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令和4(ネ)265等損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件

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裁判所 控訴棄却 大阪高等裁判所大阪高等裁判所
裁判年月日 令和4年10月14日
事件種別 民事
法令 著作権
民法416条1項2回
キーワード 侵害239回
損害賠償9回
許諾1回
主文 1 控訴人らの本件控訴をいずれも棄却する。
2 被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文1、2項を次のとおり変更する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを4分し、その1を控訴人らの負担と
4 この判決は、2項(1)に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 原判決を次のとおり変更する。10 2 控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して118万7227円及びこれに対す る令和2年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第1、2審とも控訴人らの負担とする。 4 仮執行宣言

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判決文

令和4年10月14日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和4年(ネ)第265号、同第599号 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
(原審・京都地方裁判所令和2年(ワ)第1874号)
口頭弁論終結日 令和4年7月29日
5 判 決
控訴人・附帯被控訴人(一審被告) B
(以下「控訴人B」という。)
10 控訴人・附帯被控訴人(一審被告) D
(以下「控訴人D」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士 八 木 康 介
同 新 田 葵
15 被控訴人・附帯控訴人(一審原告) O
(以下「被控訴人」という。)
同訴訟代理人弁護士 重 長 孝 志
同 渡 邊 兼 也
同 加 藤 幸 英
20 同 合 田 恵 介
主 文
1 控訴人らの本件控訴をいずれも棄却する。
2 被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文1、2項を次のとおり変更する。
(1) 控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して26万1514円及びこれに対す
25 る令和2年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを4分し、その1を控訴人らの負担と
し、その余を被控訴人の負担とする。
4 この判決は、2項(1)に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
5 第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人らの敗訴部分を取り消す。
2 上記の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
第2 附帯控訴の趣旨
10 1 原判決を次のとおり変更する。
2 控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して118万7227円及びこれに対す
る令和2年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審とも控訴人らの負担とする。
4 仮執行宣言
15 第3 事案の概要
以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。
1 本件は、被控訴人が、控訴人らに対し、控訴人らが共謀して、被控訴人が動
画共有サービス「YouTube」に投稿した動画を対象とする著作権侵害通
知をYouTubeに提出し、YouTubeをして上記動画を削除させた行
20 為が、共同不法行為に当たると主張して、共同不法行為に基づく損害賠償とし
て、連帯して118万7227円(精神的損害100万円、経済的損害7万9
297円、弁護士費用10万7930円)及びこれに対する不法行為の日であ
る令和2年2月6日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改
正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
25 る事案である。
原審は、被控訴人の控訴人らに対する請求を、7万4721円及びこれに対
する上記同様の遅延損害金の限度で認容したため、これを不服とする控訴人ら
が本件控訴を提起した。他方、被控訴人は、原判決に対し敗訴部分を不服とし
て本件附帯控訴を提起した。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実、各項末尾の後掲証拠及び弁論の全趣
5 旨により容易に認定できる事実)
(1) 当事者
ア 被控訴人は、YouTubeにチャンネル名をAとして匿名でチャンネ
ルを開設し、主に自らが編み物を編んでいる場面や作品等を撮影した動画
を、YouTubeに投稿している者である。被控訴人は、国家検定であ
10 る和裁技能士1級を保有している。(甲1、被控訴人本人)
イ 控訴人Bは、YouTubeにチャンネル名をCとして匿名でチャンネ
ルを開設し、自らが編み物を編んでいる場面や作品等を撮影した動画を、
YouTubeに投稿している者である(以下、同チャンネルをCとい
う。)。(甲2)
15 ウ 控訴人Dは、控訴人Bと内縁関係にある者であり、控訴人B名義で受け
た古物商の許可を用いて、同控訴人と共同してEとの屋号で古美術品や骨
董品の売買の事業を営んでいる。
控訴人Bの開設したCは、Eの一部門とされ、そのYouTubeから
の広告収益はEにおいて管理されている。(以上につき、甲3の1・2、
20 4、30、59の1、乙18、控訴人D本人)
(2) YouTubeのサービスの概要と著作権侵害通知についての定め等
ア サービスの概要等
YouTubeは、誰もが匿名でチャンネルを開設して動画を投稿し、
インターネットを介して多数の視聴者に当該動画の視聴を可能とする著名
25 な動画共有サービスであり、米国法人よって管理運営されている。そして、
チャンネル登録者数1000人以上、直近1年間の動画再生時間4000
時間以上との要件を充たし、かつ、所定の手続をとったチャンネル開設者
に対しては、動画の視聴数等に応じ、広告収益として金銭が支払われる。
イ 著作権侵害通知
著作権者は、その保有するコンテンツの著作権を侵害すると考える動画
5 がYouTubeに投稿された場合、YouTubeに対して、著作権侵
害に関する通知(以下「著作権侵害通知」という。)を提出することがで
