ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(ワ)70139 特許権
| 裁判所 | 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年9月10日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告株式会社ホタルクス 被告細渕電球株式会社 |
| 対象物 | ランプ |
| 法令 |
特許権 特許法100条1項1回 |
| キーワード | 実施17回 特許権14回 進歩性5回 無効3回 差止3回 優先権2回 侵害2回 無効審判1回 分割1回 |
| 主文 | 1 被告は、別紙物件目録記載の製品を製造し、使用し、販売し、又は販売の申 2 被告は、別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 | 1 事案の概要 本件は、発明の名称を「ランプ」とする特許(特許第6944719号及び 特許第7227646号。以下、それぞれ「本件特許1」 、 「本件特許2」とい い、これらを総称して「本件各特許」という。 )に係る特許権(以下、それぞ れ「本件特許権1」 、 「本件特許権2」といい、これらを総称して「本件各特許 権」という。 )を有する原告が、被告に対し、被告による別紙物件目録記載の 製品(以下「被告製品」という。 )の製造、使用、販売及び販売の申出が、本 件特許権1又は本件特許権2を侵害するとして、特許法100条1項及び2項 |
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令和7年9月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第70139号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和7年6月2日
判 決
原 告 株 式 会 社 ホ タ ル ク ス
同訴訟代理人弁護士 工 藤 良 平
同 関 口 彰 正
同 石 川 裕 彬
同 鈴 木 莉 子
同訴訟代理人弁理士 辻󠄀 丸 光 一 郎
同 伊 佐 治 創
被 告 細 渕 電 球 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫
同 弓 削 田 博
同 藤 沼 光 太
同訴訟代理人弁理士 今 堀 克 彦
同 下 田 俊 明
主 文
1 被告は、別紙物件目録記載の製品を製造し、使用し、販売し、又は販売の申
出をしてはならない。
2 被告は、別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要等
1 事案の概要
5 本件は、発明の名称を「ランプ」とする特許(特許第6944719号及び特許第7227646号。以下、それぞれ「本件特許1」、「本件特許2」といい、これらを総称して「本件各特許」という。)に係る特許権(以下、それぞれ「本件特許権1」、「本件特許権2」といい、これらを総称して「本件各特許権」という。)を有する原告が、被告に対し、被告による別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の製造、使用、販売及び販売の申出が、本件特許権1又は本件特許権2を侵害するとして、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造、使用、販売及び販売の申出の差止め並びに廃棄を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は、全ての枝番号を含む。)
⑴ 当事者ア 原告は、照明器具等の設計、開発、製造及び販売等を目的とする株式会社である。イ 被告は、特殊電球の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
⑵ 本件各特許権本件特許権1は、平成29年11月17日を出願日(特願2018-561834。優先日/平成29年1月13日(以下「本件優先日」という。)、優先権主張国/日本国)、令和3年9月15日を登録日とする特許権であり、本件特許権2は、令和3年9月1日を出願日(特願2021-142074。優先日/本件優先日、優先権主張国/日本国。本件特許1に係る出願を原出願とする分割出願。)、令和5年2月14日を登録日とする特許権であって、原告は、本件各特許権を有する。(甲4、5)
⑶ 特許請求の範囲の記載本件特許1の請求項1記載の発明(以下「本件発明1-1」という。)及
5 び請求項12記載の発明(以下「本件発明1-2」といい、本件発明1-1と併せて「本件発明1」という。)並びに本件特許2の請求項1記載の発明(以下「本件発明2-1」という。)及び請求項7記載の発明(以下「本件発明2-2」といい、本件発明2-1と併せて「本件発明2」という。また、本件発明1及び2を併せて「本件各発明」という。)に係る特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(以下、本件各特許に係る明細書及び図面(甲4の2、5の2)を、「本件明細書」という。以下に示す本件明細書の記載及び図面は、本件各特許について共通している。)。ア 本件発明1-1光源であるLEDモジュールと、熱移送手段と、配光手段としての筒状リフレクタと、開口部を有する筐体と、光透過性カバーとを含み、前記LEDモジュールは、複数のLEDと、前記複数のLEDを実装する実装面を有するLED基板とを含み、前記筒状リフレクタは、その軸方向が前記LEDモジュールに対し垂直で、かつ、前記LEDモジュールの光照射側に配置され、前記筐体の内部に、前記LEDモジュールおよび前記筒状リフレクタが配置され、前記筐体の開口に、前記光透過性カバーが配置され、前記LEDモジュールは、前記筐体内において、前記筐体と離れて配置され、前記熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されていることを特徴とする、ランプ。イ 本件発明1-2航空機着陸誘導閃光装置に用いられる、請求項1から11のいずれか一項に記載のランプ。ウ 本件発明2-1光源であるLEDモジュールと、熱移送手段と、配光手段としての円筒状リフレクタと、開口部を有する筐体と、光透過性カバーとを含み、前記LEDモジュールは、複数のLEDと、前記複数のLEDを実装する
5 実装面を有するLED基板とを含み、前記円筒状リフレクタは、その軸方向が前記LEDモジュールに対し垂直に配置され、前記筐体の内部に、前記LEDモジュールおよび前記円筒状リフレクタが配置され、前記筐体の開口に、前記光透過性カバーが配置され、前記LEDモジュールは、前記筐体内において、前記筐体と離れて配置され、前記熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され、前記筐体は、前記LEDモジュールと配線で接続される接続部を有することを特徴とする、ランプ。エ 本件発明2-2請求項1から6のいずれか一項に記載のランプを備えたことを特徴とする、航空機着陸誘導閃光装置。
⑷ 構成要件の分説本件各発明は、以下のとおり分説することができる(以下、分説に従い、「構成要件1A」などという。)。ア 本件発明1-11A 光源であるLEDモジュールと、1B 熱移送手段と、1C 配光手段としての筒状リフレクタと、1D 開口部を有する筐体と、1E 光透過性カバーとを含み、1F 前記LEDモジュールは、複数のLEDと、前記複数のLEDを実装する実装面を有するLED基板とを含み、1G 前記筒状リフレクタは、その軸方向が前記LEDモジュールに対し垂直で、かつ、前記LEDモジュールの光照射側に配置され、1H 前記筐体の内部に、前記LEDモジュールおよび前記筒状リフレクタが配置され、
