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令和1(ネ)10062商標権移転登録手続等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和2年10月14日
事件種別 民事
当事者 被控訴人株式会社鈴屋
法令 商標権
商標法4条1項11号2回
商標法25条1回
商標法2条3項8号1回
キーワード 商標権40回
許諾38回
審決17回
無効13回
無効審判8回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は,控訴人が,別紙商標権目録記載1ないし9の各商標(以下「本件各 商標」と総称し,それぞれの商標を同目録記載の番号に応じて「本件商標1」 などといい,本件各商標に係る商標権を「本件各商標権」という。)の商標権 者である被控訴人との間で,控訴人の有する「ROCCA」ブランドに係る業 務提携が終了したときは被控訴人が無償で控訴人に対し本件各商標権の移転 登録をする旨の合意をした旨主張して,被控訴人に対し,上記合意に基づき, 主位的に本件各商標権の移転登録手続を,予備的に本件各商標の商標登録の抹 消登録手続を求める事案である。

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判決文

令和2年10月14日判決言渡

令和元年(ネ)第10062号 商標権移転登録手続等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第11399号)

口頭弁論終結日 令和2年8月17日

判 決

控 訴 人 ダミアーニ・ジャパン株式会社

訴訟代理人弁護士 長 沢 幸 男

長 沢 美 智 子

増 田 智 彦

木 田 翔 一 郎

被 控 訴 人 株 式 会 社 鈴 屋

訴訟代理人弁護士 大 武 英 司

播 摩 洋 平

訴訟復代理人弁護士 古 川 和 典

主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。2(1) (主位的請求)被控訴人は,控訴人に対し,別紙商標権目録記載1ないし9の各商標権の移転登録手続をせよ。

(2) (予備的請求)被控訴人は,控訴人に対し,別紙商標権目録記載1ないし9の各商標権について,同目録記載1ないし9の各商標登録の抹消登録手続をせよ。

第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)

事案の要旨本件は,控訴人が,別紙商標権目録記載1ないし9の各商標(以下「本件各商標」と総称し,それぞれの商標を同目録記載の番号に応じて「本件商標1」などといい,本件各商標に係る商標権を「本件各商標権」という。)の商標権者である被控訴人との間で,控訴人の有する「ROCCA」ブランドに係る業務提携が終了したときは被控訴人が無償で控訴人に対し本件各商標権の移転登録をする旨の合意をした旨主張して,被控訴人に対し,上記合意に基づき,主位的に本件各商標権の移転登録手続を,予備的に本件各商標の商標登録の抹消登録手続を求める事案である。原審は,控訴人主張の合意の成立が認められない旨判断し,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。前提事実次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の4記載のとおりであるから,これを引用する。

(1) 原判決3頁9行目の「(以下,」から10行目の「という。)」までを削り,同頁10行目の「日本法人として,」の次に「平成10年10月14日に設立された,」を加え,同頁13行目の「抱えており,」を「有しており,」と改める。

⑵ 原判決3頁18行目から19行目にかけての「Rocca S.P.A.」を「ロッカ ソシエテ,ペル,アチオニ」と,同頁19行目の「ダミアーニ社」を「ダミアーニ・グループの中核のイタリア法人「ダミアーニS.P.A.」(以下「ダミアーニ社」という。)に買収され,平成26年」と,同頁20行目の「(甲7)。」を「(甲7,12)。」と改め,同頁21行目の「鹿屋市」の次に「(令和元年9月1日以降は鹿児島市)」を加える。

⑶ 原判決3頁25行目から4頁1行目までを次のとおり改める。「⑵ 本件各商標の商標登録の経緯等ア 被控訴人は,別紙商標権目録記載1ないし9のとおり,平成18年2月9日に本件商標1について,平成19年4月12日に本件商標5ないし7について,平成21年6月12日に本件商標2ないし4について,平成22年5月19日に本件商標8及び9について各商標登録出願を行い,平成18年12月22日に本件商標1の商標登録を,平成24年4月27日に本件商標2ないし4の商標登録を,同年5月18日に本件商標5ないし9の商標登録を受けた(甲5,6の各1ないし9)。イ ダミアーニ・グループの「ダミアーニ インターナショナル ビーヴィ」(以下「ダミアーニB.V.社」という。)は,平成21年7月21日,本件商標1について商標登録無効審判(以下「別件無効審判」という。)を請求した(甲5の1,甲7)。特許庁は,上記請求を無効2009-890085号事件として審理を行い,平成22年2月25日,別件無効審判の請求は成り立たないとの審決(以下「別件審決」という。甲7)をし,同年7月7日,別件審決は確定した(甲5の1)。別件審決の理由の要旨は,本件商標1の商標登録は,商標法4条1項11号,15号又は19号のいずれにも違反しないから,同法46条1項により無効とすることはできないというものである。」

