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令和6(行ケ)10049審決取消請求事件

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裁判所 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年3月24日
事件種別 民事
当事者 原告ヤマハ発動機株式会社
被告特許庁長官
対象物 ビークル
法令 特許権
特許法29条2項3回
特許法17条の21回
特許法159条1項1回
キーワード 審決101回
実施6回
優先権1回
主文 1 特許庁が不服2023-5963号事件について令和6年4月10
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和2年7月20日(パリ条約による優先権主張2019年(令 和元年)7月19日(以下、この日を「本件優先日」という。))を国際出願 日とし、名称を「ビークル」とする発明につき特許出願(特願2021-5 34025号。請求項の数は3。以下「本願」といい、本願に添付した明細 書及び図面を併せて「本願明細書等」という。)をしたところ、令和4年8月5 2日付けの拒絶理由通知を受け、同年10月4日付けで意見書を提出すると ともに手続補正を行ったが、令和5年1月4日付けで拒絶査定を受けた。 ⑵ 原告は、令和5年4月12日、上記拒絶査定に対し不服の審判請求(不服 2023-5963号)をするとともに、手続補正を行った(以下、この手 続補正を「本件補正」という。)。10 本件補正は、特許請求の範囲の記載の請求項1を、下記アの記載からイの 記載に補正するものである(⑵の下線部が補正箇所である。) ア 本件補正前の請求項1 「ビークルであって、

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判決文

令和7年3月24日判決言渡

令和6年(行ケ)第10049号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和7年1月27日

判 決

原 告 ヤマハ発動機株式会社

同訴訟代理人弁理士 渡 邉 昭 彦

同 薮 慎 吾

同 越 村 優 一

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 倉 橋 紀 夫

同 河 端 賢

同 後 藤 亮 治

同 中 尾 麗

同 阿 曾 裕 樹

主 文

1 特許庁が不服2023-5963号事件について令和6年4月10

日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は、被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 原告は、令和2年7月20日(パリ条約による優先権主張2019年(令和元年)7月19日(以下、この日を「本件優先日」という。 )を国際出願)日とし、名称を「ビークル」とする発明につき特許出願(特願2021-534025号。請求項の数は3。以下「本願」といい、本願に添付した明細

5 書及び図面を併せて「本願明細書等」という。)をしたところ、令和4年8月2日付けの拒絶理由通知を受け、同年10月4日付けで意見書を提出するとともに手続補正を行ったが、令和5年1月4日付けで拒絶査定を受けた。

⑵ 原告は、令和5年4月12日、上記拒絶査定に対し不服の審判請求(不服2023-5963号)をするとともに、手続補正を行った(以下、この手続補正を「本件補正」という。 。)本件補正は、特許請求の範囲の記載の請求項1を、下記アの記載からイの記載に補正するものである(⑵の下線部が補正箇所である。)ア 本件補正前の請求項1「ビークルであって、前記ビークルは、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンであり、前記ビークルは、回転するクランク軸を有し、燃焼によって生じるパワーを前記クランク軸のトルク及び回転速度として出力するエンジンと、前記クランク軸と連動するよう設けられ前記エンジンに駆動され発電する発電用電動機と、前記発電用電動機で発電された電力をエネルギーとして貯蔵するエネルギー貯蔵装置と、前記発電用電動機とは異なる、前記エネルギー貯蔵装置及び/又は前記発電用電動機からの電力の供給を受けてパワーを出力する、推進用電動機と、前記推進用電動機から出力されたパワーによって駆動される推進器と、前記エンジンと、前記推進用電動機と、前記発電用電動機とを制御する制御装置であって、加速指示に応じて前記推進用電動機に供給される電力を増大するよう前記エンジン及び前記発電用電動機を制御し、前記推進器

5 が前記推進用電動機から出力されたパワーのみによって駆動される場合、前記エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に関わらずに、前記加速指示を契機として、前記エネルギー貯蔵装置及び/又は前記発電用電動機から供給される電力で駆動される前記推進用電動機により前記加速指示に応じた目標パワーを出力するように、前記加速指示よりも前に、少なくとも前記エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に応じて前記発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速する制御装置と、を備える。」イ 本件補正後の請求項1「ビークルであって、前記ビークルは、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンであり、前記ビークルは、回転するクランク軸を有し、燃焼によって生じるパワーを前記クランク軸のトルク及び回転速度として出力するエンジンと、前記クランク軸と連動するよう設けられ前記エンジンに駆動され発電する発電用電動機と、前記発電用電動機で発電された電力をエネルギーとして貯蔵するエネルギー貯蔵装置と、前記発電用電動機とは異なる、前記エネルギー貯蔵装置及び/又は前記発電用電動機からの電力の供給を受けてパワーを出力する、推進用電動機と、前記推進用電動機から出力されたパワーによって駆動される推進器と、前記エンジンと、前記推進用電動機と、前記発電用電動機とを制御する制御装置であって、加速指示に応じて前記推進用電動機に供給される電力を増大するよう前記エンジン及び前記発電用電動機を制御し、前記推進器

5 が前記推進用電動機から出力されたパワーのみによって駆動される場合、前記エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に関わらずに、前記加速指示を契機として、前記エネルギー貯蔵装置及び/又は前記発電用電動機から供給される電力で駆動される前記推進用電動機により前記加速指示に応じた目標パワーを出力するように、前記加速指示よりも前に、少なくとも前記発電用電動機で発電された電力の供給の受け及び前記推進用電動機に対し電力の供給を行なう前記エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に応じて前記発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速する制御装置と、を備える。」

⑶ 令和6年4月10日、特許庁は、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という)をし、その謄本は同月23日、原告に送達された。

⑷ 原告は、令和6年5月22日、本件審決の取消しを求めて、本件訴訟を提起した。2 特許請求の範囲の記載本願に係る特許請求の範囲の記載のうち、請求項1については、本件補正前は前記1⑵アのとおりであり、本件補正後は前記1⑵イのとおりである。請求項2及び3は以下のとおりである。

⑴ 請求項2「請求項1に記載のビークルであって、前記制御装置は、前記加速指示の時点から前記エンジンの回転速度が増大して特定の基準速度に達する時点までの前記エンジンの回転速度の変化量が、前記エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に応じた程度小さくなるよう前記エンジン及び前記発電用電動機を制御する。」

⑵ 請求項3「請求項2に記載のビークルであって、

5 前記加速指示前時点における回転速度において前記エンジンから出力可能な最大パワーにより駆動される前記発電用電動機から出力される電力と、前記エネルギー貯蔵装置から供給される電力と、の和の電力を供給された前記推進用電動機が出力するパワーが、前記加速指示及び速度に応じて定まる目標値となるよう、前記加速指示よりも前に前記エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に応じて前記エンジン及び前記発電用電動機を制御する。」3 本件審決の理由の要旨等本件審決の理由の要旨等は次のとおりである(下線は本件審決に付されているものと同一である。 。)

⑴ 本件補正についてア 本件審決は、平成13年8月3日公開の特開2001-211505号公報(甲1。以下「引用文献」という。本件審決にいう「引用文献1」と同一である。)の記載及び図面の図示内容から、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められるとした。(本件審決第2の2-2⑵ア(イ)、審決書12~13頁)「 車両であって、車両は、車両であり、車両は、回転するクランク軸を有し、燃焼によって生じる出力をクランク軸のトルク及び回転速度として出力するエンジン1と、クランク軸に接続されエンジン1に直結され発電する発電機2と、発電機2の発電出力を充電するバッテリ9と、発電機2とは異なる、バッテリ9及び/又は発電機2から供給される電力で駆動され駆動出力を得る、電動機4と、電動機4の駆動出力によって駆動される駆動輪と、エンジン1と、電動機4と、発電機2の制御を行う駆動力制御装置であ

5 って、アクセルペダルの操作量が増大されるのに応じて電動機4に供給される電力が増大していくようエンジン1及び発電機2の制御を行い、駆動輪が電動機4の駆動出力のみによって駆動される場合、バッテリ9のバッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合でも、アクセルペダルの操作量が増大される場合には、バッテリ9及び/又は発電機2から供給される電力で駆動される電動機4によりアクセル操作量APSに応じた駆動出力が得られるように、アクセルペダルの操作量が増大されるか否かにかかわらず、発電機2の発電出力の充電及び電動機4に電力を供給するバッテリ9のバッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合にはバッテリ温度が低いほど同じ出力を保ちつつエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低トルク側へと変更しエンジン1の余裕トルクを増大させる駆動力制御装置と、を備える。」イ 本件審決は、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認定した。(本件審決第2の2-2⑶イ、審決書15~17頁)【一致点】「 ビークルであって、ビークルは、車両であり、ビークルは、回転するクランク軸を有し、燃焼によって生じるパワーをクランク軸のトルク及び回転速度として出力するエンジンと、クランク軸と連動するよう設けられエンジンに駆動され発電する発電用電動機と、発電用電動機で発電された電力をエネルギーとして貯蔵するエネルギー貯蔵装置と、発電用電動機とは異なる、エネルギー貯蔵装置及び/又は発電用電動機