5 1I 前記筐体の開口に、前記光透過性カバーが配置され、1J 前記LEDモジュールは、前記筐体内において、前記筐体と離れて配置され、1K 前記熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されていることを特徴とする、1L ランプ。イ 本件発明1-21A~1L 上記アと同じ。1M 航空機着陸誘導閃光装置に用いられるウ 本件発明2-12A 光源であるLEDモジュールと、2B 熱移送手段と、2C 配光手段としての円筒状リフレクタと、2D 開口部を有する筐体と、2E 光透過性カバーとを含み、2F 前記LEDモジュールは、複数のLEDと、前記複数のLEDを実装する実装面を有するLED基板とを含み、2G 前記円筒状リフレクタは、その軸方向が前記LEDモジュールに対し垂直に配置され、2H 前記筐体の内部に、前記LEDモジュールおよび前記円筒状リフレクタが配置され、2I 前記筐体の開口に、前記光透過性カバーが配置され、2J 前記LEDモジュールは、前記筐体内において、前記筐体と離れて配置され、2K 前記熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され、
5 2L 前記筐体は、前記LEDモジュールと配線で接続される接続部を有することを特徴とする、2M ランプ。エ 本件発明2-22A~2M 上記ウと同じ。2N 本件発明2-1のランプを備えたことを特徴とする、航空機着陸誘導閃光装置。
⑸ 被告の行為被告は、遅くとも令和5年7月23日までに被告製品を製造し、同月25日に那覇空港で、同年12月頃に新千歳空港で、それぞれ被告製品の供用試験を開始し、被告製品を使用している。被告は、国土交通省から被告製品の承認を受け、業として被告製品を製造し、日本国内の空港管理者に対して被告製品の販売及び販売の申出を行うおそれがある。
⑹ 被告製品の構成被告製品は次の構成を有し、断面の模式図は別紙被告製品断面図のとおりである(以下、「構成a」、「構成b」などということがある。なお、被告製品が、本件各発明の構成要件のうち構成要件1K及び2K以外の構成要件を充足することには争いがない。)。a 光源であるCOB型LEDモジュールと、b 放熱板と、c ヒートスプレッダと、d 配光手段としての円筒状リフレクタと、e 開口部を有する筐体と、f 光透過性カバーとを含み、g 前記COB型LEDモジュールは、少なくとも2つのLEDと、当該L
5 EDを実装する実装面を有するLED基板とを含み、h 前記円筒状リフレクタは、その軸方向が前記COB型LEDモジュールに対し垂直で、かつ、前記COB型LEDモジュールの光照射側に配置され、i 前記筐体の内部に、前記COB型LEDモジュール及び前記円筒状リフレクタが配置され、j 前記筐体の開口に、前記光透過性カバーが配置され、k 前記COB型LEDモジュールは、前記筐体内において、前記筐体と離れて配置され、l 前記放熱板は、その表面の一部が前記COB型LEDモジュールと接触し、その裏面の中央部が前記ヒートスプレッダと接触し、その裏面の端部が前記筐体と接触するように配置され、m 前記ヒートスプレッダは、前記放熱板と接触する面と反対側の面が前記筐体と接触するように配置され、o 前記筐体は、前記COB型LEDモジュールと配線で接続される接続部を有する、p ランプであって、q 前記ランプを備えたことを特徴とする、航空機着陸誘導閃光装置。3 争点
⑴ 被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するかア 構成要件1K及び2Kの充足性(争点1)イ 被告製品が本件各発明の作用効果を奏せず、技術的範囲に属しないといえるか(争点2)
⑵ 本件各特許の無効の抗弁の成否ア 本件発明1の進歩性の欠如(争点3)イ 本件発明2の進歩性の欠如(争点4)
5 4 争点に関する当事者の主張
⑴ 争点1(構成要件1K及び2Kの充足性)について(原告の主張)ア 「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され」(構成要件1K及び2K)の意義本件明細書の【0024】、【0031】及び【0034】によれば、「熱移送手段」は2つ以上の熱伝導部材を組み合わせて一体的に形成した構成を含む。本件明細書において、「ヒートスプレッダ」と「熱移送手段」が区別して用いられ、LEDモジュール、ヒートスプレッダ、熱移送手段、筐体の順に接触する構成が記載されているからといって、LEDモジュール、放熱板、ヒートスプレッダ、筐体の順に接している構成が本件各発明の技術的範囲に属しないということにはならない。イ 被告製品について被告製品の放熱板及びヒートスプレッダはいずれも熱伝導部材であり、両者は接着剤で接着されて一体的に形成されている。そして、放熱板の中央部においては、COB型LEDモジュール、放熱板の中央部、ヒートスプレッダ、筐体の順に接しており、放熱板の端部においては、COB型LEDモジュール、放熱板の端部、筐体の順に接している。相対的に温度の高いヒートスプレッダから温度の低い筐体に熱が伝導することは技術的に明らかであるから、「熱移送手段」である放熱板及びヒートスプレッダは、「前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され」ているということができる。なお、被告は、ヒートスプレッダが「熱移送手段」に当たらないことを前提に、放熱板は、「前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され」に当たらないと主張するが、COB型LEDモジュールの熱は、放熱板の端部からも筐体に放熱されている。
5 ウ 以上によれば、被告製品は、構成要件1K及び2Kを充足し、本件各発明の技術的範囲に属する。(被告の主張)ア 「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され」(構成要件1K及び2K)の意義「熱移送」との用語は辞書に記載されていない造語であるから、本件明細書の記載を考慮して解釈する必要があるところ、本件明細書に記載のない手段によりLEDモジュールの熱が筐体に放熱されていたとしても、「熱移送手段」には当たらないと解すべきである。すなわち、本件明細書においては、「熱移送手段」と熱拡散部材であるヒートスプレッダとが区別して用いられ、ヒートスプレッダがLEDモジュールと熱移送手段との間に配置された構成は記載されているが(【0025】)、ヒートスプレッダが熱移送手段に含まれることや、熱移送手段が筐体に直接接していない構成は記載されていない。かえって、ヒートスプレッダが、LED基板の実装面の反対側に配置され、熱移送手段がヒートスプレッダと熱的に接続されていることが好ましいことが記載されている(【0034】)ことからすれば、ヒートスプレッダは「熱移送手段」に含まれないし、ヒートスプレッダが放熱体と筐体との間に配置された構成は、「前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され」に当たらない。イ 被告製品について上記アによれば、被告製品のヒートスプレッダは「熱移送手段」に当たらないし、ヒートスプレッダが放熱板と筐体との間に配置された被告製品の構成は、「前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置され」に当たらない。また、COB型LEDモジュールの熱は、放熱板からヒートスプレッダ
5 に吸収されるはずであるから、COB型LEDモジュール、放熱板、ヒートスプレッダ、筐体の順に接している放熱板の中央部について、筐体まで熱が伝達するかは明らかではなく、また、COB型LEDモジュール、放熱板、筐体の順に接している放熱板の端部についても、COB型LEDモジュールの熱が、放熱板の端部まで伝達するとは考え難く、COB型LEDモジュールの熱が放熱板の端部から筐体に放熱していることは立証されていない。したがって、被告製品においては、「熱移送手段」に相当する放熱板は、COB型LEDモジュールの熱を筐体に放熱することができるように配置されているとはいえない。ウ 以上によれば、被告製品は、構成要件1K及び2Kを充足しない。
