」を「争
点(7)イ(消滅時効の成否)について」と改める。
(44) 原判決28頁3行目「(甲16,17)」を「(甲16,17の各1)」
と改める。
(45) 原判決28頁8行目「不法行為に基づく害賠償請求権にいては,」を
「不法行為に基づく損害賠償請求権については,」と改める。
(46) 原判決28頁12行目「推定の覆滅について(争点(5)ウ)」を「争点
(7)ウ(推定の覆滅)について」と改める。
(47) 原判決28頁18行目,32頁4行目,16行目の各「通り」をそれ
ぞれ「とおり」と改める。
(48) 原判決29頁14行目,18行目の各「原告の」をそれぞれ「一審原
告製の」と改める。
(49) 原判決29頁24行目「(6)」を「(8)」と改める。
(50) 原判決30頁4行目「前記(1)イ」を「前記5(1)イ」と改める。
(51) 原判決30頁7行目「(請求の趣旨8項の関係)」を削除する。
(52) 原判決30頁12行目「(7)」を「(9)」と改める。
(53) 原判決30頁26行目から31頁1行目 (請求の趣旨9項の関係)
「 」
を削除する。
(54) 原判決31頁8行目から9行目「(請求の趣旨10項の関係)」を削
除する。
(55) 原判決33頁22行目「高くとも」を「多くとも」と改める。
2 当審における当事者の主張
(1) 争点(3)(本件特許権の行使が権利濫用に該当するか)について
【一審被告らの主張】
ア 一審原告による本件特許権の行使は,一審原告製の薬剤分包装置に
関する分包紙市場についての「私的独占」(独占禁止法2条5項,3条),又は
「不公正な取引方法」(同法2条9項6号,同19条,一般指定14項)に当た
るもので,独占禁止法(以下「独禁法」という。)に違反する行為である。
イ 一審原告による本件特許権の行使が,一審原告製の薬剤分包装置用
の薬剤分包紙市場から非純正品を排除し,競争を排除することを目的とする不
当なものであること,権利行使の態様が,ライセンス交渉等も無しに使用済み芯
管の使用差止めを求めるというもので,さらに,本件訂正発明の特徴的部分たる
構成要件Aを充足する薬剤分包装置で使用されるか否かという事情を捨象して
特許権侵害を主張するという不当なものであること,本件特許権の行使が認め
られる場合,一審原告製薬剤分包紙の使用済み芯管を利用した再生品事業は一
切不可能になるという重大な競争制限効果をもたらすことになるこ とからする
と,独禁法21条の適用は認められない。
ウ 平成20年6月9日に一審原告が作成した一審原告製薬剤分包 装置
の取扱説明書には,「分包紙は必ず,ユヤマ式分包紙を使用する」と記載されて
いる(乙119) さらに,
。 一審原告は,一審原告製薬剤分包装置を販売する際,
購入者に対して「分包紙についてのお願い」と題する書面(乙120)を交付し,
非純正品を使用しないように呼びかけていた。ここからしても一審原告は,一審
原告製薬剤分包装置用の薬剤分包紙市場における競争を制限し,同市場を独占
するという不当な目的を有していたと認められる。
【一審原告の主張】
ア 一審被告らの上記ウの主張は,控訴理由書の提出期限を徒過して提
出された控訴理由補充書(以下「本件補充書」という。)に記載されたものであ
るから,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
イ 本件における一審原告の権利行使は,典型的な独禁法21条にいう
「権利の行使」である。
本件は,公正取引委員会のガイドラインの中で「私的独占」や「不公正な取引
方法」に該当する可能性がある場合として掲げられている類型のいずれにも当
たらない上,一審被告らはそれらの類型に匹敵するような事情があることを基
礎付ける事実を主張していない。
(2) 争点(5)(本件各商標権の行使が権利濫用に該当するか)について
【一審被告らの主張】
ア 一審原告による本件各商標権の行使は,一審原告製の薬剤分包装置
に関する分包紙市場についての「私的独占」(独禁法2条5項,3条),又は「不
公正な取引方法」(同法2条9項6号,同19条,一般指定14項)に当たるも
ので,独禁法に違反する行為である。
イ 被告製品の販売により本件各商標の出所表示機能や品質保証機能が
害されることはほとんどない一方で,本件のような態様の商標権の行使が認め
られてしまうと,一審原告製の芯管を再利用する非純正品事業の途は完全に閉
ざされ,当該市場における競争が消滅してしまう。芯管の所有権を一審原告が留
保している以上,一審被告ら第三者は,本件刻印を削り取ったり,有効な打ち消
し表示を行ったりすることができず,一審原告が市場を独占し,需要者は,より
安価な非純正分包紙を購入する機会を奪われてしまう。一審原告の競争制限及
び市場独占の意図は,前記(1)【一審被告らの主張】ウの取扱説明書や「分包紙
についてのお願い」と題する書面の記載からも明らかである。
したがって,一審原告による本件各商標権の行使は,「私的独占」又は「不公
正な取引方法」に当たり,独禁法21条の適用も認められないものである。
【一審原告の主張】
ア 取扱説明書や「分包紙についてのお願い」と題する書面に基づく主張
は,本件補充書に記載されたものであって,時機に後れた攻撃防御方法として却
下されるべきである。
イ 商標権の行使が独禁法上違法と認められるのは,ごく限られた場合
であるところ,一審被告らは,そのような例外的事情についての主張立証をして
いない。
一審原告の行為は,自ら保有する商標権を侵害する者に差止め及び損害賠償
を求めるという最も基本的な知的財産権の行使であり,独禁法に違反するもの
ではなく,権利濫用には当たらない。
取扱説明書や「分包紙についてのお願い」と題する書面の記載は,薬剤分包装
置の利用者に純正薬剤分包紙の使用を求めるものであって,一審被告らの主張
によっても,これらの表示が商標権の行使の違法性とどのように関連するのか
も明らかでない。
(3) 争点(1)(被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について
の補充主張
【一審被告らの主張】
ア 原判決は,構成要件Aを充足する薬剤分包装置が存在するのか否か
について判断する必要はないとしたが,これは 従前の知財高裁判決と乖離す
る特異な判断手法を用いたものである。以下の(ア)~(エ)からすると,本件では
請求項に記載されている他のサブコンビネーションである薬剤分包装置の構成
要件充足性を審理・判断することが求められる。
(ア) 特許庁の審査基準では,他のサブコンビネーション(本件では薬
剤分包装置)が,特許発明に係るサブコンビネーション(本件では薬剤分包用ロ
ールペーパ)の用途を特定したものと認定されることがあり得るとされている
ことや「用いられる」の通常の意味が「役に立てて使われる。使用される。」で
あることからすると,本件訂正発明の構成要件Aにおける「用いられ」とは,
「役
に立てて使われ」又は「使用され」という意義に解するべきであり,構成要件A
の「薬剤分包装置」は,本件訂正発明の対象たる構成要件B~Eを充足する薬剤
分包用ロールペーパが「使用され」るもの,すなわち,薬剤分包装置の「用途」
を特定する意義の文言と解される。
したがって,本件訂正発明について,用途発明と同様に,請求項において特定
された用途で実施品が使用される場合,すなわち,構成要件Aを充足する薬剤分
包装置で被告製品が使用される場合に限り,特許法2条3項の「実施」に該当し,
特許権侵害が成立すると解すべきである。
(イ) 本件明細書の記載によると,本件訂正発明において保護される
べき特徴的部分は,薬剤分包装置の測長センサと角度センサの二つのセンサに
よる信号検出及びこれに基づくシート張力の調整を可能にすることにあるが,
これらは,いずれも薬剤分包装置側の構成又は機能であるから,本件特許権の保
護範囲を適切に画するという観点からは,被告製品が当該特徴的部分を有する
薬剤分包装置で使用されてはじめて本件特許権に対する侵害が成立すると解す
るべきである。
(ウ) 一審原告は,本件補正に際して,本件訂正発明の技術的特徴が構
成要件Aにあることを主張していた(乙9)のであるから,本件特許が特許とし
て独占排他的効力を有する源泉であり,その唯一の技術的特徴である構成要件
Aを無視してクレーム解釈及び被告製品の充足性の判断をしてもよいとする原
判決の判断手法は,本件特許の審査経過を無視するものである。
(エ) 原審裁判所の「暫定的見解」(乙104)は,被告製品について
構成要件Aを充足する薬剤分包装置以外の用途がある場合に特許権侵害を認め
ることに否定的なものであり,被告製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置
で使用されてはじめて本件特許権に対する侵害が成立するという一審被告らの
主張と整合的である。
イ 上記アのとおり,被告製品の販売が本件特許権に対する侵害と評価
されるのは,被告製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置で使用される場合
に限られるが,構成要件Aを充足する薬剤分包装置は存在しない上,一審被告ら
は構成要件Aを充足する薬剤分包装置で使用されることを前提に被告製品を販
売したものではないから,本件において特許権侵害は成立しない。
【一審原告の主張】
ア 本件訂正発明は,特許請求の範囲の末尾が「薬剤分包用ロールペーパ」
となっていることからして,物の発明であるから,その特許請求の範囲の記載は,
生産や流通の客体となり得るような発明であることを前提に,その静的な構造,
特性等を特定するものとしてこれを解釈すべきである。
そして,サブコンビネーション発明が特許要件を充足するためには,特許請求
の範囲の記載から特定される静的な構造,特性等に基づき,当該サブコンビネー
ションが,生産や流通の客体となる物として独立に新規性・進歩性等を有するこ
とを要するものと解すべきであるとともに,技術的範囲を定めるに当たっても,
特許請求の範囲の記載が,当該サブコンビネーションの構造,特性等を特定する
ものとして解釈されるべきである。
したがって,構成要件Aの「用いられ」は,薬剤分包用ロールペーパの用途で
はなく構造,特性等を特定したものであると解し,被告製品が構成要件A記載の
薬剤分包用ロールペーパにおいて使用可能な構成を有すれば足りると解すべき
であり,これは特許庁の審査実務にも合致する。
本件では,特許請求の範囲で特定される構造・特性等を有する薬剤分包用ロー
ルペーパを生産し,譲渡することで,特許法2条3項1号にいう「生産」,「譲
渡」に該当し,現に構成要件Aに記載された薬剤分包装置が存在するか,また,
そのような薬剤分包装置に使用されるか否かを問わず,本件特許権の侵害が成
立する。
イ 一審被告らは,「用いられ」が用途を限定したもので,「用いられ」
を充足するためには,構成要件A記載の薬剤分包装置に用いられることが必要
であると主張する。しかし,このように解釈すると,実施品の構造,特性等が同
一であっても,その用い方によって本件特許権の効力が及んだり及ばなかった
りすることになるが,これは,物の静的な構造,特性等から定義されるべき物の
発明の性質に反する。また,実施行為との関係でも,薬剤分包用ロールペーパを
構成要件A記載の薬剤分包装置に使用するという方法的要素は,「使用」の客体
となることはあっても,「譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出」の客体
とはなり得ず,一審被告らによる技術的範囲の把握は,特許法2条3項1号の定
義と矛盾を生じる。
さらに,一審被告らの主張は,物の発明としての薬剤分包用ロールペーパの構
造,特性等が特定された後に,その使用態様として,構成要件A記載の薬剤分包
装置に使用することを構成要件に加えようとするものであるが,これは,物の構