5 からの電力の供給を受けてパワーを出力する、推進用電動機と、推進用電動機から出力されたパワーによって駆動される推進器と、エンジンと、推進用電動機と、発電用電動機とを制御する制御装置であって、加速指示に応じて推進用電動機に供給される電力を増大するようエンジン及び発電用電動機を制御し、推進器が推進用電動機から出力されたパワーのみによって駆動される場合、エネルギー貯蔵装置の供給可能な電力に関わらずに、加速指示を契機として、エネルギー貯蔵装置及び/又は発電用電動機から供給される電力で駆動される推進用電動機により加速指示に応じた目標パワーを出力するように、加速指示よりも前に、少なくとも発電用電動機で発電された電力の供給の受け及び推進用電動機に対し電力の供給を行なうエネルギー貯蔵装置の供給可能な電力に応じて発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速する制御装置と、を備える。」【相違点】ビークルについて、本件補正発明は、「リーン姿勢で旋回可能に構成された」車両又は「ドローン」であるのに対し、引用発明は、そのようなものであるか明らかでなく、また、制御装置が、推進器が推進用電動機から出力されたパワーのみによって駆動される場合、エネルギー貯蔵装置の供給可能な電力に関わらずに、加速指示を契機として、エネルギー貯蔵装置及び/又は発電用電動機から供給される電力で駆動される推進用電動機により加速指示に応じた目標パワーを出力するように、加速指示よりも前に、少なくとも発電用電動機で発電された電力の供給の受け及び推進用電動機に対し電力の供給を行なうエネルギー貯蔵装置の供給可能な電力に応じて発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速することについて、本件補正発明は、エネルギー貯蔵装置の「エネルギー貯蔵量に関わらずに」 加速指示を契機として、、 エネルギー貯蔵装

5 置及び/又は発電用電動機から供給される電力で駆動される推進用電動機により加速指示に応じた目標パワーを出力するように、エネルギー貯蔵装置の「エネルギー貯蔵量に応じて」発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速するものであるのに対し、引用発明は、バッテリ9(エネルギー貯蔵装置)の「バッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合でも」 アクセルペダルの操作量が増大され、 (加速指示を契機として)、バッテリ9(エネルギー貯蔵装置)及び/又は発電機2(発電用電動機)から供給される電力(供給される電力)で駆動される電動機4(推進用電動機)によりアクセル操作量APS(加速指示)に応じた駆動出力が得られる(目標パワーを出力する)ように、バッテリ9(エネルギー貯蔵装置)の「バッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合にはバッテリ温度が低いほど」同じ出力を保ちつつエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低トルク側へと変更しエンジン1の余裕トルクを増大させる(発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速する)ものである点。ウ(ア) 本件審決は、「以下、相違点について検討する。 として、」 次のとおり、上記相違点について容易想到性の判断をした。「エンジンと電動機とエネルギー貯蔵装置とを備えたビークルの技術分野において、 エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電『動機とを備えたビークルが、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両であること。』は、周知の技術(…中略…以下『周知技術』という。)である。そして、引用発明の車両について、引用文献1において該車両をさらに具体的に特定する記載は見当たらないが、周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両を特段排除するものとまでは認められず、周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両及びそのエネルギー貯

5 蔵装置は一般的に小型であってそれに伴うエネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態は引用発明のバッテリ温度が低下した場合と共通する課題を内在するものともいえ、さらには、エネルギー貯蔵装置に限らず小型化及び軽量化はごく一般的な課題であって引用発明にも当然に要請される内在する課題でもあって(例えば、引用文献1の【従来の技術】に関する段落【0003】の『バッテリの容量及び重量を低減できる』なる記載を参照。 、一般的にエネルギー貯蔵装置が小)型である周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両における課題とも共通するともいえることから、引用発明の車両(ビークル)を、周知技術を考慮に入れて、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両とすることに格別の困難性は認められない。また、ビークルがドローンであることについても、ドローンは、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両と同様に一般的に小型でエネルギー貯蔵装置も小型であることから、同様に、引用発明の車両(ビークル)を、ドローンとすることに格別の困難性は認められない。さらに、引用発明は、引用文献1の段落【0005】ないし【0008】 【0023】ないし【0026】 【0039】ないし【0048】、 、の記載からみて、エンジンの効率を高めるべくエンジンを相対的に低回転かつ高負荷で運転する(すなわち、「エンジンが始動した後」であって「車両の走行時」に該当するといえる。)と、「エンジンの余裕トルクが小さくなる」ことにより、エンジンの応答性、更には発電機の応答性が低下し、車両の急加速時に必要な電力を発電機から電動機に供給できない状況が生じ、加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことによる加速不良を解消し良好な加速応答性を確保することを課題としており、本件補正発明における『燃料消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出

5 力の応答に再現性を有するビークルを提供する』(本願明細書等の段落【0004】 という課題ないし効果と同様に、) エネルギー貯蔵装置の供給可能な電力に関わらずに、供給可能な電力に応じて『加速制御を実施したり、あるいは実施しなかったりという実施状況が運転中に変わりやすくなる事態を抑制することができる』ことを課題とするものであると認められる。そして、引用発明においても、その前提となる【従来の技術】欄の段落【0003】に記載された電動パワートレーンを備えた車両でも、同段落において『車両に搭載されるバッテリの充放電が低減でき』と記載されているように、『バッテリの充放電』は生じるものであり、それに伴って、エネルギー貯蔵量が変動するのは当然であり、また、同段落にも記載されているように『バッテリの容量及び重量を低減できる』ことに対する一般的かつ引用発明においても当然の要請のもと、そうすることにより、同変動の全体容量に対する割合は相対的に大きくなることは明らかであるといえる。また、エンジンと電動機とエネルギー貯蔵装置とを備えたビークルの技術分野において、『エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場合やエネルギー貯蔵量(SОC)が低下した場合に、エネルギー貯蔵装置の供給可能電力が低下すること。』は、きわめて周知の技術的事項(…中略…以下、「周知事項」という。)である。そして、引用発明において、かかる課題を解決するために、駆動力制御装置(制御装置)が、アクセルペダルの操作量が増大されるか否かにかかわらず(加速指示よりも前に) 少なくとも発電機2の発電出力の充、電(発電用電動機で発電された電力の供給の受け)及び電動機4に電力を供給する(推進用電動機に対し電力の供給を行なう)バッテリ9(エ

5 ネルギー貯蔵装置)のバッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合には、バッテリ温度が低いほど同じ出力を保ちつつエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低トルク側へと変更し、エンジン1の余裕トルクを増大させる(発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速する)にあたり、供給可能な電力が低下する場合として、周知事項に鑑みて、バッテリ(エネルギー貯蔵装置)温度が低い場合に代えて、あるいは、これに加えて、エネルギー貯蔵量(SОC)が低下した場合を採用し、本件補正発明のように、エネルギー貯蔵装置の『エネルギー貯蔵量に応じて』発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速するように構成することに格別の困難性は認められない。そうすると、引用発明において、周知技術を考慮に入れ、また、周知事項に鑑みて、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。そして、本件補正発明の効果については、引用発明、周知技術及び周知事項に基いて、すなわち、引用発明においても当然に内在するエネルギー貯蔵装置に限らない小型化及び軽量化の課題のもと、周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両を考慮に入れて、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両とすることに伴い、エネルギー貯蔵装置が小型及び軽量のものとなったとしても、また、そうすることにより、エネルギー貯蔵量の変動の全体容量に対する割合が相対的に大きくなったとしても、供給可能な電力が低下する場合として、周知事項に鑑みて、上記のとおり、本件補正発明のように構成することにより、当業者が予測し得る程度のものである。(本件審決第2の2-2⑷、審決書17~1」9頁。以下、上記引用部分を「本件容易想到性判断部分」といい、この引用部分中で「周知技術」と定義された事項を「本件周知技術」と、「周

5 知事項」と定義された事項を「本件周知事項」と、それぞれいう。)(イ) 本件審決は、本件容易想到性判断部分を踏まえ、本件補正発明は、引用発明、本件周知事項及び本件周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであると判断した。(本件審決第2の2-2⑹、審決書26頁)エ そして、本件審決は、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとし、よって、本件補正の却下の決定の結論のとおり決定するとした。(本件審決第2の3、審決書26頁)

⑵ 本願の発明について本件審決が上記⑴の判断を踏まえてした説示の要旨は、次のとおりである。ア 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和4年10月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、本判決の前記第2の1⑵アの請求項1に記載された事項により特定されるものである。(本件審決第3の1、審決書26~27頁)イ 本願の請求項1に係る発明と引用発明は、本判決の前記⑴イの相違点と同様である。(本件審決第3の4⑴、審決書27頁)ウ そして、相違点に係る本願の請求項1に係る発明の特定事項のように構成することについては、本件容易想到性判断部分のとおり、引用発明、本件周知事項及び本件周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得るものである。また、本願の請求項1に係る発明の効果の予測性についても、本件容易

5 想到性判断部分のとおり、引用発明に基づいて、当業者が予測し得る程度のものである。(本件審決第3の4⑵、審決書28頁)エ したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、本件周知事項及び本件周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。(本件審決第3の4⑶、審決書28頁)オ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。(本件審決第4、審決書28頁)4 取消事由原告が主張する取消事由は、容易想到性についての判断の誤りである。なお、原告は、審決の理由に対する認否(令和6年7月3日付け準備書面の

第3)において、本件審決が認定した引用発明は認めるとし、引用発明と本件

補正発明との一致点及び相違点の認定については、争うと述べているが、原告は本件訴訟において上記一致点及び相違点の認定の誤りについて具体的な主張をしていない。また、原告は、本件審決について、相違点の判断を誤っていると主張するが、その内容からすれば、容易想到性についての判断の誤りを主張するものと解される。

