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令和2(行ケ)10057審決取消請求事件

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裁判所 一部認容 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年7月8日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社プラッツ
被告パラマウントベッド株式会社
対象物 電動ベッド
法令 特許権
特許法134条の25回
特許法36条6項2号1回
キーワード 審決48回
進歩性18回
実施16回
無効13回
無効審判5回
新規性1回
主文 1 特許庁が無効2018-800132号事件について令和2年3月20
30日にした審決のうち,特許第4141233号の請求項1に係る
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告の,その余を原告の各負
事件の概要 本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。5

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判決文

令和3年7月8日判決言渡
令和2年(行ケ)第10057号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年5月13日
判 決
原 告 株 式 会 社 プ ラ ッ ツ
同訴訟代理人弁護士 藤 原 宏 高
同 植 松 大 雄
10 同 吉 原 祐 介
同 黒 川 直 毅
被 告 パラマウントベッド株式会社
15 同訴訟代理人弁護士 古 城 春 実
同 服 部 謙 太 朗
同訴訟代理人弁理士 堀 口 浩
同 石 川 隆 史
主 文
20 1 特許庁が無効2018-800132号事件について令和2年3月
30日にした審決のうち,特許第4141233号の請求項1に係る
部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告の,その余を原告の各負
25 担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2018-800132号事件について令和2年3月30日
にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
5 本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
⑴ 被告は,平成14年11月11日,発明の名称を「電動ベッド」とする発
明について,特許出願(特願2002-327631号。以下「本件出願」
という。)をし,平成20年6月20日,その設定登録(特許第414123
10 3号,請求項の数2)を受けた(以下,この登録に係る特許を「本件特許」
という。 。

⑵ 本件特許について,平成22年5月17日付けで特許無効審判請求(無効
2010-800092号)がされたが,平成23年3月25日,平成22
年12月20日付け訂正請求書(甲9)に添付された訂正明細書のとおり訂
15 正することを認めるとともに,特許無効審判請求が成り立たない旨の審決が
され,同年5月6日,確定した。
⑶ 原告は,平成30年11月28日付けで本件特許の請求項1及び2に係る
発明について特許無効審判請求(無効2018-800132号)をした。
⑷ 特許庁が令和元年9月26日に本件特許の請求項1及び2に係る発明につ
20 いての特許を無効にするとの審決の予告をしたところ,被告は,同年12月
2日付けで本件特許の請求項1に係る特許請求の範囲を訂正する訂正請求を
行った(以下,この請求に係る訂正を「本件訂正」という。 。

特許庁は,令和2年3月30日,
「特許第4141233号の特許請求の範
囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認
25 める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」とい
う。)をし,その謄本は,同年4月3日,原告に送達された。
⑸ 原告は,令和2年4月27日,本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起
した。
2 特許請求の範囲の記載等
本件訂正前の本件特許の請求項1の発明(以下「本件発明1」という。)並び
5 に本件訂正後の本件特許の請求項1(以下「本件訂正発明1」という。)及び同
2の発明(以下「本件発明2」という。)に係る特許請求の範囲の記載は,それ
ぞれ,次のとおりである(争いのない事実)。なお,本件訂正発明1について,
本件訂正による訂正部分に下線を付し,訂正請求書に記載された訂正事項①な
いし③(後記3(1)参照)のいずれに当たるかの番号を当該下線の末尾に示すと
10 ともに,当該訂正部分について本件発明1の対応する部分にも参考として対応
する番号を示した下線を付す。
⑴ 本件発明1
寝床部を支持するベッドフレーム ① と,床上に設置される台部と,この台
部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LL
15 との間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置 ①と,この昇降装置による
前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フ
レームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示
する信号を出力する操作ボックスとを有し, ① ② 前記制御装置は,前記
操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力されたときに,前記操作ボ
20 ックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降さ
せるが, ③ 前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間の ③中間停止
位置LMで, ③前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを⼀
旦停止させ, ③その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状
態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前
25 記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記中間停止位置
LMは,前記フレームと ③ 床との間に,介護者又は患者の足が存在して
も,挟み込みが生じないような高さであることを特徴とする電動ベッド。
⑵ 本件訂正発明1
背ボトム,腰ボトム,膝ボトムを含む寝床部を支持し,付属品を取り付け
可能なベッドフレーム ①と, 床上に設置される台部と,この台部と前記フ
5 レームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間で前
記フレームを昇降移動させる,アクチュエータを含む昇降装置①と,この昇
降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作
により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレーム
の昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,前記背ボトムは,
10 前記膝ボトム側を中心として回動可能であり, ①前記フレームが中間停止位
置LMより上方から下位置LLまで連続して移動される際に,②前記制御装
置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力されたときに,
前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレー
ムを下降させるが,ホール素子を利用して前記アクチュエータのピストンロ
15 ッドの位置を算出した結果を受けて,前記フレームの高さが前記中間停止位
置LMまで下降したか判定し,③ 前記フレームの上位置LHと下位置LLと
の間の前記③ 中間停止位置LMで,前記フレームと床との間に,介護者又は
患者の足が存在しても,挟み込みが⽣じないように,③前記下降スイッチが
押し状態であっても前記フレームを⼀旦停止させ,ブザーを鳴らして警報
20 し,③ その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除さ
れた後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレーム
を前記下位置LLまで下降させるものであり,前記中間停止位置LMは,前
記フレームと前記③ 床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込
みが生じないような高さであることを特徴とする電動ベッド。
25 ⑶ 本件発明2
寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置される台部と,この台部
と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLと
の間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置による前記
フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フレー
ムの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する
5 信号を出力する操作ボックスとを有し,前記制御装置は,前記操作ボックス
から下降信号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し
状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,そのときの前記フレ
ームの位置が,前記上位置LHと前記中間停止位置LMとの間の予め定めら
れた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記フレームを降下させた後,
10 前記中間停止位置LMで前記下降スイッチが押し状態であっても一旦停止さ
せ,その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除され
た後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを
前記下位置LLまで下降させるものであり,前記操作ボックスから下降信号
が入力されたときの前記フレームの位置が,前記特定位置LSよりも低い場
15 合に,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記
フレームを前記中間停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させる
ものであり,前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者
又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さであることを特
徴とする電動ベッド。
20 3 本件審決の理由の要旨(本件訴訟に関連する部分に限る。)
本件審決は,本件訂正は訂正要件を満たし,また,本件訂正発明1は,①甲
第1号証「米国特許出願公開第2001/0047547号明細書」
(以下「甲
1」という。)に記載の発明(以下「甲1発明」という。)ではなく,②甲1発
明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではな
25 く,③甲1発明及び甲第2号証「電動介護用ベッドの認定基準及び基準確認方
法」
(平成12年7月6日。以下「甲2」という。)に記載の技術事項(以下「甲
2技術事項」という。 及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することが

できたものではないとし,本件発明2は,④甲1発明及び甲第3号証「特開昭
64-41419号公報」(以下「甲3」という。)に記載の発明(以下「甲3
発明」という。 に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく,

5 ⑤甲1発明,甲2技術事項及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明するこ
とができたものではないとし,⑥本件発明2の「特定位置LS」は,不明確で
はないから明確性要件(特許法36条6項2号)に違反せず,⑦本件発明2は,
上記特定位置LSに関する構成により課題解決手段が反映されているので,サ
ポート要件(特許法36条6項1号)に違反しないとした(以下,本件出願に
10 係る願書に添付した明細書を請求の範囲及び図面を含めて「本件明細書」とい
い,前記1⑵の平成22年12月20日付け訂正請求書に添付した訂正明細書
を図面を含めて「本件訂正明細書」という。 。

それぞれの論点に関する本件審決の理由の要旨は,以下のとおりである。
⑴ 本件訂正について
15 ア 本件訂正事項①
本件訂正事項①は,特許法134条の2第1項ただし書第1号に規定す
る特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,本件訂正前の発明特定
事項を概念的により下位概念としたものであり,カテゴリーや対象,目的
を変更するものではないから,実質上,特許請求の範囲を拡張し又は変更
20 するものには該当せず,同法134条の2第9項で準用する同法126条
6項に適合する。また,本件明細書に記載された事項(【0004】【00

08】【0014】【0025】
, , )の範囲内でするものであるから,同法1
34条の2第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
イ 本件訂正事項②
25 本件訂正事項②は,特許法134条の2第1項ただし書第1号に規定す
る特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,本件訂正前の請求項1
を概念的により下位概念としたものであり,実質上,特許請求の範囲を拡
張し又は変更するものには該当せず,同法134条の2第9項で準用する
同法126条6項に適合するものである。また,本件明細書に記載された
事項(【0021】,図5)の範囲内でするものであるから,同法134条
5 の2第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 本件訂正事項③
本件訂正事項③は,本件訂正前の請求項1の制御装置の作動をより具体
的に特定し,フレームの高さが中間停止位置LMまで下降したかを判定す
る具体的な作動を特定したものであるから,特許法134条の2第1項た
10 だし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。ま
た,訂正前の発明特定事項を概念的により下位概念としたものであり,
「ブ
ザーを鳴らして警報」との部分も,制御装置の作動を具体的に特定して限
定するものであって,本件明細書の段落【0005】の「ベッドを下降さ
せたときに,フレームと床との間で,介護者又は患者の足を挟んでしまう
15 ことを防止することができる電動ベッドを提供」することを目的とするこ
とに変わらないので,特許請求の範囲を実質的に変更する訂正とはいえず,
実質上,特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず,同法1
34条の2第9項で準用する同法126条6項に適合する。そして,本件
明細書に記載された事項(【0015】ないし【0017】 【0019】
, ,
20 【0021】 の範囲内でするものであるから,
) 同法134条の2第9項に
おいて準用する同法126条5項の規定に適合する。
⑵ 本件訂正発明1の新規性・進歩性について(無効理由1)
ア 甲1発明の認定
高さ調節可能な医療用のベッド10において,
25 頭側部分,中間部分,足側部分で構成された人をあおむけ姿勢で支持す
る患者支持面18と,
ベッド10の頭端と足端を定める患者支持面18を支持するメインフレ
ーム12と,
メインフレーム12の下側に装着される複数のキャスタ56,58,6
0,62と,
5 メインフレーム12を床面に対して相対的に上昇及び下降させる支持部
材と,
支持部材に接続され,メインフレーム12に対して相対的に支持部材を
作動させることで,支持部材がメインフレーム12を最下位置と最上位置
との間で移動させるようにする,駆動手段と,
10 メインフレーム12を最下位置へ向かって及び最下位置から遠ざかるよ
うに移動させるためのベッド下降スイッチ130及びベッド上昇スイッ
チ128を含む駆動手段を制御するための手動操作スイッチ,並びに最下
位置と上方に間隔をあけて隣接した下方中間位置及び最上位置と下方に
間隔をあけて隣接した上方中間位置にメインフレーム12が位置するこ
15 とを感知する一対のホール効果センサ116,118を含む制御システム
と,
を備え,
患者支持面18の頭側部分は,その足側を中心として回動可能であり,
支持部材は,頭端支持部材14及び足端支持部材16を含み,
20 頭端支持部材14は,上端をメインフレーム12に枢動可能に装着され,
下端を横支持部24に取り付けられている一対の上脚部20,22を含み,
上脚部20,22の下端から横外方で横支持部24から下方に下脚部26,
28を延在させ,下脚部26,28の下端にはローラ又はキャスタ30,
32を含み,
25 足端支持部材16は,上端をメインフレーム12に枢動可能に装着され,
下端を横支持部38に取り付けられている一対の上脚部34,36を含み,
上脚部34,36の下端から横外方で横支持部38から下方に下脚部40,
42を延在させ,下脚部40,42の下端には脚部材44,46を枢動可
能に支持し,横支持部38の下方に配置される一対の補助車輪支持構造4
8,50をさらに含み,
5 駆動手段は,メインフレーム12に対する枢動で頭端支持部材14を動
かす第1モータ80,メインフレーム12に対する枢動で足端支持部材1
6を動かす第2モータ96,及び,ねじ式リニアアクチュエータ82,9
8を含み,
制御システムは,ベッド上昇スイッチ128及びベッド下降スイッチ1
10 30を含む制御部124,126と,制御部124,126からの入力に
応答して第1モータ80及び第2モータ96の動作を制御するコントロ
ーラ122とを含み,
コントローラ122の制御回路について,ベッド上昇スイッチ128及
びベッド下降スイッチ130はそれぞれインバータ134a,インバータ
15 134bの入力ピンに接続され,
ベッド上昇スイッチ128が作動させられると,直流+12vがインバ
ータ134aの入力ピンに印加され,インバータ134aの出力が論理ロ
ーレベルになって,ダイオード138aを通じてSRフリップフロップ1
36aの入力ピンに与えられ,SRフリップフロップ136aのリセット
20 ピンからリセット信号が除去されると同時に,ベッド上昇スイッチ128
からの直流+12vが直ちにキャパシタ140aによりSRフリップフ
ロップ136aのセットピンに与えられて,SRフリップフロップ136
aの出力ピンの論理状態がオンに切り替わり,その切り替わりによりキャ
パシタ140aが+12vに充電され,SRフリップフロップ136aの
25 セットピンの電圧が論理ローレベルに戻り,SRフリップフロップ136
aの出力はベッド上昇スイッチ128がリリース(release)されるか,ホ
ール効果センサ116,118の一つからの信号を受けるまでオンに維持
され,またその切り替わりによりインバータ142aの入力をターンオン
して論理ローレベルにすることにより,インバータ144aを介してリレ
ー148a及びリレー150aを作動させることで,第1モータ80及び
5 第2モータ96を作動させてメインフレーム12を上方に移動させ,
ベッド下降スイッチ130が作動させられると,直流+12vがインバ
ータ134bの入力ピンに印加され,インバータ134bの出力が論理ロ
ーレベルになって,ダイオード138bを通じてSRフリップフロップ1
36bの入力ピンに与えられ,SRフリップフロップ136bのリセット
10 ピンからリセット信号が除去されると同時に,ベッド下降スイッチ130
からの直流+12vが直ちにキャパシタ140bによりSRフリップフ
ロップ136bのセットピンに与えられて,SRフリップフロップ136
bの出力ピンの論理状態がオンに切り替わり,その切り替わりによりキャ
パシタ140bが+12vに充電され,SRフリップフロップ136bの
15 セットピンの電圧が論理ローレベルに戻り,SRフリップフロップ136
bの出力はベッド下降スイッチ130がリリース(release)されるか,ホ
ール効果センサ116,118の一つからの信号を受けるまでオンに維持
され,またその切り替わりによりインバータ142bの入力をターンオン
して論理ローレベルにすることにより,インバータ144bを介してリレ
20 ー148b及びリレー150bを作動させることで,第1モータ80及び
第2モータ96を作動させてメインフレーム12を下方に移動させ,
メインフレーム12が下方中間位置及び上方中間位置に移動するときに,
ホール効果センサ116,118から出力されるローレベル信号が制御回
路の接続点162に加えられ,その信号はインバータ164a,164b
25 により反転させられ,直ちにキャパシタ166a,166bとダイオード
168a,168bをそれぞれ通じて,SRフリップフロップ136a,
136bのリセットピンに与えられ,SRフリップフロップ136a,1
36bがリセットされ,第1モータ80及び第2モータ96の作動を停止
して(deactivated)メインフレーム12の移動を下方中間位置及び上方中
間位置で終わらせ,約0.1秒でキャパシタ166a,166bは直流+1
5 2vに充電され,SRフリップフロップ136a,136bのリセット信
号が除去され,SRフリップフロップ136a,136bのセットピンは
論理ローレベルであるため,SRフリップフロップ136a,136bの
出力は,除去されたリセット信号に応答してターンオンすることがなく,
下方中間位置又は上方中間位置で第1モータ80及び第2モータ96の
10 作動を停止して(deactivated)から,押されていたベッド上昇スイッチ1
28又はベッド下降スイッチ130をリリース(release)してキャパシタ
140a,140bを放電し,それからベッド上昇スイッチ128又はベ
ッド下降スイッチ130を再作動(re-actuation)することで,第1モー
タ80及び第2モータ96が再び作動して(again be activated) メイ

15 ンフレーム12を移動させ,
最下位置はベッド10から転がり落ちる危険があるかもしれないときの
床に近接して配置される夜間の安全な位置であり,最下位置でのメインフ
レーム12に支持されるマットレスの患者支持面を床から約8インチ(約
203mm)に配置し,
20 下方中間位置はベッド10に出入りするための便利な高さであり,下方
中間位置でのメインフレーム12に支持されるマットレスの患者支持面
を床から約14インチ(約356mm)に配置し,
上方中間位置は治療及び検査にとって便利な位置であり,上方中間位置
でのメインフレーム12に支持されるマットレスの患者支持面を床から
25 約28インチ(約711mm)に配置し,
最上位置はベッド10の便利な移動が可能であり,最上位置でのメイン
フレーム12に支持されるマットレスの患者支持面を床から約31イン
チ(約787mm)に配置した,
医療用のベッド10。
イ 本件訂正発明1と甲1発明との一致点
5 背ボトム,腰ボトム,膝ボトムを含む寝床部を支持し,付属品を取り付
け可能なベッドフレームと,
床上に設置される台部と,
この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと
下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させる,アクチュエータを含
10 む昇降装置と,
この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,
スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装
置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスと
を有し,
15 前記背ボトムは,前記膝ボトム側を中心として回動可能であり,
前記制御装置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力
されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続してい
る間,前記フレームを下降させるが,前記フレームの上位置LHと下位置
LLとの間の前記中間停止位置LMで,前記下降スイッチが押し状態であ
20 っても前記フレームを一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける
下降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが
押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるも
のである電動ベッド。
ウ 本件訂正発明1と甲1発明との相違点
25 (ア) 相違点1
「中間停止位置LM」について,本件訂正発明1は「前記中間停止位
置LMは,前記フレームと前記床との間に,介護者又は患者の足が存在
しても,挟み込みが生じないような高さである」という構成であるのに
対し,甲1発明は「下方中間位置はベッド10に出入りするための便利
な高さであり,下方中間位置でのメインフレーム12に支持されるマッ
5 トレスの患者支持面を床から約14インチ(約356mm)に配置し」
という構成である点。
(イ) 相違点2
「前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力されたときに,
前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フ
10 レームを下降させる」「制御装置」について,本件訂正発明1は,「前記
フレームが中間停止位置LMより上方から下位置LLまで連続して移動
される際に, 「ホール素子を利用して前記アクチュエータのピストンロ

