知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和1(行ケ)10157 審決取消請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和1(行ケ)10157審決取消請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和4年9月12日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ビーアンドオー研究所同訴訟代理人弁理士木村政彦
被告ダインスカンパニーリミテッド
法令 商標権
商標法53条の26回
キーワード 審決14回
許諾5回
商標権4回
無効1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、以下の商標(登録第5911020号。以下「本件商標」という。)25 の商標権者である(甲25、26)。 商 標 別紙1「本件商標」のとおり 登録出願日 平成28年9月5日 登録査定日 平成28年12月9日 設定登録日 平成29年1月6日 指 定 商 品 第8類「つめ磨き(電動式のもの又は電動式でないもの)、5 つめ磨き器(電動式のもの又は電動式でないもの)、つめ やすり、つめ切り、電気かみそり及び電気バリカン、手動 利器(「刀剣」を除く。)、つめ用ピンセット、つめ用紙や すり」 ⑵ 被告は、平成30年4月12日、本件商標について、商標法53条の2の10 規定により、商標登録取消審判を請求した(甲22)。 特許庁は、上記請求を取消2018-300215号事件として審理を行

▶ 商標権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和4年9月12日判決言渡

令和元年(行ケ)第10157号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和4年8月1日

判 決

原 告 株式会社ビーアンドオー研究所

同訴訟代理人弁理士 木 村 政 彦

同 高 尾 智 満

被 告 ダインス カンパニー リミテッド

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が取消2018-300215号事件について令和元年10月15日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 原告は、以下の商標(登録第5911020号。 「本件商標」以下 という。)の商標権者である(甲25、26)。商 標 別紙1「本件商標」のとおり登録出願日 平成28年9月5日登録査定日 平成28年12月9日設定登録日 平成29年1月6日

5 指定商品 第8類「つめ磨き(電動式のもの又は電動式でないもの)、つめ磨き器(電動式のもの又は電動式でないもの)、つめやすり、つめ切り、電気かみそり及び電気バリカン、手動利器(「刀剣」を除く。)、つめ用ピンセット、つめ用紙やすり」

⑵ 被告は、平成30年4月12日、本件商標について、商標法53条の2の規定により、商標登録取消審判を請求した(甲22)。特許庁は、上記請求を取消2018-300215号事件として審理を行い、令和元年10月15日、「登録第5911020号商標の商標登録を取り消す。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年10月25日原告に送達された(弁論の全趣旨)。

⑶ 原告は、令和元年11月12日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

⑷ 被告は、公示送達による送達を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しない。2 本件審決の理由の要旨

⑴ 被告は、パリ条約の同盟国等である韓国において、別紙2記載の引用商標に関する商標権(2015年〔平成27年〕8月28日登録出願、指定商品・「爪磨き器、非電気式磨き器、つめやすり、非電気式つめやすり」、設定登録日・2016年〔平成28年〕7月22日)を、被告商品の韓国における総代理店であるSTOUCH Co.、Ltd.(以下「エスタッチ社」という。)と共有する者である。引用商標と本件商標は相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。また、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品とは、同一又は類似の商品と認められる。

⑵ 原告は、被告商品を継続的に輸入し販売する又は販売していた者であるこ

5 とは明らかであって、被告との間には、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていたというのが相当である。したがって、原告は、本件商標の登録出願時において、商標法53条の2にいう「代理人若しくは代表者」であった者に該当するというべきである。

⑶ 関係会社とのメールのやり取りによれば、被告が日本でのNUDE NAIL商標を商標登録出願する意思がなかったということはできない。被告が原告に対し、日本において引用商標の権利を取得することを放棄した、又は、取得する関心がないことを信じさせた場合に該当すると認めるに足る客観的な証拠はない。そうすると、原告の本件商標の登録出願をする行為は、正当な理由があったものと認めることはできない。

第3

(原告の主張)

1 取消事由1(原告が「代理人若しくは代表者」に該当するとの判断の誤り)

