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令和7(行ケ)10086審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年1月26日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ディスカバー・ジャパン
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法4条1項11号9回
キーワード 審決14回
実施7回
商標権3回
拒絶査定不服審判1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取 消訴訟であり、争点は、本願商標の商標法4条1項11号該当性である。

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判決文

令和8年1月26日判決言渡

令和7年(行ケ)第10086号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和7年12月9日

判 決

原 告 株式会社ディスカバー・ジャパン

同訴訟代理人弁理士 高 橋 孝 仁

被 告 特許庁長官

同 指 定 代 理 人 吉 沢 恵 美 子

同 阿 曾 裕 樹

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

(注)本判決の本文中で用いる略語の定義は、別に定めるほか、次のとおりである。本願商標:原告の出願に係る別紙「商標目録」記載の商標(甲1)引用商標:別紙「引用商標目録」記載の登録商標(甲2)

第1 請求

特許庁が不服2025-3339号事件について令和7年7月10日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟であり、争点は、本願商標の商標法4条1項11号該当性である。1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 原告は、令和5年12月21日、「Discover Japan TRAVEL」の標準文字からなる本願商標について、商標登録出願(商願2023-141919)をしたところ、令和6年11月26日付けで拒絶査定を受けたことから、令和7年3月2日、拒絶査定不服審判の請求をした。

5 ⑵ 特許庁は、これを不服2025-3339号事件として審理し、令和7年7月10日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は、同年8月4日、原告に送達された。

⑶ 原告は、令和7年9月2日、当庁に対し、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 本件審決の理由本件審決の理由は、別紙「本件審決の理由」記載のとおりであり、要旨、

①本願商標は、その指定役務中の旅行に関する役務(以下、単に「旅行に関する役務」という。)との関係では、その構成中の「Discover Japan」の文字部分が自他役務の識別標識として強く機能するものであるから、これを分離抽出し、要部として引用商標と比較することが許される、

②本願商標の要部と、「DISCOVER JAPAN」の欧文字を標準文字で表してなる引用商標は、外観において近似した印象を与えるものであり、称呼及び観念を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当であり、別紙「商標目録」記載の本願商標の指定役務(以下「本願指定役務」という。)と、別紙「引用商標目録」記載の引用商標の指定役務のうち下線を付したもの(以下「引用指定役務」という。)は同一又は類似のものであるから、本願商標は商標法4条1項11号に該当するというものである。3 原告主張の審決取消事由本願商標の商標法4条1項11号該当性(商標の類否)に係る判断の誤り

第3 当事者の主張

(原告の主張)

1 商標法4条1項11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類

似の役務に使用された場合に、役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれが

5 あるか否かによって決すべきである。そして、それには、役務に使用された

商標が、外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づき判断すべきものであって、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、外観、観念、称呼のうちの一つにおいて類似するものでも、他の点において著しく相違することその他取引の実情等によって、役務の出所に誤認混同を生ずるおそれのないものは、これを類似商標とすべきでない。また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、その構成部分の一部を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、当該部分が取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合などを除き、許されない。

2 次の⑴~⑸の事情によれば、本願商標は、外観、称呼及び観念において、一

体的に理解、把握すべきものであり、その構成部分の一部を抽出し、この部分のみを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、許されない。

⑴ 外観

本願商標は、「Discover Japan TRAVEL」の欧文字を標準文字で表してなり、同一の書体及び大きさの文字で一連に横書きした構成である。本願商標を構成する各語の間に空白が設けられているが、これは英語の文法上当然である。また、本願商標は「TRAVEL」の文字部分のみ全て大文字で表してなるところ、文の一部の単語を全て大文字で表するのは一般的な英語表現の範疇であり、実際の取引においても、「ANA Discover JAPAN」、「Discover OSAKA」、「D

5 iscover LIFE」等、商標等を構成する一部の単語のみを大文字

で表することは普通に行われているのであって、「Discover Japan」の文字部分が強く取引者、需要者の注意をひくような特段の事情はない。

⑵ 称呼

本願商標からは「ディスカバージャパントラベル」の称呼が生ずるが、これは、特段冗長なものではなく、一気一連にかつ自然に呼称し得るものである。

⑶ 観念

本願商標を構成する「Discover」、「Japan」、「TRAVEL」の各語は、いずれも基本的かつ平易な英単語であり、強い印象や特異な印象を与えるものではない。また、「Discover」は「~を発見する」という意味を有する他動詞であり、「Japan TRAVEL」の文字部分は「Discover」の目的語となる一体の語句であって、本願商標からは、全体として「日本の旅を発見しよう」との自然かつ一体的な観念が生ずる。

