令和1(ワ)11874民事訴訟 商標権
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裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
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裁判年月日 |
令和3年6月23日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告株式会社ベガスベガス 被告株式会社テキサス・カンパニー
株式会社和光興産
株式会社栄光商事
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法令 |
商標権
商標法38条3項5回 商標法2条3項8号4回 商標法32条1項3回 民法709条1回 商標法4条1項10号1回
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キーワード |
商標権29回 侵害12回 実施11回 損害賠償9回 許諾6回 差止1回 ライセンス1回
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主文 |
1 被告らは,原告に対し,連帯して1億0288万1588円並びに
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを8分し,その1を被告らの負担とし,その余を
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 |
事件の概要 |
1 本件は,原告が,被告らに対し,被告らがパチンコ・スロット施設を営業す
るに当たり,原告の登録商標に類似する別紙標章目録記載①~⑫の各標章(以
下,符号に従い「被告ら標章①」などといい,同各標章を総称し又はその一部15
をいう場合は「被告ら標章」という。)を使用したことが原告の商標権を侵害
すると主張して,被告らに対し,以下の金員の支払を求める事案である。 |
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判決文
令和3年6月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(ワ)第11874号 損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 令和3年4月16日
判 決
5 原 告 株式会社ベガスベガス
同訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫
藤 沼 光 太
同補佐人弁理士 佐 々 木 實
被 告 株式会社テキサス・カンパニー
10 (以下「被告テキサス・カンパニー」という。)
被 告 株 式 会 社 和 光 興 産
(以下「被告和光興産」という。)
被 告 株 式 会 社 栄 光 商 事
被告ら三名訴訟代理人弁護士 大 塚 陽 介
15 金 佑 樹
三 縄 隆
同補佐人弁理士 眞 島 竜 一 郎
恩 田 俊 郎
松 岡 龍 生
20 主 文
1 被告らは,原告に対し,連帯して1億0288万1588円並びに
うち3369万2590円に対する令和元年5月24日から支払済み
まで年5分の割合による金員及びうち6918万8998円に対する
令和2年10月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支
25 払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを8分し,その1を被告らの負担とし,その余を
原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
5 第1 請求
1 被告らは,原告に対し,連帯して8億5440万円並びにうち5億5440
万円に対する令和元年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員及
びうち3億円に対する令和2年10月16日から支払済みまで年3分の割合に
よる金員を支払え。
10 2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,被告らに対し,被告らがパチンコ・スロット施設を営業す
るに当たり,原告の登録商標に類似する別紙標章目録記載①~⑫の各標章(以
15 下,符号に従い「被告ら標章①」などといい,同各標章を総称し又はその一部
をいう場合は「被告ら標章」という。)を使用したことが原告の商標権を侵害
すると主張して,被告らに対し,以下の金員の支払を求める事案である。
(1) 主位的に,平成27年12月23日から平成31年4月30日までの被告
ら標章の使用につき,民法709条に基づき,損害賠償金7億1622万4
20 022円の一部である5億5440万円及びこれに対する不法行為の後の日
である令和元年5月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法
(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損
害金並びに平成22年10月1日から平成27年12月22日までの被告ら
標章の使用につき,民法703条に基づき,不当利得金13億0651万9
25 023円の一部である3億円及びこれに対する令和2年10月16日(訴え
の一部変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割
合による遅延損害金の連帯支払
(2) 予備的に,平成28年5月11日から平成31年4月30日までの使用に
つき,民法709条に基づき,損害賠償金6億3123万6982円の一部
である5億5440万円及びこれに対する不法行為の後の日である令和元年
5 5月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律
第44号による改正前)所定の年5分の割合による遅延損害金並びに平成2
2年10月1日から平成28年5月10日までの使用につき,民法703条
に基づき,不当利得金13億8377万9969円の一部である3億円及び
これに対する令和2年10月16日(訴えの一部変更申立書送達の日の翌日)
10 から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の連帯支払
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣
旨により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠番号は,特に
断らない限り,枝番を含む。)
(1)当事者
15 ア 原告は,パチンコやスロットを含む各種娯楽施設における事業の企画・
運営・管理を主たる業務とする株式会社である。
イ 被告テキサス・カンパニー,被告和光興産及び被告株式会社栄光商事は,
いずれも遊技場の経営等を業とする株式会社であり,広島県を中心とする
娯楽施設に特化した「TEXAS GROUP」(以下「テキサスグルー
20 プ」という。)を構成している。(弁論の全趣旨)
(2) 原告及び被告らが経営する店舗
ア 原告は,北海道に15店舗,山形県に10店舗,宮城県に5店舗,栃木
県に1店舗及び東京都に2店舗の合計33店舗のパチンコ店(スロット等
を設定している店舗も含め,以下「パチンコ店」という。)を運営してお
25 り,そのいずれの店舗も,「ベガスベガス札幌店」のように,店名に「ベ
ガスベガス」という名称が付されている(以下,原告の運営するこれらの
店舗を「原告店舗」又は「ベガスベガスグループ」と総称する。)。(乙
25,弁論の全趣旨)
イ 被告らは,テキサスグループとして,広島県内に7店舗,山口県内に6
店舗,福岡県内(北九州市)に1店舗の合計14店舗のパチンコ店を経営
5 している。このうち,店名が「ベガスベガス」であるのは,広島市南区所
在のパチンコ・スロット施設「ベガスベガス」(以下「段原店」という。)
及び山口県周南市所在のパチンコ・スロット施設「ベガスベガス」(以下
「周南店」といい,併せて「本件各店舗」という。)のみである。(甲1,
弁論の全趣旨)
10 本件各店舗のうち,段原店は,平成16年10月16日に開店し(甲7,
乙46,50,55の1,67,68),周南店は,平成21年4月25
日に開店した(乙83,85の1~3・47・104)。
(3) 原告の有する商標権
原告は,別紙商標権目録1記載の登録商標に係る商標権(以下「原告商標
15 1」あるいは「原告商標権1」という。)及び同目録2記載の商標権(以下
「原告商標2」あるいは「原告商標権2」という。また,これらを併せて
「原告各商標」あるいは「原告各商標権」という。)を有する。
なお,原告(当時の商号は株式会社大成商事)は,平成11年11月19
日から平成21年11月19日までの間,「ベガスベガス」,「VEGAS
20 VEGAS」を含む商標権を有していた。(甲18,19)
(4) 被告ら標章の使用
ア ウェブサイトにおける標章の表示
被告らは,遅くとも平成22年10月から,被告らが共同で運営するウ
ェブサイト(以下「被告らホームページ」という。)において,被告ら標
25 章①及び②を使用している。
イ 本件各店舗における標章の表示
被告らは,遅くとも平成27年12月23日から平成31年4月24日
までの間,周南店の看板等において,被告ら標章③~⑥を使用していた。
被告らは,遅くとも平成27年12月23日から平成31年4月25日
までの間,段原店の看板等において,被告ら標章⑦~⑫を使用していた。
5 (以上につき,甲1,6~8,弁論の全趣旨)
(5) 原告各商標の指定役務と被告役務の同一性
被告らが本件各店舗において提供する役務は,パチンコ・スロット施設の
提供であるところ,同役務は,原告各商標の指定役務である第41類の「娯
楽施設の提供」に含まれ,又はこれに類似するものである。
10 (6) 訴え提起前の経緯
原告は,本訴訟提起前に,平成27年12月23日付けで,被告テキサ
ス・カンパニーに対し,原告商標権1に関する侵害行為に関し通知したとこ
ろ,同社は,平成28年1月8日付け返答書において,名称の変更を予定し
ており,それまでの間「ベガスベガス」の名称の使用差止めの猶予を求める
15 旨回答した。(甲8,9)
原告は,平成31年1月29日付け及び同年2月20日付けで,再度,同
様の内容の通知を行ったところ,同被告からは,変更するための時間の猶予
を求める旨の回答があり,その後,被告らは,上記(4)イのとおり,同年4月
に被告ら標章の使用を中止した。(甲10~13)
20 (7) 消滅時効の援用の意思表示
被告らは,令和2年9月4日の本件第6回弁論準備手続期日において,原
告に対し,原告の被告らに対する損害賠償請求権につき,本訴提起からさか
のぼって3年より前に発生した部分については消滅時効が完成しているとし
て,これを援用するとの意思表示をした。
25 3 争点
(1) 原告各商標と被告ら標章との類否(争点1)
(2) 商標法2条3項8号の「使用」該当性(争点2)
(3) 先使用の抗弁の成否(争点3)
(4) 原告の損害及び利得額(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
5 1 争点1(原告各商標と被告ら各商標との類比)について
(1) 原告各商標の外観,観念及び称呼について
ア 原告商標1
(原告の主張)
10 原告商標1は,「ベガスベガス」というブロック体の片仮名6文字から
構成され,「ベガスベガス」との称呼が生じる。また,デジタル大辞泉に
よると,「ベガス」とは「ラスベガスの略称」であり,原告商標1はこれ
を2回繰り返すものであるから,「ラスベガス」との観念が生じる。
(被告らの主張)
15 外観及び称呼については認めるが,観念は争う。「ベガス」という語は,
「ラスベガス」の略称として用いられる場合があるとしても,「ベガスベ
ガス」と繰り返して表記した場合には,辞書等にその意味が掲載されてい
ないため,特定の観念を生じさせない造語にすぎない。
イ 原告商標2
(原告の主張)
原告商標2は,「VEGAS VEGAS」という上下2段の欧文字か
ら構成されており,冒頭の2つの「V」をいずれも大きく表示し,重ね合
25 わせた上で,「A」の中央の横棒を省略した形で表記したものである。原
告商標2からは,「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及
び,「ラスベガス」との観念が生じる。
(被告らの主張)
(ア) 原告商標2の左端部分は,「V」とその陰影をモチーフにしたものを結
5 合して図案化したモノグラムとみるのが自然であり,そのような図形部
分からは特定の称呼及び観念は生じない。したがって,原告商標2は,
①特定の称呼及び観念が生じない図形部分と,②欧文字「EGAS」と
を上下2段に分けて表記した文字部分が結合した構成である。そして,
当該文字部分からは「エガスエガス」又は「イイガスイイガス」の称呼
10 が生じるが,これらはいずれも全体として辞書等にその意味が掲載され
ていないため,特定の観念を生じさせない造語である。
(イ) 仮に,原告商標2の図形部分のうち,上段の「V」が欧文字の「V」
と認識され,上段の「EGAS」と一体となり「VEGAS」という英
単語を構成する場合であっても,下段の「V」は,上段の「V」よりも
15 薄く,やや右にずらした位置に表示されているため,下段の「EGAS」
と一体として一つの英単語を構成するものではない。この場合,原告商
標2から,「ベガスエガス」又は「ベガスイイガス」の称呼が生じるが,
これらの語についても,全体として辞書等に掲載されていないため,特
定の観念を生じさせない。
20 (2) 原告各商標と被告ら標章の類否
ア 被告ら標章①及び⑧について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章①】 【被告ら標章⑧】
25 (原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章①及び⑧は,「VEGAS VEGAS」という欧文字から
構成され,最初の「V」の左側が上方に向けてやや長めに表記されており,
「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼が生じ,「ラスベガ
ス」との観念が生じる。
5 (イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章①及び⑧は,文字の種類が異なるため,外観は
類似していないものの,称呼及び観念は共通しているため,全体として類
似している。
(ウ) 原告商標2との対比
10 原告商標2と被告ら標章①及び⑧は,前者が上下2段表記であるのに対
し,後者は横一列に表記されているほか,最初の「V」の左側が上方に向
けてやや長めに表記されているという差異はあるものの,いずれも欧文字
で「VEGAS VEGAS」と表記されている点は共通しており,外観
上類似している上に,称呼及び観念は同一又は類似しているから,全体と
15 して類似している。
(被告らの主張)
(ア) 被告ら標章①及び⑧の外観,称呼及び観念
外観及び称呼については認めるが,観念は争う。「VEGAS VE
GAS」という語は,全体としてその意味が辞書等に掲載されていない
20 から,特定の観念を生じさせない造語である。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1は片仮名表記であるのに対し,被告ら標章①は,欧文字で
表記されているほか,語頭の「V」は,左側の線が上方に向けて長めに
表記されており,やや図案化された態様であるため,外観上,両者の間
25 には著しい差異がある。原告商標1と被告ら標章①及び⑧は,いずれも
観念を生じない造語であるため,観念を比較することはできないところ,
称呼が共通しているとしても,外観の相違が称呼の類似性を凌駕するた
め,全体として両者は類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
被告ら標章①及び⑧は横一列に表記され,各標章の語頭の欧文字「V」
5 の左側の線は上方に向けて長めに表記されているのに対し,原告商標2
は,上下2段で表記されているほか,図形部分が存在し,文字部分に図
案化された「Λ」が用いられている点において,両者には顕著な外観上
の差異点が存在する。
原告商標2からは「エガスエガス」,「イイガスイイガス」,「ベガ
10 スエガス」又は「ベガスイイガス」の称呼が生じるのに対し,被告ら標
章①及び⑧からは「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」の称呼が
生じるところ,原告商標2の「ベガスエガス」以外の称呼は,被告ら標
章①及び⑧の各称呼と2音以上相違するので,容易に聴き分けることが
できる。
15 また,原告商標2の称呼「ベガスエガス」と被告ら標章①及び⑧の称
呼「ベガスベガス」を比較した場合でも,第4音の「エ」と「べ」は,
そこにアクセントが置かれ,明瞭に発音されるため,その相違が全体の
語調・語感に与える影響は大きく,両称呼は容易に聴き分けることがで
きるから,両者は称呼においても類似しない。
20 さらに,原告商標2と被告ら標章①及び⑧は,いずれも観念を生じな
い造語であるため,観念を比較することはできない。
以上のとおり,両者は外観及び称呼のいずれにおいても類似しない。
イ 被告ら標章②について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章②】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章②は,「ベガスベガス」というゴシック体の片仮名で構成
されており,「ベガスベガス」との称呼及び「ラスベガス」との観念が
5 生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章②は,いずれも,「ベガスベガス」という片