造,特性等を離れた方法的要素を構成要件に付加しようとするものであるから,
本質的に,本件訂正発明をして,薬剤分包用ロールペーパを用いた方法の発明と
把握するものに他ならず,物の同一性を基準に権利範囲を把握してきたこれま
での解釈手法と異質なものである。
ウ 本件明細書【0011】によると,本件訂正発明の課題は,シート張
力を適切に調整できる薬剤分包装置に用いられ,
「角度センサに対し回転角度デ
ータを与えることのできる薬剤分包用ロールペーパを提供すること」にあると
ころ,この課題は,薬剤分包装置本体の構成によって解決することはできず,薬
剤分包用ロールペーパの構造,特性等によって解決されるべき課題である。
したがって,本件訂正発明の課題は,薬剤分包装置の存在を前提としつつも薬
剤分包装置における課題とは別個のものであり,また,その解決手段となる薬剤
分包用ロールペーパの構造も,薬剤分包装置のそれから独立したものといえる。
エ 本件補正についても,一審原告が新規性,進歩性の存在を主張するた
めに,薬剤分包用ロールペーパの構造を特定する他のサブコンビネーションで
ある薬剤分包装置について説明したからといって,構成要件A記載の薬剤分包
装置に現に使用されなければならないということが導かれるものではない。
オ 原審裁判所の暫定的見解や一審被告らの販売目的は一審被告らの主
張を基礎付けるものではない。
(4) 争点(2)
(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。)
についての補充主張
ア 争点(2)ア(補正の際の新規事項の追加に当たるか。)について
【一審被告らの主張】
原判決は,本件明細書【0005】や【0011】を根拠に,「2つ折りされ
たシート」との文言は薬剤分包用シートが搬送方向にV字状に折り曲げられた
状態を指し,その中にはダブルタイプの薬剤分包用シートとシングルタイプの
薬剤分包用シートの双方が含まれると認定する。
しかし,本件明細書【0018】は,シングルタイプの薬剤分包用シートにつ
いてのものである上,【0005】や【0011】には,原判決の上記認定の根
拠となるような記載はなく,本件特許の出願当初の特許請求の範囲,明細書及び
図面には,ダブルタイプの薬剤分包用シートを用いる態様やダブルタイプの薬
剤分包用シートをV字型に開くことについては何らの記載も示唆もないから,
本件特許には補正要件違反がある。
【一審原告の主張】
本件明細書【0018】にいう「シートを2つ折りし」との文言は,シートが,
三角板4において,薬剤が投入可能なようにV字状に折り曲げられた状態にさ
れることを示すものである。本件明細書上,三角板4を経由する前の段階で,シ
ートが折り畳まれているか否かについては特に限定されていないから,シング
ルタイプのように折り畳まれていないシートに折り目を付けてV字状にするの
も,ダブルタイプのようにあらかじめ折り畳まれたシートを開いてV字状にす
るのも,いずれも本件特許にいう「2つ折り」である。
技術的にも,本件訂正発明は,シートのヒートシールに際して耳ずれなどが生
じることを防止することを課題とし,その解決手段としてシートの張力を調整
するのに必要なデータを薬剤分包装置に提供するものであるところ ,ヒートシ
ールが行われるのは,シートがV字状に「2つ折り」され,薬剤が投入された後
であるから,2つ折りされる前にシートが折り畳まれていたか否かは,課題にも
解決手段にも影響しない。
また,原出願以前から,薬剤分包用ロールペーパにはダブルタイプのものもシ
ングルタイプのものも存在していたため,ダブルタイプのものは薬剤分包装置
内で開いてV字状にし,シングルタイプのものは薬剤分包装置内で折り目を付
けてV字状にし,それぞれ薬剤を投入することは,当業者にとって技術常識であ
った。
したがって,本件明細書【0018】の「シートを2つ折りし」には,シング
ルタイプのシートを折り畳む場合しか含まれないとう一審被告らの解釈 は誤り
であり,それを前提とした主張も失当である。
イ 争点(2)イ(サポート要件違反に当たるか。 , (明確性を欠くか。
)ウ )
について
【一審被告らの主張】
原判決が認定の根拠とする本件明細書【0012】,【0018】は,シング
ルタイプの薬剤分包用シートについての記載である上,本件で問題になってい
るのは,薬剤分包用シートが「2つ折りされるタイミング」であり,
「2つ折り」
という文言の意味ではないから,原判決の「当業者であれば,『2つ折り』がど
のような状態を指すかは明確に理解することができる。 との説示は当を得たも

のではない。
【一審原告の主張】
本件明細書にいう「2つ折り」とは,シートがV字状に折り曲げられた状態を
いうのであって,シングルタイプであってもダブルタイプであっても,その点に
ついて特に区別されるものではないし,「2つ折り」されるタイミングは同じで
ある。
ウ 争点(2)エ(分割要件違反に当たるか。)について
【一審被告らの主張】
(ア)a 原判決は,本件特許が,原出願の請求項3~5に基づき分割出
願されたものと認定したが,原出願の請求項3~5では,「測長センサ及び角度
センサにより得た所定長さ又は所定回転角度のいずれかを基準とし回転角度又
はシート長さの変化により繰出し後のロールペーパ巻量を求め,その巻量の直
径に応じて段階的にブレーキ手段のブレーキ力を制御してシート張力を調整す
る」とブレーキ力の制御が具体的に特定されているのに対し,本件訂正発明では,
「角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロールペーパ径に
応じて調整」としか特定されておらず,角度センサと測長センサの信号をどのよ
うに使用するのか制限がなくなって範囲が広くなっている。
b また,原出願明細書【0051】によると,原出願明細書では,
角度センサとずれ検出センサとの関係について,「ズレ検出センサは,基準とな
る回転角度センサと同一ピッチの信号を検出することを前提として,同一ピッ
チの信号が検出されない場合には,包装シートの繰出しのずれの有無を検出す
る」とされているのに対し,本件訂正発明では,「角度センサの信号とずれ検出
センサの信号との不一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペー
パと上記中空軸とのずれを検出する」と特定され,角度センサの信号とずれ検出
センサの信号との不一致の検出方法は制限がなくなり,検出される「ずれ」は,
ロールペーパと上記中空軸とのずれとされているから,不一致の検出方法が原
出願明細書よりも広いものとなっていて,かつ検出される「ずれ」の種類は異な
るものとなっている。
c 以上のとおり,本件訂正発明は,原出願の請求項3や原出願明細
書の記載よりも広い内容を含むものとなっているから,本件特許は分割要件を
満たさない。
(イ) 原判決は,本件明細書【0008】~【0011】が「薬剤分包
装置に用いられるロールペーパに関する背景技術についての記述」であると認
定するが,それを認めるに足りる証拠はない。
【一審原告の主張】
(ア) 本件訂正発明は,シート張力を適切に調整できる薬剤分包装置
に用いられ,
「角度センサに対し回転角度データを与えることのできる薬剤分包
用ロールペーパを提供すること」を課題とし,この課題を解決するために,構成
要件Aに記載された薬剤分包装置の角度センサによる検出が可能な位置に磁石
を配置すること等を特徴とする薬剤分包用ロールペーパをその内容とするもの
である。
そして,薬剤分包用ロールペーパの上記構造,特性等については,原出願明細
書によって開示されており,また,一審被告らが主張する薬剤分包装置内部にお
ける測長センサや角度センサからの信号の利用形態や処理の方法がどうあれ,
制御の結果がシート張力の調整にある以上,薬剤分包用ロールペーパの構造,特
性等に影響を及ぼすことはない。
(イ) 原出願と本件特許とでは,特許請求の対象となる発明を異にし
ているのであるから,両者の特許請求の範囲の記載を比較して権利範囲の広狭
を論じる一審被告らの主張には意味がない。
(ウ) 一審被告らが新規事項を追加したものと指摘する 本件明細書
【0008】~【0011】の記載は,特許請求の範囲の記載ではなく,また,
特許請求の範囲に記載された個々の構成要件について説明するものですらない
から,これらの記載があることにより,特許請求の範囲に記載された構成要件の
解釈に影響を生じず,その技術的範囲に変更をもたらすこともない。
(5) 争点(4)(本件各商標権の侵害が成立するか)についての補充主張
ア 争点(4)ア(視認可能性があるか。)について
【一審被告らの主張】
(ア) ①中空芯管及び本件刻印が深い青色であって(乙20),中空芯
管の色からしても本件刻印を視認することができないか,極めて困難であるこ
と,②被告製品は,直径20cm程度の大きさであるのに対し,本件刻印の大き
さは,本件商標1に対応する刻印が横2cm×縦0.4cm程度,本件商標2に
対応する刻印が横0.8cm×縦0.5cmであること(乙20)から,本件刻
印は非常に小さく,視認することができないか,極めて困難であること,③被告
製品の重量が2.5kgあること(乙21)から,取引過程で中空芯管が持ち上
げられて注視されることはないこと,④被告製品の取引過程で本件刻印が視認
できたという証拠が存在しないこと(乙5,15,20)からすると視認可能性
は存在しない。顧客がロールペーパを使用しようとして,包装を解くと本件刻印
が視認できたとする原判決の認定は誤りである。
(イ) 仮に本件刻印が物理的に視認可能であるとしても,本件刻印の
ような凹凸のみで表現された単一の色彩からなるそれ自体極めて視認困難な態
様の刻印は,出所識別機能を発揮する態様で視認可能であるとはいえず,規範的
観点から,「商標」又は「商標の使用」とは評価できない。
【一審原告の主張】
(ア) 一審被告らの上記(ア)の主張は,本件補充書に記載されたもの
であって,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
(イ) 本件刻印は芯管の外面上に明瞭に設けられている(甲21の1
~3)し,その刻印場所は需要者が被告製品を手に取って,被告製品を一審原告
製の薬剤分包装置にセットする際に必ず目に入る部分であるから,本件刻印は,
通常の観察力を有する需要者にとって容易に視認可能であった。
イ 争点(4)イ(指定商品の同一性)について
【一審被告らの主張】
一審原告は,特許権侵害の場面で,「芯管」と「薬剤分包用シート」を区別し
て販売対象を「シート」に限定し,「芯管」については所有権を留保するという
取扱いを行い,需要者にもその旨の説明をしていると主張して,大阪地裁平成2
4年(ワ)第8071号・平成26年1月16日判決(甲13の1,乙112,
以下「別件訴訟」という。)で特許権の消尽を免れるという確定的な利益を得て
いる。
ところが,本件で商標権侵害の成否に局面が移るや,一審原告は,「芯管と一
体となった薬剤分包用シートが薬剤分包用ロールペーパという一つの商品であ
る」などと主張し,別件訴訟と矛盾する主張をしている。既に別件訴訟において
芯管と薬剤分包用シートとの非一体性を前提とする所有権留保の主張をして消
尽を免れるという利益を得ている以上,商標権侵害の場面でこれに反して両者
の一体性を主張することは禁反言の原則に反して認められるべきではない。
【一審原告の主張】
一審被告らが指摘する事情は,いずれも特許法や実用新案法における消尽の
成否に関するものである。消尽の成否においては,特許権者が特許製品を販売し
た際の条件(特許権者の利得の機会の有無)が問題となる一方,商標法における
「指定商品についての使用」においては,広く需要者(商標権者から純正品を購
