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令和7(ネ)10063債務不存在確認等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年1月26日
事件種別 民事
法令 著作権
著作権法101条3回
民法709条1回
商標法4条1項7号1回
キーワード ライセンス24回
商標権11回
許諾7回
侵害5回
損害賠償4回
差止4回
抵触1回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1⑴ア 原告は、TULUMIZEとの間で締結した本件マスターライセンス契 約に基づき、本件著作物及び本件各標章を使用した製品の製造及び販売 を行っている。また、バイタルジャパンは、原告の取引先である。

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判決文

令和8年1月26日判決言渡
令和7年(ネ)第10063号 債務不存在確認等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70127号)
口頭弁論終結日 令和7年11月13日
5 判 決
控訴人(1審被告) サクラインターナショナル株式会社

10 被控訴人(1審原告) 株式会社SHIFFON
同訴訟代理人弁護士 成 川 弘 樹
同 金 子 禄 昌
同 葛󠄀 谷 滋 基
15 同 遠 藤 賢 祐
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 本判決において用いる主な略語は、次のとおりである(原判決において定義して
いるものを含む。)。
原告 被控訴人(1審原告)株式会社SHIFFON。特に断らない限
り、原告に吸収合併されて消滅した株式会社SHIFFONを
含む。
25 被告会社 控訴人(1審被告)サクラインターナショナル株式会社
被告個人 被告会社の代表取締役であるA(1審被告)。被告会社と併せて
「被告ら」という。
バイタルジャパン 株式会社バイタルジャパン
B B
C C
5 TULUMIZE TULUMIZE INC.
Cujo Cujo Arts and Literature,Inc.
サクラグループ サクラグループ有限会社
本件イベント 令和4年9月7日から同月9日にかけて開催されたイベント「第
94回 東京インターナショナル ギフト・ショー秋2022」
10 本件著作物 原判決別紙著作物目録記載の著作物
本件著作権 本件著作物に係る著作権
本件各標章 原判決別紙標章目録記載1~3の各標章の総称
本件各商標 原判決別紙被告商標目録記載1~4の各商標の総称。本件各商標
を順に「本件商標1」の要領で表記する。
15 本件各商標権 本件各商標に係る商標権の総称。本件各商標権を順に「本件商標
権1」の要領で表記する。
本件音楽契約 被告会社がCujo及びCとの間で締結した「MUSIC PR
ODUCTION SERVICE AGREEMENT」(乙1、
75)。本件音楽契約においては、Cujo及びCを併せて「ア
20 ーティスト」、アーティストの制作する音楽作品の録音物を媒体
に複製等したものを「音響作品」、アルバムのカバーアートワー
クを「カバーアート」ということがある。
本件ライセンス契約 サクラグループがBとの間で締結した「LICENSE
ING AGREEMENT」(甲8)。本件ライセンス契約に
25 おいては、衣類、アクセサリー、プロモーション、広告物並びに、
履物及びその関連商品を除く全ての商品を総称して「本商品」、
本商品に利用する、Bの肖像、絵画、詩及び物語、並びに、「G
onzo Cuntry」及び「Mark Gonzales」
との名称を総称して「本素材」ということがある。
本件マスターライセンス契約 原告がTULUMIZEとの間で締結したライ
5 センス契約(甲3)
本件警告書 被告会社がバイタルジャパンに対して送付した警告書(甲17)
不競法 不正競争防止法
通則法 法の適用に関する通則法
ベルヌ条約 1896年5月4日にパリで補足され、1908年11月13日
10 にベルリンで改正され、1914年3月20日にベルヌで補足さ
れ並びに1928年6月2日にローマで、1948年6月26日
にブラッセルで、1967年7月14日にストックホルムで及び
1971年7月24日にパリで改正された1886年9月9日の
