ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和5(ワ)70474 発信者情報開示請求事件
| 裁判所 | 認容 東京地方裁判所東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和5年12月11日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告株式会社CHERRIES 被告株式会社NTTドコモ |
| 法令 |
著作権 |
| キーワード | 侵害9回 損害賠償2回 分割2回 許諾1回 |
| 主文 | 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。15 |
| 事件の概要 |
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令和 5 年 12 月 11 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和 5 年(ワ)第 70474 号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 令和 5 年 10 月 23 日
判 決
原告 株式会社 CHERRIES
同訴訟代理人弁護士 杉山央
被告 株式会社 NTT ドコモ
同訴訟代理人弁護士 横山経通
同 桑原秀明
同 堺有光子
同 馬場嵩士
同 梛良拡
主 文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は、原告が、著作権を有する別紙著作物目録記載の著作物(以下「本件著作物」という。)に係るファイルが氏名不詳の発信者(以下「本件発信者」という。)によりファイル共有ネットワークである「ビットトレント」 以下( 「ビットトレント」という。)によりアップロードされ、本件著作物に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害されたことが明らかであるとして、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。 条)5
1 項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記した証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、枝番号の記載を省略したものは、枝番号を含む(以下同じ) )。
5 (1) 当事者原告は、アダルトビデオの制作等を行う株式会社である。被告は、インターネット接続サービスの提供を含む電気通信事業を営む株式会社であり、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(特定電気通信)の用に供される電気通信設備(特定電気通信設備)を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者(特定電気通信役務提供者。法 2 条 3 号)である。
(2) ビットトレントの仕組みビットトレントとは、いわゆる P2P 形式のファイル共有ネットワークである。ユーザーは、ビットトレントを使用しファイルをダウンロードするにあたっては、その使用端末にビットトレントに対応したクライアントソフトをインストールした上で、インデックスサイトと呼ばれるウェブサイトにアクセスするなどして、目的のファイルの所在等についての情報が記載されたトレントファイルを取得する。トレントファイルには、目的のファイル本体のデータは含まれず、分割されたファイル(ピース)全てのハッシュと共に、ピースを完全な状態のファイルに再構築するための情報や、トラッカーと呼ばれる管理サーバのアドレスが記録されている。トラッカーとは、ファイル提供者の IP アドレス等の情報を管理するサーバであり、シーダー(完全な状態のファイルを持つコンピュータ)やリーチャー(ファイルをダウンロード中のコンピュータ)を相互に接続し、データの流れを制御する管理サーバであり、ファイルの配布を実際に行う機能を有する。ユーザーは、トレントファイルを使用端末内のクライアントソフトで読み込むことによりトラッカーと通信を行い、目的のファイルを保有している他のユーザーのIP アドレスを取得し、それらのユーザーと接続した上で、当該ファイルのダウンロードを開始する。ユーザーは、分割されたファイル(ピース)を複数のピア(当該ネットワークに接続中のコンピュータ)から取得する。クライアントソフトは、トレントファイルに記録された各ピースのハッシュや再構築に必要なデータに基づき、