入した者に限られない)が当該商標についてどの範囲の商品の出所を表示して
いるものと認識するかが問題となるから,それぞれの「一体性」に関する議論が
異なるのは当然であり,一審原告の主張が,禁反言の原則に反するものではない。
ウ 争点(4)ウ(商標法26条1項6号該当性),エ(実質的違法性)に
ついて
【一審被告らの主張】
以下のとおり,一審被告らの行為は,本件各商標の出所表示機能及び品質保証
機能を冒用したり,侵害したりするものではない。
(ア) 原判決が判示するとおり,一審被告らは被告製品が非純正品で
あることを明示・説明して販売していた上,被告製品はインターネット等により
販売されていて店頭販売は行われていなかったから,購入者が被告製品の芯管
に付された本件刻印を見て,一審原告を出所とする一審原告の品質保証が及ぶ
商品であると誤認することはあり得ず,本件各商標の出所表示機能及び品質保
証機能は何ら害されていない。
また,被告製品は,販売対象者を調剤薬局とするいわゆるBtoB製品(プロ
仕様製品)であって,一般消費者向けのいわゆるBtoC製品であるインクやト
ナーのカートリッジの事案とは異なり,出所の混同は生じていない。
(イ) 薬剤分包装置を用いて行われる「調剤」は薬剤師のみがなし得る
行為であり(薬剤師法19条,健康保険法64条),薬剤分包装置で使用される
薬剤分包用ロールペーパをどこから購入するかを決定するのも薬剤師であるの
が通常であるところ(乙113),調剤薬局1施設当たりの薬剤師の数はごく少
数であること(乙114)からすると,調剤薬局において日々薬剤分包装置を使
用して調剤を行う薬剤師の間では,当該調剤薬局で使用している薬剤分包用ロ
ールペーパの仕入先に関する情報が共有されていると考えるのが自然である。
また,調剤薬局の開設者は,一審被告らが被告製品を販売していた当時の薬事
法9条1項及び同法施行規則12条の2第1項に基づき,業務に関する手順書
を作成する義務を負っており(乙115) 薬剤分包装置は
, 「調剤用設備・機器」
に他ならないから,調剤薬局においてその「保守」を適切に行うためには,「点
検」の際に薬剤分包装置本体に異常が発見された場合には一審原告に,薬剤分包
用ロールペーパに異常が発見された場合には一審被告らに問合せを行う旨の手
順が記載されていて然るべきである。このような手順書が周知されていれば,被
告製品の販売後に薬剤分包装置を使用する薬剤師が被告製品の芯管に付された
本件刻印を視認したとしても,被告製品は一審被告らを出所とする一審原告の
品質保証が及ばない商品であると正確に理解するはずであり,使用者の段階で
本件各商標に係る出所表示機能等が害されることはない。
仮に上記手順書の周知不徹底等により販売後の混同が生じたとしても,購入
者内部における事情にすぎず,このことを理由に当該再生品に付されている純
正品メーカーの商標に関する出所表示機能が害されたものと認めることはでき
ない。
【一審原告の主張】
(ア) 被告製品がBtoB製品であるという主張は,本件補充書に記
載されたものであって,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであ
る。
(イ) 被告製品においては,本件刻印が,「紙類」,「薬剤分包機用分
包紙」である被告製品の出所を表示する態様で用いられている。
薬局を含む被告製品の購入者の内部において購入担当者と実際の使用者が分
離することも少なくなく,被告製品に不具合があると,一審原告の信用に悪影響
が及ぶから,一審被告らから被告製品を購入した薬局等における実際の使用者
についても「需要者」に含まれると解すべきであるところ,使用者は,通常,一
審被告らのウェブサイトを見る機会がないから,そこにいかなる表示があろう
と使用者による誤認混同を防止するための措置としての意味はない。
また,薬局の中には個人営業であるか,法人であっても,実質的な家族経営の
小規模店舗も多いところ,これらの店舗の経営者の商品選択におけるブランド
の影響力は,消費者におけるそれと特に変わりはないし,被告製品のような非純
正品の実際上の購入者は上記のような小規模事業者に限られるから,購入者が
事業者であるか消費者であるかを区別する意味はない。
さらに,一審被告らは,調剤薬局の平均職員数や業務手順書の作成義務に言及
し,薬剤分包用ロールペーパの仕入先や問合せ先が調剤薬局内で共有されてい
たと主張するが,いずれも推測の域を出ないものであり,仮にそのような調剤薬
局が一部に存在していたとしても,およそ出所混同のおそれがないといえない
限り,商標権侵害は肯定される。
以上から,本件各商標は,出所表示機能を発揮する態様で使用されており,商
標法26条1項6号は適用されないし,実質的違法性が欠如するということも
ない。
(6) 争点(6)(本件各商標権に基づく差止めの必要性)についての補充主張
【一審原告の主張】
以下のような事情からすると,原判決が差止めの必要性を否定して差止請求
を棄却したことは誤りである。
ア 被告製品の販売中止について
一審被告らが被告製品の販売を中止したのは,刑事事件の関係で捜索差押え
を受けたためであって,商標権侵害を認めて自発的に販売を中止したものでは
ない。一審被告らは,商標法違反の刑事裁判において,上告審に至るまで商標権
侵害であることを争っており,本件訴訟でも未だに商標権侵害の事実を争って
いるから,販売を中止したからといって,侵害のおそれが否定されるものではな
い。
イ 有罪判決を受けたことについて
一審被告ネクスト及びその代表者は,刑事事件中及びその終了後も,自己の行
為が違法であることを前提に行動したことは一切なかった。したがって,本件訴
訟において商標権侵害が認定されたとしても,差止命令がないと,そのことをも
って販売が禁止されていないと主張し,早晩被告製品の販売活動を再開するお
それが非常に高い。
ウ 販売再開の容易性について
閉鎖された一審被告らのウェブサイトは容易に再開・復元が可能なものであ
るし,営業マンが病院や調剤薬局を回って注文を得るという被告製品の販売形
態からすると,必ずしもウェブサイトは必要ではない。
また,被告製品は,その原材料や構造からして,一審被告らが,自社又は以前
に被告製品と同様の製品を生産していた他の業者に委託することにより,直ち
に生産・販売を再開することが可能なものである。
【一審被告らの主張】
ア 被告製品の販売中止について
一審被告らは,自発的に4年以上の長期間にわたり被告製品の販売を中止し
ているから,商標権侵害のおそれはない。
イ 有罪判決について
一審被告ネクストは,自己の意見を主張しつつも裁判所の判断を尊重すると
いう考えでいるから,仮に本件訴訟で商標権侵害が成立するとの判断がされて
も,それが理由中の判断で示されれば足りる。
ウ 販売再開の容易性について
ダブルタイプの薬剤分包用シートの生産には相当な設備と人員が必要であっ
て,被告製品の生産の再開は容易ではない。一審被告らは現在,被告製品の在庫
や半製品を保有していない。なお,一審被告らは,営業マンによる営業活動はし
ていない。
(7) 争点(7)(一審原告の損害)及び争点(9)(不当利得の存否及びその額)
についての補充主張
ア 争点(7)ア(特許法102条2項又は商標法38条2項による損害額
の推定)及び争点(9)(不当利得の存否及びその額)について
【一審被告らの主張】
①被告製品の購入者は,本件刻印とは全く無関係に被告製品を購入しており,
仮に本件刻印を抹消したり,完全な打ち消し表示をしたりしても販売数量に影
響はなかったと考えられること,②販売後の調剤薬局の使用者による本件刻印
の「確認」も,一審被告らによる被告製品の販売可能性や一審原告による利益の
獲得可能性には何の影響も与えないこと,③被告製品の購入者は被告製品が純
正品より安価であったために購入していたことからすると,本件においては,一
審被告らの商標権侵害行為により一審原告に損害が発生したということはなく,
「侵害行為がなかったならば利益が得られたという事情」が存在することが必
要であるとする知財高裁平成24年(ネ)第10015号同25年2月1日特別
部判決に照らすと,商標法38条2項に基づく損害額の算定を行う前提を欠い
ている。また,一審原告に損失が生じていないから不当利得返還請求権も認めら
れない。
【一審原告の主張】
(ア) 一審被告らの上記主張は,本件補充書に記載されたものであっ
て,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
(イ) 商標権者たる一審原告による日本国内の使用行為があれば,
「侵
害行為がなかったらならば利益が得られたという事情」の存在が 否定されるこ
とはなく,不当利得返還請求の基礎となる「損失」が存在しないということもで
きない。
イ 争点(7)ウ(推定の覆滅)について
【一審被告らの主張】
本件刻印は,仮に視認できたとしても取り立てて目立つとはいえず,顧客吸引
力は決して高くはない。また,被告製品の販売に当たり購入者があらかじめ本件
刻印を視認する機会はないから,本件刻印の当該顧客吸引力が発揮される余地
はない。
したがって,仮に本件において商標法38条2項により損害額を算定すると
しても,同項による損害額の推定はその大部分(少なくとも99パーセント)が
覆滅されるべきである。
【一審原告の主張】
(ア) 一審被告らの上記主張は,本件補充書に記載されたものであっ
て,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
(イ) 本件刻印は,使用時に必ず目に触れるものであって,それが目立
たないことを前提とする一審被告らの主張は前提を欠く。
薬剤分包用ロールペーパは消耗品であって,継続的に購入して利用するもの
であるところ,ある利用者が初めて購入するときに本件刻印を目にすることが
なかったとしても,その後被告製品の購入を継続するかどうかを決定する上で,
被告製品に本件刻印が存在するかどうかは非常に大きな心理的影響力を持つ。
また,本件訂正発明の実施品たる被告製品の場合,耳ずれや裂傷を生じること
なく薬剤を分包するために必要な機能は芯管にあるから,芯管に薬剤分包機メ
ーカーである一審原告の商標が付されていることは,購入者に対し,品質面での
強い信頼感をもたらす。
したがって,推定の覆滅に関する一審被告らの主張に理由はない。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は,一審原告の各請求は,一審被告ネクストに対して損害金415万
6644円,一審被告らに対して連帯して,損害金71万6378円,一審被告
ネクストに対して不当利得金82万7834円,一審被告ヨシヤに対して不当
利得金47万4242円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で
理由があり,その余の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は以下の
とおりである。
なお,一審原告は,一審被告らが令和元年5月29日に提出した本件補充書に
おいてした前記各主張について,時機に後れた攻撃防御方法として却下される
べきであると主張するが,本件訴訟の経過から訴訟の完結を遅延させるものと
は認められないから,時機に後れた攻撃防御方法として却下しないこととする。
1 争点⑴(被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するか。)について
(1) 本件明細書には,本件訂正発明に関し,次のような開示があることが認
められる。
ア シート供給部(給紙部)から熱融着性分包紙のシートをロール状に巻
いたロールペーパのシートを引き出して,シートを2つ折りにすると共にその
間に薬剤を供給した後,分包部でシール装置によりシートを幅方向と両側縁部
