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令和5(行ケ)10083審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和5年12月21日
事件種別 民事
当事者 原告神保電器株式会社
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法3条1項3号8回
キーワード 審決11回
拒絶査定不服審判1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 原告は、令和2年10月2日、別紙の構成からなる商標(以下「本願商標」 という。)について、第9類「電気スイッチ」ほかの商品を指定商品(令和 3年9月16日付け手続補正書により「電気スイッチ」のみに減縮)とする 商標登録出願をした(商願2020-122227)。 (2) 原告は、令和4年1月31日付けで拒絶査定を受けたため、同年4月28 日、拒絶査定不服審判を請求した。

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判決文

令和5年12月21日判決言渡

令和5年(行ケ)第10083号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和5年11月14日

判 決

原 告 神 保 電 器 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 山 田 威 一 郎

同訴訟代理人弁理士 松 井 宏 記

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 渡 邉 あ お い

同 鈴 木 雅 也

同 綾 郁 奈 子

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2022-6532号事件について令和5年6月9日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)

(1) 原告は、令和2年10月2日、別紙の構成からなる商標(以下「本願商標」という。)について、第9類「電気スイッチ」ほかの商品を指定商品(令和3年9月16日付け手続補正書により「電気スイッチ」のみに減縮)とする商標登録出願をした(商願2020-122227)。

(2) 原告は、令和4年1月31日付けで拒絶査定を受けたため、同年4月28日、拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は、上記請求を不服2022-6532号事件として審理を行い、令和5年6月9日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(本件審決)をし、その謄本は同月27日原告に送達された。

(3) 原告は、令和5年7月26日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。本件審決の理由の要旨本件審決の理由の要旨は、以下のとおりである。

(1) 本願商標をその指定商品「電気スイッチ」に使用したときには、取引者、需要者は、本願商標が、その商品の形状の一類型を平面図で立体的に表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認識するというのが相当である。

(2) したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当する。取消事由商標法3条1項3号該当性の判断の誤り

第3 当事者の主張

(原告の主張)

(1) 本件審決の認定(前記第2の2(1))は、本願商標が電気スイッチの形状と

して立体的に使用されることを前提にしたものであるが、本願商標があくまで図形商標(平面商標)であり、ロゴマーク等として使用され得る商標であることを看過したものである。原告は、自らのウェブサイトにおいて、原告の製造、販売する電気スイッチの商品ごとのアイコンとして、図形商標を使用しているが(甲15)、本願商標もこれと同様の使用態様で使用することを意図して採択されたものである。自己の商品の出所を示すアイコンやロゴマークとして、スイッチ自体の形状からなる図形を用いることは、電気スイッチの業界において一般的ではなく、そのような使用態様自体が原告に特有のものである。商標審査基準では、立体的形状が、商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は、特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断するとしているが、これは、機能をより効果的に発揮させたり、美感をより優れたものとしたりするなどの目的で採用される商品の「形態」に関し、立体商標としての半永続的な保護を与えることは適切ではないとの価値判断によるものであり、立体商標の出願を対象にしたものである。ロゴマーク等として使用されることが想定され得る図形商標(平面商標)に関し、立体商標と同様の厳格な基準を適用することは妥当ではない。商品の形状のみからなる図形商標が、当該商品を指定商品に含めて商標登録されている事例は、多々存在する(甲1、2)。

(2) 本件審決は、本願商標が、「電気スイッチ」の用途、機能から予想し得る

形状の一類型を平面図で立体的に表したものであり、「電気スイッチ」において採用し得る機能又は美感の範囲の形状の域を超えて、何らかの特徴的な意味を持つ出所識別機能を発揮する図形として認識されるというのは困難であるとしている。埋込スイッチのメーカーは、JIS C 8304及びJWDS 0032により外形に強い制約のある中で、埋込スイッチの造形設計を行なっているが、原告の電気スイッチは、操作ハンドルが大きく横幅が広く取られた電気スイッチが主流となる中で幅広な操作スイッチを持たず、また、表示灯を操作スイッチの右端において上端から下端まで一直線に設けるという独自の構成を有している。そのため、原告の電気スイッチは、数々の受賞歴を有し(甲4。枝番を含む。以下同じ)、こだわりのあるユーザに高い評価を得ている(甲5、19)。このように、本願商標の元になる電気スイッチの三次元デザインは、他の電気スイッチのデザインとは一線を画すものであって、他の電気スイッチと同様のデザインとして一括りに需要者に受け取られていないことから、本願商標は、出所識別機能を有するものといえる。

