ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(行ケ)10004 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和6年5月28日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告梅乃宿酒造株式会社 被告特許庁長官 |
| 法令 |
商標権 商標法3条1項3号13回 商標法4条1項16号10回 商標法3条2項5回 商標法4条1項1回 商標法3条1回 |
| キーワード | 審決27回 実施5回 拒絶査定不服審判1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。15 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和3年9月17日、以下の構成からなり、指定商品を第33類 「清酒、日本酒、焼酎、合成清酒、白酒、直し、みりん、洋酒、果実酒、酎25 ハイ、リキュール、カクテル、中国酒、薬味酒」とする商標(以下「本願商 標」という。)について、商標登録出願をした(商願2021-116466 号、甲34)。 (本願商標の構成) あらごしみかん(標準文字) ⑵ 原告は、令和4年3月7日付けの拒絶理由通知書(甲35)を受け、同年5 7月22日、意見書(甲36)を提出したが、同年10月20日付け拒絶査 定(甲37)を受けたことから、令和5年1月24日、拒絶査定不服審判を 請求した(不服2023-1225号、甲38)。 ⑶ 原告は、令和5年9月19日付け上申書(甲40)、同年10月5日付け上 申書(甲41)、同月12日付け手続補足書(甲42)をそれぞれ提出したが、10 特許庁は、同年11月28日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする |
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令和6年5月28日判決言渡
令和6年(行ケ)第10004号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和6年4月23日
判 決
原 告 梅 乃 宿 酒 造 株 式 会 社
同訴訟代理人弁理士 田 中 尚 文
被 告 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 白 鳥 幹 周
同 豊 瀬 京 太 郎
同 真 鍋 伸 行
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 特許庁が不服2023-1225号事件について令和5年11月28日にした審決を取り消す。2 訴訟費用は、被告の負担とする。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は、令和3年9月17日、以下の構成からなり、指定商品を第33類「清酒、日本酒、焼酎、合成清酒、白酒、直し、みりん、洋酒、果実酒、酎ハイ、リキュール、カクテル、中国酒、薬味酒」とする商標(以下「本願商標」という。)について、商標登録出願をした(商願2021-116466号、甲34)。(本願商標の構成)あらごしみかん(標準文字)
⑵ 原告は、令和4年3月7日付けの拒絶理由通知書(甲35)を受け、同年7月22日、意見書(甲36)を提出したが、同年10月20日付け拒絶査定(甲37)を受けたことから、令和5年1月24日、拒絶査定不服審判を請求した(不服2023-1225号、甲38)。
⑶ 原告は、令和5年9月19日付け上申書(甲40)、同年10月5日付け上申書(甲41) 同月12日付け手続補足書、 (甲42)をそれぞれ提出したが、特許庁は、同年11月28日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年12月18日に原告に送達された。
⑷ 原告は、令和6年1月17日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)のとおりであり、要するに、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者は、「粗くこしたみかん」ほどの意味合いを容易に看取し、それが「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」という、商品の品質を表示したものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきであるから、本願商標は、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当であり、また、本願商標を、その指定商品中、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標というべきであるとし、本願商標は、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当するとした。なお、審理終結通知後に原告から提出された上申書及び証拠についても、本願商標が商標法3条1項3号に該当しないものであるということはできず、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているということもできないとし、審理再開の必要は認められないとした。3 原告の主張する取消事由
⑴ 取消事由1本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り
⑵ 取消事由2使用による本願商標の商標法3条2項該当性
⑶ 取消事由3本願商標が商標法4条1項16号に該当するとした判断の誤り
第3 当事者の主張
1 取消事由1(本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り)
について〔
(原告の主張)
〕
⑴ 本件審決は、本願商標の指定商品を取扱う分野においては、
「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字が広く使用されている実情が認められるとしたが、その証拠とされた甲17ないし30、32及び33では、例えば、「あらごしの梅ペースト」(甲17(梅酒)、)「漬け込んだ梅をそのまま丁寧にあらごししたピューレ」(甲18(梅酒)、)「完熟した梅をあらごししたピューレ」(甲26(梅酒)、)「発酵途中の醪をあらごしして」(甲30(日本酒)、)「醪(もろみ)を贅沢にあらごしして」(甲32(日本酒))とされているように、「あらごし」の文字が、「原材料たる醪や梅が粗くこされたものであること(粗くこした醪や梅を使用した商品であること) 程」度を表現するための語として使用されている実情が確認できる。また、「独自のこだわりの製造方法による粗濾過仕上げの梅酒」(甲19(梅酒)、)「目の粗い布で濾したたっぷりの醪」(甲22(日本酒)、) 『酒もろみ』「を荒く濾しただけの」(甲29(日本酒)、)「もろみを粗くこしてにごりを出し」(甲33(日本酒))といった表現からは、日本酒の製造過程では、その原材料となる醪をこす(濾す)ことが日常的に行われ、更に、梅酒の製造過程でも、原材料たる梅をこすこともあるといった事実が窺える。しかし、これらの情報の大半は、日本酒と梅酒に係るものであって、日本酒や梅酒は本願商標の指定商品の内の、非常に限られた商品にすぎず、醪や梅を原材料としない商品が多数を占める本願商標の指定商品を取り扱う分野で、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字が広く使用されている実情が認められるとするのは、限られた商品の分野での「あらごし」の文字の使用のみに着目し、拡大的に本願商標の指定商品を取り扱う分野全般での使用に該当するとしたもので、妥当性を欠くものである。次に、本件審決は、審判段階で提示された情報の中には、「粗くこしたみかんを使用した商品」について「あらごしみかん」と称している事例も見受けられるとした。ここで、「あらごしみかん」と称しているのは、甲20、21、24及び25であるところ、同書証では、「粗くこした」「粗くこす」又はこれらに類す、る表現のみならず、「粗く」「粗い」や「こした」「こす」「濾過」等の表現、 、 、も使用されておらず、それらの商品が、粗くこしたみかんを使用したものであるかを同書証からは知る術はない。したがって、同書証は、本願商標の指定商品の分野で、「粗くこしたみかんを使用した商品」について「あらごしみかん」と称している事例の存在を裏付けるものとはなり得ない。そもそも、「こす(濾す・漉す)」とは、「滓(かす)などを取りわけるため細かい目を通す。濾過する。」を本来的に意味するところ(広辞苑第7版、甲43)、日本酒については、その製造過程で発生する醪を絞ってこすことが通常行われていることから、醪を粗くこすことも一つの特徴的な製法となりえ、その粗密の程度により食感や風味等の品質の差異が生じ得る余地がある。