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令和4(行ケ)10050審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和4年12月26日
事件種別 民事
当事者 原告レゴジュリスエー/エス
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法3条1項3号28回
商標法3条2項18回
商標法4条1項18号2回
商標法27条1項2回
キーワード 審決32回
実施6回
商標権2回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
事件の概要 本件は、商標登録出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消 訴訟である。争点は、商標法3条1項3号該当性及び同条2項該当性である。

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判決文

令和4年12月26日判決言渡
令和4年(行ケ)第10050号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和4年10月19日
判 決
原 告 レゴ ジュリス エー/エス
同訴訟代理人弁護士 佐 藤 力 哉
栗 林 知 広
荒 川 聡
同訴訟代理人弁理士 佐 藤 俊 司
同訴訟復代理人弁理士 飯 田 遥
被 告 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 山 根 ま り 子
山 田 啓 之
旦 克 昌
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2019-13906号事件について令和4年1月6日にした審決
を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、商標登録出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消
訴訟である。争点は、商標法3条1項3号該当性及び同条2項該当性である。
1 商標登録出願及び特許庁における手続の経緯等
(1)ア 原告は、平成29年10月20日、第9類、第11類、第16類、第21
類、第28類及び第41類に属する特定の商品及び役務を指定商品及び指定役務と
して、立体商標の商標登録出願(商願2017-138422号)をし(甲26)、
その後、平成30年10月31日受付、平成31年2月22日受付及び同年3月2
9日受付の各手続補正書により補正をしたが(甲29、33、34)、令和元年7
月12日を起案日とする拒絶査定を受けたため(甲35)、同年10月18日、こ
れに対する不服審判の請求(不服2019-13906号)をするとともに、同日
付けで指定商品及び指定役務について手続補正をした(甲36、37)。
イ 前記アの出願に係る商標(平成30年10月31日受付の手続補正後のもの。
以下「本願商標」という。)は、別紙1記載の構成からなる立体商標である(甲2
9)。
ウ 令和元年10月18日付け手続補正までに、第9類、第11類、第16類、
第21類及び第41類に属する商品及び役務はいずれも削除され、同手続補正後の
本願商標の指定商品は、第28類「ゲーム用品及びおもちゃ、業務用及び家庭用の
コンピュータゲーム機、業務用及び家庭用の電子ゲーム機、業務用及び家庭用のコ
ンピュータゲームコンソール、手持ち式コンピュータゲーム機、液晶スクリーン付
きのバッテリー作動式コンピュータゲーム機、電子ゲーム機、組立おもちゃ、屋外
設置式遊具、遊園地用機械器具、遊園地用乗物機械器具、遊戯用器具、遊具建築構
造物、プラスチック製屋外設置式遊具、飛行玩具の操作用コントローラー」である
(甲29、33、34、37)。
(2) 特許庁は、令和4年1月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との
審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月20日に原告に送達さ
れた。
2 本件審決の理由の要点
(1) 商標法3条1項3号該当性について
ア 立体商標における商品の形状に係る判示
(ア) 商品又は商品の包装(以下「商品等」という。)の形状は、多くの場合、商
品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたも
のとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を
識別する標識として用いられるものは少ないといえる。
このように、商品の製造者、供給者の観点からすると、商品等の形状は、多くの
場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すな
わち商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、
商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号
等により平面的に表示される標章とは異なり、商品等の機能や美感を際立たせるた
めに選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しな
い場合が多いといえる。
そうすると、商品等の形状は、多くの場合、商品等の機能又は美感に資すること
を目的として採用されるもので、そのような目的のために採用されると認められる
形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する
標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解するのが相当で
ある。
(イ) また、商品等の具体的形状については、商品等の機能又は美感に資すること
を目的として採用される一方で、当該商品等の用途、性質等に基づく制約の下で、
通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。
しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測
し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能
又は美感に資することを目的とする形状として、商標法3条1項3号に該当するも
のというべきである。その理由は、商品等の機能又は美感に資することを目的とす
る形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであ
るから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させる
ことは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
(ウ) さらに、商品等に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いら
れた場合であっても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたもの
であるときには、商標法4条1項18号の趣旨を勘案すると、同法3条1項3号に
該当するというべきである。
その理由として、商品等が同種の商品等にみられない独特の形状を有する場合に、
商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠
として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その
限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象にな
り得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更
新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、
意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果
を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げ
られる(知財高裁平成18年(行ケ)第10555号同19年6月27日判決、知
財高裁平成19年(行ケ)第10215号同20年5月29日判決、知財高裁平成
22年(行ケ)第10253号等同23年6月29日判決にこの旨の判示がある。。

イ 本願商標の商標法3条1項3号該当性
(ア) 本願商標は、全体として、頭、胴体、両手及び両足を有する人型の立体的形
状からなるものである。
そして、その人型の立体的形状について、頭部は、角の丸い円柱であり、その側
面には、横に並んだ二つの小さい黒塗りの丸とその下に両端上がりの弧線が表示さ
れており、ややほほ笑んだ顔を描いたものと認識されるものである。また、頭部の
上には、小さな円柱(突起部)が重なっている。
次に、胴体部は、上底より下底が長い厚みのある台形の形状であり、また、両手
部は、胴体部の側面に沿うように配され、その先端は、幅広の2本の指からなるロ
ボットの手のような形状をしている。
さらに、両足部は、二つの略直方体からなり、それらの一つの面(頭部における
顔を描いた面の反対側)に円形の図形をそれぞれ二つずつ表してなるものである。
(イ) 本願の指定商品は、第28類「おもちゃ、組立おもちゃ」等であるところ、
「おもちゃ、組立おもちゃ」においては、これら商品の外観上の特徴が需要者の購
買心理、選択意欲、消費行動等に重要な影響を与える商品であるといえ、これら商
品の市場における流行や需要者の好み等に合わせて各種の特徴的な変更又は装飾等
が施されている実情にあるといえる。
そして、人型の「おもちゃ、組立おもちゃ」における形状については、頭、胴体、
両手及び両足といった基本的な人型の構成以外は、特定の形状にしなければならな
い必要性が薄い商品であるといえる。
実際に、我が国の「おもちゃ、組立おもちゃ」の分野においては、原告以外の者
によって、人型の様々な立体的形状からなる商品が製造、販売されている実情が認
められる(甲4の1~5、別紙2)。
そうすると、「おもちゃ、組立おもちゃ」においては、その商品の立体的形状に
ついて、需要者が機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲は、
広範に及ぶものといわなければならない。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)によると、本願商標に係る立体的形状は、本願の指定商品中、
第28類「おもちゃ、組立おもちゃ」の形状を表したものと認識されるとみるのが
相当である。
そして、当該立体的形状は、前記(ア)の特徴を有しているとしても、これらの特徴
は、例えば、様々な種類の帽子や髪を取り付けたり、手先に様々な種類の道具等を
握らせたりすることを可能にするためや、商品を置いた際の倒れにくさ、見た目の
良さなどといった、その機能に資することを目的として、又は見た目の美感に資す
ることを目的として採択されたものといえ、その機能上又は美感上の理由による形
状の選択と予測し得る範囲のものとみるのが相当である。
また、原告においても、原告の取扱いに係る「人型の組立おもちゃ」のカタログ
において、例えば「ミニフィギュアの頭部のスタッドによって、何百もの・・・ヘ
アベース、帽子・・・へと取り付けたり交換したりすることができます。また、手
には多様な付属品を掴ませたり、・・・もできます。」(甲1の3の9頁の抄訳)
や、「手足が動き、手先に道具を握れ、帽子や髪を自在に変えられる人形が登場。」
(甲12の10)のように、様々な種類の帽子や髪を取り付けたり、手先に様々な
種類の道具等を握らせたりすることが可能なことを説明しており、当該特徴を有す
る「人型の組立おもちゃ」を取り扱っていることが認められる。
そうすると、本願商標は、その指定商品中「おもちゃ、組立おもちゃ」との関係
において、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標で
あって、自他商品の識別標識として認識し得ないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
(2) 商標法3条2項該当性について
ア 商標法3条2項に係る判示
商品等の立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどう
かは、当該商標ないし商品等の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品
の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品
等の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。
そして、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と
実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである
(前記知財高裁判決)。
また、一般に、商品等の形状に接する需要者は、当該形状は、商品等の機能や美
感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所識別標識のために選択された
ものとは認識しない場合が多いといえることからすると、当該立体的形状からなる
商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかの判断に当たっては、当該立
体的形状が需要者の目に付きやすく、強い印象を与えるものであったかについても
勘案して判断すべきである。
イ 本願商標の商標法3条2項該当性について
(ア) 原告の提出に係る証拠及び原告の主張によって認められる、①本願商標及び
使用に係る商品の立体的形状(甲1の2、甲3、11)、②原告が保有・管理する
商標を使用する玩具製造販売会社LEGO A/S社を筆頭とするグループ企業
(以下、併せて「原告グループ」という。)が1978年(昭和53年)に販売を
開始した「組立おもちゃ」の中に含まれる主要アイテムである「小型のフィギュア
おもちゃ」(以下「原告商品」という。)の使用開始時期及び使用期間並びに使用
地域(甲1の2、甲3、11、20、21)、③原告商品の販売数量(甲3、8)、
④原告商品に係る広告宣伝のされた期間・地域及び規模(甲8、12の4~10、
甲13の2、甲21の1~9、甲24)、⑤本願商標に係る立体的形状に類似した
立体的形状の他の商品の存否(甲4の1~5、別紙2)、⑥その他の事情(甲1の
2、甲2の1・2、甲3、5、9、10、12の1~3、甲13の1・3・4・5、
甲14、甲17、18の1・2、甲24、25。原告商品(小型のフィギュアおも
ちゃ)以外の「おもちゃ、組立ておもちゃ」に係る使用の事実を証明する証拠の提
出はないことを含む。)によると(なお、商標法3条2項における「需要者が何人
かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」について、
その「需要者」とは、当然に我が国における需要者を指すものであるから、我が国
の需要者が通常目にするものとはいえないもの(例えば、外国語による商品カタロ
グ及びウェブサイト)は、需要者の認識の判断の根拠とすべき事実として認定する
ことはできない。)、原告商品は、昭和53年に販売が開始され、その生産数及び
売上高は相当程度あり、商品カタログ、雑誌、国内店舗、ショッピングモール及び
原告グループが運営するテーマパークである「レゴランド・ジャパン・リゾート」
(以下「レゴランドジャパン」という。)において広告宣伝がされ、そのマーケテ
ィング費用も相当程度あり、加えて、書籍、雑誌及びウェブサイトで紹介されてい
ることなどが認められるから、原告商品それ自体は、需要者の間に広く認識されて
いることがうかがえる。
(イ) 原告商品の広告宣伝においては、多くの場合、①原告グループにおける我が
国の販売会社であるレゴジャパン株式会社(以下「レゴジャパン社」という。)が
平成4年及び平成21年に作成した原告商品を含む「組立おもちゃ」の商品カタロ
グ(甲12の9・10)において顕著に表示された、赤色正方形内に「LEGO」
の欧文字を黒色で縁取りした白抜きの文字で表してなる商標(以下「原告商標1」
という。)、②同商品カタログにおける「レゴ・フィギュア誕生35年!」等の見
出しにおいて表示されている「レゴ」の片仮名からなる商標(以下「原告商標2」
という。)並びに③ショッピングモールで開催された原告商品に関するイベントの
ポスター、垂幕及び立て看板(甲21の3・4)に表示された「LEGO」の文字
からなる商標(以下「原告商標3」という。)とともに表示されているところ、「L
ego」はブランド名のランキングで上位になっていることから(甲10)、「L
EGO」又は「レゴ」の文字からなる原告商標1~3は、認知度の高い商標である
といえる。
そうすると、原告商品の認知度は、原告商標1~3によって生み出されている可
能性が十分にあるというべきである。
(ウ) 原告商品と本願商標はいずれも、全体として頭、胴体、両手及び両足を有す
る人型の立体的形状からなる点において共通している。加えて、両者の頭部は、角
の丸い円柱であり、その側面には、横に並んだ二つの小さい黒塗りの丸とその下に
両端上がりの弧線が表示され、ややほほ笑んだ顔を描いたものと認識されるもので
あること、胴体部は、上底より下底が長い厚みのある台形の形状であること、両手
部は、胴体部の側面に配され、その先端は、幅広の2本の指からなるロボットの手
のような形状をしていること、両足部は、二つの略直方体からなることにおいても
共通している。
しかし、両者の頭部について、本願商標は、ややほほ笑んだ顔を描いたものと認
識されるものであるのに対し、原告商品には、眼鏡や髭を描いたものなど、各種の
他の表情を表示したものも多数ある。また、頭部の上には、本願商標では、小さな
円柱(突起部)が重なっているのに対し、原告商品では、各種の帽子や各種の髪型
の髪といった異なるものがそれぞれに乗っている。さらに、両足部について、本願
商標は、それらの一つの面(頭部における顔を描いた面の反対側)に円形の図形を
それぞれ二つずつ表してなるのに対し、原告商品には、そのような図形は見受けら
れない。
そして、原告商品は、頭部及び胴体部において様々な帽子・髪及び模様を備える
ことによって、宇宙飛行士、ドクター、警官、街の住人など、様々なキャラクター
を表現しているのに対し、本願商標は、そのような様々なキャラクターを表現して
いるものではない。
そうすると、本願商標と原告商品とは、その立体的形状において、相当程度異な
るものといわなければならない。
(エ) なお、レゴジャパン社は、SNS上において「木製のフィギュアおもちゃ」
(以下「原告木製商品」という。)の広告を掲載し(甲13の6)、原告木製商品
は、原告グループの国内店舗にも展示されている(甲21の8・9)。
原告木製商品と本願商標とを比較すると、両者はいずれも、全体として頭、胴体、
両手及び両足を有する人型の立体的形状からなる点において共通している。加えて、
両者の頭部は、角の丸い円柱であり、その上には、小さな円柱(突起部)が重なっ
ていること、胴体部は、上底より下底が長い厚みのある台形の形状であること、両
手部は、胴体部の側面に配され、その先端は、幅広の2本の指からなるロボットの
手のような形状をしていること、両足部は、二つの略直方体からなることにおいて
も共通している。
しかし、両者の頭部について、本願商標では、その側面に、横に並んだ二つの小
さい黒塗りの丸とその下に両端上がりの弧線が表示されており、ややほほ笑んだ顔
を描いたものと認識されるものであるのに対し、原告木製商品では、そのような表
示はない。また、両足部について、本願商標は、それらの一つの面(頭部における
顔を描いた面の反対側)に円形の図形をそれぞれ二つずつ表してなるのに対し、原
告木製商品には、そのような図形は見受けられない。
そうすると、本願商標と原告木製商品とは、その立体的形状において、一定程度
異なるものといわなければならない。
(オ) また、原告グループは、①レゴジャパン社の封筒(甲13の5)に表示され
ている、本願商標に係る立体的形状について、顔の表示(横に並んだ二つの小さい
黒塗りの丸とその下に両端上がりの弧線)を削除したものを斜め前方から見た姿を
様式化したような平面の図形(以下「原告平面図形1」という。)、②原告グルー
プの国内店舗における「BUILD-A-MINIFIGURE」と題する店頭広
告(甲18の1)及びレゴランドジャパンにおける「ミニフィギュアトレード」と
称するアクティビティの案内掲示(甲18の2)に表示されている、原告商品を正
面から見た姿を様式化したような平面の図形(以下「原告平面図形2」という。)、
③レゴランドジャパンにおける感染防止対策に係る案内掲示(甲24)に表示され
ている、本願商標に係る立体的形状について、顔の表示(横に並んだ二つの小さい
黒塗りの丸とその下に両端上がりの弧線)を削除したものを正面から見た姿を様式
化したような平面の図形(以下「原告平面図形3」という。)並びにこれらの一部
と思われる図形を使用していることが認められるが(甲13の5、甲18の1・2、
甲24、25)、これらの図形と本願商標とは、平面と立体という大きな違いを有
するほか、前記(ウ)及び(エ)で述べたのと同様の違いがあることから、両者は、相当
程度異なるものといわなければならない。
(カ) 原告商品の広告宣伝や紹介記事において、原告商品の写真は掲載されている
ものの、本願商標に係る立体的形状それ自体が表示されている事情は見いだせない。
そうすると、本願商標に係る立体的形状それ自体が需要者の目に付きやすく、強
い印象を与えるものであったとはいえない。
(キ) 前記(ア)⑤のとおり、原告以外の者によって、人型の様々な立体的形状からな
るおもちゃ及び組立おもちゃが、それぞれ製造、販売されている実情があり、また、
原告商品(小型のフィギュアおもちゃ)以外の「おもちゃ、組立おもちゃ」に係る
使用の事実を証明する証拠の提出はない。
(ク) 以上によると、原告木製商品及び原告平面図形1~3の使用を考慮したとし
ても、本願商標がその指定商品中「おもちゃ、組立おもちゃ」について使用をされ
た結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの
となったとはいえないと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条2項の要件を具備しない。
第3 原告主張の取消事由
1 取消事由1(商標法3条1項3号に関する判断の誤り)
本件審決が根拠とする別紙2の商品は、本願商標と一見して異なる商品であるこ
とが極めて明らかである。そして、人型おもちゃにおいて、各商品を特徴づけるの
は人の形の具体的有様であり、その具体的有様が具体的に検討されなければならな
いにもかかわらず、本件審決は、かかる事実に基づく検討を放棄するものであって、
不当である。本件審決の理屈によると、およそ商標法3条1項3号に該当する場合
は考えられないばかりか、その理屈自体矛盾しており、明らかに失当である。具体
的には、次のとおりである。
(1) 商標法3条1項3号の趣旨
まず、最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・
裁判集民事126号507頁(以下「昭和54年最判」という。)の説示は立体商標
にも該当するところ、それによると、独占させるに適さない商標(以下「独占不適
応商標」という。 又は自他商品識別力を欠く商標
) (以下「自他商品識別力欠如商標」
という。 が商標法3条1項3号に該当し、
) このいずれにも該当しないものが同号に
該当しないこととなる。
したがって、立体商標の商標法3条1項3号該当性について、本件審決が採用す
るような規範すなわち「当該形状が機能上又は美感上の理由による形状の選択と予
測し得る範囲に留まるものか否か」という判断基準を仮に採用するとしても、その
際の究極の判断基準は、独占適応性と識別力に求められなければならず、機能上又
は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲の形状について登録を認めるべ
きではないとすれば、それは、そのような商標は自他商品識別力を欠き、独占を認
めるべきではないからである。
すなわち、ある立体的形状が、機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測
し得る範囲に含まれるかどうかを具体的に判断するに際しては、どのように、どの
程度具体的にその立体的形状を予測できるような場合がこれに該当するのかが問題
になる。この点、漠然とした抽象的な予測可能性で足りるとすれば独占適応性のあ
るもの、識別力のあるものまで排除してしまうことになって妥当でない。したがっ
て、かかる予測の範囲については、独占適応性を認めることが相当とはいえない程
度に、あるいは自他商品識別力も認められない程度に、具体的かつ容易に予測でき
るものでなければならない。
(2) 独占適応性について
ア 原告商品であるレゴミニフィギュアについて
(ア) 原告及び原告を中心に「レゴ」のブランド名にて形成されたグローバル企業
グループ(原告グループ)は、世界的に著名なトイブロックのメーカーであり、原
告が販売するトイブロック(以下「レゴブロック」という。)は、日本を含む世界各
国で、子供から大人まで幅広い年齢層に楽しまれているところ、中でも原告グルー
プが販売するアイテムの一つであるフィギュア「レゴミニフィギュア」
(通称「ミニ
フィグ」。原告商品)は、1978年(昭和53年)の発売当初から、その独創的な
愛らしい形状により世界各国で非常に高い人気を博し、格別の売上げを誇るととも
に、原告グループに関連するウェブサイト、広告媒体、雑誌記事及び映像作品、原
告が運営するエンターテインメント施設等の様々な媒体・場面において、原告グル
ープを象徴する商品・アイコンとして使用されている。
(イ) レゴミニフィギュアは、レゴブロックで組み立てられた世界で、ユーザーが
ロールプレイをするために考案されたアイテムであって、大きく、頭部、胴体及び
脚部の部品から構成された人型のフィギュアであり、ユーザーは、各部品を自由に
組み合わせてフィギュアを作り遊ぶことができる(甲41~47)。
レゴブロックは、主に、
「街シリーズ」「お城シリーズ」等、特定のテーマに基づ

