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令和6(ワ)12150商標権侵害差止等請求事件

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裁判所 一部認容 大阪地方裁判所
裁判年月日 令和8年5月28日
事件種別 民事
当事者 原告
被告株式会社喜代村 株式会社高橋酒造店
法令 商標権
商標法38条3項4回
商標法38条4項2回
民法719条1項1回
民法709条1回
商標法46条1項1号1回
商標法36条1項1回
商標法2条3項1号1回
商標法2条3項1回
キーワード 商標権24回
侵害21回
差止9回
実施8回
損害賠償5回
無効2回
許諾1回
特許権1回
主文 1 被告らは、日本酒に「喜び」の標章を付し、又は同標章を付した日本酒を製造
2 被告らは、日本酒に別紙被告標章目録記載1及び2の各標章を付し、又は同各
3 被告らは、
4 被告らは、日本酒の容器包装から、別紙被告標章目録記載1及び2の各標章を
5 被告喜代村は、自己の運営するすし店におけるメニュー表から、別紙「被告標
6 被告喜代村は、別紙本件サイト目録記載のウェブサイトから、別紙被告標章目
7 被告喜代村は、別紙本件投稿目録記載の投稿から、別紙被告標章目録記載1及
8 被告喜代村は、原告に対し、3127万8308円及びこれに対する令和6年
12月5日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員(ただし、第9項
9 被告高橋酒造店は、原告に対し、被告喜代村と連帯して3127万8308円
10 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
11 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告らの連
12 この判決は、第1項ないし第3項、第8項及び第9項に限り、仮に執行する
事件の概要 1 本判決で用いる主な呼称(略語) (1) 本件各商標(権) :別紙商標目録記載1ないし3の各商標(権)の総称(個別 には、 「本件商標(権)1」等) (2) 被告各標章:別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章の総称(個別には、 「被告標章1」等) (3) 被告すし店:被告喜代村が運営するすし店 (4) 本件サイト:被告喜代村が開設している別紙本件サイト目録記載のウェブサ イト (5) 本件投稿:別紙投稿目録記載の投稿 (6) 初光酒造:原告が代表者を務める初光酒造株式会社 (7) 原告製品:初光酒造が製造する「純米吟醸 よろこび リングラベル」とい う名称の日本酒 (8) 被告製品:被告高橋酒造店が製造する「喜び」という名称の日本酒(容量に

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判決文

令和8年5月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第12150号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和8年3月23日
判 決
原告 a
訴訟代理人弁護士 三山峻司
同 矢倉雄太
同 西川侑之介
被告 株式会社喜代村
(以下「被告喜代村」という。)
代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 服部浩司
15 訴訟復代理人弁護士 小堀信賢
被告 株式会社高橋酒造店
(以下「被告高橋酒造店」という。)
代表者代表取締役
20 訴訟代理人弁護士 赤羽宏
同 島根理充
主 文
1 被告らは、日本酒に「喜び」の標章を付し、又は同標章を付した日本酒を製造
販売し、販売のために展示してはならない。
25 2 被告らは、日本酒に別紙被告標章目録記載1及び2の各標章を付し、又は同各
標章を付した日本酒を製造販売し、販売のために展示してはならない。
3 被告らは、日本酒の容器包装に別紙被告標章目録記載1及び2の各標章を付し、
又は日本酒の容器包装に同各標章を付した日本酒を製造販売し、販売のために展
示してはならない。
4 被告らは、日本酒の容器包装から、別紙被告標章目録記載1及び2の各標章を
5 抹消せよ。
5 被告喜代村は、自己の運営するすし店におけるメニュー表から、別紙「被告標
章目録」記載3の標章を抹消せよ。
6 被告喜代村は、別紙本件サイト目録記載のウェブサイトから、別紙被告標章目
録記載の各標章を抹消せよ。
10 7 被告喜代村は、別紙本件投稿目録記載の投稿から、別紙被告標章目録記載1及
び3の各標章を抹消せよ。
8 被告喜代村は、原告に対し、3127万8308円及びこれに対する令和6年
12月5日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員(ただし、第9項
の範囲で被告高橋酒造店と連帯)を支払え。
15 9 被告高橋酒造店は、原告に対し、被告喜代村と連帯して3127万8308円
及びこれに対する令和6年12月6日から支払済みまで年3パーセントの割合
による金員を支払え。
10 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
11 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告らの連
20 帯負担とする。
12 この判決は、第1項ないし第3項、第8項及び第9項に限り、仮に執行する
ことができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
25 1 主文第1項ないし第6項同旨
2 被告喜代村は、別紙投稿目録記載の投稿から、別紙被告標章目録記載の各標章
を抹消せよ。
3 被告らは、原告に対し、連帯して1億0352万7607円及びこれに対する
被告喜代村は令和6年12月5日から、被告高橋酒造店は同月6日から、各支払
済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
5 第2 事案の概要
1 本判決で用いる主な呼称(略語)
(1) 本件各商標(権)
:別紙商標目録記載1ないし3の各商標(権)の総称(個別
には、「本件商標(権)1」等)
(2) 被告各標章:別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章の総称(個別には、
10 「被告標章1」等)
(3) 被告すし店:被告喜代村が運営するすし店
(4) 本件サイト:被告喜代村が開設している別紙本件サイト目録記載のウェブサ
イト
(5) 本件投稿:別紙投稿目録記載の投稿
15 (6) 初光酒造:原告が代表者を務める初光酒造株式会社
(7) 原告製品:初光酒造が製造する「純米吟醸 よろこび リングラベル」とい
う名称の日本酒
(8) 被告製品:被告高橋酒造店が製造する「喜び」という名称の日本酒(容量に
より区別するときは、1800ミリリットルのものは「被告製品A」、720ミ
20 リリットルのものは「被告製品B」、300ミリリットルのものは「被告製品
C」、180ミリリットルで提供されるものは「被告製品D」)
2 原告の請求(訴訟物)
原告の、被告らによる本件各商標権侵害を前提とする、
(1) 被告らに対する、商標法36条1項に基づく、①日本酒に「喜び」の標章並
25 びに被告標章1及び2を付し、又は同各標章を付した日本酒を製造販売等する
ことの差止請求、②日本酒の容器包装に被告標章1及び2を付し、又は容器包
装に同各標章を付した日本酒を製造販売等することの差止請求
(2) 被告らに対する、商標法36条2項に基づく、日本酒の容器包装からの被告
標章1及び2の抹消請求
(3) 被告喜代村に対する、商標法36条2項に基づく、①被告すし店におけるメ