とを帯状に加熱融着して薬剤を分包する薬剤分包装置においては,シートが周
縁等を融着する際に正確に2つ折りされず,少しずれた状態で 融着されること
のないように常に一定の張力でシートを引き出すのが好ましいが,実際にはシ
ートの引出量に応じてロール径が変化し,引出張力も少しずつ変動するという
問題があった(【0001】~【0003】)。このため,シートの使用による
巻量の変化を径方向に配置した巻径検出センサで段階的に検出し,この巻径検
出センサの信号により電磁ブレーキ の電磁力を調整してロール径が小さくな
るにつれて段階的にブレーキ力を弱めることにより,ロール径の変化が生じて
も張力がほぼ一定となるように調整するシート張力調整装置が従来から提案さ
れている(【0004】)。しかし,従来のシート張力調整装置では,シートの
使用による巻量の変化を巻径検出センサで段階的に検出する方式を採用してい
るため,検出センサのランクが切り替わる径になると,芯管軸の偏心,シートの
重量,巻き歪みなどの原因により電磁ブレーキのブレーキ力ランクが1回転毎
に上下に変動するバイブレーション現象が生じ,張力変動により,分包部でシー
トを2つ折りした際にシートの縁部が正確に重ならない,いわゆる耳ずれが生
じ,包装不良部分が生じたり,また,ブレーキ力ランクが急激に変動するため,
幅方向に裂傷が生じることもあった(【0005】,【0006】)。
イ 本件訂正発明は,従来の薬剤分包装置における問題点に留意して,極
薄のシートを巻いたロールペーパの巻状態によるロールペーパ直径の 微妙な変
動による影響で制御すべき段階的に選択されるブレーキ力のレベル変動を生じ
ることなく,各段階毎に的確にブレーキ力を設定し,ロールペーパの直径に応じ
た適正な張力を安定して給紙部に与え,シートに耳ずれや裂傷が生じたりせず
に分包シートで薬剤を分包することのできる薬剤分包装置に用いられ,分包装
置の給紙部における角度センサに対し回転角度データを与えることのできる薬
剤分包用ロールペーパを提供することを課題とし,上記課題を解決するための
手段として,非回転に支持された支持軸の周りに回転自在に中空軸を設け,中空
軸にはモータブレーキを係合させ,中空軸に着脱自在に装着されるロールペー
パのシートを送りローラで送り出す給紙部と,シートを2つ折りしその間にホ
ッパから薬剤を投入し,薬剤を投入されたシートを所定間隔で幅方向と両側縁
部とを帯状にヒートシールする加熱ローラを有する分包部とを備え,ロールペ
ーパの回転角度を検出するために支持軸に角度センサを設け,分包部へのシー
ト送り経路上でシート送り長さを測定する測長センサを設け,ロールペーパを
上記中空軸に着脱自在に固定してその固定時に両者を一体に回転させる手段を
ロールペーパと中空軸が接する端に設け,両センサの信号に基づいてシート張
力をロールペーパ径に応じて調整しながら薬剤を分包するようにした薬剤分包
装置に用いられ,中空芯管とその上に薬剤分包用シートをロール状に巻いたロ
ールペーパとから成り,ロールペーパのシートの巻量に応じたシート張力を中
空軸に付与するために,支持軸に設けた角度センサによる回転角度の検出信号
と測長センサの検出信号とからシートの巻量が算出可能であって,その角度セ
ンサによる検出が可能な位置に磁石を配置して成る薬剤分包用ロールペーパの
構成を採用した(【0011】,【0012】)。
本件訂正発明の薬剤分包用ロールペーパは,中空芯管とこれに巻付けたロー
ルペーパとから成り,シート巻量が検出できる位置に配置した磁石を支持軸の
角度センサで検出してシート張力の調整を可能とした簡易な構成のロールペー
パであり,これを薬剤分包装置に用いることにより耳ずれや裂傷のない分包作
用を実現できるという効果を奏する(【0068】)。
(2) 構成要件Aの「用いられ」の意義について
本件訂正発明は,構成要件A~Dからなる「薬剤分包用ロールペーパ」に係る
発明であるところ(構成要件E) 構成要件Aには薬剤分包装置に関する事項が,

構成要件B及びDにはロールペーパ及びその中空芯管並びにロールペーパに配
設される複数の磁石(以下,併せて「本件ロールペーパ等」という。)に関する
事項が,構成要件Cには薬剤分包装置及びロールペーパに関する事項が,それぞ
れ記載され,構成要件Aにおいて,ロールペーパと薬剤分包装置の関係につき,
前者が後者に「用いられ」るものとして記載されている。
本件訂正発明は,「薬剤分包用ロールペーパ」という物の発明であると認めら
れるところ,物の発明の特許請求の範囲の記載は,物の構造,特性等を特定する
ものとして解釈すべきであること,「用いられ」が,構成要件Aの中で「・・・
ようにした薬剤分包装置に用いられ,」とされていることからすると,「用いら
れ」とは,本件ロールペーパ等が構成要件Aで特定される薬剤分包装置で使用可
能なものであることを表していると解される。
(3) 被告製品の構成要件充足性について
ア 前記(2)を前提に検討すると,構成要件Aのうち「ロールペーパの回
転速度を検出するために支持軸の片端に角度センサを設け」との記載は,本件ロ
ールペーパ等の「複数の磁石」につき,支持軸の片端に設けられた角度センサに
よる検出が可能な位置に配設されるものであることを特定するものと理解でき,
また,構成要件Aのうち「ロールペーパを上記中空軸に着脱自在に固定してその
固定時に両者を一体に回転させる手段をロールペーパと中空軸が接する端に設
け」との記載は,本件ロールペーパ等について,薬剤分包装置の中空軸と接する
中空芯管の端に,中空軸と着脱自在に固定する手段を設けることで,そのような
態様で回転させられるものであることを特定するものと理解できる。
そうすると,本件訂正発明に係る薬剤分包用ロールペーパの技術的範囲は,構
成要件B~Eと,構成要件Aによる上記特定に係る事項によって画されるもの
であるから,被告製品が構成要件A~Eで特定される本件ロールペーパ等とし
ての構成を備えていて,構成要件Aで特定される薬剤分包装置に利用可能なも
のについては,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するものと認められ,
被告製品が構成要件Aで特定される薬剤分包装置に実際に使用されるか否かと
いうことは,上記構成要件充足の判断に影響するものではないと解される。
イ(ア) 被告製品は,前提事実(6)のとおりの構成を有するところ,弁論
の全趣旨によると,被告製品の構成a,b,c,dは,本件訂正発明の構成要件
B,C,D,Eをそれぞれ充足するものと認められる。
(イ) 弁論の全趣旨によると,被告製品の中空芯管内部に配設された
3個の磁石は,支持軸の片端に設置された角度センサによる信号の検出が可能
な位置に配設されたものであり,また,被告製品は,薬剤分包装置の中空軸に着
脱自在に装着されて,固定時に中空軸と一体となって回転し得るものであって,
その手段がロールペーパと中空軸が接する端に設けられているものと認められ
る。
(ウ) したがって,被告製品は,本件訂正発明の構成要件B~Eと構成
要件Aによる上記アの特定に係る事項を充足し,構成要件Aで特定される薬剤
分包装置で使用可能なものであると認められる。
ウ よって,被告製品は,本件訂正発明の技術的範囲に属するものと認め
られる。
(4) 一審被告らの主張について
ア 一審被告らは,本件訂正発明が用途発明であり,また,本件訂正発明
において保護されるべき特徴的部分は,薬剤分包装置側の構成又は機能である
ことなどから,被告製品が構成要件Aを充足する薬剤分包装置に用いられては
じめて本件特許権に対する侵害が成立すると主張する。
しかし,前記(2)で検討したとおり,本件訂正発明は用途発明ではない。また,
本件訂正発明の技術的意義は,前記(1)認定のとおりであって,本件訂正発明の
特徴的部分が薬剤分包装置のみにあるということはできない。
したがって,一審被告らの上記主張は採用することができない。
なお,特許庁の審査基準(甲22)も,サブコンビネーション発明について用
途発明と同様に解釈することを求めているものとは解されない。
イ 一審被告らは,一審原告は,本件補正に際して,本件訂正発明の技術
的特徴が構成要件Aにあることを主張していたと主張する。
一審原告は,本件補正に際しての意見書(乙9)において,本件補正に先立つ
拒絶理由通知の引用文献記載の技術に対して,「本願発明では『回転角度と測長
センサの検出信号を検出してロールペーパの巻量が検出可能な位置に配置され
た磁石』の構成を有し,かつ『角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不
一致により上記中空軸に着脱自在に装着されたロールペーパと上記中空軸との
ずれを検出するようにした』薬剤分包装置に用いられることを前提とするロー
ルペーパについての発明であり,部分的な構成部材の抽象的,総論的な構成が公
知,周知であるという理由だけで,本願発明の全体の構成が全て否定されること
にはならないと考えます。」と主張しているものの,そのことから直ちに一審原
告が構成要件Aを充足する薬剤分包装置で用いられることが必要であるとまで
主張していたとは解されないから,一審被告らの上記主張を採用することはで
きない。
ウ 一審被告らは,原審裁判所の暫定的見解について主張するが,原審裁
判所の暫定的見解によって当審の判断が左右されないことは明らかである。
2 争点⑵(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。)に
ついて
(1) 争点⑵ア(補正の際の新規事項の追加に当たるか。)について
ア 一審被告らは,本件補正のうち,出願時の請求項1について,「シー
トを2つ折りし」を「2つ折りされたシート」と補正したことは,薬剤分包装置
外であらかじめ折り畳まれたシートという新たな技術的事項を導入するもので
あり,本件出願の願書に最初に添付した明細書(乙6,以下「出願時明細書」と
いう。)に記載した事項の範囲内においてしたものといえないから,本件特許に
は,補正要件違反の無効理由(特許法123条1項1号)がある旨主張する。
そこで検討するに,出願時明細書【0018】には,「分包部は,三角板4で
2つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後,ミシン目カ
ッタを有する加熱ローラ6により所定間隔で幅方向と両側縁部と を帯状にヒー
トシールするように設けられている。」との記載があるが,同記載がシングルタ
イプのシートのみを前提としたものであるとは直ちには解されない上,その他,
出願時明細書によっても,本件特許がシングルタイプのシートのみを前提とし
たものであるとか,ダブルタイプのシートが特に排除されているといった こと
は読み取れない。
また,証拠(甲42の1~12,甲43~48)及び弁論の全趣旨によると,
薬剤分包装置に使用されるロールペーパとして,あらかじめ2つ折りされたダ
ブルタイプのシートが存在することは,原出願日(平成9年9月22日。 「原
以下
出願日」という。)の時点で,技術常識であったことが認められる。
以上を考え併せると,出願時明細書【0018】の「分包部は,三角板4で2
つ折りにされた際にホッパ5から所定量の薬剤が投入された後・・・」との記載
は,薬剤投入が可能なように薬剤分包用シートをV字状に折り曲げた状態を指
し,分包部の三角板4によってシングルタイプのシートに折り目を付けてV字
状にし,その間に薬剤が投入される場合だけでなく,分包部に搬送される前にあ
らかじめ2つ折りに折り畳まれたダブルタイプのシートを開いてV字状にし,
その間の開口部に薬剤が投入される場合も想定した記載であると解することが
できる。
そうすると,出願時の請求項1の「シートを2つ折りし」を「2つ折りされた
シート」と補正することは,新たな技術的事項を導入するものではなく,同補正