第3 取消事由(容易想到性についての判断の誤り)に関する当事者の主張

〔

(原告の主張)

〕

1 発明対象の技術的性質について

引用文献(甲1)には、引用発明である「車両」が記載されているが、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンが記載されていない。引用発明は、前記第2の3⑴のとおり、「アクセルペダルの操作量」について

5 記載しているところ、「アクセルペダル」は四輪自動車に特徴的な構成であり、

このことは技術常識である。これに対し、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両は、アクセルペダルではなくアクセルグリップを備える。アクセルグリップが、オートバイ、すなわちリーン姿勢で旋回可能に構成された車両に特徴的な構成であることは技術常識である(甲13)。また、ドローンについても、当業者は、引用文献のアクセルペダルの記載から、ドローンを想起しない。上記のとおり、引用文献には、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンが記載されておらず、かつ、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンではなく、四輪自動車に特徴的な構成であるアクセルペダルが記載されているから、当業者は、引用文献の記載から、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンを想起しない。また、本件補正発明は、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンであることにより、引用文献に示される車両の場合とは質の異なる新規な課題を有するため、引用発明の車両(ビークル)を、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンとすることは、当業者にとって容易とはいえない。

2 課題について

⑴ リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおける加速の応答

性は、単に移動の速度に影響するだけでなく、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローン自体が傾くか否かといった姿勢に影響する。つまり、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローン自体の姿勢の制御性は、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおける加速制御の応答性に影響される。

⑵ リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルは、カーブの内側に傾いた姿

勢で旋回するように構成されるため、例えば四輪で地面に支持され傾くことが不要な四輪自動車よりも格段に小型軽量であることが求められる。さらに、

5 リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルは、推進装置の出力増加に伴う、

ビークル車体自身の加速応答性を高め、そのことにより姿勢の制御応答性を良好にするという課題に対しても、小型軽量であることが求められる。このため、リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルに備えられるエネルギー貯蔵装置は、例えば四輪自動車の場合と比較して格段に小型軽量である。また、航空機であるドローンは、空中で移動又は滞在するため、四輪自動車よりも格段に小型軽量であることが求められる。このため、ドローンに備えられるエネルギー貯蔵装置は、例えば四輪自動車の場合と比較して格段に小型軽量である。エネルギー貯蔵装置においてエネルギーを蓄えることが可能な容量は、通常、エネルギー貯蔵装置の大きさに依存する。したがって、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンに備えられるエネルギー貯蔵装置の容量は、例えば四輪自動車の場合と比較して格段に小さい。このため、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態は、充電及び放電によって短時間で増大及び減少する。リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおけるエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態は、例えば、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおける一度の移動の期間内で増大及び減少するように変動する。エネルギー貯蔵装置に蓄積されたエネルギーは、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおける加速に用いられるため、加速応答性は、エネルギー貯蔵状態の変化に応じて短時間で変動しやすい。リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンの姿勢は加速の制御によって制御されるため、加速応答性が短時間で変動すると、姿勢の制御性も短時間で変動しやすい。本件補正発明は、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいて、エネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有することで、エネルギーの貯蔵の容量が格段に小さくエネルギー貯蔵

5 状態が短時間で変動し、姿勢の制御性が変動しやすい、リーン姿勢で旋回可

能に構成された車両又はドローンにおいて、姿勢の制御性をエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に対応させるという課題を解決する。

⑶ア 引用発明は、車両用駆動力制御装置に関し「バッテリの温度が低いとき

に、バッテリから加速に必要な電力を供給できなくなるのを防止し、良好な加速応答性を確保すること」(引用文献の段落【0008】)を課題として、「バッテリ9の『バッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合にはバッテリ温度が低いほど』同じ出力を保ちつつエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低トルク側へと変更しエンジン1の余裕トルクを増大させるものである」(審決書17頁6~9行)。このようなバッテリの温度の低下によって電力を供給できなくなることは、エネルギー貯蔵量の減少によって電力を供給できなくなることと明確に区別される、異なる事象である。リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンでは、前記⑵のとおり、移動中の充電及び放電に伴い、エネルギー貯蔵量が短時間で変動する。これに対し、引用文献のバッテリ温度は、車両が置かれる環境の温度を反映しているものであり、短時間で変動するものではない。イ 本件補正発明の課題は、エネルギー貯蔵状態に応じた制御によって、エネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有し、これによって、エネルギー貯蔵状態が短時間で変動し姿勢の制御性が変動しやすい、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいて、エネルギー貯蔵状態に姿勢の制御性を対応させるものであり、この課題は、引用発明の車両におけるバッテリの温度に応じた制御とは、解決する課題の質において異なる。ウ リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいて、エネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有する

5 ことによって、姿勢の制御性を、エネルギー貯蔵状態における短時間での

変動に対応させる、という本件補正発明の特徴点に到達するために、引用発明の車両におけるバッテリの温度に応じた制御をしたはずであるという示唆等は、引用文献及び周知技術として挙げられたいずれの文献にも存在していない。

⑷ 本件審決では、本件補正発明の課題及び引用発明の課題を上位概念化した

結果、目的とする課題の把握に当たって、その中に解決手段ないし解決結果の要素が入り込んでいる。本件審決における課題の上位概念化には、以下のとおり誤りがある。ア 本件審決は、本件補正発明の課題を、「エネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態は引用発明のバッテリ温度が低下した場合と共通する課題を内在する」と認定しており、本件補正発明のエネルギー貯蔵量という特徴を排除して上位概念化しており、容易想到性の有無を客観的に判断するために不可欠な、本件補正発明が目的とする課題を的確に把握しているとはいえない。イ 本件審決は、引用発明の課題について、「エンジンの効率を高めるべくエンジンを相対的に低回転かつ高負荷で運転する(…中略…)と、『エンジンの余裕トルクが小さくなる』ことにより、エンジンの応答性、更には発電機の応答性が低下し、車両の急加速時に必要な電力を発電機から電動機に供給できない状況が生じ、加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことによる加速不良を解消し良好な加速応答性を確保することを課題として」いると認定しており、引用発明の課題における重要な要素であり具体的な記載である「バッテリの温度が低いとき」を捨て去り、引用発明を抽象化、一般化ないし上位概念化している。そして、本件審決は、車両である引用発明に対し「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えたビークルが、リーン姿勢で旋回可能に構成さ

5 れた車両であること」、さらに、「エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場

合やエネルギー貯蔵量(SОC)が低下した場合に、エネルギー貯蔵装置の供給可能電力が低下すること」を組み合わせることによって、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいて姿勢の制御性をエネルギー貯蔵状態における短時間での変動に対応させる本件補正発明の相違点に係る技術的構成に到達することが容易であるか否という判断を省略して、容易であるとの結論を導いている。ウ 本件補正発明と引用発明とは、解決課題及び技術思想を互いに異にするものであって、引用発明を前提とする限りは、本願発明と共通する解決課題は生じ得ないにもかかわらず、本件審決は、本件補正発明の解決課題を想定した上で、課題を上位概念化し、その解決手段として周知技術を適用することが容易であると判断して、引用発明から本願発明の容易想到性を導いている。

⑸ 本件審決は、

「周知事項に鑑みて、バッテリ(エネルギー貯蔵装置)温度が低い場合に代えて、あるいは、これに加えて、エネルギー貯蔵量(SОC)が低下した場合を採用」することに「格別の困難性は認められない」と認定している(審決書19頁6~11行)。しかし、仮に、引用発明において、バッテリ温度が低い場合に代えてSОCが低下した場合を採用した場合、引用文献の【発明が解決しようとしている問題点】(引用文献の段落【0008】)に記載された「バッテリの温度が低いときに、バッテリから加速に必要な電力を供給できなくなるのを防止し、良好な加速応答性を確保すること」という引用発明の課題が解決できなくなる。つまり、バッテリ温度が低い場合を条件とすることと、SОCが低下した場合を条件にすることには、引用文献に対する適用の阻害要因を構成し得る程の質的な差異があるといえる。また、引用文献には、バッテリの温度が低いときにバッテリから加速に必

5 要な電力を供給できなくなるのを防止するため発電機の発電出力の応答を早

めることは記載されているが、SОCが低下した場合にエンジンの回転速度を増速することは、記載も示唆もされていない。引用文献では、バッテリの温度が低いときに発電機の発電出力の応答を早めることによって、良好な加速応答性を確保するという目的を達成しているのであるから、バッテリ温度が低い場合に加えて、SОCが低下した場合を採用することの契機とはなり得ない。したがって、「周知事項に鑑みて、バッテリ(エネルギー貯蔵装置)温度が低い場合に代えて、あるいは、これに加えて、エネルギー貯蔵量(SОC)が低下した場合を採用」することは、容易といえない。

3 効果について

本件補正発明の効果は、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいて、エネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有し、これによって、本来エネルギー貯蔵状態が短時間で変動するため、姿勢の制御性が変動しやすい、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいて、姿勢の制御性を、エネルギー貯蔵状態における短時間での変動に対応させることができるという特異な効果を有する。本件補正発明の効果は、周知技術を考慮に入れても当業者が予測し得る程度のものではない。本件審決が、本件補正発明の効果について、「当業者が予測し得る程度のものである」とし、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものであると判断したことは、誤りである。〔

(被告の主張)

