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令和7(行ケ)10113審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年6月4日
事件種別 民事
当事者 原告CASE特許株式会社
被告特許庁長官
法令 特許権
特許法29条2項1回
キーワード 審決17回
訂正審判4回
分割2回
進歩性1回
特許権1回
無効1回
優先権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は、原告が、特許請求の範囲についてされた訂正審判請求を不成立とした 審決の取消しを求める事案である。

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判決文

令和8年6月4日判決言渡
令和7年(行ケ)第10113号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年4月16日
判 決
原 告 CASE特許株式会社
同訴訟代理人弁護士 高 橋 雄 一 郎
同訴訟代理人弁理士 望 月 尚 子
被 告 特 許 庁 長 官
同指定代理人 浅 野 麻 木
遠 藤 秀 明
西 山 智 宏
15 小 川 将 之
北 村 英 隆
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事実及び理由
第1 請求
特許庁が訂正2024-390093号事件について令和7年10月16日
にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
25 本件は、原告が、特許請求の範囲についてされた訂正審判請求を不成立とした
審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕著
である。)
⑴ 特許
特許第6893602号(以下「本件特許」という。)は、平成26年9月3
5 0日(以下「本件優先日」という。)にされた特許出願に基づく優先権を主張し
て平成27年9月29日にされた出願(特願2016-552064号)の分
割出願として平成30年10月29日にされた出願(特願2018-2030
31号)の分割出願として、令和元年6月20日に出願(特願2019-11
4306号。以下、同出願の願書に添付された明細書及び図面を併せて「本件
10 明細書等」といい、本件明細書等の段落番号及び図面の番号を【】の記号を用
いて示す。)がされ、令和3年6月4日に設定登録がされた(請求項の数12)。
令和4年10月25日、本件特許につき訂正審判請求がされ、同年12月2
7日付けで同訂正を認める旨の審決がされて、同審決は、令和5年1月10日
に確定した。同訂正後の特許請求の範囲の請求項1、11及び12の記載は、
15 別紙1(特許請求の範囲)の「前」欄に記載のとおりである。
⑵ 訂正審判請求
原告は、本件特許の特許権者であるところ、令和6年8月19日、本件特許
の特許請求の範囲を訂正する訂正審判請求をし(以下、この請求に係る訂正を
「本件訂正」という。)、特許庁は、これを訂正2024-390093号事件
20 として審理した。
原告の求めた訂正事項は、次の訂正事項1及び2のとおりである(下線部は
訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「前記運転モード設定部は、前記運転モードが
25 前記高度自動化モードに設定されているときに、前記急ブレーキ判断部により
前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記運転モードを前記基本モード
に切り替えるように構成されている、」と記載されているのを、
「前記運転モー
ド設定部は、前記運転モードが前記高度自動化モードに設定されているときに、
前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記
運転モードを前記基本モードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、
5 自動で前記基本モードから前記高度自動化モードに切り替えるように構成さ
れている、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2から9まで及び
12も同様に訂正する。
)。
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項11に「報知部と、を備える、自動運転制御装置」
10 と記載されているのを、
「報知部と、を備え、前記運転モード設定部は、前記運
転モードが前記高度自動化モードに設定されているときに、前記急ブレーキ判
断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記運転モードを前記
基本モードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、自動で前記基本