いたセット商品として販売されているところ、レゴミニフィギュアは、かかるセッ
ト商品を構成するアイテムとして販売されている(甲48~91)。また、かかるセ
ット商品としての販売とは別に、レゴミニフィギュア単体でも販売されており、例
えば、
「レゴミニフィギュアテーマ」と呼ばれる商品ラインでは、レゴミニフィギュ
アの部品をパッケージにして販売しており(ユーザーが部品を組み合わせることに
よりレゴミニフィギュアを作り上げることができる。(甲92、158)
) 、また、原
告グループが運営する小売店においては、頭部、胴体、脚部、その他の装飾品等が
バラバラに販売されており、ユーザーは、自由に部品を選んで自分好みのレゴミニ
フィギュアを購入することができる(甲92・93)。
(ウ) レゴミニフィギュアには、様々なバリエーションが存在するが、あらゆるバ
リエーションは、次の基本的形状を共通に有しており、かかる基本的形状は、レゴ
ミニフィギュアの発売当初から一貫している。
① 頭部、胴体及び脚部からなり、それぞれ約0.8:1:1の比率であること。
② 頭部は全体的に丸みを帯びた円柱型であり、その側面に顔が描かれ、上面及
び底面には、より小さい円柱型の突起部が設けられていること。
③ 胴体は全体的に丸みを帯びた略四角錐体であって、その側面に腕部と、その
先端に略U字型の手部が設けられていること。
④ 脚部は正面視二つの略矩形であって、その全幅は胴体の底辺とほぼ同幅、脚
部の先端に略直方体の足部が設けられていること。
(以下、上記①~④の特徴を併せ
て有する形状を「本件形状」という。また、上記①~④の特徴について、丸数字に
従い「本件特徴①」などということがある。)
(エ) 発売開始から、レゴミニフィギュアが原告グループのアイコンとなるまでの
経過の概要は、次のとおりである。
a 1970年代半ばに、原告のデザイナーであるAにより最初のレゴミニフィ
ギュアのプロトタイプがデザインされた後、50種類以上のプロトタイプが考案さ
れた。その後、1978年(昭和53年)、日本を含む世界各国において、レゴブロ
ック「街シリーズ」のセットアイテムとして、警察官のモデルのミニフィギュアが
レゴミニフィギュアの第1号として発売された(甲11の5、甲94の10・11
頁)。
b レゴミニフィギュアは、その独創的かつ愛らしいデザインにより、また、レ
ゴミニフィギュアを使ったロールプレイという新たな遊び方の提案により、世界的
に大変な好評を博した。1932年(昭和7年)の創業からレゴミニフィギュアの
発売開始前までの46年間において、原告グループの累積売上高は10億デンマー
ククローネであったが、レゴミニフィギュアの発売後10年間で、それが5倍に拡
大し、レゴミニフィギュアが原告グループの売上げ拡大に大きく寄与した(甲3)。
また、1978年(昭和53年)の発売開始以降、様々なバリエーションのレゴミ
ニフィギュアが日本を含む世界各国において販売されているが、遅くとも2013
年(平成25年)3月までには、世界中で、2500種類、実に44億個ものレゴ
ミニフィギュアが製造・販売されている(甲94の8頁)。
なお、レゴミニフィギュアのバリエーションは枚挙にいとまがないが、一部の例
を挙げると、
「街シリーズ」の街の住人、ドクター、シェフ、ドライバー、建設作業
員、消防士等(甲94の16~19頁)「お城シリーズ」の兵士、騎士、魔法使い

等(同20~23頁)「宇宙シリーズ」の宇宙飛行士、スペースポリス等(同44

~47頁)、その他、スパイ(同48頁)、科学者(同50・51頁)、ダイバー(同
52・53頁)、忍者(同82頁)等が挙げられる(他に甲94~99参照)。レゴ
ミニフィギュアのバリエーションが本件形状を共通にしていることは、これらの一
例からも明らかである。
c レゴミニフィギュアの世界的な人気を背景として、原告グループは、200
0年代以降は、レゴミニフィギュアと多数の人気コンテンツとのコラボレーション
も実現し、
「スターウォーズ」、
「スパイダーマン」、
「ハリーポッター」、
「バットマン」、
「インディージョーンズ」等、数々の著名な作品の登場キャラクターを模したレゴ
ミニフィギュアも発売している(甲94の64~77・83~89頁)。
d 以上のとおり、レゴミニフィギュアは、その発売以降、現在に至るまで、非
常に高い人気を博し、原告グループを象徴する商品・アイコンとなっている。
なお、レゴミニフィギュアは、長年にわたる販売によって、世界中の子供たちに
親しまれるに至ったが、その人気は子供に限られず、大人のレゴファンの間では「A
FOL(Adult Fans of LEGO) と呼ばれる強力なファン同士の