⑷ 出所識別標識としての機能

本願商標は、全体として「日本の旅を発見しよう」との意味合いを無理なく自然に想起させるもので、旅行に関する役務との関係において、出所識別標識としての機能を十分有する。

⑸ その他の取引の実情等

引用商標の商標権者は、引用商標を使用しておらず、当該商標権者の役務を表示するものとして周知であるといった実情や、当該商標権者の出所を示すものとして、現に取引者、需要者に理解されているといった実情はない。他の旅行に関する役務を営む者も、例えば、「ANA DISCOVERJAPAN」、「Discover Japan Concept」等、

5 「Discover Japan」や「DISCOVER JAPAN」の

文字を、その商標の一部に使用していて、「Discover Japan」の文字の出所識別力は、さほど強いものではない。また、日常的に、あるいは、頻繁に旅行をするわけではない需要者にとって、旅行先、交通手段、宿泊先等の選択は極めて重大であることなどからすると、旅行に関する役務の需要者が、極めて高い注意力をもって取引に臨むことは明らかであり、軽々に「Discover Japan」の文字部分のみに着目し、引用商標に係る役務と同一の出所であると誤認混同するとはいえない。3⑴ 以上のとおり、本願商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、一体的に理解、把握すべきであり、本願商標からは、全体として「ディスカバージャパントラベル」の称呼が生じ、「日本の旅を発見しよう」との観念が生ずる。一方、引用商標は、「DISCOVER JAPAN」の欧文字を標準文字で表してなるもので、「ディスカバージャパン」の称呼が生じ、「日本を発見する」との観念が生ずる。そうすると、本願商標と引用商標は、外観、称呼及び観念において類似するものではなく、取引の実情等によっても、役務の出所に誤認混同を生ずるおそれのないものであるから、本願商標は、引用商標と類似するものでなく、商標法4条1項11号に該当しない。

⑵ 被告は、本願商標について、その構成中、「Discover Japa

n」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを引用商標と比較して本願商標と引用商標の類否の判断をするが、「Discover Japan」の文字部分は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく、かかる判断をすることは許されない。また、被告は、本願商標の構成中、「TRAVEL」の文字部分は、出所識別標識としての機能を果たさない旨の主張もするが、例えば「TOWER

5 RECORDS」、「BIC CAMERA」、「mister Donu

t」、「炭都饅頭」などのように、指定商品や指定役務と関連する語であるからこそ、出所識別標識としての機能に寄与する場合は普通にある。

(被告の主張)

1⑴ 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、これをみだりに分離観察すべきでないが、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているといえない場合には、その構成部分の一部を要部として抽出し、その部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許される。

⑵ 本願商標は、「Discover Japan TRAVEL」の欧文字

を標準文字で表してなるところ、①「Discover Japan」の文字部分は、いずれも語頭のみを大文字、それ以外は小文字で表してなり、「TRAVEL」の文字部分は、全て大文字で表してなるものであり、異なる表記ルールで表され、その間には空白が設けられていることから、外観上、「Discover Japan」と「TRAVEL」を組み合わせた結合商標であると認識、理解し得る。そして、本願商標の構成中、「Discover Japan」の文字部分からは「日本を発見する」程度の意味合いが想起できるとしても、「Discover Japan」の文字部分と「TRAVEL」の文字部分を結合して具体的な意味合いを有する成語、文章となるものではないから、観念上、これらを常に一体不可分のものと把握すべきとはいえない。また、旅行に関する役務については、例えば「odakyu TRAVEL」、「西武トラベル」のように、事業主体の出所表示(ブランド名)に続き、旅行代理店等の業種や業務内容を示すために「TRAVEL」、「トラ