仮名で構成されており,外観,称呼及び観念のいずれも類似しているた
め,全体として類似している。
10 (ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章②は,文字の種類が異なるため,外観は類似
しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体として類似して
いる。
(被告らの主張)
15 (ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
外観及び称呼については認めるが,「VEGAS VEGAS」とい
う語は造語であり,被告ら標章②からは特定の観念は生じない。
(イ) 原告商標1との対比
後記(3)記載の取引の実情に照らせば,原告商標1と被告ら標章②は
20 類似しない。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章②は,前者が欧文字の2段表記であるのに対
し,後者が片仮名の1段表記であるほか,前者には図形部分が存在する
という顕著な外観上の差異が存在するため,外観において類似しない。
25 また,原告商標2からは「エガスエガス」,「イイガスイイガス」,
「ベガスエガス」又は「ベガスイイガス」の称呼が生じるので,両者は
称呼においても類似しない。
さらに,原告商標2と被告ら標章②は,いずれも観念を生じない造語
であるため,観念を比較することはできない
以上のとおり,原告商標2と被告ら標章②は,外観及び称呼のいずれ
5 においても類似していない。
ウ 被告ら標章③及び④について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章③】 【被告ら標章④】
10 (原告の主張)
(ア) 被告ら標章③及び④の外観,称呼及び観念
被告ら標章③及び④は,いずれも,「VEGAS VEGAS」とい
う上下2段の欧文字から構成され,僅かであるが一段目の「V」の左側
が上方に向かって長めに表記されている。また,被告ら標章③及び④か
15 らは,いずれも「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」という称呼
及び「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章③及び④は,文字の種類が異なるため,外観
は類似しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体として類
20 似している。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章③及び④は,後者においては一段目の「V」
の左側が上方に向かって僅かに長めに表記されている点等において差異
があるものの,いずれも「VEGAS VEGAS」という上下2段の
25 欧文字で構成されている点は共通しているから,外観において類似して
いる上に,称呼及び観念も同一又は類似しているから,全体として類似
している。
(被告らの主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
外観及び称呼については認めるが,観念は争う。「VEGAS VE
5 GAS」という語は造語であり,被告ら標章③及び④からは特定の観念
は生じない。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1は片仮名表記であるのに対し,被告ら標章③及び④は,欧
文字で,語頭の「V」の左側の線が上方に向けて長めに表記されており,
10 やや図案化された態様であるため,外観上,両者の間には著しい差異が
ある。
原告商標1と被告ら標章③及び④は,いずれも観念を生じない造語で
あるため,観念を比較することはできないところ,称呼を共通にする場
合があるとしても,後記(3)記載の取引の実情に照らせば,誤認混同が
15 生じるおそれはないため,全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
被告ら標章③及び④は,語頭の欧文字「V」の左側の線が上方に向け
て長めに表記されており,やや図案化された態様である一方で,原告商
標2には,図形部分が存在するほか,文字部分に「A」を図案化した
20 「Λ」を用いているといった顕著な外観上の差異点が存在するため,外
観において類似しない。
また,原告商標2からは「エガスエガス」,「イイガスイイガス」,
「ベガスエガス」又は「ベガスイイガス」の称呼が生じるので,両者は
称呼においても類似しない。
25 原告商標2と被告ら標章③及び④は,いずれも観念を生じない造語で
あるため,観念を比較することはできないところ,両者は外観及び称呼
のいずれにおいても類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情に照ら
せば誤認混同が生じるおそれはないため,全体として類似していない。
エ 被告ら標章⑤について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑤】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑤のうち「PACHINKO」及び「SLOT」という文
10 字部分は,当該表示に触れた需要者にとって,単に当該施設がパチンコ
及びスロットという娯楽を提供する施設であることを理解させるものに
すぎず,出所識別標識としての機能を有さない。このため,被告ら標章
⑤の要部は,「VEGAS VEGAS」という部分から構成され,
「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及び「ラスベガス」
15 との観念が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑤とは,文字の種類が異なるため,外観は類
似しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体として類似し
ている。
20 (ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑤は,前者が上下2段表記であるのに対し,
後者は横一列に表記されているといった点において差異があるものの,
いずれも「VEGAS VEGAS」という欧文字で構成されている点
で共通し,外観において類似している上,称呼及び観念は同一又は類似
25 しているから,全体として類似している。
(被告らの主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑤の要部が「VEGAS VEGAS」であること及び称
呼は認めるが,「VEGAS VEGAS」という語は造語であり,同
要部からは特定の観念は生じない。
5 (イ) 原告商標1との対比
原告商標1は片仮名で表記されているのに対し,被告ら標章⑤は欧文
字で表記されており,外観上著しい差異があるから,外観において類似
しない。
原告商標1と被告ら標章⑤は,いずれも観念を生じない造語であるた
10 め,観念を比較することはできないところ,称呼を共通にする場合があ
るとしても,後記(3)記載の取引の実情を考慮すれば誤認混同が生じる
おそれはないため,全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑤の要部は,後者が欧文字で横一列に表記さ
15 れているのに対し,前者は上下2段表記であり,図形部分が存在するほ
か,文字部分に「A」を図案化した「Λ」を用いているという点におい
て顕著な外観上の差異が存在するため,外観において類似しない。
また,原告商標2からは「エガスエガス」,「イイガスイイガス」,
「ベガスエガス」又は「ベガスイイガス」の称呼が生じるので,両者は
20 称呼においても類似しない。
原告商標2と被告ら標章⑤は,いずれも観念を生じない造語であるた
め,観念を比較することはできないところ,両者は外観及び称呼は類似
しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮すれば誤認混同が生じる
おそれはないため,全体として類似していない。
25 オ 被告ら標章⑥について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑥】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
5 被告ら標章⑥は,「VEGAS VEGAS」という欧文字から構成
され,最初の「V」の左側が上方に向けてやや長めに表記されており,
「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及び「ラスベガス」
との観念が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
10 原告商標1と被告ら標章⑥は,文字の種類が異なるため,外観は類似
しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体として類似して
いる。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑥は,前者が上下2段表記であるのに対し,
15 後者は横一列に表記されているといった点において差異があるものの,
いずれも「VEGAS VEGAS」という欧文字で構成されている点
で共通し,外観において類似している上,称呼及び観念は同一又は類似
しているから,全体として類似している。
(被告らの主張)
20 (ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
外観及び称呼については認めるが,観念は争う。「VEGAS VE
GAS」という語は造語であり,被告ら標章⑥からは特定の観念は生じ
ない。
(イ) 原告商標1との対比
25 原告商標1と被告ら標章⑥は,いずれも特定の観念の生じない造語で
あるため,観念において比較することはできないところ,称呼を共通に
する場合があるとしても,後記(3)記載の取引の実情を考慮すると誤認
混同が生じるおそれはないから,全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
前記ア(被告らの主張)(ウ)と同様の理由により,原告商標2と被告ら
5 標章⑥は,全体として類似していない。
カ 被告ら標章⑦について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑦】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑦のうち「SLOT」という文字部分は,当該表示に触れ
た需要者にとって,単に当該施設がパチンコ及びスロットという娯楽を
15 提供する施設であることを理解させるものにすぎず,出所識別標識とし
ての機能を有さない。このため,被告ら標章⑦の要部は,「VEGAS
VEGAS」という上下2段の欧文字から構成された部分(なお,一段
目の「V」の左側が上方に向かってやや長めに表記されている。)であ
るところ,そこから「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称
20 呼及び「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑦は,文字の種類が異なるため,外観は類似
しないものの,称呼及び観念は共通するため,全体として類似している。
(ウ) 原告商標2との対比
25 原告商標2と被告ら標章⑦は,後者においては一段目の「V」の左側
が上方に向かってやや長めに表記されている点等において差異があるも
のの,いずれも「VEGAS VEGAS」という上下2段の欧文字で
構成されている点で共通し,外観において類似する上,称呼及び観念は
同一又は類似であることから,全体として類似している。
(被告らの主張)
5 (ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑦は,「SLOT」,「VEGAS」及び「VEGAS」
の欧文字を上中下3段に分けて表記しているところ,それぞれが同じ書
体・色彩で,外観上まとまりよく表示されており,全体から生じる称呼
「スロットベガスベガス」も,よどみなく一連に称呼し得るものである。
10 また,「SLOT」も「VEGAS」も,いずれも出所識別標識とし
て需要者に対し強く支配的な印象を与えるものではないので,識別力に
おいて軽重のない3語が結合したものであり,全体として一連一体のも
のとして認識される。
このため,被告ら標章⑦の要部は,その構成全体の「SLOT VE
15 GAS VEGAS」であり,「VEGAS VEGAS」の部分のみ
が要部として抽出されることはない。
以上を前提とすれば,被告ら標章⑦からは「スロットベガスベガス」
という称呼のみが生じる。また,「SLOT VEGAS VEGAS」
という語は全体として辞書等に意味が掲載されていないため,特定の観
20 念を生じない造語である。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑦は,前者が片仮名で表記されているのに対
し,後者は欧文字で表記されているほか,特に目立つ前半部に「SLO
T」という語が存在するという外観上の著しい差異を有するため,外観
25 において類似しない。
また,原告商標1からは「ベガスベガス」の称呼が生じるのに対し,
被告ら標章⑦からは「スロットベガスベガス」の称呼が生じるところ,
「スロット」の有無により,両称呼は容易に聴き分けることができるか
ら,両者は称呼においても類似しない。
さらに,原告商標1と被告ら標章⑦は,いずれも特定の観念を生じな
5 い造語であり,両者の観念は比較できない
以上のとおり,外観及び称呼において類似しておらず,後記(3)記載
の取引の実情を考慮すると誤認混同が生じるおそれはないため,全体と
して類似していない。なお,仮に,被告ら標章⑦の要部が「VEGAS
VEGAS」であったとしても,前記ア(被告らの主張)(イ)記載のと
10 おり,外観の相違が称呼の類似性を凌駕するため,いずれにせよ,両者
は全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2は,「VEGAS」「VEGAS」という欧文字を上下2
段で表記しており,図形部分が存在するのに対し,被告ら標章⑦は,原
15 告商標2にはない「SLOT」という語が加わり,「SLOT」「VE
GAS」「VEGAS」を上中下3段で表記しているほか,中段の「V
EGAS」の語頭の「V」は,左側の線が上方に向けて長めに表記され
ており,やや図案化された態様であるという顕著な外観上の差異点が存
在するため,両者は外観において類似しない。
20 また,原告商標2からは「エガスエガス」,「イイガスイイガス」,
「ベガスエガス」又は「ベガスイイガス」の称呼が生じるのに対し,被
告ら標章⑦からは「スロットベガスベガス」の称呼が生じるところ,
「スロット」の有無により,両称呼は容易に聴き分けることができるか
ら,両者は称呼においても類似しない。
25 さらに,原告商標2と被告ら標章⑦は,いずれも特定の観念を生じな
い造語であり,両者の観念は比較できない。
以上のとおり,原告商標2と被告ら標章⑦は,外観及び称呼において
類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮すると誤認混同が生
じるおそれはないため,全体として類似していない。なお,仮に,被告
ら標章⑦の要部が「VEGAS VEGAS」であったとしても,前記
5 ア(被告らの主張)(イ)記載のとおり,外観の相違が称呼の類似性を凌
駕するため,いずれにせよ,両者は全体として類似していない。
キ 被告ら標章⑨について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑨】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑨のうち,「SLOT」という文字部分は出所識別標識と
15 しての機能を有しないから,その要部は「VEGAS VEGAS」と
いう欧文字で上下2段から構成された部分(なお,上段の「V」の左側
が上方に向かってやや長めに表記されている。)であるところ,そこか
ら「ベガスベガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及び「ラスベガ
ス」との観念が生じる。
20 (イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑨は,文字の種類が異なるため,外観は類似
しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体として類似して
いる。
(ウ) 原告商標2との対比
25 原告商標2と被告ら標章⑨は外観において類似する上,称呼及び観念
は同一又は類似しているから,全体として類似している。
(被告らの主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
前記カ(被告らの主張)(ア)と同様の理由により,被告ら標章⑨の要
部はその構成全体の「SLOT VEGAS VEGAS」であり,
5 「スロットベガスベガス」という称呼が生じるが,特定の観念は生じな
い。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑨は,いずれも特定の観念を生じない造語で
あり,両者の観念は比較できないところ,両者は外観及び称呼のいずれ
10 も類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮すると誤認混同が
生じるおそれもないため,全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑨は,いずれも特定の観念を生じない造語で
あり,両者の観念は比較できないところ,両者は外観及び称呼のいずれ
15 も類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮すると誤認混同が
生じるおそれもないため,全体として類似していない。
ク 被告ら標章⑩について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑩】
20 (原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑩のうち,「SLOT」という文字部分は出所の識別標識
としての機能を有しないから,その要部は「VEGAS VEGAS」
という欧文字から構成された部分(なお,最初の「V」の左側が上方に
25 向かってやや長めに表記されている。)であり,そこから,「ベガスベ
ガス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及び「ラスベガス」との観念
が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑩は,文字の種類が異なるため,外観は類似
5 しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体として類似して
いる。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑩は,前者が上下2段表記であるのに対し,
後者は横一列に表記されているほか,最初の「V」の左側が上方に向け
10 てやや長めに表記されているという差異はあるものの,いずれも欧文字
で「VEGAS VEGAS」と表記されている点は共通しており,外
観において類似する上,称呼及び観念は同一又は類似しているから,全
体として類似している。
(被告らの主張)
15 (ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑩は,「SLOT」,「VEGAS」及び「VEGAS」
という欧文字を横一列に連続して表記しているところ,それぞれが同じ
書体や色彩で,外観上まとまりよく表示されており,全体から生じる称
呼「スロットベガスベガス」も,よどみなく一連に称呼し得る。
20 また,「SLOT」も「VEGAS」も,いずれも出所識別標識とし
て需要者に対し強く支配的な印象を与えるものではないので,識別力に
おいて軽重のない3語が結合したものであり,全体として一連一体のも
のとして認識される。
そうすると,被告ら標章⑩の要部は,その構成全体の「SLOT V
25 EGAS VEGAS」である。
以上を前提とすれば,被告ら標章⑩からは,「スロットベガスベガス」
という称呼のみが生じる。また,「SLOT VEGAS VEGAS」
という語は,全体として辞書等に意味が掲載されていないため,特定の
観念を生じない造語である。
(イ) 原告商標1との対比
5 原告商標1と被告ら標章⑩は,いずれも特定の観念を生じない造語で
あり,観念において比較できないところ,両者は,外観及び称呼のいず
れも類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮すると誤認混同
が生じるおそれはないため,全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
10 原告商標2は,「VEGAS」「VEGAS」という欧文字を上下2段
で表記しており,図形部分が存在するのに対し,被告ら標章⑩は,原告
商標2にはない「SLOT」という語が加わり,横一列で表記している
ほか,語頭の欧文字「V」は,左側の線が上方に向けて長めに表記され
ており,やや図案化された態様であるという顕著な外観上の差異点が存
15 在するため,外観において類似しない。
また,原告商標2と被告ら標章⑩は,「スロット」という称呼の有無
により,容易に聞き分けることができるから,両者は称呼において類似
しない。
原告商標2と被告ら標章⑩は,いずれも特定の観念を生じない造語で
20 あり,観念において比較できないところ,外観及び称呼が類似しないた
め,全体として類似していない。なお,仮に,被告ら標章⑩の要部が
「VEGAS VEGAS」であったとしても,前記ア(被告らの主張)
(イ)記載のとおり,外観の相違が称呼の類似性を凌駕するため,いずれ
にせよ,両者は全体として類似していない。
25 ケ 被告ら標章⑪について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑪】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑪のうち,「SLOT」という文字部分は出所の識別標識
5 としての機能を有しないから,その要部は,「VEGAS VEGAS」
という欧文字から構成された部分(なお,最初の「V」の左側が上方に
向かってやや長めに表記されている。)であり,そこから「ベガスベガ
ス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及び「ラスベガス」との観念が
生じる。
10 (イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑪とは,文字の種類が異なるため,外観にお
いては類似しないものの,称呼及び観念は類似しているため,全体とし
て類似している。
(ウ) 原告商標2との対比
15 原告商標2と被告ら標章⑪は,前者が上下2段表記であるのに対し,
後者が横一列に表記されているほか,最初の「V」の左側が上方に向け
てやや長めに表記されているという差異はあるものの,いずれも欧文字
で「VEGAS VEGAS」と表記されている点は共通しており,外
観において類似する上に,称呼及び観念は同一又は類似であることから,
20 全体として類似している。
(被告らの主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
前記カ(被告らの主張)(ア)と同様の理由により,被告ら標章⑪の要
部は,その構成全体の「SLOT VEGAS VEGAS」であり,
25 同要部からは,「スロットベガスベガス」という称呼のみが生じる。ま
た,「SLOT VEGAS VEGAS」という語は全体として辞書
等に意味が掲載されていないため,被告ら標章⑪からは,特定の観念は
生じない。
(イ) 原告商標1との対比
5 原告商標1と被告ら標章⑪は,観念において比較できないものの,外
観及び称呼において類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮
すると誤認混同が生じるおそれもないから,全体として類似しない。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑪は,いずれも特定の観念を生じない造語で
10 あり,観念において比較できないものの,外観及び称呼において類似し
ておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮すると誤認混同が生じるお
それもないから,全体として類似していない。
コ 被告ら標章⑫について
【原告商標1】 【原告商標2】 【被告ら標章⑫】
(原告の主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
被告ら標章⑫のうち「SLOT」という文字部分は出所の識別標識とし
20 ての機能を有しないから,その要部は「VEGAS VEGAS」という
欧文字で上下2段から構成された部分(なお,上段の「V」の左側が上方
に向かってやや長めに表記されている。)であり,そこから「ベガスベガ
ス」又は「ヴェガスヴェガス」との称呼及び「ラスベガス」との観念が生
じる。
25 (イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑫とは,文字の種類が異なるため,外観にお
いては差異があるものの,外観は類似しないものの,称呼及び観念は類似
するため,両者は類似している。
(ウ) 原告商標2との対比
5 原告商標2と被告ら標章⑫は,後者においては一段目の「V」の左側
が上方に向かって長めに表記されている点等において差異があるものの,
いずれも「VEGAS VEGAS」という上下2段の欧文字で構成され
ている点は共通しているから,外観において類似する上,称呼及び観念は
同一又は類似であることから,全体として類似している。
10 (被告らの主張)
(ア) 上記被告ら標章の外観,称呼及び観念
前記カ(被告らの主張)(ア)と同様の理由により,被告ら標章⑫の要
部はその構成全体の「SLOT VEGAS VEGAS」であり,同
要部からは「スロットベガスベガス」という称呼のみが生じる。そして,
15 「SLOT VEGAS VEGAS」という語は全体として辞書等に
意味が掲載されていないため,被告ら標章⑫から特定の観念は生じない。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章⑫は,観念において比較できないものの,外
観及び称呼において類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮
20 すると誤認混同が生じるおそれもないから,全体として類似していない。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章⑫は,観念において比較できないものの,外
観及び称呼において類似しておらず,後記(3)記載の取引の実情を考慮
すると誤認混同が生じるおそれもないから,全体として類似していない。
25 (3) 取引の実情について
(原告の主張)
本件の取引の実情によれば,以下のとおり,需要者の間に,被告ら標章と
原告各商標につき誤認混同が生じるおそれがある。
ア 被告らは,被告ら標章を看板やホームページ,新聞の折込みチラシのほ
か,テレビCMや店内アナウンス等で使用しているところ(乙29,3
5 0),そのような使用態様は原告各商標と同様である。また,テレビCM
や店内アナウンスにおいて,需要者は「ベガスベガス」との音声のみでそ
の内容を理解することからすれば,需要者にとって称呼も役務の出所を認
識するのに重要な要素である。
イ 被告らの主張に対する反論
10 (ア) 被告らは,原告と被告らの商圏が異なることを取引の実情として考慮
すべきであると主張するが,この主張を前提とすると,商標を第三者に
ライセンスせず,自らも使用していない商標権者が権利行使できないこ
とになり,明らかに妥当でない。
パチンコ店は,原告及び被告らも含め,多数の都道府県にまたがって
15 営業活動をするものが数多く存在する上に,インターネットが発達した
現代においては,全国の店舗情報を容易に取得できるから,パチンコ店
の需要者は,事前にインターネットで情報収集をするのが通常である。
このため,被告ら標章が原告各商標と同一の役務に使用された場合,需
要者において,本件各店舗がベガスベガスグループと同一又は業務提携
20 関係にあると誤信するおそれがあるから,役務の出所につき誤認混同が
生じるおそれがある。
(イ) 被告らは,「ベガス」という語を含む店名を使用するパチンコ店が多
数存在すると主張するが,原告は「ベガスベガス」という語を店名に使
用しているのであるから,「ベガス」という語を含む店舗が多数存在す
25 るかどうかは関係ない。本件各店舗を除けば,「ベガスベガス」という
語を店名に含むパチンコ店は全国に35店舗存在し(乙26),そのう
ち33店舗はベガスベガスグループが占めるから(乙25),「ベガス
ベガス」という店名は決してありふれたものではない。
(被告らの主張)
本件の取引の実情に照らすと,以下のとおり,需要者の間に誤認混同が生
5 じるおそれはない。
ア 商圏及び需要者を共通にしないこと
被告らは,広島県及び山口県に所在するパチンコ店の店名として,被告
ら標章を使用しているが,一般に,標準規模のパチンコ店の商圏は,一次
商圏で10分,二次商圏で20分程度とされている(乙24)。商圏は河
10 川,線路などの交通遮断要因や渋滞,踏切などの心理的阻害要因の影響を
受けるものの,距離にすれば,おおよそ店舗から半径10km程度と考え
られる。
原告は,「ベガスベガス」の店名で,北海道15店舗,山形県10店舗,
宮城県5店舗,栃木県1店舗及び東京都2店舗のパチンコ店を運営してお
15 り,被告らの営業地域とは遠く離れている。このように,原告と被告らと
では商圏が異なるため,被告らの需要者において,被告らの役務を原告の
役務と混同するおそれはない。
イ 「ベガス」の文字を含む店名を使用するパチンコ店が多数存在すること
パチンコ業界には「ベガス」を含む店名を使用する店舗が全国で81店
20 舗存在し(乙26),その中には,原告の営業地域である東京都と宮城県
内に所在する店舗も含まれる(乙27)。このように近似した商標が多数
存在する業界では,需要者が商標の構成の僅かな差異にも注意を払う傾向
があるから,誤認混同が生じる可能性は低い。
ウ 被告ら標章の使用状況について
25 被告らは,以下のとおり,被告らの運営するテキサスグループの店舗で
あることが認識し得るような態様で被告ら標章を使用していたため,需要
者は本件各店舗がベガスベガスグループに属しないと容易に認識し得た。
(ア) 被告ら標章①は,被告らホームページ内の「企業情報」を紹介するペ
ージにおいて使用されているが(甲1),そこには,「TEXASにつ
いて」との題名の下,テキサスグループに関する紹介がされており,こ
5 れに接した需要者は本件各店舗がベガスベガスグループの一員でないと
認識し得たと考えられる。
(イ) 被告ら標章②は,被告らホームページのトップページにおいて使用さ
れているが,そこでは,「TEXAS GROUP SHOP LIS
T」として,その他の被告ら各店舗とともに本件各店舗が列挙されてい
10 る。
(ウ) 被告ら標章は,各種の宣伝においても,以下のとおり,テキサスグル
ープを示すものとして用いられていた。
a 店舗内の景品交換カウンターの後方上部には,対面した利用者の目
に入る位置に,「テキサスグループ」という大きな看板が設置されて
15 いた(乙28)。
b 山口県全域で放送しているテレビCMでは,周南店はテキサスグル
ープの店舗の一つとして,同県内の他の被告ら各店舗とともに宣伝さ
れていた(乙29,31)。広島県全域で放送しているテレビCMで
も,段原店は,同様にテキサスグループの店舗の一つとして,同県内
20 の他の被告ら各店舗とともに宣伝されていた(乙30,31)。
c 本件各店舗は,テキサスグループに属する店舗として,月に2回程
度,1回当たり10~20万部程度配布をしている新聞の折込みチラ
シに他の被告ら各店舗とともに並記されていた(乙32)。
d 本件各店舗は,テキサスグループに属する店舗として,山口県内全
25 域で発行されている雑誌において,他の被告ら各店舗とともに並記さ
れていた(乙33)。
e 被告らの店舗では,テキサスグループ全店舗共通の販促物として,
ティッシュやうちわなどを店舗利用者に無償で配布しているが,本件
各店舗は,これらの販促物においても,他の被告ら各店舗とともに並
記されていた(乙34)。
5 2 争点2(商標法2条3項8号の「使用」該当性)
(原告の主張)
被告らは,前記前提事実(3)記載の態様で原告各商標と類似する被告ら各商標
を使用していたところ,かかる行為は商標法2条3項8号の「展示」に該当す
る。
10 (被告らの主張)
商標法2条3項8号は,「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取
引書類に標章を付して展示」する行為を標章の「使用」として規定しているが,
ここでいう「展示」とは作為を意味し,具体的には,ウェブサイトを作成して
公開する行為や看板を取り付ける行為がこれに当たる。本件では,いずれも原
15 告各商標の登録前に,被告ら標章を被告らホームページに公開し,被告ら標章
を付した看板を取り付けているが,登録後にそのような状態を解消しないとい
う不作為は,同号の「展示」には当たらない。
3 争点3(先使用の抗弁の成否)について
(被告らの主張)
20 以下のとおり,被告らは,原告各商標の出願前から被告ら標章を使用してお
り,同各標章は同出願の際には需要者の間に広く知られていたから,被告らは
商標法32条1項に基づく先使用権を有する。
(1) 商標出願前からの使用
(段原店について)
25 ア 被告らは,平成16年10月16日の「ベガスベガス段原店」の開店時
に,被告らが運営するパチンコ店におけるサービスについて,以下のとお
り,被告ら標章A,B1~B4の使用・表示を開始している。
なお,乙46の内外装図面には年月日等の記載はないが,株式会社Aと
の面談の際に提出を受けた封筒内の文書(乙68)には,被告ら標章のデ
ザインともに「2004年9月6日12時36分」(乙68の1)などF
5 AXの送受信日時が印字されている(乙67)。これによれば,上記図面
が段原店の開店の際の内外装工事用に作成されたものであることは,客観
的に裏付けられる。
使用標章 根 拠
・広島県遊技協同組合の業者名簿に「16.10-5 回
覧」の印字とともに「ベガスベガス」との記載あり(乙3
5)。
被告ら標章A ・平成12年に開設された被告らのウェブサイトに平成16
年10月の店舗開店前後の時期から被告ら標章②を掲載
(乙49)。
・店舗開店に近接した時期(平成16年11月16日)の新
聞折込みチラシにも「ベガスベガス」との記載あり(乙5
5の4)。
被告ら標章B1 ・店舗の内外装に表示(乙46)。
・店舗開店時(平成16年10月16日)の新聞折込みチラ
シに表示(乙55の1等)。
・店舗の内外装に表示(乙46)。
被告ら標章B2 ・店舗開店時(平成16年10月16日)の新聞折込みチラ
シに表示(乙55の1等)。
・店舗の内外装に表示(乙46)。
被告ら標章B3