文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
15 第1 控訴の趣旨
1 原判決中、被告会社敗訴部分を取り消す。
2 上記取消部分に係る原告の請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
1⑴ア 原告は、TULUMIZEとの間で締結した本件マスターライセンス契
20 約に基づき、本件著作物及び本件各標章を使用した製品の製造及び販売
を行っている。また、バイタルジャパンは、原告の取引先である。
イ バイタルジャパンは、令和4年9月7日から同月9日にかけて開催され
た本件イベントにおいて、本件著作物及び本件各標章を使用した製品を
展示(陳列)し、これに対して、被告会社は、同月14日頃、バイタル
25 ジャパンに対し、内容証明郵便により本件警告書を送付して、上記製品
を製造、陳列する行為は、被告会社の有する本件著作権及び本件各商標
権を侵害するものであるとして、上記製品の製造等の停止及び廃棄を要
求するとともに、これに応じない場合には、上記製品の製造、販売の差
止め、損害賠償請求等の法的装置を講ずる予定である旨の告知をした。
⑵ 本件は、① 原告が、被告会社に対し、被告会社は本件著作権を有してい
5 ない、本件各商標は商標法4条1項7号に該当する、被告会社による本件各
商標権の行使は権利濫用に該当する、被告会社は同法29条により本件各商
標の使用をすることができないなどと主張して、⒜ 原告が本件著作物を複
製、翻案、譲渡、展示、公衆送信又は送信可能化することにつき、被告会社
において本件著作権の侵害を理由とする損害賠償請求権及び本件著作権に基
10 づく差止請求権を有しないことの確認、⒝ 原告が、本件各標章を本件各商
標権の指定商品又はその包装に付し、本件各標章を付した同指定商品を譲渡
し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する
ことにつき、被告会社において本件各商標権の侵害を理由とする損害賠償請
求権及び本件各商標権に基づく差止請求権を有しないことの確認(以下、こ
15 れらを併せて「請求①」という。)を求めるとともに、② 原告が、被告ら
に対し、被告らの本件警告書を送付する行為は不競法2条1項21号に該当
する、原告は上記行為により営業上の利益、信用を侵害されたなどと主張し
て、⒜ 同法3条1項に基づき、原告は本件著作物及び本件各標章について
第三者にライセンスをする権限を有しないとの事実の告知又は流布の禁止、
20 ⒝ 同法4条(被告ら)又は民法709条(被告個人)、会社法350条
(被告会社)に基づき、1100万円(無形損害1000万円、弁護士費用
100万円)及びこれに対する令和5年5月11日(訴状送達の日の翌日)
から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の連帯支払、⒞
不競法14条に基づき、信用回復の措置としての謝罪広告の掲載(以下、こ
25 れらを併せて「請求②」といい、順に「請求②⒜」の要領で表記する。)を
求める事案である。
2 原審は、原告の請求のうち、請求①を全部認容し、請求②については、請求
②⒜を、被告会社に対して事実の告知又は流布の禁止を求める限度で、請求②
⒝を、被告会社に対して110万円(無形損害100万円、弁護士費用10万
円)及び遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ認容する一方、被告会社に
5 対するその余の請求を棄却し、被告個人に対する請求を全部棄却した。
被告会社は、原判決中被告会社敗訴部分を不服として控訴を提起した。また、
原告は、原判決中原告敗訴部分を不服として附帯控訴を提起したが、その後、
これを取り下げた。
したがって、原告の被告会社に対する請求②⒞の当否及び原告の被告個人に
10 対する請求②の当否は、当審における審理の対象ではない。
3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正するほか
は、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要等」の3及び4(原判決
5頁22行目から13頁1行目まで)並びに「第3 争点に関する当事者の主
張」の1から5まで(原判決13頁4行目から23頁19行目まで)の被告会