第3 当事者の主張

控訴人の主張

⑴ア 控訴人と被控訴人は,平成15年7月頃,控訴人が被控訴人に対し,対

象地域を鹿児島市内,使用目的を被控訴人が同市内で出店する店舗名としての使用,使用態様をダミアーニ・グループのイメージを毀損しない態様とし,期間の定めなく,対価は無償との約定で,「ROCCA」の標章の使用を許諾する旨の使用許諾契約(以下「本件使用許諾契約」という。)を締結した。イ 控訴人と被控訴人は,平成26年4月23日,要旨次の内容の合意(以下「本件合意」という。)をした。(ア) 控訴人と被控訴人は,本件各商標の商標登録に係る真の権利者は控訴人であること,被控訴人が本件各商標の商標登録出願をし,本件各商標の商標登録を受けたことが,本件使用許諾契約に違反することを相互に確認する。(イ) 控訴人と被控訴人は,本件合意が遵守される限りにおいて,被控訴人が本件各商標の商標登録出願をし,本件各商標の商標登録を受けたことが,控訴人の許諾に基づくものであったとして取り扱うことに合意し,控訴人は,被控訴人に対し,控訴人と被控訴人との業務提携の継続を条件に,本件各商標権の使用許諾を継続する。(ウ) 被控訴人は,控訴人との業務提携が終了(信頼関係破壊による解約を含む。)したときは,直ちに無償で,控訴人に対し,本件各商標権の移転登録手続をする。(エ) 本件合意による本件使用許諾契約の修正は,被控訴人による本件使用許諾契約の違反により生じた控訴人のいかなる権利の放棄も意味しない。ウ 控訴人と被控訴人が本件合意をした経緯及び事情等は,以下のとおりである。(ア) ダミアーニ社及び控訴人の代表者を兼ねていたAは,平成15年7月当時,ダミアーニ・グループがロッカ社を買収すべく株式の過半数を有していたことから,ロッカ社の代表者と交渉し,控訴人が日本において「ROCCA」の標章を使用することの許諾を得ていた。そして,Aは,同月頃,被控訴人代表者と面談し,控訴人と被控訴人との間で本件使用許諾契約を締結した。その後,控訴人と被控訴人は,平成26年4月23日,本件合意をした。本件合意について,書面が交わされていないが,これは,ダミアーニ・グループがロッカ社の買収を予定していたことや,本件使用許諾契約を締結した控訴人の意に反し,被控訴人が自己を権利者として本件商標1の商標権の設定登録を受けたことなどの経緯に照らして,A,ダミアーニ・グループのセールスマネージャーであるBと被控訴人代表者との面談において,口頭で合意されたためである。(イ) これに対し原判決は,①本件合意の内容は,商標権者でない控訴人に一方的に有利な内容になっており,このような通常の取引とは質的に異なるような重大な内容であるにもかかわらず,書面を作成せずに,口頭で合意をするのは不自然である,②被控訴人が,本件各商標の商標権者である立場を覆すような,控訴人に一方的に有利な内容の合意を,控訴人との間であえて行う合理的な理由はない,③平成20年9月にダミアーニ・グループがロッカ社を買収したことにより,ロッカ社から「ROCCA\CALDERONI」の商標を譲り受け,同商標権は,平成21年7月21日付けでロッカ社からダミアーニ・グループに移転されたことからすると,それより前の平成15年7月当時は,控訴人は,日本国内において「ROCCA」に関する権利を何ら有していなかったから,本件使用許諾契約は成立していないなどとして,本件合意の成立は認められない旨判断した。しかしながら,①については,控訴人は,販売代理店との契約は,通常の取引とは質的に異なるような重大な内容の契約であっても,すべて口頭で締結していた。控訴人と被控訴人間の販売代理店契約も,平成1年頃に,口頭で締結されており,また,控訴人は,被控訴人代表者のCが勤務していた株式会社サカグチ(以下「サカグチ」という。)との間の販売代理店契約も口頭で締結していた。このように口頭で成立している本件使用許諾契約を,口頭の本件合意により修正することは,何ら不自然ではない。次に,②については,宝飾メーカーのブランド名を商標登録する場合,権利者は宝飾メーカーとすることが商慣習上当然であって,販売代理店が世界的な宝飾メーカーのブランド名を権利化できないことは商慣習上当然である。また,総代理店契約が解消されれば,登録されたブランド名の商標の権利者は,防衛目的を失うため宝飾メーカーに戻されることも,商慣習上当然である。しかるところ,平成15年当時,ダミアーニ商品の日本における知名度はさほど高くなかったかもしれないが,国外においては,1794年誕生の「ロッカ」,1924年誕生の「ダミアーニ」を始めとするダミアーニ・グループのブランドは,既に最高級ブランドとして,世界の宝飾業界において確固たる地位を築き上げていたことからすると,業界における商慣習に照らし,ダミアーニ商品の販売代理店の一つにすぎない被控訴人が,国際的な高級宝飾ブランドであるダミアーニ・グループが保有していたブランド名「ROCCA」を権利化し,保持できる理由はない。したがって,控訴人と被控訴人が,控訴人に一方的に有利な内容の本件合意をしたことは,商慣習や社会常識に照らし,極めて合理的である。