⑵ 争点2(被告製品が本件各発明の作用効果を奏せず、技術的範囲に属しないといえるか)について(被告の主張)本件明細書の【0005】及び【0030】によれば、本件各発明は、放熱用のフィン等の設置による重量増という課題に対し、放熱フィン等の設置による重量増を抑制するという効果が生じるものである。被告製品は筐体の外に放熱用のフィンが設けられているから、放熱フィン等の設置による重量増の抑制という効果を奏しない。したがって、被告製品は、本件各発明の効果を奏しておらず、本件各発明の技術的範囲に属するとはいえない。(原告の主張)本件各発明の課題は、筐体内に放熱用のフィン等を配置することによる筐体の大型化及び重量増を回避することである。被告製品は、筐体内に放熱用のフィン等を配置しないことにより筐体の小型化を図り、その結果、重量増を回避しているといえるから、本件各発明の
5 効果を奏していないとはいえない。
⑶ 争点3(本件発明1の進歩性の欠如)について(被告の主張)ア 特開2014-235820号公報(乙2。以下「乙2公報」という。)には次の発明が記載されている(以下「乙2発明」という。また、以下、引用発明の構成について、「構成2a」、「構成2b」などということがある。)。(乙2発明)2a 光源である光源モジュール12と、2b 放熱部36と、2c 回転放物体や回転楕円体などの回転体形状である反射鏡34と、2d 有底円筒状を成し、正面の開口が出射口23として構成されている筐体10と、2e 前面カバー14とを含み、2a1 前記光源モジュール12は、COB型LED30を光源に備え、COB型LED30は、図7に示すように、多数のLEDをLED基板31の上に密集配置し、2c1 前記反射鏡34は、図7に示すように、反射鏡34の軸方向がCOB型LEDに垂直であり、またCOB型LED30の光照射側に反射鏡34が配置され、2d1 前記筐体10の内部に、図1に示すように、光源モジュール12(COB型LED30と反射鏡34)が配置され、2d2 前面カバー14は、筐体10の出射口23を覆う透光性部材であり、2a2 前記光源モジュール12は、前記筐体内10において、絶縁パッキン38により、前記筐体10と離れて配置される、
5 2f スポーツ照明器具1。イ 本件発明1と乙2発明との相違点本件発明1-1と乙2発明とは、以下の相違点1において、本件発明1-2と乙2発明とは、以下の相違点1及び2において相違し、その余の点において一致する。(相違点1)本件発明1は、熱移送手段がLEDモジュールの熱を筐体に放熱することができるように配置されていることを特徴とするのに対し、乙2発明には、本件発明1の熱移送手段に相当する放熱部36についてそのような構成が開示されていない点。(相違点2)乙2発明のランプが航空機着陸誘導閃光装置に用いられるかが不明である点。ウ 相違点1について(ア) 実用新案登録第3165305号公報(乙3。以下「乙3公報」という。)には、放熱構造を具えたLEDを配置した発光モジュールのハウジング2に関し、ヒートパイプ24及び25の一端が板体23と接触し、他端がハウジングと接触している構造により、ヒートパイプがLEDモジュールの熱をハウジングに放熱することができるように配置されること(以下「乙3記載事項」という。)が記載されている。(イ) 乙3公報の技術分野は、放熱構造を具えたLEDが配置された発光モジュールのハウジングに関するものであり、本件発明1の技術分野と同一である。そして、本件発明1の課題は重量増の抑制及びLEDモジュールの放熱が可能なランプを提供することであり、乙3公報に記載された発光モジュールも放熱構造を有することからすれば、乙3記載事項を乙2発明に適用する動機付けがある。
5 乙2公報には、筐体への熱伝達を良好にしつつ、高い耐電圧性能を得ることの記載があり、乙2発明は、COB型LEDの熱が筐体へ放熱されることを前提としていること(乙2【0004】)、乙2発明の絶縁パッキン38は樹脂材を含み(乙2【0023】)、樹脂材が熱を通すことは技術常識であること、乙2公報には、筐体への放熱を否定する記載もないことからすれば、乙3記載事項を乙2発明に適用することについて阻害要因はない。(ウ) したがって、相違点1の構成は、乙2発明に乙3記載事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができた。なお、仮に、乙2発明のCOB型LEDが筐体の内部にあるか否かが不明であるとの相違点があるとしても、次のとおり、当該相違点は、当業者が容易に想到することができたといえる。すなわち、COB型LED30を筐体内部に配置するか否かは単なる設計事項にすぎないし、乙3公報には、LEDに相当する発光モジュール1が筐体に相当するハウジング2の内側に設けられていることが開示され、上記(イ)のとおり、乙3公報で開示された技術を乙2発明に適用することについて動機付けがある。エ 相違点2について特開2007-137187号公報(乙4。以下「乙4公報」という。)には、LEDモジュールが航空機着陸誘導閃光装置に用いられること(以下「乙4記載事項」という。)が記載されており、乙2発明と乙4公報とは、LEDモジュールを利用したランプという同一の技術分野に関するものであるから、乙2発明に乙4記載事項を適用する動機付けがある。したがって、相違点2の構成は、乙2発明に乙4記載事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができた。
5 オ 以上によれば、本件発明1は、本件優先日当時の当業者が乙2発明に基づいて容易に発明することができた。(原告の主張)ア 乙2発明について構成2a~2e、2a1、2c1、2d2及び2fについては認めるが、構成2d1及び2a2は否認する。乙2公報において、COB型LED30及び放熱部36は、筐体10の外部に配置されているから、構成2d1は次の構成2d1´、構成2a2は次の構成2a2´とすべきであり、更に次の構成2b1´の構成を有する。2d1´ 前記筐体10の内部に、図1に示すように、反射鏡34が配置され、前記筐体10の外部に、図8に示すように、COB型LED30が配置され、2a2´ 前記筐体10の外部において、前記COB型LED30は、ベースプレート32及び絶縁パッキン38により、前記筐体10と離れて配置され、2b1´ 前記放熱部36は、前記COB型LED30の熱を筐体10の外部に放熱できるように筐体10の外部に配置されている、イ 本件発明1と乙2発明との相違点上記アによれば、被告の主張する相違点1は誤りであり、正しくは、以下の相違点1´のとおりである。(相違点1´)本件発明1では、LEDモジュールが筐体内に配置され、かつ、前記筐体と離れて配置され、前記熱移送手段が、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱することができるように配置されているのに対し、乙2発明では、COB型LED30が筐体10の外側に配置され、筐体10
5 の外部に配置された放熱部36により、COB型LED30の熱が筐体外部に放熱される点。ウ 相違点1´について乙2発明は、スポーツ用照明器具に関するものであるのに対し、乙3公報は、街路灯等の一般照明に関するものであり、両者は光照射の指向性が異なるから、乙2発明と乙3記載事項とは技術分野が異なる。また、乙2発明のLEDの放熱以外の課題及び効果は、筐体への電気絶縁性の確保であるのに対し、乙3公報のLEDの放熱以外の課題及び効果は、白熱灯ランプからLEDランプへの交換であり、両者の間に共通性はない。これらの事情によれば、乙2発明に乙3記載事項を適用する動機付けはない。また、乙2発明の放熱に係る構成を乙3記載事項の構成に置換すれば、乙2発明の技術的特徴を放棄することになるから、乙2発明に乙3記載事項を適用することには、阻害要因がある。したがって、相違点1´に係る構成について、乙2発明に乙3記載事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができたとはいえない。エ 以上によれば、本件発明1は、本件優先日当時の当業者が、乙2発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
