令和4(ネ)10087特許権侵害損害賠償請求控訴事件
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
|
裁判年月日 |
令和5年2月28日 |
事件種別 |
民事 |
対象物 |
携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム |
法令 |
特許権
特許法102条3項1回
|
キーワード |
実施24回 進歩性13回 無効13回 ライセンス12回 損害賠償6回 特許権5回 侵害3回 無効審判2回 新規性2回 分割2回 審決1回 許諾1回 優先権1回
|
主文 |
1 一審原告の控訴及び一審被告の控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は各自の負担とする。 |
事件の概要 |
1 事案の概要(以下において略称を用いるときは、別途定めるほか、原判決に
同じ。)5
本件は、発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用し
たパーソナルコンピュータシステム」とする登録番号第4555901号の
特許(本件特許)に係る特許権(本件特許権)の特許権者である一審原告が、
被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するものであると主張して、主位的
に不法行為による損害賠償請求権に基づき、被告各製品に係る実施料相当損10
害額(特許法102条3項)7億2000万円の一部として、3000万円
及びこれに対する不法行為の後(訴状送達の日の翌日)である令和元年12
月13日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求め、予備的に不当利得返還請求権に基づき、7億2000万円の
一部として、3000万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の15
割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 |
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
令和5年2月28日判決言渡
令和4年(ネ)第10087号 特許権侵害損害賠償請求控訴事件(原審・東京地
方裁判所令和元年(ワ)第32239号事件)
口頭弁論終結日 令和4年12月19日
5 判 決
控訴人・被控訴人(以下「一審原告」という。)
株 式 会 社 D A P リ ア ラ イ ズ
被控訴人・控訴人(以下「一審被告」という。)
シ ャ ー プ 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 生 田 哲 郎
15 同 佐 野 辰 巳
主 文
1 一審原告の控訴及び一審被告の控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は各自の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 第1 控訴の趣旨
1 一審原告
⑴ 原判決中、一審原告敗訴部分を取り消す。
⑵ 一審被告は、一審原告に対し、原審認容額に加えて、2180万0542
円及びこれに対する令和元年12月13日から支払済みまで年5分の割合
25 による金員を支払え。
2 一審被告
⑴ 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。
⑵ 前記取消しに係る部分について、一審原告の請求を棄却する。
第2 事案の概要等
1 事案の概要(以下において略称を用いるときは、別途定めるほか、原判決に
5 同じ。)
本件は、発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用し
たパーソナルコンピュータシステム」とする登録番号第4555901号の
特許(本件特許)に係る特許権(本件特許権)の特許権者である一審原告が、
被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するものであると主張して、主位的
10 に不法行為による損害賠償請求権に基づき、被告各製品に係る実施料相当損
害額(特許法102条3項)7億2000万円の一部として、3000万円
及びこれに対する不法行為の後(訴状送達の日の翌日)である令和元年12
月13日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求め、予備的に不当利得返還請求権に基づき、7億2000万円の
15 一部として、3000万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の
割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原判決は、不法行為に基づく損害賠償請求と不当利得返還請求は同額にな
ると判断した上で、主位的請求である前者につき819万9458円及びこ
れに対する遅延損害金の限度で認容し、その余の主位的請求及び予備的請求
20 をいずれも棄却したところ、一審原告及び一審被告がそれぞれ敗訴部分を不
服として控訴を提起した。
2 「前提事実」、「争点」及び「争点に関する当事者の主張」は、後記3の
とおり原判決の補正をし、後記4のとおり当審における当事者の補充主張を
加えるほか、原判決の「事実及び理由」欄の第2の2及び3並びに第3に記
25 載するとおりであるから、これを引用する。
3 原判決の補正
⑴ 原判決4頁5行目の「訂正することを求める訂正請求を行った。」を「訂
正すること(以下「本件訂正2」という。)を求める訂正請求(以下「本
件訂正請求2」といい、本件訂正2後の発明を「本件訂正発明」という。)
を行った。」と改める。
5 ⑵ 原判決4頁7行目末尾の次に改行して次のように加える。
「これに対し、一審被告は、審決取消訴訟を提起したところ(知的財産高
等裁判所令和3年(行ケ)第10139号)、同裁判所は、令和4年12
月19日、請求棄却の判決をした。」
原判決7頁6行目末尾の次に改行して次のように加える。
10 「⑸ 本件訂正発明の構成要件の分説
本件訂正発明を構成要件に分説すると、構成要件G及びHに相当
する部分を以下の構成要件G’及びH’の記載(ただし、下線部は、
本件訂正2による修正部分である。)とするほかは、本件発明と同じ
である。
15 G’ を備え、前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイ
パネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号
を受信してデジタル信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、
前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号
が伝達する画像データを処理し、前記グラフィックコントローラ
20 が、該中央演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVRAMに
対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読
み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生
成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段又は 前記
インターフェース手段に送信して、前記ディスプレイ手段又は前
25 記外部ディスプレイ手段に画像を表示する機能(以下、「高解像
度画像受信・処理・表示機能」と略記する)を有する、携帯情報
通信装置において、
H’ 前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前
記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単
一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ
5 解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読
み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生
成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信す
る機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの
画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」
10 を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジ
タル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフ
ェース手段に送信する機能と、を実現し、」
原判決7頁7行目の「⑸」を「⑹」と、10頁22行目の「⑹」を「⑺」
とそれぞれ改める。
15 4 当事者の当審における補充主張
⑴ 争点2-1(乙1公報を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如(無効理
由1))について
ア 一審被告の主張
原判決は相違点④は容易に想到できたものではない旨判断した。
20 しかし、乙1公報の【0103】及び【0083】の記載から、乙1
発明において、「無線通信手段」を設け、「無線通信手段」で受信した
「画像データ」を処理して画像を表示するように構成することは、当業
者が容易に想到し得たことであり、ここで「画像データ」として【00
05】ないし【0007】で示唆されている「より広い画面表示サイズ
25 を有効に利用する」ことができる画像データ、すなわち「内蔵した表示
デバイスの解像度よりも高解像度の画像データ」を選択することは当業
者が容易に成し得たことである。
したがって、相違点④は、乙第1号証の【0103】及び【0083】
に記載された技術的事項及び【0005】ないし【0007】に記載さ
れた乙1発明の解決課題に基づいて当業者が容易に想到できたものであ
5 る。
また、「内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の画像データ」
を外部表示装置に表示させるという課題及び解決手段は、本件特許の優
先日当時、特開2001―197167号公報(乙16。以下「乙16
文献」という。)、特開2003-108472号公報(乙17。以下
10 「乙17文献」という。)、特開2002-116843号公報(乙1
8。以下「乙18文献」という。)及び特開2001-352373号
公報(乙19。以下「乙19文献」という。)により周知技術であった
から、相違点④は本件特許優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容