③については,商標法は,

「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を,標章(商標)の使用とみなす旨定めている(商標法2条3項8号) そして,。一般的に,店舗名を商品に関する広告,価格表若しくは取引書類に付して展示し又は頒布することは,店舗運営にあたって不可欠の行為であるから,被控訴人としては,「ROCCA」を店舗名として使用する合意をするだけでは足りず,商標として使用することにつき使用許諾の合意をする必要があった。そして,民法上,商標が登録されているか否かを問わず,使用許諾契約を締結することは可能であり,また,商標法上,商標権者は,商標登録後,当該登録商標を使用する権利を専有することとなるが(商標法25条参照),商標権者によらない当該商標の使用許諾契約の効力を否定する規定は存在しないから,商標権の登録と当該商標の使用許諾契約の有効性とは別次元の問題である。したがって,平成15年7月当時,ロッカ社の株式の過半数を取得していた控訴人を含むダミアーニ・グループが,「ROCCA」の標章の使用許諾契約を締結することは,民法及び商標法に照らして,何ら支障もなく実行可能であった。平成19年4月10日当時,被控訴人店舗の入口に「ROCCA」の商標及び「DAMIANI」の商標を表示していることを示す写真(甲21の1,2)は,ダミアーニ商品の日本販売代理店が,ダミアーニ社から「ROCCA」の商標及び「DAMIANI」の商標の双方について使用許諾を受け,これらを使用して小売業を営んでいることを端的に示している。以上によれば,原判決の上記判断は誤りである。

⑵ 控訴人は,被控訴人が平成28年以降本件各商標権の移転交渉を拒絶する

ようになり,控訴人と被控訴人間の信頼関係が破壊されたため,本件訴状をもって,被控訴人に対し,本件合意を解約する旨の意思表示をした。本件訴状の送達により,控訴人と被控訴人の本件合意は終了した。

⑶ よって,控訴人は,被控訴人に対し,主位的に,本件合意に基づく履行請

求として,本件商標権の移転登録手続を求め,予備的に,本件合意の解約による原状回復請求として,本件各商標の商標登録の抹消登録手続を求める。被控訴人の主張控訴人主張の本件使用許諾契約の締結の事実及び本件合意の事実は,いずれも否認する。