きる。同通知は、削除依頼ウェブフォームに所要の入力を行うことによっ
ても可能である。YouTubeは、正式かつ有効な著作権侵害通知がさ
れた場合、対象の動画を削除(厳密には、当該動画がYouTube上で
10 公開されなくなる現象であるが、以下では「削除」と表記する。)し、そ
の動画の投稿者に対して、著作権侵害の警告(以下「著作権侵害警告」と
いう。)をメールで送信する。なお、この際、著作権侵害通知の対象とさ
れた動画の投稿者には、動画の削除につき事前の通知はない。
初回の著作権侵害警告を受けた後、同警告を受けた投稿者が一定の教育
15 措置(コピーライトスクール)を受講すれば、初回の著作権侵害警告から
90日の経過によりアカウントへの違反警告は期限切れとなるが、他方で、
同90日以内に初回を含めて3回の著作権侵害警告がされた場合、当該投
稿者のアカウントと関連付けられているチャンネルは全て停止され、新た
なチャンネルを作成することもできなくなり、同アカウントによって投稿
20 された全動画が削除される。著作権侵害警告を解除するには、著作権侵害
通知をした者に申立てを撤回してもらうほか、後記の異議申立てを行うこ
ととなる。(以上につき、甲7、8、17、18、62、66、67、乙
24、26)
ウ 異議申立て
25 著作権侵害警告を受けた動画の投稿者は、YouTubeに対し、異議申
立てを提出することができるが、その際、匿名でチャンネルを開設している
者であっても本名及び住所を明らかにする必要がある(なお、代理人弁護士
が行う場合は住所の開示は不要である。)。異議申立ては、動画が間違って
削除されたか、取り違えによって削除された場合、又はフェアユースに該当
する場合にのみすることができるとされ、インターネット上で、著作権侵害
5 通知の対象となった動画を選択し、所定の操作を行うことにより送信するこ
とができる。YouTubeは、正式かつ有効な異議申立てを受けると、著
作権侵害通知をした者に対し、異議申立てをした者の本名及び住所といった
個人情報も含めた異議申立ての全文を転送する。
著作権者は、提供を受けた情報に基づき、異議申立てをしてきた著作権侵
10 害通知の対象動画の投稿者に対して著作権侵害を理由とする裁判手続を起こ
すことができ、このことを通じて著作権者がした著作権侵害通知の当否、す
なわち上記対象動画による著作権侵害の有無が明らかにされる。
なお、著作権侵害通知をした者には、異議申立てがされた後、裁判所への
手続を行ったという証拠をYouTubeに提出するまでに10営業日の猶
15 予期間が与えられ、同期間内に上記証拠が提出されれば動画の削除状態は継
続されるが、その提出がなければ、削除された動画はYouTube上にお
いて復元される。(以上につき、甲27、35、乙1)
エ 米国デジタルミレニアム著作権法(以下「DMCA」という。)
上記イ、ウの著作権侵害通知による動画削除の制度は、DMCAにより1
20 998年に改正、追加された米国著作権法512条に準拠した方法が採用さ
れているものである。米国著作権法512条には、海賊版コンテンツがウェ
ブサイトなどに投稿された際の通報及び削除の手順(ノーティスアンドテイ
クダウン手続)やプロバイダの免責条件が規定されている。(甲25)
(3) 控訴人動画の投稿
25 控訴人Bは、YouTubeのCのチャンネルに、控訴人動画①、控訴人動
画②、控訴人動画③、控訴人動画④、控訴人動画⑤という動画(以下、これら
の動画を併せて単に「控訴人動画」という。)を投稿した。(乙9)
(4) 被控訴人動画の投稿及び控訴人の著作権侵害通知による削除
ア 被控訴人は、YouTubeのAのチャンネルに、令和元年8月1日、F
と題する25分47秒間の動画(以下「被控訴人トリニティ動画」という。)
5 を、令和2年2月3日、Hと題する19分24秒間の動画(以下「被控訴人
メランジ動画」といい、被控訴人トリニティ動画と併せて「被控訴人動画」
ということがある。)をそれぞれ投稿した。(甲5、6、56、57)
なお、被控訴人は、開設したAのチャンネルを収益化しており、被控訴人
動画を公開して視聴数を得ることにより広告収益を得ていた。
10 イ 控訴人Bは、令和2年2月6日、YouTubeに対し、被控訴人メ
ランジ動画の「動画全体」につき、「編み目(スティッチ)の著作権侵
害」がある旨の著作権侵害通知(以下「本件侵害通知1」という。)を、
被控訴人トリニティ動画の「動画全体」につき、「著作権、翻訳権の侵
害」がある旨の著作権侵害通知(以下「本件侵害通知2」といい、本件
15 侵害通知1と併せて「本件侵害通知」ということがある。)をそれぞれ
提出した。その結果、同日、被控訴人動画がYouTubeからいずれ
も削除され、被控訴人に対し、YouTubeからその旨の著作権侵害
警告がされた。(甲5、6、13、28、58、被控訴人本人)
その後、YouTubeは、被控訴人動画に対する本件侵害通知の法的
20 要件が欠けているとして、控訴人Bに申立てを補足する追加情報を請求し
ていたものの、その提出がないことから、被控訴人に対する著作権侵害警
告を取り下げることとし、同年8月29日、被控訴人動画はいずれもYo
uTubeにおいて復元された。(甲28、乙29)
なお、控訴人Bは、本件侵害通知をした後、被控訴人動画が控訴人動画
25 の著作権を侵害することを理由として被控訴人に対する訴訟提起は行って
いない。
3 争点
(1) 控訴人Bの本件侵害通知による不法行為の成否
(2) 控訴人Dについての共同不法行為の成否
(3) 損害の発生及びその額
5 4 争点に関する当事者の主張
次のとおり補正し、後記5における当事者の補充主張を付加するほかは、原
判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」3(1)から(3)まで(原判決5頁
18行目から11頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決5頁18行目の「本件侵害通知による不法行為責任の成否」を「控訴
10 人Bの本件侵害通知による不法行為の成否」に改める。
(2) 原判決5頁25行目から同頁26行目にかけての「削除された。また」を
「削除され、そのこと自体によって精神的苦痛を被った。これに加え」に改
める。
(3) 原判決7頁1行目の「アカウントが削除」の前に「YouTubeによって
15 誤って」を加える。
(4) 原判決7頁9行目の「負うとされているからしても」を「負うとされている
ことからしても」に改める。
(5) 原判決9頁21行目の「被告Dの責任の有無」を「控訴人Dについての共同
不法行為の成否」に改める。
20 (6) 原判決10頁4行目の「同人は、」の後に「同ウェブサイトで」を加える。
(7) 原判決11頁8行目末尾に改行して次のとおり加える。
「 また、被控訴人は、YouTubeに対して速やかに異議申立通知を行うこ
となく、漫然と被控訴人動画が削除されている状態を放置していたのであるか
ら、損害軽減義務違反がある。そして、被控訴人が軽減できたはずの損害は、
25 民法416条1項類推適用による通常生ずべき損害に当たらないから、控訴人
らにおいて損害賠償責任を負わない。」
5 当審における当事者の補充主張
(控訴人らの主張)
(1) 権利侵害及び違法性がないことについて