5 ニュー表からの被告標章3の抹消請求、②本件サイトからの被告各標章の抹消
請求、③本件被告喜代村投稿からの被告各標章の抹消請求
(4) 被告らに対する、共同不法行為(民法709条、719条1項前段)に基づ
く損害賠償金1億0352万7607円及びこれに対する不法行為の後日か
ら支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の連帯支
10 払請求(一部請求)
3 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定で
きる事実)
(1) 当事者
ア 原告は、本件各商標権を有している。
15 イ 被告喜代村は、昭和60年に設立された、飲食店の経営、酒類の販売等を
目的とする株式会社であり、令和7年4月時点で、東京都を中心に、全国的
に46店舗の被告すし店を運営している(乙イ24、25)。
ウ 被告高橋酒造店は、秋田県に酒蔵を置く、酒類醸造販売業を目的とする株
式会社である。
20 (2) 被告製品の製造販売等(被告各標章の使用)
ア 被告高橋酒造店は、平成16年11月頃から令和6年9月まで、被告喜代
村から依頼を受けて、被告喜代村における専売品として被告製品を製造し、
酒屋を介して被告喜代村に納入した。納入に係る被告製品は、いずれも瓶詰
めされており、その瓶には、被告標章1又は2を含む商品ラベルが付されて
25 いた。(争いのない事実、甲16、18、弁論の全趣旨)
イ 被告喜代村は、被告高橋酒造店から、酒屋を介して被告製品の納入を受け、
被告すし店において、メニューに「喜び(小)」
「喜び(300ml)」と記載
して被告標章3を付して、来店客に被告製品を提供していた。具体的には、
被告製品Aについては1合に小分けして「喜び(小)」
(被告製品D)として、
被告製品Cは瓶のまま「喜び(300ml)」として提供していた。
5 ウ 本件サイトにおける使用
本件サイトには、少なくとも令和6年8月19日の時点で、上記メニュー
のほか、被告標章1又は2を含む商品ラベルが付された瓶詰めの被告製品
(容量3種類)の写真が、
「すしざんまいオリジナル特別純米『喜び』」との
文字とともに掲載されていた(甲17、18)。
10 エ 本件投稿による使用
本件投稿(令和元年9月26日のもの)においては、
「特別純米酒『喜び』」
との語を含む記載があるほか、被告標章1を含む商品ラベルが付された瓶詰
めの被告製品の写真が掲載されていた(甲19)。
(3) 原告製品の製造販売
15 原告は、自身が代表者を務める初光酒造において、原告製品を製造し、初光
酒造のウェブサイト上で販売している。当該日本酒の瓶に付されたラベルには、
丸で囲まれた「喜」の文字や「よろこび」との文字が記載され、化粧箱には、
丸で囲まれた「喜」の文字の上に「よろこび」との振り仮名が記載されており、
本件各商標が使用されている。(乙イ18)
20 4 争点
(1) 被告各標章が本件各商標と類似するか(争点1)
(2) 被告標章2及び3につき被告喜代村に先使用権が認められるか(争点2)
(3) 本訴請求は権利濫用に当たるか(争点3)
(4) 共同不法行為の成否及び連帯責任の範囲(争点4)
25 (5) 損害の発生及び額(争点5)
(6) 差止め等の必要性(争点6)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告各標章が本件各商標と類似するか)について
【原告の主張】
(1) 本件各商標と被告各標章との類似性
5 ア 被告各標章は、いずれも、
「喜び」という外観を有し(被告標章1及び2は
毛書体)、
「よろこび」という称呼、
「よろこぶこと、うれしく思う心」などの
観念を有するものである。
イ 本件商標1は、毛書体で「よろこび」と記載され、本件商標2は、標準文
字で「よろこび」と表記されており、いずれも、
「よろこび」という称呼や、
10 「よろこぶこと、うれしく思う心」といった観念を有する。そうすると、本
件商標1及び2と被告各標章とは、その外観において、
「喜」の部分が漢字か
平仮名かという一部差異があるものの、少なくとも類似しており、称呼及び
観念は同一である。
ウ 本件商標3は、毛書体の「喜」という漢字の一文字が大書され(この部分
15 が最も目を引く要部である。)、その上部に小さく平仮名で「よろこび」と横
書で表記されており、
「よろこび」という称呼と、
「よろこぶこと、うれしく
思う心」といった観念を有する。そうすると、本件商標3と被告各標章とは、
その外観において、漢字の「喜」という表記の上部に「よろこび」という横
書の平仮名表記がされているか否か、
「喜」の送り仮名として「び」の記載が
20 されているか否かという点で、一部差異があるものの、少なくとも類似して
おり、称呼及び観念は同一である。
エ したがって、本件各商標と被告各標章とは明らかに、同一又は少なくとも
類似する。
(2) 被告喜代村の主張について
25 被告商品のラベルに「つきじ喜代村 すしざんまい」と印刷されているとし
ても、同表記は、被告標章1及び2の左下に小さい文字で付記されているにす
ぎない。
また、被告すし店では、酒類だけ見ても複数の他社商品が提供されているか
ら、同店舗内で提供される商品であれば出所元が被告喜代村であると需要者
(来店客)に認識される、という関係は成立しない。
5 その他、被告喜代村の主張はいずれも争う。
【被告喜代村の主張】
(1) 本件各商標と被告各標章との非類似性
ア 本件商標1について
本件商標1は、非標準文字を用いて、縦書きで、かつ、平仮名のみによっ
10 て構成されている。
他方、被告標章は、いずれも、本件商標1とは一目で異なることが判別可
能な字体を用いて、かつ、漢字を含めて「喜び」と表記されるものであり、
本件商標1と同一性はもちろん類似性も肯定し得ない。殊に、被告標章3は
横書きであり、本件商標1との同一性、類似性は更に強く否定される。
15 イ 本件商標2について
本件商標2は、標準文字(明朝体)を用いて、横書きで、かつ、平仮名の
みによって構成されている。
他方、被告標章1及び2は、本件商標2とは一目で異なることが判別可能
な字体を用いて、縦書きで、かつ、漢字を含めて「喜び」と表記されるもの
20 であり、本件商標2と同一性はもちろん類似性も肯定し得ない。
被告標章3は、横書きである点こそ本件商標2と共通するが、本件商標2
とは一目で異なることが判別可能な字体を用いて、漢字を含めて「喜び」と
表記されるものであり、本件商標2と同一性はもちろん類似性もない。
ウ 本件商標3について
25 本件商標3は、非標準文字を用いて、かつ、漢字で「喜」、その上部に読み
仮名として横書きで記載された「よろこび」という文字によって構成されて
いる。
被告標章1及び2は、本件商標3とは一目で異なることが判別可能な字体
を用いて、かつ、送り仮名を含めて「喜び」と表記され、また、
「よろこび」
という読み仮名を伴わないものであり、本件商標3と同一性はもちろん類似
5 性も肯定し得ない。
被告標章3は、上記に加えて横書きであり、本件商標3との同一性、類似
性は更に強く否定される。
エ 観念の同一性・類似性等について
本件各商標と被告各標章は、いずれも喜怒哀楽のうちの「喜」を表すもの
10 であり、その意味では観念は同一ではある。もっとも、被告喜代村は、
「喜代
村」の「喜」を取って「喜び」と名付けており(最終的には「喜」
「代」
「村」
のそれぞれを冠した日本酒を販売予定であった。)、被告喜代村の「喜び」は、
喜代村という観念も含むものであるところ、こちらの観念については原告の
商標とは異なるものである。そして、被告喜代村の日本酒「喜び」は被告喜
15 代村の店舗で販売されていたのであるから、その銘柄(被告各標章)から「喜
代村」の「喜」を連想した需要者は相当程度存在したものと考えられる。
さらに、日本酒の中には「喜」
「嬉」という文字を含む銘柄(及び商標又は
標章)のものが複数存在する(乙イ2~10)。すなわち、日本酒という指定