他方、みかんの粒をこした場合、その粗さの強弱にかかわらず、いずれも潰れてしまい、味や食感の差別化も図れないことから、「みかんを原材料とする酒類」の製造過程では、一般に「みかん」の粒はこさないものといえ、このことは、前記の日本酒や梅酒に関する情報では、「こす」等の語が使用されているのに対し、「みかんを原材料とする酒類」の情報を内容とする甲20、21、24及び25では、「こす」や「こした」の語が使用されていないことからも窺い知れるものである。なお、本願商標の指定商品の分野とは異なるが、みかんを原材料とする飲料である点で甲20、21、24及び25と共通する、みかんジュースの分野での製法について触れると、みかんジュースの主な製法は、「インライン方式」「圧搾方式」「チョッパーパルパー方式」に大別され、このようなみか、 、んジュースの製法は、本願商標の指定商品の分野でのみかんを原材料とする商品にも少なからず転用可能と考えられるところ、甲20、21、24及び25では、「つぶつぶの食感」という表現がされており、このような食感は、みかんの粒をこした場合には実現不可能といえるものである。そして、上記の製法のうち、こす又は搾ることが行われているのは、圧搾方式(甲45及び46) 「チョッパーパルパー方式」及び (甲47)であるが、圧搾方式は、みかんの粒そのものを搾るものではなく、また、「チョッパーパルパー方式」(甲47)は、みかんを裏ごしするものであることから、みかんを薄皮がついた状態で裏ごしした場合、一つ一つの粒も原形をとどめないこととなり、いずれの製法も甲20、21、24及び25にある「つぶつぶの食感」にはなり得ないものである。他方、みかんジュースの製法が、本願商標の指定商品の分野におけるみかんを原材料とする商品の製法にも転用されていると仮定すると、「つぶつぶの食感」を実現できるのは、「果汁と小さな果実のつぶ」を残すことも技術的に可能な「インライン方式」と考えられるものの、同方式では、外皮ごと粉砕処理を行ったのち、遠心分離することで固形分を除去するため、みかんをこすという工程が入る余地はないこととなる(甲44)。甲21、24及び25の商品の製法は、上記のいずれにも該当しないか、あるいは、いずれかを一部転用している可能性を否定できないものか、いずれにしても、甲20、21、24及び25にある商品は「つぶつぶの食感」をうたっているにもかかわらず、みかんの粒をこした場合、その触感を実現することは困難である。したがって、甲20、21、24及び25の商品にある「あらごしみかん」の文字は、「粗くこしたみかんを使用した商品」を称するために用いられているものでないことは商品の内容から容易に理解でき、ゆえに、これらの書証をもって、本願商標の指定商品を取り扱う分野で「粗くこしたみかんを使用した商品」について「あらごしみかん」と称している事例が見受けられるとするのは失当である。以上より、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字が広く使用されている実情は認められず、また、「粗くこしたみかんを使用した商品」であることを強調するために「あらごしみかん」と称している事例も見受けられないことから、本願商標をその指定商品に使用したとしても、これに接する需要者、取引者をして、粗くこしたみかん」「 ほどの意味合いが容易に看取されることはなく、また、その商品が「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品) であるといった、」 商品の品質を表示したものと認識されることもないと考えられるものである。したがって、本願商標は、指定商品との関係で、自他商品の識別標識として認識されるものであるから、本件審決が本願商標は商標法3条1項3号に該当するとした判断は誤りである。
⑵ 上記のとおり、特にみかんを原材料とする商品との関係では、みかんを粗
くこした製法によっては到底実現できない特徴を有する商品について「あらごし」の語が使用されていること(甲20、21、24、25)に鑑みると、本願商標の指定商品を取り扱う分野、特にその中でも、みかんを原材料とする商品との関係において、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字が広く使用されている実情が認められるとはいえない。むしろ、本願商標は「あらごしみかん」と同書・同大・等間隔を以って極めてまとまりよく横一連に表わされており、その構成上、「あらごし」の語と「みかん」の語とを容易に分離して看取できるような態様をもって構成されていないこと、及び本願商標の全体より自然に生ずる「アラゴシミカン」なる称呼は、語呂が良く一気一連に淀みなく発音されることからすると、簡易迅速を旨とする商取引においては、本願商標より「あらごし」の語と「みかん」の語とが分離独立して把握され、本願商標がこれらの語を結合してなると容易に理解されるとは考え難い。したがって、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、「あらごし」の語が「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として広く使用されている実情があるという前提のもと、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する需要者、取引者は、それが「あらごし」の語と「みかん」の語を結合してなるものと容易に理解するといえるとした本件審決の認定は妥当なものではない。そして、本願商標は、特定の観念を生じさせることのないいわゆる造語として認識されるものであることから、本願商標の指定商品との関係でも、自他商品識別機能を十分に発揮する。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するものではない。
⑶ 被告は、広く「みかん」を原材料とする飲料を取り扱う分野において、
「あらごしみかん」の文字が使用されている事例もあるとして、乙13及び21を挙げるが、乙13は「ジューシーなみかん」といった、こすこととの関連性のない記述しかされておらず、乙21は本件審決の時点から2年以上前の僅か一回きりの使用である上、「あらい目でこす」といった意味内容で「あらごし」の文字が用いられていることも認められず、
(被告の主張)
を裏付けることにはならない。〔
(被告の主張)
〕
⑴ 本願商標は、
「あらごしみかん」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成中、「あらごし(粗漉し)」の文字は「①目のあらい水嚢、
②あらい目でこすこと。また、そのこしたもの。(広辞苑第7版、甲15)
」などを意味する語であって、また、「みかん」の文字は我が国において広く親しまれた果実を指称する語であることが明らかである。そして、これらはいずれも我が国において親しまれた平易な語であり、本願商標は「あらごし」の文字と「みかん」の文字を組み合わせてなるものと容易に看取されるものであるから、本願商標全体として「あらい目でこしたみかん(みかんをあらい目でこしたもの)」ほどの意味を容易に理解させるものである。
⑵ 本願商標の指定商品は、ビールを除くアルコール飲料全般であるところ、
その指定商品の分野における「あらごし」「粗ごし」「粗濾し」「粗漉し」( 、 、 、「粗越し」)の文字の使用事例(乙1~10)や、原告提出の証拠(甲16~30、32、33)にもあるとおり、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字や「あらごし」の同義語と考えられる「粗濾し」、「粗ごし」等の文字が広く使用されている実情があり、その中には「粗くこしたみかん」を原材料とする商品を含め、原材料である果実(レモン、梅、桃など)をあらくこして、果実の繊維や果肉などを残した商品の事例も存在する(甲16~19、21、26、乙1~10)。また、本願商標の指定商品中「日本酒」に含まれる商品「にごり酒」については、原材料であるもろみを「あらごしして(粗くこして)」製造するものであること(甲22、29、30、32、33、乙11、12)からも、「あらごし」の語が、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、広く親しまれているものであるといえる。そして、本願商標の指定商品の分野における「みかん」を原材料とする商品の事例(乙13~20)があるほか、原告提出の証拠(甲72~76)にもあるとおり、「みかん」を原材料とする商品が広く製造、販売等されている実情がある。
⑶ 以上のとおり、本願商標は、「あらごしみかん」を標準文字で表してなる