について

⑴ 商標法53条の2が適用されるためには、本件商標の登録出願がなされた

平成28年9月5日の1年前である平成27年9月5日から平成28年9月5日までの間(以下「本件期間」という。)に原告が被告の「代理人若しくは代表者」であったことが少なくとも必要となるが、本件期間内に原告が被告の「代表者」であったという事実はない。

⑵ 以下のとおりの理由により、原告が被告の代理人とはいえない。

ア 本件審決は、本件期間より後の平成29年3月14日までの間の取引高及び取引回数をも考慮して、被告との間には、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていたと判断しており、不当である。原告は、白岩物産株式会社(以下「白岩物産」という。)から、引用商標を使用したつめやすり(以下「被告商品」という。)の紹介を受け、本件期間内に、白岩物産に対して被告商品を数回発注した。しかし、本件期

5 間内の原被告間の取引期間は約3か月と短い上、原告が注文した被告商品

のうち、6割を超える数量は、平成28年5月6日付けの原告から白岩物産宛ての初回の注文書(甲19)による2万個(枚)に相当するものであり、これは、審判請求書(甲22)の「a.請求人商品の取引」における表中に示された同年5月18日の6000個、同月25日の3500個、同年6月7日の1万0500個の取引に対応するから、実質的な取引回数は、被告が本件審判で主張する5回よりも更に少ない。また、本件審決は、本件期間内の取引総額は1261万円に上り、単なる得意先又は顧客の範囲を超えた取引高であると説示するが、1回の取引あたりの数量については、商品単価に対する輸送等のコストの影響を勘案して適宜決定されるものであり、信頼関係とは無関係である。イ 日本において、被告商品の韓国における総代理店であったエスタッチ社により、引用商標に対応する商標(以下「エスタッチ社商標」という。)の商標出願が、平成27年12月3日付けで出されていた(商願2015-119036号、甲9)ので、原告は、日本におけるエスタッチ社商標の安定的な使用を確保するために、白岩物産の勧めによりエスタッチ社商標の使用に関する契約書案(以下「本件契約書案」という。)を作成し、これを、平成28年6月10日に白岩物産を介して被告に対して送付したが(甲11、12)、妥結には至っていない。

⑶ 以上によれば、原告が「代理人若しくは代表者」に当たるとした本件審決

の判断は誤りである。

2 取消事由2(「正当な理由」についての判断の誤り)について

⑴ 被告は、遅くとも平成28年7月5日の時点でエスタッチ社商標の出願が

登録料未納付により却下されたことを把握していた(甲14)にもかかわらず、自ら商標出願することなく長期間放置していた。これは、被告が、原告のみならず任意の第三者においてエスタッチ社商標に代わる商標を登録する

5 ことが可能な状態を許容していたことを意味する。

このように、被告は、本件商標の登録出願がなされた平成28年9月5日の時点において、エスタッチ社商標に代わる商標の登録出願を積極的に行う意思はなく、エスタッチ社商標に代わる商標の権利取得を放棄していたのに等しい。他方、原告には、顧客に納入した被告製品に付された商標に関する問題が生じることを回避する必要があったため、原告は、本件商標の登録出願について正当な理由を有する。

⑵ したがって、正当な理由の存在を否定した本件審決の判断は誤りである。

第4 当裁判所の判断

1 事実関係

⑴ 被告は、パリ条約の加盟国である韓国において、引用商標に係る商標権をエスタッチ社と共有している(甲2、3)。別紙記載の引用商標と本件商標を比較すると、いずれも、上段にアルファベットの大文字で大きく「NUDE NAIL」と記載し、下段に小文字で小さく「glass nail shiner」と記載するもので、両者は相紛れるおそれのある類似の商標であり、また、前記第2の1⑴の本件商標の指定商品と、前記第2の2⑴の引用商標の指定商品とは、同一又は類似の商品であるものと認められる。