15 社に関する部分に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決6頁23行目の「米国ネバダ州の会社」を「米国ネバダ州法に基づ
き設立された会社」に改める。
⑵ 原判決13頁7行目の「本件著作物は」を「著作権の原始的帰属について
は、本件音楽契約の準拠法である米国カリフォルニア州法、米国著作権法が
20 準拠法となる。そして、本件著作物は」に改める。
⑶ 原判決13頁19行目の「Bが、」の次に「雇用契約に定める職務の範囲
内で、」を加える。
⑷ 原判決14頁3行目の「本件著作物は」を「著作権の原始的帰属について
の準拠法は、当該著作物の保護が要求される同盟国の法令(以下「保護国法」
25 という。)というべきであり、日本における著作権の原始的帰属については
日本著作権法が、米国におけるそれについては米国著作権法が準拠法となる。
そして、本件著作物は」に、9行目の「遅くとも」から10行目の「5月ま
でに」までを「Cujoの設立及び本件音楽契約の締結より前に」にそれぞ
れ改める。
⑸ 原判決14頁12行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
5 「 被告会社は、本件著作物は本件音楽契約に基づく著作物で分離不可
能であること、仮に分離可能であるとしても、相互依存性なくして完成し得
ないものであることから、BとCの共同著作物に該当する旨の主張もする。
しかしながら、仮に本件著作物が本件音楽契約に基づくものであったとし
ても、本件著作物と歌詞、楽曲等とは分離可能であるし、B及びCに、Bの
10 創作した著作物とCの音楽の著作物とを相互に依存するものとして統合する
意思はなかったのであるから、いずれにせよ、被告会社の主張は失当であ
る。」
⑹ 原判決14頁13行目の「上記のとおり」を「米国著作権法101条は、
職務著作を「被用者がその職務の範囲内で作成する著作物」と定義するとこ
15 ろ、上記のとおり」に、14行目の「制作したものであるから」を「制作し
たものであり、CがBの創作活動に関与した事実はないことから」にそれぞ
れ改め、15行目の「Cujoは、」の次に「本件著作物が創作される前で
ある平成12年(2000年)に、」を加える。
⑺ 原判決14頁19行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
20 「 また、日本著作権法上、職務著作に該当するには、① 法人等の発意
に基づくこと、② 法人等の業務に従事する者が作成すること、③ 職務上
作成された著作物であること、④ 法人等の著作の名義の下に公表すること
を要するところ、本件著作物が①~③の要件を充足しないことは、上記のと
おりであるし、Bの制作する作品は同人の著作の名義の下に公表されること
25 が予定され、実際、本件著作物はBの著作の名義の下に公表されているので
あって、本件著作物は、日本著作権法上も職務著作に該当しない。」
⑻ 原判決15頁8行目の「米国著作権法101条は」から9行目の「定義し
ているから」までを「本件音楽契約の準拠法は米国カリフォルニア州法、米
国著作権法であるところ、同法101条は、独占的なライセンスの付与(排
他的ライセンスの付与)を「著作権の移転」と定義し、同法201条は、特
5 定の排他的権利の保有者は、かかる権利の範囲内で、本編が著作権者に対し
て認める全ての保護及び救済を受けることができると定めるのであるから」
に、11行目の「排他的使用権」から12行目末尾までを「少なくとも著作
権の一部について、排他的使用権、許諾権(アルバム宣伝目的の複製権、複
製物譲渡権、翻案権、権利譲渡権)、差止請求権、損害賠償請求権を有し、
10 日本においても、著作権者と扱われて上記権利を有することになる。」にそ
れぞれ改める。
⑼ 原判決15頁20行目末尾に「原告は、本件著作物は職務著作に該当しな
い、Cujoの定款5条によれば、Cujoの代表者であるDに契約締結権
限はないとして、Cujoは被告会社に本件著作権を移転することができな
15 い旨の主張もするが、Dは、上記権利譲渡契約を締結する際、被告会社に対
し、職務著作に係る資料(雇用契約書、雇用証明書、納税証明書等)や契約
締結権限に係る資料を示し表明保証をしていたのであって、本件においては
準拠法である米国カリフォルニア州法の適用により表見代理(表見的権限)
が成立する。」を加える。
20 ⑽ 原判決16頁15行目の「取得することもない」を「取得することもない
