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令和1(ワ)25152特許権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和4年3月24日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ドワンゴ
被告FC2,INC. 株式会社ホームページシステム
対象物 コメント配信システム
法令 特許権
特許法2条3項1号4回
特許法100条1項2回
特許法102条3項2回
特許法104条の32回
特許法17条の22回
特許法36条4項1号2回
特許法36条6項1号2回
特許法36条6項2号1回
特許法39条1回
特許法32条1回
特許法39条2項1回
特許法2条3項1回
特許法41条1項1回
特許法42条1項1回
特許法44条1項1回
特許法44条2項1回
キーワード 進歩性84回
実施44回
特許権43回
無効39回
分割27回
侵害27回
差止16回
優先権14回
損害賠償7回
新規性6回
許諾1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
1 被告らは、別紙1被告ファイル目録記載のファイルを日本国内に所在するユ
2 被告らは、別紙2被告サーバ用プログラム目録記載のプログラムを抹消せよ。
3 被告らは、別紙3被告サーバ目録記載のサーバを除却せよ。25
4 被告らは、原告に対し、連帯して1000万円並びにこれに対する被告FC
2については令和元年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員及
1 事案の要旨5
4号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」と
2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下、書証番号は特5
9)。以下「本件原出願」という。)の一部を次の経過で順次分割して特許出
202475号。以下「本件出願」という。)をして、令和元年5月17日に20
8-326061号(乙8)に係る特許出願がされた。
0-269616号(乙7)に係る特許出願がされた。
1-136539号(乙6)に係る特許出願がされた。
2-109242号(乙5)に係る特許出願がされた。
14-213566(乙4)に係る特許出願がされた。
6-186619(乙3)に係る特許出願がされた。10
17-252909(甲14、乙2)に係る特許出願がされた。
2」といい、併せて「本件発明」という。)。
1A サーバと、これとネットワークを介して接続された複数の端末装置
1B 前記サーバは、前記サーバから送信された動画を視聴中のユーザか
1C 前記端末装置に、前記動画と、コメント情報とを送信し、
1D 前記コメント情報は、前記第1コメント及び前記第2コメントと、
1E 前記動画及び前記コメント情報に基づいて、前記動画と、前記コメ
2コメントと、を前記端末装置の表示装置に表示させる手段と、20
1F 前記第2コメントを前記1の動画上に表示させる際の表示位置が、
1G 重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメント
1H 前記サーバが、前記動画と、前記コメント情報とを前記端末装置に
1I コメント配信システム。
2A 動画配信サーバ及びコメント配信サーバと、これらとネットワーク
2B 前記コメント配信サーバは、前記動画配信サーバから送信された動
2C1 前記端末装置にコメント情報を送信し、
2C2 前記動画配信サーバは、前記端末装置に前記動画を送信し、15
2D 前記コメント情報は、前記第1コメント及び前記第2コメントと、
2E 前記動画及び前記コメント情報に基づいて、前記動画と、前記コメ20
2コメントと、を前記端末装置の表示装置に表示させる手段と、
2F 前記第2コメントを前記1の動画上に表示させる際の表示位置が、
2G 重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメント
2H 前記コメント配信サーバが前記コメント情報を、前記動画配信サー
2I コメント配信システム。
3 争点
3)
1 争点1(準拠法)について
2 争点2(被告システムが本件発明1の技術的範囲に属するか)について
2が表示開始される場合には、コメント2がコメント1に追いつくか15
1a サーバと、これとインターネット経由で接続された複数のユーザ端
1b 前記サーバは、前記サーバから配信された動画を再生閲覧中のユー
1c 前記ユーザ端末に、前記動画の動画ファイルと、コメントファイル
1d 前記コメントファイルは、前記コメント1及びコメント2と、前記
1e 前記動画ファイル及び前記コメントファイルに基づいて、前記動画
1f 前記コメント1及び前記コメント2を前記動画上に表示させる際に、
1g 追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コ
1h 前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前
1i コメント付き動画配信システム。
1Bを充足する。
1F及び1Hを充足しない。
1Aないし1F及び1Hを充足しない。
3 争点3(被告システムが本件発明2の技術的範囲に属するか)について
2a 動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバと、これとインターネ
2b 前記コメント配信用サーバは、前記動画配信用サーバから配信され
2c1 前記ユーザ端末にコメントファイルを配信し、
2c2 前記動画配信用サーバは、前記ユーザ端末に前記動画の動画ファ10
2d 前記コメントファイルは、前記コメント1及びコメント2と、前記
2e 前記動画ファイル及び前記コメントファイルに基づいて、前記動画
2f 前記コメント1及び前記コメント2を前記動画上に表示させる際に、20
2g 追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コ
2h 前記コメント配信用サーバが前記コメントファイルを、前記動画配
2i コメント付き動画配信システム。
2B、2C2、2Dないし2F及び2Hの充足性が否定されるものではな15
2B、2C1、2Dないし2F及び2Hをいずれも充足しない。
4 争点4(被告らによる被告システムの「生産」の有無)について15
3の生産を注文する行為であり、生産には該当しない。
2及び3の生産に該当する。15
2つの移動するコメントが追い付いて重複しないよう動画上に表示され
3については、被告FC2から第三者への事業譲渡前のもの)は米国に存15
4月1日以降、動画関連サービスについては引き継ぎ業務のみを行う
5 争点5(無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否)について
6 争点6(原告による本件特許権の行使が権利の濫用に当たるか)について
17条の2第3項及び第4項の規定を逸脱する目的で分割出願されたものであ
7 争点7(損害の発生の有無及びその額)について15
000万円を下らない。
8 争点8(差止請求及び除却等請求の当否)について5
1 本件明細書の記載事項等
1】、【図2】、【図4】、【図5】、【図8】、【図9】及び【図10】については、
3の構成を説明する概略ブロック図である。
31によって再生される動画を表示するとともに、コメント情報記憶部3
3に記憶されたコメント情報のうち、再生する動画の動画再生時間に対応25
104には、第1の表示部によって表示される動画が表示される。表示欄
105は、第2の表示部によって表示されるコメントが表示される領域で
37を介して入力される。ここで、入力欄108の近傍にチェックボック
110に入力されたコメントや、入力欄108に入力されたユーザの名前20
4】)。
2 争点1(準拠法)について
14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁)、本件の差止
3 争点2(被告システムが本件発明1の技術的範囲に属するか)について
2コメント」並びに「コメント情報」の意義15
2コメントを受信し、」と規定している。
2コメント」は、「前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれ
108に入力されたユーザの名前や、入力欄109に入力されたコメ
020】)、「送信部40は、第1の表示部35によって表示された動画
10)。そして、送信部40は、追加保存したコメント情報をコメント
2コメント」とは、本件発明1のコメント配信システムにおいて、サ
1(2)のとおり、本件明細書の記載からは、【0005】の「ユーザ間
1E及び1H)との記載がある。これらの記載から、動画と第1コメ
34に表示される情報の一例を示す図である。…表示欄104には、15
1C)を有するものと理解でき、また「サーバから送信された動画」20
2コメント」並びに「コメント情報」の意義
2コメント」(構成要件1B等)とは、本件発明1のコメント配信システ
2コメント」を受信する構成を備えると認められる。
1コメント」及び「第2コメント」並びに「コメント情報」に該当
2コメント」が表示されるかについて
1F及び1Hを充足し、前記前提事実(6)イのとおり、被告システム2及び320
4 争点3(被告システムが本件発明2の技術的範囲に属するか)について
2コメント」並びに「コメント情報」の意義
2コメント」は、「前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれ
2E及び2H)との記載があり、これらの記載から、動画と第1コメ
2コメント」並びに「コメント情報」の意義
1コメント」及び「第2コメント」並びに「コメント情報」に該当15
2コメント」が表示されるかについて
2F及び2Hを充足し、前記前提事実(6)イのとおり、被告システム2及び3
5 争点4(被告らによる被告システムの「生産」の有無)について20
4日までの間、業として、被告サービス2及び3を運営していたが、
3に登録することができ、登録した動画を被告サービス2又は3の再生
6年12月にかけての動画の配信に関して、わいせつ電磁的記録記録媒10
9年3月24日、上記被告人らが、被告HPSの従業員をして被告FC
2と共に被告FC2の動画配信サービスを管理させており、被告FC2
4月時点では48人、平成29年4月時点では6人であり、平成29年
11月以降は1名となり、令和元年10月には従業員がいなくなった
7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁、最高裁平成12
1C及び1H)並びにコメントの受信及びコメント付与時間を含むコメ
1の関係で、被告FC2による被告システム1の日本国内での「生産」
2及び3における「サーバ」は、少なくとも米国内のコメント配信用サー
6 結論
1 「FC2動画」(https://以下省略)において、被告らがサーバからユーザ端末
2 「FC2 SayMove!」(http://以下省略)において、被告らがサーバか
3 「FC2 ひまわり動画」(http://以下省略)において、被告らがサーバから10
1 「FC2動画」(https://以下省略)において、被告らがユーザ端末に対して動
2 「FC2 SayMove!」(http:/以下省略)において、被告らがユーザ端
3 「FC2 ひまわり動画」(http://以下省略)において、被告らがユーザ端末
1 「FC2動画」(https://以下省略)において、被告らがユーザ端末に対して動
2 「FC2 SayMove!」(http://以下省略)において、被告らがユーザ端
3 「FC2 ひまわり動画」(http://以下省略)において、被告らがユーザ端末
1 争点5-1(乙17公報を主引用例とする進歩性欠如)(無効理由1))につ
7発明」といい、下記の(ア)ないし(キ)の構成を、符号に対応させて「構成
26ないし28。以下「本件位置変更慣用技術」という。)、乙17発明20
29)の110頁においても開示されている。
7発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に10
2 争点5-2(乙18公報を主引用例とする進歩性欠如)(無効理由2))につ
8発明」といい、下記の(ア)ないし(カ)の構成を、符号に対応させて「構成
019】においても使用されている文言である。
2コメントを前記端末装置の表示装置に表示させる」に、それぞれ相当
8発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
3 争点5-3(乙19公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由3))につい
36】)。画面中の水平方向への移動は、「スクロール」の最も代表的な例で
9発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
9発明においてコメント(チャットメッセージ)を水平方向に移動させ20
4 争点5-4(乙20文献を主引用例とする進歩性欠如(無効理由4))につい5
0発明」といい、下記の(ア)ないし(オ)の構成を、符号に対応させて「構成
0発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
20文献の70頁「4.2テキストアノテーション」)、アノテーション
5 争点5-5(乙21公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由5))につい
1発明」といい、下記の(ア)ないし(エ)の構成を、符号に対応させて「構成
1発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
041】の「データ画像」が「テキスト」を含むと解する余地はない。
21発明には本件発明1の「コメント付与時間」に対応するものはない。
1公報には本件発明1の「コメント付与時間」に対応するものはないか5
6 争点5-6(乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由6))につい25
4発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
1の表示欄に動画が表示され、第2の表示欄にチャットメッセージが表示
4公報に記載された発明に対して、チャットメッセージを水平方向に移
4公報に記載された発明でそのようなことは想定されていない。また、10
7 争点5-7(乙25文献を主引用例とする進歩性欠如(無効理由7))につい
5発明」といい、下記の(ア)ないし(オ)の構成を、符号に対応させて「構成
5発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
5文献に記載された発明に対して、ウィンドウ110及び150に表示
20に表示され(構成(ウ))、コメントがウィンドウ110及び150に25
8 争点5-8(明確性要件違反(無効理由8))について15
9 争点5-9(サポート要件違反(無効理由9))について
11】は「発明の効果」として記載されており、本件発明に関するもので
08】には、本件出願の原出願(前記第2の2(2)の⑦の出願)の請求項が記
10 争点5-10(実施可能要件違反(無効理由10))について
11 争点5-11(先願要件違反(無効理由11))について
9条により無効となることはない。10
12 争点5-12(分割要件違反による新規性、進歩性欠如(無効理由12))に
2項)、分割元の特許が無効となっても当然に分割された出願は影響されないと
4条1項に定める出願期間を満たさないものである。
2日(優先日は平成18年12月11日)に遡及する。したがって、本件出願
13 争点5-13(優先権主張の要件違反による進歩性欠如等(無効理由13))
18年12月11日を優先日として行われている。
1日)に遡及する。
14 争点5-14(公序良俗違反(無効理由14))について
事件の概要 1 事案の要旨5 本件は、発明の名称を「コメント配信システム」とする特許第652630 4号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」と いう。)の特許権者である原告が、被告FC2が運営するインターネット上のコ メント付き動画配信サービスである「FC2動画」(https://以下省略。以下 「被告サービス1」という。)、「FC2 SayMove!」(http://以下省略。10 以下「被告サービス2」という。)及び「FC2 ひまわり動画」(http://以下 省略。以下「被告サービス3」といい、被告サービス1ないし3を併せて「被 告サービス」という。)に係るシステム(以下、被告サービスの番号に従って 「被告システム1」ないし「被告システム3」といい、併せて「被告システム」 という。)は本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、被告FC215 が別紙3被告サーバ目録記載の各サーバ(以下、併せて「被告サーバ」という。) から日本国内のユーザ端末に別紙1被告ファイル目録記載の各ファイル(以下、 併せて「被告ファイル」という。)を送信することが被告システムの「生産」と して本件特許権を侵害する行為に当たると主張し、また、被告HPSは被告F

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判決文

令和4年3月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(ワ)第25152号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和3年11月5日
判 決
5 原 告 株 式 会 社 ド ワ ン ゴ
同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
多 田 宏 文
同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘
被 告 F C 2 , I N C .
10 (以下「被告FC2」という。)
同訴訟代理人弁護士 壇 俊 光
高 橋 淳
同訴訟復代理人弁護士 宮 川 利 彰
被 告 株式会社ホームページシステム
15 (以下「被告HPS」という。)
同訴訟代理人弁護士 濱 田 佳 志
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事実及び理由
第1 請求
1 被告らは、別紙1被告ファイル目録記載のファイルを日本国内に所在するユ
ーザ端末に配信してはならない。
2 被告らは、別紙2被告サーバ用プログラム目録記載のプログラムを抹消せよ。
25 3 被告らは、別紙3被告サーバ目録記載のサーバを除却せよ。
4 被告らは、原告に対し、連帯して1000万円並びにこれに対する被告FC
2については令和元年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員及
び被告HPSについては同月17日から支払済みまで同割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
5 1 事案の要旨
本件は、発明の名称を「コメント配信システム」とする特許第652630
4号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」と
いう。)の特許権者である原告が、被告FC2が運営するインターネット上のコ
メント付き動画配信サービスである「FC2動画」(https://以下省略。以下
10 「被告サービス1」という。 、
) 「FC2 SayMove!」(http://以下省略。
以下「被告サービス2」という。)及び「FC2 ひまわり動画」(http://以下
省略。以下「被告サービス3」といい、被告サービス1ないし3を併せて「被
告サービス」という。)に係るシステム(以下、被告サービスの番号に従って
「被告システム1」ないし「被告システム3」といい、併せて「被告システム」
15 という。)は本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、被告FC2
が別紙3被告サーバ目録記載の各サーバ(以下、併せて「被告サーバ」という。)
から日本国内のユーザ端末に別紙1被告ファイル目録記載の各ファイル(以下、
併せて「被告ファイル」という。)を送信することが被告システムの「生産」と
して本件特許権を侵害する行為に当たると主張し、また、被告HPSは被告F
20 C2と実質的に一体のものとして上記の特許権侵害行為を行っていると主張し
て、被告らに対し、特許法100条1項に基づき、被告ファイルの日本国内の
ユーザ端末への配信の差止めを求め、同条2項に基づき、別紙2被告サーバ用
プログラム目録記載の各プログラム(以下、併せて「被告サーバ用プログラム」
という。)の抹消及び被告サーバの除却を求めるとともに、特許権侵害の共同不
25 法行為に基づく損害賠償請求として、民法709条及び719条1項前段に基
づき、特許法102条3項による実施料相当額の損害金1000万円及びこれ
に対する不法行為後の日である被告らそれぞれに対する訴状送達の日の翌日
(被告FC2については令和元年10月2日、被告HPSについては同月17
日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
5 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下、書証番号は特
記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者
ア 原告は、コンピュータを利用したネットワークシステムの企画、開発、
製造、販売及び賃貸等を業とする日本の株式会社である。
10 イ 被告FC2は、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)のネバダ州法に
基づいて設立された外国法人であり、インターネット上でのブログや動画
配信サイトの運営等を主な業務としている。
ウ 被告HPSは、インターネットを利用した各種情報提供サービス等を業
とする日本の株式会社である。
15 (2) 本件特許
原告は、平成19年3月2日(優先日平成18年12月11日、優先権主
張国日本国)を出願日とする特許出願(特願2007-053347号(乙
9)。以下「本件原出願」という。)の一部を次の経過で順次分割して特許出
願を行い、平成30年10月29日に本件特許の特許出願(特願2018-
20 202475号。以下「本件出願」という。)をして、令和元年5月17日に
本件特許権の設定登録(請求項の数13)を受けた(甲1、2、14、15、
乙1ないし9。以下、本件出願の願書に添付した明細書と図面(甲2)を併
せて「本件明細書」という。また、明細書の発明の詳細な説明に記載された
段落番号及び図面については、単に【0001】 【図1】などと記載する。 。
、 )
25 ① 本件原出願の一部を分割して、平成20年12月22日、特願200
8-326061号(乙8)に係る特許出願がされた。
② ①の出願の一部を更に分割して、平成22年12月2日、特願201
0-269616号(乙7)に係る特許出願がされた。
③ ②の出願の一部を更に分割して、平成23年6月20日、特願201
1-136539号(乙6)に係る特許出願がされた。
5 ④ ③の出願の一部を更に分割して、平成24年5月11日、特願201
2-109242号(乙5)に係る特許出願がされた。
⑤ ④の出願の一部を更に分割して、平成26年10月20日、特願20
14-213566(乙4)に係る特許出願がされた。
⑥ ⑤の出願の一部を更に分割して、平成28年9月26日、特願201
10 6-186619(乙3)に係る特許出願がされた。
⑦ ⑥の出願の一部を更に分割して、平成29年12月28日、特願20
17-252909(甲14、乙2)に係る特許出願がされた。
⑧ ⑦の出願の一部を更に分割して、平成30年10月29日、本件出願
がされた。
15 (3) 特許請求の範囲
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2は、以下のとおりである(こ
れらの請求項1及び2に係る発明を、以下、順に「本件発明1」 「本件発明

2」といい、併せて「本件発明」という。。

ア 【請求項1】
20 サーバと、これとネットワークを介して接続された複数の端末装置と、
を備えるコメント配信システムであって、
前記サーバは、
前記サーバから送信された動画を視聴中のユーザから付与された前記
動画に対する第1コメント及び第2コメントを受信し、
25 前記端末装置に、前記動画と、コメント情報とを送信し、
前記コメント情報は、
前記第1コメント及び前記第2コメントと、
前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれが付与された時点
に対応する、前記動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生
時間であるコメント付与時間と、を含み、
5 前記動画及び前記コメント情報に基づいて、前記動画と、前記コメント
付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の少なくとも一部と
重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメントと、
を前記端末装置の表示装置に表示させる手段と、
前記第2コメントを前記1の動画上に表示させる際の表示位置が、前記
10 第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と、
重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメントとが
重ならない位置に表示されるよう調整する表示位置制御部と、を備えるコ
メント配信システムにおいて、
前記サーバが、前記動画と、前記コメント情報とを前記端末装置に送信
15 することにより、前記端末装置の表示装置には、
前記動画と、
前記コメント付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の
少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前
記第2コメントと、
20 が前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならないように表示される、
コメント配信システム。
イ 【請求項2】
動画配信サーバ及びコメント配信サーバと、これらとネットワークを介
して接続された複数の端末装置と、を備えるコメント配信システムであっ
25 て、
前記コメント配信サーバは、
前記動画配信サーバから送信された動画を視聴中のユーザから付与さ
れた前記動画に対する第1コメント及び第2コメントを受信し、
前記端末装置にコメント情報を送信し、
前記動画配信サーバは、前記端末装置に前記動画を送信し、
5 前記コメント情報は、
前記第1コメント及び前記第2コメントと、
前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれが付与された時点
に対応する、前記動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生
時間であるコメント付与時間と、を含み、
10 前記動画及び前記コメント情報に基づいて、前記動画と、前記コメント
付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の少なくとも一部と
重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメントと、
を前記端末装置の表示装置に表示させる手段と、
前記第2コメントを前記1の動画上に表示させる際の表示位置が、前記
15 第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と、
重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメントとが
重ならない位置に表示されるよう調整する表示位置制御部と、を備えるコ
メント配信システムにおいて、
前記コメント配信サーバが前記コメント情報を、前記動画配信サーバが
20 前記動画を、それぞれ前記端末装置に送信することにより、前記端末装置
の表示装置には、
前記動画と、
前記コメント付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の
少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前
25 記第2コメントと、
が前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならないように表示される、
コメント配信システム。
(4) 本件発明の構成要件の分説
本件各発明は、それぞれ、以下のとおり、構成要件に分説することができ
る(以下、分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成
5 要件1A」などという。。

ア 本件発明1
1A サーバと、これとネットワークを介して接続された複数の端末装置
と、を備えるコメント配信システムであって、
1B 前記サーバは、前記サーバから送信された動画を視聴中のユーザか
10 ら付与された前記動画に対する第1コメント及び第2コメントを受信
し、
1C 前記端末装置に、前記動画と、コメント情報とを送信し、
1D 前記コメント情報は、前記第1コメント及び前記第2コメントと、
前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれが付与された時点
15 に対応する、前記動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画
再生時間であるコメント付与時間と、を含み、
1E 前記動画及び前記コメント情報に基づいて、前記動画と、前記コメ
ント付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の少なくと
も一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第
20 2コメントと、を前記端末装置の表示装置に表示させる手段と、
1F 前記第2コメントを前記1の動画上に表示させる際の表示位置が、
前記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と、
1G 重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメント
とが重ならない位置に表示されるよう調整する表示位置制御部と、を
25 備えるコメント配信システムにおいて、
1H 前記サーバが、前記動画と、前記コメント情報とを前記端末装置に
送信することにより、前記端末装置の表示装置には、前記動画と、前
記コメント付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の少
なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び
前記第2コメントと、が前記第1コメントと前記第2コメントとが重
5 ならないように表示される、
1I コメント配信システム。
イ 本件発明2
2A 動画配信サーバ及びコメント配信サーバと、これらとネットワーク
を介して接続された複数の端末装置と、を備えるコメント配信システ
10 ムであって、
2B 前記コメント配信サーバは、前記動画配信サーバから送信された動
画を視聴中のユーザから付与された前記動画に対する第1コメント及
び第2コメントを受信し、
2C1 前記端末装置にコメント情報を送信し、
15 2C2 前記動画配信サーバは、前記端末装置に前記動画を送信し、
2D 前記コメント情報は、前記第1コメント及び前記第2コメントと、
前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれが付与された時点
に対応する、前記動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画
再生時間であるコメント付与時間と、を含み、
20 2E 前記動画及び前記コメント情報に基づいて、前記動画と、前記コメ
ント付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画の少なくと
も一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第
2コメントと、を前記端末装置の表示装置に表示させる手段と、
2F 前記第2コメントを前記1の動画上に表示させる際の表示位置が、
25 前記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と、
2G 重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメント
とが重ならない位置に表示されるよう調整する表示位置制御部と、を
備えるコメント配信システムにおいて、
2H 前記コメント配信サーバが前記コメント情報を、前記動画配信サー
バが前記動画を、それぞれ前記端末装置に送信することにより、前記
5 端末装置の表示装置には、前記動画と、前記コメント付与時間に対応
する動画再生時間において、前記動画の少なくとも一部と重なって、
水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメントと、が前
記第1コメントと前記第2コメントとが重ならないように表示される、
2I コメント配信システム。
10 (5) 被告サービスの運営
被告FC2は、本件特許権の設定登録がされた令和元年5月17日以降の
時期において業として被告サービス1を運営しており、少なくとも同日から
令和2年9月24日までは業として被告サービス2及び3を運営していた
(乙65、66)。なお、被告HPSが令和元年5月17日以降の時期におい
15 て被告FC2と共同で被告サービスを運営しているか否かは、当事者間に争
いがある。
そして、被告サービス1は、上記の令和元年5月17日以降の期間におい
て、被告サービス2及び3は同日から令和2年9月24日までの期間におい
て、いずれも日本語による表示、入力等が可能であり、日本における端末か
20 ら利用可能であった(甲6、弁論の全趣旨)。
(6) 被告システムの構成
ア 被告システム1について
被告システム1は、動画配信サーバ及びコメント配信サーバと、これら
とネットワークを介して接続された複数の端末装置と、を備えるコメント
25 配信システムであって、本件発明1について構成要件1A、1G及び1I
を、本件発明2について構成要件2A、2G及び2Iを、それぞれ充足す
る。
イ 被告システム2及び3について
被告システム2及び3は、それぞれ、コメント配信サーバと、これとネ
ットワークを介して接続された複数の端末装置と、を備えるコメント配信
5 システムであって(被告システム2及び3が動画配信サーバを備えるか否
かは、当事者間に争いがある。 、本件発明1について構成要件1G及び1

Iを、本件発明2について構成要件2G及び2Iを、それぞれ充足する。
(7) 国際裁判管轄
被告FC2は、本件の訴えについて、日本の裁判所が管轄権を有しない旨
10 の抗弁を提出しないで本案について弁論をしているから、民訴法3条の8に
より、被告FC2に対する本件の訴えについて日本の裁判所に管轄権が認め
られる。
また、被告HPSは、日本国内に主たる事務所を有するため、民訴法3条
の2により、被告HPSに対する本件の訴えについても日本の裁判所に管轄
15 権が認められる。
3 争点
(1) 準拠法(争点1)
(2) 被告システムが本件発明1の技術的範囲に属するか(争点2)
(3) 被告システムが本件発明2の技術的範囲に属するか(争点3)
20 (4) 被告らによる被告システムの「生産」の有無(争点4)
(5) 無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否(争点5)
ア 特開2004-193979号公報(以下「乙17公報」という。)を主
引用例とする進歩性欠如(無効理由1)(争点5-1)
イ 特開2004-297245号公報(以下「乙18公報」という。)を主
25 引用例とする進歩性欠如(無効理由2)(争点5-2)
ウ 特開2004-15750号公報(以下「乙19公報」という。)を主引
用例とする進歩性欠如(無効理由3)(争点5-3)
エ 山本大介、長尾確「閲覧者によるオンラインビデオコンテンツのアノテ
ーションとその応用」人口知能学会論文誌 Vol.20 2005年
(以下「乙20文献」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由4)
5 (争点5-4)
オ 特開2003-111054号公報(以下「乙21公報」という。)を主
引用例とする進歩性欠如(無効理由5)(争点5-5)
カ 国際公開第00/64150号(以下「乙24公報」という。)を主引用
例とする進歩性欠如(無効理由6)(争点5-6)
10 キ 米国特許出願第2004/0098754号明細書(以下「乙25文献」
という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由7)(争点5-7)
ク 明確性要件違反(無効理由8)(争点5-8)
ケ サポート要件違反(無効理由9)(争点5-9)
コ 実施可能要件違反(無効理由10)(争点5-10)
15 サ 先願要件違反(無効理由11)(争点5-11)
シ 分割要件違反による新規性、進歩性欠如(無効理由12)(争点5-12)
ス 優先権主張の要件違反による進歩性欠如等(無効理由13)(争点5-1
3)
セ 公序良俗違反(無効理由14)(争点5-14)
20 (6) 原告による本件特許権の行使が権利の濫用に当たるか(争点6)
(7) 損害の発生の有無及びその額(争点7)
(8) 差止請求及び除却等請求の当否(争点8)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(準拠法)について
25 (原告の主張)
本件の差止請求及び除却等請求については、日本で登録された本件特許権に
基づく請求であるから、条理上、最も密接な関係がある登録国の法律である日
本法が準拠法となる。
また、本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求についても、被告ら
の行為は日本のユーザに向けられており、日本において特許権者たる原告が損
5 害を受けていることは明らかであるから、加害行為の結果である損害が日本で
発生したものとして、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)17
条により、準拠法は日本法となる。
(被告らの主張)
原告の主張は争う。
10 被告システムについて日本国内での本件発明の実施行為はないから、差止請
求及び除却等請求について日本法の適用はない。
また、同様に、日本において被告システムによる損害は発生していないから、
不法行為に基づく損害賠償請求についても日本法の適用はない。
2 争点2(被告システムが本件発明1の技術的範囲に属するか)について
15 (原告の主張)
(1) 被告システムの構成
ア 被告システムの説明
(ア) 被告システム1
a 被告サービス1においては、動画を再生して閲覧している各ユーザ
20 が、その動画に対してコメントを付与することができる。そして、被
告らの管理に係るサーバは、当該動画に係る動画ファイルと、当該コ
メントに係るコメントファイルとを保存しており、これらのファイル
を、動画表示操作を行ったユーザのユーザ端末に配信し、動画ファイ
ルとコメントファイルとを受信したユーザ端末のディスプレイに、動
25 画と、動画上のコメントとを表示させる。なお、ユーザが動画表示操
作を行いさえすれば、操作を行った当該ユーザ端末に動画及びコメン
トが表示されるのであるから、動画ファイル及びコメントファイルは、
複数のユーザ端末に配信されるものである。
b このコメントファイルには、コメントと当該コメントが付与された
時点の動画再生時間に係る情報が含まれ、動画再生中に、このコメン
5 トが付与された時点の再生時間になったら、そのコメントの表示が開
始される。このコメントは、動画上を右から左方向へ移動しながら表
示され、途中で止まるものではない。
コメント表示時間は、被告システム1においては、約4秒としてあ
らかじめ定められており、コメントの文字列の幅に関わらず、一定の
10 表示時間で表示されるから、コメントの文字列の幅が大きいほど、移
動速度が速く表示される。また、後から表示されたコメント(以下、
「コメント2」という。)が先に表示されたコメント(以下、「コメン
ト1」という。)の表示終了後に表示開始される場合には、縦方向の位
置は同じになるように表示されるが、コメント1の表示中にコメント
15 2が表示開始される場合には、コメント2がコメント1に追いつくか
否かが判定され、追いつく場合には、縦方向の位置が異なるように表
示される。
(イ) 被告システム2
被告システム2についても、コメント表示時間が約5秒とあらかじめ
20 定められている他は、被告システム1と同様である。
(ウ) 被告システム3
被告システム3についても、コメント表示時間が約5秒とあらかじめ
定められている他は、被告システム1と同様である。
(エ) FLASH版とHTML5版の違いについて
25 被告サービスには、それぞれウェブブラウザ(以下、単に「ブラウザ」
という。)用のプラグインであるAdobe社が提供するAdobe F
lash Playerをインストールしたブラウザで表示されるFL
ASH版(以下、単に「FLASH版」という。)とHTML(ハイパー
テキストを記述するためのマークアップ言語)のバージョンの1つであ
るHTML5に対応したブラウザで表示されるHTML5版(以下単に
5 「HTML5版」という。)が存在するが、被告システムが本件発明の構
成要件を充足するか否かについての原告の主張は、FLASH版とHT
ML5版とで共通している。
イ 本件発明1との関係における被告システムの構成
前記アに基づいて、被告システムの構成を本件発明1との関係で整理す
10 ると、被告システムは次の構成(以下、符号に対応させて「構成1a」な
どという。)を備えている。
1a サーバと、これとインターネット経由で接続された複数のユーザ端
末と、を備えるコメント付き動画配信システムであって、
1b 前記サーバは、前記サーバから配信された動画を再生閲覧中のユー
15 ザから付与された前記動画に対するコメント1及びコメント2を受信
し、
1c 前記ユーザ端末に、前記動画の動画ファイルと、コメントファイル
とを配信し、
1d 前記コメントファイルは、前記コメント1及びコメント2と、前記
20 コメント1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対応す
る、前記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間と、を含
み、
1e 前記動画ファイル及び前記コメントファイルに基づいて、前記動画
と、前記コメント付与時間において、前記動画上に、右から左方向に
25 移動するように前記コメント1及び前記コメント2を前記ユーザ端末
のディスプレイに表示させる表示手段と、
1f 前記コメント1及び前記コメント2を前記動画上に表示させる際に、
前記コメント2が前記コメント1に追いついて重複するかどうかを判
定する手段と、
1g 追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コ
5 メント2とが重ならないように表示位置を縦方向に異なる位置に調整
する手段と、を備えるコメント付き動画配信システムにおいて、
1h 前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前
記ユーザ端末に配信することにより、前記ユーザ端末のディスプレイ
には、前記動画と、前記コメント付与時間に対応する動画再生時間に
10 おいて、前記動画上に、右から左方向に移動する前記コメント1及び
前記コメント2とが、追いついて重複しないように表示される、
1i コメント付き動画配信システム。
(2) 被告システムが本件発明1の技術的範囲に属すること
ア 「インターネット経由で接続された複数のユーザ端末」(構成1a)は
15 「ネットワークを介して接続された複数の端末装置」(構成要件1A)に該
当し、「コメント付き動画配信システム」(構成1a)は「コメント配信シ
ステム」(構成要件1A)に該当するから、構成1aは構成要件1Aを充足
する。
イ 「動画を再生閲覧中のユーザ」(構成1b)は「動画を視聴中のユーザ」
20 (構成要件1B)に該当し、「コメント1及びコメント2」(構成1b)は
「第1コメント及び第2コメント」に該当するから、構成1bは構成要件
1Bを充足する。
ウ 「前記動画の動画ファイルと、コメントファイルとを配信し」(構成1c)
は「前記動画と、コメント情報とを送信し」(構成要件1C)に該当するか
25 ら、構成1cは構成要件1Cを充足する。
エ 「前記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間」(構成1d)
は「前記動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であ
るコメント付与時間」(構成要件1D)に該当するから、構成1dは構成要
件1Dを充足する。
オ 「前記動画上に、右から左方向に移動するように前記コメント1及び前
5 記コメント2を前記ユーザ端末のディスプレイに表示させる」(構成1e)
は「前記動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1
コメント及び前記第2コメントと、を前記端末装置の表示装置に表示させ
る」(構成要件1E)に該当するから、構成1eは構成要件1Eを充足する。
カ 「前記コメント2が前記コメント1に追いついて重複するかどうかを判
10 定する手段」(構成1f)は「前記第2コメントを前記1の動画上に表示さ
せる際の表示位置が、前記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定
する判定部」(構成要件1F)に該当するから、構成1fは構成要件1Fを
充足する。
キ 「追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コメ
15 ント2とが重ならないように表示位置を縦方向に異なる位置に調整する手
段」(構成1g)は「重なると判定された場合に、前記第1コメントと前記
第2コメントとが重ならない位置に表示されるよう調整する表示位置制御
部」(構成要件1G)に該当するから、構成1gは構成要件1Gを充足する。
ク 「前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前記
20 ユーザ端末に配信することにより」(構成1h)は「前記サーバが、前記動
画と、前記コメント情報とを前記端末装置に送信することにより」(構成要
件1H)に該当し、「前記ユーザ端末のディスプレイ」(構成1h)は「前
記端末装置の表示装置」(構成要件1H)に該当し、「前記動画上に、右か
ら左方向に移動する前記コメント1及び前記コメント2とが、追いついて
25 重複しないように表示される」(構成1h)は「前記動画の少なくとも一部
と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメント
と、が前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならないように表示さ
れる」(構成要件1H)に該当するから、構成1hは構成要件1Hを充足す
る。
ケ 「コメント付き動画配信システム」(構成1i)は「コメント配信システ
5 ム」(構成要件1I)に該当するから、構成1iは構成要件1Iを充足する。
コ よって、被告システムは、本件発明1の技術的範囲に属する。
(3) 被告らの主張に対する反論
ア 「動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第2

