ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(ワ)70451 投稿記事削除請求事件
| 裁判所 | 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和8年1月29日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告A 被告note株式会社 |
| 法令 |
著作権 |
| キーワード | 実施1回 侵害1回 |
| 主文 | 1 被告は、別紙投稿記事目録記載の投稿記事を削除せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 本件は、原告が、ウェブサイト「note」(以下「本件サイト」という。) を運営する被告に対し、 別紙投稿記事目録記載の記事 (以下 「本件記事」 という。 ) が原告の名誉を毀損すると主張して、名誉権侵害による妨害排除請求権に基づき、 本件記事の削除を求める事案である。 |
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令和8年1月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和7年(ワ)第70451号 投稿記事削除請求事件
口頭弁論終結日 令和7年12月1日
判 決
原 告 A
被 告 n o t e 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 服 部 啓 一 郎
同 深 澤 諭 史
主 文
1 被告は、別紙投稿記事目録記載の投稿記事を削除せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は、原告が、ウェブサイト「note」(以下「本件サイト」という。)を運営する被告に対し、別紙投稿記事目録記載の記事(以下「本件記事」という。)が原告の名誉を毀損すると主張して、名誉権侵害による妨害排除請求権に基づき、本件記事の削除を求める事案である。1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴ 当事者原告は、本件記事の対象とされた男性である。被告は、本件サイトを運営する株式会社である。
⑵ 本件記事ア 「B」という表示名のアカウントを有する者(以下「本件投稿者」という。)は、令和5年8月19日、本件サイトに「シリーズA #4 1.5倍速とCとD」と題する記事(以下「本件修正前記事」という。)を投稿した。(甲
5 1)イ 原告は、令和7年8月25日、本件訴訟を提起した。被告は、本件投稿者に対し、本件訴訟提起を受けて本件記事の送信防止措置についての意見照会を実施した。(顕著な事実、弁論の全趣旨)ウ 本件投稿者は、令和7年9月19日、前記イの意見照会を受けて、本件修正前記事の内容を一部修正した本件記事を投稿した。(甲5、乙1)2 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨本件の主な争点は、本件記事による名誉毀損の成否である。
⑴ 原告の主張本件記事は、別表記載のNo.1ないしNo.4の記述を含むものであり、これらの記述が原告の名誉を毀損するものであることは、別表記載のとおりである。したがって、被告は本件記事全体を削除すべきである。
⑵ 被告の主張否認ないし争う。詳細は別表記載のとおりである。仮に、本件記事によって原告の社会的評価が低下するとしても、①原告はABEMA Primeに出演する有識者であり、かつ、「C」の担当者から不当な恫喝を受けた旨をSNSで告発していたとされるところ、原告の言動やその信ぴょう性は、公共の利害に関する事実といえること、②本件記事は直ちに公益目的が否定されるものではないこと、③本件記事の意見論評の前提となる事実は、重要な部分において真実であり、意見論評の域を超えるものではないこと、以上によれば、本件記事の投稿は、違法性が阻却される。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、本件記事には次のような記載があることが認められる。
⑴ 本件記事は、
「シリーズA #4 1.5倍速とCとD(2025/9/19修正版)」
5 と題するものであり、「B」と助手の「なるこ」という人物の対話形式で記載