モードから前記高度自動化モードに切り替えるように構成されている、自動運
15 転制御装置」と訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂
正する。)。
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、11及び12の記載(以下、本件
訂正後の請求項に記載された発明を請求項の番号に応じて「訂正発明1」など
という。)は、別紙1(特許請求の範囲)の「後」欄に記載のとおりである。
20 ⑶ 審決
特許庁は、令和7年10月16日、
「本件審判の請求は、成り立たない。」と
の審決(以下「本件審決」という。)をして、その謄本は、同月24日、原告に
送達された。
原告は、同年11月20日、本件審決の取消しを求める訴えを提起した。
25 2 本件審決の理由の要旨
⑴ 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等
に記載された事項の範囲内における訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張
し又は変更するものに当たらない。
⑵ 独立特許要件
5 ア 甲1に記載された発明の認定
本件優先日前に公開された甲1(LEGACYアイサイト取扱説明書)には、次
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「EyeSightであって、2台のCCDカメラを用いたステレオ画像処理により、
先行車や障害物、車線などを認識するステレオカメラを備え、運転者の判断
10 を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能がシス
テムによって動作し、さまざまな前記機能に全車速追従機能付クルーズコン
トロール、プリクラッシュブレーキ、AT誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふ
らつき警報、先行車発進お知らせ、定速クルーズコントロールが含まれ、全
車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロールが
15 自動解除される場合があり、もしくはEyeSightが一時停止されて定速クルー
ズコントロールを除くEyeSightの全ての機能が使用できない場合があり、エ
ンジン始動後、プリクラッシュ2次ブレーキが3回作動したときにEyeSight
が一時停止され、EyeSightが一次停止された原因が改善されると自動的に
EyeSightが復帰する、EyeSight。」
20 イ 訂正発明1と引用発明1との対比
訂正発明1と引用発明1を対比すると、別紙2(訂正発明1と引用発明1
の対比)に記載のとおりである。
ウ 一致点の認定
上記イの対比関係に鑑みると、訂正発明1と引用発明1とは、次の点にお
25 いて一致する。
「車両に搭載される自動運転制御装置であって、前記車両の周囲の情報で
ある周囲情報を取得するように構成された周囲情報取得部と、前記車両の運
転モードを、前記車両の走行に必要な複数種類の運転動作の一部又は全てを
前記周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化モード、及び、前記自動
で実行する前記運転動作の種類が前記高度自動化モードよりも少ないか若
5 しくはゼロである基本モード、の何れか一方に設定するように構成された運
転モード設定部と、前記運転モード設定部により設定された前記運転モード
に基づき、その運転モードにおいて前記自動で実行するように設定されてい
る前記運転動作を実行するように構成された自動制御部と、前記自動制御部
により前記車両の急ブレーキが作動したか否か判断するように構成された
10 急ブレーキ判断部と、を備え、前記運転モード設定部は、前記運転モードが
前記高度自動化モードに設定されているときに、前記急ブレーキ判断部によ
り前記急ブレーキが作動したと判断されると、前記運転モードを前記基本モ
ードに切り替え、高度自動化切替条件が成立した場合、自動で前記基本モー
ドから前記高度自動化モードに切り替えるように構成されている、自動運転
15 制御装置。」
エ 相違点の認定
訂正発明1と引用発明1とは、次の点で相違する。
(相違点)
訂正発明1では、車両の走行に必要な複数種類の運転動作として「車線変
20 更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれる」のに対して、引用発明1は「全
車速追従機能付クルーズコントロール、プリクラッシュブレーキ、AT誤発進
抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発進お知らせ、定速クルー
ズコントロール」を含む点。
オ 相違点についての検討
25 引用発明1は、運転支援機能を提供するものであるところ、運転支援機能
の中には、ドライバーが行う外部認識、判断、操作の一部を、自動で行うも
のが搭載されている。また、運転の自動化に関する技術分野において、自動