5 各ピースを完全な状態のファイルに復元する。また、ユーザーは、ダウンロードした当該ファイルについて、自動的にピアとしてトラッカーに登録される仕組みとなっており、自らがダウンロードしたファイル(ピース)に関しては、他のピアからの要求があれば提供しなければならず、ダウンロードと同時にアップロードが可能な状態に置かれる。リーチャーは、ファイルをダウンロード中のコンピュータであるが、完全な状態のファイルを保有してシーダーとなる前から、ダウンロードした分のアップロードを行う。シーダーとなったコンピュータは、ファイルのアップロードのみを行うこととなる。(以上につき、甲 4~6、9)
(3) 調査会社による調査原告は、本件訴訟提起に先立ち、調査会社(以下「本件調査会社」という。)に対し、ビットトレントにおいて、本件著作物に係るファイルの著作権侵害行為の調査を委託した。本件調査会社は、クライアントソフトである「μtorrent」(以下「本件クライアントソフト」という。)を使用して調査を行い、原告に対し、本件著作物に係るファイル(ピース)がアップロードされたこと、このアップロードの通信に別紙発信者情報目録の「IP アドレス」欄記載の IP アドレスが使用されていることなどの調査結果を報告した。同 IP アドレスは、被告のインターネット接続サービスで割り当てられたものであった。(以上につき、甲 1 の 2、1 の 4、3 の 2、3 の 4、4、5、9)。
(4) 本件発信者情報の保有被告は、本件発信者情報を保有している。
2 争点
(1) 本件著作物に係る原告の著作権の有無(争点 1)
(2) 権利侵害の明白性(争点 2)
3 争点に対する当事者の主張
(1) 争点 1(本件著作物に係る原告の著作権の有無)
5 〔原告の主張〕本件著作物のパッケージ等には、原告名が記載されており、また、第三者認証機関の審査番号として原告固有の番号も記載されている。このことから、原告は本件著作物の著作者と推定される。また、本件著作物は、原告の発意に基づき原告の業務に従事する者が職務上作成したものである。さらに、本件著作物は、映画の著作物に当たるところ、原告代表者が製作の全体を統括するほか、原告従業員らが、原告の発意に基づき、その監督、演出、撮影、美術等を担当して作成したものであり、かつ、全体的な製作に関する決定は原告代表者及び従業員により行われている。このため、本件著作物の著作者は、全て、本件著作物の製作に参加することを原告と約束した者で構成されているといえる。したがって、原告は、本件著作物の著作者であり、その著作権を有する。〔被告の主張〕本件著作物のパッケージに原告の正式名称は記載されていない上、本件著作物の製作行為を原告従業員がその職務上行ったことを示す客観的証拠はないことなどに照らせば、原告への本件著作物に係る著作権の帰属については疑義がある。
(2) 争点 2(権利侵害の明白性)〔原告の主張〕本件調査会社は、調査対象となる本件著作物をインデックスサイトで検索して、トレントファイルをダウンロードし、本件クライアントソフトを起動して、実際に本件著作物に係るファイルのダウンロードを行った。ダウンロードされた動画は、本件著作物と同一内容であった。また、本件クライアントソフトは、ビットトレントを使用しているピアの IP アドレス等の情報を表示する機能を有するところ、上記ダウンロードに対応するアップロードを行ったピアが接続した IP アドレスは、別紙発信者情報目録記載のとおりであった。さらに、同目録記載の日時は、コンピュータのタイムサーバーから定期的に取得した時刻を自動的に表示するアプリによ
5 って特定されたものであり、正確である。そうすると、本件発信者は、ビットトレントを用いて、本件著作物に係るファイルをダウンロードして公衆からの求めに応じて自動的にアップロード可能な状態に置くと共に、別紙発信者情報目録記載の日時に、本件調査会社に対して現にファイルを自動公衆送信したものといえる。したがって、原告の本件著作物に係る著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。〔被告の主張〕本件クライアントソフトによる別紙発信者情報目録記載の IP アドレス等の具体的な検知方法に関する客観的証拠は提出されておらず、本件調査会社による調査の方法は必ずしも明らかではない。また、同目録記載の日付等の正確性を担保する証拠も提出されていない。したがって、同目録記載の IP アドレスを同目録記載の日時に被告から割り当てられていた各契約者による原告の権利の侵害については疑義がある。
第3 当裁判所の判断
1 争点 1(本件著作物に係る原告の著作権の有無)前提事実のほか、証拠(甲 2 の 2、2 の 4、18)及び弁論の全趣旨によれば、原告はアダルトビデオの制作等を行う株式会社であること、本件著作物のパッケージには、「企画・制作・著作 チェリーズれぼ」との記載及び第三者認証機関である特定非営利活動法人知的財産振興協会の審査番号として「050001」との記載があること、同番号は同協会の会員である原告の固有番号であることがそれぞれ認められる。 また、「チェリーズれぼ」との記載は、「チェリーズ」の部分が原告の商号と共通する。これらの事情に鑑みると、本件著作物は、原告の発意に基づき、原告の代表者及び従業員によって、その職務上作成されたものであり、かつ、原告が自己の著作の名義の下に公表したものといえる。したがって、原告は、本件著作物の著作者であり、その著作権を有するものと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