されている。本件記事は、大きく分けて、①原告がABEMA Primeというインターネットテレビ番組に出演したことを内容とする前半部分、②原告がSNSサイトX(以下「X」という。)において、Cの店員について投稿した内容の不自然さを内容とする中盤部分及び③E市にあるソープランドである「F」についてレビュー投稿を行ったという人物を「D」と呼称した上で、Dに関する投稿内容と原告の言動を対比する内容の後半部分によって構成されている。
⑵ 本件記事の前半部分は、原告がABEMA Primeに出演した際の動画
を紹介した上で、「しかしよくAbemaプライムに出演できましたね。ただの学生ですよね?」、「実際、発言内容は他の出演者についていけてない感じだったよ。」、「最後のほうは無言になって、司会者の人に話ふってもらってうんうんうなずいてたら終わりましたね」という記載に引き続き、「あくまで一般論だけど、コネ枠とかで金払えば番組に出演できるってのはよくある話だよ。Aくんの場合、Abema出演の前に公式サイト(略)を立ち上げてる」という記載(別表No.1)や、「…世の中には自伝本を出しませんかとか、番組に出て自分をプロデュースしませんかみたいな売り込みをかけてくるプロデューサーくずれとかいるのね」という記載に引き続き、「たとえばだよ、Abemaプライムに出演できるし、その前にサイトでキャラクターを演出して、一気に有識者として名を上げられますよ、みたいなパッケージプラン」という記載(別表No.1)があり、「こういうのってかなり高くて、まあ番組出演までセットだと300~500万円くらい取られそうだけどね、あくまでそういうビジネスも世の中にはあるって話で、Abemaプライムに出演したAくんがそういうビジネスにひっかかったって言ってるわけじゃないよ?なにか特別なコネで出演が決まり、その前に自分で公式サイト作ったのかもしれないし。もちろんAくんは正当な評価や実績で出演したんだと思うよ」などと
5 いう記載で締めくくられている。
⑶ 本件記事の中盤部分は、原告がCの店員とのやり取りに関してXに投稿した
内容を複数引用し、その内容をまとめた上で、「以前Cの店員と良くしていたが、Cの店員から強制的に色々おごらされたりしたと。ざっと累計で100万以上を最低1年と半年にわたって」、「え?でもAくんはこの通り『おかげでスタイリングも向上したし感謝している』らしいよ?」、「は?あのA君が?100万以上恫喝されてみつがされて?理不尽な扱いを受けて?告発サイトも作らずに警察にもCの本部にも通報せずに『スタイリングが向上したから』で腹立たしいけど泣き寝入り?おかしい!!!!!!!!!!!」、「だからきっとAくんは恥ずかしくてなにか真実を誤魔化してたり、言ってない事があったりするんじゃないかなって思う。たとえば、そのC店員によほどの弱み、を握られて脅迫されてた、なら多少は納得できない?」(別表No.2)などと記載された上、原告の投稿内容には違和感があり、実は風俗嬢か水商売の女性に貢いだり、一緒に旅行に行ったという事実を脚色して投稿したものではないかという趣旨のことが記載されている。
⑷ 本件記事の後半部分は、前記⑶の記載に関連付けて、「鍵となる情報だけ整
理すると①6月頃AくんがFという女性介助型特殊浴場で出禁になっているというタレコミがあるが、英国気取りのAくんを貶すデマのネタだと思い僕はスルーした②7月にAくんの裁判関係でAくんが『E簡易裁判所の書面を自ら公開したことによってその管轄区内に住んでいるらしいことが判明したよね、その徒歩圏内にこの『F』があることが判明し偶然って怖いねってなった③そして8月15日…Aくんが出禁になったと噂がなぜかあった、Eのソープランド『F』に、1月頃(僕がAくんと出会う2ヶ月前)、AegesJrという人物がこんなレビューをつけていた。なんでもFで、警察やヤクザで痛い目を見たようだ」(別表記載No.4)、「そして、この人物をDと仮に呼ぼう」、「2022年6月2日に、DはFで風俗嬢に怪我をさせて、その風俗嬢は接客
5 が不可能になったとの書き込みがある。こういう場合、怖いお兄さんが出てき
てマイナンバーカードのような身分証を抑えられ、数日以内に賠償金を収めさせられるケースが多いらしいよ。」(別表記載No.3)、「Dがそんな人生における試練?自業自得?に直面している頃、なんと偶然にもAくんは自〇未遂をしてるんだよ」(別表記載No.3)などと記載された上、「Dらしき人物」の書き込みであるとして、「家を特定したと嬢に告げる。嬢の家を調べてチャイムを鳴らす。」という記載のある掲示板の投稿のスクリーンショットが添付されている。
2 争点についての判断
