ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和1(ネ)1635 不正競争行為差止等請求控訴事件
| 裁判所 | 控訴棄却 大阪高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和2年2月14日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 控訴人(一審原告)日本精工硝子株式会社 被控訴人日本耐酸壜工業株式会社 |
| 法令 |
不正競争 不正競争防止法2条1項1号6回 民法709条2回 |
| キーワード | 実施4回 差止4回 損害賠償3回 侵害1回 |
| 主文 | 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 |
| 事件の概要 | (以下,略称及び略称の意味は,特に断らない限り,原判決の例に従う。) |
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令和2年2月14日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和元年(ネ)第1635号 不正競争行為差止等請求控訴事件
(原審 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第12720号)
口頭弁論終結日 令和元年12月6日
判 決
控訴人(一審原告) 日本精工硝子株式会社
同訴訟代理人弁護士 山 田 威 一 郎
同 柴 田 和 彦
同 池 田 直 樹
同 石 飛 優 子
被控訴人(一審被告) 日本耐酸壜工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 堀 龍 之
同 青 木 恭 美
同 富 岡 幸 宏
同 棚 橋 玲 子
同 佐 藤 万 里 奈
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。2 被控訴人は,原判決別紙被告商品目録に記載の商品を製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。3 被控訴人は,原判決別紙被告商品目録に記載の商品及び当該商品の製造のための金型を廃棄せよ。4 被控訴人は,控訴人に対し,3300万円及びこれに対する平成30年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
(以下,略称及び略称の意味は,特に断らない限り,原判決の例に従う。)1 前提事実(次の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者等(甲1,2。書証は枝番号を含む。以下同じ。)控訴人は,ガラス製品の製造・加工及び販売,容器の製造・販売等を目的とする株式会社であり,原判決別紙原告商品目録1から15までに記載の食品・調味料用瓶(原告商品)を製造・販売している。被控訴人は,各種ガラス製品の製造加工並びに販売等を目的とする株式会社であり,原判決別紙被告商品目録1から15までに記載の食品・調味料用瓶(被告商品)を製造・販売している。
(2) 原告商品の製造・販売(甲3)控訴人は,食品,調味料又は飲料用の瓶(食調瓶)として,平成11年ころから,品番SSGシリーズ(原告商品14,15のサイズ違いの商品),同SSIシリーズ(原告商品11~13),同SSEシリーズ(原告商品4~6),同SSSシリーズ(原告商品7~10),同SSFシリーズ(原告商品1~3)の各製造・販売を順次開始した。
(3) 被告商品の製造・販売被控訴人は,平成26年ころから,被告商品の製造を開始し,平成27年ころから食調瓶を取り扱う商社等や食品メーカー等に対する営業活動及び販売を行った(ただし,被告商品1及び3は未発売。)。被告商品の価格は,原告商品の価格に比べて廉価である。2 控訴人の請求及び訴訟の経過
(1) 控訴人の請求控訴人は,被控訴人に対し,被控訴人が製造・販売する被告商品は原告商品と形態が酷似しており,そのような被告商品の製造・販売行為は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たると主張して,主位的に,同法3条及び4条に基づき,被告商品の製造・販売の差止め,被告商品及びその金型の廃棄並びに損害賠償金3300万円及びこれに対する不正競争行為後の日(訴状送達の日の翌日)である平成30年1月13日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,被控訴人の被告商品の製造・販売行為が不正競争行為に該当しないとしても,これについて一般不法行為(民法709条)が成立すると主張して,上記同額の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めている。