ところ、上記のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字や「粗濾し」の文字などが広く使用されている実情、及び「みかん」を原材料とする商品が広く製造、販売等されている実情があることからすれば、本願商標は、「あらごし」の文字と「みかん」の文字とを結合してなるものと、容易に看取し得るものであって、これをその指定商品に使用するときは、それに接する需要者、取引者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」ほどの意味合いが容易に理解、認識されるといえるものである。そうすると、本願商標は、その指定商品に係る需要者及び取引者をして、単にそれが「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であること、すなわち、商品の品質を表してなるものと理解、認識されるにすぎないといえる。してみれば、本願商標は、その指定商品との関係で、商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品に使用された場合に、当該商標の需要者、取引者によって、将来を含め、商品の品質を表示したものと一般に認識されるというべきであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品の識別力を欠くというべきものである。したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当する。
⑷
(原告の主張)
に対する反論以下のとおり、
(原告の主張)
は、いずれも失当である。ア 原告は、本件審決が限られた商品の分野での「あらごし」の文字の使用のみに着目し、これを拡大的に本願商標の指定商品を取り扱う分野全般での使用に該当するとしたもので、妥当性を欠く旨を主張する。しかし、日本酒や梅酒のみならず、「みかん」(乙1)、「桃」(乙6、 、7)「梨(洋梨)(乙8、9)「キウイ」」 、 (乙10)といった「果実を原材料に使用してなる酒類」に関しても、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること) を表現するための語」として、「あらごし」の文字や「粗濾し」「粗ごし」の文字が広く使用され、ている実情があることからすれば、本願商標は、「あらごし」の文字と「みかん」の文字とを結合してなるものと容易に看取し得るものであって、これをその指定商品に使用するときは、それに接する需要者、取引者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」ほどの意味合いが容易に理解、認識されるといえる。さらに、本願商標の指定商品に係る需要者、取引者によって、将来を含め、本願商標が「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」といった商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りるものであるから、全てのアルコール飲料の使用例がないことをもって、商標法3条1項3号の該当性を否定するものとはならない。イ 原告は、「あらごしみかん」と称しているのは甲20、21、24及び25であるが、それらの商品が、粗くこしたみかんを使用したものであるかを同書証から知るすべはない旨を主張する。しかし、上記の書証における商品については、商品名が「あらごしみかん」であるから、当該文字から「粗くこしたみかん」を理解させるものである。そして、「あらごしみかん」について「粗くこした」などに類する説明がされていないとしても、みかんを含む「果実を原材料に使用してなる酒類」において、「あらごしつぶつぶ食感」(乙1)「果実を潰してあらご、し」(乙2)「粗ごし果肉と梨果汁」、 (乙8)などのように、あらくこして果肉を残したもの等を「あらごし」「粗ごし」の文字を使用して表現して、おり、さらに、「あらごしみかんジュース」について「まるごと搾って(あらごし)いるため、果実の食感・・・が味わえます。(乙21)と表現さ」れている事例もあることからすれば、本願商標に接する需要者、取引者は、それが「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であること、すなわち、商品の品質を表してなるものと理解するにとどまるというべきである。ウ 原告は、本願商標より「あらごし」の語と「みかん」の語とが分離独立して把握され、本願商標がこれらの語を結合してなると容易に理解されるとは考え難い旨を主張する。しかし、商標法3条1項3号該当性については、一連一体の語句を構成する各語の意味に加え、取引の実情に照らし、取引者又は需要者によって、当該一連一体の語句が、商品の品質、効能、用途等の特徴を示すものと一般に認識されるものであるかどうかを検討する必要がある(知財高裁令和5年(行ケ)第10030号同年9月7日判決)と解されるから、本願商標「あらごしみかん」が一連一体の語句であったとしても、「あらごし」と「みかん」の意味及び上記取引の実情に照らせば、本願商標は、需要者に「粗くこしたみかん」を使用した商品という、商品の品質を示すものとして、一般に認識されるものというべきである。
2 取消事由2(使用による本願商標の商標法3条2項該当性)について
〔
(原告の主張)
〕
⑴ 本件審決は、「本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係
る商品であることを認識することができるに至っているということもできない。」としたが、その判断は誤りである。原告は、明治26年(1893年)に創業した吉田熊太郎商店の流れを汲み、昭和25年(1950年)に設立された酒造会社であって、その主な事業内容は、日本酒・リキュール等の各種酒類の製造・販売並びに商品開発であり(甲1、 、2) 日本酒やリキュールを中心とする取扱い製品は、卸売業者、酒販店、飲食店、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、オンラインショップ等を介して広く提供されている。原告は、 あらごしシリーズ」「 の商品群を展開しており、まず平成19年(2007年)に「あらごし梅酒」を本格発売したところ、好評を博し、年間売上5億円近くのヒット商品に成長を遂げたことから(甲5)、続けて、「あらごしもも」(平成20年(2008年)、)「あらごしみかん」(平成21年(2009年)、)「あらごしりんご」(平成24年(2012年)、)「あらごしれもん」(平成29年(2017年)、)「あらごしジンジャー」及び「あらごしクールゆず」(2021年)「あらごしみっく酒」及び「あらごしパイン」、 (令和4年(2022年))が順次市場に投入され、これらで同商品群が形成されており、各種メディアでも度々取り上げられる(甲2、6、7の1~5、49~60)と共に、平成28年(2016年)には特許庁発行の知的財産権企業事例集にも掲載された(甲61)。原告の事業においても主力製品の一つとなった「あらごしシリーズ」の商品は、その品質も高く評価されており、例えば、本願商標「あらごしみかん」を付した商品を見ても、以下のような多くの受賞経験がある(甲2、10、14の1、62、63、83~87)。
①「平成23年(2011年) 第5回天満天神梅酒大会 リキュール部
門 入賞
② 平成24年(2012年) 第6回天満天神梅酒大会 リキュール部
門 第3位受賞
③ 平成28年(2016年) 梅酒全国制覇利き酒大会 リキュール部
門 第1位受賞
④ 令和3年(2021年) モンドセレクション 金賞受賞
⑤ 令和3年(2021年) ベストお取り寄せ大賞2021 ビール・
日本酒・お酒部門 金賞受賞
⑥ 令和4年(2022年) ベストお取り寄せ大賞2022 ビール・
日本酒・お酒部門 金賞受賞
⑦ 令和5年(2023年) ベストお取り寄せ大賞2023 ビール・
日本酒・お酒部門 金賞受賞このようにバラエティーに富んだ風味で、かつ、高品質の各種リキュールが、一事業者によって一つの商品群として提供されることは、酒類の卸売・小売事業者や飲食店の経営者からしても、均一的に品質が保証された商品群の中で最終需要者の嗜好に合わせた幅広い選択肢を提供できるといったメリットがあり、一事業者から一括して仕入れられるという利便性もあいまって、多くの事業者・経営者が「あらごしシリーズ」の商品群に着目し、同商品群に属する各商品を必然的に取り扱うこととなった結果、少なくとも、飲食店等の取引先を有する酒類の卸売(小売)事業者又は酒類の提供を含む飲食事業者の間で、原告の業務に係る「あらごしシリーズ」の商品群が認知されるに至っている(甲8)。そして、「あらごしシリーズ」に属し、平成21年(2009年)に発売された、みずみずしいみかんの味と、つぶの弾ける食感を特長とするリキュールが、本願商標である「あらごしみかん」が使用されたリキュールであり、同商品は、同年以降、14年以上にわたって提供され続けている(甲2~4)。「あらごしみかん」は、販売開始(遅くとも平成22年(2010年))から平成26年(2014年)までの出荷が右肩上がりで、同年から令和元年(2019年)6月までは毎年22万本以上の出荷で堅調に推移し、令和元年度(2019年度)以降は、新型コロナウィルスの感染拡大により多大な影響を受けてやや鈍ったものの、平成27年度(2015年度)には累計出荷数が100万本に達し、また、令和2年度(2020年度)には200万本を突破するに至っている。