ネットワークが確立され、インターネット上で盛んにファン同士の交流が行われて
いる(甲100)。特に、いわゆるコロナ禍以降の巣ごもり需要の高まりを受け、久
しぶりにレゴブロック及びレゴミニフィギュアを手に取ったという大人も急増した
(甲101)。こうした流れを受け、原告グループは、大人の需要者に向けたプロモ
ーションも積極的に実施し、原告グループの事業戦略は、テレビ東京の「カンブリ
ア宮殿」においても大々的に紹介されている(甲102)。
(オ) レゴミニフィギュアは、原告グループに関連するウェブサイト、広告媒体、
雑誌記事及び映像作品、原告が運営するエンターテインメント施設等の様々な媒体・
場面において、原告グループを象徴する商品として使用されている(後記2(2)ウ
(ア))。原告グループは、レゴミニフィギュアの持つ高い識別力を知的財産権として
保全すべく、世界各国において、本件形状に係る商標出願を行い、多数の国におい
て商標登録を受けている(甲16、160~179)。
イ 本願商標について
(ア) 本願商標は、本件形状に係る特徴を有するものであるところ、別紙2記載の
ものを含め、同様の特徴を有する「おもちゃ、組立おもちゃ」は存在しない。
本願商標については、前記ア(エ)のとおり、1970年代半ばに最初のレゴミニフ
ィギュアのプロトタイプがデザインされ、50種類以上のプロトタイプが考案され、
1978年(昭和53年)に警察官のモデルのミニフィギュアが発売された後、現
在まで一貫して、上記の特徴を備えているものである。
以上の事実によると、本願商標が「おもちゃ、組立おもちゃ」の取引において「必
要適切な表示としてなんぴともその使用を欲する」ものであり、それゆえに「特定
人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」に該当するものと認
めることはできない。
(イ) 本件形状について更に敷衍すると、本願商標は、それが立体商標であるとい
う点を踏まえても、独創的な特徴を有するものである。すなわち、本願商標は、①’
頭部は、上面に突起部が設けられている円筒形であること、②’頭部に、目と口が
設けられているものの、耳や鼻はないこと、③’短く四角い首であること、④’胴
体は台形であって、側面からみると、前部と背面が直線的に傾斜していること、⑤’
腕部は肘を支点に緩やかに曲がり、その先端には握ったフックのような形の手が設
けられていること、⑥’脚部は、足の甲が突き出た形で、それぞれの後ろ側に二つ
の丸い凹みがあること、⑦’脚部と胴体の長さがほぼ同じ比率であることといった
特徴を有するものであり、十分な自他商品識別力を有し、独占適応性をも認め得る
ものである。
(3) 自他商品識別力について
昭和54年最判は、自他商品識別力欠如商標について、
「一般的に使用される標章
であ(る)」ために「商標としての機能を果たし得ないもの」と説示しており、「一
般的に使用される標章」であるか否かがメルクマールとされていると解される。
そこで、
「おもちゃ、組立おもちゃ」に属する取引分野において、本願商標が一般
的に使用される標章であるか否かが問題となるところ、そもそも本願商標は、基本
的にレゴブロックの商品規格の中におけるロールプレイのための商品である。また、
確かに、人型の「おもちゃ、組立おもちゃ」自体が市場に多数存在することは、別
紙2の例をみるまでもなく明らかであるが、前記(2)イのような創作性のある、特徴
のある商品が、「一般的に使用される標章」といえるものではない。
したがって、本願商標が「商標としての機能を果たし得ないもの」とされる理由
は存しない。
(4) 機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲について
ア 以上のとおり、本願商標について、商標法3条1項3号に該当するという実
質的な理由は何ら存在しない。同号の趣旨を踏まえることなく、人型の「おもちゃ、
組立おもちゃ」は、「頭、胴体、両手及び両足といった基本的な人型の構成以外は、
特定の形状にしなければならない必要性が薄い商品」であるから、予測し得る範囲
が広いなどと説示して、本願商標もその予測の範囲内であると論じた本件審決は失
当である。
そもそも、特定の形状にしなければならない必要性が薄いのであれば、非常に様々
なパターンがあり得るのであって、具体的な商品を予測するのが困難であることに
なるはずであり、そもそも理屈として全く成立していない。
欧州連合知的財産庁(EUIPO)においても、人間の形をした玩具のフィギュ
アは、人間の外観を呈した頭部、胴体、2本の腕、2本の脚を有していなければな
らないが、これらの本質的特徴は、いかなる形でも具体的にデザインすることがで
きるのであるから、必ずしも本願商標に表れるような形状である必要はない、とし
た上で、本件形状に係る本件特徴①~④の要素の組合せからなる本願商標は、独創
的で空想的な外観を与えるように設計されており、十分に生来的な識別機能を備え
た商標であると判示している(EUIPO審決2022年3月16日(R 135
5/2021-5)。甲180)。
イ 前記(1)のとおり、機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る
範囲か否かは、独占適応性の観点又は自他商品識別力の観点から、実際に当該形状
が(複数)存在しているような場合か、そうでなくとも、あるいは具体的な取引の
実情のもとで、当該形状を具体的に容易に予測できたといえるか否かによって判断
されるべきものであるが、本願商標について、「おもちゃ、組立おもちゃ」として、
機能上又は美感上の理由による形状の選択であると予測し得るものと評価し得ない
ことは明らかである。
(5) 小括
以上のような判断は、昭和54年最判の趣旨に基づくものであるとともに、知財
高裁平成19年(行ケ)第10293号同20年6月30日判決の判示とも同趣旨
のものであり、本願商標が商標法3条1項3号に該当すると判断した本件審決は明
らかに誤りである。
(6) 被告の主張について
ア 「機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲」が狭いか広い
かそれ自体は問題ではなく、実際に本願商標に係る立体形状が機能又は美感上の理
由による選択と予測し得る範囲内のものであるといえるか否かが問題であるとこ
ろ、被告は、
「おもちゃ、組立おもちゃ」については機能又は美感上の理由による形
状の選択と予測し得る範囲が広いと繰り返すものの、具体的にその範囲内に本願商
標の形状が含まれるという説明を一切行っていない。
「おもちゃ、組立おもちゃ」について「機能又は美感上の理由による形状の選択
と予測し得る範囲が広い」ということが意味することがあるとすれば、それは、
「お
もちゃ、組立おもちゃ」については、極めて様々な形状が考えられるのであるから、
むしろ創作・選択の余地が非常に広いがゆえに、具体的な特定の形状を予測するの
は困難であって、独占適応性も非常に高いという性質を持つ商品であることでしか
ない。
イ 被告は、本願商標の形状が機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し
得る範囲を超えない理由として、同種商品と比較したその差異部分が通常採用され
ている形状の範囲を超えないとするが、「差異部分」が具体的に何であり、「通常採
用されている形状の範囲」が具体的に何であるかについては、何ら具体的にこれを
明らかにしていない。
また、被告は人型の(組立)おもちゃにおいては、頭、胴体、両手及び両足とい
った基本的な人型の構成が共通することを指摘するが、そのような構成を有するが
ゆえに「人型」なのであって、かかる被告の主張は、全く内実を欠くものであって
失当である。
この点、日本において本願商標と同様に第28類の「おもちゃ、組立おもちゃ」
を指定商品とし、かつ、人型又は一定程度擬人化されたキャラクターに関する立体
商標で登録が認められた例はこれまでにも多数存在しており(甲181~192)、
被告の主張は、一貫性を欠いた恣意的で不合理なものである。
ウ 被告は、
「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当するか
否かに関し、最高裁昭和60年(行ツ)第68号同61年1月23日第一小法廷判
決・裁判集民事147号7頁(以下「昭和60年最判」という。)を指摘して、各需
要者又は取引者が特定の商品形状を具体的かつ容易に予測することまでは不要であ
り、当該商品形状について、抽象的な予測可能性が認められれば足りる旨を主張す
るとみられる。
しかし、昭和60年最判では、各需要者又は取引者の認識・予測の程度・具体性
は全く問題とされず、需要者又は取引者のうち「一般」といい得る程度の多数の者
が(現実には異なるとしても)生産地又は販売地を示すものと認識するかどうかに
係る説示がされたにすぎないから、被告の主張は、昭和60年最判の判旨を曲解す
るものである。
エ 被告は、
「おもちゃ、組立おもちゃ」の分野において、人型の様々な立体的形
状からなる商品が製造、販売されている実情や、当該商品の市場における流行や需
要者の好み等に合わせて各種の特徴的な変更又は装飾等が施されている実情がある
などと主張するが、人型の様々な立体的形状からなる商品が製造、販売されている
こと、当該商品の市場における流行や需要者の好み等に合わせて各種の特徴的な変
更又は装飾等が施されていることといった単なる抽象的な事情から、本願商標の立
体的形状が具体的に機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得るものであ
るということを導くことはできない。
2 取消事由2(商標法3条2項に関する判断の誤り)
本件審決は、商標法3条2項の本旨を見誤り、取引の実情を全く無視した極めて
形骸的な判断をしたが、たとえ原告商品が様々なバリエーションのキャラクターで
の表現方法を有するものであったとしても、需要者がそれを原告のレゴミニフィギ
ュアとして認識する以上、商標法3条2項の趣旨に鑑みると、同項にいう出願商標
と使用商標の同一性が認められるべきであり、本願商標が使用による自他商品識別
力を獲得したものといえることは明らかである。具体的には、次のとおりである。
(1) 出願商標と使用商標の同一性について
ア 「商標法3条2項の適用において重要なことは、本来的には識別力を有して
いない同条1項3号ないし5号に該当する出願商標が、使用により識別力を獲得し
たか否かが問われるべきである。したがって、本来的には識別力を有しない使用商
標と出願商標とは、実質的に同一であれば足り、完全に同一であることを厳格に求
める必要性はない。要は、使用の結果、何人の業務に係るものかが識別できるもの
であれば足りるものと解すべきである。(高部眞規子「使用による識別力を獲得し

た商標」(中央経済社「知的財産法のモルゲンロート」14・15頁))
イ そして、裁判例においても、原則としては実質的同一性が必要としながらも、
取引の実情に照らして様々な事情を考慮し、出願商標が識別力を獲得したといえる
か否かが問われている(前掲知財高裁平成19年6月27日判決、前掲知財高裁平
成20年5月29日判決、知財高裁平成22年(行ケ)第10169号同年11月
16日判決(以下「平成22年知財高判」という。、知財高裁平成22年(行ケ)