・店舗開店時(平成16年10月16日)ないし その1年
以内の時期(平成17年8月23日)の新聞折込みチラシ
に表示(乙55の1,乙55の16等)。
・店舗の内外装に表示(乙46)。
・平成12年に開設された被告らのウェブサイトに平成16
被告ら標章B4 年10月の店舗開店前後の時期から掲載(乙49)。
・店舗開店に比較的近接する時期(平成17年3月29日)
の新聞折込みチラシに表示(乙55の9等)。
イ このように,被告らは,原告による商標登録出願よりも以前から,被告ら
標章Aや被告ら標章B1~4を,自己の役務を表示するものとして使用して
いたが,仮に,被告ら標章B2~4の全部又は一部の標章の使用が認められ
ないとしても,被告ら標章B1とB2は,同じ文字「SLOT VEGAS V
5 EGAS」を縦三段組から横一列に変更しただけのものであり,被告ら標章
B3及びB4は,それぞれ被告ら標章B1とB2の一部を取り出したものに
すぎないので,これらの相違部分は通常加えられる変更の範囲に属するもの
として,社会通念上,被告ら標章B1と同一と評価されるべきである。
したがって,被告ら標章B1について先使用権が認められれば,被告ら標
10 章B2~4にも先使用権の効力が認められる。
ウ 以上の考え方に基づき,被告ら標章①~⑫との関係も含め,被告らの主張
を整理すると,以下のとおりである。
〔主位的主張〕
先使用権 同一(通常加えられる変更の範囲内のものを含む。
)
被告ら標章A
・被告ら標章②
被告ら標章B1
・被告ら標章B2~4
・被告ら標章①,③~⑫
15 〔予備的主張1〕
先使用に係る標章 同一(通常加えられる変更の範囲内)の標章
被告ら標章A
・被告ら標章②
被告ら標章B1
・被告ら標章B3
・被告ら標章③,④,⑦,⑨,⑫
先使用に係る標章 同一(通常加えられる変更の範囲内)の標章
被告ら標章B2 ・被告ら標章B4
・被告ら標章①,⑤,⑥,⑧,⑩,⑪
〔予備的主張2〕
先使用に係る標章 同一(通常加えられる変更の範囲内)の標章
被告ら標章A
・被告ら標章②
被告ら標章B1
・被告ら標章B2
・被告ら標章⑤,⑦,⑨~⑫
被告ら標章B4 ・被告ら標章B3
・被告ら標章①,③,④,⑤,⑥,⑧
〔予備的主張3〕
先使用に係る標章 同一(通常加えられる変更の範囲内)の標章
被告ら標章A
・被告ら標章②
被告ら標章B1
・被告ら標章⑦,⑨,⑪,⑫
被告ら標章B2
・被告ら標章⑤,⑩,⑪
被告ら標章B3
・被告ら標章③,④
被告ら標章B4
・被告ら標章①,⑤,⑥,⑧
5 (周南店について)
周南店は,原告商標の出願以前である平成21年3月17日に営業所の名
称を「ベガスベガス」に変更する旨の営業許可の書換え手続を行い(乙8
3),平成21年4月25日の「ベガスベガス周南店」の開店時期に合わせ
て,店名として,被告ら標章①(被告ら標章⑧は被告ら標章①と同一であり,
被告ら標章③~⑫は,いずれも被告ら標章①に通常加えられる範囲の変更に
5 すぎない。)及び被告ら標章②の使用を開始した。
(2) 不正競争の目的でないこと
被告らが被告ら標章の使用を開始した平成16年当時は,原告の運営する
店舗のうち,店名に「ベガスベガス」という語が含まれていたのは8店舗に
すぎなかった。これらの店舗は,北海道や山形県,宮城県に所在しており,
10 被告らが営業する広島県以西の地域とは地理的に大きく離れており,原告は,
同地域において営業活動や広告宣伝等を行ってはいなかった。このような状
況から,被告らとしては,原告が「ベガスベガス」という店名を使用してい
ることを認識することのないまま,被告ら標章の使用を開始したものであり,
被告らには不正競争の目的はなかった。
15 (3) 周知性
ア 周知性の範囲
商標法32条1項の趣旨は,先使用者の既得的な地位を後発の登録商標
の禁止権から保護することにあり,先発の使用者の努力によって信用が蓄
積されたと評価できるような商標が存在するときは,その商標が未登録で
20 あっても,その事実状態を保護することにある。そのような趣旨からすれ
ば,同項の周知性は,商標法4条1項10号の周知性と比べ,より狭い地
域,より低い浸透度で足りると解すべきである。
パチンコ店における役務に関しては,客が遊技を楽しむためには実際に
店舗まで来店する必要がある。そして,パチンコ店の商圏は距離にすれば
25 およそ店舗から半径10km程度の範囲とされていることからすれば,広
く解釈しても広島市内及び周南市内で周知性が認められれば十分というべ
きである。
イ 被告ら標章が周知性を有していること
以下の事情を考慮すると,原告各商標の登録出願の際に,被告ら標章が
被告らの役務を表示するものとして,その商圏において,需要者の間で広
5 く認識されていた。
(ア) 看板の設置
(段原店について)
被告らは,平成16年10月以降,被告ら標章を段原店の店外看板等
で使用していたが(乙46,68),その華やかな色彩や装飾・演出,看
10 板の大きさ等から,通行する車両や歩行者の注意を集める外観を呈して
いた(甲7)。
また,被告らは,平成20年10月以降,段原店周辺の交通量の多い
幹線道路沿いに最大で3か所,被告ら標章が記載された看板を設置して
おり,被告ら標章は,長期間にわたり需要者の目に触れる状態にあった
15 (乙70,71)。
(周南店について)
周南店では,被告ら標章を店舗の看板等で継続して使用し,外部の看
板設置会社であるB株式会社に委託して,被告ら標章を載せた看板を掲
示していた(乙84・3頁の「摘要」欄の「B(株)山口*看板設置費
20 (周南市川手交差点)」)。
(イ) 売上げ
(段原店について)
段原店においては,平成16年10月の開店から原告商標2の登録出
願がされた平成23年6月までの間,年平均32億4374万円もの売
25 上げを計上していた(乙51)ことからしても,店舗を訪れた多数の需
要者が被告ら標章を目にしていたと考えられる。
(周南店について)
周南店においては,平成21年4月25日の開店から原告商標2の登録
出願をした平成23年6月までの間,年50億円を超える売上げを計上し
(乙100),多数の顧客を獲得していた。
5 (ウ) 被告らによる宣伝活動
a 宣伝広告費
(段原店について)
被告らは,平成16年10月から平成23年までの6年間,毎年,
平均約1242万円もの多額の広告宣伝費を投じて,店舗の宣伝活動
10 等を行った(乙51)
。
(周南店について)
被告らは,周南店において被告ら標章の使用を開始した平成21年
4月から平成23年6月までの期間,年5000万円程度の広告宣伝
費をかけて,同店舗の宣伝活動等を行った(乙84,100)。
15 b インターネットを利用した宣伝広告
(段原店について)
被告らは,平成12年頃から自社のホームページを開設し,平成1
6年の段原店の開店前後から被告ら標章①及び②を使用していた上
(乙49) 「P-WORLD」という全国のパチンコ店のほとんど全
,
20 ての店舗が自店の情報を掲載するウェブサイト上でも,被告ら標章を
使用していた(乙76)。
(周南店について)
パチンコ店の情報サイトである「P-WORLD」に自店のウェブ
ページを有し,同ページで被告ら標章を使用していた(乙84・2頁
25 の「摘要」欄の「P-WORLD*画像倉庫使用料」)。
c 新聞紙面広告,新聞折込みチラシ
(段原店について)
被告らは,平成16年10月16日から平成23年6月末までの間,
月に2,3回程度,合計241回もの新聞折込みチラシによる広告を
行っていた。同チラシは,広島市内を中心に,少ないときで3~5万
5 部,多いときには10~20万部程度配布されていた(乙55,56)。
また,平成18年10月14日には,九州全域,山口県,広島県西
部及び島根県中西部を販売地域とし,29万部を発行している九州ス
ポーツ新聞に,被告ら標章を使用した新聞紙面広告を掲載した(乙5
1の7頁,乙53,54)。
10 (周南店について)
周南店は,平成21年4月25日の店舗開店前後から平成23年6
月末までの期間に,被告ら標章を使用して,月に平均8,9回,合計
214回の新聞折込みチラシによる広告を行った(乙85~87)。
新聞折込みチラシは,一回当たり5~8万部が配布されており,高頻
15 度に相当多数の新聞折込みチラシによる宣伝活動が行われた。
d テレビCM,ラジオCM
(段原店について)
被告らは,平成17年以降,年末年始や店舗改装時のタイミングな
どで,広島県全域や近隣他県の一部で放送されるテレビCMを利用し,
20 被告ら標章を使用して段原店の宣伝活動を行った(乙57,59~6
6)。
また,平成19年4月から9月までの間,RCCラジオにおいて,
プロ野球のナイター中継が行われる毎週金曜日の夜,広島県や山口県
東部,岡山県西部,愛媛県西部,島根県南部及び大分県東北部を対象
25 としてラジオCMを放送していた(乙63)。
(周南店について)
周南店は,平成21年4月25日の開店以降,被告ら標章を使用し
て,毎月3日間「ベガス7」のキャッチコピーを使用したテレビCM
による宣伝活動を行い(乙86,88の1,乙101),当該CMは
山口県全域及び近隣他県の一部で放送されていた(乙72)。
5 また,平成23年6月には,「レッドワンデー」のキャッチコピー
を使用したテレビCMによる宣伝活動を行っていた(乙87,88の
2,乙101)。
e 求人誌・雑誌等
(段原店について)
10 被告らは,平成16年から18年までの間,段原店の従業員を募集
するため,広島県内で配布される求人誌において,被告ら標章を使用
した求人広告を掲載していた(乙51)。
また,平成23年5月,パチンコ・パチスロユーザー向けの雑誌で
ある「ホール情報誌 でちゃう!」(乙75)の九州・山口版に,段原
15 店の広告を掲載した(乙51の24頁)。
(周南店について)
周南店では,従業員を募集するため,求人誌に求人広告を掲載する
とともに(乙84の「摘要」欄の「(有)C*求人広告出稿料(イエ
ローブック他)」),パチンコ情報雑誌に店舗の広告を出稿していた
20 (乙84の「摘要」欄の「(株)D*九州山口版でちゃう!掲載
料」)。
f その他の宣伝活動
(段原店について)
被告らは,平成16年10月16日の段原店の開店時に,被告ら標
25 章がプリントされた宣伝車を広島市内において周回させていた(乙5
8の10)。また,被告ら標章が印字されたポケットティッシュや団扇
を作成し,店舗の顧客に配布した(乙56の87,乙58の2)。
(エ) 会員数
(段原店について)
被告らの店舗では,来店する顧客を対象に会員を募って会員登録を行
5 っており,段原店については,原告商標1の登録出願日(平成21年8
月18日)までの時点で会員数は955人,原告商標2の登録出願日
(平成23年6月14日)までの時点で会員数は1069人となってお
り,原告各商標の登録出願以前の段階で既に相当多くの会員を獲得して
いた(乙39)。
10 (周南店について)
被告らの営業活動,宣伝活動の成果として,周南店は,原告商標1の
登録出願日(平成21年8月18日)までの時点で1378人,原告商
標2の登録出願日(平成23年6月14日)までの時点で2236人の
会員登録を獲得していた(乙94)。
15 (原告の主張)
(1) 商標出願前からの使用
被告らが原告各商標の出願前から被告ら標章A及びB1を使用していたこ
とは認めるが,その余の標章を同出願前から使用していたことについては否
認する。被告らが提出する内装図面等(乙46)は日付の記載もなく,同内
20 装図面に関するファックスには送信日時の記載があるものの,いずれも,そ
の時点での案にすぎず,最終的にどのような標章が採用されたか明らかでは
ない。
また,新聞折込み(乙55)の作成時期を裏付けるものとして提出されて
いる請求書(乙56)が当該新聞折込みに係る請求書であるかどうかは明ら
25 かではなく,乙70の看板の写真の撮影時期も不明である。
(2) 不正競争の目的であること
原告は,昭和39年8月に創業し,「ベガスベガス」という名称の店舗を平
成9年以降運営しているのであって,原告の運営するパチンコ店は一大ブラ
ンドとして確立されている。原告はパチンコ店の売上げランキング14位に
入っており,競合関係にある被告らにおいて,原告が「ベガスベガス」とい
5 う名称を店名に使用していることを認識していなかったとは考え難く,被告
らは原告のブランドイメージにフリーライドしようとしたものである。
原告は,原告各商標の登録出願前である平成11年から平成21年までの
間,「ベガスベガス」「VEGAS
, VEGAS」を含む商標権を有し,当時
から「ベガスベガス」の名称を付した店舗を多数運営してきた。パチンコ店
10 の店名を決める際には事前に商標権の侵害調査をするのが通常であり,被告
和光興産自身も商標権を有しているのであるから,被告らが原告各商標の存
在を認識していなかったとは考えられない。
(3) 周知性
ア 周知性の範囲
15 (ア) 被告らの会員は,広島・山口両県のみならず,北は北海道から南は熊
本県まで全国各地に居住しているので,被告ら標章が周知性を得るため
には,全国の需要者において周知である必要がある。
(イ) 仮にそうでないとしても,いったん先使用権が成立すれば全国でその
効力を主張できることに照らすと,周知性の有無を判断するに当たって
20 は,相当広い範囲を対象とする必要がある。被告ら自身,広島・山口両
県以外の岡山県,島根県,大分県,愛媛県に向けてもテレビCMを放送
したり,九州全域,山口県,広島県西部,島根県西部で販売されている
九州スポーツ新聞の広告を出したりしていることからすれば,少なくと
も,それらの対象地域であった中国地方,九州地方及び愛媛県における
25 周知性が必要であると解すべきところ,当該地域において,被告ら標章
が,被告らの役務を表示するものとして広く認識されていたことは立証
されていない。
イ 周知性を有しないこと
被告らは,被告ら標章が周知性を有している旨主張するが,警察庁発表
に係る平成28年12月31日時点の遊技場店舗(パチンコ店・スロット
5 店)によれば,パチンコ店は,中国地方に限っても合計716店舗存在し,
九州地方では合計1320店舗,愛媛県では125店舗に上るところ,こ
のうち,被告ら標章を実際に使用している店舗は,本件各店舗の2店舗,
割合にして0.1%未満にすぎない。上記地域において被告ら標章が周知
であると認められるためには,相当程度の宣伝広告等を行い,被告ら標章
10 が需要者の目に留まる機会を作る必要があるが,以下のとおり,本件では
そのような事実は認められない。
(ア) 看板の設置
(段原店について)
被告らの提出する証拠(乙46,68)によっても,被告らが本件各
15 店舗において,具体的にいつから被告ら標章を付した看板を使用してき
たかは明らかではない。また,被告らが設置していたと主張する道路沿
いの看板についても,いつ設置されたのか,どの程度の交通量があった
のかは不明である。
(周南店について)
20 周南店の開店日が被告らの主張するとおり平成21年4月25日であ
り,その時点から被告ら標章の使用が開始されていたとしても,原告商
標1の出願日である平成21年8月18日の僅か4か月前であり,その
間に同店において使用された被告ら標章が周知性を獲得したとは考え難
い。
25 (イ) 本件各店舗の売上げ
(段原店について)
被告らが段原店の売上げ及び広告費を立証するために提出した乙51
は,被告らの内部資料にすぎず,客観的なものではないため,被告らの
主張に係る売上げ及び広告費の存在は認められない。
(周南店について)
5 被告らが周南店の売上げ及び広告費に関する証拠として提出する乙1
00は,内部資料であって客観的資料ではなく,また,広告費の詳細と
して提出されている乙84には被告ら標章の使用とは関係ないと思われ
る費用が計上されていることからすると,これらの証拠に基づき被告ら
の主張する売上げ及び広告費の支出があったとは認められない。
10 (ウ) インターネットを利用した宣伝広告
(段原店について)
被告がそのホームページで被告ら標章を使用していた根拠として提出
する乙49は,従業員の報告書にすぎず,当時のウェブサイトの画面で
はないことや,乙76に記載されている営業時間は「9:00~11:
15 00」と不自然に短く,また,営業形態についても「無制限」と趣旨不
明の記載がされていることによると,段原店の開店前後の時期に,被告
らホームページや「P-WORLD」のウェブサイトで被告ら標章が使
用されていたということはできない。
(周南店について)
20 被告らは,乙84の記載に基づき,被告ら標章を使用し,宣伝広告を行
ったと主張するが,そもそも当該宣伝に被告ら標章が使用されていたこと
の立証がない。
(エ) 新聞紙面広告・折込みチラシ
(段原店について)
25 a 新聞紙面広告
被告らが証拠として提出する請求書(乙54)が九州スポーツ新聞
に掲載された広告(乙53)の請求書であることを裏付ける客観的な
証拠はないので,原告各商標の登録出願前に被告らの主張するような
新聞紙面上の広告が実際に掲載されたとは認められず,仮に掲載され
ていたとしても,乙53の紙面における「ベガスベガス」との文字は,
5 非常に小さく下部に記載されているだけであって,需要者が当該文字
部分に着目することはない。
また,新聞紙面広告に掲載されたのはわずか1回であり,しかも,
九州スポーツ新聞が販売されている九州全域,山口県,広島県,島根
県の平成27年の世帯数は合計749万7000世帯であるので,当
10 該新聞はわずか3.8%の世帯の需要者のみが目にしたにすぎない。
b 新聞折込みチラシ
被告らが証拠として提出する折込みチラシが原告の商標登録出願前
に配布されたものであることを裏付ける客観的な証拠は存在せず,仮
に配布されていたとしても,被告ら標章の記載が小さいものも多く,
15 「新台入替」などの被告ら標章以外の部分の記載が注意を引くデザイ
ンとなっている。
また,被告らの提出した証拠(乙56)を前提としても,折込みチ
ラシの配布回数は一月に僅か3回であり,その配布範囲も広島県内の
みに限られている。さらに,1回当たりの配布枚数は4万枚から7万
20 枚であることが多いところ,広島県の平成27年の世帯総数が120
万9000世帯であることからすると,1回当たり広島県の総世帯数
の僅か3~7%の世帯にしか配布されてないことになる。加えて,折
