令和7(ワ)70136著作権侵害による不法行為損害賠償請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年2月5日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 法令 |
著作権
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| キーワード |
損害賠償15回 侵害14回 差止8回 実施7回 商標権4回 抵触1回
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| 主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
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判決文
令和 8 年 2 月 5 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和 7 年(ワ)第 70136 号 著作権侵害による不法行為 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和 7 年 12 月 4 日
判 決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
5 主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
10 1 被告らは、別紙著作物目録記載 1~4 のデザインを複製し、同デザインを利用
した物品を所有する関ケ原町町長以下執行部等の頒布を防ぐ監督・確認を行え。
2 被告らは、別紙著作物目録記載 1~4 のデザインを利用した物品を所有する関
ケ原町町長以下執行部等の破棄が完了するまで監督・確認を行え。
3 被告らは、連帯して、20 万円及びこれに対する令和 5 年 10 月 26 日から支払
15 済みまで年 3%の割合による金員を支払え。
4 被告らは、関ケ原町町長以下執行部等の「印刷業者」を介した架空支払等「マ
ネーロンダリング」の可能性に相当する不法行為の監督・管理を行え。
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、被告らの公権力の行使によって原告の著作権が侵害されたと
20 主張して、被告らに対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1 条 1 項に基
づき、20 万円の損害賠償及びこれに対する令和 5 年 10 月 26 日から支払済みま
で民法所定の年 3%の割合による遅延損害金の支払を求める(請求 3)と共に、
その損害賠償を遂行するために必要な行為であると主張して、別紙著作物目録
記載 1~4 の各デザイン(以下「本件各デザイン」という。なお、甲 1 の別紙著
25 作物目録記載 2~5 と同じものである。)を関ケ原町(以下「町」ともいう。)の
町長及び職員ら(以下「町長ら」という。)が複製又は利用した物品(以下「本
件物品」という。)の頒布を防ぐよう監督等すること(請求 1)、町長らによる
本件物品の破棄が完了するまで監督等すること(請求 2)及び町長らによる架
空支払等を防ぐよう監督等すること(請求 4)を求める事案である。
5 2 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者等
ア 原告は、一級建築士の資格を持つデザイナーである。
イ 被告関ケ原町議会(以下「被告町議会」という。)は、関ケ原町を構成す
る一機関であり、町長その他の執行機関の事務処理を住民代表の機関とし
10 て監視する権限を有する。本件訴え提起時において、被告Bは被告町議会
の議長、被告Cは副議長、被告Dは議員であった者である(以下、これら
の 3 名を併せて「被告議員ら」という。)。
(2) 関ケ原検定の実施等
関ケ原町は、地域振興のための企画として、令和 3 年 4 月から関ケ原検定
15 を実施した。同検定の実施のため、関ケ原町は、本件各デザインに係るポス
ター、実施概要、賞状及び合格カード(以下、これらを併せて「本件ポスタ
ー等」という。)に基づき、ポスター等(以下、町が制作したポスター等を「関
ケ原町ポスター等」という。)を制作した。
(3) 関連訴訟
20 ア 第 1 訴訟
原告は、令和 4 年 12 月 28 日、当時関ケ原町歴史民俗学習館館長であっ
たE(以下「E」という。)、関ケ原町地域振興課係長であったF(以下「F」
という。)及び関ケ原町長であったG(以下「G」という。以下、E、F及
びGを併せて「Eら」という。なお、請求 1 及び 2 における「関ケ原町町
25 長以下執行部等」とは、Eらを指す。)が、原告の許可を得ることなく本件
各デザインを使用した行為は本件各デザインに係る原告の著作権及び原告
が有する各商標権を侵害するものであると主張して、Eらに対し、不法行
