令和5(ワ)29933着手金返還請求事件
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| 裁判所 |
東京地方裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和8年5月22日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告アースグリッド株式会社 被告Aⅰ
|
| 対象物 |
風力発電装置 |
| 法令 |
特許権
|
| キーワード |
実施24回 許諾10回 無効2回 特許権1回 分割1回
|
| 主文 |
1 被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する令和5年11月4日から
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 |
1 事案の要旨
被告は、原告に対し、発明の名称を「風力発電装置」とする特許第5972
478号の特許(以下「本件特許」といい、本件特許に係る発明を「本件発明」
という。
)について通常実施権を許諾し、原告は、被告に対し、同通常実施権の
許諾契約に係る着手金として被告に500万円を支払った。
本件は、原告が、本件発明の実施品である風力発電装置が同契約で規定され
た性能を満たさず、実用化が困難であることから、被告には同契約に基づく着
手金の返還義務があると主張して、被告に対し、同契約に基づき、500万円
及びこれに対する令和5年11月4日(原告が被告に対して着手金の返還を求
めた期限の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金
の支払を求める事案である。 |
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判決文
令和8年5月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和5年(ワ)第29933号 着手金返還請求事件
口頭弁論終結日 令和8年2月10日
判 決
5 原 告 アースグリッド株式会社
同訴訟代理人弁護士 水 野 靖 史
山 野 克 哉
被 告 Aⅰ
主 文
10 1 被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する令和5年11月4日から
支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
15 第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨
被告は、原告に対し、発明の名称を「風力発電装置」とする特許第5972
20 478号の特許(以下「本件特許」といい、本件特許に係る発明を「本件発明」
という。)について通常実施権を許諾し、原告は、被告に対し、同通常実施権の
許諾契約に係る着手金として被告に500万円を支払った。
本件は、原告が、本件発明の実施品である風力発電装置が同契約で規定され
た性能を満たさず、実用化が困難であることから、被告には同契約に基づく着
25 手金の返還義務があると主張して、被告に対し、同契約に基づき、500万円
及びこれに対する令和5年11月4日(原告が被告に対して着手金の返還を求
めた期限の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金
の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認定できる事実)
5 (1) 当事者
ア 原告は、環境関連及び省エネルギーの電機機器の販売及びレンタル業務
等を目的とする株式会社である。
イ 被告は、不動産取引、開発事業等を行う者であり、株式会社ケインズ
(以下「ケインズ」という。)の代表取締役を務めている。
10 (2) 本件特許(甲16)
Bⅰ(以下「Bⅰ」という。)は、以下の本件特許を有している。
特許番号 第5972478号
出願番号 特願2015-542642
発明の名称 風力発電装置
15 出願日 平成26年10月15日
国際出願番号 PCT/JP2014/077469
登録日 平成28年7月22日
(3) 原告と被告との間の特許通常実施権許諾契約(甲1)
原告と被告は、令和5年6月15日付けで、以下の約定により、原告がB
20 ⅰの有する本件特許等の発明に係る通常実施権を被告に許諾する旨の特許通
常実施権許諾契約(以下「本件契約」という。)を締結した(なお、被告によ
る本件契約の締結が、ケインズの代表取締役として、ケインズのためにする
ことを示してされたものであるかは、後述のとおり争いがある。)。
ア 1条
25 国内特許出願番号:特願2015-542642(本件特許)
特願2017-169748
国際特許出願番号:PCT/JP2014/077469
:PCT/JP2018/032722
以上のほか、今後、被告が使用する新規特許(例:上記装置の羽をダブ
ルで使用したもの)も含む。
5 発明の名称:風力発電装置
イ 3条1項
原告は、被告に対し、特許実施権の対価として、契約金2500万円
(税込)を、①令和5年6月末日までに着手金500万円(税込)、②同年
