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令和3(ワ)21029発信者情報開示請求事件

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裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和4年3月4日
事件種別 民事
当事者 原告
被告エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 イッツ・コミュニケーションズ株式会社
法令 著作権
著作権法32条1項2回
著作権法2条1項1号1回
著作権法10条1項8号1回
キーワード 侵害17回
損害賠償4回
許諾2回
主文 1 被告NTTコムは、原告に対し、別紙発信者情報目録1記載の各情
2 被告イッツコムは、原告に対し、別紙発信者情報目録3記載の各情
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
事件の概要 1 本件は、原告が、電気通信事業等を営む被告らに対し、氏名不詳者らが、被 告らの電気通信設備を経由して、別紙投稿記事目録1記載1及び2の各投稿5 (以下、「本件投稿1-1」、「本件投稿1-2」という。)並びに同目録2 記載1ないし5の各投稿(以下、「本件投稿2-1」、「本件投稿2-2」な どという。)を行ったことにより、原告の肖像権及び別紙原告著作物目録記載

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判決文

令和4年3月4日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和3年(ワ)第21029号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 令和4年1月17日
判 決
5 原 告 A
同訴訟代理人弁護士 臼 坂 富 士 彦
同 森 島 崇 行
被 告 エヌ・ティ・ティ・
コミュニケーションズ株式会社
10 (以下「被告NTTコム」という。)
同訴訟代理人弁護士 五 島 丈 裕
被 告 イッツ・
コミュニケーションズ株式会社
(以下「被告イッツコム」という。)
15 同訴訟代理人弁護士 齋 藤 洋 一
同 田 川 慎 一
同 松 本 寿 親
主 文
1 被告NTTコムは、原告に対し、別紙発信者情報目録1記載の各情
20 報を開示せよ。
2 被告イッツコムは、原告に対し、別紙発信者情報目録3記載の各情
報を開示せよ。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
25 第1 請求
1 主文第1項同旨
2 被告イッツコムは、原告に対し、別紙発信者情報目録2記載の各情報を開示
せよ。
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、電気通信事業等を営む被告らに対し、氏名不詳者らが、被
5 告らの電気通信設備を経由して、別紙投稿記事目録1記載1及び2の各投稿
(以下、「本件投稿1-1」、「本件投稿1-2」という。)並びに同目録2
記載1ないし5の各投稿(以下、「本件投稿2-1」、「本件投稿2-2」な
どという。)を行ったことにより、原告の肖像権及び別紙原告著作物目録記載
1ないし4の各写真(同目録記載2の写真については、女性の横顔を写した写
10 真部分を指す。以下、「原告写真1」、「原告写真2」などという。)に係る
原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、上
記氏名不詳者らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権等の行使のため、被
告らが保有する別紙発信者情報目録1記載の各情報(以下、本件投稿1-1に
係る発信者情報を「本件発信者情報1-1」、本件投稿1-2に係る発信者情
15 報を「本件発信者情報1-2」という。)及び同目録2記載の各情報(以下、
本件投稿2-1に係る発信者情報を「本件発信者情報2-1」、本件投稿2-
2に係る発信者情報を「本件発信者情報2-2」などという。)の開示を受け
るべき正当な理由があるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制
限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」とい
20 う。)4条1項に基づき、本件発信者情報1-1、1-2及び2-1ないし2
-5の開示を求める事案である。
原告は、本件発信者情報2-1ないし2-5に係る請求について、それらの
うちのいずれか一つの請求が認容されることを求めているので、被告イッツコ
ムに対する請求は選択的併合の関係に立つと解される。
25 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実)
(1)ア 原告は、写真及び動画を共有するSNSであるインスタグラムに、日常
