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令和5(ワ)9267著作物使用差止請求事件

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裁判所 一部認容 大阪地方裁判所
裁判年月日 令和8年1月20日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社神風プロダクション
被告山代ガス株式会社 株式会社佐賀新聞サービス
法令 著作権
著作権法27条32回
著作権法61条2項10回
民法95条2回
著作権法65条1項1回
著作権法64条2項1回
著作権法63条1項1回
著作権法59条1回
著作権法28条1回
著作権法2条1項12号1回
著作権法18条2項1号1回
著作権法15条1項1回
著作権法15条1回
著作権法117条1回
キーワード 許諾34回
差止6回
無効5回
実施2回
侵害2回
主文 1 原告と被告らとの間において、別紙1「
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の、その余を被告らの負担とする。
事件の概要 1 本判決における略称(なお、掲記の証拠は、いずれも、特に断らない限り枝番を 含む。以下同じ) (1) 本件各著作物:別紙1「著作物目録」記載の各著作物の総称。同別紙記載● の著作物を個別に指すときは「本件著作物●」という。 (2) 本件請書:原告が、平成29年3月8日、被告佐賀新聞サービスに差し出し た請書(内容は別紙2の1。甲9) (3) 本件委託契約(書)1:原告及び被告佐賀新聞サービスの間で締結された業 務委託契約(書)であり、契約書の表題が「ヒーローコンテンツに係る各種制作 委託契約書」であるもの(内容は別紙2の2。甲10、乙B2) (4) 本件委託契約(書)2:原告及び被告山代ガスの間で締結された業務委託契 約(書)であり、契約書の表題が「コンテンツ利用許諾及びマネジメント業務委 託契約書」であるもの(内容は別紙2の3。甲11、乙A5) (5) 改正前民法:平成29年法律第44号による改正前の民法 (6) 人名及び名称に関する略称については別紙7「呼称目録」記載のとおりであ る「

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判決文

令和8年1月20日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官

令和5年(ワ)第9267号 著作物使用差止請求事件

口頭弁論終結の日 令和7年11月11日

判 決

原告 株式会社神風プロダクション

同代表者代表取締役 A

同訴訟代理人弁護士 益 山 直 樹

被告 山代ガス株式会社

(以下「被告山代ガス」という。)

同代表者代表取締役 E

同訴訟代理人弁護士 東 島 浩 幸

同 服 部 友 祐

被告 株式会社佐賀新聞サービス

(以下「被告佐賀新聞サービス」という。)

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士 奥 田 律 雄

主 文

1 原告と被告らとの間において、別紙1「

「著作物目録」記載の各著作物につき、原

告が翻案権等の著作権法27条に定める権利及び同法28条に定める権利並びに

著作者人格権を有すること(ただし、原告は、被告らに対し、著作者人格権のうち

同一性保持権を行使することはできるが、公表権及び氏名表示権を行使すること

はできない。)を確認する。

2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の、その余を被告らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

原告と被告らとの間において、別紙1「「著作物目録」記載の各著作物につき、原告が

5 複製権、公衆送信権、翻案権、二次的著作物に関する原著作者の権利その他一切の著作権及び著作者人格権を有することを確認する。

第2 事案の概要

1 本判決における略称(なお、掲記の証拠は、いずれも、特に断らない限り枝番を含む。以下同じ)

(1) 本件各著作物:別紙1「著作物目録」記載の各著作物の総称。同別紙記載●の著作物を個別に指すときは「本件著作物●」という。

(2) 本件請書:原告が、平成29年3月8日、被告佐賀新聞サービスに差し出した請書(内容は別紙2の1。甲9)

(3) 本件委託契約(書)1:原告及び被告佐賀新聞サービスの間で締結された業務委託契約(書)であり、契約書の表題が「ヒーローコンテンツに係る各種制作委託契約書」であるもの(内容は別紙2の2。甲10、乙B2)

(4) 本件委託契約(書)2:原告及び被告山代ガスの間で締結された業務委託契約(書)であり、契約書の表題が「コンテンツ利用許諾及びマネジメント業務委託契約書」であるもの(内容は別紙2の3。甲11、乙A5)

(5) 改正前民法:平成29年法律第44号による改正前の民法

(6) 人名及び名称に関する略称については別紙7「呼称目録」記載のとおりである「(なお、各名称記載の肩書については、争いがないか、掲記の証拠により明らかである。)。2 訴訟物原告の、別紙1「「著作物目録」記載の各著作物に関する著作権及び著作者人格権なお、本件著作物1ないし10は、いずれもイラストの著作物であり、本件著作物11は、別紙1「著作物目録」記載11の写真に写った三次元の著作物である。3 前提となる事実(証拠については枝番を含む。以下同じ)

(1) 当事者等ア 原告は、インターネットコンテンツの企画・立案・制作・運営や映像等デジ

5 タルコンテンツの企画・運営・制作等を目的とする会社であり、Aが代表取締役である。イ 被告山代ガスは、高圧ガスの製造・販売及び付随する保安業務、液化石油ガスの販売及び保安に関する業務その他の事業を目的とする会社である。ウ 被告佐賀新聞サービスは、一般興業・催し物に関する事業、広告媒体等の企画・製作物の販売等を目的とする会社である。エ 悪の秘密結社は、ヒーローショーに特化したイベント企画・運営、舞台衣装のデザイン・造形・製作・販売等を目的とする会社であり、Bが代表取締役である。なお、悪の秘密結社は、令和6年4月30日、原告申立てに係る本件訴訟に関する訴訟告知書の送達を受けたが、本件訴訟には参加していない。

(2) 原告と被告佐賀新聞サービスとの間の本件委託契約1原告は、平成29年4月3日、被告佐賀新聞サービスとの間で、別紙2の2のとおりの内容で、被告山代ガスの広告宣伝用のヒーローコンテンツに係る各種制作について、原告が委託を受ける旨の業務委託契約「(本件委託契約1)を締結した。本件委託契約書1には、「この契約書に基づいて制作された制作物の著作権は、甲(被告佐賀新聞サービス)に帰属し、乙(原告)は、甲の許可なくしてこれを使用してはならない。」との記載はあった一方で、本件委託契約1のもとで原告が制作した著作物について、原告が著作者人格権を行使しないことを承諾する旨や著作権法27条及び28条に定める権利を譲渡する旨の記載はなかった。(甲10、乙B2)

(3) 本件各著作物の制作ア 本件各著作物は、被告山代ガスの広告宣伝用のヒーローコンテンツとして制作されたもので、本件著作物1の名称である「「ヤマシロン」が、被告山代ガスの社名に掛けたものとなっており、企画全体の名称ともされた。また、本件著作物11は、本件著作物1のイラストに一定の修正を加えたものを、三次元

5 化した著作物である。イ 本件各著作物の制作には、原告からの委託を受けた悪の秘密結社が一貫して関与していたが、当時において、悪の秘密結社と被告らとの間には、それらの制作や権利処理に関する直接の契約関係はなかった(悪の秘密結社が本件著作物1ないし4及び11を創作したこと、原告が本件著作物5ないし10を創作したことは当事者間で争いがない一方、本件著作物1ないし4及び11について、悪の秘密結社に加え、原告も、創作したといえるかは争いがある。)。

(4) 原告と被告山代ガスとの間の本件委託契約2原告は、平成30年2月27日、被告山代ガスとの間で、別紙2の3のとおりの内容で、「ヤマシロン」に関する利用許諾及びマネジメント業務委託に関する契約(本件委託契約2)を締結した。本件委託契約書2は、被告山代ガスがマネジメントするヒーローコンテンツ「ヤマシロン」を本コンテンツと定義した上、原告に対し、原告を本コンテンツの運営事務局として、グッズ製作、販売、管理、メディア出演に関する斡旋等のマネジメント業務を委託することができる旨を定めるほか、被告山代ガスが原告に対し、本コンテンツのグッズ製作及び販売を許諾するにあたっての手続・対価などを規定するものであった。(甲11、乙A5)

(5) 被告らによる契約解除等ア 被告佐賀新聞サービスは、令和5年7月10日頃、原告に対し、ヤマシロンに関連するヒーローコンテンツの著作権は、本件委託契約1に基づき、被告佐賀新聞サービスに帰属しているにもかかわらず、原告が、ヤマシロンに関するウェブサイトに被告佐賀新聞サービスが管理者としてアクセスすることを妨げているとして、同契約中、ヤマシロンに関するウェブサイトの更新・改修及びSNS更新に係る部分を解除するとの意思表示をした(甲25)。イ 被告山代ガスは、令和5年7月18日頃、原告に対し、同年9月30日限り

5 で本件委託契約2の契約を更新せず、同日をもって契約関係を終了する旨の意思表示をした(甲27)。ウ 悪の秘密結社は、令和6年6月3日、被告山代ガスとの間で、①「「山代ガス株式会社営業部ヒーロー課ヤマシロン」に関する著作物の著作者が被告山代ガスであること、その著作権(著作権法27条及び28条に定める権利を含む。)及び著作者人格権が被告山代ガスに帰属すること、②同著作物の著作者が悪の秘密結社である場合、同著作物の作成時点で、悪の秘密結社は、被告山代ガスに対して同著作物に関する著作権を譲渡し、被告山代ガスに対し、著作者人格権を行使しないことを約していたことを確認する旨の合意をした(乙A8)。

(6) 本件訴訟の経過原告は、本件訴訟において、当初、被告らに対し、本件各著作物に関する翻案権の行使、一切の二次的著作物の使用及び第三者への使用許諾その他一切の使用の差止めを請求していたが、差止め対象とする製品等を具体的に掲げることをせず、本件各著作物を掲記しつつ、その「「翻案」や「一切の使用」などを禁じようとする包括的な差止め請求となっていたことに伴う手続法上の問題点に加え、原告が具体的な差止めの対象として想定している販売行為等の主体が被告らではない可能性に関する議論(第13回及び第14回弁論準備手続)を経た後、上記第1の請求の趣旨に訴えが変更された。4 争点

(1) 原告が、本件著作物1ないし4及び11を創作したか(争点1)

(2) 原告が、本件各著作物を、被告山代ガスの職務上、作成したか(争点2)

(3) 原告が、被告山代ガスに対し、本件各著作物に関する著作権を、著作権法27条及び28条に定める権利を含めて譲渡する旨の合意をしたか(争点3)

(4) 本件各著作物に関する著作者人格権を行使しない旨が合意されていたか(争点4)

5 (5) 本件委託契約1を締結したことにつき、原告に錯誤があったか(争点5)

第3 当事者の主張

1 争点1(原告が、本件著作物1ないし4及び11を創作したか)について

【

(原告の主張)