易に想到できたものである。
15 イ 一審原告の主張
仮に、本来解像度が内蔵ディスプレイパネルの画像解像度より大きい画
像データを選択することを当業者が容易になし得たとしても、相違点④に
係るその余の構成の容易想到性については主張立証されていない。
⑵ 争点2-2(乙5公報を主引例とする進歩性欠如)(無効理由2)につい
20 て
ア 一審被告の主張
原判決は、相違点④は容易に想到できたものではない旨判断した。
しかし、乙5公報には「本体の携帯性を考慮して表示部の設置面積を大
きくとれないため、表示内容の視認性や臨場感が乏しい上、ユーザの視力
25 低下を招くおそれがあった。また、携帯電話機での閲覧が意図されていな
いWebコンテンツについては、正常に表示することすらできなかった。」
(【0005】)という課題を解決するために「入力された情報を外部表
示装置で読取可能な画像信号形式に変換して出力する画像出力部を有して
成り、前記外部表示装置への情報出力を行う構成としている」(【000
8】)という手段を採ることが記載されている。そのため、「携帯電話機
5 の内蔵ディスプレイ装置の画面解像度より大きい画像データを含むコンテ
ンツ」を外部表示装置に情報出力する場合に乙5発明を適用することは,
当業者が容易に想到できたことである。
また、前記⑴アのとおり、乙16文献ないし乙19文献により本件特許
の優先日当時、内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の画像デー
10 タを外部表示機器に表示させるという課題及び手段は周知であった。
以上のことから、本件発明と乙5発明の相違点④は当業者が容易に想到
できたものであり、本件発明は特許無効審判により無効とされるべきもの
である。
イ 一審原告の主張
15 争う。
⑶ 争点3(訂正の対抗主張の可否)について
ア 一審被告の主張
訂正要件違反について
a 無線通信手段について
20 本件訂正発明に係る構成要件G’及びDには、「前記無線通信手段」
と「前記」と明記されているところ、これは、構成要件Bの無線通信
手段と解される。そして、構成要件Bの記載によれば、「無線通信手
段」は、無線信号を受信する機能と無線信号を送信する機能があるこ
とは文理上明らかである。
25 一審原告が本件訂正2の根拠と主張している本件明細書(当初から
変更はない。)の【0118】、【0124】、【0126】ないし
【0129】には、「高解像度画像受信・処理・表示機能」の「高解
像度画像受信」の手段として、「テレビ受信用アンテナ112A」と
「テレビチューナ112B」を有する画像受信手段しか記載されてい
ない。そして、「テレビ受信用アンテナ112A」と「テレビチュー
5 ナ112B」は、【0117】に記載の通信用アンテナ111A、R
F送受信部111Bとは異なり、無線信号を送信する機能を有さない。
したがって、本件明細書には、無線受信機能と無線送信機能を有す
る無線通信手段(構成要件B)を、「テレビ受信用アンテナ112A」
と「テレビチューナ112B」を有する「高解像度画像受信」の手段
10 とする「高解像度画像受信・処理・表示機能」を有する発明は記載さ
れていない。
b 本来解像度について
本件訂正2により、構成要件G’及びH’ に「高解像度画像受
信・処理・表示機能」に関する構成要件が付加されたことに鑑みれ
15 ば、本件訂正発明の作用効果の一つは、本件明細書【0022】に
記載された「その本来の解像度のままの全体画像として表示できる
ようになる」ことと解される。そして、上記作用効果を実現するた
めには、「単一のVRAM」に本来解像度の情報が保持されたビッ
トマップデータが書き込まれる必要があり、そのためには中央演算
20 回路が「物理的な現実化にあたって画素を間引いて表示画像の解像
度を小さくしたり、画素を補間して表示画像の解像度を大きくした
りしない」処理を行う必要がある。
しかしながら、本件明細書の【0118】には、デジタル動画信号
を一部間引くこと等が記載されており、上記の作用効果を奏すること
25 ができない。
被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属さないことについて
a 構成要件G’
構成要件G’は「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像
度より大きい画像」を受信し、処理し、表示する機能を有するという
ものである。
5 これに対し、被告各製品はモバイルプロセッサ内で画像データを間
引きして内蔵ディスプレイパネル用の表示用データを生成し、これを
補間して、内蔵ディスプレイパネルより大きい画面解像度を有する外
部ディスプレイ用の表示データを生成している。そのため、外部ディ
スプレイには、画質の粗い拡大画像が全画面に表示されることにしか
10 ならない。
したがって、被告各製品は、本来解像度の画像を表示する機能を有
さないから、構成要件G’の「高解像度画像受信・処理・表示機能」
を有していない。
b 構成要件H’
15 本件訂正2では、構成要件Hに「前記携帯情報通信装置が前記高解
像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」との限定が追加さ
れた。また、本件訂正2は、テレビ用受信アンテナでテレビ放送を受
信した場合が訂正の根拠とされている。
これに対して、被告各製品は、テレビ放送では画面解像度が内部デ
20 ィスプレイの解像度よりも大きい解像度のものを受信することはでき
ない。
したがって、被告各製品では、本件訂正2の根拠とされたテレビ放
送の受信では、「高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場
合」が存在しないから、構成要件H’の「前記携帯情報通信装置が前
25 記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」の要件を充
たさない。
イ 一審原告の主張
訂正要件違反について
a 無線通信手段について
①通信用アンテナ、②RF送受信部、③ベースバンドプロセッサ、
5 ④テレビ受信用アンテナ、⑤テレビチューナ、⑥AD/DA変換部を
併せたものが「無線通信手段」に該当する。
インターネットプロトコルに準拠した電波信号に係る通信を行う場
合は、①ないし③が、無線信号の受信、デジタル信号への変換、変換
後のデジタル信号のデータ処理手段への送信、データ処理手段からの
10 デジタル信号の受信、受信したデジタル信号の無線信号への変換、変
換後の無線信号の送信の機能を行う。
b 本来解像度について
本件訂正発明の構成要件G’の「前記無線通信手段が「本来解像度
が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝
15 達する無線信号」との記載からして、「本来解像度」は、「無線信号
が伝達する画像データ」が本来有している解像度である。本件訂正発
明は、「携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置」に係る発明で
あり、無線信号が伝達する画像データが本来的に重要であることは明
らかである。また、一般に、「画像の解像度」とは、「画像の水平・
20 垂直画素数」を意味する(本件明細書等の【0118】、【011
9】)。その他、本件明細書等の【0032】の記載も参酌すれば、
本件訂正発明の構成要件G’にいう「本来解像度」は、「データ処理
手段と十分な大きさの画面解像度を有するディスプレイ手段とが、該
画像データを、画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり、画
25 素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりせずに、ディスプレイ
手段の画面を構成する物理的な画素の色表示として過不足なく現実化
することによって表示される画像」の水平・垂直画素数を意味するも
のというべきである。
一審被告は、前記のとおり、本件訂正発明が画素の間引きや補間を
行っている以上、本件明細書等の【0022】記載の作用効果を奏し
5 ないから、本件訂正事項が新規事項を追加するものである旨主張する
が、そのような解釈は、一審被告が本件明細書における「本来解像度」
と「本来画像」を適切に区別しないことによって誤って導かれたもの
である。
被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属しないとする点について
10 a 構成要件G’
被告各製品はスマートフォンであり、インターネットに接続してウ
ェブサーバーにアクセスし、ウェブサーバーから本来解像度が内蔵デ
ィスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データを読み出し、こ
れを処理して、内蔵ディスプレイパネル又は外部表示装置に表示する
15 ことができるのであるから、構成要件G’を充足する。
b 構成要件H’
本件訂正発明において、「「本来解像度が付属ディスプレイの画面
解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号」には、テレビ放
送信号だけではなく、インターネットプロトコルに準拠した電波信号
20 も含まれるのであるから、本件訂正2の際、テレビ放送受信アンテナ
でテレビ放送を受信した場合が訂正の根拠とされているからといって、
本件訂正発明において、「高解像度画像受信・処理・表示機能を実現
する場合」が「テレビ放送を受信した場合」に限定される理由はなく、
一審被告の主張は前提を欠くものである。
25 ⑷ 争点4(特許権侵害の不法行為による損害の発生の有無及びその額)及び
争点5(本件発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべ
き利得の額)について
ア 一審原告の主張
業界における実施料の相場について
a 原判決は、知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方
5 に関する調査研究報告書(甲55。以下「甲55報告書」という。)
には、電気等の分野の実施料率の平均値等の記載があるものの、同
報告書では、エレクトロニクス業界のライセンス交渉実態から、実
施料率は、上記の例示された平均値を大幅に下回るものである旨判
断し、同平均値を採用しなかった。
10 しかし、そこで引用されているライセンス交渉実態は、規格技術
に関する特許に係るパテントプールの例か(78頁)、クロスライ
センスがされる例か(79頁)、ノウハウを含めた交渉をする場合
であるところ(80頁)、本件特許は規格技術ではないからパテン
トプールは関係がなく、また、一審原告は自社で発明した技術を実
15 施してはいないのでクロスライセンスをすることもなく、特許とし
て公開している以外のノウハウも有しないからノウハウを含めた交
渉をすることもない。
したがって、原判決が、甲55報告書の例外的事象における実施
料率を理由に、電気等の分野の実施料率の平均値を採用しなかった
20 のは不当である。
b 原判決は、一審被告従業員による陳述書(乙13。以下「乙13
陳述書」という。)に記載された、一審被告による実施許諾契約の