は,出願時明細書に記載した事項の範囲内のものであると認められるから,一審
被告らの上記主張は理由がない。
イ 一審被告らは,本件訂正発明は「耳ずれ」という技術的課題を解決す
るために創作されたところ,同課題はシングルタイプのロールペーパにおいて
のみ生じ得るものであるから,出願時明細書【0018】は,シングルタイプの
シートを前提としたものと解すべきであると主張する。
しかし,前記1(1)のとおり,本件訂正発明の課題は,ロールペーパの直径に
応じた適正な張力を安定して給紙部に与えてシートを分包部に供給することに
より,シートに耳ずれや裂傷が生じることなく薬剤を分包することを可能とす
るというものであり,この課題に関しては,給紙部から分包部に送られてくるシ
ートがあらかじめ2つに折り畳まれたダブルタイプであっても,折り畳まれて
いないシングルタイプであっても差は生じないものと認められる。
したがって,一審被告らの上記主張は上記アの認定判断を左右するものでは
ない。
(2) 争点⑵イ(サポート要件違反に当たるか。)及び争点⑵ウ(明確性を欠
くか。)について
ア 前記(1)で検討したとおり,本件訂正発明の「2つ折りされたシート」
との構成は,シートを折り畳むことを指すものではなく,シートがあらかじめ装
置外で2つに折り畳まれていたか(ダブルタイプ)否か(シングルタイプ)にか
かわらず,薬剤分包用シートが,薬剤投入が可能なようにV字状に折り曲げられ
た状態を指すものと理解できるところ,当業者は,「2つ折りされたシート」と
の文言に加えて,前記(1)でみた本件明細書の記載や原出願日当時の技術常識か
ら,構成要件Aにいう「2つ折りされたシート」が上記のような意味であること
を明確に理解することができ,かつ,このことは,本件明細書の発明の詳細な説
明に記載されているということができる。
したがって,本件訂正発明の「2つ折りされたシート」については,サポート
要件違反に当たらないし,明確性を欠くこともない。
イ 一審被告らは,本件明細書【0012】,【0018】はシングルタ
イプの薬剤分包用シートについての記載である上,本件では「2つ折りされるタ
イミング」が問題になっていると主張する。
しかし,上記アのとおり,本件明細書にシングルタイプの薬剤分包用シートの
みが記載されているということはできず,「2つ折りされるタイミング」として
は,シートがあらかじめ装置外で2つに折り畳まれていたか否かにかかわりな
いものである。
(3) 争点⑵エ(分割要件違反に当たるか。)について
ア 実施形態について
一審被告らは,本件明細書に記載された実施形態は,第1実施形態と第2実施
形態が混在したものであり,原出願明細書の範囲内にないと主張するので,以下,
検討する。
(ア) 原出願明細書に記載された実施形態について
原出願においては,①測長センサを用いたシート張力調整方法(請求項1,2。
第1実施形態)及び②測長センサ及び角度センサを用いたシート張力調整方法
(請求項3~5。第2実施形態)の二つが特許請求の範囲とされており,第1実
施形態については原出願明細書【0028】~【0042】に,第2実施形態に
ついては,同【0043】~【0081】に,詳細な説明がある。
これらの説明によると,両実施形態は,いずれも,「ロールペーパの直径を単
純に(機械的に)4段階に分け,この直径が各段階に達した時点でモータブレー
キを変化させて張力を調整する。」方法である点で共通するものの,直径が各段
階に達した時点を計測するのに,第1実施形態は,測長センサのみで計測するの
に対し,第2実施形態は測長センサ及び角度センサで計測するものであって,両
実施形態の構成は混在し得ないものである。
(イ) 本件明細書に記載された実施形態について
本件特許は,原出願から分割出願されたものであるところ(乙11),本件明
細書【0024】~【0031】には,「測長センサの信号と,上記回転角度セ
ンサの信号とからロールペーパRの包装シートSの繰出量を正確に算出してロ
ールペーパRの巻直径の変化に対応したブレーキ力の調整をし張力調整を適正
に行」う(同【0024】)という形態が記載されており,これは原出願の第2
実施形態における張力調整方法と同じである。
本件明細書では,これに続いて,【0032】~【0038】(「なお,図8
では」より前)に,ロールペーパの直径を4段階に分け,この直径が各段階に達
したことを計測するのに測長センサのみで行う態様が記載されているところ,
これは,原出願の第1実施形態に対応するものである。そうすると,この記載は,
上記の本件明細書【0024】~【0031】における構成(原出願の第2実施
形態)とは異なる,参考的な計測の構成を記載したものと理解できる。そして,
本件明細書【0038】(「なお,図8では」以降)~【0067】は,原出願
の第2実施形態(原出願明細書【0043】~【0081】)に即した記載であ
り,全体として,本件明細書に記載された実施例は,原出願の第2実施形態であ
ると把握できる。
したがって,本件明細書に記載された実施形態について,原出願明細書からみ
て新たな技術的事項が導入されているとはいえない。
イ 「発明の属する技術分野」について
原出願明細書【0001】には,「シートの張力をロールペーパの径の変化に
応じて段階的に調整する」と記載され,本件明細書【0001】には,「シート
の張力を調整しながら給紙部からシートを送り分包部で薬剤を分包する」と記
載されている。一審被告らは,原出願明細書の「ロールペーパの径の変化に応じ
て」という部分が本件明細書では削除されており,シート張力の調整方法の限定
がなくなり,発明の対象が広がったと主張する。
しかし,本件明細書【0004】の「上記シートロールの径の変化が生じても
張力がほぼ一定となるように調整する」という記載や,【0011】の「ロール
ペーパの直径に応じた適正な張力を安定して給紙部に与え」という記載 からす
ると,本件訂正発明もロールペーパの径の変化に応じてシートの張力を段階的
に調整する発明であると認められるから,原出願明細書からみて,新たな技術的
事項が導入されているとはいえず,一審被告らの主張は採用できない。
ウ 「発明が解決しようとする課題」について
一審被告らは,本件明細書【0008】~【0011】につき,原出願明細書
にはない記載が加筆されていると主張する。
(ア) この点,「一方,薬剤分包装置に用いられるロールペーパは,上
述したグラシン紙やセロポリ紙の30μm程度の極薄のシートを中空芯管の外
周にロール状に巻き付けて形成され,その長さは一般に300〜500mとか
なり長尺である。このようなロールペーパの巻径の変化を検出する上記巻径検
出センサによる方法以外の方法として,ロールペーパを装着する回転支持軸上
に支持軸の回転数を検出するセンサを取付ける方法,あるいはロールペーパの
中空芯管の端に突出部を設け,突出部に設けたマークを光センサで読取る方法
などが考えられる。 とする本件明細書
」 【0008】について,原出願明細書【0
007】,【0030】,【0033】には,ロールペーパの材料としてグラシ
ン紙やセロポリ紙があり,その厚みが30μm程度のものも存在すること,ロー
ルペーパの芯管が中空芯管であり,ロールペーパの長さが300m~500m
であることが記載されている。
また,原出願明細書【0054】の「図示のように,包装シートの繰出量1を
繰出す際に(a)のように巻量半径が大きければ角度センサのパルス数は少なく、
(b)のように巻量半径が小さければパルス数は多くなる。・・・」との記載に
接した当業者は,ロールペーパの回転数を検出することで,ロールペーパの巻径
を把握することができる と理解する ところ,回転数を検出する ための方法は
様々なものが考えられ,その一つとして,回転支持軸上に支持軸の回転数を検出
するセンサを取付ける方法があり得ると理解するものと認められる。
そして,原出願明細書【0048】,【0049】には「ロールペーパの中空
芯管の端に突出部を設け,突出部に設けたマークを光センサで読取る方法」が記
載されている。
以上からすると,本件明細書【0008】は,原出願明細書からみて新たな技
術的事項を導入するものとはいえない。
(イ) 次に,「しかし,回転支持軸上のセンサではロールペーパのシー
トを繰り出す際の張力の程度によっては回転支持軸と中空芯管との間に回転の
ずれが生じることがあり,ロールペーパの回転を正確に検出するためにはロー
ルペーパ自身の回転を直接検出する必要があり,回転支持軸上のセンサによる
方法は必らずしも(判決注:必ずしもの誤記と認める。)適当ではない。」とす
る本件明細書【0009】について,原出願明細書【0071】の「しかし,上
述した各直流電圧によるモータブレーキ20の回転抵抗が適当でなく,例えば
ある張力レベルN=2において張力がやや強過ぎたとするとロールペーパRと
芯管Pが一体となって強く回転し,例えば磁石16による強磁性体17への吸
着固定位置がずれたりすると,ホール素子センサ25による信号は各22.5°
の角度ずつのパルス信号を発するが,近接スイッチ26によるパルス信号は上
記ずれによって同じ位置で2つが重なり,次の角度位置ではパルス信号が出な
いということがある。」という記載に接した当業者は,中空芯管と回転支持軸が
張力によってずれることがあるため,ロールペーパの回転を正確に検出するた
めのセンサを,回転支軸上に設けることは必ずしも適当ではないと理解するも
のと認められる。したがって,本件明細書【0008】は,原出願明細書からみ
て新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
(ウ) そして,「又,中空芯管の端に突出部を設ける方法は,上記のよ
うな長尺のロールペーパは全体としてかなりの重さとなるため,回転支持軸へ
の装着などの操作が重く,操作時に突出部を周囲の機器に当てて損傷させる虞
れがあり,突出部を設ける方法は好ましくない。 とする本件明細書
」 【0010】
について,上記(ア)のようにロールペーパが一般的に300〜500mとかなり
長尺なものであることからしてもロールペーパが相当の重量を要するものであ
ると容易に推認できる上,証拠(甲42の1~12,甲43~48)及び弁論の
全趣旨によると,原出願日当時,既に多数のロールペーパが発売されており,当
業者としては,一般的なロールペーパの重量については当然に知っていたと認
められる。そうすると,ロールペーパが重くて扱いにくく,そのために突出部が
あると損傷させやすいから突出部を設けるべきではないとする本件明細書 【0
010】で新たに加えられた上記記載は,当業者にとって自明なことを述べた部
分であると認められ,原出願明細書との関係で新たな技術的事項を導入するも
のとはいえない。
(エ) 最後に,本件明細書【0011】について,原出願明細書【00
09】に比して,「シートに耳ずれや裂傷が生じたりせずに分包シートで薬剤を
分包することのできる薬剤分包装置に用いられ,分包装置の給紙部における角
度センサに対し回転角度データを与えることのできる薬剤分包用ロールペーパ 」
という記載が追加されていると認められる。しかし,原出願明細書【0004】
~【0006】,【0020】,【0022】,【0044】,【0046】,
【0052】からすると,原出願明細書には「シートの縁部がずれたり裂傷が生
じることがない薬剤分包装置に用いられ,分包装置の給紙部に支持され,給紙部
の支持軸1における角度センサであるホール素子センサ25に対して角度デー
タを与えることのできる磁石24を芯管Pに設けたロールペーパR」が記載さ
れているものと認められ,本件明細書【0009】に新たに追加された上記記載
は,原出願明細書との関係で新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
