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令和3(行ケ)10003審決取消請求事件

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裁判所 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年7月19日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社美少女図鑑
被告株式会社エムアップホールディングス
法令 商標権
商標法50条1項1回
商標法50条1回
商標法2条3項8号1回
商標法2条3項7号1回
キーワード 分割13回
審決10回
許諾3回
商標権1回
主文 1 特許庁が取消2020-300368号事件について令和2年12
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は,以下のとおりの商標登録第5360897号商標(以下「本件商 標」という。)の商標権者である(甲1,21)。 商 標 美少女図鑑(標準文字) 登録出願日 平成22年4月15日 設定登録日 平成22年10月15日 指 定 商 品 第9類「インターネットを利用して受信し,及び保存することができる 携帯電話機又は簡易型携帯電話機の着信用音楽又は音声,インターネッ トを利用して受信し,及び保存することができる携帯電話機又は簡易型 携帯電話機の呼出用音楽又は音声,その他のインターネットを利用して 受信し,及び保存することができる音楽ファイル又は音声ファイル,レ コード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電 子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し,及び保存 することができる静止画像あるいは動画像を記録した画像ファイル,イ

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判決文

令和3年7月19日判決言渡
令和3年(行ケ)第10003号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年7月12日
判 決
原 告 株 式 会 社 美 少 女 図 鑑
同訴訟代理人弁護士 恩 田 俊 明
被 告 株式会社エムアップホールディングス
同訴訟代理人弁護士 飛 松 純 一
山 本 光 洋
李 未 希
主 文
1 特許庁が取消2020-300368号事件について令和2年12
月8日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 被告は,以下のとおりの商標登録第5360897号商標(以下「本件商
標」という。)の商標権者である(甲1,21)。
商 標 美少女図鑑(標準文字)
登録出願日 平成22年4月15日
設定登録日 平成22年10月15日
指定商品
第9類「インターネットを利用して受信し,及び保存することができる
携帯電話機又は簡易型携帯電話機の着信用音楽又は音声,インターネッ
トを利用して受信し,及び保存することができる携帯電話機又は簡易型
携帯電話機の呼出用音楽又は音声,その他のインターネットを利用して
受信し,及び保存することができる音楽ファイル又は音声ファイル,レ
コード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電
子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し,及び保存
することができる静止画像あるいは動画像を記録した画像ファイル,イ
ンターネットを利用して受信し,及び保存することができる携帯電話機
又は簡易型携帯電話機の待ち受け画面用の画像ファイル,インターネッ
トを利用して受信し,及び保存することができる壁紙用画像ファイル,
その他のインターネットを利用して受信し,及び保存することができる
画像ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用
マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子応用機械器
具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲーム
おもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM」
指定役務
第35類「インターネットを利用して受信し,及び保存することがで
きる画像ファイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対す
る便益の提供」
第41類「通信回線を利用した音声又は音楽の提供,音楽の演奏,演芸
の上演,演劇の演出又は上演,通信回線を利用した画像の提供,映画の
上映・制作又は配給,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済
み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おも
ちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」
⑵ 原告は,令和2年6月1日,本件商標の商標登録について,商標法50条
1項所定の商標登録取消審判(取消2020-300368号事件。 「本
以下
件審判」という。)を請求し,同月18日,その登録がされた(甲21)。
特許庁は,同年12月8日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との
審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月16日,原告に
送達された。
⑶ 原告は,令和3年1月14日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2 本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,①被告から本件商標について通常使用権を許諾された株式会社
Fanplus(以下「ファンプラス社」という。)は,インターネット上で,
「月刊デジタルファクトリー」の名称で,月額制で会員に向けて,デジタル書
籍等をストリーム形式で閲覧させるサービス(以下「本件サービス」という。)
を運営しており,2018年(平成30年)9月1日を含む本件審判の請求の
登録前3年以内の期間(以下「要証期間」という。)内に,本件サービスの「美
少女図鑑 作品一覧」の見出しがあるウェブページ(http://digital-gekkan.