上記期間内の「あらごしみかん」の売上額は約21億6千万円以上を記録し、各瓶容器の出荷本数と容量の累計は326万7,099L(リットル)もの商品が取引に資されたことになるが、通常、リキュールは飲食店にてグラス1杯60ml程度で提供されることから、これをベースとすると約5,445万杯が提供された計算になる。したがって、「あらごしみかん」のリキュールは、原告の主力商品の一つである「あらごしシリーズ」の商品群でも中核をなす商品として位置付けられていることが推認できるところ、明治26年(1893年)の吉田熊太郎商店の創業以来、各種酒類の製造販売を営んできた原告の名声にあやかり、「あらごしみかん」は業界内や需要者の間でも注目を浴び、新聞雑誌を始めとする多くのメディア媒体でも度々取り上げられており、その一例が甲14の1ないし10、甲64ないし71となる。これらの書証では、「あらごしみかん」は、あくまでも原告の業務に係る商品を表示するものとして用いられており、このことから、メディア媒体を通じても、「あらごしみかん」について、原告の業務に係る商品、特に、みかんを原材料とするお酒(リキュール)を表示する商標であるとの認知が図られていることが理解できるところである。
⑵ 甲13は、20歳から50歳までの女性360名を対象とした「みかんの
お酒」に関する認知度アンケートの結果(以下「本件アンケート調査」という場合がある。)であるところ、同アンケートは、専門の調査会社によって実施され、客観性が担保されており、調査の手法も適切である。同アンケートの実施に際しては、まず、原告の「あらごしみかん」と同業他社が製造販売するみかんを原材料とする4種類のお酒のいずれかを知っているかを問うことにより、みかんのお酒の購入や消費に際して、商品名に関心を寄せている者を抽出したところ、延べ141名となり、複数回答がなされた重複分を除くと実数としては78名がこれらのお酒のいずれかを知っていると回答した。そして、「あらごしみかん」を商品名として認識している35名中14名(40%)が、当該商品は原告の業務に係るものとの回答しており、このような最終需要者を対象としたアンケート結果からも、本願商標「あらごしみかん」が、原告の業務に係る商品(リキュール)を表示するものとして広く認識されているといった事実が裏付けられるものである。
⑶ 以上より、現在に至るまで130年もの長きにわたって、たゆまぬ努力の
もとに高品質の商品を提供し続け、わが国有数の酒造会社の一つに成長した原告の事業の中核をなす商品といい得る「あらごしみかん」は、需要者への認知度の高さ等からも、リキュールの分野における有名商品の一つであることも疑いようのない事実であり、故に、本願商標は、その指定商品中の特に「みかんを原材料とするお酒(リキュール)」との関係では、単に商品の品質等を表示するにすぎないものとして認識されるというよりも、むしろ、原告の業務に係る商品を表示するものとして、需要者、取引者に広く認識されていると考えられるべきものである。そうすると、仮に本願商標が商標法3条1項3号に該当するとしても、本願商標は、使用をされた結果、需要者が原告の業務に係る商品「みかんを原材料とするお酒(リキュール)」を認識することができるに至っており、同法3条2項の適用により登録を認められて然るべきであることから、本件審決の判断は誤りであり、取り消されるべきである。
⑷
(被告の主張)
に対する反論ア 原告が受けた賞について、証拠(甲83ないし87)にもあるとおり、「天満天神梅酒大会」及び「梅酒全国制覇利き酒大会」におけるリキュール部門にはいずれも約160の銘柄が出品されており、リキュールの取引者や愛好者から高い注目を浴びていたことは容易に理解でき、また、「ベストお取り寄せ大賞」は日本最大級のお取り寄せ情報サイトの企画するものであって、その歴史も古いことから、リキュールの需要者のみならず、広く一般の需要者の注目を集めるものといえ、これらにおける入賞や受賞は、需要者、取引者への原告の商品(以下、本願商標である「あらごしみかん」を付した原告の商品(甲3等)を「原告商品」という。)の周知に大いに寄与したものである。イ 被告は、「あらごしみかん」の文字からなる商標が、他人の業務に係る商品「みかんを原材料に使用してなるリキュール」に使用されている事例(甲21、乙13)も存在する旨主張するが、甲21及び乙13は同一の事業者による使用の事例に係るものであり、原告の他に「あらごしみかん」に使用されている事例は実質的には1件に過ぎず、このような他者によるごく僅かな使用の事例をもって、商標法3条2項該当性が否定されるものではない。〔
(被告の主張)
〕
⑴ 本願商標の指定商品は、ビールを除くアルコール飲料全般であって、それ
らの商品には、日常的に消費される比較的安価な価格帯のものも多数含まれている。したがって、本願商標の指定商品の需要者は、20歳以上の者に限られるものの、広く全国の一般消費者を含むものというべきである。原告は、「あらごしみかん」の文字からなる商標を、自己の業務に係る商品「みかんを原材料に使用してなるリキュール」について使用している(原告商品)ものである。しかしながら、原告提出の証拠においては、原告商品の市場シェア、販売地域、広告宣伝の規模といった、原告商品が、アルコール飲料を取り扱う分野において、その需要者に広く認識されていることを推し量ることのできる事実はおよそ示されていない。原告は、原告商品のこれまでの出荷本数及び売上額について述べているが、その数字が事実であるとしても、例えば「日本洋酒酒造組合」作成の「洋酒移出数量調査表」の「2023年12月分」によれば、令和5年(2023年)における「リキュール」の移出数量(メーカーの製造場から出荷された酒類の数量)の年間累計は約7億5千2百万リットル(乙22~24)であるところ、これに対して原告商品の令和4年(2022年)7月から令和5年(2023年)6月までの1年間の出荷量は約20万1千本とされており、仮にこれらが全て1800mlの瓶容器で出荷されたものであったとしても、その出荷総量は約36万リットルであって、上記移出数量の0.1%にも満たないものであるから、原告主張の数字が同業他社の商品のものと比べて相当程度大きなものであるということもできない。そして、原告は、「あらごしみかん」は新聞雑誌を始めとする多くのメディア媒体でも度々取り上げられており、その一例が甲14の1~10、甲64~71であるとするが、特に原告商品に注目しているものではない掲載事例(甲14の3、14の5、14の6、甲64)も多く、また、地方紙(甲14の2)や一部業界の専門紙・専門誌(甲14の3、14の6)、閲覧数が不明なウェブサイト(甲14の7ないし10、甲71)など、本願商標の指定商品の需要者たる全国の一般消費者の目にとまるとは考え難い掲載事例も少なくなく、本願商標が我が国の全国の需要者に広く認識されていることが推認できるほどに、原告商品が頻繁に又は大規模に紹介等されていたとはいえない。また、原告は、原告商品には多くの受賞歴がある旨を主張するが、それらの賞の選考方法や、それが本願商標の指定商品の需要者にどの程度注目されているかといった、賞の詳細は示されていない。そのほか、アルコール飲料の卸売(小売)の事業を行う者又はアルコール飲料の提供を含む飲食事業を行う者による陳述書(甲8)が41通提出されているが、これは本願商標とは異なる「あらごし」の文字からなる商標に係るものである上、我が国において多数存在する上記事業者のうち原告の取引先のみに偏ったわずか41の事業者(取引者)の個々の認識を示すものにすぎないことから、本願商標の指定商品に係る我が国の需要者一般の本願商標についての認識を推定する根拠になるとはいえない。さらに、「あらごしみかん」の文字からなる商標が、他人の業務に係る商品「みかんを原材料に使用してなるリキュール」に使用されている事例(甲21、乙13)も存在する上、「粗くこしたみかん」を原材料とする商品の事例も存在する(乙1)。加えて、原告商品は「みかんを原材料に使用してなるリキュール」であるところ、本願商標の指定商品は、上記のとおり、「みかんを原材料に使用してなるリキュール」以外のアルコール飲料が広く指定されている。そうすると、本願商標が、それに接する本願商標の指定商品の需要者において、直ちに原告商品を想起させるというほどに、全国的に広く理解、認識されているとはいい難いものである。
⑵ 原告の実施した本願商標の識別力に関するアンケート調査(甲13)の対