第10406号同23年4月21日判決、前掲知財高裁平成23年6月29日判
決)。
ウ 出願商標と使用商標の同一性とは、要するに、使用によって自他商品識別力
を獲得したといえるものについてのみ登録を認めるべきということにほかならな
い。
そうであるとすれば、使用という取引の実際に基づく需要者の認識に係る判断で
ある以上、出願商標と使用商標の同一性の判断においては、対比観察ではなく、離
隔的な観察によることが当然であり、また、使用によって自他商品識別力を獲得し
たといえるものは何かという実質的判断を避けることはできない。
なお、東京高裁平成13年(行ケ)第446号同14年7月18日判決等では、
出願商標と使用商標との関係を具体的に吟味して、識別力の獲得を考察しなければ
ならないことが指摘されている。
(2) 本願商標と原告商品について
ア 本願商標と原告商品の差異
(ア) 本願商標では、その顔に眉はなく点である目が二つとやや両端が上向きの横
線の口が描かれており、その他の模様や装飾品等はないのに対して、原告商品にお
いては、眼鏡や髭、あるいは様々な表情や、胴体等に模様等が描かれたり、髪や帽
子や服等の装飾品等を伴うものなどのバリエーションが存在する。
しかし、原告商品にみられる様々なバリエーションは、基本的に本件形状をいず
れも共通に有するものであり、かかる本件形状は、原告商品の発売当初からおよそ
45年近くの長きにわたって一貫して使用されているものである。
また、模様の有無については、本願商標は、胴体や脚部等について「一切模様が
ない」という特定をしたものではなく、あくまでも、原告商品が様々なバリエーシ
ョンのキャラクターでの表現方法を有するものであるから、個々のバリエーション
のキャラクターに共通し、また需要者も原告商品と認識する本件形状を抽出して立
体商標として出願したものである。本願商標と原告商品とは、本件形状においては
全く同じものである。
さらに、原告商品では模様以外にも被り物や手に持つ武器等の装飾品等を伴う場
合があるが、それは、いずれも容易に取り外し可能なものであり、原告商品の性質
上、取り外して遊ぶことが想定されている。
様々なバリエーションがありながらも、原告商品に共通した部分が一貫してある
ことは、変わっていく中において変わらないものとして、当該共通部分をより鮮明
に浮き彫りにするのである。
(イ) 本件審決が「相当程度異なる」と認定した本願商標と原告商品との差異は、
個別にそれらを対比観察した場合の差異に着目したものにすぎず、使用の結果、何
人の業務に係るものかが識別できるかという観点からすると、重大な意味を有する
ものではない。
イ 取引の実情
(ア) 前記の(1)イの裁判例でも説示されているとおり、商品等は、機能維持、新商
品の発売のため、社会慣行、取引慣行の変化等に応じて形状を変更することがある
以上、かかる取引の実情を踏まえて、商品の形状の変化があっても、なお本願商標
の立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得したといえるかが問題とされる。
(イ) この点、原告商品は、そもそもユーザーがレゴブロックにおいてロールプレ
イをするための商品であり、その性質上、その「形」は同じでありながら、様々な
ロールを果たすため、表情や衣装等に様々なバリエーションの存在することがその
商品の大前提となっている。
原告商品が様々なバリエーションをもったロールプレイをする商品であるという
ことからすると、需要者は、個々のバリエーションに対して一つの原告商品として
の固定的な認識を持つのではなく、原告商品の個々のバリエーションから共通部分
のみを昇華させた本件形状を原告商品の立体形状として観念することは明らかであ
る。したがって、本願商標と原告商品との個別具体的なバリエーションの違いを取
り立てて議論することはナンセンスであり、需要者が原告商品から本件形状を観念
することが認められる以上、本願商標との同一性を認め得ることは明らかである。
この点、色、模様、部品等に様々なバリエーションのある商品一般について、その
バリエーション一つ一つについて個別に商標登録を行うことを強いるならば、原告
商品のようにバリエーションが多岐にわたる場合には、およそ不可能を強いるもの
であって、実務上の観点からしても合理性を著しく欠くことが明らかである。
(ウ) また、より一般にみても、人あるいは生物を模した「おもちゃ、組立おもち
ゃ」という商品においては、基本的な形状に対し、表情の変化、模様、衣装、装飾
品等の様々なバリエーションやデフォルメが加えられて販売されることが一般的で
あり、様々なバリエーションが存在するものの、需要者が同一の商品・ブランドと
して認識する商品は「おもちゃ、組立おもちゃ」の分野において多数存在する(甲
139~157)。
(エ) 本件において、原告商品の使用によって自他商品識別力を獲得したといえる
のは、一見多様にみえる原告商品において、頑なに一貫して用いられ、それゆえに
かえってその存在が顕著といえる本件形状にほかならないから、これを表した本願
商標と原告商品の間の同一性が認められるべきは当然である。
この点、指定商品について第28類を指定し、本願商標について商標登録を認め
た国のうち、本願商標の使用による識別力が争点となった米国、オーストラリア、
韓国及びメキシコにおいては、いずれも、様々なバリエーションを含む原告商品を
使用商標として認め、本願商標の使用による識別力が認められている(甲193)。
ウ 自他商品識別力
(ア) 原告商品の日本における展開
a 原告商品の売上げ及び市場シェア
世界的な発売と同時に、日本においても原告商品の販売が開始された(甲11の
5)。原告商品は、日本のトイブロックのユーザーにも非常に高い人気を誇り、全体
的なレゴブロックの売上げを押し上げるとともに、原告商品単体の売上げも極めて
好調である。
すなわち、平成26年から平成30年までの各年のレゴブロックの日本における
売上げは、それぞれ約●●●円、約●●●●円、約●●●●円、約●●●●円、●
●●●円であり、高い売上高を誇る(甲8)。また、令和元年以降もレゴブロックの
売上げは堅調に推移し、同年から令和3年までの累積の売上高は、約●●●円であ
り、各年の平均の売上高は約●●●●円に上る(甲103)。
原告商品単体でみても、非常に高い売上高を記録している。すなわち、多くのレ
ゴブロックのセット商品の中に原告商品がセットアイテムとして含まれており、例
えば、令和元年度においては、販売されたレゴブロックの約●●%に原告商品が含
まれていたが、これを踏まえると、日本における原告商品が含まれる商品の売上高
は約●●●円に上る。また、
「レゴミニフィギュアテーマ」単体の売上げ(レゴブロ
ックのセットアイテムとして販売されている原告商品の売上げは含まれない。)で
みても、平成26年から令和3年までの累積の売上高は、約●●●円であり、各年
の平均の売上高は約●●●●円に上る(甲103)。
また、売上高ベースで考えた場合、レゴブロックは市場シェアも非常に高い割合
を誇る。すなわち、一般社団法人日本玩具協会による令和元年度国内玩具市場規模
の調査(甲19)によると、平成30年度及び令和元年度の「知育・教育」分野(レ
ゴブロックのような「ブロック」以外にも多種多様な種類の知育・教育玩具を含む
幅広い市場区分である。)の日本の市場規模は、それぞれ約1725億円、1690
億円であるところ、そのようにかなり幅広に市場を捉えたとしても、それらの年度
におけるレゴブロックのシェアは、それぞれ約●●●%に及び、また、前記の令和
元年度の原告商品が含まれる商品のみの市場シェアで約●%に達する。トイブロッ
クの市場に限定すれば、レゴブロック及び原告商品が非常に高い市場シェアを誇る
ことは明白である。
b 原告商品に関する宣伝広告等
(a) 宣伝広告費
原告グループは、レゴブランド及び原告商品の認知度の向上及びブランド価値の
向上を目的として、日本において、多額の宣伝広告費を投じて、積極的な宣伝広告
活動を行い、かかる宣伝広告活動において原告商品を様々な態様で使用している。
すなわち、近年の日本における宣伝広告に限ってみても、平成26年から平成3
0年までの各年の原告グループの日本における宣伝広告費は、それぞれ約●●●円、
約●●●円、約●●●円、約●●●円、約●●●円と非常に高額である(甲8)。ま
た、令和元年から令和3年までの累積の宣伝広告費は約●●●●円であり、各年の
平均の宣伝広告費は約●●●円に上る(甲103)。
かかる高額の宣伝広告費を投じて、原告グループは、後記(b)~(d)のとおり、積
極的な宣伝広告活動を実施した。
(b) 製品カタログ等
原告グループは、日本における原告商品の発売以来、原告商品を含むレゴブロッ
ク等の原告グループの商品に係るカタログを製作し日本国内で頒布していたもの
で、それらにおいて、原告グループ及び原告グループの販売する商品を象徴するも
のとして、原告商品が多数使用されている(甲48~91)。例えば、最新の令和4
年度の製品カタログでは、まず、その表紙において、原告商品及びその頭部が大々
的に描かれ、レゴブランドを象徴するものとして、強く目を引く態様で使用されて
いる。各商品の紹介ページにおいては、多数の原告商品の写真が印象的に使用され
ている。例えば、レゴシティの商品ページでは、見開き1頁の中だけでも約30体
の原告商品の写真が使用されている(甲91の1頁)。
また、原告グループは、製品カタログにスマートフォンをかざすことにより、製
品カタログ上でミニフィギュアの3Dアニメーションを見ることのできる「レゴⓇ
とびだすカタログ」というスマートフォン用アプリを配信している。当該アプリの
アイコンには原告商品が描かれており、当該アプリと互換的な製品カタログのペー
ジの右上には当該アイコンが付されているところ、当該アプリも大変な好評を博し
ている(甲104)。
(c) テレビコマーシャル
原告グループは、レゴブロックについて積極的にテレビコマーシャルを行ってお
り、その様々な場面において、原告商品が強く印象的な態様で使用されている(甲
105~111)。例えば、平成28年に放映された、レゴシティ消防署シリーズの
テレビコマーシャルでも、原告商品が多数登場している(甲111)。
(d) その他のメディア掲載等
原告グループに係る雑誌記事等においても、原告商品が原告グループを象徴する
ものとして多数使用されている(甲12の1~14)。すなわち、多くの原告グルー
プに係る特集記事では、その1頁目において、原告商品の写真がひと際目を引く態
様で使用されている。例えば、平成13年6月発行の「モノ・マガジン特集号」に
掲載されたデンマークのレゴランドの特集記事の1頁目において、「レゴの世界へ
ようこそ!」とのセリフとともに、大きく印象的な態様で、原告商品が表示されて
いる(甲12の1の2頁)。また、同年12月発行の「mc sister」に掲載
された「レゴのある生活」と題する特集記事の1頁目の中心部分においても、原告
商品が大きく目を引く態様で示されている(甲13の1の2頁)。
また、原告商品は、国連難民高等弁務官事務所のポスターにも採用されており(甲
14)、かかる事実は原告商品の著名性とデザインの独創性を端的に物語るもので
ある。
c 小売店における使用
原告商品は、原告グループが販売する商品の中でも高い人気を誇る商品であるか
ら、レゴストア、レゴショップ等の原告グループの小売店や、トイザらス等の他社
の小売店においても、ひと際目を引く形で陳列ないしディスプレイされている(甲
92の別紙6~8・11~17・25・30頁、甲93の別紙3・9~11・13
~16頁、甲112の7頁)。また、店舗の入口が原告商品を模した形になっていた
り、店舗の掲示物や壁に原告商品が多数描かれていたりするなど、外装・内装とも
に、原告商品が原告グループを象徴するものとして、極めて印象的に使用されてい
る(甲92の別紙2~4・10・25・29頁、甲93の別紙2~4・7・8・1
3・17頁)。
また、前記1(2)ア(イ)のとおり、原告商品は、頭部、頭部の付属品である髪の毛
や帽子、胴体、脚部、そして腕部に持たせる付属品を組み合わせることにより、自
由に様々なバリエーションの原告商品を作って遊ぶことができるところ、レゴショ
ップにおいては、各部品がバラバラに販売されており、需要者は、好きな部品を組
み合わせて自分好みの原告商品を作り購入することもできる(甲92の別紙11~
17・25頁、甲93の別紙9~11頁)。
d 原告商品の多角的な展開
原告グループは、その高い知名度・ブランド力を背景に、レゴブロックの製造・
販売等以外にも、テーマパークの運営、映像作品の制作、コンピュータゲームやス
マートフォンゲーム、ソーシャルメディアの運営等、多角的にビジネス展開をして
いるが、そこでも原告商品は、次のとおり、原告グループを象徴するアイコンとし
て様々な態様で印象的に使用されている。
(a) テーマパークにおける使用
原告グループは、世界各国において、
「レゴランド」という名称でテーマパークを
運営しており、日本では、世界7か国8か所目の展開として、平成29年4月1日
に、名古屋において「レゴランドⓇ・ジャパン」(レゴランドジャパン)を開園し、
運営している(甲113の1頁)。レゴランドジャパンは、2歳から12歳までの子
供を持つファミリー層をターゲットにしたレゴブロックの世界観を体現した屋外型
キッズテーマパークであり、園内には、レゴブロックで作られた多数の展示物が設
置され、来場客は実際にレゴブロックそのもので遊ぶこともできる等、インタラク
ティブなアトラクションやワークショップが多彩に展開されている。レゴランドジ
ャパンへの来場者数は、開園から僅か5か月という短期間で100万人を達成する
など、ファミリー層を中心に大変な好評を博している(甲114)。
そして、原告商品は、レゴランドジャパンに関連しても、園内・園外を問わず、
様々な態様で使用されている。まず、レゴランドジャパンの公式ウェブサイトにお
いては、あらゆるページにおいて原告商品が描かれている(甲113の1頁)。例え
ば、公式ウェブサイトのうち、
「安全に対する取り組み」と題するウェブページでは、
原告商品の本件形状を用いて、感染防止に関する注意事項等を印象的に掲示してい
る(同3頁)。また、レゴランドジャパンの公式キャラクターである「バディ」「レ

ベッカ」「シャークガイ」「ダイブ」等は、いずれも原告商品をベースとしたキャ
、 、
ラクターである(同23頁)。園内では、不定期に公式キャラクターとのグリーティ
ングイベントが開催され、来場者は原告商品のキャラクターと触れ合い、写真撮影
等をすることができる(甲115) 園内及びレゴランドジャパンに併設されたホテ

ルには、多数の展示物及び掲載物において、原告商品が使用されており(甲116)、
来場者は滞在中に多数の原告商品を認知することとなる。また、名古屋駅からレゴ
ランドジャパンの最寄り駅である金城ふ頭駅を繋ぐあおなみ線は、レゴランドジャ
パンの開園以来、レゴランドジャパンの世界観を表現したデザイントレイン「LE
GOLANDⓇTrain」を運行している(甲117) 車両の外装及び内装には、

原告商品が多数印象的に描かれており(甲118)、これらは、レゴランドジャパン
への来場者はもちろんのこと、名古屋駅やあおなみ線の一般利用者の目にも触れる
ものである。
加えて、原告グループは、レゴランドとは別に、世界各国で、
「レゴランドディス
カバリーセンター」(以下「ディスカバリーセンター」という。)というレゴブロッ
クの世界観を体現した屋内型テーマパークも運営しており、日本においては、東京
及び大阪の2か所に所在している。東京のディスカバリーセンターは平成24年に、
大阪のディスカバリーセンターは平成27年にそれぞれ開業し、令和元年には大阪
のディスカバリーセンターが世界各国のディスカバリーセンターの中でも最高の来
場者数を記録するなど、高い人気を博している(甲119)。
そして、原告商品は、ディスカバリーセンターに関連しても、様々な態様で使用
されている。東京ディスカバリーセンターに限っても、園内・園外における多数の
広告物、掲示物、展示物等において、原告商品が印象的に使用されており(甲12
0)、来場者は滞在中に多数の原告商品を認知することとなる。
(b) 映像作品における使用
原告グループは、原告商品の世界的な人気を背景に、原告商品をフィーチャーし
た、トイブロック以外の様々な商品・コンテンツの開発・販売を積極的に行ってい
る。これらの商品・コンテンツのうち、ひと際原告商品の認知度の更なる向上に貢
献しているのが、原告商品を登場人物とした多数の映像作品であり、原告グループ
は、これらの映像作品を様々なメディアを通じて上映、配信等している。なお、こ
れらの映像作品に係るプロモーション戦略によって、クリスマス商戦後においても
新しい売上げの山を作り出すことに成功している(甲121の124頁)。
まず、原告グループは、ワーナーブラザーズとコラボレーションの上、原告商品
を登場させた映画作品を制作し、日本の映画館で上映した。平成26年には「レゴ
ムービー」、平成29年には「レゴ バットマン ザ・ムービー」及び「レゴ ニン
ジャゴー ザ・ムービー」、そして、令和元年には「レゴ ムービー2」が上映され、
それぞれ高い興行収入を得ている(甲122~125)。特に、「レゴ ムービー」
は、2014年(平成26年)度の世界興行収入においてトップ10に入る成績を
収めている(甲121の124頁)。これらの映画作品は、ブルーレイ・DVD化も
されたほか(甲126) ネットフリックス等の動画配信サービスにおいても配信さ