商品において「喜怒哀楽の喜」を観念とする銘柄を付されたものは少なから
20 ず存在するから、「喜怒哀楽の喜」という意味で観念が共通することは、商
標・標章の同一性・類似性の判断において重視されるべきではない。
加えて、日本酒の中には「喜(よろこび)」とその意味や文字構成において
共通性が見られる銘柄(「歓(よろこび)」など)がある(乙イ11~14)。
すなわち、本件各商標はさほど特徴的ではなく、その出所の識別機能は高い
25 とはいえない。
オ 小括
以上のことからすると、指定商品である日本酒との関係で、本件各商標の
識別力はいずれも弱いものといえるから、本件各商標と被告各標章のいずれ
もが、それらを構成する文字において部分的にしか一致しておらず、字体に
ついては明らかに異なる本件においては、商標・標章の同一性・類似性はな
5 い。
(2) 取引の実情
日本酒においては、「喜」という漢字を含む数文字で構成される銘柄のもの
が複数存在し、その中には紛らわしいものも存在する。さらに、
「喜」の漢字を
含むもの以外にも、
「歓(よろこび)」
「寿(ことぶき)」
「穏(おだやか)」とい
10 った、それ自体では識別力が高いとはいい難い銘柄のものも流通している。こ
れら以外にも、日本酒の銘柄には漢字2~3文字で構成されるものが大量に存
在する。
すなわち、特に有名な銘柄を除けば、その銘柄だけで日本酒の出所を識別す
ることはできず、当該日本酒に添付されたラベルのデザイン、ラベルに記載さ
15 れた製造者名、酒造の所在場所などを含めて把握し、その出所を識別するとい
うのが取引の実情である。
そして、被告標章1及び2について、被告喜代村が販売していた被告製品の
ラベルには、被告高橋酒造店が明記されている上に、
「喜び」という文字のすぐ
横に「つきじ喜代村 すしざんまい」と印刷されている。さらに、初光酒造は
20 和歌山県、被告高橋酒造店は秋田県の酒造であり、地理的に遠く離れている。
これらの取引の実情からすれば、被告標章1及び2の使用により、商品の出所
を誤認混同するおそれは生じない。
また、被告標章3は、被告すし店のメニューに記載されたものであるところ、
これを注文して提供される被告製品は上記のラベルを付されたものであるこ
25 とも考慮すると、需要者は、メニューに掲載された「喜び」という名称の日本
酒は、被告喜代村が製造又は大元として販売するものであると考えることが容
易に想定される。このような取引の実情に照らせば、本件各商標と被告標章3
との間に同一性・類似性はない。仮に需要者が、被告製品「喜び」の出所が被
告喜代村であるとまでは判断できなかったとしても、「喜び」との記載を見て
それが初光酒造の日本酒であると考えると認めるに足る事情は何ら認められ
5 ないのであるから、結局、指定商品の出所を誤認混同するおそれは認められな
い。さらに、被告喜代村は、被告標章1又は2がそのラベルに付された被告製
品を、
「すしざんまいオリジナル特別純米」と明記し、コンクールでも受賞した
として広告、宣伝していたのであるから、メニューの「喜び」という表記を見
て、それが初光酒造の製造する日本酒であると誤認混同する需要者がいたとは
10 到底考えられない。
2 争点2(被告標章2及び3につき被告喜代村に先使用権が認められるか)につ
いて
【被告喜代村の主張】
被告喜代村が、被告製品の販売すなわち被告各標章の使用を開始したのは、平
15 成16年11月からであり、本件商標2及び3が商標登録出願された際、既に被
告各標章を使用していた。
被告製品の売上高は、本件商標2の出願日が属する月である平成17年7月に
おいて108万9500円であり、提供が開始された月である平成16年11月
からの累計は615万6500円であった。また、本件商標3の出願日が属する
20 月である平成19年3月においては149万2000円であり、累計は3100
万2250円であった。さらに、平成19年3月までの間、被告喜代村は多数の
被告すし店の店舗を展開していた。
上記のことに加え、被告喜代村の知名度の高さを併せ考慮すれば、被告喜代村
による日本酒「喜び」の提供の結果、被告各標章は「自己の業務に係る商品又は
25 役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されてい」たことが認められる。
したがって、本件商標2及び3との関係では、被告各標章につき被告喜代村に
先使用権が成立している。
【原告の主張】
被告各標章は、原告商標2及び3の出願日時点において、それぞれ「需要者の
間に広く認識」されていたものではない(周知性が認められない)から、先使用
5 権は存しない。
すなわち、被告喜代村の主張・立証によっても、原告商標2の出願日の時点で、
その売上高は累計531万3016円にとどまり、原告商標3の出願日の時点で
も、その売上高は累計3100万2250円にとどまる(乙イ20参照)。被告喜
代村からは、その他被告各標章の周知性を立証する目ぼしい証拠は提出されてお
10 らず、上記売上高のみで、被告各標章が「需要者の間に広く認識」されていたと
はおよそいえない。
そもそも、被告喜代村による先使用権の主張は、損害論の審理に入る旨の訴訟
指揮の後にされたものであり、時機に後れた攻撃防御方法である。
3 争点3(本訴請求は権利濫用に当たるか)について
15 【被告喜代村の主張】
争点1について述べたとおり、本件各商標はいずれもありふれた識別力の弱い
ものであり、その表す観念もごくごく一般的である。とりわけ本件商標2は、標
準文字を用いて、平仮名4文字だけで構成されており、これは明らかに「極めて
簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」といえる。
20 したがって、本件各商標、とりわけ本件商標2については、商標法46条1項
1号・3条1項5号の無効理由が存在するから、これに基づく商標権(本件各商
標権)を本件訴訟において行使すること(本訴請求)は、権利濫用に当たる。
【原告の主張】
本件各商標は、指定商品(日本酒等)との関係でみると、極めて簡単で、かつ、
25 ありふれた標章ではなく、平仮名又は漢字からなる標章であって自他識別力を有
している。
したがって、本件各商標に無効理由は存在しないから、本件訴訟における原告
商標権の行使は権利濫用に当たらない。
4 争点4(共同不法行為の成否及び連帯責任の範囲)について
【原告の主張】
5 (1) 被告らの侵害への関与状況
被告高橋酒造店は、被告喜代村からの発注を受けて被告製品を製造し、その
全量が中間の卸売業者等を通じるなどして被告喜代村に卸され、これを被告喜
代村が一般消費者に対して販売している。
すなわち、被告製品は被告喜代村オリジナルのOEM商品であるところ、製
10 造元である被告高橋酒造店は、被告製品を卸売業者等に卸した場合も含めて、
その全量が被告喜代村によって販売されることを認識しながら、被告製品の製
造を受託し、被告製品の製造販売を行っていた。
したがって、被告高橋酒造店と被告喜代村との間には、被告喜代村による被
告製品の販売行為について、客観的関連共同性及び主観的関連共同性があるか
15 ら、同販売行為による本件各商標権の侵害について、被告らは共同不法行為責
任を負う。
(2) 責任の範囲
共同不法行為責任を負う者らは、共同不法行為と相当因果関係のある損害の
全部について連帯して責任を負うのであり、共同不法行為者の帰責度に応じて
20 被害者(権利者)に対する責任割合を減縮されることはない。
したがって、被告らはいずれも、被告喜代村の売上高に基づいて算定される
使用料相当額の全部について、原告に対し連帯して賠償すべき責任を負う。
【被告喜代村の主張】
被告喜代村自体は、本件各商標権を侵害しておらず、また、被告高橋酒造店か
25 らの仕入れは、少なくとも被告喜代村からすれば、あくまで被告すし店における
被告製品の提供(飲食物の提供という役務)の準備行為にすぎず、
「数人が共同の
不法行為によって他人に損害を加えた」(民法719条1項前段)ものとはいえ