コメント」並びに「コメント情報」(構成要件1Bないし1F及び1H)に
10 ついて
被告らは、被告サービスにおいては、動画を視聴していないユーザもコ
メントを付すことが可能であるから、「視聴中のユーザ」がコメントを付す
ことを必須の構成要素とする構成要件1Bないし1F及び1Hを充足しな
いと主張する。
15 しかしながら、本件発明1の技術的範囲に含まれるためには、コメント
配信システムが「動画を視聴中のユーザから付与された前記動画に対する
第1コメント及び第2コメントを受信」(構成要件1B)する構成を備えれ
ば足り、動画を視聴していないユーザがコメントを付与できるか否かは、
構成要件充足性に無関係である。
20 なお、被告らは、本件発明1は、「動画を視聴中のユーザ」のみがコメン
トを付すことを要件としていると主張するが、特許請求の範囲においてそ
のような限定はなく、被告らが主張するような限定解釈をすべき理由はな
い。
イ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
25 ント及び前記第2コメント」(構成要件1E及び1H)について
被告らは、本件明細書の記載(【0018】)を指摘して、「動画の少なく
とも一部と重なって」(構成要件1E及び1H)とは、動画表示として確保
された領域よりもコメント表示として確保された領域が大きい場合を意味
し、両者が完全に重なる場合を含まないと主張する。
しかしながら、構成要件1E及び1Hの「動画の少なくとも一部と重な
5 って」とは、コメントが動画と重なっていれば足り、どの程度重なるかは
問題とならない。
被告らが指摘する本件明細書の【0018】の記載は、単に一つの実施
態様を示したものにすぎず、「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向
に移動する前記第1コメント及び前記第2コメント」が、この態様に限定
10 されるものではない。
ウ 「サーバ」及び「サーバから送信された動画」(構成要件1Aないし1F
及び構成要件1H)について
被告らは、被告システム2及び3の動画を配信するサーバは、他社が運
営する動画共有サイト又はその他の動画配信サービスを構成するものであ
15 って、被告FC2のシステムのものではないから、動画を配信するサーバ
を有することが必須である本件発明1の「サーバ」及び「サーバから送信
された動画」(構成要件1Aないし1F及び1H)を充足しないと主張する。
しかしながら、本件発明1において、動画の配信元とコメントの配信元
とが共通するという限定はなく、動画を配信するサーバの運営主体は本件
20 発明1の構成要件充足性とは無関係である。
また、被告FC2は原告と被告らとの間の別件訴訟(東京地方裁判所平
成28年(ワ)第38565号のことをいう。以下同じ)において被告サ
ービス2及び3についても、動画ファイルがサーバから端末のブラウザに
配信されていると説明しているから、被告システム2及び3においても動
25 画を配信するサーバは存在しており、これを否認する被告らの主張は失当
である。
仮に、被告らが述べるとおり、被告サービス2及び3における動画配信
用サーバが他社のものであったとしても、上記のとおり、そのことは少な
くとも本件発明1の構成要件充足性とは無関係であり、被告システム2及
び3は動画を配信するサーバを備えるものであるから、「サーバ」ないし
5 「サーバから送信された動画」に関して、構成要件1Aないし1F及び1
Hの充足性が否定されるものではない。
(被告らの主張)
(1) 被告システムの構成
ア 被告システム1
10 被告システム1は次の構成を備える(以下、符号に対応させて「構成a’」
などという。。

a’ 動画及びコメントを配信するサーバと、これとインターネット経由
で接続された複数のユーザ端末と、を備えるコメント付き動画配信シ
ステムであって、
15 b’ 前記サーバは、前記サーバから配信された動画を閲覧中のユーザ又
は閲覧中ではないユーザから付与された前記動画に対するコメント1
及びコメント2を受信し、
c’1 前記2以上のユーザ端末に、前記動画の動画ファイルと、コメン
トファイルとを配信し、
20 c’2 前記動画ファイル及び前記コメントファイルは、前記複数のユー
ザ端末のいずれかの動画表示操作に応じて、操作を行ったユーザ端
末に配信される、
d’1 前記コメントファイルは、前記コメント1及びコメント2と、前
記コメント1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対
25 応する、前記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間を
示す情報を含み、
d’2 前記コメント2のコメント付与時間は、前記コメント1のコメン
ト付与時間より遅く、
d’3 前記コメントは、その文字列の幅にかかわらず、一定時間をかけ
て前記動画の右端から左端に止まることなく移動し、
5 e’ 前記動画ファイル及び前記コメントファイルに基づいて、前記動画
と、前記コメント付与時間において、前記動画上に、右から左方向に
移動するように前記コメント1及び前記コメント2を前記ユーザ端末
のディスプレイに表示させる表示手段と、
f’ 前記コメント1及び前記コメント2を前記動画上に表示させる際に、
10 前記コメント2が前記コメント1に追いついて表示位置が重複するか
どうかを判定する手段と、
g’ 追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コ
メント2とが重ならないように前記コメント2の表示位置を縦方向に
下の位置に調整する手段と、を備えるコメント付き動画配信システム
15 において、
h’ 前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前
記ユーザ端末に配信することにより、前記ユーザ端末のディスブレイ
には、前記動画と、前記コメント付与時間に対応する動画再生時間に
おいて、前記動画上に、右から左方向に移動する前記コメント1及び
20 前記コメント2とが、追いついて表示位置が重複しないように表示さ
れる、
i’ コメント付き動画配信システム。
イ 被告システム2及び3
被告システム2及び3は、いずれも次の構成を備える(以下、符号に対
25 応させて「構成a’」などという。。
’ )
a’’ コメントを配信するサーバと、これとインターネット経由で接続さ
れた複数のユーザ端末と、を備えるコメント配信システムであって、
b’’ 前記サーバは、他のシステムにおいて配信されている動画について、
動画を閲覧中のユーザ又は閲覧中ではない前記ユーザ端末を利用中の
ユーザから前記動画に対して付与された前記動画に対するコメント1
5 及びコメント2を受信し、
c’’ 前記コメントファイルは、前記2以上のユーザ端末のいずれかの動
画表示操作に応じて、操作を行ったユーザ端末に配信される、
d’’1ないしd’’3 被告システム1の構成d’1ないしd’3と同じ。
e’’及びf’’ 被告システム1の構成e’及びf’と同じ。
10 g’’ 追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コ
メント2とが重ならないように表示位置を縦方向の下の位置に調整す
る手段と、を備えるコメント配信システムにおいて、
h’’ 前記コメントファイルを前記ユーザ端末に配信することにより、前
記ユーザ端末のディスブレイには、前記コメント付与時間に対応する
15 動画再生時間において、前記動画上に、右から左方向に移動する前記
コメント1及び前記コメント2とが、追いついて表示位置が重複しな
いように表示される、
i’’ コメント配信システム。
ウ FLASH版とHTML5版の違いについて
20 被告サービスには、それぞれFLASH版とHTML5版が存在するが、
被告システムの本件発明の構成要件充足性についての被告らの主張は、F
LASH版とHTML5版とで共通している。
(2) 被告システムが本件発明1の技術的範囲に属さないこと
ア 「動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第2

25 コメント」並びに「コメント情報」(構成要件1Bないし1F及び1H)に
ついて
(ア) 「動画を視聴中のユーザから付与された」コメントの意義
本件発明の目的は、「ユーザ間において、同じ動画を共有して、コメ
ントを利用しコミュニケーションを図ることができるコメント配信シ
ステム、端末装置、コメント配信方法、およびプログラムを提供する
5 こと」である(本件明細書【0005】 。そして、構成要件1Bには、

「動画を視聴中のユーザから付与された前記動画に対する第1コメン
ト及び第2コメントを受信し」と記載されており、他にコメントを付
す者が存在することについては、本件発明1の特許請求の範囲に記載
されていない。本件発明1の上記目的及び構成要件の記載に照らせば、
10 「動画を視聴中のユーザ」から付与されたもののみが「第1コメント
及び第2コメント」に該当することは明らかである。
また、仮に、動画を視聴している者以外の者がコメントを付与する
場合を想定すると、動画を視聴していないユーザにより動画と無関係
なコメントが投稿されてしまい、視聴者間でのリアルタイムのコミュ
15 ニケーションが阻害されることになるから、本件発明1の上記目的に
反する。
したがって、本件発明1は、「動画を視聴中のユーザ」のみが「コメ
ントを付す」ことを要件としているものであり、動画を視聴していな
いユーザもコメントを付与できるシステムは、本件発明1を充足しな
20 いこととなる。
(イ) 被告システムの構成へのあてはめ
構成b’及び構成b’’のとおり、被告システムは、動画を閲覧中では
ないユーザから付与されたコメントも受信するものであるため、少なく
とも「第1コメント及び第2コメント」を受信するものではなく、また、
25 「第1コメント及び第2コメント」に関する情報である「コメント情報」
を送信するものではない。
したがって、被告システムは、この点において、構成要件1Bないし
1F及び1Hを充足しない。
イ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
ント及び前記第2コメント」(構成要件1E及び1H)について
5 (ア) 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コ
メント及び前記第2コメント」の意義
本件明細書の【0018】には、「表示欄105は、表示欄104より
も大きいサイズに設定されており、オーバーレイ表示されたコメント等
が、動画の画面の外側でトリミングするようになっており、コメントそ
10 のものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザーによ
って書き込まれたものであることが把握可能となっている。」と記載され
ている。この記載によれば、コメントは、ユーザによって書き込まれた
ものであることを把握することができるようにするとともに、読みにく
さを低減するために、動画と一部が重なり合うものとして設定されるも
15 のである。
そのため、コメント表示領域と動画表示領域については、あらかじめ、
前者を後者よりも大きいサイズのものと設定して、コメントの少なくと
も一部をコメント表示領域の内側であるものの、動画表示領域の外側に
表示され得る必要がある。
20 したがって、「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する
前記第1コメント及び前記第2コメント」(構成要件1E及び1H)とは、
動画表示として確保された領域よりもコメント表示として確保された領
域の方が大きい場合を意味し、両者が完全に重なる場合を含まない。
(イ) 被告システムの構成への当てはめ
25 被告サービスにおいては、動画のアスペクト比によっては、動画表示
領域のほうがコメント表示領域より大きいものとなり、コメントの少な
くとも一部を動画表示領域の外側に表示させることができなくなる。
このように、被告システムにおけるコメントは、動画を表示する領域
と同一の領域中に表示されるものであり、「動画の少なくとも一部と重な」
ることを意図してプログラミングされていないものであって、「動画の少
5 なくとも一部と重なって、水平方向に移動する」ものではないから、被
告システムは、この点において、構成要件1E及び1Hを充足しない。
ウ 「サーバ」及び「サーバから送信された動画」(構成要件1Aないし1F
及び1H)について
(ア) 「サーバ」及び「サーバから送信された動画」の意義
10 本件発明1の「サーバ」(構成要件1A等)は、動画を配信するサーバ
をいい、「前記サーバから送信された動画」(構成要件1B)は、動画を
配信するサーバから配信された動画をいう。
原告は、本件発明1において、動画の配信元とコメントの配信元とが
共通するという限定はないと主張するが、特許請求の範囲に明示的に
15 「共通する」と書いていなければ無限定であるという解釈にはならない。
(イ) 被告システムの構成への当てはめ
a 被告サービス2及び3は、他社の配信システムで配信されている動
画等にコメントをオーバーレイで表示する「コメント配信・表示」サ
ービスであり、自己のシステムとして動画配信サーバを保有しない点
20 に特徴がある。被告サービス2及び3で動画を配信するサーバは、他
社が運営する動画共有サイト又はその他の動画配信サービスを構成す
るものであり、被告システム2及び3がこれを備えるものではない。
原告は、被告FC2が別件訴訟においてした説明を根拠に、被告サ
ービス2及び3についても動画を配信するサーバが存在すると主張す
25 るが、別件訴訟の対象となった特許発明では、動画配信サーバが構成
要件で明記されていなかったので、動画配信サーバが存在するかどう
かを特に記載しなかっただけである。
b 被告システム2及び3は、構成要件1Aの「サーバ」を備えておら
ず、そのため、構成要件1Bの「前記サーバ」 「前記サーバから送信

された動画」及び「前記動画」も備えていない。同様に、構成要件1
5 Cないし1Eの「前記動画」、構成要件1Fの「前記1の動画」並びに
構成要件1Hの「前記サーバ」及び「前記動画」も備えていない。
したがって、被告システム2及び3は、この点において、構成要件
1Aないし1F及び1Hを充足しない。
3 争点3(被告システムが本件発明2の技術的範囲に属するか)について
10 (原告の主張)
(1) 被告システムの構成
ア 被告システムの説明
被告システムの説明については、前記2(原告の主張)(1)アのとおりで
ある。
15 被告FC2は、別件訴訟において、動画ファイルとコメントファイルが
同一のサーバから配信されていることを前提とする説明をしているが、一
方で、動画ファイルについてはCDNサービスを利用しているが、コメン
トに関してはキャッシュサーバを利用していないとの説明もしている。そ
うすると、動画については、コメント配信用サーバとは異なる、動画配信
20 用のサーバとしてのキャッシュサーバにデータが保管され、そこから配信
されていると把握することも可能である。したがって、本件発明2との関
係においては、動画配信用のキャッシュサーバを「動画配信用サーバ」、コ
メントを配信しているサーバを「コメント配信用サーバ」と捉えることが
できる。
25 イ 本件発明2との関係における被告システムの構成
前記アに基づいて、被告システムの構成を本件発明2との関係で整理す
ると、被告システムは次の構成(以下、符号に対応させて「構成2a」な
どという。)を備えている。
2a 動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバと、これとインターネ
ット経由で接続された複数のユーザ端末と、を備えるコメント付き動
5 画配信システムであって、
2b 前記コメント配信用サーバは、前記動画配信用サーバから配信され
た動画を再生閲覧中のユーザから付与された前記動画に対するコメン
ト1及びコメント2を受信し、
2c1 前記ユーザ端末にコメントファイルを配信し、
10 2c2 前記動画配信用サーバは、前記ユーザ端末に前記動画の動画ファ
イルを配信し、
2d 前記コメントファイルは、前記コメント1及びコメント2と、前記
コメント1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対応す
る、前記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間と、を含
15 み、
2e 前記動画ファイル及び前記コメントファイルに基づいて、前記動画
と、前記コメント付与時間において、前記動画上に、右から左方向に
移動するように前記コメント1及び前記コメント2を前記ユーザ端末
のディスプレイに表示させる表示手段と、
20 2f 前記コメント1及び前記コメント2を前記動画上に表示させる際に、
前記コメント2が前記コメント1に追いついて重複するかどうかを判
定する手段と、
2g 追いついて重複すると判定された場合に、前記コメント1と前記コ
メント2とが重ならないように表示位置を縦方向に異なる位置に調整
25 する手段と、を備えるコメント付き動画配信システムにおいて、
2h 前記コメント配信用サーバが前記コメントファイルを、前記動画配
信用サーバが前記動画ファイルを、それぞれ前記ユーザ端末に配信す
ることにより、前記ユーザ端末のディスプレイには、前記動画と、前
記コメント付与時間に対応する動画再生時間において、前記動画上に、
右から左方向に移動する前記コメント1及び前記コメント2とが、追
5 いついて重複しないように表示される、
2i コメント付き動画配信システム。
(2) 被告システムが本件発明2の技術的範囲に属すること
本件発明2と被告システムの構成を対比すると、「動画配信用サーバ」(構
成2a)は「動画配信サーバ」(構成要件2A)に該当し、「コメント配信用
10 サーバ」(構成2a)は「コメント配信サーバ」(構成要件2A)に該当する。
その他の点について、構成2aないし2iがそれぞれ構成要件2Aないし2
Iに該当することは、前記2(原告の主張)(2)の構成1aないし1iと構成
要件1Aないし1Iの対比と同様である。
よって、被告システムは本件発明2の技術的範囲に属する。
15 (3) 被告らの主張に対する反論
ア 「動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第2

コメント」並びに「コメント情報」(構成要件2B、2C1、2Dないし2
F及び2H)について
前記2(原告の主張)(3)アと同様に、本件発明2の技術的範囲に含まれ
20 るためには、コメント配信システムが「動画を視聴中のユーザから付与さ
れた前記動画に対する第1コメント及び第2コメントを受信」(構成要件2
B)する構成を備えれば足り、本件発明2を「動画を視聴中のユーザ」の
みがコメントを付すことを要件とするように限定解釈をすべき理由はない。
イ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
25 ント及び前記第2コメント」(構成要件2E及び2H)について
前記2(原告の主張)(3)イと同様に、構成要件2E及び2Hの「動画の
少なくとも一部と重なって」とは、コメントが動画と重なっていれば足り、
どの程度重なるかは問題とならない。
ウ 「動画配信サーバ」及び「動画配信サーバから送信された動画」(構成要
件2A、2B、2C2、2Dないし2F及び2H)について
5 前記2(原告の主張)(3)ウと同様に、本件発明2において、動画の配信
元とコメントの配信元とが共通するという限定はなく、動画配信サーバの
運営主体は本件発明2の構成要件充足性とは無関係である。
また、前記2(原告の主張)(3)ウのとおり、被告システム2及び3にお
いても動画を配信するサーバは存在している。
10 仮に、被告らが述べるとおり、被告サービス2及び3における動画配信
用サーバが他社のものであったとしても、上記のとおり、そのことは少な
くとも本件発明2の構成要件充足性とは無関係であり、被告システム2及
び3は動画を配信するサーバを備えるものであるから、「動画配信サーバ」
ないし「動画配信サーバから送信された動画」に関して、構成要件2A、
15 2B、2C2、2Dないし2F及び2Hの充足性が否定されるものではな
い。
(被告らの主張)
(1) 被告システムの構成
被告システムの構成は、前記2(被告らの主張)(1)のとおりである。
20 (2) 被告システムが本件発明2の技術的範囲に属さないこと
ア 「動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第2

コメント」並びに「コメント情報」(構成要件2B、2C1、2Dないし2
F及び2H)について
(ア) 「動画を視聴中のユーザから付与された」コメントの意義
25 前記2(被告らの主張)(2)アと同様の理由で、構成要件2Bについて
も、「動画を視聴中のユーザ」から付与されたもののみが「第1コメント
及び第2コメント」に該当し、また、本件発明2は、「動画を視聴中のユ
ーザ」のみがコメントを付すことを要件としているものである。
(イ) 被告システムの構成へのあてはめ
前記2(被告らの主張)(2)アと同様の理由で、被告システムは、少な
5 くとも「第1コメント及び第2コメント」を受信するものではなく、ま
た、「コメント情報」を送信するものではないから、この点で、構成要件
2B、2C1、2Dないし2F及び2Hをいずれも充足しない。
イ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
ント及び前記第2コメント」(構成要件2E及び2H)について
10 (ア) 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コ
メント及び前記第2コメント」の意義
前記2(被告らの主張)(2)イと同様の理由で、構成要件2E及び2H
についても、「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前
記第1コメント及び前記第2コメント」とは、動画表示として確保され
15 た領域よりもコメント表示として確保された領域の方が大きい場合を意
味し、両者が完全に重なる場合を含まない。
(イ) 被告システムの構成への当てはめ
前記2(被告らの主張)(2)イと同様の理由で、被告システムにおける
コメントは、「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する」
20 ものでないから、被告システムは、この点で構成要件2E及び2Hを充
足しない。
ウ 「動画配信サーバ」及び「動画配信サーバから送信された動画」(構成要
件2A、2B、2C2、2Dないし2F及び2H)について
(ア) 「動画配信サーバ」及び「動画配信サーバから送信された動画」の意
25 義
本件発明2は、動画を配信するサーバである「動画配信サーバ」を構
成要素とする。
原告は、本件発明2において、動画の配信元とコメントの配信元とが
共通するという限定はないと主張するが、特許請求の範囲に明示的に
「共通する」と書いていなければ無限定ということにはならない。
5 (イ) 被告システムの構成への当てはめ
前記2(被告らの主張)(2)ウと同様の理由で、被告システム2及び3
は、構成要件2Aの「動画配信サーバ」を備えておらず、そのため、構
成要件2Bの「前記動画配信サーバから送信された動画」及び「前記動
画」も備えていない。同様に、構成要件2C2の「前記動画配信サーバ」
10 及び「前記動画」、構成要件2D及び2Eの「前記動画」、構成要件2F
の「前記1の動画」並びに構成要件2Hの「前記動画配信サーバ」及び
「前記動画」も備えていない。
したがって、この点で、被告システム2及び3は、構成要件2A、2
B、2C2、2Dないし2F及び2Hを充足しない。
15 4 争点4(被告らによる被告システムの「生産」の有無)について
(原告の主張)
(1) 被告サービスにおいてコメント付き動画をユーザ端末に表示させる手順
被告サービスについて、コメント付き動画をユーザ端末に表示させる手順
をFLASH版とHTML5版を区別して整理すると次のとおりである。
20 ア 被告サービス1
(ア) 被告サービス1のFLASH版
① ユーザが、事前にAdobe Flash Playerをユーザ
端末にインストールしておく(以下、ブラウザに追加されたAdob
e Flash Playerを「FLASH」という。。