⑴ア 被控訴人代表者のCは,平成15年当時,被控訴人の宝飾店の出店に係

る責任者であったところ,Aが出店予定地を見るために鹿児島市を訪れ,Aとの間で店舗の名称が話題となった際,Aが提案した「カルデローニ」という名称に対して,響きが日本に馴染まないと指摘したところ, 「R更にOCCA」を提案されたことから,これを採用したものである。しかるところ,店舗の名称は,事業が行われている建物を認識させるものであるのに対し,商標は,同種の他の商品とは異なるものであることを認識させるものであるから,店舗の名称と商標とは別個の概念であり,被控訴人が鹿児島市内に出店する店舗の名称をAが提案した「ROCCA」とすることが決定されたことをもって,控訴人主張の本件使用許諾契約が締結されたということができない。また,商標登録を受けていない商標については,使用許諾を受けなくなくても当該商標を使用することが妨げられることはなく,使用許諾契約を締結する必要はないから,被控訴人が控訴人主張の本件使用許諾契約を締結しなければならない状況あるいは必要性があったということができない。イ Cは,平成16年頃,被控訴人に就職する前に就業していたサカグチがダミアーニ・グループの看板商品である「ベル・エポック」を自社の店名に使用し,商標登録を受けてダミアーニ・グループと紛争になっていることを知り,控訴人の会長のDに「ROCCA」も同じことになると,問題である旨を相談したところ,Dから,「なぜまだ登録していないのか」と言われ,防衛策として,被控訴人が本件商標1の商標登録出願をするに至ったものである。

⑵ 被控訴人が控訴人との間で締結した口頭契約は,商品の発注,納品等の取

引に係る契約においてだけであり,それ以外は存在しない。まして,被控訴人と控訴人が,商標をめぐる契約を口頭で締結したことはない。また,控訴人が一方的に自らの解釈で被控訴人にした提案(甲8ないし10の各1)については,あまりに内容が不合理であるため,これに取り合わなかった経緯がある。

第4 当裁判所の判断

認定事実前記第2の2の前提事実と証拠(甲1ないし13,15,16,22,乙1(いずれも枝番のあるものは枝番を含む。 )) 及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。

⑴ア(ア) 1924年にイタリアで設立されたダミアーニ社を中核とするダミアーニ・グループは,「ダミアーニ」の宝飾ブランドを展開している。控訴人は,ダミアーニ・グループの日本法人として,平成10年10月14日に設立された,宝石類,時計,貴金属製の装身具,宝飾雑貨等の輸出入及び販売等を目的とする株式会社である。(イ) ダミアーニ社は,2008年(平成20年),イタリア法人「ロッカ ソシエテ,ペル,アチオニ」(ロッカ社)を買収し,2014年(平成26年),同社を吸収合併した。ロッカ社は,1794年に誕生した「ROCCA」ブランドのジュエリーや時計を取り扱っていた。ダミアーニ・グループは,主たるブランドの「ダミアーニ」などのほか,「ROCCA」ブランドを展開し,2018年(平成30年)2月時点で,イタリア,韓国,スイスなどに「ROCCA」の名称の店舗を14店運営している。また,ダミアーニ・グループは,「ROCCA」の名称のオンラインショッピングサイト(甲4)を運営している。イ 被控訴人は,昭和29年10月25日に設立された,一般衣料品及び服飾雑貨の販売,宝石・貴金属の加工,製造,販売等を目的とする株式会社である。

⑵ア Cは,平成13年頃,「ダミアーニ」ブランドの商品の卸売業及び小売業を行っていたサカグチに入社し,平成14年8月末に同社を退社した後,同年9月に被控訴人に入社した。その後,Cは,平成23年9月1日,被控訴人の代表取締役に就任した。イ Cは,平成15年7月頃,鹿児島市で「ダミアーニ」ブランドの商品の取扱いを中心とした被控訴人の店舗を出店したいと考えていた。ダミアーニ社及び控訴人の代表者を兼ねていたAは,同月頃,同市を訪れて,Cと面談し,その際,Aの提案で,被控訴人が同市に出店する店舗の名称を「ROCCA」とすることが決定された。その後,被控訴人は,控訴人と取引をするようになった。