ッドの位置を算出した結果を受けて,前記フレームの高さが前記中間停
止位置LMまで下降したか判定し」 フレームの上位置LHと下位置LL

15 との間の前記中間停止位置LMで,
「前記フレームと床との間に,介護者
又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないように」 前記下降スイ

ッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ,ブザーを鳴ら

して警報し」 その後,
, 前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状
態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更
20 に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであるのに対し,
甲1発明の「下方中間位置」は「ベッド10に出入りするための便利な
高さであり」 「コントローラ122」は,そのような構成を備えるとい

えない点。
エ 相違点1の容易想到性等
25 (ア) 甲1発明における「下方中間位置」
(本件訂正発明1の「中間停止位
置LM」に相当)でのメインフレーム12(本件訂正発明1の「ベッド
フレーム」に相当)の床からの高さが153mmより高いことは明らか
である。
甲2技術事項によると,足が届く範囲の可動部と床面との間に120
mm以上の寸法があれば,足を挟み込む危険がないものと理解される。
5 したがって,甲1発明における下方中間位置は,足を挟み込む危険が
ない高さといえ,相違点1は,実質的な相違点でない。
(イ) 仮に,相違点1が実質的な相違点であるとしても,甲1発明の下方
中間位置をどの程度の高さにするかは,患者の体格やベッドの出入りの
し易さ等に応じて適宜最適化又は好適化可能な設計的事項といえ,その
10 最適化又は好適化した結果として,メインフレーム12と床との間に介
護者又は患者の足が存在しても挟み込みが生じないような高さと同程度
の高さとすることに格別な困難性は認められない。
オ 相違点2の容易想到性
(ア) 甲1発明における「最下位置」
(本件訂正発明1の「下位置LL」に
15 相当)への移動の始点は,
「下方中間位置」「上方中間位置」又は「最上

位置」のいずれかであるところ,甲1発明において,
「メインフレーム1
2」を「上方中間位置」から「最下位置」まで下降させる場合について,
「コントローラ122」の構成は,
「前記制御装置は,前記操作ボックス
から前記フレームの下降信号が入力されたときに,前記操作ボックスの
20 下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させる
が,前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間の前記中間停止位置
LMで,前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停
止させ,その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が
解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前
25 記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであ」る点で本件訂正
発明1と共通するから,
「上方中間位置」や「最上位置」を想定して,本
件訂正発明1の「前記フレームが中間停止位置LMより上方から下位置
LLまで連続して移動される際に,」一旦停止させ,その後,下降スイッ
チが押下された場合に下位置LLまで下降させる構成とすることは,当
業者が容易に想到することといえる。
5 (イ) 甲1発明において,下方中間位置まで下降したことの判定は,磁石
112がホール効果センサ116に近接することによるものであり, ピ

ストンロッドの位置を算出した」ものとはいえず,このようにすること
は,甲2にも,甲第4号証,甲第21号証にも,記載も示唆もされてい
ない。
10 そうすると,甲1発明の「コントローラ122」の「ホール効果セン
サ116,118から出力されるローレベル信号が制御回路の接続点1
62に加えられ・ ・第1モータ80及び第2モータ96の作動を停止」

する構成を,本件訂正発明1の「ホール素子を利用して前記アクチュエ
ータのピストンロッドの位置を算出した結果を受けて,前記フレームの
15 高さが前記中間停止位置LMまで下降したか判定」する構成とすること
は,容易に想到できるとはいえない。
(ウ) 甲1発明の「下方中間位置」は,足を挟み込む危険がない高さと理
解されるものであるが,
「前記フレームと床との間に,介護者又は患者の
足が存在しても,挟み込みが生じないように」する意図でされることは,
20 甲1に記載も示唆もされていない。また,甲1発明の「下方中間位置」
の高さは,「夜間の安全な位置」として意図的に選択される位置であり,
当該意図的に選択した位置に対してブザーを鳴らして警報することも,
甲1に記載も示唆もされていない。さらに,甲1発明の「コントローラ
122」の構成を,下降スイッチが押し状態であってもフレームを一旦
25 停止させ,
「ブザーを鳴らして警報」することは,甲2にも,甲第4号証,
甲第21号証にも,記載も示唆もされていない。
そうすると,甲1発明の「コントローラ122」の構成を,本件訂正
発明1の「前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在して
も,挟み込みが生じないように」 前記下降スイッチが押し状態であって

も前記フレームを一旦停止させ,
「ブザーを鳴らして警報」する構成とす
5 ることは,容易に想到できるとはいえない。
⑶ 本件発明2の進歩性について(無効理由2)
ア 甲3発明の認定
車輌の左右両側に設けられた駆動軸を中心に開閉可能な幌を開閉する車
輌用幌開閉装置において,
10 駆動軸を減速機構を介して回動するモータと,
モータを正転,逆転及び停止させるべく電源との接続を切り替えるスイ
ッチング手段と,
幌の開放または閉成をそれぞれ指令するオルタネイトスイッチである幌
開放指令スイッチ4及び幌閉成指令スイッチ5と,
15 幌開放指令スイッチ4または幌閉成指令スイッチ5のいずれかが操作さ
れたとき,幌の開閉を行うべくスイッチング手段を切り替える作動手段と,
駆動軸に具備され,その駆動軸が幌が閉じる直前の一時停止位置P4に
回動されたことを検出する位置センサと,
位置センサからの位置信号に従い,スイッチング手段を切り替えてモー
20 タを停止させる一時停止手段と,
モータに具備され,そのモータの回転に同期したパルスを発生する回転
センサと,
作動手段によりモータの回転が開始されてからのパルスの発生数を計数
するモータ駆動量算出手段と,
25 その計数されたパルス発生数が所定数Nに達しない場合に,一時停止手
段の作動を禁止する一時停止禁止手段と,
を備え,
幌閉成指令スイッチ5又は幌開放指令スイッチ4を操作することにより
モータの駆動が開始され,幌の開閉動作が開始され,幌が全閉位置P6直
前の一時停止位置P4に到達すると位置センサからの位置信号により検
5 出され,一時停止手段により自動的にモータへの通電が遮断され幌の開閉
動作が停止され,操作者は安全を確認した後,幌閉成指令スイッチ5又は
幌開放指令スイッチ4を操作することにより,幌の開閉動作を再開させ,
幌を全閉又は全開とすることができ,
たとえば全開位置P1から全閉しようとし,一時停止位置P4で一旦停
10 止したときに何らかの不具合を発見し,幌120を開いて元に戻そうとし
たときなどに起こる,幌を閉動作する場合の一時停止位置P4の近傍の手
前の不感帯位置P3,幌を開動作する場合の一時停止位置P4の近傍の手
前の不感帯位置P5内の不感帯域内からそれぞれ閉動作及び開動作させ
た場合には,幌が一時停止位置P4は到達した時点においては未だ回転セ
15 ンサからのパルス発生数が所定数Nに到達しないため,一時停止禁止手段
により位置信号の検出による一時停止作動が禁止され,幌は中断すること
なく,全閉又は全開動作を行うため,幌閉成指令スイッチ5又は幌開放指
令スイッチ4を操作した直後に幌の開閉動作が中断してしまうというこ
とがなく,操作者に不快感を与えない,
20 車輌用幌開閉装置。
イ 本件発明2と甲1発明との一致点
寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置される台部と,この台
部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置
LLとの間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置に
25 よる前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により
前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの
昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有する,電動ベッド。
ウ 本件発明2と甲1発明との相違点
(ア) 相違点3
「制御装置」について,本件発明2は「前記制御装置は,前記操作ボ
5 ックスから下降信号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイ
ッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,その
ときの前記フレームの位置が,前記上位置LHと前記中間停止位置LM
との間の予め定められた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記フ
レームを降下させた後,前記中間停止位置LMで前記下降スイッチが押
10 し状態であっても一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける下
降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが
押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるも
のであり,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときの前記フレ
ームの位置が,前記特定位置LSよりも低い場合に,前記操作ボックス
15 の下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを前記中間
停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させるものであり」と
いう構成を有するのに対し,甲1発明はそのような構成を有さない点。
(イ) 相違点4
本件発明2は「前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,
20 介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さであ
る」という構成を有するのに対し,甲1発明は「下方中間位置はベッド
10に出入りするための便利な高さであり,下方中間位置でのメインフ
レーム12に支持されるマットレスの患者支持面を床から約14インチ
(約356mm)に配置し」という構成を有する点。
25 エ 相違点3の容易想到性等
(ア) 甲1発明は,医療用のベッド10に関し,患者の予期されるニーズ
に従って,予め選択される垂直方向高さ位置にすることを課題とし,特
に「下方中間位置」は「ベッド10に出入りするための便利な高さ」と
して,
「最下位置」は「ベッド10から転がり落ちる危険があるかもしれ
ないときの床に近接して配置される夜間の安全な位置」として予め選択
5 された高さ位置である。一方,甲3発明は,車輌用幌開閉装置に関し,
幌を閉じる際に物を挟んでしまう危険性があるという問題に鑑み,幌が
全閉する手前で自動的に一時停止し,確実に安全を確認することができ
る車輌用幌開閉装置を提供することを課題とし,さらに,操作者に不快
感を与えないことをも課題とするものである。そうすると,両者の技術
10 分野及び課題は異なるものといえる。
そして,可動する医療用のベッドの技術分野において可動部への人体
の挟み込みを防止することが周知の課題であって,甲1発明に当該課題
が内在するとしてみても,甲3発明はそもそも車輌用幌開閉装置に関し,
幌が全閉する手前で自動的に一時停止し,確実に安全を確認することが
15 できる車輌用幌開閉装置を提供することを課題とするものであることか
ら,可動する医療用のベッドの技術分野における可動部への人体の挟み
込みを防止する当該周知の課題の解決手段として甲3発明を適用すべき
合理性はない。
さらに,甲1には,甲3発明における「幌閉成指令スイッチ5又は幌
20 開放指令スイッチ4を操作した直後に幌の開閉動作が中断してしまうと
いうことがなく,操作者に不快感を与えない」ことを目的として不感帯
域を用いる制御技術と関連する記載や示唆はないので,両者が不感帯制
御に関する技術であって作用,機能が共通するとはいえない。
したがって,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けは存在しない。
25 (イ) 仮に甲1発明に甲3発明を適用してしまうと,ベッド下降スイッチ
130を押したときの可動部としてのメインフレーム12の位置が,特
定位置よりも可動方向(かつ下方中間位置よりも手前方向)にある場合,
すなわち下方中間位置手前側近傍の不感帯位置よりも可動方向である下
方にある場合に,メインフレーム12を「ベッド10に出入りするため
の便利な高さ」として選択された「下方中間位置」で停止させずに下降
5 させることになってしまい,甲1発明における課題が解決し得なくなる。
よって,甲1発明において甲3発明を適用することには阻害要因があ
る。
(ウ) 以上のとおり,相違点3に係る本件発明2の構成が容易に想到でき
ないことから,本件発明2は,相違点4について判断するまでもなく,
10 進歩性を欠如するものではない。
⑷ 本件発明2の明確性要件の充足について
本件発明2の特定位置LSは,実質的に中間停止位置LMよりも若干高い
位置であって 【0021】 ,
( ) 実施の形態では中間停止位置LMの290mm
より10mm高い300mmとされ 【0018】 ,
( ) 既に相当低い位置まで下
15 降していて,その後,中間停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが
生じるおそれはなく,また操作者が下降スイッチを押した後,すぐにベッド
が停止してしまうと,操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしま
うような位置(【0023】)と理解される。
本件発明2の特定位置LSはこのように理解できることから,「特定位置
20 LS」は不明確とまでいえない。
⑸ 本件発明2のサポート要件の充足について
本件発明2の課題は,ベッドを下降させたときに,
「 フレームと床との間で,
介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止すること」 【0005】
( )と,
「操作者が下降スイッチを押した後,すぐにベッドが停止してしまうと,操
25 作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまう」【0023】
( )問題を
解消することと認められる。
本件発明2の特定位置LSは前記⑷のとおりに理解されることを踏まえる
と,本件発明2の特定位置LSに関する構成により上記課題は解消できると
認められる。
4 取消事由
5 ⑴ 本件訂正に関する判断の誤り(取消事由1)
⑵ 本件訂正発明1の進歩性に関する判断の誤り(取消事由2)
⑶ 本件発明2の進歩性に関する判断の誤り(取消事由3)
⑷ 本件発明2の明確性要件に関する判断の誤り(取消事由4)
⑸ 本件発明2のサポート要件に関する判断の誤り(取消事由5)
10 第3 当事者の主張
1 取消事由1(本件訂正に関する判断の誤り)の有無について
⑴ 原告
ア 本件訂正事項③に関する判断の誤り
(ア) 本件審決は,「前記アクチュエータのピストンロッドの位置を算出
15 した結果を受けて」の部分が新規事項の追加に当たらないと判断するが,
この部分の記載は本件明細書にはない。
本件明細書の段落【0015】において用いられる「算出」の対象は,
フレーム1の高さであり,ピストンロッドの位置ではない。また,本件
明細書の段落【0016】及び【0017】においては,ピストンロッ
20 ドの位置は,「算出」されるものではなく,「検出」されるものとされて
いるところ,
「算出」とは,
「計算して求める数値を出すこと」 「検出」
を,
とは,「検査して見つけ出すこと」をいい(甲22),演算して結果を求
め出すことと適不適や異状・不正の有無等を調べることは全く意味が異
なる。そうすると,
「ピストンロッドの位置を検出」との本件明細書の記
25 載を「ピストンロッドの位置を算出」との意味で理解することはできな
い。被告自身,本件審判手続での答弁書(甲23)において,ピストン
ロッドについては,その位置を「検出」するとし,これをアクチュエー
タの位置から「算出」するとして,両者を明示的に使い分けている。
したがって,本件訂正事項③のうち,
「前記アクチュエータのピストン
ロッドの位置を算出した結果を受けて」との部分は,訂正要件を満たし
5 ていない。
(イ) 本件審決は,
「ブザーを鳴らして警報し」との部分が特許請求の範囲
を実質的に変更する訂正とはいえない旨判断したところ, ブザーを鳴ら

して警報し」との構成は,アクチュエータの動作に関わるようなもので
はなく,ベッドの下降動作を制御する機構とは本質的には関係のないも
10 のであるが,本件審決は,
「ブザーを鳴らして警報し」との部分が相違点
を構成し,かつ,その容易想到性を否定しているのであるから,これが
周知技術であることを否定しているといえる。そうである以上,特段の
事情がない限り, ブザーを鳴らして警報し」
「 との構成を付加することは,
特許請求の範囲を実質的に変更する訂正に当たるはずであるが,本件に
15 おいては上記特段の事情は存在しない。したがって,上記部分は,特許
請求の範囲を実質的に変更する訂正である。
また,このことを措いても,本件審決の判断には誤りがある。すなわ
ち,ブザーを鳴らして警報することの目的は,①ベッドを下降させたと
きにフレームと床との間で介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防
20 止することか,②ベッドの下降が停止していることを知らせることのい
ずれかと考えられる。そこで,本件訂正明細書の段落【0021】をみ
ると,本件訂正発明1は,中間停止位置LMでベッドの下降を停止させ
ることのみで確実に足の挟み込みの防止ができるとしており,他方で,
ブザーを鳴らして警報することにより足の挟み込みを防止することにつ
25 いては記載されていないから,ブザーを鳴らして警報することの目的が,
ベッドを下降させたときにフレームと床との間で介護者又は患者の足を
挟んでしまうことを防止することにあるとは理解できないことになる。
したがって,ブザーを鳴らして警報することの目的は,ベッドの下降が
停止していることを知らせることと考えられるが,この目的を本件明細
書の記載からうかがい知ることはできないから,本件明細書に記載され
5 ていない新たな課題といえる。そうすると,「ブザーを鳴らして警報し」
との部分は,本件明細書に記載されていない新たな課題を解決する手段
を導入するものであるから,特許請求の範囲を実質的に変更する訂正に
当たる。
イ 小括
10 以上のとおり,本件訂正事項③は訂正要件を満たしていないから,本件
訂正に関する本件審決の判断には,誤りがある。
⑵ 被告
ア 本件訂正事項③に関する判断の誤りの主張について
(ア) 本件訂正事項③のうち, ピストンロッドの位置を算出」
「 との部分は,
15 ピストンロッドの位置の検出方法を単に説明したにすぎず,新たな技術
的事項を導入するものではない。
本件明細書の段落【0016】)には,ピストンロッドの位置の検出方
法について,「モータ回転量を検出するセンサとしては・・・ホール素子を
利用して磁気的に回転数を検出するもの, との記載があり,
」 この記載に
20 接した当業者は,ホール素子を利用した場合にピストンロッドの位置を
「検出」するには,モータ回転量の計算,すなわち,算出が行われてい
ることを読み取ることができる。
(イ) 訂正の制度は,新たに公知文献が発見された場合でも,特許請求の
範囲を減縮し,特許を維持することを可能とする制度であるから,特許
25 請求の範囲の訂正が認められる場面を,訂正事項が出願時に周知技術で
あった場合に限定すべきではない。特許請求の範囲を実質的に変更する
か否かは,訂正前後の発明の目的ないし作用効果が実質的に同一である
か否かを基準として判断すべきである。
また,「ブザーを鳴らして警報し」との部分は,「ベッドを下降させた
ときに,フレームと床との間で,介護者又は患者の足を挟んでしまうこ
5 とを防止することができる電動ベッドを提供」 本件明細書
( 【0005】)
することを目的とするものであり,訂正によりその目的を変えるもので
はないから,特許請求の範囲を実質的に変更するものではない。
イ 小括
以上のとおり,本件訂正事項③は訂正要件を満たすから,本件訂正に関
10 する本件審決の判断には誤りはない。
2 取消事由2(本件訂正発明1の進歩性に関する判断の誤り)の有無について
⑴ 原告
ア 相違点2の認定の誤り
(ア) 本件審決は,「ホール素子を利用して前記アクチュエータのピスト
15 ンロッドの位置を算出した結果を受けて,前記フレームの高さが前記中
間停止位置LMまで下降したか判定し」との部分が相違点2を構成する
と認定したが,甲1発明は,以下のとおり,同部分の構成を有している
から,本件審決の相違点2の認定には誤りがある。
(イ) まず,甲1発明の管部110は本件訂正発明1のピストンロッドに
20 相当するといえる。
本件訂正発明1は,ピストンロッドがシリンダ内に退入すると最終的
にフレームを下降させ,ピストンロッドが進出するとフレームが上昇す
るというものであり,ピストンロッドが直線移動をすることによってフ
レームを上昇又は下降させる機能を有するものである(本件訂正明細書
25 の【0014】 。