25 ②-1 ユーザが、所望の動画を表示させるためのウェブページをブラ
ウザに表示させる。
②-2 これにより、ウェブページのデータ及びSWFファイル(FL
ASHで実行可能な形式のプログラムのファイル)が被告サーバ
からユーザ端末のブラウザのキャッシュにダウンロードされる。
③ ユーザが、ユーザ端末において、表示されたウェブページにおける
5 動画の再生ボタンを押す。
④ FLASHからブラウザへの指示及びブラウザからのリクエストに
応じて、被告サーバが、SWFファイルで指定される動画ファイル及
びコメントファイルを配信する。
⑤ ユーザ端末が、被告サーバから配信された動画ファイル及びコメン
10 トファイルを受信する。
これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、コメント付き動画を表示させる。
(イ) 被告サービス1のHTML5版
①-1 ユーザが、所望の動画を表示させるためのウェブページをブラ
15 ウザに表示させる。
①-2 これにより、ウェブページのデータ及びJSファイル(ブラウ
ザで実行可能なJavaScriptによるプログラムのファイ
ル)が被告サーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュにダウ
ンロードされる。
20 ② ブラウザからのリクエストに応じて、被告サーバが、JSファイル
で指定される動画ファイル及びコメントファイルを配信する。
③ ユーザ端末が、被告サーバから配信された動画ファイル及びコメン
トファイルを受信する。
④ ユーザが、ユーザ端末において、表示されたウェブページにおける
25 動画の再生ボタンを押す。
これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、コメント付き動画を表示させる。
イ 被告サービス2及び3
本件発明との関係において、被告サービス2と被告サービス3の動作に
差異はない。
5 (ア) 被告サービス2及び3のFLASH版
① ユーザが、事前にAdobe Flash Playerをユーザ
端末にインストールしておく。
②-1 ユーザが、所望の動画を表示させるためのウェブページをブラ
ウザに表示させる。
10 ②-2 これにより、ウェブページのデータ及びSWFファイルが被告
サーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュにダウンロードさ
れる。
③ FLASHからブラウザへの指示及びブラウザからのリクエストに
応じて、被告サーバ(コメント配信用サーバ)がSWFファイルで指
15 定されるコメントファイルを配信するとともに、動画配信用サーバが
SWFファイルで指定される動画ファイルを配信する。
④ ユーザ端末が、被告サーバ(コメント配信用サーバ)から配信され
たコメントファイルを受信するとともに、動画配信用サーバから配信
された動画ファイルを受信する。
20 これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、コメント付き動画を表示させる。
(イ) 被告サービス2及び3のHTML5版
①-1 ユーザが、所望の動画を表示させるためのウェブページをブラ
ウザに表示させる。
25 ①-2 これにより、ウェブページのデータ及びJSファイルが被告サ
ーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュにダウンロードされ
る。
② ブラウザからのリクエストに応じて、被告サーバ(コメント配信用
サーバ)が、JSファイルで指定されるコメントファイルを配信する
とともに、動画配信用サーバがJSファイルで指定される動画ファイ
5 ルを配信する。
③ ユーザ端末が、被告サーバ(コメント配信用サーバ)から配信され
たコメントファイルを受信するとともに、動画配信用サーバから配信
された動画ファイルを受信する。
これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
10 ァイルに基づいて、コメント付き動画を表示させる。
(2) 被告システムを被告らが「生産」(特許法2条3項1号)していること
ア 被告システム1の生産に当たる行為
(ア) 被告サービス1のFLASH版
前記(1)ア(ア)の手順のうち、①におけるAdobe Flash P
15 layerのインストールは事前に1回だけ行うものであり、コメント
付き動画を表示させる都度インストールを行うものではないから、被告
システム1の生産とは無関係である。
また、②-1及び③は、ユーザが被告システム1の生産を注文する行
為であり、生産には該当しない。
20 ②-2でウェブページのデータ及びSWFファイルが被告サーバから
ユーザ端末にダウンロードされることは生産に該当する。これらの配信
は被告サーバによって行われるから、その主体は被告らである。さらに、
被告サーバがウェブページのデータ及びSWFファイルを配信したこと
に伴い、ユーザ自身の操作を何ら伴うことなく必然的にユーザ端末がウ
25 ェブページのデータ及びSWFファイルを受信することになるから、ユ
ーザ端末がこれらのファイルを受信することの主体も被告らである。
また、④における動画ファイル及びコメントファイルの配信も生産に
該当する。この④において、動画ファイル及びコメントファイルを配信
しているのは被告サーバであるから、④の主体が被告らであるのは明ら
かである。
5 そして、⑤で動画ファイル及びコメントファイルがユーザ端末によっ
て受信されることによって被告システム1が完成する。この⑤では、④
で被告サーバが動画ファイル及びコメントファイルを配信したことに伴
い、ユーザ自身の操作を何ら伴うことなく必然的にユーザ端末が動画フ
ァイル及びコメントファイルを受信することになるから、⑤の主体は被
10 告らである。
このように、被告サービス1のFLASH版においては、被告サーバ
がウェブページのデータ、SWFファイル、動画ファイル及びコメント
ファイルを配信すること、及び、ユーザ端末がこれらのファイルを受信
することが、被告らによる被告システム1の生産に該当する。
15 (イ) 被告サービス1のHTML5版
前記(1)ア(イ)の手順のうち、①-1は、ユーザが被告システム1の生
産を注文する行為であり、生産には該当しない。
①-2でウェブページのデータ及びJSファイルが被告サーバからユ
ーザ端末にダウンロードされることは生産に該当する。これらの配信は
20 被告サーバによって行われるから、その主体は被告らである。さらに、
被告サーバがウェブページのデータ及びJSファイルを配信したことに
伴い、ユーザ自身の操作を何ら伴うことなく必然的にユーザ端末がウェ
ブページのデータ及びJSファイルを受信することになるから、ユーザ
端末がこれらのファイルを受信することの主体も被告らである。
25 また、②における動画ファイル及びコメントファイルの配信も生産に
該当する。この②において、動画ファイル及びコメントファイルを配信
しているのは被告サーバであるから、②の主体が被告らであるのは明ら
かである。
そして、③で動画ファイル及びコメントファイルがユーザ端末によっ
て受信されることによってコメント付き動画を表示可能な状態になり、
5 被告システム1が完成する。この③では、②で被告サーバが動画ファイ
ル及びコメントファイルを配信したことに伴い、ユーザ自身の操作を何
ら伴うことなく必然的にユーザ端末が動画ファイル及びコメントファイ
ルを受信することになるから、③の主体は被告らである。
なお、④は、完成済の被告システム1をユーザが使用する行為であり、
10 生産には該当しない。
このように、被告サービス1のHTML5版においては、被告サーバ
がウェブページのデータ、JSファイル、動画ファイル及びコメントフ
ァイルを配信すること、及び、ユーザ端末がこれらのファイルを受信す
ることが被告らによる被告システム1の生産に該当する。
15 イ 被告システム2及び3の生産に当たる行為
(ア) 被告サービス2及び3のFLASH版
前記(1)イ(ア)の手順のうち①は被告システム1のFLASH版と同様
の理由で被告システム2及び3の生産とは無関係である。
また、②-1は、ユーザが被告システム2及び3の生産を注文する行
20 為であり、生産には該当しない。
②-2でウェブページのデータ及びSWFファイルが被告サーバから
ユーザ端末にダウンロードされることは被告システム1のFLASH版
と同様の理由で被告らによる生産に該当する。
③における動画ファイル及びコメントファイルの配信も生産行為に該
25 当する。③のうち、被告サーバ(コメント配信用サーバ)がSWFファ
イルで指定されるコメントファイルを配信することの主体が被告らであ
ることは明らかである。さらに、③のうち、動画配信用サーバがSWF
ファイルで指定される動画ファイルを配信することは、被告サーバ(コ
メント配信用サーバ)から送信されるSWFファイルに基づくものであ
るから、動画ファイル配信の主体も被告らである。
5 そして、④で動画ファイル及びコメントファイルがユーザ端末によっ
て受信されることによって被告システム2及び3が完成する。この④で
は、③にて被告サーバ(コメント配信用サーバ)がコメントファイルを
配信し、動画配信用サーバが動画ファイルを配信したことに伴い、ユー
ザ自身の何らの操作を伴うことなく必然的に、ユーザ端末が動画ファイ
10 ル及びコメントファイルを受信することになるから、④の主体は被告ら
である。
このように、被告サービス2及び3のFLASH版においては、被告
サーバがウェブページのデータ、SWFファイル及びコメントファイル
を配信し、動画配信用サーバが動画ファイルを配信すること、及び、ユ
15 ーザ端末がこれらのファイルを受信することが被告らによる被告システ
ム2及び3の生産に該当する。
(イ) 被告サービス2及び3のHTML5版
前記(1)イ(イ)の手順のうち、①-1は、ユーザが被告システム2及び
3の生産を注文する行為であり、生産には該当しない。
20 ①-2でウェブページのデータ及びJSファイルが被告サーバからユ
ーザ端末にダウンロードされることは被告システム1のHTML5版と
同様の理由で被告らによる生産に該当する。
また、②における動画ファイル及びコメントファイルの配信も生産行
為に該当する。②のうち、被告サーバ(コメント配信用サーバ)がJS
25 ファイルで指定されるコメントファイルを配信することの主体が被告ら
であることは明らかである。さらに、②のうち、動画配信用サーバがJ
Sファイルで指定される動画ファイルを配信することは、被告サーバ
(コメント配信用サーバ)から送信されるJSファイルに基づくもので
あるから、動画ファイル配信の主体も被告らである。
そして、③において動画ファイル及びコメントファイルがユーザ端末
5 によって受信されることによって被告システム2及び3が完成する。こ
の③では、②にて被告サーバ(コメント配信用サーバ)がコメントファ
イルを配信し、動画配信用サーバが動画ファイルを配信したことに伴い、
ユーザ自身の操作を何ら伴うことなく必然的にユーザ端末が動画ファイ
ル及びコメントファイルを受信することになるから、③の主体は被告ら
10 である。
このように、被告サービス2及び3のHTML5版においては、被告
サーバがウェブページのデータ、JSファイル及びコメントファイルを
配信し、動画配信用サーバが動画ファイルを配信すること、及び、ユー
ザ端末がこれらのファイルを受信することが被告らによる被告システム
15 2及び3の生産に該当する。
ウ 被告サービスのFLASH版におけるSWFファイルとHTML5版に
おけるJSファイル(以下、併せて「SWFファイル等」ということがあ
る。)の配信と生産との関係についての補足説明
(ア) SWFファイル等の役割
20 前記ア及びイのとおり、被告サービスのFLASH版においてはSW
Fファイルを、被告サービスのHTML5版においてはJSファイルを、
それぞれ被告サーバがユーザ端末に配信しているが、SWFファイル等
は、それぞれ動画ファイルとコメントファイルを指定する。また、SW
Fファイル等は、本件発明における「判定部」(構成要件1F及び2F)
25 に該当する処理を行うための条件を規定する。
すなわち、被告サービスにおいては、ユーザ端末により受信されたS
WFファイル等によって指定される動画ファイル及びコメントファイル
がユーザ端末にダウンロードされる(構成要件1B及び2B)。さらに、
ユーザ端末により受信されたSWFファイル等によって規定される条件
に基づいて2つのコメントの表示位置が重なるかどうかの判定が行われ
5 (構成要件1F及び2F)、重なると判定された場合には、重ならない位
置に調整されて動画上にコメントが表示される(構成要件1G及び2G)。
(イ) SWFファイル等を配信するサーバ
SWFファイル等を配信するサーバは、被告FC2が管理するとされ
るサーバ(ウェブサーバ、コメント配信サーバ及び動画配信サーバ)の
10 うち、ウェブサーバと理解できるが、仮に、コメント配信サーバ及び動
画配信サーバが送信しているとしても、被告システムの構成要件充足性、
生産の有無及び生産主体には影響しない。
なお、SWFファイル等は被告ファイルに含まれるものではなく、サ
ーバがSWFファイル等を配信するかどうかは、当該サーバが被告サー
15 バに該当するかどうかを左右しない。
(ウ) ユーザ端末によるSWFファイル等の受信と生産の関係
「生産」とは、特許範囲に属する技術的範囲に属する物を新たに作り
出す行為と解される。そして、被告システムでは、ユーザ端末がSWF
ファイル等を受信し、少なくとも一時的に保存すること、本件発明にお
20 ける「判定」(構成要件1F及び2F)に該当する処理を行うための条件
がSWFファイル等に含まれていること、動画ファイル及びコメントフ
ァイルをSWFファイル等が指定していること、少なくとも一時的に保
存されているSWFファイル等が参照されて、本件発明に係る「判定部」
(構成要件1F及び2F)及び「表示位置制御部」(構成要件1G及び2
25 G)の機能が被告システムにおいて現に実現されることが認められる。
そうすると、被告サーバから配信されるSWFファイル等がユーザ端末
によって受信され、少なくとも一時的に保存されて参照されることによ
り、本件発明の「判定部」に相当する処理が被告システムにおいて実現
され、本件発明の構成要件を充足する「コメント配信システム」に相当
する被告システムが新たに作り出されるから、この点で、SWFファイ
5 ル等の配信及びユーザ端末による受信によって、被告システムが「生産」
されるものである。
被告らは、ユーザ端末がSWFファイル等をインストールするのでは
なく一時保存するにすぎないから、ユーザ端末の「生産」に該当しない
との主張をするものと理解される。しかしながら、原告は、被告らの行
10 為がユーザ端末の「生産」に該当すると主張しているわけではなく、被
告システムの「生産」に該当すると主張しているものであり、被告らの
主張は失当である。上記のとおり、一時保存であったとしても、被告サ
ーバからSWFファイル等が配信されてユーザ端末に保存されれば、現
に被告システムが新たに作り出されているといえるから、これがユーザ
15 端末へのインストールに当たると評価するかどうかは問題とならず、被
告らの行為は、被告システムの「生産」に該当し、本件特許権の侵害と
なる。
エ 被告らの行為が日本国内での生産に当たることについて
(ア) 前記アないしウのとおり、被告らは、被告サーバから、インターネッ
20 トを経由して、ウェブページのデータ、SWFファイル等並びに被告フ
ァイルであるコメントファイル及び動画ファイルを日本のユーザの端末
に配信することによって、被告サービスに係るコメント付き動画配信シ
ステム(被告システム)を作り出している。
そして、被告システムは、サーバとこれらとネットワークを介して接
25 続された多数のユーザの端末装置により構成されるが、そのうち、少な
くとも多数のユーザの端末装置は日本国内に存在し、日本国内において、
被告システムが多数のユーザにより利用され、侵害が惹起される。した
がって、本件訴訟の対象である被告システムの大部分は、日本国内に存
在している。
(イ) 被告らは被告システムを構成するサーバが国外にあることをもって侵
5 害行為が成立しないことを主張するものであると理解することができる。
しかしながら、特許法第2条3項1号の「生産」とは、特許範囲に属す
る技術的範囲に属する物を新たに作り出す行為と解されるところ、国内
にあるユーザ端末に被告システムを構成するサーバが上記の各ファイル
を送信することにより、本件発明の技術的範囲に属するシステムが国内
10 で新たに作り出されるのだから、被告システムを構成するサーバが国外
に存在するとしても、それは単に、「生産」が国外の行為により開始され
るということを意味しているだけで、本件訴訟の対象である被告システ
ムの大部分が日本国内に存在している以上、被告らによる「生産」の大
部分は、日本国内で行われているものである。したがって、本件におい
15 ては、被告らによる「生産」の開始が単に国外で行われているだけで、
「生産」の大部分は、日本国内で行われているものということができる。
しかも、被告システムにおいては、上記の各ファイルを国内のユーザ
端末に送信することにより、当該ユーザ端末のディスプレイにおいて、
2つの移動するコメントが追い付いて重複しないよう動画上に表示され
20 る(構成1h及び2h)という重要な実施行為も国内で行われているか
ら、侵害という結果との関連で実施行為が全体として見て我が国内で行
われているのと同視し得るといえる。
すなわち、原告は、サーバ又はユーザ端末の生産を本件発明の「実施」
(特許法2条3項)として主張しているわけではなく、サーバ及び日本
25 にあるユーザ端末から構成される被告システムの生産を「実施」と捉え
ているのであり、被告システムは量的に見ても、質的に見ても、その大
部分は日本国内に作り出される「物」であり、被告らによる「生産」(同
項1号)は日本国内において行われていると評価することができる。
これに対して、被告らが単にサーバを国外に設置することで日本の特
許権侵害を免れられるという結論が著しく妥当性を欠くのは明らかであ
5 る。
なお、「生産」に用いるものを生産者自身が保有あるいは使用している
ことは「生産」の要件ではないから、動画配信サーバやユーザ端末が被
告らのものでないとしても、少なくとも上記の各ファイルの送信を被告
システムを構成するサーバが行う限り、被告らの行為が「生産」に該当
10 しない理由にはならない。
(ウ) 原告は、属地主義の原則及び現行法を前提としても、侵害被疑者がサ
ーバを外国に設置した場合にも日本の特許権侵害が成立するよう本件発
明のクレームを構成したものである。そして、前記(ア)及び(イ)のとおり、
被告システムについては、被告サーバにより上記の各ファイルを配信す
15 るという被告らの「生産」行為の開始が国外から行われているものの、
上記の各ファイルの受信という「生産」行為の大部分が日本国内におい
て行われるものである。そうすると、侵害という結果との関連において、
被告システムの「生産」という実施が全体として見て日本国内で行われ
ているものと同視することができ、このような被告らの行為は本件特許
20 権を侵害するものということができる。
オ 被告HPSによる生産行為について
(ア) 被告HPSは、実質的には被告FC2と一体であり、被告FC2から
委託を受け、その一部門として被告サービスを運営しており、被告サー
バに被告プログラムをインストールした上で、被告サーバから、インタ
25 ーネットを経由して、被告ファイルを日本のユーザの端末に配信するこ
とにより、被告FC2と共同して、被告システムを生産している。
(イ) 被告らは、日本で刑事事件が問題となったことを踏まえて、平成27
年3月で被告FC2から被告HPSに対する動画関連サービスに関する
業務委託は終了したと主張する。
しかしながら、業務委託契約の解除を示す証拠や、被告FC2が新た
5 な業務委託先と契約を締結したことを示す証拠はなく、むしろ、被告H
PSの主張や提出された各証拠によれば、その後も被告HPSが被告F
C2と一体となってFC2動画等の被告サービスを運営していたものと
強く推認される。
まず、被告HPSが平成27年3月30日時点において少なくとも被
10 告サービス2及び3の業務を継続していたことは、被告HPS自身が認
めるところである。加えて、被告HPSが提出した書証(丙6)を前提
とすれば、同日時点において、被告サービス関連の業務のほとんどを継
続しているのであり、被告サービスについても被告HPSが業務を継続
していたと考えるのが自然である。
15 そして、被告FC2と被告HPS間においては、同年4月1日付で、
システム等開発業務委託契約(丙9)、システム保守業務委託基本契約
(丙10)及びソフトウェア保守業務委託基本契約(丙11)が締結さ
れており、この事実は、被告FC2が運営する被告サービスの開発及び
保守等の業務を被告HPSが同日付けで受託したことを示すものである。
20 さらに、被告FC2から被告HPSに対し、平成29年5月30日、
ドメインに関する業務を除き、同年8月末日をもって業務委託を終了す
ることが通知されているが、実際にそれが終了したことを示す証拠はな
い。また、上記の通知の内容は、少なくとも平成29年5月30日時点
においては被告HPSが被告FC2から業務委託を受けていたことを示
25 すものであり、「ドメインに関する業務を除いて」とされていることから、
広範に渡る業務がその後も被告HPSに委託されていたことは明らかで
あり、被告サービスの開発及び保守等を含んでいたものと推測される。
したがって、被告HPSは平成27年4月1日以降も被告FC2と一
体となって被告サービスを運営していたと考えるべきである。
(被告らの主張)
5 (1) 被告サービスにおけるシステムの概要
ア 被告サービスに係るシステムの構成
被告サービスに係るシステムは、被告サービス1が、ウェブサーバ、コ
メント配信サーバ及び動画配信サーバから成り、被告サービス2及び3が、
ウェブサーバ及びコメント配信サーバから成る。
10 このうち被告FC2が管理するウェブサーバは、被告サービスにおける
ウェブページのデータのほか、SWFファイル等をユーザ端末に送信して
いる。
イ 被告サービスに係るサーバの所在地
被告サービスにおける前記アの各サーバ(ただし、被告サービス2及び
15 3については、被告FC2から第三者への事業譲渡前のもの)は米国に存
在している。
被告サービス2及び3(ただし、被告FC2から第三者への事業譲渡前
のもの)における動画配信サーバは、インターネットを通じてアクセス可
能なものであれば場所は問わないので、理論上は日本国内外のいずれに存
20 在してもよい。
ただし、被告FC2は、上記動画配信サーバの実際の所在地を知らず、
被告サービス2及び3は既に譲渡済みであるため、それらの現在の仕様に
ついても知らない。
ウ 被告サービスにおけるHTML5版とFLASH版の動作
25 (ア) HTML5によって記述されたウェブページでは、一般的に、ユーザ
ー端末がブラウザのリクエストによりHTMLで記述されたファイルを
ダウンロードし、その端末のブラウザがHTMLの記述を解釈すること
で所定の動作をする。また、上記ブラウザは、JavaScriptを
実行することができ、この場合、ブラウザは、テキストの形でサーバか
らJavaScriptのコード(JSファイル)をダウンロードして
5 実行する。また、ウェブページの管理者は表示スタイルを設定するため
のCSSで記述されたファイルを用いて表示方法を細かく指定すること
ができる。
このように、HTML、JSファイル及びCSSを組み合わせて動画
及びコメントを表示するのが、被告サービスのHTML5版である。
10 (イ) 他方、FLASHは、ブラウザのプラグイン(機能を拡張するソフト
ウェア)であり、FLASH版においては、FLASHを追加されたブ
ラウザがアクションスクリプトという言語で記述されたSWFファイル
をダウンロードして、その記述に従って、動画ファイル及びコメントフ
ァイルをブラウザに追加されたFLASHで再生するとともに、再生結
15 果をブラウザ上に表示する。
(ウ) 被告サービスのHTML5版とFLASH版は、ユーザの端末が、動
画及びコメントファイルをダウンロードして、両者を(場合によっては
重ねあわせて)ブラウザで表示するという大まかな動作は共通する。
しかしながら、HTML5版では、ブラウザが、ウェブページを構成
20 するHTML及びJSファイルの記述に従って、動画ファイルやコメン
トファイルをダウンロードして、動画ファイルやコメントファイルを呼
び出し、HTML、JSファイル及びCSSの記述に従って、動画やコ
メントを表示するものであるのに対し、FLASH版では、FLASH
(プラグイン)を追加されたブラウザが、ウェブページを構成するHT
25 MLの記述に従って、SWFファイルをダウンロードし、さらに、SW
Fファイルの記述に従って、動画ファイル及びコメントファイルをダウ
ンロードして、ユーザの端末にインストールされたFLASHが、動画
ファイルやコメントファイルを呼び出して表示するという違いがある。
(エ) SWFファイル等の役割
a 被告システムにおいて、SWFファイル等に記述されているのは、
5 コメントの表示位置の決定方法及びコメントを移動させる場合の移動
の方向や速度の計算方法である。
構成要件1F、2F、1G及び2Gとの関係でいえば、SWFファ
イル等には、読み込んだコメントを表示する箇所及びタイミングとの
関係で、コメントが重なり合うか否かの計算式と、重なり合うと判断
10 された場合は、表示位置を別の表示箇所に変更する際の表示位置が記
載されており、この処理方法や条件を、ユーザがあらかじめユーザ端
末にインストールしているブラウザやFLASHが解釈して、実際に
コメントが重なるかを判断し、重なり合うと判定した場合は、別の表
示位置に表示箇所を変更する。そして、FLASH版であればFLA
15 SHが、HTML5版であればブラウザが、具体的に表示される映像
を作成し、その後、FLASH版においては、作成された映像データ
をブラウザに引き渡してブラウザがあらかじめ確保されている表示領
域に表示し、HTML5版においては、ブラウザが映像データをブラ
ウザが表示している表示領域に表示する。
20 なお、原告は、被告システムにおいて、SWFファイル等が動画フ
ァイル及びコメントファイルを指定していると主張するが、直接これ
らのファイル名を指定しているわけではなく、SWFファイル等の情
報を元に、ブラウザがウェブサーバにアクセスしてURLを取得し、
そこで得られたURLにアクセスすることで動画ファイル及びコメン
25 トファイルを取得することになる。
b SWFファイル等は、HTMLファイルやスタイルシート等と同様
にウェブの情報を記述しているファイルにすぎない。また、これらの
ファイルは、ユーザの端末に一時的に保管されるだけで、比較的短期
間で抹消されるものであり(抹消までの時間はユーザ端末の設定によ
る)、これは、一般的なウェブサイトの閲覧の場合と何ら変わるところ
5 がない。
これに対し、プログラムのインストールとは、通常、実行ファイル
の複製やレジストリの書換えなど、長期的に一定の動作を可能にする
ことを意味し、上記のようにブラウザによりウェブサイトを閲覧する
場合にファイルをダウンロードして一時的に保管することは、インス
10 トールに該当しない。プログラムのインストールを「生産」と解する
場合には、「生産」についての通常の理解から、長期間同一の動作を可
能な有体物を作り出すことを意味するものとしてインストールを解釈
するべきであり、一時的なウェブサイトの構成データのダウンロード
及びこれを一時保管領域で保管することは、「生産」には該当しない。
15 仮に、インストールの定義を、一時的なファイルのダウンロード等
を含む広い意味に解するとしても、「生産」とは、長期間同一の動作が
可能な有体物を作り出すことを意味する以上、一時的なファイルのダ
ウンロード等については、「インストール」に該当しても「生産」には
該当しないという解釈となるだけである。
20 エ 被告サービスの対応言語やアクセス制限について
(ア) 被告サービス1には、英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓
国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、
インドネシア語、ベトナム語及び日本語の12言語のウェブサイトが用
意されている。
25 被告サービス1について、特定の国からのアクセスを拒否する設定を
行うことは可能であるものの、原則として全世界からのアクセスが可能
であり、日本からのアクセスのみに制限されるものではない。
(イ) 被告サービス2の譲渡前の仕様は、英語、中国語(繁体字)、韓国語
及び日本語の4言語のウェブサイトが用意されており、日本からのアク
セスに限る等のアクセス制限は存在しなかった。
5 (ウ) 被告サービス3の譲渡前の仕様は、日本語のウェブサイトのみであっ
たものの、日本からのアクセスのみに制限されるものではなかった。
(2) 被告らが日本国内において被告システムを生産していないこと
ア 「物の生産」(特許法2条3項1号)に当たる行為がないこと
原告は、被告ファイル等を日本のユーザの端末に配信することによって、
10 本件発明の構成要件を備えた被告システムが完成するから、これが生産に
該当すると主張する。
しかしながら、実際に行われているのは、通常のウェブサイトの閲覧に
すぎず、動作としては、ブラウザやブラウザに追加されたFLASHが、
HTMLファイル及びJSファイル(HTML5版の場合)又はSWFフ
15 ァイル(FLASH版の場合)をダウンロードして参照しているにすぎず、
配信によって被告システムが新たに完成しているのではないから、生産に
該当する行為はない。特に、JSファイルは、FLASHのようなプラグ
インの追加を要しないことから、パソコンを買ったばかりの状態でも同様
の動作をするものであり、これを装置の生産と観念することはできない。
20 つまり、被告サービスにおいてユーザ端末らしきものがあるとしても、
それは通常のブラウザの挙動によるものにすぎず、特段の装置を構成しな
い。他方、ユーザによる被告サービスの視聴は、通常のブラウザによるウ
ェブページの閲覧にすぎない。したがって、本件において一般的なブラウ
ザと一般的なプラグインを追加したにすぎないユーザの端末を本件発明に
25 関する装置であると考えること自体、日本における実施を認めさせるため
の方便にすぎない。
これに対し、原告は、サーバ又はユーザ端末の生産ではなく、サーバ又
はユーザ端末から構成される被告システムの生産が「実施」であると主張
するが、上記のとおり、生産は装置についてされるものであるところ、原
告が主張するシステムに含まれる装置であるユーザ端末については、被告
5 FC2が形成するものではないから、上記の結論は変わらない。
イ 被告FC2は生産の実施主体でないこと
特許発明の「実施」のうち、「生産」とは、構成要件を充足しない物を組
み合わせて構成要件を充足するものとする行為を指すのであるから、「生産」
の実施主体といえるためには、当該組合せの全てを行う必要がある。本件
10 発明においては、動画とコメントを「端末装置の表示装置に表示させる手
段」が構成要件とされており(構成要件1E及び2E)、それに対応する被
告システムの構成は、ユーザ端末のブラウザの動作に他ならないところ、
当該ユーザ端末のブラウザの動作には、被告FC2が一切関与していない。
そうすると、被告FC2は、被告システムのうち、原告が「生産」と主張
15 する全ての行為を担っているとは評価され得ないから、「生産」の主体とは
ならない。
これに対し、原告は、ユーザ端末が被告ファイル等を受信することの主
体も被告らであると主張するが、ユーザ端末による視聴は、ユーザ自身に
よる端末の用意、端末のインターネットへの接続、端末へのブラウザやF
20 LASHのインストール、ユーザによる被告FC2がサービスを提供して
いるサイトへのアクセス、ユーザによる当該サイトにおける動画やコメン
トを視聴するための選択やマウスのクリック等が不可欠であり、ユーザの
行為としか評価できない。
ウ 日本国内での生産がないこと
25 日本の特許権が日本国内での実施に対してのみ及ぶことは、属地主義の
原則から明らかであり、実施とは特許発明の構成要件の全てを充足する行
為を意味することから、実施の一部が国外において行われている場合に、
日本の特許権は当該行為に及ばない。
これに対し、原告は、被告ファイルの配信等が国外で行われるとしても、
その行為は生産の開始にすぎないとし、ユーザ端末による被告ファイルの
5 受信は日本国内で行われ、日本国内のユーザ端末により大部分が構成され
る被告システムは日本国内で新たに作り出されているから、日本国内での
生産が認められるべきなどと主張する。しかしながら、特許発明の実施に
対して日本の特許権を行使するためには、その実施の全てが国内にて行わ
れる必要があることは属地主義の原則から明らかであり、実施としての
10 「生産」の一部である開始部分が国外において行われている以上、被告シ
ステムに対して日本の特許権が行使される余地はない。そもそも、
「生産行
為の大部分が日本国内」などという極めて曖昧な評価によって属地主義の
原則に反する国内特許権の行使が認められるものではなく、原告の主張は
失当である。
15 エ 被告HPSによる生産行為がないこと
(ア) 被告HPSが令和元年5月17日以降に被告サービスに関する業務を
行っていないこと
被告HPSは、被告FC2とは別の法人であり、被告FC2と一体の
関係にはなく、被告FC2の一部門でもない。
20 被告HPSは、かつて、被告FC2の委託を受けて、同被告が運営す
るサービスに関する業務の一部を行っていたことがあるが、遅くとも本
件特許権の設定登録がされた令和元年5月17日以降の時期においては、
本件サービスに関する業務を一切行っていないから、被告システムの生
産に当たる行為も行っていない。
25 (イ) 被告FC2から被告HPSへの業務委託が終了した経緯
a 平成26年中に京都府警が被告HPSの事務所等の強制捜査を行っ
たことなどを受け、平成27年1月頃、被告HPSは、被告FC2と
の間で、同被告が運営する動画サービスに関連する開発業務の委託の
見直しについて協議することになった。
b 前記aの協議の結果、被告FC2は、被告HPSが被告FC2の動
5 画関連サービスに関する開発業務を継続することによる法的リスクを
減らすために、平成27年3月末日をもって被告HPSへの被告シス
テムを含む動画関連サービスの開発業務の委託を終了することになっ
た。
c 被告HPSと被告FC2は、平成27年4月1日以降の業務委託等
10 について新たな契約を締結し、被告HPSは、同年3月31日をもっ
て被告FC2が運営する動画関連サービスの開発業務を終了し、同年
4月1日以降、動画関連サービスについては引き継ぎ業務のみを行う
こととなった。
d 被告FC2は、被告HPSに対し、平成29年5月30日頃、ドメ
15 インに関する業務を除き、同年8月末日をもって業務委託を終了する
ことを通知し、同日頃までにドメインに関する業務を除く業務委託は
全て終了した。
e 被告HPSが動画関連サービスの開発業務を終了した平成27年3
月当時、被告HPSには125名の従業員がいたが、動画関連サービ
20 スの開発業務の受託終了に伴う業務の減少に伴い、従業員数も次第に
減少し、令和元年5月当時には従業員は1名のみであり、令和元年9
月に最後の従業員が退職した。
したがって、原告が主張する特許権が登録された令和元年5月頃以
降、被告HPSは、本件発明の技術的範囲に属するシステムの生産に
25 関する開発業務か否かを問わず、およそプログラムの開発業務を行い
得る状況ではなかった。
5 争点5(無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否)について
当事者の主張は、別紙4「無効の抗弁の成否についての当事者の主張」のと
おり。
6 争点6(原告による本件特許権の行使が権利の濫用に当たるか)について
5 (被告らの主張)
別紙4の「14 争点5-14(公序良俗違反(無効理由14))について」
の(被告らの主張)のとおり、本件出願は別件訴訟の蒸し返し目的でされたも
のであり、また、そのような出願経過に鑑みれば、本件出願が実質的に特許法
17条の2第3項及び第4項の規定を逸脱する目的で分割出願されたものであ
10 ることは明らかである。
したがって、本件特許権を被告らに対して行使することは権利の濫用として
許されない。
(原告の主張)
被告らの主張は否認ないし争う。
15 7 争点7(損害の発生の有無及びその額)について
(原告の主張)
被告らは、遅くとも本件特許権の登録日である令和元年5月17日から、本
件訴訟の提訴日の前日である同年9月17日までに、共同して本件発明の技術
的範囲に含まれる被告システムを生産し、被告サービスを提供することによっ
20 て、少なくとも1億円を売り上げている。
そして、電子計算機等に関する特許発明に関する実施料率は、イニシャル無
しで平均値が33.2%である。被告らは、被告サービスを原告としては到底、
容認できないわいせつ目的で使用したことがあるため、原告が被告らに対して
本件発明の実施許諾をすることはあり得ず、本件発明の実施の被告サービスに
25 係る売上げ及び利益に対する貢献度を考慮しても、相当な実施料率は10%を
下らない。
したがって、特許法102条3項によって算定される実施料相当損害額は1
000万円を下らない。
(被告らの主張)
原告の主張は否認ないし争う。
5 8 争点8(差止請求及び除却等請求の当否)について
(原告の主張)
(1) 前記4(原告の主張)のとおり、被告らが被告サーバから被告サービスの
ための被告ファイルを送信する行為は、被告システムの「生産」に該当し、
本件特許権の直接侵害に該当するから、特許法100条1項による差止めの
10 対象となる。
さらに、被告サーバ用プログラム及び被告サーバは、被告らによる侵害行
為を組成したものであるから、同条2項による抹消及び除却の対象となるも
のである。
(2) 被告FC2は、被告サービス1について少なくともFLASH版に関して
15 は、侵害のおそれがなく、差止請求が認められるべきでないと主張している。
しかしながら、原告は、被告システムの特定に当たり、前記2(原告の主
張)(1)のとおり、FLASH版に限定せずにこれを特定しており、FLAS
H版であるかHTML5版であるかによって構成要件充足性に影響はない。
また、原告が本件の請求において配信の停止を求める被告ファイル、抹消を
20 求める被告サーバ用プログラム及び除却を求める被告サーバについても、F
LASH版に限定せずに特定している。
したがって、被告FC2が、Adobe社がAdobe Flash P
layerのサポートを終了したという外的要因によりFLASH版の供給
を停止し、HTML5版のみを提供することにしたとしても、これにより、
25 侵害の成否、差止請求権の帰趨に何らの影響も及ぼさない。
(被告らの主張)
(1) 被告サービス2及び3の譲渡
被告FC2は、令和2年9月25日をもって被告サービス2及び3に係る
事業をShwe Nandar Co., Ltd.に譲渡し、その旨を公表
した。
5 したがって、被告FC2は、同日以降、被告サービス2及び3と同様のサ
ービスを提供する予定がないから、被告サービス2及び3について、被告ら
に対する差止め及び除却等の請求は認められない。
(2) 被告サービス1におけるFLASH版の終了
被告FC2は、Adobe社がAdobe Flash Playerの
10 サポートを終了したことから、令和2年12月28日をもってFLASH版
の動画再生プレイヤーの公開を停止し、その旨を公表した。
被告FC2は、被告サービス1について、HTML5版のみを提供し、F
LASH版の公開をする予定はないから、被告サービス1のうち少なくとも
FLASH版に関しては、被告らに対する差止め及び除却等の請求は認めら
15 れない。
(3) 原告の差止め等を求める範囲が過大であること
被告サービスは、インターネットを通じて全世界に配信可能であり、日本
国内にだけ配信しないような技術は、現在のインターネットに関しては存在
しない。
20 また、原告は日本国内の被告らの行為について特許権侵害を主張するとし
ているが、被告サーバ用プログラム及び被告サーバは米国に存在している上、
これらの抹消及び除却をすると、日本国内への配信だけでなく、全世界への
配信が不可能になるから、原告が特許権侵害を主張する範囲を逸脱するもの
である。
25 したがって、原告の差止め及び除却等の請求はいずれも相当でない。
第4 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項等
(1) 本件明細書(甲2)には、以下の記載がある(下記記載中に引用する【図
1】 【図2】 【図4】 【図5】 【図8】 【図9】及び【図10】については、
、 、 、 、 、
別紙5「本件明細書の図面」参照)。
5 ア 【技術分野】
【0001】
本発明は、動画コンテンツを再生しながら、再生中のコンテンツを利用
してユーザ間のコミュニケーションを行うことができるコメント配信シス
テム、端末装置、コメント配信方法、及びプログラムに関する。
10 イ 【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが
発言したコメントをその動画と併せて表示するシステムがある。
例えば、地域ごとに放送時間が異なるテレビ番組等に関する掲示板にお
15 いて、テレビ番組の1シーンに対する書き込みを、放送開始からの正味時
間に対応させて記憶しておき、掲示板を閲覧する時間が異なっていても、
以前に書き込まれた内容がテレビ番組のシーンに合わせて表示させるシス
テムがある(例えば、特許文献1参照)。このシステムによれば、ユーザは
放送時間のタイムラグを感じることがなく、テレビ番組を見ながら、コメ
20 ントを閲覧して楽しむことができる。
ウ 【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術におけるシステムでは、単に動画の時
間(動画の再生時間)と対応付けてコメントを登録しておき、動画と合わ
25 せて再生するものであるので、ユーザ間において、リアルタイムでのコメ
ントのやりとりをすることができず、コミュニケーションとしての面白み
が十分とはいえなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ユー
ザ間において、同じ動画を共有して、コメントを利用しコミュニケーショ
5 ンを図ることができるコメント配信システム、端末装置、コメント配信方
法、及びプログラムを提供することにある。
エ 【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、動画データを配信する動画
10 配信サーバと、動画に対するコメントを配信するコメント配信サーバと、
複数の端末装置と、がネットワークを介して接続されたコメント配信シス
テムであって、前記コメント配信サーバは、コメントが前記端末装置によ
って付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時
間を表す動画再生時間であるコメント付与時間と前記コメントとを含むコ
15 メント情報を前記複数の端末装置のうちいずれかの端末装置から送信され
る毎に受信して記憶する第1のコメント情報記憶部と、前記第1のコメン
ト情報記憶部に記憶されたコメント情報を読み出して、前記端末装置に配
信するコメント情報配信部と、を有し、前記端末装置は、前記動画配信サ
ーバから配信される動画データを受信して再生する動画再生部と、前記再
20 生する動画に対して入力されたコメント情報を前記コメント配信サーバか
ら受信するコメント情報受信部と、前記コメント情報受信部が受信したコ
メント情報を記憶する第2のコメント情報記憶部と、前記動画再生部によ
って再生される動画を表示するとともに、再生される動画の動画再生時間
に対応するコメント付与時間のコメントを前記第2のコメント情報記憶部
25 から読み出し、読み出したコメントを動画とともに表示する表示部と、を
有することを特徴する。
【0007】
また、本発明は、上述のコメント配信システムにおいて、前記コメント
表示部によって表示されるコメントの表示位置が他のコメントの表示位置
と重なるか否かを判定する判定部と、前記判定部がコメントの表示位置が
5 重なると判定した場合に、各コメント同士が重ならない位置に表示させる
表示位置制御部と、を有することを特徴とする。
オ 【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力されたコメント情報のうち、再生する動画の動画
10 再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメン
ト情報から読み出し、読み出したコメント内容を動画とともに表示するよ
うにした。そして、動画に対して入力されたコメント情報のうち、消去対
象であるコメント情報を示すコメント消去要求が入力されると、そのコメ
ントを表示しないようにしたので、そのコメントが動画にふさわしくない
15 コメントであるか否かについて、ユーザの意思を考慮した表示をすること
ができ、コメントを利用したコミュニケーションにおける娯楽性を向上さ
せることが可能となる。
カ 【発明を実施するための形態】
【0013】
20 以下、本発明の一実施形態によるコメント配信システムについて図面を
参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態によるコメント配信シ
ステムの構成を示す概念図である。この図において、動画配信サーバ1は、
端末装置3からの配信要求に応じて、動画データを配信する。この配信は、
例えば、ストリーミング配信によって行われる。コメント配信サーバ2は、
25 動画配信サーバ1が配信する動画に対するコメントを端末装置3から受信
し、その動画を閲覧する各端末装置3に配信する。端末装置3は、ネット
ワーク4を介して動画配信サーバ1とコメント配信サーバ3に接続し、動
画配信サーバ1から配信される動画を受信して表示するとともに、コメン
ト配信サーバ3から配信されるコメントを受信して動画上に表示する。
【0014】
5 次に、図1におけるコメント配信サーバ2、端末装置3について、図面
を用いて更に説明する。図2は、コメント配信サーバ2の構成を示す概略
ブロック図である。この図において、コメント情報記憶部21は、コメン
トの内容と、このコメント内容が付与された時点における、動画の再生開
始時点を基準とした動画再生時間をコメント付与時間としてコメント内容
10 とを対応づけてコメント情報として記憶する。…
【0016】
次に、端末装置3について、図面を用いて説明する。図4は、端末装置
3の構成を説明する概略ブロック図である。
この図において、動画再生部31は、端末装置3のユーザによって指定
15 された動画の配信要求を動画配信サーバ1に送信し、動画配信サーバ1か
ら配信される動画を受信して再生する。コメント情報受信部32は、再生
する動画に対して入力されたコメント情報をコメント配信サーバ2から受
信する。コメント情報記憶部33は、コメント情報受信部32が受信した
コメント情報を記憶する。このコメント情報記憶部33は、上述の第2の
20 コメント情報記憶部に相当する。
【0017】
表示装置34は、液晶表示装置やCRT(Cathode Ray Tu
be)等であり、各種情報を表示する。第1の表示部35は、動画再生部
31によって再生される動画を表示するとともに、コメント情報記憶部3
25 3に記憶されたコメント情報のうち、再生する動画の動画再生時間に対応
するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読み
出し、読み出したコメントを動画とともに表示装置34によって表示する。
また、第1の表示部35は、コメント内容を動画上にオーバーレイ表示さ
せる機能を有する。第2の表示部36は、コメント情報記憶部33に記憶
されるコメントデータに基づいて、コメントのリストをコメント一覧とし
5 て表示装置34に表示する。ここでは、コメントデータに含まれたコメン
ト投稿実時間の情報の順に従って表示する。
【0018】
この表示装置34に表示される情報について、更に説明する。図5は、
表示装置34に表示される情報の一例を示す図である。表示欄101には、
10 このコメント配信サーバにアクセスした際のURL(uniform resource lo
cator)が表示される。表示欄102には、再生される動画の動画IDが表
示される。表示欄103には、現在表示されている動画が閲覧要求された
のべ回数が閲覧回数として表示される。この閲覧回数は、他のユーザが動
画を再生(閲覧要求)した場合には、その時点で同じ動画を閲覧中のユー
15 ザのカウント数が増加され、カウント数が更新されて表示される。表示欄
104には、第1の表示部によって表示される動画が表示される。表示欄
105は、第2の表示部によって表示されるコメントが表示される領域で
あり、ここでは、表示欄104によって表示される動画上にコメントが表
示される。また、ここでは、表示欄105は、表示欄104よりも大きい
20 サイズに設定されており、オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の
画面の外側でトリミングするようになっており、コメントそのものが動画
に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれた
ものであることが把握可能となっている。
【0019】
25 操作パネル106は、再生ボタン、停止ボタン、巻き戻しボタン、早送
りボタン、音量調整ボタン、動画全体のどのあたりを再生しているのかを
示す再生状態表示欄、などが表示されており、マウスによっていずれかの
ボタンにカーソルを合わせてクリックされることによって、そのボタンに
応じた操作の入力を受け付けする。表示欄107には、動画全体の再生時
間長と、現在表示欄105に表示されている動画の動画再生時間とが表示
5 される。入力欄108には、動画に対して発言するユーザの名前が入力部
37を介して入力される。ここで、入力欄108の近傍にチェックボック
スを設けておき、このチェックボックスがチェックされたか否かに従って、
メールアドレスを入力するか否かを選択させ、チェックボックスがチェッ
クされた場合に、入力欄108を2つにし、ユーザの名前と、ユーザのメ
10 ールアドレスとの入力を受け付けるようにしてもよい。入力欄109には、
コメントの表示のさせ方を指定する情報が入力される。コメントの表示の
させ方としては、例えば、コメントの動画上に表示させる位置、フォント、
文字のサイズ、移動表示させる開始位置と終了位置と移動表示させる方向
等を、オーバーレイ表示をさせるための指定をする情報として設定可能で
15 ある。なお、ここで、コメントの表示のさせ方については、予め決めてお
き、ユーザが入力しなくてもよいようにすることも可能である。
【0020】
コメント欄110には、入力部37を介してユーザによってコメントが
入力される。ボタン111は、クリックされることによって、コメント欄
20 110に入力されたコメントや、入力欄108に入力されたユーザの名前
や、入力欄109に入力されたコメントの表示のさせ方の情報をコメント
配信サーバ2に送信する。表示欄112は、コメントのリストであるコメ
ント一覧が表示される領域である。このコメント一覧には、コメントに付
与された発言順序を示す番号(符号112a)、コメントを入力したユーザ
25 の名前(符号112b)、コメントの書き込みをしたコメント付与時間(符
号112c)、発言されたコメントの一部(符号112d)が、投稿された
実時間情報の順に従って表示される。この表示欄112に、表示欄112
を画面上に表示させるか否かを指定するチェックボックス等の入力欄を設
け、この入力欄に入力された表示の可否の指示に従い、表示をさせるある
いは、表示を隠すようにすることも可能である。また、この表示欄112
5 に表示させるコメントの一部の個数をユーザの指示に従って、変更するよ
うにしてもよい。表示欄113は、表示欄112に表示されたコメント一
覧のうち、ユーザのよってカーソルが合わせられたコメントの詳細が表示
される。コメントの詳細としては、コメントの全文や、コメントを発言し
たユーザの名前、メールアドレスなどが表示される。
10 【0023】
送信部40は、第1の表示部35によって表示された動画に対するコメ
ント内容のデータ入力を受け付けるとともに、コメント内容が入力された
時点の動画再生時間をコメント付与時間としてコメント内容とともにコメ
ント配信サーバに送信する。また、送信部40は、入力部37から入力さ
15 れた指示に従って、各種情報をコメント配信サーバ2や動画配信サーバ1
に送信する機能を有する。
【0028】
次に、端末装置3の動作について図面を用いて説明する。図8は、端末
装置3の動作を説明するためのフローチャートである。
20 端末装置3の入力部37は、ユーザから動画再生の指示が入力されると
(ステップS201)、指示された動画の動画IDを送信部40によって動
画配信サーバ1に送信し、動画の配信要求をするとともに、コメント情報
の配信要求をコメント配信サーバ2に送信する。そして、コメント情報受
信部32は、コメント配信サーバ2から配信されるコメント情報を受信し
25 たならば(ステップS202)、コメント情報記憶部33に記憶する。
【0029】
コメント情報が受信されコメント情報記憶部33に記憶されると、動画
再生部31は、動画配信サーバ1から配信される動画を受信し、受信した
動画を再生し、第1の表示部35によって表示装置34に表示する(ステ
ップS203)。動画の再生が開始されると、第1の表示部35は、現在の
5 動画再生時間に基づいて、動画再生時間に一致するコメント付与時間が設
定されたコメントデータがあるか否かをコメント情報記憶部33を参照し
て、判定する(ステップS204)。動画再生時間に一致するコメント付与
時間が設定されたコメントデータがある場合(ステップS205-YES)、
第1の表示部35は、当該コメントデータの表示位置を算出する(ステッ
10 プS206)。そして算出された表示位置に従って、動画上にコメントの表
示制御を行う(ステップS206)。
一方、動画再生部31は、再生が終了したか否かを判定し、再生が終了
していれば処理を終了し、再生が終了して否ければ、ステップS204に
移行する。
15 【0030】
一方、ステップS205において、表示させるコメントがなければ、配
信部40は、入力部37からコメントが入力されたか否かを検出する(ス
テップS209)。コメントの入力があった場合には、そのコメントが入力
された時点(例えば、「書く」ボタン(符号111)がクリックされた時点)
20 における、その動画を再生しているソフトウェアのプレイヤーが指す再生
時間(動画再生時間)を読み出し、その動画再生時間をコメント付与時間
とし、再生中の動画の動画IDと、閲覧中のコメントのスレッドIDと、
現在の実時間情報(現在時刻の情報)と、端末装置3のユーザのユーザ名
と、入力されたコメント内容と、コメント表示方法とを対応づけて、コメ
25 ント情報としてコメント情報記憶部33のコメント一覧に追加保存する
(ステップS210)。そして、送信部40は、追加保存したコメント情報
をコメント配信サーバ2に送信し(ステップS211)、ステップS208
に移行する。
【0033】
次に、コメントが画面上に表示された場合について図面を用いて説明す
5 る。ここでは、図5の「最近のコメント一覧」において、「有名シェフのオ
ムライス」の動画に対応付けされた「料理の感想を言おう!」というスレ
ッドが選択された場合について説明する。このスレッドが選択されると、
「有名シェフのオムライス」の動画が例えば、図5の表示欄104の領域
内に再生される。そして、動画再生時間に応じてコメントが動画上に順次
10 表示される。図5では、動画再生時間が9秒の場合の画面が示してあり、
ここでは、コメント付与時間が9秒のユーザFのコメントである「おいし
そう~!」が、画面の右側から左側に移動表示される(符号115)。そし
て、動画の再生が進み、動画再生時間が13秒になると、図9に示すよう
な画面が表示される。ここでは、コメント付与時間が9秒のコメントであ
15 る「おいしそう~!」が、画面左側に移動しており、表示欄104の外側
であって表示欄109の内側にトリミングされた状態で「そう~!」の部
分だけ表示されている(符号200)。また、コメント付与時間が10秒の
ユーザZのコメントである「有名シェフの作品はいいねぇ。」のコメントが
ユーザBのコメントの下の位置に表示されているとともに(符号201)、
20 コメント付与時間が12秒のユーザEのコメントである「どこの卵を使っ
てるの?」が画面の下方の位置に表示される(符号202)。このようにし
て、コメントが順次表示される。
【0034】
以上、1つの端末装置3のみの動作に着目して説明したが、実際には、
25 同じ動画であって、同じスレッドを閲覧しているユーザ間において、以下
のようにしてコメントのやりとりをすることができる。ここでは、図10
を用いて、説明をする。
例えば、あるユーザEによって、動画が再生され、動画再生時間が12
秒の時点で「どこの卵を使っているの?」というコメントが発言として追
加入力されると(符号a)、その追加入力されたコメントのコメント情報が
5 コメント配信サーバ2を介して、同じ動画であって同じスレッドを閲覧し
ている端末装置3に配信される。
【0035】
その配信後に、別のユーザCによって、同じ動画が再生されると(符号
b)、ユーザCの端末装置3に、追加されたコメントを含めてコメント情報
10 が配信される。そして、動画再生時間が12秒の時点で、「どこの卵を使っ
ているの?」というユーザEからのコメントが表示される。そして、この
コメントを閲覧したユーザCが、その回答として、ユーザCの動画再生時
間が15秒の時点(ユーザEの動画再生時間では、例えば100秒の時点)
で「○○県産らしいよ。」というコメントを入力してコメント配信サーバ2
15 に送信すると(符号c)、その送信されたコメントがユーザEの端末装置3
に配信される。このとき、例えば、動画再生時間が100秒の時点におい
て、ユーザEのコメント一覧のリストに、ユーザCのコメントの一部が実
時間に従った順で表示される(符号d)。例えば、最新のコメントとして、
コメント一覧の一番下(あるいは一番上)に表示される。そして、このコ
20 メント一覧を見たユーザEによって、コメントの一部がクリックされると、
再生中の動画が、動画再生時間15秒の時点に戻って再生されるとともに、
ユーザEの端末装置3の画面上に「○○県産らしいよ。」のコメントが表示
される(符号e)。これによって、ユーザEは、あたかも自分のコメントに
返信があったかのようにして楽しむことができる。そして、このようなコ
25 メントのやりとりを繰り返すことによって、異なるタイミングで動画を閲
覧しているユーザ同士であっても、コメントを介してコミュニケーション
を図ることが可能となる。このように、実時間でのコメント入力順にコメ
ントを管理し、コメント一覧として表示するようにしたので、動画の再生
タイミングが一致していないユーザ同士であっても、コメントのやりとり
をリアルタイムで行うことができ、コミュニケーションを図ることが可能
5 となる。
【0040】
次に、コメントの表示について説明する。
入力されたコメントは、画面上の上段、中段、下段など、表示させる位
置や、コメントを移動表示させる表示時間を入力欄109に入力すること
10 によって設定することが可能である。また、表示時間を設定する場合は、
例えば、画面の上段にコメントを一定時間(例えば、4秒)表示させて消
すようにすることができる。また、画面の表示領域内に現れてから領域外
に移動して消えるまでの時間を指定して(例えば、4秒)、移動スピードを
調整することも可能である。また、ある動画再生時間に多数のコメントが
15 集中して入力された場合等において、それらを表示させると同じ高さのラ
インで重なってしまう場合は、画面上の高さを変えて表示あるいは、移動
表示させることが可能である。また、表示時間が設定されたことによって、
コメントの文字列の長さに応じて移動スピードが異なる場合は、コメント
が移動し終わる前に次のコメントが追いついてしまう場合もあるので、こ
20 のような場合にも、次のコメントを違う高さのラインに表示または、移動
表示させるようにしてもよい。
【0043】
なお、上述した実施形態において、動画配信サーバ1とコメント配信サ
ーバ2とが別のサーバである場合について説明したが、同一のサーバで、
25 動画配信サーバ1とコメント配信サーバ2との機能を実現するようにして
もよい。
また、上述した実施形態においては、本サービスにおけるコメントと動
画の閲覧を行う場合に、コメント配信サーバ2にアクセスして、最近のコ
メント一覧のデータを受信し、表示装置34に表示された最近のコメント
一覧から動画とスレッドを選択する場合について説明したが、この動画を
5 スレッドを指定して、コメントと動画の閲覧できるURLを作成し、イン
ターネット上に公開するようにしてもよい。具体的には、動画IDとスレ
ッドIDが含まれ、クリックをするとその動画の再生とそのスレッドのコ
メント情報を受信することができるURLをブログやインターネットのサ
イト上の掲示板に書き込みをして他のユーザにクリックさせるようにして
10 もよい。また、このようなURLをサムネイル画像等に設定しておき、ク
リックをさせるようにしてもよい。
(2) 前記(1)の記載事項及び本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば、
本件明細書には、本件発明に関し、次のとおりの開示があることが認められ
る。
15 ア 従来から、例えば、放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが
発言したコメントをその動画と併せて表示するシステムがあるが、このシ
ステムでは、単に動画の時間(動画の再生時間)と対応付けてコメントを
登録しておき、動画と合わせて再生するものであるので、ユーザ間におい
て、リアルタイムでのコメントのやりとりをすることができず、コミュニ
20 ケーションとしての面白みが十分とはいえなかった(【0002】【000