れている(甲127~129)。
さらに、原告グループの公式YouTubeチャンネルにおいては、
「レゴ ニン
ジャゴー」「レゴ
、 シティアドベンチャーズ」等のアニメーション作品を配信して
おり、前者に関しては、小学館コロコロコミックの公式YouTubeチャンネル
においても配信されており、いずれも高い視聴回数を誇っている(甲130~13
2)。
(c) ビデオゲーム/スマートフォンアプリにおける使用
原告グループは、他社とのコラボレーションにより、原告商品を用いたビデオゲ
ーム及びスマートフォンゲームの開発・販売も行っている。
すなわち、原告は、ワーナーブラザーズとコラボレーションの上、前記(b)の映画
作品をベースとしたビデオゲームを開発・販売している(甲133)。また、スマー
トフォンアプリも多数配信しており(甲134、135)、例えば、
「レゴ タワー」
は、原告商品が住むタワーを建設しつつ、様々なバリエーションの原告商品や、原
告商品のパーツを集めることができるスマートフォン用ゲームである(甲135)。
そして、これらのアプリのアイコンには、原告商品が印象的に使用されている。
さらに、原告グループは、オンラインゲームプラットフォームも運営しており、
同プラットフォームにおいて無料で遊ぶことのできるゲームにも、多数の原告商品
がゲーム内のキャラクターとして登場する(甲136)。
(d) グッズ展開
さらに、原告グループは、キーホルダー、収納ボックス、トートバック、文房具
等、原告商品のグッズ展開も行っており、小売店において、ひと際目を引く態様で、
これらのグッズが陳列され販売されている(甲92の別紙18・19・22~24
頁、甲159)。
(e) ソーシャルメディア「レゴライフ」
原告グループは、2017年(平成29年)に子供でも安心して利用することの
できるユーザー間のソーシャルメディアとして「レゴライフ」を立ち上げたが、2
020年(令和2年)には、日本を含む世界各国で1500万ダウンロードを突破
し、世界有数の子供向けプラットフォームに成長するに至った(甲137)。同プラ
ットフォーム上では、ユーザーは自分でデザインした原告商品のアバターを使用し
て他ユーザーとの交流を行い、その他、アプリのユーザーインタフェースの至ると
ころに、原告商品が使用されている(甲138)。
(イ) 本願商標の自他商品識別力
前記ア及びイのとおり、本願商標と原告商品の差異は重大な意味を有するもので
はない。そして、当該差異を原告商品の取引の実情を踏まえて考察すると、本願商
標が自他商品識別力を獲得したものであることは明らかである。
すなわち、前記1(2)ア及び前記(ア)のとおり、①原告商品は、レゴブロックにお
けるロールプレイをするための商品であり、②その商品の性質上様々なバリエーシ
ョンの商品が販売されているが、③販売開始から約45年間にわたり、その基本形
状は一貫しており、④その売上げは極めて多数に及び、⑤様々な広告宣伝が行われ
るとともに、⑥様々な商品展開が行われている。そして、原告商品における模様や
装飾品等に係るバリエーションの存在は、同種商品においても一般にみられる慣行
であり、かつ、原告商品においては装飾品等を取り外し付け替えたりして使用する
ことが前提となっているものである。かかる事実に照らすと、本願商標は、原告商
品と必ずしも同一ではないものの、極めて多数の様々なバリエーションがある中で
も変わることのない基本的な本件形状なのであって、際立って高い自他商品識別力
を有していることが明らかである。
したがって、本願商標に接する需要者は、原告商品の長年における使用の結果、
本願商標に係る本件形状が様々なバリエーションの原告商品に共通するものである
と認識し、これが原告グループによる原告商品と認識するものであって、そうであ
る以上、本願商標が商標法3条2項の要件を満たしていることは明らかである。
(ウ) アンケート調査による裏付け
原告が実施した本願商標の自他商品識別力を問うアンケート調査(以下「本件ア
ンケート調査」という。)に係る報告書(甲194)からも、本願商標が高い自他商
品識別力を有し、本願商標に接した需要者がこれを出所識別標識として認識するも
のであることが裏付けられている。具体的には、次のとおりである。
a 本件アンケート調査の実施方法等
(a) 本件アンケート調査は、令和4年7月1日~3日にかけて、NERAエコノ
ミックコンサルティングに委託の上、インターネット調査の方式で実施した。本件
アンケート調査の実施を担当し、かつ、本件アンケート調査に係る報告書を作成し
た者は、アンケート調査に関する学術的・実務的な専門知識と経験を有する(甲1
94)。
(b) 本件アンケート調査においては、幅広く、日本全国に在住する16歳以上6
9歳以下の一般人男女1190名を調査対象者とした。調査対象者の性別及び年齢
層は、いずれも均等となるよう割り付けが行われ、統計学上、妥当な標本数以上の
調査対象者が適切に選定されている(甲194)。本件アンケート調査は、十分なサ
ンプル数を確保することにより、調査対象者の居住地域は全国の総人口に占める各
地方別総人口の割合に照らしてもおおむね人口比例的に適切な分布となっており
(甲196)、その調査結果は日本全国における認知度を適切に反映したものとい
える。
なお、調査対象者の選定に関して、調査対象者の中には、
「おもちゃ、組立おもち
ゃ」に何の関心もない、それらの需要者でない者も広く含まれている。加えて、本
願商標の指定商品である「おもちゃ、組立おもちゃ」の重要な需要者と考えられる
のは16歳未満の児童・子供であり、本願商標は、これらの需要者層に特に高い認
知度が認められると予測されるところ、調査結果の厳格な適正性、信用性を確保す
るために、調査対象者は16歳以上に限定しており、本件アンケート調査の結果に
は、かかる重要な需要者層の認知度が反映されていない。これらの調査対象者の範
囲を考慮すると、本件アンケート調査の結果は、本願商標の本来の認知度よりも低
い値を示すことが合理的に推認されることに留意すべきである。
(c) Q1~8から構成される本件アンケート調査の質問事項は、本願商標の自他
商品識別力の把握のためにバイアスがかからないように、適切に設計されたもので
ある。
b 本件アンケート調査の集計結果
(a) 出願商標について、全国において10%程度の認知度が認められれば、使用
による自他商品識別力を認め、商標法3条2項に基づく商標登録が認められるべき
である。
(b) 第1グループとして、本願商標の画像を表示した上での「この画像のフィギ
ュア(人形)の立体形状を見ると、1つのブランド/メーカー/会社のフィギュア
(人形)が思い浮かびますか、それとも2つ以上のブランド/メーカー/会社のフ
ィギュア(人形)が思い浮かびますか。分からない方は『わからない』をお選びく
ださい。」という質問(Q4)に対し、「1つのブランド/メーカー/会社」という
回答を選択したグループの割合を集計すると、38.2%であった。
前記a(b)のとおり、本件アンケート調査は、需要者の要件を限定せず、あえて一
般消費者という殊更厳しい基準の上で行ったものであり、かかる条件のもとにおい
てすら約40%という調査結果が得られたことの意義を真摯に受け止める必要があ
る。また、特に高い認知度が予測される16歳未満の子供の認知度が反映されてい
ないことをも踏まえると、本願商標の本来的な認知度は、より高い数値であること
が明らかである。
(c) 第2グループとして、本件アンケート調査に参加する前に原告商品を見たこ
とがあるかという旨の質問(Q7)に対し、見たことがあると回答した者に限定し、
そのうちQ4において、
「1つのブランド/メーカー/会社」という回答を選択した
グループの割合を集計すると、66.7%であった。
また、第3グループとして、Q7において原告商品を1年未満の期間内に見たこ
とがあると回答した調査対象者のうち、Q4において「1つのブランド/メーカー
/会社」を選択したグループの割合を集計すると、77.1%であった。
原告商品は長年様々なバリエーションのものが販売されているため、「おもちゃ、
組立おもちゃ」の需要者は、一度は原告商品を目にしたことがある蓋然性が高いと
考えられるから、原告商品を見たことがあるかどうかを、需要者であるかどうかの
代理変数として用いることは許されると考えられる。
(d) なお、第4グループとして、原告商品を持っている、又は過去に持っていた
かという旨の質問(Q8)に対し、原告商品を持っている、又は過去に持っていた
と回答した者に限定し、そのうちQ4において「1つのブランド/メーカー/会社」
を選択したグループの割合を集計すると、79.5%であった。原告商品は、様々
なバリエーションを集めてロールプレイしながら遊ぶものであり、過去に購入経験
のある者は購入当時において需要者であるとともに、将来的にも再度購入すること
が想定される(他方で、原告商品は購入意欲のある者においてさほど購入のハード
ルが高いというものでもない。 から、
) この数値も需要者の認知の実態に近い結果を
推し量るに資するものといえる。
(e) したがって、需要者を限定することなく行った本件アンケート調査の調査対
象者について、少しでも本来の「おもちゃ、組立おもちゃ」の需要者の認知の実態
に近い結果を推し量るために措定した場合の認知度は、66.7%~79.5%で
あるといえる(これらについても、16歳未満の子供の認知度が反映されていない
等の点はなお留意が必要である。。

c まとめ
本件アンケート調査の集計結果に鑑みると、本願商標が非常に高い自他商品識別
力を有することは明白であり、本件アンケート調査の結果からも、本願商標が高い
自他商品識別力を有し、本願商標に接した需要者は、原告による原告商品の使用に
よって本願商標を出所識別標識として認識するに至っているということが裏付けら
れている。
このように高い自他商品識別力を有する本願商標の登録を認めたとしても、独占
適応性の観点からも何ら問題はなく、むしろ需要者の保護という商標法の目的(同
法1条)に照らすと、過度な事前規制としてその登録を認めないことの方が同法の
目的にそぐわないものといえる。
(3) 小括
以上のとおり、本件審決が指摘した本願商標と原告商品の差異にかかわらず、本
願商標が、原告商品のおよそ45年近くにわたる長年の使用の結果、自他商品識別
力を獲得したことは明らかであって、原告商品の使用によって本願商標が識別力を
獲得したとは認められないと判断した本件審決は明らかに失当である。
(4) 被告の主張について
ア 被告は、本件形状を介して本願商標と原告商品を比較することが妥当でない
旨を主張するが、本願商標は、原告商品が共通して持つ本件特徴①~④からなる本
件形状、更に敷衍すると、前記1(2)イ(イ)の①’~⑦’の特徴を有する形状につい
て出願されたものであって、本件形状を介して本願商標と原告商品とを比較するこ
とは適切である。
イ 被告は、平成22年知財高判の事案と比して、本願商標と原告商品を比較し
た場合には大きな形状変更がある旨を主張する。
しかし、本件商品には、嫌でも商品名等として注目され識別ポイントとなること
が明らかな表示や明らかに目を惹くデザイン等、本来的な出所識別ポイントとなる
べきロゴ・商品名等は付されておらず、また、帽子や髪等が付けられる以前で、体
にも模様が描かれたりしていない段階のシンプルな本願商標の立体形状と、そこに
帽子や髪が付けられ、体に模様が描かれたりした原告商品の立体形状との同一性を
考えた場合、平成22年知財高判の事案における相違は僅かな相違である一方で本
件では大きな相違があるというべき理由はない。いずれの事案についても、シンプ
ルな形状に装飾等を施したものであり、本来的な識別標識の有無や商品そのものか
空の容器かという相違等を考えると、むしろ平成22年知財高判の事案における方
が、形状に大きな相違があるというべきである。
第4 被告の主張
1 取消事由1(商標法3条1項3号に関する判断の誤り)について
本願商標は、指定商品中「おもちゃ、組立おもちゃ」の需要者が、それに接する
場合、出所表示識別のために選択されたものと認識するものではなく、商品の機能
や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、単に商品の形状を普通に用い
られる方法で使用する標章のみからなる商標と認識するにすぎないものというべき
であるから、商標法3条1項3号に該当する。具体的には、次のとおりである。
(1) 立体商標について
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若
しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。 からなる場合についても、
) 所定の要
件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定しているところ(同法2条1項、
5条2項参照)、同法は、商品等の立体的形状の登録の適格性について、平面的に表
示される標章における一般的な原則を変更するものではないが、同法4条1項18
号では商品等が当然に備える立体的形状等のみからなる商標については登録を受け
られないものとしており(同法26条1項5号も参照) このような立体的形状につ

いては、特定の者に独占させることを許さないとしているものと理解される。
そして、商品等が当然に備える立体的形状とは、商品等の性質から通常備える立
体的形状及び商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状をいうと解され
る。
(2) 商品等の立体的形状に係る商標法3条1項3号の該当性について
ア 商品等の形状が、多くの場合、商品等の機能又は美感に資することを目的と
して採用されるものであり、客観的にみて、そのような目的のために採用されると
認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法
で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解する
のが相当である。その理由は、前記第2の2(1)ア(ア)のように本件審決が説示する
とおりである。
イ また、商品等の具体的形状に関し、同種の商品等について、機能又は美感上
の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有し
ていたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商
標法3条1項3号に該当するものというべきである。その理由は、前記第2の2(1)
ア(イ)のように本件審決が説示するとおりである。
ウ さらに、商品等に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いら
れた場合であっても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたもの
であるときには、商標法4条1項18号の趣旨を勘案すると、同法3条1項3号に
該当するというべきである。その理由は、前記第2の2(1)ア(ウ)のように本件審決
が説示するとおりである。
(3) 本願商標の商標法3条1項3号該当性について
ア 本願商標の構成について
本願商標は、全体として、頭、胴体、両手及び両足を有する人型の立体的形状か
らなるものであり、当該立体的形状について、頭部は、角の丸い円柱であり、その
側面には、横に並んだ二つの小さい黒塗りの丸とその下に両端上がりの弧線が表示
されており、ややほほ笑んだ顔を描いたものと認識されるものである。また、頭部
の上には、小さな円柱(突起部)を有している。胴体部は、上底より下底が長い厚
みのある台形の形状であり、また、両手部は、胴体部の側面に沿うように配され、
その先端は、幅広の2本の指からなるロボットの手のような形状をしている。両足
部は、二つの略直方体からなり、それらの一つの面(頭部における顔を描いた面の
反対側)に円形の図形をそれぞれ二つずつ表してなるものである。
イ 本願の指定商品中、第28類「おもちゃ、組立おもちゃ」について
本願の指定商品は「おもちゃ、組立おもちゃ」等であり、主に子供が手に持った
り、組み立てたりして、遊べるように作ってある道具である。
ウ 同種の商品に係る立体的形状について
我が国の「おもちゃ、組立おもちゃ」の分野においては、甲4の1~5及び別紙
2に記載の例があるように、原告以外の者によって、全体として、頭、胴体、両手
及び両足を有する人型の様々な立体的形状からなる商品が製造、販売されている実
情が見受けられる。
そして、これら「おもちゃ、組立おもちゃ」に係る商品は、その外観上の特徴が
需要者の購買心理、選択意欲、消費行動等に重要な影響を与える商品であるといえ
るもので、商品の市場における流行や需要者の好み等に合わせて各種の特徴的な変
更又は装飾等が施されている実情にあるといえる。
また、人型の「おもちゃ、組立おもちゃ」における形状については、頭、胴体、
両手及び両足といった基本的な人型の構成以外は、特定の形状にしなければならな
い必要性が薄い商品であるといえる。
そうすると、
「おもちゃ、組立おもちゃ」においては、その商品の立体的形状につ
いて、需要者が機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲は、広範
に及ぶものといわなければならない。
エ 本願商標に係る立体的形状と同種の商品に係る立体的形状について
(ア) 本願商標に係る立体的形状と同種の商品に係る立体的形状とを比較すると、
両者は、ともに、全体として、頭、胴体、両手及び両足を有する人型の立体的形状
からなる点において共通している。
(イ) 本願商標に係る立体的形状は、前記(ア)の基本的な人型の構成において、頭
部、胴体部、両手部及び両足部の各形状に特徴を有しているとしても、これらの特
徴は、例えば、様々な種類の帽子や髪を取り付けたり、手先に様々な種類の道具等
を握らせたりすることを可能にするためや、商品を置いた際の倒れにくさ、見た目
の良さなど、その商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、見た目の美
感をより優れたものとするなどを目的として採用されたものといえる。
また、実際に、原告においても、様々な種類の帽子や髪を取り付けたり、手先に
様々な種類の道具等を握らせたりすることが可能なことを説明しており(甲1の3
の9頁の抄訳、甲12の10)、当該特徴を有する「人型の組立おもちゃ」を取り扱
っている。
そうすると、本願商標に係る立体的形状は、その商品の機能又は美感に資するこ
とを目的として採用されたものであり、通常採用されている形状の範囲を超えるも
のとまではいえず、その機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲
のものとみるのが相当である。
(ウ) 他方、同種の商品に係る立体的形状も、前記(ア)の基本的な人型の構成以外
は、各種の特徴的な変更又は装飾等が施されているところ、それらについては、本
願商標に係る立体的形状には施されていない装飾等もあるものの、前記(イ)と同様
に、例えば、様々な種類の帽子や髪を取り付けたり、手先に様々な種類の道具等を
握らせたりすることを可能にするためや、商品を置いた際の倒れにくさ、見た目の
良さなど、その商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、又は流行や需
要者の好み等に合わせた装飾等が施されているなど、見た目の美感をより優れたも
のとするなどを目的として採用されたものであり、通常採用されている形状の範囲
を超えるものとまではいえず、その機能又は美感上の理由による形状の選択と予測
し得る範囲のものとみるのが相当である。
(エ) そうすると、本願商標に係る立体的形状と同種の商品に係る立体的形状との
比較において、両者は、ともに、その商品の機能又は美感に資することを目的とし
て採用されたものであり、その機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得
る範囲のものという点において共通している。
(オ) したがって、本願商標の立体的形状は、人型の「おもちゃ、組立おもちゃ」
において通常採用されている立体的形状の一つと認識されるものといえる。
オ 小括
以上より、本願商標に係る立体的形状は、同種の商品に係る立体的形状と、基本
的な人型の構成において共通する。そして、当該基本的な人型の構成及び本願商標
に係る立体的形状の特徴と同種の商品に係る立体的形状の特徴との差異部分につい
ては、客観的にみれば、いずれも、その商品の機能又は美感に資することを目的と
して採用されたものであり、通常採用されている形状の範囲を超えるものとまでは
いえず、その機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであ
る。
そして、たとえ、本願商標の立体的形状が、特徴を有するものであるとしても、
商品の機能又は美感に資することを目的とした形状は、同種の商品に関与する者が
当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標登録出願したことのみ
を理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切では
ないとともに、自他商品識別力を欠くものといえる。
したがって、本願商標は、本願の指定商品中「おもちゃ、組立おもちゃ」の需要
者が、それに接する場合、出所表示識別のために選択されたものと認識するもので
はなく、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、単に商品
の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標と認識するにすぎ
ないものというべきであるから、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした
本件審決の認定及び判断に誤りはない。
(4) 原告の主張について
ア 昭和54年最判が説示する商標法3条1項3号の趣旨からすると、商標登録
出願に係る商標が同号にいう「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する商標」
に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する形状を現
実に形状としていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当
該商標の表示する形状を商品の形状としているであろうと一般に認識され得ること
をもって足りるというべきである(同号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用
いられる方法で表示する商標」について同旨をいうものとして、昭和60年最判が
ある。。