(2) 訴訟の経過原審は,原告商品の形態について,特別顕著性の具備に疑問の余地があり,周知性についても認めるに足りないとして,これが不正競争防止法2条1項1号所定の商品等表示に当たるとは認められず,被控訴人の被告商品の製造・販売行為について不正競争行為は成立しないとして,控訴人の主位的請求を棄却した上,被控訴人の上記行為について不法行為の成立も認められないとして,控訴人の予備的請求も棄却した。これを不服として,控訴人が本件控訴を提起した。争点
(1) 被控訴人の行為が不正競争防止法2条1項1号に該当するかア 原告商品の形態の特別顕著性イ 原告商品の形態の周知性ウ 原告商品と被告商品の形態の類似性エ 原告商品と被告商品との混同のおそれ
(2) 被控訴人の行為が一般不法行為に該当するか
(3) 差止め・廃棄請求の必要性
(4) 控訴人の損害額争点に関する当事者の主張後記5のとおり,当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の1から4まで(原判決3頁19行目から29頁23行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし,原判決を次のとおり補正する。(原判決の補正)
(1) 原判決13頁18行目及び25頁14行目の「出店」をいずれも「出展」に改める。
(2) 原判決27頁6行目の「原告品11」を「原告商品11」に改める。
(3) 原判決27頁9行目の「高かったため」を「高く,他の形状や異なる容量の瓶を製造・販売するよう求める顧客からの要望も増えてきたため」に改める。当審における控訴人の主張
(1) 原告商品の形態の特別顕著性及び周知性ア 原告商品の形態が他社商品の形態と類似しないこと原判決は,甲15の「調味料M200角」,「ST150」及び「ST150PP」(酒瓶),甲16の「SLD150A-HC」,甲18の「ゴージャス」シリーズ,甲19の「スイト」シリーズ及び「サエ」シリーズを挙げて,他社の販売する食調瓶の中にも,形状としては細口瓶であって,縦長の柱型で肩部が張っており,高級感のある製品 のシリーズがあり,縦長で不安定な形状の物も認められることを根拠として,原告商品の特別顕著性を否定する。しかし,上記他社商品と原告商品の形態は,次のとおり類似していない。そして,これらの他社商品のほかには原告商品に類似するガラス瓶は存在しないから,原告商品の形態は他社商品とは明確に区別できるもので,特別顕著性を有している。(ア) 上記他社商品の中に,その胴部が正六角柱状のものはない。(イ) 原告商品4から6までと「調味料M200角」(甲15)及び「ゴージャス」シリーズ(甲18)とは,胴部が四角柱状である点は共通する。しかし,上記原告商品は,「調味料M200角」とは首部から肩部に係る傾斜角度が大きく異なっており,「ゴージャス」シリーズとは,その胴部の表面に凹凸が施されている点で異なっている。(ウ) 原告商品8から10までと「スイト」シリーズ及び「サエ」シリーズ(甲19)とは,胴部が円柱状であるという点は共通する。しかし,いずれも上記原告商品とは,首部から肩部の傾斜角度が大きく異なり,加えて,「スイト」シリーズには胴部表面に凹凸が施されている点が異なっている。(エ) 原告商品14及び15と「ST150」及び「ST150PP」(甲15)並びに「SLD150A-HC」(甲16)とは,胴部が略円錐台状である点は共通する。しかし,上記原告商品が首部から底部まで一直線で,正面視において台形状であるのに対し,「ST150」及び「ST150PP」は,胴部の角度が下から3分の1位で変化し,肩が存在する点が,「SLD150A-HC」は,首部から底部までの間が緩やかな曲線となっていて,胴部が下から3分の1位でやや膨らんでいる印象がある点が,それぞれ異なっている。イ 原告商品のシェアや宣伝活動による周知性の獲得原告商品の売上について,再度,過去データを見直し,直近データも加えると,原告商品の累計売上本数は約6014万本に及ぶ。そうすると,留め型に比べて圧倒的に本数が少ない一般瓶の市場では,原告商品のシェアは相当大きい。さらに,原告商品はその価格が通常の一般瓶の3倍もする高級品であり,通常の一般瓶とは異なるタイプの需要者をターゲットにしているところ,そのような高級品市場における原告商品のシェアは相当大きいといえる。また,控訴人は,展示会において,原告商品を形態ごとに3種類以上のサイズバリエーションを連続して並べることにより目立たせ,常にディスプレーの主役として展示し,原告商品シリーズを強調して宣伝していた。このような原告商品のシェアや宣伝活動からすれば,原告商品の形態は最終需要者である食品メーカーの間では周知のものとなっていた。