他方,甲1発明は,管部110が直線移動することによってフレーム
が上昇又は下降するものである(甲1の[0036])。
以上からすると,甲1発明の管部110と本件訂正発明1のピストン
ロッドとは,付されている名称こそ異なるものの,棒状の部材であって
その直線移動によってフレームを上昇又は下降させるという機能を有す
5 るものとして,実質的に同一である。
(ウ) 次に,甲1発明においても,本件訂正発明1と同様に,
「ホール素子
を利用して前記アクチュエータのピストンロッドの位置を算出した結果
を受けて,前記フレームの高さが前記中間停止位置LMまで下降したか
判定し」ている。
10 甲1発明のホール効果センサ116,118と本件訂正発明1のホー
ル素子とは,いずれもホール効果を利用して磁力を電気信号に変換する
装置であり,両者は同義である。すなわち,ホール効果とは,半導体や
金属に電流を流し,さらに,電流に垂直に磁場をかけると,ローレンツ
力により電流の分布が変わり,電流と磁場の両方向に垂直に電場が生じ
15 る現象をいうところ,ホール素子とは,半導体のホール効果を利用して
磁気量を電圧に変換する磁電変換素子をいい,磁界,電流,電力の測定
のほか,変位計,アナログ乗算器,変調器等,広い範囲で利用されてい
る(甲24)。
甲1発明においては,管部110がねじ式リニアアクチュエータ98
20 のねじ120に対して直線移動で駆動し,磁石112がホール効果セン
サ116,118の近傍に来ることで,ホール効果によりホール効果セ
ンサ内の電圧が高まり,あらかじめ定めた電圧値になると,その電圧を
ホール効果センサで検出し,ホール効果センサ116,118からロー
レベル信号が制御回路の接続点162に加えられ,そのことにより第1
25 モータ80及び第2モータ96の作動が停止され(甲1の【0036】,
【0038】 ,ベッドの下降が下方中間位置で停止される。ホール効果

センサの電圧が変化し,あらかじめ算出しておいたベッドを停止させる
べき電圧値に到達したかどうかを判別する場合も,
「判定」というべきで
あるから,上記動作は,ホール効果センサの電圧値の検出によって,管
部110の位置を算出しているということにほかならない。ホール効果
5 センサ116,118からローレベル信号が制御回路の接続点162に
加えられることは,ホール効果センサを利用した一連の事項のうち,ベ
ッドの下降を停止させるための電気的な作用の部分にすぎない。
以上からすれば,甲1発明において,ピストンロッドに相当する管部
110が移動し,ベッドが下方中間位置まで下降した際の管部110の
10 距離に対応する電圧値を,ホール効果を利用したホール効果センサによ
って算出しており, ホール素子を利用して前記アクチュエータのピスト

ンロッドの位置を算出」しているといえる。
(エ) 仮に,「ホール素子を利用して前記アクチュエータのピストンロッ
ドの位置を算出」するという構成が相違点であるとしても,ベッド等の
15 電動アクチュエータに関して,ホール素子を利用して特定の部材等の位
置情報を算出する技術は技術常識であるから(甲30ないし33) この

点は,実質的な相違点には当たらない。
イ 相違点2の容易想到性判断の誤り
(ア) 本件審決は,甲1発明の下方中間位置を,
「前記フレームと床との間
20 に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないように」す
る意図ですることは,甲1に記載も示唆もされていない旨判断した。
しかしながら,下記(イ)のとおり,
「前記フレームと床との間に,介護
者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないように」との点は,
用途による限定を付すものであり,そもそも相違点とはならない。また,
25 仮に相違点となるとしても,下記(ウ)のとおり,甲2等の自明の課題及
び関係文献(甲4等)による周知技術に基づいて,当業者は,容易に想
到し得る。
(イ) 出願審査実務においては,物に用途による限定を付しても,それが,
その物の用途に特に適した構造等を意味しない場合は,用途発明に該当
する場合を除き,その用途による限定を,物を特定するための意味を有
5 しているとは認定しないとされている。そして,機械,器具,物品,装
置等については,通常,その物と用途とが一体であるため,通常,用途
発明とされることはないともされている。
本件訂正発明1の課題は,ベッドを下降させたときに,フレームと床
との間で,介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止することがで
10 きる電動ベッドを提供することであるから,
「フレームと床との間に,介
護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないようにする」との
構成は,課題解決に有用な場面を限定しているにすぎず,その物の用途
に特に適した構造等を意味していない。また,本件訂正発明1は,電動
ベッドという機械に関する発明であり,新たな用途も提供しない。した
15 がって,本件訂正発明1は,用途発明に該当しない。
そうすると,
「前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在
しても,挟み込みが生じないように」との文言は,本件訂正発明1の構
成を限定する意義を有するものではないところ,本件訂正発明1と甲1
発明とは,フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,
20 挟み込みが生じないような高さである中間停止位置を設けているという
客観的な構成が同一であるため,上記構成は相違点とはならない。
(ウ) 仮に,
「前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在して
も,挟み込みが生じないように」との構成が相違点であるとしても,以
下の周知技術に基づいて,当業者は甲1発明に上記構成を採用すること
25 を容易に想到し得た。
a 次の文献の記載からすると,本件出願当時,昇降機構を有するベッ
ドを扱う業界において,ベッドの下降時に足等の身体の挟み込みの危
険性が生じないように配慮しなければならないことは自明の課題であ
ったといえる。
① 甲2の記載
5 別紙3「甲2の記載事項(抜粋)」に記載のとおり。
② 「特開2002-125808号公報」
(甲4)及び「特開200
2-125807号公報」(甲21)の各記載
上記各公報は,いずれも床部昇降機構を有するベッドの技術分野
に関する発明に係るものであるところ(各【0001】 ,発明が解

10 決しようとする課題として,誤って床部下に子供などが入り込んだ
場合に危険であるためこれに対処する必要があること(各【000
3】 ,課題を解決するための手段として,床部下への人体の侵入を

検知したときに,床部の動作を停止するなどの手段を採用したこと
(各【0004】)が記載されている。
15 ③ 「特開平9-187336号公報」(甲15)の記載
上記公報は,電動椅子の座席やベッドの床面等を昇降させる際に
その駆動源に電力の供給を停止させるようにした有線駆動システ
ムにおける誤動作防止装置に関する発明に係るものであるところ
(【0001】 ,
) 発明が解決しようとする課題として,ベッド装置が
20 不意に昇降した場合にベッド上の患者や介護人の身体の一部等が
ベッドの駆動部に挟まれるなどするおそれがあったこと(【001
3】)が記載されている。
b 次の文献の記載によると,昇降機構を有するベッドや手術台等に関
して,ベッドや手術台等を下降させる際に足を含む人体の挟み込みの
25 危険を防止するために下降を停止させることは周知技術であるといえ
る。
① 前記「特開2002-125808号公報」(甲4)の記載
「・・・この赤外線センサによる検知信号から,床部下への人体
の侵入を監視して,人体の侵入ありとした際に前記床部を上昇又は
停止するべく床部昇降機構を動作させるようにしたことを特徴と
5 する挟まれ防止機能を有する床部昇降機構を備えたベッド。」
(【請求項1】)
② 前記「特開平9-187336号公報」(甲15)の記載
「特に,患者がベッド装置1上に横たわっているときに,背床フ
レームが急に起床したり,ベッド装置1が不意に昇降したりすると,
10 ベッド上の患者はもとより介護人も驚嘆するばかりか,ベッド装置
1の駆動部に挟まれたりして身体の一部や荷物等を損傷させるお
それがあった。(
」【0013】 ,「本発明は,…前記信号線に何等か
)「
の異常(短絡)が生じたとき,スイッチ手段の投入・遮断にかかわら
ず,コントローラから駆動源にこれを駆動するための信号を出力し
15 ない結果,駆動源は信号線に短絡事故等の異常事態が生じても駆動
することが全くないので,該駆動源が例えば,介護用のベッド装置
の駆動源であっても,前記べッド装置は動作することがないので,
ベッドの一部が不意に作動して患者,介護人に不安感や不快感を与
えるといった問題を確実に解消することができる。 (
」 【0041】)
20 ③ 前記「特開2002-125807号公報」(甲21)の記載
「・・・この光電スイッチによる検知信号から,床部下への人体
の侵入を監視して,人体の侵入ありとした際に前記床部を上昇又は
停止するべく床部昇降機構を動作させるようにしたことを特徴と
する挟まれ防止機能を有する床部昇降機構を備えたベッド。 (
」 【請
25 求項1】)
④ 「特表2004-538037号公報」(甲27)の記載
甲27は,手術台に関する技術であり,その可動要素を移動させ
た際に障害物と衝突する危険性があるかを検出し,衝突の危険性を
検出した場合は,アクチュエータを停止,すなわち,可動要素の移
動を停止する技術に係るものであり(【請求項1】【請求項3】 ,上
, )
5 記の可動要素の移動が患者を支持するプレート16の下降動作を
含み,下降動作における障害物とは,患者を支持するプレート16
と床との間に存在するものであるため 【0016】 ,
( ) 足も障害物に
含まれることが記載されている。
(エ) 本件審決は,
「ブザーを鳴らして警報」することについて,甲1発明
10 の「下方中間位置」に対してブザーを鳴らして警報することも,甲1発
明の「コントローラ122」を下降スイッチが押し状態であってもフレ
ームをいったん停止させ,
「ブザーを鳴らして警報」することも,各引用
文献に記載も示唆もされていないと判断した。しかしながら,
「ブザーを
鳴らして警報」することは容易想到である。
15 a 次の文献の記載のとおり,
「ブザーを鳴らして警報」することは公知
技術ないし周知技術である。
① 前記「特開2002-125808号公報」
(甲4)及び「特開2
002-125807号公報」(甲21)の記載
「・・・なお,前記赤外線センサ10(「特開2002-1258
20 07号公報」(甲21)については,「光電スイッチ10」の誤記)
が動作したことを以て,手元スイッチRcや,ベッドにおけるボー
ド,部屋に備え付けの報知手段(ブザー,警告ランプ等)に警告音,
点滅光等を発生させて,ベッド使用者や介護者に知らせるようにす
れば,一層確実に,且つ迅速にボトム5下における子供の存在を把
25 握することができる。 (
」 【0014】)
② 前記「特表2004-538037号公報」(甲27)の記載
「さらに,制御装置18は,衝突の危険性が発生し,実行中の移
動要求が停止されたときにユーザの注意を引くことができる照明
ランプおよびまたは音響発生トランスデューサ等のアラーム64
を含む。 (
」 【0045】,
)「実際,手術台の要素が衝突する危険性を
5 検出したためにアクチュエータでこうした停止または拒絶が発生
した場合,ユーザは,即座にアラームで知らされ,表示装置62の
表示板から制御修正命令が提供される。この修正命令は,この修正
命令が実施されれば最初に要求された移動要求が実施可能になる
ように構成される。 (
」 【0068】)
10 b 前記aの「ブザーを鳴らして警報」するとの公知技術ないし周知技
術に基づいて,当業者は,甲1発明にこの構成を採用することを容易
に想到し得る。
すなわち,ベッドを下降させたときに,フレームと床との間で,介
護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止することができる電動ベ
15 ッドを提供するという課題は,甲1発明に内在し又は電動ベッド業者
において自明の課題であるところ,
「ブザーを鳴らして警報」するとの
公知技術ないし周知技術は,このような課題を前提とするものであり,
課題が共通する。そして,甲1発明の停止位置である「下方中間位置」
とは,メインフレーム12と床との間に介護者又は患者の足が存在し
20 ても挟み込みが生じないような高さであるところ,上記公知技術ない
し周知技術の停止位置も人体を含む障害物の挟み込みが生じないよう
な高さであり,停止位置が有する意義は同じだからである。
ウ 小括
以上のとおり,本件訂正発明1が進歩性を欠如しないとした本件審決の
25 判断には,誤りがある,
⑵ 被告
ア 相違点2の認定の誤りの主張について
(ア) 本件審決の相違点2の認定には,誤りはない。
(イ) 甲1発明の管部110は,本件訂正発明1のピストンロッドとは相
違する。
5 すなわち,管部110は,
「ねじ式リニアアクチュエータ98の管部1
10」(甲1の[0036])とあるように,ねじ式リニアアクチュエー
タの一部材であるところ,ねじ式リニアアクチュエータとピストンロッ
ドとは異なる部材である。
(ウ) 甲1にはピストンロッドの開示がないから,「ピストンロッドの位
10 置を算出」する構成及びこの「結果を受けて,前記フレームの高さが前
記中間停止位置LMまで下降したか判定」する構成の開示もない。
また,本件訂正発明1において,
「ホール素子を利用して前記アクチュ
エータのピストンロッドの位置を算出した結果を受けて,前記フレーム
の高さが前記中間停止位置LMまで下降したか判定」するとは,①ホー
15 ル素子を利用してモータ回転量を算出し,これによってピストンロッド
の位置を「算出」し(本件訂正明細書【0015】 【0016】 ,②制
, )
御回路は,モータ回転量から算出した現在のピストンロッドの位置が,
メモリに保存しているフレームをいったん停止させるピストンロッドの
位置であるか否かを判定した結果に基づき,アクチュエータのモータを
20 制御するものである(本件訂正明細書【0017】 。

これに対して,甲1発明は,単にねじ式リニアアクチュエータにより
移動される管部110の磁石112がホール効果センサ116,118
に近接した際に,ホール素子の電圧の向きが変わることにより,ホール
効果センサ116,118から出力されるローレベル信号が制御回路の
25 接続点162に加えられ,第1モータ80及び第2モータ96の作動を
停止するものである(甲1の[0036]ないし[0038] [005

3]。すなわち,甲1発明では,ホール素子センサの近くに磁石が近づ

いたことによりローレベル信号が発せられ,信号を受け取った制御部が
アクチュエータのモータを停止させるのみであり,あらかじめ把握する
電圧値との比較といった判定が行われるものですらなく,ましてや,ホ
5 ール素子を利用して「ピストンロッドの位置を算出」する構成及び「算
出した結果を受けて,前記フレームの高さが前記中間停止位置LMまで
下降したか判定」する構成を有するはずもない。
以上のとおり,本件審決の相違点2の認定に誤りはない。
(エ) 前記⑴ア(エ)の「ベッド等の電動アクチュエータに関して,ホール
10 素子を利用して特定の部材等の位置情報を算出する技術は技術常識であ
るから(甲30ないし33) この点は,
, 実質的な相違点には当たらない。」
との原告の進歩性違反の主張は,無効審判においてされていないもので
あるから,本件審決取消訴訟の審理範囲を超える。
この点を措くとしても,次のとおり,上記技術常識を適用することに
15 つき阻害要因がある。
すなわち,本件訂正発明1は,制御装置があらかじめ中間停止位置L
Mを保持しているから,この設定を任意に変更できない。一方,甲1発
明は,患者の都合,搬送の都合等の個々の状況に応じて4つの位置を使
い分けられるとされているから,下降するフレームの停止位置に相当す
20 るホール効果センサの位置に合わせて,磁石112の位置を任意に変更
設定し,フレームの下降が停止する高さを変更することが想定されてい
る。このように,本件訂正発明1の技術思想と甲1発明の技術思想は相
反するものであるから,甲1発明に上記技術常識を適用して,フレーム
の停止位置を特定の高さに固定する本件訂正発明1のような構成とする
25 ことは阻害される。
イ 相違点2の容易想到性判断の誤りの主張について
(ア) 前記⑴イ(イ)の原告の主張は,本件審判手続で主張していない新た
な無効理由であるから,審理範囲を逸脱する。
(イ) 「前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,
挟み込みが生じないように」との部分は用途による限定を付すものでは
5 なく,あくまで構成に係る発明特定事項である。また,本件訂正発明1
は用途発明ではない。
(ウ) 甲1は,特定の位置でベッドの上下動を終了するという構成を開示
するにとどまり,ベッドを下降させたときに,フレームと床との間で,
介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止することができる電動ベ
10 ッドを提供するという課題の記載やこれを示唆する記載はないから,こ
の課題を甲1発明に内在する課題とはいえない。
(エ) 「ブザーを鳴らして警報」することは容易想到ではない。
原告主張の各公報のうち「特開2002-125808号公報」甲4)