(Cujoの定款5条は、実質的に全ての資産の移転、売却その他の処分を
行う場合には、議決権の3分の2以上の賛成を要する旨を定めるのであり、
Bの同意を得ない限り、Cujoは被告会社に本件著作権を移転することが
できない。被告会社は、米国カリフォルニア州法の適用により表見代理が成
25 立する旨の主張もするが、被告会社は、Cujoの代表者であるDに契約締
結権限がないこと、又は、その可能性があることを認識していたのであり、
当該可能性を払拭し得る合理的根拠もなかったのであるから、被告会社の主
張は失当である。)」に改める。
⑾ 原判決16頁19行目の「原告に対し、」の次に「Bの著作権に抵触しな
い範囲で」を加える。
5 ⑿ 原判決16頁24行目から25行目にかけての「本件音楽契約の成果物で
あり、かつ、本件著作物であるから」を「本件音楽契約に係る絵画創作物で
あり、本件著作物であるところ」に、同行目の「被告会社が」を「被告会社
は、本件音楽契約に基づき、本件著作物を含む絵画創作物を音響作品及びア
ーティストの宣伝という目的の範囲で複製、販売する排他的権利を現有し
10 (本件音楽契約12条2項は、本契約に基づく各当事者の権利及び義務は、
他方の当事者の書面による事前の同意がなければ、その一部又は全部が譲渡
又は移転されてはならない旨を定めるのであり、上記排他的権利が移転する
こともない。)、」にそれぞれ改める。
⒀ 原判決17頁14行目の「また」から17行目末尾までを「また、本件ラ
15 イセンス契約11条に定める返還義務の対象となるのは、同契約の期間中に、
サクラグループが同契約の許諾対象物についてした登録であり、契約書に明
示的な定めがない以上、同契約締結前に登録を受けた本件各商標は、同条に
定める返還義務の対象には含まれない。」に改める。
⒁ 原判決17頁18行目の「許諾対象物は、」の次に「本件音楽契約に基づ
20 き被告会社が現有する排他的権利を除く」を加える。
⒂ 原判決19頁5行目の「被告会社は、サクラグループと一体的な存在であ
り」を「サクラグループの代表者は被告個人の配偶者である上、本件ライセ
ンス契約締結に係る交渉を実際に担っていたのは被告個人であり、被告会社
はサクラグループと一体となってライセンス事業を行っていたのであって」
25 に改める。
⒃ 原判決20頁11行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「 被告会社は、本件ライセンス契約の締結前に登録を受けた本件各商標
は、同契約11条に定める返還義務の対象に含まれない旨の主張をする。
しかしながら、本件ライセンス契約は、Bと被告会社との間の過去の利用
許諾関係を整理し、本件著作物等の著作物又は「Mark Gonzales」等の名称
5 に係る著作権、商標権その他の知的財産権が全てBに帰属することを前提と
して、被告らが上記知的財産権を利用したブランドライセンスビジネスを行
うことを許諾するとともに、被告会社が本件ライセンス契約締結前に無断で
開始したビジネスに規律を与えることを目的とするものである。本件商標1
及び2は本件著作物、本件商標3及び4はBの名称により構成されるもので
10 あること、本件ライセンス契約3条は、被告会社は、Bの事前承認を得て、
新規に提供された素材のみならず過去の素材(past Materials)の全部又は
一部を使用することができるとする一方で、Bは、単独かつ絶対的な裁量に
より、これを保留することができる旨を定めること、本件ライセンス契約1
1条はBが本素材と本商品に関する全ての知的財産権を保有する旨を定める
15 ことなどからしても、本件各商標が本件ライセンス契約1条及び2条に定め
る利用許諾の対象に含まれることは明らかであり、本件各商標が本件ライセ
ンス契約11条に定める返還義務の対象に含まれることも明らかである。」
⒄ 原判決22頁15行目の「有しているから、」を「有しており、バイタル
ジャパンによる本件商標1及び2の使用は、商標的使用として被告会社の本
20 件各商標権を侵害するものであるから」に改める。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原告の被告会社に対する請求①、請求②⒜は、いずれも理由が
あり、原告の被告会社に対する請求②⒝は、110万円及び遅延損害金の支払
を求める限度で理由があると判断する。その理由は、次の2のとおり補正する