(2) 混同のおそれ被告商品は一般瓶であり,原告商品の模倣を要求した需要者だけでなく,不特定多数の需要者に対しても広く販売される。現に被控訴人は被告商品をガラス瓶問屋に持ち込んで,不特定多数の需要者に広く販売するよう営業活動をしていたものであるから,混同のおそれがあることは明らかである。また,最終需要者である食品メーカーは,ガラス瓶メーカーについての知識をほとんど有しておらず,カタログやウェブサイトなどでガラス瓶の形態を見て注文することが一般的であり,特に商社が作成するカタログやウェブサイトでは,複数のメーカーの製品を,メーカー名を記載せずに並列して掲載する場合があるため,原告商品と被告商品との間で出所の混同が生じるおそれは非常に高い。
(3) アンケート調査ア 対象者・実施方法控訴人は,令和元年7月19日から同年8月23日までの間,株式会社関西統計調整センターに依頼して,アンケート用紙の郵送及び電話調査の方法で,東京・大阪・名古屋の硝子製品協同組合に加入する58社に対し,① 被告商品5,② 原告商品2,③ 調味料M200角(甲15),④ 被告商品9,⑤ 原告商品12の各写真を示し,各商品の製造会社名とそのように特定した理由を質問するというアンケート調査を実施した(以下「本件アンケート」といい,上記各商品に関する個別の質問を,順に「質問1」等という。)。イ 本件アンケートの結果は,次のとおりである。(ア) 質問1(被告商品5)について何らかの回答があったのは16社であり,そのうち8社が製造会社を控訴人と回答し,8社が不明と回答した。(イ) 質問2(原告商品2)について何らかの回答があったのは16社であり,そのうち9社が製造会社を控訴人と回答し,7社が不明と回答した。(ウ) 質問3(調味料M200角)について何らかの回答があったのは16社であり,そのうち2社が製造会社を控訴人と回答し,2社が日本山村硝子株式会社(以下「日本山村硝子」という。),12社が不明と回答した。(エ) 質問4(被告商品9)について何らかの回答があったのは16社であり,そのうち5社が製造会社を控訴人と回答し,11社が不明と回答した。(オ) 質問5(原告商品12)について何らかの回答があったのは16社であり,そのうち7社が製造会社を控訴人と回答し,9社が不明と回答した。ウ アンケート結果の分析質問1から5までの分析結果は次のとおりである。アンケートはオープンクエスチョンで行われており,ガラス瓶の形態がよほど周知されていなければ,製造会社名の特定には至らない。なお,何らかの回答をした16社のうち3社はガラス製の食調瓶を取り扱わないことを理由に質問のすべてに不明と回答しているから,これを除けば,原告商品の形態の周知率はより高くなる。また,回答がなかった43社のうち26社は,控訴人が懇意にしている取引先であるが,本件訴訟の係属を知っていて,どう回答してよいか解らず,回答しなかったものと思われる。(ア) 質問1では,被告商品5の写真を見て,16社中半数の8社が特定の会社名を挙げ,その全てが控訴人の製造と回答したから,取引者の間において,原告商品5と類似する被告商品5の形態が控訴人の商品等表示として周知となっていること及び現に誤認混同が生じていることが明らかである。(イ) 質問2では,原告商品2の写真を見て,16社中9社が控訴人の製造と回答しているから,原告商品2の形態は,取引者の間において,商品等表示として周知となっているといえる。(ウ) 質問3では,原告商品と日本山村硝子の製品を区別できなかったのは12.5%(2社)にとどまるから,原告商品と他のメーカーの製品は明確に区別されており,特別顕著性が認められる。(エ) 質問4では,被告商品9の写真を見て,16社中5社が特定の会社名を挙げ,その全てが控訴人の製造と回答したから,取引者の間において,原告商品9と類似する被告商品9の形態が控訴人の商品等表示として周知となっていること及び現に誤認混同が生じていることが明らかである。(オ) 質問5では,原告商品12の写真を見て,16社中7社が特定の会社名を挙げ,その全てが控訴人の製造と回答したから,原告商品12の形態は,取引者の間において, 控訴人の商品等表示として周知となっているといえる。