車の基本的な性能である「走る」
「曲がる」
「止まる」を支援するために、外
部認識、判断、操作の全てもしくは一部をシステムが行うことで、車線変更、
右左折又は駐車を実行することは周知技術である。
5 引用発明1において、運転者の判断を助け、安全・快適で疲れの少ない運
転を可能にするために、車線変更、右左折又は駐車を実行する機能を採用す
ることには、十分な動機付けが存在し、かかる機能の採用に阻害要因も存在
しない。
したがって、引用発明1における運転動作として、車線変更制御、右左折
10 制御又は駐車制御を採用することは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
よって、訂正発明1は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものである。
カ 訂正発明11について
甲1には、次の引用発明2が記載されていると認められるところ、訂正発
15 明11と引用発明2とは、上記エの相違点において相違する。
「エンジン始動後、プリクラッシュ2次ブレーキが3回作動することによ
ってEyeSightが一時停止したときに、EyeSight一時停止表示が表示される引
用発明1。」
相違点についての判断は、上記オのとおりである。
20 よって、訂正発明11は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容
易に発明をすることができたものである。
キ 訂正発明12について
甲1には、次の引用発明3が記載されていると認められるところ、訂正発
明12と引用発明3とは、上記エの相違点において相違する。
25 「引用発明1のEyeSightを備える車両。」
相違点についての判断は、上記オのとおりである。
よって、訂正発明12は、引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容
易に発明をすることができたものである。
ク 独立特許要件についてのまとめ
訂正発明1、11及び12は、特許法29条2項の規定により、特許出願
5 の際、独立して特許を受けることができるものではないから、訂正事項1及
び2は、同法126条7項の規定に適合しない。
第3 原告主張の審決取消事由(独立特許要件についての認定判断の誤り)
1 動機付けの不存在
引用発明1は、先進安全技術(ASV)を体現した車に関するものであるため、
10 先進安全技術とは異なる目的から自動化を推し進める自動運転技術を単純に引
用発明に取り入れる動機付けはない。
また、引用発明1は、現実に販売された自動車の取扱説明書であり、その性質
上、車の各種機能の技術的な最適化が極限まで施されているため、機能の一部を
変更又は追加する動機付けはない。
15 2 阻害要因の存在
引用発明1の自動車は、そもそも側方の周囲情報を取得せず、前方の周囲情報
のみを取得して、その範囲で運転支援を行うものとしている。そうすると、引用
発明1の自動車において、前方を認識するステレオカメラに加えて、側方を認識
するセンサーを設けることには阻害要因がある。そして、側方を認識するセンサ
20 ーがない車両に車線変更制御、右左折制御及び駐車制御といった各種制御を適用
することは不可能である。
3 まとめ
以上のとおり、本件優先日当時、当業者において、相違点に係る引用発明1の
構成から訂正発明1の構成に想到することが容易であったということはできな
25 い。これと異なる本件審決の判断には、結論に影響を及ぼす誤りがある。このこ
とは、訂正発明11及び12についての本件審決の判断についても妥当する。
第4 被告の反論
1 動機付けについて
先進安全技術(ASV)と自動運転技術とが密接に関わる分野であること、運
転支援と自動運転は、ドライバーとシステムの分担の比重が異なるものにすぎな
5 いこと、引用発明1の目的が「運転者の判断を助け、安全・快適で疲れの少ない
運転を可能にする」ものであることなどから、先進安全技術に対して自動運転技
術を適用することに何らの困難性も認められず、むしろ強い動機付けがあるとい
え、本件審決の認定判断は正当である。
また、主引用例の種類によって進歩性判断の枠組みは異ならないから、引用発
10 明1が現実に販売された自動車に関係するものであることは、動機付けを否定す
る理由とはならないというべきである。
2 阻害要因の存在について
原告は、引用発明1において側方を認識するセンサーを設けることには阻害要
因があると主張するが、引用発明1に周知技術である「車線変更制御、右左折制
15 御、駐車制御」を適用することは、当業者が容易になし得たことであるところ、
車線変更制御、右左折制御及び駐車制御を行う車両に側方センサーを設ける技術
もまた周知技術であることから、引用発明1において側方センサーを追加するこ
とも、適宜なし得たことといえる。
第5 当裁判所の判断
20 1 訂正発明1、11及び12について
本件明細書等の記載によると、訂正発明1、11及び12については、次のと
おりである。
⑴ 訂正発明1、11及び12は、運転者による各種判断や操作などの、車両を