被控訴人が本件侵害通知により侵害されたと主張する利益は、3度目の著
5 作権侵害警告を受けることで開設しているチャンネルが削除されてしまうこ
とに怯え、動画を投稿し、公開することができなかったという「不安感」以
外の何物でもないが、かかる不安感は不法行為法における法的保護に値する
利益とはいえない。
その点を措くとしても、控訴人Bによる本件侵害通知は、YouTube
10 において規約で定められた著作権侵害通知制度を利用した穏当なものであっ
たし、本件侵害通知のされた令和2年2月当時、被控訴人トリニティ動画で
編み方が紹介されていたトリニティスティッチ、及び被控訴人メランジ動画
で編み方が紹介されていた「小花模様」と称する編み方を日本国内で紹介し
た書籍や動画は、先行して控訴人Bが投稿した控訴人動画以外になく、控訴
15 人Bが、被控訴人動画につき、控訴人動画を模倣して被控訴人が作成、投稿
したと考えたことには合理的理由がある。YouTubeも、控訴人Bの本
件侵害通知を適当なものと認めて被控訴人動画を削除したものである。この
ような削除制度があることは、YouTubeの投稿者はその規約に同意し
て所与のものとしているのであり、削除に対しては当該投稿者には異議申立
20 てが認められていて、YouTube上で問題を解決することが可能であっ
たから、本件侵害通知は、社会的に許容し得る限度を超えた違法なものであ
るとはいえない。
(2) 控訴人Bに過失がないことについて
著作物性等の判断には専門的知識を要するから、投稿動画に関する著作権
25 侵害通知をした後の裁判所の判断において当該動画が著作権を侵害すると判
断されなかったとしても、それをもって直ちに当該通知者に不法行為が成立
すると考えるべきではない。一般的なYouTubeの投稿者の知的財産法
に関する知識水準に照らして、著作権侵害通知を行う一応の理由があれば、
当該通知者に注意義務違反(過失)はないというべきである。本件において
は、前述のとおり、控訴人Bが、被控訴人動画につき控訴人動画の著作権を
5 侵害していると考えたことには合理的理由があり、専門家であるJ弁理士及
びK弁護士にも相談した上で本件侵害通知を提出したのであるから、控訴人
Bには、本件侵害通知を行うに当たって過失は存在しない。
(被控訴人の主張)
(1) 精神的損害について
10 ア 被控訴人が受けた精神的損害は、主として、被控訴人動画が削除されたこ
とによるものである。すなわち、本件侵害通知によって、世界最大の動画共
有サイトであるYouTube上から、被控訴人動画は削除され、少なくと
も令和2年2月6日から同年8月29日までの間、被控訴人動画を誰からも
視聴することができなくさせたのであって、被控訴人は、YouTubeに
15 おいて動画を公開する法的権利ないし利益を侵害された。本件侵害通知によ
る被侵害利益は、YouTubeにおける動画の投稿・共有やこれを通じた
他の利用者との関係によって生じる人格的利益ともいい得る。
イ また、控訴人らは、被控訴人動画2本に対して本件侵害通知をした上で、
被控訴人に対し、「2度あることは3度ある、3度目は命取りです。」とい
20 うコメントをCのチャンネルに投稿した。そのため、被控訴人は、もう1回
著作権侵害警告がされればチャンネルがなくなってしまい、他の動画も全て
削除されてしまうのではないかと怯え続ける状況に陥れられた。当時、被控
訴人のチャンネル登録数が約5、6千人規模であったこと、3回の著作権侵
害警告によるチャンネル停止及び全動画削除という効果の大きさを考えると、
25 被控訴人が被った精神的苦痛は甚大である。
控訴人らは、原判決言渡後も、Cのチャンネルに、被控訴人動画が控訴人
動画の盗作であること、被控訴人やその関係者がこれまでも他者の知的財産
を無茶苦茶にしてきたこと、被控訴人が原審において証拠をねつ造したこと
が事実であるかのように繰り返し投稿し、被控訴人を誹謗中傷しているほか、
「私はあの人が本当はノミの心臓だって知ってますから、軽く喉を鳴らせば
5 済むことを知ってますけど、それは私の背後に見え隠れする力も大きい。」
などとコメントし、被控訴人に対し威迫を続けている。
ウ さらに、後記(2)イ、ウに記載する、本件侵害通知による被控訴人チャン
ネル全体の収益性の低下及び視聴者に対する信頼毀損による視聴数低下につ
いては、慰謝料算定に当たっての根拠としても主張する。
10 エ 以上によれば、被控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料が100万円
を下回ることはない。
(2) 広告収益に関する経済的損害について
ア 被控訴人動画の広告収益の低下
被控訴人動画が上記のとおり206日間にわたり削除されていた間に被控
15 訴人が受け取ることができた収益は、7万9297円((被控訴人トリニテ
ィ動画1日当たりの収益19.19円+被控訴人メランジ動画1日当たりの
収益365.75円)×206日)を下回らない。なお、被控訴人動画は流
行廃りに左右されず、公開後に時間が経過しても繰り返し視聴される類いの
ものであるから、時間の経過によって広告収益が逓減していくものではない。
20 イ 被控訴人チャンネル全体の収益性の低下
被控訴人動画が本件侵害通知によって削除されたことは、被控訴人チャン
ネルのステータスに影響を与え、その収益性を低下させており、被控訴人チ
ャンネルの動画が視聴者の画面に表示されにくくなったり、広告単価が低下
したりするなどの不利益を生じさせている。
25 ウ 視聴者に対する信頼毀損による視聴数低下
本件侵害通知によって、YouTube上で本来被控訴人動画が表示され
る箇所に「動画が削除されました:著作権侵害の警告」との表示がされたた
め、被控訴人チャンネルに対する視聴者の信頼が著しく低下し、視聴数が減
少して収益性が低下した。
エ 以上によれば、本件侵害通知によって被控訴人が被った経済的損害は、7
5 万9297円を下回ることはない。
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所は、被控訴人の請求は、26万1514円及びこれに対する令和2
年2月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限
度で理由があると判断する。その理由は、次のとおりである。
10 2 控訴人Bの本件侵害通知による不法行為の成否(争点(1))について
(1) YouTubeにおける著作権侵害通知制度を前提とする不法行為の成立に
ついて
ア YouTubeは、インターネットを介して動画の投稿や投稿動画の視聴
などを可能とするサービスであり、投稿者は、動画の投稿を通して簡易な手
15 段で広く世界中に自己の表現活動や情報を伝えることが可能となるから、作
成した動画をYouTubeに投稿する自由は、投稿者の表現の自由という
人格的利益に関わるものということができる。したがって、投稿者は、著作
権侵害その他の正当な理由なく当該投稿を削除されないことについて、法律
上保護される利益を有すると解するのが相当である。
20 また、収益化されたチャンネルにおいては、YouTubeへの動画投稿
によって、投稿者は収益を得ることができるから、正当な理由なく投稿動画
を削除する行為は、投稿者の営業活動を妨害する行為ということになる。し
たがって、この側面からも、投稿者は、正当な理由なく投稿動画を削除され
