ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(ネ)800 意匠権侵害差止等請求控訴事件
| 裁判所 | 控訴棄却 大阪高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年9月11日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
意匠権 意匠法37条1項1回 |
| キーワード | 意匠権2回 差止2回 侵害2回 損害賠償1回 実施1回 |
| 主文 | 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
| 事件の概要 | 以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。 |
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令和7年9月11日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和7年(ネ)第800号 意匠権侵害差止等請求控訴事件
(原審 大阪地方裁判所令和5年(ワ)第10125号)
口頭弁論終結日 令和7年7月1日
判 決
控訴人(一審原告) 山 崎 実 業 株 式 会 社
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 南 石 知 哉
同訴訟代理人弁理士 柳 野 隆 生
同 補 佐 人 弁 理 士 柳 野 嘉 秀
同 関 口 久 由
被 控 訴人 ( 一 審 被 告 ) ア ス ベ ル 株 式 会 社
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 山 上 和 則
同 雨 宮 沙 耶 花
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。2 被控訴人(以下「一審被告」という。)は、原判決別紙被告商品目録記載の容器を製造、販売、輸入し、販売のために展示してはならない。3 一審被告は、その本店、営業所及び倉庫に存する原判決別紙被告商品目録記載の容器を廃棄せよ。4 一審被告は、控訴人(以下「一審原告」という。)に対し、2697万円及びこれに対する令和6年12月20日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
5 第2 事案の概要以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。1 事案の要旨本件は、一審原告が、一審被告が製造販売する被告商品(ディスペンサーボトル)に係る意匠(被告意匠)は、本件意匠と同一若しくは類似又は本件意匠を利用している関係にあるから、被告商品の製造販売等は、一審原告の有する本件意匠権の侵害行為を構成すると主張して、一審被告に対し、①意匠法37条1項に基づき被告商品の製造販売等の差止めを求め、②同条2項に基づき被告商品の廃棄を求め、③民法709条に基づき損害賠償金2697万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原審は、被告意匠が、本件意匠と類似するとは認められず、本件意匠又はこれと類似する意匠を利用するものであるとも認められないとして、一審原告の請求をいずれも棄却したので、一審原告が、前記第1記載の裁判を求めて、控訴を提起した。2 前提事実(争いのない事実並びに各掲記の証拠により認められる事実)原判決「事実及び理由」第2の3(3頁2行目から4頁15行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。3 争点原判決「事実及び理由」第2の4(4頁17行目から同頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。4 争点に関する当事者の主張後記5において、当審における一審原告の補充主張を加え、原判決6頁17行目で引用する原判決別紙「構成態様一覧表」の「被告意匠」の「被告の主張」欄の(j)項の4行目の「I」を「I」に改めるほか、原判決「事実及び理由」
第3の1ないし3(4頁22行目から10頁16行目まで)に記載のとおりで
あるから、これを引用する。
5 5 当審における一審原告の補充主張
(1) 争点1についての補充主張
本件意匠は部分意匠であり、その背面部(右側面図)においては長方形のマグネットを部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とするものである。そして、被告意匠と本件意匠とを対比する際に被告意匠の背面部において本件意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当するのはマグネットである。被告意匠の背面部においては、マグネットの上端と下端に防滑シートが設けられているが、防滑シートは、本件意匠の権利範囲外に設けられたものである。マグネットと防滑シートを合わせて観察した場合に、その合わせた形状が「I字」状となっていたとしても、防滑シートは、本件意匠と対比する際に比較する必要がない部分であり、類比判断に影響しないから、被告意匠は本件意匠に類似するとの判断がなされるべきである。
(2) 争点2についての補充主張