】

(1) ヤマシロンの企画立案

原告は、被告山代ガスの広告宣伝用コンテンツとして、ヤマシロンの企画・コンセプトを作成した。その制作過程において、原告は、平成29年1月31日頃から、ヒーローショーを事業として行っていてヒーロースーツの制作実績のある悪の秘密結社に協力を依頼し、悪の秘密結社は、これを受けて、ヤマシロンの原案となるデザインを作成した。原告は、同年3月24日、ヤマシロンをレッドロン、アオイロン及びダイダイロンの3体が合体したものという設定にし、悪の秘密結社が作成した原案のバイザーの形を修正し、胸部にガスメーター、バックルにエンブレムをそれぞれあしらった。その後、原告は、本件著作物1ないし4について、後記(2)のとおり、デザインに関する意見を述べたり修正を加えたりし、同年5月23日から同年6月7日頃にかけて、最終的なデザインを決定した。このように、原告は自ら立てた構想・設定を提示し、これを受けて悪の秘密結社が出してきた原案に創作的関与を行い、最終的に決定稿を作成したものであるから、本件著作物1ないし4は、悪の秘密結社と原告の共同著作物である。

(2) 本件著作物1ないし4それぞれの制作過程について

ア 本件著作物1について原告代表者のAは、同年3月31日、カラーリング案を出した。その後、Aは、同年4月10日から同年5月15日頃にかけ、悪の秘密結社代表のBの意見も踏まえて頭部、胸部及び腹部のデザインを決定したり、同年4月22日、ベルトバックルやエンブレムデザインの修正を行ったりした。

5 イ 本件著作物2ないし4について

原告は、同年5月17日、ベルトバックルデザインの修正及びカラーリング作業を行い、同年6月8日もカラーリング作業を行った。ウ F及びGの関与について被告らは、本件著作物1ないし4は、実質的に、被告佐賀新聞サービスの従業員であるF及びBが取締役を務めるMECの従業員Gが創作したものである、ハチガネ、カラーリング並びにベルトバックル及びエンブレムについては、Fが創作したと主張しているので、以下、反論する。(ア) Gの関与について被告らは、本件著作物1ないし4は、実質的に、Gが作成したイラストに、原告が僅かな修正等を加えたに過ぎないと主張する。しかし、Gが作成したイラストは、悪の秘密結社から原告にそのまま提示されたものであるところ、原告は、上記ア及びイのとおり、当該イラストに対し、悪の秘密結社とともに修正を加えるなどし、本件著作物1ないし4を完成させたものであるから、原告の著作者性が否定されるものではない。(イ) Fの関与について被告らは、Fが、ハチガネ、カラーリング並びにベルトバックル及びエンブレム部分の創作を行ったと主張する。そもそも、被告らが指摘する部分は、本件著作物1ないし4の各イラストにおいて不可分一体のものとなっており、同各イラストから分離して著作者性を論じることはできない。また、Fがこれらの点について、アイデアやデザイン案を提示したことは認めるが、最終的に、原告が修正したり、原告が最終稿を決定したりしたものであり、Fの関与によって原告の著作者性が否定されるものではない。

(3) 本件著作物11について

原告は、平成31年4月頃、悪の秘密結社からヤマシロンの新しいスーツを作

5 りたいとの提案を持ち掛けられ、既存のヤマシロンをベースにしたデザイン案

を提示されたうえで修正意見を求められた。それを受けて原告が詳細な意見を述べながら頭部や胸部等のデザインに修正を加え、本件著作物11が完成した。原告の意見は、実際、胸部のメーター部分などに反映されている。このように、本件著作物11は、悪の秘密結社と原告が共同してデザインした本件著作物1ないし4に対し、さらに共同で修正を加えたものであるから、悪の秘密結社と原告の共同著作物であるし、仮にそう認められなかったとしても、著作権法28条により原著作者としての権利を有するといえる。【被告らの主張】

(1) 原告の関与態様について

原告は、コンテンツの企画立案を目的とする会社であり、ヒーローコンテンツの制作をすることは目的となっていない。そのため、原告は、ヤマシロンについて、企画立案者として関与したにとどまり、具体的なヒーローデザインを創作するための関与はしなかったし、できなかった。実際、原告も、そのことを自覚していたからこそ、ヒーローデザインの制作に精通した悪の秘密結社をヤマシロンの制作に参画させ、そのことで本件各著作物を制作することができた。

(2) 本件著作物1ないし4は、主にGが制作し、悪の秘密結社が完成させたこと

ア Gは、悪の秘密結社から依頼を受け、平成29年3月23日及び同年4月3日に、ヤマシロンのイラスト案を送付したが、本件著作物1ないし4の各イラストは、このイラスト案の段階で実質的にほぼ定まっており、以後、完成までの間、微細な修正が加えられたに過ぎない。Gがイラスト案を送付するまでに原告が作成したイラストは、ラフ画に過ぎず、最終的な本件著作物1ないし4の各イラストのベースになっていないことは明らかである。また、その修正作業についても、実際に作画作業を行ったのは悪の秘密結社であり、原告が創作的な関与をしたことはない。

5 イ 原告は、悪の秘密結社から示された案に対し、ハチガネやベルトバックル等

を加え、カラーリング作業を行ったと主張するが、これらの作業は、主として、Fが行っており、原告は、単にアイデアを出したにとどまる。ウ よって、本件著作物1ないし4は、悪の秘密結社の著作物であり、原告は著作者ではない。また、仮に、原告に何らかの創作的関与が認められるとしても、主要な部分はF及びGが創作したものであるから、原告の創作性は、上記イのハチガネやベルトバックル等を加えたりカラーリング作業を行ったりした限度にとどまる。しかし、その内容は、いずれも微細なものであり、そもそも創作性が認められないし、仮に認められるとしても、FやGを原著作者とする二次的著作物の著作者としての権利にとどまる。

(3) 本件著作物11について

原告は、悪の秘密結社から新型ヤマシロンに関する意見を求められ、これに応えた結果、本件著作物11が完成したと主張する。しかし、本件著作物11の元となるイラストは、悪の秘密結社が原告に意見を求める前に、既に、悪の秘密結社が完成させていた。そして、原告は、悪の秘密結社から意見を求められたものの、その回答期限までに回答しなかったことから、悪の秘密結社は、原告の意見を聞くことなく、そのまま本件著作物11を完成させた。したがって、本件著作物11は、原告が何ら関与することなく、悪の秘密結社のみで完成させたものであるから、悪の秘密結社の単独著作物である。

2 争点2(原告が、本件各著作物を、被告山代ガスの職務上、作成したか)につい

て【被告らの主張】原告及び被告佐賀新聞サービスは、被告山代ガスに対し、被告山代ガスの広告宣伝用の企画として、後にヤマシロンとなるヒーローコンテンツの企画を持ち込んだ。しかし、ヤマシロンの企画は、あくまでも被告山代ガスの広報活動のためのものであり、具体的な話を進めたり、最終的に決定をしたりする権限は、被告山代ガ

5 スが有していた。したがって、本件各著作物を制作するか否かは、被告山代ガスの

判断にかかっていた。また、被告山代ガスは、ヤマシロンの制作に要する費用を全額負担していたし、原告は、制作中、被告山代ガスに対し、随時、意向を確認し、これを反映させていた。このように、被告山代ガスは、被告佐賀新聞サービスを介しながら、原告の制作活動全体を、管理監督していた。そして、完成した本件各著作物は、作成当初から「©2017YamashiroGas「 Co.,Ltd.」と、被告山代ガス名義で公表されており、原告もこのことに、何ら異議を述べていなかった。以上の事情を踏まえると、原告は、本件各著作物を被告山代ガスの職務として作成したものであるから、著作権法15条に基づき、その著作権及び著作者人格権は、すべて、被告山代ガスに帰属する。【

(原告の主張)

】原告は、独立した法人であり、被告山代ガスとの間で雇用関係類似の指揮命令・監督関係が存在することなどあり得ない。原告と被告山代ガスとの間の契約関係は、委託契約であり、その性質は、雇用ではなく、委任である。よって、原告は、被告山代ガスの職務に従事する者ではないから、本件各著作物は、被告山代ガスの職務著作ではない。

3 争点3「

(原告が、被告山代ガスに対し、本件各著作物に関する著作権を、著作権法27条及び28条に定める権利を含めて譲渡する旨の合意をしたか)について【被告らの主張】

(1) 原告は、被告佐賀新聞サービスを介し、被告山代ガスに対し、同社の広告宣

伝用の企画としてヤマシロンの企画を提案し、本件各著作物が制作された。よって、原告がヤマシロンの企画に参画した段階で、原告と被告らとの間では、本件各著作物に関する著作権が、最終的に被告山代ガスに帰属することが所与の前提となっていた。

5 まず、本件各著作物に関する著作権について、明示的に記載がある契約は本件

委託契約1であり、これによって原告が本件各著作物の著作権を譲渡したことは明らかである。しかも、本件委託契約2は、原告が、ヤマシロンのグッズを製作、販売するときには、被告山代ガスから許諾を得る形となっており、これは、被告山代ガスが本件各著作物に関する著作権を有していることを前提としているし、現に、原告は、グッズを製作、販売する際、その都度、被告山代ガスに対し、許諾を求めていた。よって、原告と被告らとの間では、遅くとも本件委託契約2が締結された段階で、本件各著作物に関する著作権が被告山代ガスに帰属することが合意されていた。

(2) 他方、原告と被告らとの間で取り交わされた上記各契約書には、本件各著作

物に関する著作権のうち、著作権法27条及び28条に定める権利を被告山代ガスに譲渡する旨の明示的な記載はない。しかし、以下の事情を踏まえると、原告と被告らとの間で、著作権法61条2項の推定を覆し、同法27条及び28条に定める権利を被告山代ガスに譲渡するとの合意があったものというべきである。ア 本件委託契約書1(ア) 著作権譲渡を定めた本件委託契約書1は、その第1条(目的)において「ヒーロースーツの制作」を原告に対し委託する旨の規定が存在する。ヒーロースーツを本件各著作物の翻案物であるとするならば、当然、その制作利用権限(委託権限含む)は本件各著作物の翻案権等を有する者にあるのだから、上記契約文言から被告山代ガスに翻案権等が帰属していたことは明らかである。(イ) 本件委託契約書1の第4条(検査)は、「乙(原告)は、制作後、甲(被告佐賀新聞サービス)の検査を受けなければならないものとし、当該検査に合格した完成品を納品するものとする」と規定する。また、第5条(修正)