ないことについて、法的上保護される利益を有すると解することができる。
25 イ 他方、YouTubeにおいては、前記第3の2(2)イのとおり、著作権
者は、その保有するコンテンツの著作権を侵害すると考える動画がYouT
ubeに投稿された場合、YouTubeに対して著作権侵害通知を提出す
ることができ、著作権侵害通知がされた場合には、YouTubeにおいて
対象動画の投稿者に対して事前の通知をすることなく、対象動画を削除する
制度を採用している。
5 そして、YouTubeにおける著作権侵害通知による動画削除制度は、
ノーティスアンドテイクダウン手続等を定めた米国著作権法512条に準拠
した方法が採用されているものといえ、YouTubeの仕組みや利用上の
ルールを説明した「YouTubeヘルプ」(甲7、8)においても、正式
かつ有効な著作権侵害通知があった場合には著作権法に従って同通知の対象
10 動画は削除される旨記載されており、明らかに手続を誤解している著作権侵
害通知や、純粋に手続を濫用していると思われる著作権侵害通知のような例
外的場合を除き(乙26、27の2)、YouTube自身が、著作権侵害
通知に係る著作権侵害の有無等の実体的判断をなすことは原則的には予定さ
れていないことが認められる。
15 ウ YouTubeにおける上記のような動画削除制度の下では、削除された
投稿者がその扱いに不服がある場合、異議申立てをすることができ、この手
続を契機として、投稿者の本名及び住所が著作権侵害通知の提出者に開示さ
れるので、著作権侵害通知を提出した者がその情報を利用して裁判手続を起
こすことによって著作権侵害について実体的判断がされることになる(著作
20 権侵害通知を提出した者が所定の期間内に裁判手続を起こさない場合は、削
除された動画は復元される。)。
エ ところで、この制度の利用について、「YouTubeヘルプ」(甲7、
11、17、18)においては、著作権侵害通知の要件として、著作権を侵
害すると考える投稿の説明に加え、通知者自身が著作権者等であること、投
25 稿者によるコンテンツの使用が法律で許可されていないことを確信している
こと、通知が正確であることを確認した上でこれを行うことを求め、著作権
侵害通知制度を不正使用すると、アカウントの停止や法的問題に発生する可
能性があるとの注意もしているが、これは、上記のとおり、YouTube
が原則として著作権侵害の実体的判断をなさないため、著作権侵害通知が潜
在的には濫用的に用いられる可能性があることから、著作権侵害通知をする
5 者に予め注意義務を課して濫用的な著作権侵害通知をなさないよう対策を講
じているものと解される。
したがって、著作権侵害通知をする者が、上記のような注意義務を尽くさ
ずに漫然と著作権侵害通知をし、当該著作権侵害通知が法的根拠に基づかな
いものであることから、結果的にYouTubeをして著作権侵害に当たら
10 ない動画を削除させて投稿者の前記利益を侵害した場合、その態様如何によ
っては、当該著作権侵害通知をした行為は、投稿者の法律上保護される利益
を違法に侵害したものとして、不法行為を構成するというべきである。
オ これに対し、控訴人らは、YouTubeにおいて著作権侵害通知による
削除制度があることは、YouTubeの投稿者はその規約に同意して所与
15 のものとしており、投稿者には異議申立てが認められていて、YouTub
e上で問題を解決することが可能であるから、著作権侵害通知により動画が
削除されることはYouTubeの仕組みによって生じる事実上の不利益に
すぎない、又は、YouTubeが著作権侵害通知を適当なものと認めて動
画を削除した場合には、当該著作権侵害通知は社会的に許容し得る限度を超
20 えた違法なものであるとはいえない旨主張する。
確かに正式かつ有効な著作権侵害通知がされた場合、反論の機会が与えら
れることもなく対象動画が速やかに削除されるという事態は、YouTub
eの規約上予定されていることであって、投稿者はその規約に同意してYo
uTubeを利用しているということができる。
25 しかし、上記イ、ウで認定説示したとおり、この著作権侵害通知の制度の
下では、著作権侵害の有無等の実体的判断は当該制度内でなさずに最終的に
は裁判手続を介して確定することを予定しているのであるから、YouTu
be上で全ての問題の解決が図られるわけではないことがまず指摘できるし、
また、制度的に法的根拠がない著作権侵害通知がされる余地を残しているた
め、著作権侵害通知の制度利用に当たっての注意義務が、上記エのとおり、
5 当該通知提出者に課せられているのであり、そこでは著作権侵害通知制度を
不正使用すると法的問題に発生する可能性があるとの注意も明記されている。
そうすると、この規約上求められる注意義務を怠った結果もたらされる不
利益が、YouTubeの規約に同意した投稿者が受忍すべき事実上の不利
益とはいえないことは明らかであるとともに、すべからく社会的に許容し得
10 る限度を超えた違法なものに当たらないとはいえない。
以上によれば、控訴人らの上記主張は失当であって採用できない。
(2) 被控訴人動画による著作権侵害の有無
ア 被控訴人メランジ動画による著作権侵害の有無について
控訴人Bが、令和2年2月6日、被控訴人メランジ動画を対象としてYo
15 uTubeに提出した本件侵害通知1は、被控訴人メランジ動画の「動画全
体」につき、「編み目(スティッチ)の著作権侵害」があるとするものであ
る。
しかし、編み物の編み目(スティッチ)は、毛糸によって小物又は衣類を
作成するに当たっての技法のアイデア又はその技法により毛糸が編まれた編
20 み物の最小構成単位にとどまるものであって、思想又は感情の表現とは認め
られないから、それ自体を著作物と認めることはできず(知的財産高等裁判
所平成24年4月25日判決(甲19)・裁判所HP参照)、控訴人Bがこ
れを控訴人動画で紹介していたとしても同控訴人が著作権を有するというこ
とはできない。
25 そうすると、被控訴人メランジ動画に控訴人動画におけると同一の編み目
(スティッチ)が含まれているとしても、それをもって控訴人Bの著作権を
侵害したという余地はない。
したがって、そもそも控訴人Bは侵害主張の根拠となる著作権を有しない
ことから、被控訴人メランジ動画が著作権侵害をしている旨をいう本件侵害
通知1は法的根拠に基づかないものである。
5 イ 被控訴人トリニティ動画による著作権侵害の有無について
控訴人Bが、令和2年2月6日、被控訴人トリニティ動画を対象としてY
ouTubeに提出した本件侵害通知2は、被控訴人トリニティ動画の「動
画全体」につき、「著作権、翻訳権の侵害」があるとするものである。
しかし、そもそも控訴人Bは、本件侵害通知2において、被控訴人トリニ
10 ティ動画のいかなる部分が控訴人Bのいかなる著作権を侵害したかについて
具体的に特定した記載をしていないし、本件訴訟においてすら、その点につ
いて明確かつ具体的に主張をしているわけではない。
もっとも、本件訴訟において控訴人Bは、被控訴人トリニティ動画におけ
る、被控訴人の「鎖1目で立ち上がって」「立ち上がったところで細編み1
15 つ」「細編みしたところに針を入れて、取ってくる。」「そのまま次の目に
針を入れて取ってくる。」「更に次の目にも針を入れて取ってくる。」「4
本一度に引き抜いてくる。」であるとか、「最後だけちょっと違うので気を