生活における自らの写真、家族や友人との写真等を投稿するインスタグラ
マーであり、そのフォロワー数は20万人を超える(甲12)。
イ 被告らは、電気通信事業等を目的とする会社であり、いわゆる経由プロ
5 バイダである(弁論の全趣旨)。
(2) 原告は、自らのスマートフォンで、原告写真1ないし4を撮影した(甲1
0の2、甲11の1ないし3、甲12)。
原告写真1は原告の子らを、原告写真2は原告をそれぞれ写したものであ
るところ、原告写真1及び2は、「写真の著作物」(著作権法10条1項8
10 号)に該当する(甲10の2、甲11の1)。
(3) 被告NTTコム関係
ア 本件投稿1-1
氏名不詳者は、別紙投稿記事目録1記載1の投稿日時欄記載の日時に、
被告NTTコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
15 欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、「B」
と題する電子掲示板(以下「本件掲示板」という。)の同スレッド欄記載
のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、原告写真1と同一の写
真画像を投稿した(甲1の2、3、甲4、11の1、甲12)。
イ 本件投稿1-2
20 氏名不詳者は、別紙投稿記事目録1記載2の投稿日時欄記載の日時に、
被告NTTコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件掲
示板の同スレッド欄記載のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、
原告写真2と同一の写真画像に、原告が「投稿内容省略」という文字部分
25 などを付加した画像を投稿した(甲1の2、3、甲6、10の2、甲1
2)。
ウ 発信者情報の保有
被告NTTコムは、本件投稿1-1及び1-2に係る開示関係役務提供
者であり、本件発信者情報1-1及び1-2を保有している(甲1の2、
3、甲4、6)。
5 (4) 被告イッツコム関係
ア 本件投稿2-1
氏名不詳者は、別紙投稿記事目録2記載1の投稿日時欄記載の日時に、
被告イッツコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件掲
10 示板の同スレッド欄記載のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、
原告の顔が写った写真(以下「原告容貌写真」という。)と同一の写真画
像を投稿した(甲1の2、4、甲7の1、甲12)。
イ 本件投稿2-2
氏名不詳者は、別紙投稿記事目録2記載2の投稿日時欄記載の日時に、
15 被告イッツコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件掲
示板の同スレッド欄記載のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、
原告容貌写真と同一の写真画像を投稿した(甲1の2、4、甲7の2、甲
12)。
20 ウ 本件投稿2-3
氏名不詳者は、別紙投稿記事目録2記載3の投稿日時欄記載の日時に、
被告イッツコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件掲
示板の同スレッド欄記載のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、
25 原告写真3と同一の写真画像を投稿した(甲1の2、4、甲7の3、甲1
1の3、甲12)。
エ 本件投稿2-4
氏名不詳者は、別紙投稿記事目録2記載4の投稿日時欄記載の日時に、
被告イッツコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件掲
5 示板の同スレッド欄記載のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、
原告容貌写真と同一の写真画像を投稿した(甲1の2、4、甲8、12)。
オ 本件投稿2-5
氏名不詳者は、別紙投稿記事目録2記載5の投稿日時欄記載の日時に、
被告イッツコムのインターネット接続サービスを利用し、同IPアドレス
10 欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件掲
示板の同スレッド欄記載のスレッドに、同投稿内容欄記載の書き込みをし、
原告写真4と同一の写真画像を投稿した(甲1の2、4、甲9の2、甲1
1の2、甲12)。
カ 発信者情報の保有
15 被告イッツコムは、本件投稿2-1ないし2-5に係る開示関係役務提
供者であり、本件発信者情報2-1ないし2-5を保有している。
本件発信者情報2-1ないし2-5は、同一の氏名不詳者に係るもので
ある(弁論の全趣旨)。
3 争点
20 (1) 権利侵害の明白性(争点1)
(2) 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(争点2)
4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(権利侵害の明白性)について