そして、前記(2)イのとおり、同種の商品等について、機能又は美感上の理由によ
る形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとし
ても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法3条1
項3号に該当するものというべきである。
そうすると、本願商標に係る立体的形状が「機能又は美感上の理由による形状の
選択と予測し得る範囲」であるか否かの判断に当たっては、本願商標に接する需要
者又は取引者によって、本願商標の表示する形状を「機能又は美感上の理由による
形状の選択と予測し得る範囲」のものであると一般に認識され得ることをもって足
りるというべきである。
これに対し、原告は、当該予測の範囲について、独占適応性や自他商品識別力が
認められない程度に、具体的かつ容易に予測できるものでなければならない旨主張
するが、需要者又は取引者によって、一般に認識され得ることをもって足りるとい
うべきである。
イ 前記(3)ウのとおり、
「おもちゃ、組立おもちゃ」の分野において、人型の様々
な立体的形状からなる商品が製造、販売されている実情や、当該商品の市場におけ
る流行や需要者の好み等に合わせて各種の特徴的な変更又は装飾等が施されている
実情があるといえることからすると、当該商品の立体的形状について、需要者が機
能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲は広範に及ぶものである。
たとえ、原告が主張するように、本願商標の特徴と同様の特徴を有する「おもち
ゃ、組立おもちゃ」が存在せず、また、本願商標が原告のデザイナーによりデザイ
ンされ考案されたものであるとしても、
「おもちゃ、組立おもちゃ」の立体的形状に
ついて、需要者が機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲が広範
に及ぶことを踏まえると、前記(3)エ(イ)のとおり、本願商標に係る立体的形状は、
その商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであり、その機
能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであると、需要者又
は取引者によって、一般に認識され得るものというべきである。
そうすると、本願商標に係る立体的形状は、
「おもちゃ、組立おもちゃ」に関与す
る者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標登録出願したこ
とのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必
ずしも適切でないというべきである。
ウ 原告は、そもそも特定の形状にしなければならない必要性が薄いのであれば、
非常に様々なパターンがあり得るのであって、具体的な商品を予測するのが困難で
あり、本件審決の判断はそもそも理屈として成立しない旨主張する。
しかし、前記アのとおり、本願商標に係る立体的形状が「機能又は美感上の理由
による形状の選択と予測し得る範囲」であるか否かの判断に当たっては、本願商標
に接する需要者又は取引者によって、本願商標の表示する形状を「機能又は美感上
の理由による形状の選択と予測し得る範囲」のものであると一般に認識され得るこ
とをもって足りるというべきである。
そして、人型の「おもちゃ、組立おもちゃ」は、頭、胴体、両手及び両足といっ
た基本的な人型の構成以外は、特定の形状にしなければならない必要性が薄い商品
であるから、非常に様々なパターンがあり得るのであり、そうであるからこそ、た
とえ特徴的な部分があるとしても、頭、胴体、両手及び両足といった基本的な人型
の構成を有していれば、需要者又は取引者によって、
「機能又は美感上の理由による
形状の選択と予測し得る範囲」のものであると一般に認識されるというべきである。
また、原告は、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲か否か
は、独占適応性又は自他商品識別力の観点から、実際に当該形状が(複数)存在し
ているような場合か、あるいは具体的な取引の実情のもとで、当該形状を具体的に、
容易に予測できたか否かによって判断されるべきである旨主張するが、前記アのと
おり、本願商標に係る立体的形状が「機能又は美感上の理由による形状の選択と予
測し得る範囲」であるか否かの判断に当たっては、本願商標に接する需要者又は取
引者によって、本願商標の表示する形状を「機能又は美感上の理由による形状の選
択と予測し得る範囲」のものであると一般に認識され得ることをもって足りるもの
であり、また、そうである以上、商標法3条1項3号該当性において、本願商標に
係る立体的形状それ自体が一般的に使用されていることまで求められるものではな
い。
2 取消事由2(商標法3条2項に関する判断の誤り)について
商標法3条2項に関し、使用に係る商標は、原則として、出願に係る商標と実質
的に同一であることを要すること、登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づ
いて定めなければならないこと(同法27条1項)、本願商標と原告商品とは、その
立体的形状において、相当程度異なるものであることからすると、本願商標と原告
商品とは実質的に同一ということはできず、本願商標に係る立体的形状それ自体が
独立して自他商品識別力を獲得したものではないというべきであるから、本願商標
は、同法3条2項の要件を具備するものではない。具体的には、次のとおりである。
(1) 商標法3条2項について
商標法3条2項について、商品等の立体的形状からなる商標が使用により自他商
品識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品等の形状、使用開始時期及び
使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当
該形状に類似した他の商品等の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当
である。
また、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実
質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである(前
掲知財高裁平成19年6月27日判決、前掲知財高裁平成20年5月29日判決、
前掲知財高裁平成23年6月29日判決)。
そして、一般に、商品等の形状に接する需要者は、当該形状は、商品等の機能や
美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所識別標識のために選択され
たものとは認識しない場合が多いといえることからすると、当該立体的形状からな
る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかの判断に当たっては、当該
立体的形状が需要者の目に付きやすく、強い印象を与えるものであったかについて
も勘案して判断すべきである。
(2) 本願商標と原告商品について
本願商標と原告商品とは、その立体的形状において、相当程度異なるものである。
すなわち、本願商標と原告商品とは、いずれも、全体として頭、胴体、両手及び
両足を有する人型の立体的形状からなる点において共通している。加えて、両者の
頭部は、角の丸い円柱であり、その側面には、横に並んだ二つの小さい黒塗りの丸
とその下に両端上がりの弧線が表示され、ややほほ笑んだ顔を描いたものと認識さ
れるものであること、胴体部は、上底より下底が長い厚みのある台形の形状である
こと、両手部は、胴体部の側面に配され、その先端は、幅広の2本の指からなるロ
ボットの手のような形状をしていること、両足部は、二つの略直方体からなること
においても共通している。
しかし、両者の頭部について、本願商標は、ややほほ笑んだ顔を描いたものと認
識されるものであるのに対し、原告商品は、眼鏡や髭を描いたものなど、各種の他
の表情を表示したものも多数ある。また、頭部の上に、本願商標では、小さな円柱
(突起部)を有しているのに対し、原告商品では、各種の帽子や各種の髪型の髪と
いった異なるものがそれぞれに乗っている。さらに、両足部について、本願商標で
は、それらの一つの面(頭部における顔を描いた面の反対側)に円形の図形をそれ
ぞれ二つずつ表してなるのに対し、原告商品にそのような図形は見受けられない。
そして、原告商品は、頭部及び胴体部において様々な帽子・髪及び模様を備える
ことによって、宇宙飛行士、ドクター、警官、街の住人など、様々なキャラクター
を表現しているのに対し、本願商標は、そのような様々なキャラクターを表現して
いるものではない。
そうすると、本願商標と原告商品とは、その立体的形状において、相当程度異な
るものである。
(3) 原告が主張する本願商標と原告商品との実質的同一性について
ア(ア) 登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない
(商標法27条1項)。そして、本願商標は、願書に記載した商標(平成30年10
月31日受付の手続補正書により補正された商標) すなわち、
、 別紙1記載のとおり
の構成態様からなるものであり、当該構成態様から客観的に把握されるものでなけ
ればならない。
この点、原告がいう本件形状に係る本件特徴①~④(前記第3の1(2)ア(ウ))は、
本願商標に係る立体的形状の特徴の一部を表しているといい得るとしても、本願商
標は、「本件形状」を抽出して立体商標として出願したものとはいえない。
(イ) また、原告がいう本件形状では、頭部の上に、小さな円柱(突起部)を有し
ているのに対し、原告商品では各種の帽子や各種の髪型の髪が乗っているなど、そ
れらも明らかに異なる構成態様である。
(ウ) 原告は、本願商標と原告商品とが本件形状において同じである旨主張するが、
前記(ア)及び(イ)のとおり、本願商標と原告商品のいずれにおいても本件形状と全く
同じであるとはいえないばかりでなく、立体商標の商標法3条2項該当性の判断に
おける本願商標と使用に係る商標との比較においては、本願商標と使用に係る商標
とを比較すべきであり、両者の間に本件形状を介して比較するのは、妥当な比較方
法とはいえない。
(エ) 原告が指摘する平成22年知財高判の説示に関し、原告商品に商品の出所た
る企業等の名称や記号 文字等からなる標章が付されていないことは明らかであり、

また、本願商標と原告商品との違いは、ごく僅かな形状変更でも材質ないし色彩の
変更でもなく、これらと同程度の僅かな違いというものでもない。
(オ) 以上によると、本願商標と原告商品との差異は、使用の結果、何人かの業務
に係るものかが識別できるかという観点において、重大な意味を有するものであり、
本願商標と原告商品とは、実質的に同一ではないというべきである。
イ 原告は、原告商品がロールプレイをするための商品であり、表情や衣装等に
様々なバリエーションが存在することがその商品の大前提になっている旨や、人あ
るいは生物を模した「おもちゃ、組立おもちゃ」においては、表情の変化、模様、
衣装、装飾品等の様々なバリエーションやデフォルメが加えられて販売されること
が一般的である旨主張するが、たとえ原告商品がロールプレイをするための商品で
あって、様々なバリエーションが存在することが前提であり、また、
「おもちゃ、組
立おもちゃ」においては、様々なバリエーションやデフォルメが加えられて販売さ
れることが一般的であるとしても、商標法3条2項該当性の判断においては、本願
商標に係る立体的形状それ自体が独立して自他商品識別力を獲得したかが問題とな
るものである。
そして、前記(1)及び(2)の各点からすると、本願商標と原告商品とが実質的に同
一ということはできないから、本願商標に係る立体的形状それ自体が独立して自他
商品識別力を獲得したものではないというべきである。
ウ 原告は、本願商標と原告商品の差異は重大な意味を有するものではなく、か
かる差異を原告商品の取引の実情を踏まえて考察すると、本願商標は自他商品識別
力を獲得したものである旨主張するが、本願商標と原告商品の差異が重大な意味を
有するものではないとの原告の主張はそもそも根拠がなく、本願商標と原告商品と
が実質的に同一ということはできないから、本願商標に係る立体的形状それ自体が
独立して自他商品識別力を獲得したものではないというべきである。
(4) 本件アンケート調査について
原告提出の本件アンケート調査に係る報告書(甲194)につき、本願商標の画
像を表示した上でのQ4「この画像のフィギュア(人形)の立体形状を見ると、1
つのブランド/メーカー/会社のフィギュア(人形)が思い浮かびますか、それと
も2つ以上のブランド/メーカー/会社のフィギュア(人形)が思い浮かびますか。
わからない方は「わからない」をお選びください。」との質問に対して、「1つのブ
ランド/メーカー/会社」という回答を選択したグループの割合が38.24%(1
190人中455人)とされているが、同数字をもって、商標法3条2項の適用に
当たり必要とされる全国的な認識を示すものとはいえない。また、同報告書には、
原告商品を見たことがある者や持っている者に限定した上でそこにおける特定の回
答者の割合を算出して識別力を論じている部分があるが、一般消費者を基準とすべ
きである。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法3条1項3号に関する判断の誤り)について
(1) 立体商標と商標法3条1項3号
ア(ア) 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているの
は、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であ
って、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、
特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、
一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標として
の機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(昭和54年最
判参照)。
(イ) また、商標法が立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結
合との結合を含む。 についても商標登録を受けることができる旨を規定する
) (同法
2条1項、5条2項2号)一方で、同法及びその委任を受けた商標法施行令におい
て、商品又は商品の包装が当然に備える特徴のうち立体的形状のみからなる商標に
ついては商標登録を受けることができないと定められていること(同法4条1項1
8号、同施行令1条中)に照らすと、同法は、商品等の立体的形状のうち、その機
能を確保するために不可欠な立体的形状を含む商品等が当然に備える立体的形状に
ついては、特定の者に独占させることを許さないとするものと解される。
イ(ア) そもそも商品等の立体的形状は、多くの場合、商品等に期待される機能を
より効果的に発揮させたり商品等の美観をより優れたものとしたりする等の目的で
選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識と
して用いられるものではなく、商品の製造者・供給者の観点からすると、多くの場
合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわ
ち商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等
の立体的形状を見る需要者や取引者の観点からしても、その立体的形状は、商品等
の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識されるのが通常であって、
商品の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識される場合
は多くないというべきである。
上記のような商品等の立体的形状の特質と、前記アの商標法3条1項3号等の趣
旨を併せて考慮すると、客観的に見て、商品等の機能又は美観に資することを目的
として採用されたと認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品の形
状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1
項3号に該当するというべきである。
(イ) また、商品等の具体的形状には、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下
で、ある程度の選択の幅があるといえるものの、商品等の機能又は美観に資するこ
とを目的とする形状が同種の商品に関与する者において使用することを欲するもの
であり、先に商標出願したことのみを理由として特定人に当該形状の独占使用を認
めることは公益上適当でないことからすると、上記のような幅の中で選択された形
状が特徴を有していたとしても、それが機能又は美観上の理由による形状の選択と
して予測し得る範囲のものである限りは、商標法3条1項3号に該当すると解すべ
きである。
(ウ) したがって、商品等の形状は、同種の商品が、その機能又は美観上の理由か
ら採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り、普通
に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、3条1項3号に該当す
ると解するのが相当である。
(2) 本願商標の商標法3条1項3号該当性について
ア 本願商標の構成
(ア) 本願商標は、別紙1記載のとおりの構成からなるものであり、その形状は、
少なくとも原告が主張する次の本件特徴①~④を備えている(この限度では当事者
間に実質的な争いはない。 。