つけます。」「鎖編みはしないで」「最後の同じ目に細編みします。」とい
った口頭による説明と、控訴人動画①~③における控訴人Bの口頭による説
20 明中、立ち上がりの説明を短くして、「同じ目から始める」という説明方法
で、細編みの目を共有することを強調したり、段の最後に鎖編みをしがちで
あるところを「最後だけは細編み」になることを強調したりする点などで同
じであるという点を指摘する陳述をし(乙10、控訴人B)、これらの点で著
作権侵害を主張しているようである。しかし、それらの点に関する控訴人動
25 画①~③の口頭説明と思われる部分は、編み目に関するアイデアであって表
現それ自体ではない部分、又は編み方の説明としてありふれたものであって
表現上の創作性が認められない部分にすぎず、控訴人Bの上記口頭説明部分
には著作物性が認められないから、この点で、控訴人Bが著作権を有するこ
とを前提とする著作権侵害をいう余地はない。
また、控訴人Bは、本件侵害通知2において「翻訳権の侵害」があるとし
5 ているところ、控訴人Bの陳述(乙10、控訴人B本人)には、控訴人Bは、
トリニティスティッチにつき英国の文献を翻訳してその編み方を知ったとし
ている部分があり、その点で著作権侵害を主張しているようでもある。しか
し、控訴人動画①~③における控訴人Bの口頭説明部分に二次的著作物とし
ても著作物性が認められないことは上記と同様であるから、この点でも、控
10 訴人Bが翻訳権を有することを前提とする著作権侵害をいう余地はない。
なお後記(4)イで認定するとおり、控訴人Bは、本件侵害通知2の提出時、
本件侵害通知1と同様に、編み目の著作権に基づく著作権侵害が根拠となる
ものと考えて著作権侵害通知をYouTubeに提出したものと認めるのが
相当であるが、その主張が失当であることは前記アで説示したとおりである。
15 したがって、控訴人Bによる被控訴人トリニティ動画の「動画全体」につ
き「著作権、翻訳権」の侵害をいう本件侵害通知2は、いずれにせよ法的根
拠に基づかないものである。
(3) 控訴人Bによる本件侵害通知提出の行為態様及びその前後の状況等
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、控訴人Bによる本件侵害通知提出の
20 行為態様及びその前後の状況等につき、以下の事実を認めることができる。
ア 控訴人Bは、令和元年5月頃、YouTube上のCの動画のコメント欄
において「他のユ―チューバ―さんたちが言ってる著作権というのは、本当
は著作権として認められないものが多いと思う。それは弁理士さんや弁護士
さんに尋ねたらすぐに分かることなんだ。だから、本人たちも著作権がない
25 ことを知らないだけかもしれないけど、もしも知っててしてるんだとしたら、
著作権というフレーズの悪用になってしまう。著作権のないものをそもそも
著作権と主張するほうが本当は脅しなんだ」「それでも、著作権があるなし
に関わらず、アイデアをもらったなら、くれた人には「ありがとう♥」って
言いたくなるものなんじゃないかなあって思う。」などと記載した。また、
同じ頃、自らのチャンネルに投稿した動画において、「盗作」疑惑の例とし
5 て、器具の紹介といった単なる情報やアイデアの提供にすぎないものについ
ても、先行して動画を投稿した以上はそのことで権利が生じており、先行動
画を見ていなかったとしても確認不足にすぎず、必要に応じて法的処置をと
る旨を述べた。(甲12、29の1・2、控訴人B本人)
イ 控訴人Bは、令和2年1月16日、YouTubeにおいてPとのチャン
10 ネル(以下、開設者も含めPという。)に投稿された動画のコメント欄に、
事前の許諾を得ずに控訴人Bの編み物作品の編み方を模倣した動画を公開し
たことに関する抗議のコメントを記載し、同年2月7日に、控訴人Bの依頼
を受けた控訴人Dにおいて、Cの代表取締役を名乗って、Pが作品を販売し
ている「minne」のアプリケーション上でPにメッセージを送信し、著
15 作権は当社が持っているので著作権侵害等を理由として損害賠償請求裁判を
する所存である旨通知した。
これに対しPが、書面が届いたら夫の会社の弁護士に相談して対応させて
いただく旨返信したところ、控訴人Dは、「は~。旦那さんにまで頼んで弁
護士立たせて?自分でケリつけたことない人なんですね?」「私ならすぐに
20 相手の自宅まで行って話しますけど?一度痛い目見ないといけないみたいで
すね。」「こっちと「和解契約」結ぶなら話聞きますが?お話ならないなら
詐欺で警察にも行けるお話ですが?いかがいたしましょうか?要返信」との
メッセージを送信した。(以上につき、甲16、59の1~6、乙21、控
訴人ら本人)
25 ウ 控訴人Bは、令和2年2月6日、本件侵害通知をYouTubeに提出す
るほか、被控訴人以外の利用者が開設したチャンネルも含め、編み物に関す
る合計3つのチャンネルに投稿された複数の動画を対象として一斉に著作権
侵害通知をYouTubeに提出した。
その結果、被控訴人については、被控訴人メランジ動画及び被控訴人トリ
ニティ動画が削除され、Lとのチャンネル(以下、開設者も含めLという。)
5 に投稿された編み物の動画については計8本の動画が削除された。
Lの投稿動画に対する上記著作権侵害通知の申告理由は「著作権侵害した
編み方で編んだ作品を紹介している」とされており、ここでいう編み方は編
み目や模様編みそれ自体を指すと考えられる。また、Nとのチャンネルに投
稿された動画に対する上記著作権侵害通知の理由は、トリニティスティッチ
10 の模倣とするものである。(以上につき、甲14、16、20、33、38、
40の1・2、50、控訴人B本人)
エ 被控訴人は、令和2年2月6日、YouTubeから被控訴人動画が削除
された旨の著作権侵害警告を受け取り、控訴人Bに対し、どの動画の著作権
を侵害したことになるのか教えてほしい旨問い合わせるメールを送信した。
15 これに対し、被控訴人Bは、「動画が削除されたのはあなたが気づかない
間に知的財産を侵害したから」であると述べた上で、被控訴人の作品がCの
作品とは作風において違うことは自認しながら、「私の動画をご存知でなか
ったようなのでお伝えするのもはばかられるのですが、事前に承諾を得るた
めにご連絡くださっていたら、と悔やまれてなりません。」などと記載し、
20 著作権が侵害されたとする控訴人動画がどの動画であるかについては回答し
なかった。(以上につき、甲13、14)
オ 同年2月8日頃、YouTubeにおいてMとのチャンネル名で活動して
いた者(以下Mという。)も、上記イのPと同様、販売のため「minne」
で出品していた作品につき、控訴人Bから著作権侵害で告訴する旨の連絡を
25 受けて出品を撤回した。Mは、どこに聞けば誰に著作権があるのかさえ分か
らず、その後、仕方なく控訴人Dと示談契約をしたが、恐怖を覚え、その後、
YouTubeに編み物の動画を投稿することを断念することとした。(甲6
0)
カ 控訴人Bは、同年3月11日頃、その開設するYouTubeチャンネル
において、著作権侵害警告に関し、「異議申し立てして、申立人から訴状が
5 届いたら100%裁判が決定です。」「訴状は届いたら最後、もう逃げられ
ないんです。逃げたら申立人の損害賠償請求が認められてしまうということ
です。だから、異議申し立てを簡単にしてはいけない、ということをお伝え