(原告の主張)
25 ア 本件投稿1-1、1-2、2-3及び2-5に係る著作権侵害について
(ア) 原告写真1ないし4は、原告が自らのスマートフォンで構図や撮影ア
ングル、露光等を工夫して撮影したものであり、原告の思想及び感情を
創作的に表現したものとして著作物性が認められるから、原告は、原告
写真1ないし4に係る著作権を有する。
氏名不詳者らは、原告がインスタグラム等にアップロードした原告写
5 真1ないし4と同一の写真画像を、本件掲示板に本件投稿1-1、1-
2、2-3及び2-5として投稿したものである。
(イ) 本件投稿1-1及び1-2は、「インスタ(以下省略)」等と題し、
「投稿内容省略」という書き込みから始まるスレッドに投稿されたもの
であり、同スレッドにおいては、原告の容姿や生活ぶり、家族等につい
10 て誹謗中傷する書き込みが連続している。このようなスレッドに、原告
の過去のブログやインスタグラム等に掲載されていた写真を転載し、意
見論評や感想等を述べるというのは、新たな批判材料を提供して原告に
対する人格攻撃を誘発し、又は増幅させるなどして、これを面白がると
いうものにすぎない。原告写真1及び2についての感想を述べたいので
15 あれば、このようなスレッドに書き込みをする必要はないし、これらが
原告のブログ等に存在することを指摘すれば足り、これらを引用する必
要はない。
また、本件投稿1-1及び1-2においては、原告写真1及び2が大
部分を占めており、書き込み部分は従たる存在にすぎないから、原告写
20 真1及び2をさらすことに主眼があったといえる。
以上によれば、本件投稿1-1及び1-2で原告写真1及び2を引用
する必要性や必然性は認められないから、「引用の目的上正当な範囲内」
とは認められず、適法な引用(著作権法32条1項)とはいえない。
そして、本件投稿1-1、1-2、2-3及び2-5のいずれについ
25 ても、他に違法性阻却事由は認められない
(ウ) したがって、本件投稿1-1、1-2、2-3及び2-5が原告写真
1ないし4に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したこ
とは明白である。
イ 本件投稿1-2、2-1、2-2及び2-4に係る肖像権侵害について
原告は、インスタグラマーとして多数のフォロワーを有する人物ではあ
5 るが、あくまで一般私人であり、その肖像を無断で使用されることを受忍
しなければならない社会的地位にはない。
そして、本件投稿1-2、2-1、2-2及び2-4においては、書き
込みとともに原告の顔が写った原告写真2及び原告容貌写真が投稿された
ところ、前記ア(イ)のとおり、これらは、原告の容姿や生活ぶり、家族等に
10 ついて誹謗中傷する書き込みが連続するスレッドに投稿されたものであり、
その内容は、原告の容姿を嘲笑し、揶揄するものであって、原告の肖像を
使用することにつき正当な目的や必要性は何らない。むしろ、原告を個人
攻撃するための手段として、原告写真2及び原告容貌写真が用いられてい
るといえる。
15 原告が、原告写真2及び原告容貌写真をインターネット上で公表し、又
は公表することを許諾したことがあり、肖像権を放棄したと見る余地があ
ったとしても、上記スレッドにおいて本件投稿1-2、2-1、2-2及
び2-4のような態様で掲載することまで許容して肖像権を放棄したとい
うべきではない。
20 したがって、本件投稿1-2、2-1、2-2及び2-4は、明らかに
社会生活上の受忍限度を超える態様により、原告写真2及び原告容貌写真
を使用するものであるから、原告の肖像権を侵害するものであることは明
白である。
(被告NTTコムの主張)
25 ア 本件投稿1-1及び1-2に係る著作権侵害について
原告は、インスタグラムを利用して多数の写真を公表し、フォロワー数
20万人を超えるインスタグラマーであることを自認しており、本件投稿
1-1及び1-2は、「インスタ(以下省略)」及び「インスタ(以下省
略)」というタイトルのスレッドにそれぞれ投稿されたものであることか
らすると、本件投稿1-1及び1-2は、インスタグラムにおいて大きな
5 影響力を持つ原告について記述したものと評価できる。
そして、本件投稿1-1及び1-2においては、書き込みと原告写真1
及び2とは明瞭に区別することができ、原告写真1及び2は当該書き込み
において言及された原告の子及び原告自身に係るものであるから、当該書
き込みに対して従たるものというべきである。
10 したがって、本件投稿1-1及び1-2で原告写真1及び2を掲載した
ことは、文章を作成するために利用したものであるから、適法な引用に該
当する。
イ 本件投稿1-2に係る肖像権侵害について
人は、自己の容貌等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利
15 益(肖像権)を有するとしても、それが違法と評価されるのは、公表する
行為が社会生活上受忍の限度を超えた場合であると解される。
仮に、原告写真2が原告の容貌(顔)を撮影したものであるとしても、