ないから、被告らに共同不法行為は成立しない。
仮に、被告らに共同不法行為が成立したとしても、上記の理由から、本件各商
標の使用料相当額の算定は、被告高橋酒造店の売上高を基礎とすべきである。
5 5 争点5(損害の発生及び額)について
【原告の主張】
原告は、平成16年12月から令和6年9月までの被告製品の被告喜代村にお
ける税込の売上高を基礎として、これに対する使用料相当額の損害賠償を求める
(商標法38条3項)。
10 (1) 被告製品の売上高
ア 平成22年10月から令和6年9月まで
同期間については、被告高橋酒造店から被告製品の販売数量及び売上高が
開示されているところ(乙ロ1(枝番を含む。以下同じ。))、その売上高は別
紙「原告主張被告ら売上高」の該当部分記載のとおりである。そして、被告
15 製品はその全量が被告喜代村に納入されているから、上記販売数量を基に被
告喜代村の売上高を算定すべきである。
具体的には、被告製品Cについては単価1430円(被告すし店における
提供価格)、被告製品Bについては単価3400円(被告製品Cの単価との
比例配分により計算)、被告製品Aについては単価8800円(被告製品D
20 の被告すし店における提供価格の10倍)により算定するのが相当である
(いずれも税込)。
これによる算定結果は、別紙「原告主張被告ら売上高」の該当部分記載の
とおりである。
イ 平成16年12月から平成22年9月まで
25 同期間の期間の売上高については、アの期間の月平均売上高に月数(70
か月)を乗じることで算定するのが相当である。
これによる被告高橋酒造店及び被告喜代村の売上高に係る算定結果は、別
紙「原告主張被告ら売上高」の該当部分記載のとおりである。
ウ 売上合計
以上より、平成22年10月から令和6年9月までの被告製品の売上高は、
5 別紙「原告主張被告ら売上高」記載のとおり、原告高橋酒造店につき4億7
821万8442円、被告喜代村につき23億0751万5160円である。
(2) 使用料率
近年の実施料相場に関する調査結果(甲22)によれば、本件各商標権の指
定商品分類・指定商品である第33類「ビールを除くアルコール飲料」の実施
10 料率は、平均2.8パーセントであり、標準偏差は3.3パーセント、最大値
は7.5パーセントである。
また、本件商標権は、原告の先代である b が初光酒造の代表を務め
ていた昭和48年初頭頃から現在に至るまで、約52年という半世紀にわたり
継続して、初光酒造において使用を継続してきた信用を蓄積した大切な商標で
15 あり、多くの顧客に永年愛されてきた商標である。具体的には、初光酒造は、
「よろこびの酒」や「喜」という文字表記を製品名として日本酒を製造販売し、
その包装にも表示してきたのであり、このような商標の使用期間の長さは、当
然に顧客吸引力の生成・助長に資するものであって、本件各商標の自他識別力
は高い。さらに、本件各商標は、縁起の良さを示す名称でもあるところ、縁起
20 の良さを商品「清酒」との関係で直接的に需要者に訴えかける商標は、顧客吸
引力が生来的に高い。「すし」が祝いの席で出されるご馳走でもあったという
日本文化からすれば、被告すし店で「喜び」という被告各標章を付した清酒が
提供されれば、その顧客吸引力は大いに発揮されるといえ、相当な使用料率は、
決して低く見積もられるべきではない。
25 また、商標法38条4項に基づき、裁判所は、商標権者が、自己の商標権に
係る登録商標の使用の対価について、当該商標権の侵害があったことを前提と
して当該商標権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該商標権者
が得ることとなるその対価を考慮することができる。
これらの事情を考慮すれば、本件において相当な使用料率は、上記平均や標
準偏差よりも自ずと高額になることに鑑み、5パーセントを下ることはない。
5 (3) 小括
したがって、被告らの侵害行為による原告の損害額は、前記被告喜代村の売
上高に上記料率を乗じた1億1537万5758円である。原告は、この一部
請求として1億0352万7607円の限度で支払を求める。
(4) 被告らの主張について
10 ア 被告喜代村は、同社における被告製品の売上高は、別紙「被告喜代村主張
売上高」記載のとおりと主張し、その根拠として乙イ20号証を提出する。
しかし、例えば被告製品Cの売上高をみると、単価(税抜1300円)で
除しても整数にならないし、被告高橋酒造店からの出荷本数で除すると上記
単価を大幅に下回る額にしかならないことなどからすると、乙イ20号証の
15 記載は全体として信用できない。
イ また、被告喜代村は、被告すし店における被告商品の提供は「飲食物の提
供」に当たり、本件各商標の指定商品とは類似しないから、損害賠償算定に
当たっては、被告すし店における売上高を控除すべきであり、被告高橋酒造
店における売上高を基礎とすべきである旨主張する。
20 しかし、被告喜代村は、
「喜び」という名称ですし店等の飲食店を営業して
いるわけではなく、飽くまで被告すし店において販売する日本酒(被告製品)
に被告各標章を使用しているのであり、かかる使用が本件各商標権の侵害に
該当する以上、被告製品の売上げが損害賠償の算定に当たって考慮されるこ
とは当然である。
25 ウ 被告高橋酒造店は、被告らによる被告各標章の使用は被告商品の売上げに
貢献していないなどとして、原告には、上記使用による得べかりし利益とし
ての実施料相当額の損害は生じていない旨主張する(被告喜代村も同趣旨の
主張をする。)。
しかし、商標法38条3項は、商標権者における損害の発生を前提として、
最低限度の損害額(使用料相当額)を法定した規定であり、被疑侵害者が損
5 害の不発生について主張立証責任を負うところ、本件各商標の被告商品への
寄与が全く存在しないことについて、何ら主張立証がない。
エ 被告高橋酒造店は、使用料相当額の損害額を算定する方法として、被告喜
代村の売上高に対して、相当な使用料率に加えて更に「寄与率」を乗じる方
法を主張する。しかし、かかる方法は、原告の損害発生を阻害する事情の二
10 重評価となるため適切でない。
【被告喜代村の主張】
(1) 原告には損害が発生していないこと
被告製品の売上げは、専ら被告喜代村の著名性、その宣伝広告や商品の品質、
顧客吸引力等によってもたらされたものであり、被告各標章の使用はこれに何
15 ら寄与しておらず、被告喜代村による被告各標章の使用によって、原告には本
件各商標につき得べかりし利益の喪失による損害は何ら生じていない。
(2) 被告製品の売上高
ア 損害算定の基礎
本件各商標の使用料相当額算定に当たっては、被告高橋酒造店の売上高を
20 基礎とするべきである。
被告喜代村が被告製品を被告すし店(飲食店)で提供していたことは、商
標登録の区分でいえば、第43類(飲食物の提供)に該当するのであって、
その主たる役務の中心はサービスの提供にあり、流通を前提とした商品「ビ
ールを除くアルコール飲料」に類似する役務ではない。
25 また、本件各商標は、商品を製造販売する主体(初光酒造)を表示する商
標としてではなく、初光酒造が販売をしている日本酒の商品名を表示する商
標として使用されていることからすると、本件各商標を付した商品を製造販
売する主体と、被告各標章を使用する被告すし店の営業主体とを混同するお
それは低い。
したがって、被告すし店における被告製品の提供により生じた被告喜代村
5 の売上げは、本件各商標権の侵害によるものでないから、被告喜代村の売上
げは、使用料相当額算定の対象となる売上げから控除されるべきである。そ
して、被告喜代村と被告高橋酒造店が共同不法行為によって原告に損害を与
えたとしても、上記の理由から、その際の使用料相当額算定の対象となる売
上げは、被告高橋酒造店によるものが用いられるべきである。
10 イ 被告製品の売上げ
被告喜代村における被告製品の売上高は、別紙被告喜代村主張売上高記載
のとおりである(乙イ20)。
原告は、上記のうち、被告製品Cの売上高の単価(税抜1300円)で除