象者は、43都道府県在住の20歳から50歳の女性360名であるところ、本願商標の指定商品は、ビールを除くアルコール飲料全般であって、その需要者は広く20歳以上の者であるというべきであり、女性に限られるものではないし、原告商品の実情(720ml及び1800mlの瓶容器で販売されていること)を理由として、調査対象の範囲を限定することも適切とはいえない。そうすると、本件アンケート調査は、当該調査の対象の範囲の設定に問題があるといえ、この点において、本件アンケート調査の結果を基礎として本願商標の認識度を推し量ることは適切とはいえない。さらに、そのような問題がある当該調査の結果において、原告商品を知っていると回答したのはわずか「35名(9.7%)」であり、さらに、それが原告の業務に係る商品であることを知っていると回答したのは「14名」(回答者全体の約3.9%)にすぎないものである。原告は、設問1において「全てしらない」といった回答者が282名であったことから、アンケート対象者の総数360名からこれを差し引いた78名が本願商標の指定商品中のみかんを原材料とするお酒(リキュール)に興味がある需要者に該当すると主張するが、本願商標の指定商品の分野において、「みかん」を原材料とする商品が広く製造、販売等されている実情があることからすれば、本件アンケート調査の設問1において提示された5種類の「みかんを原材料に使用してなるリキュール」の商品をいずれも知らないことをもって、同商品に興味のない需要者であるということはできない上、本願商標の指定商品は、ビールを除くアルコール飲料全般であるから、「みかんを原材料に使用してなるリキュール」の需要者の認識のみを推し量れば足りるというものでもない。以上のとおりであるから、本件アンケート調査の結果によって、本願商標が原告の業務に係る商品を表すものとして需要者の間で全国的に認識されるに至っていると判断することは到底できない。以上のとおり、本願商標は、原告によるその使用規模は相当程度限定的なものであって、他人による使用事例もあり、また、本願は原告商品の範囲を広く超えた範囲の商品を指定するものであることや、調査対象の範囲の設定に問題がある本件アンケート調査の結果においてすら需要者の間での認知度が低いことなどを総合的に考慮すれば、永年の間、原告により独占的排他的に継続使用されているものではなく、事実上、原告による独占使用が容認されているともいえないから、本願商標が原告により使用をされた結果、需要者の間で、原告の業務に係る商品であることを全国的に認識されるに至ったものとはいえない。したがって、本願商標が、その指定商品との関係において、商標法3条2項の要件を具備するものということはできない。
3 取消事由3(本願商標が商標法4条1項16号に該当するとした判断の誤り)
について〔
(原告の主張)
〕
⑴ 前記1(取消事由1について)
〔
(原告の主張)
〕⑴のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること) を表現するための語とし」て、「あらごし」の文字が広く使用されている実情は認められず、また、「粗くこしたみかんを使用した商品」であることを強調するために「あらごしみかん」と称している事例も見受けられないことから、本願商標をその指定商品に使用したとしても、これに接する需要者、取引者をして、これより「粗くこしたみかん」ほどの意味合いが容易に看取されることはなく、また、その商品が「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品) であるといった、」 商品の品質を表示したものと認識されることもないと考えられるものである。したがって、本願商標は、その指定商品との関係で、自他商品の識別標識として認識されるものであるから、本件審決が本願商標は商標法4条1項16号に該当するとした判断は誤りである。
⑵ 前記1(取消事由1について)
〔
(原告の主張)
〕⑵のとおり、本願商標は「あらごしみかん」と同書・同大・等間隔を以って極めてまとまりよく横一連に表わされており、その構成上、「あらごし」の語と「みかん」の語とを容易に分離して看取できるような態様を以って構成されていないこと、及び本願商標の全体より自然に生ずる「アラゴシミカン」なる称呼は、語呂が良く一気一連に淀みなく発音されることからすると、簡易迅速を旨とする商取引においては、本願商標より「あらごし」の語と「みかん」の語とが分離独立して把握され、本願商標がこれらの語を結合してなると容易に理解されるとは考え難い。そして、本願商標は、特定の観念を生じさせることのないいわゆる造語として認識されるものであることから、本願商標の指定商品との関係でも、自他商品識別機能を十分に発揮すると共に、本願商標の指定商品の内のいずれの商品に使用したとしても、商品の品質の誤認を生ずるおそれはない商標というべきである。したがって、本願商標は、商標法4条1項16号に該当するものではない。〔
(被告の主張)
〕
⑴ 前記1(取消事由1について)
〔
(被告の主張)
〕⑴ないし⑶のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、 商品の原材料が粗くこされたもので「あること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字や「粗濾し」の文字などが広く使用されている実情、及び「みかん」を原材料とする商品が広く製造、販売等されている実情があることからすれば、本願商標は、「あらごし」の文字と「みかん」の文字とを結合してなるものと、容易に看取し得るものであって、これをその指定商品に使用するときは、それに接する需要者、取引者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」ほどの意味合いが容易に理解、認識されるといえるものである。そうすると、本願商標は、その指定商品に係る需要者及び取引者をして、単にそれが「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であること、すなわち、商品の品質を表してなるものと理解、認識されるにすぎないといえる。したがって、本願商標を、その指定商品中、「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」以外の商品に使用するときは、当該商品があたかも「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であるかのように、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当する。
⑵ なお、その商品が原材料であるみかんを「粗くこしたもの」であるか否か
という点については、仮に、本願商標に接する需要者において、必ずしも、「あらごし」の文字が表示していると通常理解される品質が一定であるとはいえず、本願商標を付した商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとまではいえないとしても、本願商標が「あらごし」の文字と「みかん」の文字とを結合してなるものであることは容易に看取し得るものであって、上記のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、「みかん」を原材料とする商品が広く製造、販売等されている実情があることからすれば、本願商標を、その指定商品中、「みかんを使用した商品」以外の商品に使用した場合には、当該商品があたかも「みかんを使用した商品」であるかのように、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、本願商標が商標法4条1項16号に該当することに変わりはないというべきである。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り)について
⑴ 判断基準商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くと規定されているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品の識別力を欠くものであることによるものと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。そうすると、出願に係る商標が、その指定商品について商品の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、審決がされた時点において、当該商標が当該商品との関係で商品の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の需要者、取引者によって当該商品に使用された場合に、将来を含め、商品の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。そして、当該商標の需要者、取引者によって当該商品に使用された場合に商品の質を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品に関する取引の事情を考慮して判断すべきである。
⑵ 本願商標の構成ア 前記第2の1⑴のとおり、本願商標は、「あらごしみかん」の文字を標準文字で表してなるものである。本願商標の「あらごしみかん」の語は、「あらごし」の語と「みかん」の語を組み合わせた語であるといえるが、それ自体が辞書に掲載されている語ではない。イ 本願商標のうち「あらごし(粗漉し)」の語は、一般に、「①目のあらい水嚢、②あらい目でこすこと。また、そのこしたもの。(広辞苑第7版、」甲15)を意味する語である。また、「みかん」の語は、一般に、果実の「みかん」を意味する語である。