8月末日までに残金2000万円(税込)に分割して支払う。
10 ウ 3条2項
上記イ②の支払は、発電状態が正常であることを確認した後とする。正
常とは、風速6メートルを達成するまでに、3キロワットを出力すること。
エ 3条3項
万が一、発電状態が正常でなく、被告が実用化が難しいと判断した場合
15 は、被告は着手金の500万円(税込)を原告へ速やかに返金するものと
する。
(4) Bⅰと被告との間の本件特許等に係る通常実施権許諾契約(乙11)
Bⅰと被告は、令和5年6月15日付けで、上記(3)アと同じ特許等を対象
とし、同イないしエと同内容(被告がBⅰに本件契約と同額の対価支払義務
20 を負い、Bⅰが被告に返金義務を負う内容)の通常実施権許諾契約を締結し
た。
(5) 着手金の支払
原告は、令和5年6月20日、被告に対し、本件契約の着手金として50
0万円を支払った。(甲2)
25 (6) 原告の被告に対する着手金の返還請求
原告は、被告に対し、令和5年10月25日付け通知書により、被告から
提示された図面やその指示に基づき製造した本件発明の実施品である風力発
電装置が、本件契約3条2項で定められた性能である「風速6メートルを達
成するまでに、3キロワットを出力すること」を満たさず、原告において実
用化が難しいと判断したとして、同条3項に基づき、同通知書到達後7日以
5 内に着手金を返還するよう求めた。上記通知書は、同月27日に被告に配達
された。(甲3)
3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 本件契約3条3項充足性の有無(争点1)
(原告の主張)
10 本件契約3条3項は、本件発明の実施品の発電状態が正常ではなく、原告
において実用化が難しいと判断した場合に、被告に着手金の返還義務を課す
ものであり、正常とは、同条2項において、「風速6メートルを達成するまで
に、3キロワットを出力すること」と規定されているところ、「風速6メート
ルを達成するまでに、3キロワットを出力すること」の意味は、風速6mに
15 達するまでに、瞬間的に3kwを出力することである。
そして、本件発明の実施品として被告から提示された図面やその指示に基
づき製造した風力発電装置は、風速6m/sの状況で、僅か30w程度の出
力しかないから、上記性能を満たしておらず、実用化は困難である。
(被告の主張)
20 本件契約3条3項は、同条2項と別個の条項であり、同条3項により着手
金の返還義務が生じるのは、実用化が難しいと判断された場合に限られ、発
電がされれば実用化がされたものと解すべきである。なお、同条2項は、同
項記載の数値が達成されない場合には、原告において残金2000万円の支
払をする必要がないことを定めた規定である。
25 また、「風速6メートルを達成するまでに、3キロワットを出力すること」
における「3キロワット」は1日当たりの電力量である。
(2) 「正常」について定めた本件契約3条2項の不法条件該当性ないし公序良
俗違反の有無(争点2)
(被告の主張)
仮に、本件契約3条2項の「正常」が、風速6mを達成するまでに、瞬間
5 的に3kwを出力することを意味するのであれば、物理的にあり得ないもの
である。原告は、本件契約時、本件契約3条2項の「3キロワット」が1日
の電力量であることを認識しながら、後になって、履行不可能である瞬間的
に3kwを出力することを意味すると言い出したものであるから、「正常」に
ついて定めた本件契約3条2項は、不法条件に当たるか、又は公序良俗に反
10 し無効である。
(原告の主張)
本件契約3条2項の「正常」の定義は、被告から説明を受けた風力発電装
置の内容に従って設定されたものであるから、原告が、被告に対し、実行不
可能な条件を提示して契約を締結させたことはなく、不法性のある条件でも
15 なければ、公序良俗に反するものでもない。
(3) 本件契約はケインズのために締結したものであるか否か(争点3)
(被告の主張)
本件契約は、被告が代表取締役を務めるケインズのために締結したもので
ある。本件契約に係る契約書(甲1)に被告名義の記載があるのは、原告が
20 強く主張したためであり、実体としては、ケインズが本件契約の当事者であ
る。
(原告の主張)
否認する。
第3 当裁判所の判断
25 1 争点1(本件契約3条3項充足性の有無)について
(1) 認定事実
前提事実及び後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件契約締結に至
る経緯として、以下の事実が認められる。
ア 被告は、知人であるBⅰから、本件特許につき、通常実施権の許諾を希
望する企業の紹介、斡旋を求められ、風力発電に関心のある企業を探して
5 いたところ、原告から環境関連事業としての風力発電について関心を示さ
れたことから、プレゼンを行うことになった。(証人Bⅰ2頁、原告代表者
1頁、被告本人2頁、弁論の全趣旨)
イ 被告は、令和5年6月9日、原告に対し、被告がケインズ名義で作成し
た「㊙ 世界発!風速3m/sから発電する定格3kwの小型垂直型風力
10 発電事業 企画書」と題する資料(以下「本件資料」という。)を基に、風
力発電装置の提案をした。(甲11、35、被告本人3頁)
ウ 本件資料には、別紙データ目録1記載のデータがあるところ、同データ