5 は、「前条の検査の結果、甲(被告佐賀新聞サービス)が不適当と認める箇

所がある場合は、乙(原告)は、修正しなければならない。」と規定する。翻案物の制作に関する最終的な判断権限は、当然、本件著作物の翻案権者に帰属するのであるから、上記契約文言から被告山代ガスに翻案権等が存することは明らかである。(ウ) なお、原告は、本件委託契約1を締結した当時、原告及び被告佐賀新聞サービスは、著作権法61条2項のことなど念頭においていなかった点を指摘するが、それは、単に、双方が法律に疎かったのみであり、合意の有無を左右するものではない。イ 企画提案書本件各著作物に関しては、被告山代ガスへの企画提案段階から、①コミック、

②CM「

・ショートアニメ、③CM、④グッズ制作などの展開のみならず、⑤「「ヤマシロレンジャーユニフォーム」の作成や⑥「「ヤマシロレンジャー×悪の秘密結社ヤバイ仮面」のヒーローショーの開催、そして「スーツ、武器」の制作などが予定されていた。このように、本件各著作物については、当初より二次的著作物の制作が念頭に置かれていたのであって、このような売り込みをするにあたり、原告の許諾を得なければ各コンテンツを制作することができなくなることなど予定されていなかった。ウ 本件各著作物の著作権者表記原告は、本件各著作物から製作するグッズ等について、被告山代ガスの著作権者表記をすることを、自ら提案し、かつ、これに異議を唱えていなかった。このように、原告は、対外的にも本件各著作物及びその翻案物について被告山代ガスが権利者であると示すことを承諾していた。エ 実施報告書原告は、平成29年度の被告山代ガスに対する実施報告書において、ヤマシ

5 ロンに係るグッズに関する報告として、①オリジナル、②原告製、③野中工房

製に分け、本件各著作物のいわゆるデフォルメグッズを列挙していた。このとき、原告は、原告以外の者による翻案物の制作につき、原告による許諾等を問題にしていなかった。オ 本件委託契約書2(ア) 本件委託契約書2の第1条は、本件各著作物の利用形態として「本コンテンツのグッズ製作、販売、管理」や「本コンテンツを利用したヒーローショー等のイベント企画及び開催」を列挙しており、本件各著作物について、グッズやヒーローショー等の翻案利用が明確に予定されていたことが明らかである。そして、第1条を前提として、第2条(使用許諾)は、「本契約期間中、本コンテンツのグッズ製作及び販売において、甲(被告山代ガス)は乙(原告)に対し、下記の条件の元、本使用権を許諾する。」とし、原告は、グッズ製作にあたって被告山代ガスの事前承認を得ることとなっていた。さらに、第3条(対価)においては、原告の被告山代ガスに対する「グッズ製作・販売における本使用権の対価」及び「乙「(原告)の斡旋する本コンテンツを利用したヒーローショー等のイベント企画及び開催における本使用権の対価」について規定している。(イ) 著作物の翻案につき監修や使用許諾をなし得るのは、当該著作物の翻案権を有する者に限られる以上、上記(ア)の各規定は、被告山代ガスが本件各著作物につき翻案権を有していることを前提としている。カ 許諾申請書(ア) 原告は、本件各著作物やその二次的著作物を利用し、その二次的著作物たるグッズを製作する際、その都度、被告山代ガスに対し許諾申請書を提出していた。同申請書では、①「許諾対象キャラクター」として、ヤマシロンやレッド

5 ロンなどのほかにも、ミドリイロン・モモイロン・各種武器などが列挙され

たうえで、②その「許諾対象著作物」として、原著作物たる「公式イラスト」の他に、「LINEスタンプ」や「宣材写真」等の二次的著作物も挙げ、③「「許諾対象キャラクター及び当該キャラクターの名称を使用(二次的著作物含む)」することについて許諾を求めていた。以上のとおり、原告は、被告山代ガスに対し、本件各著作物の二次的著作物の使用及び制作について、意識的に、幾度も許可を求めていた。(イ) 通常、二次的著作物についての利用や制作に関する許諾権限を有しているのは、原著作物の翻案権等を有する者に他ならない(著作権法63条1項)から、本件各著作物の翻案権等を有しているのは被告山代ガスであることは明らかである。

(3) 以上のとおり、原告と被告らとの間では、著作権法61条2項の推定を覆滅

させるべき事由が存在しており、原告は、同法27条及び28条に定める権利を被告山代ガスに譲渡した。【

(原告の主張)

】

(1) 原告と被告らとの間で取り交わされた本件各著作物の著作権に関する合意は、

原告及び被告佐賀新聞サービスの間で締結された本件委託契約1のみであり、原告と被告山代ガスの間では、何らの合意も存在しない。よって、原告と被告らとの間では、本件各著作物に関する著作権を被告山代ガスに帰属させる旨の合意は存在しない。

(2) そして、本件委託契約1及び2には、本件各著作物に関する翻案権等を譲渡

する旨の特掲がないので、仮に、本件各著作物の著作権の譲渡があったとしても、翻案権等は、原告に留保されたものと推定される「(著作権法61条2項)。他方で、被告らは、かかる推定を覆滅させるべき事由があると主張するが、当事者間では原告が翻案権等を有することが前提となっていたもので、その具体的理由は以下のとおりである。

5 ア 当事者の知見

原告及び被告佐賀新聞サービスは、本件委託契約1を締結した当時、いずれも著作権についてほとんど知識がなかった。そのため、翻案権等を譲渡等する前提となる意思が存在しなかった。イ 本件各著作物の著作権者表記について本件各著作物の著作権者表記は、被告山代ガス名義とされてきた。しかし、これは、本件各著作物が被告山代ガスの広報キャラクターという位置づけである以上、その性格に反しないものでなければならないという意味でしかなく、著作権についての知識を欠いていた当事者が明確に被告山代ガスに著作権を帰属させる趣旨だったと解することはできない。実際、被告山代ガスは、直接、本件各著作物を運用するのではなく、少なくとも令和元年までは被告佐賀新聞サービスと共同する形ではあったものの原告主導で、その著作権を管理、運用していたのであるから、原告と被告らとの間では、原告が翻案権を保有して行使することを合意していたというべきである。ウ ヤマシロンの企画発案経緯についてそもそもヤマシロンの企画は、原告代表者であるAのいう地元の元請け化、すなわち地元佐賀発のコンテンツ「ヤマシロン」を作って運用していくことで地元にコンテンツ産業を育てていくことを目指したものであった。そしてそのコンテンツ展開を原告が中心になって担っていきたいという原告の構想については被告らから了解を得られていたのであり、このような原告の思想に基づいて本件各著作物が生み出され、その構想に沿って原告が中心になって運用していくことが予定されていた。すなわち本件各著作物の著作権の行使を実際に行っていくのは原告であり、被告らもそれを了解していた。そしてAは、自分が中心になって生み出したヤマシロンというコンテンツを

5 育てていくことに心血を注ぎ、ヒーローショーなどを行うのに被告らから支

払われる金額だけでは足りなかったため多額の自己負担を行ってきたものであり、被告山代ガスの広報キャラクターという性格から生じる制約はあったものの、原告にとってヤマシロンは自社のコンテンツであった。エ グッズ製作等について原告が企画・製作・販売してきたヤマシロン関連のグッズは、一応被告山代ガスの了解を得ていたものの、本件各著作物の原著作物を原告が自由に変形・翻案してきたのである。また、原告は、SNSで多数かつ多彩なイラストや動画を制作して投稿してきた。他方、被告山代ガスが自ら本件各著作物の翻案権を行使することはなく、原告による翻案・変形が制限されたことはなかった。したがって、ヤマシロンが始動した平成29年当時の当事者の合理的意思としては、原告が本件各著作物の翻案権を有することは暗黙の前提であった。なお、被告山代ガスの広報キャラクターという位置づけであることからそれに基づいた世界観の維持に原告は配慮しなければならなかったが、それは原告自身が意識していたことであり、被告山代ガスが原告による翻案権の行使を許諾していたという関係を意味するものではない。オ 本件著作物11やドゲンジャーズへの関与について被告山代ガスは、令和元年に悪の秘密結社が勝手に出してきた本件著作物11のデザインについて原告に関与させ、ドゲンジャーズが始まった令和2年以降も、本件委託契約2の第4条に反し、原告に無償でヤマシロンの監修業務を行わせていた。このように、被告山代ガスは原告に本件各著作物の翻案権及び二次的著作物の利用に関する原著作者の権利があることを暗黙のうちに認めていた。

(3) 以上のとおり、被告らは、原告が本件各著作物の翻案権等を保有することを

前提としていたものであるから、著作権法61条2項の推定は覆らない。

4 争点4(本件各著作物に関する著作者人格権を行使しない旨が合意されていた

5 か)について

【被告らの主張】前記3「【被告らの主張】と同旨。翻案権を被告山代ガスに帰属させながら、原告が著作者人格権を行使することを認めるというのは、実質的に、被告山代ガスがヤマシロンのコンテンツを使用できなくさせるものであり、著作者人格権不行使の合意があったものというべきである。【

(原告の主張)

】

(1) ヤマシロンが誕生した平成29年当時、いずれの当事者も著作権について知

識がなく、著作者人格権というものについての認識もなかった。しかも被告らは令和5年になってから本件各著作物は職務著作であり、そもそも著作者は被告山代ガスであるなどと言い出したのであり、原告の著作者人格権の取扱いについて検討されることなど皆無であった。

(2) このように、原告及び被告らは、著作者人格権という権利について認識して

いなかったのであるから、合意の対象について認識がない以上不行使合意は成立し得ない。なお、原告が自己の権利を認識した後に、これを行使することは何ら妨げられるものではない。

5 争点5「

(本件委託契約1を締結したことにつき、原告に錯誤があったか)について【

(原告の主張)

】原告は、本件委託契約1を締結したとき、本件各著作物について翻案権等の譲渡がなされていないものと考えていた上、被告山代ガスが原告を自らの業務の従事者と位置付けているとは想像もつかないところで、仮に、これらについて正しく認識していれば、本件委託契約1を締結しなかった。よって、原告は、本件委託契約1の要素について錯誤に陥っていたから、改正前民法95条により、本件委託契約1は全部無効であり、その結果として、本件各著作物の著作権は全て原告に帰属することになる。