及び「特開2002-125807号公報」(甲21)記載の各発明は,
15 異物(子供)を赤外線センサ等によって検出した際の対応に関するもの
であるのに対し,本件訂正発明1は,異物を検出するか否かにかかわら
ず,中間停止位置でブザーを鳴らすものであり,ブザーを鳴らす局面や
鳴らす対象・目的を異にする。また,
「特表2004-538037号公
報」
(甲27)記載の発明は,手術台に関するものであり,本件訂正発明
20 1とは対象とする製品,技術分野が異なる。
ウ 小括
以上のとおり,本件訂正発明1が進歩性を欠如しないとした本件審決の
判断には,誤りはない。
3 取消事由3(本件発明2の進歩性に関する判断の誤り)の有無について
25 ⑴ 原告
ア 相違点3の容易想到性判断の誤り
(ア) 本件審決は,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けは存在しない
し,甲1発明に甲3発明を適用することに阻害要因がある旨判断するが,
誤りであり,相違点3に係る構成を採用することは容易に想到し得た。
(イ) 次のとおり,本件出願時において,a不感帯又は許容範囲を設ける
5 ことや,不感帯又は許容範囲内から動作を開始した場合は所定の停止位
置で停止させないことは当業者にとって公知であったこと,b甲1発明
に不感帯制御技術に関する記載又は示唆があること,c甲1発明及び甲
3発明の課題が共通すること,d甲1発明と甲3発明の技術分野が同一
であることからすると, 当業者にとって,甲1発明に甲3発明を組み合
10 わせる動機付けがある。
a 甲3発明は,幌の全閉動作において,幌を全閉の直前の所定位置で
停止させるとともに,所定位置の手前の近傍に一定の不感帯を設けた
場合は,幌が所定位置の手前である近傍から全閉動作を開始した場合,
所定位置で停止せず,全閉を許容する幌開閉制御技術を開示している。
15 このように,不感帯や許容範囲を設けることは,以下の文献に示され
るとおり,当業者にとって公知であった。
① 特開2000-83433号公報(甲19)
② 特開2000-272712号公報(甲20)
b 甲1の段落[0053]によると,モータが回転してベッドが所望
20 の下降速度で下降中に,磁石112が,ホール効果センサ118の近
傍の位置(以下「S0」ということがある。)に至ると,ホール効果セ
ンサ118により検出される磁束密度が当該センサ118の閾値に達
し,このとき通常ハイ信号であったセンサの出力信号がロー信号に変
換され,停止信号としてモータに伝達される。しかしながら,ロー信
25 号が伝達される素子の応答時間によって若干の遅延が発生し,かつ,
モータは完全に停止するまでの間,減速回転するため,磁石112の
実際の停止位置は,ロー信号出力時の位置よりも更に先(この間,ベ
ッドはさらに下降する。)の位置(以下「S1」ということがある。)
である。このときのベッドの停止位置が甲1発明における「下方中間
位置」に相当する。この位置において下降スイッチ130を離して再
5 度押し状態にしたときには,モータが再び駆動されてベッドが下降し,
磁石112はベッドが下停止位置に至ったときに相応する位置(以下
「S3」ということがある。)に来る。
ホール効果センサ118がロー信号を発した際のベッドの高さ位置
とベッドが停止した「下方中間位置」との間の高さ位置にたまたまベ
10 ッドが停止していることもあり得るが,このときの磁石112の位置
(以下「S2」という。)はS0とS1の間にある。このときに再びス
イッチを押すと,モータが駆動されてベッドが下降し,磁石は,S1
で停止することなくベッドが下位置に至ったときに相応する位置(S
3)に至る。この動作は,S0が「特定位置LS」とされているに等
15 しいものである。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「前記フレームの位置
が,前記上位置LHと前記中間停止位置LMとの間の予め定められた
特定位置LS(S0における位置に相当)かそれよりも高い場合に,
前記フレームを降下させた後,前記中間停止位置LM(S1における
20 位置に相当)で前記下降スイッチが押し状態であっても一旦停止させ,
その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除さ
れた後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フ
レームを前記下位置LL(S3における位置に相当)まで下降させる
ものであり,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときの前記
25 フレームの位置が,前記特定位置LS(S0における位置に相当)よ
りも低い場合(S2における位置に相当)に,前記操作ボックスの下
降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを前記中間停
止位置LM(S1における位置に相当)で停止させずに下位置LL(S
3における位置に相当)まで下降させる」を実質的に開示している。
c 昇降機構を有するベッドの業界において,ベッドの下降時に足等の
5 身体の挟み込みの危険性が生じないように配慮しなければならないこ
とが自明の課題であったことからすれば,甲1発明にもこの課題が内
在するということになる。
そして,甲3発明の課題は,幌を閉じる際に物を挟んでしまう危険
性があるためこれを防止するという点にあるところ,両者は人体や物
10 の挟み込みの危険性を防止するという点で共通するため,課題は共通
している。
d 特許発明の進歩性を判断する際の技術分野の同一性又は関連性の有
無は,当該特許発明の課題を解決するための手段との関連性において
判断するべきであるから,その技術分野で使用される要素的な技術に
15 も着目すべきである。
甲1発明の属する電動ベッドの分野で通常の知識を有する者が,電
動ベッドを下降させたときの問題点を解決するためには,電動ベッド
の技術分野の知識だけでは十分ではなく,操作スイッチやモータ等の
要素技術や,かかる要素技術が応用された他の技術も参酌する必要が
20 ある。甲3発明は,要素技術が適用される対象物が「車両用の幌」と
いう点では,要素技術を適用する対象物が「電動ベッド」である甲1
発明とは異なっているが,スイッチ操作によりモータを駆動させて対

象物を所定範囲で動作させる」ことは,様々に異なる応用分野を横断
する普遍的な技術であるから,適用対象の相違はその組合せの動機付
25 けには影響しない。
イ 小括
以上のとおり,本件発明2が進歩性を欠如しないとした本件審決の判断
には,誤りがある。
⑵ 被告
ア 相違点3の容易想到性判断の誤りの主張について
5 (ア) 本件発明2は,特定位置LSを設定したにすぎず,不感帯を設けた
わけではないから,不感帯に関する技術が甲3以外にも開示されていた
としても,そのことで,甲1発明に甲3発明を適用することが動機付け
られるものではない。また,甲1発明は,人体や物の挟み込みの危険性
を防止することを課題とするものではないから,甲3発明と課題を共通
10 としていないし,甲1発明がベッドに関する発明であるのに対し,甲3
発明は車両用の幌に関する発明であるから,両者は技術分野を異にする。
(イ) 仮に,一定の値の内外で動作を変えるような一定の値を設けること
を「不感帯を設ける」と呼ぶとしても,電動ベッドの技術分野において,
不感帯を設ける技術が公知であるとはいえない。
15 a 原告主張の特開2000-83433号公報(甲19)や特開20
00-272712号公報(甲20)に記載の技術と本件発明2とは,
不感帯を用いる目的が異なる。
b 甲1発明において,モータ停止のためのロー信号が出力されても,
ベッドがすぐに止まるとは限らないため,S0とS1の位置にはずれ
20 があり,理論的にはS2となる位置が存することは否定しないが,甲
1発明のS0は,モータ停止のためのロー信号が出力される以上は本
件発明2の中間停止位置LMに相当するのであって,特定位置LSに
相当するのではない。また,甲1発明において,S2の位置から下降
した場合,ベッドが停止しないかどうかは明らかではない。
25 イ 小括
以上のとおり,本件発明2が進歩性を欠如しないとした本件審決の判断
には,誤りはない。
4 取消事由4(本件発明2の明確性要件に関する判断の誤り)の有無について
⑴ 原告
本件審決は,特定位置LSを「既に相当低い位置まで下降していて,その
5 後,中間停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが生じる虞はなく,
また操作者が下降スイッチを押した後,すぐにベッドが停止してしまうと,
操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまうような位置」
(本件訂
正明細書【0023】)と認定するが,この部分は,中間停止位置LMを設け
た場合に生じる不都合が記載されているにすぎず,どの程度の高さがその位
10 置になるかの基準が判然とせず,ここから特定位置LSを認定することはで
きない。
また,ベッドを下降させるボタンを押しているのにもかかわらず停止状態
が続くのであれば,ベッドを下降させるボタンを押してすぐに停止しようが,
少し時間が経過した後に停止しようが使用者としては故障を疑うのが通常で
15 あるから,特定位置LSを設けたとしても,操作者が装置の故障等を疑い,
操作を煩雑にしてしまう問題は解消しないから,段落【0023】の「操作
者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまうような位置」から具体的
な特定の高さを読み取りようがない。
したがって,本件発明2は,明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業
20 者の出願当時における技術常識を基礎として考慮したとしても,第三者の利
益が不当に害されるほどに不明確であるから,明確性要件を満たさない。
⑵ 被告
本件審決の明確性要件に関する判断は正当である。特定位置LSは,
「装置
の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまう」問題を解消できるような高さに
25 設定すればよい。
したがって,本件発明2は,明確性要件を満たす。
5 取消事由5(本件発明2のサポート要件に関する判断の誤り)の有無につい

⑴ 原告
ア 前記4⑴のとおり,特定位置LSを設けたとしても,操作者が装置の故
5 障等を疑い,操作を煩雑にしてしまう問題は解消されない。
イ 本件発明2は,むしろ,足の挟み込みの防止という課題の達成を大きく
阻害するものである。
本件発明2は,フレームの下端と床との間の隙間が小さいため,目視に
よる足の挟み込みの危険性があるか否かの確認が困難であり,ベッド全体
10 を下降させたときに足の挟み込みの危険性があるという問題に対し,機械
的な動作等を用いてその危険性に対して対策をするものであり(本件訂正
明細書【0004】 ,フレームが低い位置にある状態での足の挟み込みの

危険性の回避を課題としている。実際,フレームの下端と床との間の距離
を目視で確認しにくいため足元の確認が難しいのはフレームが相当低い
15 位置にある場合であり,この場合にこそ,足の挟み込みの危険性を回避す
る必要性が高い。
他方で,本件発明2は,特定位置LSの構成をとったことにより,フレ
ームが相当低い位置まで下降している高さである特定位置LSより低い
位置である場合にはベッドの下降を停止させずに最下位位置LLまでベ
20 ッドを下降させている(本件訂正明細書【0023】 。したがって,特定

位置LSの構成をとっても,
「ベッド下降時に,介護者又は患者がフレーム
と床との間に足を挟んでしまう事故を確実に防止することができる。 (本

件明細書【0026】)との作用効果を奏しない。
ウ 以上のとおり,本件発明2は,発明の詳細な説明の記載又はその示唆に
25 より当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでは
なく,また,当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決で
きると認識できる範囲のものでもないから,サポート要件を満たさない。
⑵ 被告
本件審決のサポート要件に関する判断は正当である。下降スイッチが押さ
れた時点で,フレームが相当低い位置まで下降していた場合にフレームが中
5 間停止位置LMで停止しないとしても,本件訂正明細書の記載は,この場合
に足の挟み込みが生じる可能性が全くないことまで意味しているのではない。
むしろ,フレームが相当低い位置にあれば,足の直上にフレームが位置して
いるため,フレームを下降させると足が挟まれるか否かがフレームが高い位
置にある場合に比べて容易に確認できる。
10 したがって,本件発明2はサポート要件を満たす。
第4 当裁判所の判断
1 本件各発明について
本件訂正明細書には,別紙1「本件訂正明細書の記載」のとおりの記載があ
り,この記載によると,本件訂正発明1及び本件発明2(以下「本件各発明」
15 という。)について,次のような開示があると認められる。
⑴ 発明の属する技術分野
本件各発明は,ベッドの背の部分及び膝の部分等を上げたり,下げたりす
ることができる電動ベッドにおいて,ベッド全体を昇降することができる電
動ベッドに関するものである(【0001】 。

20 ⑵ 発明が解決しようとする課題
近時,電動ベッドは柵等の種々の付属品をフレームに取り付けるようにな
っており,フレームの構造自体が上下に大きなものになっているため,フレ
ームの下端と床との間の隙間が小さくなっており,フレームを下降させると,
患者又は介護者の足を挟んでしまう危険性が増えてきた(【0004】 。

25 本件各発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって,ベッドを下降
させたときに,フレームと床との間で,介護者又は患者の足を挟んでしまう
ことを防止することができる電動ベッドを提供することを目的とする(【0
005】 。

⑶ 課題を解決するための手段
ア 本件発明1に係る電動ベッドは,寝床部を支持するベッドフレームと,
5 床上に設置される台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記
フレームの上位置LH(例えば,床高さで600mm)と下位置LL(例
えば,床高さで250mm)との間で前記フレームを昇降移動させる昇降
装置と,この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置
と,スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御
10 装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを
有し,前記制御装置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が
入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続し
ている間,前記フレームを下降させるが,前記フレームの上位置LHと下
位置LLとの間の中間停止位置LM(例えば,床高さで290mm)で,
15 前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ,そ
の後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除された後,
再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前
記下位置LLまで下降させるものであり,前記中間停止位置LMは,前記
フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生
20 じないような高さであることを特徴とする(【0006】)
イ また,本件発明2の電動ベッドは,前記フレームを下降させるときの前
記フレームの位置が,前記上位置LHと前記中間停止位置LMとの間の予
め定められた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記フレームを降下
させた後,前記中間停止位置LMで前記下降スイッチが押し状態であって
25 も一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し
状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更
に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記操作ボ
ックスから下降信号が入力されたときの前記フレームの位置が,前記特定
位置LSよりも低い場合に,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態
が継続している間,前記フレームを前記中間停止位置LMで停止させずに
5 下位置LLまで下降させるものである(【0007】 。

⑷ 発明の実施の形態
ア フレーム1の下面にはアクチュエータ12が設置されており,アクチュ
エータ12のピストンロッドの先端がリンク24を介して移動支点M1
によりリンク23の上端に回転可能に連結されている 【0011】
( ,
【00
10 14】 。

アクチュエータ12のピストンロッドがシリンダ内に退入すると,リン
ク24を介してリンク23を図2上で時計方向に回転させ,リンク23に
固定された回転軸31(図1参照)を同様に時計方向に回転させ,これに
より,連絡棒26及びリンク30を介して回転軸31に連結された回転軸
15 32も時計方向に回転し,回転軸31に固定されたリンク22及び回転軸
32に固定されたリンク25がそれぞれ固定支点F2及び固定支点F4
を中心として時計方向に回転し,これにより,固定支点F1及び固定支点
F3がフレーム1に近づく方向に移動し,結局,フレーム1と台車7との
間隔が短くなり,フレーム1が下降する(【0011】 【0014】 。
, )
20 イ フレーム1の高さは,図2に示すリンク機構により,アクチュエータ1
2のピストンロッドの進出長から幾何学的に算出することができる。即ち,
移動支点M1の位置がわかると,リンク23及び22の角度がわかり,リ
ンク22及び23の長さから,幾何学的計算により,フレーム1と台車7
との間隔,即ち,フレーム1の床からの高さを算出することができる(【0
25 015】 。

ウ ピストンロッドの位置を検出する方法としては,例えば,モータ回転量
を検出し,これによりピストンロッドの位置を検出するものがあり,モー
タ回転量を検出するセンサとしては,ホール素子を利用して磁気的に回転
数を検出するものがある(【0016】 。

エ フレーム高さLが中間停止位置LMまで低下した場合に,フレーム1の
5 下降をいったん停止し,ブザーを鳴らして警報する(【0019】)
オ 特定位置LSは,中間停止位置LMよりも若干高い位置であり,中間停
止位置LMは,フレーム1と床との間に,介護者又は患者の足が存在して
も,挟み込み等が生じないような高さであり,これ以上フレーム1が下降
すると,足を挟み込んでしまうような高さである(【0021】 。

10 ベッドを下降させた場合に,いったん中間停止位置LMで停止するので,
フレーム1の下方に足が存在しないことを確認した後,操作者が再度下降
ボタンを押した場合に,ベッドを最下位位置LLまで下降させるので,介
護者又は患者の足を挟み込んだり,周辺機器を挟み込んでしまうことを確
実に防止することができる(【0021】 。

15 操作者が操作ボックスのベッド下降スイッチを押したときに,既に,フ
レーム1の高さLがLS未満である場合,このフレーム1の下降は,フレ
ーム高さLが低位置LLに低下するまで継続し,ベッド高さが一気に下位
置LLまで下降し,ベッド高さLがフレーム1の中間停止位置LMを通過
しても,ベッドの下降は停止しない(【0022】【0023】 。下降スイ
, )
20 ッチが押された時点で,既に相当低い位置まで下降しており,その後,中
間停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが生じるおそれはなく,
また,操作者が下降スイッチを押した後,すぐに,ベッドが停止してしま
うと,操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまうためである
(【0022】 【0023】 。
, )
25 ⑸ 発明の効果
本件各発明によれば,ベッドの下降操作信号が入力されたときに,フレー
ム高さが所定高さになった時点で,フレーム下降がいったん停止するので,
ベッド下降時に,介護者又は患者がフレームと床との間に足を挟んでしまう
事故を確実に防止することができる(【0026】 。