jp/pip/865945/pp1/062/index.html。以下「本件ウェブページ」という。甲1
7(審判乙6。以下,単に「甲17」という。))に,白く縁取りされたピン
ク色の書体の「美少女図鑑」の文字(以下「本件使用商標」という。)が顕著
に表され,その下部には複数の作品題名(例えば「女子校生 先輩は僕のいい
なり A」,「女子校生 純白 B」など)が,日付の表示(例えば「201
8.09.01」,「2017.04.01」など)などとともに,掲載され
ていた,②本件商標と本件使用商標とは,構成文字を共通にする書体のみに変
更を加えた同一の文字からなるから,社会通念上同一の商標と認められ,また,
本件サービスは,本件商標の指定商品及び指定役務中,第41類「通信回線を
利用した画像の提供」と認められる,③そうすると,本件商標の通常使用権者
であるファンプラス社は,要証期間内(「2017年4月1日」及び「201
8年9月1日」を含む。)に,本件商標と社会通念上同一である本件使用商標
の表示の下,「通信回線を利用した画像の提供」を行っていたものと認められ
るから,上記行為は,商標法2条3項8号の「役務に関する広告を内容とする
情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する,④以上によ
れば,被告は,本件商標の通常使用権者が,要証期間内に,日本国内において,
本件商標の指定商品及び指定役務中,「通信回線を利用した画像の提供」につ
いて本件商標を使用していたことを証明したものと認められるから,本件商標
の商標登録は,同法50条の規定により取り消すことができないというもので
ある。
3 取消事由
本件商標の使用の事実の判断の誤り
第3 当事者の主張
1 原告の主張
⑴ 被告又はファンプラス社による本件使用商標の使用の事実の不存在
被告は,本件使用商標の使用の事実に関し,被告が,平成28年頃から,
本件サービスの有料会員のみが閲覧可能なウェブサイト(http://digital-
gekkan.jp/。以 下「 本件ウ ェブサ イト 」 という 。乙2 )の ト ップペ ージ
(http://digital-gekkan.jp/pip/4/index.html。以下「本件トップページ」
という。甲15(審判乙4。以下,単に「甲15」という。 )に本件使用商

標が表示された別紙記載のバナー(以下「本件バナー」という。)を,本件バ
ナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件ウェブペー
ジ(甲17)に本件使用商標が表示された本件バナーの画像(本件バナーに
使用された画像を一部加工したもの。以下同じ。)を掲載したこと,令和2年
4月1月以降は,本件商標の通常使用権者であるファンプラス社が,本件ト
ップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像を継続的に掲載
したことにより,被告又はファンプラス社が本件使用商標を使用した旨を主
張する。
ア しかし,被告又はファンプラス社が平成28年頃から要証期間の末日で
ある令和2年6月17日までの間に本件トップページ及び本件ウェブペ
ージに本件バナー及びその画像を掲載したことを客観的に裏付ける証拠
は存在しない。
本件トップページを印刷した甲15及び本件ウェブページを印刷した甲
17は,いずれも本件審判請求後に印刷されたものであるから,要証期間
内に本件トップページ及び本件ウェブページが閲覧可能な状況にあったこ
とを示すものではない。
また,株式会社友ミュージック(以下「友ミュージック社」という。)代
表取締役C(以下「C」という。 作成の令和2年9月23日付け証明書
) (甲
20(審判乙9,以下,単に「甲20」という。 )には,2015年(平

成27年)3月25日に本件トップページ及び本件ウェブページに本件使
用商標の表示部分をアップロードした旨の記載があるが,この記載は,被
告主張の本件バナー及びその画像を掲載した時期である平成28年頃と
齟齬している。C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙3)の記載も,
その内容が客観的事実と整合せず,不自然な点が多々見受けられるもので
あって,信用できない。
そうすると,要証期間内に,被告又はファンプラス社によって本件トッ
プページ及び本件ウェブページに本件使用商標が表示された本件バナー
及びその画像が掲載された事実は存在しない。
イ 次に,被告がファンプラス社に対し本件商標の通常使用権を許諾したこ
との根拠として挙げる,被告及びファンプラス社間の2019年5月15
日付け吸収分割契約書(以下「本件分割契約書」という。甲37)によっ
て分割された事業は,
「ファンクラブサイト事業」であって,被告が主張す
る本件サービスを含む「電子書籍事業」ではないから,本件分割契約書は,
ファンプラス社が本件商標の通常使用権者であることの根拠にならない。