⑷ 争点4(本件発明2の進歩性の欠如)について(被告の主張)ア 乙2公報には次の発明(以下「乙2´発明」という。)が記載されている。(乙2´発明)乙2発明の構成2a~2e、2a1、2d1 、2d2及び2a2と同じ構成のほか、2c1に代えて、次の2c1-2の構成を有する発明。
5 2c1-2 前記反射鏡34は、図7に示すように、反射鏡34の軸方向がCOB型LEDに垂直であり、イ 本件発明2と乙2´発明との相違点本件発明2-1と乙2´発明とは、前記相違点1及び以下の相違点3において、本件発明2-2と乙2´発明とは、これらの点に加えて前記相違点2において相違し、その余の点において一致する。(相違点3)「前記筐体」について、本件発明2は、「前記LEDモジュールと配線で接続される接続部を有する」が、乙2´発明にはそのような構成が開示されていない点。ウ 相違点1及び2について前記⑶(被告の主張)ウ及びエと同様に、相違点1及び2に係る構成については、当業者が容易に想到することができた。エ 相違点3について特開2014-211989号公報(乙5。以下「乙5公報」という。)には、LED駆動装置とその取付構造に関し、筐体がLEDモジュールと配線で接続される接続部を有する構成(以下「乙5記載事項」という。)が記載されている。本件発明2と乙5記載事項の技術分野は同一であり、相違点3に係る構成は、乙2発明に乙5記載事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができた。オ 以上によれば、本件発明2は、本件優先日当時の当業者が乙2´発明に基づいて容易に発明することができた。(原告の主張)ア 乙2公報に記載された発明の内容について前記⑶(原告の主張)アと同様に、構成2d1及び2a2は否認する。イ 本件発明2と乙2´発明との相違点
5 前記⑶(原告の主張)イと同様に、被告の主張する相違点1は誤りであり、本件発明2と乙2´発明とは、相違点1´において相違する。ウ 相違点1について前記⑶(原告の主張)ウと同様に、相違点1´に係る構成について当業者が容易に想到することができたとはいえない。エ 相違点3について乙5公報において、駆動装置10は、内部コネクタ部14及び外部コネクタ部15を有するものであり、本件発明2の筐体に相当する後方カバー62自体がコネクタ(接続部)を有するものではないから、乙5公報には、相違点3に係る構成が開示されていない。また、乙2´発明と乙5公報とは、技術内容、課題、課題を解決するための手段及び効果が異なるから、乙2´発明に乙5記載事項を適用する動機付けはない。オ 以上によれば、本件発明2は、本件優先日当時の当業者が、乙2´発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
第3 当裁判所の判断
事案に鑑み、本件発明1-1について、検討する。
1 本件明細書の記載
⑴ 本件明細書には、次の記載がある(図面は別紙本件図面目録のとおりであ
る。)。ア 技術分野【0001】本発明は、ランプに関する。イ 背景技術【0002】従来から、空港等において、着陸する航空機の滑走路への誘導に、キセノンランプを用いた閃光装置が用いられている(・・・)。ウ 発明が解決しようとする課題
5 【0004】前述のキセノンランプを、発光ダイオード(LED)ラン
プに置き換えられれば、寿命を大幅に伸ばし、消費電力を削減することも可能である。しかしながら、前記LEDランプを用いる場合、前記LEDランプに搭載するLEDモジュールの放熱が必要となる。【0005】前記LEDモジュールの放熱を促進するため、放熱用のフィンを前記LEDランプ内に設置することが考えられる。しかしながら、前記閃光装置に用いる閃光灯(ランプ)の重量には、全体で5.5kg以下との規格がある(・・・)。このため、放熱用のフィン設置等による重量増は、好ましくない。【0006】そこで、本発明は、重量増を抑制でき、且つLEDモジュールの放熱が可能なランプの提供を目的とする。エ 課題を解決するための手段【0007】前記目的を達成するために、本発明のランプは、光源であるLEDモジュールと、熱移送手段と、配光手段と、開口部を有する筐体と、光透過性カバーとを含み、前記LEDモジュールは、複数のLEDと、前記複数のLEDを実装する実装面を有するLED基板とを含み、前記配光手段は、前記LEDモジュールの光照射側に配置され、前記筐体の内部に、前記LEDモジュールおよび前記配光手段が配置され、前記筐体の開口に、前記光透過性カバーが配置され、前記LEDモジュールは、前記筐体内において、前記筐体と離れて設置され、前記熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されていることを特徴とする。オ 発明の効果【0008】本発明によれば、重量増を抑制でき、且つLEDモジュールの放熱が可能なランプを提供することができる。カ 発明を実施するための形態
5 【0010】 本発明のランプにおいて、例えば、前記熱移送手段は、
熱伝導部と放熱部とを有し、前記熱伝導部は、前記LEDモジュールの熱が伝導されるように配置され、前記放熱部は、前記筐体に前記LEDモジュールの熱を放熱できるように配置されている。【0011】 本発明のランプにおいて、例えば、前記放熱部は、前記熱移送手段の一端に形成されており、前記熱移送手段の他端は、前記LEDモジュールと熱的に接続されている。【0012】 本発明のランプにおいて、例えば、前記放熱部は、前記筐体と熱的に接続されている。【0013】 本発明のランプにおいて、例えば、前記熱移送手段は、ヒートパイプを含む。【0014】 本発明のランプは、例えば、さらに、ヒートスプレッダを有し、前記ヒートスプレッダは、前記LED基板に対し、前記実装面の反対側に配置され、前記熱移送手段は、前記ヒートスプレッダと熱的に接続されている。【0015】 本発明のランプは、例えば、前記筐体内において、前記LEDモジュールと、前記筐体と、前記熱移送手段とに囲まれた空間が、前記LEDモジュールに接続する配線を収容する配線収容部である。【0016】 本発明のランプにおいて、例えば、前記筐体は、前記ランプ外の配線と接続可能な接続部を有し、前記配線収容部に収容された配線は、前記接続部と接続している。【0017】 本発明のランプにおいて、例えば、前記筐体は、前記筐体外から前記筐体内に、配線を導入可能な貫通孔を含む。【0020】本発明のランプは、例えば、航空機着陸誘導閃光装置に用いられる。【0021】以下、本発明のランプについて、図面を参照して詳細に説
5 明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。なお、以下の