2 取消事由1(本件訂正に関する判断の誤り)について
5 ⑴ 本件訂正事項③に関する判断の誤り(前記第3の1(1)ア)の有無について
ア 「前記アクチュエータのピストンロッドの位置を算出した結果を受けて」
の部分について
(ア) 上記訂正部分は,フレームの高さが中間停止位置LMまで下降した
かの判定について,その判定が何に基づいてされるかを具体的に特定す
10 るものであり,本件明細書には,①アクチュエータのピストンロッドの
進出長に基づいて,フレームの床からの高さを幾何学的に算出できるこ
と,②ピストンロッドの位置を検出する方法としては,モータの回転量
を検出してピストンロッドの位置を検出する方法等があること,モータ
の回転量を検出するセンサとして,ホール素子を利用して磁気的にモー
15 タの回転数を検出するものがあるなど,回転数等の計算過程を経てピス
トンロッドの進出長を検出する手段についての技術常識が記載されてい
る(【0015】 【0016】 。
, )
そうすると,上記訂正部分は,特許法134条の2第1項ただし書1
号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上,
20 特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず,同法134条
の2第9項で準用する同法126条6項に適合し,また,本件明細書に
記載された事項の範囲内でするものであるから同法134条の2第9項
において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 原告は,本件明細書にはピストンロッドの位置を「検出」するとの
25 記載はあっても,ピストンロッドの位置を「算出」するとの記載はない
から,上記部分に係る訂正は本件明細書の記載に基づかないものである
旨主張する。
しかしながら,検出は,そこに至るために一連の具体的手順を積み重
ねるのが通常であるが,
「検出」の語義からして,その過程に「算出」に
当たる計算過程があっていけないとは解し得ないから,
「検出」の中には
5 「算出」も含まれるといえ,実際にも,
「検出」の中に「算出」が含まれ
るとの前提で「検出」との用語を用いている例が認められる(本件明細
書の段落【0016】,甲30,31)。そして,前記(ア)のとおり,本
件明細書には,モータの回転数等の計算過程を経てピストンロッドの進
出長を検出する手段についての技術常識が記載されているから(本件明
10 細書【0016】 ,上記訂正事項は,ピストンロッドの位置の検出方法

を本件明細書に記載の技術常識に従い,より具体的な態様のものに限定
したものにすぎないといえる。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
イ 「ブザーを鳴らして警報し」の部分について
15 (ア) 上記訂正部分は,フレームの高さが中間停止位置LMまで下降する
動作に別の動作を単純に縦列付加するものであるから,特許法134条
の2第1項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする
ものであり,実質上,特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該
当せず,同法134条の2第9項で準用する同法126条6項に適合す
20 る。また,本件明細書には,
「そして,フレーム高さLが中間停止位置L
M(床高さで290mm)まで低下した場合に(ステップS4),フレー
ム1の下降を一旦停止する(ステップS5)。そして,ブザーを鳴らして
警報する(ステップS6) (
」 【0019】)との記載があるから,明細書
に記載された事項の範囲内でするものであって,同法134条の2第9
25 項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 原告は,周知技術でない技術的事項を付加することは,特段の事情
がない限り,特許請求の範囲を実質的に変更する訂正に当たる旨主張す
るが,前記(ア)のとおり,上記訂正部分は,単純に動作を付加するのみ
であって,その動作がないものを特許請求の範囲から除くという純然た
る特許請求の範囲の減縮にすぎず,特許請求の範囲が実質的に変更され
5 る余地があるものとはいえないから,採用することができない。
また,原告は,ブザーを鳴らして警報することの目的はベッドの下降
が停止していることを知らせるという新たな課題を解決する手段を導入
するものであるから,特許請求の範囲を実質的に変更する訂正に当たる
旨主張する。ブザーが鳴るのはフレームの下降開始時でもフレーム下降
10 中でもなく,フレームが中間停止位置LMで下降停止した後であるが(本
件明細書の【0019】 ,フレームがいったん停止する高さである中間

停止位置は「介護者又は患者の足が存在しても,挟み込み等が生じない
ような高さ」【0021】
( )であり,足の挟み込み等が生じ得るのは中間
停止位置から更にフレームを下降させた際であるから,ブザーを鳴らし
15 て警報することの目的は,操作者において「フレーム1の下方に足が存
在しないことを確認」 【0021】
( )させ,「介護者又は患者の足を挟ん
でしまうことを防止する」【0005】)ことを確実に履践させるための
ものと認められる。したがって,新たな課題解決手段の導入ではないか
ら,原告の上記主張は前提を欠くものであり,採用することができない。
20 ウ 小括
以上のとおりであるから,本件訂正事項③は訂正の要件を満たすもので
あり,本件訂正を認めた本件審決の判断に誤りはないから,取消事由1は
理由がない。
3 取消事由2(本件訂正発明1の進歩性に関する判断の誤り)の有無について
25 ⑴ 相違点2の認定の誤り(前記第3の2(1)ア)の有無について
ア 甲1には,別紙2「甲1の記載(抜粋)」のとおりの記載がある(訳は,
甲1添付訳文,甲第10号証,本件審決による。 。この記載によると,本

件審決が認定するとおりの甲1発明(前記第2の3⑵ア)を認定すること
ができる。
本件審決が認定する相違点2は,前記第2の3⑵ウ(イ)のとおりである
5 が,①本件訂正発明1において,
「フレームが中間停止位置LMより上方か
ら下位置LLまで連続して移動される際に,一旦停止させ,その後,下降
スイッチが押下された場合に下位置LLまで下降させる」こと(以下「相
違点2①」という。 ,②「ホール素子を利用してアクチュエータのピスト

ンロッドの位置を算出した結果を受けて」フレームの高さが中間停止位置
10 LMまで下降したか判定すること(以下「相違点2②」という。 ,③「フ

レームと床との間に介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じな
いように」,下降スイッチが押し状態であってもフレームをいったん停止
させ,「ブザーを鳴らして警報」すること(以下「相違点2③」という。)
の3つの技術的事項から成り,それぞれが独立に置換可能な技術事項であ
15 るから,各々個別に検討できるものと認められる。
原告は,このうちの相違点2②について,相違点として認定できない旨
主張している。
イ そこで,相違点2②について検討する。
(ア) 甲1発明は,管部110がねじ式リニアアクチュエータ98のねじ
20 120に対して直線移動で駆動し,磁石112がホール効果センサ11
6,118の近傍に来ることで,ホール効果によりホール効果センサ内
の電圧が高まり,あらかじめ定めた電圧値になると,その電圧をホール
効果センサで検出し,ホール効果センサ116,118からローレベル
信号が制御回路の接続点162に加えられ,そのことにより第1モータ
25 80及び第2モータ96の作動が停止されるものである(甲1の[003
6],[0038],[0053])。
他方,本件訂正発明1は,
「ホール素子を利用して前記アクチュエータ
のピストンロッドの位置を算出した結果を受けて」 フレームの高さが中

間停止位置LMまで下降したか「判定」するものである。
したがって,ベッドを下降させる機構として,アクチュエータに接続
5 されているのが,甲1発明では管部110であるのに対し,本件訂正発
明1ではピストンロッドであり,位置を判定する手段が,甲1発明では,
磁石112がホール効果センサ116,118の近傍に来た際にホール
効果によりホール効果センサ内に生じた所定の電圧値を接続点に加える
ことであるのに対し,本件訂正発明1では,
「算出した結果を受けて」で
10 ある点で異なる。
そうすると,本件訂正発明1と甲1発明とは,相違点2②の点で一応
相違するといえる。
(イ) しかしながら,相違点2②は,実質的な相違点とはいえないと解す
るのが相当である。
15 甲1発明の管部110は,軸受部材108に摺動接触して支持された
状態で,ねじ式リニアアクチュータ98のねじ120に対して直線移動
で駆動できるよう構成される円筒状の部材であるが(甲1の[0036],
FIG-3A) 本件訂正発明1のピストンロッドも,
, 本件訂正明細書に
「アクチュエータのピストンロッドがシリンダ内に退入すると」 【00

20 14】 ,アクチュエータ12のピストンロッドの進出長」
)「 (【0015】 ,

「ピストンロッドの進出退入」 【0016】
( )と記載されているように,
シリンダに対して直線移動する円筒状の部材であるから,甲1発明の管
部110は,本件訂正発明1のピストンロッドに相当する。
また,本件訂正発明1は,単に「ホール素子を利用してアクチュエー
25 タのピストンロッドの位置を算出した結果を受けて」と特定するにとど
まるところ,前記2⑴アのとおり,
「算出」との用語は,例えばモータ回
転量といった具体的な測定値から算出した結果に基づいてフレームの高
さを判定するといった,特定の計算手段を用いた構成に限定されるもの
ではないし,
「算出」に用いるセンサ等の手段及び入力値も特定されてい
ないから,このような特定では,ホール素子を利用した何らかの態様で
5 ピストンロッド又はそれに相当する構成の位置を算出した結果を受けて
フレームの高さが所定の位置まで下降したか判定する構成であればこれ
に含まれるというべきである。そして,甲1発明のホール効果センサは,
ホール効果を利用して,磁界(磁石)を近づけたことにより発生するホ
ール電圧の変化に伴い,所定の電圧値において制御回路に接続されてい
10 るセンサ出力がハイレベルとローレベルの間で切り替わり,フレームの
高さが所定の位置まで下降したか判定するものであるが,ホール効果セ
ンサとホール素子は同義と考えられ(甲24) このようなホール効果を

利用した設計における当該所定の電圧値に関する計算も,ピストンロッ
ドに相当する管部110の位置を算出するためのものといえる。そうす
15 ると,甲1発明において,磁石112がホール効果センサ116,11
8の近傍に来た際にホール効果によりホール効果センサ内に生じたホー
ル電圧値の変化にあわせて切り替えられるセンサ出力を制御回路の接続
点に加えるとの制御方法は,本件訂正発明1の「ホール素子を利用して
アクチュエータのピストンロッドの位置を算出した結果を受けて」に相
20 当するといえる。
したがって,相違点2②に係る構成は,実質的には甲1に開示されて
おり,相違点を構成するとはいえない。
ウ 被告の主張について
被告は前記第3の2(2)アのとおり主張するが,同(イ)及び(ウ)の主張
25 を採用することができないのは,前記イにて説示したとおりである。また,
同(エ)の主張は,相違点2②に係る構成が相違点である場合を前提として,
これに原告主張の技術常識を適用して進歩性はないとすることは許され
ない,あるいはその適用に阻害要因があることを指摘するものであるとこ
ろ,ことさら原告主張の技術常識を適用するまでもなく,相違点2②に係
る構成は相違点とはいえず,上記前提に誤りがあることは,前示のとおり
5 であるから,当を得ないものというほかない。
そのほか,被告がるる主張するところも,前記イの判断を左右するもの
ではない。
エ まとめ
以上によれば,本件審決が相違点2②を認定したことは誤りであるから,
10 相違点2②を除く部分が相違点2を構成することになる。
⑵ 相違点2の容易想到性判断の誤りについて
ア 相違点2③について
前記⑴のとおり,相違点2は,相違点2①及び相違点2③により構成さ
れるべきものである。本件審決は,相違点2①は容易に想到できるとして
15 おり(当裁判所としてもその結論を是認できる。 ,原告は,相違点2③の

容易想到性を否定した本件審決の判断を争っている。
イ 相違点2③の容易想到性
(ア) 相違点2③は, 『フレームと床との間に介護者又は患者の足が存在

しても,挟み込みが生じないように』 下降スイッチが押し状態であって

20 もフレームをいったん停止させ,
『ブザーを鳴らして警報』すること」で
ある。
原告は,前記第3の2⑴イ(イ)のとおり,
「フレームと床との間に,介
護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないように」との点が
用途による限定を付すものであり発明の構成とはならないから,相違点
25 を構成することもない旨主張するが,上記特定事項は,フレームが停止
する高さを何に基づいて決定するかを特定するものであるから,発明を
構成する部分であり,その主張は失当である。したがって,本件訂正発
明1が用途発明になることもない。
そうすると,同⑵イ(ア)の被告の主張につき判断するまでもなく,原
告の上記主張はいずれにせよ採用することができない。
5 (イ)a 前記第2の3⑵アのとおり,甲1発明における下方中間位置は患
者支持面が床から約14インチ(約356mm)の高さであり,同最
下位置は患者支持面が床から約8インチ(約203mm)の高さであ
るところ,下方中間位置から最下位置に153mm下降できるという
ことは,少なくともフレームの下端が床から153mm以上離れてい
10 なければならないから,下方中間位置でのメインフレーム12の床か
らの高さは153mmよりは高いことになる。
ここで,甲2技術事項に係る別紙3の記載によると,足が届く範囲
の可動部と床面との間に120mm以上の寸法があれば,足を挟み込
む危険がないものと理解される。
15 そうすると,甲1発明における下方中間位置でのメインフレーム1
2の床からの高さは,本件訂正発明1の「介護者又は患者の足が存在
しても,挟み込み等が生じないような高さ」
(本件訂正明細書【002
1】)であるといえ,また,甲1発明の最下位置は「床に近接して配置
される」ものであり(甲1[0011],FIG-4),足が挟み込まれ
20 る高さであることは明らかであるから,最下位置に向けて下降する下
方中間位置は「これ以上フレーム1が下降すると,足を挟み込んでし
まうような高さ」(本件訂正明細書【0021】)である。
そして,甲1には,
「磁石112のホール効果センサ118に隣接し
た配置までの移動は,下方中間位置でのベッド10の位置付けに相当
25 し,磁石112のホール効果センサ116に隣接した配置までの移動
は,上方中間位置でのベッド10の位置付けに相当する。 [0036])


との記載があり,そして,甲1発明の管部110は,軸受部材108
に摺動接触して支持された状態でねじ式リニアアクチュータ98のね
じ120に対して直線移動で駆動できるよう構成されており,磁石1
12は,水平移動に当たり必ずホール効果センサ118及び116に
5 隣接した位置を通るから,甲1発明のベッドは,必ずフレームが下降
する際に上方中間位置及び下方中間位置で自動的に下降を停止するベ
ッドである。
b ここで,昇降機能を有するベッドにおいて,フレームと床との間に,
人体の侵入を防止し,人体が挟み込まれないよう下降を停止させるこ
10 とは当業者にとって極めて馴染みの深い周知技術であると認められる
(甲4の【請求項1】,
【0003】 甲21の
, 【請求項1】 0003】

【 ,
【0005】参照)。
そして,昇降機能を有するベッドにおいて,フレームと床との間に
人体が挟み込まれないよう警告音で周囲に異常を知らせることも当業
15 者にとって極めて馴染みの深い周知技術であると認められる(甲4の
【0014】【0010】
, ,甲21の【0014】【0010】参照)
, 。
c そうすると,上記aのように,介護者又は患者の足が存在しても,
足の挟み込みが生じないような下方中間位置においてフレームの下降
は停止するが,それ以上フレームが下降すれば介護者又は患者の足が
20 挟み込まれてしまうことになる甲1発明に接した場合,昇降機能を有
するベッドにおいて,人体の侵入を防止し,人体が挟み込まれないよ
うにベッドの下降を停止するとの周知技術に従い,その下降を停止す
る高さを「前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在し
ても,挟み込みが生じないよう」な意図で設定し,この際,警告音で
25 フレームと床との間に人体が挟み込まれないよう知らせるとの周知技
術に従い,警告音を発するようにすることは,当業者には格別困難な
ことではないといえる。
(ウ) 被告の主張について
被告は,前記第3の2(2)イ(ウ)のとおり,足を挟んでしまうことの防
止という課題は甲1発明に内在する課題とはいえない旨主張する。しか
5 しながら,「特開2002-125808号公報」(甲4)及び「特開2
002-125807号公報」
(甲21)においては,各【発明の詳細な
説明】の中に,子供が入り込むことの防止に係る記載がされているとこ
ろ,各請求項1には,それぞれ「床部下への人体の侵入を監視して,人
体の侵入ありとした際に」又は「人体が存在する旨の検知信号により」
10 と記載されているのであり,子供が入り込むことのみに限定されるもの
と解すべき事情も見当たらないことに照らしても,これらの発明の技術
的思想としては,人体が挟み込まれるのを防止するということが抽出で
きるのであり,人体の対象には介護者又は患者も含まれるから,当業者
であれば,甲1に介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止すると
15 の課題の記載や示唆がなくとも,甲1発明のベッドを介護者又は患者の
足を挟んでしまうことを防止するとの意図の下に設定することは容易と
いうほかない。したがって,上記主張は,採用することができない。
さらに,被告は,同(エ)のとおり,
「ブザーを鳴らして警報」すること
は容易想到ではない旨主張するが,上記(イ)cのとおり,昇降機能を有
20 するベッドにおいてフレームと床との間に人体が挟み込まれないよう警
告音で周囲に異常を知らせることは周知技術であるところ,人体の挟み
込みの防止のために警報音を鳴らすということの目的は,人体の挟み込
みの防止のためにフレームの下降を停止して実際に挟み込みを防止する
こととは異なり,人体が挟み込まれる前の所定の段階であらかじめ操作
25 者を含む周囲の者に注意確認を促すことにある(警報音を鳴らすものの
フレームの下降を人体の接触を感知するまで停止しないという選択もあ
り得るから,警報音を鳴らすこととフレームの下降停止とは独立に置換
可能な独立の技術的事項である。 。したがって,フレームと床との間に

人体があって実際に挟み込みの危険があるか否かは,人体の挟み込みの
防止のために警報音を鳴らすという技術的事項を導入するに際して直接
5 の関係を有するものではない。そうすると,警告音を発する場面を,異
物を検出した段階とするのか,あるいは,フレームがそれより下降すれ
ば人体の挟み込みの危険が生じ得る高さとするかは,設計的事項にすぎ
ず,「特開2002-125808号公報」(甲4)及び「特開2002
-125807号公報」
(甲21)に記載の発明から認められる周知技術
10 と甲1発明とは,むしろ警報音を鳴らす局面,対象又は目的を共通とす
るといえる。したがって,下方中間停止位置で常に自動的に下降を停止
する甲1発明において,上記周知技術に基づいて下方中間停止位置で停
止した際に「ブザーを鳴らして警報」することは容易に想到できるとい
え,上記周知技術が異常を検知した際に警報音を発するものである点が
15 甲1発明に同技術を適用することを妨げるものではない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。。
そのほか,被告がるる主張するところも,前記イの判断を左右するも
のではない。
(エ) まとめ
20 以上によれば,相違点2①に加えて,相違点2③についても容易に想
到できるというべきであるから,本件審決の相違点2の容易想到性判断
には,誤りがある。
⑶ 小括
以上のとおりであるから,本件審決が本件訂正発明1が進歩性を欠如しな
25 いとした判断には誤りがあるから,取消事由2は理由がある。
4 取消事由3(本件発明2の進歩性に関する判断の誤り)の有無について
⑴ 相違点3の容易想到性について
ア 甲3には,別紙4「甲3の記載(抜粋)」のとおりの記載がある。この記
載によると,本件審決が認定するとおりの甲3発明(前記第2⑶ア)を認
定することができる。
5 イ 甲1発明は,医療用のベッド10に関し,患者の予期されるニーズに従
って,あらかじめ選択される垂直方向高さ位置にすることを課題とし,下
方中間位置として,
「ベッド10に出入りするための便利な高さ」を選択し
たものである(その高さは,同時に,介護者又は患者の足が存在しても挟
み込みが生じない高さであることは前述までのとおりである。 。