⑶ア 被控訴人は,平成18年2月9日,別紙商標権目録記載1のとおり,「ROCCA」の標準文字からなる本件商標1について,指定商品を第14類「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,宝石,宝石の模造品」として商標登録出願をし,同年12月22日,本件商標1の商標登録を受けた。被控訴人は,平成19年4月12日,同目録記載5ないし7のとおり,「ROCCA」及び「SINCE 1947」の上下2段の文字又は「ROCCA」の文字(標準文字)からなる本件商標5ないし7について商標登録出願をした。その後,平成20年頃には,控訴人と被控訴人の取引は行われなくなった。イ ダミアーニ・グループのブランド管理を行うダミアーニB.V.社は,平成21年7月21日,本件商標1について別件無効審判を請求した。特許庁は,平成22年2月25日,別件無効審判の請求は成り立たないとの別件審決(甲7)をした。別件審決の理由の要旨は,本件商標1の商標登録は,商標法4条1項11号,15号又は19号のいずれにも違反しないから,同法46条1項により無効とすることはできないというものである。その後,同年7月7日,別件審決は確定した(甲5の1)。ウ 一方,被控訴人は,別紙商標権目録2ないし9記載のとおり,平成21年6月12日に本件商標2ないし4について,平成22年5月19日に本件商標8及び9について各商標登録出願を行い,平成24年4月27日に本件商標2ないし4の商標登録を,同年5月18日に本件商標5ないし9の商標登録を受けた。

⑷ア Aは,平成26年4月23日,ダミアーニ・グループのセールスマネージャーのB及び当時の控訴人代表者Eとともに,大阪市内のレストランで,被控訴人代表者のCと面談した。イ その後,被控訴人は,平成27年及び平成28年に開催した被控訴人の展示会にダミアーニブランドの商品を出展した。

⑸ア 控訴人は,被控訴人に対し,本件各商標権に関する和解を提案する旨の2017年(平成29年)2月25日付け書面(甲8の1)を送付し,同書面は,同年3月1日,被控訴人に到達した(甲8の2)。同書面添付の和解契約書案(甲8の1。以下「本件和解契約書案」という。)には,被控訴人を「甲」,「Damiani International S.A.」を「乙」とし,①「甲と乙は,業務提携について合意し,その際,乙は,甲に対し,諸外国で乙が保有し登録された「ROCCA」商標(本件商標)の使用を認め,甲は,本件商標権を,日本において登録した。乙は,本件商標について…無効審判を請求したが,特許庁は,請求が成り立たない旨の審決(本件審決)を下し,本件審決は確定した。甲と乙は,本件審決の解釈に関して見解の相違を生じたことなどから,業務提携が事実上中断し,かつ,本件商標権の帰属について,長年にわたり,合意に至らなかった。そこで,甲と乙は,上記法解釈に係る見解の相違があることを認めつつ,本件を将来に向けて解決し,業務提携を再開・発展させることにより,相互に共存共栄することとした。」(前文),②「甲は,乙に対し,本契約書別紙商標権目録1記載の本件商標権について,移転登録手続を執ることを合意し,乙は,甲に対し,「ROCCA SINCE 1947」商標を,日本において,乙の使用に係る同商標と異なる字体で使用することにつき,通常使用権を許諾する。上記移転登録手続に要する費用は,乙が負担し,上記許諾は無償とする。」(1条3項),③「甲と乙は,業務提携のため,最善の努力をすることを合意する。」(4条1項)などの記載がある。イ 控訴人の代理人弁護士は,平成29年5月31日到達の内容証明郵便(甲9の1,2)により,被控訴人に対し,「ROCCA商標の件」と題する同月29日付け書面をもって,本件和解契約書案に対する回答を求める旨の通知をした。その後,控訴人の代理人弁護士は,同年7月1日到達の内容証明郵便(甲10の1,2)により,被控訴人に対し,「ROCCA商標の件(その2)」と題する同年6月30日付け書面をもって,本件和解契約書案に対する回答を求める旨の再度の通知をした。しかし,被控訴人は,上記各通知に対して応答しなかった。