⑶ 本願商標の指定商品の需要者本願商標は指定商品を第33類「清酒、日本酒、焼酎、合成清酒、白酒、直し、みりん、洋酒、果実酒、酎ハイ、リキュール、カクテル、中国酒、薬味酒」とするものである。上記指定商品の需要者は、指定商品に含まれる酒類を製造者から購入する飲食店やホテルなどの事業者と、飲食店等で酒類を飲料として提供を受け、又は店舗やインターネット上の商品販売サイトで商品を購入する20歳以上の一般消費者であると認められる。
⑷ 本願商標の指定商品に関する取引の実情各文末に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件審決がされた令和5年11月28日の時点における本願商標の指定商品に関する取引の実情として、次の事実が認められる。ア 本願商標の指定商品における「あらごし」の語の使用状況等(ア) 岩村醸造の販売する製品「あらごし梅酒」についてのウェブサイトにおいて、中にはあらごしの梅ペーストがはいっており、「 果実感たっぷり。」との記載がある(甲17)。(イ) 日本酒商かねなか商店の販売する製品「あらごし 梅酒王」の販売に関するウェブサイトには、独自のこだわり製造方法による粗濾過仕上げ「の梅酒です」との記載がある(甲19)。(ウ) 酒専門店鍵やのウェブサイトにおいて販売されている「純米 あらごし生酒」につき、「目の粗い布で濾したたっぷりの醪」との記載がある(甲22)。(エ) 菊水酒造の販売するリキュール「あらごしみかん」が、「あらごしシリーズ」の一環として、「あらごしりんご」「あらごしゆず」及び「あらご、しもも」と共に販売されている。そのウェブサイトでは「自然の恵み豊かな瀬戸内産みかんをたっぷり使った、つぶつぶ感いっぱいのお酒。 と」の紹介がされている(甲21,24)。(オ) 梅酒を販売するウェブサイトにおいて、「漬け込んだ梅をそのまま丁寧にあらごししたピューレにして加える」(甲18)、商品「あらごしにごり梅酒」の宣伝のウェブサイトにおいて、「完熟した梅をあらごししたピューレを加えた」(甲26)「こだわり酒場のレモンサワーの素〈あら、ごし〉」の宣伝のウェブサイトにおいて、「通常よりも粗いフィルターでろ過した“あらごし”果汁を加えました」(甲28)、清酒にごり酒「あらごし純米 白川郷」の宣伝において、『酒もろみ』を荒く濾しただけ「の、ほとんど酒もろみそのもののにごり酒」(甲29)、純米にごり生酒の宣伝において、「発酵途中の醪をあらごしして」(甲30)「ぜいたく、あらごし 純米 にごり酒」の宣伝において、「醪(もろみ)を贅沢にあらごしして」(甲32)、男山「あらごし にごり酒」についての報道において、「もろみを粗くこしてにごりを出し」(甲33)等の記載がそれぞれされている。(カ) 「おいしく食べて和歌山モール」のウェブサイトにおいて、商品「Orangelee」が掲載されており、商品説明として「果汁たっぷり、あらごしつぶつぶ食感のみかんリキュール。、あらごしのつぶつぶ食感」「が楽しいジュレタイプのお酒です。」との記載がある(乙1)。(キ) 「旭屋」のウェブサイトにおいて、商品「完熟 梅しぼり」が掲載されており、商品説明として「ジューシーで甘酸っぱい梅果肉溢れる、果実感満載の梅酒です。瓶詰め直前に果実を潰してあらごしをしたので超濃厚。」との記載がある(乙2)。(ク) 「YAHOO!JAPAN ショッピング」のウェブサイトにおける「あきさ」のページにおいて、商品「老松酒造 梅酒 古の香り 720ml/6本」が掲載されており、商品説明として「厳選大粒の完熟南マ マ高梅を漬けこんだ美味しいさをしっかり活かしています。粗ごしによるナチュラルな風味、甘味は女性に納得いただける味わい。 との記載があ」る(乙3)。(ケ) 「室町酒造株式会社」のウェブサイトにおいて、商品「とろーりにごり梅酒」が掲載されており、商品説明として「地元赤磐産の契約栽培青梅〔古城梅〕で造った当社自慢の梅酒に粗ごしした梅の果肉を加えました。」との記載がある(乙4)。(コ) 「Benefit Station きたの」のウェブサイトにおいて、“果肉とろとろ仕込み!”「 『川鶴 完熟にごり梅酒 瀬戸のとろ梅』」の見出しの下、「伝統の技で醸した日本酒に、讃岐育ちの梅を漬け込み、手作業で粗濾しした完熟果肉をたっぷり使用したとろとろ梅酒!」との記載がある(乙5)。(サ) 「登酒店」のウェブサイトにおいて、商品「木花之醸造所 桃濁酒」が掲載されており、商品説明として「このお酒は、福島県産の桃を大量に使用した”どぶろく”」「あらごしした桃果肉の食感と共に、爽やか。、な酸を伴うジューシーな桃の果実感。」の記載がある(乙6)。(シ) 「ヨイキゲン株式会社」のウェブサイトにおいて、商品「白桃のリキュール 360ml」が掲載されており、商品説明として「自社産の米焼酎と、岡山県総社市産の白桃を粗漉しし、そのままあわせました。ジューシーで、とろける口当たりは、完熟白桃そのままの味わいです。」の記載がある(乙7)。(ス) 「ヨイキゲン株式会社」のウェブサイトにおいて、商品「梨のリキュール 360ml」が掲載されており、商品説明として「秋の食感そのままの、食べるお酒です。岡山県矢掛町で採れた「豊水梨・幸水梨」が原料。粗越し果肉と梨果汁、お酒に深まりを出す為、カットした梨を米焼酎に付け込んだ浸漬酒をブレンドしています。との記載がある」 (乙8)。(セ) 「山形 味の農園」のウェブサイトにおいて、「洋なしシードル ポワレ」の見出しの下、「シードルポワレとは洋ナシの発泡酒スパークリングマ マワインのこと。フランスフランス北西部ノルマンディー地方ではシードル(りんごの発泡酒)と同じくらい親しまれている洋ナシ100%で作る発泡酒です。、シードルポワレのこだわった洋ナシの栽培法や製造方」「法も個性的です。自家果樹園の無農薬栽培した洋梨のなかでも、樹齢300年以上の洋梨だけを厳選。選別した洋梨を2~3カ月低温発酵させます。そして粗濾しして果実を残したまま、瓶内二次発酵の持続を続けることにこだわる製造法です。、粗濾しした果実のにごりが残っており、」「洋梨のコクがたっぷり感じられます。」との記載がある(乙9)。(ソ) 「株式会社北岡本店」のウェブサイトにおいて、商品「吉野物語 キウイ 1800ml」が掲載されており、商品説明として「追熟を十分にさせた、食べごろキウイの果肉をあらごしして、特徴のある酸味の、甘酸っぱいリキュールです。」との記載がある(乙10)。(タ) ジュース飲料における「あらごしみかん」の使用事例として、「ふるラボ」のウェブサイトには、「あらごしみかんじゅーす(ジュース)」について、「まるごと搾って(あらごし)いるため、果実の食感・・・が味わえます。」との記載がある(乙21)。イ 本願商標の指定商品における「みかん」の語の使用状況(ア) 白鶴のウェブサイトにおいて、温州みかん100%使用とするリキュール「まぁるい果実 みかん」との記載がある(甲72)。(イ) 中埜酒造株式会社のウェブサイトにおいて、「国産みかんをまるごと原料に使用することでみかんの風味を引き出したみかんのお酒です」とする「みかんのお酒」との記載がある(甲73)。(ウ) 近藤酒造株式会社のウェブサイトにおいて、愛媛産のみかんリキュールです、とする「みかんde酒」との記載がある(甲74)。(エ) 酒仙栄光のウェブサイトにおいて愛媛県産温州みかんを100%使用したリキュールであるとする「蔵元のみかん」との記載がある(甲75)。(オ) 紀州柑々屋のウェブサイトにおいて、温州みかんを100%原材料に使ったとする酒「温州みかん酒 果汁搾り」との記載がある(甲76)。(カ) 「平上三蔵商店」のウェブサイトにおいて、商品「菊水 あらごしみかん 1.8L」が掲載されており、商品紹介として「自然の恵み豊かな瀬戸内産のみかんをたっぷり使った、ジューシーなみかんのリキュール」との記載がある(乙13)。(キ) 「明利酒類株式会社」のウェブサイトにおいて、商品「そのまんまみかんのお酒 720ml」が掲載されており、商品説明として「日本人に一番なじみのある果物をお酒にしました。みかんの果汁たっぷりの爽やかなリキュールです。」との記載がある(乙14)。(ク) 「伊勢五本店」のウェブサイトにおいて、 「鳳凰美田商品 みかん 1.8L」が掲載されており、商品説明として「温州みかん本来の香り、生き生きした味わいや爽やかな酸味、果肉のつぶつぶ感まで自然なままの美味しさをお楽しみ頂けます!」「タイプ、 リキュール」との記載がある(乙15)。(ケ) 「高知の地酒専門店 西寅」のウェブサイトにおいて、商品「リキュール アリサワ 文佳人 山北みかんリキュール 720ml」が掲載されており、商品説明として「南国土佐の日差しをいっぱいに浴びて育った山北みかんは、程よい甘さと酸味のバランスが素晴らしい濃密な味の果肉と、薄い外皮と中の柔らかい薄皮が特徴のみかんです。そんな『山北みかん』の生しぼり果汁を贅沢にもたっぷりと使用した、柑橘系のみずみずしい焼酎ベースのリキュール。」