図1から図5において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。【0022】[実施形態1]本実施形態は、航空機着陸誘導閃光装置に用いられるランプの一例である。図1に示すように、本実施形態のランプ10は、光源であるLEDモジュール11と、熱移送手段12と、配光手段13aと、開口部を有する筐体14と、光透過性カバー15とを含む。図示していないが、LEDモジュール11は、複数のLEDと、前記複数のLEDを実装する実装面(図1においては、左側の面)を有するLED基板とを含む。図1に示すように、LEDモジュール11は、筐体14から離れて配置されている。また、熱移送手段12は、前記LED基板に対し、前記実装面の反対側(図1においては、LEDモジュール11の右側)に配置されており、その一端が、LEDモジュール11と熱的に接続し、他端が、筐体14と熱的に接続している。これにより、熱移送手段12は、LEDモジュール11の熱を筐体14に放熱するように配置されている。配光手段であるリフレクタ13aは、LEDモジュール11の光照射側(図1においては、前記実装面が位置する左側)に配置されている。LEDモジュール11、熱移送手段12およびリフレクタ13aは、筐体14の内部に配置されている。光透過性カバー15は、筐体14の開口部に配置されている。【0024】本実施形態のランプ10において、熱移送手段12は、ヒートパイプであるが、熱移送手段12は、熱を移送可能であればよく、公知の熱移送手段を用いることができる。具体例として、熱移送手段12は、例えば、熱伝導素材で形成された部材(熱伝導部材)、ヒートパ
5 イプ、これらの組合せ等があげられる。前記熱伝導素材は、特に制限さ
れず、公知の熱伝導素材があげられ、具体例として、金属、セラミックス、セラミックスと金属との複合材料、ダイヤモンド等があげられる。・・・前記ヒートパイプは、特に制限されず、例えば、自励振動式ヒートパイプ等があげられ、市販品を用いてもよい。本実施形態のランプ10において、熱移送手段12は、2つであるが、熱移送手段12の数は、特に制限されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。【0025】熱移送手段12は、LEDモジュール11の熱を筐体14に放熱できるように配置されていればよく、例えば、図1に示すように、熱移送手段12の一端が、LEDモジュール11に熱的に接続されており、熱移送手段12の他端が、筐体14に熱的に接続されていてもよい。本実施形態のランプ10において、熱移送手段12は、その一端がLEDモジュール11に直接的に接しているが、間接的に接していてもよい。後者の場合、LEDモジュール11と、熱移送手段12との間には、例えば、熱拡散部材が介在しており、前記熱拡散部材が、LEDモジュール11と熱移送手段12とに熱的に接続している。前記熱拡散部材は、例えば、前述の熱伝導素材を形成材料とするヒートスプレッダ(integrated heat spreader)等があげられる。【0030】本実施形態のランプ10によれば、熱移送手段12が、LEDモジュール11の熱を筐体14に放熱できるように配置されていることにより、前記放熱ファン等を用いずに、LEDモジュール11の熱を筐体14に放熱できる。このため、本実施形態のランプ10によれば、前記放熱ファン等の設置による重量増を抑制できる。さらに、本実施形態のランプ10によれば、筐体14内の熱の伝導に、故障が懸念されるファン等を用いる必要がないため、例えば、前記LEDの耐用年数である20〜30年程度の期間、筐体14内のメンテナンスを行う必要がな
5 い。
【0031】本実施形態のランプ10は、熱移送手段12は、熱伝導部と放熱部とを有してもよい。この場合、前記熱伝導部は、LEDモジュール11の熱が伝導されるように配置され、前記放熱部は、筐体14に前記LEDモジュールの熱を放熱できるように配置されていることが好ましい。具体例として、前記熱伝導部は、LEDモジュール11と熱的に接続されている。また、前記放熱部は、例えば、筐体14と熱的に接続されている。前記熱伝導部と前記放熱部とは、例えば、熱的に接続されており、より具体的には、一体的に形成されている。前記熱伝導部は、例えば、LEDモジュール11の熱を前記放熱部に伝導できる部材であればよく、具体例として、前記ヒートパイプ等があげられる。前記放熱部は、例えば、前記熱伝導部が伝導してきた熱を筐体14に放熱できる部材であればよく、具体例として、前記熱伝導部材等があげられる。【0032】熱移送手段12が、前記熱伝導部および前記放熱部を有する場合、熱移送手段12における前記熱伝導部と前記放熱部との位置は、特に制限されない。前記放熱部は、例えば、熱移送手段12の一端に形成されている。この場合、熱移送手段12の他端から前記放熱部までの領域を、前記熱伝導部ということもできる。また、熱移送手段12の他端は、LEDモジュール11と熱的に接続されていることが好ましい。【0034】本実施形態のランプ10は、例えば、さらに、ヒートスプレッダを有してもよい。この場合、前記ヒートスプレッダは、前記LED基板に対し、前記実装面の反対側に配置され、熱移送手段12は、前記ヒートスプレッダと熱的に接続されていることが好ましい。前記ヒートスプレッダは、例えば、市販品を用いてもよい。前記ヒートスプレッダは、熱移送手段12と一体的に形成されてもよい。この場合、前記ヒートスプレッダは、熱移送手段12の吸熱部ということもできる。この
5 ように、前記ヒートスプレッダを有することにより、例えば、LEDモ
ジュール11の熱を効率良く吸熱および分散でき、且つ熱移送手段12に効率良く伝導できるため、放熱効率がさらに向上する。
⑵ 上記⑴によれば、本件発明1-1の技術的意義は次のとおりである。
本件発明1-1は、LEDランプを用いた閃光装置におけるLEDモジュールの放熱について、閃光装置に用いるランプには重量の規格があるため、LEDモジュールの放熱を促進するために放熱用のフィンをLEDランプ内に設置することによる重量増は好ましくないという課題があるところ、これを解決するため、LEDモジュールが、筐体内において、筐体と離れて設置され、熱移送手段が、筐体内のLEDモジュールの熱を筐体に放熱することができるように配置されている構成を採用したものであり、これにより、LEDランプ内に放熱ファン等を設置することによる重量増を抑制するとの効果を奏するものである(【0004】~【0008】、【0030】)。
2 争点1(構成要件1K及び2Kの充足性)について
⑴ 「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるよう
に配置されている」(構成要件1K)の意義について本件発明1-1に係る特許請求の範囲には、「熱移送手段」について、「(筐体内において筐体と離れて配置された)前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」(構成要件1J及び1K)ことが記載され、「熱移送手段」が、LEDモジュールの熱を移送する機能を有することを理解することができるが、その具体的な構成を特定する記載はない。そこで、本件明細書の記載を考慮するに、本件明細書には、発明を実施するための形態として、例えば、熱移送手段が熱伝導部と放熱部とを有し、熱伝導部はLEDモジュールの熱が伝導されるように配置され、放熱部は筐体にLEDモジュールの熱を放熱できるように配置されていること(【001
5 0】)、例えば、放熱部が、熱移送手段の一端に形成され、熱移送手段の他端
はLEDモジュールと熱的に接続され、放熱部が筐体と熱的に接続されていること(【0011】、【0012】)が、また、実施形態1として、熱移送手段は、公知の熱移送手段を用いることができ、例えば、公知の熱伝導素材で形成された部材(熱伝導部材)、ヒートパイプ、これらの組合せ等が挙げられ、熱移送手段はLEDモジュールの熱を筐体に放熱できるように配置されていればよいこと(【0024】、【0025】)、熱移送手段が熱伝導部と放熱部を有する構成としてもよく、熱伝導部と放熱部を、熱的に接続され、一体的に形成された別部材とすることや、熱移送手段における熱伝導部と放熱部の位置に制限がないこと(【0031】、【0032】)が記載されている。以上によれば、「熱移送手段」は、公知の熱伝導素材で形成された部材(熱伝導部材)のみならず、複数の熱伝導部材が一体的に形成されたものでもよく、「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」とは、このような熱移送手段がLEDモジュール及び筐体と熱的に接続されていることにより、LEDモジュールの熱を筐体に放熱できるように配置されていることを意味するものと解される。