ウ したがって,被告の前記主張は,失当である。
(2) 小括
以上によれば,被告は,要証期間内に,日本国内において,被告又は本件
商標の通常使用権者が,本件商標の指定商品及び指定役務に本件商標を使用
していたことを証明したとはいえないから,これと異なる本件審決の判断は
誤りである。
したがって,本件商標の商標登録は,商標法50条の規定により取り消さ
れるべきである。
2 被告の主張
⑴ 被告及びファンプラス社による本件使用商標の使用
ア(ア) 被告は,平成25年,被告の電子書籍事業として,本件サービスを
提供する本件ウェブサイト(乙2)を開設し,その運営を開始した。
(イ) ファンプラス社は,令和2年4月1日,被告及びファンプラス社間
の2019年5月15日付け本件分割契約書(甲37)に基づく会社分
割により,被告の電子書籍事業を承継し,本件ウェブサイトを運営する
ようになった。
被告は,本件分割契約書に基づいて,ファンプラス社に対し,本件商
標の通常使用権を許諾した。
イ(ア) 被告は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な
本件ウェブサイトの本件トップページ(甲15)に本件バナーを,本件
バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件ウェ
ブページ(甲17)に本件バナーの画像を掲載した。
本件バナーには,別紙のとおり,女性を被写体とする3枚の写真(以
下,左の写真を「本件写真1」,中央の写真を「本件写真2」,右の写真
を「本件写真3」という。)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体
の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。
本件サービスの会員が,本件トップページの本件バナーをクリックす
ると,本件ウェブページに移動し,さらに,本件ウェブページのサムネ
イルをクリックすると,画像提供ページ(甲18(審判乙7) に移動し,

電子コンテンツを閲覧できる。
(イ) 本件バナーの作成及びアップロードの経緯は,次のとおりである。
本件写真1は,平成28年(2016年)5月27日に販売が開始さ
れた電子写真集「女子校生 秘密の多い委員長 B」
(以下「電子写真集
1」という。乙5),本件写真2は,平成26年(2014年)7月18
日に販売が開始された電子写真集「女子校生 ここでいいからしたいの
D」(以下「電子写真集2」という。乙6),本件写真3は,平成27
年(2015年)3月27日に販売が開始された電子写真集「女子校生
いけない妹 E」
(以下「電子写真集3」という。乙7)にそれぞれ所
収された写真である。
被告は,電子写真集1ないし3の販売開始日のそれぞれ2,3か月前
頃,所収の写真データを版権元から提供を受けた。
被告の担当者は,平成28年頃,電子写真集1ないし3の中から本件
写真1ないし3を選択し,本件バナーを作成した。
友ミュージック社は,同年頃,被告の担当者から,本件バナーの電子
データの送信を受けて,本件ウェブサイトの本件トップページに本件バ
ナーを,本件ウェブページに本件バナーの画像をアップロードした。も
っとも,本件バナーの作成に使用されたパソコン端末は既に廃棄され,
本件ウェブサイトのサーバーに係る同年頃のログは既に消滅しているた
め,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は,現在存在しな
い。
しかし,本件ウェブページのサムネイルには,具体的なアップロード
の日付が表示されており(2018年9月1日等),これらの日付から,
本件ウェブページが要証期間内に作成されたことは明らかである。
(2) 本件商標の使用該当性
ア 前記(1)イのとおり,被告又はファンプラス社は,平成28年頃以降,本
件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件トップページ及び本件ウェ
ブページにおいて本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像を
それぞれ掲載した。
被告又はファンプラス社による上記行為は,本件サービスに係る電磁的
方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に本件使
用商標を表示して役務を提供する行為(商標法2条3項7号)に該当し,
また,かかる行為は,
「美少女図鑑」のコーナーに集約される電子コンテン
ツの広告としても作用するから,本件サービスに係る役務に関する広告を
内容とする情報に本件使用商標を付して電磁的方法により提供する行為
(同項8号)に該当する。
イ 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であり,また,本件
サービスは,本件商標の指定役務中,
「通信回線を利用した画像の提供」に