においては、被告が提案する定格3kwの風力発電装置について、平均風
速3.8m/sの場合の1日当たりの計画出力は9kwh/日と説明され
15 ていた。なお、上記数値は実測に基づくものであり、実際の計画出力は1
2kwh/日であるが、低めに記載されたものである。(甲11、乙19、
証人Bⅰ5頁)
エ また、本件資料には、別紙データ目録2記載のデータがあるところ、同
データは、被告が提案する定格3kwの風力発電装置(青色のグラフ)と
20 他社の定格3kwの風力発電装置(赤色のグラフ)について、風速(m/
s)と瞬間的な発電出力(kw)をグラフにして比較したものである。こ
のデータによれば、他社の装置は、風速約11m/sから3kwの電力が
出力されるのに対し、被告が提案する装置は風速約5m/sから3kwの
電力が出力されるものとされていた。(甲11、22、弁論の全趣旨)
25 オ 原告は、本件特許権の実施許諾を受けた後の事業の展開につき、風力発
電装置を製造し、運用すること、将来的には、海外に風力発電装置を輸出
又は設置して、海外における電力需要に寄与することを考えていた。(原告
代表者37、38頁)
(2) 本件契約3条2項の「風速6メートルを達成するまでに、3キロワット
を出力すること」の意味について
5 ア 認定事実アないしエのとおり、被告は、原告に対し、本件資料に基づき
風力発電装置の性能について説明し、被告はこの説明を基礎として本件契
約の締結に至ったものと認められるから、本件契約3条2項が規定する
「風速6メートルを達成するまでに、3キロワットを出力すること」の意
味についても、本件資料の内容を基礎として解釈するのが相当である。
10 その上で、認定事実エによれば、被告が原告に提案した風力発電装置は、
本件資料のデータ上、風速約5m/sにおいて瞬間的な発電量として3k
wの電力が出力されるとして、本件契約3条2項の「風速6メートルを達
成するまでに、3キロワットを出力すること」との数値に近似する性能が
明示されており、これによれば、本件契約3条2項の上記数値は、説明に
15 基づき想定される風力発電装置の性能を保守的に見積もった場合の正常値
を表したものと理解することができる。他方で、認定事実ウによれば、被
告の提案した風力発電装置については、平均風速3.8m/sの場合の1
日当たりの計画出力が9kwh/日であることも説明されていたが、当該
数値は、本件契約3条2項の「風速6メートルを達成するまでに、3キロ
20 ワットを出力すること」との規定との間で、数値上の関連性を認めること
ができない。
そして、証拠(甲11、被告本人12、13頁)及び弁論の全趣旨によ
れば、「キロワット」とは瞬間的な発電出力の単位であると認められるのに
対し、1日当たりの電力量の単位は「kwh(キロワットアワー)」と認め
25 られ、以上に従い本件契約3条2項が規定する「風速6メートルを達成す
るまでに、3キロワットを出力すること」を字義どおりに解すれば、風速
が6mに達するまでに、瞬間的に3kwを出力することを意味するものと
いえ、その他、本件契約書において本件契約3条2項の「3キロワット」
が1日当たりの電力量であることを示す記載は認められない。
以上によれば、原告及び被告は、被告の提案した風力発電装置について、
5 本件資料の記載に沿って、一定の風速時に瞬間的に一定程度以上の電力が
出力されるものとしてその性能を把握していたものと認めるのが相当であ
り、本件契約3条2項の「風速6メートルを達成するまでに、3キロワッ
トを出力すること」についても、風速6mに達するまでに、瞬間的に3k
wを出力することを意味するものであると解することが、当事者の合理的
10 意思に合致するものと認められる。
イ これに対し、被告は、本件契約3条2項の「3キロワット」は1日当た
りの電力量であると主張し、その旨供述する。
しかし、証拠(乙35、被告本人8頁)によれば、被告は、本件契約に
至るまでの交渉過程において、原告から提案された「風速3mで3kw」
15 との条件について、達成することは無理であると回答しているところ、こ
こでの「3kw」が1日当たりの電力量なのであれば、認定事実ウのとお
り、本件資料において、被告が提案する風力発電装置の性能が、実測値と
して、平均風速3.8m/sの場合の1日当たりの電力量が低く見積もっ
て9kwh/日であると説明されていることと整合しない。むしろ、被告
20 の上記回答は、認定事実エのとおり、被告の提案した風力発電装置につい
て、データ上、風速約5m/sから3kwの電力が出力されていることを
踏まえ、被告自身、「3キロワット」を瞬間的な出力と認識していていたか
らこそ、「風速3mで3kw」が無理であると回答したものと解するのが合
理的であり、これに反する被告の供述は信用することができない。
25 ウ 以上によれば、本件契約3条2項の「正常」とは、風速6mに達するま
でに、瞬間的に3kwを出力することを意味するものと認められる。
(3) 本件発明の実施品の発電状態が正常でなく、原告が実用化が難しいと判断
したことに理由があるといえるかについて
以上を前提に、本件発明の実施品の「発電状態が正常でなく、原告が実用
化が難しい」ものといえるかについて検討すると、物理的に不可能であるか
5 どうかはさておき、被告自身、本件発明の実施品が、1日当たりの電力量と