との記載がある(乙16)。(コ) 「クランド」のウェブサイトにおいて、商品「まるごと完熟温州みかん」が掲載されており、商品説明として「『まるごと完熟温州みかん』は、日本が原産と言われる『温州(うんしゅう)みかん』をまるごと使用した、贅沢な果肉感と完熟みかんのような濃厚な味わいが特長の果実のお酒です。」との記載がある(乙17)。(サ) 「宝酒造オンラインショップ」のウェブサイトにおいて、 「寶商品 和リキュール『産地めぐり』<静岡香る三ヶ日みかん>720ML」が掲載されており、商品説明として「静岡産“三ケ日みかん”を使用した、軽やかな香りとジューシーでしっかりとした味わいが特長のお酒です。」との記載がある(乙18)。(シ) 「千福オンラインショップ」のウェブサイトにおいて、商品「広島みかんのお酒 360ml」が掲載されており、商品説明として「広島温州みかんの果汁を、千福自慢の純米酒にミックス。 、」 「一口目にはしっかりしたみかんの甘味が感じられ、酸味と純米酒の風味が追いかけてくる広島らしいお酒です。」との記載がある(乙19)。(ス) 「yamatoya ONLINE SHOP」のウェブサイトにおいて、商品「賀茂金秀 瀬戸内みかん酒 太陽の雨音 720ml」が掲載されており、商品説明として「100%瀬戸内産の厳選したこだわりの温州みかん果汁をたっぷりと使用しています。 との記載がある」 (乙20)。
⑸ 検討上記⑷アによれば、本件審決がされた時点において、本願商標の指定商品等につき、「商品の原材料が粗くこされたものであること(粗くこした原材料を使用した商品であること)」を表現するための語として、「あらごし」の文字や、「あらごし」の同義語である「粗濾し」「粗ごし」等の文字が広く使用されている実情があるものと認められる。その中には、「粗くこしたみかん」を原材料とする商品を含め、原材料である果実(梅、りんご、ゆず及び桃など)をあらくこして、果実の繊維や果肉などを残した商品の事例も存在する(上記⑷ア(ア)、(エ)、(カ)ないし(ソ)など)。また、本願商標の指定商品中の「日本酒」に含まれる商品「にごり酒」については、原材料である醪(もろみ)を「あらごしして」ないし「粗くこして」製造するものであること(上記⑷ア(ウ)、(オ)など)からも、「あらごし」の語が、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、広く親しまれているものということができる。さらに、本願商標の指定商品と関連する、ジュース飲料を取り扱う分野において、「みかん」を原材料とする飲料に「あらごしみかん」の文字が使用されている事例(上記⑷ア(タ))もあることが認められる。そして、上記⑷イによれば、本願商標の指定商品中の「リキュール」等において、「みかん」を原材料とする商品が多数販売されていることが認められる。本願商標は、「あらごし」の文字と、「みかん」の文字とを組み合わせてなるところ、上記のとおりの本願商標の指定商品等についての取引の実情によれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、それに接する需要者、取引者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」ほどの意味合いが認識されるものということができる。そうすると、本願商標は、その指定商品に係る需要者及び取引者をして、単にそれが「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であること、すなわち、商品の品質を表してなるものと理解、認識されるというべきである。以上によれば、あらごしみかん」「 の語は、本願商標の指定商品との関係で、商品の質を表示するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の需要者、取引者によって当該商品に使用された場合には、商品の質を表示したものと一般に認識されるものというべきであるから、本願商標の指定商品について商品の質を普通に用いられる方法で表示する標章であるといえる。したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に該当する。本願商標の商標法3条1項3号該当性について、本件審決の判断に誤りはないというべきである。
⑹ 原告の主張に対する判断ア 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴のとおり、本件審決は限られた商品の分野における使用を拡大的に本願商標の指定商品の分野における使用としたもので、本願商標は商品の品質を表示するものと認識されることはなく、自他商品の識別標識として認識される旨を主張する。しかし、上記⑸のとおり、本願商標の指定商品の分野において、「あらごし」の文字及びその同義語が商品の原材料を粗くこしたものを表現するために用いられ、その中には「みかん」を含め果実をあらくこして果肉などを残した商品も存することなどの取引の事情によれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、それに接する需要者、取引者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」ほどの意味合いが認識され、自他商品の識別標識としては認識されないものというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、本願商標はまとまりよく横一連に表わされており、「あらごし」の語と「みかん」の語とを結合してなると容易に理解されるとは考え難く、特定の観念を生じさせることのないいわゆる造語として認識されるものであることから、自他商品識別機能を発揮する旨を主張する。しかし、上記⑸のとおり、本願商標の指定商品について、「あらごし」の語が商品の原材料を粗くこしたものを表現するために用いられている事情に照らせば、これと果実の「みかん」を組み合わせた本願商標からは、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの) ほどの意味合いが認識さ」れ得るから、これが特定の観念を生じさせることのない造語であるとは認められないというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。ウ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑶のとおり、被告が提出する証拠はこすこととの関連性のない記述しかされていなかったり、僅か一回きりの使用であるなど被告の主張を裏付けることにはならない旨を主張する。しかし、本願商標の指定商品についての取引の事情は、上記⑸のとおり認められるところ、みかんを含む果実をあらごしして果肉等を残した商品等にも使用されるなど、「あらごし」の語は広く親しまれているものと認められる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑺ 小括以上検討したところによれば、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するものと認められる。したがって、本件審決の判断に誤りはないから、原告の主張する取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(使用による本願商標の商標法3条2項該当性)について⑴ 原告の主張する取消事由2の内容原告は、「あらごしみかん」の標章を付した原告商品を出荷し、これにより本願商標が使用された結果、全国の需要者の間で、「あらごしみかん」の標章を付した原告商品の出所が原告であると認識することができるようになっているから、本願商標は商標法3条2項の要件を具備すると主張する。⑵ 検討ア 原告は、本願商標を付した商品を原告商品として平成21年以来販売を継続しているとするところ、前記1⑷ア(エ)及びイ(カ)のとおり、菊水酒造からは果実をあらごしした「大ヒット商品」とする「あらごしシリーズ」(甲24)の一環として、「あらごしみかん」の商品名でみかんを原材料に使用したリキュールが販売されている事実が認められ、原告商品が、そうした他社製品に比べ、どの程度の市場シェアを獲得しているのかなどに関する証拠は提出されていない。原告は、原告商品の令和4年7月から令和5年6月までの1年間の原告商品の出荷総量は約●●●●●リットルであるところ(甲81)、令和5年(2023年)1月から同年12月までの「リキュール」全体から「梅酒」等を除いた「カクテル・チューハイ等」のうちの「非発泡性のもの」の分類の移出数量(メーカーの製造場から出荷された酒類の数量。乙24)の累計が約436万リットルである(「日本洋酒酒造組合」作成の「2023年12月洋酒移出数量調査表」。乙23)ことから、原告商品の出荷量は、その約●%に相当し、原告商品の出荷総数は相当に大きいと主張する(原告の令和6年4月10日付け第2準備書面17頁)が、当該数値は、本願商標の使用による識別力の取得を推認させる程度に大きいものということはできない。