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令和4(ワ)13963等商標権侵害差止請求事件

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裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年3月16日
事件種別 民事
当事者 原告ドクターエンジニールハーツェーエフポルシェ
被告BRICKYARD株式会社 株式会社SKM 株式会社アートレーシング 有限会社リスキービジネス
法令 商標権
商標法36条1回
キーワード 商標権31回
侵害13回
差止11回
主文 1 被告らは、自動車若しくはその部品に別紙被告ら標章目録記載1又は
2の標章を付し、同各標章を付した自動車及びその部品を譲渡し、又は
2 被告らは、被告らの占有に係る別紙被告ら標章目録記載1又は2の標
3 訴訟費用は被告らの負担とする。5
4 この判決は、仮に執行することができる。
事件の概要 1 原告は、別紙商標権目録記載1又は2の各登録商標(以下、「原告商標1」な いし「原告商標2」といい、併せて「原告各商標」という。)を有しており、原 告は、被告らが別紙被告ら標章目録記載1又は2の各標章(以下、「被告標章1」 ないし「被告標章2」といい、併せて「被告各標章」という。)を使用している と主張している。15 本件は、原告が、被告らに対し、被告らが原告各商標に類似する被告ら各標章 を使用したことが原告各商標に係る商標権を侵害すると主張して、被告らに対し、 商標法36条に基づき、被告各標章の使用の差止め及び被告各標章を付した自動 車等の廃棄を求める事案である。

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判決文

令和5年3月16日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和4年(ワ)第13963号 商標権侵害差止請求事件(第1事件)
令和4年(ワ)第13964号 商標権侵害差止請求事件(第2事件)
令和4年(ワ)第13965号 商標権侵害差止請求事件(第3事件)
5 令和4年(ワ)第13966号 商標権侵害差止請求事件(第4事件)
口頭弁論終結日 令和4年11月7日
判 決
原 告 ドクター エンジニール ハー
ツェー エフ ポルシェ
10 アクチエンゲゼルシャフト
同訴訟代理人弁護士 松 永 章 吾
寺 前 翔 平
同訴訟代理人弁理士 山 﨑 和 香 子
同補佐人弁理士 岡 野 真 未 子
15 被 告 B R I C K Y A R D 株 式 会 社
(以下「被告BRICK YARD」という。)
被 告 株 式 会 社 S K M
(以下「被告SKM」という。)
被 告 株式会社アートレーシング
20 (以下「被告アートレーシング」という。)
被 告 有限会社リスキービジネス
(以下「被告リスキービジネス」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 平 塚 雅 昭
平 塚 恵 理 佳
25 主 文
1 被告らは、自動車若しくはその部品に別紙被告ら標章目録記載1又は
2の標章を付し、同各標章を付した自動車及びその部品を譲渡し、又は
譲渡のために展示してはならない。
2 被告らは、被告らの占有に係る別紙被告ら標章目録記載1又は2の標
章を付した自動車及びその部品を廃棄せよ。
5 3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 この判決は、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
10 第2 事案の概要
1 原告は、別紙商標権目録記載1又は2の各登録商標(以下、「原告商標1」な
いし「原告商標2」といい、併せて「原告各商標」という。)を有しており、原
告は、被告らが別紙被告ら標章目録記載1又は2の各標章(以下、
「被告標章1」
ないし「被告標章2」といい、併せて「被告各標章」という。)を使用している
15 と主張している。
本件は、原告が、被告らに対し、被告らが原告各商標に類似する被告ら各標章
を使用したことが原告各商標に係る商標権を侵害すると主張して、被告らに対し、
商標法36条に基づき、被告各標章の使用の差止め及び被告各標章を付した自動
車等の廃棄を求める事案である。
20 なお、当裁判所は、原告が原告代表者の代表権限、委任権限等を補充すること
とされたため、判決言渡期日を取り消した上、同補充を踏まえ、判決を言い渡し