⑵ 被告製品の充足性
被告製品の放熱板及びヒートスプレッダは熱伝導素材で形成された部材であり、接着剤で接着されているから(弁論の全趣旨)、放熱板及びヒートスプレッダは、熱伝導部材が一体的に形成されたものといえる。そして、放熱板の表面の一部はCOB型LEDモジュールと接触し、放熱板の裏面の中央部はヒートスプレッダと接触し、放熱板の裏面の端部が筐体と接触するように配置され、ヒートスプレッダは、放熱板と接触する面と反対側の面が筐体と接するように配置されている(構成l及びm)。そうすると、放熱板は、その表面の一部がCOB型LEDモジュールと接触し、裏面の中央部はヒートスプレッダを介して筐体に接し、裏面の端部は筐体と接し
5 ているから、一体的に形成された放熱板及びヒートスプレッダは、筐体と熱
的に接続されているといえる。以上によれば、放熱板及びヒートスプレッダは、COB型LEDモジュールの熱を筐体に放熱することが明らかであるから、放熱板及びヒートスプレッダは「熱移送手段」に当たり、熱移送手段は、「前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」といえる。したがって、被告製品は、構成要件1Kを充足する。
⑶
(被告の主張)
について被告は、本件明細書が、ヒートスプレッダと熱移送手段の語を区別して用いていること、ヒートスプレッダがLEDモジュールと熱移送手段との間に配置された構成が記載され(【0014】、【0025】)、ヒートスプレッダが、LED基板の実装面の反対側に配置され、熱移送手段がヒートスプレッダと熱的に接続されていることが好ましいことが記載されている(【0034】)から、ヒートスプレッダが放熱板と筐体の間に配置された被告製品は、「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」に当たらないと主張する。しかし、「熱移送手段」の解釈は上記⑵のとおりであり、被告の指摘する本件明細書の記載は、実施形態を示したものにすぎず、ヒートスプレッダが熱移送手段に当たらないことや、ヒートスプレッダが放熱体と筐体との間に配置された構成が本件発明1-1の技術的範囲に含まれないことを示すものとはいえないから、
(被告の主張)
を採用することはできない。また、被告は、被告製品において、COB型LEDモジュールの熱が筐体に伝熱するか明らかではないなどと主張するが、温度の高い物体と低い物体を合わせたときには、高温側から低温側に向かって熱エネルギーが流れることからすれば(甲13)、被告製品において、COB型LEDモジュールの熱は筐体に伝熱していることを推認することができ、
(被告の主張)
を採用する
5 ことはできない。
⑷ 以上によれば、被告製品は、本件発明1-1の技術的範囲に属するものと
いえる。
3 争点2(被告製品が本件各発明の作用効果を奏せず、技術的範囲に属しない
といえるか)について
⑴ 被告は、被告製品が放熱用のフィンを有するから、放熱用のフィンの設置
による重量増を抑制するという本件発明1-1の課題を解決できていないことを理由に、本件発明1-1の効果を奏しておらず、本件発明1-1の技術的範囲に属するとはいえないと主張する。
⑵ そこで検討するに、本件発明1-1は、放熱用のフィンをLEDランプ内
に設置することによる重量増は好ましくないという課題に対し、LEDランプ内に放熱ファン等を設置することによる重量増を抑制するとの効果を奏するというものである(前記1⑵)。被告製品は、前記2⑵説示のとおり、「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」との構成を有しているから、本件発明1-1の効果を奏するものといえる。本件発明1-1は、筐体の外部に放熱用のフィンが設置されることによる重量増を課題とするものではないから、被告製品の筐体の外部に放熱用のフィンが設置されていることは、上記判断を左右するものではない。
⑶ したがって、被告の上記主張は、前提を欠くものであり、採用することが
できない。
4 争点3(本件発明1の進歩性の欠如)について
⑴ 乙2公報(平成26年12月15日公開。)には以下の記載がある(図面
は、別紙乙2図面目録記載のとおりである。)。ア 特許請求の範囲【請求項1】筐体に、発光素子を実装した発光素子基板を光源に備えた
5 照明器具において、前記発光素子基板が取り付けられ、前記発光素子基
板の熱が伝熱される高熱伝導性材から成る基板取付部材を備え、前記筐体には、前記基板取付部材が一部を前記筐体の外に露出した状態で係合する係合孔を設け、前記基板取付部材と前記筐体の係合孔との接触箇所に電気絶縁材を設けたことを特徴とする照明器具。【請求項2】前記基板取付部材は、前記筐体の外側に前記係合孔から突出し前記発光素子基板の熱を放熱する放熱部を備えることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。イ 技術分野【0001】本発明は、LED等の発光素子を光源に備えた照明器具に関する。ウ 背景技術【0002】・・・LEDを光源に備えた照明器具では、LEDの発熱を効率良く放熱するために、金属や合金等の高熱伝導性材から筐体を形成し、この筐体にLED基板を取り付けることで、LEDの発熱を筐体に伝熱して放熱させた器具もある。この照明器具では、耐電圧試験時などに高電圧が印加された場合に、LED基板への過大な電圧印加を防止するために、筐体とLED基盤の間にセラミック板等の電気絶縁材を介在させている(・・・)。エ 発明が解決しようとする課題【0004】しかしながら、セラミック板がLED基板と筐体の間に介在することで、LED基板から筐体への熱の伝達が阻害され、放熱性能が低下するという問題がある。本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、光源の発光素子から筐体への熱伝達を良好にしつつ、高い耐電圧性能を得ることができる照明器具を提供することを目的とする。オ 課題を解決するための手段
5 【0005】上記目的を達成するために、本発明は、筐体に、発光素子
を実装した発光素子基板を光源に備えた照明器具において、前記発光素子基板が取り付けられ、前記発光素子基板の熱が伝熱される高熱伝導性材から成る基板取付部材を備え、前記筐体には、前記基板取付部材が一部を前記筐体の外に露出した状態で係合する係合孔を設け、前記基板取付部材と前記筐体の係合孔との接触箇所に電気絶縁材を設けたことを特徴とする。カ 発明の効果【0009】本発明によれば、発光素子基板が取り付けられた基板取付部材が筐体の係合孔に一部を筐体の外に露出した状態で係合する構成としたため、発光素子基板に伝えられた発光素子の熱を外部に露出した箇所から放熱できる。更に、基板取付部材と筐体の係合孔との接触箇所に電気絶縁材が設けられて両者の電気的絶縁が確保されているため、基板取付部材には発光素子基板を電気絶縁材を介在させることなく直接取り付けることが可能となる。これにより、本発明によれば、発光素子から基板取付部材への伝熱を良好にして高い放熱性能が得られ、かつ、基板取付部材と筐体の間の電気的絶縁が確保される、という効果を奏する。キ 発明を実施するための形態【0011】・・・ 図1は本実施形態に係るスポーツ照明器具1の斜視図であり、図1(A)はスポーツ照明器具1を正面上方からみた斜視図、図1(B)はスポーツ照明器具1を正面下方からみた斜視図である。・・・このスポーツ照明器具1は、屋外球技場や屋外競技場を観客席側から照明する照明器具であり、図1、及び図2に示すように、大別して、器具本体2と、取付アーム部4と、電源ボックス6と、背面ガード部材7と、を備えている。
5 【0012】器具本体2は、径に対して深さが浅い有底円筒状の筐体1