被告意匠の一部の構成からなる「イ号包含意匠」(被告意匠の構成から具体的構成態様(j)を除く意匠)は、別紙「本件部分とイ号部分との対比」に明らかなように類似している。そして、被告意匠は、イ号包含意匠に別の形状である防滑シートを結合しつつ、イ号包含意匠を包含しているものである。したがって、被告意匠は 本件意匠に類似するイ号包含意匠をそのまま実施していることになるから、被告意匠は本件意匠を利用する関係にある。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、被告意匠は本件意匠に類似せず、また本件意匠を利用するもの
とも認められないから、一審原告の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、原判決11頁3行目で引用する原判決別紙「構成態様一覧表」の「被告意匠」の「裁判所の認定」欄の(j)項の6行目から7行目の「ローマ字大文字「I」字状」を「ローマ字のI字状」に改め、後記2のとおり当審
5 における一審原告の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び
理由」第4の1及び2(10頁18行目から14頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における一審原告の補充主張に対する判断
(1) 争点1についての補充主張に対する判断
一審原告は、被告意匠の背面部においてマグネットの上端と下端に設けられた防滑シートは、本件意匠の権利範囲外に設けられたものであって本件意匠と対比する際に比較する必要がなく、類比判断に影響しないから、被告意匠は本件意匠に類似するとの判断がなされるべきであると主張する。しかし、補正の上引用した原判決の認定説示のとおり、本件意匠に係る商品の使用態様は壁面に取り付けた状態で使用することもできるというものであり、そのため本件意匠に係る商品の需要者は壁面取付け時に壁面取付けのために機能するマグネットを含めた容器の背面(壁取付面)の具体的な形状に最も注意を惹かれるものと認められることからすると、その使用態様が本件意匠に係る商品と同様である被告商品においても、需要者は、壁面取付け時に壁面取付けのために機能する部材であるところの背面部の縦長長方形のマグネットとその上端及び下端に設けられた横長棒状の防滑シートで画された部分に最も注意を惹かれるものと認められる。そして、マグネットと防滑シートは、部材が違うけれども、いずれも黒っぽい色であって周囲が突出した枠で囲まれているため、需要者は通常上記両部材を一体のものとして観察するのが自然と解されるから、被告意匠の背面部における本件意匠の背面部(右側面図)において意匠登録を受けようとする部分に相当する部分は、縦長長方形のマグネットとその上端及び下端に設けられた横長棒状の防滑シートで画された部分(原判決別紙乙4意匠(図面)の背面図において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分参照)とするのが相当である。そうすると、本件意匠と被告意匠を対比する際に防滑シートは本件意匠の
5 権利範囲外に設けられたもので比較する必要がなく、類比判断に影響しない
とする一審原告の上記主張は、本件意匠との対比に必要な被告意匠の構成の一部を恣意的に除外しようとするものであって採用できないというべきである。そして、上記認定に係る対比すべき部分を前提とすると、被告意匠の背面部の形状は、全体として本件意匠の背面部(右側面図)と異なる印象を与え、非類似といわざるを得ないから、この点も踏まえて被告意匠と本件意匠を対比するとき、両意匠が非類似であるというべきことは、補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の1(10頁19行目から14頁9行目まで)に判示したとおりである。
(2) 争点2についての補充主張に対する判断
一審原告は、被告意匠の一部の構成からなる「イ号包含意匠」は、本件意匠に類似し、かつ、別の形状である防滑シートと結合しつつ被告意匠に包含されているから、被告意匠は本件意匠を利用する関係にあると主張する。しかしながら、一審原告主張に係る「イ号包含意匠」なるものは、本件意匠の要部である背面部と対比されるべき被告意匠の背面部の部分を、上記(1)で説示した被告意匠の背面部の縦長長方形のマグネットとその上端及び下端に設けられた横長棒状の防滑シートで画された部分とせず、被告意匠の背面部の縦長長方形のマグネットの部分のみとした上で、本件意匠の利用関係をいうものであって、前提において失当である。そして、被告意匠における本件意匠の背面部において意匠登録を受けようとする部分に相当する部分が上記(1)説示のとおりであることを前提とすると、被告意匠が本件意匠又はこれに類似する意匠の特徴をそのまま残して包含しているといえないことが明らかであるから、被告意匠と本件意匠との間に利用関係が成り立つ余地はない。被告意匠が本件意匠を利用している旨をいう一審
(原告の主張)
は採用できない。
5 3 結論
以上によれば、一審原告の請求はいずれも理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとする。よって、主文のとおり判決する。大阪高等裁判所第8民事部裁判長裁判官森 崎 英 二裁判官久 末 裕 子裁判官井 上 直 樹
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