(4) 一般不法行為次の事情によれば,被告商品の製造・販売は,不正競争の意図に基づき著しく不公正な行為により控訴人の営業活動上の利益を侵害するものといえるから,民法709条の不法行為が成立する。ア 原告商品は,控訴人が製造する食調瓶の中で売れ筋の商品群であり,控訴人は,原告商品をシリーズとして強調して宣伝している。被控訴人は,原告商品について意匠登録がされていないことを奇貨として,これらをまとめて模倣し,控訴人の開発努力や営業努力,これまでに築いたブランドにフリーライドして,より安価な価格設定を達成して,控訴人の顧客を奪っただけでなく,原告商品の価値をも下げている。イ しかも,被控訴人は,被告商品7,9,11を除いて,顧客からの要望とは関係なく,原告商品に類似する商品をシリーズとしてまとめて模倣するため,一気に開発し,一斉にその販売を開始した。被控訴人主張の販売開始日(原判決認定の販売開始日)は,実際に売れて納品した日にすぎず,被控訴人による販売の申出は,それより前に一斉にされている。ウ また,原告商品と被告商品の重量の差異は,数十グラムに過ぎず,手に持って感得できない僅かな誤差にすぎず,被告商品は原告商品のデッドコピーとしかいいようがない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,原告商品の形態が,不正競争防止法2条1項1号所定の商品
等表示に該当するとは認められないから,被告商品の製造・販売について同号の不正競争行為が成立するとして,その差止め等を求める控訴人の主位的請求は理由がなく,さらに,上記被控訴人の行為について民法709条の不法行為が成立するとして,損害賠償を求める控訴人の予備的請求も理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2のとおり,当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」
第4の1から3まで(原判決29頁25行目から47頁22行目まで)に記
載のとおりであるから,これを引用する。(原判決の補正)
(1) 原判決31頁24行目の「種類は」の次に「サイズ違いや栓のタイプの
違いも含めて数えると,」を加える。
(2) 原判決31頁25行目の「甲1,4」の次に「,36」を加える。
(3) 原判決32頁1行目の「首径」を「首部の上の凸状部の直径」に改め
る。
(4) 原判決32頁3行目の「全体的に」から同行末尾までを「肩が張った印
象を与えている。また,首部に比して胴部の長さが際立つ一方で,胴部と底部の径の差はない(胴部が柱状である原告商品1~10)か,差が大きくない(原告商品11~13)ため,全体的に縦長ですっきりしているが,安定感には乏しい印象を与える。」に改める。
(5) 原判決32頁21行目の「185g」を「184g」に改める。
(6) 原判決34頁4,5行目の「汎用カタログ」を「汎用びんカタログ」に
改める。
(7) 原判決34頁12行目の「甲5,」の次に「36,」を加える。
(8) 原判決34頁14行目の「首径」を「首部の上の凸状部の直径」に改め
る。
(9) 原判決34頁16行目の「全体的に細長くすっきりとして,」を削る。
(10) 原判決34頁18行目の「与える。」の次に「また,首部に比して胴部
の長さが際立つ一方で,胴部と底部の径の差がない(胴部が柱状である被告商品1~10)か,差が大きくない(被告商品11~13)ため,全体的に縦長ですっきりしているが,安定感には乏しい印象を与える。」を加える。
(11) 原判決36頁3行目の「乙」の次に「36,」を加える。
(12) 原判決36頁6行目の「平成29年3月以降,」の次に「型番の名称を
NTSからNTRに変更した上,本生産用の」を加える。
(13) 原判決36頁12行目の「同年4月に」を「平成28年4月に」に改め
る。
(14) 原判決36頁22行目の「その他の被告商品の」を「被告商品の設計図
面の作成日,」に改める。
(15) 原判決37頁の表の「被告商品2」の「設計図面」欄に「H25.12.2」と
あるのを「H25.12.11」に改め,「被告商品7」及び「被告商品11」の「設計図面」欄に「H25.11.8」とあるのを,いずれも「H25.11.18」に改める。