(3) したがって、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の

判断は誤りである。

(被告の主張)

後記第4の1と同趣旨である。

第4 当裁判所の判断

取消事由(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について

(1) 商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。・・・)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定しているが、これは、同号掲記の標章は、商品の産地、販売地、形状その他の特性を表示、記述する標章であって、取引に際し必要な表示として誰もがその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合、自他商品・役務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことから、登録を許さないとしたものである。そして、商品の形状は、本来、商品の機能をより効果的に発揮させたり、美観を向上させるために選択されるものであるから、商品の形状からなる商標は、その形状が、需要者において、その機能又は美観上の理由から選択されると予測し得る範囲を超えたものである等の特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出るものでなく、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法3条1項3号に該当するものと解される。

(2) 本願商標は、白色の長方形を縦長に描き、その内側の中央に、辺の長さが外側長方形部分の約半分程度の、影様の黒色の線で縁取りされた白色の縦長の長方形を配し、内側長方形部分の右側長辺に影様の薄い灰色の直線を配し、その左に上端から下端までの長さよりやや短く、縦に緑色の直線を描いてなるものである。そして、本願商標同様の形状を有する原告製造に係る「電気スイッチ」に係るカタログ(甲3の1)には、「シンプルで、明瞭な要素で構成されること。ミニマルで、偏りのない美しさを持つこと。ひとつの空間を超えて、建築が持つ思想へと向かう存在になること。」との記載があり、JIS大角連用形スイッチとの取付互換性の確保も強調されている。一方、メーカー、施工会社、ユーザ等のウェブサイト(乙1~8、10~13)によれば、本願商標の指定商品である「電気スイッチ」を取り扱う業界において、外側の縦長の略長方形の内側に、表示灯を施した縦長の長方形の押しスイッチを配した構成の電気スイッチは、広く使用されていること、表示灯の形状、位置、点灯した際の色彩は様々なものが採用されていることが認められる。そして、これらの電気スイッチの形状は、「もっと美しく、使いやすく。/これからのくらしのスタンダード」(乙2)、「インテリアと響きあう/住まいに必要なものだから“美しさ”にこだわりたい。みんなが使うものだから“使いやすさ”を求めたい。」(乙6)といった謳い文句からも理解されるとおり、商品の機能や美観を発揮させるために選択されているものと解される。上記のような実情に鑑みると、本願商標の形状は、指定商品である「電気スイッチ」の用途、機能、美観から予測できないようなものということはできず、需要者は、本願商標から、「電気スイッチ」において採用し得る機能又は美感の範囲内のものであると感得し、「電気スイッチ」の形状そのものを認識するにすぎないというべきである。原告は、前記第3の1(1)のとおり、アイコン等としての使用が予定される図形商標(平面商標)について、立体商標と同様の厳格な基準を適用するべきではない旨主張するが、前記(1)に説示したところは立体商標か図形商標かによって左右されるものではなく、採用できない。なお、本願商標が指定商品の形状を表すのでなく、アイコン等としてのみ使用されるものと認識されると認めるに足りる証拠もない。また、原告は、前記第3の1(1)のとおり、商品の形状のみからなる図形商標が、当該商品を指定商品に含めて商標登録されている事例は、多々存在する旨主張するが、登録出願に係る商標が商標法3条1項3号に該当するものであるか否かの判断は、個別具体的にされるべきものである上、原告引用に係る事例は、ゲームコントローラやタブレット端末であって(甲1、2)、需要者層や商品形状の有する意味合いに関し本願商標と大きく異なる点があると考えられるものであり、採用できない。さらに、原告は、前記第3の1(2)のとおり、原告の電気スイッチは、幅広な操作スイッチを持たず、表示灯を操作スイッチの右端において上端から下端まで一直線に設けるという独自の構成を有し、数々の受賞歴を有し、こだわりのあるユーザに高い評価を得ている旨主張するが、視覚を通じて美観を起こさせる物品の形状等の創作を奨励、保護する意匠法による保護の対象とすべき根拠とはなっても、自他商品の識別標識としての商標を対象とする商標法の保護とは次元が異なる問題である。

(3) 以上のとおりであって、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。結論以上によれば、本願商標は商標法3条1項3号に該当するから、原告主張の取消事由は理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

宮 坂 昌 利

裁判官

本 吉 弘 行

裁判官

岩 井 直 幸

(別紙)

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