5 2 争点 2(権利侵害の明白性)
(1) 前提事実、証拠(甲 1 の 2、1 の 4、3 の 2、3 の 4、4~6、7 の 2、7 の 4、
8 の 2、8 の 4、9、11、12、19)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。ア 本件クライアントソフトは、ビットトレントの開発会社により開発され、維持されており、ビットトレントのプロトコル定義で設定されたガイドラインを遵守し、これに準拠している。本件クライアントソフトは、ビットトレントを利用しやすくするために、トレントファイルを読み込み、ピースをダウンロードすると共に、ダウンロードに対応するアップロードをするピアの IP アドレス等の情報を表示する機能を有している。イ 本件調査会社は、調査対象となる本件著作物の品番を確認し、これをインデックスサイトの検索フォームに入力して検索し、本件著作物に係るトレントファイルをダウンロードした。その上で、本件クライアントソフトを起動して上記トレントファイルを読み込み、本件著作物に係るピースを有するピアからピースのダウンロードを開始した。その際、本件クライアントソフトには、ダウンロードに対応するアップロードを行ったピアの IP アドレスが表示された。その IP アドレス及びダウンロードの日時は、別紙発信者情報目録記載のとおりである。ダウンロードの日時は調査に使用されたコンピュータの時刻に依拠しているところ、同時刻はインターネットを通じて定期的にタイムサーバーと同期されていた。また、ダウンロード完了後に本件調査会社がダウンロードされた動画及び本件著作物の各内容を確認したところ、両者は同一であった。
(2) 検討ア 本件調査会社による調査及びこれに使用した本件クライアントソフトそれ自体の信頼性については、その点に疑義を抱くべき具体的な事情が見当たらないことなどに鑑みると、十分に信頼し得るものといってよい。そうすると、前提事実及び上記認定事実によれば、別紙発信者情報目録記載の IP
5 アドレスを割り当てられた本件発信者は、ビットトレントを通じ、本件著作物に係るファイル(ピース)のダウンロードを開始したことにより、ファイルが完全にダウンロードされる前にあっても、他のピアからの要求に応じてダウンロードした ファイル(ピース)をアップロードできる状態に置き、かつ、同目録記載の日時に、実際に本件調査会社の求めるところによりファイルをアップロードしたということができる。したがって、本件発信者は、本件著作物に係るファイルの全部又は一部を、公衆からの求めに応じ自動公衆送信し得るようにすると共に、現に自動公衆送信したものと認められる。イ また、弁論の全趣旨によれば、原告はこれを許諾していないものとみられると共に、その他の違法性阻却事由の存在もうかがわれない。ウ したがって、本件発信者の上記行為により本件著作物に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかといってよい。これに反する被告の主張は採用できない。
3 その他の要件について弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発信者に対し、本件著作物に係る著作権侵害を原因とする損害賠償請求等をする準備をしていると認められることから、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(法 5 条 1 項 2 号)があるといえる。
4 まとめ以上より、原告は、法 5 条 1 項に基づき、被告に対し、本件発信者情報の開示請求権を有する。
第4 結論
よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第 47 部裁判長裁判官杉 浦 正 樹裁判官小 口 五 大裁判官久 野 雄 平(別紙)発信者情報目録項番 2 及び 4 について、以下の各発信元 IP アドレスを、以下の各日時に割り当
5 てられた電気通信回線の同日時における契約者に関する情報であって、次に掲げるもの
(1) 氏名又は名称
(2) 住所
(3) 電話番号令和 5 年(2023 年)4 月 17 日日時
10 時 42 分 57 秒IP アドレス (省略)ポート番号 (省略)令和 5 年(2023 年)5 月 2 日日時
10 時 45 分 57 秒IP アドレス (省略)ポート番号 (省略)(別紙著作物目録省略)
| 特許裁判例 実用新案裁判例 |
| 意匠裁判例 商標裁判例 |
| 不正競争裁判例 著作権裁判例 |
| 特許判例 実用新案判例 |
| 意匠判例 商標判例 |
| 不正競争判例 著作権判例 |
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