込みチラシは,目を通すことなくすぐに捨てられてしまうことが多い
ので,いずれにせよ,被告ら標章の周知性を裏付けるものではない。
25 (周南店について)
被告らは,乙85の新聞折込みチラシの配布時期に関して,乙86及
び87をその請求書及び見積書として提出しているが,これらが乙8
5のチラシに対応するものであることを裏付ける客観的な証拠はない。
また,乙87の請求書をみると,当該請求書に係るチラシは,一部
周南市で配布されていることが証拠上認められるものの,被告らの店
5 舗のある広島県にすら配布されておらず,まして,九州地方,中国地
方及び愛媛県で配布されていたとは認められない。
(オ) テレビCM及びラジオCM
(段原店について)
テレビCMは,主に年末年始の僅かな期間しか放映されていない上に,
10 被告ら標章が使用されているのはその中の更に僅かな部分にすぎない。
また,ラジオCMについても,具体的にどのような態様で被告ら標章が
使用されていたかは不明である。
このため,テレビCMやラジオCMを放送していたことは,被告ら標
章が需要者に広く認識されていたことを基礎付けるものではない。
15 (周南店について)
被告らは,乙88,101のテレビCMにより宣伝活動を行っていた
と主張するが,当該CMの長さは僅かであり,月3回という限られた回
数しか放送されていないことからすると,仮に当該CMが原告各商標の
出願前に放送されていたとしても,需要者の目を引いたとは考え難い。
20 (カ) 求人誌・雑誌等
(段原店について)
被告らの提出する乙73,74によっても,求人誌や雑誌における被
告ら標章の使用の有無やその使用態様,紙面に占める割合等が明らかで
ない以上,被告ら標章の周知性を基礎付けるものではない。
25 (周南店について)
被告らは,乙84の記載に基づき,被告ら標章を使用し,宣伝広告を行
ったと主張するが,当該宣伝に被告ら標章が使用されていたことの立証
がない。
(キ) 会員数
(周南店について)
5 被告らは,乙94に基づき,原告各商標の出願時までに相当数の会員
数を獲得していたと主張するが,被告らのいう「相当数」の基準は不明
であり,これにより被告ら標章が周知であったと認めることはできない。
(ク) その他の宣伝活動
(段原店について)
10 被告らの主張する宣伝カー,販促物,「ホール情報誌 でちゃう!」な
どを利用した宣伝についても,被告ら標章の使用態様が明らかでなく,
その周知性を基礎付けるものではない。
ウ 原告各商標の出願前に原告が有していた商標権との関係
原告は,前記(2)のとおり,原告各商標の登録出願前である平成11年か
15 ら平成21年までの間,「ベガスベガス」「VEGAS
, VEGAS」を含
む商標権を有しており,そのことは,商標公報を通じて全国に開示されて
いた。それゆえ「ベガスベガス」又は「VEGAS VEGAS」から構
成される被告ら標章が原告各商標の出願当時に被告らの役務を表示するも
のとして周知であると認めることは,特段の事情のない限り許されない。
20 4 争点4(原告の損害及び利得額)について
(原告の主張)
(1) 原告の損害及び利得額
ア 主位的請求
(ア) 不法行為による損害(平成27年12月23日~平成31年4月30
25 日)
被告らは,本件各店舗において,被告ら標章を遅くとも平成22年1
0月以降使用しているところ,このうち,平成27年12月23日から
訴状提出日の前月の末日である平成31年4月30日までの期間中の本
件各店舗の売上高は,合計217億0375万8274円である。そし
て,原告が原告各商標の使用許諾をした場合の使用料率は売上げの3%
5 を下らないから,被告らの商標権侵害行為により原告に生じた損害は,
6億5111万2748円(=217億0375万8274円×0.0
3)となる。
また,被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士・弁理士費用相
当額は,上記損害額の1割である6511万1274円を下らない。
10 したがって,平成27年12月23日から訴状提出日までの間に被告
らの不法行為により原告に生じた損害は,7億1622万4022円で
ある。
(イ) 不当利得(平成22年10月1日~平成27年12月22日)
被告らは,本件各店舗において,被告ら標章を遅くとも平成22年1
15 0月以降使用しているが,本来,同月から平成27年12月22日まで
の使用に関しては,原告に対して商標権使用料を支払った上で使用許諾
を受ける必要があったので,原告には同期間の使用料に相当する金額の
損失が生じ,被告らは同額の利得を得ている。同期間中の本件各店舗の
売上げは,合計435億5063万4109円であり,原告が原告各商
20 標の使用許諾をした場合の使用料率は売上げの3%を下らないから,被
告らの不当利得金の額は,13億0651万9023円(=435億5
063万4109円×0.03)となる。
(ウ) 原告は,主位的請求として,不法行為による上記損害のうち5億54
40万円及び不当利得した上記利得のうち3億円並びにこれらに対する
25 遅延損害金の支払を求める。
イ 予備的請求
被告らは,平成27年12月23日から平成28年5月10日までの間
に発生した損害賠償請求権につき,消滅時効を援用している。そこで,原
告は,同損害賠償請求権が時効消滅した場合に備えて,予備的に,同期間
中の商標権の使用料相当額についても不当利得として返還を求める。
5 上記期間中の本件各店舗の売上げは合計25億7536万4888円で
あり,被告らの不当利得金の額は7726万0946円(=25億753
6万4888円×0.03)であるので,(ア)不法行為による損害(平成2
8年5月11日~平成31年4月30日)は,この間の売上げに3%を乗
じた額に弁護士費用等を加算した6億3123万6982円となり,(イ)不
10 当利得による利得金(平成22年10月1日~平成28年5月10日)は
13億8377万9969円となる。
原告は,予備的請求として,不法行為による上記損害のうち5億544
0万円及び不当利得した上記利得のうち3億円並びにこれらに対する遅延
損害金の支払を求める。
15 (2) 損害の発生
被告らは,最高裁判決(小僧寿し事件)を引用し,原告に損害が発生して
いない旨主張するが,同判決によれば,商標法38条3項に基づく実施料相
当額の損害が生じない場合とは,原告の商標に全く顧客吸引力がない場合に
限られるところ,以下のとおり,本件において原告各商標に顧客吸引力があ
20 るから,被告らの主張には理由がない。
ア 需要者がパチンコ店を選択する際には,行きやすい場所にあるかという
基準以外に,遊技したい機種があることや,出玉感があること,ホール内
の雰囲気がいいことや店員の接客がよいことを基準にしている。このよう
な基準を満たす店舗がいわゆる「優良店」である。
25 原告は,平成9年11月の「ベガスベガス札幌店」の開店を皮切りに,
現在では全国で33店舗を経営しており(甲23,24),パチンコ業界で
の店舗数ランキングは全国15位である(甲25)。
また,現在は,インターネットを利用した検索により容易に情報を入手
することが可能であるところ,需要者は,インターネットによって「ベガ
スベガス」という名称の付された店舗は優良店であるという情報を事前に
5 収集し,その旨を理解していると考えられる。
イ 被告らは,原告と被告らの商圏の差異を強調するが,原告の現在の店舗
の商圏と被告らの店舗の商圏が異なるとしても,パチンコ店は特定の地域
にだけ存在するものではなく,全国展開が容易に想定できるものであり,
その商圏の差異は原告各商標の顧客吸引力を否定する根拠とはならない。
10 ウ 「ベガスベガス」という名称のパチンコ店は34店舗あるが(甲30,
乙105),このうち33店舗が原告の店舗である。このように,「ベガス
ベガス」という名称はパチンコ店の名称としてありふれたものではなく,
原告各商標には原告が長期間にわたって築き上げてきた信用が化体してい
る。
15 エ 原告は,北海道,山形及び宮城を中心に,多額の経費をかけて,有名な
タレント等を起用したテレビCMを放映している(甲33~35)。平成2
4年を例にとっても,その回数は山形県内だけでも3000回を超える
(甲36)。また,平成24年1月から令和2年10月までの山形県内のテ
レビ広告費用は約5億1000万円であり(甲37),平成22年4月から
20 令和2年10月までの北海道及び宮城エリアのテレビCM費用は約12億
2000万円に上る(甲37)。
オ 原告の会員数は全国で38万8883人であり,原告店舗に係る「P-
WORLD」のウェブページの1か月の平均閲覧者数は17万3793人
に上る。また,原告各商標を使用したバナーは,店舗周辺にある会員の携
25 帯電話に店舗の広告をPUSH通知するサービス(DMぱちタウン)の専
用資料(乙102)において,業界最大手である「マルハン」のバナーと
ともに掲載されている。
(3) 使用料率について
上記(2)のとおり,原告各商標が顧客吸引力を有することを考慮すると,原
告が原告各商標の使用許諾した場合の使用料率としては3%を下らない。こ
5 れに対し,被告は,3%の使用料率は過大であると主張するが,以下のとお
り,理由がない。
ア パチンコ店等の需要者である遊戯客による店舗の選択に関し,パチンコ
営業の広告宣伝等は,法により厳しい規制をされている。被告らが需要者
において店舗を選択する上で重要であると主張する「出玉感」等は,射幸
10 心をそそるおそれがあることから,法によりこれらを宣伝広告に載せるこ
とはできない。このため,パチンコ営業を行う企業では,イメージキャラ
クターを採用するなどして,店名や会社名と紐づけたイメージ戦略を行っ
ている。原告各商標は,原告が長きにわたって築き上げてきたイメージと
結び付くものであり,顧客獲得のために重要な要素である。
15 また,出玉感などの勝率に係る情報は店舗名に紐付けられ,ランキング
にして発表されていることからすると,需要者は店舗名と勝率には深い関
係性があると認識する可能性が高い。そして,原告各商標を使用した店舗
が,山形では勝率ランキング1位等とされていることからすると(甲31),
需要者は原告各商標と同一又は類似の標章の付された店舗の勝率が高いと
20 考えるのが自然である。
イ 原告各商標の「ベガスベガス」との名称は原告以外ではほとんど利用さ
れていないことから,パチンコ店の名称としてありふれたものではなく,
また,原告各商標はカジノのメッカであるラスベガスを彷彿させる印象の
強い商標であることから,商標としてのインパクトは強い。
25 これに対し,「テキサス」との名称を使用した店舗は,全国に25店舗あ
り,そのうち12店舗は被告ら以外の会社においても使用されており(乙
106),パチンコ店としてはありふれた名称にすぎないので,「テキサス」
との名称は顧客誘引力を有しない。
本件各店舗は,他店で「テキサス」というありふれた名称を使用してい
る被告らが,強い印象を与える店舗を経営するための「ベガスベガス」を
5 使用した事案であり,使用料相当額を売上げの3%とすることに何ら不合
理な点はない。
ウ 被告らは,パチンコ店の経常利益や営業利益を理由として,売上げの
3%の使用料を支払うことなどあり得ないと主張するが,経常利益や営業
利益は,商標を使用しているとするならばその使用料を控除した後に算出
10 されるものであり,経常利益や営業利益が低いことは,商標の使用料率が
低いことの裏付けとはならない。
エ 被告らが主張する平成27年12月以降の被告らの営業努力についても,
以下のとおり,使用料率を左右しない。
(ア) 新聞折込みチラシ
15 被告らが提出する乙96のチラシについて,乙97及び98の請求書
等がこれに対応する請求書であることを示す証拠はなく,また,乙96
のチラシは,原告各商標の出願前に配布したとされるチラシとは異なり,
「VEGAS/VEGAS」との表示を強調しているものが非常に多い
ことからすると(乙96の7・11~13・15・17~19,25・
20 27・33等),乙96のチラシは原告各商標と同一又は類似の標章を
使用することで顧客を誘引していたと考えるのが自然である。これは,
周南店についても同様であり,原告各商標の出願後の同店のチラシには
「VEGAS/VEGAS」との表示を強調しているものが非常に多い
(乙90の1・4・5・7~11・13・15・17~19・21・2
25 3~25等)。
(イ) テレビCM
被告らは,原告各商標の出願後の上記期間において,毎年,年末年始
に被告ら標章を使用したテレビCMを流している旨主張するが,これに
ついても,原告各商標と類似する被告ら標章を利用しているにすぎない。
オ 被告らは,最初に原告による原告各商標権の侵害の事実の指摘を受け,
5 被告ら標章の使用をやめる旨原告に申し入れたにもかかわらず,3年程度
の長期間にわたって,被告ら標章の使用を停止しなかった。その間,被告
らは,当然のことながら原告各商標と同一又は類似の被告ら標章を使用す
ることにより,売上げを上げている。かかる被告らの対応の不誠実さに照
らすと,本件において原告各商標の使用料率を低くする必要はない。
10 (被告らの主張)
(1) 損害の不発生
以下のとおり,被告らが営業する地域において,原告各商標に顧客吸引力
はなく,本件各店舗の売上げは被告ら自身の営業活動等によるものであるこ
とは明らかであるから,原告に実施料相当額の損害は発生していない(最高
15 裁平成6年(オ)第1120号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51
巻3号1055頁参照)。
ア 被告らの営業地域において原告各商標に顧客吸引力がないこと
(ア) パチンコ店の営業において店名は重要でないこと
一般に,パチンコ店の営業において,店名自体は顧客を誘引する要素
20 として重要ではなく,店舗の業績は個々の店舗の営業活動により左右さ
れるものである。全日本遊技事業協同組合連合会が実施したアンケート
調査の結果(乙35・15頁)においても,店舗選択の理由としては
「遊戯したい機種がある」,「行きやすい場所」,「出玉(メダル)感
がある」などが上位を占めている。
25 また,パチンコ業界大手3社(マルハン,ダイナム,ガイア)の店舗
について,その稼働率(店舗の繁盛度を測る指標)をみると,同じ店舗
名であってもその業績には大きな格差がある(乙41)。このことは,
店名が顧客を誘引する重要な要素ではないことを示している。
(イ) 原告各商標に強い顧客吸引力がないこと
原告の運営する全店舗を集計した平均稼働率(全店舗合計客数÷全店
5 舗設置台数。期間:平成31年1月1日~9月12日)は33.3%,
であり,パチンコ店の一般的な稼働率が20%から60%とされている
ことに照らせば,原告各商標が他の店舗と差別化を図るほどの強い顧客
吸引力を有していたとはいい難い。
(ウ) パチンコ店の商圏が広域に及ばないこと
10 パチンコ店の商圏は,前記1(3)(被告らの主張)アのとおり,店舗か
ら半径約10km程度であるところ,原告の営業地域と被告らの営業地
域は,最も近いところでも約600km離れている。原告は,被告らの
営業地域においては特段の広告宣伝等の営業活動等も行っていない。
また,段原店では,広島県在住の会員が全体の約95%であること
15 (乙39)や,周南店では,山口県在住の会員が約93%であること
(乙94)から,被告らの顧客は被告らの店舗周辺の住民が中心であり,
顧客の地理的範囲は原告と重なっていない。
イ 被告らの売上げは自らの営業活動等によるものであること
(ア) 原告商標2の出願に至るまでの被告らの営業活動
20 前記3(被告らの主張)(3)イ(ウ)のとおり,被告らは,原告商標2の
出願時までの間,段原店につき年1000万円を超える広告宣伝費をか
けて,各種の広告・宣伝活動を行っていたが,周南店に関しても,平成
21年4月25日の開店以降,年間5000万円程度の広告宣伝費をか
けて,山口県全域及び近隣他県において,看板,ホームページ,新聞折
25 込み広告,テレビCM,雑誌広告等の様々な媒体を利用して被告ら標章
を使用し,年50億円を超える売上げを計上していた。このような被告
らの営業努力により,営業成果が出ていたことは明らかである。
(イ) 原告が損害賠償等を請求している期間(平成27年12月~平成31
年4月末。以下「原告請求期間」という。)における被告らの営業努力
被告らは,上記期間においても,以下の営業努力を継続していた。
5 (段原店について)
a 新聞折込みチラシによる広告宣伝
段原店は,原告請求期間において,月に平均1~2回,合計62回
の新聞折込みチラシによる広告を行っていた(乙96~98)。新聞
折込みチラシは,一回当たり2,3万部が配布されており,高頻度で
10 相当多数の新聞折込みチラシによる宣伝活動が行われていた。
b テレビCMによる広告宣伝
段原店は,上記期間中,毎年年始に,テレビCMによる宣伝活動を
行っていた(乙30の2・3,乙97,98,99の1・2,乙10
1)。
15 c その他の宣伝活動
段原店では,①パチンコ店の情報サイトである「P-WORLD」
や「DMMぱちタウン」(乙95),②パチンコホール向けのウェブ
広告媒体である「パチ7」(乙103)や「Pachi Ad」(乙
104),③店舗周辺にいる会員の携帯電話に店舗の広告をPUSH
20 通信するサービスである「DMMぱちタウンエリアPUSH/ジオP
USH」(乙102)などを利用して宣伝広告活動を行っていた(乙
95)ほか,従業員を募集するため,求人誌に求人広告を掲載してい
た(乙95)。
(周南店について)
25 a 新聞折込みチラシによる広告宣伝
周南店は,原告請求期間において,月に平均3~4回,合計144
回の新聞折込みチラシによる広告を行っていた(乙90~92)。新
聞折込みチラシは,一回当たり3.5~5万部が配布されており,高
頻度で相当多数の新聞折込みチラシによる宣伝活動が行われていた。
b テレビCMによる広告宣伝
5 周南店は,上記期間中,毎年年始に,テレビCMによる宣伝活動を
行っていた(乙29の4・5,乙91,92,乙93の1・2,乙1
01)。
c その他の宣伝活動
周南店では,①パチンコ店の情報サイトである「P-WORLD」