走行させるために必要な運転者の各種運転動作のうち、一部又は全てを、運転
25 者の操作を要することなく自動で行わせることが可能な、自動運転制御装置に
関する。(【0002】)
⑵ 自動運転技術の最終目標の一つは、目的地を設定するだけで後は乗員が何ら
走行に関与することなく目的地へ到達できるようにすることであるが、それを
実現できるほどの信頼性の高いレベルにはまだ至っていない。信頼性が高いレ
ベルに至るまでは、自動運転技術を採用しつつも、必要に応じて、自動で実行
5 中の制御の一部又は全てを無効としてドライバーの操作に委ねることができ
ることが望ましい。また、自動で実行中の制御の一部又は全てを適切なタイミ
ングで停止させるようにできることが望ましい。
(【0005】~【0007】)
⑶ かかる課題を解決するため、訂正発明1に係る自動運転制御装置は、周囲情
報取得部と、運転モード設定部と、自動制御部とを備える。運転モード設定部
10 は、車両の運転モードを、高度自動化モード(車両の走行に必要な複数種類の
運転動作の一部又は全てを周囲情報に基づいて自動で実行する運転モード)及
び基本モード(自動で実行する運転動作の種類が高度自動化モードよりも少な
いかゼロである運転モード)のいずれかに設定する。高度自動化モード中に基
本モード切替条件が成立した場合は基本モードに切り替わる。運転モードが基
15 本モードの場合に、あらかじめ設定した高度自動化切替条件が成立した場合、
運転モードを高度自動化モードに切り替えるようにしてもよい。(【0008】
~【0011】)
⑷ このように構成された自動運転制御装置によれば、高度自動化切替条件を適
宜設定することで、高度自動化モードと基本モードの切替えを適切なタイミン
20 グで行うことが可能となる。(【0013】)
⑸ 訂正発明1、11及び12は、自動制御部により車両の急ブレーキが作動し
たか否かを判断するように構成された急ブレーキ判断部を備え、運転モードが
高度自動化モードに設定されているときに、急ブレーキ判断部により車両の急
ブレーキが作動したと判断されると、運転モードを基本モードに切り替え、高
25 度自動化切替条件が成立した場合、自動で基本モードから高度自動化モードに
切り替えるものである。
(【0171】~【0175】、請求項1、請求項11、
請求項12)
2 相違点に係る容易想到性について
⑴ 訂正発明1と引用発明1、訂正発明11と引用発明2、訂正発明12と引用
発明3をそれぞれ対比すると、本件審決が認定した相違点において相違すると
5 認められるため(前記第2の2⑵エ参照)、以下、上記相違点につき検討する。
引用発明1から3まで(以下、単に「引用発明」という。)は、いずれも、車
両に搭載される運転支援技術に係る発明であるところ、証拠(甲2~4)によ
ると、運転支援と自動運転とは、外界認識、判断及び操作を、運転者とシステ
ムが分担して行うに際し、その分担の比重が異なるものにすぎないこと、自動
10 運転技術は、自動車の基本的な性能である「走る」
「曲がる」
「止まる」を支援
して、安心・安全で快適な運転環境を提供することを目指すものであること、
自動運転技術の分野において、アダプティブ・クルーズ・コントロール(AC
C)、レーンキープアシスト、車線変更システム等を組み合わせることにより、
車両の加速、操舵及び制動のうち複数又は全ての操作を行うことは、いずれも、
15 本件優先日当時、周知の技術的事項であったと認められる。
そうすると、運転支援技術に関する引用発明において、安心・安全で快適な
運転環境を提供するため、同様の目的を有する自動運転技術の分野において周
知となっていた、車両の加速、操舵及び制動といった操作を車両が自動で行う
といった技術的事項を適用して、相違点に係る構成、すなわち、車両の走行に
20 必要な複数種類の運転動作として、「車線変更制御、右左折制御又は駐車制御
が含まれる」ものとすることは、本件優先日当時、当業者が容易に想到できた
ものというべきである。
⑵ これに対し、原告は、引用発明が先進安全技術を体現した車に関するもので
あり、先進安全技術とは異なる目的から自動化を推し進める自動運転技術を単
25 純に引用発明に取り入れる動機付けはないと主張する。しかし、先進安全技術
も自動運転技術も、車両の運転に必要な外界認識、判断及び操作を、運転者と
システムが分担するという点において変わるところはないから、自動運転技術
の分野における周知の技術的事項を、先進安全技術に係る引用発明に採用する
動機付けは一般に肯定されるというべきである。
また、原告は、引用発明が現実に販売された自動車の取扱説明書であって、
5 その性質上、車の各種機能の技術的な最適化が極限まで施されているから、機
能の一部を変更又は追加する動機付けはないと主張する。しかし、引用発明が
製品として完成されているものであるからといって、一般に、当業者が当該引
用発明の機能の一部を変更又は追加する動機付けがないということはできな
い。
10 さらに、原告は、引用発明の自動車が前方の周囲情報のみを取得し、その範
囲で運転支援を行うものであるから、引用発明に側方を認識するセンサーを設
けることには阻害要因があり、側方を認識するセンサーがない車両に車線変更