5 【被告らの主張】

争う。本件委託契約1を無効とするような原告の錯誤はない。

第4 当裁判所の判断

1 認定事実掲記の証拠並びに原告代表者、証人B、証人C、証人D及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) ヤマシロンの企画から本件著作物1ないし10が完成するまでの経過ア 被告佐賀新聞サービスは、かねてから、被告山代ガスとの間で、広告媒体と広告主としての取引上の関係を有していたが、平成29年初め頃、被告山代ガスの創立50周年記念として、広告宣伝用のヒーローコンテンツの制作を企画すべく、コンテンツ制作などの事業を行う原告の協力が得られる見通しを立てた上で、被告山代ガスに対し、その旨の提案をした。被告山代ガスも、この提案を受け入れたことで、原告及び被告佐賀新聞サービスは、本企画の具体化に向けて動き出すこととなった。原告は、本企画について、地元に密着したコンテンツ制作を育てていきたいと考えていた自社の構想にも整合するものとして当初から前向きに受け止めていたもので、平成29年3月8日には、被告佐賀新聞サービスに対し、被告山代ガスの広告宣伝用のヒーローコンテンツ(仮称ヤマシロレンジャー。後にヤマシロンとなるもの。)について、別紙2の1記載の内容の業務を受託する請書(本件請書)を提出した。本件請書は、被告佐賀新聞サービスが作成し、原告が、その文案のまま提出したものであった。さらに、原告と被告佐賀新聞サービスは、平成29年4月3日、別紙2の2の内容のヒーローコンテンツに係る各種制作委託契約(本件委託契約1)を締結した。本件委託契約書1の内容は、被告佐賀新聞サービスが用意した案文が修正なく、そのまま用いられたもので、原告が委託を受ける業務は、「(1)ヒーロー設定、ストーリー監修、(2)ホームページ制作、(3)ページ更新、

5 コンテンツ追加、(4)ヒーロースーツ制作、(5)ヒーロー宣材撮影業務、(6)AR CGモデリング業務」とされた。また、著作権の権利処理については、第6条に「この契約書に基づいて制作された制作物の著作権は、甲(被告佐賀新聞サービス)に帰属し、乙(原告)は、甲の許可なくしてこれを使用してはならない。」との規定はあったものの、著作権法27条及び28条に定める権利の処理を明示する規定はなかった。(甲9、10、29、43、乙B2、証人C、証人D)。イ 原告は、上記のように被告佐賀新聞サービスとの間で、正式な契約の調整を進めることと並行して、被告山代ガスの広告宣伝用コンテンツとして、いわゆる戦隊ヒーローの構想や登場キャラクターの立案を進めるとともに、平成29年1月下旬には、ヒーローコンテンツの制作実績を有する悪の秘密結社にも、この取組みへの参画を打診した。悪の秘密結社も、これを受け入れ、以後、原告代表者のAと悪の秘密結社代表者のBは、ネット経由のチャットを通じて、頻繁にやり取りを繰り返し、上記コンテンツに登場させるヤマシロンをはじめとするキャラクターなどのイラストを具体化させるなどの作業を行った。また、原告と悪の秘密結社との間では、当初から、ヒーローショー公演などでの利用のため、できあがったイラストに基づいて三次元のヒーロースーツを制作することを想定しており、このヒーロースーツの制作を直接行うのは悪の秘密結社の側であるとの役割分担が共通認識であった。AとBとの間で、平成29年1月から同年6月にかけて、イラスト制作などのために交わされた上記チャット形式でのやり取りは、別紙4「時系列表」のうち発信者と受信者がA及びBの対となっている欄に記載のとおりである。また、この制作過程では、悪の秘密結社の代表者であるBが取締役を務めるMECの従業員であるGが、Bからの依頼を受けて関与したほか、被告佐賀新聞サービスの従業員であるF、広告部長であるCも関わったもので、それら関係

5 者間の具体的やり取りは、別紙4「時系列表」のうち発信者又は受信者として、C、F、Gが表記された欄に記載のとおりである。このような経過を経て被告山代ガスの広告宣伝用コンテンツのイラストとして完成したのが、本件著作物1ないし10であった。(甲8、29、43、乙A2、12、B4)ウ 原告は、上記のようなイラスト制作などの作業の進捗を踏まえつつ、平成29年5月7日頃、被告佐賀新聞サービスと共に、被告山代ガスに対し、被告山代ガスの広告宣伝用のヒーローコンテンツの企画提案書(甲1)を提示した。同提案書には、別紙3のスライドが含まれており、キャラターのラフイラストほか、コミック、ショートアニメ、CM、グッズ製作などの展開、「ヤマシロレンジャーユニフォーム」の作成、「「ヤマシロレンジャー×悪の秘密結社ヤバイ仮面」のヒーローショーの開催、「スーツ、武器」の制作等の企画案が記載されていた。さらに、原告は、同年6月25日頃、被告佐賀新聞サービスと共に、被告山代ガスに対し、企画提案書(甲2)を提示したが、同提案書には、ヒーローコンテンツの世界観として、被告山代ガスの営業部ヒーロー課に所属するレッドロン、アオイロン、ダイダイロン、モモイロン及びミドリイロンに、このうち前三者が稟議通過によって合体した姿であるヤマシロンなどといった設定とともに、本件著作物1ないし10のイラストが記載されていた。被告山代ガスは、この提案書を受け入れ、これによって、原告と被告らとの間で、本件著作物1ないし10が、被告山代ガスの広告宣伝用のイラストとして完成したことが確認された。この時点までの間で、原告と被告山代ガスとの間で、書面をもって契約が締結されたことはなかった。また、この当時、悪の秘密結社と被告らとの間では、本件著作物1ないし10の権利処理などについて、直接やり取りがされたことはなかった。

5 (2) 原告によるヤマシロンに関する発信・展開及び被告山代ガスとの契約ア 原告は、ヤマシロンなどのイラスト制作作業などと並行し、ヤマシロンに関する発信にも力を入れていくこととし、まず、「オタクマガジン」と称する雑誌にヤマシロンの特集記事を掲載させるべく、被告らと調整(被告山代ガスとの関係では、被告佐賀新聞サービス経由)した上で、平成29年4月17日頃、「オタクマガジン」4月号に、ヤマシロンの世界観などを原告代表者のAが企画立案者として詳しく解説する記事が掲載、公刊され、以後、同年7月号及び10月号にも、同様の記事が掲載された。被告らとの上記調整過程では、被告山代ガスから、掲載するイラストにつき、被告山代ガスのロゴを外すよう求められた一方で、他に特段の修正意見が出されたことはなかった。原告は、他にも、平成29年7月には、ヤマシロンのウェブサイトを開設したほか、同月以降、アイドルとの共同イベントの開催、SNSチャンネルの開設、本件著作物1ないし10を元に作成したLINEスタンプの販売、テレビ番組化など、ヤマシロンに関するメディア展開を広げ、被告山代ガスに対し、平成29度末にその詳細を報告したもので、その中では、原告が製作したヤマシロンのいわゆるデフォルメグッズとともに、原告以外の企業が製作したヤマシロンのデフォルメグッズも、その製作者とともに列挙されていた。また、原告は、このような発信等活動の一環として、平成29年7月6日、被告佐賀新聞サービスの広告部長Cに対し、ヤマシロンのポスターに表記する著作権者表記を「©「2017「YamashiroGas「Co.,「Ltd.「All「Rights「Reserved.」又は短縮版として「©「2017「YamashiroGas「Co.,Ltd.」とすることを提案し、Cもこだわりはない旨応答した。原告と被告佐賀新聞サービスとの間では、本件委託契約1に基づく委託料は758万1816円と定められていたが、その後、725万7816円に変更され、これが被告佐賀新聞サービスから原告に対して支払われた。この委託料に対応する委託業務は、本件委託契約書1上で明記された6つの委託業務(ヒ

5 ーロー設定、ヒーロースーツ制作のほか、ストーリー監修やホームページ制作、ヒーロー宣材撮影業務なども含まれる。)及びその委託期間に係るものであった。また、原告と被告佐賀新聞サービスとの間では、本件委託契約1に明記された業務以外にも、ヤマシロンに係るイベント開催、SNSなどでの発信、広報活動を原告が受託する旨の委託契約関係が、特に期限を定めることなく継続されていたもので、被告佐賀新聞サービスが原告に対し、平成29年5月から令和4年9月までの間に支払った委託料は、上記725万7816円を含めて合計3460万4033円であった「(その実質的な負担者は、被告山代ガスであった。)。ただし、これら委託料の支払に対応する業務の多くは、ウェブサイトの更新、イベント開催、SNSなどでの発信、広報活動といった、本件各著作物の制作以外の業務に対応するもので、本件各著作物の制作に係る対価は、初期に支払われた上記725万7816円の一部という位置づけであった。(甲4、7ないし9、24、乙B1)イ 原告は、平成30年2月27日、被告山代ガスとの間で、別紙2の3の内容の本件委託契約2を締結した。その文案は、原告が用意したもので、被告山代ガスが修正を求めることはなく、そのまま採用されたものであった。本件委託契約2は、「コンテンツ利用許諾及びマネジメント業務委託契約書」との表題のもと、被告山代ガスがマネジメントするヒーローコンテンツ「ヤマシロン」を本コンテンツと定義した上、被告山代ガスは、原告を本コンテンツの運営事務局とし、本コンテンツのグッズ製作・販売・管理、メディア出演に関する斡旋等のマネジメント業務を原告へ委託することができることを目的とするものであった。あわせて、本コンテンツのグッズ製作及び販売において、被告山代ガスは原告に対し、所定の手続・条件のもとで許可すること、その対価として、原告は本コンテンツのグッズ販売によって得た売上金の10%を被告山代ガスに支払うことも規定された。他方、本件委託契約2において、著

5 作権の権利処理に直接言及する規定はなかった。原告は、令和元年8月7日から令和4年10月1日までの間、少なくとも30回にわたり、被告山代ガスに対し、本件委託契約2に則った許諾申請をし、その許諾を得た上で、ヤマシロンに係るグッズの製作・販売を行い、被告山代ガスに対して所定の対価を支払った。上記許諾申請に際しての書式は別紙6のとおりであり、いずれの申請のときも、「利用形態」欄には「本件商品またはサービス内及び当該商品またはサービスにかかる店頭販促物、プロモーションにて、許諾対象キャラクター及び当該キャラクターの名称を使用。(二次的著作物含む)」と、「著作権表記欄」には「©「2017「YamashiroGas「Co.,「Ltd.「All「Rights「Reserved.」及び「©「2017「YamashiroGas「Co.,Ltd.」と、「特記事項」欄には、要旨、原告は被告山代ガスに対し、製作する商品を見本として各1点ずつ、無償で提供する旨が記載されていた。また、「許諾対象著作物」には、本件各著作物の公式イラストのほか、LINEスタンプその他本件各著作物の二次的著作物に当たるものが記載されることもあった。「(甲11、乙A5、7)ウ 他方、被告山代ガスも、本件著作物1ないし10が完成した当初から、その二次的著作物に当たるものも含めた関連製品等の製造、販売を行っていたが、少なくとも当初の数年の間は、原告が関与することなく、新たな製作がされたことはなかった。また、原告は、平成30年頃から令和5年ころまでの間、原告が管理するヤマシロン用のSNSのアカウントで、本件著作物1ないし10のいわゆるデフォルメイラスト等を用いた画像や動画を投稿していたが、これについて、事前に被告らの確認を経るなどの手続はとられていなかった。(甲36)エ 原告代表者のA、被告佐賀新聞サービスの広告部長のC及び被告山代ガスの取締役のDは、本件委託契約1又は同2の締結に当たっての交渉、調整を行う立場にあったが、いずれも著作権法61条2項や著作者人格権が任意に処