したいのです。その前に示談で解決できるか誠意を見せなければならないと
思います。たいていの場合、示談で解決する方が時間もかからず、お互いの
10 折り合いも分かるのでうまく行くと思います。その手順すら省くために今回
私は声明を発表しました。声明で書いた通りにしてくれるなら、私はあなた
の動画を認めましょう、ということです。それが嫌な場合は動画を削除して
ください、ということです。」といったコメントを公表した。(甲34)
(4) 本件侵害通知の違法性及び控訴人Bの故意又は過失について
15 ア 前記(2)のとおり、本件侵害通知は、いずれも法的根拠に基づかないもの
であるが、前記(2)で述べたところに加え、上記(3)認定の各事実からすると、
以下に詳述するとおり、控訴人Bは、前記注意義務を怠った過失があるとい
えるばかりか、著作権侵害通知制度を濫用したものということさえできるの
であって、これにより、本件侵害通知の対象動画の投稿者である被控訴人の
20 法律上保護される利益を侵害したものであるから、控訴人Bが本件侵害通知
を提出した行為は、被控訴人の法律上保護される利益を違法に侵害したもの
として不法行為を構成するというべきである。
イ すなわち、控訴人Bの提出した本件侵害通知の記載内容をみるに、本件侵
害通知1は、前記(2)アのとおり、被控訴人メランジ動画につき「編み目(ス
25 ティッチ)の著作権侵害」があるというものであって、編み目の著作物性を
いう点において、その通知内容自体から著作権侵害が認められないことが明
らかなものである。
また、本件侵害通知2は、前記(2)イのとおり、被控訴人トリニティ動画の
「動画全体」につき「著作権、翻訳権の侵害」があるというものであって、
控訴人Bは、被控訴人トリニティ動画の口頭説明部分が控訴人動画①~③の
5 口頭説明部分の著作権を侵害すると考えて本件侵害通知2を提出した旨陳述
しており(乙10、控訴人B本人)、本件訴訟においては、その旨主張する
ようであるが(これ自体が法的に失当であることは前記(2)イのとおりであ
る。)、被控訴人トリニティ動画が控訴人動画のうちいずれの動画のいかなる
部分の著作権を侵害したかにつき、明確かつ具体的な主張をしているもので
10 はないこと、控訴人Bの陳述も、要は、被控訴人動画において控訴人動画に
おける編み目の作り方が同じであることを中心に著作権侵害があった旨を述
べるものであること、本件侵害通知2が本件侵害通知1と同日にされている
ことに加え、前記(3)の各事実にも照らすと、むしろ控訴人Bは、本件侵害通
知2においても本件侵害通知1と同様、本来、著作権侵害が認められない被
15 控訴人トリニティ動画が編み目の著作権を侵害したことを根拠として、著作
権侵害通知をYouTubeに提出したものと認めるのが相当である(この
ことは、控訴人Bの陳述(乙10)によれば、被控訴人トリニティ動画の2
5分47秒間のうち、著作権侵害に該当する部分は3分43秒間にすぎない
にもかかわらず、控訴人Bが、削除依頼ウェブフォーム(甲18)において、
20 タイムスタンプで該当箇所を特定することもなく、被控訴人トリニティ動画
の「動画全体」が著作権侵害部分に該当するとして本件侵害通知2を行って
いることからも裏付けられる。)。したがって、本件侵害通知2も、その内
容において著作権侵害が認められないことが明らかなものというべきである。
ウ しかし、そもそも編み物の編み目に著作物性が認められないことは前記(2)
25 アで説示したとおりであるし、前記(3)アによれば、控訴人Bは、むしろ動画
の著作物性の有無の判断には困難が伴うことをかねてから認識していたこと
が認められる。また、著作権侵害が肯認されるには依拠性が必要であるが、
前記(3)エによれば、控訴人Bが本件侵害通知を提出するに当たって依拠性を
検討した様子は全くうかがえない。
そればかりか、控訴人Bが本件侵害通知を提出するに当たり、著作権侵害
5 の有無を予め検討していたのであれば、それが法的に失当であろうとも、本
件侵害通知後の被控訴人からの問い合わせに対して著作権侵害と考える理由
を端的に回答できるはずであるが、被控訴人に対する回答ぶりは専ら困惑さ
せることに終始するものであるし((3)エ)、本件訴訟を提起された後におい
てすら、控訴人らは著作権侵害を理由に裁判手続をとろうとしていないこと、
10 その他前記(3)で認定した本件侵害通知提出前後の状況をも考慮すると、控訴
人Bは、本件侵害通知を提出するに当たり、編み目の著作物性が肯定される
には困難を伴うことを十分認識していたと認められるにもかかわらず、控訴
人動画で紹介した編み目と同一の編み目を説明する動画であれば、それが控
訴人動画に依拠したものか否かを問わず、先行して動画を投稿した控訴人B
15 の著作権を侵害するとの独自の見解を有し、この見解が法的に成り立つか否
かを検討することなく、すなわち、控訴人Bが著作権者等であることはもと
より、著作権侵害通知の内容が正確であることについて検討することなく、
必要な注意義務を怠って漫然と本件侵害通知を提出したものと認めるのが相
当である。
20 エ なお、控訴人らは、専門家であるJ弁理士及びK弁護士にも相談した上で、
本件侵害通知を行った旨主張するが、控訴人らが本件侵害通知当時に上記専
門家に著作権侵害に関する相談をしていたことを認めるに足りる的確な証拠
はなく、また、仮に何らかの相談をしていたとしても、前記の本件侵害通知
の内容及び本件訴訟における応訴の内容に照らし、真摯な相談がされたもの
25 ともおよそ考えられないから 、これによって控訴人Bが本件侵害通知を提出
するに当たって必要な検討をしたとは認められない。
オ そして、控訴人Bは、被控訴人に対する以外にも、本件侵害通知に相前後
して、他の複数のチャンネル開設者に対し、その投稿した編み物動画やアプ
リケーション上での編み物作品の販売に対し、動画のコメント欄等に抗議を
書き込んだり、被控訴人に対すると同様に、編み目を含む編み方の模倣を理
5 由に一斉に複数の著作権侵害通知を提出したりすること((3)イ、ウ、オ)によ
って、これらの者が、控訴人Bが動画で紹介している編み方と同じ編み方を
動画で投稿することを事実上抑止しようとしていたことがうかがわれる。
さらに、弁護士への依頼や著作権侵害警告に対する異議申立てを考えるよ
うなチャンネル開設者に対しては、控訴人Bに加担する控訴人D又は控訴人
10 B自身において、「一度痛い目見ないといけない」「詐欺で警察にも行ける
お話」などと強迫的ともいえるメッセージを送信したり、独自の見解を一方
的に押し付けるようなコメントを公表したりして((3)イ、オ、カ)、裁判手続
で著作権侵害の有無を明らかにするより、示談するよう強く求めていたこと
も認められ、以上のような諸事情を総合すると、控訴人Bは、著作権侵害通
15 知制度を利用して、競業者であるといえる同種の編み物動画を投稿する者の
動画を削除することで不当な圧力をかけようとしていたとさえ認められる。
カ 以上によれば、控訴人Bは、本件侵害通知をYouTubeに提出するに
当たって、単に自らが著作権者であることや、著作権侵害通知の内容が正確
であることについて何ら検討することなく漫然と法的根拠に基づかない本件
20 侵害通知を提出したという点で必要な注意義務を怠った過失があるといえる
ばかりか、前記のとおり著作権侵害通知制度を濫用したものということさえ