該当する。
ウ したがって,被告又はファンプラス社による本件トップページ及び本件
ウェブページにおける本件使用商標の使用は,要証期間内に,本件商標の
指定役務中,
「通信回線を利用した画像の提供」に本件商標を使用していた
ことに該当する。
(3) 小括
以上によれば,被告は,要証期間内に,日本国内において,被告又は本件
商標の通常使用権者であるファンプラス社が,本件商標の指定役務中,
「通信
回線を利用した画像の提供」に本件商標を使用していたことを証明したもの
といえるから,原告主張の取消事由は理由がない。
第4 当裁判所の判断
1 前提事実
証拠(甲13,16,25,37,乙1ないし3,8)及び弁論の全趣旨に
よれば,次の事実が認められる。
⑴ア 被告(旧商号「株式会社エムアップ」)は,平成16年12月14日に設
立された,インターネットのホームページの企画立案,インターネットを
利用した各種情報の提供サービス,デジタルコンテンツの企画,立案,制
作,配信及び販売等を目的とする株式会社である。
イ ファンプラス社は,平成19年3月に設立された,ファンサイト,ファ
ンクラブの企画,開発,運営等を事業内容とする株式会社であり,被告の
完全子会社である(甲13)。
ウ 被告は,令和元年5月15日,ファンプラス社との間で,被告を「吸収
分割会社」,ファンプラス社を「吸収分割承継会社」とする同日付け本件分
割契約書(甲37)を作成し,被告がファンクラブサイト事業に関して有
する権利義務をファンプラス社に承継させる旨の吸収分割契約を締結し
た。
ファンプラス社は,令和2年4月1日,上記吸収分割契約に基づく会社
分割により,被告のファンクラブサイト事業を承継した。
⑵ 被告は,平成25年5月頃,
「月刊デジタルファクトリー」の名称で,月額
制で会員に向けて,デジタル書籍等をストリーム形式で閲覧させる本件サー
ビスを提供する本件ウェブサイト(乙2)を開設し,その運営を開始した。
その後,ファンプラス社は,令和2年9月16日当時には,本件ウェブサ
イトを運営管理していた(甲16)。
本件ウェブサイトでは,株式会社新潮社から発刊されていた女性タレント
のグラビア雑誌である「月刊シリーズ」のバックナンバーや「月刊シリーズ」
の制作に関わった写真家やクリエイターによる新作の写真集等が,電子コン
テンツとして扱われている。
2 本件トップページ及び本件ウェブページにおける本件使用商標の使用の有無
について
被告は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェ
ブサイトの本件トップページ(甲15)に本件使用商標が表示された本件バナ
ーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件
ウェブページ(甲17)に本件バナーの画像をそれぞれアップロードして,本
件バナー及びその画像を掲載したこと,ファンプラス社が,令和2年4月1月
以降,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその
画像を継続的に掲載したことにより,被告又はファンプラス社が要証期間内に
本件使用商標を使用した旨を主張するので,以下において判断する。
⑴ 甲15は,本件トップページを印刷した書証であり,甲15には,「Fの
ぶらり商店街」の見出しの下に,別紙記載の本件バナーを含む複数のバナー
が表示されている。また,甲17は,本件ウェブページを印刷した書証であ
り,甲17には,「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に,本件バナーの
画像が表示され,その画像の下には,複数の電子写真集のサムネイルが表示
されている。本件バナーには,別紙記載のとおり,女性を被写体とする3枚
の写真(本件写真1ないし3)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体
の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。
そして,証拠(甲15,17,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件ト
ップページに表示された本件バナーのリンク先が本件ウェブページであるこ
と,本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には,例えば,「女子
校生 先輩は僕のいいなり A 2018-09-01」,「女子校生 純
白 B 2018-09-01」等の記載があることが認められる。
しかしながら,甲15及び17は,いずれも要証期間経過後の本件審判請
求後に印刷されたものであるから,甲15及び17が存在するからといって,
要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に,本
件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示され