た。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より認められる事実をいう。なお、第1事件ないし第4事件において共通して提
25 出されている証拠については、第1事件における証拠番号のみを摘示するものと
する。また、摘示した証拠は、特に記載のない限り、第1事件において提出され
た証拠を指し、枝番を含むものとする。)
当事者等
ア 原告は、世界的に著名なドイツの自動車メーカーである。
イ 被告らは、いずれも、愛知県内において輸入車や改造車の販売を行う業者
5 である。
(以上につき、甲3、乙2、弁論の全趣旨)
原告の商標権
ア 原告は、原告各商標につき、いずれも昭和57年8月7日に出願を行い(以
下「本件登録出願」という。)、昭和62年11月20日に、商品の区分を
10 「第12類」、指定商品を「自動車、その他本類に属する商品」として、商
標登録を受けた。(甲5ないし8)。
イ その後、原告は、原告商標1に係る商標権につき、平成19年12月21
日に、指定商品の書換登録に係る申請を行い、平成20年7月2日、別紙商
標権目録記載1の「商品の区分」及び「指定商品」のとおり、登録を受けた
15 (以下、この商標権を「原告商標権1」という。)。
また、原告は、原告商標2に係る商標権につき、平成19年8月8日に、
指定商品の書換登録に係る申請を行い、平成20年2月6日、別紙商標権目
録記載2の「商品の区分」及び「指定商品」のとおり、登録を受けた(以下、
この商標権を「原告商標権2」といい、原告商標権1と併せて「原告各商標
20 権」という。)。
(以上につき、甲5ないし8、弁論の全趣旨)
被告らの関係
ア 被告アートレーシングは、ポルシェ356をオマージュした自動車「66
0speedster」(以下「本件車両」という。なお、単に「本件車両」という場
25 合には、被告ら各標章が付されていない状態のものを指す。)の製造業者で
あり、中古の軽自動車のシャーシをベースとして、新品のエンジンの設置や、
ブレーキ・アクセル及び排気筒等の全ての製造・調整を行った上で、本件車
両を製造する。
その後、被告アートレーシングは、本件車両の試乗等を行い、その安全性
を確認して車検を取得した上で、完成品として、被告BRICK YARD
5 に本件車両を納入する。
イ 被告BRICK YARDは、本件車両の総販売元であり、株式会社SK
M及び有限会社リスキービジネスを代理店として、本件車両を販売している。
ウ 被告らは、本件車両の製造・販売につき、共同して立案・計画を行った。
(以上につき、第4事件甲5、甲11、第3事件甲11、乙2、弁論の全趣
10 旨)
3 争点
被告各標章は、いずれも、原告各商標のレプリカであるところ、被告らも、原
告商標1と被告標章1が類似すること及び原告商標2と被告標章2が類似する
ことについては争っていない。
15 ⑴ 商標権侵害の有無(争点1)
⑵ 差止め等の必要性(争点2)
4 争点に対する当事者の主張
⑴ 争点1(商標権侵害の有無)
(原告の主張)
20 ア 被告らが販売していた本件車両は、公道を走行することができない車両な
どではなく、「軽自動車をベースに“日常使用にも使える”356をオマー
ジュした自動車」(甲3)とされている上に、被告BRICK YARDにお
いて車検整備、検査登録の代行をして納車をする登録車両であることからす
れば(甲4)、指定商品である「自動車」に当たる。
25 イ これに対し、被告らは、デモカーは公道を走ることはできない旨主張する
が、本件ウェブサイトや本件立て看板に掲載された被告各標章を付した車両
の画像は、いずれも、単に広告宣伝のために用いられているものにすぎない
から、デモカー自体が登録車両であるか否かは本件車両の機能や品質とは無
関係である。
また、被告BRICK YARDが運営するウェブサイトにおいては、デ
5 モカーを実際に走行させる動画が掲載されている以上(甲10) そもそも、

デモカーは公道を走ることができないという被告らの主張自体、信用性を欠
くものである。
(被告らの主張)
被告らは、令和3年、名車であるポルシェへのオマージュとして、ポルシェ
10 に似た「660speedster」(本件車両)を製造する計画を立て、令和4年、試
作品であるデモカーを製作したところ、その品質が高かったため、被告各標章
をデモカーに付した写真を撮影した上で、予約を取ることにした。
もっとも、デモカーはエンジンも調整されておらず、公道を走行することが
できないものであり、道路運送車両法所定の登録を受けていないため、同法に
15 いう「自動車」には当たらない。