しても整数にならないことなどから、乙イ20の記載は信用できない旨主張
15 する。しかし、被告製品Cの単価は、平成16年11月からは1000円、
平成31年4月からは1150円、令和4年11月からは1300円(いず
れも税抜)と順次値上げされており、整数にならないことと矛盾はない。
なお、被告製品Bは、被告喜代村の本社に近接した被告すし店(2店舗)
におけるイベント開催時に試飲用として無償で提供されていたほか、贈答さ
20 れることもあったが、販売はされていなかった。会計処理としては、上記イ
ベントで被告製品Bの費消があった際、上記2店舗のレジにおいて、形式上、
被告製品Bが有償提供されたものとして売上げが計上され、これに相当する
金額の請求を上記2店舗が本社に対して行う(社内振替する)という処理を
行っており、それが乙イ20号証記載の売上高である。
25 (3) 使用料率
以下のとおり、使用料率を低める方向に働く事情こそ多い一方、高める方向
に働く事情はないから、相当な使用料率は0.3パーセントとするのが妥当で
ある。
ア 本件各商標が付された原告商品の販売実績は不明であり、極めて低調なも
のであると考えられる。本件各商標に周知性・著名性はなく、顧客吸引力が
5 あるともうかがわれない。
被告喜代村は、その商号の頭文字を取って被告製品を「喜び」と命名して
いたところ、被告すし店及びその経営主体である被告喜代村並びにその代表
者個人の知名度が極めて高いことからすれば、被告製品が上記の経緯で命名
されたものと知り又は推測して注文した客も相当数いたものと考えられ、本
10 件各商標が被告喜代村の売上げに寄与した程度は限定的である。
イ 本件各商標は「喜」又は「よろこび」という漢字又は平仮名4文字で構成
される単純なものであり、字体その他デザインにおいて特殊性を有するもの
ではないし、
「喜」
「よろこび」は人の感情を表す言葉としても日常よく使用
されるものである。また、指定商品である日本酒の中には、
「喜怒哀楽の喜」
15 を観念とする銘柄を付されたものは少なからず存在するし、
「喜(よろこび)」
とその意味や文字構成において共通性が見られる多数の銘柄も確認される。
これらのことからすると、本件各商標の識別力は弱い。
ウ 原告が指摘する実施料相場に関する調査結果(甲22)は、第33類「ビ
ールを除くアルコール飲料」の実施料率につき平均2.8パーセントとする
20 が、調査対象は3件にすぎず、その内訳は0.3パーセント、0.5パーセ
ント、7.5パーセントであって、3件中2件が1パーセント未満である。
このように、サンプル数が僅少であり、大きな外れ値を含む調査結果は重視
されるべきではない。
エ 被告喜代村は、被告製品を被告すし店におけるメニューの一つとして提供
25 しただけであり、これをもって本件各商標を「商品」に使用したと考えたと
しても、原告による原告製品の販売とはその商流が全く異なり、誤認混同の
おそれは低い。また、原告の「半世紀もの間、清酒の商品に本件各商標を独
占的に使用し、その発展に努力してきた」との主張に妥当する商標は本件商
標1のみであるところ、被告らが使用した標章は「喜び」であり、平仮名の
みで構成された「よろこび」とは、これを目にした際の印象が大きく異なる。
5 オ 原告と被告らとの間では、市場における競合は一切発生していない。また、
被告喜代村による被告製品の販売実績は、専ら被告喜代村自身の企業規模や
営業努力に由来するものである。
【被告高橋酒造店の主張】
(1) 原告には損害が発生していないこと
10 被告商品は、ラベルに「SUSHIZANMAI」や「つきじ喜代村 すし
ざんまい」と表記された被告すし店の専売商品であり、同表記は大きな文字で
記載されていることから、注文した客にも被告すし店のオリジナル日本酒であ
ることが明確に読み取れるようになっていた。被告喜代村自身も被告商品を被
告すし店のオリジナル特別純米酒である旨ホームページで宣伝し、原告各商標
15 ないし「喜び」との表記によって顧客吸引をしていたものではない。しかも、
被告すし店の各店舗で直接顧客が飲用するものとして販売されていたため、各
店舗以外で入手する方法はなく、この点からも注文する客にとっては被告すし
店のオリジナル日本酒であると受け取れるようになっていた。また、被告商品
がコンクールで受賞したことは、本件各商標とは関係のない被告商品の品質に
20 よるものである。
そして、被告すし店及びこれを運営する被告喜代村は著名であり、被告すし
店は全国に店舗があるが、初光酒造が所在する和歌山県には店舗がない。他方、
初光酒造は和歌山県に所在する歴史ある酒蔵として地元和歌山を中心に愛さ
れてきたものと思われるが、すしざんまいとの比較においては全国的な知名度
25 はないものと思われる。
以上のことからすると、被告商品の売上げは専ら被告すし店の著名性、その
宣伝広告と被告高橋酒造店の酒造りの品質によるものであって、本件各商標の
使用はこれに寄与していないから、原告には、被告らによる被告各標章の使用
により得べかりし利益としての実施料相当額の損害は生じていない。
(2) 被告製品の売上高
5 被告高橋酒造店における被告製品の売上高は、別紙「被告高橋酒造店主張売
上高等」記載のとおりである(乙ロ1)。被告喜代村における売上高については
不知。
(3) 使用料率
仮に損害不発生とまではいえないとしても、前記の事情からすれば、本件各
10 商標の寄与度ないし寄与率は多くても5パーセントが相当である。
そして、原告は、相当な使用料率につき、第33類「ビールを除くアルコー
ル飲料」の実施料率の平均が2.8パーセントである一方、標準偏差が3.3
パーセントであることや本件各商標が永年顧客に愛されてきたことを考慮し
て少なくとも5パーセントを下ることはない旨主張するところ、被告高橋酒造
15 店としても、原告製品が顧客に愛されてきたことを強く否定するものではない
が、それを示す立証もなく、上記主張のみによって平均値から大きく増加させ
る理由とはならないから、相当な使用料率は高くても平均値の2.8パーセン
トである。
そうすると、原告に仮に損害が生じているとしても、その損害額は、高くて
20 も、被告喜代村の売上高(ただし、被告高橋酒造店としては不知)に相当な使
用料率2.8パーセントと寄与率5パーセントを乗じて算定される額である。
6 争点6(差止め等の必要性)について
【原告の主張】
被告らは、本件各商標と同一又は類似する「喜び」なる標章ないし被告各標章
25 を、本件各商標の指定商品と同一の被告商品、あるいはその容器包装、メニュー
や宣伝広告物に付して「使用」し(商標法2条3項1号、2号、8号)、本件各商
標権を侵害しているところ、被告喜代村が原告からの質問に対して誠実に回答し
ないなどの本件訴訟に至った経緯状況を踏まえると、今後もかかる侵害行為が継
続もしくは再開されるおそれがある。
したがって、被告らによる被告各標章の使用行為の差止めや、存在する被告各
5 標章の抹消を求める必要性がある。
【被告喜代村の主張】
争う。被告喜代村は、現在、被告製品の提供を終了し、代わりに「大喜」
(ダイ
キ)を販売している。また、被告標章3はメニューから削除済みである。
第4 当裁判所の判断
10 1 争点1(被告各標章が本件各商標と類似するか)について
(1) 本件各商標の外観等
ア 本件商標1
外観は、
「よろこび」との平仮名を、毛筆様ないしそれに近い書体で縦書き
に配して成るものである。
15 称呼は、音そのままに「よろこび」との称呼が生ずる。
また、その語の語義から、
「よろこぶこと。うれしく思うこと。また、その
気持」、
「祝いごと。慶事。また、祝いの言葉」などの観念が生ずる(広辞苑
第七版)。
イ 本件商標2
20 外観は、別紙「商標目録」記載2のとおり、
「よろこび」の標準文字から成
るものである。
観念及び称呼については、本件商標1と同様である。
ウ 本件商標3
外観は、毛筆様の書体の「喜」の漢字1文字の上部に、同じく毛筆様の書