実績を参考にしている。
ここで、乙13陳述書には、実施料率の算定に関連して、ランニ
25 ング方式であるC社とのライセンス契約について記載されていると
ころ、一時金方式に比べ料率が高くなるランニング方式によってい
るC社との契約内容は、あるべき実施料率の算定において重要であ
る。
また、乙13陳述書において一審被告がクロスライセンス契約を
締結した外国企業が保有する「特許」の数は、これらの企業がライ
5 センス契約時に保有していた日本特許の数より多く(甲72ないし
76)、多数の外国特許も含まれていると推認されることから、国
内特許1件当たりの料率を算定する資料としては問題が大きい。
このようなことから、一審原告は、これらのライセンス契約の内
容を明らかにするために、同契約書につき文書提出命令の申立てを
10 行ったのに対し、一審被告は、これらのライセンス契約の実施料率
は本件における要証事実ではないとして提出を拒んでいるのである
から、結局、乙13陳述書には証拠価値がないというべきである。
原判決は、本件発明の作用効果が本件発明の構成以外では実現できな
いことを認めるに足りる証拠はない旨判示するが、被告各製品が発売さ
15 れた時期には、一審原告にとって、本件発明によらずに本件発明の効果
を奏することは、経済的に現実的ではなかった。
イ 一審被告の主張
争う。
第3 当裁判所の判断
20 1 本件明細書の記載等について
以下のとおり補正するほか、原判決の第4の1の記載のとおりであるから、
これを引用する。
⑴ 原判決45頁26行目の「本件明細書(甲2)には、次のような記載が
ある。」を、「本件明細書(甲2)には、以下のとおり及び別紙本件明細
25 書(抜粋)のとおりの記載がある。」と改める。
⑵ 原判決49頁14行目末尾の(以下略)を削り、改行して以下のとおり
加える。
「 これにより、付属ディスプレイでは自らの画面解像度に相当する部分
だけを切り出した部分画像しか表示できなかったり、画素を間引くこと
によって画質を落とした全体画像しか表示できなかったりした画像を、
5 大画面外部ディスプレイにおいては、その本来の解像度のままの全体画
像として表示できるようになる。また、特に、水平方向の画素数が付属
ディスプレイの画面水平解像度より大きい画像を大画面外部ディスプレ
イ装置に表示する機能を有する場合には、一行あたりに表示できる文字
数を増やすことができ、その結果、長文の電子メールであっても、何行
10 にもわたって表示され、垂直スクロールを何度も繰り返さなければなら
ないということはなくなる。また、それらの効果が総合されることによ
り、パソコン向けウェブページも、大画面外部ディスプレイ装置におい
て、パソコンの画面イメージとして実現されるレイアウトで閲覧できる
ようになる。」
15 ⑶ 原判決52頁7行目末尾の(以下略)を削り、改行して以下のとおり加
える。
「 LCDドライバ15Bは、該ビットマップデータに基づいて、ソー
ス・ドライバ部とゲート・ドライバ部とを作動させることによりLCD
パネル15Aの画面を構成する各々の画素を駆動し、最終的にコミュニ
20 ケーションの相手からの無線動画信号に対応した画像がLCDパネル1
5Aに表示される。
この際、携帯テレビ電話において送受信される無線動画信号の本来画
像の解像度は、通常、LCDパネル15Aの画面解像度を上回らないた
め、LCDパネル15Aには、該本来画像が全画面表示されるか、本来
25 画像がLCDパネル15Aの画面の一部に表示されるか、又は本来画像
の解像度はそのままで全画面に拡大表示される。(以下略)」
⑷ 原判決111頁末尾に頁を改めて、本判決別紙のとおり加える。
2 争点1(被告各製品は、本件発明の構成要件を充足するか)について
以下のとおり補正するほか、原判決の第4の2ないし5の説示のとおりであ
るから、これを引用する。
5 ⑴ 原判決61頁25行目冒頭から63頁23行目末尾までを次のとおり改め
る。
「ア 特許請求の範囲の記載
本件発明の請求項1には、「前記グラフィックコントローラは、前
記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像
10 度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単
一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像
度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出した
ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジ
タル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単
15 一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい
解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出
したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該
デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を
実現し、」との記載があり、「該デジタル表示信号を前記ディスプレ
20 イ制御手段に送信する機能」及び「デジタル表示信号を前記インター
フェース手段に送信する機能」を実現する際の、信号の生成において、
両機能ともに「前記単一のVRAM」からビットマップデータを読み
出すものと認められる。
そうすると、本件発明における「単一のVRAM」とは、携帯情報
25 通信装置において、付属ディスプレイに係る「ディスプレイ制御手段」
(構成要件E)のためと、外部ディスプレイに係る「インターフェー
ス手段」(構成要件F)のための両機能それぞれに専用のVRAMが
あるのではなく、1つのVRAMが存在することと、これにより両機
能において共に前記1つのVRAMからのビットマップデータの読出
しを行うことを意味すると解釈できる。
5 イ 明細書の記載
本件明細書においては、第1の実施形態を示す図1、第2の実施形
態を示す図6、第3の実施形態を示す図8には、それぞれVRAMと
してVRAM1(10C)のみが記載され、第1の実施形態に関する
【0117】には「LCDパネル15Aの画面解像度と同じ解像度を
10 有する画像を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから
切り出してLCDドライバ15Bに送信する」ことが、【0123】
には「中央演算回路1_10A1は、上記の描画命令とともに、VR
AM1_10Cから切り出したビットマップデータを、LCDドライ
バ15Bに送信する替わりに、TMDSトランスミッタ13Aに送信
15 するように命令する送信命令を生成し、該送信命令をグラフィックコ
ントローラ1_10Bに送信する。」ことが、第3の実施形態に関す
る【0153】には、「グラフィックコントローラ1_10Bは、中
央演算回路1_10A1から受信した描画命令に基づき、仮想画面に
おけるビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むと
20 ともに、LCDパネル15Aの画面解像度又は外部入出力ユニット4
における外部LCDタッチパネル456の画面解像度に対応する部分
をVRAM1_10Cから切り出し、それぞれLCDドライバ15B
又はTMDSトランスミッタ13Aに送信する。」ことが記載され、
「単一のVRAM」に関する前記アの解釈を裏付けている。」
25 ⑵ 原判決64頁17行目冒頭から22行目末尾までを次のとおり改める。
「しかし、一審被告の指摘する本件明細書の記載は、「単一のVRAM」
を「一つの仮想画面のビットマップデータを書き込むメモリ領域が単一
である」と限定して解釈すべきことを裏付けるものではない。」
⑶ 原判決65頁2行目の「ハードウェアとしてのVRAMが一つ内蔵され
ていると認められる。」を「付属ディスプレイに表示するVRAMとして、
5 外部SDRAMを備え、これらが外部ディスプレイに表示する画像データ
を処理するものであるから、付属ディスプレイに係る「ディスプレイ制御
手段」のためと、外部ディスプレイに係る「インターフェース手段」のた
めの両機能それぞれに専用のVRAMがあるのではないことが認められ
る。」と改める。
10 ⑷ 原判決65頁11行目冒頭から17頁末尾までを次のとおり改める。
「 しかし、同事実をもってしては、付属ディスプレイに係る「ディスプ
レイ制御手段」のためと、外部ディスプレイに係る「インターフェース
手段」のための両機能それぞれに専用のVRAMがあるとはいえない。」
3 争点2-1(乙1公報を主引例とする新規性欠如又は進歩性欠如(無効理由
15 1))、争点2-2(乙5公報を主引例とする進歩性欠如(無効理由2))及
び争点3(訂正の再抗弁の成否)について
事案に鑑み、これらを一括した上、争点3(訂正の再抗弁の成否)から判断
する。
⑴ 訂正の適法性について
20 ア 本件訂正2は、無効審判手続の中でされ、特許請求の範囲の減縮を目
的とするものと認められる。
イ 新規事項の追加の有無について検討する。
本件明細書の【0118】には、「無線通信手段」である「テレビ
受信用アンテナ112A」が「LCDパネル15Aの水平・垂直画素
25 数より大きい」本来画像を伝達するテレビ放送用信号を受信し、同信
号がテレビチューナ112B及びAD/DA変換部1_112Cでデ
ジタル動画信号及びデジタル音声信号に変換され、バス19を経由し
て中央演算回路1_10A1に送信され、同中央演算回路ではLCD
パネル15Aに表示される画面イメージのビットマップデータを作成
する描画命令を生成することが開示されているから、訂正事項1に係
5 る「前記無線通信手段」が「「本来解像度が前記ディスプレイパネル
の画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信して
デジタル信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し」、「前記中央
演算回路」が「該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達す
る画像データを処理し」とすることは、本件明細書の記載の範囲内の
10 ものであるといえる。
a 一審被告は、前記第2の4⑶ア aのとおり、本件明細書には、
無線受信機能と無線送信機能を有する無線通信手段(構成要件B)
を、「テレビ受信用アンテナ112A」と「テレビチューナ112
B」を有する「高解像度画像受信」の手段とする「高解像度画像受
15 信・処理・表示機能」を有する発明は記載されていない旨主張する。
しかし、本件明細書の【0116】からは「通信用アンテナ11
1A」が、無線信号の受信及び送信を行うものであること、【01
18】からは「テレビ受信用アンテナ112A」が、無線信号の受
信を行うものであることが理解できるところ、本件訂正発明には、
20 無線信号の種類を限定する記載がないこと、図1には、「テレビ受