(16) 原判決38頁11行目の「ところによれば,」の次に「被告商品の販売
を開始した時点で,」を加える。
(17) 原判決38頁16行目の「主体的に」を「主位的に」に改める。
(18) 原判決39頁16行目冒頭から40頁16行目末尾までを次のとおり改
める。「前記認定事実のとおり,控訴人は,食調瓶として,SSシリーズの細口瓶を開発した。従来,製造していた化粧品瓶のスタイリッシュな感覚を生かしたもので,平成16年から平成23年頃にかけて,その胴部の形状として,底部と胴部の径に差がない柱状(円柱〔SSSシリーズ〕,四角柱〔SSEシリーズ〕,六角柱〔SSFシリーズ〕)を複数採用したほか,底部にかけて緩やかに広がる略円錐台(SSIシリーズ及びSSGシリーズ)を採用し,胴部の長さを変えることによってサイズ違いの商品とし,これらを順次,製造・販売していった。その結果,SSシリーズに属する商品は,口栓タイプの違いを捨象しても,多種類に上っているが,原告商品は,上記5種類のシリーズ(SSF,SSE,SSS,SSI,SSG)からなる。その形態は,前記1(4)のとおりであり,全体的に縦長ですっきりしているが,安定感に乏しい印象を与えるという特徴を有している。また,原告商品から原告商品14,15(SSG)を除くと,肩が張った印象を与えるという特徴を加えることができる。一方,前記1(1)で認定したとおり,ガラス瓶のメーカーは,控訴人及び被控訴人の他に10社程度あるところ,これらのメーカーが製造・販売する食調瓶は,底部が円形で大きく安定感があるものが多く,首部と胴部がなだらかにつながっており(なで肩),これらの形態に比べ,原告商品の上記形態は,特徴的であるといえる(甲6~9,15~23)。しかし,原告商品の上記形態は,縦長で安定感に乏しい印象を与えるという(あるいは,これに肩が張っているという特徴を加えるだけの),単純な形状の構成からなるものであるところ,他のメーカーの販売する食調瓶の中にも,首部に比して胴部の長さが際立ち,胴部が柱状である(胴部の径と底部の径に差がない)ため,縦長で不安定な形状の物も認められ,その中には,形状としては細口瓶であって,縦長の柱型で,肩部が張っていたりして,贈答用に使用されることを想定した高級感のある製品のシリーズもあることが認められる(甲15の「調味料M200角」,「ST150」,酒類びんではあるが「ST150PP」,甲16の「SLD150A-HC」,甲18の「ゴージャス」シリーズ,甲19の「サエ」シリーズ,「スイト」シリーズ等)。上記事情に照らすと,原告商品の形態が上記特徴を有していることをもって,直ちに,他業者の同種商品の形態に比べ,独自性を有し,特別顕著性を獲得したと認めることは困難というべきである。」
(19) 原判決41頁2行目冒頭から5行目末尾までを次のとおり改める。
「以上によると,原告商品の形態は,いずれも,縦長ですっきりしているが,安定感には乏しい印象を与えるもので,その限度で,ガラス瓶の典型的な形態に比べ,特徴的ということができるが,これらの特徴は,他業者の同種商品にもみることができ,控訴人の独自の形態ということはできず,原告商品全体に共通する形態の特徴をもって,特別顕著性があるとは認められない。なお,原告商品の個々の形態をみても,原告商品1から10までは,胴部の断面と高さが異なっているだけであるところ,胴部の断面の形状についてみると,正方形,円形はありふれているといえるし,正六角形にしても,顕著な特徴ということはできない(甲15~17)。また,原告商品11から15までは,以上に加え,胴部が円錐台であるという特徴が加わるが,これについても,他業者の同種商品の中に,円錐台の胴部を有する形状のものをみることができる(乙1の3〔C-01など〕)。そうすると,原告商品の個々の商品形態が,特別顕著性を有しているともいえない。」
(20) 原判決41頁11行目の「約15億円」を「約18億円」に改める。
(21) 原判決42頁15行目冒頭から20行目末尾までを次のとおり改める。
「前記(2),(3)で検討したところによると,原告商品の形態をもって,商品表示性を認めることは困難である。したがって,被告商品の形態が原告商品の形態と類似しているからといって,被控訴人が被告商品を製造,販売する行為が,不正競争防止法2条1項1号に該当するとはいえない。さらに,次のとおり,取引の実情も併せ考えると,被控訴人の上記行為は,需要者をして,被告商品を原告の製造,販売する商品と誤認させることもないと判断する。」