原告の横顔を写したものにすぎず、例えば、他人の目があることを意識し
ておらず、それゆえにリラックスできるような私的生活空間における姿で
20 あったり、裸体や水着姿といったようなそれ自体が公開を欲しないような
ものではない。また、原告写真2は、原告がインスタグラマーとして自ら
不特定多数人に公表するために撮影したものであり、実際にインターネッ
ト上で公開されていた。
以上によれば、本件投稿1-2で原告写真2を掲載したことは、社会生
25 活上受忍限度を超えたものとまではいえず、肖像権を侵害するとはいえな
い。
(被告イッツコムの主張)
ア 本件投稿2-3及び2-5に係る著作権侵害について
原告写真3及び4は、原告の思想及び感情を創作的に表現したものであ
ることが明らかであるとはいえない。
5 したがって、本件投稿2-3及び2-5で原告写真3及び4を掲載した
ことについて、原告の著作権を侵害したことが明白であるとまではいえな
い。
イ 本件投稿2-1、2-2及び2-4に係る肖像権侵害について
原告は、知人に対し、当該知人が原告容貌写真をインターネット上で公
10 表することについて明示又は黙示の許諾をしているので、自らの肖像権を
放棄したといえる。
また、原告容貌写真が掲載された本件投稿2-1、2-2及び2-4は、
「インスタ(以下省略)」及び「インスタ(以下省略)」といった、何ら
誹謗中傷的要素を含まない中立的なタイトルのスレッドにおいてされたも
15 のである。上記知人により公表された原告容貌写真がその後も継続して公
開されることを、原告が想定していなかったとは認められない。そして、
本件投稿2-1、2-2及び2-4の各書き込みは、原告を嘲笑したり、
揶揄したりするのではなく、原告を慮ったものや、原告のツイッター上の
投稿に対する対抗言論として記載されたもの、単に原告の性格を推測する
20 ものである。さらに、原告は、私人とはいえ、フォロワー数20万人を超
え、相当の影響力を有するインスタグラマーであり、原告容貌写真のみな
らず自己の容姿を含む多数の写真を自己の意思に基づいてインターネット
上で公表している立場にある。
以上によれば、本件投稿2-1、2-2及び2-4で原告容貌写真を掲
25 載したことについて、原告の肖像権を侵害したことが明白であるとまでは
いえない。
(2) 争点2(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由)について
(原告の主張)
原告は、本件投稿1-1、1-2及び2-1ないし2-5の氏名不詳者ら
に対し、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるが、同氏名不詳
5 者らに関する情報を把握しておらず、同氏名不詳者らに対して上記権利を行
使するためには、本件発信者情報1-1、1-2及び2-1ないし2-5の
開示を受ける必要があるから、原告には発信者情報の開示を受けるべき正当
な理由がある(ただし、本件発信者情報2-1ないし2-5については、そ
のいずれかが開示されれば足りる。)。
10 (被告らの主張)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(権利侵害の明白性)について
(1) 著作物性について
15 証拠(甲11の3、甲12)によれば、原告写真3は、原告及び原告の母
が横に並び、カメラの方向に顔及び視線を向けた状況を、両名の肩から上の
部分が収まるようにやや上から撮影したものであることが認められる。
上記認定事実によれば、原告写真3は、被写体の組合せ、選択及び配置、
構図並びに撮影方法を工夫して、シャッターチャンスを捉えて撮影されたも
20 のであり、これを撮影した原告の「思想又は感情を創作的に表現したもの」
(著作権法2条1項1号)であって、「写真の著作物」(同法10条1項8
号)に該当するというべきである。
(2) 適法な引用の成否について
ア 本件投稿1-1について
25 前記前提事実(2)及び(3)アのとおり、本件投稿1-1は、「投稿内容省
略」、「投稿内容省略」という書き込みをした上で、原告の子らを写した
原告写真1と同一の写真画像を投稿したものである。そして、証拠(甲2
の8、甲4)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿1-1は、「インスタ
(以下省略)」というタイトルの下に、原告に関する誹謗中傷を含む多数
の書き込みがされたスレッドに投稿されたものであり、本件投稿1-1に
5 は原告写真1の出典は記載されていないことが認められる。
上記認定事実によれば、本件投稿1-1について、書き込みの内容その
ものは、原告写真1に写った原告の子らに言及するものであり、原告を誹
謗中傷するようなものではないが、特段原告写真1を引用する必要はない
というべきであり、書き込み自体長いものではないことから、本件投稿1
10 -1に占める原告写真1の割合は小さくないといえる。そうすると、上記
認定事実のとおり原告写真1の出典が明示されていないことも考慮すれば、
本件投稿1-1において原告写真1と同一の写真画像を掲載したことは、
公正な慣行に合致するものであるとも、引用の目的上正当な範囲内で行わ