10 一方,甲3発明は,前記アのとおり,車輌用幌開閉装置に関し,幌を閉
じる際に物を挟んでしまう危険性があるという問題に鑑み,幌が全閉する
手前で自動的に一時停止し,確実に安全を確認することができる車輌用幌
開閉装置を提供することを課題とし,さらに操作者に不快感を与えないこ
とを課題とするものである。
15 両者の技術分野は隔絶しているものであり,物を挟んでしまう危険性を
回避するとの抽象化された課題としてしか共通せず,このように異なる技
術分野の異なる発明から共通の課題を抽出し,相互の技術分野においてそ
の特性に合わせた具体的な解決手段を適用しようとすることは,特段の創
意を要することといえる。
20 したがって,甲1発明に甲3発明を適用する動機付けは存在しないとい
うべきであるから,相違点3は当業者において容易想到とはいえない。
ウ 原告は,前記第3の3(1)アのとおり,①不感帯又は許容範囲を設けるこ
とや,不感帯又は許容範囲内から動作を開始した場合は所定の停止位置で
停止させないことは当業者にとって公知であったこと,②甲1発明に不感
25 帯制御技術に関する記載又は示唆があること,③甲1発明及び甲3発明の
課題が共通すること,④甲1発明と甲3発明の技術分野が同一であること
からすると, 当業者にとって,甲1発明に甲3発明を組み合わせる動機付
けがある旨主張する。
しかしながら,上記①については,原告の提示する公知例(甲19,2
0)は,農作業車の前部に指示された作業部の対地高さの制御に関するも
5 のや,昇降台の昇降位置の制御に関するものであり,医療用ベッドに関す
る甲1発明と車輌用幌開閉装置に関する甲3発明に共通する技術を明ら
かにするものではないから,上記主張は採用することができない。
また,上記②については,原告は,甲1発明には,ホール効果センサか
ら停止信号が加えられた位置と実際に停止をした位置との間に若干の間
10 隔があることから,この間隔中のある位置から更に下降動作を開始できる
ことをもって,上記の停止信号が加えられた位置を本件発明2の特定位置
LSの開示又は示唆とみることができるとするところ,当業者がこのよう
な技術上の制限から生じる誤差をもって特定の技術上の思想を見出すこ
とは困難というべきであるから,上記主張は採用することができない。
15 そして,甲1発明及び甲3発明の課題が共通するものではなく,甲1発
明と甲3発明の技術分野が同一でないことは前記アのとおりであるから,
上記③及び④の主張も採用することができない。
そのほか,原告がるる主張するところも,前記アの判断を左右するもの
ではない。
20 ⑵ 小括
以上のとおり,相違点3は容易想到とはいえないから,本件発明2が進歩
性を欠如しないとした本件審決の判断に誤りはなく,取消事由3は理由がな
い。
5 取消事由4(本件発明2の明確性要件に関する判断の誤り)の有無について
25 本件発明2の特定位置LSの技術的意義は,①下降スイッチが押された時点
で既に相当低い位置まで下降していれば,中間停止位置LMで停止しなくても
足の挟み込みが生じるおそれがないこと,②下降スイッチが押された時点で,
すぐにベッドが停止してしまうと,操作者が装置の故障等を疑い,操作を煩雑
にしてしまうとの技術的思想から(本件訂正明細書【0021】,
【0023】 ,

特定位置LSは,中間停止位置LMよりも若干高い位置(【0021】)に設け
5 られるものであり,実施の形態では中間停止位置LMの290mmより10m
m高い300mmとされている(【0018】 。

したがって,特定位置LSの技術的意義は明瞭であり,当業者は,その技術
的意義に従い,フレームの下降速度や想定される操作者等の種々の因子を考慮
の上,足の挟み込みが生じるおそれがなく,かつ,操作者が装置の故障等を疑
10 って操作を煩雑にしてしまわないとの両要請のバランスを図りながら,適宜,
最適な位置を設定すればよいといえ,特定位置LSが明確でないとはいえない。
原告は,ベッドを下降させるボタンを押しているのにもかかわらず停止状態
が続くのであれば,いずれにせよ操作者は故障を疑うとして,上記技術的意義
からは特定位置LSの位置を設定できない旨を主張するが,本件発明2は,下
15 降スイッチの押し状態を解除して再度下降スイッチ押下すれば下降を再開する
ものであるから,操作者が常に故障を疑うものとはいえず,その主張を採用す
ることはできない。そのほか,原告がるる主張するところも,前記判断を左右
するものではない。
以上のとおり,特定位置LSは明確といえるから,本件発明2が明確性要件
20 を満たすとした審決の判断に誤りはなく,取消事由4は理由がない。
6 取消事由5(本件発明2のサポート要件に関する判断の誤り)の有無につい

本件発明2の課題は,「ベッドを下降させたときに,フレームと床との間で,
介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止すること」
(本件訂正明細書【0
25 005】)と,「操作者が下降スイッチを押した後,すぐにベッドが停止してし
まうと,操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまう」
(【0023】)
問題を解消することと認められ,前記5のとおり,本件発明2の特定位置LS
は,この課題を解決するものと認められるので,本件発明2は,その課題を解
決するための手段が本件明細書に記載されているといえ,当業者において,そ
の課題を解決できると認識できるものといえる。本件審決のサポート要件に関
5 する判断は,これと同旨であり,いずれにせよ,その結論に誤りはない。
なお,原告は,本件発明2は,むしろ,足の挟み込みの防止という課題の達
成を大きく阻害するものである旨主張するところ,本件訂正明細書の「下降ス
イッチが押された時点で,既に相当低い位置まで下降しており,その後,中間
停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが生じる虞はな」 (
い 【0023】)
10 との記載は,中間停止位置で停止するのが操作者に「フレーム1の下方に足が
存在しないことを確認」【0021】
( )させる点にあることからすると,下降ス
イッチを押してフレームを下降させる際に既にフレームが相当低い位置にあれ
ば,自ずと操作者の意識が床とフレームとの間に向くから,むしろ,フレーム
が高い位置にあって,操作者の意識が床とフレームとの間に向かない場合こそ,
15 フレームと床との間に足の挟み込みが生じるおそれが高いとの知見に基づくも
のと理解できる。もとより,実用的技術にすぎない本件発明2について,
「確実
に防止する」との本件明細書の段落【0026】の記載を殊更に額面どおり受
け取って,本件発明2の構成によれば必ず足の挟み込みが生じなくなるとして
いるなどとは解すことは相当でない。そうすると,本件発明2における「特定
20 位置LS」に関する構成をとったとしても,フレームと床との間に足を挟んで
しまうことを防止する相応の効果は引き続き認め得るのであり,上記課題の達
成を大きく阻害するとはいえないから,原告の上記主張は,採用することがで
きない。そのほか,原告がるる主張するところも,前記判断を左右するもので
はない。
25 以上のとおり,本件発明2は,当業者がその課題を解決できると認識できる
範囲のものであるから,本件発明2がサポート要件を満たすとした審決の判断
に誤りはなく,取消事由5は理由がない。
7 結論
以上の次第で,取消事由2は理由があるから,本件審決のうち,本件訂正発
明1に係る部分を取り消すこととし,取消事由1,3ないし5は理由がないか
5 ら,本件発明2に係る原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決す
る。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅 野 雅 之
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
中 村 恭
(別紙1)
本件訂正明細書の記載
(下線部は平成22年12月20日付け訂正請求書による訂正後の訂正部分)
5 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,ベッドの背の部分及び膝の部分等を上げたり,下げたりすることができ
る電動ベッドにおいて,ベッド全体を昇降することができる電動ベッドに関する。
10 【0002】
【従来の技術】
介護用ベッドは,フレーム上に,例えば,背ボトム及び膝ボトムを配置し,背ボト
ムをその膝ボトム側の部分を中心として回動可能に設け,膝ボトムをその背ボトム
側の部分を中心として回動可能に設けており,アクチュエータにより,背ボトム及
15 び膝ボトムを駆動することにより,ベッドの背の部分及び膝の部分を上げたり,下
げたりすることができるようになっている。また,介護用ベッドは,その全体もア
クチュエータにより駆動されて昇降することができるようになっている。これによ
り,患者がベッド上に横たわっている場合には,寝返りを打ってベッドから落下し
た場合の衝撃を軽減するために,ベッド全体を下降させて下位置(例えば,マット
20 レスの上面が床から250mm)に設定し,患者を診察又は介護する場合には,介
護者が患者に対して診察又は介護しやすいように,ベッド全体を上昇させて上位置
(例えば,マットレスの上面が床から600mm)に設定することができる。
【0003】
このような電動ベッドにおいて,背ボトム及び膝ボトムを上昇下降させる場合及び
25 ベッド全体を昇降させる場合には,操作ボックスに設けられたスイッチボタンを押
すことによって,アクチュエータが動作して,このアクチュエータに駆動されて背
ボトム,膝ボトム及びベッドフレームが移動する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,近時,電動ベッドは柵等の種々の付属品をフレームに取り付けるよ
5 うになっており,フレームの構造自体が上下に大きなものになっている。このため,
フレームの下端と床との間の隙間が小さくなっており,ベッド全体を下降させるた
めに,アクチュエータを駆動してフレームを下降させると,患者又は介護者の足を
挟んでしまう危険性が増えてきた。しかし,従来の電動ベッドはこのようにベッド
全体を下降させたときの問題に対する対策がなされていなかった。
10 【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって,ベッドを下降させたときに,
フレームと床との間で,介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止することが
できる電動ベッドを提供することを目的とする。
【0006】
15 【課題を解決するための手段】
本発明に係る電動ベッドは,寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置され
る台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LH(例
えば,床高さで600mm)と下位置LL(例えば,床高さで250mm)との間
で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置による前記フレームの
20 昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示さ
れたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボッ
クスとを有し,前記制御装置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が
入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,
前記フレームを下降させるが,前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間の中
25 間停止位置LM(例えば,床高さで290mm)で,前記下降スイッチが押し状態
であっても前記フレームを一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける下降
スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場
合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記中間停止
位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み
込みが生じないような高さであることを特徴とする。なお,床高さとは,ベッドの
5 上にマットレスを敷いた場合に,そのマットレスの上面の床からの高さである。
【0007】
本発明に係る他の電動ベッドは,寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置
される台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置L
Hと下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置
10 による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フ
レームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信
号を出力する操作ボックスとを有し,前記制御装置は,前記操作ボックスから下降
信号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続して
いる間,前記フレームを下降させるが,そのときの前記フレームの位置が,前記上
15 位置LHと前記中間停止位置LMとの間の予め定められた特定位置LSかそれより
も高い場合に,前記フレームを降下させた後,前記中間停止位置LMで前記下降ス
イッチが押し状態であっても一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける下
降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された
場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記操作ボ
20 ックスから下降信号が入力されたときの前記フレームの位置が,前記特定位置LS
よりも低い場合に,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,
前記フレームを前記中間停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させるも
のであり,前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者又は患者
の足が存在しても,挟み込みが生じなような高さであることを特徴とする。
25 【0008】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1
は本発明の実施形態に係る電動ベッドの構造を示す斜視図,図2は同じくその正面
図,図3はそのリンクの動作を示す図である。台車7上に頭側及び足側の2つのリ
ンク装置10及び11を介して,フレーム1が支持されている。フレーム1には,
5 背ボトム2,背湾曲部(図示せず),腰ボトム3,膝ボトム4,膝湾曲部5及び足ボ
トム6がこの順に配置されている。背ボトム2は膝ボトム4側を中心として回転可
能にフレーム1に設置されており,膝ボトム4は背ボトム2側を中心として回転可
能にフレーム1に設置されている。腰ボトム3は固定されており,足ボトム6は膝
ボトム4の上昇下降にあわせて連動して上下動する。背湾曲部及び膝湾曲部5は湾
10 曲してその両側の各ボトムを滑らかに連結するものであり,両者は同一の構造を有
する。フレーム1の下部に設置されたアクチュエータ13,14は夫々膝ボトム4
及び背ボトム2を駆動するものである。
【0009】
台車7の4隅部には,車輪8が配置されていて,台車7を任意の方向に移動させる
15 ことができるようになっている。また,台車7の頭側の端部及び足側の端部には,
夫々ベッド幅方向に離隔する各1対のリンク支持部20,21が固定されている。
頭側のリンク支持部20の上端には,頭側のリンク装置10が支持され,足側のリ
ンク支持部21に上端には,足側のリンク装置11が支持されている。
【0010】
20 リンク装置10においては,リンク22がリンク支持部20の上端(固定支点F1)
に回動可能に連結されている。また,フレーム1におけるリンク支持部20に整合
する位置には,1対のフレーム支持部27(図1のみ図示)が下方に突出するよう
に固定されており,この1対のフレーム支持部27の下端(固定支点F2)にはベ
ッド幅方向に延びる回転軸31が架け渡されて回転可能に支持されている。リンク
25 22の上端はこのフレーム支持部27に支持された回転軸31に固定されており,
従って,リンク22はこの固定支点F2を中心として揺動することができる。また,
この回転軸31には,1対のリンク23の下端が固定されており,リンク22とリ
ンク23とが所定の一定角度をなして回転軸31に固定され,固定支点F2に連結
されている。これにより,リンク22,23は前記所定角度を維持したまま,固定
支点F2の周りに回転する。
5 【0011】
フレーム1の下面にはアクチュエータ12が設置されており,アクチュエータ12
のピストンロッドの先端がリンク24を介して移動支点M1によりリンク23の上
端に回転可能に連結されている。
【0012】
10 また,リンク装置11においては,リンク支持部21の上端(固定支点F3)に,
リンク25が回転可能に連結されている。そして,フレームの足側のリンク支持部
21に整合する位置には,ベッド幅方向に離隔する1対のフレーム支持部28が下
方に突出するようにして固定されており,フレーム支持部28間には回転軸32が
架け渡されて回転可能に支持されている。そして,リンク25の上端がこの回転軸
15 32に固定されている。これにより,リンク25は回転軸32を介してフレーム支
持部28(固定支点F4)に回転可能に支持されている。
【0013】
回転軸31及び回転軸32には,夫々リンク29及び30が固定されており,この
リンク29及び30間に,連絡棒26がリンク29,30に対して回転可能に連結
20 されている。 従って,回転軸31が回転すると,回転軸32はリンク29,30及
び連絡棒26を介して回転軸31に従動して回転する。
【0014】
従って,アクチュエータ12のピストンロッドがシリンダ内に退入すると,リンク
24を介してリンク23を図2上で時計方向に回転させ,リンク23に固定された
25 回転軸31( 図1参照)を同様に時計方向に回転させる。これにより,連絡棒26
及びリンク30を介して回転軸31に連結された回転軸32も時計方向に回転する。
そして,回転軸31に固定されたリンク22及び回転軸32に固定されたリンク2
5が夫々固定支点F2及び固定支点F4を中心として時計方向に回転する。これに
より,固定支点F1及び固定支点F3がフレーム1に近づく方向に移動し,結局,
フレーム1と台車7との間隔が短くなり,フレーム1が下降する。フレーム1を上
5 昇させる場合には,アクチュエータ12のピストンロッドを進出させることにより,
前述と逆の回転により,フレーム1と台車7との間隔が大きくなり,フレーム1が
上昇する。
【0015】
フレーム1の高さは,図2に示すリンク機構により,アクチュエータ12のピスト
10 ンロッドの進出長から幾何学的に算出することができる。即ち,移動支点M1の位
置がわかると,リンク23及び22の角度がわかり,リンク22及び23の長さか
ら,幾何学的計算により,フレーム1と台車7との間隔,即ち,フレーム1の床か
らの高さを算出することができる。
【0016】
15 ピストンロッドの位置を検出する方法としては,例えば,ピストンロッドの進出退
入に伴い変化する抵抗を測定するポテンショメータと,モータ回転量を検出し,又
はモータの回転速度を所定値に制御しこのモータ回転速度に動作時間を積算してモ
ータ回転量を求め, これによりピストンロッドの位置を検出するものとがある。モ
ータ回転量を検出するセンサとしては,モータ回転軸等の運動機構にスリット円板
20 を取付け,発光ダイオードからの光がスリット円板で遮られたり通過することで,
回転角度又は回転数を計測するもの,ホール素子を利用して磁気的に回転数を検出
するもの,モータの回転に伴い変化する抵抗を測定するポテンショメータがある。
更に,モータの回転速度を制御するセンサとしては, モータの回転に伴う逆起電圧
を検出して電力制御することによりモータを一定速度で回転させ,この回転速度で
25 回転した動作時間を積算してモータ回転量を求めるもの,モータにタコジェネレー
タ(発電機)を連結し,発生電圧を検出してモータを一定速度で回転するように電
力制御し,この回転速度で回転した動作時間を積算してモータ回転量を求めるもの
がある。
【0017】
このアクチュエータ12のピストンロッドの位置を検出するセンサ(図示せず)の
5 検出結果は,制御装置(図示せず)に入力され,制御装置は,このピストンロッド
の位置に基づいてアクチュエータ12の駆動を制御する。操作ボックス(図示せず)
には,ベッドの上昇及び下降を指示するスイッチが設けられており,このベッドの
上昇及び下降を指示する信号は制御装置に入力される。
【0018】
10 次に,上述のごとく構成された電動ベッドの動作について説明する。図4は本実施
形態の動作を示す制御装置のフローチャート図,図5はフレーム高さの変化を示す
図である。先ず,床高さで,ベッドの上位置LHが600mm,下位置LLが25
0mmであり,ベッ ドの昇降によりこの250mmと600mmとの間を上下す
るとする。そして,中間停止位置LMを290mm,特定位置LSを300mmと
15 する。この場合に,現在のフレーム高さL(アクチュエータのピストンロッドの位
置検出結果から求まる)が,床高さで,LS(300mm)以上か否かを判断し(ス
テップS1) LがLS以上である場合に,
, 操作ボックスのベッド下降スイッチがオ
ンか否かを判断し(ステップS2),下降スイッチがオンの場合に,アクチュエータ
12のピストンロッドを退入させて,フレーム1の下降動作を開始する(ステップ
20 S3)。これをフレーム高さLがLMに低下するまで継続する (ステップS4)。但
し,途中で,下降スイッチがオフになった場合にはフレームの下降を停止し(ステ
ップS2),ステップS1に戻る。
【0019】
そして,フレーム高さLが中間停止位置LM(床高さで290mm)まで低下した
25 場合に(ステップS4),フレーム1の下降を一旦停止する(ステップS5)。そし
て,ブザーを鳴らして警報する(ステップS6)。
【0020】
その後,ベッド下降スイッチがオンか否かを判断し(ステップS7),ベッド下げス
イッチがオンのままの場合には,ベッド下降の停止状態を継続する(ステップS8)。
操作ボックスのベッド下降スイッチがオフになった場合に(ステップS7) ステッ