エ 「発明の作用効果」について
一審被告らは,「この場合,ブレーキ力を段階的に変化させてもその切替えに
よる張力の変化によって耳ずれや裂傷が生じない範囲内でブレーキ力が変化す
るようにブレーキ力の各ランクが順次大きい方から小さい方へ切替えられるよ
うになっているから,従来のようにロールペーパの巻径をセンサで直接検出す
る方式では巻径の不均等な巻きによりブレーキ力のランク切替え直径付近でブ
レーキ力の各ランクが急激に上下に変動するような不都合はその制御方式の違
いにより生じることはない。」とする本件明細書【0015】について,原出願
明細書にない発明の作用効果に関する記載が加筆されていると主張する。
しかし,原出願明細書【0005】,【0006】,【0033】,【001
7】の記載に接した当業者は,原出願明細書には,巻量の変化により段階的にブ
レーキ力を切り替えることで,従来あったような不均等に巻かれたロールペー
パの直径の微妙な変化によるバイブレーション現象によって急速な張力変動が
生じることを防止し,シートのずれや裂傷が生じないようにする発明が記載さ
れていると認識すると認められ,本件明細書【0015】は,原出願明細書から
みて新たな技術的事項を導入するものとはいえないから,一審被告らの主張は
採用できない。
オ 当審における一審被告らの補充主張について
一審被告らは,①原判決は,本件特許が原出願の請求項3~5に基づき分割出
願されたと認定しているところ,原出願の請求項3~5と本件訂正発明 とを比
較すると,本件訂正発明では,原出願とは異なり,ブレーキ力の制御が具体的に
特定されておらず,権利範囲が広くなっている,②原出願明細書【0051】と
異なり,本件訂正発明では角度センサの信号とずれ検出センサの信号との不一
致の検出方法の制限がなくなり,検出される「ずれ」もロールペーパと中空軸と
のずれとなっている,③本件明細書【0008】~【0011】が,原判決が認
定するような背景技術であると認めるに足りる証拠はないと主張する。
しかし,上記①について,本件特許は,原出願全体から分割されたものであり,
原出願の請求項3~5に基づき分割されたものではないから,一審被告らの上
記主張はその前提において採用することができない。また,本件訂正発明につい
て,請求項1の「角度センサ及び測長センサの信号に基づいてシート張力をロー
ルペーパ径に応じて調整しながら」という記載からすると,角度センサ及び測長
センサは,ロールペーパ径を測定して張力を調整するためのものであると理解
できるところ,原出願明細書【0108】の「第3の発明では測長センサと角度
センサによる検出信号に基づいてそのいずれか一方のセンサの所定量を基準と
し他方のセンサの信号変化により現巻量長さを求め,その巻量の直径に応じた
ブレーキ力を選択して張力調整するようにしたから,この方法では全巻量長さ
のデータが既知でなくても測定データから現巻量を得てその巻量に対応する直
径からブレーキ力を選択して張力調整ができ,従って第1の発明と同様に急激
な張力変動のないスムースな張力の調整ができるという利点が得られる。 との

記載に接した当業者は,原出願において,測長センサ及び角度センサは,いずれ
も,巻量を把握し,それを通じてロールペーパ径を測定するために設けられるも
のであって,その信号の利用形態や処理方法には原出願明細書の実施例に開示
されたもの以外にも種々のものがあり得ると理解すると認められ,一審被告ら
の上記主張は採用することができない。
また,上記②について,原出願明細書【0051】は実施例についての記載に
すぎず,原出願の【請求項5】では「・・・ロール支持筒に着脱自在に装着され
たロールぺーパとロール支持筒とのずれを,ロールペーパと支持軸間でロール
ペーパの回転角度を検出する角度センサと,ロール支持筒との固定支持板間で
ロール支持筒の回転角度を検出する角度センサの信号の不一致により検出する
ことを特徴とする・・・」とあり,角度センサの信号とずれ検出センサの信号と
の不一致の検出方法について特に制限されていない。また,原出願明細書【00
71】~【0073】,【0081】からすると,当業者は,原出願明細書【0
051】にある「繰り出しずれ」が生じる主な原因は,ロールペーパと中空軸と
のずれであると理解すると認められる。したがって,一審被告らの上記主張は採
用することができない。
そして,上記③について,本件明細書【0008】~【0011】で加筆され
た事項について,分割要件違反といえないことは,上記ウで検討したとおりであ
る。
カ 小括
以上より,分割要件違反及びそれに基づく新規性違反をいう一審被告らの主
張はいずれも採用することができない。
3 争点⑶(本件特許権の行使が権利濫用に該当するか)について
独禁法21条は,「この法律の規定は,著作権法,特許法,実用新案法,意匠
法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。 と規

定しており,一審原告が,一審被告らに対し,本件特許権侵害に基づく損害賠償
請求をすることは,上記「権利の行使」に当たるものである。この点,一審被告
らは,①取扱説明書(乙119) 「分包紙についてのお願い」
や と題する書面(乙
120)に表れているように一審原告による権利行使が一審原告製の薬剤分包
装置から非純正品を排除して市場を独占しようとする意図の下でされた 不当な
ものであること,②ライセンス交渉等をせずに差止請求をするというものであ
ること,③一審原告の侵害主張が本件訂正発明の特徴的部分を捨象するという
ものであること,④本件特許権の行使により一審原告製薬剤分包紙の使用済み
芯管を利用した再生品事業が一切不可能になることからすると,独禁法21条
の適用が除外され,権利濫用に該当する旨主張する。
(1) しかし,上記①,④に関して,一審被告らは,一審原告製の薬剤分包装
置について,中空芯管がないロールペーパを使用した場合や角度センサの信号
が得られない場合であっても良好な分包ができると主張し,同主張に沿う証拠
(乙32,乙33の1~3,乙34,乙35の1~3,乙39の1・2)を提出
している。一審被告らの上記主張が正しいとすれば,一審原告製の中空芯管を再
利用したり,本件特許権を侵害したりしないような形で非純正品の生産や販売
を行うことは可能であったといえ,本件特許権の行使により非純正品に関する
事業が完全に不可能になるとまでは認められないから,本件特許権の行使によ
り競争が制限される度合いが大きなものであるとは認められない。
また,取扱説明書(乙119) 「分包紙についてのお願い」
や と題する書面(乙
120)の記載についても,純正品の分包紙の使用を勧めるものにすぎず,それ
が直ちに競争を不当に制限するということはできない。
以上からすると,一審被告らの上記①,④の主張は,本件特許権の行使が権利
濫用となることを基礎付けるものとはいえない。
(2) 上記②について,一般にはライセンスを行わないことも「権利の行使」
に該当するものであるから,ライセンス交渉を経ずに差止めや損害賠償を請求
しても,そのことにより直ちに権利の行使が不当になるものではない。
(3) 上記③について,本件特許権の侵害が成立するためには,被告製品が構
成要件Aで特定される薬剤分包装置に実際に使用される必要があるという一審
被告らの主張を前提とするものであるが,その主張に理由がないことは前 記1
で検討したとおりである。
(4) 小括
以上からすると,一審被告らの上記主張は採用することができず,本件特許権
の行使が権利濫用となることはないというべきである。
4 争点(4)(本件各商標権の侵害が成立するか。)について
(1) 事実関係
証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実を認定することができる。
ア 一審原告は,調剤薬局等の顧客に,一審原告製の薬剤分包装置を販売
するとともに,これに適合する一審原告製のロールペーパを顧客に販売してい
るものであるところ,一審原告は,ロールペーパの中空芯管の所有権を一審原告
に留保しており,顧客がロールペーパに巻かれた薬剤分包用シートを使い切る
と,顧客から中空芯管を回収して,新たなロールペーパを顧客に販売するとして
いる(甲11,12,甲13の1,乙106,乙109の1~3,乙110)。
イ 一審被告らは,ウェブサイト,ダイレクトメール,FAX等の方法で
被告製品の宣伝をしており,それらを見た顧客から問合せがあると,一審被告ら
において働いていた従業員(なお,一審被告らにおいては,同一の従業員が,一
審被告ネクストの業務と一審被告ヨシヤの業務の双方を担うことがあった。 が

電話や電子メールで購入手続について顧客に説明し,顧客が,一審被告らから送
付された「注文書兼使用許可書」に,会社・薬局名,担当者名,住所,電話番号
を記入して返送するとともに(なお,一審被告らの従業員が顧客に代わって上記
「注文書兼使用許可書」に記入をすることもあった。),使用済みの一審原告製
中空芯管を送付して,被告製品を注文し,一審被告らは,「納品書」と共に被告
製品を納品するという形態で販売が行われていた(甲9,10,18,乙4,2
2,23,乙24の1・2,乙25の1・2,乙26,乙77の1・2,乙11
3,弁論の全趣旨)。
もっとも,上記の販売の形態は必ずしも徹底されたものではなく,一審被告ら
が顧客から中空芯管の送付を受けることなく,被告製品を販売することがあっ
た上,被告製品を転売することも特に禁じられていなかった(甲18,乙22,
弁論の全趣旨)。
ウ(ア) 平成25年2月時点の被告ネクストウェブサイトのトップペー
ジは別紙2のとおりであり,ページの下方に「■共通非純正分包紙のご案内」と
して,「分包機メーカー共通非純正分包紙を販売いたしております。使用済みお
客様所有の「分包紙用芯管」をお預かりし,共通分包紙を巻いてお届けいたしま
す。」と記載されていたほか,トップページの左上にある「非純正分包紙」をク
リックすると,非純正品を販売しているウェブページ(以下「非純正品ウェブペ
ージ1」という。)が表示される設定となっていた。非純正品ウェブページ1の
記載は別紙3のとおりであり,右上部に「純正ユヤマ分包紙はこちら→」との記
載があり,同ウェブページの下方で,「ユヤマ分包機対応」との記載に続いて各
種の製品が表示されていたが,同ウェブページ上では,非純正品であることが明
示されているわけではなく,また,非純正品の価格は,純正品より低額なもので
あった(甲9,乙23,弁論の全趣旨)。
(イ) 平成26年6月時点での被告ヨシヤウェブサイトについて,そ
のトップページには「※各種分包紙(非純正品)」との記載があり,同ページの
左側にある「ネットショップ yoshisya」というバナーをクリックすると,別紙
4にあるようなネットショップのトップページが表示され,さらに同ページの
左にある「商品カテゴリ」欄中の「非純正分包紙」をクリックすると,別紙5に
あるような非純正品の分包用紙を販売するウェブページ(以下「非純正品ウェブ
ページ2」という。)が表示される仕組みとなっており,非純正品ウェブページ
2では,「ユヤマ分包機対応分包紙」という記載と共に各種の製品が表示され,
左側に「商品カテゴリ」,「非純正分包紙」,「ユヤマ分包機用分包紙」などと
記載されていた(甲10,乙24の1・2)。
エ 一審被告ネクストは,被告製品の生産を当初はベストに,その後は白
馬三洋やセイエーに委託していた。白馬三洋及び白馬三洋から委託を受けた工
藤紙工は,一審被告ネクストから送付された一審原告製の使用済み中空芯管に
薬剤分包用シートを巻き付け,白馬三洋がこれにビニール包装を施して一審被
告ネクストに送付し,一審被告らにおいて顧客に販売しており,上記使用済みの
中空芯管の中には,色あせたものや錆びたものも含まれていたが,それらの中空