したがって、被告らは、原告各商標権を侵害していない。
⑵ 争点2(差止め等の必要性)
(原告の主張)
被告らが本件車両の譲渡の申出をしたことは、証拠(甲4)上明らかである
20 ことからすれば、被告らは実際に譲渡も行ったものと推認される。そうすると、
被告各標章を付した本件車両を販売しなかったという被告らの主張には、信用
性がなく、差止めの必要性は否定されない。
(被告らの主張)
現在、被告らは、被告各標章を付した自動車を保有していない。また、被告
25 らが、これまでに、被告各標章を付した自動車及びその部品を譲渡した事実は
存在しない上、本件訴訟の係属後に被告各標章を付した自動車を譲渡のために
展示した事実も存在しない。
そのため、現時点において、被告らに対し、自動車又はその部品に被告各標
章を付すことや、被告各標章を付した自動車及びその部品を譲渡すること及び
譲渡のための展示を差し止める必要性は存在しない。また同様に、被告各標章
5 を付した自動車及びその部品の廃棄を求める必要性も存在しない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(商標権侵害の有無)について
⑴ 認定事実
前提事実、証拠(後掲証拠のほか、乙2)及び弁論の全趣旨によれば、次の
10 事実が認められる。
ア 原告各商標権
原告は、昭和62年11月20日、商品の区分を「第12類」、指定商
品を「自動車、その他本類に属する商品」として、原告各商標の商標登録
を受けた。
15 その後、原告は、原告商標1に係る商標権につき、平成19年12月2
1日に、指定商品の書換登録に係る申請を行い、平成20年7月2日、別
紙商標権目録記載1の「商品の区分」及び「指定商品」のとおり、登録を
受けた(原告商標権1)。
また、原告は、原告商標2に係る商標権につき、平成19年8月8日に、
20 指定商品の書換登録に係る申請を行い、平成20年2月6日、別紙商標権
目録記載2の「商品の区分」及び「指定商品」のとおり、登録を受けた(原
告商標権2)。
イ 被告らの関係
被告らは、共謀して、次に掲げる役割分担をした上、被告各標章を付した
25 本件車両を販売する計画を立て、少なくとも被告各標章を付した本件車両の
販売の申出をした。もっとも、被告らは、当初の上記計画の立案時点におい
ては、本件車両に被告各標章を付すことはやめようと話していたものの、実
行段階の途中でヒートアップして、本件車両に被告各標章を付すようになっ
た(弁論の全趣旨〔全事件同一内容の各答弁書参照〕)。
被告アートレーシングは、本件車両の製造業者であり、中古の軽自動車
5 のシャーシをベースとして、新品のエンジンの設置や、ブレーキ・アクセ
ル及び排気筒等の全ての製造・調整を行った上で、本件車両を製造する。
その後、被告アートレーシングは、本件車両の試乗等を行い、その安全
性を確認して車検を取得した上で、完成品として、被告BRICK YA
RDに本件車両を納入する。
10 被告BRICK YARDは、本件車両の総販売元であり、株式会社S
KM及び有限会社リスキービジネスを代理店として、本件車両を販売して
いる。
被告らは、本件車両の製造・販売につき、共同して立案・計画を行った。
(以上につき、第4事件甲5、甲11、第3事件甲11、乙2、弁論の全
15 趣旨)
ウ 被告BRICK YARDの行為
被告BRICK YARDは、令和3年12月23日、「PR TIME
S」という名称のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)に
おいて、本件車両が同日リリースされたことを発表する内容のプレスリリ
20 ースを行った。
被告BRICK YARDは、本件ウェブサイトにおいて、被告各標章
が付された本件車両の写真を掲載しているほか、本件車両の開発経緯とし
て、ポルシェ365は多くのレプリカが存在するものの、それらは、基本
的にはマニュアル車であり、エアコンがない上にキャブレター仕様のエン
25 ジンであり、日常使用には不向きであるため、「そんな中この356をも
っとイージーに、もっとカジュアルに、もっと洒落を利かしたものに出来
ないかと考え、今回軽自動車をベースに“日常使用にも使える”356を
オマージュした自動車を開発、製造、発売することとなりました。」と紹
介している。
被告BRICK YARDは、本件ウェブサイトにおいて、本件車両に
5 つき、価格が398万8000円であること、全長が3960mm、全幅
が1670mm、全高が1260mmであり、5ナンバーサイズとなり普
通車登録となることを紹介している。
(以上につき、甲3)