(22) 原判決45頁23行目の「首径」を「首部の上の凸状部の直径」に改め
る。
(23) 原判決45頁26行目の「他のメーカー製の」から「製品があること」
までを「首部の上の凸状部の直径は,細口瓶の口栓の規格に対応するものと推測されることから,この点が共通することが意味を持つものとは解されず」に改める。
(24) 原判決47頁1行目の「シリーズとして」の次に「,同時期に まとめ
て」を加える。当審における控訴人の主張について
(1) 原告商品の形態の特別顕著性及び周知性の有無
ア 原告商品の形態の特別顕著性について前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2(2)において説示するとおり,控訴人は,食調瓶として,SSシリーズの細口瓶を開発し,そのうち5種類のシリーズからなる原告商品は,縦長ですっきりしているが,安定感に乏しい印象を与えるものということができる(更に原告商品1から13までについては,その首部と胴部の接続部分の形状から,肩が張った印象を与えるという点でも共通する。)。これに対し,他のメーカーの食調瓶にも,縦長ですっきりしているが,安定感に乏しい印象を呈する細口瓶(甲15の「調味料M200角」,「ST150」,「ST150PP」,甲16の「SLD150A-HC」,甲18の「ゴージャス」シリーズ,甲19の「サエ」シリーズ,「スイト」シリーズ)があると認められるところ,控訴人は,前記第2の5(1)アのとおり,これらの食調瓶の形態が,原告商品の形態に類似しないと主張し,原告商品の特徴を有する他業者の同種商品と,原告商品との形状の違いを詳細に指摘する。しかし,原告商品の形態による商品表示性は,上記5種類のシリーズからなる原告商品に共通する特徴をもって特定されるところ,控訴人の指摘する形状の違いがあるからといって,異なる印象を与えるとは認められない。なお,控訴人は,原告商品と,前述した特徴を有する他業者の同種商品との間で,首部から肩部に係る傾斜角度(肩の張り方)が大きく異なると主張するが,肩の張り方が異なることによって受ける印象の違いは,縦長で安定感に乏しいという特徴の有無によって受ける印象の違いに比べ,大きいとはいえない。以上によると,控訴人が指摘する形状の違いがあるからといって,原告商品の形態の特別顕著性が基礎づけられるものでもない。イ 原告商品の形態の周知性について控訴人は,原告商品の形態の周知性に関して,前記第2の5(1)イのとおり主張する。しかし,控訴人が主張する直近の累計販売本数に係るデータに依ったとしても,一般瓶市場における原告商品の販売実績等が圧倒的であった等の状況は認めるに足りないし,高級品市場に限れば,原告商品は相当のシェアを有しているとの主張についても,これを裏付ける資料等はない。また,過去に原告商品が出展された展示会における展示・陳列の様子(甲41)に照らしても,控訴人がSSシリーズの複数の下位シリーズの一部にまたがる原告商品を,改めて一つのシリーズとして構成し直すなどして宣伝していたというような事情を認めることはできない。そうすると,控訴人のシェアや宣伝活動の状況からみて,原告商品の形態が,特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっているということもできない。
(2) 混同のおそれの有無
控訴人は,前記第2の5(2)のとおり,被控訴人の営業活動や商社のカタログやウェブサイトにおける掲載内容から,被告商品を控訴人の商品と混同するおそれがあると主張する。しかし,前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2(4)において説示するとおり,原告商品の形態をもって,商品等表示と認めることができない以上,被告商品の形態が原告商品の形態と類似しているからといって,被控訴人が被告商品を製造,販売する行為が,不正競争防止法2条1項1号に該当するとはいえない。なお,被控訴人が,不特定多数の需要者に対しても営業活動をしているとしても,その取引態様からすると,その相手方にとって,被告商品の製造・販売者が被控訴人であることは明らかであるから,控訴人の商品と混同するおそれがあるということはできない。また,食品メーカー等がカタログやウェブサイトを閲覧してガラス瓶の購入を検討することがあるとしても,それらの需要者が,当該ガラス瓶が自社で製造する調味料等の内容物の充填工程や商品梱包等の工程に容器として適合するか否かを確認等することなく,その購入を決定することは考えにくい。そうすると,上記カタログ等の掲載態様をもって,混同のおそれがあるという控訴人の主張も採用できない。