5 ベル」等の表示が広く使用されている。

⑶ 前記⑵を踏まえると、本願商標は「Discover Japan」と

「TRAVEL」の各文字部分を組み合わせた結合商標であると容易に認識されるところ、旅行に関する役務との関係において、「TRAVEL」の文字部分は、旅行代理店や旅行予約代行という業種や業務内容を表示する語と認識、理解されるにすぎず、出所識別標識としての機能を果たさないか、果すとしても極めて弱いのに対し、「Discover Japan」の文字部分は、事業主体の出所表示として、その取引者、需要者に対し強く支配的な印象を与えるものといえるから、当該構成部分を要部として抽出し、これを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することができるものといえ、そうすると、本願商標からは「ディスカバージャパン」の称呼を生じ、「日本を発見する」程度の観念を生ずる。そして、本願商標と引用商標を比較すると、両商標は、外観上、「TRAVEL」の文字の有無や大文字、小文字の表記に微差があるものの、その要部は、共通する文字を表してなり、また、本願商標の要部と引用商標は、その称呼、観念を共通にするもので、これらによって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。原告は、旅行に関する役務の需要者が、極めて高い注意力をもって取引に臨むことは明らかであり、本願商標の構成中、「Discover Japan」の文字部分のみに着目して、引用商標に係る役務と同一の出所であると誤認混同するおそれはない旨の主張をするが、旅行に関する役務の需要者は、旅行を行う一般消費者であり、極めて高い注意力をもって取引に臨むとはいえない。

2 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、引用指定役務

と同一又は類似する役務について使用するものであるから、商標法4条1項1

5 1号に該当する。本件審決の商標法4条1項11号該当性に係る判断に誤りは

ない。

第39類 旅行の企画・運営・実施・手配又は予約、旅行の企画・運営・実

施・手配又は予約に関する指導・助言・相談又は情報の提供、企画旅行の実施、旅行者の案内、旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ、企画旅行の実施に関する指導・助言・相談又は情報の提供、旅行者の案内に関する指導・助言・相談又は情報の提供、旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎに関する指導・助言・相談又は情報の提供、海外旅行者のための査証及び渡航用書類の手配、旅行者のための座席の予約、旅行者の添乗又は案内、旅行の予約、旅行についての助言、旅行に関する情報の提供、旅行に関する助言及び情報の提供、旅行に関連する相談及び予約、旅行のためのチケットの予約、旅行チケットの予約、旅行チケットの発行の代行、旅行のための予約代理、旅行・周遊の予約、旅行の企画・手配及び予約、旅行の企画・運営、旅行の企画・運営及び予約、旅行の手配、主催旅行の手配及び予約、旅行の経路の企画、旅行の運営、旅行案内、旅行者の案内の企画・運営、休暇旅行の手配、個人及び団体のための旅行の手配、個人旅行者の案内、小旅行の企画・運営、小旅行の手配及び予約、小旅行の運営及び実施、小旅行・日帰り旅行及び観光旅行の手配、小旅行及び観光旅行ツアーの手配及び予約、市内観光バスツアーの手配及び予約、旅行者のための旅行に関する情報の提供、旅行者への観光旅行に関する情報の提供、地域観光に関する情報の提供、旅行及び観光に関する情報の提供、観光業務、観光業務に関する指導・助言・相談又は情報の提供、観光旅行の企画・運営、観光旅行の実施、観光旅行に関する助言、観光旅行に関する情報の提供、観光旅行ツアーの手配及び予約、海外旅行者のための査証・旅券・渡航用書類の手配、航空旅行者への自動チェックイン手続の代行、空港における旅客の搭乗手続の代行、旅行・輸送及び保管に関する助言、輸送及び旅行の手配、輸送及び旅行に関する情報の提供、輸送の媒介又は取次ぎ、輸送の予約、

5 巡航の手配、ツアー旅行及び巡航の手配

(注)指定役務については、本件審決が引用商標の指定役務と同一又は類似すると認定したもののみを掲げる。以 上(別紙)引 用 商 標 目 録【登録番号】商標登録第5811472号

5 【登録商標】DISCOVER JAPAN(標準文字)

【役務の区分及び指定役務】

第35類 広告業、商品の販売に対する情報の提供

第39類 鉄道による輸送、鉄道の運行情報の提供、他人の携帯品の一時預か

り、駐車場の提供、自動車の貸与、自転車の貸与、企画旅行の実施、旅行者の案内、旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ、旅行情報の提供、観光地・観光施設に関する旅行情報の提供