できるのであって、これにより本件侵害通知の対象動画の投稿者である被控
訴人の法律上保護される利益を侵害したものであるから、控訴人Bが本件侵
害通知を提出した行為は、被控訴人の法律上保護される利益を違法に侵害し
25 たものとして不法行為を構成するというべきである。
3 控訴人Dについての共同不法行為の成否(争点(2))について
(1) 証拠(甲16、29の1・2、乙21、控訴人B本人)によれば、控訴人B
は、平成31年4月頃(甲29の1・2、控訴人B本人)や令和2年1月16
日(乙21)から、繰り返し、Cが会社組織により運営され、盗作疑惑に関し
ては役員会議等の判断により方針が決定されているなどとYouTube上で
5 述べていたことが認められる。さらに、証拠(甲30、59の1~6、60、
控訴人ら本人)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人D自身も、本件侵害通知が
された令和2年2月6日の翌日である同月7日午前4時41分には、控訴人B
からの依頼を受け、Cの代表取締役を名乗って、Pにメッセージを送信し、同
年1月16日にPの投稿動画のコメント欄に控訴人Bが抗議のコメントを記載
10 したのも自分が送らせたとの趣旨を述べ、著作権は当社が持っているので著作
権侵害等を理由として損害賠償請求裁判をする所存である旨通知したほか、さ
らにその翌日である同年2月8日までには、前記のとおりMとの間で示談契約
をしたこと(2(3)イ、オ)など、繰り返し、著作権侵害関係について自己が
Cの責任者又は関係者であることを示す言動をしていたことが認められる。
15 以上によれば、控訴人Dが、本件侵害通知を含む一連の著作権侵害通知につ
いて把握していなかったとは考え難く、むしろ、控訴人Bが、Eの一部門であ
るCの活動として、複数名に著作権侵害通知等をしていることを認識しつつ、
控訴人Bのそうした行動に助力ないしは加担していたと推認するのが相当であ
る。したがって、本侵害通知による不法行為につき、控訴人Dも、共同不法行
20 為者として、控訴人Bと同様の責任を負うべきものと認められる。
(2) これに対し、控訴人らは、控訴人Bが著作権侵害通知をしたことで騒動とな
った後に、初めて控訴人Dが関与するようになった旨陳述等するが、上記認定
事実に照らし、にわかに信用できない。また、被控訴人動画は、令和2年2月
6日に本件侵害通知がされた後、同年8月29日まで削除されていたにもかか
25 わらず、控訴人Dは、本人尋問において、被控訴人動画を視聴して控訴人動画
との類似性を確認した時期について、被控訴人動画の復元後であると陳述する
一方、本件侵害通知の1週間ほど後であるとも陳述するなど一貫しない陳述を
しており(控訴人D本人2、3、7頁)、この点においても同人の陳述を信用
することはできない。
4 損害の発生及びその額(争点(3))について
5 (1) 精神的損害について
ア 前記2(1)アで説示したとおり、YouTubeは、インターネットを介
して動画の投稿や投稿動画の視聴などを可能とするサービスであり、投稿者
は、動画の投稿を通して簡易な手段で広く世界中に自己の表現活動や情報を
伝えることが可能となるから、作成した動画をYouTubeに投稿する自
10 由は、投稿者の表現の自由という人格的利益に関わるものであるといえ、控
訴人Bによる違法な本件侵害通知により被控訴人動画が一方的に削除された
ことにより、被控訴人はその人格的利益を侵害されたものと認められる。
イ そして、その削除期間が、令和2年2月6日から同年8月29日までの2
06日間に及ぶこと、被控訴人トリニティ動画の動画時間が25分47秒間、
15 被控訴人メランジ動画の動画時間が19分24秒間であって、テロップ挿入
や音声等の編集作業にも相応の労力、時間を要して作成されたものであるこ
とがうかがわれること(甲56~58)、被控訴人動画が投稿されたAのチ
ャンネルには少なくとも1000人を超える登録者がいたことに加え、被控
訴人が、削除当日に、控訴人Bに対し、控訴人Bのどの動画の著作権を侵害
20 したことになるのか教えてほしい旨問い合わせたのに対して、控訴人Bは、
これに対する回答をしないばかりか(前記2(3)エ)、同年6月頃、Cのチャ
ンネルにおいて、被控訴人に向け、本件侵害通知のことを取り上げて「2度
あることは3度ある、3度目は命取りです」などとのコメントを記載して、
控訴人Bが3回目となる著作権侵害通知をすることで、被控訴人のチャンネ
25 ル停止・全動画の削除という事態が起きかねないことをほのめかすなど、被
控訴人をして専ら畏怖、困惑させるばかりで、事後的にも誠意ある対応をせ
ず、原判決において控訴人らの指摘する被控訴人動画による著作権侵害が認
められない旨判断された後も、被控訴人動画が控訴人動画の盗作であるかの
ような独自の見解に基づくコメントをYouTubeのチャンネルに記載し
ていること(甲13、14、20、69~77)など、本件に現れた一切の
5 事情を考慮すると、被控訴人が上記の人格的利益の侵害により受けた精神的
苦痛を慰藉する金額は20万円を下らないというべきである。
ウ なお、被控訴人は、前記第3の5(被控訴人の主張)(2)イ、ウに記載す
る、本件侵害通知による被控訴人チャンネル全体の収益性の低下及び視聴者
に対する信頼毀損による視聴数低下について、慰謝料算定に当たっての根拠
10 としても主張するが、被控訴人は、上記各事情によって被控訴人チャンネル
の収益性の低下による経済的損害が生じたことをいうものであって、その損
害賠償の可否は、そのような経済的損害の発生が認められるか否かの立証に
係るものであり、損害の発生が不明な場合に前記イで認定したところを超え
て慰謝料として損害賠償を認めることはできないというべきである。したが
15 って、被控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 広告収益に関する経済的損害について
ア 被控訴人動画の広告収益の低下
被控訴人動画がYouTubeにおいて削除されていた期間は、前記のと
おり令和2年2月6日から同年8月29日までの206日間であるところ、
20 証拠(甲31、32)によれば、被控訴人メランジ動画(投稿日は同年2月
3日)についての広告収益は、同年2月3日から同月6日までの4日間で合
計1463円(1日当たり365.75円)であったこと、被控訴人トリニ
ティ動画(投稿日は令和元年8月1日)についての広告収益は、令和元年1
1月6日から令和2年2月6日までの93日間で合計1766円(1日当た
25 り18.98円)であったことが認められる。
被控訴人トリニティ動画の削除により被控訴人が失った広告収益は、上記
のとおり1日当たり18.98円として算出するのが相当と認めるが、被控
訴人メランジ動画の上記収益単価は、投稿直後の4日間の広告収益に基づく
ものである。広告収益は動画の視聴数等によって変動し得るところ、一般的
に、新たに投稿された動画の方が視聴者の耳目を集めやすく、投稿直後は視
5 聴数が多く、その後時間が経過するにつれて逓減する傾向があること自体は
否定し難いこと、編み物の編み方に関する動画の視聴は、季節柄、夏場には
視聴数が低くなる傾向がうかがわれ、通年で一定しているとはいい難いこと
(甲83の1~5)からすると、被控訴人メランジ動画の広告収益は、削除