被告BRICK YARDは、令和4年2月19日、横浜パシフィコで
10 開催されたカーイベント(以下「本件カーイベント」という。 において、

本件車両を出品した。
本件カーイベントでは、被告各標章が付された本件車両の現物が展示さ
れていたほか、設置された立て看板(以下「本件立て看板」という。)に
は、①被告各標章が付された本件車両の写真や、 「フロントエンブレム」

15 及び「リアエンブレム」がいずれもオプション品であることが明記された
価格表が掲載されていた。
(以上につき、甲4、弁論の全趣旨)
被告BRICK YARDの代表者であるAは、顧客を装った調査会社
の担当者に対し、令和4年2月20日、「エンブレム装着後ご納車」と明
20 記された見積書を提示した。同見積書には、「諸費用内訳」として、検査
登録代行費用や車検整備費用等も計上されている。
(以上につき、甲4)
被告BRICK YARDは、少なくとも令和4年5月16日、運営す
るウェブサイトにおいて、被告各標章が付された本件車両が、公道で走行
25 する内容の動画を公開した(甲10)。
エ 被告アートレーシングの行為
被告アートレーシングは、遅くとも令和4年4月14日までに、自らが
運営するウェブサイトにおいて、被告各標章が付された本件車両の写真を
掲載するとともに、「ベース車両は国産モデル。356とほぼ同じ全長と
全幅に揃え、可能な限りオリジナルに忠実にデザインしました。エンジン
5 は水冷、電子制御の660ccターボ。」、「本製品はOEMで制作してい
る車両となります。オプションとして各パーツの細やかな調整やカラーリ
ング等可能です。また本製品は弊社でも取り扱いを行っています。 、
」 「車
両本体価格(税抜)¥3、988、000~」などと掲載した(第3事件甲11、
乙2、弁論の全趣旨)。
10 被告アートレーシングの代表者は、次のとおり、陳述している。
a ポルシェ自体の意匠登録はされていませんから、真似て作ることは禁
止されていないと思いますが、B氏のつくる車は、似ているようで、実
は、重ねれば、決して、同じではなく、ポルシェを超えているのです。
b 周囲から言われて、ちょっとした遊び心で、デモカーに、ポルシェの
15 エンブレムを付けてしまいましたが、B氏は、被告BRICK YAR
Dに対しては、業者にエンブレムが写らないように、撮影するようにと
頼んでいました。
c しかし、エンブレムがばっちり写っていました。被告アートレーシン
グのホームページにも、私が、その写真を載せてしまいました。ポルシ
20 ェの関係者には、大変申し訳なく思います。
オ 被告リスキービジネスの行為
被告リスキービジネスの代表者は、遅くとも令和4年4月13日までに、
自らの運営するウェブサイト(ブログ)において、被告各標章が付された本
件車両の写真を掲載するとともに、「ダイハツコペンベース、ポルシェ35
25 6スピードスター風コンプリート車両。1959/356Aより、型取りし
ておりますので、外見は完璧に356となってます。コペンの電動開閉ルー
フも、そのまま使用可能です。」、「ベーシックバージョン・398800
0~」、「電話でのお問い合わせでもOKです・・・(有)リスキービジネ
ス担当)C」と記載の上、連絡先の電話番号を掲載した。(第4事件甲5、
乙2、弁論の全趣旨)
5 商標権侵害の成否
上記認定事実によれば、被告らは、共謀して、被告各標章を付した本件車両
を販売する計画を立てた上、上記認定に係る各役割分担を実際に行って、本件
車両に被告各標章を付し、ウェブページ、ブログ等において、その写真や公道
を走る動画を紹介したほか、被告各標章が付された本件車両を販売するために
10 本件カーイベントに展示するなどして、本件車両を販売のために展示したこと
が認められる。
そうすると、被告らは、共謀して、少なくとも、本件車両に被告各標章を付
し又は譲渡のために本件車両を展示したものと認められる。
したがって、原告各商標と被告各標章の類似性に争いがないことを踏まえる
15 と、被告らは、原告各商標と類似する被告各商標を、指定商品である自動車に
使用したことが認められる。
以上によれば、被告らは、原告各商標権を侵害したものと認められる。
被告らの主張に対する判断
ア 被告らは、被告各商標を付した本件車両は、エンジンが調整されておらず、
20 公道を走行することができないデモカーであり、道路運送車両法所定の登録
も受けていない以上、原告各商標権の指定商品である「自動車」には当たら
ない旨主張する。
しかしながら、前記認定事実によれば、被告BRICK YARDの運営
するホームページにおいて、被告各標章が付された本件車両が実際に公道を