5 分できない性質の権利であるといった著作権法に関する知識を有しておらず、当時において、法律専門家に相談することはなかった。(3) 本件著作物11が完成するまでの経過について悪の秘密結社は、平成31年になって、本件著作物1のヤマシロンに修正を施した新型のイラストとともに、これに基づく三次元のヒーロースーツの制作を検討するに至り、同年3月15日、被告佐賀新聞サービスの広告部長のCに対し、別紙5の1のとおり複数のイラスト候補を併記した案を、次いで同年4月17日には、別紙5の2のとおり、より具体化し、かつ、1つの候補に絞ったイラスト案を送信し、被告らもその制作を進める方向性を了解した。そこで悪の秘密結社は、同年4月23日頃、原告に対し、ヤマシロンの新しいヒーロースーツを制作すべく、上記イラスト案を示しつつ、これに対する原告の意見を求めた。これに対し、原告は、多忙のため、一定時間を要する旨返信したところ、悪の秘密結社は、同月末までの返信を求めた。悪の秘密結社は、原告から同月末までに返答をもらえなかったことから、令和元年5月1日、原告に対し、返答がないのでこのまま悪の秘密結社の上記案で進める旨の連絡をしたところ、原告は、翌2日になって、悪の秘密結社に対し、別紙5の3のとおり、別紙5の2のイラスト案に対しての意見を返信した。悪の秘密結社は、同年6月頃には、最終的に、ヤマシロン(強火)との名称の別紙5の4のイラストを作成、完成させ、その後、これを三次元化したヒーロースーツを制作した。「(甲57、乙A13~15)(4) ヤマシロンのドゲンジャーズ参画とその影響被告山代ガスは、令和2年頃から、九州各地のいわゆるご当地ヒーローを集めてコンテンツ展開を行う「「ドゲンジャーズ」との企画にヤマシロンを参画させるようになった。「ドゲンジャーズ」は、主として悪の秘密結社が監修する企画で、被告山代ガスは、その頃から、悪の秘密結社との関係を強め、原告が関与しないまま、ドゲンジャーズに関連する企画にヤマシロンを参画させるほか、ヤマシロ

5 ンに係るデフォルメグッズを製作・販売するようになった。そのため、原告は、自分が生み出したコンテンツが、自分が関与できないところで使用・改変されているとの不満を抱くようになり、悪の秘密結社や被告らに対して抗議をするなど、その関係性が悪化していった。被告らは、前記前提事実(5)のとおり、令和5年には、原告との各委託契約関係を解消する旨の意思表示をし、その後、原告は、本件訴訟を提起した。

2 確認の利益について本件は、原告が、被告らとの関係において、原告が本件各著作物に関する著作権及び著作者人格権を有することの確認を求める訴えである。そこで、その確認の利益を検討するに、前記1の認定事実及び本件訴訟の経過全体に照らせば、原告と被告らとの間では、本件各著作物に関する著作権及び著作者人格権を原告が有するか否かをめぐって、深刻な対立が続いていること、被告山代ガスは、本件訴訟において、自らが本件各著作物の著作権及び著作者人格権を有している旨主張し、原告のこれら権利の保有を否定していること、原告が自らの上記著作権及び著作者人格権を侵害していると考えている製品等は多岐にわたり(甲39、40、弁論の全趣旨)、それら行為は被告山代ガスの許諾のもとで複数の企業によって行われているものとうかがわれること、被告佐賀新聞サービスも、本件訴訟で、原告の上記著作権及び著作者人格権の保有を争うのみならず、原告との間で、本件各著作物の制作に係る本件委託契約1を締結した当事者であり、本件訴訟係属前には、それら著作物の著作権を自らが有する旨主張していたものでもあること(前記前提事実(5))を踏まえると、原告と被告ら間の本件各著作物の著作権及び著作者人格権に係る現在の紛争の抜本的解決のため、本件訴えには確認の利益が認められる。

3 争点1(原告が、本件著作物1ないし4及び11を創作したか)について(1) 本件各著作物のうち、本件著作物1ないし4及び11については、悪の秘密結社が創作したことについては争いがない前提のもと、原告も共同して創作し

5 た共同著作物で、原告も共同著作者といえるか「(ただし、争点2で職務著作性が否定されることが前提。)が争点となっている。一般に、共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう(著作権法2条1項12号)ところ、本件著作物1ないし4及び11について、原告が共同著作者といえるかについては、原告と悪の秘密結社との間で、分離しての利用が不能な著作物を創作するという共同意思があり、かつ、共同して創作行為を行った結果として創作された著作物といえるかを検討すべきものといえる(そのため単独著作のときのように、各人の個別の行為の創作性を問う必要が必ずしもあるわけではない。)。そして、本件著作物1ないし4及び11は、それぞれが、分離しての利用が不能な1つの著作物であるところ、創作の共同意思及び共同創作行為について、以下、検討する。

(2) 本件著作物1ないし4についてア 前記認定のとおり、本件著作物1ないし4は、被告山代ガスの広告宣伝用のヒーローコンテンツとして、原告が、被告佐賀新聞サービスから委託を受けたことを端緒として制作が開始され、原告の意思のもと、悪の秘密結社にも制作への参画を依頼し、悪の秘密結社もこれを承諾したもので、以降、原告と悪の秘密結社の間では、数か月にわたって、イラストの前提となるコンテンツの設定やイラストの制作について、イラストの具体案を交えながら、頻繁に意見交換を繰り返し、その成果物として、制作されたものである。また、制作過程を具体的に見ても、まず原告が、ガスの製造販売等を目的とする会社の広告宣伝を目的としていることを踏まえ、ガス事業に関する雑学的な要素を盛り込んだ設定などの構想やラフイラストを悪の秘密結社に伝え、双方がいわば目指すべきコンテンツの世界観やイメージを共有しつつ、意見交換を重ねた結果、悪の秘密結社が、その具現化として、本件著作物1ないし4の原型ともいうべ

5 きイラスト案を提示し(別紙4の平成29年3月23日欄)、以後、このイラスト案を基礎に、原告及び悪の秘密結社双方が、修正意見を言い合い、修正作業を重ねながら「(その作業には、原告と被告佐賀新聞サービスの間でやり取りがなされたものもあるが、この時点では、悪の秘密結社と被告佐賀新聞サービス及び被告山代ガスが直接やり取りしたことはなかった。)、本件著作物1ないし4を完成させたものといえる。また、被告佐賀新聞サービスからコンテンツ制作の委託を受けたのはあくまで原告であり、被告山代ガスに対して、コンテンツの設定や世界観に加え、本件著作物1ないし4も含めた各イラストの説明を行ったのも原告であるところ、ヒーローコンテンツとしての世界観や発注者の意向との整合性などの観点で、細部を含めてどのようなイラストに仕上げるかの最終的な決定権は、原告と悪の秘密結社との間においては、原告にあったものといえる。このような創作の経過全体に照らせば、本件著作物1ないし4は、まさに、原告と悪の秘密結社が、創作の共同意思のもと、共同して創作行為を行った結果として創作された著作物というべきであり、原告は、それらの共同著作者であると認められる。イ これに対し、被告らは、本件著作物1ないし4は、被告佐賀新聞サービスの依頼のもとでGが作成した原案を基礎としており、実際の作画作業を行ったのももっぱら悪の秘密結社である一方、原告の関与は、本件著作物1ないし4そのものについては、微細な修正の意見ないし作業にとどまるから、共同著作者とはいえない旨主張する。しかし、本件著作物1ないし4の原型ともいうべきイラスト案そのものを提示したのが悪の秘密結社であったのは確かであるものの、本件著作物1ないし4の制作過程は、前記認定、説示のとおり、原告と悪の秘密結社とが共同意思のもとで、共同して創作行為にあたっていたもので、上記イラスト案も、そういった共同創作の過程において、生み出されたものと評価できる。このよう

5 な共同での創作行為を行っていながら、成果物に比較的直結する案をいずれか一方が出したことを理由に、他方の著作者性を否定する論理は、共同著作に関する基本的な考えに反するものというべきである。また、被告らの主張するとおり、本件著作物1ないし4そのものについて、原告の意見等が反映されているのは、ハチガネやベルトバックル等の作成やカラーリングといった程度にとどまるが、このことは、寄与の程度はともかくとして、原告も本件著作物1ないし4の創作行為を行っていたことを示すものといえる。そして、本件著作物1ないし4は、それぞれが、分離しての利用が不能な1つの著作物である以上、各著作物の全体について、原告は共同著作者の地位にあるといえるもので、イラストに関する個別具体的な寄与の範囲や程度をもって、これを否定することも、やはり共同著作の基本的な考えや本件の創作経過と相いれないものといえる。よって、本件著作物1ないし4に関する原告の共同著作者性を否定する被告らの主張は採用できない。ウ ところで、被告佐賀新聞サービスは、自らも本件著作物1ないし4の創作を行っており、共同著作者となる旨主張する。この点、前記認定事実に照らせば、被告佐賀新聞サービスも、従業員であるFによって、本件著作物1ないし4について、原告及び悪の秘密結社との共同意思のもと、共同して創作行為を行ったものといえるから、職務著作として、共同著作者と認められるものの、原告の本件請求との関係においては、原告の求める権利関係の発生を障害、喪失させるなどの抗弁として機能するものではない(後記8(2)の説示も参照。また、被告佐賀新聞サービスが原始的に取得した著作権の帰趨については、争点3に関する判断において、必要な範囲で言及するものとする。)。エ なお、本件著作物5ないし10については、双方当事者が、令和7年7月29日の第15回弁論準備手続期日において、原告の単独で創作したものであ