後の当初30日間は1日当たり350円、その後は、被控訴人トリニティ動
10 画との対比を考慮して、1日当たり20円として被控訴人の損害を算定する
のが相当と認める。
そうすると、本件侵害通知による被控訴人動画の削除により被控訴人が被
った広告収益に関する損害は、1万7929円(〔350円+18.98
円〕×30日+〔20円+18.98円〕×〔206日-30日〕)。端数
15 切捨て。)に限り、これを認めるのが相当である(なお、被控訴人動画の削
除又は復元の当日分については、一定程度の広告収益が得られている可能性
がないではないが、特に上記認定を左右すべき事情ではない。)。
イ 被控訴人チャンネル全体の収益性の低下等
被控訴人は、被控訴人動画が本件侵害通知によって削除されたことは、被
20 控訴人チャンネルのステータスに影響を与え、被控訴人チャンネルの動画が
視聴者の画面に表示されにくくなったり、広告単価が低下したりするなどの
不利益を生じさせ、被控訴人チャンネル全体の収益性を低下させている旨主
張し、また、被控訴人チャンネルに対する視聴者の信頼が著しく低下し、視
聴数が減少して収益性が低下した旨主張する。
25 しかし、「YouTubeヘルプ」(甲8)において、著作権侵害の「警
告を複数回受けると収益化に影響を及ぼすおそれがあります。」との記載が
されているものの、どのような場合にいかなる仕組みによって収益化に影響
を及ぼすかについては必ずしも明確になっているとは認められない。また、
被控訴人が影響を受けたとする被控訴人チャンネル全体の収益について、本
件侵害通知がされる前後、さらに被控訴人動画の復元後といった各時点の収
5 益が具体的にいかなるものであったかを認めるに足りる証拠は何ら提出され
ておらず、被控訴人から数値を示すなどした具体的主張もされていない。Y
ouTubeにおいては、各動画の収益に関する分析情報は期間を区切って
画面上に表示させることが可能である(甲31、32、83の1~5)から、
本件侵害通知がされる前後、被控訴人動画の復元後といった各時点で動画の
10 視聴数、収益等にいかなる変動があるかを立証することは容易であると認め
られるにもかかわらず、被控訴人動画ないしチャンネルについてそうした立
証が全くされていないことに照らすと、本件侵害通知による被控訴人動画の
削除により被控訴人のチャンネル全体の収益性が低下するなどして被控訴人
が経済的損害を被ったとは認めるに至らないというべきである。
15 (3) 損害軽減義務違反について
ア 控訴人らは、被控訴人には、YouTubeに対し速やかに異議申立通知
を行うことなく、漫然と被控訴人動画が削除されている状態を放置していた
ことによる損害軽減義務違反があり、被控訴人が軽減できたはずの損害は、
民法416条1項類推適用による通常生ずべき損害に当たらないから、控訴
20 人らにおいて賠償責任を負わない旨主張する。
イ しかし、証拠(甲27、28、35ないし37、58、被控訴人本人)
及び弁論の全趣旨によれば、①控訴人らによる本件侵害通知により令和2年
2月6日に被控訴人動画がYouTubeから削除された後、被控訴人は、
代理人弁護士に依頼し、同弁護士において、同年3月5日、YouTube
25 に対し、編み物の編み方そのものは著作物性の根拠にならないこと等を記載
し、その旨を判示した知財高裁判決の存在を指摘して異議申立てをしたこと、
②同月8日に、YouTubeから、正当な理由が確認できないため異議申
立てを受理できないとの回答がされたため、被控訴人代理人弁護士において、
同日及び同年4月10日に、異議申立ての要件とされる「誤り」「によって
削除された場合」にいう「誤り」には著作権侵害通知者に著作権が存在しな
5 いことも含まれるのではないかということ、控訴人Bによる被控訴人動画同
様の編み物に関する投稿動画に対する多数の著作権侵害通知により、これら
動画の投稿者らが委縮している状況にあることを指摘して反論をしたこと、
③被控訴人が同年7月4日に本件訴訟を提起した後の同年8月29日、Yo
uTubeにおいて、本件削除通知については著作権侵害通知の法的要件が
10 欠けており、控訴人Bから申立てを補足する追加情報の提出もないことから、
著作権侵害警告を取り下げることとして被控訴人動画を復元したことが認め
られる。
まず、被控訴人がYouTubeに異議申立てをするに当たって、代理人
弁護士に委任するために一定の期間を要したことについては、本件事案の内
15 容及び難易に加え、本件侵害通知後の被控訴人からの問い合わせ等に対する
控訴人Bの不誠実な対応や(2(3)エ)、代理人弁護士によらずにYouT
ubeに異議申立てをすると、異議申立者の住所といった個人情報が著作権
侵害通知をした者に対して自動的に転送されるといった仕組み(第3の2(2)
ウ)に照らせば、全くやむを得ないものというべきである。また、後にYo
20 uTubeにおいて被控訴人動画が復元されたというのであるから、被控訴
人代理人弁護士がYouTubeに対して行った上記異議申立ての内容は、
正鵠を得たものであったといえるが、著作権の実体的判断にも関わる問題で
もあって、それが理解されるのに一定の期間を要したこともまたやむを得な
いものというべきであって、被控訴人が漫然と被控訴人動画が削除されてい
25 る状態を放置したといった非難は当たらない。
したがって、控訴人らによる本件侵害通知により被控訴人動画が削除され
たことで生じた前記(1)ア、イ及び(2)アの損害は、違法な本件侵害通知によ
り通常生ずべき損害であって、それら全てについて控訴人らは損害を賠償す
べき責任を負う。
(4) 弁護士費用について
5 以上のとおり、本件侵害通知により被控訴人が被った損害額が、20万円
((1)イ)及び1万7929円((2)ア)の合計21万7929円であること、
並びに本件訴訟の内容及び難易等に鑑みれば、控訴人らによる本件侵害通知と
相当因果関係のある弁護士費用は、4万3585円と認めるのが相当である。
(5) まとめ
10 以上によれば、控訴人らは、被控訴人に対し、共同不法行為による損害賠償
として、前記(1)イ、(2)ア及び(4)の損害合計26万1514円及びこれに対
する不法行為の日である令和2年2月6日から支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
第5 結論
15 よって、被控訴人の請求は、26万1514円及びこれに対する上記遅延損害
金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がない
から棄却すべきところ、これと異なり、7万4721円及びこれに対する上記遅
延損害金の限度で一部認容し、その余を棄却した原判決は一部失当であって、控
訴人らの本件控訴は理由がないからこれをいずれも棄却し、被控訴人の附帯控訴
20 の一部は理由があるから、原判決主文1、2項を変更して、被控訴人の請求を2
6万1514円及びこれに対する上記遅延損害金の限度で認容することとして、
主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官
森 崎 英 二
裁判官
10 渡 部 佳 寿 子
裁判官植田智彦は、転補につき、署名押印することができない。
裁判官
森 崎 英 二

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