⑹ア 控訴人は,控訴人を「債権者」,被控訴人を「債務者」とし,本件各商標権について譲渡等一切の処分の禁止を求める処分禁止仮処分の申立て

(東京地方裁判所平成30年(ヨ)第22035号事件)をし,平成30

年4月10日,同裁判所は,その旨の仮処分命令(甲11)を発令した。

イ 控訴人は,平成30年4月11日,本件訴訟を提起した。

控訴人は,本件訴状をもって,被控訴人に対し,本件使用許諾契約を解

約する旨の意思表示をし,同年5月23日,本件訴状は被控訴人に送達さ

れた。

判断

次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」中の第4の2に記載の

とおりであるから,これを引用する。

⑴ 原判決8頁22行目を「⑴ 控訴人と被控訴人間の本件合意の成否につい

て」と改め,同頁23行目から24行目にかけての「本件契約(平成15年

月の当初使用許諾契約及び平成26年4月の本件修正合意)が」を「平成

年4月23日に本件合意が」と,同頁25行目の「代表者であったA(甲

,16)」を「代表者のA(甲12,16,22)」と改める。

⑵ 原判決9頁1行目及び11行目の各「本件契約」をいずれも「本件合意」

と,同頁2行目から3行目にかけての「本件契約(当初使用許諾契約及び本

件修正合意)」を「本件合意」と,同頁4行目から5行目にかけての「本件各

商標登録」を「本件各商標の商標登録」と,同頁7行目から8行目にかけて

の「本件各登録商標に係る」を「本件各商標の」と改め,同頁14行目から

頁19行目までを次のとおり改める。

「 かえって,前記1⑸の認定事実によれば,控訴人が被控訴人に送付した

本件各商標権に関する和解を提案する旨の2017年(平成29年)2月

日付け書面(甲8の1)添付の本件和解契約書案には,被控訴人を「甲」,

「Damiani International S. 」 「乙」

A. を とし,

①「甲と乙は,業務提携について合意し,その際,乙は,甲に対し,諸外

国で乙が保有し登録された「ROCCA」商標(本件商標)の使用を認め,

甲は,本件商標権を,日本において登録した。乙は,本件商標について…

無効審判を請求したが,特許庁は,請求が成り立たない旨の審決(本件審

決)を下し,本件審決は確定した。甲と乙は,本件審決の解釈に関して見

解の相違を生じたことなどから,業務提携が事実上中断し,かつ,本件商

標権の帰属について,長年にわたり,合意に至らなかった。そこで,甲と

乙は,上記法解釈に係る見解の相違があることを認めつつ,本件を将来に

向けて解決し,業務提携を再開・発展させることにより,相互に共存共栄

することとした。(前文)