信用アンテナ112A」、「テレビチューナ112B」及び「AD
/DA変換部1_112C」と「通信用アンテナ111A」、「R
F送受信部111B」及び「ベースバンドプロセッサ11」とを備
えた実施例の記載があることからすれば、「通信用アンテナ111
25 A」、「RF送受信部111B」、「ベースバンドプロセッサ1
1」、「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ11
2B」、及び「AD/DA変換部1_112C」は、いずれも無線
通信を行うための機能手段であり、合わせて構成要件Bにいう「無
線通信手段」を構成するものというべきである。また、本件明細書
等の【0056】の記載からは、「無線通信手段」が、インターネ
5 ットプロトコルに準拠した無線信号による無線通信とテレビ放送信
号による無線通信との両方を行うことも当然に想定されているとい
うべきである。
b 次に、一審被告は、前記第2の4⑶ア bのとおり、本件明細書の
【0118】では、画素の間引きを行っていることから、本来解像
10 度の画像を外部ディスプレイ手段に表示することができず、【00
22】に記載されている作用効果を奏することができないから、訂
正事項1は新規事項を追加するものである旨主張する。
しかし、構成要件G’においては、表示される画像が「本来解像度」
であることまでは特定されておらず、構成要件Jにおいても、「外
15 部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度よ
り大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした」とされて
いるのにとどまり、さらに、【発明が解決しようとする課題】【0
031】においても、「外部ディスプレイ手段において、付属ディ
スプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示すること」
20 等の記載がされており、本来の解像度がそのまま維持されることま
で記載されているわけではない。一審被告が主張する本件明細書の
【0118】は、テレビ放送に関する一例であって、このような場
合には【0022】記載の効果が生じないとしても、そのことをも
って、本件明細書に、高解像度画面を表示する機能を有する旨の記
25 載がないといえないことは明らかであるから、この点に関する一審
被告の主張は採用できない。
以上によれば、本件訂正2は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、
又は変更するものには該当しない。よって、本件訂正2は訂正要件を
満たす。
⑵ 訂正による無効理由の解消の成否について
5 本件訂正発明について、乙1公報を主引例とする進歩性欠如、乙5公報を
主引例とする進歩性欠如が認められないのであれば、本件訂正2前の本件発
明について、これらの文献を主引例とする進歩性欠如の有無について個別に
判断するまでもなく、訂正により無効理由が解消したものと認められる。そ
こで、以下、この点について検討する。
10 ア 乙1公報を主引例とする本件訂正発明の進歩性欠如の有無について
乙1公報の記載事項等
原判決の第4の6⑴に記載のとおりであるから、これを引用する。
本件訂正発明と乙1発明の相違点
によれば、本件訂正発明と乙1発明は、以下の点で相違するもの
15 と認められる。
a 相違点㋑
本件訂正発明は、「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、
後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信し
たデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段」を備え
20 ているのに対し、乙1発明では、「無線通信手段」について特定され
ていない点。
b 相違点㋺
本件訂正発明の「中央演算回路」は、「無線通信手段から受信し
た」デジタル信号を処理しているのに対し、乙1発明の「CPU10」
25 は、「表示データ」をどこから受信したかについて特定されていない
点。
c 相違点㋩
本件訂正発明は「携帯情報通信装置」についての発明であるが、
乙1発明は「携帯機器」であって、「情報通信」を行う点について特
定されていない点。
5 d 相違点㋥
本件訂正発明は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記さ
れる機能を有し、グラフィックコントローラは、「携帯情報通信装置
が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」、ディ
スプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマッ
10 プデータから、所定のデジタル表示信号を生成し、これをディスプレ
イ制御手段に送信する機能と、ディスプレイパネルの画面解像度より
大きい解像度を有する画像のビットマップデータから、所定のデジタ
ル表示信号を生成し、これをインターフェース手段に送信する機能を
実現するのに対して、乙1発明は、無線通信手段を有さず、また、
15 「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像
データ」を伝達する無線信号を受信するものではないため、この「本
来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像デー
タ」を基に、ディスプレイ制御手段やインターフェース手段に送信す
るデジタル表示信号を生成する機能を有さないから、「高解像度画像
20 受信・処理・表示機能」と略記される機能を有さず、グラフィックコ
ントローラも、本件訂正発明の上記送信機能と同様の機能は実現可能
であるものの、この送信機能で送信されるデジタル表示信号は、「高
解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」生成、送信され
るものではない点。
25 e 相違点㋭
本件訂正発明の「インターフェース手段」は、「前記グラフィック
コントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル
表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)
及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部
表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信
5 する機能を有する」のに対し、乙1発明では、表示信号の「伝送方式」
について特定されていない点。
相違点の容易想到性について
事案に鑑み、相違点㋥の容易想到性から判断する。
a 乙1公報には、表示装置の解像度に関する記載はあっても、プロ
10 グラムやデータに関する解像度の記載はなく、無線通信手段が「本
来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像デ
ータ」を伝達する無線信号を受信して、この「本来解像度が前記デ
ィスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」についてデ
ィスプレイ制御手段やインターフェース手段に送信するデジタル表
15 示信号を生成する具体的な構成については、何らの開示や示唆もな
い。
そうすると、当業者が相違点㋥に係る構成を容易に想到すること
ができたとはいえないというべきである。
b 一審被告は、本件発明について前記第2の4⑴ のとおり主張する
20 が、これは、本件訂正発明と乙1発明の相違点㋥についても、乙1公
報の【0005】ないし【0007】における示唆及び優先日当時の
周知技術(乙16文献ないし乙19文献)に基づいて当業者が容易に
想到できたとの趣旨を含むものと解される。
確かに、乙16文献ないし乙19文献によれば、携帯電話機におい
25 て、携帯電話機のディスプレイによりそのままでは表示できないデー
タを外部の表示装置に表示する技術は、周知技術であるといえる。
しかし、乙1公報には、乙1発明の「画像データ」が「本来解像度
が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」であ
ることについて、何らの開示や示唆もないことは前記aのとおりであ
る。
5 また、上記認定の周知技術も、携帯電話機において、携帯電話機の
ディスプレイによりそのままでは表示できないデータを外部の表示装
置に表示する技術を開示するのにとどまり、「本来解像度が前記ディ
スプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線
信号を受信するとの点や、携帯情報通信装置が前記高解像度画像受
10 信・処理・表示機能を実現する場合に、グラフィックコントローラが、
「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画
像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップ
データを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号
を前記インターフェース手段に送信する機能を実現するとの点まで具
15 体的に示唆するものではないから、当該周知技術を加味しても、当業
者が相違点㋥に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
まとめ
以上によれば、仮に、本件発明について、乙1公報を主引例とする
進歩性欠如が認められたとしても、本件訂正2によって解消するもの
20 というべきである。
イ 乙5公報を主引例とする本件訂正発明の進歩性欠如の有無について
乙5公報の記載事項等について
原判決の第4の7⑴に記載のとおりであるから、これを引用する。
本件訂正発明と乙5発明の相違点
25 によれば、本件訂正発明と乙5発明は、以下の点で相違するもの
と認められる。
a 相違点㋬
本件訂正発明の「中央演算回路」は、「前記無線通信手段から受
信したデジタル信号」に対して、「前記入力手段から受信したデータ
と前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき」、「リアルタイ
5 ムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータ
ファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出」すという
手順を踏んで処理するのに対し、乙5発明の「制御部10」は、受信
した信号に対する具体的な処理手段について記載されていない点。
b 相違点㋣
10 本件訂正発明の「ディスプレイ手段」は、「グラフィックコント
ローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、
乙5発明の「表示部12」は、「デジタル表示信号」が「グラフィ
ックコントローラから受信した」ものである点が特定されていない