① 頭部、胴体及び脚部からなり、それぞれ約0.8:1:1の比率である。
② 頭部は全体的に丸みを帯びた円柱型であり、その側面に顔が描かれ、上面及
び底面には、より小さい円柱型の突起部が設けられている。
③ 胴体は全体的に丸みを帯びた略四角錐体であって、その側面に腕部と、その
先端に略U字型の手部が設けられている。
④ 脚部は正面視二つの略矩形であって、その全幅は胴体の底辺とほぼ同幅、脚
部の先端に略直方体の足部が設けられている。
(ただし、上記②について、別紙1記載の構成のみからは、頭部のうち首に当た
るとみられる部分の形状が円柱型であるかは直ちに明らかでない。)
(イ) また、別紙1記載の構成及び弁論の全趣旨からすると、本願商標の形状は、
本件特徴①~④のほか、次の特徴を備えているといえる。
a 全体として、頭、胴、両手及び両足を有する人型の立体的形状である。
b 頭部について、耳と鼻は設けられていない。
c 左右の腕部は、いずれも、胴体の側面に沿うように配され、肘とみられる部
分を支点として緩やかに曲がっている。
d 脚部の一つの面(頭部における顔を描いた面の反対側)には、円形の図形等
がそれぞれ左右対称に二つずつ示されている。また、足裏に相当するとみられる部
分には、左右対称に長方形がそれぞれ二つずつ示されている。(以下、上記a~d
の特徴について、英字に従い「本件特徴a」などという。)
(ウ) 以上に対し、原告は、本件形状を更に敷衍するとして、前記第3の1(2)イ
(イ)の①’~⑦’の点を主張するが、前記(ア)及び(イ)に認定した以外の点は、別紙1
記載の構成を超えるものであって認めることができない(商標法27条1項参照)。
すなわち、原告は、
「胴体は・・・、側面からみると、前部と背面が直線的に傾斜
している」(上記④’)と主張するが、別紙1記載の構成において、側面からみた場
合に前部と背面に傾斜は認められない。また原告は、
「脚部は・・・それぞれの後ろ
側に二つの丸い凹みがある」
(上記⑥’)と主張するが、別紙1記載の構成において、
脚部の後ろ側とみられる部分に記載された円形が「凹み」であることは特定されて
いない。なお、原告は、その他、
「短く四角い首であること」
(上記③’)を主張する
が、そもそもどの方向からみて四角いというものかも定かでなく、前記(ア)及び(イ)
に認定した特徴を超える特徴をいうものとは解されない。
イ 人型の立体的形状を有する他の商品
本願商標の指定商品に係る第28類「おもちゃ、組立おもちゃ」の分野において、
人型の立体的形状を有するものとして様々な商品が製造、販売されているところ、
その中には、頭部、胴体及び脚部の高さの比率がほぼ同様のもの、頭部のうち髪や
帽子等を除いた部分が円筒様のもの、鼻や耳に当たる突起のないもの、胴体が略四
角錐体のもの、手部がU字型になっているもの、脚部が正面視で二つの略矩形でそ
の全幅が胴体の底辺とほぼ同幅のもの、脚部の先端に略直方体の足部が設けられて
いるもの、腕部の肘とみられる部分が曲がっているものなども複数存在している(甲
4の1~5、弁論の全趣旨)。
ウ 商標法3条1項3号該当性
(ア) 本件特徴①~④及び本件特徴a~dについて、それらが商品の機能又は美観
上の理由から採用すると予測される範囲を超えたものであるか否かについて検討す
る。この場合、本件特徴aを踏まえ、本願商標の指定商品に係る「おもちゃ、組立
おもちゃ」等の分野における商品の一態様である「人型のおもちゃ、組立おもちゃ」
等について検討を行うのが相当である(なお、本件特徴aが上記予測される範囲に
属することは明らかであるため、以下ではその他の特徴について検討する。)。
a 本件特徴①について、頭部、胴体及び脚部からなること並びに胴体及び脚部
が同一の比率であることは、人型のおもちゃとして当然に採用が予測される範囲内
にある。また、頭部が、胴体及び脚部よりは小さいものの、現実の人型と異なり、
相応に大きなものとされることも、商品のサイズやデフォルメといった観点から当
然に採用が予測される範囲内にあり、前記イのとおり、現にそのような特徴を有す
る他の商品も販売されている。
b 本件特徴②について、頭部を球状ではなく丸みを帯びた円柱型とすることも、
人型を模して、またコスト等も考慮して製造される人型のおもちゃとして採用が予
測される範囲内にあるといえ、前記イのとおり、現にそれに類する特徴を有する他
の商品も販売されている。側面に顔を描くことはもちろん当該範囲内のものである。
頭部の上面及び底面により小さい円柱型の突起部が設けられていることについては、
頭髪や帽子と篏合させる、又は胴体と篏合させるといった機能を目的として採用さ
れたものと解され(甲1の2、甲1の3の9頁の抄訳、甲12の10)、そのよう
な機能から採用が予測される範囲内のものといえる。
また、本件特徴bについて、耳と鼻が設けられていないことも、商品のサイズや
デフォルメ、製造コストといった観点から採用が予測される範囲内にあり、前記イ
のとおり、現にそのような特徴を有する他の商品も販売されている。
c 本件特徴③について、胴体を全体的に丸みを帯びた略四角錐体とすることは、
デフォルメや製造コストといった観点から採用が予測される範囲内にあり、前記イ
のとおり、現にそのような特徴を有する他の商品も販売されている。
また、本件特徴③及び本件特徴cについて、胴体の側面に腕部が設けられること
や、肘とみられる部分を支点として緩やかに曲がっていることは、当然に採用が予
測される範囲内にあり、その先端に略U字型の手部が設けられていることも、商品
のサイズやデフォルメ、製造コストといった観点から採用が予測される範囲内にあ
るほか、その形状は、手部に物を持たせるといった機能を目的として採用されたも
のと解され(甲1の2、甲1の3の9頁の抄訳、甲12の10)、そのような機能
からも採用が予測される範囲内のものであって、前記イのとおり、現にそのような
特徴を有する他の商品も販売されている。
d 本件特徴④について、その内容はいずれも、商品のサイズやデフォルメ、製
造コストといった観点から採用が予測される範囲内にあるほか、脚部の全幅や足部
の形状は、商品を自立させるといった機能を目的として採用されたものと解され(甲
1の2) そのような機能からも採用が予測される範囲内のものであって、
、 前記イの
とおり、現にそのような特徴を有する他の商品も販売されている。
なお、本件特徴dについては、その目的等が明確ではないところもあるが、それ
が立体形状に係る特徴とは認められないことを措くとしても、少なくとも、特定の
機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えたものであると認める
べき証拠はない。
(イ) そして、本件特徴①~④及び本件特徴a~dが結合されることによって、そ
れらの特徴が商品の機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた
ものであると認めることもできない。その他、本願商標の立体的形状について、そ
の特徴が当該範囲を超えたものと認めるべき事情はない。
(ウ) そうすると、本願商標に係る立体的形状は、「人型のおもちゃ、組立おもち
ゃ」の形状として、需要者や取引者において機能又は美観上の理由による形状の選
択として予測し得る範囲のものであると認められるから、商品等の形状を普通に用
いられる方法で使用する標章のみからなる商標であるというべきである。
(3) 小括
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、取消事由1は理由がな
い。原告の主張は、いずれも、前記(1)及び(2)の認定判断に反するものであって採
用できないか、当該認定判断を左右しないものである。
2 取消事由2(商標法3条2項に関する判断の誤り)について
(1) 商標法3条2項について
ア 商標法3条2項は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみ
からなる商標として同条1項3号に該当する商標であっても、使用をされた結果需
要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの、すなわち
自他商品識別力を獲得するに至ったものについては、商標登録を受けることができ
る旨を規定しているところ、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力
を獲得したかどうかは、①当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存
否、②当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規
模等の使用の実情を総合考慮して判断すべきである。
イ また、立体的形状からなる商標についての商標法3条2項の適用に当たり、
使用をされた商品等は、原則として、その形状において出願に係る商標の形状と実
質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである。
もっとも、商品等については、その製造、販売等を継続するに当たって、技術の
進歩や社会環境、取引慣行の変化等に応じ、品質や機能を維持するために、又は新
商品の販売のために、形状を変更することが通常あり得ることに照らすと、使用に
係る商品等の形状についてごく僅かに変更がされたことによって直ちに当該商品等
の形状に係る商標が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当でなく、使用に
係る商品等の形状にごく僅かな相違や変化が存在してもなお、形状が需要者の目に
つきやすく、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、形状が独
立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。
(2) 原告商品の販売等と本願商標の自他商品識別力の獲得について
ア 原告商品と本願商標に係る形状の関係等について
原告は、原告グループが1978年(昭和53年)に販売を開始した原告商品で
あるレゴミニフィギュアの販売等によって、本願商標が自他商品識別力を獲得した
旨を主張するところ、括弧内に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によると、原告商品
の販売及び原告商品と本願商標に係る形状の関係等について、次の各事実が認めら
れる。
(ア) 原告商品については、1970年代半ばにデザイナーにより最初のプロトタ
イプがデザインされ、50種類以上のプロトタイプが考案された後、1978年(昭
和53年)、日本を含む世界各国において、レゴブロック「街シリーズ」のセットア
イテムとして、警察官のモデルの原告商品が第1号として発売された(甲11の5、
甲94の10・11頁。以下、書証について頁数を示すときは、当該書証に係る書
籍等に本来付された頁数を示す。なお、甲94を抜粋したものが甲1の2である。。

(イ) 原告商品については、発売開始以降、様々なバリエーションのものが販売さ
れており、遅くとも2013年(平成25年)3月までに、我が国を含む世界中で、
2500種類が製造・販売されている(甲94の8頁)。
(ウ) 原告商品は、レゴブロックで組み立てられた世界で、ユーザーがロールプレ
イをするために考案されたアイテムであって、大きく、頭部、胴体及び脚部の部品
から構成された人型のフィギュアであり、ユーザーは、各部品を自由に組み合わせ
てフィギュアを作り遊ぶことができる(甲41、45~47)。
レゴブロックは、主に、
「街シリーズ」「お城シリーズ」等、特定のテーマに基づ

いたセット商品として販売されているところ、原告商品は、それらセット商品を構
成するアイテムとして販売されてきた(甲48~90)。
また、原告商品は、別途、部品単体でも販売されてきたもので、例えば、
「レゴミ
ニフィギュアテーマ」と呼ばれる商品ラインでは、原告商品の部品がパッケージさ
れて販売されていた(本件審決の後に作成された証拠であるが本件審決の前におけ
る販売形態を推認させる証拠(以下「審決後証拠」という。)として、甲92、15
8がある。。

さらに、原告グループが運営する小売店においては、頭部、胴体、脚部、その他
の装飾品等がバラバラに販売され、ユーザーは、自由に部品を選んで自分好みの原
告商品を購入することができた(審決後証拠として、甲92、93がある。。

(エ) 原告商品のうち本願商標の形状に該当する部分(以下「本願商標対応部分」
という。)は、頭部、胴体(腕と手を含む。)及び下半身の三つのパーツを組み合わ
せて構成されるものである(甲18の1・2、甲94の13頁)。
この点、原告商品の多種多様なバリエーションにおいて、原告商品は、本願商標
対応部分のうち頭部の上に頭髪や帽子等のパーツを付して初めて、当該商品が本来
予定している完成された形状となるものである(甲48~90、94、97の22
頁)。そして、原告商品の製品カタログやパッケージ、原告商品の宣伝広告等におい
ても、基本的に、そのような完成された形状のものが用いられてきた(甲48~9
0、105~111、113、115~118、122~129。審決後証拠とし
て、甲92、93、112、120がある。。