」 ,②「甲は,乙に対し,本契約書別紙商標権目録

記載の本件商標権について,移転登録手続を執ることを合意し,乙は,

甲に対し,「ROCCA SINCE 1947」商標を,日本において,

乙の使用に係る同商標と異なる字体で使用することにつき,通常使用権を

許諾する。上記移転登録手続に要する費用は,乙が負担し,上記許諾は無

償とする。(1条3項)などの記載があることが認められる。本件和解契

」

約書案の上記①中の「甲と乙は,本件審決の解釈に関して見解の相違を生

じたことなどから,業務提携が事実上中断し,かつ,本件商標権の帰属に

ついて,長年にわたり,合意に至らなかった。 との記載は,

」 2017年(平

成29年)2月25日付け書面の添付書面として本件和解契約書案を送付

した時点では,控訴人と被控訴人間で被控訴人が控訴人に対し本件各商標

権を移転することの合意が成立していないことを示すものであり,平成2

年4月23日に控訴人と被控訴人間で本件合意が成立していたことと矛

盾する記載であり,また,本件和解契約書案の上記②の内容は,本件合意

の内容と必ずしも一致するものではない。」

⑶ 原判決10頁20行目の「ウ」を「イ」と,同頁21行目及び22行目の

各「本件修正合意」をいずれも「本件合意」と,同頁23行目から24行目

にかけての「本件各商標登録」を「本件各商標の商標登録」と改める。

⑷ 原判決11頁1行目の「本件登録商標1」を「本件商標1」と,同頁2行

目の 「ROCCA」

「 が」から3行目の「本件審判請求」までを「ダミアーニ・

グループのダミアーニB.V.社が請求した別件無効審判」と,同頁3行目

から4行目にかけての「本件登録商標2ないし9」を「本件商標2ないし9」

と,同頁5行目,7行目,10行目,12行目及び17行目の各「本件修正

合意」をいずれも「本件合意」と,同頁11行目の「終了しており,」を「行

われなくなっており,」と改める。

⑸ 原判決11頁19行目の「エ」 「ウ」

を と,同頁同行目の (甲12,

「 16)」

を「(甲12,16,22)」と改め,同頁22行目から末行までを次のとお

り改める。

「 したがって,控訴人と被控訴人が控訴人の主張の本件合意をしたことを

認めることはできない。」

⑹ 原判決12頁2行目から6行目までを削り,同頁7行目の「本件契約(当

初使用許諾契約及び本件修正合意)」を「本件合意」と,同頁9行目の「(当

初使用許諾契約),当初使用許諾契約」を「本件使用許諾契約」と,同頁10

行目の「本件登録商標1の設定登録」を「本件商標1の商標登録」と改め,

同頁11行目の「(本件修正合意)」を削り,同頁同行目の「本件契約締結」

を「本件合意締結」と改める。

⑺ 原判決12頁13行目の「契約締結に至る」を削り,同頁14行目の「本

件契約」を「本件合意」と改め,同頁15行目の「かえって」から20行目

の「不自然である。」までを削り,同頁20行目から21行目にかけての「当

初使用許諾契約」を「本件使用許諾契約」と,同頁21行目から22行目に

かけて及び24行目の各「本件登録商標1」をいずれも「本件商標1」と,

同頁22行目,23行目及び末行の各「本件修正合意」をいずれも「本件合

意」と,同頁24行目から25行目にかけての「本件審決後も」を「別件審

決後も」と改める。

⑻ 原判決13頁5行目から6行目にかけての「本件契約(当初使用許諾契約

及び本件修正合意)」を「本件合意」と改め,同頁13頁10行目から14頁

行目までを次のとおり改める。

「 イ 当審で提出されたA作成の2020年3月11日付け陳述書(甲2

)について補足して説明する。

甲22には,①「⑵ そして,度重なる協議を通じ,C氏は事態の

解決に前向きになり,2014年4月23日,私はB氏と共に大阪で

C氏と面談をしたのでした。私達はレストランで昼食をとり,この席

で,私は,C氏に対し,当社が使用し管理する「ROCCA」が国際

著名商標であることは,C氏もよく知っているはずであり,鈴屋は「R

OCCA」商標を返還すべきであると明確に述べ,最終的に,C氏も,

これを認めるに至りました。そこで,私は,もしこの事態を解決でき

るのであれば,当社は商取引関係を継続することをうれしく思い,ま

た,ダミアーニグループは鈴屋を支援することも述べました。そうす

ると,C氏は,当社との商標を巡る紛争を直ちに解決するため,

「RO

CCA」商標を当社に移転する代わりに,当社との取引を継続し,ダ

ミアーニグループに支援を要請したいと述べ,私の提案に同意しまし

た。(7頁9行~21行)