イ 原告の実施した本願商標の識別力に関するアンケート調査(甲13、48)についても、対象者は43都道府県在住の20歳から50歳の女性360名とするものであり、本願商標の需要者は前記1⑶のとおりであって、女性に限られるものではないから適切ではなく、その総数も、本願商標の需要者における認識を推認させるのに十分な数であるとは到底いえない。調査の結果においても、「あらごしみかん」を知っていると回答したのは「35名(回答者全体の9.7%)」にすぎず、さらに、それが原告の業務に係る商品であることを知っていると回答したのは「14名」(回答者全体からみると約3.9%)にすぎない。本件アンケート調査の結果は、本願商標が原告の業務に係る商品を表すものとして需要者の間で全国的に認識されるに至っていることを示すものではない。ウ 原告が提出する、アルコール飲料の卸売(小売)の事業を行う者又はアルコール飲料の提供を含む飲食事業を行う者による陳述書(甲8、41通)についても、これらは、本願商標及びその指定商品そのものではない、「商標 あらごし」「商品、 『リキュール』」についてのものである上に、原告の商品を提供する41事業者の個々の認識を示すものにすぎず、本願商標の指定商品に係る需要者一般の認識を推認させるものではない。エ 原告商品のメディア媒体における紹介についても、特に原告商品に注目して取り上げたものとはいえない掲載事例(甲14の3、14の5、14の6、甲64)もあり、地方紙であって全国的な範囲での周知がされるとはいえないもの(甲14の2)や、業界の専門紙・専門誌であって、本願商標の需要者の多数が目にするものとはいえないもの(甲14の3、14の6)、閲覧数が不明なウェブサイト(甲14の7ないし10、甲71)など、本願商標の指定商品の需要者のうちの多くの目にとまるものとは考え難いものが多く、本願商標が需要者に広く認識されていることを推認させるほどに、原告商品を紹介したものとは認められない。オ 原告商品の受賞歴についても、それが本願商標の指定商品の需要者にどの程度注目され、影響があるかを示す客観的な証拠も提出されていない。カ 加えて、原告商品は「みかんを原材料に使用してなるリキュール」であるところ、本願商標の指定商品は、前記第2の1⑴のとおり、「みかんを原材料に使用してなるリキュール」以外のアルコール飲料が広く指定されており、そこに含まれる清酒や日本酒等における需要者の認識は明らかではない。キ そうすると、本願商標は、それに接する本願商標の指定商品の需要者において、直ちに原告商品を想起させるというほどに、全国的に広く理解、認識されているとは認められない。ク 以上認定した事実によれば、本願商標について、商標法3条2項にいう「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品・・であることを認識することができるもの」に当たると認めるに足りないから、本件審決の判断に誤りはない。⑶ 原告の主張に対する判断ア 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴ないし⑶のとおり、原告の実施したアンケート調査の結果や、提出した証拠により、本願商標は使用の結果識別力を取得した旨を主張する。しかし、上記⑵のとおり、アンケート調査(甲13)の結果につき、原告は、設問1において「全て知らない」といった回答者が282名であったことから、アンケート対象者の総数360名からこれを差し引いた78名が本願商標の指定商品中のみかんを原材料とするお酒(リキュール)に興味がある需要者に該当するとするが、前記1⑷イのとおり、本願商標の指定商品の分野において、「みかん」の語を使用し、原材料とする商品が広く製造、販売等されている実情があることからすれば、本件アンケート調査の設問1において提示された5種類の「みかんを原材料に使用してなるリキュール」の商品をいずれも知らないことをもって、同商品に興味のない需要者であるということはできないし、本願商標の指定商品は、前記第2の1⑴のとおり、リキュールのみならず日本酒、清酒等を広く含むアルコール飲料であるから、「みかんを原材料に使用してなるリキュール」の需要者の認識のみを調査すれば足りるものではない。上記⑵のとおり、その他の原告提出の証拠を検討しても、本願商標が使用された結果、識別力を取得した事実を認めることができない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑷のとおり、原告の受賞歴は需要者への周知に寄与していることや、「あらごしみかん」が他人の業務に係る商品に使われているとしてもごく僅かな例にすぎず、本願商標は使用による識別力を取得した旨を主張する。しかし、上記⑵のとおり、原告商品の受賞歴が需要者に与えた影響を示す証拠はなく、前記1⑷ア(エ)等のとおり他者の使用例があるところ、原告商品のシェア等を示す証拠は提出されていないことからしても、本願商標が使用の結果識別力を取得した旨を認めることはできないというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。⑷ 小括以上の検討によれば、原告の主張する取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(本願商標の商標法4条1項16号に該当するとした判断の誤り)について⑴ 本願商標の商標法4条1項16号該当性について前記1⑸で検討したところによれば、本願商標は、それに接する需要者、取引者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」を表示したものと一般に認識されるものというべきである。そうすると、本願商標を、その指定商品中、「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」以外の商品に使用するときは、当該商品があたかも「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であるかのように、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当する。以上検討したところによれば、本願商標は、商標法4条1項16号に該当するものと認められ、本件審決の判断に誤りはない。⑵ 原告の主張に対する判断ア 原告は、前記第3の3〔原告の主張〕⑴のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う分野における実情に照らし、本願商標をその指定商品に使用したとしても、これに接する需要者、取引者をして、その商品が「商品の原材料であるみかんが粗くこされた商品(粗くこしたみかんを使用した商品)」であるといった、商品の品質を表示したものと認識されることはなく、本願商標は商標法4条1項16号に該当しない旨を主張する。しかし、前記1⑷のとおりの本願商標の指定商品における「あらごし」及び「みかん」の使用の実情に照らせば、本願商標については、上記のとおり商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当する。したがって、原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は、前記第3の3〔原告の主張〕⑵のとおり、本願商標より「あらごし」の語と「みかん」の語とが分離独立して把握され、観念を生じさせることのないいわゆる造語として認識されるものであることから、本願商標の指定商品のうちのいずれの商品に使用したとしても、商品の品質の誤認を生ずるおそれはない旨を主張する。しかし、前記1⑵のとおりの本願商標の構成及び同⑷のとおりの本願指定商品における「あらごし」及び「みかん」の使用の実情に照らせば、本願商標については、需要者において、「粗くこしたみかん(みかんを粗くこしたもの)」を表示したものと一般に認識され、上記⑴のとおり商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、本願商標は、商標法4条1項16号に該当する。したがって、原告の上記主張は採用することができない。⑶ 小括以上のとおり、原告の主張する取消事由3は理由がない。
4 結論以上検討したところによれば、本願商標は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するものと認められ、かつ、仮に同法3号2項該当性を検討したとしても、同項により商標登録を受けることができるものとは認められない。したがって、本件審決の判断に誤りはなく、原告の主張する取消事由1ないし3は、いずれも理由がない。よって、原告の請求は、理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
東 海 林 保
裁判官
今 井 弘 晃
裁判官
水 野 正 則
(別紙審決書省略)
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