4】。

イ 「本発明」は、前記アのような事情に鑑みて、ユーザ間において、同じ
動画を共有して、コメントを利用しコミュニケーションを図ることができ
るコメント配信システムを提供することを目的として(【0005】、サー

25 バと、これとネットワークを介して接続された複数の端末装置とを備える
配信システムを採用したものであり、この配信システムは、サーバから配
信される動画を端末装置で視聴中のユーザが、動画に対するコメントを付
してサーバに送信し、サーバは、受信したコメントと当該コメントが付与
された時点に対応する動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメ
ント情報を端末装置に配信し、端末装置は、再生する動画に対して入力さ
5 れたコメント情報をサーバから受信して、再生される動画の動画再生時間
に対応するコメント付与時間のコメントを動画とともに表示するものであ
って、コメントを動画とともに表示する表示部によって表示されるコメン
トの表示位置が他のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部
と、判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメント
10 同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部とを有することを特徴
とするものである(【0006】【0007】【0040】【0043】。
、 、 、 )
「本発明」によれば、入力されたコメント情報のうち、再生する動画の
動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコ
メント情報から読み出し、読み出したコメント内容を動画とともに表示す
15 ることができ、コメントを利用したコミュニケーションにおける娯楽性を
向上させることが可能となるという効果を奏する(【0011】。

2 争点1(準拠法)について
(1) 差止め及び除却等の請求について
特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は、当該特許権が登録された
20 国の法律であると解すべきであるから(最高裁平成12年(受)第580同
14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁)、本件の差止
め及び除却等の請求についても、本件特許権が登録された国の法律である日
本法が準拠法となる。
(2) 損害賠償請求について
25 特許権侵害を理由とする損害賠償請求については、特許権特有の問題では
なく、財産権の侵害に対する民事上の救済の一環にほかならないから、法律
関係の性質は不法行為である(前掲最高裁平成14年9月26日第一小法廷
判決)。したがって、その準拠法については、通則法17条によるべきである
から、「加害行為の結果が発生した地の法」となる。
原告の損害賠償請求は、被告らが、被告サービスにおいて日本国内の端末
5 に向けてファイルを配信したこと等によって、日本国特許である本件特許権
を侵害したことを理由とするものであり、その主張が認められる場合には、
権利侵害という結果は日本で発生したということができるから、上記損害賠
償請求に係る準拠法は日本法である。
3 争点2(被告システムが本件発明1の技術的範囲に属するか)について
10 (1) 被告システム1の構成要件1Bないし1F及び1Hの充足性について
ア 「動画を視聴中のユーザから付与された」(構成要件1B)「第1コメン

ト」及び「第2コメント」(構成要件1B、1Dないし1F及び1H)並び
に「コメント情報」(構成要件1Cないし1E及び1H)について
(ア) 「動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第

15 2コメント」並びに「コメント情報」の意義
a 特許請求の範囲の記載について
構成要件1Bは、「前記サーバは、前記サーバから送信された動画を
視聴中のユーザから付与された前記動画に対する第1コメント及び第
2コメントを受信し、」と規定している。
20 この「前記サーバ」とは、構成要件1Aにおける、「コメント配信シ
ステム」を構成する「複数の端末装置」と「ネットワークを介して接
続された」「サーバ」である。そして、「第1コメント」及び「第2コ
メント」とは、構成要件1Bの上記記載から、「前記サーバから送信さ
れた動画を視聴中のユーザから付与され」たコメントであり、「前記サ
25 ーバ」が受信するものであると理解できる。
また、構成要件1Dの記載から、上記の「第1コメント」及び「第
2コメント」は、「前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれ
が付与された時点に対応する、前記動画の最初を基準とした動画の経
過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」とともに、「前記
コメント情報」に含まれると理解できる。
5 他方で、本件発明1の特許請求の範囲の記載から、「動画を視聴中の
ユーザ」以外の者が「第1コメント」及び「第2コメント」を付すこ
とができるか否かは明らかでない。
b 本件明細書の記載について
本件明細書には、「前記コメント配信サーバは、コメントが前記端末
10 装置によって付与された時点における、前記動画の最初を基準として
動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間と前記コ
メントとを含むコメント情報を前記複数の端末装置のうちいずれかの
端末装置から送信される毎に受信して記憶する第1のコメント情報記
憶部…を有する」【0006】、
( )「図2は、コメント配信サーバ2の構
15 成を示す概略ブロック図である。この図において、コメント情報記憶
部21は、コメントの内容と、このコメント内容が付与された時点に
おける、動画の再生開始時点を基準とした動画再生時間をコメント付
与時間としてコメント内容とを対応づけてコメント情報として記憶す
る。 (
」 【0014】 、
) 「コメント欄110には、入力部37を介してユ
20 ーザによってコメントが入力される。ボタン111は、クリックされ
ることによって、コメント欄110に入力されたコメントや、入力欄
108に入力されたユーザの名前や、入力欄109に入力されたコメ
ントの表示のさせ方の情報をコメント配信サーバ2に送信する。(
」【0
020】、
)「送信部40は、第1の表示部35によって表示された動画
25 に対するコメント内容のデータ入力を受け付けるとともに、コメント
内容が入力された時点の動画再生時間をコメント付与時間としてコメ
ント内容とともにコメント配信サーバに送信する。 (
」 【0023】 、

「配信部40は、入力部37からコメントが入力されたか否かを検出
する(ステップS209)。コメントの入力があった場合には、そのコ
メントが入力された時点(…)における、その動画を再生しているソ
5 フトウェアのプレイヤーが指す再生時間(動画再生時間)を読み出し、
その動画再生時間をコメント付与時間とし、再生中の動画の動画ID
と、閲覧中のコメントのスレッドIDと、現在の実時間情報(現在時
刻の情報)と、端末装置3のユーザのユーザ名と、入力されたコメン
ト内容と、コメント表示方法とを対応づけて、コメント情報としてコ
10 メント情報記憶部33のコメント一覧に追加保存する(ステップS2
10)。そして、送信部40は、追加保存したコメント情報をコメント
配信サーバ2に送信し(ステップS211)、ステップS208に移行
する。 (
」 【0030】)との記載があり、このような端末装置の動作に
ついて説明した【図8】では、「S203」で動画再生が開始された後、
15 「S209」でコメント入力がされた場合とされない場合とで処理が
分けられている。
これらの記載からは、動画を表示中の端末装置においてユーザが動
画に対するコメントを入力した場合には、当該端末装置が、コメント
配信サーバに対し、コメント内容が入力された時点の動画再生時間で
20 あるコメント付与時間とともにコメント内容を送信し、コメント配信
サーバのコメント情報記憶部が、当該コメント付与時間と当該コメン
ト内容とを対応づけてコメント情報として記憶するものと理解できる。
他方で、本件明細書において、「動画を視聴中のユーザ」以外が動画
に対してコメントを付すことができるか否かについての記載はない。
25 c 前記bの本件明細書の記載に照らし、前記aの特許請求の範囲の記
載を解釈すれば、構成要件1Bの「前記サーバから送信された動画を
視聴中のユーザから付与された前記動画に対する第1コメント及び第
2コメント」とは、本件発明1のコメント配信システムにおいて、サ
ーバから送信された動画を表示中の端末装置において入力された場合
に、ネットワークを介して接続されたサーバに送信されることになる、
5 当該動画に対する2つのコメントであると解され、構成要件1Dない
し1F及び1Hの「前記第1コメント」及び「前記第2コメント」も
同様である。
また、構成要件1Cの「コメント情報」とは、上記の2つのコメン
トと、それぞれが付与された時点に対応する、前記動画の最初を基準
10 とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間と
を含む情報を指すと解され、構成要件1D、1E及び1Hの「前記コ
メント情報」も同様である。
d 被告らは、本件明細書に、本件発明の目的は、「ユーザ間において、
同じ動画を共有して、コメントを利用しコミュニケーションを図るこ
15 とができるコメント配信システム、端末装置、コメント配信方法、お
よびプログラムを提供することにある」【0005】
( )との記載がある
ことを指摘して、動画を視聴していないユーザにより動画と無関係な
コメントが投稿されてしまうと、視聴者間でのリアルタイムのコミュ
ニケーションが阻害されることになり、本件発明1の上記目的に反す
20 ることになるから、本件発明1は、「動画を視聴中のユーザ」のみが
「コメントを付す」ことを要件としていると解すべきであり、「動画を
視聴中のユーザ」に加えて、それ以外のユーザがコメントを付与でき
るコメント配信システムは、サーバが「第1コメント」及び「第2コ
メント」を受信するものではなく、また、端末装置に「第1コメント
25 及び第2コメント」を含む「コメント情報」を送信するものでもない
から、本件発明1の構成要件1Bないし1F及び1Hを充足しないと
主張する。
しかしながら、前記a及びbのとおり、本件発明1のコメント配信
システムにおいて、「前記サーバから送信された動画を視聴中のユーザ」
以外の者が、動画に対するコメントを付すことができるかどうかにつ
5 いて、本件発明1の特許請求の範囲の記載からは明らかでなく、本件
明細書にもその点に関する記載はない。
本件明細書には、被告らが指摘する視聴者間でのリアルタイムのコ
ミュニケーションに関し、「…実時間でのコメント入力順にコメントを
管理し、コメント一覧として表示するようにしたので、動画の再生タ
10 イミングが一致していないユーザ同士であっても、コメントのやりと
りをリアルタイムで行うことができ、コミュニケーションを図ること
が可能となる。 (
」 【0035】)との記載があるところ、本件発明1は、
特許請求の範囲の記載から明らかなように、「実時間でのコメント入力
順にコメントを管理し、コメント一覧として表示する」との構成を必
15 須とするものではなく、「コメントのやりとりをリアルタイムで行うこ
とができ」るような他の構成を備えているともいえない。また、前記
1(2)のとおり、本件明細書の記載からは、【0005】の「ユーザ間
において、同じ動画を共有して、コメントを利用しコミュニケーショ
ンを図ることができるコメント配信システム…を提供する」との目的
20 は、動画を視聴中のユーザが、再生する動画の動画再生時間に対応す
るコメント付与時間が対応付けられたコメントを付し、これが動画と
ともに表示されること(【0011】参照)、コメントの表示方法とし
て、コメントの表示位置が他のコメントの表示位置と重なるか否かを
判定し、コメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメント
25 同士が重ならない位置に表示させること(【0006】 【0007】
、 、
【0040】【0043】
、 )によって実現することができるものといえ、
「コメントのやりとりをリアルタイムで行うことができ」るような構
成を備えることや、動画を視聴していないユーザが動画にコメントを
付さないことが、【0005】に記載された目的の実現のために必要と
はいえない。
5 そうすると、本件発明1における「第1コメント」及び「第2コメ
ント」並びに「コメント情報」に該当するためには、前記cに該当す
るものであれば足り、それ以上に「前記サーバから送信された動画を
視聴中のユーザ」のみが動画に対するコメントを付すことを要するも
のとは解されないというべきである。
10 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(イ) 被告システム1におけるサーバが、「第1コメント」及び「第2コメ
ント」を受信し、「コメント情報」を送信するかについて
a 「第1コメント」及び「第2コメント」について
「サーバから配信された動画を再生閲覧中のユーザから付与された
15 前記動画に対するコメント1及びコメント2を受信」することは、原
告の主張する構成1bと被告らの主張する構成b’とで共通している
から、被告システム1のサーバがこの構成を有することは当事者間に
争いがないといえる。
被告らは、被告システム1のサーバが「閲覧中ではないユーザから
20 付与された前記動画に対するコメント1及びコメント2を受信」する
(構成b’)から、被告システム1のサーバは「第1コメント及び第2
コメント」を受信するものではないと主張するが、前記(ア)のとおり、
本件発明1における「第1コメント」及び「第2コメント」に該当す
るためには、「前記サーバから送信された動画を視聴中のユーザ」のみ
25 が動画に対するコメントを付すことを要するものではない。
したがって、被告システム1の「コメント1」及び「コメント2」
は、それぞれ、本件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」
に該当し、被告システム1は、サーバが「第1コメント」及び「第2
コメント」を受信する構成を備えるものと認められる。
b 「コメント情報」について
5 ユーザ端末に「コメントファイル」が送信されることは、原告の主
張する構成1cと被告らの主張する構成c’1とで共通しており、「コ
メントファイル」が「前記コメント1及びコメント2と、前記コメン
ト1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対応する、前
記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間と、を含」むこ
10 とは、原告の主張する構成1dと被告らの主張する構成d’1とで共
通しているから、被告システム1がこれらの構成を有することは当事
者間に争いがないといえる。
前記aのとおり「コメント1」及び「コメント2」は、それぞれ本
件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」に該当するから、
15 上記「コメントファイル」は、本件発明1の「コメント情報」に該当
し、被告システム1におけるサーバは、当該「コメント情報」を送信
する構成を備えるものと認められる。
イ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
ント及び前記第2コメント」(構成要件1E及び1H)について
20 (ア) 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コ
メント及び前記第2コメント」の意義
a 特許請求の範囲の記載について
本件発明1の特許請求の範囲には、「前記動画と、…前記動画の少な
くとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前
25 記第2コメント、を前記端末装置の表示装置に表示させる」(構成要件
1E及び1H)との記載がある。これらの記載から、動画と第1コメ
ント及び第2コメントとが端末装置の表示装置に表示され、その際、
第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも一部と重なった状
態で水平方向に移動することが規定されていると理解できるが、動画
とコメントとの重なりの態様については、それ以上に明らかでははな
5 い。
b 本件明細書の記載について
本件明細書には「読み出したコメントを動画とともに表示する表示
部」【0006】、
( )「コメント配信サーバ3から配信されるコメントを
受信して動画上に表示する。 (
」 【0013】 、
) 「第1の表示部35は、
10 …動画を表示するとともに、…再生する動画の動画再生時間に対応す
るコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読
み出し、読み出したコメントを動画とともに表示装置34によって表
示する。また、第1の表示部35は、コメント内容を動画上にオーバ
ーレイ表示させる機能を有する。 (
」 【0017】 、
) 「図5は、表示装置
15 34に表示される情報の一例を示す図である。…表示欄104には、
第1の表示部によって表示される動画が表示される。表示欄105は、
第2の表示部によって表示されるコメントが表示される領域であり、
ここでは、表示欄104によって表示される動画上にコメントが表示
される。(
」【0018】)との記載がある。
20 これらの記載からは、読み出したコメントを動画とともに表示する
方法として、動画とコメントを表示装置に表示する際に、動画を表示
する領域(表示欄)と、コメントを表示する領域(表示欄)を重ねて
表示することで、動画上にコメントを重ねて表示できることが理解で
きる。
25 c 前記bの本件明細書の記載に照らし、前記aの特許請求の範囲の記
載を解釈すれば、構成要件1E及び1Hにおいて、「動画の少なくとも
一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2
コメント」が端末装置の表示装置に表示されるというのは、表示装置
に表示される動画の少なくとも一部に重なるように第1コメント及び
第2コメントが当該動画上に表示されること及びこれらのコメントが
5 水平方向に移動することをいうものと解される。
d 被告らは、本件明細書の【0018】の記載を根拠として、構成要
件1E及び1Hにおける「第1コメント及び前記第2コメント」が
「動画の少なくとも一部と重な」るとは、動画表示として確保された
領域よりもコメント表示として確保された領域の方が大きい場合を意
10 味し、両者が完全に重なる場合を含まないと主張する。
そこで検討するに、本件明細書の【0018】には、前記bの記載
に続いて、「また、ここでは、表示欄105は、表示欄104よりも大
きいサイズに設定されており、オーバーレイ表示されたコメント等が、
動画の画面の外側でトリミングするようになっており、コメントその
15 ものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによっ
て書き込まれたものであることが把握可能となっている。」との記載が
あり、【図5】では、表示欄105の方が表示欄104よりも向かって
左側に少しはみ出している態様が示されている。しかしながら、本件
発明1の特許請求の範囲においては、「動画の少なくとも一部と重なっ
20 て」(構成要件1E及び1H)と規定されており、「少なくとも一部」
との文言から、全部重なる場合を含むものと理解することができる。
また、上記【0018】において「図5は、表示装置34に表示され
る情報の一例を示す図である。」と記載されていることから、上記の
【0018】及び【図5】に示された表示態様は、動画上に重ねてコ
25 メントを表示させる方法の実施例の一つにすぎないと解するのが相当
である。したがって、「動画の少なくとも一部と重な」るとは、動画表
示として確保された領域よりもコメント表示として確保された領域の
方が大きい場合に限定されるとはいえず、被告らの上記主張は採用す
ることができない。
(イ) 被告システム1において、端末装置の表示装置に「動画の少なくとも
5 一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コ
メント」が表示されるかについて
「前記動画上に、右から左方向に移動するように前記コメント1及び
前記コメント2を前記ユーザ端末のディスプレイに表示」させることは、
原告の主張する構成1eと被告らの主張する構成e’とで共通している
10 から、被告システム1が、これらの構成を有することは当事者間に争い
がないといえる。
そうすると、本件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」に
相当する被告システム1の「コメント1」及び「コメント2」は、動画
上に表示されるから、表示装置に表示される動画の少なくとも一部に重
15 なるように当該動画上に表示されるといえ、かつ、右から左方向に移動
するから、水平方向に移動するといえる。したがって、被告システム1
は、端末装置の表示装置に「動画の少なくとも一部と重なって、水平方
向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメント」(構成要件1E及
び1H)が表示される構成を備えるものと認められる。
20 ウ その他の構成について
前記ア及びイを前提として、被告システム1の構成を検討すると、証拠
(甲5、6)及び弁論の全趣旨によれば、被告システム1は、原告が主張
する前記第3の2(原告の主張)(1)の構成1aないし1iを有するものと
認められる。
25 そうすると、前記第3の2(原告の主張)(2)のとおり、被告システム1
は構成要件1Bないし1F及び1Hをいずれも充足するものと認められる。
(2) 被告システム2及び3の構成要件1Aないし1F及び1Hの充足性につい

ア 「サーバ」及び「サーバから送信された動画」(構成要件1Aないし1F
及び1H)について
5 (ア) 「サーバ」及び「サーバから送信された動画」の意義
a 特許請求の範囲の記載について
構成要件1Aには、「サーバと、これとネットワークを介して接続さ
れた複数の端末装置と、を備えるコメント配信システムであって、」と
規定していることから、本件発明1においては、「コメント配信システ
10 ム」が「サーバ」と「これとネットワークを介して接続された複数の
端末装置」によって構成されるものと理解できる。
この「サーバ」について、構成要件1Bは、「前記サーバは、前記サ
ーバから送信された動画を視聴中のユーザから付与された前記動画に
対する第1コメント及び第2コメントを受信し、」と規定しており、構
15 成要件1Cは、「前記端末装置に、前記動画と、コメント情報とを送信
し、」と規定している。これらの記載から、本件発明1の「サーバ」
(構成要件1A等)は、動画を視聴中のユーザからの「第1コメント
及び第2コメント」を受信する機能を有するとともに(構成要件1B)、
端末装置に「動画」及び「コメント情報」を送信する機能(構成要件
20 1C)を有するものと理解でき、また「サーバから送信された動画」
(構成要件1B)とは、「サーバ」から「端末装置」に送信された動画
を指すものと理解できる。
他方で、本件発明1の特許請求の範囲の記載からは、上記の機能に
ついて、1つの「サーバ」で実現するのか、複数の「サーバ」で実現
25 するのかについては、明らかではなく、同特許請求の範囲には、「サー
バ」を管理運営する主体を特定するような記載もない。
b 本件明細書の記載について
本件明細書には、「本発明は、動画データを配信する動画配信サーバ
と、動画に対するコメントを配信するコメント配信サーバと、複数の
端末装置と、がネットワークを介して接続されたコメント配信システ
5 ムであって」【0006】
( )等の「動画データを配信する動画配信サー
バ」と「動画に対するコメントを配信するコメント配信サーバ」とを
区別した記載がある一方、「なお、上述した実施形態において、動画配
信サーバ1とコメント配信サーバ2とが別のサーバである場合につい
て説明したが、同一のサーバで、動画配信サーバ1とコメント配信サ
10 ーバ2との機能を実現するようにしてもよい。 (
」 【0043】)との記
載がある。これらの記載から、本件発明1の「サーバ」については、
「動画データを配信する動画配信サーバ」の機能と「動画に対するコ
メントを配信するコメント配信サーバ」の機能を有するサーバを備え
る必要があるが、別々のサーバでそれらの機能をそれぞれ実現しても
15 よく、また、同一のサーバでそれらの両方の機能を実現してもよいと
理解できる。
他方で、本件明細書においても、「サーバ」を管理運営する主体を特
定するような記載はない。
c 前記bの本件明細書の記載に照らし、前記aの特許請求の範囲の記
20 載を解釈すれば、本件発明1における「サーバ」(構成要件1A等)と
は、視聴中のユーザからのコメントを受信する機能を有するとともに
(構成要件1B)、端末装置に「動画」及び「コメント情報」を送信す
る機能(構成要件1C)を有するものであり、このような機能につい
ては、動画データを送信する「動画配信サーバ」とコメント情報を送
25 受信する「コメント配信サーバ」を設けるなどして、これらの別々の
サーバによって実現しても、同一のサーバによって実現してもよいと
解される。
また、同様に「サーバから送信された動画」(構成要件1B)とは、
上記のような「サーバ」から「端末装置」に送信された動画を指すも
のと解され、「前記動画」(構成要件1Bないし1E、1H)及び「前
5 記1の動画」(構成要件1F)も同様である。
d 被告らは、本件発明1の動画を配信する「サーバ」の運営主体がコ
メント配信システムの運営主体と同一であり、「前記サーバから送信さ
れた動画」である必要がある旨を主張する。
しかしながら、前記a及びbのとおり、本件発明1の特許請求の範
10 囲の記載にも、本件明細書にも、「サーバ」を管理運営する主体を特定
するような記載はない。そうすると、本件発明1の「サーバ」につい
て、その運営主体がコメント配信システムの運営主体と同一である場
合に限定して解釈することはできず、前記cのように本件発明1の
「サーバ」を複数のサーバによって実現する場合に、それらの各サー
15 バの運営主体が同一であることを要すると解釈することもできないと
いうべきである。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(イ) 被告システム2及び3が本件発明1の「サーバ」及び「サーバから送
信された動画」に係る構成を備えるかについて
20 a 証拠(甲5、6)及び弁論の全趣旨によれば、①被告サービス2及
び3においては、いずれも他の動画配信サービスで配信されている動
画を被告サービス2及び3に登録することができること、②ユーザ端
末のブラウザを用いて被告サービス2又は3のウェブページを開き、
上記登録された動画を選択して当該動画の再生ページを開くと、ブラ
25 ウザからのリクエストに応じて、ユーザ端末に当該動画のファイルと
当該動画についてのコメントのファイルとが配信され、再生ページ上
の動画を表示する領域に上記動画が再生され、上記動画上に上記コメ
ントのファイルに係るコメントが移動しながら表示されること、③そ
の際、上記動画のファイルは上記他の動画配信サービスのサーバから
ユーザ端末に送信されること、上記動画に対するコメントの受信とコ
5 メントファイルのユーザ端末への送信は被告FC2が管理するサーバ
から配信されることが認められる。
b 前記(ア)cのとおり、本件発明1における「サーバ」とは、視聴中の
ユーザからのコメントを受信する機能を有するとともに、端末装置に
「動画」及び「コメント情報」を送信する機能を有するものであり、
10 このような機能については、動画データを送信する「動画配信サーバ」
とコメント情報を送受信する「コメント配信サーバ」を設けるなどし
て、これらの別々のサーバによって実現しても、同一のサーバによっ
て実現してもよいものと解され、また、前記(ア)dのとおり、このよう
な「サーバ」の運営主体はコメント配信システムの運営主体と同一で
15 あるものに限定されない。
したがって、被告システム2及び3における前記aの③のサーバは、
他の動画配信サービスのサーバ及び被告FC2が管理するサーバのい
ずれも、本件発明1における「サーバ」(構成要件1A、1B及び1H)
に該当するものと認められ、③の他の動画配信サービスのサーバから
20 ユーザ端末に送信される動画のファイルは「サーバから送信された動
画」(構成要件1B) 「前記動画」
、 (構成要件1Bないし1E、1H)
及び「前記1の動画」(構成要件1F)に該当するものと認められる。
イ 「動画を視聴中のユーザから付与された」(構成要件1B)「第1コメン

ト」及び「第2コメント」(構成要件1B、1Dないし1F及び1H)並び
25 に「コメント情報」(構成要件1Cないし1E及び1H)について
(ア) 「動画を視聴中のユーザから付与された」「第1コメント」及び「第

2コメント」並びに「コメント情報」の意義
前記(1)ア(ア)のとおり、本件発明1における「前記サーバから送信さ
れた動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第

2コメント」(構成要件1B等)とは、本件発明1のコメント配信システ
5 ムにおいて、サーバから送信された動画を表示中の端末装置において入
力された場合に、ネットワークを介して接続されたサーバに送信される
ことになる、当該動画に対する2つのコメントであると解され、また、
「コメント情報」(構成要件1C等)とは、これら2つのコメントと、そ
れぞれが付与された時点に対応する、前記動画の最初を基準とした動画
10 の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含む情報を
指すと解される。
(イ) 被告システム2及び3におけるサーバが「第1コメント」及び「第2
コメント」を受信し、「コメント情報」を送信するかについて
a 「第1コメント」及び「第2コメント」について
15 (a) 前記ア(イ)aのとおり、被告サービス2及び3においては、他の
動画配信サービスで配信されている動画のファイルが、上記他の動
画配信サービスのサーバからユーザ端末に送信され、ユーザ端末上
で動画が再生されること、ユーザ端末から上記動画に対するコメン
トが被告FC2が管理するサーバに送信されることが認められる。
20 また、証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば、被告サービス2及
び3においては、上記の動画の再生画面にコメント入力欄が設けら
れていると認められ、さらに、構成1b及び構成b’’に係る双方の
主張も考慮すれば、被告サービス2及び3においては、ユーザ端末
で動画を再生中のユーザが当該動画に対するコメントを付すことが
25 できるものと認められる。
そして、前記アのとおり、本件発明1は動画を配信するサーバと
コメントを配信するサーバとをクレーム上区別しておらず、被告シ
ステム2及び3における前記他の動画配信サービスのサーバも被告
FC2が管理するサーバも、いずれも本件発明1における「サーバ」
に該当するものと認められるから、被告システム2及び3が「前記
5 サーバは、前記サーバから配信された動画を再生閲覧中のユーザか
ら付与された前記動画に対するコメント1及びコメント2を受信し、」
(構成1b)との構成を有すると認定するのが相当である。
したがって、上記「コメント1」及び「コメント2」は、それぞ
れ本件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」に該当し、
10 被告システム2及び3におけるサーバは「第1コメント」及び「第
2コメント」を受信する構成を備えると認められる。
(b) 被告らは、被告システム2及び3の構成について、構成b’’の
とおり、動画を閲覧中ではない前記ユーザ端末を利用中のユーザも
前記動画に対するコメントを付すことができることを認定すべきで
15 あり、そのような認定を前提とすれば、被告システム2及び3にお
けるサーバは、本件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」
を受信する構成を備えないと主張する。
しかしながら、前記(1)ア(ア)のとおり、本件発明1における「第
1コメント」及び「第2コメント」並びに「コメント情報」に該当
20 するために、「前記サーバから送信された動画を視聴中のユーザ」の
みが動画に対するコメントを付すことを要するものとは解されない
から、被告らの上記主張は採用することができない。
b 「コメント情報」について
ユーザ端末に「コメントファイル」が送信されることは、原告の主
25 張する構成1cと被告らの主張する構成c’’とで共通しており、「コ
メントファイル」が「前記コメント1及びコメント2と、前記コメン
ト1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対応する、前
記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間と、を含」むこ
とは、原告の主張する構成1dと被告らの主張する構成d’’1とで共
通しているから、被告システム2及び3がこれらの構成を有すること
5 は当事者間に争いがないといえる。
前記aのとおり「コメント1」及び「コメント2」は、それぞれ本
件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」に該当するから、
上記「コメントファイル」は、本件発明1の「コメント情報」に該当
し、被告システム2及び3におけるサーバは、当該「コメント情報」
10 を送信する構成を備えるものと認められる。
ウ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
ント及び前記第2コメント」(構成要件1E及び1H)について
(ア) 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コ
メント及び前記第2コメント」の意義
15 前記(1)イ(ア)のとおり、構成要件1E及び1Hにおいて、「動画の少な
くとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記
第2コメント」が端末装置の表示装置に表示されるというのは、表示装
置に表示される動画の少なくとも一部に重なるように第1コメント及び
第2コメントが当該動画上に表示されること及びこれらのコメントが水
20 平方向に移動することをいうものと解される。
(イ) 被告システム2及び3において端末装置の表示装置に「動画の少なく
とも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第
2コメント」が表示されるかについて
「前記動画上に、右から左方向に移動するように前記コメント1及び
25 前記コメント2を前記ユーザ端末のディスプレイに表示」させることは、
原告の主張する構成1eと被告らの主張する構成e’’とで共通している
から、被告システム2及び3がこれらの構成を有することは当事者間に
争いがないといえる。
そうすると、被告システム2及び3は、被告システム1と同様に、端
末装置の表示装置に「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移
5 動する前記第1コメント及び前記第2コメント」(構成要件1E及び1H)
が表示される構成を備えると認められる。
エ その他の構成について
前記アないしウを前提として、被告システム2及び3の構成を検討する
と、証拠(甲5、6)及び弁論の全趣旨によれば、被告システム2及び3
10 は、被告システム1と同様に、原告が主張する前記第3の2(原告の主張)
(1)の構成1aないし1iを有するものと認められる。
そうすると、前記第3の2(原告の主張)(2)のとおり、被告システム2
及び3は構成要件1Aないし1F及び1Hをいずれも充足するものと認め
られる。
15 (3) 小括
前記(1)のとおり、被告システム1は、構成要件1Bないし1F及び1Hを
充足し、前記前提事実(6)アのとおり、被告システム1が構成要件1A、1G
及び1Iを充足することは、当事者間に争いがない。
そして、前記(2)のとおり、被告システム2及び3は、構成要件1Aないし
20 1F及び1Hを充足し、前記前提事実(6)イのとおり、被告システム2及び3
が構成要件1G及び1Iを充足することは、当事者間に争いがない。
したがって、被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するものと認め
られる。
4 争点3(被告システムが本件発明2の技術的範囲に属するか)について
25 (1) 被告システム1の構成要件2Bないし2F及び2Hの充足性について
ア 「動画を視聴中のユーザから付与された」(構成要件2B)「第1コメン

ト」及び「第2コメント」(構成要件2B、2Dないし2F及び2H)並び
に「コメント情報」(構成要件2C1、2D、2E及び2H)について
(ア) 「動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」及び「第