25 ほかは、原判決「事実及び理由」欄の第4の1から5まで(原判決24頁3行
目から44頁9行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
2⑴ 原判決24頁19行目の「第4条(原文ママ)」を「第4条(第3条の誤
記と認められる。)に改め、25頁24行目末尾を改行の上、次のとおり加
える。
「第3条 納入素材
5 アーティストは、2000年11月15日までに、次の素材を被告会社
の主たる住所(事務所)宛に納入する。
a)マスターテープ 音響作品の録音物が録音されたDATテープ
b)英語版の歌詞シート
c)アルバムカバーアート
10 d)その他、後日、被告会社及びアーティスト間で合意される音響作品の
リリースに必要な情報」
⑵ 原判決26頁7行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「12.2 譲渡の禁止
本契約に基づく各当事者の権利及び義務は、他方の当事者の書面による
15 事前の同意がなければ、その一部又は全部が譲渡又は移転されてはならな
い。」
⑶ 原判決27頁21行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「第3条 サクラグループは、Bの事前承認を得て、新規に提供された素
材及び/又は過去の素材(past Materials)の全部又は一部を使用すること
20 ができる。ただし、Bは、単独かつ絶対的な裁量により、これを保留するこ
とができる。」
⑷ 原判決32頁8行目から22行目までを次のとおり改める。
「 ベルヌ条約は、著作権を有する者の決定(著作権の原始的帰属)に
ついて、映画の著作物(14条の2第2項⒜)を除き、特段の定めを設けて
25 おらず、通則法にもその定めがないことからすると、著作権の原始的帰属に
ついての準拠法は条理に基づいて定めるのが相当である。そして、ベルヌ条
約5条2項は、著作物の保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者
に保障される救済の方法は、同条約の規定によるほか、専ら、保護国法の定
めるところによる旨を、また、同条約14条の2第2項⒜は、映画の著作物
について著作権を有する者を決定することは、保護国法の定めるところによ
5 る旨を定めることに照らすと、共同著作物、職務著作を含む著作権の原始的
帰属については、保護国法が準拠法となり、日本で保護される著作権につい
ては日本法が、米国で保護される著作権については米国法がそれぞれ適用さ
れると解するのが相当である。
この点、被告会社は、本件著作権の原始的帰属については、本件音楽契約
10 の準拠法である米国カリフォルニア州法、米国著作権法が準拠法となる旨の
主張をするが、著作権の原始的帰属につき、日本で保護される著作権につい
ては日本法が、米国で保護される著作権については米国法がそれぞれ準拠法
として適用されるものと解するのが相当であることは、上記のとおりであっ
て、被告会社の主張を採用することはできない。」
15 ⑸ 原判決33頁19行目末尾を改行の上、次のとおり加える。
「 被告会社は、本件著作物は、本件音楽契約に基づくもので分離不可
能であるし、分離可能であるとしても相互依存性なくして完成し得ないもの
であるから、BとCの共同著作物に該当する旨の主張もする。
しかしながら、後述するとおり、本件著作物を本件音楽契約に基づくもの
20 と認めることはできない。また、仮に本件著作物が本件音楽契約に基づくも
のであったとしても、本件著作物と歌詞、楽曲等とが分離可能であることは
明らかというべきである。B及びCに、Bの創作した著作物とCの音楽の著
作物とを相互に依存するものとして統合する意思があったことを認めるに足
りる証拠もなく、被告会社の主張を採用することはできない。」
25 ⑹ 原判決33頁22行目から34頁4行目までを次のとおり改める。
「 職務著作を含む著作権の原始的帰属につき、日本で保護される著作
権については日本法が、米国で保護される著作権については米国法がそれぞ
れ準拠法として適用されるものと解するのが相当であることは、前記ア(ア)
のとおりである。」
⑺ 原判決34頁20行目の「制作、発表し」を「制作し、自身の作品として
5 公表し」に、22行目の「供述しており」を「具体的に供述しており、その
内容に特段の不合理はないことに照らすと」にそれぞれ改める。