25 体による「よろこび」を、
「喜」の漢字に比してかなり小さな平仮名で、1行
の横書きに配して成るものである。
称呼及び観念については、本件商標1と同様である。
(2) 被告各標章の外観等
ア 被告標章1
外観については、別紙「被告標章目録」記載1のとおり、毛筆様の書体で
5 「喜び」の2文字(漢字及び平仮名)を1行の縦書きに配して成るものであ
り、白地に赤文字で表記されている。
称呼については、漢字の通常の読みに従い「よろこび」との称呼が生ずる。
また、その語義から、「よろこぶこと。うれしく思うこと。また、その気
持」、
「祝いごと。慶事。また、祝いの言葉」などの観念が生ずる(広辞苑第
10 七版)。
イ 被告標章2
外観は、黄色地に赤文字で表記されるほかは、被告標章1と同様である。
称呼及び観念については、被告標章1と同様である。
ウ 被告標章3
15 外観については、
「喜び」の2文字(漢字及び平仮名)を1行の横書きに配
して成るものである。
観念及び称呼については、被告標章1と同様である。
(3) 本件各商標と被告各標章の類否について
ア 本件商標1
20 本件商標1と被告標章1及び2(字の背景の差異は類否の判断に影響しな
いので、併せて検討する。)は、平仮名で統一されているかどうかという点
で、外観には一定の差異があるものの、取引者や需要者にとっては、
「よろこ
び」の漢字による表記が「喜び」であることは常識に属することであって、
共通するものというべきである上、観念及び称呼は共通する。この点、被告
25 すし店のメニュー表には「喜び」のほかに「代」との日本酒(冷酒)が掲載
されており(甲17)、これとの対比において、被告製品が、被告喜代村の
「喜」に由来するものと連想する可能性がないとはまでいえないが、そのよ
うな連想が取引上常に想定されるとはいえず、本件商標1と観念が共通する
ことが左右されるものではない。
そして、
「よろこび」ないし「喜(よろこび)」との表現を日本酒(指定商
5 品)の商品名とすることがありふれているとも評価できず、需要者にとって、
通常の識別力を有することに疑いはない。
また、初光酒造は和歌山県の酒蔵であるが、原告製品は、初光酒造のウェ
ブサイト上で販売されており全国で購入できること、被告製品が提供される
被告すし店は東京を中心に全国的に展開されていること(前提事実)からす
10 ると、出所の誤認混同が生じることも明らかである。
以上のことからすると、本件商標1と被告標章1及び2とが日本酒に使用
された場合には、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから、被告
標章1及び2は、本件商標1と類似する。
同様の理は、本件商標1と被告標章3においても該当し、被告標章3は本
15 件商標1と類似するものと認められる。
イ 本件商標2
本件商標2は、被告各標章と比較したときに、外観における一定の差異に
ついての評価は、本件商標1についての前記判示と同様である。
その他、観念及び称呼の共通性を含め、本件商標1と本件各商標の類否に
20 ついての前記判示は、本件商標2と本件各商標の類否についてもいずれも当
てはまるものといえる。
したがって、被告各標章は本件商標2と類似するものと認められる。
ウ 本件商標3
本件商標3は、被告各標章と比較したときに、外観において一定の差異は
25 あるものの、その差異は、送り仮名(喜びの「び」)と振り仮名(よろこび)
の有無や、書体において一部異なるが、いずれも微差にとどまる。
その他、観念及び称呼の共通性を含め、本件商標1と本件各商標の類否に
ついての前記アの判示は、本件商標3と本件各商標の類否についてもいずれ
も該当する。
エ 小括
5 したがって、被告各標章は本件商標3と類似する。
(4) 被告喜代村の主張について
ア 被告喜代村は、日本酒は、その銘柄で出所を識別することはできず、ラベ
ルのデザイン、製造者名、酒造の所在場所などを含めて把握し、その出所を
識別するというのが取引の実情であり、また、初光酒造と被告高橋酒造店の
10 地理的距離から、被告標章1及び2の使用により、商品の出所を誤認混同す
るおそれが生じていない旨主張する。
しかし、日本酒が銘柄だけで出所を識別できないとする事情を認めるに足
りる証拠はない上(むしろ、経験則に照らすと、日本酒の銘柄(商標)は、
製造者と結びつくものとも考えられる。)、地理的隔離が直ちに商品の出所を
15 誤認混同するおそれを生じさせないものともいえない。この点の被告喜代村
の主張は、理由がない。
イ また、被告喜代村は、被告製品の上記ラベルの記載や「すしざんまいオリ
ジナル特別純米」の記載等から、メニュー掲載の「喜び」が初光酒造の製造
する日本酒であると誤認混同する需要者がいたとは到底考えられない旨主
20 張する。
しかし、前記判示のとおり、被告製品につき、取引者・需要者において商
品の出所を初光酒造であると誤認混同するおそれは十分に認められるし、そ
の一方で、被告製品につき被告すし店のオリジナル商品であるなどとして広
告・宣伝すること(甲18)は、むしろ出所の誤認混同のおそれを強めるも
25 のともいえる。被告喜代村の主張は失当である。
2 争点2(被告標章2及び3につき被告喜代村に先使用権が認められるか)につ
いて
本件商標2の出願日は平成17年7月、本件商標3の出願日は平成19年3月
であるところ、被告喜代村の主張によっても、平成19年3月の時点で、被告す
し店は東京を中心に20店舗ほどにとどまるし(乙イ24)、被告製品の売上高
5 も月に150万円程度にとどまるのであり(別紙被告喜代村主張売上高参照)、
かかる事実をもっては、被告各標章につき、
「自己(被告喜代村)の業務に係る商
品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されてい」たとは認めら
れない。他にこれを認めるに足りる証拠もない(なお、後記のとおり、裁判所認
定の売上高は上記の被告喜代村主張に係る売上高とは異なるが、判断を左右しな
10 い。)。被告喜代村の主張は採用できない。
なお、原告は、被告喜代村による先使用権の主張につき、時機に後れた攻撃防
御方法として却下されるべき旨の申立てをする(民訴法157条1項)。本来、侵
害論の心証開示後にされた侵害論に関する抗弁の主張は、侵害論の審理を蒸し返
すものとしてそもそも時機に後れた攻撃防御方法に当たるというべきであるが、
15 本件においては、上記のとおり、被告喜代村の主張には理由がなく、訴訟の完結
を遅延させることとなるとは認められないから、結論において上記申立ては却下
することとする。
3 争点3(本訴請求は権利濫用に当たるか)について
既に説示した事情のほか、本件全証拠によっても、本訴請求が権利濫用に当た
20 ることを基礎づける事実は認められない。被告喜代村の主張は、それ自体失当で
ある。
4 侵害論の小括
以上のとおり、被告各標章は本件各商標といずれも類似し、被告喜代村に先使
用権は認められず、原告の本訴請求が権利濫用に当たるとも認められない。
25 したがって、被告らによる、日本酒(被告製品)に「喜び」の標章並びに被告
標章1及び2を付し、又は同各標章を付した日本酒(被告製品)を製造販売等す
ることなどの被告各標章の使用行為は、原告の本件各商標権を侵害する。
なお、被告喜代村は、損害論の審理開始後に指定商品の類否を問題とするが、
これまでに説示したとおり、指定商品である日本酒に標章を付して使用している
との事実は明らかであるから、被告らによる被告各標章の使用行為が原告の本件
5 各商標権を侵害するとの結論は何ら左右されない(この観点から、この主張が時
機に後れた攻撃防御方法であるとは扱わない。)。
5 争点4(共同不法行為の成否及び連帯責任の範囲)について
前提事実のとおり、被告高橋酒造店は、被告喜代村から依頼を受けて、被告標
章1又は2を含む商品ラベルを付した被告製品を製造し、酒屋を介して被告喜代
10 村に納入し、被告喜代村は、被告高橋酒造店から、酒屋を介して被告製品の納入