れたものであるともいえないから、適法な引用(著作権法32条1項)に
15 は当たらないというべきである。
イ 本件投稿1-2について
前記前提事実(2)及び(3)イのとおり、本件投稿1-2は、「投稿内容省
略」、「投稿内容省略」という書き込みとともに、原告を写した原告写真
2と同一の写真画像を投稿したものである。そして、証拠(甲2の11、
20 甲6)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿1-2は、「インスタ(以下
省略)」というタイトルの下に、原告に関する誹謗中傷を含む多数の書き
込みがされたスレッドに投稿されたものであり、本件投稿1-2には原告
写真2の出典は記載されていないことが認められる。
上記認定事実によれば、本件投稿1-2について、書き込みの内容は、
25 原告写真2に写った原告の顔を揶揄するものであり、原告写真2の出典は
明示されていない上、書き込み自体極めて短く、本件投稿1-2に占める
原告写真2の割合は小さくない。そうすると、本件投稿1-2において原
告写真2と同一の写真画像を掲載したことは、公正な慣行に合致するもの
であるとも、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるともいえな
いから、適法な引用には該当しないというべきである。
5 (3) 小括
前記前提事実(2)ないし(4)及び前記(1)のとおり、原告は、原告写真1ない
し3に係る著作権を有するところ、本件投稿1-1、1-2及び2-3は原
告写真1ないし3と同一の写真画像を投稿したものであり、これにより同写
真がインターネット上で公開されたものである。
10 そして、前記(2)のとおり、本件投稿1-1及び1-2において原告写真1
及び2と同一の写真画像を投稿したことは適法な引用には当たらず、その他
の違法性阻却事由の存在も認められない。
以上によれば、本件掲示板に原告写真1ないし3と同一の写真画像を投稿
する本件投稿1-1、1-2及び2-3により、原告写真1ないし3に係る
15 原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことは明白である(プ
ロバイダ責任制限法4条1項1号)と認めるのが相当である。
2 争点2(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由)について
証拠(甲12)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件投稿1-1、1-
2及び2-3を行った氏名不詳者らに対し、少なくとも原告写真1ないし3に
20 係る原告の著作権が侵害されたことについて、不法行為に基づく損害賠償請求
等をする意思を有しており、そのためには、被告NTTコムが保有する本件発
信者情報1-1及び1-2並びに被告イッツコムが保有する本件発信者情報2
-3の開示を受ける必要があると認められる。
したがって、原告には、本件発信者情報1-1、1-2及び2-3の開示を
25 受けるべき正当な理由がある(プロバイダ責任制限法4条1項2号)と認める
のが相当である。
第4 結論
以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、原告の被告NTTコムに
対する請求はいずれも理由があるからこれを認容し、原告の被告イッツコムに
対する請求のうち本件発信者情報2-3の開示を求める部分は理由があるから
5 これを認容することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
10 國 分 隆 文
裁判官
15 小 川 暁
裁判官
20 佐 々 木 亮
(別紙)
発信者情報目録1
別紙投稿記事目録1記載のIPアドレスを同目録記載の投稿日時(JST)に使
用した契約者に関する以下の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電話番号
4 メールアドレス
以 上
(別紙)
発信者情報目録2
別紙投稿記事目録2記載のIPアドレスを同目録記載の投稿日時(JST)に使
用し、同目録記載の接続先IPアドレスに接続した契約者に関する以下の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電話番号
4 メールアドレス
以 上
(別紙)
発信者情報目録3
別紙投稿記事目録2記載3のIPアドレスを同目録記載の投稿日時(JST)に
使用し、同目録記載の接続先IPアドレスに接続した契約者に関する以下の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電話番号
4 メールアドレス
以 上
(別紙)
投稿記事目録1
1 省略
2 省略
以 上
(別紙)
投稿記事目録2
1 省略
2 省略
3 省略
4 省略
5 省略
以 上
(別紙)
原告著作物目録
1 省略
2 省略
3 省略
4 省略
以 上

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