5 ることについて争いがない旨確認したところであり、別途の判断を要するものではない。念のため補足すると、被告佐賀新聞サービスは、その後の主張において、それら著作物について、原告が単独で創作したものではなく、Fも一定程度、創作に関与したと指摘するものではあるが、本件著作物1ないし4とは異なり、被告佐賀新聞サービスが共同著作者であるとまでの主張をするものではないし、被告山代ガスも、本件著作物5ないし10の著作者性については、争点2の職務著作性を除いては、特段の積極的な主張をするものではない。これら被告らの主張内容にも照らし、本件著作物5ないし10については、原告が単独で創作したものであるとの前提で、以降の各争点の判断を行うこととする。

(3) 本件著作物11についてア 前記認定のとおり、本件著作物11は、原告が共同著作者である本件著作物1を基礎とし、これに修正を加えて作成されたイラストを三次元化したものであり、本件著作物1と本件著作物11を比較しても、その差異は限定的で、表現としての本質的な特徴を共にしているといえること、当該制作は、被告佐賀新聞サービスから原告が委託を受け、原告からの求めに応じて悪の秘密結社もその制作に参画したという本件著作物1ないし10と同じ法的枠組みの下で行われたものと評価でき、原告と悪の秘密結社との間の共同創作の意思の範囲内にあったといえること、上記法的枠組みは、本件委託契約書1の第1条(4)や別紙4記載の原告及び被告ら間の平成29年2月時点のやり取りに照らせば、当初から、二次元のイラストのみならず、三次元のヒーロースーツの制作も射程としたものであったこと、実際の創作過程としても、本件著作物1からの修正原案を作成したのは悪の秘密結社ではあるが、悪の秘密結社は、原告にも意見を求め、その意見も踏まえた上で別紙5の4のとおりに最終的なイラストを完成させ、その三次元化として本件著作物11を制作したことを踏まえると、本件著作物11も、原告及び悪の秘密結社が共同して創作した

5 もので、原告は共同著作者であると認められる。なお、上記のとおり、本件著作物11の制作は、本件著作物1ないし10と同じ法的枠組みの下で行われたものであると認められるところ、この場合、被告佐賀新聞サービスの著作者性も問題となりうるものではあるが、この点は、当事者が何ら主張していないことから、判断しない。イ この点、被告らは、原告は、悪の秘密結社から求められた回答期限を徒過して修正案を提示しており、その意見は、最終的に採用されなかったから、本件著作物11は、悪の秘密結社の単独著作である旨主張する。しかし、前記のとおり、本件著作物11も、本件著作物1と同様に、原告と悪の秘密結社との共同意思のもとで、共同して創作された成果物といえる以上、原告も共同著作者の地位にあると認められるのであって、個々の修正意見の採否や寄与の範囲、程度などを理由にこれを否定することはできないというべきである(なお、別紙5の2ないし4及び本件著作物11を対比すると、少なくとも、頭部に備えられている炎の形状部分について、原告の意見が反映されているものとうかがわれる。)。よって、被告らの主張は採用できない。

(4) 小括以上のとおり、原告は、本件著作物1ないし4及び11に関し、共同著作者であると認められる。そして、原告は、本件著作物5ないし10を創作したものでもあるから、結局、原告は、本件各著作物全部について、著作者であると認められる(正確には、争点2に関する後記判断も前提とする。)。

4 争点2(原告が、本件各著作物を、被告山代ガスの職務上、作成したか)について被告らは、原告が本件各著作物を、被告山代ガスの職務上、作成したものであるため、本件各著作物が原告の創作したものであったとしても、著作者となるのは被告山代ガスであり、原告には著作権及び著作者人格権は帰属しない旨主張する。

5 しかし、原告は、被告山代ガスとは法人格を異にする会社で、本件各著作物も、被告佐賀新聞サービスとの間で締結した本件委託契約1に基づいて制作されたものであり、被告山代ガスとの関係で、その「業務に従事する」(著作権法15条1項)どころか、これらの制作について直接の法的義務を負っていたかさえ判然としない。また、実際の制作工程を検討しても、原告は、随時、被告山代ガスの意向を確認しているものの、本件委託契約1のもと、受任者として、被告山代ガスの広告宣伝用に用いられる著作物であることを踏まえたごく当然の調整過程の域を出るものではない。また、著作物の最終的な採否が被告山代ガスの意向に係らしめるものであったとしても、やはり被告山代ガスの広告宣伝を用途とすることに伴うもので、原告にも創作上の裁量が相当に認められていたものといえるから、原告と被告山代ガスの間で「「業務に従事する」に該当するような指揮命令関係があったとは認められない。よって、原告が、被告山代ガスの職務として本件各著作物を作成したものとは認められず、被告らの主張は採用できない。したがって、本件各著作物の著作権及び著作者人格権は、いずれも、原告に「(ただし、本件著作物1ないし4については、悪の秘密結社及び被告佐賀新聞サービスと共に、本件著作物11については、本判決の枠組みの中では悪の秘密結社と共に)原始帰属していたものと認められる。

5 争点3「(原告が、被告山代ガスに対し、本件各著作物に関する著作権を、著作権法27条及び28条に定める権利を含めて譲渡する旨の合意をしたか)について被告らは、本件各著作物の著作権について、原告から被告山代ガスに譲渡された旨主張するのに対し、原告は、これを争った上で、さらに、著作権の譲渡があったとしても、著作権法27条及び28条に定める権利は原告に留保されたもので、譲渡の対象に含まれていない旨主張するので、順次検討する。(1) 本件各著作物の著作権の譲渡ア まず、原告及び被告らとの間で取り交わされた本件各著作物に関する著作

5 権に関する明示的な合意は、原告及び被告佐賀新聞サービスとの間で締結された本件委託契約1に、「この契約書に基づいて制作された制作物の著作権は、甲(被告佐賀新聞サービス)に帰属し、乙(原告)は、甲の許可なくしてこれを使用してはならない。」「(6条)との規定があるのみであり、被告山代ガスとの間では、本件委託契約2を含め、著作権の帰属や権利処理に関する何らの明示的な取決めも存在しない。しかし、本件委託契約1によれば、原告は、譲渡の相手が誰かはともかくとしても、本件各著作物の著作権を譲渡する意思を表示していたものではある。そして、被告ら間では、少なくとも本件訴訟において、本件各著作物の著作権が被告山代ガスに帰属するとの認識で一致しているというのみならず、原告も、本件著作物1ないし10が完成して間もない平成29年7月時点で、被告佐賀新聞サービスに対し、ヤマシロンに関するポスターに付記する著作権者表記について、被告山代ガスが著作権者であることを前提とした提案をしていたこと、原告及び被告山代ガスとの間で平成30年2月に締結された本件委託契約2でも、著作権の帰属等について直接明示する規定こそなかったものの、本件各著作物に基づいて製作されたグッズの著作権を、被告山代ガスが有することを前提とした許諾及び対価支払を定めていたこと、本件委託契約2に基づいて原告が被告山代ガスに提出していた許諾申請書には、一貫して、被告山代ガスが著作権者である旨の表示がされていたことというように、本件各著作物の著作権が、これを用いた広告宣伝の主体でもある被告山代ガスに帰属していることを前提とした言動を一貫して行っていたことが認められる。また、被告佐賀新聞サービスも、著作権者表記に関する原告の上記提案について、異論がなかったところでもある。以上のような事情を総合考慮すれば、原告と被告らとの間では、本件委託契約1のもとで原告が制作した著作物については、その権利発生とともに、被告山代ガスに譲渡され、その帰属とする旨の合意が、本件委託契約1の締結時か

5 らあったものと認めるのが相当である(本件委託契約1で著作権の帰属先を被告佐賀新聞サービスとする規定は、三社間の合意によって変更されたものと解される。この点、著作権が、原告から被告佐賀新聞サービスを経て被告山代ガスに順次移転したものと解する余地もないではないが、本件委託契約1のもとで制作される著作物は、被告山代ガスの広告宣伝を用途とするものであって、被告佐賀新聞サービスが独立した立場で利用することは全く想定されていなかったものであるから、その権利移転に、逐一被告佐賀新聞サービスを経由させることが、各当事者の合理的意思に沿うものとはいえない。)。よって、原告が本件委託契約1のもとで制作した本件各著作物に関する著作権は、著作権法27条及び28条に定める権利について別途の検討を要することを除き、原告から被告山代ガスへと移転したものと認められ、これを否定する原告の主張は採用できない。イ ところで、本件著作物1ないし4及び11については、悪の秘密結社が共同著作者として著作権を共有するものであったが、前記認定の事実経過に加え、証拠(乙A8「 その内容は前記前提事実(5)ウのとおり〕、証人B)によれば、悪の秘密結社は、自身が発注者との直接の契約関係に立たないそれら著作物について、自らが権利の保有や行使等をする意思が当初からなく、その権利処理については、発注者との直接の契約関係に立つ原告に委ねるべく、原告に権利を集中させ、原告が原始的に有する権利と帰趨を共にさせる旨の原告との黙示の合意があったものといえる。この点、証拠(乙A8)は、文言上の表題こそ「「合意書」となっているが、その内容は、悪の秘密結社が、本件各著作物の著作権及び著作者人格権が被告山代ガスに帰属することを「確認」するとともに、仮に、これらの権利が悪の秘密結社に原始帰属していたとしても、本件各著作物が作成された時点で、同著作権を被告山代ガスに譲渡し、同著作者人格権を被告ガスに対して行使しない旨を「約していた」ことを「確認」するというものであり、同合意書を作成したことによって新たに権利関係を発生さ

5 せたものというよりも、過去の事実を確認したものと解される。そうすると、同合意書の内容は、悪の秘密結社が、当時において、被告らとの間で権利処理に関するやり取りを直接行うことがなかったという前提のもと、原告と悪の秘密結社との間で上記のような黙示の合意があったとの認定と矛盾するものではない。また、本件著作物1ないし4については、被告佐賀新聞サービスも共同著作者として著作権を共有するものであったが、原告と被告ら間の上記合意に伴うものとして、被告佐賀新聞サービスの著作権は、被告山代ガスに譲渡されたものといえる。このような次第で、原告と被告ら間での著作権の譲渡合意は、本件著作物1ないし4及び11に関しては、共有著作権を対象とするものではあるものの、他の共同著作者の著作権もあわせて処理されているため、著作権法65条1項による妨げは生じないものと解される。(2) 著作権法27条及び28条に定める権利次に、原告が被告山代ガスに対し、著作権法27条及び28条も含めて著作権を譲渡したといえるかを検討する。ア まず、著作権法61条2項は、翻案権等(著作権法27条)や二次的著作物の利用に関する原著作者の権利「(著作権法28条)を譲渡する場合には、「「特掲」、すなわち、これを特に掲げることを要求し、これを欠いた場合には、これら権利につき、譲渡者になお留保されたものと推定すると規定するものであるところ、その文言に加え、その趣旨が、著作権者(譲渡人)の保護にあると解されることも踏まえれば、「特掲され」たというためには、契約に際して、単に「著作権等一切の権利を譲渡する」などというような包括的な記載、合意をするだけでは足りず、譲渡対象権利として、著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げることにより、当該権利が譲渡の対象となっていることを明記するなど明示的に合意する必要があるというべきである。