ていたものと直ちに認めることはできない。
また,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は提出されておら
ず,平成28年頃,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及
びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は
存在しない。
もっとも,甲17には,本件ウェブページに表示された各サムネイルに係
る「2018-09-01」等の日付の記載があるが,これらの日付は,当
該サムネイルに係る電子写真集の販売開始日等を示したものとうかがわれ,
また,本件バナーのアップロード時期とサムネイルのアップロード時期が当
然に同じ時期になるものとはいえないから,これらの日付から,本件バナー
が平成28年頃にアップロードされたものと認めることはできない。
⑵ 次に,C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙3)中には,①Cが代
表取締役を務める友ミュージック社は,およそ5,6年前に,被告の依頼を
受け,本件ウェブサイトの会員限定ページに本件バナーをアップロードした,
②同ページの本件バナーとリンクさせる形で,美少女図鑑のコンテンツ用ペ
ージをアップロードした,③その後,本件バナーはアップロード時と同じ状
態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変
更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,上記記載部分は,本件使用
商標を表示する本件トップページ及び本件ウェブページをアップロードした
時期が「2015年3月25日」であることを証明する旨のC作成の令和2
年9月23日付け証明書(甲20)の記載部分と齟齬するものであるから,
措信することができない。
また,G(以下「G」という。)作成の令和3年6月11日付け陳述書(乙
8)には,①Gは,被告に在籍していた,今から5,6年前,被告が保有す
るコンテンツ(乙5ないし7)から女性3名の写真と本件使用商標を使用し
て,本件バナーを作成し,友ミュージック社に依頼して,本件ウェブサイト
の有料会員のみが閲覧できる本件トップページに本件バナーを掲載し,本件
バナーのリンク先において,年齢の若い女性を被写体とするコンテンツを一
覧化した本件ウェブページを作成した,②本件バナーに表示された女性3名
の写真は,直近1,2年前に出版された,女子高生シリーズの中で比較的新
しい3冊の写真集から選んだものである,③その後,本件バナーはアップロ
ード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで
本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,本件バナーの背景の本件写
真1ないし3は,Cが挙げる乙5ないし7(電子写真集1ないし3)記載の
写真と異なる構図の写真であるから,乙5ないし7は,本件バナーのアップ
ロードが平成28年頃にされたことを直ちに裏付けるものでないことからす
ると,上記記載部分は措信することができない。
したがって,乙3及び8から,本件トップページ及び本件ウェブページに
それぞれ本件バナー及びその画像が掲載されたことを認めることはできない。
他に本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が要証期間内に
本件トップページ及び本件ウェブページに掲載されていたことを認めるに足
りる証拠はない。
⑶ 以上によれば,被告又はファンプラス社が要証期間内に本件使用商標を使
用した事実を認めることができないから,被告の前記主張は,理由がない。
3 小括
以上のとおり,被告又はファンプラス社が要証期間内に本件使用商標を使用
した事実を認めることはできないから,その余の点について判断するまでもな
く,被告は,被告又は本件商標の通常使用権者が,要証期間内に,日本国内に
おいて,本件商標の指定役務中,
「通信回線を利用した画像の提供」について本
件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
したがって,原告主張の取消事由は理由がある。
第5 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由は理由があるから,本件審決は取り消さ
れるべきものである。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 大 鷹 一 郎
裁判官 小 林 康 彦
裁判官 小 川 卓 逸
(別紙)
省略

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