10 や「DMMぱちタウン」,②「DMMぱちタウンエリアPUSH/ジ
オPUSH」(乙102)などを利用して宣伝広告活動を行っていた
(乙89)ほか,従業員を募集するため,求人誌に求人広告を掲載し
ていた(乙89)。
(ウ) 原告店舗と被告ら店舗との稼働率について
15 原告の運営する店舗の稼働率は33.3%であるのに対し,被告らが
運営する本件各店舗以外の店舗の稼働率は49.5%であり,稼働率に
おいては被告らが上回っている(乙43)。このことは,被告ら標章の
使用が売上げに寄与していないことを示している。
ウ 以上によれば,原告各商標につき,被告らの営業地域における一般需要
20 者への知名度と原告の営業としての顧客吸引力はほとんど存在せず,被告
らが被告ら標章を使用することにより原告には何らの損害も生じていない。
(2) 使用料率について
仮に原告に何らかの損害が発生していたとしても,以下のとおり,原告の
主張する使用料率は限りなくゼロに近いというべきである。
25 ア 基準となる売上高
原告は,平成22年10月から令和元年5月までの周南店及び段原店の月
の売上げを基準としてこれに使用料率である3%を乗じた額が原告の損害
であると主張するが,パチンコ店について商標法38条3項の損害額を算
定するに当たっては,貸玉の対価から客に提供した景品原価を控除した金
額を基に計算するべきである。
5 すなわち,パチンコホールの売上げを計上する場合,貸玉の対価をもっ
て売上高とするグロス方式と,貸玉の対価から客に提供した景品原価を控
除した金額をもって売上高とするネット方式があるところ(乙114),
店舗を利用する顧客が実際に受けるサービスの実態との適合性や,経営内
容を財務的に他の業種とも比較可能な形で正確に把握するという観点から
10 は,ネット方式がパチンコ店の営業実態に沿った方法である。
商標法38条3項に基づいて適正な損害額を算定するためには,パチン
コ店の営業実態に即した売上金額を基にする必要があることに照らすと,
使用料相当額の算定に当たっては,貸玉の対価から客に提供した景品原価
を控除した金額を基準とし,これに使用料率を乗じて計算する方法による
15 ことが相当である。
一般にパチンコ店は売上高の80%以上を景品として顧客に還元してい
るため,粗利から販売費・一般管理費などを控除した後の利益は,売上げ
の3%にも満たず(乙21)。平均的なビジネスモデルとされているもの
によっても,営業利益は売上高比1.55%,税引後営業利益は0.8
20 9%である。このようなパチンコ店の営業内容からすれば,売上げの3%
もの額を商標権に対する使用料として支払うことなど考えられない。
イ 考慮要素
本件の使用料率は,以下の事情に照らしても,限りなくゼロに近いもの
となるはずである。
25 (ア) パチンコ業界では,原告各商標に近似する「ベガス」の文字を含む店
名を使用する店舗が多数存在しており,原告各商標はパチンコ店の店名
としてありふれた名称である。
(イ) パチンコ店の需要者である遊戯客は,パチンコ店の経営主体や当該店
舗が属するグループ名により店舗を選択しておらず,具体的営業内容そ
のものを主要な選択要素として決している。
5 (ウ) 原告と被告らの店舗とは営業地域が大きく離れており,原告は,被告
らが営業する地域で営業活動を行っておらず,被告らの営業する地域に
おいて知名度はない上,それぞれの顧客の地域的属性も大きく異なり,
競合関係にはなかった。
(エ) 被告らは,被告らが運営する「テキサスグループ」の店舗であること
10 が分かるような態様で被告ら標章を使用しており,店舗を利用する需要
者が原告の運営する店舗と誤認することはなかった。
(オ) 本件各店舗は,被告ら標章を使用する以前から営業をしており,被告
ら標章の使用を開始した以降及び原告請求期間においても,多額のコス
トを投下して,自らの標章の顧客吸引力を築き上げてきた。
15 (カ) 被告らは,平成31年4月に本件各店舗の名称を「ベガスベガス」か
ら「テキサス」に変更したが,その時期の前後で同各店舗の売上げに増
減はみられず,店名変更による影響はない。
(キ) 原告の店舗の稼働率は,パチンコ業界の一般的な水準と比較した場合
でも,被告らの運営する店舗と比較した場合でも,いずれも低い水準に
20 とどまっている。
(ク) 原告が,平成24年9月,仙台国税局から約150億円の申告漏れを
指摘され,同事実が新聞報道されたこと(乙115)によると,原告及
び原告商標のイメージは相当悪かったものと推察される。
(3) 不当利得返還請求について
25 原告の主張する被告らの行為は原告各商標権を侵害するものではないので,
被告らによる不当利得は存在しない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(原告各商標と被告ら標章の類否)について
(1) 判断基準
商標と標章の類否は,対比される標章が同一又は類似の商品・役務に使用
5 された場合に,商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否
かによって決すべきであるが,それには,そのような商品・役務に使用され
た標章がその外観,観念,称呼等によって需要者に与える印象,記憶,連想
等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品・役務の取引の実情を明
らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。
10 そして,商標と標章の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商
品・役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,
したがって,これら3点のうち類似する点があるとしても,他の点において
著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品・役務の出所の
誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似の標章と解
15 することはできないというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110
号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,
商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標
そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,商標の構成部
20 分の一部が,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識と
しての称呼,観念が生じないと認められる場合等においては,商標の構成部
分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが
許されると解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年1
25 2月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年
(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号50
09頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷
判決・裁判集民事228号561頁参照)。
(2) 原告各商標から生じる観念,称呼等について
ア 原告商標1について
5 原告商標1が,「ベガスベガス」というブロック体の片仮名6文字から
構成され,「ベガスベガス」との称呼が生じることは当事者間に争いがな
いところ,「ベガス」はカジノなどで世界的に有名な米国の歓楽都市であ
る「ラスベガス」の略称として知られていることに照らすと,需要者は原
告商標1についてラスベガスの略称である「ベガス」を2回続けたものと
10 して認識し,「ラスベガス」を観念するものと考えられる。
これに対し,被告らは,「ベガスベガス」という語が全体として辞書等
に意味が掲載されていないことを根拠に,特定の観念を生じさせない造語
であると主張するが,「ベガス」という語は「ラスベガス」の略称として
辞書に掲載されており(甲17),原告商標1は当該語句を二回繰り返し
15 ているにすぎないのであるから,「ベガスベガス」という語句自体が辞書
に掲載されていないとしても,需要者は「ベガスベガス」から「ラスベガ
ス」を観念するものというべきである。
イ 原告商標2について
原告商標2は,その外観上,「V」の部分がやや図案化されており,
20 「A」の中央の横棒が省略されていると認められるが,同商標を全体的に
観察すれば,図案化された文字がいずれも「V」の字であり,「VEGA
S」という欧文字の単語を上下2段に並べて記載したものであることを容
易に看取することができる。そうすると,原告商標2からは「ベガスベガ
ス」という称呼が生じ,また,前記アのとおり,「ラスベガス」との観念
25 が生じるものと認められる。
これに対し,被告らは,原告商標2の「V」の部分はモノグラムであり,
特定の称呼及び観念を生じさせず,「エガスエガス」又は「イイガスイイ
ガス」との称呼が生じると主張するが,上段(左側)の「V」は,それに
続く「EGAS」の部分と同じ字体及び色合いで表記されており,両者が
一体として「VEGAS」という語を構成することは一見して明らかであ
5 る。
また,下段(右側)の「V」は,上段(左側)の「V」と同一の形をし
ており,欧文字の「V」であることが明確に看取できる上,その後に続く
「EGAS」という部分も上段(左側)と同一であり,これらを全体とし
てみた場合,「VEGAS」という語を上下2段に並べたものであること
10 が容易に認識できる。
したがって,被告らの上記主張は理由がない。
(3) 原告各商標と被告ら標章との類否
ア 被告ら標章①及び⑧について
(ア) 被告ら標章①及び⑧の外観,称呼及び観念
15 被告ら標章①及び⑧の外観は,「VEGAS」という欧文字を横一列
に2つ並べたものであり,1つ目の「V」の左側部分が上方に向かって
長めに表記されており,同各標章から「ベガスベガス」という称呼及び
「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
20 原告商標1と被告ら標章①及び⑧は,文字の種類が異なるなどの外観
上の差異はあるものの,称呼及び観念が同一であることから,役務の出
所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,全体として類似していると認
められる。
これに対し,被告らは,原告商標1と被告ら標章①及び⑧には,片仮
25 名と欧文字の表記などの外観上の差異があり,いずれも造語で観念を比
較することはできないことなどを理由として両者は類似しないと主張す
るが,Vの字の外観上の差異はわずかなものであり,両者の観念が同一
であることは前記(2)アのとおりである。
そうすると,原告商標1と被告ら標章①及び⑧は,文字の種類などの
点で外観上の差異はあるものの,全体として類似しているものというべ
5 きである。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章①及び⑧は,外観において類似しており,称
呼及び観念が同一であることから,役務の出所につき誤認混同を生ずる
おそれがあり,全体として類似していると認められる。
10 これに対して,被告らは,原告商標2と被告ら標章①及び⑧には,上
下2段で表記されているかどうか,「V」や「A」の文字が図案化され
ているかどうか,「V」の左側の線が長めに表記されているかどうかな
どの外観上の差異がある上,称呼も異なり,いずれも造語で観念を比較
することはできないことなどを理由として両者は類似しないと主張する。
15 しかし,原告商標2と被告ら標章①及び⑧の外観上の差異はごく僅か
なものであり,いずれもその外観からは「VEGAS VEGAS」と
いう欧文字から成ることは看取できる上,前記(2)イのとおり,その称
呼及び観念も同一である。
そうすると,原告商標2と被告ら標章①及び⑧は,外観に差異はある
20 ものの,全体として類似しているものというべきである。
イ 被告ら標章②について
(ア) 被告ら標章②の外観,称呼及び観念
被告ら標章②は,「ベガスベガス」というブロック体の片仮名6文字
から構成され,「ベガスベガス」との称呼及び「ラスベガス」との観念
25 が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章②は,いずれも「ベガスベガス」というブロ
ック体の片仮名6文字で構成されたものであり,外観において類似し,
称呼及び観念において同一であることから,役務の出所につき誤認混同
を生ずるおそれがあり,全体として類似していると認められる。
5 (ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章②は,文字の種類が異なるなどの外観上の差
異はあるものの,称呼及び観念において同一であることから,役務の出
所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,全体として類似していると認
められる。
10 これに対し,被告らは,原告商標2と被告ら標章②は外観が異なる上,
称呼も異なり,いずれも造語で観念を比較することはできないことなど
を理由として両者は類似しないと主張するが,両者は,文字の種類が異
なるなどの外観上の差異はあるものの,前記(2)イのとおり称呼及び観
念は同一であり,全体として類似しているものというべきである。
15 ウ 被告ら標章③及び④について
(ア) 被告ら標章③及び④の外観,称呼及び観念
被告ら標章③及び④は,いずれも「VEGAS」という欧文字を上下
2段に並べた外観を有しており(ただし,被告ら標章③は赤色,被告ら
標章④は濃紺に近い色),「ベガスベガス」という称呼及び「ラスベガ
20 ス」との観念が生じる。
(イ) 原告商標1との対比
原告商標1と被告ら標章③及び④は,文字の種類が異なるなどの外観
上の差異はあるものの,役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあ
り,全体として類似していると認められる。
25 これに対し,被告らは,原告商標1と被告ら標章③及び④には,片仮
名と欧文字の表記上の差異があり,語頭の「V」の字が図案化されてい
るなどの外観上の差異があり,いずれも造語で観念を比較することはで
きないことなどを理由として両者は類似しないと主張するが,Vの字の
外観上の差異はわずかなものであり,両者の観念が同一であることは前
記(2)アのとおりである。
5 そうすると,原告商標1と被告ら標章③及び④は,文字の種類が異な
るなどの外観上の差異はあるものの,全体として類似しているものとい
うべきである。
(ウ) 原告商標2との対比
原告商標2と被告ら標章③及び④は,外観において類似しており,称
10 呼及び観念が同一であることから,役務の出所につき誤認混同を生ずる
おそれがあり,全体として類似していると認められる。
これに対して,被告らは,原告商標2と被告ら標章③及び④には,
「V」や「A」の文字が図案化されているかどうか,「V」の左側の線
が長めに表記されているかどうかなどの外観上の差異がある上,称呼も
15 異なり,いずれも造語で観念を比較することはできないことなどを理由
として両者は類似しないと主張する。
しかし,原告商標2と被告ら標章③及び④の外観上の差異はごく僅か
なものであり,いずれもその外観から「VEGAS VEGAS」とい
う欧文字から構成されていることを看取できる上,前記(2)イのとおり,
20 その称呼及び観念も同一である。
そうすると,原告商標2と上記被告ら標章は,外観に差異はあるもの
の,全体として類似しているものというべきである。
エ 被告ら標章⑤について
(ア) 被告ら標章⑤の要部並びに外観,称呼及び観念
25 被告ら標章⑤の要部が「VEGAS VEGAS」という横一列の欧
文字であることは当事者間に争いはなく,同標章からは「ベガスベガス」
という称呼及び「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告各商標との対比
被告ら標章⑤の要部は「VEGAS」という欧文字を横一列に2つ並
べたものであり,同標章から「ベガスベガス」という称呼及び「ラスベ
5 ガス」との観念が生じると認められるところ,同標章の要部は被告ら標
章①及び⑧と同一であり,前記アと同様の理由から,その外観,称呼及
び観念において,原告各商標と類似すると認められる。
オ 被告ら標章⑥について
被告ら標章⑥は,「VEGAS」という欧文字を横一列に2つ並べたも
10 のであり,1つ目の「V」の左側部分が上方に向かって長めに表記されて
おり,同各標章から「ベガスベガス」という称呼及び「ラスベガス」との
観念が生じる。
被告ら標章⑥は,色の違いを除くと被告ら標章①及び⑧と同一であり,
上記アと同様の理由から,その外観,称呼及び観念において,原告各商標
15 と類似する。
カ 被告ら標章⑦について
(ア) 被告ら標章⑦の要部並びに外観,称呼及び観念
被告ら標章⑦は,欧文字で「SLOT」,「VEGAS」,「VEG
AS」という語句が上段・中段及び下段の3段に分けて表記されており,
20 それぞれの部分の字体や色に差異はないものの,文字の大きさについて
は,下段の「VEGAS」が最も大きく,中段の「VEGAS」はそれ
よりもやや小さく,上段の「SLOT」は更にやや小さく表示されてい
ると認められる。
被告ら標章⑦のうち,「SLOT」の部分はスロット機種を設置して
25 いる施設であることを意味しているにすぎず,また,「VEGAS V
EGAS」の部分が「SLOT」の部分より相対的に大きく表示されて
いることに照らすと,同標章のうち出所識別標識として強く支配的な印