5 プS1に戻り,そのときのフレーム高さLが当然にLS未満であるので,ステップ
S9に移る。そして,ベッド下降スイッチが再度オンになった場合に,ベッド下げ
動作(フレーム下降動作 )を再開する(ステップS10)。そして,フレーム高さ
Lが下位置LLに達するまで,フレームを下降させる(ステップS11)。このよう
に,ステップS5でフレーム下降が一旦停止した後,操作者が操作ボックスのベッ
10 ド下降スイッチの押し状態を解除し(ステップS7のNo),その後,再度ベッド下
降スイッチを押下した場合に(ステップS9のYes) ベッド下げ動作が再開され,

フレーム下降が一旦停止した後,操作者がベッド 下降スイッチを一旦解除しない
限りは,フレームの下降が再開されないようになっている 。
【0021】
15 このときのベッド下降パターンを図5の①に示す。即ち,下降開始時のベッド高さ
L(例えば,600mm)が,特定位置LS(例えば,300mm)より高い場合
は,一旦 中間停止位置LM(例えば,290mm)で下降を停止し,その後,操作
者が再度下降ボタンを押したときに,最下位位置LL(例えば,250mm)まで
下降する。なお,上記例におけるベッド高さとは,床面と,フレーム1の縁部の下
20 面との間の距離である。また ,特定位置LSは,中間停止位置LMよりも若干高い
位置である。中間停止位置LMは,フレーム1と床との間に,介護者又は患者の足
が存在しても,挟み込み等が生じないような高さであり,これ以上フレーム1が下
降すると,足を挟み込んでしまうような高さである。本実施形態においては,上述
のように,ベッドを下降させた場合に,一旦中間停止位置LMで停止するので,フ
25 レーム1の下方に足が存在しないことを確認した後,操作者が 再度下降ボタンを
押した場合に,ベッドを最下位位置LLまで下降させるので,介護者又は患者の足
を挟み込んだり,周辺機器を挟み込んでしまうことを確実に防止することができる。
【0022】
一方,操作者が操作ボックスのベッド下降スイッチを押したときに,既に,フレー
ム1の高さLがLS(床高さで300mm)未満である場合は(ステップS1),ス
5 テップS9に移り,ベッド下降スイッチがオンか否かを判断し,ベッド下降スイッ
チがオンである場合に,フレーム1の下降動作を開始する(ステップS10)。この
フレーム1の下降は,フレーム高さLが低位置LL(床高さで250mm)に低下
するまで継続し,ベッド高さが一気に下位置LLまで下降する(ステップS11)。
従って,ベッド高さLがフレーム1の中間停止位置LMを通過しても,ベッドの下
10 降は停止しない。ステップS9でベッド下降信号が入力されていないと判断される
と,ベッドの下降は停止したまま,ステップS1に戻る。フレーム高さLが低位置
LLまで低下した時にベッドの下降を停止する(ステ ップS12)。
【0023】
この下降パターンは図5の②又は③に示す。即ち,②のパターンのように,下降信
15 号を入力した時点のベッド高さ位置Lが特定位置LS(300mm)より低い場合
には,ベッドは,中間停止位置LM(290mm)で停止することなく,最下位位
置LLまで下降する。これは,下降スイッチが押された時点で,既に相当低い位置
まで下降しており,その後,中間停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが
生じる虞はなく,また,操作者が下降スイッチを押した後,すぐに,ベッドが停止
20 してしまうと,操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまう。このため,
この場合は,中間停止位置LMで停止させない。
【0024】
なお,下降スイッチが押された時点で,ベッド高さLが既に中間停止位置LMより
低い場合(図5の③)は,ステップS1にて,LがLS未満であるので,ベッドは,
25 当然に,最下位位置LLまで一気に下降する。
【0025】
上述のように,本実施形態によれば,ベッド下降時に,ベッドのフレーム1と床と
の間に,介護者又は患者の足を挟み込んだり,周辺機器を挟み込む事故を確実に防
止することができる。なお,本発明は,上記実施形態のように,背ボトム及び膝ボ
トムが回動する介護ベッドに限らず,種々の電動昇降ベッドに適用することができ
5 ることは勿論である。また,フレームの昇降装置は,上述の実施形態のように,リ
ンク装置及びこれを駆動するアクチュエータに限らず,アクチュエータのような駆
動装置が直接フレームを昇降させるような構造としてもよい。
【0026】
【発明の効果】
10 以上,詳述したように,本発明によれば,ベッドの下降操作信号が入力されたとき
に,フレーム高さが所定高さになった時点で,フレーム下降が一旦停止するので,
ベッド下降時に,介護者又は患者がフレームと床との間に足を挟んでしまう事故を
確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
15 【図1】本発明の実施形態の電動ベッドの構造を示す斜視図である。
【図2】同じくその正面図である。
【図3】リンク機構の動作を示す図である。
【図4】制御装置の制御態様を示すフローチャート図である。
【図5】ベッドの下降態様を示す図である。
20 【符号の説明】
1:フレーム
2:背ボトム
3:腰ボトム
4:膝ボトム
25 5:膝湾曲部
6:足ボトム
7:台車
10,11:リンク装置
12~14:アクチュエータ
22,23,25:29,30:リンク
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
(別紙2)
甲1の記載事項(抜粋)
[請求項]
5 1.高さ調節可能な医療用のベッドにおいて,
人をあおむけ姿勢で支持する支持面と,
前記ベッドの頭端と足端を定める前記支持面を支持するメインフレームと,
前記メインフレームを床面に対して相対的に上昇及び下降させる支持部材と,
前記支持部材に接続され,前記メインフレームに対して相対的に前記支持部材
10 を作動させることで,前記支持部材が前記メインフレームを最下位置と最上位
置との間で移動させるようにする,駆動手段と,
前記メインフレームを前記最下位置へ向かって及び前記最下位置から遠ざかる
ように移動させるためのスイッチを含む前記駆動手段を制御するための手動操
作スイッチを有する制御システムと,
15 を備え,
前記制御システムは,前記最下位置と上方に間隔をあけて隣接した中間位置に
前記メインフレームが位置することを感知するセンサを含み,それにより,前
記制御システムは,前記メインフレームの移動を前記中間位置で自動的に終わ
らせる,
20 ベッド。
2.前記制御システムは,前記中間位置で前記駆動手段の作動を停止して(deacti
vated)から,前記スイッチの一つをリリース(release)してから再作動(re-
actuation)すると,前記制御システムが,前記駆動手段を再作動(reactivat
e)して前記メインフレームを移動させる,
25 請求項1記載のベッド。
3.前記センサは,前記最上位置と下方に間隔をあけて隣接した第2の中間位置に
前記メインフレームが位置することをさらに感知することによって,前記制御シ
ステムは,前記第2の中間位置で前記メインフレームの移動を自動的に終わらせ
る,請求項1記載のベッド。
4.前記制御システムは,前記第2の中間位置で前記駆動手段の作動を停止して(d
5 eactivated)から,前記スイッチの一つをリリース(release)してから再作動(r
e-actuation)すると,前記制御システムが,前記駆動手段を再作動(reactivat
e)して前記メインフレームを前記最上位置に移動させる,
請求項3記載のベッド。
7.前記支持部材は,頭端部材及び足端部材を含み,前記頭端部材及び前記足端部
10 材のそれぞれは,前記メインフレームに枢動可能に装着される上端,及び床面を
係合する下端を有する,請求項6記載のベッド。
8.前記駆動手段は,前記メインフレームに対する枢動で前記頭端部材を動かす第
1モータ,及び前記メインフレームに対する枢動で前記足端部材を動かす第2モ
ータを含み,前記メインフレームを手動選択した垂直位置及び傾斜位置に移動さ
15 せるために前記モータを同時に作動させることを制御するように動作する,請求
項7記載のベッド。
[発明の背景]
[0009]従って,患者支持面に対する幅広い垂直方向高さ調節を提供し,ま
20 た,患者支持面を水平方向に便利に位置付ける長期利用ベッドに対する継続的なニ
ーズがある。さらに,このようなベッドに対して,前もって決められるベッドに支
持される患者/居住者の予期されるニーズに従って,予め選択される垂直方向高さ
位置にすることが必要とされる。
25 [発明の概要]
[0010]本発明は,とりわけ,長期医療を要する患者/居住者による使用のた
めの高さ調節可能な医療ベッドを提供する。…頭端部材および足端部材はそれぞ
れ,モータを備える駆動手段によって作動し,…モータは患者支持面を種々の水平
位置および垂直位置に,…作動させることができる。
[0011]最下位置に向かって移動する際のフレームの位置を感知し,且つ最下
5 位置に近接し,ここから間隔をあけられた下方中間位置でフレームの下方への移動
を自動的に終わらせるためのセンサが設けられる。下方中間位置は,ベッドを出入
りするための便利な高さで患者支持面を配置する,ベッドの好ましい昼間位置を提
供し,最下位置は,床に近接して配置される,ベッドの好ましい夜間位置を提供す
る。
10 [0012]足端部材の下端は,摩擦係合面に対して隣接して配置され且つ固定さ
れるローラ係合面をさらに備える。ベッドのフレームが最上位置に移動される時,
ローラ係合面は床面に係合するように適応され,摩擦係合面は床面との接触から外
れるように適応される。特に,最上位置に接近する際のフレームの位置を感知し,
且つ,最上位置に隣接しここから間隔をあけられた上方中間位置でフレームの上方
15 への移動を終わらせるように制御システムに信号を送るためのセンサが設けられ
る。上方中間位置は,治療及び検査にとって便利な位置でベッド上の患者/居住者
を配置する位置に相当する。この位置において,摩擦係合面は床と接触しており,
足端部材のローラ係合面は床と係合しなくなる。その後ベッドが上方へ移動するこ
とによって,足端部材のローラ係合面は床面との回転係合状態になり,新しい配置
20 へのベッドの水平回転移動を容易にする。
[0013]従って,本発明の目的は,垂直移動が可能であり,最上患者支持位置
と最下患者支持位置との間の中間停止位置を含む長期医療ベッドを提供することで
ある。
[0014]本発明のさらなる目的は,枢動頭端支持部材及び枢動足端支持部材を
25 含む,垂直方向に調節可能なベッドを提供することである。この場合,足端支持部
材は静止位置で床を係合するための摩擦係合面を含み,頭端部材は床面上を転がる
ローラ部材を含む。
[0015]本発明の他の目的及び利点は,以下の説明,添付の図面,及び添付の
特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
5 [図面の簡単な説明]
[0016]図1は本発明の医療ベッドの斜視図である。
[0017]図2は頭端枢動機構及びモータアクチュエータを示すベッドの頭端の
斜視図である。
[0018]図3は足端枢動機構及びモータアクチュエータを示すベッドの足端の
10 斜視図である。
[0019]図3Aはベッドの垂直位置を感知するセンサ機構を示すモータアクチ
ュエータの詳細図である。
[0020]図4は最下位置のベッドを示す側面図である。
[0021]図5は下方中間位置のベッドを示す側面図である。
15 [0022]図6は上方中間位置のベッドを示す側面図である。
[0023]図7は最上位置のベッドを示す側面図である。
[0024]図8はトレンデレンブルグ位置のベッドを示す斜視図である。
[0025]図9は逆トレンデレンブルグ位置を示す斜視図である。
[0026]図10はベッドの制御システムの概略図である。
20 [0027]図11A,図11B・・・はベッドの制御システムの回路図である。
[好ましい実施形態の詳細な説明]
[0028]図1を参照すると,本発明の医療用のベッド10は,概して,ベッド
の頭端及び足端を定め,頭端支持部材14及び足端支持部材16を含む支持部材上
25 で支持されるメインフレーム12を備える。メインフレーム12は,あおむけ姿勢
の患者/居住者を支持する平坦位置と,複数の連結位置との間の移動のために作動
させるように適応される連結式の患者支持面18を支持する。患者支持面18を連
結する好ましい機構は,参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,07
6,209号に記載されている。
[0029]頭端支持部材14は,上端がメインフレーム12に枢動可能に装着さ
5 れており,下端が横支持部24に堅く取り付けられている一対の上脚部20,22
を含む。一対の下脚部26,28は,横支持部24から下方に延在し,上脚部2
0,22の下端から横外方に配置される。下脚部26,28の下端は,床面との回
転係合において頭端支持部材14を支持するためにローラ係合面を規定するローラ
またはキャスタ30,32を含む。
10 [0030]足端支持部材16は,上端がメインフレーム12に枢動可能に装着さ
れており,下端が横支持部38に堅く取り付けられている一対の上脚部34,36
を含む。一対の下脚部40,42は,横支持部38から下方に延在し,上脚部3
4,36の下端から横外方に配置される。下脚部40,42の下端はそれぞれ,足
部材44,46を枢動可能に支持する。足部材44,46は,好ましくは,非回転
15 接触で床面を係合する摩擦係合面を規定する平板部材として形成され,足部材4
4,46に対する下脚部40,42の枢動を可能にする。
[0031]足端支持部材16は,ベッドの頭端から縦方向に離れるように延在す
る一対の補助車輪支持構造48,50をさらに含み,補助車輪支持構造48は,上
脚部34の下端と下脚部40の上端との間に配置され,補助車輪支持構造50は上
20 脚部36の下端と下脚部42の上端との間に配置される。補助車輪支持構造48の
遠位端はキャスタ車輪52を支持し,補助車輪支持構造50はキャスタ車輪54を
支持する遠位端を含む。この場合,キャスタ車輪52,54は,通常,足部材4
4,46が床面と係合して位置付けられる時,床面との係合から外れる。
[0032]メインフレーム12は,メインフレーム12の下側に装着される複数
25 のキャスタをさらに含む。具体的には,一対のキャスタ56,58は,メインフレ
ーム12の頭端隅に隣接して装着され,一対のキャスタ60,62はメインフレー
ム12の足端隅に隣接して装着される。
[0033]図2を参照すると,頭端支持部材14がより詳細に示され,上脚部2
0,22の上端がそれぞれ,枢動接続部68,70でフレーム12の縦部64,6
6に取り付けられる。上方に延在するアーム72は,上脚部20,22間で延在す
5 る横材74に堅く取り付けられ,アーム72には,枢動接続部68,70によって
規定される軸を中心とした支持部材14に印加される力を最大にする湾曲形状が形
成される。第1のアクチュエータ76はフレーム12の横部78に装着され,第1
モータと,遠位端が枢動接続部84でアーム72の上端に取り付けられているねじ
式リニアアクチュエータ82とを含む。よって,第1モータ80を作動させること
10 によって,ねじ式リニアアクチュエータ82は,フレーム12に対する枢動で頭端
支持部材14を駆動する。
[0034]図3を参照すると,足端支持部材16の上脚部34,36の上端はそ
れぞれ,枢動接続部84,86でメインフレーム12の縦部64,66に取り付け
られる。湾曲した上方に延在するアーム88は,上脚部34,36間で延在する横
15 材90に堅く取り付けられる。第2のアクチュエータ92は,メインフレーム12
の横部94に対して支持され,第2モータ96及びねじ式リニアアクチュエータ9
8を含む。ねじ式リニアアクチュエータの端部は,枢動接続部100でアーム88
の上端に取り付けられ,その結果,第2のアクチュエータ92が作動することで,
足端支持部材16の枢動を引き起こす。
20 [0035]図3Aをさらに参照すると,ねじ式リニアアクチュエータ98の特定
の所定位置を感知する感知機構102を含む第2のアクチュエータ92の詳細図が
示される。第2のアクチュエータ92の2つの極限位置間の中間位置を感知するた
めの感知機構102が設けられる。この場合,第2のアクチュエータ92は,メイ
ンフレーム12の最上位置及び最下位置を規定する2つの極限位置で自動的に停止
25 することになる。
[0036]センサ機構102は,示される実施形態において第2のアクチュエー
タ92の伝動装置筐体106に取り付けられる支持バー104を備える。バー10
4は,ねじ式リニアアクチュエータ98に平行に前方に延在し,バー104の遠位
端に堅く取り付けられる軸受部材108を含む。軸受部材108は,ねじ式リニア
アクチュエータ98の管部110を受ける外ねじ上で摺動接触して支持される。磁
5 石112は,サドルクランプ114などのクランプによって管部110上の静止位
置で留められる。一対のホール効果センサ116,118はバー104上で支持さ
れ,管部110がねじ式リニアアクチュエータ98のねじ120に対して直線移動
で駆動される際に磁石112がそれらセンサに近接近して通るように配置される。
ホール効果センサ116,118は,制御システムの一部であり,ベッド10が下
10 方中間位置及び上方中間位置に移動するときに制御システムに信号を送るために
(さらに後述されるように)制御システムの回路部に接続される。この場合,磁石
112のホール効果センサ118に隣接した配置までの移動は,下方中間位置での
ベッド10の位置付けに相当し,磁石112のホール効果センサ116に隣接した