25 走行する映像が公開されていることが認められる。そうすると、被告らは、
公道を走行することができないデモカーに被告各商標を付したにとどまら
ず、公道を走行できる本件車両に被告各商標を付し又はこれの譲渡のために
展示したものと認めるのが相当である。したがって、被告らの主張は、上記
認定とは異なる前提に立つものであり、その前提を欠く。
以上によれば、被告らの主張は、採用することができない。
5 イ 仮に、被告らが、道路運送車両法所定の登録を受けていないため、公道を
走行することができない自動車が、原告各商標の指定商品に該当しない趣旨
を主張するものとしても、同法及び商標法の趣旨目的に鑑みると、理由がな
いことは、明らかである。
すなわち、道路運送車両法は、道路運送車両に関し、所有権についての公
10 証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに
整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に
資することにより、公共の福祉を増進することを目的とするものである(同
法1条参照)。
他方、商標法は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務
15 上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益
を保護することを目的とするものである(同法1条参照)。
上記のとおり、道路運送車両法と商標法は、その規律の対象となる保護法
益を異にするものであり、上記認定事実によれば、被告各標章を付した本件
車両は公道を走行できる機能を有することを踏まえると、本件車両が道路運
20 送車両法所定の登録を受けていないという一事をもって、指定商品に該当し
ないということはできない。
したがって、被告らの主張は、採用することができない。
2 争点2(差止め等の必要性)について
被告らは、これまで被告各標章を付した本件車両の販売実績がなく、現在被告
25 各標章を付した本件車両を保有していないなどとして、本件においては差止めの
必要性がない旨主張する。
しかしながら、前記認定事実によれば、仮に被告各標章を付した本件車両の販
売実績を証拠上認めることができないとしても、被告らは、ウェブページ等にお
いて、不特定多数の者に対し、本件車両がポルシェ356のレプリカであること
を大々的に宣伝広告した上で、本件車両に被告各標章を付しその販売の申出を行
5 っていたにもかかわらず、本件において、デモカーが「自動車」に該当せず商標
権侵害に当たらないなど不合理な弁解に終始している。そうすると、被告アート
レーシングの代表者らが、今更ながら商標権侵害という事の重大性に気づき、反
省の意を示している事情などを十分に斟酌しても、上記の事情を総合考慮すると、
直ちに差止め等の必要性がなくなったものと認めることはできない。
10 したがって、被告らの主張は、採用することができない。
第4 結論
よって、原告の請求はいずれも理由があるから、これを認容することとして、主
文のとおり判決する。
15 東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
20 中 島 基 至
裁判官
25 小 田 誉 太 郎
裁判官
古 賀 千 尋
(別紙)
商標権目録
1 登録番号 第2000179号
5 出願日 昭和57年8月7日
登録日 昭和62年11月20日
商標
商品の区分 第6類、9類、12類
指定商品 第12類 船舶並びにその部品及び附属品(「エアクッション艇」
10 を除く。)、エアクッション艇、航空機並びにその部品及び附属
品、鉄道車両並びにその部品及び附属品、自動車並びにその部品及
び附属品、二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品、乳
母車、人力車、そり、手押し車、荷車、馬車、リヤカー、タイヤ又
はチューブの修繕用ゴムはり付け片
2 登録番号 第2000180号
出願日 昭和57年8月7日
登録日 昭和62年11月20日
商標
5 商標の区分 第9類、12類、22類
指定商品 第12類 船舶並びにその部品及び附属品(「エアクッション艇」
を除く。)、エアクッション艇、航空機並びにその部品及び附属
品、自動車並びにその部品及び附属品、二輪自動車・自転車並びに
それらの部品及び附属品、乳母車、そり、荷車、リヤカー
(別紙)
被告ら標章目録


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