2コメント」並びに「コメント情報」の意義
5 a 特許請求の範囲の記載について
構成要件2Aは、「動画配信サーバ及びコメント配信サーバと、これ
らとネットワークを介して接続された複数の端末装置と、を備えるコ
メント配信システムであって、」と規定し、構成要件2Bは、「前記コ
メント配信サーバは、前記動画配信サーバから送信された動画を視聴
10 中のユーザから付与された前記動画に対する第1コメント及び第2コ
メントを受信し、」と規定している。これらの記載からは、本件発明2
における「第1コメント」及び「第2コメント」は「前記動画配信サ
ーバから送信された動画を視聴中のユーザから付与され」 「前記コメ

ント配信サーバ」が受信するものであると理解できる。
15 また、構成要件2Dの記載から、上記の「第1コメント」及び「第
2コメント」は、「前記第1コメント及び前記第2コメントのそれぞれ
が付与された時点に対応する、前記動画の最初を基準とした動画の経
過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」とともに、「前記
コメント情報」に含まれると理解できる。
20 他方で、本件発明2の特許請求の範囲の記載から、「動画を視聴中の
ユーザ」以外の者が「第1コメント」及び「第2コメント」を付すこ
とができるか否かは明らかでない。
b 本件明細書の記載
前記aの記載に対応する本件明細書の記載は、前記3(1)ア(ア)bの
25 とおりであり、その記載からは、動画を表示中の端末装置においてユ
ーザが動画に対するコメントを入力した場合には、当該端末装置が、
コメント配信サーバに対し、コメント内容が入力された時点の動画再
生時間であるコメント付与時間とともにコメント内容を送信し、コメ
ント配信サーバのコメント情報記憶部が、当該コメント付与時間と当
該コメント内容とを対応づけてコメント情報として記憶するものと理
5 解できる。
c 前記bの本件明細書の記載に照らし、前記aの特許請求の範囲の記
載を解釈すれば、構成要件2Bの「前記動画配信サーバから送信され
た動画を視聴中のユーザから付与された前記動画に対する第1コメン
ト及び第2コメント」とは、本件発明2のコメント配信システムにお
10 いて、動画配信サーバから送信された動画を表示中の端末装置におい
て入力された場合に、ネットワークを介して接続されたコメント配信
サーバに送信されることになる、当該動画に対する2つのコメントで
あると解され、構成要件2Dないし2F及び2Hの「前記第1コメン
ト」及び「前記第2コメント」も同様である。
15 また、構成要件2C1の「コメント情報」とは、上記の2つのコメ
ントと、それぞれが付与された時点に対応する、前記動画の最初を基
準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間
とを含む情報を指すと解され、構成要件2D、2E及び2Hの「前記
コメント情報」も同様である。
20 d 被告らは、本件発明2についても、「動画を視聴中のユーザ」のみが
「コメントを付す」ことを要件としていると解すべきであり、「動画を
視聴中のユーザ」に加えて、それ以外のユーザがコメントを付与でき
るコメント配信システムは、コメント配信サーバが「第1コメント及
び第2コメント」を受信するものではなく、また、端末装置に「第1
25 コメント及び第2コメント」を含む「コメント情報」を送信するもの
でもないから、本件発明2の構成要件2B、2C1、2Dないし2F
及び2Hを充足しないと主張する。
しかしながら、前記3(1)ア(ア)の本件発明1における検討と同様に、
本件発明2における「第1コメント」及び「第2コメント」並びに
「コメント情報」に該当するためには、前記cに該当するものであれ
5 ば足り、それ以上に「前記動画配信サーバから送信された動画を視聴
中のユーザ」のみが動画に対するコメントを付すことを要するものと
は解されない。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(イ) 被告システム1におけるコメント配信サーバが、「第1コメント」及
10 び「第2コメント」を受信し、「コメント情報」を送信するかについて
a 「第1コメント」及び「第2コメント」について
(a) 証拠(甲6)及び弁論の全趣旨(原告の構成2bの主張及び被告
らの構成b’の主張)によれば、被告システム1のコメント配信サ
ーバは、「動画配信用サーバから配信された動画を再生閲覧中のユー
15 ザから付与された前記動画に対するコメント1及びコメント2を受
信」するものと認められる。
したがって、被告システム1の「コメント1」及び「コメント2」
は、それぞれ、本件発明2の「第1コメント」及び「第2コメント」
に該当し、被告システム1は、コメント配信用サーバが「第1コメ
20 ント」及び「第2コメント」を受信する構成を備えるものと認めら
れる。
(b) 被告らは、被告システム1の構成について、構成b’のとおり、
動画を閲覧中ではないユーザも動画に対するコメントを付すことが
できることを認定すべであり、そのような認定を前提とすれば、被
25 告システム1は、コメント配信サーバが本件発明2の「第1コメン
ト」及び「第2コメント」を受信する構成を備えないと主張する。
しかしながら、前記(ア)のとおり、本件発明2における「第1コメ
ント」及び「第2コメント」並びに「コメント情報」に該当するた
めに、「前記動画配信サーバから送信された動画を視聴中のユーザ」
のみが動画に対するコメントを付すことを要するものとは解されな
5 いから、被告らの上記主張は採用することができない。
b 「コメント情報」について
ユーザ端末に「コメントファイル」が送信されることは、原告の主
張する構成2c1と被告らの主張する構成c’1とで共通しており、
「コメントファイル」が「前記コメント1及びコメント2と、前記コ
10 メント1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対応する、
前記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間と、を含」む
ことは、原告の主張する構成2dと被告らの主張する構成d’1とで
共通しているから、被告システム1がこれらの構成を有することは当
事者間に争いがないといえる。
15 前記aのとおり「コメント1」及び「コメント2」は、それぞれ本
件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」に該当するから、
上記「コメントファイル」は、本件発明2の「コメント情報」に該当
し、被告システム1におけるコメント配信用サーバは、当該「コメン
ト情報」を送信する構成を備えるものと認められる。
20 イ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
ント及び前記第2コメント」(構成要件2E及び2H)について
(ア) 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コ
メント及び前記第2コメント」の意義
a 特許請求の範囲の記載について
25 本件発明2の特許請求の範囲には、「前記動画と、…前記動画の少な
くとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前
記第2コメント、を前記端末装置の表示装置に表示させる」(構成要件
2E及び2H)との記載があり、これらの記載から、動画と第1コメ
ント及び第2コメントとが端末装置の表示装置に表示され、その際、
第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも一部と重なった状
5 態で水平方向に移動することが規定されていると理解できるが、動画
とコメントとの重なりの態様については、それ以上に明らかではなく、
動画及びコメントが表示される各「領域」ないし「表示欄」について
の記載もない。
b 本件明細書の記載
10 前記aの記載に対応する本件明細書の記載は、前記3(1)イ(ア)bの
とおりであり、その記載からは、読み出したコメントを動画とともに
表示する方法として、動画とコメントを表示装置に表示する際に、動
画を表示する領域(表示欄)と、コメントを表示する領域(表示欄)
を重ねて表示することで、動画上にコメントを重ねて表示できること
15 が理解できる。
c 前記bの本件明細書の記載に照らし、前記aの特許請求の範囲の記
載を解釈すれば、前記3(1)イ(ア)で本件発明1について検討したとこ
ろと同様に、構成要件2E及び2Hにおいて、「動画の少なくとも一部
と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメ
20 ント」が端末装置の表示装置に表示されるというのは、表示装置に表
示される動画の少なくとも一部に重なるように第1コメント及び第2
コメントが当該動画上に表示されること及びこれらのコメントが水平
方向に移動することをいうものと解され、本件明細書の【0018】
の記載及び【図5】を考慮しても、「動画の少なくとも一部と重な」る
25 とは、動画表示として確保された領域よりもコメント表示として確保
された領域の方が大きい場合に限定されるとはいえない。
(イ) 被告システム1において、端末装置の表示装置に「動画の少なくとも
一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第2コ
メント」が表示されるかについて
「前記動画上に、右から左方向に移動するように前記コメント1及び
5 前記コメント2を前記ユーザ端末のディスプレイに表示」させることは、
原告の主張する構成2eと被告らの主張する構成e’とで共通している
から、被告システム1が、これらの構成を有することは当事者間に争い
がないといえる。
そうすると、本件発明2の「第1コメント」及び「第2コメント」に
10 相当する被告システム1の「コメント1」及び「コメント2」は、動画
上に表示されるから、表示装置に表示される動画の少なくとも一部に重
なるように当該動画上に表示されるといえ、かつ、右から左方向に移動
するから、水平方向に移動するといえる。したがって、被告システム1
は、端末装置の表示装置に「動画の少なくとも一部と重なって、水平方
15 向に移動する前記第1コメント及び前記第2コメント」(構成要件2E及
び2H)が表示される構成を備えるものと認められる。
ウ その他の構成について
前記ア及びイを前提として、被告システム1の構成を検討すると、証拠
(甲5、6)及び弁論の全趣旨によれば、被告システム1は、原告が主張
20 する前記第3の3(原告の主張)(1)の構成2aないし2iを有するものと
認められる。
そうすると、前記3(1)の本件発明1についての検討と同様の理由で、被
告システム1は構成要件2Bないし2F及び2Hをいずれも充足するもの
と認められる。
25 (2) 被告システム2及び3の構成要件2Aないし2F及び2Hの充足性につい

ア 「動画配信サーバ」及び「動画配信サーバから送信された動画」(構成要
件2A、2B、2C2、2Dないし2F及び2H)について
(ア) 「動画配信サーバ」及び「動画配信サーバから送信された動画」の意

5 a 特許請求の範囲の記載について
構成要件2Bには「前記動画配信サーバから送信された動画」との
記載があり、構成要件2C2は「前記動画配信サーバは、前記端末装
置に前記動画を送信し、」と規定している。これらの記載から、本件発
明2の「動画配信サーバ」は、端末装置に「動画」を送信する機能
10 (構成要件2C2)を有するサーバと理解でき、また「動画配信サー
バから送信された動画」(構成要件2B)とは、「動画配信サーバ」か
ら「端末装置」に送信された動画を指すものと理解できる。
他方、本件発明2の特許請求の範囲には、「動画配信サーバ」を管理
運営する主体を特定するような記載はない。
15 b 本件明細書の記載
前記aの記載に対応する本件明細書の記載は、前記3(2)ア(ア)bの
とおりであり、その記載から、本件発明2においては、「動画データを
配信する」機能を有する「動画配信サーバ」を備える必要があると理
解できる。
20 c 前記bの本件明細書の記載に照らし、前記aの特許請求の範囲の記
載を解釈すれば、本件発明2の「動画配信サーバ」は、端末装置に
「動画」を送信する機能を有するサーバを指すものと解され、また、
「動画配信サーバから送信された動画」(構成要件2B)とは、「動画
配信サーバ」から「端末装置」に送信された動画を指すものと解され、
25 「前記動画」(構成要件2B、2C2、2D、2E及び2H)及び構成
要件2Fの「前記1の動画」も同様である。
被告らは、本件発明2の「動画配信サーバ」についてその運営主体
がコメント配信システムの運営主体と同一である必要がある旨を主張
するが、本件発明2の特許請求の範囲の記載にも、本件明細書にもそ
のような限定をする旨の記載はないから、被告らの上記主張は採用で
5 きない。
(イ) 被告システム2及び3が本件発明2の「動画配信サーバ」及び「動画
配信サーバから送信された動画」に係る構成を備えるかについて
a 前記3(2)ア(イ)のとおり、被告サービス2及び3においては、他の
動画配信サービスで配信されている動画のファイルが、当該他の動画
10 配信サービスのサーバからユーザ端末に送信されることが認められる。
b 前記(ア)cのとおり、本件発明2における「動画配信サーバ」は、端
末装置に「動画」を送信する機能を有するサーバであり、前記(ア)cの
とおり、このような「動画配信サーバ」の運営主体はコメント配信シ
ステムの運営主体と同一であるものに限定されない。
15 したがって、被告システム2及び3における前記aの他の動画配信
サービスのサーバは、本件発明2における「動画配信サーバ」(構成要
件2A、2B、2C2及び2H)に該当するものと認められ、当該他
の動画配信サービスのサーバからユーザ端末に送信される動画のファ
イルは「動画配信サーバから送信された動画」(構成要件2B)「前記

20 動画」(構成要件2B、2C2、2D、2E及び2H)及び「前記1の
動画」(構成要件2F)に該当するものと認められる。
イ 「動画を視聴中のユーザから付与された」(構成要件2B)「第1コメン

ト」及び「第2コメント」(構成要件2B、2Dないし2F及び2H)並び
に「コメント情報」(構成要件2C1、2D、2E及び2H)について
25 (ア) 「動画を視聴中のユーザから付与された」「第1コメント」及び「第

2コメント」並びに「コメント情報」の意義
前記(1)ア(ア)のとおり、本件発明2における「前記動画配信サーバか
ら送信された動画を視聴中のユーザから付与された」 「第1コメント」

及び「第2コメント」
(構成要件2B等)とは、本件発明2のコメント配
信システムにおいて、動画配信サーバから送信された動画を表示中の端
5 末装置において入力された場合に、ネットワークを介して接続されたコ
メント配信サーバに送信されることになる、当該動画に対する2つのコ
メントであると解され、また、「コメント情報」(構成要件2C1等)と
は、上記の2つのコメントと、それぞれが付与された時点に対応する、
前記動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間である
10 コメント付与時間とを含む情報を指すと解される。
(イ) 被告システム2及び3におけるコメント配信サーバが「第1コメント」
及び「第2コメント」を受信し、「コメント情報」を送信するかについて
a 「第1コメント」及び「第2コメント」について
(a) 前記3(2)イ(イ)aのとおり、被告サービス2及び3においては、
15 他の動画配信サービスで配信されている動画のファイルが、上記他
の動画配信サービスのサーバからユーザ端末に送信され、ユーザ端
末上で動画が再生されること、ユーザ端末で動画を再生中のユーザ
が、当該動画に対するコメントを付すことができ、ユーザ端末から
上記動画に対するコメントが被告FC2が管理するサーバに送信さ
20 れることが認められる。
そうすると、被告システム2及び3は、「前記コメント配信用サー
バは、前記動画配信用サーバから配信された動画を再生閲覧中のユ
ーザから付与された前記動画に対するコメント1及びコメント2を
受信し、 (構成2b)との構成を有すると認定するのが相当である。

25 なお、前記アで検討したところからすれば、上記の「他の動画配信
サービスのサーバ」は構成2bの「動画配信用サーバ」に相当し、
上記の被告FC2が管理するサーバは構成2bの「コメント配信用
サーバ」に相当するものと認められる。
したがって、上記の構成2bの「コメント1」及び「コメント2」
は、それぞれ本件発明2の「第1コメント」及び「第2コメント」
5 に該当し、被告システム2及び3におけるコメント配信用サーバは
「第1コメント」及び「第2コメント」を受信する構成を備えると
認められる。
(b) 被告らは、被告システム2及び3の構成について、構成b’’の
とおり、動画を閲覧中ではない前記ユーザ端末を利用中のユーザも
10 前記動画に対するコメントを付すことができることを認定すべきで
あり、そのような認定を前提とすれば、被告システム2及び3にお
けるコメント配信用サーバは、本件発明2の「第1コメント」及び
「第2コメント」を受信する構成を備えないと主張する。
しかしながら、前記(1)ア(ア)のとおり、本件発明2における「第
15 1コメント」及び「第2コメント」並びに「コメント情報」に該当
するために、「前記動画配信サーバから送信された動画を視聴中のユ
ーザ」のみが動画に対するコメントを付すことを要するものとは解
されないから、被告らの上記主張は採用することができない。
b 「コメント情報」について
20 ユーザ端末に「コメントファイル」が送信されることは、原告の主
張する構成2c1と被告らの主張する構成c’’1とで共通しており、
「コメントファイル」が「前記コメント1及びコメント2と、前記コ
メント1及び前記コメント2のそれぞれが付与された時点に対応する、
前記動画の最初からの経過時間を表すコメント付与時間と、を含」む
25 ことは、原告の主張する構成2dと被告らの主張する構成d’’1とで
共通しているから、被告システム2及び3がこれらの構成を有するこ
とは当事者間に争いがないといえる。
前記aのとおり「コメント1」及び「コメント2」は、それぞれ本
件発明1の「第1コメント」及び「第2コメント」に該当するから、
上記「コメントファイル」は、本件発明2の「コメント情報」に該当
5 し、被告システム2及び3におけるコメント配信用サーバは、当該
「コメント情報」を送信する構成を備えるものと認められる。
ウ 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメ
ント及び前記第2コメント」(構成要件2E及び2H)について
(ア) 「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コ
10 メント及び前記第2コメント」の意義
前記(1)イ(ア)のとおり、構成要件2E及び2Hにおいて、「動画の少な
くとも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記
第2コメント」が端末装置の表示装置に表示されるというのは、表示装
置に表示される動画の少なくとも一部に重なるように第1コメント及び
15 第2コメントが当該動画上に表示されること及びこれらのコメントが水
平方向に移動することをいうものと解される。
(イ) 被告システム2及び3において端末装置の表示装置に「動画の少なく
とも一部と重なって、水平方向に移動する前記第1コメント及び前記第
2コメント」が表示されるかについて
20 「前記動画上に、右から左方向に移動するように前記コメント1及び
前記コメント2を前記ユーザ端末のディスプレイに表示」させることは、
原告の主張する構成2eと被告らの主張する構成e’’とで共通している
から、被告システム2及び3がこれらの構成を有することは当事者間に
争いがないといえる。
25 そうすると、被告システム2及び3は、被告システム1と同様に、端
末装置の表示装置に「動画の少なくとも一部と重なって、水平方向に移
動する前記第1コメント及び前記第2コメント」(構成要件2E及び2H)
が表示される構成を備えると認められる。
エ その他の構成について
前記アないしウを前提として、被告システム2及び3の構成を検討する
5 と、証拠(甲5、6)及び弁論の全趣旨によれば、被告システム2及び3
は、被告システム1と同様に、原告が主張する前記第3の3(原告の主張)
(1)の構成2aないし2iを有するものと認められる。
そうすると、前記3(2)の本件発明1についての検討と同様の理由で、被
告システム2及び3は構成要件2Aないし2F及び2Hをいずれも充足す
10 るものと認められる。
(3) 小括
前記(1)のとおり、被告システム1は、構成要件2Bないし2F及び2Hを
充足し、前記前提事実(6)アのとおり、被告システム1が構成要件2A、2G
及び2Iを充足することは、当事者間に争いがない。
15 そして、前記(2)のとおり、被告システム2及び3は、構成要件2Aないし
2F及び2Hを充足し、前記前提事実(6)イのとおり、被告システム2及び3
が構成要件2G及び2Iを充足することは、当事者間に争いがない。
したがって、被告システムは本件発明2の技術的範囲に属するものと認め
られる。
20 5 争点4(被告らによる被告システムの「生産」の有無)について
(1) 認定事実
前記第2の2の前提事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、
被告サービスの運営及び被告システムの動作等に関して、以下の事実が認め
られる。
25 ア 被告FC2による被告サービスの運営状況
(ア) 被告サービス1
a 被告FC2は、本件特許権の設定登録がされた令和元年5月17日
以降の時期において、業として被告サービス1を運営している。
b 被告サービス1にはFLASH版とHTML5版が存在していたが、
被告FC2は、被告サービス1について、令和2年12月28日をも
5 ってFLASH版の動画再生プレイヤーの公開を停止し、その後はH
TML5版のみを提供している(甲5、6、乙67、弁論の全趣旨)。
c 被告サービス1は、日本語のほか、英語、中国語(簡体字)、中国語
(繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル
語、ロシア語、インドネシア語及びベトナム語の12言語により表示、
10 入力等されるウェブサイトが用意されている。また、被告サービス1
は、日本からのアクセスを含め、原則として全世界からのアクセスが
可能であり、特定の国からのアクセスを拒否する設定を行うことは可
能であるが、日本からのアクセスに限る等のアクセス制限は行われて
いない(甲6、16、弁論の全趣旨)。
15 (イ) 被告サービス2及び3
a 被告FC2は、少なくとも令和元年5月17日から令和2年9月2
4日までの間、業として、被告サービス2及び3を運営していたが、
同月25日、被告サービス2及び3に係る事業をShwe Nand
ar Co., Ltd.に譲渡した(乙65、66。以下、被告サー
20 ビス2及び3についての被告FC2の行為については、同日より前の
ものをいう。。

b 被告サービス2及び3には、いずれもFLASH版とHTML5版
が存在していた(甲5、6)。
c 被告サービス2には、日本語、英語、中国語(繁体字)及び韓国語
25 の4言語により表示、入力等されるウェブサイトが用意されており、
日本からのアクセスが可能であったが、日本からのアクセスに限る等
のアクセス制限は行われていなかった(甲6、弁論の全趣旨)。
d 被告サービス3は日本語により表示、入力等されるウェブサイトの
みであり、日本からのアクセスが可能であったが、日本からのアクセ
スに限る等のアクセス制限は行われていなかった(甲6、弁論の全趣
5 旨)。
イ 被告サービスにおけるサーバの構成及び所在地
(ア) 被告サービス1
被告FC2は、被告サービス1の提供に当たり、ウェブサーバ、コメ
ント配信用サーバ及び動画配信用サーバを設置及び管理しており、これ
10 らのサーバは、令和元年5月17日以降の時期において、いずれも米国
に存在している(乙69ないし75、弁論の全趣旨)。
(イ) 被告サービス2及び3
被告FC2は、被告サービス2及び3の提供に当たり、ウェブサーバ
及びコメント配信用サーバを設置及び管理していたものであり、これら
15 のサーバは、令和元年5月17日から令和2年9月25日までの期間、
いずれも米国に存在していた(乙69ないし75、弁論の全趣旨)。
前記3(3)イ(ア)aのとおり、被告サービス2及び3においては、いず
れも他の動画配信サービスで配信されている動画を被告サービス2及び
3に登録することができ、登録した動画を被告サービス2又は3の再生
20 ページで再生する際には、上記動画のファイルは上記他の動画配信サー
ビスのサーバからユーザ端末に送信される。このサーバは、被告サービ
ス2及び3以外の動画配信サービスが設置及び管理するものであるため、
日本国外にある場合もあれば日本国内に存在する場合もあった(弁論の
全趣旨)。
25 ウ 被告サービス1においてコメント付き動画を日本国内のユーザ端末に表
示させる手順
被告サービス1について、コメント付き動画を日本国内のユーザ端末に
表示させる手順をFLASH版とHTML5版を区別して整理すると、次
のとおりとなる(甲5、6、弁論の全趣旨)。
(ア) 被告サービス1のFLASH版
5 ① ユーザが、事前にAdobe Flash Playerをブラウ
ザのプラグイン(拡張機能)としてユーザ端末にインストールしてお
く。
②-1 ユーザが、ユーザ端末において、所望の動画を表示させるため
の被告サービス1のウェブページをブラウザに表示させる。
10 ②-2 ②-1により、ウェブページのデータ及びSWFファイルが被
告FC2のウェブサーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュ
にダウンロードされる。
FLASHが、ブラウザのキャッシュにあるSWFファイルを
読み込む。
15 ③ ユーザが、ユーザ端末において、ブラウザ上に表示されたウェブペ
ージにおける動画の再生ボタンを押す。
④-1 ②-2でFLASHが読み込んだSWFファイルには、動画及
びコメントに関する情報の取得をリクエストするようにブラウザ
に要求する命令が格納されており、FLASHが、その命令に従
20 って、ブラウザに対し動画ファイル及びコメントファイルを取得
するよう指示し、ブラウザが、その指示に従って、被告FC2の
動画配信用サーバに対し動画ファイルのリクエストを行い、被告
FC2のコメント配信用サーバに対しコメントファイルのリクエ
ストを行う。
25 上記リクエストの際、特定の動画を再生するための具体的な動
画ファイル及びコメントファイルの指定は、ブラウザがSWFフ
ァイルの情報に基づき被告FC2のウェブサーバにアクセスして
ウェブサーバからURLを取得することによって行われている。
④-2 ④-1のリクエストに応じて、被告FC2の動画配信用サーバ
が動画ファイルを、被告FC2のコメント配信用サーバがコメン
5 トファイルを、ユーザ端末に配信する。
⑤ ユーザ端末が、④-2の動画ファイル及びコメントファイルを受信
する。
これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、ブラウザ上にコメント付き動画を表示させる。
10 その表示の際に2つのコメントが重複するか否かを判定する計算式
及び重複すると判定された場合の重ならない表示位置の指定は、SW
Fファイルによって規定される条件に基づいて行われている。
(イ) 被告サービス1のHTML5版
①-1 ユーザが、ユーザ端末において、所望の動画を表示させるため
15 の被告サービス1のウェブページをブラウザに表示させる。
①-2 ①-1により、ウェブページのデータ及びJSファイルが被告
FC2のウェブサーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュに
ダウンロードされる。
②-1 ①-2でダウンロードされたJSファイルには、動画及びコメ
20 ントに関する情報の取得をリクエストするようにブラウザに要求
する命令が格納されており、ブラウザが、その命令に従って、被
告FC2の動画配信用サーバに対し動画ファイルのリクエストを
行い、被告FC2のコメント配信用サーバに対しコメントファイ
ルのリクエストを行う。
25 上記リクエストの際、特定の動画を再生するための具体的な動
画ファイル及びコメントファイルの指定は、ブラウザがJSファ
イルの情報に基づき被告FC2のウェブサーバにアクセスしてウ
ェブサーバからURLを取得することによって行われている。
②-2 ②-1のリクエストに応じて、被告FC2の動画配信用サーバ
が動画ファイルを、被告FC2のコメント配信用サーバがコメン
5 トファイルを、ユーザ端末に配信する。
③ ユーザ端末が、②-2の動画ファイル及びコメントファイルを受信
する。
④ ユーザが、ユーザ端末において、表示されたウェブページにおける
動画の再生ボタンを押す。
10 これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、ブラウザ上にコメント付き動画を表示させる。
その表示の際に2つのコメントが重複するか否かを判定する計算式
及び重複すると判定された場合の重ならない表示位置の指定は、JS
ファイルによって規定される条件に基づいて行われている。
15 エ 被告サービス2及び3においてコメント付き動画を日本国内のユーザ端
末に表示させる手順
被告サービス2及び3について、コメント付き動画を日本国内のユーザ
端末に表示させる手順をFLASH版とHTML5版を区別して整理する
と、次のとおりとなる(甲5、6、弁論の全趣旨)。
20 (ア) 被告サービス2及び3のFLASH版
① ユーザが、事前にAdobe Flash Playerをブラウ
ザのプラグイン(拡張機能)としてユーザ端末にインストールしてお
く。
②-1 ユーザが、ユーザ端末において、所望の動画(被告サービス2
25 又は3に登録された他の動画配信サービスの動画)を表示させる
ための被告サービス2又は3のウェブページをブラウザに表示さ
せる。
②-2 ②-1により、ウェブページのデータ及びSWFファイルが被
告FC2のウェブサーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュ
にダウンロードされる。
5 ③-1 SWFファイルには、動画及びコメントに関する情報の取得を
リクエストするようにブラウザに要求する命令が格納されており、
FLASHが、その命令に従って、ブラウザに動画ファイル及び
コメントファイルを取得するよう指示し、ブラウザが、その指示
に従って、被告FC2のコメント配信用サーバに対しコメントフ
10 ァイルのリクエストを行い、登録された動画を配信する他の動画
配信用サーバに対し動画ファイルのリクエストを行う。
上記リクエストの際、特定の動画を再生するための具体的な動
画ファイル及びコメントファイルの指定は、ブラウザがSWFフ
ァイルの情報に基づき被告FC2のウェブサーバにアクセスして
15 ウェブサーバからURLを取得することによって行われている。
③-2 ③-1のリクエストに従って、被告FC2のコメント配信用サ
ーバがコメントファイルを、上記他の動画配信用サーバが動画フ
ァイルを、ユーザ端末に配信する。
④ ユーザ端末が、③-2のコメントファイル及び動画ファイルを受信
20 する。
これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、ブラウザ上にコメント付き動画を表示させる。
その表示の際に2つのコメントが重複するか否かを判定する計算式
及び重複すると判定された場合の重ならない表示位置の指定は、SW
25 Fファイルによって規定される条件に基づいて行われている。
(イ) 被告サービス2及び3のHTML5版
①-1 ユーザが、ユーザ端末において、所望の動画(被告サービス2
又は3に登録された他の動画配信サービスの動画)を表示させる
ための被告サービス2又は3のウェブページをブラウザに表示さ
せる。
5 ①-2 ①-1により、ウェブページのデータ及びJSファイルが被告
FC2のウェブサーバからユーザ端末のブラウザのキャッシュに
ダウンロードされる。
②-1 ①-2でダウンロードされたJSファイルには、動画及びコメ
ントに関する情報の取得をリクエストするようにブラウザに要求
10 する命令が格納されており、ブラウザが、その命令に従って、被
告FC2のコメント配信用サーバに対しコメントファイルのリク
エストを行い、登録された動画を配信する他の動画配信用サーバ
に対し動画ファイルのリクエストを行う。
上記リクエストの際、特定の動画を再生するための具体的な動
15 画ファイル及びコメントファイルの指定は、ブラウザがJSファ
イルの情報に基づき被告FC2のウェブサーバにアクセスしてウ
ェブサーバからURLを取得することによって行われている。
②-2 ②-1のリクエストに応じて、被告FC2のコメント配信用サ
ーバがコメントファイルを、上記他の動画配信用サーバが動画フ
20 ァイルを、ユーザ端末に配信する。
③ ユーザ端末が、②-2のコメントファイル及び動画ファイルを受信
する。
これにより、ユーザ端末が、受信した動画ファイル及びコメントフ
ァイルに基づいて、ブラウザ上にコメント付き動画を表示させる。
25 その表示の際に2つのコメントが重複するか否かを判定する計算式
及び重複すると判定された場合の重ならない表示位置の指定は、JS
ファイルによって規定される条件に基づいて行われている。
オ 被告サービスへの被告HPSの関与について
(ア) 被告HPSは、平成26年当時、被告FC2の委託を受けて、被告サ
ービスを含め、同被告が運営するサービスに関する業務を行っていたが、
5 同年9月30日頃、京都府警察から、被告FC2が運営するウェブサイ
トにおける公然わいせつ等の被疑事実によって、捜索差押え等の強制捜
査を受けた(甲4、甲7)。
(イ) 被告HPSの平成29年当時の代表取締役及び元代表取締役は、被告
FC2が運営する動画配信サービスにおける平成25年6月から平成2
10 6年12月にかけての動画の配信に関して、わいせつ電磁的記録記録媒
体陳列及び公然わいせつの事実で起訴され、京都地方裁判所は、平成2
9年3月24日、上記被告人らが、被告HPSの従業員をして被告FC
2と共に被告FC2の動画配信サービスを管理させており、被告FC2
の代表者らとの共謀共同正犯が成立するとして、上記の各罪について有
15 罪判決を言い渡した(甲9、10)。
上記被告人らは、いずれも上記判決に対して控訴したが、大阪高等裁
判所は、平成30年9月11日、原判決による共謀共同正犯の認定は正
当であるとして、上記被告人らの控訴をいずれも棄却した(甲11)。
(ウ) 被告FC2と被告HPSは、前記(ア)及び(イ)の刑事事件を受けて、平
20 成27年1月頃から、被告FC2の被告HPSに対する業務委託を縮小
する方向で見直しを行い、被告FC2は、平成29年5月30日頃、被
告HPSに対し、同年8月末日をもってドメインに関する業務を除き業
務委託を終了する旨の通知を行った(丙4ないし11、16)。
(エ) 被告HPSの従業員数は、平成26年から平成27年3月までの時期
25 において130人前後であったが、同年4月以降は減少し、平成28年
4月時点では48人、平成29年4月時点では6人であり、平成29年
11月以降は1名となり、令和元年10月には従業員がいなくなった
(丙1ないし3、12ないし15)。
(2) 被告FC2による被告システムの「生産」の有無について
ア 本件発明1の関係での被告システム1(被告サービス1のFLASH版)
5 の「生産」について
本件発明1の「実施」として被告FC2による被告システム1の「生産」
があるといえるかを、まず、被告サービス1のFLASH版について検討
する。
(ア) 物の発明の「実施」としての「生産」(特許法2条3項1号)とは、
10 発明の技術的範囲に属する「物」を新たに作り出す行為をいうと解され
る。また、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められること
を意味する属地主義の原則(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年
7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁、最高裁平成12
年(受)第580号同14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7
15 号1551頁参照)からは、上記「生産」は、日本国内におけるものに
限定されると解するのが相当である。したがって、上記の「生産」に当
たるためには、特許発明の構成要件の全てを満たす物が、日本国内にお
いて新たに作り出されることが必要であると解すべきである。
(イ) 前記3(1)のとおり、被告システム1は、本件発明1の構成要件を全
20 て充足し、その技術的範囲に属するものであって、被告システム1にお
ける構成1aないし1iは、本件発明1の構成要件1Aないし1Iにそ
れぞれ相当する。
また、被告サービス1のFLASH版においてコメント付き動画を日
本国内のユーザ端末に表示させる手順は、前記(1)ウ(ア)のとおりであっ
25 て、被告サービス1がその手順どおりに機能することによって、上記の
とおり本件発明1の構成要件を全て充足するコメント配信システムであ
る被告システム1が新たに作り出されるということができる。
そして、本件発明1のコメント配信システムは、「サーバ」と「これと
ネットワークを介して接続された複数の端末装置」をその構成要素とす
る物であるところ(構成要件1A)、被告システム1においては、日本国
5 内のユーザ端末へのコメント付き動画を表示させる場合、上記の「これ
とネットワークを介して接続された複数の端末装置」は、日本国内に存
在しているものといえる。
他方で、前記3(2)アによれば、本件発明1における「サーバ」(構成
要件1A等)とは、視聴中のユーザからのコメントを受信する機能を有
10 するとともに(構成要件1B)、端末装置に「動画」及び「コメント情報」
を送信する機能(構成要件1C)を有するものであるところ、これに該
当する被告FC2が管理する前記(1)ウ(ア)の動画配信用サーバ及びコメ
ント配信用サーバは、前記(1)イ(ア)のとおり、令和元年5月17日以降
の時期において、いずれも米国内に存在しており、日本国内に存在して
15 いるものとは認められない。
そうすると、被告サービス1により日本国内のユーザ端末へのコメン
ト付き動画を表示させる場合、被告サービス1が前記(1)ウ(ア)の手順ど
おりに機能することによって、本件発明1の構成要件を全て充足するコ
メント配信システムが新たに作り出されるとしても、それは、米国内に
20 存在する動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバと日本国内に存在
するユーザ端末とを構成要素とするコメント配信システム(被告システ
ム1)が作り出されるものである。
したがって、完成した被告システム1のうち日本国内の構成要素であ
るユーザ端末のみでは本件発明1の全ての構成要件を充足しないことに
25 なるから、直ちには、本件発明1の対象となる「物」である「コメント
配信システム」が日本国内において「生産」されていると認めることが
できない。
(ウ) 原告は、被告システム1では、多数のユーザ端末は日本国内に存在し
ているから、被告システム1の大部分は日本国内に存在している、被告
FC2が管理するサーバが国外に存在するとしても、「生産」行為が国外
5 の行為により開始されるということを意味するだけで、「生産」行為の大
部分は日本国内で行われている、本件発明1において重要な構成要件1
Hに対応する被告システム1の構成1hは国内で実現されている、被告
システム1については「生産」という実施行為が全体として見て日本国
内で行われているのと同視し得るにもかかわらず、被告らが単にサーバ
10 を国外に設置することで日本の特許権侵害を免れられるという結論とな
るのは著しく妥当性を欠くなどとして、被告システム1は、量的に見て
も、質的に見ても、その大部分は日本国内に作り出される「物」であり、
被告らによる「生産」は日本国内において行われていると評価すること
ができると主張する。
15 しかしながら、前記(ア)のとおり、特許法2条3項1号の「生産」に該
当するためには、特許発明の構成要件を全て満たす物が日本国内におい
て作り出される必要があると解するのが相当であり、特許権による禁止
権の及ぶ範囲については明確である必要性が高いといえることからも、
明文の根拠なく、物の構成要素の大部分が日本国内において作り出され
20 るといった基準をもって、物の発明の「実施」としての「生産」の範囲
を画するのは相当とはいえない。そうすると、被告システム1の構成要
素の大部分が日本国内にあることを根拠として、直ちに被告システム1
が日本国内で生産されていると認めることはできないというべきである。
また、前記(1)ウ(ア)の②-2及び⑤からすれば、被告システム1にお
25 いては、被告FC2のウェブサーバがユーザ端末に配信するSWFファ
イルによって規定される条件に基づいて、2つのコメントが重複するか
否かを判定する計算式及び重複すると判定された場合の重ならない表示
位置の指定が行われており、構成要件1Fの「判定部」及び構成要件1
Gの「表示位置制御部」に相当する構成1f及び1gの動作の実現は、
日本国内に存在するユーザ端末において行われるものであるということ
5 ができ、これらのユーザ端末における動作からは、原告が指摘する構成
要件1Hに対応する構成1hのうち「前記ユーザ端末のディスプレイに
は、前記動画と、前記コメント付与時間に対応する動画再生時間におい
て、前記動画上に、右から左方向に移動する前記コメント1及び前記コ
メント2とが、追いついて重複しないように表示される、」という部分に
10 相当する動作は、日本国内に存在するユーザ端末において実現されるも
のということができるものの、構成要件1Hに対応する構成1hのうち
「前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前記
ユーザ端末に配信することにより、」という部分に相当する動作は、米国
内に存在するコメント配信用サーバ及び動画配信用サーバによって実現
15 されるものであり、構成1hが日本国内に存在するユーザ端末のみによ
って実現されているとはいえない。前記1(2)イで検討したところからす
れば、本件発明1の目的は、単に、構成要件1Fの「判定部」及び構成
要件1Gの「表示位置制御部」に相当する構成等を備える端末装置を提
供することではなく、ユーザ間において、同じ動画を共有して、コメン
20 トを利用しコミュニケーションを図ることができるコメント配信システ
ムを提供することであり、この目的に照らせば、動画の送信(構成要件
1C及び1H)並びにコメントの受信及びコメント付与時間を含むコメ
ント情報の送信(構成要件1B、1C及び1H)を行う「サーバ」は、
この目的を実現する構成として重要な役割を担うものというべきである。
25 この点からしても、本件発明1に関しては、ユーザ端末のみが日本に存
在することをもって、「生産」の対象となる被告システム1の構成要素の
大部分が日本国内に存在するものと認めることはできないというべきで
ある。
さらに、前記(1)アのとおり、被告サービスにおいては、日本語が使用
可能であり、日本在住のユーザに向けたサービスが提供されていたと考
5 えられ、同オのとおり、平成26年当時、日本法人である被告HPSが、
被告FC2の委託を受けて、被告サービスを含む同被告の運営するサー
ビスに関する業務を行っていたという事情は認められるものの、本件全
証拠によっても、本件特許権の設定登録がされた令和元年5月17日以
降の時期において、米国法人である被告FC2が本件特許権の侵害の責
10 任を回避するために動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバを日本
国外に設置し、実質的には日本国内から管理していたといった、結論と
して著しく妥当性を欠くとの評価を基礎付けるような事情は認められな
い。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
15 (エ) 以上によれば、被告サービス1のFLASH版については、本件発明
1の関係で、被告FC2による被告システム1の日本国内での「生産」
を認めることができないというべきである。
イ 本件発明1の関係での被告システム1(被告サービス1のHTML5版)
の「生産」について
20 被告サービス1のHTML5版においても、前記ア(イ)と同様に、被告シ
ステム1における「サーバ」は米国内の動画配信用サーバ及びコメント配
信用サーバであり、被告サービス1により日本国内のユーザ端末へのコメ
ント付き動画が表示される場合、被告サービス1のHTML5版が前記(1)
ウ(イ)の手順どおりに機能することによって、本件発明1の構成要件を全て
25 充足するコメント配信システムが新たに作り出されるとしても、完成した
コメント配信システムのうち、日本国内の構成要素であるユーザ端末のみ
では本件発明1の全ての構成要件を充足しない。そして、前記(1)ウ(イ)の
コメント付き動画が日本国内のユーザ端末に表示される手順は、①-2、
②-1及び④のとおり、JSファイルが、FLASH版のSWFファイル
の働きと同様の働きをしている点を除けばFLASH版と同様といえるか
5 ら、前記ア(ウ)で検討した点はHTML5版にも同様に当てはまり、この点
に関する原告の主張はいずれも採用することができない。
したがって、被告サービス1のHTML5版についても、本件発明1の
関係で、被告FC2による被告システム1の日本国内での「生産」を認め
ることができないというべきである。
10 ウ 本件発明1の関係での被告システム2及び3(被告サービス2及び3の
FLASH版、HTML5版)の「生産」について
被告システム2及び3が本件発明1の構成要件を全て充足し、その技術
的範囲に属することは前記3(2)のとおりであり、被告サービス2及び3の
FLASH版及びHTML5版において、コメント付き動画を日本国内の
15 ユーザ端末に表示させる手順は前記(1)エのとおりであるが、被告システム
2及び3における「サーバ」は、少なくとも米国内のコメント配信用サー
バを含むものであり、被告サービス2及び3により日本国内のユーザ端末
へのコメント付き動画が表示される場合、被告サービス2及び3が前記(1)
エの手順どおりに機能することによって、本件発明1の構成要件を全て充
20 足するコメント配信システムが新たに作り出されるとしても、完成したコ
メント配信システムのうち、日本国内の構成要素であるユーザ端末のみで
は本件発明1の全ての構成要件を充足しない。また、この点に関する原告
の主張がいずれも採用できないことは、前記ア(ウ)と同様である。
したがって、被告サービス2及び3のFLASH版、HTML5版のい
25 ずれについても、本件発明1の関係で、被告FC2による被告システム2
及び3の日本国内での「生産」を認めることができないというべきである。
エ 本件発明2の関係での被告システム(被告サービスのFLASH版、H
TML5版)の「生産」について
(ア) 被告システムが本件発明2の構成要件を全て充足し、その技術的範囲
に属することは前記4(1)及び(2)のとおりであり、被告サービスのFL
5 ASH版及びHTML5版において、コメント付き動画を日本国内のユ
ーザ端末に表示させる手順は前記(1)ウ及びエのとおりであるが、本件発
明2の「コメント配信システム」の構成要素である「動画配信サーバ」
(構成要件2A等)及び「コメント配信サーバ」(構成要件2A等)につ
いて、被告システム1においては米国内のコメント配信用サーバ及び動
10 画配信用サーバがこれに該当し、被告システム2及び3についても、少
なくとも構成要素として米国内のコメント配信用サーバを含むものであ
って、被告サービスにより日本国内のユーザ端末へのコメント付き動画
が表示される場合、被告サービスが前記(1)ウ及びエの手順どおりに機能
することによって、本件発明2の構成要件を全て充足するコメント配信
15 システムが新たに作り出されるとしても、完成したコメント配信システ
ムのうち、日本国内の構成要素であるユーザ端末のみでは本件発明2の
全ての構成要件を充足しない。
したがって、被告サービスのFLASH版、HTML5版のいずれに
ついても、本件発明2の関係で、被告FC2による被告システムの日本
20 国内での「生産」を認めることができないというべきである。
(イ) 原告は、本件発明2について、その重要な構成要件2Hに対応する被
告システムの構成2hは日本国内で実現されていると主張するが、前記
ア(ウ)の構成1hと同様に、構成2hのうち「前記コメント配信用サーバ
が前記コメントファイルを、前記動画配信用サーバが前記動画ファイル
25 を、それぞれ前記ユーザ端末に配信することにより、」という部分に相当
する動作は、コメント配信用サーバ及び動画配信用サーバによって実現
されるものであり、構成2hが日本国内のユーザ端末のみによって実現
されているとはいえない。
また、本件発明2の目的は、本件発明1と同様に、ユーザ間において、
同じ動画を共有して、コメントを利用しコミュニケーションを図ること
5 ができるコメント配信システムを提供すること(前記1(2)イ)であり、
その目的に照らして、動画の送信(構成要件2C2、2H)を行う「動
画配信サーバ」並びにコメントの受信及びコメント付与時間を含むコメ
ント情報の送信(構成要件2B、2C1、2H)を行う「コメント配信
サーバ」は、この目的を実現する構成として重要な役割を担うものとい
10 うべきであるから、本件発明2に関しても、ユーザ端末のみが日本国内
に存在することをもって、生産の対象となる被告システム2の構成要素
の大部分が日本国内に存在するものと認めることはできないというべき
である。
その他、本件発明2の関係においても、被告システムの日本国内での
15 「生産」が認められるとの原告の主張がいずれも採用できないことは、
前記ア(ウ)と同様である。
オ 小活
以上のとおり、本件発明1の関係でも、本件発明2の関係でも、被告サ
ービス(FLASH版及びHTML5版)において、被告FC2による被
20 告システムの日本国内での「生産」を認めることはできない。
(3) 被告HPSによる被告システムの「生産」の有無について
原告は、被告HPSが、実質的に被告FC2と一体であり、被告FC2か
ら委託を受け、その一部門として被告サービスを運営しているものであるか
ら、被告FC2と共同して被告システムを「生産」していると主張するとこ
25 ろ、前記(2)のとおり、本件発明1の関係でも、本件発明2の関係でも、被告
サービスにおいて、被告FC2による被告システムの日本国内での「生産」
は認められないから、被告HPSによる被告システムの日本国内における
「生産」についても、認めることができない。
また、被告サービスへの被告HPSの関与の状況は、前記(1)オのとおりで
あり、そのような状況に照らせば、少なくとも令和元年5月17日以降の時
5 期においては、被告HPSが被告サービスに関する業務を行っていたとは認
められず、その他、この点を認めるに足りる証拠はないから、この点でも、
被告サービスについて、被告HPSによる被告システムの「生産」は認めら
れないというべきである。
6 結論
10 前記3及び4のとおり、被告システムは本件発明の技術的範囲に属すると認
められるものの、前記5のとおり、本件特許が登録された令和元年5月17日
以降において被告らによる被告システムの日本国内における生産は認められず、
被告らが本件発明を日本国内において実施したとは認められないから、被告ら
による本件特許権の侵害の事実を認めることはできない。
15 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理
由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
20 裁判長裁判官
國 分 隆 文
25 裁判官
小 川 暁
裁判官
矢 野 紀 夫
別紙一覧
別紙1 被告ファイル目録
別紙2 被告サーバ用プログラム目録
別紙3 被告サーバ目録
5 別紙4 無効の抗弁の成否についての当事者の主張
別紙5 本件明細書の図面
別紙1 被告ファイル目録
1 「FC2動画」(https://以下省略)において、被告らがサーバからユーザ端末
に対して配信している動画ファイル及びコメントファイル(それぞれ別々に配信
5 されるもの及び動画ファイルとコメントファイルが一体のものを含む)
2 「FC2 SayMove!」(http://以下省略)において、被告らがサーバか
ら動画視聴者の端末に対して配信している動画ファイル及びコメントファイル
(それぞれ別々に配信されるもの及び動画ファイルとコメントファイルが一体の
ものを含む)
10 3 「FC2 ひまわり動画」(http://以下省略)において、被告らがサーバから
動画視聴者の端末に対して配信している動画ファイル及びコメントファイル(そ
れぞれ別々に配信されるもの及び動画ファイルとコメントファイルが一体のもの
を含む)
別紙2 被告サーバ用プログラム目録
1 「FC2動画」(https://以下省略)において、被告らがユーザ端末に対して動
画ファイル及びコメントファイルを配信するためのサーバ用プログラム(動画フ
5 ァイル又はコメントファイルの一方を配信するためのサーバ用プログラム、動画
ファイルとコメントファイルを一体として配信するためのサーバ用プログラムを
含む)
2 「FC2 SayMove!」(http:/以下省略)において、被告らがユーザ端
末に対して動画ファイル及びコメントファイル(動画ファイルとコメントファイ
10 ルが一体のものを含む)を配信するためのサーバ用プログラム(動画ファイル又
はコメントファイルの一方を配信するためのサーバ用プログラム、動画ファイル
とコメントファイルを一体として配信するためのサーバ用プログラムを含む)
3 「FC2 ひまわり動画」(http://以下省略)において、被告らがユーザ端末
に対して動画ファイル及びコメントファイル(動画ファイルとコメントファイル
15 が一体のものを含む)を配信するためのサーバ用プログラム(動画ファイル又は
コメントファイルの一方を配信するためのサーバ用プログラム、動画ファイルと
コメントファイルを一体として配信するためのサーバ用プログラムを含む)
別紙3 被告サーバ目録
1 「FC2動画」(https://以下省略)において、被告らがユーザ端末に対して動
画ファイル及びコメントファイルを配信する用に供しているサーバ(動画ファイ
5 ル又はコメントファイルの一方を配信する用に供しているサーバ、動画ファイル
とコメントファイルを一体として配信する用に供しているサーバを含む)
2 「FC2 SayMove!」(http://以下省略)において、被告らがユーザ端
末に対して動画ファイル及びコメントファイルを配信する用に供しているサーバ
(動画ファイル又はコメントファイルの一方を配信する用に供しているサーバ、
10 動画ファイルとコメントファイルを一体として配信する用に供しているサーバを
含む)
3 「FC2 ひまわり動画」(http://以下省略)において、被告らがユーザ端末
に対して動画ファイル及びコメントファイルを配信する用に供しているサーバ
(動画ファイル又はコメントファイルの一方を配信する用に供しているサーバ、
15 動画ファイルとコメントファイルを一体として配信する用に供しているサーバを
含む)
別紙4 無効の抗弁の成否についての当事者の主張
1 争点5-1(乙17公報を主引用例とする進歩性欠如)(無効理由1))につ
いて
5 (被告らの主張)
(1) 乙17公報に記載された発明
ア 引用発明の認定
乙17公報には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙1
7発明」といい、下記の(ア)ないし(キ)の構成を、符号に対応させて「構成
10 (ア)」などという。。