⑻ 原判決35頁19行目の「従業員として」を「従業員として、その職務の
範囲内で、あるいは、職務上」に、21行目の「米国著作権法101条の職
務著作物の規定によっても」を「米国著作権法101条の規定によっても
10 (なお、本件著作物が同条に定める「…著作物であって、当事者が署名した
文書によって職務著作物として扱うことに明示的に同意したもの」に該当し
ないことは明らかである。)」にそれぞれ改める。
⑼ 原判決36頁10行目から16行目までを、次のとおり改める。
「 著作権の譲渡については、その原因関係である契約その他の債権的法
15 律行為の成立及び効力と、譲渡の対象となる著作権の効力とを区別して準拠
法を定めるのが相当である。そして、著作権の譲渡の原因関係である債権的
法律行為の成立及び効力については、通則法7条により「当事者が当該法律
行為の当時に選択した地の法」が準拠法となるのであるから、本件において
は、当事者が本件音楽契約締結当時に選択した米国カリフォルニア州法が、
20 準拠法として適用されることになる。」
⑽ 原判決37頁8行目末尾に「そして、このことは、本件音楽契約6条が
「アーティストは、音響作品のリリースに併せて制作される全ての作曲、T
シャツ及び/又は宣伝資料に対し完全な制作管理権を保有する」と定めるこ
ととも整合する。」を加える。
25 ⑾ 原判決37頁18行目の「特定の目的」から19行目の「付与されただけ
の」までを「音響作品及びアーティストの宣伝という目的の範囲で、音響作
品に関連して創作されたカバーアートをTシャツ等に複製し、販売する独占
権を有するにとどまる」に改める。
⑿ 原判決37頁25行目の「上記⑴のとおり」を「著作権の譲渡の原因関係
である債権的法律行為の成立及び効力については、通則法7条により「当事
5 者が当該法律行為の当時に選択した地の法」が準拠法となることは、上記ア
(ア)のとおりであり、本件においては、当事者が上記権利譲渡契約締結当
時に選択した米国カリフォルニア州法(乙10、11)が準拠法として適用
されることになる。もっとも、上記⑴のとおり」に改め、38頁3行目末尾
の次に「被告会社は、米国カリフォルニア州法の適用により表見代理が成立
10 する旨の主張もするが、本件音楽契約及び上記権利譲渡契約の内容や、その
締結経緯に照らすと、そもそも、被告会社は、本件音楽契約等により、本件
著作権の全部又はその一部が被告会社に譲渡され、あるいは、これと同等に
扱われる権利の全部又はその一部が被告会社に付与されるわけではないこと
を認識していたものと認められ、いずれにせよ被告会社の主張を採用するこ
15 とはできない。」を加える。
⒀ 原判決38頁5行目の「本件著作権を」を「本件著作権をその一部におい
ても」に改める。
⒁ 原判決39頁24行目の「被告個人が」を「被告会社の代表者である被告
個人が」に改める。
20 ⒂ 原判決40頁26行目の「しかし」から41頁4行目の「ことにはならな
い。」までを「しかしながら、サクラグループは、本件ライセンス契約締結
当時、被告会社から本件各商標の譲渡を受けて、これを保有していたことに
加え、本件ライセンス契約3条は、サクラグループは、Bの事前承認を得て、
新規に提供された素材のみならず過去の素材(past Materials)の全部又は
25 一部を使用することができるとする一方で、Bは、単独かつ絶対的な裁量に
より、これを保留することができる旨を定めること、本件商標1及び2は本
件著作物、本件商標3及び4はBの名称により構成されるもので、本件ライ
センス契約11条に定める本素材に該当するところ、同条はBが本素材と本
商品に関する全ての知的財産権を保有する旨を定めることに照らすと、本件
各商標は本件ライセンス契約1条及び2条に定める独占権の付与ないし利用
5 許諾の対象に含まれるものと認められ、本件各商標は本件ライセンス契約1
1条に定める返還義務の対象に含まれるものと認められる。」に改める。
第4 結論
よって、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとして、主文の
とおり判決する。
10 知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
15 森 冨 義 明

裁判官
20 菊 池 絵 理

裁判官
25 頼 晋 一

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