点。
15 c 相違点㋠
本件訂正発明の「インターフェース手段」は、「グラフィックコ
ントローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対
し、乙5発明の「画像出力部17」は、「グラフィックコントローラ
から受信したデジタル表示信号に基づき」動作することについて特定
20 されていない点。
d 相違点㋷
本件訂正発明は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記さ
れる機能を有し、グラフィックコントローラは、「携帯情報通信装置
が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」、ディ
25 スプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマッ
プデータから、所定のデジタル表示信号を生成し、これをディスプレ
イ制御手段に送信する機能と、ディスプレイパネルの画面解像度より
大きい解像度を有する画像のビットマップデータから、所定のデジタ
ル表示信号を生成し、これをインターフェース手段に送信する機能を
実現するのに対して、乙5発明は、送受信部11が、「本来解像度が
5 ディスプレイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像デー
タ」を伝達する無線信号を受信するものではないため、「本来解像度
がディスプレイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像デ
ータ」を基に、表示部12で画像を表示するための信号と外部表示装
置2で画像を表示するための信号との両方を生成するものではなく、
10 また、グラフィックコントローラや単一のVRAMも備えないから、
「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記される機能を有さず、
表示部12や外部表示装置2で画像を表示するための信号は、「高解
像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」生成、送信される
ものではない点。
15 e 相違点㋦
本件訂正発明の「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信
号」は、「デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及
びGVIFのうちのいずれかの伝送方式」で伝送されるのに対し、
乙5発明では、「伝送方式」について特定されていない点。
20 相違点の容易想到性について
a 事案に鑑み、相違点㋷から判断する。
乙5公報には、送受信部11で「本来解像度がディスプレイパネル
(表示部12)の画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線
信号を受信して、この「本来解像度がディスプレイパネル(表示部1
25 2)の画面解像度より大きい画像データ」を基に、表示部12及び外
部表示装置2に画像を表示することや、これを実現するための具体的
な構成(信号の生成)の記載も示唆もない。
そうすると、当業者が相違点㋷に係る構成を容易に想到することが
できたとはいえないというべきである。
b 一審被告は、本件発明について前記第2の4⑵アのとおり主張する
5 が、これは、本件訂正発明と乙5発明の相違点㋷についても、乙5公
報の【0005】及び【0008】の記載並びに優先日当時の周知技
術(乙16文献ないし乙19文献)に基づいて、当業者が容易に想到
できたとの趣旨を含むものと解される。
しかし、乙5公報には、「携帯電話機の内蔵ディスプレイ装置の画
10 面解像度より大きい画像データを含むコンテンツ」を受信することや、
これを基に、表示部12及び外部表示装置2に画像を表示するための
信号を生成することについて、何らの記載もないことは前記aのとお
りであり、また、前記ア bにおいて説示したのと同様の理由により、
一審被告の主張は、乙16文献ないし乙19文献に基づく周知技術か
15 らも裏付けられない(原審において一審被告が主張する乙6発明を組
み合わせることについては、その動機付けがあるとはいえないし、乙
6公報は、「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より
大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信するとの点や、携帯情
報通信装置が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合
20 に、グラフィックコントローラが、「前記ディスプレイパネルの画面
解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み
出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信
号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送
信する機能を実現するとの点まで具体的に示唆するものではないから、
25 乙6発明を加味しても、当業者が相違点㋷に係る構成を容易に想到で
きたとはいえない。
まとめ
以上によれば、仮に、本件発明について、乙5公報を主引例とする進
歩性欠如が認められたとしても、本件訂正2によって解消するものとい
うべきである。
5 ⑶ 被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するかについて
被告各製品が本件発明の構成要件を充足することについては、前記2にお
ける認定のとおりであるから、これを前提に、本件訂正2により加えられた
構成要件G’ 及び H’について判断する。
ア 構成要件G’
10 一審被告は、前記第2の4⑶ア aのとおり、被告各製品は、本来解像
度の画像を表示する機能を有さないから、構成要件G’の「高解像度画像
受信・処理・表示機能」を有しない旨主張する。
しかし、本件訂正発明は、構成要件Jにあるように、「前記外部ディス
プレイ手段に、「前記ディスプレイバネルの画面解像度より大きい解像度
15 を有する画像」を表示できるようにした」ものであり、必ずしも、本来解
像度の画像を表示する機能を有するものではない。被告各製品はモバイル
プロセッサ内で画像データを間引きして内蔵ディスプレイパネル用の表示
用データを生成し、これを補間して、内蔵ディスプレイパネルより大きい
画面解像度を有する外部ディスプレイ用の表示データを生成しているので
20 あるから、高解像度画面を表示する機能を有する。したがって、一審被告
の主張は採用できない。
イ 構成要件H’
一審被告は、前記第2の4⑶ア bのとおり、被告各製品では、本件
訂正2の根拠とされたテレビ放送の受信の場合には、「高解像度画像受
25 信・処理・表示機能を実現する場合」が存在しないから、構成要件H’
の「前記携帯情報通信装置が前記高解像度画像受信・処理・表示機能」
を有さない旨主張する。
しかし、「高解像度画像受信・処理・表示機能」が、テレビ用受信ア
ンテナでテレビ放送を受信した場合に限る旨の特定は、本件訂正発明に
はない。また、前記3⑴イ aのとおり、本件訂正発明の「無線通信手
5 段」は、本件明細書の、テレビ受信用アンテナ、テレビチューナ、AD
/DA変換部、通信用アンテナ、RF送受信部、ベースバンドプロセッ
サを合わせたものと考えることができる。そうすると、被告各製品は、
内蔵ディスプレイパネル用の表示用データを補間して、これより大きい
画面解像度の外部ディスプレイ用の表示データを生成しているのである
10 から、「前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイバネルの画
面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした」と
の事項を充足するものである。
⑷ 小括
以上のとおりであって、訂正の再抗弁が認められるから、その他の点に
15 ついて判断するまでもなく、一審被告らの乙1公報を主引例とする進歩性
欠如、乙5公報を主引例とする進歩性欠如の主張は理由がない。
4 争点2-3(「単一のVRAM」なる語句の意義が不明瞭であることによ
る明確性要件違反(無効理由3))について
一審被告は、「単一のVRAM」との語句が不明確である旨主張するが、
20 当該語句が、本件明細書の記載も参酌すれば、付属ディスプレイに係る「デ
ィスプレイ制御手段」(構成要件E)のためと、外部ディスプレイに係る
「インターフェース手段」(構成要件F)のための両機能それぞれに専用の
VRAMがあるのではなく、1つのVRAMが存在することを意味するもの
と理解できることは、補正の上引用した原判決第4の5⑴の説示のとおりで
25 あり、本件発明は明確である。
5 争点2-4(本件明細書に「単一のVRAM」としたことの作用効果の記
載がないことに基づくサポート要件違反(無効理由4))について
原判決の第4の9の説示のとおりであるから、これを引用する。
6 争点2-5(訂正要件違反(無効理由5))について
原判決94頁26行目冒頭から96行目4行目末尾までを以下のとおりに
5 改めるほか、原判決の第4の10の説示のとおりであるから、これを引用す
る。
「本件発明における「単一のVRAM」とは、携帯情報通信装置において、
付属ディスプレイに係る「ディスプレイ制御手段」(構成要件E)のため
と、外部ディスプレイに係る「インターフェース手段」(構成要件F)の
10 ための両機能それぞれに専用のVRAMがあるのではなく、1つのVRA
Mが存在することと、これにより両機能において共に前記1つのVRAM
からのビットマップデータの読出しを行うことを意味すると解釈できるこ
と、本件明細書にこれに対応する記載があることは前記5⑴のとおりであ
るから(なお、本件明細書は出願時から変更されていない。)、一審被告
15 の主張は採用できない。」
7 争点2-6(本件明細書に「適切に処理する」以外の処理が記載されてい
ないことによるサポート要件違反(無効理由6))について
原判決の第4の11の説示のとおりであるから、これを引用する。
8 争点4(特許権侵害の不法行為による損害の発生の有無及びその額)につい
20 て
以下のとおり当審における一審原告の補充主張に対する判断を加えるほか、
原判決の第4の13の説示のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 業界における実施料等の相場について
ア 一審原告は、前記第2の4⑷ア aのとおり、原判決が、甲55報告書
25 の例外的事象における実施料率を理由に、電気等の分野の実施料率の平均
値を採用しなかったのは不当である旨主張する。
しかし、原判決は、一つのデバイスが関連する特許が膨大な量となると
いう甲55報告書の指摘に着目して、電気等の分野の実施料率の平均値を
採用しないとしたのであり、その判断は首肯できるものである。
イ 一審原告は、前記第2の4⑷ア bのとおり、乙13陳述書における実
5 施料相当額の算定には信用性がない旨主張する。