(ア) 映像を再生するとともに、当該映像に付与された単数又は複数の注釈
を当該映像上に表示するビューワマシンであって、
(イ) 前記注釈と、当該注釈の表示を開始するタイミングとを指定するSM
IL(Synchronized Multimedia Integ
15 ration Language)で記述された同期記述を記憶するメ
モリ(以下「注釈記憶メモリ」)と、
(ウ) 前記映像を再生して表示する映像再生部と、
(エ) 前記再生される映像の映像再生時間に基づいて、前記メモリに記憶さ
れた同期記述のうち、前記映像の映像再生時間に対応するタイミングで
20 表示を開始させるべき注釈を前記メモリから読み出し、当該読み出され
た注釈を、ビューワ画面内の注釈を表示する注釈再生部と、を有し、
(オ) 前記注釈が少なくとも動画の一部に重なっており、
(カ) 前記注釈は水平に移動するものである
(キ) ことを特徴とするビューワマシン。
25 イ 乙17発明の認定についての補足説明
(ア) 構成(イ)について
原告は、乙17公報には、注釈と、注釈の表示を開始するタイミング
とをSMILで指定する旨の記載はないと主張するが、乙17公報の特
許請求の範囲においては「同期記述を作成する同期記述作成手段を有し」
として、同期記述作成手段が構成要件となることが明示されており、そ
5 のうえで、従来技術としてSMILにより同期記述を作成することがで
きる旨記載されている(乙17公報【0007】)から、乙17公報にお
いて同期記述の作成手段として、SMILを用いることが開示されてお
おり、原告の主張は失当である。
(イ) 構成(エ)について
10 原告は、乙17公報には、単に映像と注釈とを同期させて再生させる
ことの記載(【0192】)があるにすぎないと主張するが、乙17公報
では、図15に示す同期記述の説明として、カメラサーバの特定の時間
帯の蓄積映像について、注釈サーバから注釈データを取り出して同期再
生する旨が開示されており(【0125】、構成(エ)が開示されている。

15 また、原告は、乙17公報は、音声注釈についての発明であると主張
するが、乙17公報において、文字注釈の実装方法として「多くの携帯
電話端末において、テキスト作成/表示機能が実装されており、これを
利用してテキスト注釈の入力再生を実現することができる」【0137】
( )
と具体的に明示されている。
20 (ウ) 構成(カ)について
原告は、乙17公報には「前記注釈は水平に移動する」との記載はな
いと主張するが、乙17発明は、SMILで記述されるものであるから、
「複数の注釈」を水平方向に移動することは予定されている。
(2) 本件発明1の進歩性
25 ア 本件発明1と乙17発明との対比
本件発明1と乙17発明とを対比すると、次のとおりとなる。
(ア) 乙17発明の「ビューワマシン」は、本件発明1の「端末装置」に、
「複数の注釈」は「第1コメント及び第2コメント」に、それぞれ相当
する。
(イ) 乙17発明は、「前記再生される映像の映像再生時間に基づいて、前
5 記メモリに記憶された同期記述のうち、前記映像の映像再生時間に対応
するタイミングで表示を開始させるべき注釈を前記メモリから読み出し、
当該読み出された注釈を、ビューワ画面内の注釈を表示する」ものであ
るから、当該注釈を表示するタイミングは、当該注釈が動画に付与され
た時間に対応するものであり、当該付与時間は、当該注釈が付与される
10 までの動画の経過時間である。よって、ビューワマシンには、動画の最
初から当該注釈が付与された時点までの動画の経過時間を含む情報が送
信されるものであり、この情報が「コメント情報」に相当する。
(ウ) 乙17発明は、SMILで記述されるものであるから、「複数の注釈」
を水平方向に移動することは予定されている。
15 (エ) 複数の注釈の位置について限定はないから、動画の一部と複数の注釈
が重なることも予定されている。なお、文字列が動画の一部と重なる技
術については、動画と文字列を同時に配信するシステムにおいて慣用技
術である(乙21、23)。
(オ) したがって、本件発明1と乙17発明は次の相違点1で相違するが、
20 それ以外は一致する。
(相違点1)
本件発明1が、第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が前
記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なると
判定された場合に前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならない
25 位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに対し、
乙17発明はかかる構成を備えていない点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 主位的主張
乙17発明は、注釈という文字列の表示位置について何らの限定もな
いものであるから、文字列の重複表示による視認性低下という課題が内
5 在することから、かかる課題を解決するために、動画において文字情報
を表示する際、文字列が重複するか否かを判定し、重複する場合には重
複しないように位置を変更する公知技術(乙26ないし28。以下「本
件位置変更公知技術」という。)を適用することにより、相違点1を克服
することは容易である。
10 原告は、乙17公報に記載された発明では文字列同士が重複すること
は想定されていないと主張するが、乙17発明は、複数の文字注釈から
特定のもののみを排他的に再生することだけではなく、これらを同時に
表示することも想定しているから、それによる視認性の低下という課題
を内在している。
15 (イ) 予備的主張
仮に、乙17発明について文字列の重複表示による視認性低下という
課題が内在する点を措くとしても、文字列が重複するか否かを判定し、
重複する場合には重複しないように位置を変更することは、動画におい
て文字情報を表示する技術において慣用されているものであるから(乙
20 26ないし28。以下「本件位置変更慣用技術」という。 、乙17発明

に対し、かかる慣用技術を適用することにより、相違点1を克服するこ
とは容易である。
(ウ) その他の周知技術に基づく主張
コンピュータの画面表示において、異なる2つの表示物の表示位置が
25 重なるか否かを判定する判定機能と、重なると判定された場合に、これ
らが重ならない位置に表示されるよう調整する表示制御機能も周知技術
である(乙48、61、62。以下、これらの判定機能及び表示制御機
能を併せて「本件位置変更周知技術2」という。。

乙17発明と本件位置変更周知技術2は、いずれもコンピュータの画
面表示に関する発明であり、技術分野を共通するものであり、乙17発
5 明に本件位置変更周知技術2を適用する動機付けは優に認められる。
コンピュータの画面上の表示物は、図形であろうと文字列であろうと
データであり、いずれについても衝突検出・回避機能を持つプログラム
を組み込むことは可能であるから、衝突検出・回避の対象となるデータ
が、図形を表示するためのものか、文字列を表示するためのものかにお
10 いて、有意な差異は存在しない。そのため、乙17発明に対して本件位
置変更周知技術2を適用することで、文字列同士の表示位置が重なるか
否かを判定する判定部と、重なると判定された場合に両文字列が重なら
ない位置に表示されるよう調整する表示制御部という相違点1に当たる
構成を具備させることができる。
15 ウ 原告主張の相違点について
(ア) 相違点Aについて
a 原告は、本件発明1と乙17公報に記載された発明との間に相違点
A(本件発明1は、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動
するのに対し、乙17公報に記載された発明では、水平方向に移動す
20 るか否か不明である点)が存在すると主張するが、前記(1)イ(ウ)のと
おり、乙17発明においては、SMILで記述されることにより、「注
釈」は水平に移動すると認定できることから、原告主張の相違点Aは
存在しない。
なお、SMILで記述・指定した文字列が、水平方向に移動するこ
25 とは、「SMILで魅せるストリーミングコンテンツ作成ガイド」(乙
29)の110頁においても開示されている。
b 仮に、水平移動が認定できないとしても、端末装置の画面上に表示
されたテキストを水平又は垂直方向にスクロール表示することは、動
画編集ソフトやプログラミングの基本技術であり、慣用技術である
(乙29ないし33)。そのため、乙17発明に対し、かかる慣用技術
5 を適用することにより、原告が主張する相違点Aを克服することは容
易である。
原告は、かかる慣用技術を適用する動機付けがないと主張するが、
乙17公報に記載された発明は、映像データとテキストデータを同期
して、ネットワークを介して配信する技術であり、SMILを用いた
10 文字列の水平移動は、映像データ表示上に文字列を重ねて表示する技
術であるから、パソコン等の画面に表示される映像に文字列を重ねる
という点で、技術分野が共通するものであり、これらを組み合わせる
動機付けも認められる。
また、原告は、乙17公報に記載された発明に注釈を水平方向に移
15 動させる技術を適用すると、ふきだしが移動せずその場に留まり、注
釈だけが移動することとなって、極めて不自然な表示になるとして、
この点を阻害要因であると主張する。しかしながら、乙17公報にお
いて、テキスト注釈データの表示手段として、ふきだし内に入れると
いう限定を付する記載は無い。そのため、乙17公報記載の図18の
20 ふきだし表示は、あくまで、テキスト注釈を付する場合の例示にすぎ
ないことは、当業者において明らかであるから、原告が主張する阻害
要因は存在しない。
(イ) 相違点Bについて
原告は、本件発明1と乙17公報に記載された発明との間に相違点B
25 (コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメ
ント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間にお
いて表示されるのに対し、乙17公報に記載された発明では、そのよう
に表示されるのか不明である点)が存在すると主張するが、乙17公報
では、図15に示す同期記述の説明として、カメラサーバの特定の時間
帯の蓄積映像について、注釈サーバから注釈データを取り出して同期再
5 生する旨が開示されている(【0125】。かかる記載から、乙17発明

においても、注釈が、その付与時間に対応する動画再生時間において表
示されるといえるから、原告が主張する相違点Bは存在しない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1と乙17発明との相違点に係る構成は、乙1
10 7発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
(3) 本件発明2の進歩性
本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
15 明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙17発明から容易に想到できるも
のである。
(原告の主張)
(1) 乙17公報に記載された発明
被告らが主張する乙17発明の認定は、少なくとも以下の点で誤っている。
20 ア 構成(イ)について
乙17公報には「SMIL」が単なる従来技術として触れられているに
すぎず(乙17の【0007】 、注釈と、注釈の表示を開始するタイミン

グとをSMILで指定する旨の記載はない。
したがって、乙17公報には構成(イ)は記載されていない。
25 イ 構成(エ)について
乙17公報に構成(エ)の記載はなく、単に映像と注釈とを同期させて再生
させることの記載(【0192】)があるにすぎない。なお、乙17公報は、
音声注釈についての発明であり、文字注釈については、抽象的な記載があ
るのみである(【0136】参照)。
被告らは、乙17公報の【0125】を根拠として、構成(エ)が記載され
5 ていると主張するが、乙17公報には、少なくとも「映像再生時間」及び
「メモリ」に相当する記載はなく、同期記述が「メモリ」に記憶されるこ
との記載もない。
ウ 構成(カ)について
乙17公報に構成(カ)の「前記注釈は水平に移動する」との記載はない。
10 (2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙17公報に記載された発明との対比
本件発明1と乙17公報に記載された発明との間には、被告らが認める
相違点1の他に少なくとも以下の相違点が存在する。
(相違点A)
15 本件発明1は、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動するの
に対し、乙17公報に記載された発明では、水平方向に移動するか否か不
明である点。
(相違点B)
コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメン
20 ト及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において
表示されるのに対し、乙17公報に記載された発明では、そのように表示
されるのか不明である点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
25 a 主位的主張について
乙17公報の【0122】及び【0135】から明らかなように、
乙17公報に記載された発明は、複数の注釈がある場合には排他的に
再生したり、合成して再生したりするものであり、複数の注釈が重複
表示されることは想定されていない。
したがって、乙17公報に記載された発明において、「文字列の重複
5 表示による視認性低下という課題」はないから、被告らの主張は前提
において誤っている。
被告らは、乙26号証ないし乙28号証から、「文字列が重複するか
否かを判定し、重複する場合には重複しないように位置を変更する」
との「本件位置変更公知技術」及び「本件位置変更慣用技術」を認定
10 しているが、乙26号証ないし乙28号証から認定できる周知技術は、
「テレビ受信機において、テレビ放送に重畳された文字データと、テ
レビ映像自体に含まれる文字と、が重ならないように表示する技術」
(以下「本件周知技術」という。)に留まる。
b 予備的主張について
15 仮に、乙26号証ないし乙28号証から本件周知技術が認定される
としても、これを乙17公報に記載された発明に適用する動機づけが
ない。なぜなら、乙17公報に記載された発明では、複数の注釈があ
る場合には排他的に再生する等の処理を行うものであるから、そもそ
も文字列の重複表示による視認性低下という課題は生じないからであ
20 る。
そして、仮に本件周知技術を乙17公報に記載された発明に適用し
たとしても、「注釈と、動画自体に含まれる文字と、が重ならないよう
にする」構成に至るにすぎず、相違点1に係る本件発明1の構成には
至らない。
25 c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
被告らが指摘する文献(乙48、61及び62)に、異なる2つの
表示物の表示位置が重なるか否かの判定を行い、判定結果に応じた表
示制御を行うことの開示はなく、被告らが主張する本件位置変更周知
技術2は認定できない。
仮にそのような本件位置変更周知技術2があるとしても、被告らが
5 指摘する文献(乙48、乙61及び乙62)は文字列が重なることを
全く想定していないから、本件位置変更周知技術2を、注釈を表示す
る乙17公報に記載された発明に適用する動機付けはない。
d したがって、乙17公報に記載された発明において相違点1に係る
本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たこと
10 ではない。
(イ) 相違点Aについて
被告らは、テキストを水平又は垂直方向にスクロール表示することは、
動画編集ソフトやプログラミングの基本技術であり、慣用技術であると
主張するが、そのような慣用技術がある根拠を被告らは示していない上、
15 乙17公報に記載された発明に対して、注釈を水平方向に移動させるよ
うにする動機付けはない。
また、乙17公報に記載された発明はふきだし内に注釈を表示するも
のであるが、仮に、この発明に、注釈を水平方向に移動させる技術を適
用すると、ふきだしは移動せずその場に留まり、注釈だけが移動するこ
20 ととなって、極めて不自然な表示になるのは明らかであり、水平方向に
移動させる技術を適用するには、阻害要因がある。
したがって、乙17公報に記載された発明において相違点Aに係る本
件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことでは
ない。
25 (ウ) 相違点Bについて
乙17公報に記載された発明において相違点Bに係る本件発明1の構
成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1と乙17公報に記載された発明との相違点に
係る構成は、乙17公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
5 到できたものではないから、乙17公報を主引用例とする進歩性欠如の主
張は理由がない。
(3) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙17公報を
10 主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
2 争点5-2(乙18公報を主引用例とする進歩性欠如)(無効理由2))につ
いて
(被告らの主張)
(1) 乙18公報に記載された発明
15 ア 引用発明の認定
乙18公報には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙1
8発明」といい、下記の(ア)ないし(カ)の構成を、符号に対応させて「構成
(ア)」などという。。

(ア) 動画を再生するとともに動画上にテキストを表示する表示装置であっ
20 て
(イ) 動画に対応付けられている単数又は複数のテキストデータを収集しロ
グファイルに格納する格納部と
(ウ) 当該動画を再生して表示する動画再生部と
(エ) 前記テキストデータを読み込んで単数又は複数のテキストデータを表
25 示する単数又は複数のテキストデータ表示部を有し
(オ) 前記単数又は複数のテキストデータを前記動画の少なくとも一部に重
畳して表示し
(カ) ことを特徴とする表示装置
イ 乙18発明の認定についての補足説明
原告は、乙18発明が乙18公報に記載されていることを争うが、「表示
5 装置」とは、配信された動画コンテンツやテキストデータを表示する装置
のことであり、乙18公報の【0005】においても、同様の意味でかか
る文言が使用されている。乙18公報の【0005】及び【0007】の
文脈から、従来技術においては、動画とチャットはそれぞれ異なる表示装
置により表示されていたが、乙18発明においてはこれらを併せて1つの
10 表示装置により表示されることは明らかである。
「格納部」とは、動画に対応付けられている単数又は複数のテキストデ
ータを収集しログファイルに格納するファイルであり、乙18公報の【0
019】においても使用されている文言である。
「動画再生部」とは、表示装置における、動画を再生して表示する機能
15 を担う部分である。
「テキストデータ表示部」とは、表示装置における、テキストデータを
読み込んで単数又は複数のテキストデータを表示する機能を担う部分であ
る。
(2) 本件発明1の進歩性
20 ア 本件発明1と乙18発明との対比
本件発明1と乙18発明とを対比すると、次のとおりとなる。
(ア) 乙18発明の「表示装置」が、本件発明1の「端末装置」に、「複数
のテキストデータ」が、「第1コメント及び第2コメント」に、「前記単
数又は複数のテキストデータを前記動画の少なくとも一部に重畳して表
25 示し」が、「前記動画の少なくとも一部と重なって…第一コメント及び第
2コメントを前記端末装置の表示装置に表示させる」に、それぞれ相当
する。
(イ) そして、乙18発明は、「動画に対応付けられているテキストデータ
を動画の少なくとも一部に重畳して表示する」ものであるから、当該テ
キストデータを表示するタイミングは、当該テキストデータが動画に付
5 与された時間に対応するものであり、当該付与時間は、当該テキストデ
ータが付与されるまでの動画の経過時間である。よって、表示装置には、
動画の最初から当該テキストデータが付与された時点までの動画の経過
時間を含む情報が送信されるものであり、当該情報が「コメント情報」
に相当する。
10 また、乙18発明は、SMILで記述されるものであるから、「複数の
テキストデータ」を水平方向に移動することは予定されている(乙27
及び乙1の6添付非特許文献。以下「本件水平移動技術」という。。

(ウ) したがって、本件発明1と乙18発明は次の相違点1で相違するが、
それ以外は一致する。
15 (相違点1)
本件発明1が、第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が前
記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なると
判定された場合に前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならない
位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに対し、
20 乙18発明はかかる構成を備えていない点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 主位的主張
乙18発明は、テキストデータという文字列の表示位置の相互関係に
ついて何らの限定もないものであるから、文字列の重複表示による視認
25 性低下という課題が内在する。よって、かかる課題を解決するために本
件位置変更公知技術を適用することにより、相違点1を克服することは
容易である。
原告は、表示すべきテキストデータ数が表示可能数より大きい場合に
は、テキストデータを同時に表示せず、各テキストデータの表示時間を
短くして順繰りに表示することで、テキストデータを見やすく表示して
5 いる(【0029】)として、乙18公報に記載された発明は文字列が重
複表示されることは想定されていないと主張するが、テキストデータの
表示時間を短くするという手法では、テキストデータの量が多くなった
場合、各テキストデータの表示時間が極めて短くなることが想定される。
そのため、乙18公報に記載された発明が、かかる手法を採用していた
10 としても、テキストデータの量が一定量を超えた場合、複数の文字列を
同時に表示せざるを得ず、文字列の重複表示による視認性低下の課題を
内在することになるといえる。
(イ) 予備的主張
仮に、乙18発明について文字列の重複表示による視認性低下という
15 課題が内在する点を措くとしても、乙18発明に本件位置変更慣用技術
を適用することにより、相違点1を克服することは容易である。
(ウ) 本件位置変更周知技術2に基づく主張
乙18発明も、コンピュータの画面に文字列を表示する技術であるこ
とから、乙17発明と同様に、本件位置変更周知技術2を適用する動機
20 付けが強く認められ、これにより相違点1を容易に克服することができ
る。
ウ 原告主張の相違点について
(ア) 相違点Aについて
原告は、本件発明1と乙18公報に記載された発明との間に相違点A
25 (本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるの
に対し、乙18公報に記載された発明では、そのようになっていない点)
が存在すると主張する。
しかしながら、乙18発明においても、テキストデータを動画コンテ
ンツに同期させて、動画の内容に合わせて適切なタイミングでテキスト
データが付与され、配信されることから、テキストデータにコメント付
5 与時間が含まれているといえるから、原告主張の相違点Aは存在しない。
原告は、乙18公報には、テキストデータにコメント付与時間が含ま
れるとの構成の記載がないと主張するが、乙18公報の「重畳されるテ
キストデータの表示される時間」【0021】
( )とは、再生中の動画に特
定のテキストを表示させるための適切な時間(タイミング)のことであ
10 り、かかる時間(タイミング)を特定するためには、動画の最初を基準
とするほかないのであるから、かかる「重畳されるテキストデータの表
示される時間」とは、
「動画の最初を基準とした動画の経過時間」に相当
することは明らかである。
仮に相違点Aが認められるとしても、テキストデータにコメント付与
15 時間を含めることは、当業者にとって容易に想到できることであるから、
相違点Aがあることで本件発明1の進歩性が認められることはない。
(イ) 相違点Bについて
原告は、本件発明1と乙18公報に記載された発明との間に相違点B
(本件発明1は、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動する
20 のに対し、乙18公報に記載された発明では、水平方向に移動するか否
か不明である点)が存在すると主張する。
乙17発明と同様に、乙18発明においても、SMILで記述される
ことが明示されていることから(乙18公報【0012】 、乙18発明

においてはテキストが水平方向に移動するといえるため、原告主張の相
25 違点Bは存在しない。
仮に相違点Bが認められるとしても、コメントを水平方向に移動させ
る技術は慣用技術であるから、相違点Bがあることで本件発明1の進歩
性が認められることはない。
(ウ) 相違点Cについて
原告は、本件発明1と乙18公報に記載された発明との間に相違点C
5 (コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメ
ント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間にお
いて表示されるのに対し、乙18公報に記載された発明では、コメント
付与時間とは無関係に表示される点)が存在すると主張する。
しかしながら、前記(ア)と同様に、乙18発明においても、テキストデ
10 ータにコメント付与時間が含まれており、テキストがコメント付与時間
と無関係に表示されるものではないから、原告主張の相違点Cは存在し
ない。
仮に相違点Cが認められるとしても、コメントをコメント付与時間に
対応する動画再生時間において表示させることは、当業者にとって容易
15 に想到できることであるから、相違点Cがあることで本件発明1の進歩
性が認められることはない。
エ 小括
以上によれば、本件発明1と乙18発明との相違点に係る構成は、乙1
8発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
20 想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
(3) 本件発明2の進歩性
本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙18発明から容易に想到できるも
25 のである。
(原告の主張)
(1) 乙18公報に記載された発明
被告らが主張する乙18発明の認定は、少なくとも以下の点で誤っている。
被告らは、「表示装置」とは乙18公報の【0005】に記載のものである
旨を主張するが、【0005】には「コンテンツが表示される表示装置」にテ
5 キストは表示されないことが明記されているから、構成(ア)の「動画を再生す
るとともに動画上にテキストを表示する表示装置」を認定することはできな
い。
また、乙18発明の「動画再生部」及び「テキストデータ表示部」は、い
ずれも「表示装置」におけるものであるところ、「表示装置」を認定できない
10 以上、「動画再生部」及び「テキストデータ表示部」も認定できない。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙18公報に記載された発明との対比
本件発明1と乙18公報に記載された発明との間には、被告らが認める
相違点1の他に少なくとも以下の相違点が存在する。
15 (相違点A)
本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるのに
対し、乙18公報に記載された発明では、そのようになっていない点。
(相違点B)
本件発明1は、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動するの
20 に対し、乙18公報に記載された発明では、水平方向に移動するか否か不
明である点。
(相違点C)
コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメン
ト及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において
25 表示されるのに対し、乙18公報に記載された発明では、コメント付与時
間とは無関係に表示される点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
a 主位的主張について
乙18公報に記載された発明では、テキストデータの表示可能数を
5 ウィンドウの大きさに応じて定め(【0021】、表示すべきテキスト