配置までの移動は,上方中間位置でのベッド10の位置付けに相当する。アクチュ
15 エータモータ80及び96の動作は,ベッド10が最下位置と最上位置との間の垂
直移動で移動される際にメインフレーム12を床面に平行に維持するために,モー
タ80,96が,頭端支持部材14及び脚(足)端支持部材16を同時に移動させ
るように動作するように制御されることは,留意されるべきである。
[0037]図4-7に,ベッドの4つの所定の停止位置が示される。図4は,ベ
20 ッドの最下位置を示し,その位置では,より上方の,メインフレーム12により支
持されるマットレスの患者支持面が,床から約8インチである。この位置では,頭
端のキャスタ30,32と足端部材44,46が床面に触れないように上がって,
キャスタ56,58,60,62が床面に接して床面でのベッドの回転移動を容易
にする。この位置において,頭端支持部材14上のキャスタ30,32は,ベッド
25 10が低くした位置に再配置される時にフレーム12の頭端が壁に接触しないよう
にするためにベッド10の頭端におけるバンパーとしての役割を果たすことができ
ることは留意されるべきである。
[0038]図5は,下方中間位置にあるベッド10を示す。この位置では,頭端
支持部材14のキャスタ30,32が床面に接し,足端支持部材16の足端部材4
4,46も同様である。図5に示した位置では,より上方の,メインフレーム12
5 により支持されるマットレスの居住者つまり患者支持面が,床から約14インチで
あって,それは,ベッドから出ることのできる介護士施設の居住者/患者に要求さ
れるであろうような,居住者/患者の移動を容易にする昼間位置を提供する。この
位置は,患者/居住者がベッドから転がり落ちる危険があるかもしれない時に,夜
間の安全な位置を提供する,患者/居住者が床に直接隣接した位置に適応される図
10 4の位置と対照をなす場合がある。先に述べられるように,図5の下方中間位置
は,磁石112がホール効果センサ116に近接することにより定められ,それに
より,この位置に来た時に両方の前記モータ80,96の作動が停止される(deac
tivated)。図5の下方中間位置へと上方または下方どちらかへのベッドの移動にお
けるモータ80,96の所定停止位置を提供することによって,医療労働者に対し
15 て一定の基準位置が提供され,これによって,患者/居住者の安全性が改善され,
患者/居住者は常に同じ昼間位置に置かれ,ベッドを出る時に患者/居住者を危険
にさらすような高すぎる位置,または,患者/居住者がベッドから起き上がる必要
がある際に不便である低すぎる位置に患者/居住者を置くエラーを回避する。
[0039]図6は,上方中間位置におけるベッド10を示す。この位置におい
20 て,居住者つまり患者支持面は床からおよそ28インチの所に配置される。この位
置において,キャスタ30,32及び足部材44,46は,ベッドを継続して支持
し,ベッドは,医療従事者による検査及び/処置を容易に行うために上昇位置にあ
る。図5の位置から図6の位置まで移動させる際に,足部材44,46はキャスタ
30,32の回転中,床面上の静止位置のままであり,ベッドフレーム12の頭端
25 と垂直壁面との間の寸法を示す図5及び図6における寸法Xによって示されるよう
に,ベッドフレーム12の頭端は水平方向に移動することになることは留意される
べきである。このフレーム12の垂直移動は,患者/居住者の検査または処置のた
めのベッドの位置付けを容易にし,これは典型的には,医療従事者が患者/居住者
に近づくことを容易にするために,ベッドを壁から離れるように水平方向に移動さ
せる必要がある。先に述べたように,上方中間位置は,ホール効果センサ118に
5 近接させる磁石112によって規定され,この条件によって,上方中間位置におい
て両方の前記モータ80及び96の作動が停止される(deactivated)。
[0040]図7は,患者支持面を床からおよそ31インチの所に配置し,ベッド
を高くした位置に移させるベッド10の最上位置を示す。特に,足端支持部材16
が図6のその位置から図7の位置まで枢動される際に,補助車輪支持構造48,5
10 0上の補助車輪52,54は,床面より上で床面との接触から外れた位置から床面
と係合した位置まで枢動させる。この位置において,足部材44,46は,頭端キ
ャスタ30,32及び足端補助車輪52,54上でのベッド10の回転移動を行わ
せるために床面との係合から外れて持ち上げられることで,フレーム12が上昇位
置に配置されるベッド10の便利な移動を可能にする。
15 [0041]上記の中間位置に関して,上方中間位置及び下方中間位置の配置は,
所望されるように,ホール効果センサ116,118の配置を変更することによっ
て上述される高さから変えられてよいことは留意されるべきである。さらに,追加
の中間位置は,例えば,メインフレーム12を配置するための4つ以上の停止位置
を提供するための追加のセンサを設けることによって提供されてよい。
20 [0044]図10を参照すると,モータ80,96の動作は,ベッド上昇機能及
びベッド下降機能を提供するために制御部124及び126(図2も参照)を装着
した2つの頭板のうちの1つから手動指図入力を受信するコントローラ122によ
って制御される。さらに,吊り下げ型手すり及び/またはベッド手すりを装着した
制御パネル(図示せず)は,上記の米国特許第6,076,209号に記載される
25 ように,患者支持面18を連結するためのモータ(図示せず)を制御するために設
けられてよい。
[0045]制御部124と126は,ベッド上昇スイッチ128とベッド下降ス
イッチ130を含み,これらは,図10に示される個々のスイッチとして設けられ
てよい,または,それぞれが,中央の静止している位置,ならびにベッド上昇位置
及びベッド下降位置を有する三位置ロッカスイッチ(図示せず)として設けられて
5 よい。制御部124及び126が,頭板131の左側及び右側に隣接した頭板13
1の裏側に配置されるように示されることは留意されるべきである。制御部12
3,126は,頭板131の裏に配置されることで,それらをベッドが部屋に配置
される時に壁に隣接させるなど,見えない所に置く。制御部を見えない所に位置付
けることによって,制御部124,126が例えば権限のない⼈によって動作させ
10 ることになる可能性が低くなり,看護師が近づく際に便利になるが,居住者に近く
することは限定される。また,頭板131の両側に制御部124,126を位置付
けることは,ベッドの両側からベッドのベッド上昇高さ機能及びベッド下降高さ機
能の便利な動作を容易にする。
[0048]図11A及び図11Bをさらに参照すると,制御部124,126か
15 らの入力に応答して前記モータ80,96を作動させるためのコントローラ122
の制御回路が示される。前記スイッチ128,130は,インバータ134a及び
134bの入力ピンに接続され,これによって,同一のベッド上昇回路要素及びベ
ッド下降回路要素への入力が行われる。ベッド上昇回路及びベッド下降回路につい
て,ベッド上昇回路の要素を参照して説明する。この要素は,符号の後に「a」を
20 付けて特定され,その説明はベッド下降回路要素に等しく適用され,ベッド上昇回
路の要素に対応するベッド下降回路の要素は,同じ符号の後に「b」を付けて特定
される。
[0049]静止した状態で,インバータ134aへの入力は0ボルトであり,そ
れによって,インバータ134aの出力は,通常,論理ハイレベルになる。ベッド
25 上昇スイッチ128が作動させられると,直流+12vがインバータ134aの入
力ピンに印加され,インバータ134aの出力が論理ローレベルになる。インバー
タ134aの出力はダイオード138aを通じてセット・リセット(SR)フリッ
プフロップ136aの入力ピンに与えられ,そして,インバータ134aの出力が
論理ローレベルに切り替わることで,SRフリップフロップ136aのリセットピ
ンからリセット信号が除去される。同時に,前記スイッチ128からの直流+12
5 vが直ちにキャパシタ140aによりSRフリップフロップ136aのセットピン
に与えられて,SRフリップフロップ136aの出力ピンの論理状態が切り替わ
り,インバータ142aの入力をターンオンして論理ローレベルにする。SRフリ
ップフロップの出力のオンへの切り替わりにより,キャパシタ140aが+12v
に充電され,SRフリップフロップのセットピンの電圧が約100マイクロ秒で論
10 理ローレベルに戻る。以下に詳述するように,SRフリップフロップの出力は,ス
イッチ128がリリース(release)されるか,ホール効果センサ116,118の一
つから信号を受けるまで,オンに維持される。
[0050]インバータ142aの論理ローレベルでの入力によって,インバータ
142aの出力は,インバータ144aへの論理ハイレベル入力をもたらし,次い
15 で論理ロー出力をもたらす。インバータ144aの出力は,リレー148a及び1
50aを作動させるためのコイルの下側に接続されるエミッタフォロワ回路に接続
されるPNPトランジスタ146aによってバッファリングされる。リレー148
aはベッドの頭端を上方に移動させるために第1モータ80を作動させ,リレー1
50aはベッドの足端を上方に移動させるために第2モータ96を作動させる。
20 [0051]前述したように,ベッド下降スイッチ130に関連する回路要素も,
上述したベッド上昇回路と同様なやり方で動作し,ベッド下降回路の作動は,リレ
ー148bと150bを作動させて,前記モータ80,96をそれぞれベッドを下
方へ移動させるように作動させる。
[0053]前述したように,ベッドが上方か下方に移動してホール効果スイッチ
25 116,118のいずれかに近接するとき,ホール効果スイッチ116,118は
ベッドの移動を上方中間位置及び下方中間位置で終わらせる。ホール効果センサ1
16,118の出力は接続点162で制御回路に接続され,そこで,それらセンサ
の出力は通常は論理ハイレベルであるが,磁石112によるトリガでローレベルに
なる。ローレベル信号が接続点162に加えられると,その信号はインバータ16
4aと164bにより反転させられ,直ちにキャパシタ166a,166bとダイ
5 オード168a,168bをそれぞれ通じて,SRフリップフロップ136a,1
36bのリセットピンに与えられる。これにより,両方のSRフリップフロップ1
36a,136bがリセットされ,前記モータ80,96の作動を終える。約0.
1秒でキャパシタ166a,166bは直流+12vに充電され,SRフリップフ
ロップ136a,136bのリセット信号が除去される。SRフリップフロップ1
10 36a,136bの上記セットピンは論理ローレベルであるため,SRフリップフ
ロップ136a,136bの出力は,除去されたリセット信号に応答してターンオ
ンすることがない。押されていた前記スイッチ128,130がまずリリース(re
lease)されて,キャパシタ140a,140bを放電しなければならず,そし
て,前記スイッチ128,130が再作動(re-actuation)されることで,前記モ
15 ータ80,96が再び作動されて(again be activated),ベッドを垂直方向で位置
決めする。
[0055]…垂直制御スイッチ128,130のうちの1つを押下する…
[0060]また,上中間位置および下中間位置の特定の配置を,これらの位置の
みならず,ベッドの垂直移動の範囲全体にわたって追加の停止位置を設けるための
20 手段を規定する追加の位置の高さに対するユーザの好みに合わせるために調節でき
るようにする手段が提供可能である。
(別紙3)
甲2の記載事項(抜粋)
(3頁「認定基準」の欄)
5 ⑵ 足が届く範囲の可動部と床面との間には,足を挟み込む危険のある部分がな
いこと。
ただし,ベッドと床面との間が常に20mm以下のものにあっては,この限
りでない。
10 (3頁「基準確認方法」の欄)
⑵ 図2に示す寸法以上であることをスケール等により測定して確認すること。
(3頁図2)
(別紙4)
甲3の記載(抜粋)
5 (特許請求の範囲)
1 車輌の左右両側に設けられた駆動軸を中心に開閉可能な幌を開閉する車輌用幌
開閉装置において,
前記駆動軸を減速機構を介して回動するモータと,
前記モータを正転,逆転及び停止させるべく電源との接続を切り替えるスイッ
10 チング手段と,
前記幌の開放または閉成をそれぞれ指令する幌開放指令スイッチ及び幌閉成指
令スイッチと,
前記幌開放指令スイッチまたは幌閉成指令スイッチのいずれかが操作されたと
き,幌の開閉を行うべく前記スイッチング手段を切り替える作動手段と,
15 前記駆動軸に具備され,その駆動軸が幌が閉じる直前の所定位置に回動された
ことを検出する位置センサと,
前記位置センサからの位置信号に従い,前記スイッチング手段を切り替えてモ
ータを停止させる一時停止手段と,
を備えることを特徴とする車輌用幌開閉装置。
20 2 前記モータに具備され,そのモータの回転に同期したパルスを発生する回転セ
ンサと,
前記作動手段によりモータの回転が開始されてからの前記パルスの発生数を計
数するモータ駆動量算出手段と,
その計数されたパルス発生数が所定数に達しない場合に,前記一時停止手段の
25 作動を禁止する一時停止禁止手段と,
を備えることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の車輌用幌開閉装置。
(「発明が解決しようとする問題点」)
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり,幌が全閉する手前で
自動的に一時停止し,確実に安全を確認することができる車輌用幌開閉装置を提供
5 することを目的とする。
(「作用」)
幌閉成指令スイッチ又は幌開放指令ス(判決注・「幌開放指令スイッチ」の誤記
と認める。)を操作することによりモータの駆動が開始され,幌の開閉動作が開始
10 される。幌が全閉位置直前の所定位置に到達すると位置センサからの位置信号によ
り検出され,一時停止手段により自動的にモータへの通電が遮断され幌の開閉動作
が停止される。操作者は安全を確認した後,幌閉成指令スイッチ又は幌開放指令ス
イッチを操作することにより,幌の開閉動作を再開させ,幌を全閉又は全開とする
ことができる。
(2頁左下欄16行ないし右下欄6行目)
前記位置センサにより検出される所定位置の近傍に幌が停止した状態から幌の開
閉動作を始動した場合には,幌が前記所定位置に到達した時点においては未だ回転
センサからのパルス発生数が所定数に到達しないため,一時停止禁止手段により位
20 置信号の検出による一時停止作動が禁止され,幌は中断することなく,全閉又は全
開動作を行う。このため,幌閉成又は開放指令スイッチを操作した直後に幌の開閉
動作が中断してしまうということがなく,操作者に不快感を与えないという利点が
ある。
25 (3頁左下欄3ないし10行目)
幌開放指令スイッチ4又は幌閉成指令スイッチ5が押圧操作されると,車輌用電
源151から正転用切替リレー92又は反転用切替リレー93のマイル(判決注・
「コイル」の誤記と認める。)が励磁され,各切替リレー92,93の接点11
0,111が切換えられる。各指令スイッチ4,5から操作者の手指が離れた後
は,電子制御ユニット200から各リレー92,93が自己保持されるようになっ
5 ている。
(8頁左上欄19行ないし右上欄11行目)
ステップ602以下を繰り返しながら,駆動軸96,97の回転が進み,一時停
止位置P4に至ると,ステップ611からステップ613に進む。
10 ステップ613では,ステップ607で計数された処理600開始時からの回転
パルス発生数が,所定数N以上か否かが調べられる。パルス数が所定数N以上であ
れば,一時停止位置P4を中心とした不感帯位置P3又はP5より遠くから幌12
0の開閉作動が開始されたことを意味し,所定数N以下であれば不感帯位置P3,
P5内の不感帯域から開始されたことを意味する。パルス数が所定数N以上であれ
15 ばステップ614に進み,以下であればそのままステップ602に戻る。
(8頁右下欄19行目ないし9頁右上欄4行目)
第8図及び第9図(判決注・省略)は,一時停止位置P4近傍の不感帯域内から
それぞれ閉動作及び開動作させた場合のタイムチャートである。このような動作
20 は,たとえば全開位置P1から全閉しようとし,一時停止位置P4で一旦停止した
ときに何らかの不具合を発見し,幌120を開いて元に戻そうとしたときなどに起
こる。
この場合,モータ2,3の駆動が開始されて僅かな後に一時停止位置P4に至
る。ステップ609又はステップ611で一時停止位置P4が検出されステップ6
25 13に至った時点では,モータ2,3は未だ僅かしか回転していないため,回転パ
ルスの発生数が所定数Nより少ない。このためステップ614には進まず,ステッ
プ613からステップ602に戻り,一時停止位置P4で停止することなくモータ
2,3の駆動が続行される。パルス数が所定数Nより大きくなった時点では,既に
一時停止位置P4を通過しているためステップ610又はステップ612に進み,
ステップ613に至ることはない。ステップ613の処理はパルス発生数が所定数
5 Nに達しない場合に一時停止の作動を禁止する一時停止禁止手段を構成する。やが
て,幌120が全閉位置P6又は全開位置P1に到達すると,モータ2,3がロッ
ク状態になり,ステップ606からステップ630に進み,全て停止されて動作を
終了する。
10 (「効果」)
以上説明したように本発明は上記の構成を有し,幌が全閉する手前で自動的に
一旦停止する機能を備えるものであるから,誤って幌と車体との間に物を挟んでし
まう虞れがなく,安全に幌を開閉することができるという優れた効果がある。

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