0と、この筐体10に設けられる複数(図示例では5個)の光源モジュール12と、前面カバー14と、を備えている。光源モジュール12は、それぞれ発光素子の一例たるLEDを光源に備え、この光源のLEDには、高出力型LEDの一例たるCOB型LED30(図7)が用いられている。・・・【0019】・・・筐体10は、上述の通り、径に対して深さが浅い有底円筒状を成し、正面の開口が出射口23として構成されている。・・・【0020】・・・前面カバー14は、筐体10の出射口23を覆う透光性部材であり、軽量化、及び、ボール等の衝突による飛散防止のためにポリカーボネート樹脂から形成されている。・・・【0022】図6は光源モジュール12の全体構成を示す斜視図、図7は光源モジュール12の分解斜視図、また図8は光源モジュール12の断面図である。光源モジュール12は、高出力型のLEDの一例たるCOB型LED30を光源に備えたモジュールであり、これらの図に示すように、大別して、COB型LED30(図7)と、このCOB型LED30の基板取付部材たるベースプレート32と、光制御部材としての反射鏡34と、放熱部36と、絶縁パッキン38と、を備えている。COB型LED30は、図7に示すように、多数のLEDをLED基板31の上に密集配置して平面視略円形(四角形も有り得る)の面状の発光部31Aを形成したチップオンボード(Chip On Board:COB)構造の発光デバイスである。COB型LED30は、多数のLEDが密集配置されていることから大光量化、及び高輝度化なLED光源となる。【0023】ベースプレート32は、COB型LED30が直接的に取り付けられる基板取付部材であり、高熱電導材である、例えば金属であ
5 るアルミニウムから形成されている。ベースプレート32は、図7に示
すように、略円板状に形成され、その表面32Aの中央にLED収容凹部40が設けられており、このLED収容凹部40に上記COB型LED30のLED基板31が収められ、その上面が透光性シート45で覆われている。・・・【0025】反射鏡34は、回転放物体や回転楕円体などの回転体形状であり、その内面に所定の配光制御に応じて決定された回転放物反射面や回転楕円反射面が形成さ凹面鏡である。・・・【0029】前掲図7に戻り、放熱部36は、COB型LED30からベースプレート32に伝えられた熱を放熱する放熱機構である。具体的には、放熱部36は、複数枚の放熱フィン48と、ベースプレート32に伝えられたCOB型LED30の熱を放熱フィン48に伝える複数本のヒートパイプ50とを備えている。・・・【0031】・・・上記光源モジュール12は、筐体10の中に全体が収められるのではなく、図10に示すように、筐体10の背面15に係合孔54を設け、前掲図4に示すように、ベースプレート32を係合孔54に係合させ、放熱部36を筐体10の外に露出させて取り付けられる。このとき、前掲図8に示すように、ベースプレート32の縁部56には、その全周を覆う上述した絶縁パッキン38が装着されている。この絶縁パッキン38は、筐体10の背面15とベースプレート32の表面32Aの接触面の全面に介在することで、係合孔54からの浸水が防止されるのに加え、両者の電気的絶縁が確保される。【0032】 すなわち、COB型LED30を載置したベースプレート32と筐体10との間が絶縁パッキン38によって電気的に絶縁されるので、例えば耐電圧試験時に筐体10に高電圧が印加された場合でも、ベースプレート32を通じてCOB型LED30に過電圧が印加される
5 ことがない。これにより、上述のように、放熱性が高い金属材から成る
ベースプレート32にCOB型LED30を直接取り付けることが可能となり、COB型LED30の発熱を効率良くベースプレート32に伝え、放熱部36から放熱させることができるのである。また、ベースプレート32を係合孔54に係合させる構成であるため、その裏面32Bが筐体10の外側に露出し、放熱部36が筐体10の外側に配置される。これにより、放熱部36の熱を効率良く外気に放熱することができ、高い冷却性能が得られることとなる。
⑵ 乙2発明の認定
ア 上記⑴の記載によれば、乙2発明の構成は以下のとおりであると認められる。2a 光源である光源モジュール12と、2b 放熱部36と、2c 回転放物体や回転楕円体などの回転体形状である反射鏡34と、2d 有底円筒状を成し、正面の開口が出射口23として構成されている筐体10と、2e 前面カバー14とを含み、2a1 前記光源モジュール12は、COB型LED30を光源に備え、COB型LED30は、多数のLEDをLED基板31の上に密集配置し、2c1 前記反射鏡34は、反射鏡34の軸方向がCOB型LEDに垂直であり、またCOB型LED30の光照射側に反射鏡34が配置され、2d1´´ 前記筐体10(内部か否かは不明)に、COB型LED30が配置され、前記筐体10の内部に、反射鏡34が配置され、2d2 前面カバー14は、筐体10の出射口23を覆う透光性部材で
5 あり、
2a2´´ 前記COB型LED30は、ベースプレート32及び絶縁パッキン38により、前記筐体10と離れて配置され、2b1´前記放熱部36は、前記COB型LED30の熱を筐体10の外部に放熱できるように筐体10の外部に配置されている、2f スポーツ照明器具1。イ 乙2発明の認定についての補足説明(ア) 構成2d1´´及び2a2´´について被告は、乙2公報の【図7】、請求項1及び2の記載を根拠に、COB型LED30は筐体10の内部に存在すると主張し(構成2d1及び2a1)、原告は、乙2公報の【図8】の記載を根拠に、COB型LED30は筐体10の外部に存在すると主張する(構成2d1´及び2a2´)。しかし、【図7】及び【図8】には、COB型LED30と筐体10の位置関係は明示されておらず、COB型LED30が筐体10の内部に存在するのか外部に存在するのかを看取することはできない。また、乙2公報の請求項1及び2を含む本文にも、COB型LED30と筐体10の位置関係を示す記載は見当たらない。なお、被告は、COB型LED30の厚みが3mm程度であることを挙げるが、乙2文献中に各部材の寸法の記載があるわけでもないから、COB型LED30の厚みを考慮することにより、COB型LED30と筐体10の位置関係を認定することはできない。よって、乙2発明は、上記構成2d1´´及び2a2´´のとおりの構成を有するものと認めるのが相当であり、被告及び原告の上記主張はいずれも採用することができない。(イ) 構成2b1´について
5 被告は、構成2b1´の存在を主張していないが、乙2公報によれば、
前記放熱部36は、前記COB型LED30の熱を筐体10の外部に放熱できるように筐体10の外部に配置されていることが認められる(乙2【図8】、【0029】、【0031】、【0032】)。
⑶ 本件発明1-1と乙2発明の対比
ア 本件発明1-1は、特許請求の範囲の請求項の記載(前記前提事実2⑶ア)のとおりであると認められるところ、上記⑵によれば、本件発明1-1と乙2発明とは次の相違点1´´において相違し、その余の点において一致するものと認められる。(相違点1´´)本件発明1-1では、LEDモジュールが筐体内に配置され、前記熱移送手段が、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱することができるように配置されているのに対し、乙2発明では、COB型LED30が筐体10の内部に配置されているかが不明であり、筐体10の外部に配置された放熱部36により、COB型LED30の熱が筐体外部に放熱される点。イ 以上に対し、被告は、本件発明1-1と乙2発明は、COB型LED30が筐体10の内部に配置されている点において一致すると主張し、「熱移送手段がLEDモジュールの熱を筐体に放熱することができるように配置されていることを特徴とするのに対し、乙2発明には、本件発明1-1の熱移送手段に相当する放熱部36についてそのような構成が開示されていない点」(相違点1)が相違点であると主張する。しかし、乙2発明のCOB型LED30と筐体の位置関係については構成2d1´´及び2a2´´のとおりであり、また、放熱部36と筐体10の位置関係は構成2b1´のとおり特定されるから、この点も相違点として認定すべきである。