制御、右左折制御及び駐車制御といった各種制御を適用することは不可能であ
ると主張する。しかし、引用発明に係る自動車が前方の周囲情報のみを取得し
15 ていることは、これに加えて側方を認識するセンサーを設けることの阻害要因
となるものではない。当業者は、引用発明に係る車両の走行に必要な複数種類
の運転動作として、「車線変更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれる」も
のとするに際して、これを実現するため、周知技術に属する側方センサーを車
両に設けることを適宜行うことができたというべきである。
20 ⑶ 以上によると、訂正発明1、11及び12は、いずれも、本件優先日当時、
引用発明に周知の技術的事項を適用して、当業者が容易に発明をすることがで
きたものと認められる。
したがって、本件審決には相違点に係る容易想到性の判断に誤りがある旨の
原告の主張は採用することができない。
25 3 結論
以上のとおり、原告の主張する取消事由には理由がなく、本件審決に取り消さ
れるべき違法はない。
よって、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文のと
おり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
増 田 稔
裁判官
頼 晋 一
裁判官
天 野 研 司

(別紙1)
特許請求の範囲
前 後
【請求項1】 【請求項1】
車両に搭載される自動運転制御装置であって、 車両に搭載される自動運転制御装置であって、
前記車両の周囲の情報である周囲情報を取得す 前記車両の周囲の情報である周囲情報を取得す
るように構成された周囲情報取得部と、 るように構成された周囲情報取得部と、
前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必 前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必
要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記 要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記
周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化 周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化
モードであって、前記複数種類の運転動作に車 モードであって、前記複数種類の運転動作に車
線変更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれ 線変更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれ
る高度自動化モード、及び、前記自動で実行する る高度自動化モード、及び、前記自動で実行する
前記運転動作の種類が前記高度自動化モードよ 前記運転動作の種類が前記高度自動化モードよ
りも少ないか若しくはゼロである基本モード、 りも少ないか若しくはゼロである基本モード、
の何れか一方に設定するように構成された運転 の何れか一方に設定するように構成された運転
モード設定部と、 モード設定部と、
前記運転モード設定部により設定された前記運 前記運転モード設定部により設定された前記運
転モードに基づき、その運転モードにおいて前 転モードに基づき、その運転モードにおいて前
記自動で実行するように設定されている前記運 記自動で実行するように設定されている前記運
転動作を実行するように構成された自動制御部 転動作を実行するように構成された自動制御部
と、 と、
前記自動制御部により前記車両の急ブレーキが 前記自動制御部により前記車両の急ブレーキが
作動したか否か判断するように構成された急ブ 作動したか否か判断するように構成された急ブ
レーキ判断部と、 レーキ判断部と、

を備え、 を備え、
前記運転モード設定部は、前記運転モードが前 前記運転モード設定部は、前記運転モードが前
記高度自動化モードに設定されているときに、 記高度自動化モードに設定されているときに、
前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが 前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが
作動したと判断されると、前記運転モードを前 作動したと判断されると、前記運転モードを前
記基本モードに切り替えるように構成されてい 記基本モードに切り替え、高度自動化切替条件
る、 が成立した場合、自動で前記基本モードから前
記高度自動化モードに切り替えるように構成さ
れている、
自動運転制御装置。 自動運転制御装置。
【請求項11】 【請求項11】
車両に搭載される自動運転制御装置であって、 車両に搭載される自動運転制御装置であって、
前記車両の周囲の情報である周囲情報を取得す 前記車両の周囲の情報である周囲情報を取得す