芯管を使って被告製品が生産されることもあった。
(甲15,52,53,乙22,40,50~52,79,80)
オ 被告製品は,一審原告製の使用済み中空芯管をそのまま利用して生
産されていたため,被告製品の中空芯管の端部プラスチックリングの表面には,
円周に沿って,本件商標1が1か所,本件商標2が2か所,型押しにより立体的
に表示されており,十分に視認可能なものである。白馬三洋が被告製品に包装を
施した段階ではこれらを視認することは必ずしも容易ではないが,包装は透明
なものであるから,これらの商標がおよそ視認できないということはなく,また,
包装を解くと,これらは視認可能な状態となる。
(甲19,甲21の1~3,乙5,16,20)
カ 平成26年11月,商標法違反の被疑事実により,一審被告ネクスト
に対する捜索差押えが行われ,一審被告らは,同月ころから被告製品の生産,販
売を中止した。一審被告ネクスト及びその代表者は,平成28年3月18日,山
口地方裁判所岩国支部において商標法違反による有罪判決(一審被告ネクスト
について罰金100万円及びロールペーパ352巻の没収,一審被告ネクスト
の代表者について懲役1年6月・3年間執行猶予)を受け,控訴棄却及び上告棄
却を経て,平成29年10月15日,刑が確定した。また,白馬三洋及びその代
表者も商標法違反で,平成27年6月9日,岩国簡易裁判所において,略式命令
による罰金刑に処せられた。
(甲18,甲27の1・2,乙17,121,弁論の全趣旨)
(2) 争点(4)ア(視認可能性があるかについて)
ア 本件各商標は,前記(1)オのとおり,被告製品を構成する一審原告製
の中空芯管に刻印されているもの(本件刻印)で,十分に視認可能なものであっ
たと認められる。
イ 一審被告らは,①本件刻印は非常に小さく不鮮明である上,中空芯管
と本件刻印がいずれも深い青色であって,視認が困難又は不可能である,②出荷
時の一審原告の製品及び被告製品はビニールで包装されており,本件刻印の視
認可能性はない,③被告製品は重く,持ち上げられて注視されることはない,④
取引過程で被告製品を視認できたという証拠がない,⑤仮に物理的に視認可能
であっても,視認困難であるから規範的に商標又はその使用とは評価できない
と主張する。
しかし,本件刻印は,上記のとおり十分に視認可能なものである。前記(1)オ
のとおり,ビニールで包装された状態では被告製品に付された本件刻印を視認
することは必ずしも容易ではないが,およそ視認できないということはないし,
また,包装を解くと,これらは視認可能な状態となるから,本件刻印は,流通過
程において視認される可能性があったということができる。被告製品が重く,持
ち上げられて注視されるかどうかは,上記認定を左右するものではない。
したがって,本件刻印は,商標としての機能を有していたものというべきであ
る。
(3) 争点(4)イ(指定商品の同一性)について
以下のとおり補正するほかは,原判決44頁22行目から45頁8行目に記
載のとおりであるからこれを引用する。
ア 原判決44頁22行目の冒頭に「(ア)」を加える。
イ 原判決45頁7行目から8行目「上記本件各商標の指定商品」を「本
件各商標の上記指定商品」と改める。
ウ 原判決45頁8行目の末尾に行を改めて以下のとおり加える。
「(イ) 一審被告らは,一審原告が別件訴訟で「芯管」と「シート」を区別し
た主張をして特許権の消尽を免れながら,本件訴訟の商標権侵害の場面で,「芯
管」と「シート」の一体性を主張するのは禁反言に反すると主張する。
しかし,本件各商標権侵害で問題なのは,需要者からみて,芯管と薬剤分包用
シートが一体であり,本件各商標が薬剤分包用ロールペーパの出所表示として
機能しているかどうかというものであって,別件訴訟における消尽の議論とは,
その要件も含めて全く異なるものであるから,本件訴訟における一審原告の主
張が禁反言に反するものとはいえない。」
(4) 争点(4)ウ,エ(商標法26条1項6号該当性及び実質的違法性)につ
いて
ア 前記(1)の認定事実や前記(2),(3)で検討したところからすると,一
審被告らは,本件各商標を,指定商品に含まれる「薬剤分包用ロールペーパ―」
(被告製品)に商標としての機能を果たすような態様で付していたのであるか
ら,一審被告らの行為は,商標権侵害行為に該当し,商標法26条1項6号は適
用されず,実質違法性にも欠けるところはないというべきである。
イ 一審被告らは,非純正品であることを明示して販売していたことや
購入者が調剤薬局であることなどからすると,購入者は被告製品が非純正品で
あること,すなわち,一審原告の製品ではないことを正確に認識しており,出所
表示機能や品質保証機能が害されていないから,商標法26条1項6号が適用
されるか,実質的違法性を欠き,商標権侵害が成立しないと主張する。
しかし,以下の(ア)~(オ)の各事情を考え併せると,購入者の全てが,被告製
品が非純正品であること,すなわち,一審原告の製品ではないことを正確に認識
していたとは認められず,一審被告らの上記主張はその前提を欠くものであっ
て,採用することができない。
(ア) まず,前記(1)イのとおり,被告製品については,ウェブサイト
のみならず,ダイレクトメールやFAX等による宣伝活動もされており,顧客が
一審被告らのウェブサイトを経由することなく被告製品を購入する場合もあっ
たと認められるところ,ダイレクトメールやFAXにおいて,どのような態様で
宣伝がされていたのかは証拠上必ずしも明らかではない。
(イ) 一審被告らは,顧客に対し,非純正品であることを説明していた
と主張するが,一審被告らの下で稼働していた従業員は,その点に関し,刑事事
件の公判廷において,「電話で口頭で説明するときに,『純正の紙と違うので』
と説明した。」,「電子メールで顧客に説明する際にも電話での説明の場合と同
様に非純正であることを顧客に説明したように思うが,よく覚えてない。」と曖
昧な供述をしている(乙4)上,同供述の裏付けとなるような顧客への対応マニ
ュアルや顧客に送付された電子メールといったようなものは何ら証拠として提
出されていないから,一審被告らの主張するような説明が常に顧客に対してさ
れていたとは認められない。
(ウ) 被告製品の購入を申し込むために顧客が一審被告らに対して送
付する「注文書兼使用許可書」についても,「非純正」の文字(乙25の1・2)
は,後から記載されるもので,常に記載されていたのかは証拠上明らかではない
し,また,「非純正」の文字が取り立てて大きく表示されたり,強調されたりし
ていないことからすると,仮に記載されていたとしても顧客がこれに気付かな
いこともあり得る。そして,前記(1)イのとおり,顧客から使用済み芯管の送付
を受けることなく,被告製品が販売された事例があることからすると,上記の
「注文書兼使用許可書」が常に使用されるものであったとも認められない。
納品書(乙26)についても,「分包紙はお客様からお預かりした芯で作りま
した。」とだけ記載されており,非純正品であることが明示されているわけでは
ない。
(エ) 前記(1)ウのとおり,一審被告らのウェブサイトには「非純正分
包紙」という記載があったものの,被告ネクストウェブサイトの非純正品ウェブ
ページ1では,「ユヤマ分包機対応」との記載に続いて各種の製品が表示されて
いるのみで,非純正品であることが明示的に記載されていなかった上,被告ヨシ
ヤウェブサイトの非純正品ウェブページ2でも,「ユヤマ分包機対応」という記
載と共に各種の製品が表示されており,「非純正分包紙」という記載が左欄に小
さく記載されているにすぎないことからすると,一審被告らのウェブサイトに
接した購入者の全てが,被告製品が非純正品であると正確に認識するとは認め
られない。
(オ) 購入者が調剤薬局であるからといって,その注意力が常に一般
消費者に比して高いとまではいえず,購入者の一人が,被告製品が非純正品であ
ると認識していたことがある(乙19,113)からといって,それにより全購
入者が同じ認識であったとは認められない。
なお,一審被告らは,調剤薬局の薬剤師の間では,当該調剤薬局で使用してい
る薬剤分包用ロールペーパの仕入先や問合せ先に関する情報が共有されている
と主張するが,上記(ア)~(オ)で検討してきたところによると,そもそも,調剤
薬局において,被告製品を非純正品(一審原告の製品でないもの)として購入す
るとは限らないというべきであるから,仕入先や問合せ先に関する情報が共有
されるかどうかは,本件の結論を左右するものではない。
(5) 小括
以上のとおり,一審被告らの行為は,本件各商標に係る権利を侵害するもので
ある。
5 争点(5)(本件各商標権の行使が権利濫用に該当するか)について
(1) 一審原告が本件各商標権に基づき一審被告らに対して損害賠償請求を
することは,独禁法21条にいう「権利の行使」に該当する。
(2) 一審被告らは,被告製品の販売により本件各商標の出所表示機能や品質
保証機能が害されることはほとんどない一方で,本件のような態様の商標権の
行使が認められてしまうと,一審原告製の中空芯管を再利用する非純正品事業
が不可能になり,需要者は,より安価な「非純正分包紙」を購入する機会を奪わ
れてしまう上,一審原告の競争制限及び市場独占の目的は,取扱説明書や「分包
紙に関するお願い」と題する書面から明らかであるから,一審原告らの本件各商
標権の行使に,独禁法21条の適用はなく,権利濫用に該当すると主張する。
しかし,本件各商標の商標としての機能が害されていたことは前記4のとお
りであって,その程度が軽微であったとはいえない。
また,前記3(1)で検討したとおり,本件各商標が付された一審原告製の中空
芯管を使用せずに,非純正品の生産や販売を行うことが不可能であったとはい
えないから,本件各商標権の行使により競争が大きく制限されるとは認められ
ない。
さらに,取扱説明書(乙119) 「分包紙に関するお願い」
や と題する書面(乙
120)が直ちに不当に競争を制限するものとはいえないことは,前記3(1)で
検討したとおりである。
(3) 以上からすると,一審被告らの上記主張は採用することができず,本件
各商標権の行使が権利濫用に該当するとは認められない。
6 争点(6)(本件各商標権に基づく差止めの必要性)について
以下のとおり補正するほかは,原判決46頁13行目から47頁1行目まで
のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決46頁13行目冒頭に「(1)」を加える。
(2) 原判決46頁13行目,24行目の「前記1(6)」をそれぞれ「前記4(1)
カ」と改める。
(3) 原判決46頁18行目から21行目までを以下のとおり改める。
「被告製品の販売中止から4年以上が経過したこと及び前記4(1)カのとおり
一審被告ネクストに対する判決でロールペーパが没収されたこと に弁論の全趣
旨を総合すると,現在,一審被告らは被告製品の在庫及び半製品を保有していな
いと認められる。」
(4) 原判決46頁23行目「考えられ,」を「考えられること,」と改める。
(5) 原判決46頁25行目の「けたのであるから,」を「け,このような有
罪判決を受けた一審被告ネクストやその代表者が,仮に近い将来に再び本件各
商標権を侵害した場合には,より厳しい刑事罰が科せられる可能性があること,
白馬三洋が前記4(1)カのとおり刑事責任を問われたことからすると,今後,一
審被告らが,一審被告らに協力してくれるベストや白馬三洋,セイエーのような
業者を探し出すのは必ずしも容易なことではないと認められることを総合する
と,」と改める。
(6) 原判決46頁26行目「(請求の趣旨1項ないし6項)」を削除する。
(7) 原判決47頁1行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(2) 一審原告は,一審被告らが商標権侵害を認めずに一貫してこれを争っ