を受け、被告すし店において、メニューに被告標章3を付して、来店客に被告製
品を提供していたのであり、被告らは、共同して本件各特許権を侵害する行為を
行っていたものと認められるから、被告らには共同不法行為(民法709条、7
19条1項前段)が成立する。
15 そして、共同不法行為が成立する以上、被告らは損害の全範囲につき不真正連
帯債務を負うところ、本件においては、原告の請求(被告喜代村の売上高を基礎
として商標法38条3項によって算定される損害賠償)にしたがった算定には理
由があり、これによることになる。
以上と異なる被告らの主張は、採用しない。
20 6 争点5(損害の発生及び額)について
(1) 被告製品の売上高について
ア 被告喜代村の売上高
証拠(乙ロ1)及び弁論の全趣旨によれば、平成22年10月から令和6
年9月までにおける、被告高橋酒造店による被告製品の出荷本数(酒屋を介
25 して被告喜代村に納入されたもの)及び売上高(税抜)は、別紙「損害額認
定表」の「被告高橋酒造店」欄の「出荷本数」欄及び「売上高(税抜)」欄各
記載のとおりと認められる。
そして、被告製品は被告喜代村における専売品であることに加え、上記の
とおり、いわゆる新型コロナウイルス感染症の影響による数量減少と思われ
る時期を除き、被告高橋酒造店から被告喜代村に継続的に被告製品が納入さ
5 れていたことからすれば、納入後一定の期間内に、被告喜代村においても同
量が販売されたものと推認される。
また、前記事実並びに証拠(乙イ28、29)及び弁論の全趣旨によれば、
被告すし店における被告製品の提供価格(税抜)は、被告製品D、同Cにつ
き、平成16年(2004年)11月から平成31年3月までは600円・
10 1000円、同年4月から令和4年10月までは700円・1150円、同
年11月以降は800円・1300円であったこと、被告製品Dは、被告製
品Aが小分けされて来店客に提供されていたことが認められる。
そうすると、平成22年10月から令和6年9月までの期間における、被
告喜代村による被告製品C及び被告製品Aの売上高(税抜)は、別紙「損害
15 額認定表」の「被告喜代村」欄の「売上高」欄の被告製品C欄及び被告製品
D欄のとおりと認められる。
被告喜代村は、被告喜代村における被告製品の売上高は別紙「被告喜代村
主張売上高」のとおりであると主張するが、前記の被告高橋酒造店による出
荷本数の認定資料(乙ロ1)は、出荷ごとに日付・伝票番号・本数・金額・
20 得意先名(直接の出荷先である酒屋等)が記載されており、被告製品が課税
物件であることも考慮すると信用性が高いと認められるところ、前記出荷本
数を前提とした場合、被告製品は、被告喜代村における専売品であるにもか
かわらず、別紙「被告喜代村主張売上高」記載の被告製品C及び被告製品A
の合計売上高は低額にすぎる上、損害論の審理において売上高の提出を要請
25 されながら集計に時間を要するなどとして適時に提出せず、時機に後れた攻
撃防御方法とする旨の警告を受けるや直ちにこれを提出したなどの被告喜
代村の訴訟態度も勘案すると、そもそも被告製品の売上を正確に集計したも
のとは認め難い。したがって、乙イ20号証及びこれに基づく被告喜代村の
主張は、採用の限りでない。
イ 被告製品Bについて
5 被告製品Bについては、原告は、被告製品Cの提供価格を基に売上高を算
出すべきである旨主張するのに対し、被告喜代村は、本社に近接した被告す
し店(2店舗)におけるイベント開催時に試飲用として無償で提供していた
ほか、贈答されることもあったが、販売はされていなかったことなどを主張
する。
10 この点、被告すし店のメニューにおける被告製品に係る記載としては、被
告製品C、同Dの記載しかないところ、被告製品Bが、被告すし店において
来店客に提供されていたことや、小分けされて「喜び(小)」として提供され
ていたことを認めるに足りる証拠はない。そのため、被告製品Cの提供価格
を基に被告製品Bの売上高を算出すべきとする原告の主張は採用できない。
15 もっとも、被告喜代村の主張を前提としても、贈答やイベントにおける提
供は「譲渡」としての本件各商標の「使用」
(商標法2条3項柱書、2号)に
当たり、一定の使用料は発生するものと解すべきところ、その算定の基礎と
なるべき売上高に相当する額は、最低限を画すると思料されるものではある
が、客観的根拠のある被告高橋酒造店による販売額によることとする。
20 そうすると、平成22年10月から令和6年9月までの期間における、被
告喜代村による被告製品Bの売上高(税抜)は、別紙「損害額認定表」の「被
告喜代村」欄の「売上高」欄の被告製品B欄各記載のとおりと認められる。
ウ 平成22年10月以降の売上に関する小括
以上より、平成22年10月から令和6年9月までの、被告喜代村による
25 被告製品の合計売上高は、税抜価格で別紙損害額認定表の「被告喜代村」欄
の「売上高」欄の「税抜合計」欄記載のとおりであり、これに期間ごとの税
率による消費税を加算した税込価格(1円未満四捨五入)は、上記「売上高」
欄の「税込合計」欄記載のとおりとなる。
エ 平成22年9月以前の売上げに係る原告の主張について
原告は、平成16年12月からの被告製品の売上高(税込)をベースに本
5 件各商標の使用料相当額を算出すべきとした上で、同月から平成22年9月
まで(70か月)の期間における売上高につき、同年10月から令和6年9
月までの期間における月平均売上高を算出した上で、これに70を乗じて推
計すべきである旨主張する。
しかし、別紙「損害額認定表」のとおり、被告製品に係る被告喜代村の年
10 間売上高(税抜)が1億円程度となったのは平成24年頃からであり、平成
23年は8000万円弱であるから、それまでの売上高(販売量)は漸増し
てきたものと推認される。また、平成31年4月以降は、被告製品C、Dの
提供価格が値上げされている。さらに、被告すし店の店舗数は、令和7年4
月時点では46店(令和6年9月時点でもおおむね同程度。乙イ24)であ
15 る一方、平成16年12月時点では十数店舗にすぎず、特に平成22年から
平成23年にかけて店舗数が大幅に増加している(乙イ24)。他方で、平成
22年10月から令和6年9月までの期間には、いわゆるコロナ禍による売
上高減少期間が含まれている。
これらの売上の推移を考慮すると、平成16年12月以降の売上高につい
20 ては、平成22年10月から令和6年9月までの月平均税抜売上高(約69
5万3000円)そのものではなく、その約6割相当額である月額417万
円と推計するのが相当である。
したがって、平成16年12月から平成22年9月までの70か月間の被
告製品の売上高は、税抜価格で2億9190万円と推計され、税込価格は3
25 億0649万5000円となる。
オ まとめ
よって、平成16年12月から令和6年9月までの被告喜代村における被
告製品の売上高(税込)は、15億6391万5397円であり、これを基
礎として、消費税相当額も考慮した本件各商標の使用料相当額を算定すべき
である。なお、同期間の被告高橋酒造店における被告製品の売上高(税込)
5 は、上記金額を下回るから、共同不法行為が成立する被告らについては、被
告喜代村の上記売上高をベースに使用料相当額を算定すべきことになる。
この点に関し、被告喜代村は、上記の算定は被告高橋酒造店の売上高をベ
ースに行われるべきである旨主張するが、前記判示に照らし、採用しない。
(2) 使用料率について
10 ア アルコール飲料のロイヤリティ料率に係る調査
証拠(甲22、23)によれば、「第33類 ビールを除くアルコール飲
料」に係る商標権のロイヤルティ料率について、令和7年頃のロイヤルティ
料率に係るアンケート調査においては、サンプルは3件、最大値7.5パー
セント、中央値0.5パーセント、最小値0.3パーセントであり、平均値
15 は2.8パーセントであったこと、平成22年頃の調査においては、サンプ
ルは2件、最大値3.5パーセント、最小値0.5パーセント、平均値2.