〕

1 引用発明は、

「バッテリの温度が低いときに、バッテリから加速に必要な電力を供給できなくなるのを防止し、良好な加速応答性を確保する」(引用文献の段落【0008】)との課題を解決するために、「バッテリ9及び/又は発電機2から供給される電力で駆動される電動機4によりアクセル操作量APSに応

5 じた駆動出力が得られるように」 「発電機2の発電出力の充電及び電動機4に

、電力を供給するバッテリ9のバッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合にはバッテリ温度が低いほど同じ出力を保ちつつエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低トルク側へと変更しエンジン1の余裕トルクを増大させる」との制御を行うことにより、「発電機2の発電出力の応答が早められる」(引用文献の段落【0026】)ものである。このような引用発明の技術的意義からすれば、バッテリを有しており、アクセル操作量に応じてバッテリ及び/又は発電機から供給される電力に不足が発生しうる車両であれば、上記制御を行うことによって、上記技術的意義が果たされるから、引用発明の車両の対象としては、任意の車両を対象とし得るものであって、四輪自動車に限られず、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンを特段排除するものではない。また、本件審決が引用発明として「バッテリ9及び/又は発電機2から供給される電力で駆動される電動機4によりアクセル操作量APSに応じた駆動出力が得られるように」 「エンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低、トルク側へと変更しエンジン1の余裕トルクを増大させる駆動力制御装置」と認定したとおり、引用文献には、かかる制御を行う駆動力制御装置が記載されており、引用文献の大半において、該駆動力制御装置について「アクセル操作量」を用いて説明がなされている(段落【0022】、【0023】、【0039】、【0041】及び【0048】 。一方、) 「アクセルペダル」が記載されているのは、段落【0047】の「例えば、図4に示すようにアクセルペダルの操作量が」との箇所だけであるから、引用発明の技術的意義からみても、引用発明における「アクセル操作量APS」はアクセルペダルのみを対象としたものではない。その意味で、引用発明の「アクセルペダルの操作量」との認定(審決書12頁32行、13頁1行、4行)は、引用文献の段落【0047】の記載を踏ま

5 えれば、「アクセル操作量」の具体的一例として、「アクセルペダルの操作量」

と認定したものに過ぎず、引用発明の駆動力制御装置の対象は、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンを特段排除するものではない。引用発明の車両の対象としては、アクセルペダルを有する四輪自動車に限られず、任意の車両を対象とし得るものであって、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンを特段排除するものではない。リーン姿勢で旋回可能に構成された車両において、アクセルペダルを備えたものがあることは、周知の事項である(乙1~3)。また、本件審決において周知技術を示す文献として例示した特開2006-298186号公報(甲4)や特開2007-131179号公報(甲5)は、エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えたリーン姿勢で旋回可能に構成された車両を開示するものである。これらを踏まえると、アクセルペダルを有する車両には、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両も含まれる。以上によれば、引用発明の車両の対象としては、アクセルペダルを有する四輪自動車に限られず、任意の車両を対象とし得るものであって、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンを特段排除するものではない。

2 引用文献の段落【0043】の記載によれば、引用発明は、本件審決が認定

したとおり、「バッテリ9のバッテリ温度が低く供給可能な電力が低下する場合」があるもの、すなわち、バッテリ9のバッテリ温度が低い場合、バッテリ9から供給可能な電力が低下するものである。また、本件審決が判断するとおり、「周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両及びそのエネルギー貯蔵装置は一般的に小型」(審決書17頁23~25行)である。そして、乙5(【0004】)及び乙6(【0006】【00、08】 【0009】 【0011】 【0012】 【0026】 【0028】及び、 、 、 、 、【0029】)にも記載されるように、一般的に小型のエネルギー貯蔵装置は、エネルギー貯蔵可能な電力の総量、すなわち、供給可能な電力の総量が低いこ

5 とは、技術常識である。したがって、周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成

された車両又はドローンにおいては、エネルギー貯蔵装置が小型であることにより、「エネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態」(審決書17頁25~26行)が形成されるものといえる。そうすると、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」の「エネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態は引用発明のバッテリ温度が低下した場合と共通する課題を内在する」(審決書17頁25~26行)における「共通する課題」とは、 エネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態」「に対応することと理解できる。加えて、本件審決において「エネルギー貯蔵装置に限らず小型化及び軽量化はごく一般的な課題であって引用発明にも当然に要請される内在する課題でもあって」(審決書17頁27~29行)と判断したとおり、車両一般において、部品の小型化及び軽量化はごく一般的な課題であるから、車両の発明である引用発明においても、部品(バッテリ)の小型化及び軽量化は、当然に要請される課題である。そうすると、本件審決の「一般的にエネルギー貯蔵装置が小型である周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両における課題とも共通する」(審決書17頁30~32行)の「課題」とは、エネルギー貯蔵装置の小型化及び軽量化に起因したエネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態に対応するという課題であると理解できる。以上によれば、本件審決の審決書17頁13行ないし34行に記載された判断は、引用発明の車両について、周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両を特段排除するものではないことを前提とし、引用発明の車両も、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両も、エネルギー貯蔵装置の小型化及び軽量化に起因してエネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態に対応するという同様の課題を有することを踏まえ、引用発明の車両を、周知技術を

5 考慮に入れて、上記の同様の課題を有するリーン姿勢で旋回可能に構成された

車両とすることに、格別な困難性がない、と判断したものと理解できる。

3 本件補正発明の課題に関し、原告は、前記〔

(原告の主張)

〕2⑶アないしウのとおり主張する。しかし、まず、前記〔

(原告の主張)

〕2⑶イ及びウについては、主引用例の選択の場面では、そもそも請求項に係る発明と主引用発明との間で、具体的な課題が共通している必要は必ずしもないから、

(原告の主張)

は、その前提において失当である。また、原告が主張する課題についてみても、当該課題は、本願明細書等に記載も示唆もされていない。本願明細書等の段落【0004】に「本発明の目的は、燃料消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有するビークルを提供することである。」と記載されていることからすれば、本件補正発明の課題は「燃料消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有するビークルを提供すること」である。他方、本願明細書等においてリーン姿勢で旋回可能に構成されている車両について記載があるのは、段落【0022】の記載のみである。令和4年10月4日提出の意見書(乙4)及び令和5年4月12日提出の審判請求書(甲10)にも、原告が主張する課題は記載されていない。前記〔

(原告の主張)

〕2⑶アの主張も、乙4及び甲10に記載されておらず、本願明細書等に基づかない主張である。また、前記〔

(原告の主張)

〕2⑶アの主張に関して、エネルギー貯蔵状態が短時間で変動することは、小型のエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵可能な電力の総量が低いことに起因することであるといえる。そして、前記2のとおり、引用発明においても、部品(バッテリ)の小型化及び軽量化は、当然に要請される課題であることから、引用発明もバッテリの小型化及び軽量化に伴い、エ

5 ネルギー貯蔵状態は短時間で変動する状態が生じうることは、当業者であれば

当然理解できる。さらに、前記1のとおり、引用発明の車両を、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両とすることに、格別な困難性は認めらない。ここで、後記5において詳述するように、引用発明において、バッテリ温度が低い場合に加えてSOCが低下した場合を採用することは容易であるところ、周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンにおいては、エネルギー貯蔵装置が小型であり、また、引用発明においても、部品(バッテリ)の小型化及び軽量化は、当然に要請される課題であることから、引用発明の車両をリーン姿勢で旋回可能に構成された車両としたものにおいても小型のバッテリの小型化及び軽量化に伴い、エネルギー貯蔵状態は短時間で変動する状態が生じうることは、当業者であれば当然理解できる。したがって、原告の前記〔

(原告の主張)

〕2⑶アないしウの主張はいずれも失当である。

4 引用文献の段落【0040】ないし【0042】及び【0044】の記載に

よれば、引用文献には、バッテリの温度に関わらず、加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことにより加速応答性が低下することが記載されているといえる。また、引用文献の段落【0043】において、「更に、バッテリ温度が低い時」と記載されているように、「バッテリ温度が低い時」はバッテリ9からの出力不足が起きやすい状況のうちで特出されたものであって、バッテリ9からの出力不足が起きやすい状況は「バッテリ温度が低い時」に限られない。したがって、これらの記載に接した当業者は、引用発明の課題として、加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことによる加速不良を解消し、良好な加速応答性を確保することを認識するものといえるから、本件審決における引用発明の課題の認定に誤りはない。また、本件審決では、引用発明は、本件補正発明における「燃料消費の増大

5 を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示

に対する出力の応答に再現性を有するビークルを提供する」(本願明細書等の段落【0004】)という課題ないし効果と同様に、エネルギー貯蔵装置の供給可能な電力に関わらずに、供給可能な電力に応じて「加速制御を実施したり、あるいは実施しなかったりという実施状況が運転中に変わりやすくなる事態を抑制することができる」ことを課題とするものであると認められると判断しており(本件審決18頁11~18行)、このように、引用発明の課題と、本件補正発明の課題との共通性を評価しているものであって、本件補正発明の課題を上位概念化しているものではない。