5 よって、
(被告の主張)
は採用することができない。
⑷ 相違点1´´の容易想到性について
ア 乙3公報に記載された事項(ア) 乙3公報(平成23年1月13日公開。)には以下の記載がある(図面は別紙乙3図面目録のとおりである。)。a 技術分野【0001】本考案は、放熱構造を具えた発光モジュールのハウジングに関し、特に固定と導熱の効果を兼ね備えた放熱構造を具えた発光モジュールのハウジングに関する。b 考案が解決しようとする課題【0008】本考案が解決しようとする課題は、白熱灯ランプをLEDランプにそのまま置換できる放熱構造を具えた発光モジュールのハウジングで、LEDランプ光源からの熱を照明具に伝えて放熱することにより放熱性能を高めることができる放熱構造を具えた発光モジュールのハウジングを提供することである。c 解決手段【要約】LEDを配置した発光モジュール1を固定して搭載する板体23を備え、該板体23は、ランプシェードとなるハウジング2両側にまたがって固定するための第一延伸支部231及び第二延伸支部232を備え、それぞれ第一固定部品21及び第二固定部品22を介してハウジングの両側に固定する。これら第一固定部品21及び第二固定部品22とハウジング2側面との間には導熱体4を介してヒートパイプ24、25を設け、発光モジュール1が発生した熱をハウジング2に伝えて放熱させ、これにより放熱効果を大幅に高める効果を達成する。d 考案の効果
5 【0010】本考案の放熱構造を具えた発光モジュールのハウジン
グの構造を通して、伝統的な街路灯或いは照明具中の伝統的な白熱灯ランプを、LEDランプにそのまま交換して使用することができるため、ランプ台構造を交換するためにランプシェードを交換しなければならないということがなくなる。さらに、発生した熱をランプシェードに伝え放熱するため、コストを節減し、さらに放熱性能を向上させ、使用寿命を延長することもできる。(イ) 上記(ア)によれば、乙3公報には、放熱構造を具えたLEDを配置した発光モジュールのハウジング2に関し、ヒートパイプ24及び25の一端が板体23と接触し、他端がハウジング2と接触している構造により、ヒートパイプがLEDモジュールの熱をハウジングに放熱することができるように配置されること(乙3記載事項)が記載されていると認められる。イ 相違点1´´の容易想到性乙2発明と乙3記載事項は、いずれも照明器具の技術分野に関するものである。もっとも、乙2発明は、筐体にLED基板を取り付け、筐体に伝熱して放熱させる従来の照明器具における、耐電圧試験時などのLED基板への過大な電圧印加を防止するために、筐体とLED基盤の間にセラミック板等の電気絶縁材を介在させたことによる放熱性能の低下という課題を前提として、発光素子から基板取付部材への伝熱を良好にして高い放熱性能が得られ、かつ、基板取付部材と筐体の間の電気的絶縁が確保される照明器具を提供することを発明の解決課題とするものであり、これを解決するため、発光素子基板(COB型LED30)が取り付けられた基板取付部材(ベースプレート32)が筐体の係合孔に一部を筐体の外に露出した状態で係合する構成として、発光素子基板の熱を外部に露出した箇所から放熱できるようにするとともに、基板取付部材
5 と筐体の係合孔との接触箇所に電気絶縁材(絶縁パッキン38)を設け
る構成としたものである(乙2【0002】、【0004】、【0009】、【0032】)。これに対し、乙3記載事項は、白熱灯ランプをLEDランプにそのまま置換できる放熱構造を具えた発光モジュールのハウジングにおいて、LEDランプ光源からの熱を照明具に伝えて放熱することにより放熱性能を高めるという課題について、乙3記載事項を含む構成を採用したものである(乙3【0008】、【0009】)。以上によれば、乙2発明と乙3記載事項は、具体的な解決課題を共通にするものではない。また、乙2発明は、筐体に、基板取付部材が一部を筐体の外に露出した状態で係合する係合孔を設け、基板取付部材の一部を筐体の外に露出させて筐体の外部に配置された放熱部から放熱するのに対し、乙3記載事項は、ヒートパイプの一端を、発光モジュールを固定して搭載する板体に、他端をハウジングに接触させることによりLEDモジュールの熱をハウジングに放熱するものであるから、両者は、放熱の手法も異なる。さらに、発光素子基板の熱を筐体の外に露出した箇所から放熱できる構成を採用した乙2発明について、なおも発光素子基板(COB型LED30)の熱を筐体に放熱するという課題があると理解することはできない。以上に照らせば、当業者は、相違点1´´に係る乙2発明の放熱の構成(筐体10の外部に配置された放熱部36により、COB型LED30(筐体の内部に配置されているかは不明)の熱が筐体外部に放熱される構成)を、筐体の内部に配置されたCOB型LED30の熱の放熱のために乙3記載事項に係る構成に置き換える動機付けがあるということはできない。また、乙2発明において、COB型LED30の熱が筐体外部に放熱される構成を維持したまま、乙3記載事項に係る構成を付加することについて、動機付けがあるということもできない。よって、相違点1´´に係る構成について、乙2発明に乙3記載事項を
5 適用することにより、当業者が容易に想到することができたということ
はできない。ウ 以上に対し、被告は、乙2公報の「光源の発光素子から筐体への熱伝達を良好にしつつ、高い耐電圧性能を得ることができる照明器具を提供することを目的とする」(【0004】)との記載を根拠に、乙2発明に乙3記載事項を適用する動機付けがあると主張する。しかし、乙2発明の解決課題は上記イに認定したとおりであり、この課題を解決するために、筐体10の外部に配置された放熱部36により、COB型LED30の熱が筐体外部に放熱される構成を採用したものであるのも同認定のとおりであって、被告の指摘する記載は、以上の判断を左右するものではない。
⑸ 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件発明1-1
は、当業者が乙2発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。
5 小括
以上のとおりであるから、被告製品は、本件発明1-1の技術的範囲に属するものであり、また、本件発明1-1に係る特許は、特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。したがって、原告は、被告に対し、本件特許権1に基づき、被告製品の製造、使用、販売及び販売の申出の差止め並びに被告製品の廃棄を求めることができる。
第4 結論
よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし、主文のとおり判決する。なお、主文
第2項の仮執行宣言は、相当ではないので、これを付さない。
5 東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 髙 橋 彩裁判官 西 山 芳 樹裁判官 瀧 澤 惟 子(別紙)物件目録令和6年2月18日時点で被告が新千歳空港に設置している連鎖式閃光灯の発光部以 上(別紙)被告製品断面図図中の名称と本文中の名称の対応関係は次のとおりである。リフレクタ 円筒状リフレクタLED(COB) COB型LEDモジュール熱拡散部材(ヒートスプレッダ) ヒートスプレッダ本体 筐体以 上(別紙)本件図面目録【図1】以 上(別紙)乙2図面目録【図1】【図7】【図8】以 上(別紙)乙3図面目録【図1】以 上
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