データ数が表示可能数未満であればテキストデータを同時に表示する
が(【0028】、表示すべきテキストデータ数が表示可能数より大き

い場合には、テキストデータを同時に表示せず、各テキストデータの
表示時間を短くして順繰りに表示することで、テキストデータを見や
10 すく表示している(【0029】。

そうすると、乙18公報に記載された発明は文字列が重複表示され
ることは想定されていないのであり、被告らが主張するような課題を
内在していない。
b 予備的主張について
15 乙18公報に記載された発明では、文字列が重複表示されることは
想定されておらず、文字列の重複表示による視認性低下という課題が
生じないため、本件周知技術を適用する動機付けがない。
また、乙17公報に記載された発明との相違点1と同様に、乙18
公報に記載された発明に本件周知技術に記載された事項を適用しても
20 相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
乙17公報に記載された発明との相違点1について述べたのと同様
に、本件位置変更周知技術2は認定できず、仮にそのような本件位置
変更周知技術2があるとしても、これを乙18公報に記載された発明
25 に適用する動機付けはない。
(イ) 相違点Aについて
被告らは、乙18発明においても、テキストデータを動画コンテンツ
に同期させて、動画の内容に合わせて適切なタイミングでテキストデー
タが付与され、配信されることから、テキストデータにコメント付与時
間が含まれているといえると主張するが、被告らが主張する乙18発明
5 はそのような構成になっておらず、乙18公報の【0021】の記載か
らそのような構成を認定することもできない。
また、被告らは、仮に相違点Aが認められるとしても、テキストデー
タにコメント付与時間を含めることは、当業者にとって容易に想到でき
るとも主張するが、根拠のない主張である。
10 (ウ) 相違点Bについて
被告らは、乙18発明が「SMILで記述される」と主張するが、何
を指すのか意味不明である。仮にSMILで記述されるとしても、その
ことが水平方向に移動することを予定している根拠にはならないから、
相違点Bは存在する。
15 そして、本件発明1と乙17発明との相違点Aと同様の理由で、相違
点Bは容易想到な事項ではない。
(エ) 相違点Cについて
被告らは、乙18発明においても、テキストデータにコメント付与時
間が含まれていると主張するが、被告らが主張する乙18発明はそのよ
20 うな構成になっていない。
また、被告らは、仮に相違点Cが認められるとしても、コメントをコ
メント付与時間に対応する動画再生時間において表示させることは、当
業者にとって容易に想到できるとも述べるが、根拠のない主張である。
ウ 小括
25 以上によれば、本件発明1と乙18公報に記載された発明との相違点に
係る構成は、乙18公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
到できたものではないから、乙18公報を主引用例とする進歩性欠如の主
張は理由がない。
(3) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
5 が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙18公報を
主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
3 争点5-3(乙19公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由3))につい

(被告らの主張)
10 (1) 乙19公報に記載された発明
乙19公報には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙19
発明」といい、下記のアないしカの構成を、符号に対応させて「構成ア」な
どという。。

ア 複数のライブ閲覧者端末21から送信される単数又は複数のチャットの
15 メッセージを受信して各ライブ閲覧者端末21へ配信するライブ配信サー
バ100と、ライブ配信サーバ100に接続され動画を再生するとともに、
動画上にチャットのメッセージを表示するライブ閲覧者端末21とを有す
るライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末21であって、
イ 単数又は複数の発言(チャットのメッセージ)と、前記発言がなされた
20 時点におけるライブ開始からの差分時間を表す発言時間とを一時的に記憶
するメモリ(以下「差分時間メモリ」)と、
ウ ライブ配信サーバ100がライブ閲覧者端末21からチャット入力情報
を受信する毎にライブ配信サーバ100から送信されるチャット入力情報
を受信し、メモリに記憶する通信装置22と、
25 エ ライブ閲覧者端末21において、ライブ配信サーバ100に接続され動
画を再生させる動画再生部と、
オ 再生される動画の動画再生時間に基づいて、メモリに記憶された単数又
は複数のメッセージのうち、前記動画の動画再生時間に対応する発言時間
(以下「発言情報」)が対応づけられたメッセージをメモリから読み出し、
読み出したメッセージを動画上にスクロール表示するメディア専用プレイ
5 ヤー23と、
カ を有することを特徴するライブ閲覧者端末21。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙19発明との対比
本件発明1と乙19発明とを対比すると、次のとおりとなる。
10 (ア) 乙19発明の「チャット端末」が、本件発明1の「端末装置」に、
「複数の発言」が「第1コメント及び第2コメント」に、「読み出したメ
ッセージを動画上にスクロール表示する」が、本件発明1の「水平方向
に移動する」に、それぞれ相当する。
(イ) そして、乙19発明は、「動画の動画再生時間に対応する発言時間
15 (以下「発言情報」)が対応づけられたメッセージをメモリから読み出し、
読み出したメッセージを動画上にスクロール表示する」ものであるから、
この「発言情報」が「コメント情報」に相当する。
(ウ) さらに、複数の注釈の位置について限定はないから、動画の一部と複
数の注釈が重なることも予定されている。なお、文字列が動画の一部と
20 重なる技術については、動画と文字列を同時に配信するシステムにおい
て慣用技術(乙21ないし23、乙1の6添付非特許文献。以下「文字
動画重複慣用技術」ということがある)である。
(エ) したがって、本件発明1と乙19発明は次の相違点1で相違するが、
それ以外は一致する。
25 (相違点1)
本件発明1が、「第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が前
記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なると
判定された場合に前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならない
位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに対し、
乙19発明はかかる構成を備えていない点。
5 イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 主位的主張
乙19発明は、発言(チャット又はメッセージ)という文字列の表示
位置の相互関係について何らの限定もないものであるから、文字列の重
複表示による視認性低下という課題が内在する。よって、かかる課題を
10 解決するために本件位置変更公知技術を適用することにより、相違点1
を克服することは容易である。
原告は、乙19公報から文字列が重複表示されることを把握すること
はできない等と主張するが、複数の文字列の相互関係に何ら限定が無け
れば、必然的に文字列の重複表示という現象が起こるのであり、かかる
15 課題に直面するといえる。また、乙19発明において、閲覧者自身が文
字の表示位置を指定できるとしても、複数の閲覧者が複数の文字列を同
一の場所に設定しようとすれば、視認性が低下するのであり、文字列を
指定場所から少しずらす必要が生じることは明らかである。そのため、
乙19発明も、複数の文字列の重複表示による視認性低下という課題を
20 内在しているといえるから、閲覧者自身が文字の表示位置を指定できる
ことは阻害要因とはなりえない。
(イ) 予備的主張
仮に、乙19発明について文字列の重複表示による視認性低下という
課題が内在する点を措くとしても、乙19発明に本件位置変更慣用技術
25 を適用することにより、相違点1を克服することは容易である。
(ウ) 本件位置変更周知技術2に基づく主張
乙19発明も、コンピュータの画面に文字列を表示する技術であるこ
とから、乙17発明と同様に、本件位置変更周知技術2を適用する動機
付けが強く認められ、これにより相違点1を容易に克服することができ
る。
5 ウ 原告主張の相違点Aについて
原告は、本件発明1と乙19公報に記載された発明との間に、相違点A
(本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動する
のに対し、乙19公報に記載された発明では、移動方向が不明である点)
が存在すると主張する。
10 しかしながら、乙19発明においては「チャット情報データベース」に
格納されるデータとして、「スクロール方法」を挙げている(乙19【00
36】。画面中の水平方向への移動は、
) 「スクロール」の最も代表的な例で
あるから、かかる「スクロール」との記載により、チャットの文字が水平
方向に移動することが開示されていることは明らかであるから、相違点A
15 は存在しない。
仮に相違点Aが認められるとしても、コメントを水平方向に移動させる
技術は慣用技術であり、SMILで記述するといった慣用技術を適用すれ
ば極めて容易に克服できることから、相違点Aがあることで本件発明1の
進歩性が認められることはない。
20 エ 小括
以上によれば、本件発明1と乙19発明との相違点に係る構成は、乙1
9発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
(3) 本件発明2の進歩性
25 本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙19発明から容易に想到できるも
のである。
(原告の主張)
(1) 本件発明1の進歩性
5 ア 本件発明1と乙19公報に記載された発明との対比
被告らが主張する乙19発明を前提としても、本件発明1と乙19公報
に記載された発明との間には、被告らが認める相違点1の他に少なくとも
次の相違点が存在する。
(相違点A)
10 本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動する
のに対し、乙19公報に記載された発明では、移動方向が不明である点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
a 主位的主張について
15 乙19公報から文字列が重複表示されることを把握することはでき
ず、乙19発明において被告らが主張するような課題が内在している
とは言えないし、仮に内在しているとしても自明な課題ではない。
さらに、乙19公報では、閲覧者自身が、文字の表示位置の指定を
行うことが示されており(乙19公報の【0050】及び【図9】参
20 照)、この指定に従った位置に文字が表示されるものであるから、閲覧
者の意思にかかわらず自動的に文字列の位置を変更することには阻害
要因がある。
b 予備的主張について
前記aのとおり、乙19発明においては、文字列の重複表示による
25 視認性低下という課題が把握されないから、本件周知技術を適用する
動機付けもないうえ、さらに、これを適用するに阻害要因がある。
また、乙17公報に記載された発明との相違点1と同様に、乙19
発明に本件周知技術に記載された事項を適用しても相違点1に係る本
件発明1の構成には至らない。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
5 乙17公報に記載された発明との相違点1について述べたのと同様
に、本件位置変更周知技術2は認定できず、仮にそのような本件位置
変更周知技術2があるとしても、これを乙19発明に適用する動機付
けはない。
(イ) 相違点Aについて
10 被告らは、画面中の水平方向への移動が「スクロール」の最も代表的
な例であると述べるが、仮に水平方向への移動がスクロールの代表的な
例であったとしても、乙19公報に記載されていることにはならないの
であって、乙19公報に水平方向にスクロールすることの記載がない以
上、相違点Aがないとはいえない。
15 また、被告らは、コメントを水平方向に移動させる技術は慣用技術で
あると主張するが、そのような慣用技術が存在する根拠を示していない
し、乙19公報にはSMILを用いて記述する示唆すらない。
また、乙19公報の図9を根拠としてNTT発明を認定しているが、
図9の記載はコメントが移動しないことを前提とした技術であり、乙1
20 9発明においてコメント(チャットメッセージ)を水平方向に移動させ
るようにすることには阻害要因がある。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1と乙19公報に記載された発明との相違点に
係る構成は、乙19公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
25 到できたものではないから、乙19公報を主引用例とする進歩性欠如の主
張は理由がない。
(2) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙19公報を
主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
5 4 争点5-4(乙20文献を主引用例とする進歩性欠如(無効理由4))につい

(被告らの主張)
(1) 乙20文献に記載された発明
ア 引用発明の認定
10 乙20文献には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙2
0発明」といい、下記の(ア)ないし(オ)の構成を、符号に対応させて「構成
(ア)」などという。。

(ア) 映像を再生するとともに、当該映像に付与された単数又は複数のアノ
テーションを表示する表示装置であって
15 (イ) 前記アノテーションを映像の時間軸に合わせるための時間に関する情
報が保存されており
(ウ) 映像を再生する映像表示領域に当該動画を再生して表示する動画再生
部と
(エ) 前記再生される映像の時間軸に基づいて、アノテーションを読み出し、
20 当該アノテーションを動画上に表示する表示部を有する。
(オ) システム
イ 乙20発明の認定についての補足説明
(ア) 構成(イ)について
乙20文献においては、「カット検出サーバ等であらかじめ検出されて
25 いるカット単位でアノテーションしたい時間範囲を選択」したり、「動画
像の時間軸に沿ったアノテーションをリアルタイムに閲覧者が評価する」
等の作用が開示されており、かかる作用から、アノテーションを表示す
る表示装置には、アノテーションを映像の時間軸に合わせるための時間
に関する情報が保存されていることは明らかであるから、構成(イ)は認定
できる。
5 (イ) 構成(エ)について
前記(ア)の作用から、アノテーションを表示する表示装置には、再生さ
れる映像の時間軸に基づいて、アノテーションを読み出し、当該アノテ
ーションを動画上に表示する表示部が存在することは明らかであるから、
構成(エ)も認定できる。
10 (2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙20発明との対比
本件発明1と乙20発明とを対比すると、次のとおりとなる。
(ア) 乙20発明の「表示装置」が、本件発明1の「端末装置」に、「アノ
テーション」が「コメント」に、「前記アノテーションを映像の時間軸に
15 合わせるための時間に関する情報」が「当該コメントが付された時点に
おける、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す再生時間である
コメント付与時間」に、それぞれ相当する。
(イ) そして、乙20発明には、複数のアノテーションであるコメントと動
画の位置関係について限定はないから、動画の一部と複数のアノテーシ
20 ョンであるコメントが重なることも予定されている。なお、文字列が動
画の一部と重なる技術については、動画と文字列を同時に配信するシス
テムにおいて慣用技術であることは既述のとおりである。
(ウ) したがって、本件発明1と乙20発明は次の相違点1及び2で相違す
るが、それ以外は一致する。
25 (相違点1)
本件発明1においては、第1コメント及び第2コメントが、「水平方向
に移動する」のに対し、乙20発明においては、この点が不明である点。
(相違点2)
本件発明1が、第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が前
記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なると
5 判定された場合に前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならない
位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに対し、
乙20発明はかかる構成を備えているか否かが不明である点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
10 端末装置の画面上に表示されたテキストを水平又は垂直方向にスクロ
ール表示することは、動画編集ソフトやプログラミングの基本技術であ
り、慣用技術である(乙29ないし33、乙1の6添付の非特許文献)。
よって、乙20発明に対し、かかる慣用技術を適用することにより、相
違点1を克服することは容易である。
15 また、原告は、乙20発明に「コメントを水平方向に移動させる技術」
を適用すると、アノテーションを水平方向に移動させることで、カット
単位とは無関係にアノテーションが画面の左端あるいは右端から外れて
非表示となってしまい、ユーザによる選択が無意味になってしまう点で
阻害要因があると主張する。しかしながら、アノテーションを水平方向
20 に移動させるとしても、アノテーションが画面に表示される時間は調整
可能であるから、かかる水平移動を伴う表示時間を、ユーザの選択に合
わせれば、そのような問題は生じず、原告が主張する阻害要因は認めら
れない。
(イ) 相違点2について
25 a 主位的主張
乙20発明は、アノテーションであるコメントという文字列の表示
位置の相互関係について何らの限定もないものであるから、文字列の
重複表示による視認性低下という課題が内在する。よって、かかる課
題を解決するために本件位置変更公知技術を適用することにより、相
違点2を克服することは容易である。
5 b 予備的主張
仮に、乙20発明について文字列の重複表示による視認性低下とい
う課題が内在する点を措くとしても、乙20発明に本件位置変更慣用
技術を適用することにより、相違点2を克服することは容易である。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張
10 乙20発明は、アノテーションを動画上に表示する発明であり、ア
ノテーションも、本件位置変更周知技術2における図形等と同様にデ
ータであるから、乙17発明と同様に、アノテーション同士の衝突に
対して、本件位置変更周知技術2を適用する動機付けは強く認められ、
これにより相違点2を容易に克服することができる。
15 ウ 原告主張の相違点について
(ア) 相違点Aについて
原告は、本件発明1と乙20文献に記載された発明との間に相違点A
(本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるの
に対し、乙20文献に記載された発明では、そのようになっていない点)
20 が存在すると主張する。
しかしながら、前記(1)イのとおり、構成(イ)について、アノテーショ
ンを表示する表示装置の、アノテーションを映像の時間軸に合わせるた
めの時間に関する情報が、本件発明1の「コメント付与時間」に相当す
るものであるから相違点Aは存在しない。
25 (イ) 相違点Bについて
原告は、本件発明1と乙20文献に記載された発明との間に相違点B
(コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメ
ント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間にお
いて表示されるのに対し、乙20文献に記載された発明では、ユーザが
カット単位で選択した時間に表示される点)が存在すると主張する。
5 しかしながら、カット単位で時間を選択したとしても、かかる時間は
前記(ア)のとおり、「コメント付与時間」に相当する情報と対応している
から相違点Bは存在しない。
(ウ) 相違点Cについて
原告は、本件発明1と乙20文献に記載された発明との間に相違点C
10 (本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも
一部と重なって表示されるのに対し、乙20文献に記載された発明では、
コメントと動画とが別の領域に表示される点)が存在すると主張する。
しかしながら、乙20発明には、複数のアノテーションであるコメン
トと動画の位置関係について限定はないから、動画の一部と複数のアノ
15 テーションであるコメントが重なることも予定されており、相違点Cは
存在しない。原告が摘示する乙20文献の図4は、あくまで、アノテー
ションであるコメントと動画の位置関係についての一例にすぎない。
なお、仮に乙20発明におけるコメントと動画が重ならないものであ
り、相違点Cが存在するとしても、かかる相違点は慣用技術の適用によ
20 り克服できるものである。
エ 小括
以上によれば、本件発明1と乙20発明との相違点に係る構成は、乙2
0発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
25 (3) 本件発明2の進歩性
本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙20発明から容易に想到できるも
のである。
(原告の主張)
5 (1) 乙20文献に記載された発明
乙20発明の構成(イ)及び(エ)は乙20文献に記載されておらず、被告らの
主張する乙20発明の認定は、少なくとも、その点で誤っている。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙20文献に記載された発明との対比
10 本件発明1と乙20文献に記載された発明との間には、被告らが認める
相違点1及び2の他に少なくとも以下の相違点が存在する。
(相違点A)
本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるのに
対し、乙20文献に記載された発明では、そのようになっていない点。
15 (相違点B)
コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメン
ト及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において
表示されるのに対し、乙20文献に記載された発明では、ユーザがカット
単位で選択した時間に表示される点。
20 (相違点C)
本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも一
部と重なって表示されるのに対し、乙20文献に記載された発明では、コ
メントと動画とが別の領域に表示される点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
25 (ア) 相違点1について
被告らが主張するような慣用技術があるか否かは措くとして、乙20
文献に記載された発明に対して、アノテーションを水平方向に移動する
ようにする動機付けはない。
乙20文献に記載された発明は「カット単位でアノテーションしたい
時間範囲を選択する」ものである。そのような乙20文献に記載された
5 発明において、アノテーションを水平方向に移動させると、移動によっ
てカット単位とは無関係にアノテーションが画面の左端あるいは右端か
ら外れて非表示となってしまう。したがって、乙20文献に記載された
発明において、当業者であれば、選択されたカット単位とは無関係にア
ノテーションが非表示となるような変更を行うことは考えられず、被告
10 らが主張するような慣用技術があったとしても、これを乙20文献に記
載された発明に適用するには阻害要因がある。
よって、相違点1は容易想到な事項ではない。
(イ) 相違点2について
a 主位的主張について
15 乙20文献から文字列が重複表示されることは把握できず、むしろ、
乙20文献の図4の青枠部分によれば、アノテーションは一律に縦に
並んで配置されている。
そうすると、乙20文献に記載された発明においてはアノテーショ
ンが重複表示されることは想定されていないのであり、被告らが主張
20 するような課題は内在していない。
b 予備的主張について
前記aのとおり、乙20文献に記載された発明では、文字列が重複
表示されることは想定されておらず、文字列の重複表示による視認性
低下という課題がないため、本件周知技術を適用する動機付けもない。
25 また、乙17公報に記載された発明との相違点1と同様に、乙20
文献に記載された発明に本件周知技術に記載された事項を適用しても
相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
乙17公報に記載された発明との相違点1について述べたのと同様
に、本件位置変更周知技術2は認定できず、仮にそのような本件位置
5 変更周知技術2があるとしても、これを乙20文献に記載された発明
に適用する動機付けはない。
(ウ) 相違点Aについて
被告らは、アノテーションを映像の時間軸に合わせるための時間に関
する情報が本件発明1の「コメント付与時間」に相当すると主張するが、
10 乙20文献には本件発明1の「コメント付与時間」に相当するものはな
いし、仮にこれに相当するものがあるとしても、「サーバから端末に送信
される」点の記載はない。
被告らの主張を前提にすると、「時間に関する情報」は「表示装置」そ
のものに保存されているのであるから、「サーバから端末に送信される」
15 ことはあり得ず、相違点Aの存在は明らかである。
(エ) 相違点Bについて
被告らは、カット単位で時間を選択したとしても、かかる時間は「コ
メント付与時間」に相当する情報と対応していると主張するが、本件発
明1における「コメント付与時間」とは「コメントが付与された時点に
20 対応する、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間
である」(構成要件1D)のに対して、「カット単位」は「アノテーショ
ンしたい時間範囲」としてユーザによって選択されるものであって(乙
20文献の70頁「4.2テキストアノテーション」 、アノテーション

を付与した時点とは無関係であるから、乙20文献には「コメント付与
25 時間」に相当する開示はなく、相違点Bは存在している。
(オ) 相違点Cについて
被告らは、乙20発明にはコメントと動画の位置関係について限定は
ないと述べるが、乙20文献に記載された発明では、アノテーション
(コメント)と動画とが別の領域に表示される、という明確な限定があ
る。被告らは、図4は、あくまで、アノテーションであるコメントと動
5 画の位置関係についての一例にすぎないとも述べるが、動画上にアノテ
ーションを表示する旨の開示は乙20文献には一切ないから、相違点C
は存在している。
被告らは、相違点Cは慣用技術の適用により克服できるとも主張する
が、あえて動画とアノテーションとを別の領域に表示させる乙20文献
10 において、アノテーションが動画に重なるように表示させる動機付けは
ない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1と乙20文献に記載された発明との相違点に
係る構成は、乙20文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
15 到できたものではないから、乙20文献を主引用例とする進歩性欠如の主
張は理由がない。
(3) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙20文献を
20 主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
5 争点5-5(乙21公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由5))につい

(被告らの主張)
(1) 乙21公報に記載された発明
25 ア 引用発明の認定
乙21公報には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙2
1発明」といい、下記の(ア)ないし(エ)の構成を、符号に対応させて「構成
(ア)」などという。。

(ア) サーバと、これとネットワークを介して接続された複数の端末装置と、
を備える動画とテキストを同時に配信するシステムであって、
5 (イ) 動画を再生するとともに、動画上に単数又は複数のテキストを、両者
が同時に見えるように表示する複数の情報端末装置200を備え、
(ウ) 単数又は複数のテキストと、動画再生開始時点からの相対時刻情報
(当該動画の再生中におけるテキストの再生時刻情報)とを一時的に記
憶する表示メモリ272と、
10 (エ) 動画を表示する動画エリアに当該動画を再生して表示するとともに、
再生される動画の動画再生時間に基づいて、表示メモリ272に記憶さ
れた情報のうち、動画の動画再生時間に対応する相対時刻に対応する単
数又は複数のテキストを表示メモリ272から読み出し、当該読み出さ
れたテキストを、データエリアにスクロールさせるとともに動画の少な
15 くとも一部と重なって表示させる表示制御部270とを有する。
イ 乙21発明の認定についての補足説明
(ア) 構成(イ)について
原告は、乙21公報には「動画上に複数のテキストを、両者が同時に
見えるように表示する」ことは開示されていないと主張するが、乙21
20 公報において、テキストが単数でなければならないとの限定はなく、複
数のテキストを表示することも想定できる。
(イ) 構成(ウ)について
原告は、乙21公報に「テキストをデータエリアにスクロールさせる」
との記載はないと主張する。
25 しかしながら、乙21公報の【0041】では「データ画像のスクロ
ールが可能である」と記載されている。本発明において、「静止画像デー
タ」と「テキストデータ」は、ともに「データコンテンツ」の例として
列挙されているものであるから(乙21公報の【0003】 、TBS発

明においては両データ間に有意な技術的差異は無いものとして扱われて
いることが明らかである。そうであれば、「データ画像のスクロールが可
5 能」であれば、テキストをデータエリアにスクロールさせることができ
ると認定できる。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙21発明との対比
本件発明1と乙21発明とを対比すると、次のとおりとなる。
10 (ア) 乙21発明の「動画とテキストを同時に配信するシステム」が、本件
発明1の「コメント配信システム」に、「複数のテキスト」が、「第1コ
メント及び第2コメント」に、「情報端末装置200」が、「端末装置」
に、「相対時刻」が、「コメント付与時間」に、「相対時刻情報」が、「コ
メント情報」に、「表示制御部270」が、「表示させる手段」に、「スク
15 ロールさせる」が、「水平方向に移動する」に、それぞれ相当する。
(イ) したがって、本件発明1と乙21発明は次の相違点1で相違するが、
それ以外は一致する。
(相違点1)
本件発明1が、第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が前
20 記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なると
判定された場合に前記第1コメントと前記第2コメントとが重ならない
位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに対し、
乙21発明はかかる構成を備えているか否かが不明な点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
25 (ア) 主位的主張
乙21発明は、テキストという文字列の表示位置の相互関係について
何らの限定もないものであるから、文字列の重複表示による視認性低下
という課題が内在する。よって、かかる課題を解決するために本件位置
変更公知技術を適用することにより、相違点1を克服することは容易で
ある。
5 (イ) 予備的主張
仮に、乙21発明について文字列の重複表示による視認性低下という
課題が内在する点を措くとしても、乙21発明に対し、本件位置変更慣
用技術を適用することにより、相違点1を克服することは容易である。
(ウ) 本件位置変更周知技術2に基づく主張
10 乙21発明も、コンピュータの画面に文字列を表示する技術であるこ
とから、乙17発明と同様に、本件位置変更周知技術2を適用する動機
付けが強く認められ、これにより相違点1を容易に克服することができ
る。
ウ 原告主張の相違点について
15 (ア) 相違点Aについて
原告は、本件発明1と乙21公報に記載された発明との間に相違点A
(本件発明1で表示されるコメントは、動画を視聴中のユーザから付与
されたものであるのに対し、乙21公報に記載された発明で表示される
コメントは、動画の視聴とは無関係に予め用意されたものである点)が
20 存在すると主張し、その根拠として、乙21公報の【0050】にて
「映画における登場人物のプロフィール」が表示されていることを指摘
している。
しかしながら、かかる記載は、表示形態のごく一例にすぎず、ユーザ
が動画にコメントを付すことが技術常識に属する技術(周知又は慣用技
25 術)であることに照らせば、乙21公報は、視聴中のユーザから付与さ
れるコメントを表示する場合も想定しているものである。
乙21発明は、文字コードからなるデータを扱うという趣旨で「テキ
スト」という用語を用いているにすぎず、ユーザによって発言されたコ
メントを排除するものではない。インターネットで公開されるインタラ
クティブなサービスではテキスト情報の送受信を行う場合、ユーザが投
5 稿したコメントの送受信に容易に拡張可能であることは当業者の常識で
ある。したがって、原告が主張する相違点Aは存在しない。
また、本件発明1は、コメントを付与する主体として、ユーザに限定
するものではないから、当該動画の配信者等によるコメントの付与も、
その技術的範囲に含まれるといえる。
10 したがって、仮に、乙21発明のコメントが、ユーザにより付与され
るものではないとしても、原告が主張する相違点Aは、本件発明1との
相違点とはいえない。
(イ) 相違点Bについて
原告は、本件発明1と乙21公報に記載された発明との間に相違点B
15 (本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるの
に対し、乙21公報に記載された発明では、そのようになっていない点)
が存在すると主張する。
しかしながら、乙21発明における「相対時刻情報」は「コメント付
与時間」に相当し、これがネットワークを介してサーバを経由して端末
20 に送られることは開示されているから、相違点Bは存在しない。
(ウ) 相違点Cについて
原告は、本件発明1と乙21公報に記載された発明との間に相違点C
(コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメ
ント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間にお
25 いて表示されるのに対し、乙21公報に記載された発明では、そのよう
になっているか不明である点)が存在すると主張する。
しかしながら、乙21発明においても、動画再生開始時点からの相対
時刻情報が用いられ、これに対応する動画再生時間においてコメントが
表示されるから、相違点Cは存在しない。
なお、乙21公報【0051】には、「動画再生開始時点からの相対時
5 刻情報(当該動画の再生中におけるデータコンテンツの再生時刻情報)」
と明記されており、かかる記載から、「相対時刻」が「コメントが付与さ
れた時点」であることは明らかである。
(エ) 相違点D及びD’について
原告は、本件発明1と乙21公報に記載された発明との間に相違点D
10 (本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動す
るのに対し、乙21公報に記載された発明では、画像が移動するにすぎ
ず、その移動方向も不明である点)あるいは相違点D’(本件発明1では、
第1コメント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生
時間において水平方向に移動するのに対し、乙21公報に記載された発
15 明では、画像が移動するにすぎず、しかも、この移動は動画再生時間と
対応せず、その移動方向も不明である点)が存在すると主張する。
仮に、「スクロール」が「水平方向に移動」を指すか不明であるとして
も、コメントを水平方向に移動させる技術は慣用技術であるから、この
点をもって本件発明1の進歩性が認められることはない。
20 エ 小括
以上によれば、本件発明1と乙21発明との相違点に係る構成は、乙2
1発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
(3) 本件発明2の進歩性
25 本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙21発明から容易に想到できるも
のである。
(原告の主張)
(1) 乙21公報に記載された発明
5 被告らが主張する乙21発明の認定は、少なくとも以下の点で誤っている。
ア 構成(イ)について
乙21公報には、「動画上に複数のテキストを、両者が同時に見えるよう
に表示する」ことは開示されていないから、構成(イ)は記載されていない。
イ 構成(エ)について
10 乙21公報には、「テキストを、データエリアにスクロールさせる」こと
の記載はないから、構成(エ)は記載されていない。
乙21公報の【0041】に記載されるのは「データ画像」のスクロー
ルであって、「テキスト」のスクロールではない。さらに言えば、画像がス
クロールされる方向も不明である。なお、乙21公報の【0003】には
15 「データコンテンツとは、テキストデータや静止画像データ等である」と
の記載があり、「テキスト」と「画像」は明確に区別されているから、【0
041】の「データ画像」が「テキスト」を含むと解する余地はない。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙21公報に記載された発明との対比
20 本件発明1と乙21公報に記載された発明との間には、被告らが認める
相違点1の他に少なくとも以下の相違点AないしC及び相違点D又はD’
が存在する。
(相違点A)
本件発明1で表示されるコメントは、動画を視聴中のユーザから付与さ
25 れたものであるのに対し、乙21公報に記載された発明で表示されるコメ
ントは、動画の視聴とは無関係に予め用意されたものである点。
(相違点B)
本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるのに
対し、乙21公報に記載された発明では、そのようになっていない点。
(相違点C)
5 コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメン
ト及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において
表示されるのに対し、乙21公報に記載された発明では、そのようになっ
ているか不明である点。
(相違点D)
10 本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが水平方向に移動する
のに対し、乙21公報に記載された発明では、画像が移動するにすぎず、
その移動方向も不明である点。
(相違点D’)
本件発明1では、第1コメント及び第2コメントがコメント付与時間に
15 対応する動画再生時間において水平方向に移動するのに対し、乙21公報
に記載された発明では、画像が移動するにすぎず、しかも、この移動は動
画再生時間と対応せず、その移動方向も不明である点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
20 a 主位的主張について
乙21公報に記載された発明では、複数のテキストを同時に表示す
ることは想定されていないのであり、被告FC2が主張するような課
題を内在していない。
b 予備的主張について
25 前記aのように、乙21公報に記載された発明では、テキストが重
複表示されることは想定されておらず、文字列の重複表示による視認
性低下という課題がないため、本件周知技術を適用する動機づけはな
い。
また、乙17公報に記載された発明との相違点1と同様に、乙21
公報に記載された発明に本件周知技術に記載された事項を適用しても
5 相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
乙17公報に記載された発明との相違点1について述べたのと同様
に、本件位置変更周知技術2は認定できず、仮にそのような本件位置
変更周知技術2があるとしても、これを乙21公報に記載された発明
10 に適用する動機付けはない。
(イ) 相違点Aについて
乙21公報(【0050】)において、表示されるデータコンテンツは、
映画における登場人物のプロフィールである。映画を視聴中のユーザが
登場人物のプロフィールを付与するとは到底考えられず、予め(例えば
15 映画の製作者が)用意したものと考えるのが相当であるから、相違点A
は存在している。
そして、乙21公報に記載された発明において相違点Aに係る本件発
明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ) 相違点B及びCについて
20 被告らは、乙21公報の「相対時刻情報」が本件発明1の「コメント
付与時間」に相当すると主張する。しかしながら、乙21公報では、動
画を視聴中のユーザからコメントが付与されない(相違点A)から、乙
21発明には本件発明1の「コメント付与時間」に対応するものはない。
仮に乙21公報の(動画とともに表示される)「データコンテンツ」が
25 「コメント」に対応するとしても、乙21公報における「相対時刻情報」
は、「データコンテンツの再生時刻情報」(すなわち、動画におけるデー
タコンテンツを再生する時点)であって、「データコンテンツが付与され
た時点」ではない(乙21公報で表示されるデータコンテンツは、映画
における登場人物のプロフィールであるが(【0050】、映画再生中に

プロフィールが付与されるとは到底考えられない)。この点からも、乙2
5 1公報には本件発明1の「コメント付与時間」に対応するものはないか
ら、相違点B及びCが存在するのは明らかである。
そして、乙21公報に記載された発明において相違点B及びCに係る
本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことで
はない。
10 (エ) 相違点D及びD’について
被告らは、コメントを水平方向に移動させる技術は慣用技術であるか
ら、この点をもって進歩性が認められることはないと述べるが、被告ら
は、そのような慣用技術があることを示していない。
また、仮に慣用技術があるとしても、乙21公報に記載された発明に
15 適用する動機付けがあることを述べていない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1と乙21公報に記載された発明との相違点に
係る構成は、乙21公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
到できたものではないから、乙21公報を主引用例とする進歩性欠如の主
20 張は理由がない。
(3) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙21公報を
主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
25 6 争点5-6(乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由6))につい

(被告らの主張)
(1) 乙24公報に記載された発明
乙24公報には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙24
発明」といい、下記のアないしオの構成を、符号に対応させて「構成ア」な
5 どという。。