しかし、仮にそのような不明点があるとしても、乙13陳述書は、具体
的な数値自体に意味があるというよりは、一つの算出手法を示したものと
理解すべきであるから、個々のライセンス契約の内容自体を吟味する必要
があるものとは解し得ないし、優先権主張を伴う出願や分割出願制度等を
10 利用した出願を全てまとめて1パテントファミリーとして、パテントファ
ミリー当たりのライセンス料率を算定するなど、1件当たりのライセンス
料率が過少にならない工夫をしていること等に鑑みると、その信用性が否
定されるべきものとはいえない上、そもそも原判決は、乙13陳述書にお
ける料率をそのまま採用しているのではなく、その他の各種事情を総合勘
15 案した上で、料率を決定しているのであるから、一審原告の主張は採用で
きない。
⑵ 代替品の不存在について
一審原告は、前記第2の4⑷ア のとおり、本件訂正発明によらずに、
本件訂正発明の効果を奏することは経済的に現実的ではなかった旨主張す
20 る。
しかし、これを的確に裏付けるに足りる証拠はないし、その他の各種事
情を総合考慮すると、そもそもこの点のみをもって本件結論が左右すると
はいい難いから、一審原告の上記主張は採用できない。
9 争点6(不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効の成否)
25 原判決の第4の14の説示のとおりであるから、これを引用する。
争点5(本件発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべき
利得の額)について
原判決104頁19行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改めるほか、
原判決の第4の15の説示のとおりであるから、これを引用する。
「したがって、一審原告の一審被告に対する金銭請求は、主位的請求である
5 不法行為に基づく損害賠償請求を、前記13で認定した損害額の限度で認
容すれば足りる。」
その他
一審被告は、「本来解像度」の用語の意義について、本件明細書等【00
32】に「「本来解像度」とは「本来画像」の解像度をする。」と定義され
10 ているので、「本来画像」の意義が問題となるところ、「本来画像」の用語
の意義、内容は不明確であるから、本件特許明細書には、構成要件G’にお
ける「本来解像度」の意義を理解するための記載がなく、サポート要件に反
する旨、当審において新たに主張するが、本件明細書等の「本来画像」及び
「本来解像度」に関する関係記載(【0006】、【0032】、【007
15 9】、【0115】、【0118】、【0119】、【0124】ないし
【0126】、【0128】ないし【0130】等)を総合すれば、当業者
は、「本来画像」及び「本来解像度」が何を意味するかにつき十分に理解で
きるというべきであるから、本件訂正発明は本件明細書等の発明の詳細な説
明に記載したものといえる。
20 その他にも、両当事者はるる主張するが、いずれも本件結論を左右し得な
い。
第4 結論
以上によれば、一審原告の請求は、主位的請求である不法行為に基づく損害
賠償請求権に基づき819万9458円及びこれに対する令和元年12月13
25 日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を
求める限度で理由があり、その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由
がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、一審原告及
び一審被告の控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとお
り判決する。
5 知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅 野 雅 之
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
岡 山 忠 広
(別紙)
別紙
本件明細書(抜粋)
【0006】
5 さらに、携帯情報通信装置でウェブページを閲覧する際の制約は、電子メール
の読解する場合よりも大きい。通常、パソコンで閲覧されることを想定して作成さ
れるウェブページ(以下、パソコン向けウェブページと略記する)は、HTMLで
記述された文書ファイル(以下、HTMLファイルと略記する)及びそのリンクフ
ァイルで構成される。ところが、多くの携帯電話機では、付属ディスプレイの画面
10 サイズ・画面解像度が小さいことを理由の一つとして、フルスペックのHTMLで
記述されたウェブページを適切に閲覧することはできず、閲覧できるのはパソコン
向けウェブサイトとは別個に構築されたいわゆる「ケータイ向けサイト」のウェブ
ページであって、CHTML(Compact HTML)、HDML(Hand
held Device Markup Language)又はWML(Wir
15 eless Markup Language)等の携帯情報通信装置向けに特化
したマークアップ言語で記述されたウェブページだけとなっている。このため、特
に解像度の大きい画像ファイルにリンクしたHTMLファイルで記述されたウェブ
ページは、ほとんどの場合正しく表示できず、また、画面を複数のフレームに分割
し、各フレームに異なるURL(Uniform Resource Locat
20 or)を有するファイルを割り当てるフレーム表示のウェブページを含むウェブサ
イトなどでは、そもそも管理者側が携帯電話機からのアクセス自体を拒否すること
もある。
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
25 本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところ
は、携帯電話機やPDAをはじめとする携帯情報通信装置に大画面外部ディスプレ
イ装置を接続することにより、より一般的には、携帯情報通信装置に大画面ディス
プレイ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周
辺装置を接続することにより、該大画面外部ディスプレイ手段において、付属ディ
スプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示すること、特に、長文の電
5 子メールについては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向
けウェブページについては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、
しかも水平スクロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、
テレビ放送における本来画像を表示することを、該大画面外部ディスプレイ手段向
けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもと
10 もと必要である表示データ生成手段(以下、付属表示データ生成手段と略記する)
とは別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又
は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の
追加と、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する携帯情報通信
装置を提供する点にある。また、携帯情報通信装置及び大画面外部ディスプレイ装
15 置とともに用いられ、該大画面外部ディスプレイ装置の画面に、付属ディスプレイ
の画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示するための接続ユニットを提供する
点にある。さらに、携帯情報通信装置とともに用いられ、自らに付属する大画面外
部ディスプレイパネルに、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画面解像度よ
りも解像度が大きい画像を表示する外部入出力ユニットを提供する点にある。
20 【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために、携帯情報通信装置に係る第1の発明は、ユーザー
がマニュアル操作によって入力したデータを後記データ処理手段に送信する入力手
段と、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記データ処理手段に送信す
25 るとともに、後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して
送信する無線通信手段と、後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記デー
タ処理手段で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と、前記入力手段か
ら送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき、前記無線
通信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読み出したデータ
に必要な処理を行って、デジタル表示信号及びその他のデジタル信号を生成して送
5 信するデータ処理手段と、画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像
を表示するディスプレイパネルAと、前記データ処理手段から受信したデジタル表
示信号に基づき前記ディスプレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制
御手段Aとから構成されるディスプレイ手段とを備える携帯情報通信装置であって、
外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、又は、外部ディスプレイ手段が接続される
10 周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記データ処理手段から受信したデジタ
ル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段A1と、前記
データ処理手段で生成されたデジタル表示信号の送信先として、前記ディスプレイ
制御手段Aと前記インターフェース手段A1の少なくともいずれか一方を選択して
指定する送信先指定手段とを備えるとともに、前記データ処理手段と前記インター
15 フェース手段A1とが相俟って、前記送信先指定手段がデジタル表示信号の送信先
として前記インターフェース手段A1を指定した場合には、該インターフェース手
段A1から、高解像度外部表示信号を送信する機能を実現するようにしたものであ
る。
なお、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「デジタル表示信号」には 、