象を与えるのは,「VEGAS VEGAS」の部分であると認められ
る。
したがって,被告ら標章⑦の要部は「VEGAS VEGAS」の部
5 分であると認められ,同要部から「ベガスベガス」との称呼及び「ラス
ベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告各商標との対比
被告ら標章⑦の要部は,中段及び下段の「VEGAS」の大きさに差
異があるものの,その外観は,被告ら標章③及び④と同様に,「VEG
10 AS VEGAS」という上下2段の欧文字から構成され,僅かである
が一段目の「V」の左側が上方に向かって長めに表記されているところ,
前記ウと同様の理由から,被告ら標章⑦の要部は,その外観,称呼及び
観念において,原告各商標と類似すると認められる。
キ 被告ら標章⑨について
15 (ア) 被告ら標章⑨の要部
被告ら標章⑨は,欧文字で「SLOT」,「VEGAS」,「VEG
AS」という語句が上段・中段及び下段の3段に分けて表記されており,
字体や色については差異がないものの,文字の大きさについては,上段
の「SLOT」が中段及び下段の「VEGAS」に比べて格段に小さく
20 表示されていることが認められる。
被告ら標章⑨のうち,「SLOT」の部分はスロット機種を設置し
ている施設であることを意味しているにすぎず,また,「VEGAS
VEGAS」の部分が「SLOT」の部分よりも格段に大きく表示され
ていることに照らすと,同標章のうち出所識別標識として強く支配的な
25 印象を与えるのは,「VEGAS VEGAS」の部分であると認めら
れる。
したがって,被告ら標章⑨の要部は「VEGAS VEGAS」の部
分であると認められ,同要部からは,「ベガスベガス」との称呼及び
「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告各商標との対比
5 被告ら標章⑨の要部の外観は,被告ら標章③及び④と同様に,「VE
GAS VEGAS」という上下2段の欧文字から構成されるところ,
前記ウと同様の理由から,その外観,称呼及び観念において,原告各商
標と類似すると認められる。
ク 被告ら標章⑩について
10 (ア) 被告ら標章⑩の要部
被告ら標章⑩は,欧文字で「SLOT」「VEGAS」「VEGAS」
と横一列に表記されており,字体や色については差異がないものの,文
字の大きさについては,冒頭の「SLOT」が「VEGAS」に比べて
小さく表示されていると認められる。
15 被告ら標章⑩のうち,「SLOT」の部分はスロット機種を設置して
いる施設であることを意味しているにすぎず,また,「VEGAS V
EGAS」の部分が「SLOT」の部分よりも相対的に大きく表示され
ていることに照らすと,同標章のうち出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるのは,「VEGAS VEGAS」の部分であると認めら
20 れる。
したがって,被告ら標章⑩の要部は「VEGAS VEGAS」の部
分であると認められ,同要部からは,「ベガスベガス」との称呼及び
「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告各商標との対比
25 被告ら標章⑩の要部は,「VEGAS」という欧文字を横一列に2つ
並べたものであり,同標章から「ベガスベガス」という称呼及び「ラス
ベガス」との観念が生じると認められるところ,同標章の要部は被告ら
標章①及び⑧と同一であり,前記アと同様の理由から,その外観,称呼
及び観念において,原告各商標と類似すると認められる。
ケ 被告ら標章⑪について
5 (ア) 被告ら標章⑪の要部
被告ら標章⑪は,欧文字で「SLOT」,「VEGAS VEGAS」
という語句が上下2段に分けて表記されており,字体や色において差異
はないものの,文字の大きさについては,下段の「VEGAS VEG
AS」が上段の「SLOT」に比べて格段に大きく表示されていると認
10 められる。
被告ら標章⑪のうち,「SLOT」の部分はスロット機種を設置して
いる施設であることを意味しているにすぎず,また,「VEGAS V
EGAS」の部分が「SLOT」の部分よりも格段に大きく表示されて
いることに照らすと,同標章のうち出所識別標識として強く支配的な印
15 象を与えるのは,「VEGAS VEGAS」の部分であると認められ
る。
したがって,被告ら標章⑪の要部は「VEGAS VEGAS」の部
分であると認められ,同要部からは,「ベガスベガス」との称呼及び
「ラスベガス」との観念が生じる。
20 (イ) 原告各商標との対比
被告ら標章⑪の要部は,「VEGAS」という欧文字を横一列に2つ
並べたものであり,同標章から「ベガスベガス」という称呼及び「ラス
ベガス」との観念が生じると認められるところ,同標章の要部は被告ら
標章①及び⑧と同一であり,前記アと同様の理由から,その外観,称呼
25 及び観念において,原告各商標と類似すると認められる。
コ 被告ら標章⑫について
(ア) 被告ら標章⑫の要部
被告ら標章⑫は,欧文字で「SLOT」,「VEGAS」,「VEG
AS」という語句が上段・中段及び下段の3段に分けて表記されており,
字体や色について差異はないものの,文字の大きさについては,中段の
5 「VEGAS」が最も大きく,次いで下段の「VEGAS」,上段の
「SLOT」の順に小さいと認められる。
被告ら標章⑫のうち,「SLOT」の部分はスロット機種を設置して
いる施設であることを意味しているにすぎず,また,「VEGAS V
EGAS」の部分が「SLOT」の部分よりも相対的に大きく表示され
10 ていることに照らすと,同標章のうち出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるのは,「VEGAS VEGAS」の部分であると認めら
れる。
したがって,被告ら標章⑫の要部は「VEGAS VEGAS」の部
分であると認められ,同要部からは,「ベガスベガス」との称呼及び
15 「ラスベガス」との観念が生じる。
(イ) 原告各商標との対比
被告ら標章⑫の要部の外観は,被告ら標章③及び④と同様に,「VE
GAS VEGAS」という上下2段の欧文字から構成されるところ,
前記ウと同様の理由から,その外観,称呼及び観念において,原告各商
20 標と類似すると認められる。
(4) 取引の実情
被告らは,原告各商標と被告ら標章とが,その外観,称呼及び観念におい
て類似するとしても,本件で認められる取引の実情によれば,需要者の間に
誤認混同が生じるおそれがないと主張する。
25 ア しかし,①原告と被告らは,いずれもパチンコやスロットを含む各種娯
楽施設を経営しており,同一事業分野において競合していること,②原告
は,北海道,東北地方,東京などを中心に全国で33店舗を経営し,パチ
ンコ業界における店舗数ランキングは全国15位に位置していること(甲
25),③「ベガスベガス」という名称のパチンコ店は34店舗あるが,
このうち33店舗が原告の店舗であり(甲30,乙105),「ベガスベ
5 ガス」という名称はパチンコ店の名称としてありふれているとはいい難い
こと,④原告及び被告らは,いずれも独自のウェブサイトを開設し(甲1,
23,24),全国の需要者がアクセス可能な状態の下,原告各商標及び
被告各標章を掲載していること,⑤原告及び被告らは,全国のパチンコ店
についての情報を掲載した「P-WORLD」というウェブサイトにおい
10 て,それぞれの店舗についての宣伝広告を行い,原告店舗の情報が掲載さ
れたページの閲覧者数は,月平均で17万3793人であったこと(甲4
1,42,51,76)などによれば,被告らが,被告らの店舗に被告ら
標章を付して営業を行った場合,需要者は,同各標章を付した被告らの店
舗が原告又はそのグループが経営する店舗であると誤認混同するおそれが
15 あるというべきである。
イ これに対し,被告らは,本件における取引の事情として,①原告と被告
らでは商圏及び需要者を共通にしないこと,②「ベガス」の文字を含む店
名を使用するパチンコ店が多数存在すること,③被告らは自らの経営する
テキサスグループの店舗であると認識し得る態様で被告ら標章を使用して
20 いたことなどを指摘する。
(ア) しかし,原告と被告らでは主要な商圏及び地理的範囲における需要者
が重なっていなかったとしても,上記のとおり,原告の店舗は全国で一
定の知名度を有していたと考えられることに加え,原告及び被告らがい
ずれも全国の需要者がアクセス可能な独自のウェブサイトを開設してい
25 ること,更に全国のパチンコ店についての情報を掲載した「P-WOR
LD」というウェブサイトにおいて,原告の店舗情報の閲覧者数が月平
均で17万人を超えていたこと(甲41,42,51,76)などの事
情を考慮すると,なお,被告らがその店舗に被告ら標章を付して営業を
行った場合,需要者は,同各標章を付した被告らの店舗が原告又はその
グループが経営する店舗であると誤認混同するおそれがあるというべき
5 である。
(イ) また,原告各商標は,「ベガスベガス」というブロック体の片仮名6
文字から構成され,あるいは,「VEGAS VEGAS」という上下
2段の欧文字から構成されるものであるところ,「ベガスベガス」がパ
チンコ店の名称としてありふれているとはいい難いことは前記のとおり
10 である。そうすると,「ベガス」を含む店舗の数が被告らの主張すると
おりであるとしても,その事実は,原告各商標と被告ら標章の間に誤認
混同が生じるおそれがあるとの上記認定を左右しない。
(ウ) さらに,被告らは自らの経営するテキサスグループの店舗であると認
識し得る態様で被告ら標章を使用していたと主張するが,需要者に対し
15 役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるのは店舗名であり,
本件各店舗の新聞折込みチラシ(乙55,85)をみても,宣伝広告に
おいても需要者が最も頻度高く目にするのは店舗名であると認められる。
そうすると,被告らが,その店舗内の景品交換カウンター,テレビCM,
新聞の折込みチラシ等において,本件各店舗がテキサスグループに属す
20 ることを示すような態様で宣伝を行っていたとしても,被告ら標章に接
した需要者が同各標章を付した本件各店舗が原告又はそのグループが経
営する店舗であると誤認混同するおそれはなお否定できない。
(5) 小括
以上によれば,原告各商標と被告ら標章は類似すると認められる。
25 2 争点2(商標法2条3項8号の「使用」該当性)について
被告らは,商標法2条3項8号にいう「展示」とは,作為を意味するもので
あり,商標登録以前に展示されていた標章を除去しない行為は,不作為である
から,同号の「展示」には当たらない旨主張するが,「展示」は時間的に幅の
ある概念であり,標章を付して商標権を侵害する状態が継続する限りは「展示」
に該当するというべきである。
5 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
3 争点3(先使用の抗弁の成否)について
被告らは,原告各商標の出願前から被告ら標章を使用しており,同各標章は
同出願の際には需要者の間に広く知られていたから,被告らは商標法32条1
項に基づく先使用権を有すると主張するので,以下検討する。
10 (1) 周知性の地理的範囲
被告らは,周知性を要する地理的範囲について,パチンコ店の商圏は距離
にすればおよそ店舗から半径10km程度の範囲とされていることを考慮す
ると,広島市内及び周南市内で周知性が認められれば足りると主張する。
しかし,①被告らの店舗は広島県,山口県,福岡県(北九州市)に所在す
15 ること,②本件各店舗の会員は,広島県,山口県を中心として,福岡県,島
根県,大分県などにも相当数居住していること(乙39,94),③被告ら
が本件各店舗等の広告を掲載した九州スポーツ新聞の販売地域が九州全域,
山口県,広島県西部及び島根県中西部地区であること(乙51~54,7
7),④本件各店舗のラジオCMの聴取区域が広島県,山口県東部,岡山県
20 西部,愛媛県西部,島根県南部,大分県東北部であったこと(乙51,63)
などを考慮すると,本件において周知性の基礎となる地理的範囲は,本件各
店舗の所在する広島県,山口県にその近隣県である福岡県,島根県を含む地
域(以下「本件地域」という。)であると認めるのが相当である。
(2) 周南店における被告ら標章の使用について
25 ア 被告らは,平成21年4月25日の周南店の開店以降,被告ら標章①及び
②を使用しており,同各標章(これと同一及び通常加えられる変更の範囲
内のものを含む。)は,原告各商標の出願当時に需要者の間で広く知られ
ていたと主張するところ,証拠(乙83,85)によれば,被告らは,同
日に周南店を開店し,その店名又は呼称として被告ら標章①及び②を使用
していたとの事実が認められる。
5 イ しかし,周南店の開店時期は,原告商標1の出願日(平成21年8月18
日)の僅か4か月前であり,かかる短期間の間に被告ら標章①及び②が上
記地域の需要者の間で広く知られるようになったと認めるに足りる証拠は
ない。
また,被告らは,遅くとも原告商標2の出願日時点(平成23年6月1
10 4日)において被告ら標章①及び②は周知であったと主張するが,以下の
とおり,理由がない。
(ア) 被告らは,被告ら標章を店舗の看板等で継続して使用したと主張する
が,証拠(乙84・3頁)からは,看板の表示,設置態様等は明らかで
はない。
15 (イ) 被告らは周南店における売上げが年50億円を超え,その宣伝広告費
は年間5000万円程度であり,会員数が2000人を超えると主張す
るが,同店舗は山口県内に149ある遊技場の一店舗にすぎず(甲2
0),その売上高,宣伝広告費,会員数が他店より格段に多く,本件地
域における被告ら標章①及び②の周知性を基礎付けるに足りる十分な規
20 模であったと認めることはできない。
(ウ) 被告らは,周南店につき,月に平均8,9回の新聞折込みチラシによ
る広告を行い,一回当たり5~8万部を配布したと主張するが,そもそ
も,新聞折込みチラシは,その性質上,需要者がこれに目を通すとは限ら
ず,また,平成27年の山口県の世帯総数が59万7000世帯である
25 と認められること(甲21)に照らすと,上記新聞折込みチラシが配布
されたのは,広くても周南市内又はその周辺に限られていたものと認め
るのが相当である。
そうすると,被告らが配布した周南店に関する新聞折込みチラシに被
告ら標章①及び②が表示されていたとしても,これをもって,同各標章
が,本件地域において,需要者の間で広く知られていたと認めることは
5 できない。
(エ) 被告らは,平成21年4月25日の開店以降,周南店につき,被告ら
標章を使用して,毎月3日間テレビCMによる宣伝活動を行い(乙86,
88の1,乙101),また,平成23年6月にもテレビCMによる宣
伝活動を行っていた(乙87,88の2,乙101)と主張する。
10 しかし,上記テレビCMはその放映回数は月に3回という限られた回
数であり,被告ら標章①及び②が表示されていた時間はごく僅かである
ことに照らすと,同CMに表示された同各標章が需要者に強い印象を与
えたとは考え難い。
(オ) 被告らは,パチンコ店の情報サイトである「P-WORLD」の自店
15 の頁において被告ら標章を使用していた,求人誌に同店従業員の求人広
告を掲載していた,パチンコ情報雑誌に店舗の広告を出稿していたなど
と主張するが,これらの広告等の具体的な内容や掲載されていた被告ら
標章は明らかではない。
(カ) 以上のとおり,周南店が使用した被告ら標章に関し,被告らに先使用
20 権を認めることはできない。
ウ なお,原告は,被告らによる周南店の営業活動等に関する主張・立証は,
先使用権に関する主張との関係では時機に後れた攻撃防御であると主張する
が,これにより訴訟の完結を遅延させることとなるとまでは認められないの
で,時機に後れているということはできない。
25 (3) 段原店における被告ら標章の使用について
ア 被告らは,平成16年10月16日の段原店の開店以降,被告ら標章A,
B1~B4を使用し,同各標章と同一又は通常加えられる変更の範囲内に
ある被告ら標章は,原告各商標の出願当時に需要者の間で広く知られてい
たと主張するところ,証拠(乙35,46,49,55,67,68)に
よれば,被告らは,同日に段原店を開店し,その店名,呼称,看板の表示
5 等として,少なくとも被告ら標章①,②,⑧,⑩及び⑫を使用していたと
認められる。
イ 被告らは,原告各商標の登録出願の際に,被告ら標章が被告らの役務を表
示するものとして,需要者の間で広く認識されていたと主張するが,以下
のとおり,理由がない。
10 (ア) 被告らは,平成16年10月以降,被告ら標章を段原店の店外看板等で
使用し,また,平成20年10月以降,段原店周辺の幹線道路沿いに看板
を3か所設置していたと主張する。
しかし,店舗建物に設置された看板は店舗を訪れる客及びその近隣住民
の目を引くにすぎず,また,段原店周辺の幹線道路沿いに設置したと被告
15 らが主張する看板(乙70,71)は,同道路沿いに設置されていた他の
看板と比べてさほど目立つ態様のものということはできず,その数も3か
所にとどまるものであって,同道路の通行量にかかわらず,これをもって,
同店舗の使用していた被告ら標章が本件地域における需要者に広く認識さ
れていたということはできない。
20 (イ) 被告らは,年間平均32億円の売上げを計上するとともに,年間平均約
1200万円を超える広告宣伝費を投じており,その会員数も,原告商標
2の登録出願日時点で1000人を超えていたと主張する。
しかし,同店舗は広島県内に271ある遊技場の一店舗にすぎず(甲2
0),その売上高,宣伝広告費,会員数が他店より格段に多く,本件地域
25 における被告ら標章の周知性を基礎付けるに足りる十分な規模であったと
認めることはできない。
(ウ) 被告らは,段原店の開店当時から自社ホームページにおいて被告ら標章
①及び②を使用し,「P-WORLD」においても被告ら標章を使用して
いたと主張する。
しかし,「P-WORLD」という全国のパチンコ店のほとんど全ての