0パーセントとの結果であったことが認められる。
イ 原告商標の顧客吸引力
原告が代表者を務める初光酒造は、明治30年創業であるところ、本件商
20 標1が登録された後の昭和48年頃から、同商標を用いた「よろこびの酒」
などの名称の日本酒を製造販売してきたことがうかがわれ(甲24、弁論の
全趣旨)、現在においては、本件各商標を用いた原告商品を製造販売してい
る(乙イ18)。
このことからすると、特に本件商標1については、長年の使用による一定
25 の顧客吸引力が備わっていることはうかがわれるが、他方で、その周知性や
これの前提となる売上等については特段の証拠がない。
ウ 被告標章の使用態様について
前記のとおり、被告製品の「喜び」との名称は、被告喜代村の「喜」を冠
したものと解する余地もある。
加えて、被告喜代村が、被告製品につき「すしざんまいオリジナル特別純
5 米「喜び」」として、コンクールで金賞を受賞したことも併せて本件サイト上
に掲載し、さらに、本件投稿(令和元年9月26日のもの)においては、
「す
っきりしてて飲みやすいすしざんまいオリジナル特別純米酒「喜び」がおす
すめ」、
「パッケージに印刷されている、
「喜び」の文字はすしざんまい社長が
書いたものです」などと記載し、
「喜び」を強調して積極的に宣伝しているこ
10 と(甲18、19)、本件訴訟前の原告・被告喜代村間の交渉段階では、被告
喜代村は原告に対し、本件各商標権の譲渡や使用許諾を打診するなどしてい
たこと(争いのない事実)からすれば、本件各商標に類似する被告各標章を
被告商品に用いたことによる売上げ及び利益への貢献は、被告すし店が相応
の著名性を有すること(弁論の全趣旨)を踏まえても、少なくとも一定程度
15 はあったものと認められる。
エ 競合関係
原告が代表者を務める初光酒造と、被告製品を製造する被告高橋酒造店は、
いずれも日本酒メーカーである点で抽象的には競業関係に立つが、他方で、
被告製品は、被告すし店において来店客に提供されているものであり、一般
20 の市場において取引されているものではないから、原告製品と被告製品が市
場において競合している事実は認められない。
オ まとめ
以上の事情に加えて、商標法38条4項の趣旨も参酌の上総合考慮すると、
本件各商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額を算定する際の
25 使用料率は、2パーセントと認める。
(3) 小括
したがって、商標法38条3項により算定される原告の損害額は、3127
万8308円(15億6391万5397円×0.02)
(1円未満四捨五入)
と認められる。
(4) 被告らの主張について
5 ア 被告らは、被告商品の売上げは専ら被告すし店の著名性、その宣伝広告と
被告高橋酒造店の酒造りの品質によるものであって、本件各商標の使用はこ
れに寄与していないから、原告には、実施料相当額の損害は生じていない旨
主張するが、前記判示のとおり、本件各商標に類似する被告各標章の使用が
被告商品の売上げ及び利益に貢献があると認められるから、被告らの主張は
10 理由がない。
イ 被告高橋酒造店は、使用料率に更に寄与率を乗じて使用料相当額を算定す
べき旨主張するが、前記判示のとおり、被告高橋酒造店が主張するところの
寄与率に相当する事情も踏まえて、2パーセントの使用料率を算出したもの
であるから、上記主張は採用できない。
15 7 争点6(差止め等の必要性)について
前記判示のとおり、被告らによる被告各標章の使用行為は、原告の本件各商標
権を侵害するところ、本件に顕れた一切の事情に照らせば、
(1) 被告らに対する、①日本酒に「喜び」の標章並びに被告標章1及び2を付し、
又は同各標章を付した日本酒を製造販売等することの差止請求、②日本酒の容
20 器包装に被告標章1及び2を付し、又は容器包装に同各標章を付した日本酒を
製造販売等することの差止請求
(2) 被告らに対する、日本酒の容器包装からの被告標章1及び2の抹消請求
(3) 被告喜代村に対する、①被告すし店におけるメニュー表からの被告標章3の
抹消請求、②本件サイトからの被告各標章の抹消請求、③本件投稿からの被告
25 標章1及び3の抹消請求
については、いずれもその必要性が認められる。
ただし、上記(3)③については、原告は、本件被告喜代村投稿からの被告各標章
の抹消を求めるが、証拠(甲19)によれば、同投稿において被告標章2が存在
するとは認められないから、被告標章2の抹消請求については理由がない。
なお、被告喜代村は、現在、被告製品の提供を終了し、代わりに「大喜」
(ダイ
5 キ)を販売しており、被告標章3はメニューから削除済みである旨主張するが、
証拠(甲14の3)によっては、被告各標章が付された被告製品及びその容器包
装が全て廃棄されたとまでは認められず、被告標章3が被告すし店のメニュー
(本件サイト上のものを含む。)から削除されたかも明らかではない。
したがって、上記の判断は左右されない。
10 第5 結論
原告の本訴各請求は、各主文掲記の限度で理由があり、その余は理由がない。な
お、主文第4項ないし第7項の仮執行宣言については、相当でないからこれを付さ
ない。
15 大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官
松 阿 彌 隆

裁判官島田美喜子及び裁判官阿波野右起は、転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官
松 阿 彌 隆

(別紙)
被告標章目録






以 上

(別紙)
本件サイト目録
URL:https://www.kiyomura.co.jp
5 以 上

(別紙)
本件投稿目録
米国法人であるX Corp.がインターネット上で運営する短文投稿サービス
「X」上における、被告喜代村が運営するすし店舖の案内ないし宣伝をするため開
5 設したアカウント(つきじ喜代村「すしざんまい」公式@zanmai_man)による投稿
(ポスト)
以上

(別紙)
商標目録
1 登録番号 第889339号
出願日 昭和43年11月5日
5 登録日 昭和46年2月16日
商品の区分・指定商品 第33類 日本酒
登録商標

2 登録番号 第4938994号
出願日 平成17年7月7日
登録日 平成18年3月24日
15 商品の区分・指定商品 第33類 日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒
登録商標 よろこび(標準文字)
3 登録番号 第5095211号
出願日 平成19年3月30日
20 登録日 平成19年11月30日
商品の区分・指定商品 第33類 日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒
登録商標

以上
(別紙 原告主張被告ら売上高、被告喜代村主張売上高、被告高橋酒造店主張売上
高等、損害額認定表 添付省略)

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