20 後で詳述する「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応した信号
だけでなく、デジタル画像データの生成(描画)を命令する描画命令のデジタル信
号も含む。
また、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「外部表示信号」とは、周
辺装置における外部ディスプレイ手段がそれを受信して適切に処理することにより
25 画像を表示することが可能であるような信号を意味する。そして、表示信号、画像
データファイル又は動画信号(以下、表示信号等と略記する)を「適切に処理する」
とは、ディスプレイ手段、又は、データ処理手段及びディスプレイ手段が、表示信
号等に含まれている画素ごとの論理的な色情報を、ディスプレイ手段の画面を構成
する物理的な画素の色表示として過不足なく現実化することを意味しており、より
具体的には、物理的な現実化にあたって画素を間引いて表示画像の解像度を小さく
5 したり、画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりしないことを意味してい
る。
さらに、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「高解像度」とは、表示
信号等の本来解像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度(水平画素数×垂直
画素数)より大きいことを意味し、特に、「高解像度外部表示信号」とは、本来解
10 像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい外部表示信号を意味する。
また、表示信号等の「本来画像」とは、十分な大きさの画面解像度を有するディス
プレイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を有するディスプ
レイ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理することにより表示される本来
の画像を意味し、「本来解像度」とは「本来画像」の解像度を意味する。
15 さらに、本「明細書」及び「特許請求の範囲」においては、「周辺装置におけ
る~手段」という表記によって、「周辺装置に含まれた~手段又は周辺装置に接続
された~手段」を意味する。
【0056】
また、携帯情報通信装置に係る第25の発明は、第1乃至第24のいずれか1
20 つの発明の携帯情報通信装置において、前記無線通信手段は、アナログテレビ放送
信号、デジタルテレビ放送信号、携帯テレビ電話信号、インターネットプロトコル
に準拠した無線ストリーミング信号のうちの少なくとも1つの無線信号(以下、無
線動画信号と略記する)を受信し、デジタル動画信号に変換の上、前記データ処理
手段に転送する機能を有し、前記データ処理手段は、該デジタル動画信号を処理す
25 ることによってリアルタイムでデジタル表示信号を生成する機能、及び/又は、該
デジタル動画信号を自らが処理可能な画像データファイルとして前記記憶手段に一
旦格納し、その後読み出した上で処理することによってデジタル表示信号を生成す
る機能を有するようにしたものである。
【0079】
このうち特に第2の発明によれば、携帯情報通信装置のインターフェース手段
5 A1に、高解像度外部表示信号の本来解像度を水平方向でも垂直方向でも下回らな
い画面解像度を有する外部ディスプレイ手段を含む周辺装置を接続することにより、
該外部ディスプレイ手段に水平画素数と垂直画素数の比率が5:4から16:9ま
での範囲にあるような高解像度の全画面画像を表示することができる。この際、外
部ディスプレイ手段の画面解像度が高解像度外部表示信号の本来解像度より大きい
10 場合には、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分だけが表示領域とな
って、それ以外の部分は非表示領域となることがあるが、外部ディスプレイ手段の
画面解像度が高解像度外部表示信号の本来解像度と等しい場合には、高解像度画像
を外部ディスプレイ手段の画面全体にわたって(非表示領域を生じることなく)表
示される。また、外部ディスプレイ手段として、マルチスキャン機能を有し、画面
15 解像度が外部表示信号の本来解像度より大きい高性能外部ディスプレイ手段を使用
する場合にも、高解像度画像が外部ディスプレイ手段の画面全体にわたって表示さ
れる。
例えば、付属ディスプレイパネルの画面解像度がQVGAサイズであり、本来
解像度がXGAサイズ(水平画素数:垂直画素数=4:3)であるような高解像度
20 外部表示信号を送信する機能が実現される携帯情報通信装置においては、該携帯情
報通信装置のインターフェース手段A1に、マルチスキャン機能を有し画面解像度
が例えばSXGA(Super XGA) サイズ(水平画素数×垂直画素数=128
0×1024画素)であるような高性能外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、及
び/又は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続することにより、付
25 属ディスプレイパネルの画面解像度(QVGAサイズ)より解像度の大きいXGA
サイズの画像を、該高性能外部ディスプレイ手段の画面全体にわたって(非表示領
域を生じることなく)表示することができる。
【0116】
次に、携帯電話機1がデータ通信・処理用に使用される場合、通常は20個前
後の小型のキーからなるキー操作部16Aを操作することによって入力され、キー
5 入力コントローラ16Bでデジタル信号に変換されたデータ、及び/又は、インタ
ーネットプロトコルに準拠した電波信号を公衆ネットワークから通信用アンテナ1
11Aで受信し、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を経由す
ることによりデジタル信号に変換されたデータが、バス19を経由して中央演算回
路1_10A1に転送される。中央演算回路1_10A1では、フラッシュメモリ
10 14Aに格納されたプログラムに基づいて必要な処理を行い、処理されたデータは、
バス19を経由して、フラッシュメモリ14A及びRAM(Random Acc
ess Memory)14Bや、グラフィックコントローラ1_10Bや、ベー
スバンドプロセッサ11に転送される。そして、最終的には、LCDパネル15A
に画像が表示されたり、スピーカ18Bから音声が出力されたり、通信用アンテナ
15 111Aから電波信号が送信されたり、フラッシュメモリ14Aにデータが保存さ
れたりする。
なお、インターネットプロトコルに準拠した電波信号の送受信は、音声通信の
場合と同様に、各種の通信方式によって実現できる。その際、通信用アンテナ11
1A、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を複数帯域の電波信
20 号に対応できるようにすることによって、例えば、屋内等の無線LANの基地局・
アクセスポイントに近い箇所では高速の無線LAN方式で通信を行い、それ以外の
箇所ではCDMA方式等の第3世代移動体通信(セルラーシステム)で通信を行う
ようなことが実現できる。
【0118】
25 また、携帯電話機1がテレビ番組の視聴用に使用される場合、テレビ受信用ア
ンテナAで受信したテレビ放送信号は、テレビチューナ112B及びAD/DA変
換部1_112Cでデジタル動画信号及びデジタル音声信号に変換され、バス19
を経由して中央演算回路1-10A1に送信される。
携帯電話機1においては、テレビ番組の画像を、LCDパネル15Aを縦置き
にして表示する(→縦長画面(水平画素数×垂直画素数=240×320画素))
5 か、横置きにして表示する(→横長画面(水平画素数×垂直画素数=320×24
0画素))かを、キー操作部16Aを操作することによって選択することができ、
中央演算回路1_10A1は、この選択に対応した入力信号及び前記デジタル動画
信号に基づき、LCDパネル15Aに表示される画面イメージ(ただし、縦長画面
の場合、上部及び/又は下部に非表示領域が生じた画面イメージ)のビットマップ
10 データを作成する描画命令を生成し、該描画命令をグラフィックコントローラ1_
10Bに送信する。この際、テレビ放送における本来画像の水平・垂直画素数は、
縦長画面、横長画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数
よりも大きいため、描画命令の生成にあたっては、AD/DA変換部1_112C
から送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の
15 全体画像の描画命令を生成する。
グラフィックコントローラ1_10B、VRAM1_10C及びLCDドライ
バ15Bの動作は、キー操作部16Aの操作に従った画像のスクロールがないこと
を除けば、ウェブページのページ画像を表示する場合と同様であり、結果として、
LCDパネル15Aにテレビ放送の動画がリアルタイムで表示される。
20 一方、デジタル音声信号についても中央演算回路1_10A1で適切に処理さ
れ、さらにベースバンドプロセッサ11とCODEC18Cを経由することによっ
て、最終的にスピーカ18Bから音声として出力される。この結果、上記のLCD
パネル15Aに表示される動画と相俟ってテレビ番組として視聴することができる。
【0119】
25 また、携帯電話機1が被写体の撮影用に使用される場合、被写体から反射又は
放射される光信号は、携帯テレビ電話でのコミュニケーションの場合と同じ経路で
デジタル動画信号に変換され中央演算回路1_10A1に送信される。また、中央
演算回路1_10A1、グラフィックコントローラ1_10B、VRAM1_10
C及びLCDドライバ15Bは、テレビ放送番組を視聴する場合と同様に動作し、
結果として、LCDパネル15Aに被写体の映像(動画)がリアルタイムで表示さ
5 れる。
この際、CCD12Bによって撮像される本来画像の水平・垂直画素数は、縦
長画面、横長画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数よ
りも大きいため、中央演算回路1_10A1が描画命令を生成する際には、AD/
DA変換部2_12Cから送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、
10 解像度の低い画像の全体画像の描画命令を生成する。
【0123】
さて、作動中の携帯電話機1と、インターフェース部C1_35に外部ディス
プレイ装置5が接続しており作動中の接続ユニット3(以下では、「インターフェ
ース部C1_35に外部ディスプレイ装置5が接続しており作動中」のことを「作
15 動中」と略記する)を接続した場合、作動中の携帯電話機1を接続ユニット3に接
続し、接続ユニット3を起動させた場合、あるいは携帯電話機1を作動中の接続ユ
ニット3に接続し、携帯電話機1を起動させた場合に、携帯電話機1の中央演算回
路1_10A1は、接続ユニット3から、接続ユニット3が接続していることを検