⑴ 判断基準
ある表現の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきであり(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)、この理は、本件サイトにおける投稿の内容が他人の社会的評価を低下させるか否かについても、異なるところはない。そして、ある投稿における匿名の人物が原告であると同定できるか否かについても、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである(前掲昭和31年7月20日判決参照)。
⑵ 別表No.1の記述について
前記1の認定事実に加え、証拠(甲5、乙1)及び弁論の全趣旨によれば、本件記事の前半部分は、原告がただの学生にすぎないにもかかわらずABEMA Primeに出演したり、公式サイトを立ち上げたりしていることや、番組に出演した際に他の出演者についていけない様子であったことを指摘した上で、金銭を払って有識者として名前を売るというプロデュースのパッケージプランがあり、コネ枠で番組に出演することができるなどと述べるものであり、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件記事の前半部分は、原
5 告が、正当な評価や実績によらず、金銭を払ってコネ枠でABEMA Pri
meに出演したという事実を黙示に摘示したものと認めるのが相当である。そして、上記のような摘示事実は、原告がABEMA Primeに出演できるような実績や実力がないのに、不公正な手段を用いて番組に出演したかのような印象を与えるものといえ、原告の資質に関する社会的評価を低下させるものといえる。これに対し、被告は、本件記事の別表記載No.1の記述はあくまで一般論として記載されているものであるし、本件記事の前半部分には「もちろんAくんは正当な評価や実績で出演したんだと思うよ」という記載もあると指摘して、原告の社会的評価は低下しない旨主張する。しかしながら、本件記事の当該記述部分の前後の文脈を踏まえ、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、単に一般論を摘示したにとどまるものと解することはできない。したがって、
(被告の主張)
は、採用することができない。なお、被告は、仮に、本件記事が原告の社会的評価を低下させたとしても、意見論評の域を超えるものではなく違法性が阻却される旨主張するものの、本件全証拠をみても、その摘示事実の真実性を裏付ける証拠は一切なく、被告の主張は、採用の限りではない。以上によれば、別表No.1の記述は、名誉毀損に当たるものと認められる。
⑶ 別表No.2の記述について
原告は、本件記事の中盤部分の「そのC店員によほどの弱み、を握られて脅迫されてた、なら多少は納得できない?」との記述が、原告があたかも犯罪行為に手を染めた人物であるかのような誤った印象を読者に与えるものであり、原告の社会的評価を低下させる旨主張する。しかしながら、前記1の認定事実に加え、証拠(甲5、乙1)及び弁論の全趣旨によれば、上記の記述は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告によるXへの投稿の内容が不自然であることを指摘する趣旨で仮説を述べるものにすぎず、具体的事実に
5 基づかない意見、感想を述べたにすぎないと認められ、このような記述をもっ
て原告の社会的評価が低下するとは認めるに足りない。これに対し、原告は、上記の記述は、原告が単なる被害者ではなく、何らかの犯罪行為に関与し、その証拠を店員に握られて脅迫された結果として、金銭を支払わざるを得なくなったという事情を暗示するものである旨主張するが、本件記事の前後の文脈を踏まえても、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、原告が指摘するような事実を黙示に摘示するものとは認めるに足りない。以上によれば、別表No.2の記述は、名誉毀損に当たるものとは認められない。
⑷ 別表No.3の記述について