5 本件審決のとおり、「エンジンと電動機とエネルギー貯蔵装置とを備えたビ

ークルの技術分野において、『エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場合やエネルギー貯蔵量(SОC)が低下した場合に、エネルギー貯蔵装置の供給可能電力が低下すること。』は、きわめて周知の技術的事項」(本件審決18頁27~31行)である。そして、引用発明は、「加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことによる加速不良を解消し良好な加速応答性を確保することを課題としており」(本件審決18頁9~11行)、上記周知事項を知悉する当業者は、供給可能な電力が低下する場合として、引用文献に明示されているバッテリ(エネルギー貯蔵装置)温度が低い場合に加えて、SОCが低下した場合を当然に想起するものである。また、引用発明は、「供給可能な電力が低下する場合に」「発電機2(発電用、電動機)の動作点」を「高回転速度且つ低トルク側へ変更」する(負荷トルクを減少することによりエンジン(及び発電機2(発電用電動機))の回転速度を増速する)制御を行って、良好な加速応答性を確保しているものである。ここで、引用発明において、良好な加速応答性の確保は、できるだけ多くの場合において達成されることが望ましいことは明らかであるから、かかる制御を行う場合として、バッテリ(エネルギー貯蔵装置)温度が低い場合に加えて、SО

5 Cが低下した場合を採用することは、当業者が十分に動機付けられた事項とい

える。そして、かかる制御を行う場合の追加は、いずれかの場合に該当すれば、かかる制御が行われるとの関係にあるものである。したがって、かかる制御を行う場合として、SОCが低下した場合を追加したからといって、バッテリ(エネルギー貯蔵装置)温度が低い場合に、かかる制御が行われなくなるものではない。

6 原告は、本件補正発明の効果は、姿勢の制御性に関するものである旨主張す

る。しかし、本願明細書等の段落【0013】の記載によれば、本件補正発明の効果は、「エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に関わらずに、加速指示に対する出力の応答に再現性を維持することができる」ことであるといえる。そして、かかる効果は、引用発明に、周知技術及び周知事項を採用した発明においても奏する効果であることは明らかであり、本件審決の判断に誤りはない。仮に、「姿勢の制御性」に関する効果が本願明細書等の段落【0022】の記載から自明な効果であるとすると、引用発明、周知事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明においても、その車両はリーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンであり、「カーブの内側に傾いた姿勢で旋回するように構成され」たものであって、「旋回時にビークルに加わる遠心力に対向する」ものであり、「軽快性が求められる」ものであることは自明であり、「姿勢の制御性」に係る効果を奏することも自明であるといえる。

第4 取消事由(容易想到性についての判断の誤り)に関する当裁判所の判断

1 本件補正発明について

⑴ 特許請求の範囲

本願に係る特許請求の範囲の記載のうち、本件補正後の請求項1は前記第2の1⑵イのとおりである。また、請求項2は前記第2の2⑴に、請求項3は前記第2の2⑵に、それぞれ記載のとおりである。

5 ⑵ 本願明細書等の記載

本願明細書等(甲6)には、次のとおりの記載がある。ア 技術分野「本発明は、ビークルに関する。 (段落【0001】」 )イ 発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段「推進用電動機により走行するビークルでは、 燃料消費の増大を抑制しつつ工ネルギ一貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性のあることが望まれている。本発明の目的は、燃料消費の増大を抑制しつつ、工ネルギ一貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有するビークルを提供することである。 (段落【0004】」 )「特許文献1(判決注:特開2007-131179号公報)に開示されるビークルでは、エネルギー貯蔵装置及び/又は発電機から電力が供給されることにより推進用電動機が駆動され、ビークルが推進する。特許文献1に開示されるビークルでは、推進用電動機に、エネルギー貯蔵装置からエネルギーとして貯蔵した電力が供給され、さらに発電機から電力が供給されることによって、加速指示に対するビークルの加速の応答性が向上する。このため、ビークルの加速能力は、ビークルに搭載されるバッテリの充電状態の影響を受けやすい。 (段落【0005】」 )「例えば、ビークルの運転者により加速指示が行われ目標パワー(推進用電動機から出力するパワーの目標)の増加が求められた場合、制御装置は目標パワーに向けてエネルギー貯蔵装置及び発電用電動機から推進用電動機に供給する電力を増大する。エネルギー貯蔵装置及び発電用電動機から推進用電動機に供給する電力が増大すると、推進用電動機から出力されるパワーは増加する。しかし、エネルギー貯蔵装置に貯蔵された電力が基準値未満である場合、エネルギー貯蔵装置から推進用電動機に供給でき

5 る電力は少ない。従って、エネルギー貯蔵装置及び発電用電動機から供給

される電力だけでは、推進用電動機が出力するパワーの目標パワーへの到達に時間がかかる場合がある。発電用エンジンの回転速度によっては、加速指示に対応した電力を発電するための発電用エンジンからのパワーの出力するのが遅れてしまう場合があるからである。 (段落【0006】」 )「特許文献2(判決注:特開2016-199225号公報)のビークルの制御装置は、エネルギー貯蔵装置の電力量に応じて、エンジンの回転速度を増速する。その後、特許文献2のビークルは、エネルギー貯蔵装置に貯蔵した電力を出力増加(加速指示)で推進用電動機に供給することにより推進用電動機に供給される電力を増大する。特許文献2のビークルは、出力増加時に推進用電動機に供給するための電力を、出力増加よりも前にエネルギー貯蔵装置に貯蔵する。しかし、特許文献2のビークルは、出力増加よりも前に、エンジンから出力されるパワーを増加させて電力をバッテリに貯蔵する。従って、特許文献2のビークルは、エンジンの燃料消費量が増大する。 (段落【000」7】)「そこで、本発明者らは、加速指示よりも前にエンジンの燃料消費量を増大することなく、加速指示を契機としてエンジンからパワーを遅れなく出力することを検討した。この検討の中で、本発明者らは、少なくともエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に応じて発電用電動機の負荷トルクを減少することにより、エンジンの回転速度を増速できることが分かった。予めエンジンの回転速度が増大すると、その回転速度においてエンジンに供給される燃料及び空気が増大する場合にエンジンから出力されるトルクは、例えば、予めエンジンの回転速度の増大がない場合のトルクと比べて増大する。つまり、予めエンジンの回転速度が増大すると、その回転速度においてエンジンに供給される燃料及び空気が増大する場合にエ

5 ンジンから出力されるパワーは、例えば、予めエンジンの回転速度の増大

がない場合のパワーと比べて増大する。即ち、燃料及び空気が増大する場合に、回転速度の更なる増大を待たずに出力されるパワーが増大する。このため、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量が小さい場合でも、エネルギー貯蔵量が大きい場合のように応答の遅れを抑えつつ、エネルギー貯蔵装置および発電用電動機から目標パワーに対応する電力を出力することができる。これにより、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に関わらずに、加速指示に対する出力の応答に再現性を維持することができる。また、加速指示よりも前にエンジンに対する発電用電動機の負荷トルクを減少することによってエンジンの回転速度を増速する。即ち、エンジンのパワーの増大を抑えつつ、回転速度を増速する。従って、エンジンの燃料の消費を抑制することができる。 (段落【0008】」 )「これにより、燃料消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有するビークルを実現することができる。 (段落【0009】」 )「(1)のビークル(判決注:本件補正前の請求項1に記載のビークル)は、エンジンと、発電用電動機と、エネルギー貯蔵装置と、推進用電動機と、推進器と、制御装置とを備える。エンジンは、回転するクランク軸を有し、燃焼によって生じるパワーをクランク軸のトルク及び回転速度として出力する。発電用電動機は、クランク軸と連動するよう設けられエンジンに駆動され発電する。エネルギー貯蔵装置は、発電用電動機で発電された電力をエネルギーとして貯蔵する。推進用電動機は、エネルギー貯蔵装置及び/又は発電用電動機からの電力の供給を受けてパワーを出力する。

5 推進器は、推進用電動機から出力されたパワーによって駆動される。

制御装置は、エンジンと、推進用電動機と、発電用電動機とを制御する。加速指示に応じて推進用電動機に供給される電力を増大するようエンジン及び発電用電動機を制御する。ビークルの推進器が推進用電動機から出力されたパワーのみによって駆動される場合、制御装置は、加速指示よりも前に、少なくともエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に応じて発電用電動機の負荷トルクを減少する。これにより制御装置は、加速指示よりも前にエンジンの回転速度を増速する。これにより、ビークルは、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に関わらずに、加速指示を契機として、エネルギー貯蔵装置に貯蔵された電力及び/又は発電用電動機から供給される電力により加速指示に応じた目標パワーを出力する。 (段落【00」12】)「加速指示よりも前にエンジンの回転速度が増速すると、その回転速度においてエンジンに供給される燃料及び空気が増大する場合にエンジンから出力されるトルクは、例えば、予めエンジンの回転速度の増速がない場合のトルクと比べて増大する。つまり、予めエンジンの回転速度が増速すると、その回転速度においてエンジンに供給される燃料及び空気が増大する場合にエンジンから出力されるパワーは、例えば、予めエンジンの回転速度の増速がない場合のパワーと比べて増大する。例えば、エンジン回転速度が増速することによってエンジンの余裕駆動力が増加する。余裕駆動力とは、加速指示の前のエンジンから出力されるパワーと、加速指示前における回転速度でエンジンから出力可能な最大パワーとの差である。このため、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量が小さい場合でも、エネルギー貯蔵量が大きい場合のように応答の遅れを抑えつつ、エネルギー貯蔵装置および発電用電動機から目標パワーに対応する電力を出力す

5 ることができる。これにより、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に

関わらずに、加速指示に対する出力の応答に再現性を維持することができる。

(1)のビークルにおいて、制御装置は、加速指示よりも前に、発電用

エンジンに対する、発電用電動機の負荷トルクを減少することにより、エンジンの回転速度を増速する。即ち、エンジンのパワーの増大を抑えつつ、回転速度が増大する。従って、エンジンの燃料の消費を抑制することができる。このように(1)の推進用電動機は、エネルギー貯蔵量に関わらずに、燃料消費を抑制しつつ、加速指示に応じた目標パワーを出力できる。