知する信号(以下、接続検知信号と略記)、及び接続ユニット3のインターフェー
20 ス部C1_35に接続された外部ディスプレイ装置5の画面解像度データを、外部
接続端子部B_33D、接続ケーブル2、外部接続端子部A_13D及びバス19
を経由して受信する。
そして、携帯電話機1の中央演算回路1_10A1が前記接続検知信号を受信
した場合、中央演算回路1_10A1は、LCDパネル15Aの画面水平解像度又
25 は画面解像度に対応した画像の描画命令に替えて、以下で説明するように、LCD
パネル15Aの画面解像度より大きな解像度を有する画像の描画命令を生成し、グ
ラフィックコントローラ1_10Bに対して送信する。また、中央演算回路1_1
0A1は、上記の描画命令とともに、VRAM1_10Cから切り出したビットマ
ップデータを、LCDドライバ15Bに送信する替わりに、TMDSトランスミッ
タ13Aに送信するように命令する送信命令を生成し、該送信命令をグラフィック
5 コントローラ1_10Bに送信する。
【0124】
まず、インターネットに接続したウェブサイトにアクセスし、該ウェブサイト
を構成するウェブページを閲覧している場合には、中央演算回路1_10A1は、
フラッシュメモリ14Aに格納されたブラウザプログラムに従い、ウェブページの
10 レイアウト形式に応じて以下のように描画命令を生成・送信する。すなわち、ウェ
ブページがリキッドレイアウト、又は外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度
(640画素)よりも狭い固定幅レイアウトを採用していれば、外部ディスプレイ
装置5の画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を生成・
送信し、ウェブページが外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度よりも広い固定
15 幅レイアウトを採用していれば、該固定幅と同じ水平画素数を有するページ画像の
描画命令を生成・送信する。
一方、テレビ放送を視聴している場合及び被写体を撮影している場合には、そ
れぞれAD/DA変換部1_112C及びAD/DA変換部2_12Cから送信さ
れるデジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置5にお
20 ける画面解像度より依然として大きいため、中央演算回路1_10A1は、該デジ
タル動画信号を一部間引くことによって、解像度を外部ディスプレイ装置5の画面
解像度に合わせた低画質の全体画像の描画命令が生成・送信される。
【0125】
なお、携帯テレビ電話でのコミュニケーションを行っている場合には、携帯テ
25 レビ電話における無線動画信号の本来画像の解像度は、LCDパネル15Aの画面
解像度を上回らないため、携帯電話機1を接続ユニット3と接続した場合でも、中
央演算回路1_10A1からの描画命令が描画を命令する画像の解像度は変わらな
い。ただし、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中
央演算回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置
5の画面解像度(無線動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有
5 する画像の描画命令を生成・送信することができる。
【0126】
ところで、外部ディスプレイ装置5として、画面解像度がVGAサイズである
ようなものに替えて、フルハイビジョンテレビモニタ(水平画素数×垂直画素数=
1920×1080画素)のように、画面解像度が十分に大きい(ただし、あらか
10 じめ設定された仮想画面の論理解像度(3840×2400画素)よりも小さい)
ものを使用する場合には、中央演算回路1_10A1が生成・送信する描画命令は、
以下のように変わる。
まず、ウェブページを閲覧している場合には、ほとんどのウェブページは、仮
に固定幅レイアウトを採用している場合でも該固定幅が外部ディスプレイ装置5の
15 画面水平解像度を超えることはないため、中央演算回路1_10A1においては、
外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の
描画命令が生成・送信される。
次に、テレビ放送を視聴している場合、又は被写体を撮影している場合にも、
デジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置5の画面解
20 像度を超えることはないため、中央演算回路1_10A1においては、デジタル動
画信号における本来画像の描画命令が生成・送信される。
その際、視聴しているテレビ放送がアナログテレビ放送である場合や、この説
明で想定しているようにCCD12Bの解像度(1280×1024画素)がフル
ハイビジョンサイズ(1920×1080画素)より小さい場合には、描画命令が
25 生成される本来画像の解像度は外部ディスプレイ装置5の画面解像度より小さくな
るが、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算
回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置5の画
面解像度(デジタル動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有す
る画像の描画命令を生成することができる。
【0128】
5 接続ユニット3においては、インターフェース部B_33で受信・転送された
ビットマップデータを、TMDSレシーバ機能を有するインターフェース部C1_
35で受け入れて、必要な処理を行った上で外部ディスプレイ装置5に送信し、結
果として、外部ディスプレイ装置5の画面において、その画面解像度に対応した解
像度を有する画像が表示される。その際、リキッドレイアウト、又は外部ディスプ
10 レイ装置5の画面水平解像度よりも狭い固定幅レイアウトを採用しているウェブペ
ージを閲覧している場合には、ページ画像の水平方向の全体が表示され、水平方向
のスクロールを行う必要はないが、外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度より
も広い固定幅レイアウトを採用しているウェブページを閲覧している場合には、外
部ディスプレイ装置5の画面には、ページ画像は水平方向の一部だけが表示される
15 ことになり、水平スクロールを行うことによってページ画像の全体が閲覧できる。
一方、テレビ放送を視聴している場合、又は被写体を撮影している場合には、デジ
タル動画信号の本来画像よりも解像度の低い画像が全画面表示される。
【0129】
ただし、外部ディスプレイ装置5として、上記のようにフルハイビジョンテレ
20 ビモニタのような高解像度ディスプレイ装置を採用している場合には、外部ディス
プレイ装置5に表示される画像は、以下のように変わる。
まず、ウェブページを閲覧している場合には、上記の理由により、ほとんどの
ウェブページのページ画像はその水平方向の全体が表示され、水平スクロールする
ことなく閲覧できる。
25 次に、テレビ放送を視聴している場合、被写体を撮影している場合には、又は
携帯テレビ電話でのコミュニケーションを行っている場合には、上記のように、通
常のケースでは、中央演算回路1_10A1においてデジタル動画信号における本
来画像の描画命令が生成・送信されることに対応して、外部ディスプレイ装置5の
画面には本来画像が表示される。その際、外部ディスプレイ装置5又は接続ユニッ
ト3におけるインターフェース部C1_35がアップスキャンコンバート機能を有
5 する場合には、該本来画像が外部ディスプレイ装置5の画面全体にわたって表示さ
れ、そうでない場合には、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分だけ
が表示領域となって、それ以外の部分は非表示領域となるような形態で表示される
(ただし、ハイビジョンテレビ放送を視聴し、外部ディスプレイ装置5がフルハイ
ビジョンモニタである場合には、インターフェース部C1_35がアップスキャン
10 コンバート機能を有しない場合でも、本来画像が外部ディスプレイ装置5の画面全
体に表示される)。いずれの場合も外部ディスプレイ装置5の画面に表示される画
像の解像度は本来解像度のままで変わらない。
一方、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央
演算回路1_10A1がそれに従って作動しているケースでは、外部ディスプレイ
15 装置5の画面解像度と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成・送信する場合に
は、本来解像度よりも解像度の大きい画像が、外部ディスプレイ装置5の画面全体
にわたって表示される。
【0130】
なお、画像データを外部ディスプレイ装置5の画面で再生する場合にも、中央
20 演算回路1_10A1、グラフィックコントローラ1_10B及びTMDSトラン
スミッタ13A等の機能は、基本的には他の用途における機能と同じである。
画像データの本来画像の解像度と外部ディスプレイ装置5の解像度の大小関係、
補間プログラムの有無、さらには外部ディスプレイ装置5又は接続ユニット3がマ
ルチスキャン機能を有しているか否かと等に応じて、本来画像、本来画像から画素
25 が間引かれることによって低解像度となった画像、又は本来画像に画素が補間され
ることによって高解像度となった画像が、外部ディスプレイ装置5の画面全体にわ
たって表示されたり、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分の表示領
域に表示されたりする。
【0153】
その際、中央演算回路1_10A1は、外部入出力ユニット4が接続している
5 ことを検知する接続検知信号に基づき、グラフィックコントローラ1_10Bに対
して、生成したビットマップデータを、LCDドライバ15BとTMDSトランス
ミッタ13Aのいずれかに送信することを命じる送信命令も合わせて送信する。
これに基づき、グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_1
0A1から受信した描画命令に基づき、仮想画面におけるビットマップデータを生
10 成しVRAM1_10Cに書き込むとともに、LCDパネル15Aの画面解像度又
は外部入出力ユニット4における外部LCDタッチパネル456の画面解像度に対
応する部分をVRAM1_10Cから切り出し、それぞれLCDドライバ15B又
はTMDSトランスミッタ13Aに送信する。そして、このビットマップデータを
必要なインターフェースを介して受信することにより、携帯電話機1のLCDパネ
15 ル15A又は外部入出力ユニット4の外部LCDタッチパネル456に、自らの現
在位置が中心部に示された地図画像に、必要に応じて画面の上部・下部に表示され
るメニュー表示等を組み合わせた全画面画像が表示される。
【図1】
【図6】
【図8】
最新の判決一覧に戻る