5 店舗が自店の情報を掲載するウェブサイトであり,段原店のウェブページ
にどの程度のアクセスがあったかは明らかではない上,さらにそのうちど
の程度の需要者が同ウェブページに掲載された標章を認識したかも明らか
ではない。
(エ) 被告らは,月に2,3回程度,新聞折込みチラシによる広告を行い,広
10 島市内を中心に,少ないときで3~5万部,多いときには10~20万部
程度配布していた上,九州スポーツ新聞に,被告ら標章を使用した新聞紙
面広告を掲載したと主張する。
しかし,そもそも,新聞折込みチラシは,その性質上,需要者がこれに目
を通すとは限らず,また,その頻度も月に2~3回と限られており,さら
15 に,広島県内のみでもその世帯総数が120万9000世帯であると認め
られること(甲21)に照らすと,上記新聞折込みチラシが配布された地
域は段原店の周辺地域に限られていたと認めるのが相当である。
また,被告らの指摘する九州スポーツ新聞に段原店の広告が掲載された
のはわずか1回であり(乙51・7頁,乙53,54),その掲載態様も
20 同広告の下部に被告らの経営する他の店舗と並列的に小さく表示されてい
たにすぎないのであり,これをもって,本件地域における被告ら標章の周
知性を基礎付けることはできない。
(オ) 被告らは,年末年始や店舗改装時にテレビCMを利用し,被告ら標章を
使用して段原店の宣伝活動を行い,また,RCCラジオにおいて,毎週金
25 曜日の夜,ラジオCMを放送していたと主張する。
しかし,被告らの主張するテレビCMは,年末年始や店舗改装時のタイ
ミングなどに限られていた上,段原店は他の被告ら経営の店舗とともに,
当該CMのごく僅かな時間に放映されているにすぎず(乙62),被告ら
標章の印象が需要者に残ったとは考え難い。また,被告らが主張するRC
Cラジオの放送は,その中で被告ら標章がどのように宣伝広告されたかが
5 明らかではない。
(カ) 被告らは,広島県内で配布される求人誌において,被告ら標章を使用し
た求人広告を掲載し,また,パチンコ・パチスロユーザー向けの雑誌であ
る「ホール情報誌 でちゃう!」の九州・山口版に,段原店の広告を掲載
したと主張するが,上記求人誌及び雑誌における被告ら標章の使用態様は
10 明らかではない。
(キ) 被告らは,段原店の開店時に被告ら標章をプリントされた宣伝車を広島
市内において周回し,また,被告ら標章が印字されたポケットティッシュ
や団扇を配布するなどしたと主張するが,その具体的な態様は明らかでは
なく,これらの事実をもって,本件地域における被告ら標章の周知性を基
15 礎付けることはできない。
(ク) 以上のとおり,段原店の使用する被告ら標章についても,周南店と同
様,被告らに先使用権を認めることはできない。
4 争点4(原告の損害及び利得額)について
(1) 損害不発生の抗弁について
20 また,被告らは,原告各標章には顧客吸引力が認められないから,被告ら
による被告ら標章の使用によっても原告には損害が発生していない旨主張す
る。
ア 登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標と
して使用した場合であっても,当該登録商標に顧客吸引力が全く認められ
25 ず,登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全
く寄与していないことが明らかなときは,得べかりし利益としての実施料
相当額の損害も生じていないというべきである(前掲最高裁判所平成9年
3月11日判決)。
イ これを本件についてみるに,①原告は,全国で33店舗を経営しており,
パチンコ業界での店舗数ランキングは全国15位であること(甲23~2
5 5),②「ベガスベガス」という名称のパチンコ店(34店舗)のうち,
33店舗が原告の店舗であり(甲30,乙105),米国の著名な都市を
想起させる「ベガスベガス」という原告各商標は需要者に対する訴求力を
有するというべきであること,③原告は,全国の需要者がアクセス可能な
独自のウェブサイトを開設し,「P-WORLD」における原告の店舗情
10 報の閲覧者数が月平均で17万人を超えていること(甲41,42,51,
76),④原告の会員数は全国で38万8883人であることなどに照ら
すと,原告各商標は相応の顧客吸引力を有するというべきである。
ウ これに対し,被告らは,原告の運営する全店舗を集計した平均稼働率は,
パチンコ店の一般的な稼働率と比較して高いとはいえないこと,原告は被
15 告らの営業地域においては特段の広告宣伝等の営業活動等も行っていない
こと,被告らの売上げは自らの営業活動等によるものであることなどを理
由に,原告各商標には顧客吸引力が全く認められないと主張する。
しかし,平均稼働率は店舗の繁盛度を測る指標にはなるとしても,商標
の顧客吸引力と直接結びつくものではなく,前記イで判示した事情を考慮
20 すると,原告が被告らの営業地域において営業活動等も行っていないとし
ても,そのことから直ちに原告各商標が顧客吸引力を有しないということ
はできない。
また,被告らの売上げにその営業活動等が寄与しているとしても,原告
各商標と類似する被告ら標章は本件各店舗の店名に使用され,宣伝広告で
25 も表示されているのであるから,被告ら標章を使用することは本件各店舗
の売上げに一定程度寄与しているというべきであり,同標章の使用が本件
各店舗の売上げに全く寄与していないことが明らかであるということはで
きない。
エ したがって,被告ら標章の使用によって原告には損害が発生していない
との被告らの主張は理由がない。
5 (2) 使用料相当額について
ア 証拠(乙112,113)によれば,平成22年10月1日から平成3
1年4月30日までの期間における本件各店舗の総売上高は,652億5
439万2382円であると認められる。
イ 使用料率について
10 (ア) 商標法38条3項による損害は,原則として,侵害に係る役務の売上
高を基準とし,これに実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきで
あり,実施に対し受けるべき料率は,①実際の実施許諾契約における実
施料率や,業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,②当該商標
権の顧客吸引力,③当該商標を使用した場合の売上げ及び利益への貢献
15 や侵害の態様,④商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針
等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきであ
る(知財高裁特別部平成30年(ネ)第10063号・令和元年6月7日
判決(最高裁HP)参照)。
(イ) 被告らは,パチンコホールの売上げを計上する場合,貸玉の対価をも
20 って売上高とするグロス方式と,貸玉の対価から客に提供した景品原価
を控除した金額をもって売上高とするネット方式があるところ,パチン
コ店について商標法38条3項の損害額を算定するに当たっては,ネッ
ト方式により貸玉の対価から景品原価を控除した金額を基に計算するべ
きであると主張する。
25 しかし,本件において,損害を算定する基準となる売上高は,当該役
務によって得られる収入,すなわち,貸玉の対価と解するのが自然であ
り,店舗運営に係る諸費用のうち景品原価のみを控除した額を売上げと
みなすべき合理的な理由はない。被告らが主張するような,パチンコ業
界における利益率は使用料率の算定において考慮すれば足りるというべ
きである。
5 (ウ) そこで,原告各商標についての相当な使用料率について以下検討する。
a 本件においては,原告が実際に原告各商標の使用を許諾したことを
うかがわせる証拠はなく,業界における実施料の一般的な相場等も明
らかではない。
b 原告各商標は,上記(1)イで摘示した事情,すなわち,パチンコ業界
10 における店舗数ランキング,「ベガスベガス」という名称の需要者へ
の訴求力,原告の店舗情報に関するウェブサイトへのアクセス状況,
原告の会員数などを考慮すると,相応の顧客吸引力を有するものと認
められる。
他方で,全日本遊技事業協同組合連合会が実施したアンケート結果
15 (乙40・15頁)によると,パチンコホールを選ぶ上でのポイント
として需要者が重視するのは,①遊戯機種,②アクセスの容易さ,③
出玉感,④ホールの雰囲気,⑤店員の接客態度などであり,店舗の名
称が売上げ又は利益に貢献する程度は限定的であるというべきである。
c さらに,原告と被告らはその事業分野で競合しているが,営業地域
20 をみると,原告の店舗は,北海道,東北地方及び関東地方が中心であ
り,本件各店舗の所在する広島県及び山口県においては店舗展開及び
営業活動をしていない。他方,被告らは,原告各商標の出願前から本
件各店舗を同地域に出店し,地元の需要者に対して,新聞の折込みチ
ラシ(乙55,56,78,85~87,90,91,96,97),
25 新聞紙面広告(乙53,54,77),テレビCM(乙57,59~
66,86~88,91~93,97~101)などによる宣伝広告
活動を継続してきたものと認められ,被告らによるかかる営業活動が
その売上げに貢献する割合は大きかったと推察される。
d 本件各店舗の月当たりの営業利益をみると,売上高の概ね●(省略)
●前後で推移しているものと認められ(乙112,113),売上高
5 に対する営業利益の比率は必ずしも高くないことからすると,通常想
定される使用料率は上記の割合より相当程度低くなると考えられるが,
本件においては,さらに,店舗の名称が売上げに貢献する程度は限定
的であり,原告と被告らは本件各店舗の所在地で競合していないこと,
被告の営業努力の寄与が大きいなどの事情が認められる。
10 e 以上の事情も含め,本件に現れた事情を総合考慮すると,原告各商
標に関する使用料率は0.15%であると認めるのが相当である。
(3) 損害及び利得額
ア 消滅時効の成否
被告らは,平成28年5月10日以前の不法行為に基づく原告の損害賠
15 償請求権につき消滅時効を援用する旨の意思表示をしているところ(前記
前提事実(7)),原告が,平成27年12月23日付け書面で,被告テキサ
ス・カンパニーに対し,同被告が原告商標1と同一又は類似する商標を被
告らホームページや看板その他に掲げていることを指摘していること(前
記前提事実(6))によれば,原告は,本訴を提起した令和元年5月10日の
20 3年前の平成28年5月10日より前に,原告各商標権に対する侵害につ
き,その損害及び加害者が被告らである事実を知っていたものと認められ
る。
したがって,平成28年5月9日以前の不法行為に基づく原告の損害賠
償請求権は時効消滅しているというべきである。
25 イ そこで,原告の予備的請求に基づいて損害額又は利得額を算定すること
とすると,
(ア) 不当利得(平成22年10月1日~平成28年5月10日)
証拠(乙112,113)によれば,本件各店舗の平成22年10月
1日から平成27年12月31日までの売上高は437億1608万23
96円であり,平成28年1月1日から同年5月10日までの売上高は,
5 24億0991万6600円(=27億9623万9109円÷152×
131)であるので,その合計額である461億2599万8996円に
0.15%を乗じると,6918万8998円となる。
(イ) 不法行為に基づく損害額(平成28年5月11日~平成31年4月3
0日)
10 平成22年10月1日から平成31年4月30日までの期間における
本件各店舗の総売上高は652億5439万2382円であるところ(前
記(2)),この金額から上記461億2599万8996円を控除した1
91億2839万3386円(平成28年5月11日から平成31年4
月30日までの総売上高)に0.15%を乗じると,2869万259
15 0円となる。
(ウ) 弁護士費用相当損害金について
本件事案の難易,請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告
らの侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金としては,50
0万円と認めるのが相当である。
20 (エ) 上記(ア)~(ウ)の合計額 1億0288万1588円
(4) 遅延損害金について
上記のとおり,平成28年5月10日以前の請求分については不当利得返
還請求権として認容すべきところ,同請求分については,訴えの一部変更申
立書において請求されたものであるから,同不当利得返還債務は,同変更申
25 立書送達の日の翌日から遅滞に陥ることになる。
一方で,その後の請求分(平成28年5月11日から平成31年4月30
日まで)については,弁護士費用相当損害金も含め,訴状で請求されている
とおり,不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日である令和元年5月2
4日から遅滞に陥ることになる。
5 結論
5 以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,1億0288万1588円及
びうち3369万2590円(=2869万2590円+500万円)に対す
る訴状送達の日の翌日である令和元年5月24日から支払済みまで民法(平成
29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による,うち6918
万8998円に対する訴えの一部変更申立書送達の日の翌日である令和2年1
10 0月16日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による各遅延損害金の連
帯支払を求める限度で理由がある。
よって,原告の請求を主文掲記の限度で認容し,その余はいずれも棄却する
こととし,仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文
のとおり判決する。
15 東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
ああああああああああああああああああああ
20 佐 藤 達 文
裁判官
ああああああああああああああああああああ
25 小 田 誉 太 郎
裁判官
あああああああああああああああああああああ
齊 藤 敦
(別紙)
標章目録
5 被告ら標章①
被告ら標章②
被告ら標章③
被告ら標章④
被告ら標章⑤
被告ら標章⑥
被告ら標章⑦
被告ら標章⑧
被告ら標章⑨
被告ら標章⑩
被告ら標章⑪
20 被告ら標章⑫
(別紙)
商標権目録1
登録番号:商標登録第5310661号
登録日 :平成22年3月19日
出願番号:商願2009-63035
出願日 :平成21年8月18日
10 商標 :
指定商品:第41類 セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の
演奏の興行の企画又は運営,スポーツの興行の企画・運営又
20 は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音
楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・ 競輪・競艇・小型自動
車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,娯
楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のため
の施設の提供
(別紙)
商標権目録2
登録番号:商標登録第5473817号
登録日 :平成24年2月24日
出願番号:商願2011-41253
10 出願日 :平成23年6月14日
商標 :
指定商品:第35類 身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対す
る便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において
20 行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸
売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧
品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行
われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業
務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房
25 具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便
益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業
務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコ
ードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便
益の提供,たばこ及び喫煙用具の小売又は卸売の業務におい
30 て行われる顧客に対する便益の提供
第41類 セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽
の演奏の興行の企画又は運営,スポーツの興行の企画・運営
又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・
音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自
35 動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,
娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のた
めの施設の提供
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