第43類 宿泊施設の提供、宿泊施設の情報の提供、飲食物の提供、提供され

る飲食物の情報の提供、レストラン等の飲食店の人気ランキングに関する情報の提供

第44類 入浴施設の提供、温泉入浴施設に関する情報の提供

【登録日】平成27年12月4日【出願日】平成27年3月19日(注)指定役務については、本件審決が本願商標の指定役務と同一又は類似すると認定したものに下線を付した。以 上(別紙)本件審決の理由

1 本願商標について

本願商標は、「Discover Japan TRAVEL」の欧文字を標準文字

5 で表してなるところ、「Discover」は「発見する」の意味を、「Japan」

は「日本」の意味を、「TRAVEL」は「旅行(すること)」の意味を有する英単語(株式会社研究社「新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典」参照)である。そして、各単語の間にスペースが設けられていることに加え、構成中の「Discover」及び「Japan」の欧文字は、語頭部分のみ大文字で表されているのに対し、「TRAVEL」の欧文字は、全体が大文字で表されているから、「Discover Japan」と、それに続く「TRAVEL」とは、視覚上、分離して看取され易いものといえる。文章の始まりや固有名詞の語頭のみ大文字で表すという一般的な英語表現上のルールに倣えば、本願商標の構成は、「Discover Japan」の文と、全て大文字で表された「TRAVEL」の単語が結合してなるような印象を与えるため、「Discover Japan TRAVEL」の文字全体から生ずる意味合いは判然とせず、これらを常に一体のものとして認識・把握すべきほどの観念上の一体性は直ちに見出せない。また、本願商標の構成中の「TRAVEL」の文字部分は、その指定役務中、第39類の旅行に関する役務との関係では、当該役務が旅行に関するものであることを端的に表すにすぎず、自他役務の識別標識としての機能が極めて弱いものか、又はその機能を果たさないものである一方、その構成中、「Discover Japan」の文字部分は、「日本を発見する」ほどの意味合いを無理なく想起させ、その指定役務との関係において、自他役務の出所識別標識として十分機能し得るものである。そうすると、本願商標の指定役務中、第39類の旅行に関する役務との関係では、その構成中の「Discover Japan」の文字部分が、自他役務の識別標識として強く機能するものであるから、これを分離抽出し、要部として引用商標と比較することが許されるというべきであり、本願商標はその要部である「Discover Japan」の文字部分に相応して「ディスカバージャパン」の称呼を生じ、「日本を発見する」の観念を生ずる。

5 2 引用商標について

引用商標は、「DISCOVER JAPAN」の欧文字を標準文字で表してなるところ、「DISCOVER」は「発見する」の意味を、「JAPAN」は「日本」の意味を有する英単語である(いずれも前掲書参照)。そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「ディスカバージャパン」の称呼が生じ、「日本を発見する」の観念を生ずる。

3 本願商標と引用商標の類否について

本願商標の要部と引用商標を比較すると、外観においては、大文字小文字の差異があるとしても、書体(標準文字)、文字種(欧文字)及びつづりを共通にし、極めて近似した印象を与えるものである。また、本願商標の要部と引用商標は、「ディスカバージャパン」の称呼及び「日本を発見する」の観念を共通にする。そうすると、本願商標の要部と引用商標は、外観において近似した印象を与えるものであり、称呼及び観念を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。

4 本願商標と引用商標の指定役務の類否について

本願商標の指定役務と引用商標の指定役務は同一又は類似のものである。

5 まとめ

以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、それら指定役務は同一又は類似するから、商標法4条1項11号に該当する。以 上

第4 当裁判所の判断

1 本願商標の分離観察の可否について商標法4条1項11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。また、商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別されるものであるから、複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、その構成部分の一部を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないというべきであるが、実際の取引において、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標については、常に必ずしも構成部分全体によって称呼、観念されるわけではなく、その一部のみによって称呼、観念されることがあることを踏まえると、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、その構成部分の一部を要部として抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集