」 ,②「C氏がこの日,私達に対して「ROC

CA」商標を移転することに同意したのは,本来「ROCCA」商標

を返還する義務があることを,C氏自身も理解していたからであり,

また,ダミアーニグループと取引を継続し,その支援を受けることが

鈴屋にとって利益であるという合理的なビジネスジャッジをしたから

であり,加えて,これまでのダミアーニグループの最大限の譲歩と誠

実さを,C氏も理解してくれたからだと,私は信じています。(7頁

」

行~27行),③「他方で,私には,せっかくC氏がダミアーニグ

ループの誠実さを理解し,

「ROCCA」商標の移転を明確に約束して

くれたのに,その場で畳み掛けるように,また,レストランという場

所で,何か書面の作成を要求することは,C氏に対し礼を失する行為

であると思われましたので,書面による契約書の締結は後日とするこ

とにしました。(7頁28行~8頁2行)との記載がある。

」

そこで検討するに,上記①の記載部分は,控訴人代表者のAが,2

年(平成26年)4月23日,レストランの席上で,被控訴人

代表者のCに対し,控訴人が使用し管理する「ROCCA」が国際著

名商標であることは,Cもよく知っているはずであり,鈴屋(被控訴

人)は「ROCCA」商標を返還すべきであると明確に述べ,最終的

に,Cも,これを認めるに至った,Cは,控訴人との商標を巡る紛争

を直ちに解決するため,

「ROCCA」商標を控訴人に移転する代わり

に,控訴人との取引を継続し,ダミアーニ・グループに支援を要請し

たいと述べ,Aの提案に同意した旨を供述するものであるところ,A

がレストランの席上で「ROCCA」商標の返還を求める旨の提案を

してから,Cが「最終的にこれを認めるに至った」具体的な経緯につ

いての説明がない上,当時,被控訴人がダミアーニ・グループに支援

を要請すべき事情があったことを認めるに足りる証拠はなく,さらに

は,ダミアーニ・グループのダミアーニB.V.社が請求した本件商

標1の商標登録無効審判(別件無効審判)を不成立とする別件審決が

既に確定している状況下において,CがAの提案に応じるべき合理的

な理由はないことに照らすと,Aの上記供述内容はそれ自体不自然で

あって,説得力を欠くものである。

かえって,前記(1)アのとおり,控訴人が被控訴人に送付した201

年(平成29年)2月25日付け書面(甲8の1)添付の本件和解

契約書案中には,被控訴人と「Damiani Internati

onal S.A.」は,「業務提携が事実上中断し,かつ,本件商標

権の帰属について,長年にわたり,合意に至らなかった。」との記載部

分があり,この記載部分は,AとCが平成26年4月23日に面談し

た後の本件和解契約書案が送付された時点において,控訴人と被控訴

人間で被控訴人が控訴人に対し本件各商標権を移転することについて

の合意が成立していないことを示すものであり,上記①の記載部分と

矛盾するものである。

次に,上記②及び③の記載部分は,A個人の内心の思いや考えを述

べたものであり,Aが,Cに対し,言葉として発して,その内容を確

認したというものではないから,控訴人主張の本件合意の成立を裏付

けるものではない。

以上によれば,甲22の上記①ないし③の記載部分は措信すること

はできず,甲22の他の記載を勘案しても,甲22から控訴人主張の

本件合意が成立したことを認めることはできない。

⑶ 小括

以上によれば,控訴人と被控訴人間で控訴人主張の本件合意をしたこ

とを認めることはできないから,控訴人の主位的請求及び予備的請求は,

その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。」

第5 結論

以上のとおり,控訴人の請求はいずれも理由がないから,控訴人の請求をい

ずれも棄却した原判決は相当である。

したがって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文の

とおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 大 鷹 一 郎

裁判官 本 吉 弘 行

裁判官 岡 山 忠 広

(別紙) 商標権目録

⑴ 登録番号 商標登録第5013294号商 標 ROCCA(標準文字)出 願 日 平成18年2月9日設定登録日 平成18年12月22日指定商品 第14類「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,宝石,宝石の模造品」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 商標登録第5489742号商 標 ROCCA(標準文字)出 願 日 平成21年6月12日設定登録日 平成24年4月27日指定商品 第14類「貴金属製宝石箱,指輪,ブレスレット,ネックレス,イヤリング,ブローチ,ペンダント,ネクタイピン,スカーフリング,カフスボタン,時計の部品及び附属品,貴金属製靴飾り」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 商標登録第5489743号商 標出 願 日 平成21年6月12日設定登録日 平成24年4月27日指定商品 第14類「身飾品,貴金属,キーホルダー,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,宝石,宝石の模造品,貴金属製宝石箱,指輪,ブレスレット,ネックレス,イヤリング,ブローチ,ペンダント,ネクタイピン,スカーフリング,カフスボタン,時計の部品及び附属品,貴金属製靴飾」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 商標登録第5489744号商 標出 願 日 平成21年6月12日設定登録日 平成24年4月27日指定商品 第14類「身飾品,貴金属,キーホルダー,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,宝石,宝石の模造品,貴金属製宝石箱,指輪,ブレスレット,ネックレス,イヤリング,ブローチ,ペンダント,ネクタイピン,スカーフリング,カフスボタン,時計の部品及び附属品,貴金属製靴飾」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登録番号 商標登録第5493984号商 標出 願 日 平成19年4月12日設定登録日 平成24年5月18日指定役務 第35類「時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 第5493985号商 標出 願 日 平成19年4月12日設定登録日 平成24年5月18日指定役務 第35類「時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 商標登録第5493986号商 標 ROCCA(標準文字)出 願 日 平成19年4月12日設定登録日 平成24年5月18日指定役務 第35類「時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 商標登録第5493991号商 標 ロッカ(標準文字)出 願 日 平成22年5月19日設定登録日 平成24年5月18日指定商品 第14類「貴金属,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,宝石,宝石の模造品,キーホルダー,宝石箱」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋⑴ 登 録 番 号 商標登録第5493992号商 標 ロッカ(標準文字)出 願 日 平成22年5月19日設定登録日 平成24年5月18日指定役務 第35類「貴金属の小売又は卸売の業務において行われる顧に対する便益の提供,身飾品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝石の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝石の模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,キーホルダーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝石箱の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」⑵ 順位番号 甲区1番登録権利者 株式会社鈴屋

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