5 本件では、原告が被告佐賀新聞サービスとの間で締結した本件委託契約1にも、さらには、被告山代ガスとの間で締結した本件委託契約2にも、文言上そのような特掲がないことは明らかであるところ、本件各著作物に関する著作権のうち、著作権法27条及び28条に定める権利は、上記(1)のような著作権全般の帰趨とは異なり、原告に留保されたものと推定される。一方、その法的効果はあくまで推定であるところ、本件において、これを覆滅するだけの事情があるかを、以下、検討する。イ まず、本件においては、上記推定を覆滅する事情の検討の前に、上記推定を補強する事情として、原告及び被告ら間において、本件各著作物の権利処理があいまいなものであったことを指摘しなければならない。すなわち、前記(1)で説示のとおり、事後的な総合評価としては、本件各著作物の著作権は、原告から被告山代ガスへと譲渡したものと認められるものではあるが、原告と被告らの間では、著作権法27条及び28条に定める権利の譲渡に関する特掲どころか、被告山代ガスに著作権を帰属させること自体の明文の取決めさえ欠き、むしろ、契約書上は、本件各著作物の著作権が被告佐賀新聞サービスに帰属しているかのような外観さえあったものである。現に、本件訴訟前には、被告佐賀新聞サービスが自らを本件各著作物の著作権者である旨主張するなど、被告らの間でさえ、著作権の帰属をめぐる錯綜が見られたところである。しかも、原告にとって自らの著作権の処理に直接言及する唯一の契約書である本件委託契約1は、諸事情に照らして、別紙2の2のとおりに、原告及び被告佐賀新聞サービス間で締結されたと認めるものであるが、証拠として提出されている契約書は双方当事者の署名又は押印を欠いたものである(甲10、乙B2)。このようなあいまいさが多分に残る権利処理をしていながら、その譲渡合意の射程に、著作権法27条及び28条の権利も含まれていると解することは、

5 それら権利の譲渡につき特掲を求める著作権法61条2項の趣旨に照らし、大いに躊躇されるものというべきである。なお、本件委託契約1の第4条(検査)は、コンテンツ制作の委託者と受託者という契約関係のもと、納品にあたってのごく一般的な検査を規定したものであって、著作権法27条及び28条の権利の帰属を左右させるものとは解されない。ウ 他方、被告らが指摘するとおり、原告及び被告佐賀新聞サービス間の本件委託契約1の内容をはじめ、前記認定の事実経過に照らせば、同契約のもとで、本件著作物1ないし10のような二次元のイラストが制作された後、三次元のヒーロースーツを制作するほか、本件各著作物の二次的著作物に該当するようなグッズの製作等をすることが当初から契約の前提となっていたもので

もある。しかし、大阪高等裁判所平成23年(ラ)第56号平成23年3月3

日決定を引用しつつ、このような事情をもって、著作権法27条及び28条

の権利も含めた権利譲渡があったとの根拠とする被告らの主張は、事案の相

違を捨象したものと言わざるを得ない。

すなわち、まず本件著作物1ないし10のような二次元のイラストとの関係

において、これを三次元のヒーロースーツとすることは、複製の域を超えた創

作行為として、翻案となり得るものであるが、本件委託契約1においては、そ

のようなヒーロースーツの制作も含めて、原告が委託を受けていたものであ

る。この点、仮に、原告の関与しない形でのヒーロースーツ制作が想定され、

原告もこれを了承していたのであれば、原告が翻案権も含めて譲渡した根拠

となり得るものではあるが、本件では、その前提を欠くものといえる「

(ただし、

このように本件委託契約1のもとで原告が制作したヒーロースーツに係る複

製権等は、上記(1)の原告及び被告ら間の合意の効果として、被告山代ガスに

移転したと認められるもので、本件著作物11の複製権等もここに含まれる

ということになる。)。

また、本件著作物の二次的著作物に該当するようなものも含めたグッズの製

作等についても、本件委託契約1の締結当時から想定されていたもので(甲

)、被告山代ガスが販売主体となることも、原告が販売主体となることもあ

った(本件委託契約2は、その法的枠組みを定めたものと位置付けられる。)