また、頭部について、原告商品のうち本願商標対応部分においては、眼鏡や髭を
描いたものなど、他の表情を表示したもの等が多数存在するほか、特定のキャラク
ターをかたどったものなどではそもそも頭部の形状自体が本願商標におけるものと
大きく異なっているものも少なからず存在する(甲48~90、94、98、99)。
さらに、原告商品の本願商標対応部分においては、脚部の背面の円形は、図形では
なく凹み(穴)となっており、足裏に当たる部分の長方形も同様に凹み(穴)とな
っていることがうかがわれる(甲94の27頁。審決後証拠として、甲92の別紙
25頁がある。)。
なお、原告商品の中には、本願商標対応部分のみによって完成された形状となっ
ているものもごく一部存在するが、それらは、いずれも特殊な彩色等が施されてい
たり、特別なキャラクターをかたどったものであることなどによって、本願商標対
応部分のみによって完成された形状となることが不自然と感じられない状態とされ
ているものであることがうかがわれる(甲5の7枚目、甲9の1枚目、甲13の3
の4枚目、甲60の12頁、甲64の16~19・31頁、甲65の30・31頁、
甲71の31・32頁、甲72の44頁、甲76の43・53頁、甲77の57・
59頁、甲81の27・29頁、甲82の39頁、甲83の30頁、甲84の30・
34頁、甲85の36頁、甲90の82・83頁、甲94の13・56・61・6
5・66・69・71・72・76・78・79・82・83・89・91頁、甲
97の33・128・130頁、甲98の213頁、甲99の17・23・61頁)。
(オ) 本願商標に係る形状(本件形状)は、原告において、様々なバリエーション
が存在する原告商品について、それらが共通に有しており、また、原告商品の販売
当初から一貫していると考える特徴を抽出したものであるが、前記(エ)のとおり、原
告商品においては、眼鏡や髭を描いたものなど、本願商標における表情とは異なる
ものが多数存在するほか、頭部の上に頭髪や帽子等のパーツを取り付けたことによ
って、本願商標とは頭部の形状自体が大きく異なっているものが少なからず存在す
る。
(カ) 原告商品の販売に当たっては、赤色正方形内に「LEGO」の欧文字を黒色
で縁取りした白抜きの文字で表してなる商標(原告商標1)、「レゴ」の片仮名か
らなる商標(原告商標2)及び「LEGO」の欧文字からなる商標(原告商標3)
が用いられており、特に、原告商標1については、原告商品の売場や個々の包装に
おいて広く用いられている(甲12の9・10、甲21の3・4、甲48~90。
なお、審決後証拠として、甲92、93、112、120がある。)。
イ 本願商標の商標法3条2項該当性について
(ア) 前記アで認定した諸点に照らすと、原告商品やその宣伝広告等に接した需要
者においては、原告商品について、基本的に、本願商標対応部分の頭部の上に更に
頭髪等の部品が付されて完成された形状をもって、その形状と認識してきたもので、
本願商標対応部分のみでは未完成の商品であると認識するのが通常であり、本願商
標対応部分のみをもって原告の販売する商品の形状であると認識することは例外的
な場合を除いてなかったというのが相当である。
(イ) そして、本願商標は、前記1のとおり、商品等の形状を普通に用いられる方
法で使用する標章のみからなる商標であるというべきところ、本願商標の頭部の上
に髪や帽子といった形状が更に付されるか否かによって生じる差異は、僅かなもの
ということができない。
この点、本件全証拠をもってしても、原告商品のうち本願商標対応部分について、
その形状が需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであったというべき事
情は認められない。むしろ、原告商品においては、頭部の形状自体が本願商標対応
部分とは異なっているものも少なからず存在したところである。原告商品について、
頭部、胴体、脚部、その他の装飾品等がバラバラに販売されることがあったことも
踏まえると、それらの中で頭部の形状のうち基本的なものに胴体及び脚部の各部品
を組み合わせたものにすぎない本願商標対応部分について、他方でそれが原告商品
のうち基本的な形状の頭部を用いたものにおける共通の特徴であるといえ、人型と
しての基礎的な部分の組合せに係るものといい得ることを考慮しても、それら三つ
の部品の組合せのみにより構成される原告商品が多数販売されてきたといった事情
が認められないにもかかわらず、自他商品識別力を獲得したと認めることはできな
いといわざるを得ない。
なお、本願商標対応部分に類似するものとみることもできるレゴ木製ミニフィギ
ュア(原告木製商品。甲13の6、甲21の8・9、甲22、23。審決後証拠と
して、甲92がある。)や本願商標対応部分に類似するものとみられる商品(審決後
証拠である甲92の別紙22頁において、ペンとともに梱包されているもの。 の販

売等や、ディスカバリーセンターには、本願商標対応部分に類似するものとみられ
る模型等があること(審決後証拠である甲120の34~37頁)は、証拠上認め
られるそれらの販売等の時期や規模からして、上記判断を左右するものではない。
(ウ) さらに、原告商品の販売に当たっては、原告商標1~3が用いられていたも
ので、需要者が原告商品の出所を識別するに当たり原告商標1~3(特に原告商標
1)が重要な役割を果たしてきたことがうかがわれることからしても、本願商標対
応部分が別途自他商品識別力を獲得したものとは認められない。
(エ) したがって、原告商品の販売等によって本願商標が自他商品識別力を有する
に至ったという原告の主張は、その余の点について判断するまでもなく、採用する
ことができないというべきである。
(3) 原告の主張について
ア 原告は、本願商標と原告商品とが本件形状においては全く同じものであるな
どと主張するが、原告商品と原告商品についてその一部の要素を抽出したにすぎな
い本願商標対応部分とを商標法3条2項の適用に当たり同視することができないこ
とは、前記(1)及び(2)で認定説示したとおりである。
イ 原告は、原告商品がロールプレイをするための商品であることからすると、
需要者が、原告商品の個々のバリエーションから共通部分のみを昇華させた本件形
状を原告商品の立体形状として観念することは明らかであるなどと主張するが、仮
に、原告商品で遊ぶなどしたことのある者が本願商標対応部分をもって原告商品の
共通の特徴であると広く認識するといえるとしても、そのことから直ちに、需要者
において、原告商標1~3が付されているか否かといった事情とは無関係に、本願
商標対応部分の形状をもってその出所が原告であると認識するものということはで
きない。
上記に関し、原告は、原告商品のようにバリエーションが多岐にわたる場合にそ
の一つ一つについて個別に商標登録を行うことを強いることはおよそ不可能を強い
るものであるなどと主張するが、多数のバリエーションから抽出される概念的とも
いい得る共通の形状を基準とする当該主張によると、自他商品識別力を本来有しな
い商品の形状にまで広く商標としての保護が認められることとなり相当ではなく、
採用することができない。「おもちゃ、組立おもちゃ」の商品において需要者が同
一の商品・ブランドとして認識する商品が他に多数存在することをいう原告の主張
も、同様に、それら他の商品から抽出される共通の形状のみをもって専ら商標とし
て保護されるべきであることを前提とするものであって、相当でない。
ウ(ア) 原告は、本件アンケート調査(甲194)についても主張するところ、本
件アンケート調査においては、Q4において、本願商標の画像を回答者に見せたと
ころ、「1つのブランド/メーカー/会社」が思い浮かぶと回答した者が38.2
4%いたとされ、Q5において、本願商標の画像を見て思い浮かんだブランド名等
として「レゴ」など原告を想起した者が約30%いたとされ、Q6において、ブラ
ンド名等のリストを見て「レゴ」を選択した者が37.32%いたとされている(回
答者の割合はいずれも回答者全体の人数1190名に対する割合である。以下同
じ。)。
(イ) しかし、他方で、Q6において、「バンダイ」を選択した者18.33%及
び「タカラトミー」を選択した者17.00%(なお、これらの数字は、原告自身
が出願商標について使用による自他商品識別力が認められるべきであると主張する
10%程度を超えるものである。 を含め、
) 原告以外のブランド名等を選択した者が
37.45%いたとされている(甲194の27・28頁)。このように、本願商
標の画像を見て「レゴ」を選択した回答者よりそれ以外を選択した回答者の割合の
方が多いということは、商標法3条1項3号に該当する本願商標が、その出所が原
告であることを識別する機能を果たしていないことをうかがわせるものである。
また、原告は、本件アンケート調査に参加する前に原告商品を見たことがある者、
特に1年未満に見たことがある者、原告商品を持っている者及び過去に持っていた
者については、本願商標の画像を見て「1つのブランド/メーカー/会社」が思い
浮かぶと回答した者の割合が66.7%から79.5%までであったとのアンケー
ト結果に基づき、本願商標が高い自他商品識別力を有すると主張するが、原告商品
を見たことがある者や原告商品を持っている者及び過去に持っていた者のみを対象
とする集計は、既に原告商品や原告グループについて一定の認識を有している可能
性が高い者のみを対象としている点で、「おもちゃ、組立おもちゃ」の需要者全体
を対象とするべき調査結果としては相当とはいえず、原告の主張は採用できない。
(ウ) 以上を踏まえると、本件アンケート調査の結果も、前記(2)の認定判断を左右
するものではないというべきである。
(4) 小括
したがって、本願商標は、商標法3条2項に該当せず、取消事由2は理由がない。
3 まとめ
以上によると、原告の主張する取消事由は、いずれも認められない。なお、本願
商標の指定商品のうち「おもちゃ、組立おもちゃ」以外の商品について本願商標が
使用される場合に以上と異なって解すべき事情は見当たらない。
第6 結論
以上の次第で、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文
のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
本 多 知 成
裁判官
中 島 朋 宏
裁判官
勝 又 来 未 子
(別紙1)
(別紙2)
1 人型と思われる立体的形状からなるおもちゃが製造又は販売されている事実
(1) 「井ノ口商店」のウェブサイトにおいて、
「ゼンマイロボット」の項に、人型
と思われる立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。 (https://
以下省略)
(2) 「株式会社東京屋」のウェブサイトにおいて、
「ブリキ ゼンマイスパークロ
ボット」の項に、人型と思われる立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されて
いる。(https://以下省略)
(3) 「株式会社田中技研インターナショナル」のウェブサイトにおいて、
「バンダ
イ製『北原コレクション』1(初版)スモーキングロボット緑色 [13MAR-
BAN02] の記載とともに、
」 人型と思われる立体的形状からなるおもちゃの写真
が掲載されている。(https://以下省略)
(4) 「Amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、
「スターストライダ
ー モスグリーン メタルハウス ブリキ玩具 箱付き美品 ビンテージ」の記
載とともに、人型と思われる立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。
(https://以下省略)
(5) 「コズミックファーム」のウェブサイトにおいて、
「毎度入荷するとマニアの
間で取り合いになっているブリキ玩具が入荷しました。今回はブリキロボの金字
塔!スモーキングロボットで御座います。ぜんまいを回すとザ・ロボットな動きを
します。昭和レトロなおもちゃが好きな方は是非!」の記載とともに、人型と思わ
れる立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。 (https://以下省略)
(6) 「リサイクルマート 帯広店」のウェブサイトにおいて、
「こちらは1960
年代堀川玩具製ロボットになります。 の記載とともに、
」 人型と思われる立体的形状
からなるおもちゃの写真が掲載されている。(https://以下省略)
(7) 「フジミ模型株式会社」のウェブサイトにおいて、
「Ptimo(KEIKY
U)1 京急プラロボホン」の項に、人型と思われる立体的形状からなるおもちゃ
の写真が掲載されている。 (http://以下省略)
(8)「フジミ模型株式会社」のウェブサイトにおいて、Ptimo0
「 プラロビ」
の項に、人型と思われる立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。
(http://以下省略)
(9) 「ゲンキの平和堂」のウェブサイトにおいて、「マイクインターナショナル
電動ブリキロボット スモーキングスペースマン」の項に、人型と思われる立体的
形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。(https:以下省略)
(10) 「株式会社丸善商店」のウェブサイトにおいて、(メタルハウス)日本製ブ

リキ商品 スーパージャイアントロボ(シルバー)」の記載とともに、人型と思われ
る立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。(http://以下省略)
(11) 「Amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、「ロボット おも
ちゃ 男の子 女の子のおもちゃ 電動ロボット プログラム機能 手振り制御
タッチモード 歩く/ダンス/ソング 誕生日 子供の日 クリスマスプレゼン
ト『日本語取扱説明書付き』」の見 出しの下、人型と思われる立体的形状からなる
おもちゃの写真が掲載されている。(https://以下省略)
(12) 「株式会社壽屋」のウェブサイトにおいて、
「一撃殺虫!!ホイホイさん L
EGACY DG-001LN ウサギア」の項に、人型と思われる立体的形状か
らなるおもちゃの写真が掲載されている。(https://以下省略)
(13) 「日本トイザらス株式会社」のウェブサイトにおいて、「ROBLOX」の
項に、人型と思われる立体的形状からなるおもちゃの写真が掲載されている。
(https://以下省略)
2 人型と思われる立体的形状からなる組立おもちゃが製造又は販売されている
事実
(1) 「ヨドバシ.com」のウェブサイトにおいて、
「タカラトミー TAKAR
ATOMY トミカハイパーシリーズ ハイパーブルーポリス HBP02 ブル
ーハスキー」の記載とともに、人型と思われる立体的形状からなる組立おもちゃの
写真が掲載されている。 (https://以下省略)
(2) 「株式会社タカラトミー」のウェブサイトにおいて、
「ライドオントミカ」の
見出しの下、
「TS-02 ボー・ピープ&スカンクカー」の項に、人型と思われる
立体的形状からなる組立おもちゃの写真が掲載されている。(https://以下省略)
(3) 「株式会社タカラトミー」のウェブサイトにおいて、
「プラレール J-27
プラキッズふみきりセット」の項に、人型と思われる立体的形状からなる組立おも
ちゃの写真が掲載されている。 (https://以下省略)
(4) 「株式会社タカラトミー」のウェブサイトにおいて、「しょうひんいちらん」
の「人形」の見出しの下、
「なかよしパパとママ」の項に、人型と思われる立体的形
状からなる組立おもちゃの写真が掲載されている。 (https://以下省略)
(5) 「株式会社カワダ」のウェブサイトにおいて、
「ダイヤブロックの歴史」の項
に、
「ブロックと組替えできる新しいスタイルの人形が登場」の記載とともに、人型
と思われる立体的形状からなる組立おもちゃの写真が掲載されている。 (http://
以下省略)
(6) 「ヨドバシ.com」のウェブサイトにおいて、
「河田 KAWADA ダイ
ヤブロック みんなのまち たのしいおうち」の項に、人型と思われる立体的形状
からなる組立おもちゃの写真が掲載されている。 (https://以下省略)
(7) 「SEKITOBA ONLINE SHOP」のウェブサイトにおいて、
「◆三国志ブロックフィギュアコレクション群雄割拠編」の見出しの下、
「赤兎馬発
の三国志フィギュア!!280円×15個=4200+消費税で4410円です
注:全国のサークルKサンクス・トイザラス・大型玩具店での発売は2月上旬から
を予定しております」の記載とともに、人型と思われる立体的形状からなる組立お
もちゃの写真が掲載されている。(http://以下省略)

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