⑵ エスタッチ社は、平成27年12月3日、わが国において、エスタッチ社商標の出願をした(甲9)。

⑶ 原告は、白岩物産を通じ、平成28年5月6日、被告商品2万枚を注文し、同年5月18日発送の6000枚について228万円の、同月25日発送の3500枚について133万円の、同年6月7日発送の1万0500枚について399万円の請求を受け、これを支払った(甲7の1ないし3、19)。また、原告はその後も被告商品を注文し、本件期間内の平成28年7月13日発送の1200枚について45万6000円、同年8月16日発送の1

5 万2000枚について456万円を支払った(甲7の4,5)。本件期間後も、平成29年3月14日まで、被告商品の注文は継続している(甲7の6ないし12)。

⑷ 原告は、平成28年6月10日、白岩物産を通じて、被告に対し、被告がエスタッチ社商標の登録出願により生じた権利又は登録後における商標権を同社から譲り受け、この権利について原告に商標法31条の使用権を許諾し、これを独占的なものとすること等を内容とする本件契約書案を提示した(甲12、13)。白岩物産は、平成28年7月1日、被告の意向として、独占的使用権の許諾は難しいとの回答をし(甲13)、また、同月5日、エスタッチ社の出願が無効(正確には、登録料未納による出願却下。甲22)となったため、同月15日前には被告が引用商標の出願をする予定であること、原告に独占的権利を与えるには、最低販売保証数量や、販売計画等について、協議、確認をする必要があることを、原告に指摘した(甲14)。

⑸ 被告は、原告による本件商標の登録出願を知らずに、平成28年12月2日に引用商標の出願をしたが(商願2016-136383)、同出願は、本件商標を引例として、平成29年5月15日起案の拒絶理由通知を受けた(甲15,22)。

2 取消事由1(原告が「代理人若しくは代表者」に該当するとの判断の誤り)について⑴ア 商標法53条の2が適用されるためには、本件期間内に原告が被告の「代理人若しくは代表者」であったことを要するが、同期間内に原告が被告の代表者であったことの主張立証はないから、原告が「代理人」であったか否かが問題となる。イ 商標法53条の2は、輸入者が権利者との間に存在する信頼関係に違背して、正当な理由がなく外国商標を勝手に出願して競争上有利に立とうと

5 する弊害を除去し、商標の国際的保護を図る規定というべきであり、この観点からすると、ここにいう「代理人」に該当するか否かは、輸入者が「代理人」、「代理店」等の名称を有していたか否かという形式的な観点のみから判断するのではなく、商標法53条の2の適用の基礎となるべき取引上の密接な信頼関係が形成されていたかどうかという観点も含めて検討するのが相当である。この点、原告は、被告商品を輸入して、日本国内でこれを販売するために被告との取引関係に入ったものというべきところ、前記1⑶のとおり、本件期間内の被告商品の納入は合計5回、1261万円に上り、決して少ないものとはいえず、さらに、本件期間後の平成29年3月14日まで継続している。そうすると、原告と被告の関係は、単発の商品購入にとどまるものではなく、継続的な取引関係の構築を前提とするものであり、このことは、原告がわが国におけるエスタッチ社商標の使用権を取得しようとしたこと、さらには、本件商標の登録出願をしたこと自体からも裏付けられるものである。以上の事情を総合考慮すると、原告と被告の間には、本件期間内に既に、代理人ないし代理店と同様の取引上の密接な信頼関係が形成されたものと認めるのが相当であり、代理店契約の存否等にかかわらず、原告は、同条の2にいう「代理人」に該当するというべきである。ウ 原告は、前記第3の1⑵アのとおり、本件審決が本件期間後の取引も考慮したことを不当と主張するが、原告と被告との間に本件期間内に取引上の密接な信頼関係が形成されていたかを判断する一要素として、取引が継続的なものであるかを検討するために、本件期間後の取引を参酌して総合的に判断することは許されるというべきであるから、理由がない。また、原告は、本件期間内の5回の納入のうち3回までは平成28年5月6日付けの初回の注文に基づくものであるとか、1回の取引当たりの数量については商品単価に対する輸送等のコストの影響を勘案して適宜決