ア 同定可能性別表No.3の記述は、形式的にはDなる人物について記載された部分である。そこで、上記記述が原告について言及されたものといえるかについてみると、前記1の認定事実に加え、証拠(甲5、乙1)及び弁論の全趣旨によれば、本件記事は、その表題からも明らかなとおり、全体として原告に関する記事であるところ、本件記事の後半部分は、原告とDなる人物に関する事実関係を対比させながら記述した上、「DとAくんの同じ日の行動を調べるクセがついちゃってね」などと記載していることが認められる。これらの事情の下において、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、このような記載から、本件記事を閲覧した多くの者が、原告とDなる人物が同一人物であることが黙示に摘示されていると理解するものと認めるのが相当であり、上記の記述を、原告の言動として受け止めるものといえる。これに対し、被告は、本件投稿者は更新後の記事において、Dは原告でない可能性が高まり、「G」という別人物であると思われる旨の記載が追加されているから、原告とDなる人物の同一性を前提とする
(原告の主張)
には理由
5 がない旨主張する。しかしながら、本件記事の後半部分は、全体としてみれ
ば、原告とDなる人物の同一性を指摘する内容となっていることを踏まえると、上記のような記載が追加されたことや繰り返し原告とDは前提として別人である旨の記載が挿入されていることをもって、上記認定が左右されるものとはいえない。イ 社会的評価の低下前記アに説示したとおり、本件記事の後半部分は、原告とDなる人物が同一人物であることを摘示したものといえるところ、Dに関する前記1の記載内容からすれば、本件記事の後半部分は、原告がソープランドで風俗嬢に怪我をさせて接客不可能にさせたという事実のほか、原告が風俗嬢の意に反して自宅を特定し、チャイムを鳴らすといった嫌がらせ行為を行ったという事実を黙示に摘示するものといえ、このような事実摘示が原告の社会的評価を低下させることは明白である。ウ 違法性阻却に関する
(被告の主張)
被告は、仮に、本件記事が原告の社会的評価を低下させたとしても、意見論評の域を超えるものではなく違法性が阻却される旨主張するものの、本件全証拠をみても、その摘示事実の真実性を裏付ける証拠は一切なく、被告の主張は、採用の限りではない。エ 以上によれば、別表No.3の記述は、名誉毀損に当たるものと認められる。
⑸ 別表No.4の記述について
前記1の認定事実に加え、前記⑷において説示した本件記事の後半部分の記載内容などの前後の文脈を踏まえると、別表No.4の記述は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告が特定のソープランドに客として出入りしていたが、何らかの問題行為を起こして出入り禁止にされたという事実を間接的に摘示するものと認めるのが相当である。そして、上記のような摘示
5 事実は、原告の社会的評価を低下させるものといえる。
これに対し、被告は、本件記事は、原告がソープランドを出入り禁止になったと断定していないし、その具体的な理由も記載していないとして、社会的評価が低下するとの主張を争っている。しかしながら、前記⑷において説示したとおり、本件記事は、風俗嬢に怪我をさせたというDなる人物と原告が同一人物であることを黙示に摘示していることと相俟って、原告が問題行動を起こしてソープランドを出入り禁止になったという事実を婉曲的に摘示しているものといえ、被告の上記主張は、採用の限りではない。なお、被告は、仮に、本件記事が原告の社会的評価を低下させたとしても、意見論評の域を超えるものではなく違法性が阻却される旨主張するものの、本件全証拠をみても、その摘示事実の真実性を裏付ける証拠は一切なく、被告の主張は、採用の限りではない。以上によれば、別表No.4の記述は、名誉毀損に当たるものと認められる。
3 小括
以上によれば、本件記事は、名誉毀損に当たる記述(No.1、No.3及びNo.4)を複数含むところ、本件記事は、その内容に照らして一般の私人である原告の誹謗中傷を目的としたものであることが明らかである上、上記の各記述は本件記事の主要な主題に関わる記述であるといえる。このような記事が、インターネット上に掲載され続けることにより、原告に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあることは、明らかであるといえる。したがって、本件記事全体の削除を認めるのが相当である。
第4 結論
よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官中 島 基 至裁判官武 富 可 南裁判官坂 本 達 也(別紙)投稿記事目録(省略)
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