為に基づく 347 万 4000 円の損害賠償及び遅延損害金、名誉回復措置(著
作権法 115 条)、本件各デザインの複製及び頒布の差止め並びに廃棄(同
法 112 条 1 項、2 項)、前記原告の各商標権に係る商標の使用の差止め(商
5 標法 36 条 1 項)を求める訴訟を東京地方裁判所に対して提起した(当庁
令和 4 年(ワ)第 70145 号著作権侵害(不法行為)による請求事件。以下
「第 1 訴訟」という。)。
これに対し、東京地方裁判所は、令和 5 年 8 月 30 日、原告の請求をい
ずれも棄却する旨の判決を言い渡した。これを不服として、原告は、その
10 請求の一部である差止請求及び廃棄請求を棄却した部分について控訴を提
起した上(知的財産高等裁判所令和 5 年(ネ)第 10092 号著作権侵害(不
法行為)による請求控訴事件)、名誉回復措置(著作権法 115 条)として、
第 1 審におけるものとは異なる措置を請求し、同請求は、控訴審における
追加請求として扱われることとなった。これに対し、知的財産高等裁判所
15 は、令和 6 年 3 月 18 日、原告の控訴及び控訴審における追加請求をいず
れも棄却する旨の判決を言い渡し、同判決は同年 4 月 5 日に確定した。
イ 第 2 訴訟
原告は、令和 5 年 9 月 26 日、町が実施していた関ケ原検定において、
町及びEらが、本件各デザインを含むデザイン及び原告の登録商標を原告
20 の許可を得ることなく使用した行為は本件各デザインに係る著作権(複製
権又は翻案権、公の伝達権)及び原告が有する商標権を侵害するものであ
ると主張して、町に対し、347 万 4000 円の損害賠償及び遅延損害金(国
賠法 1 条 1 項)並びに名誉回復措置(著作権法 115 条)を請求すると共に、
町及びEらに対し、本件各デザインの複製及び頒布の差止め並びに廃棄(同
25 法 112 条 1 項、2 項)、前記原告の各商標権に係る商標の使用の差止め(商
標法 36 条 1 項)等を求める訴訟を東京地方裁判所に対して提起した(当
庁令和 5 年(ワ)第 70582 号著作権侵害(不法行為)による損害賠償請求
事件。以下「第 2 訴訟」という。)。
これに対し、東京地方裁判所は、令和 7 年 3 月 28 日、上記請求のうち
Eらに対する請求は、第 1 訴訟と訴訟物が同一であり、原告のこれらの者
5 に対する請求に関して行っている主張は、いずれも第 1 訴訟の控訴審の口
頭弁論終結時以前の事由に基づくものであり、同時点より後の事由に基づ
く主張は存在しないから、第 1 訴訟の判決の既判力に抵触し許されないと
した。他方、町による関ケ原町ポスター等の制作行為は、本件ポスター等
に係る原告の著作権(複製権)を侵害するものであるとして、町に対する
10 本件各デザインの複製及び頒布の差止め並びに廃棄請求を認容すると共に、
20 万円の損害賠償及びこれに対する令和 5 年 10 月 26 日から支払済みま
で年 3%の割合による遅延損害金の支払の限度で原告の請求を認容し、そ
の余の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
3 当事者の主張
15 (1) 原告の主張
原告の主張は、別紙訴状、別紙照会書兼回答書、別紙原告準備書面(令和
7 年 9 月 27 日付け)及び別紙原告準備書面(令和 7 年 11 月 25 日付け)に
各記載のとおりである。その主張内容にはやや判然としないところもあるが、
要するに、以下のとおり主張するものと理解される。
20 ア 請求 3
本件における国賠法上の違法行為は、公務員である町議会や議員らが公
権力として行使した原告の著作権侵害であって、町の職員による原告の著
作権侵害に対する被告らの監督懈怠を主張しているものではない。
請求 3 は、あくまで、執行機関である町ではなく、議事機関である町議
25 会、同議会議長及び同議会議員ら 2 名を被告らとするものである。被告ら
は、地方公共団体の組織及びその職員であり、自らの不法行為による損害
に対して、国家賠償法上の責任を負う。
イ 請求 1、2 及び 4
請求 1、2 及び 4 は、損害賠償を遂行するために必要な行為を求めるも
のであり、行政事件訴訟法上の訴えや行政争訟(行政訴訟、行政上の不服
5 申立て)ではない。
(憲法 93 条 1 項)として置かれて
町議会は地方公共団体の「議事機関」
おり、地方公共団体の意思を決定する機能及び執行機関(町)を監視する
機能を担うものとして、執行機関と相互にけん制しあうことにより、地方
自治の適正な運営を期することとされ、執行機関と区別されている。
10 請求 1、2 及び 4 は、あくまで、執行機関である町ではなく、議事機関
である町議会、同議会議長及び同議会議員ら 2 名を被告らとしている。
また、請求 4 に係る「不法行為」の根拠となる支出行為の項目としては、
①被告らが承認し行使した関ケ原検定事業の計画予算・実施収支報告書、
②被告らが承認し、執行機関が印刷業者に支払った使途不明金の支出内訳、
15 ③被告らが承認し、執行機関が著作権侵害事件への対処に支払った訴訟に