ていること,生産,販売やウェブサイトを再開することが容易であることなどか
らすると,差止めの必要性があると主張する。
しかし,一審原告の上記主張を踏まえても,上記(1)の判断は左右されない。」
7 争点(7)(一審原告の損害)について
以下のとおり補正するほかは,原判決47頁3行目から50頁18行目に記
載のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決47頁11行目「被告ネクスト製品」を「被告製品」と改める。
(2) 原判決47頁13行目「消滅時効について(争点(5)イ)」を「争点(7)
イ(消滅時効の成否)について」と改める。
(3) 原判決47頁17行目「(甲16,17)」を「(甲16の1,甲17の
1)」と改める。
(4) 原判決47頁20行目から21行目「本件特許権の侵害及び本件各商標
権の侵害に係る損害及び加害者」 「本件特許権及び本件各商標権の侵害に係る

損害並びに加害者」と改める。
(5) 原判決47頁25行目「特許法102条2項,商標法38条2項に基づ
く損害額の推定(争点⑸ア)」を「争点(7)ア(特許法102条2項又は商標法
38条2項による損害額の推定)について」と改める。
(6) 原判決48頁1行目「(乙71,75,94)」を「(乙71の1~3,
乙75の1,乙75の2の1~133,乙75の3の1~104,乙94)」と
改める。
(7) 原判決48頁6行目「(乙66,72,73,76,88,95)」を
「(乙66,乙71の1~3,乙72,乙73の1・2,乙76の1・2,乙8
8の1・2,乙95)」と改める。
(8) 原判決48頁10行目「被告」を「一審被告ら」と改める。
(9) 原判決48頁11行目「(乙74)」を「(乙74の1・2)」と改め
る。
(10) 原判決48頁12行目「(乙77)」を「(乙77の1~3)」と改め
る。
(11) 原判決49頁9行目から50頁2行目までを以下のとおり改める。
「(3) 争点(7)ウ(推定の覆滅)について
ア 薬剤分包装置を業務上使用するためには薬剤分包紙が必須であるか
ら,同装置の利用者は,定期的に自己の保有する薬剤分包装置に適合したロール
ペーパを購入することとなる。そして,被告製品は,一審原告製の中空芯管に分
包紙を巻き直したもので,一審原告製の薬剤分包装置において使用できるもの
として販売されていたのであるから,需要者は,一審原告製のロールペーパの代
替として被告製品を購入していたものと考えられる。
特許法102条2項に基づく損害額の推定に関して,一審被告らは,薬剤分包
紙業界においては非純正品の販売が一般的であって,被告製品の販売がなかっ
たとしても,その需要の大部分は他の安価な非純正品に向けられていたはずで
あると主張するが,一審原告製のロールペーパ又は被告製品以外で,一審原告製
の薬剤分包装置において使用できるロールペーパが市場に存在していたことを
認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告製品が市場に存在しない場合には,需要者は値段にかかわら
ず一審原告製のロールペーパを購入したものと考えられるから,被告製品の価
格が純正品に比して有利であることは,特許法102条2項に基づく前記(2)の
推定を覆滅するものではない。
イ 本件において,特許権侵害に基づく損害賠償請求と商標権侵害に基
づく損害賠償請求は選択的併合とされているところ,上記アのとおり,一審被告
らの特許法102条2項に関する推定覆滅の主張は理由がなく,同項に基づく
損害額の推定は,前記(2)で認定した一審被告らが被告製品の販売により得た利
益の全額に及ぶ。したがって,本件においては,推定の覆滅の点も含めて商標権
侵害に基づく損害賠償請求についてこれ以上判断する必要はない。
(4) 小括
したがって,特許法102条2項により,一審原告は,被告ネクスト製品につ
き415万6644円,被告ヨシヤ製品につき71万6378円の損害を負っ
たものと認められる。」
8 争点(8)(一審被告らの共同不法行為の成否)について
(1) 前記4(1)のとおり,一審被告ネクスト及び一審被告ヨシヤは,いずれ
も一審原告製の薬剤分包用ロールペーパの使用済み中空芯管を顧客から回収し,
それぞれの中空芯管に対応する薬剤分包用シートを巻き直して販売するという
態様の事業を行っていた上,同一の従業員が一審被告ネクスト及び一審被告ヨ
シヤの販売業務の双方を担うこともあった。
上記に加えて,一審被告ヨシヤが,一審被告ネクストからのみ被告ヨシヤ製品
を仕入れており(乙90の1~6,弁論の全趣旨),平成27年4月1日まで一
審被告らの代表者は共通であったこと(裁判所に顕著な事実)も考え併せると,
一審被告らは,一体となって被告ヨシヤ製品の販売事業を行っていたものと認
められるから,被告ヨシヤ製品の販売につき一審原告に対する共同不法行為の
成立を認めるのが相当であり,一審被告らは,被告ヨシヤ製品に関し一審原告が
被った損害額全額について,連帯して損害賠償責任を負う。
(2) したがって,一審被告ネクストは,被告ネクスト製品につき415万
6644円の損害賠償責任を負い,一審被告らは,連帯して,被告ヨシヤ製品に
つき71万6378円の損害賠償責任を負う。
9 争点(9)(不当利得の存否及びその額)について
以下のとおり改めるほかは,原判決50頁20行目から55頁3行目に記載
のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決50頁26行目「(乙72,87,90)」を「(乙72,乙9
0の1~6)」と改める。
(2) 原判決50頁22行目の「ので」以下及び23行目を「。」と改める。
(3) 原判決51頁4行目から5行目までを以下のとおり改める。
「平成20年10月3日~同年12月31日 130万0500円(うち一
審被告ヨシヤに対する売上高118万5300円。なお,平成20年の1年を通
しての売上高は412万1700円である。)」
(4) 原判決51頁9行目を以下のとおり改める。
「平成24年 1178万8150円(同534万1000円)
(うち平成24年1月1日~4月26日の売上高 245万1666円)」
(5) 原判決51頁13行目から52頁2行目までを以下のとおり改める。
「 (ア) 平成22年から平成25年8月1日までの期間における被告ヨシ
ヤ製品の売上高は合計1120万0185円である(乙91の1~5) ここで,

上記の平成20年及び平成21年における一審被告ネクストの売上状況をみる
と,平成22年の売上状況と大きな差はないから,一審被告ヨシヤについても,
平成20年及び平成21年について,平成22年と同程度の売上げがあったと
みるのが相当であり,平成21年の売上高は112万4796円と認められ,平
成20年10月3日から同年12月末日までの売上高についても弁論の全趣旨
より30万3695円と認められる。したがって,平成20年10月3日から平
成25年8月1日までの期間における被告ヨシヤ製品の売上高は合計1262
万8676円となり,各年の売上高は以下のとおりである。
平成20年10月3日~同年12月31日 30万3695円
平成21年 112万4796円
平成22年 112万4796円
平成23年 251万7945円
平成24年 489万3614円
(平成24年1月1日~4月26日の売上高 110万9581円)
平成25年1月1日~同年8月1日 266万3830円」
(6) 原判決52頁3行目,7行目の各「乙91」をそれぞれ「乙91の1~
5」と改める。
(7) 原判決52頁10行目「平成20年から24年」を「平成20年から平
成24年」と改める。
(8) 原判決52頁14行目「本件発明」を「本件訂正発明」と改める。
(9) 原判決52頁15行目「前記5(2)参照」を「前記7で引用する原判決
の該当部分参照」と改める。
(10) 原判決52頁25行目「前記4(3)」を「前記4(2)」と改める。
(11) 原判決52頁26行目「出所表示機能」を「商標としての機能」と改め
る。
(12) 原判決54頁6行目から10行目までを以下のとおり改める。
「 イ 一審被告ネクストの不当利得の額
(ア) 各期間において一審被告ネクストの売上高から算定される使用
料相当額は,以下のとおりであり,合計は130万2076円となる。
平成20年10月3日~同年12月31日 130万0500円×3.5%
=4万5518円」
(13) 原判決54頁23行目「(130万2060円)」を「(130万20
76円)」と改める。
(14) 原判決54頁24行目から25行目の「82万7818円」を「82万
7834円」と改める。
(15) 原判決54頁26行目から55頁3行目までを以下のとおり改める。
「 ウ したがって,一審被告ネクストは,82万7834円の不当利得返還
義務を負い,被告ヨシヤは47万4242円の不当利得返還義務を負う。
なお,一審原告は,一審被告らは不当利得に消費税を付して返還すべきである
と主張するが,その根拠は明らかではなく,同主張を採用することはできない。
また,一審被告らは,一審原告に損失が生じていないから不当利得返還請求権
は認められないと主張するが,前記4で検討したとおり,本件各商標の商標とし
ての機能が害されており,上記のとおり,本件刻印の顧客吸引力が高くなかった
ことを考慮しても,一審原告に損失が生じていなかったとまでは認められない
から,一審被告らの上記主張は採用することができない。」
10 結論
以上によると,一審原告の請求は,民法709条及び719条2項並びに特許
法102条2項に基づき,損害賠償として,一審被告ネクストに対し,損害金4
15万6644円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年9月6
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,一審被
告ヨシヤ及び一審被告ネクストに対し,損害金71万6378円及びこれに対
する不法行為の後の日である平成28年9月3日から(一審被告ネクストにつ
いては同月6日からの限度で)支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の連帯支払,民法703条及び704条に基づき,不当利得返還請求と
して,一審被告ネクストに対し82万7834円及びこれに対する請求の日の
翌日である平成30年10月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に
よる遅延損害金の支払,一審被告ヨシヤに対し47万4242円及びこれに対
する請求の日の翌日である平成30年10月6日から支払済みまで民法所定の
年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認
容し,その余はいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。原判決が,一
審被告ネクストが支払うべき不当利得金を82万7818円としたのは相当で
はないが,一審被告ネクストに対する不当利得返還請求について一審原告は不
服を申し立てていないので,不利益変更禁止の原則(民訴法304条)により一
審被告ネクストが支払うべき不当利得金の額を増額することはでき ない。した
がって,一審原告並びに一審被告ネクスト及び一審被告ヨシヤの各控訴はいず
れもこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部


裁判長裁判官
森 義 之


裁判官
眞 鍋 美 穂 子


裁判官
熊 谷 大 輔

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