ア 動画を再生するとともに、前記動画上に単数又は複数のチャットメッセ
ージを表示する表示装置であって、
イ 前記チャットメッセージを記録するチャットサーバと
ウ 前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示
10 する動画再生部と
エ 前記チャットメッセージを読み出し、当該チャットメッセージを、前記
チャットメッセージを表示する領域である第2の表示欄に表示するチャッ
トメッセージ表示部を有する
オ ことを特徴とする表示装置。
15 (2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙24発明との対比
本件発明1と乙24発明とを対比すると、次のとおりとなる。
(ア) 乙24発明の「複数のチャット」が本件発明1の「第1コメント及び
第2コメント」に、「チャットメッセージ」が「コメント」に、「チャッ
20 トメッセージ」が「コメント情報」にそれぞれ相当する。
(イ) したがって、本件発明1と乙24発明は次の相違点1及び2で相違す
るが、それ以外は一致する。
(相違点1)
本件発明1においては、第1コメント及び第2コメントが、「水平方向
25 に移動する」のに対し、乙24発明においては、この点が不明である点。
(相違点2)
本件発明1が、第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が、
前記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なる
と判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメントとが重なら
ない位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに
5 対し、乙24発明は、かかる構成を備えているか否かが不明である点。
イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
端末装置の画面上に表示されたテキストを水平又は垂直方向にスクロ
ール表示することは、動画編集ソフトやプログラミングの基本技術であ
10 り、慣用技術である(乙29ないし33、乙1の6添付の非特許文献)。
よって、乙24発明に対し、かかる慣用技術を適用することにより、相
違点1を克服することは容易である。
原告は、乙24公報の図11にはスクロールバーが示されていないこ
とから、乙24公報に記載された発明においては、コメントが移動しな
15 い」と認定すべきであると主張するが、図においてスクロールバーが表
示されていないという事情から、直ちにコメントがスクロールできない
と判断することはできない。
原告は、乙24公報の図11では、会話が時系列で鉛直方向に並んで
いるのだから、仮にスクロールするとしても、水平方向でなく鉛直方向
20 であるため、乙24公報に記載された発明に、コメント水平方向に移動
させる慣用技術を適用する動機付けは無い旨も主張するが、水平方向へ
のスクロールという技術が、スクロールの代表的な態様であることから、
スクロール方向を縦から横に置換することは、当御者において極めて容
易に相当する事項であるから、このような動機付けは認められる。
25 (イ) 相違点2について
a 主位的主張
乙24発明は、文字列の表示位置の相互関係について何らの限定も
ないものであるから、文字列の重複表示による視認性低下という課題
が内在する。よって、かかる課題を解決するために本件位置変更公知
技術を適用することにより、相違点2を克服することは容易である。
5 原告は、乙24発明には上記の課題はないと主張するが、乙24発
明において、文字列を縦に隙間を空けて配置する構成を維持しようと
すれば、1つの動画に対して数十人、数百人単位の視聴者がほぼ同時
にコメントを付与した際、ひとつひとつのコメントの表示時間が極め
て短くなってしまい、視認できなくなってしまう。そうすると、文字
10 列を重複表示するほかなくなることは当業者にとって明らかであるか
ら、上記の課題があると当業者は認識することができる。
b 予備的主張
仮に、乙24発明について文字列の重複表示による視認性低下とい
う課題が内在する点を措くとしても、乙24発明に本件位置変更慣用
15 技術を適用することにより、相違点2を克服することは容易である。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張
乙24発明も、コンピュータの表示画面において、動画を再生する
とともに、その動画上に単数又は複数のチャットメッセージを表示す
る技術であるから、乙17発明と同様に、本件位置変更周知技術2を
20 適用する動機付けが強く認められ、これにより相違点2を容易に克服
することができる。
ウ 原告主張の相違点について
(ア) 相違点Aについて
原告は、本件発明1と乙24公報に記載された発明との間に相違点A
25 (本件発明1で表示されるコメントは、動画を視聴中のユーザから付与
されたものであるのに対し、乙24公報に記載された発明で表示される
コメントは、そのようになっているか不明である点)が存在すると主張
する。
しかしながら、乙24発明は、ビデオの視聴と視聴者間の文字による
リアルタイムでのコミュニケーションのためのものであるから、そこで
5 のコメントが、動画を視聴中のユーザが付与したものであることは明ら
かであり、相違点Aは認められない。
また、本件発明1においては、コメントを付与する主体として、ユー
ザに限定するものではなく、当該動画の配信者等によるコメントの付与
も、その技術的範囲に含まれるといえる。この点からも、乙24発明は、
10 コメント付与者の観点において、本件発明1と相違しない。
(イ) 相違点Bについて
原告は、本件発明1と乙24公報に記載された発明との間に相違点B
(本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるの
に対し、乙24公報に記載された発明では、そのようになっているのか
15 不明である点)が存在すると主張する。
乙24発明は、ビデオの視聴と視聴者間の文字によるリアルタイムで
のコミュニケーションのためのものであるから、かかるリアルタイム性
を確保するために、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるも
のである。そのため、相違点Bは認められない。
20 (ウ) 相違点Cについて
原告は、本件発明1と乙24公報に記載された発明との間に相違点C
(コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメ
ント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間にお
いて表示されるのに対し、乙24公報に記載された発明では、そのよう
25 になっているか不明である点)が存在すると主張する。
乙24発明は、ビデオの視聴と視聴者間の文字によるリアルタイムで
のコミュニケーションのためのものであるから、第1コメント及び第2
コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において表示され
るといえるため、相違点Cは認められない。
(エ) 相違点Dについて
5 原告は、本件発明1と乙24公報に記載された発明との間に相違点D
(本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも
一部に重なって表示されるのに対し、乙24公報に記載された発明では、
第1の表示欄に動画が表示され、第2の表示欄にチャットメッセージが
表示され、動画とチャットメッセージが重ならない点)が存在すると主
10 張する。
しかしながら、乙24公報の図11を見れば、第1コメント及び第2
コメントが動画の少なくとも一部に重なって表示されていることが明ら
かである。したがって、相違点Dは認められない。
エ 小括
15 以上によれば、本件発明1と乙24発明との相違点に係る構成は、乙2
4発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
(3) 本件発明2の進歩性
本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
20 ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙24発明から容易に想到できるも
のである。
(原告の主張)
(1) 乙24公報に記載された発明
25 被告らが主張する乙24発明が、乙24公報のいずれの記載から認定され
るのか不明であり、乙24発明の認定は争う。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙24公報に記載された発明との対比
本件発明1と乙24公報に記載された発明との間には、被告らが認める
相違点1及び2の他に少なくとも以下の相違点AないしDが存在する。
5 また、仮に乙24公報の図11を想定して引用発明を認定するのであれ
ば、図11に「スクロールバー116」は示されていないのであるから、
被告らが認定する相違点1は正しくは以下の相違点1’のように認定され
るべきである。
(相違点1’)
10 本件発明1においては、第1コメント及び第2コメントが、「水平方向に
移動する」のに対し、乙24公報に記載された発明においては、コメント
が移動しない点。
(相違点A)
本件発明1で表示されるコメントは、動画を視聴中のユーザから付与さ
15 れたものであるのに対し、乙24公報に記載された発明で表示されるコメ
ントは、そのようになっているか不明である点。
(相違点B)
本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるのに
対し、乙24公報に記載された発明では、そのようになっているのか不明
20 である点。
(相違点C)
コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメン
ト及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において
表示されるのに対し、乙24公報に記載された発明では、そのようになっ
25 ているか不明である点。
(相違点D)
本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも一
部に重なって表示されるのに対し、乙24公報に記載された発明では、第
1の表示欄に動画が表示され、第2の表示欄にチャットメッセージが表示
され、動画とチャットメッセージが重ならない点。
5 イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1あるいは相違点1’について
相違点1につき、被告らは、端末装置の画面上に表示されたテキスト
を水平又は垂直方向にスクロール表示することは、動画編集ソフトやプ
ログラミングの基本技術であり、慣用技術であるとして容易に克服でき
10 る旨を主張する。
しかしながら、そのような慣用技術があるか否かは措くとして、乙2
4公報に記載された発明に対して、チャットメッセージを水平方向に移
動するようにする動機付けはない。
また、乙24公報に記載された発明においてチャットメッセージが移
15 動する方向は明記されていないものの、乙24公報に記載された発明で
は「スクロールバー116を上下させる」ことによって移動させるのだ
から、チャットメッセージは上下(鉛直)方向に移動すると考えるのが
自然である。
鉛直方向に延びているスクロールバー116を上下させることによっ
20 て、チャットメッセージが水平方向に移動するのは極めて不自然となる
から、当業者であればそのような不自然な画面設計を行うとは考えられ
ず、乙24公報に記載された発明において、チャットメッセージを水平
方向に移動するようにするのは阻害要因がある。
よって、相違点1あるいは相違点1’は容易想到な事項ではない。
25 (イ) 相違点2について
a 主位的主張について
文字列が重複表示されることは乙24公報から把握できない。
また、仮に乙24公報の図11を想定して引用発明を認定するので
あれば、図11では文字列は縦に隙間を空けて配置されるのであり、
そもそも文字列が重複表示されることはない。
5 そうすると、いずれにしても乙24公報に記載された発明が、被告
らが主張するような課題を内在しているとは言えないし、仮に内在し
ているとしても自明な課題ではない。
被告らは、1つの動画に対して数十人、数百人単位の視聴者がほぼ
同時にコメントを付与した際に上記の課題がある旨を述べるが、乙2
10 4公報に記載された発明でそのようなことは想定されていない。また、
仮にそのようなことがあったとしても、文字列を重複表示するほかな
くなるとは言えない。
b 予備的主張について
前記aのように、乙24公報に記載された発明において、文字列の
15 重複表示による視認性低下という課題が把握されないため、本件周知
技術を適用する動機付けはない。
また、乙17公報に記載された発明との相違点1と同様に、乙24
公報に記載された発明に本件周知技術に記載された事項を適用しても
相違点2に係る本件発明1の構成には至らない。
20 c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
乙17公報に記載された発明との相違点1について述べたのと同様
に、本件位置変更周知技術2は認定できず、仮にそのような本件位置
変更周知技術2があるとしても、これを乙24公報に記載された発明
に適用する動機付けはない。
25 (ウ) 相違点AないしCについて
相違点AないしCに関し、被告らは、乙24公報に記載された発明は、
ビデオの視聴と視聴者間の文字によるリアルタイムでのコミュニケーシ
ョンのためのものであると述べるが、乙24公報にそのような記載はな
い。
乙24公報には「本発明は、ビデオ番組の視聴者間のビデオ番組及び
5 テキスト通信の同時視聴に関する」(乙24公報の訳文3頁4~5行)や、
「特に人気を博したインターネット機能の1つには、ユーザー間のリア
ルタイムテキスト会話を可能とするものがある。 (同3頁13~14行)

との記載があるが、これらの記載を考慮しても乙24公報に記載された
発明が「ビデオの視聴と視聴者間の文字によるリアルタイムでのコミュ
10 ニケーション」とは言えない。したがって、相違点AないしCは存在し
ている。
そして、乙24公報に記載された発明において相違点AないしCに係
る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たこと
ではない。
15 (エ) 相違点Dについて
乙24公報に記載された発明において相違点Dに係る本件発明1の構
成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1と乙24公報に記載された発明との相違点に
20 係る構成は、乙24公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
到できたものではないから、乙24公報を主引用例とする進歩性欠如の主
張は理由がない。
(3) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
25 が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙24公報を
主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
7 争点5-7(乙25文献を主引用例とする進歩性欠如(無効理由7))につい

(被告らの主張)
(1) 乙25文献に記載された発明
5 ア 引用発明の認定
乙25文献には、次の発明が記載されている(以下、この発明を「乙2
5発明」といい、下記の(ア)ないし(オ)の構成を、符号に対応させて「構成
(ア)」などという。。

(ア) 映像を再生するとともに、前記映像上に単数又は複数のコメントを表
10 示する表示装置であって、
(イ) ウインドウ110の下部にあるメッセージ・サブジェクトは、視聴者
が視聴しているAV製品のタイムライン・ポイントに実質的に対応する
開始時刻を有しており、ストレージ・システム1230は、視聴者が入
力したコメント(以下、入力された時間を「コメント入力情報」という。)
15 とともに、AV製品のタイムラインのポイントとの関係に関する情報
(以下「CT関係情報」という)を蓄積する。
(ウ) AV製品を表示する領域であるウインドウ120(図1B)に当該A
V製品を再生して表示する動画再生部と、
(エ) 前記再生されるAV製品の再生時間に基づいて、ストレージ・システ
20 ム1230に蓄積されたCT関係情報のうち、前記AV製品のタイムラ
インに対応するコメント入力時間に対応するコメントをストレージ・シ
ステム1230から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメ
ントを表示する領域であるウインドウ110及び150に表示するコメ
ント表示部と、を有する
25 (オ) ことを特徴とする表示装置。
イ 乙25発明の認定についての補足説明
(ア) 構成(イ)について
原告は、構成(イ)において、コメント入力情報を蓄積する点は、乙25
文献からは認定できないと主張するが、コメント入力情報に付随するA
V製品のタイムラインのポイントとの関係に関する情報(CT関係情報)
5 が蓄積されることから(乙25【0059】 、コメント入力情報も蓄積

していると考えられる。
(イ) 構成(エ)について
原告は、構成(エ)において、「前記AV製品のタイムラインに対応する
コメント入力時間に対応するコメントをストレージ・システム1230
10 から読み出」して表示を行う点は、乙25文献から認定できないと主張
するが、乙25発明の作用上、かかる表示を行うことは明らかである。
(2) 本件発明1の進歩性
ア 本件発明1と乙25発明との対比
本件発明1と乙25発明とを対比すると、次のとおりとなる。
15 (ア) 乙25発明と本件発明1は、「映像」が「動画」に、「AV製品」が
「動画」に、「単複数コメント」が「第1コメント及び第2コメント」に、
「タイムライン・ポイントに実質的に対応する開始時刻」が「コメント
付与時間」に、「タイムラインのポイントとの関係に関する情報」が「コ
メント情報」に相当する。
20 (イ) したがって、本件発明1と乙25発明は次の相違点1及び2で相違す
るが、それ以外は一致する。
(相違点1)
本件発明1においては、第1コメント及び第2コメントが、「水平方向
に移動する」のに対し、乙25発明においては、この点が不明である点。
25 (相違点2)
本件発明1が、第2コメントを動画上に表示させる際の表示位置が、
前記第1コメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と重なる
と判定された場合に、前記第1コメントと前記第2コメントとが重なら
ない位置に表示されるよう調整する表示位置制御部とを備えているのに
対し、乙25発明は、かかる構成を備えているか否かが不明である点。
5 イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
端末装置の画面上に表示されたテキストを水平又は垂直方向にスクロ
ール表示することは、動画編集ソフトやプログラミングの基本技術であ
り、慣用技術である(乙29ないし33、乙1の6添付の非特許文献)。
10 よって、乙25発明に対し、かかる慣用技術を適用することにより、相
違点1を克服することは容易である。
(イ) 相違点2について
a 主位的主張
乙25発明は、文字列の表示位置の相互関係について何らの限定も
15 ないものであるから、文字列の重複表示による視認性低下という課題
が内在する。よって、かかる課題を解決するために本件位置変更公知
技術を適用することにより、相違点2を克服することは容易である。
b 予備的主張
仮に、乙25発明について文字列の重複表示による視認性低下とい
20 う課題が内在する点を措くとしても、乙25発明に本件位置変更慣用
技術を適用することにより、相違点2を克服することは容易である。
c 本件位置変更周知技術2に基づく主張
乙25発明も、コンピュータの表示画面において、動画を再生する
とともに、その動画上に単数又は複数のチャットメッセージを表示す
25 る技術であるから、乙17発明と同様に、本件位置変更周知技術2を
適用する動機付けが強く認められ、これにより相違点2を容易に克服
することができる。
ウ 原告主張の相違点について
(ア) 相違点Aについて
原告は、本件発明1と乙25文献に記載された発明との間に相違点A
5 (本件発明1で表示されるコメントは、動画を視聴中のユーザから付与
されたものであるのに対し、乙25文献に記載された発明で表示される
コメントは、そのようになっているか不明である点)が存在すると主張
する。
しかしながら、乙25発明において、視聴者がコメントを入力できる
10 ことは明らかである(乙25文献【0045】 。そのため、相違点Aは

認められない。
また、本件発明1においては、コメントを付与する主体として、ユー
ザに限定するものではなく、当該動画の配信者等によるコメントの付与
も、その技術的範囲に含まれるといえる。したがって、乙25発明は、
15 コメント付与者の観点においても、本件発明1と相違しない。
(イ) 相違点Bについて
原告は、本件発明1と乙25文献に記載された発明との間に相違点B
(本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるの
に対し、乙25文献に記載された発明では、そのようになっているのか
20 不明である点)が存在すると主張する。
しかしながら、乙25発明においても、コメント付与時間が端末に送
信されているから、相違点Bは存在しない。
(ウ) 相違点Cについて
原告は、本件発明1と乙25文献に記載された発明との間に相違点C
25 (コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメ
ント及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間にお
いて表示されるのに対し、乙25文献に記載された発明では、そのよう
になっているか不明である点)が存在すると主張する。
しかしながら、乙25文献の【0042】においては、「アウトライ
ン・ウインドウ110の下部にあるメッセージ・サブジェクトは、視聴
5 者が視聴しているAV製品のタイムライン・ポイントに実質的に対応す
る開始時刻を有する」とあり、乙25発明においても、コメントが表示
されるタイミングについては、第1コメント及び第2コメントがコメン
ト付与時間に対応する動画再生時間において表示されているといえるか
ら、相違点Cは存在しない。
10 (エ) 相違点Dについて
原告は、本件発明1と乙25文献に記載された発明との間に相違点D
(本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも
一部に重なって表示されるのに対し、乙25文献に記載された発明では、
ウィンドウ120に動画が表示され、ウィンドウ110及び150にコ
15 メントが表示され、動画とコメントが重ならない点)が存在すると主張
する。
しかしながら、乙25発明においても、第1コメント及び第2コメン
トが動画の少なくとも一部に重なって表示されているといえるから、相
違点Dは存在しない。
20 エ 小括
以上によれば、本件発明1と乙25発明との相違点に係る構成は、乙2
5発明に、公知技術及び慣用技術を適用することにより、当業者が容易に
想到できるので、本件発明1は進歩性を有しない。
(3) 本件発明2の進歩性
25 本件発明2は、本件発明1の「サーバ」を「動画配信サーバ」と「コメン
ト配信サーバ」に分けただけのものであり、本件発明1と実質的に同一の発
明であるから、前記(2)と同様の理由で、乙25発明から容易に想到できるも
のである。
(原告の主張)
(1) 乙25文献に記載された発明
5 被告らが主張する乙25発明の認定は、少なくとも以下の点で誤っている。
ア 構成(イ)について
構成(イ)において、コメント入力情報を蓄積する点は、乙25文献からは
認定できない。
なお、乙25文献の【0059】には「音声映像作品のためのタイムラ
10 インのポイントとの関連付けと共にメッセージを記憶する。」との記載があ
る(乙25の訳文13頁最終行ないし14頁1行)。しかしながら、被告ら
が述べる「コメント入力情報」とは視聴者がコメントを入力した時間であ
るところ、乙25文献の「タイムラインのポイント」は「視聴者がコメン
トを入力した時間」とは言えない。
15 イ 構成(エ)について
構成(エ)において、「前記AV製品のタイムラインに対応するコメント入
力時間に対応するコメントをストレージ・システム1230から読み出」
して表示を行う点は、乙25文献から認定できない。
(2) 本件発明1の進歩性
20 ア 本件発明1と乙25文献に記載された発明との対比
本件発明1と乙25文献に記載された発明との間には、被告らが認める
相違点1及び2の他に少なくとも次の相違点が存在する。
(相違点A)
本件発明1で表示されるコメントは、動画を視聴中のユーザから付与さ
25 れたものであるのに対し、乙25文献に記載された発明で表示されるコメ
ントは、そのようになっているか不明である点。
(相違点B)
本件発明1では、サーバから端末にコメント付与時間が送信されるのに
対し、乙25文献に記載された発明では、そのようになっているのか不明
である点。
5 (相違点C)
コメントが表示されるタイミングに関し、本件発明1では、第1コメン
ト及び第2コメントがコメント付与時間に対応する動画再生時間において
表示されるのに対し、乙25文献に記載された発明では、そのようになっ
ているか不明である点。
10 (相違点D)
本件発明1では、第1コメント及び第2コメントが動画の少なくとも一
部に重なって表示されるのに対し、乙25文献に記載された発明では、ウ
ィンドウ120に動画が表示され、ウィンドウ110及び150にコメン
トが表示され、動画とコメントが重ならない点。
15 イ 相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 相違点1について
相違点1につき、被告らは、端末装置の画面上に表示されたテキスト
を水平又は垂直方向にスクロール表示することは、動画編集ソフトやプ
ログラミングの基本技術であり、慣用技術であるとして容易に克服でき
20 る旨を主張する。
しかしながら、そのような慣用技術があるか否かは措くとして、乙2
5文献に記載された発明に対して、ウィンドウ110及び150に表示
されたテキストを水平方向に移動するようにする動機付けはない。
よって、相違点1は容易想到な事項ではない。
25 (イ) 相違点2について
a 主位的主張について
文字列が重複表示されることは乙25文献から把握できない。むし
ろ、乙25文献の図1Bによれば、ウィンドウ110内にはコメント
が互いに隙間を置いて配置され、ウィンドウ150には1行しかコメ
ントが表示されない。
5 そうすると、乙25文献に記載された発明はコメントが重複表示さ
れることは想定されていないのであり、被告らが主張するような課題
を内在していない。
b 予備的主張について
前記aのように、乙25文献に記載された発明では、文字列が重複
10 表示されることは想定されておらず、文字列の重複表示による視認性
低下という課題がないため、本件周知技術を適用する動機付けはない。
また、乙17公報に記載された発明との相違点1と同様に、乙25
文献に記載された発明に本件周知技術に記載された事項を適用しても
相違点2に係る本件発明1の構成には至らない。
15 c 本件位置変更周知技術2に基づく主張について
乙17公報に記載された発明との相違点1について述べたのと同様
に、本件位置変更周知技術2は認定できず、仮にそのような本件位置
変更周知技術2があるとしても、これを乙25文献に記載された発明
に適用する動機付けはない。
20 (ウ) 相違点AないしCについて
乙25文献に記載された発明において相違点AないしCに係る本件発
明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ) 相違点Dについて
被告らによる認定を前提にすれば、AV製品が図1Bのウィンドウ1
25 20に表示され(構成(ウ))、コメントがウィンドウ110及び150に
表示される(構成(エ))から、乙25文献に記載された発明において、コ
メントと動画は別個のウィンドウに表示されるのであって、これらが重
なることはないから、相違点Dは存在している。
そして、乙25文献に記載された発明において相違点AないしCに係
る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たこと
5 ではない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1と乙25文献に記載された発明との相違点に
係る構成は、乙25文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想
到できたものではないから、乙25文献を主引用例とする進歩性欠如の主
10 張は理由がない。
(3) 本件発明2の進歩性
被告らは、本件発明2の進歩性欠如について具体的な主張を行っていない
が、本件発明1と同様の理由により、本件発明2についても、乙25文献を
主引用例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
15 8 争点5-8(明確性要件違反(無効理由8))について
(被告らの主張)
本件発明1の構成要件1Bには「前記サーバは、前記サーバから送信された
動画を視聴中のユーザから付与された前記動画に対する第 1 コメント及び第2
コメントを受信し」との記載があり、構成要件1Cには「前記端末装置に、前
20 記動画と、コメント情報とを送信し」という記載があるが、サーバが受信した
コメントを、どのタイミングで端末に送信するかが明らかになっていない。
しかしながら、動画再生時までにコメントが端末で受信出来ていなければ、
動画にコメントを重ね合わせて表示することは出来ないのであるから、そのタ
イミングで無ければ、技術的に不備である。
25 また、この点、本件明細書の【0008】には、「いずれかの端末装置から前
記コメント配信サーバへ送信される毎に当該コメント情報を当該コメント配信
サーバから受信するコメント情報受信部」とあるが、本件発明に係る請求項に
「コメント配信サーバがコメントを受信すると、「その都度」当該コメントを端
末装置に送信する」旨の記述がなければ、具体的なプログラムが発明の範囲に
入るか否かを当業者が理解できない。
5 したがって、本件発明は、請求項の記載自体が不明確であり、または、発明
特定事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確である場合に該当し、特許
法36条6項2号の明確性要件に反している。
(原告の主張)
コメント送信のタイミングを規定していなくとも、ユーザから付与されたコ
10 メントに関するコメント情報を端末に送信する点が規定されているから、発明
の外延は明確であり、明確性要件に違反することはない。
また、技術的な不備が明確性要件に関連するかという点は措くとしても、ユ
ーザから付与されたコメントに関するコメント情報を端末に送信する点が規定
されていれば、当業者は技術的にこれを理解することができるから、本件発明
15 には何らの技術的不備もない。
なお、被告らは、本件明細書の【0008】の記載に基づいて、コメントを
サーバが受信した「その都度」端末に送信しなければならないと主張している
が、【0008】には、本件出願の原出願(前記第2の2(2)の⑦の出願)の請
求項の内容が記載されているにすぎず、本件発明の請求項とは無関係であって、
20 これに従って本件発明が限定されなければならないはずがないから、被告らは
失当である。
9 争点5-9(サポート要件違反(無効理由9))について
(被告らの主張)
(1) リアルタイム性について
25 ア 本件明細書の【0008】には、「また、本発明は、…コメント情報を前
記複数の端末装置のうちいずれかの端末装置から前記コメント配信サーバ
へ送信される毎に当該コメント情報を当該コメント配信サーバから受信す
るコメント情報受信部と、…を有することを特徴する。」と記載されている。
イ これは、明らかに端末装置に関する記述であり、【0004】の「従来技
術…リアルタイムでのコメントのやりとりをすることができず、コミュニ
5 ケーションとしての面白みが十分とはいえなかった。」という記載とあわせ
て、「コメント配信サーバがコメントを受信すると、「その都度」当該コメ
ントを端末装置に送信する」と解するべきものである。
ウ しかしながら、本件発明に係る請求項をみても、端末装置がどのタイミ
ングでコメント情報を受信するかについての記述がなく、「コメント配信サ
10 ーバがコメントを受信すると、「その都度」当該コメントを端末装置に送信
する」旨の記述がなければ、リアルタイムでのコメントのやりとりは不可
能であるから、この点の記述を欠く本件発明は、発明の詳細な説明に記載
した範囲を超えて特許を請求しており、特許法36条6項1号のサポート
要件に違反する。
15 原告は、【0008】は本件発明とは無関係であると主張するが、本件発
明に関するものである。
(2) コメント非表示機能について
ア 本件明細書の【0011】には「本発明によれば、…そして、動画に対
して入力されたコメント情報のうち、消去対象であるコメント情報を示す
20 コメント消去要求が入力されると、そのコメントを表示しないようにした
ので、そのコメントが動画にふさわしくないコメントであるか否かについ
て、ユーザの意思を考慮した表示をすることができ、コメントを利用した
コミュニケーションにおける娯楽性を向上させることが可能となる。」とい
う記載がある。
25 イ しかしながら、本件発明に係る請求項には、端末装置がコメントを表示
することについては記載があっても、表示しないことについての記載はな
く、この点の記述を欠く本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明
の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明
に記載した範囲を超えて特許を請求しており、特許法36条6項1号のサ
ポート要件に違反する。
5 原告は、【0011】は本件発明とは無関係であると主張するが、【00
11】は「発明の効果」として記載されており、本件発明に関するもので
ある。
(原告の主張)
(1) リアルタイム性について
10 被告らは、本件明細書【0008】の記載に基づいて、コメントをサーバ
が受信した「その都度」端末に送信しなければならないと主張するが、【00
08】には、本件出願の原出願(前記第2の2(2)の⑦の出願)の請求項が記
載されているにすぎず、本件発明の請求項とは無関係であって、これに本件
明細書の開示が限定されているはずはない。
15 (2) コメント非表示機能について
被告らは、本件発明はコメント非表示機能を有しないから、本件明細書
【0011】に記載された課題の一部を解決しない旨を主張しているが、こ
れは、当初出願のクレームに対応した発明の課題の記載にすぎず、本件発明
の課題とは異なる。分割出願においては、当初出願の発明の課題を解決しな
20 ければならないわけではないことは当然である。また、複数の課題の全てを
解決しなくともサポート要件を充足することも明らかである。
10 争点5-10(実施可能要件違反(無効理由10))について
(被告らの主張)
(1) リアルタイム性について
25 本件発明に係る請求項には、端末装置が、どのタイミングでコメント情報
を受信するかについての記載がない。
当業者は、サーバと端末がコメント情報を送受信するタイミングが解らな
ければ、コメントを表示する機能を作成出来ないし、リアルタイム性を確保
することは出来ない。
したがって、本件発明は、技術的手段相互の関係が不明確である場合に該
5 当し、特許法36条4項1号の実施可能要件を満たさない。
(2) コメント非表示機能について
本件明細書の【0011】には「消去対象であるコメント情報を示すコメ
ント消去要求が入力されると、そのコメントを表示しないようにした」とい
う記載があるが、本件発明に係る請求項には、端末装置がコメントを表示す
10 ることについては記載があっても、表示しないことについての記載はない。
したがって、本件発明は、一の請求項から発明が把握できない場合に該当
し、特許法36条4項1号の実施可能要件を満たさない。
(原告の主張)
(1) リアルタイム性について
15 前記9(原告の主張)(1)のとおり、本件明細書の【0008】には、本件
出願の原出願の請求項が記載されているにすぎず、本件発明の請求項とは無
関係であって、「その都度」コメント情報を送信しなければ発明が実施できな
いものでないから、本件発明にこの点の実施可能要件違反はない。
(2) コメント非表示機能について
20 前記9(原告の主張)(2)のとおり、コメント非表示機能は本件発明の課題
でなく、これを実施する必要がないから、本件発明にこの点の実施可能要件
違反はない。
11 争点5-11(先願要件違反(無効理由11))について
(被告らの主張)
25 本件出願に係る発明は、殊更に請求項を分けているが、いずれも、平成18
年12月11日に出願され(特願2006-333851(乙11) 、その後

に設定登録された特許第4695583号(乙15。以下「別件訴訟特許2」
という。)に係る請求項1ないし3と同一又は実質的に同一であり、本件出願は、
別件訴訟特許2と同一の発明についての出願である。
本件出願時に、別件訴訟特許2が登録済みであり、特許法39条2項の協議
5 もできないことから、先に登録された別件訴訟特許2のみが有効であり、本件
特許は無効と解するべきである。
(原告の主張)
本件発明は別件訴訟特許2に係る請求項1ないし3の発明とは、少なくとも
以下の点で異なっており、同一ではない。したがって、本件特許が、特許法3
10 9条により無効となることはない。
① 別件訴訟特許2に係る請求項1ないし3はいずれも「コメント情報を受信
する毎に」なる要件を含むのに対し、本件発明はいずれもそのような要件を
含まない点
② 本件発明はいずれも第1及び第2コメントが水平方向に移動する旨の要件
15 を含むのに対し、別件特許訴訟特許2に係る請求項1ないし3はいずれもそ
のような要件を含まない点
12 争点5-12(分割要件違反による新規性、進歩性欠如(無効理由12))に
ついて
(被告らの主張)
20 分割出願については、優先権が分割元の特許の日まで遡及し(特許法44条
2項)、分割元の特許が無効となっても当然に分割された出願は影響されないと
いう強力な効果があるため、近時、一定期間ごとに分割等を繰り返して、補正
の期限(特許法17条の2第3項)の脱法として用いる濫用事案が指摘されて
いる。
25 本件特許及び分割元の各特許出願日及び出願経緯は、前記第2の2(2)のとお
りである。
そして、前記第2の2(2)の④ないし⑧の出願の出願時の請求項1は、同③の
出願の請求項1と同一であり、同⑤ないし⑦の出願において行われた補正は、
補正後の同④の出願の請求項1と同一の内容のものであった。
このような出願は、定期的に変更することを前提に、分割元の請求項と同一
5 の分割出願をしておいて、その後の補正により優先権を確保し、時流の流れを
みたうえで権利化を図るという特許分割の濫用そのものである。特に、同⑥及
び⑦の出願は、上記のとおり、同③の出願1と同一の請求項で出願し、その後、
同④の出願と同一の補正をしたが、同④の出願と同一であるという指摘に対し
ては補正すらせずに拒絶査定に至っている。
10 したがって、主位的には、上記④ないし⑦の出願は濫用的分割出願というべ
きであり、予備的には上記⑥及び⑦の出願は濫用的分割出願というべきもので
あるから、これらの特許出願については特許法44条2項の効果は生じないと
いうべきである。
したがって、本件では、本件出願の出願日を基準に特許法41条1項の優先
15 権が認められるかを検討するべきところ、本件特許の出願日は平成30年10
月29日であり、主位的には上記③の出願について平成25年3月5日付け拒
絶理由通知がなされてから60日、予備的には上記⑤の出願に係る特許査定日
である平成29年3月28日から30日が経過しており、本件出願は特許法4
4条1項に定める出願期間を満たさないものである。
20 そして、本件特許の出願日である平成30年10月29日で判断すれば、本
件発明が、新規性及び進歩性の要件を満たさないことは明らかである。
(原告の主張)
被告らが、本件出願について、特許法44条1項に反するとして「濫用的分
割出願」などと述べるが、根拠がない。
25 本件出願は適法な分割出願であるから、本件特許の出願日は平成19年3月
2日(優先日は平成18年12月11日)に遡及する。したがって、本件出願
がされた平成30年10月29日を基準日とする新規性及び進歩性欠如の主張
はいずれも理由がない。
13 争点5-13(優先権主張の要件違反による進歩性欠如等(無効理由13))
について
5 (被告らの主張)
本件出願は、特願2006-333850号に基づく優先権を主張し、平成
18年12月11日を優先日として行われている。
しかしながら、この特願2006-333850号の出願は、補正の要件を
満たしていない可能性がある。
10 また、本件原出願が補正の要件を満たさない場合、特許法17条の4及び特
許法施行規則11条の2の3第1号及び2号に規定する優先権主張書面の補正
の期間が経過しているため、優先権主張書面の補正は許されず、その結果、本
件原出願について、特許法41条1項1号に基づく優先権の主張は許されない。
優先権主張が無効となる場合、本件出願は、新規事項を追加する補正である
15 から無効である。また、特許に関する登録情報の信用性および画一的判断の必
要の観点から、本件出願の出願日の時点で、新規性及び進歩性が判断されるべ
きである。
そして、原告は、ニコニコ動画という名称で、本件発明に係る技術を用いた
サービスを平成18年12月12日に公開しており、当時の運営会社であるニ
20 ワンゴはサービス公開後平成19年1月以降積極的にプレスリリースを出して
おり、その技術は公知のものとなっている。また、遅くとも、本件特許の出願
時点では、別件訴訟特許2の特許の公開により、本件発明は完全に公知技術と
なっており、本件発明に進歩性は全く存在しない。
(原告の主張)
25 特願2006-333850号の出願は国内優先権の基礎とされた出願であ
るから取下擬制されているが(特許法42条1項)、これに基づいて優先権主張
がなされていることは明らかであって、当該出願に被告らの主張する補正要件
違反があるか否かは優先権主張に影響しないものである(特許法41条1項)。
また、被告らは、本件原出願について補正要件違反があったことを前提とし
て新規性欠如及び進歩性欠如を主張するが、本件原出願について不適法な補正
5 は行われていないから、前提が誤っている。本件出願は適法な分割出願である
から、本件特許の出願日は平成19年3月2日(優先日は平成18年12月1
1日)に遡及する。
14 争点5-14(公序良俗違反(無効理由14))について
(被告らの主張)
10 本件出願は、平成30年9月9日に別件訴訟で原告敗訴の第一審判決がされ
た後に出願されており、別件訴訟に対応するべくなされたものであることは明
らかである。
別件訴訟の第一審判決では、別件訴訟特許2に係る発明は端末からコメント
情報を受信する「毎に」端末にコメント情報を送信するところ、被告FC2の
15 プログラムはこの要件を満たさない等として、特許発明の技術的範囲に属しな
いと判断されている。
そこで、原告は、別件訴訟の結果を覆すことを目的として、上記の「毎に」
の要件を外した本件発明を出願したものであり、本件発明は、特許法32条の
「公の秩序」「を害するおそれがある発明」に該当する。
20 (原告の主張)
被告らの主張は争う。
なお、被告らは、本件発明が別件訴訟特許2のクレームから「毎に」という
要件を外しただけだと主張しているが、本件発明は別件訴訟特許2に係る発明
とは異なり、システムを規定したクレームであるから、そもそも両者は対象が
25 異なる。また、「毎に」という要件を有しない発明についても本件明細書に開示
されており、これがサポートされていることも、前記9(原告の主張)のとお
りである。
別紙5 本件明細書の図面
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】

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