るように構成された周囲情報取得部と、 るように構成された周囲情報取得部と、
前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必 前記車両の運転モードを、前記車両の走行に必
要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記 要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記
周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化 周囲情報に基づいて自動で実行する高度自動化
モードであって、前記複数種類の運転動作に車 モードであって、前記複数種類の運転動作に車
線変更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれ 線変更制御、右左折制御又は駐車制御が含まれ
る高度自動化モード、及び、前記自動で実行する る高度自動化モード、及び、前記自動で実行する
前記運転動作の種類が前記高度自動化モードよ 前記運転動作の種類が前記高度自動化モードよ
りも少ないか若しくはゼロである基本モード、 りも少ないか若しくはゼロである基本モード、
の何れか一方に設定するように構成された運転 の何れか一方に設定するように構成された運転
モード設定部と、 モード設定部と、
前記運転モード設定部により設定された前記運 前記運転モード設定部により設定された前記運
転モードに基づき、その運転モードにおいて前 転モードに基づき、その運転モードにおいて前

記自動で実行するように設定されている前記運 記自動で実行するように設定されている前記運
転動作を実行するように構成された自動制御部 転動作を実行するように構成された自動制御部
と、 と、
前記自動制御部により前記車両の急ブレーキが 前記自動制御部により前記車両の急ブレーキが
作動したか否か判断するように構成された急ブ 作動したか否か判断するように構成された急ブ
レーキ判断部と、 レーキ判断部と、
前記運転モードが前記高度自動化モードに設定 前記運転モードが前記高度自動化モードに設定
されている場合に、前記急ブレーキ判断部によ されている場合に、前記急ブレーキ判断部によ
り前記急ブレーキが作動したと判断されること り前記急ブレーキが作動したと判断されること
に応じて、前記車両の運転者に報知を行うよう に応じて、前記車両の運転者に報知を行うよう
に構成された報知部と、 に構成された報知部と、
を備える、 を備え、
前記運転モード設定部は、前記運転モードが前
記高度自動化モードに設定されているときに、
前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが
作動したと判断されると、前記運転モードを前
記基本モードに切り替え、高度自動化切替条件
が成立した場合、自動で前記基本モードから前
記高度自動化モードに切り替えるように構成さ
れている、
自動運転制御装置。 自動運転制御装置。
【請求項12】 【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の自動運 請求項1~9および11のいずれか1項に記載
転制御装置を備える車両。 の自動運転制御装置を備える車両。
以 上

(別紙2)
訂正発明1と引用発明1の対比
⑴ 訂正発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「先行車や障害物、車線など」は前者の
5 「車両の周囲の情報である周囲情報」に、以下同様に、「2台の CCD カメラを用いたステレオ
画像処理により、先行車や障害物、車線などを認識するステレオカメラ」は「前記車両の周囲
の情報である周囲情報を取得するように構成された周囲情報取得部」に相当し、「運転者の判
断を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能」は「前記車両の走行
に必要な複数種類の運転動作」に、「動作」は「実行」に相当する。
10 ⑵ 「EyeSight」の各「機能」は、認識された先行車や障害物、車線などに基づいて、それぞれ
自動で制御動作するものであるといえる。ここで、訂正発明1における「高度自動化モード」
及び「基本モード」は、訂正発明1の特定事項によれば、実行される運転動作の種類の数が異
なる運転モードが複数あった場合、その中の2つに着目して、各運転モードで実行される運転
動作の種類の数を比較して、実行される運転動作の種類の数が多い方が「高度自動化モード」
15 に該当し、少ない方が「基本モード」に該当し、また、それで足りるものと解される。そし
て、引用発明1は「全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロール
が自動解除される場合」(以下「場合1」という。)と「EyeSight が一時停止され」る場合
(以下「場合2」という。)があるものであるから、引用発明1には、全ての機能が動作可能