5 47巻7号5009頁、最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。

2 本願商標について

⑴ア 本願商標は「Discover Japan TRAVEL」の欧文字を標準文字で表してなり、「Discover」と、「Japan」と、「TRAVEL」の各文字部分とで構成される結合商標であり、その構成中、「Discover」の文字部分は「発見する」の、「Japan」の文字部分は「日本」の、「TRAVEL」の文字部分は「旅行する」又は「旅行」の意味をそれぞれ有する、平易な英単語である(甲9、乙2~4)。イ また、本願商標を構成する各語の間には空白が設けられているところ、その構成中、「Discover」及び「Japan」の各文字部分は、いずれも語頭のみ大文字で、それ以外は小文字で表してなるものであるのに対し、「TRAVEL」の文字部分は、全て大文字で表してなるものであって、そうすると、「Discover Japan」と「TRAVEL」は、外観上、分離して認識、観察されるものといえる。ウ そして、証拠(乙5~39)及び弁論の全趣旨によれば、旅行に関する役務においては、「TRAVEL」、「トラベル」等の語が、その役務の内容を表すものとして一般に用いられていることが認められ、このような取引の実情を踏まえると、本願商標の構成中、「DiscoverJapan」の文字部分からは、「ディスカバージャパン」の称呼が生ずるとともに、「日本を発見する」又は「日本を発見しよう」との観念が生じ、旅行に関する役務との関係において、役務の出所識別機能を一定程度果すものといえるのに対し、本願商標の構成中、「TRAVEL」の文字部分については、役務の内容を表すものとして一般に用いられる、「トラベル」の称呼と、「旅行する」又は「旅行」との観念が生ずるに

5 とどまり、これを超えて、出所識別標識としての称呼、観念が生ずるものではないというべきである。エ 上記ア~ウによれば、本願商標が、実際の取引において、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められず、本願商標については、その構成中、「Discover Japan」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを引用商標である「DISCOVER JAPAN」と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

⑵ア 原告は、本願商標からは「ディスカバージャパントラベル」との一気一連かつ自然に呼称し得る称呼が生ずることや、全体として「日本の旅を発見しよう」との自然かつ一体的な観念が生じ、旅行に関する役務との関係においても、出所識別標識として十分機能し得ること、一方、「Discover Japan」の文字の出所識別力は、さほど強いものではないことからすると、本願商標は、一体的に理解、把握されるべきもので、その構成部分の一部を要部として抽出し、この部分のみを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨の主張をする。しかしながら、本願商標の構成中、「Discover Japan」の文字部分と「TRAVEL」の文字部分は、外観上、分離して認識、観察されるものであること、本願商標の構成中、「DiscoverJapan」の文字部分からは「ディスカバージャパン」の称呼が生ずるとともに、「日本を発見する」又は「日本を発見しよう」の観念が生じ、旅行に関する役務との関係において、役務の出所識別機能を一定程度果すものといえるのに対し、本願商標の構成中、「TRAVEL」の文字部分については、出所識別標識としての称呼、観念が生ずるもので

5 ないことは、前記⑴のとおりであり、原告が主張するところを踏まえても、本願商標の分離観察の可否に係る判断は左右されない。イ 原告は、旅行に関する役務の需要者が、極めて高い注意力をもって取引に臨むことは明らかであり、「Discover Japan」の文字部分のみに着目し、引用商標に係る役務と同一の出所であると誤認混同するとはいえない旨の主張もするが、旅行に関する役務の需要者は一般消費者であり、かかる需要者が、旅行をする際、極めて高い注意力をもって取引に臨むとまで認めるのは困難である。原告の上記主張は採用できない。

3 本願商標と引用商標の類否について引用商標は、「DISCOVER JAPAN」の欧文字を標準文字で表してなるもので、「ディスカバージャパン」の称呼が生じ、「日本を発見する」との観念が生ずるものといえる。そこで、本願商標と引用商標を対比すると、本願商標の要部(「Discover Japan」)と引用商標(「DISCOVER JAPAN」)は、称呼及び観念において同一であり、外観においても、大文字ないし小文字の表記上の差異はあるものの、いずれも欧文字の標準文字を横書きにしてなるもので近似するのであって、本願商標及び引用商標を同一又は類似の役務に使用した場合には、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるということができる。したがって、本願商標と引用商標は互いに類似するものと認めるのが相当である。

4 小括以上のとおり、本願商標は引用商標に類似する商標であるところ、本願指定役務は引用指定役務と同一又は類似のものであり、本願商標は商標法4条1項11号に該当するというべきであるから、本件審判請求は成り立たないとした本件審決の判断に誤りはない。

第5 結論

5 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官

森 冨 義 明

裁判官

菊 池 絵 理

裁判官

頼 晋 一

(別紙)

商 標 目 録

【出願番号】商願2023-141919

5 【商標】Discover Japan TRAVEL(標準文字)【役務の区分及び指定役務】

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