(1)のビークルは、燃料消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置

のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性を有することができる。 (段落【0013】」 )「また、発電用電動機の負荷トルクを減少することによりエンジンの回転速度を増速する場合、回転速度が増速しても、発電用電動機から出力される電力は増加しない。このため、エネルギー貯蔵装置が満充電の状態となりエネルギー貯蔵装置が劣化する可能性を減少することができる。従って、

(1)ビークルによれば、エネルギー貯蔵装置の大型化を抑制しつつ、

加速指示よりも前にエンジンの余裕駆動力を増大することができる。 (段」落【0014】)「ビークルは、輸送機関である。ビークルは、例えば車輪を有する車両である。ビークルとしては、例えば、自動車、列車、船舶、航空機などが挙げられる。自動車としては、特に限定されず、例えば、四輪自動車、鞍乗型車両などが挙げられる。四輪自動車は、例えば、車室を有する。航空機としては、特に限定されず、例えば、回転翼機、固定翼機などが挙げられる。回転翼機としては、ヘリコプター、マルチコプター、ドローンが挙げられる。固定翼機としては、飛行機が挙げられる。ビークルは、運転者

5 が搭乗することにより直接運転してもよく、また、運転者が搭乗せずに無

線等により運転してもよい。ビークルは、ゴルフカーであってもよい。ビークルは、キャタピラタイプの雪上車であってもよい。ビークルは、除雪機であってもよい。 (段落【0020】」 )「また、ビークルは、例えば、リーン姿勢で旋回可能に構成されている。リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルは、カーブの内側に傾いた姿勢で旋回するように構成される。これにより、リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルは、旋回時にビークルに加わる遠心力に対抗する。リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルとしては、例えば、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車)が挙げられる。リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルでは、軽快性が求められるため、発進の操作に対する進行の応答性が重要視される。リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルでは、例えば、動力源から推進器までの動力伝達経路に、流体の力学的作用を利用したトルクコンバータが設けられていない。 (段落【0022】」 )「推進器は、例えば、車輪(駆動輪)、キャタピラー、プロペラなどが挙げられる。ビークルが自動車である場合は、推進器は、例えば車輪(駆動輪)である。駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、駆動輪は、後輪及び前輪の双方でもよい。ビークルが航空機である場合は、推進器は、例えばプロペラである。 (段落【0028】」ウ 発明の効果「本発明によれば、燃料の消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵状態に関わらず加速指示に対する出力の応答に再現性のあるビークルを提供することができる。 (段落【0032】」 )

⑶ 本件補正発明の概要

本件補正発明に係る特許請求の範囲の記載(前記⑴)及び本願明細書等の

5 記載(前記⑵)によれば、本件補正発明は、加速指示の前に、エンジンに対

する発電用電動機の負荷トルクを減少することによってあらかじめエンジンの回転速度を増速させ、これにより、エンジンに供給される燃料及び空気が増大する場合にエンジンから出力されるパワーを増大させて、燃料消費の増大を抑制しつつ、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵量に関わらずに、加速指示に対する出力の応答に再現性を維持することができる、ビークルの発明である(段落【0008】 【0009】 【0012】 【0013】 【00、 、 、 、32】 。)そして、本件補正発明は、上記のようなビークルであるとともに、ビークルがリーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンである発明である。

2 引用発明について

⑴ 引用文献(甲1)には、別紙「引用文献の記載」のとおりの記載がある。

⑵ 本件審決は、引用文献に前記第2の3⑴アのとおりの引用発明が記載され

ていると認定しているところ、原告は審決の理由に対する認否において、本件審決における引用発明の認定を認めるとしているので、本判決においては、引用文献に引用発明が記載されているものとして判断する。また、本件審決は、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点を前記

第2の3⑴イのとおりであると認定しているところ、原告はこれを争うとし

ているが、上記一致点及び相違点の認定の誤りについて具体的に主張せず、認定すべき一致点及び相違点の主張もしておらず、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は本件審決認定のとおり認めるのが相当であるから、本判決においては、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は本件審決認定のとおりであるものとして判断する。

3 「引用発明の車両を、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローン

とすることに格別の困難性は認められない」との判断の相当性について

⑴ 本件審決が認定した本件補正発明と引用発明との相違点(前記第2の3⑴

5 イ)の中には、本件補正発明はビークルがリーン姿勢で旋回可能に構成され

た車両又はドローンである発明であるのに対し、引用発明はそのようなものであるか明らかでないことが含まれている。そして、本件審決は、容易想到性の判断(本件容易想到性判断部分)において、引用発明の車両を、本件周知技術を考慮に入れて、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両とすることに格別の困難性は認められず、ビークルがドローンであることについても、ドローンは、リーン姿勢で旋回可能構成された車両と同様に一般的に小型でエネルギー貯蔵装置も小型であることから、同様に、引用発明の車両をドローンとすることに格別の困難性は認められないと判断した。以下、引用発明の車両を「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」又はドローンとすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断の相当性について検討する。

⑵ 引用発明の車両を「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」とすること

の困難性の有無についてア 本件補正発明の「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」の意味について本願明細書等に「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」の定義はないが、本願明細書等の段落【0022】には、「リーン姿勢で旋回可能に構成されたビークルとしては、例えば、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車)が挙げられる。」との記載が、 【0020】段落 には、「ビークルは、例えば車輪を有する車両である。」との記載が、 【0021】段落 「鞍乗型車両(straddled vehicle)とは、には、運転者がサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定

5 されず、例えば、自動三輪車、ATV(All- Terrain Vehicle)等であっても

よい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。 との記載が、」 それぞれ存在しており、これらの本願明細書等の記載によれば、本件補正発明の「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」は、車輪を有し、この車輪が回転することによって陸上を走行する車であって、リーン姿勢で旋回可能に構成されたものであると認められる。イ 引用発明の車両が「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」を除外するかについて本件審決は、本件容易想到性判断部分において、「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えたビークルが、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両であること。 が周知技術」 (本件周知技術)であると認定しているところ、証拠(甲4、5)及び弁論の全趣旨によれば、「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えたビークル」として「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」が存在することは周知技術であると認められる。引用発明は、駆動力制御装置を備える車両であるが、この駆動力制御装置は、「アクセルペダルの操作量が増大されるのに応じて電動機4に供給される電力が増大していくようエンジン1及び発電機2の制御を行」うものであって(前記第2の3⑴) 引用発明の車両はアクセルペダルを備える、ものであると認められる。しかし、証拠(乙1~3)によれば、アクセルペダルが「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」にも採用され得るものであることは、本件優先日より前に当業者に周知であったものと認められる。以上によれば、当業者が引用文献の記載に触れた場合に、「アクセルペダル」との記載があることをもって、引用発明の「車両」から、直ちに、「リ

5 ーン姿勢で旋回可能に構成された車両」を除外するとはいえない。

ウ(ア) 本件審決が、引用発明の車両を「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」とすることに格別の困難性が認められないと判断した根拠となる理由(課題の共通性)について本件審決は、本件容易想到性判断部分において、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両及びそのエネルギー貯蔵装置は一般的に小型であってそれに伴うエネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いという状態は引用発明のバッテリ温度が低下した場合と共通する課題を内在するものともいえ、さらには、エネルギー貯蔵装置に限らず小型化及び軽量化はごく一般的な課題であって引用発明にも当然に要請される内在する課題でもあって(例えば、引用文献1の【従来の技術】に関する段落【0003】 『バッテリの容量及び重量を低減できる』の なる記載を参照。 、)一般的にエネルギー貯蔵装置が小型である周知技術のリーン姿勢で旋回可能に構成された車両における課題とも共通するともいえる」と説示し、この説示内容を、引用発明の車両をリーン姿勢で旋回可能に構成された車両とすることに格別の困難性が認められないとの判断の根拠の一つとしている。上記説示内容が、引用発明の車両をリーン姿勢で旋回可能に構成された車両とすることに格別の困難性が認められないとの判断の根拠となる理由について、本件審決は明確に示していないが、上記の説示によれば、引用発明が解決する課題と、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両が一般的に有する課題が共通することから、当業者において、引用発明の車両をリーン姿勢で旋回可能に構成された車両とする動機付けがあるとの趣旨であると解される。(イ) 引用発明の課題について引用文献には、「エンジンを低回転かつ高負荷で運転すると、エンジン