な態様(以下「態様1」という。)、全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クル
20 ーズコントロールが解除されて他の機能のみが動作可能な態様(以下「態様2」という。)、
EyeSight が一時停止されて定速クルーズコントロールを除く EyeSight の全ての機能が動作し
ない態様(以下「態様3」という。)、全ての機能が動作しない態様(以下「態様4」とい
う。)があるものといえる。
ここで、訂正発明1の「高度自動化モード」と「基本モード」の上記した関係に鑑みれば、
25 引用発明1の各動作の組み合わせにつき、訂正発明1の「高度自動化モード」と「基本モー
ド」に対応するものは、態様1と態様2の組み合わせ、態様1と態様3の組み合わせ、態様2

と態様4の組み合わせ、態様3と態様4の組み合わせであるといえる。そして、場合1のとき
に、態様1から態様2に遷移し、あるいは、態様3から態様4に遷移するものであり、場合2
のときに、態様1から態様3に遷移し、あるいは、態様2から態様4に遷移するものとなって
いる。また、「EyeSight が一時停止された原因が改善されると自動的に EyeSight が復帰す
5 る」ものであるから、「EyeSight が一時停止された原因が改善され」た場合(以下「場合3」
という。)に、態様3から態様1に遷移し、あるいは、態様4から態様2に遷移するものとい
える。
してみれば、引用発明1は、場合1であるかを判断して、態様1と態様2のいずれか、また
は、態様3と態様4のいずれかを設定しており、同様に、場合2、場合3であるかを判断し
10 て、態様1と態様3のいずれか、または、態様2と態様4のいずれかを設定しているといえ、
また、引用発明1の態様1~4では、その態様で動作可能な全車速追従機能付クルーズコント
ロール、プリクラッシュブレーキ、AT 誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車
発進お知らせ、定速クルーズコントロールの機能が動作することから、引用発明1の「運転者
の判断を助け、安全・快適で疲れの少ない運転を可能にするさまざまな機能がシステムによっ
15 て動作し、」「全車速追従機能付きクルーズコントロール及び定速クルーズコントロールが自
動解除される場合があり、もしくは EyeSight が一時停止されて定速クルーズコントロールを
除く EyeSight の全ての機能が使用できない場合があり」という態様は、訂正発明1の「前記
車両の運転モードを、前記車両の走行に必要な複数種類の運転動作の一部又は全てを前記周囲
情報に基づいて自動で実行する高度自動化モード」「、及び、前記自動で実行する前記運転動
20 作の種類が前記高度自動化モードよりも少ないか若しくはゼロである基本モード、の何れか一
方に設定するように構成された運転モード設定部と、前記運転モード設定部により設定された
前記運転モードに基づき、その運転モードにおいて前記自動で実行するように設定されている
前記運転動作を実行するように構成された自動制御部と、」「を備え」る態様に相当する。
⑶ 後者の「プリクラッシュ2次ブレーキ」は前者の「急ブレーキ」に相当する。また、訂正発
25 明1に「前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると」と特定され
ていることを踏まえれば、当該判断に「急ブレーキが作動した」回数は特定されていないか

ら、複数回の急ブレーキの作動を判断することも、当該判断に含まれる(かかる解釈は、本件
特許の段落【0173】とも整合する。)。してみれば、後者の「エンジン始動後、プリクラ
ッシュ2次ブレーキが3回作動した」ことは前者の「前記車両の急ブレーキが作動した」こと
に相当する。そして、後者の「エンジン始動後、プリクラッシュ2次ブレーキが3回作動した
5 ときに EyeSight が一時停止され」る態様は、上記⑵の相当関係に鑑みれば、場合2として、
車両の急ブレーキが作動したかを判断して、態様1から態様3に、あるいは、態様2から態様
4に遷移しているのであるから、前者の「前記車両の急ブレーキが作動したか否か判断するよ
うに構成された急ブレーキ判断部」を備え「前記運転モードが前記高度自動化モードに設定さ
れているときに、前記急ブレーキ判断部により前記急ブレーキが作動したと判断されると、前
10 記運転モードを前記基本モードに切り替え」る態様に相当する。
⑷ そして後者の「EyeSight が一時停止された原因が改善されると自動的に EyeSight が復帰す
る」態様は、上記⑵の相当関係に鑑みれば、場合3であることを判断して、態様3から態様1
に、あるいは、態様4から態様2に遷移しているのであるから、前者の「高度自動化切替条件
が成立した場合、自動で前記基本モードから前記高度自動化モードに切り替える」態様に相当
15 する。
⑸ 上記⑴から⑷までを踏まえると、後者の「EyeSight」は前者の「車両に搭載される」「自動
運転制御装置」に相当する。
以 上

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