ものであるが、前記認定事実のとおり、後者の場合はもちろん、前者の場合で

あっても、新たなグッズ製作等が、原告の関与なしに行われることは、少なく

とも本件各著作物が制作されてから数年の間はなかった(ヤマシロンがドゲ

ンジャーズに参画する頃以降、原告の関与なくそのようなグッズ製作等が行

われるようになったが、この点は、本件各著作物の著作権の譲渡時の意思解釈

において考慮されるべき事情ではない。)のであるから、やはり、原告が翻案

権をいわば手放していたことの根拠になるものではない。

このように、これら事情は、原告が翻案権等を含めて著作権譲渡をしたこと

を積極的に示すものとはいえず、むしろ、原告が、本件各著作物の二次的著作

物の制作、管理も含め、ヤマシロンに関するコンテンツ全体を取りまとめ、管

理する立場にあることが原告及び被告ら間の当初の共通認識であったことを

示すもので、著作権法27条及び28条の権利が原告に留保されていたとの

推定と整合的な面さえあるといえる。

エ また、被告らは、原告が、ヤマシロンについて被告山代ガスを著作権者とす

る表示の付記を自ら提案していたほか、被告山代ガスに対する許諾申請にお

いても同様の表示を継続していた旨指摘する。

しかし、前記(1)のとおり、本件各著作物の著作権そのものは、著作権法2

条及び28条に定める権利に関する点をおくとしても、被告山代ガスに移

転していたもので、当時としては原告もこれに異論があったものではない。そ

して、前記(1)での検討に加え、本件委託契約2の内容に照らせば、本件各著

作物との関係では二次的著作物に当たる製品等であっても、原告がその制作

に関与した著作物の著作権「

(複製権等)は、本件委託契約1のもとで原告が制

作したイラスト、ヒーロースーツなどの著作権(複製権等)と同様、被告山代

ガスに譲渡されるとの合意が原告及び被告ら間にはあったものといえる。上

記著作権者の表記は、こういった著作権全般の帰属を示す趣旨のものとして

了解可能であり、著作権法27条及び28条の権利に限って原告に留保され

ていることと、相いれないものとまではいえない。

オ 最後に、原告は、本件委託契約2のもと、本件各著作物の複製の域にとどま

る製品の製作、販売のみならず、二次的著作物の製作、販売についても、被告

山代ガスの許諾を求める申請を継続していたもので、このことは、一見すると、

本件各著作物の著作権法27条及び28条の権利も被告山代ガスに帰属して

いることが前提の外観となっている面があることは否定できない。

しかし、本件委託契約2とこれに基づく上記許諾申請の内容は、本件各著作

物の著作権が、著作権法27条及び28条の権利とそれ以外の権利とで、原告

と被告山代ガスとにいわば分属している状況下において、当事者間の任意の

定めとして、ヤマシロンに関するグッズの製作、販売等について、各グッズが

複製の範囲にとどまるか、翻案にまで及ぶものであるかを区別せず、一律に被

告山代ガスの許諾に係らしめるとともに、その売上・利益の配分ルールを合意

し、運用したものとして理解することが可能であり、翻案権等も含めて被告山

代ガスに移転していたと見ることのみが、唯一了解可能な解釈なわけではな

い。少なくとも、上記アないしエでの検討もあわせた総合考慮のもと、双方当

事者とも著作権法に関する十分な知識を欠いたまま作成、利用されていたこ

とがうかがわれる許諾申請の書式等の記載をもって、著作権法61条2項の

推定を覆すまでの事情として重きを置くことはできない。

なお、原告及び被告山代ガスの間で明示的に意識されていたかはともかくと

して、後記クのとおり、本件著作物1ないし4について、被告佐賀新聞サービ

スが有していた著作権法27条及び28条の権利は、被告山代ガスに譲渡さ

れたものといえるから、この限りにおいて、原告が原始的に取得していた著作

権法27条及び28条の権利の帰趨にかかわらず、それらイラストの翻案に

当たっては、被告山代ガスの許諾を求める必要があったといえるものでもあ

る。

カ 以上のとおり、原告及び被告らの間で、著作権法61条2項の推定を覆滅さ

せるべき事由があるとは認められないから、本件各著作物に関する著作権の

うち、著作権法27条及び28条の権利は、原告に留保されているものと認め

られる。

キ ところで、被告山代ガスが口頭弁論終結の直前に提出した証拠(乙A16、

)については、時機に後れた攻撃防御方法として却下したものであるが、

仮にこれら証拠を取り調べた場合であっても、上記結論が左右されるもので

はない。

すなわち、上記証拠によれば、原告は、令和3年3月の時点で、ヤマシロン

に関する営業活動の一環として、テレビ番組制作の関係者に対し、ヤマシロン

関連の版権一切を被告山代ガスが保持し、自らは版権管理の立場にある旨の

説明をしていたことが認められるが、このような対外的な説明は、上記エの事

情の域を出るものではない。また、当該対外説明用の資料には、「

「保持してい

るスーツ、WEB、映像も基本的に全て山代ガス株式会社様帰属のコンテンツ、

原則版元さまの裁量で問題無く波に乗せる事が出来ます。」との言及もあるが、

「基本的に」「原則」という一定の留保文言を付している上、その後には、「一

定の世界観保持以外の制限は御座いません」とも述べ、著作物の世界観に伴う

一定の制約が存在することを前提とした言及をしているところ、ヤマシロン

関連の著作権が全般としては被告山代ガスに帰属する一方で、著作権法27

条及び28条の権利については、著作者にして著作権の管理業務を担う原告

に留保されていたと解することと矛盾を来す内容ではなく、むしろ、一定整合

的な面があるともいえる「

(原告は、翻案権や著作者人格権という法律用語・概

念こそ用いていないものの、実質において、これらの権利ないしその行使が自

らに留保されているに等しい理解を表明していたようにうかがわれるものと

もいえる。)。

したがって、上記証拠を考慮しても、上記カの結論が変わるものではない。

ク なお、本件著作物1ないし4及び11については、悪の秘密結社も共同著作

者として、その共有著作権を有していたものであるが、前記(1)イで検討した

ところによれば、このうちの著作権法27条及び28条の権利については、原

告が原始的に有していた分とともに、被告山代ガスに譲渡されることなく、原

告に留保されたものと解される。

他方、本件著作物1ないし4については、被告佐賀新聞サービスも共同著作

者として、その共有著作権を有していたものであるが、同じく前記(1)イで検

討したところに加え、被告ら間の関係性や本件の事実経過に照らせば、著作権

法27条及び28条に定める権利についても、原告及び被告ら間の合意に伴

って、被告山代ガスに譲渡されたものといえる。

したがって、原告が有する著作権法27条及び28条に定める権利は、本件

著作物1ないし4については、被告山代ガスとの共有、本件著作物5ないし1

については、単独で有しているものといえる。

争点4(本件各著作物に関する著作者人格権を行使しない旨が合意されていた

か)について

(1) 原告及び被告らの間では、本件委託契約1及び同2はじめ、いかなる書面又

は口頭においても、本件各著作物に関する明示的な著作者人格権の不行使合意

はなかったもので、この点は被告らも積極的に主張するところではない。

(2) そして、上記5で判示したとおり、原告及び被告らの間では、本件各著作物

の著作権が、全般としては原告から被告山代ガスに譲渡されたものの、著作権法

条及び28条に定める権利については原告に留保されたものというべきと

ころ、著作者人格権のうち同一性保持権について、黙示で不行使の合意があった

とするのは、著作権法27条及び28条の権利が原告に留保されたことと整合

せず、当事者の合理的意思解釈として、採用できないというべきである。

なお、被告佐賀新聞サービスが指摘する本件委託契約1の第7条、第9条や本

件委託契約2の第5条、本件請書1項は、いずれも契約に基づく債権債務関係を

規定するものであって、同一性保持権不行使の合意があったことの根拠となる

ものではない。

(3) 一方、原告は、本件各著作物に関する著作権法27条及び28条の著作権以

外の著作権を、ヤマシロンのウェブサイトが開設された平成29年7月1日よ

り前に譲渡したのであるから、本件各著作物の公表に同意したものと推定され

る「

(著作権法18条2項1号)し、そもそも、本件各著作物は、原告の意思にも

沿う形で、既に大々的に公表されているのであるから、もはや公表権を行使する

ことができると解する余地はない。

また、前記検討のとおり、原告は、本件各著作物やこれを利用した別の著作物

について、著作権者の表記を、被告山代ガスとすることを自ら提案し、継続する

一方、自らが著作者であることの表示を求めることは、本件各著作物の完成、公

表から現在に至るまでの間、なかったものといえる。そうすると、原告は、被告

らとの関係において、著作者人格権のうち氏名表示権を行使しないことを黙示

に合意したものと認められる。

(4) 以上の次第であり、原告及び被告らは、本件各著作物に関して原告が保有す

る著作者人格権のうち、公表権及び氏名表示権に限り、これらを被告らに行使す

ることはもはやできない一方、同一性保持権については、不行使の合意があった

とは認められない。

(5) なお、悪の秘密結社は本件著作物1ないし4及び11について、被告佐賀新

聞サービスは本件著作物1ないし4について、共同著作者として著作者人格権

を有しているものであるが、前記5(1)イ及び(2)クでの検討に照らせば、両社と

もに著作者人格権不行使の合意をしたものと認められる。

したがって、原告による同一性保持権の行使において、著作権法64条2項に

よる妨げは生じないものと解される。

争点5「

(本件委託契約1を締結したことにつき、原告に錯誤があったか)につい

て

原告は、原告及び被告らの間では、本件各著作物に係る翻案権等の譲渡及び著作

者人格権不行使の合意がされていないものと誤信していた上、被告山代ガスが原

告を自らの業務の従事者と位置づけていたとは想像もつかなかったことから、こ

れらの点について錯誤があり、改正前民法95条により、本件各著作権の移転原因

である本件委託契約1全部が無効であると主張する。

しかし、原告が被告山代ガスの業務の従事者に当たらないこと、著作権法27条

及び28条の権利が譲渡されず、原告に留保されているものであること、著作者人

格権のうち同一性保持権の不行使合意が認められないことは、前記4、5及び6で

論じたとおりであるから、そもそも誤信の事実が認められない。また、仮に、原告

が主張する諸点について、原告の意に反する判断がされる場合を想定しても、各争

点に関する見解の相違という域を出るものではなく、本件委託契約1全体を無効

とすべきような錯誤になるとは解されない。

よって、原告の主張は採用できない。

まとめ

(1) 以上のとおり、原告は、本件各著作物の著作者(本件著作物1ないし4につ

いては、悪の秘密結社及び被告佐賀新聞サービスとの共同著作者、本件著作物1

については、悪の秘密結社との共同著作者)であると認められる。そして、原

告は、本件各著作物に係る著作権を譲渡しつつ、このうち著作権法27条及び2

条に定める権利は原告に留保されたものであること、原告が、著作者人格権の

うち、同一性保持権を行使しないと合意したとは認められない一方、公表権及び

氏名表示権を行使することはできないことが認められ、かつ、本件委託契約1が

錯誤により無効であるとは認められない。

そうすると、原告が、

ア 本件各著作物について著作権法27条及び28条に定める著作権を有して

いること

イ 本件各著作物について著作者人格権を有するが、そのうち、同一性保持権に

ついては行使可能である一方、公表権及び氏名表示権については行使できな

いこと

が認められる。

このような場合に、裁判所がなすべき主文について、以下、検討する。

(2) 一部の著作物について、原告が有すると認められる著作権法27条及び28

条の権利及び著作者人格権が共有であることについて

原告は、本件各著作物について、著作権法27条に定める権利及び28条に定

める権利並びに著作者人格権を有すると認められるものであるが、このうち本

件著作物1ないし4については翻案権等を被告山代ガスと共有するとともに、

著作者人格権を悪の秘密結社及び被告佐賀新聞サービスと共有し、本件著作物

については著作者人格権を悪の秘密結社と共有するもので、単独保有とい

うわけではない。

この点、著作権や著作者人格権は、その保有が単独か共有であるかによって、

各種権利行使における法的な扱いに差異があるものではある(著作権法64条、

条)。しかし、原告が、本件訴訟でこれら権利関係の確認を求めているのは、

原告の元々の請求など本件訴訟の経過に照らせば、もっぱら権利侵害行為に対

する差止め等の請求を念頭に置いたものと理解されるところ、かかる請求につ

いては、著作権や著作者人格権が共有のものであっても、他の共有者の同意を得

ることなく、単独で行うことができる(著作権法117条)ため、この観点では、

原告の有する権利が単独によるものか、共有であるかを確認することが、紛争解

決上必須というわけではない。

また、原告は、本件著作物1ないし4及び11について、悪の秘密結社との共

同著作で、著作者人格権を共有するものであることを認めていながら、請求の趣

旨において、各著作権ないし著作者人格権が単独での保有か、共有かを区別して

おらず、もっぱら自らが権利を保有していることの確認を求める趣旨であると

解される。

このような原告が本件訴訟で掲げる請求の実質的な位置づけやその意思に立

ち返って考えれば、主文においては、原告の有する各権利が単独によるものか、

共有であるかを確認する必要はなく、むしろ、そのような確認をすることは、請

求の求めるところを超えての判断となり、相当でないと解される。

(3) 著作者人格権固有の問題

著作者人格権は、一身専属的な権利であり、その性質上、譲渡「

(著作権法59

条)や放棄といった任意の処分をすることができないと解される。他方で、著作

権について、著作権法27条及び28条の権利を含めて包括的に譲渡するとい

った権利処理をする場合に、著作者人格権の行使が制約なく可能なままである

とすると、著作権法27条及び28条の権利も含めて譲渡するという権利処理

の目的が実質的に達せられないという不都合が生じるため、あわせて著作者人

格権不行使の合意をし、これをもって譲渡等に代わる権利処理とすることが著

作権に係る契約実務上定着している。

この点、著作権法27条及び28条の権利を含めた著作権について、本件訴訟

のように、その原始的な取得者や、その後の権利処理による権利移転の有無が当

事者間で争われている場合、つまるところ当該紛争は、現在において原告が当該

著作権を有しているか否かに収れんされるもので、当該権利関係を主文で判断

することをもって、当事者間の紛争を解決するに必要かつ十分といえる。しかし、

著作者人格権については、上記のとおり、その権利処理が、譲渡による権利移転

という態様ではなく、その不行使の合意によらざるを得ないという権利の性質

上の制約があり、かつ、これが著作権に係る契約実務上定着しているという実態

があるところ、本件訴訟のように、その原始的な取得者に加え、当該権利処理を

めぐる争いも含めた紛争の解決のためには、原告が著作者人格権を有している

かの確認だけでは足りず、これが権利行使のできるものであるかという法律関

係をも含めての判断をする必要があるものといえる。

また、本件訴訟で原告の掲げる請求の趣旨は、形式上は、原告が本件各著作物

の著作者人格権を有することの確認を求めるものとなっているが、本件訴訟の

経過を含めてその実質的な意思を解釈すれば、単に著作者人格権を有すること

の確認を求めているのではなく、行使可能な権利として有していることの確認

を求めているものといえるし、被告らにおいても、一貫して、原告による権利保

有のみならず、権利行使の可否も含めて強く争っている。そのため、この点を含

めて主文で判断を示すことは、原告の請求における合理的意思に合致するもの

であるし、被告らに対する不意打ちとなるものでもない「

(被告佐賀新聞サービス

においては、明示的に、この点の確認を求めるものでもある。)。

そうすると、本件では、著作者人格権について、権利の保有に加え、その行使

が可能であるかも含めて主文において明らかにすることが必要であり、かつ、相

当な事案であるというべきであるところ、本件各著作物の著作者人格権につい

ては、原告が有することに加えて、同一性保持権については行使できる一方、公

表権及び氏名表示権については行使できないことを主文において明らかにする

ものである「

(なお、行使ができないこと、さらには、行使が可能であることまで

主文で明らかにすることは、上記のような本件の事案の特質を踏まえたもので

あり、本判決は、著作者人格権の帰属確認を求める事案において、当然にそのよ

うな処理をすべきことまでをいうものではない。)。

第5 結論

よって、原告の請求は、原告と被告らとの間において、別紙1「

「著作物目録」記載の

各著作物につき、原告が翻案権等の著作権法27条に定める権利及び同法28条に定

める権利並びに著作者人格権を有すること(ただし、原告は、被告らに対し、著作者人

格権のうち同一性保持権を行使することはできるが、公表権及び氏名表示権を行使す

ることはできない。)を確認する限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求

はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法64条

本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部

裁判長裁判官

松 川 充 康

裁判官

阿 波 野 右 起

裁判官

西 尾 太 一

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