5 定されるものである旨主張するが、そのような事情は、前記イにおいて認定した総合考慮の結果を否定するに足りるものではない。さらに、原告は、前記第3の1 イのとおり、原告がエスタッチ社商標の使用に関する本件契約書案を作成し、被告に対して送付したが、妥結に至っていないことをもって、原告が被告の代理人とはいえない旨主張する。しかし、エスタッチ社商標の使用権をめぐる交渉状況は前記1⑷のとおりであって、原告が独占的通常使用権の許諾を求めたところ、被告が難色を示していたという状況にあったものである。これは、原告が、エスタッチ社商標ないし将来被告が日本において出願する予定の引用商標と同一の商標は、本来、被告及びエスタッチ社が韓国において共有する商標に由来すること、また、被告が独占的通常使用権の許諾には簡単には応じられないという意向であったことを知りながら、本件商標の登録出願をしたことを意味するものであって、原告の信義則違反を基礎付ける事実とはなり得ても、原告が被告の代理人であることを否定する事情ということはできない。⑵ 以上によれば、原告が商標法53条の2にいう「代理人若しくは代表者」に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。

3 取消事由2(「正当な理由」についての判断の誤り)について⑴ 原告は、前記第3の2⑴のとおり、被告は、本件商標の登録出願がなされた平成28年9月5日の時点において、エスタッチ社商標に代わる商標の権利取得を放棄していたのに等しく、他方、原告には、顧客に納入した被告製品に付された商標に関する問題が生じることを回避する必要があったため、原告が本件商標の登録出願をするについて正当な理由を有する旨主張する。しかし、被告が、同年7月5日の時点でエスタッチ社商標の出願が登録料未納付により却下されたことを把握していたとしても、原告による本件商標の登録出願まではわずか2か月にすぎず、これをもって「長期間」放置した

5 とか、原告のみならず任意の第三者においてエスタッチ社商標に代わる商標を登録することが可能な状態を許容していたなどと評価できないことは明らかである。なお、白岩物産は、前記1⑷のとおり、同日付けメールで、被告が同月15日までに引用商標の商標登録出願をする予定であることを原告に告げているけれども、同日までに引用商標の商標登録出願がされなかったからといって、被告が出願の意思を失ったと推認されるものでもない。さらに、前記2⑴ウのとおり、原告は、エスタッチ社商標ないし将来被告が日本において出願する予定の引用商標と同一の商標は、本来被告及びエスタッチ社が韓国において共有する商標に由来すること、また、被告が独占的通常使用権の許諾には簡単には応じられないという意向であったことを知りながら、独占的通常使用権をめぐる交渉中に本件商標の登録出願をしたものであるから、原告が当該出願について正当な理由があるなどといえないことも明白である。なお、原告のいう「被告製品に付された商標に関する問題」とは、引用商標を付した商品が出回り値崩れを起こしているという趣旨と解されるが(甲20の1・2、甲21の1ないし8)、これは、本来、独占的通常使用権をめぐる交渉において解決されるべき問題であり、本件商標の登録出願を正当化するものではない。⑵ 以上によれば、原告の商標登録出願に「正当な理由」がないとした本件審決の判断に誤りはない。

第5 結論

以上のとおりであって、原告主張の取消事由は理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

菅 野 雅 之

裁判官

本 吉 弘 行

裁判官

岡 山 忠 広

(別紙)

1 本件商標

2 引用商標

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (10月26日~11月1日)

10月29日(木) - オンライン

第68回東北大学知財セミナー

来週の知財セミナー (11月2日~11月8日)

11月5日(木) - オンライン

第69回東北大学知財セミナー

11月5日(木) - 東京 港

研究開発戦略と知的財産

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

ボングゥー特許商標事務所

〒101-0032 東京都千代田区岩本町3-2-10 SN岩本町ビル9階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

牛田特許商標事務所

東京都板橋区東新町1-50-1 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 

新名古屋特許商標事務所

〒453-0012 愛知県名古屋市中村区井深町1番1号 新名古屋センタービル・本陣街2階 243-1号室 特許・実用新案 意匠 商標 訴訟 鑑定 コンサルティング