(3) アンケート調査結果について
ア 本件アンケートに関する事実関係(甲42~44)(ア) 本件アンケートの対象者,質問内容等控訴人は,前記第2の5(3)アのとおり,原告商品及び被告商品を含むガラス瓶の写真5点を示して,その製造者及びそのように製造者を特定した理由を質問するという本件アンケートを,東京・大阪・名古屋のガラス製品協同組合の加入者のうちの58社を対象として実施した。このうち何らかの回答を返したものは16社である。(イ) 上記16社の回答内容は,前記第2の5(3)イのとおりである。イ 検討(ア) アンケート対象者の選定について,母集団となった上記各地域のガラス製品共同組合の加入者は,原告商品及び被告商品の取引者に当たると解される。しかし,上記組合の加入者の中から,対象者58社をどのようにして選定したのかは明らかではない。また,本件アンケートの各質問の形式がいわゆるオープンクエスチョンとなっていることを踏まえても,上記のような対象者に対して,原告商品2点及び被告商品2点を含むガラス瓶の写真5点を示して製造者を回答させるというアンケートを実施することが,原告商品や被告商品の形態のみから,その出所を特定し得るかを判定するものとして有用といえるのか疑問がある。(イ) 回答者は,上記アンケート対象者58社のうち16社にすぎない。そして,被告商品5(質問1),原告商品2(質問2),被告商品9(質問4)及び原告商品12(質問5)について,それぞれ,その製造者をいずれも控訴人であると回答したのは,順に8社,9社,5社及び7社に過ぎず,このような少数の取引者が,上記各商品の製造者を控訴人と回答したからといって,これらの商品に係る形態がその出所を示すものとして周知となっていると評価することはできない。(ウ) また,他社製品に関する質問3(調味料M200角の製造者)についての回答内容は,2社が控訴人,2社が日本山村硝子,12社が不明(白紙を含む。)というものである。控訴人は,原告商品と日本山村硝子の製品を区別できなかったのが2社のみというが,12社が回答できなかったことに照らすと,これをもって,原告商品の形態に特別顕著性を認めることはできない。(エ) 上記回答内容によれば,被告商品5及び被告商品9について,製造者を特定して回答した全員(順に8社,5社)が,その製造者を控訴人と誤ったことが認められる。しかし,食調瓶である原告商品及び被告商品の取引態様(認定事実
(2),前記(2))に照らせば,少数の取引者が上記のように誤った回答
をしたからといって,被告商品の形態が原告商品に類似することにより混同が生じるおそれがあるということもできない。ウ 小括以上によれば,本件アンケートの結果によって,原告商品の形態が出所表示機能を有するとか,原告商品と被告商品との混同のおそれを認めることができるという控訴人の主張は,いずれも採用できない。
(4) 一般不法行為の成否
控訴人は,前記第2の5(4)のとおり,被告商品の製造・販売が不正競争行為に該当しないとしても,不法行為が成立すると主張する。しかし,前記のとおり,控訴人が原告商品を,その他の控訴人の商品と区別し,一つのシリーズとして宣伝等していたとの事情は認められない。また,認定事実(8)のとおり,被控訴人が被告商品を一斉に製造・販売したとの経過は認められず(この点に関して,被告商品の販売開始が,原判決36,37頁の表に記載されている日よりも前の同時期であったことを認めるに足りる証拠はない。),被控訴人が原告商品の形態をまとめて模倣した等の事情も認められない。したがって,被控訴人の行為について,自由競争の範囲を逸脱するような著しく不公正な行為と認めることは相当ではない。被告商品の形態が原告商品の形態に類似し,その相違点が重量の違いや肩の張り具合の違いなど,僅かな点にしかみられない(甲36)ことを考慮しても,上記判断を左右するものではない。以上によれば,被控訴人の上記行為について民法709条の不法行為が成立するとの控訴人の主張は理由がない。
第4 結論
以上の次第で,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。大阪高等裁判所第8民事部裁判長裁判官 山 田 陽 三裁判官 三 井 教 匡裁判官久保井恵子は,差し支えのため,署名押印することができない。裁判長裁判官 山 田 陽 三
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