5 の余裕トルクが小さくなるため、エンジンの応答性、更には発電機の応

答性が低下し、車両の急加速時や補機負荷の急増時に必要な電力を発電機から電動機に供給できない状況が生じる」(段落【0006】、) 「このような状況であっても、不足電力分をバッテリから供給できれば加速応答性を損なわない良好な運転性を実現できるのであるが、バッテリ温度が低いとバッテリから供給可能な電力が小さくなって上記加速に必要な電力を供給できず、加速不良を生じてしまう。(段落【0007】、」 )「本発明は、上記技術的課題を鑑みてなされたものであり、バッテリの温度が低いときに、バッテリから加速に必要な電力を供給できなくなるのを防止し、良好な加速応答性を確保することである。」(段落【0008】 、)「蓄電装置の最大出力は蓄電装置の温度によって決まり、上記不足電力がこの最大出力を上回ると蓄電装置より十分な電力が供給できず、加速不良の原因となってしまうが、本発明を適用することにより、蓄電装置温度が低く最大出力が小さいときは発電出力の応答が早められ、発電出力の応答遅れによる不足電力が常に蓄電装置の最大出力以下に抑えられる。これにより、加速に必要な電力を蓄電装置から十分に補うことができないことによる加速不良が防止され良好な加速応答性を確保することができる。 段落(」 【0014】 との記載がある) (別紙「引用文献の記載」 。)引用文献の上記各記載によれば、引用発明は、バッテリの温度が低いときに、バッテリから供給できる電力が小さいという課題を解決するものであると認められる。(ウ) 「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」が有する課題、及び引用発明の課題との共通性の有無について本件審決における上記(ア)の説示内容のうち、まず、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両及びそのエネルギー貯蔵装置は一般的に小型」であることについては、その根拠が示されておらず、これを裏付ける証

5 拠が本件で提出されていることもない。

また、仮に、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両及びそのエネルギー貯蔵装置は一般的に小型」であるといえるとしても、車両に備わるエネルギー貯蔵装置(バッテリ)が小さい場合に、当該エネルギー貯蔵装置から供給可能な電力が低いと認めるに足りる証拠はない。電力とは「電流による単位時間当たりの仕事」を意味するところ(広辞苑第七版)、バッテリが小さい場合に、当該バッテリから供給可能な電力の総量が小さいといえたとしても、このことは、当該バッテリがある時点において供給する電力が低いことを直ちに意味するものではない。そうすると、上記(イ)のとおり、引用発明は、バッテリの温度が低いときに、バッテリから供給できる電力が小さいという課題を解決するものであるところ、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」について、エネルギー貯蔵装置(バッテリ)から供給可能な電力が低いとの課題が一般的に存在すると認めるに足りないから、引用発明が解決する課題と、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」が一般的に有する課題が共通するとはいえない。したがって、引用発明の課題と、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」が一般的に有する課題が共通するために、当業者において、引用発明の車両を「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」とする動機付けがあると認めることもできない。(エ) 引用発明の車両を「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」とすることについての本件審決の判断の相当性についてそうであるとすれば、引用発明の車両を、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」とすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断は、その根拠を欠くものであり、判断の理由を示しておらず、誤りがあるというべきである。(オ)

(被告の主張)

の検討

5 被告は、前記第3の〔

(被告の主張)

〕4のとおり、引用文献の記載に接した当業者は、引用発明の課題として、加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことによる加速不良を解消し、良好な加速応答性を確保することを認識するものといえ、本件審決における引用発明の課題の認定に誤りはないと主張する。しかし、引用文献の段落【0006】ないし【0008】及び【0014】の記載によれば、引用発明は、バッテリの温度が低いときに、バッテリから供給できる電力が小さいという課題を解決するものであると認められることは、前記(イ)のとおりである。引用文献の段落【0039】ないし【0042】は、駆動力制御装置が適用される車両において、発電機2から電動機4に供給される電力が不足すると、バッテリ9から電動機4に不足分の電力が供給されるが、この不足分がその時点におけるバッテリ9の最大出力を超えてしまうと、電動機4へ供給できる電力が不足して駆動に使用できる電力が減少し、加速応答性が低下し、かつ、発電出力の応答はエンジン1の余裕トルクが小さいほど遅くなるという一般的な問題を挙げている。しかし、引用文献は、これに次いで、段落【0043】において、「更に、バッテリ温度が低い時にはバッテリ9の最大出力が低下するため、電動機4へ供給される電力が不足しやすくなる。 とあり、」 上記のバッテリ温度が低い場合には、前記の一般的な問題に加えて、バッテリ温度が低い場合の特有の問題も生じることを指摘しており、「そこで、本発明に係る駆動力制御装置では、バッテリ9の温度を検出し、検出された温度が低いときは同じ出力を保ちつつエンジン1及び電動機2の動作点を高回転速度且つ低トルク側へと変更し、エンジン1の余裕トルクを増大させている。 (段」落【0045】)としており、これらの引用文献の記載からも、引用文献はバッテリの温度が低い場合の構成を示すものであると認められる。し

5 たがって、引用文献の段落【0040】ないし【0042】及び【00

44】の記載や、段落【0043】に「更に」との文言が用いられていることをもって、引用発明の課題が被告の上記主張のとおりの内容であると認めることはできない。そして、本件審決は、「エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場合やエネルギー貯蔵量(SOC)が低下した場合に、エネルギー貯蔵装置の供給可能電力が低下すること。 が周知の技術的事項であると認定している」が(本件周知事項)、上記内容が周知の技術的事項であるのであれば、当業者は、エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場合、エネルギー貯蔵量が十分(例えば100%)であっても供給可能電力が低下することを認識するといえる。そうすると、当業者は、エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場合と、エネルギー貯蔵量が低下した場合とでは、状況が異なると理解するといえ、エネルギー貯蔵装置の温度が低下した場合に対応した構成を、エネルギー貯蔵量が低下した場合に採用する理由があると直ちに認めることはできず、上記構成をエネルギー貯蔵量が低下した場合に採用する理由があることの根拠を本件審決が示しているとも解されない。以上によれば、引用文献の記載に接した当業者が、引用発明の課題として、「バッテリ温度が低い時に」という前提を捨象して、加速に必要な不足電力分をバッテリから供給できないことによる加速不良を解消し、良好な加速応答性を確保することを認識するとは認められず、被告の上記主張は採用することができない。

⑶ア 引用発明の車両をドローンとすることの困難性の有無について

本件補正発明のドローンにつき、本願明細書等に定義は示されていないが、本願明細書等の段落【0020】には、「航空機としては、特に限定されず、例えば、回転翼機、固定翼機などが挙げられる。回転翼機としては、

5 ヘリコプター、マルチコプター、ドローンが挙げられる。」と記載されてお

り、ドローンは航空機のうち回転翼を有するものであり、回転翼を回転させて大気中を飛行するものであると認められる。これに対し、引用発明は車両の発明である(前記第2の3⑴ア) そして、。引用発明の車両は駆動輪を有するものであり、この駆動輪は電動機4の駆動出力によって駆動されるものである(前記第2の3⑴ア) このように、。引用発明の車両は、電動機4の駆動出力によって、駆動輪が動力を路面に伝えて走行するものであるから、車輪を有し、この車輪が回転して陸上を走行する車であると認められる。そうすると、車輪が回転して陸上を走行するものである引用発明の車両と、回転翼を回転させ大気中を飛行するものである本件補正発明のドローンとは、構造・移動形態が本質的に異なるといえる。そして、車両をドローンとすることが当業者の技術常識であるとも認められない。さらに、本件審決は、本件容易想到性判断部分において、「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えたビークルが、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両であること」を周知の技術(本件周知技術)と認定するが、ドローンが「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えた」ものであることを認めるに足りる証拠を示していないし、本件容易想到性判断部分において、引用発明の車両をドローンとすることにつき格別の困難性は認められないと判断する根拠として、ドローンについて「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両と同様に一般的に小型でエネルギー貯蔵装置も小型であること」を挙げるが、これを認めるに足りる証拠を示していない。そうであるとすれば、引用発明の車両をドローンにすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断は、その根拠を欠くものであり、判断の理由を示しておらず、誤りがあるというべきである。

5 イ

(被告の主張)

の検討被告は、前記第3の〔

(被告の主張)

〕1のとおり、引用発明の車両の対象としては、任意の車両を対象とし得るものであって、四輪自動車に限られず、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両又はドローンを特段排除するものではないと主張する。しかし、上記アのとおり、引用文献の記載によれば、引用発明の「車両」は車輪が回転して陸上を走行する車であると認められ、ドローンは含まれないものであるから、仮に引用発明の車両が任意の車両を対象とし得るものであるとしても、引用発明がドローンを排除しないとはいえず、被告の上記主張は採用することができない。

⑷ 以上のとおり、引用発明の車両を、

「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」とすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断は、その根拠を欠くものであり、判断の理由を示しておらず、誤りがあるというべきであり(前記⑵ウ(エ))、引用発明の車両をドローンにすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断は、その根拠を欠くものであり、判断の理由を示しておらず、誤りがあるというべきである(前記⑶ア)。したがって、引用発明の車両を、「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」又はドローンとすることに格別の困難性は認められないとの本件審決の判断は、誤りである。

4 審決の結論への影響について

⑴ 上記3⑷のとおり、引用発明の車両を、

「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両」又はドローンとすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断は誤りである。そして、本件審決における上記判断は、本件補正発明の容易想到性の判断、すなわち、引用発明において、本件周知技術を考慮に入れ、本件周知事項に鑑みて、引用発明との相違点に係る本件補正発明の発明特定事項に想到する

5 ことは、当業者が容易になし得るものであるとの判断の過程を成すから、上

記判断が誤りである以上、本件審決における本件補正発明の容易想到性の判断も誤りであることになる。前記第3の〔

(被告の主張)

〕のとおり被告が主張する内容を考慮しても、上記結論は左右されない。

⑵ 上記のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知事項及び周知技術に基づ

いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の判断は誤りである。本件審決は、本件補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるとの判断により、本件補正は独立特許要件(特許法17条の2第6項、126条7項)を充足しないとして却下し(特許法159条1項、53条1項)、その上で、本願の請求項1記載の発明と引用発明との相違点は、本件補正発明と引用発明の相違点と同じであり、本願の請求項1記載の発明も、当業者が容易に発明をすることができたものであるとして、本願は拒絶されるべきであるとした。しかし、本件補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件補正は独立特許要件を充足し、適法であって、本願の請求項1に記載された発明は本件補正発明となり、これは当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本願を拒絶されるべきものであるとした本件審決の結論は誤りであることとなる。したがって、本件審決の容易想到性の判断の誤りは、本件審決の結論に影響する。