おける弁護士費用、④被告らが把握している執行機関が不法行為によって
支払った損害賠償金額がある。
(2) 被告らの主張
ア 本案前の主張
20 請求 3 について、被告町議会は、地方公共団体を構成する一機関であり、
地方公共団体そのものではないので法人格はなく、損害賠償請求(請求 3)
の客体にはならない。
請求 1、2 及び 4 について、原告は私法上の請求である損害賠償請求を
するために必要な行為と構成しているから、請求 1、2 及び 4 も私法上の
25 請求と解されるところ、被告町議会は私法上の権利義務の客体とはならな
いから、請求 1、2 及び 4 の客体にもならない。
したがって、被告町議会に対するいずれの請求についても、同被告には
被告適格がないから、不適法な訴えとして却下されるべきものである。
イ 本案についての主張
原告の被告らに対する請求は、いずれもその根拠等が明らかでなく、失
5 当である。
国賠法 1 条による損害賠償責任を負うのは公共団体であり、被告らは賠
償責任を負わない。請求 1、2 及び 4 も、原告の主張によれば国賠法 1 条
の責任に付随する私法上の請求である以上、被告らに対しては行い得ない。
第3 当裁判所の判断
10 1 請求 3 について
(1) 原告の主張によれば、請求 3 は、町が関ケ原検定の実施のために本件ポス
ター等を利用して関ケ原町ポスター等を制作したことが、本件ポスター等に
係る原告の著作権(複製権)を侵害するものであることを理由に、被告らに
対し、国賠法上の損害賠償を求める訴えであると理解される。
15 国賠法 1 条 1 項は、
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その
職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたとき
は、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と規定している。
これを踏まえると、国家賠償請求において被告として適格を有するのは、
「国」又は「公共団体」であるところ、被告議員らはもとより、被告町議会
20 についても、公共団体である「関ケ原町」を構成する一機関に過ぎない以上、
「公共団体」に当たらない。
したがって、被告らに対する請求 3 は、いずれも理由がない。これに反す
る原告の主張は採用できない。
(2) 仮に、請求 3 につき、原告が主張する公権力の行使が、本件各デザインに
25 係る原告の著作権とは別の何らかの著作権に対する侵害行為について 主張
するものと解したとしても、保護法益である著作権及び被告らによる侵害行
為等を特定し、これを裏付けるに足りる具体的な主張や証拠はないから、や
はり理由がない。これに反する原告の主張は採用できない。
2 請求 1、2 及び 4 について
(1) 請求 1 及び 2 について、原告は、要するに、第 2 訴訟に係る判決において
5 原告の関ケ原町に対する 本件各デザインの複製及び 本件物品の頒布の差止
め及び廃棄請求が認容されたことを踏まえ、かつ、これについて被告らも損
害賠償責任を負うことを前提として、被告らに対し、町の執行機関の行動(本
件物品の頒布の差止め、町が保有している本件物品の廃棄)を監督するよう
求めているものと理解される。
10 しかし、その法的根拠について、原告は、いずれも行政事件訴訟法上の義
務付けの訴えといった行政争訟ではなく、請求 3 の損害賠償を遂行するため
に必要な行為を求めるものである旨主張するにとどまり、その具体的な根拠
は不明というほかない。また、請求 1 及び 2 の前提となる請求 3 につき理由
がないことは前記のとおりである。このため、請求 1 及び 2 については、理
15 由がない。これに反する原告の主張は採用できない。
(2) 請求 4 について、原告は、被告らの「不法行為」の根拠となる支出行為の
項目として前記①~④を挙げ、これを裏付ける証拠として支出負担行為決議
書兼支出命令書(甲 2)を提出する。
しかし、これを踏まえても、そもそも原告は請求 4 の具体的な法的根拠を
20 明らかにしておらず、また、請求の原因となるべき具体的な事実も特定され
ていない。このため、請求 4 についても理由がないというべきである。これ
に反する原告の主張は採用できない。
第4 結論
よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これらをいずれも棄却するこ
25 ととして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第 47 部
裁判長裁判官
杉 浦 正 樹
10 裁判官
池 田 幸 子
裁判官
松 尾 恵 梨 佳
別紙
当事者目録
原告 A
被告 関ケ原町議会
被告 B
被告 C
被告 D
被告ら訴訟代理人弁護士 池田 智洋
(以下、別紙省略)
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