してはともかく、風速6mに達するまでに、瞬間的に3kwを出力するよう
な性能を発揮することができないことは認めており、この点は争いがないと
いえる。
また、以上の点はおくとしても、証拠(甲13、17~19、29~31、
10 34)によれば、原告が、本件発明の実施品である風力発電装置を製造し、
風速約6m/sの条件下で実験を行ったところ、電力は30w程度であった
ことが認められ、このような結果は、風速6mに達するまでに、瞬間的に3
kwを出力することという本件契約3条2項の定める「正常」な性能を有す
るものといえないことは明らかであるといえる。
15 そして、上記(2)に説示したところに加え、認定事実イないしオによれば、
原告は、本件資料を基に被告から説明を受け、本件発明の実施品である風力
発電装置が風速6メートルを達成するまでに瞬間的に3kwを出力すること
が可能であることを前提に本件発明の実施品を用いた海外での事業展開を考
え、本件契約を締結したと認められることからすれば、上記のとおり「正常」
20 な性能を有するものといえない本件発明の実施品について実用化が困難であ
るとした原告の判断には理由があるといえる。
なお、被告は、本件契約3条3項は、同条2項と別個の条項であり、同条
3項により着手金の返還義務が生じるのは、実用化が難しいと判断された場
合に限られるとして、同項が定める着手金返還義務の要件に「発電状態が正
25 常でな」いことは含まれないかのように主張する。
しかし、前提事実(3)のとおり、本件契約3条各項は、いずれも本件特許の
実施許諾の対価としての契約金の支払に係るものであり、また、2項ないし
3項は、いずれも当該対価の支払ないし最終的な帰属(返金の可否)につい
て、発電状態が「正常」であるという同一の条件に係らしめているという同
条の構造に照らすと、同条3項により着手金の返還が認められるための条件
5 として定められた「正常」の意味についても、同条2項の「正常」の定義と
同旨のもの、すなわち、「風速6メートルを達成するまでに、3キロワットを
出力すること」であるものとして理解するのが相当である。これに反する被
告の上記主張は採用することができない。
(4) 小括
10 以上によれば、本件発明の実施品は「発電状態が正常」であるとはいえず、
実用化が難しいとの原告の判断には理由があるから、本件契約3条3項の定
める着手金返還の要件を充足する。
2 争点2(「正常」について定めた本件契約3条2項の不法条件該当性ないし公
序良俗違反の有無)について
15 被告は、本件契約3条3項の「正常」の意味が原告が主張するようなもので
あるとすれば、そもそも、本件発明の実施品につき、「正常」として定める性能
を満たすことは物理的に不可能であり、原告は、本件契約時、本件契約3条2
項の「3キロワット」が1日の電力量であることを認識しながら、後になって、
履行不可能である瞬間的に3kwを出力することを意味すると言い出したもの
20 であるから、「正常」について定めた本件契約3条2項は、不法条件に当たるか、
又は公序良俗に反し無効であると主張する。
しかし、上記1(2)のとおり、「正常」の意味については、本件資料に記載さ
れた風力発電装置の性能と整合するものであり、被告から本件資料を基に説明
を受けた原告も上記同様に認識していたといえ、原告が、本件契約時に「3キ
25 ロワット」が1日の電力量であると認識していたとは認められず、その他、上
記「正常」に係る定めが、不法な条件であることや、公序良俗に反することを
認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。
3 争点3(本件契約はケインズのために締結したものであるか否か)について
証拠(甲1、被告本人10頁、弁論の全趣旨)によれば、本件契約書には、
5 原告と被告の記名、印影があり、被告は自ら押印したことを認めているところ、
本件契約締結の際、被告が本件契約をケインズのためにするものであることを
示して締結したものであることを認めるに足りる証拠はない。
かえって、被告は、本件契約書に被告の記載があるのは、原告が強く主張し
たためであると主張しており、原告の要望に応じて契約主体をケインズではな
10 く被告自身としたものであることを自認するものであるといえる。
したがって、本件契約は、ケインズのために締結したものであると認めるこ
とはできないから、本件契約の効果は被告に帰属するものといえる。
4 小括
以上によれば、被告は、原告に対し、着手金500万円を返還する義務を負
15 い、また、前提事実(6)のとおり、原告は、被告に対し、着手金の返還を期限付
きで催告しており、当該期限は令和5年11月3日であるから、同月4日から
上記金額に対する民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
第4 結論
よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文の
20 とおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
澁 谷 勝 海
裁判官
5 本 井 修 平
裁判官
10 浅 川 浩 輝
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