5 結論

以上によれば、

(原告の主張)

する取消事由は理由があり、本件審決は取り消されるべきものであって、原告の請求は認容されるべきである。よって、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官中 平 健裁判官今 井 弘 晃裁判官水 野 正 則別紙引用文献の記載【請求項1】エンジンと、エンジンと同期回転してエンジン出力を回生する発電機

5 と、発電機が回生した電力で駆動される電動機と、電動機に電力を供給可能な蓄電

装置とを備えた車両に用いられ、前記発電機の発電出力の応答遅れにより前記発電機から前記電動機に供給される電力が不足する際に、その不足分を前記蓄電装置から前記電動機に供給するように構成された駆動力制御装置において、前記蓄電装置の温度を検出する手段と、検出された前記蓄電装置の温度が低く前記蓄電装置の出力が低下する場合に前記発電機の発電出力の応答を早める手段と、を備えたことを特徴とする駆動力制御装置。【請求項2】前記エンジンに所定の余裕トルクを持たせることで前記発電機の発電出力の応答を早めることを特徴とする請求項1に記載の駆動力制御装置。【請求項3】検出された前記蓄電装置の温度が低いほど前記エンジンの余裕トルクを増大させることを特徴とする請求項2に記載の駆動力制御装置。【請求項4】前記発電機及びエンジンの目標入力回転速度を調整することで前記エンジンに所定の余裕トルクを持たせることを特徴とする請求項2に記載の駆動力制御装置。【請求項5】予めエンジンの所定の余裕トルクを持たせるように設定された前記発電機及びエンジンの目標入力回転速度設定用マップを備え、前記マップを参照して前記発電機及びエンジンの目標入力回転速度を設定することで前記エンジンに所定の余裕トルクを持たせることを特徴とする請求項2に記載の駆動力制御装置。【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は、車両用駆動力制御装置に関し、特に、変速機として電気パワートレーンを備えた車両に用いられる駆動力制御装置に関する。【0005】【発明が解決しようとしている問題点】上記電気パワートレーンの有する特性から、

5 電気パワートレーン搭載車両では、要求出力を満たすのに、エンジンの効率を高め

るべくエンジンを相対的に低回転かつ高負荷で運転することが多い。【0006】しかしながら、このようにエンジンを低回転かつ高負荷で運転すると、エンジンの余裕トルクが小さくなるため、エンジンの応答性、更には発電機の応答性が低下し、車両の急加速時や補機負荷の急増時に必要な電力を発電機から電動機に供給できない状況が生じる。【0007】このような状況であっても、不足電力分をバッテリから供給できれば加速応答性を損なわない良好な運転性を実現できるのであるが、バッテリ温度が低いとバッテリから供給可能な電力が小さくなって上記加速に必要な電力を供給できず、加速不良を生じてしまう。【0008】本発明は、上記技術的課題を鑑みてなされたものであり、バッテリの温度が低いときに、バッテリから加速に必要な電力を供給できなくなるのを防止し、良好な加速応答性を確保することである。【0014】【作用及び効果】電気パワートレーン搭載車両においては、電動機は発電機の回生電力で駆動され、急加速時や補機負荷急増時等、駆動出力が発電出力を上回る状況では不足分の電力がバッテリ、キャパシタ等の蓄電装置から電動機に供給される。このとき蓄電装置の最大出力は蓄電装置の温度によって決まり、上記不足電力がこの最大出力を上回ると蓄電装置より十分な電力が供給できず、加速不良の原因となってしまうが、本発明を適用することにより、蓄電装置温度が低く最大出力が小さいときは発電出力の応答が早められ、発電出力の応答遅れによる不足電力が常に蓄電装置の最大出力以下に抑えられる。これにより、加速に必要な電力を蓄電装置から十分に補うことができないことによる加速不良が防止され、良好な加速応答性を確保することができる。【0016】図1は本発明に係る駆動力制御装置が適用される車両の概略構成を示し、この車両では、無段変速機として機能する電気パワートレーン5がエンジン1

5 と図示しない駆動輪との間に接続されている。

【0020】また、発電機2と電動機4の間にはクラッチ3が介装されており、クラッチ3が締結された状態ではエンジン1と駆動軸6が直結状態となってエンジン1の出力で駆動輪が直接的に駆動される。クラッチ3は、例えば、電気パワートレーン5の入力回転速度と出力回転速度が等しいときに締結され、発電機2と電動機4における損失を抑え、車両の燃費性能を向上させることができる。【0023】統合コントロールユニット10は、アクセル操作量APSに応じた駆動出力が得られるように電動機4の目標出力トルクtToを演算し、また、電動機4の駆動出力(消費電力)に見合った発電出力が得られるようエンジン1及び電動機2の動作点、すなわち電動機2の目標入力回転速度tNi及びエンジン1の目標トルクtTeを演算し、それらをコントロールユニット11、12に出力する。【0024】そして、車両が急加速する時や補機負荷が急増する時等は、発電出力が駆動出力に対して遅れるが、それに伴う不足電力はバッテリ9より供給され、良好な加速性能が確保される。【0025】ここで、バッテリ温度TEMPBが低く、バッテリ9が出力可能な電力が低下しているときは、発電出力の応答遅れによる不足電力がバッテリ9の最大出力を超えてしまう可能性がある。そこで、本発明に係る駆動力制御装置では、これを防止すべく発電機2の発電出力の応答が早められる。【0026】具体的には、バッテリ温度TEMPBが低くなるほどエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度かつ低トルク側に変更されてエンジン1の余裕トルクが増大され、発電機2の発電出力の応答が早められる(詳しくは後述)。【0039】上記駆動力制御装置が適用される車両においては、アクセル操作量APS及び車速VSPに応じた駆動力が得られるように電動機4のトルクが制御され、電動機4の駆動出力(消費電力)に見合った発電出力が得られるようエンジン1及び電動機2の動作点(目標入力回転速度tNi及び目標出力トルクtTe)が制御される。

5 【0040】そして、急加速時等、電動機4の駆動出力に対して発電機2の発電出

力の応答が遅れ、発電機2から電動機4に供給される電力が不足する際にはバッテリ9から電動機4に不足分の電力が供給される。【0041】ここで、不足分がその時点におけるバッテリ9の最大出力を超えてしまうと、電動機4へ供給できる電力が不足して駆動に使用できる電力が減少し、加速応答性が低下してしまう。図3は、アクセル操作量がステップ状に変化し、発電出力の応答遅れによる不足電力がバッテリ9の最大出力を上回ったときの状況(例えば、急加速時)を示したものであるが、この場合、図中Aに相当する分の電力が電動機4に供給されないことになり、加速不良が生じてしまう。【0042】通常、発電出力の応答は、エンジントルクとその応答、更には発電機2の回転速度及び回転速度制御の応答特性により定まる所定の応答よりも早くできず、発電出力の応答はエンジン1の余裕トルクが小さいほど遅くなる。特に、エンジン1をより燃費の良い状態で運転しようとすると、同一の要求出力を満たすにもエンジン1をより低い回転速度かつ高負荷で運転させることになり、エンジン1の余裕トルクが小さくなって発電応答はさらに遅くなって供給電力が不足しやすくなる。【0043】更に、バッテリ温度が低い時にはバッテリ9の最大出力が低下するため、電動機4へ供給される電力が不足しやすくなる。電動機4の駆動出力の応答は運転性に与える影響が大きいため、電動機4への供給電力が不足すると運転者に違和感を与える原因となる。【0044】発電出力の応答遅れによる不足電力をバッテリ9により供給可能な電力以下にするには、発電機2の発電出力の応答を早めて不足電力を抑えればよい。発電出力の応答を早めるにはエンジン1の余裕トルクを増大する必要がある。【0045】そこで、本発明に係る駆動力制御装置では、バッテリ9の温度を検出し、検出された温度が低いときは同じ出力を保ちつつエンジン1及び電動機2の動作点を高回転速度且つ低トルク側へと変更し、エンジン1の余裕トルクを増大させ

5 ている。

【0046】図2に示したブロック図では、上記余裕トルクを確保するために必要な目標回転速度の下限値tNi_minを演算し、エンジン1及び発電機2の運転効率が最良となるように設定された目標入力回転速度tNi0がそれより低い場合には、目標入力回転速度tNi0に係らず最終入力回転速度tNiをtNi_minに設定し、常に必要とされる余裕トルクが確保されるようにしている。【0047】これにより、例えば、図4に示すようにアクセルペダルの操作量が増大され電動機の駆動出力が増大していく状況で且つバッテリ温度が低い場合には、図5に破線で示すように同じ出力を保ちつつエンジン1及び発電機2の動作点が高回転速度且つ低トルク側、電気パワートレーン5の変速比でいうとローギア側に変更され、エンジン1の余裕トルクが増大される。【0048】余裕トルクが増大されると、図6に示すようにアクセル操作量がステップ状に変化しても、発電出力の応答が早められるので発電出力の応答遅れによる不足電力を常に最大電力以下に抑えることができ、加速に必要な電力をバッテリ9から供給できないことによる加速不良は解消される。以 上

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